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民主主義が大きく後退していることは確かだが、果たして中国モデルが新興国や開発途上国から支持されているのかは疑問だ。中国は確かにデジタル建設を推進し、監視システムを開発途上国などに提供する。ただ、それは中国型の社会主義輸出でも、党国体制輸出でもない。ただ、経済発展し、治安も良く社会が安定しているように見えるものの、政治的、社会的人権が限定される状態が中国モデルだというなら、新興国それぞれが類似した形態を持つといえるかもしれない。だが、それも相当に多様だろう。民主主義か専制か、というが、「専制」とされるものも相当に多様だ。そして民主主義も同様だろう。二分法ではなく多様性や広がりにも留意したい。
言論NPOの調査によれば、日本人の7割近くが日中国交正常化50周年を知らないという。1972年当時、日中双方は「社会制度」が異なろうとも関係を正常化することができるとし、台湾、歴史、領土についても知恵を出し合って一定の「合意」をした。その後、日本は中国がWTOなどの経済貿易枠組みの下で経済発展することを支えた。他方、中国は経済発展してもその政治体制を変えなかったし、また軍事安全保障面では日本の大きな脅威となり、いかに対中抑止力を上げるのかが大きな課題だ。だが、軍事衝突は避けねばならない。そのための知恵を出し合い、50年後に50年前の無為無策が問題だったなどと言われないようにするべきだろう。
アメリカは中国に言うべきこと直接伝え、また公の場でもしっかり発言するという政策。無論、そこには踏み込んだ「失言」をするバイデン大統領と、公式発言を繰り返すブリンケン国務長官という役割分担も織り込まれている。王毅外相がブリンケン国務長官にあっても、なんら影響力をアメリカ側に与えられないということが中国側に伝えられ、中国国内で報道規制がなされるにしても、中国側に一定の圧力が与えられる。日本が参考にすべきは、このように直接的な抗議などのために、米中が直接対話を大切にしていること。別に「お土産」や「成果」がなくても、いうべきことを言い合うだけでも、首脳会談や外相会談をやってもいいのである。
習近平政権の掲げた「総合的安全観」における「安全(security)」概念は、極めて包括的だ。環境にはじまり、人口問題やエネルギー、経済、技術にまで広い範囲に及ぶ。その結果、どの領域にでも「軍」が関わる可能性が生じた。他方、「軍民融合」は技術の先端をBATH(百度、アリババ、テンセント、華為)などの「民間」企業が担っていることを踏まえ、先端企業との協働によりそれらの企業を監視しつつ、技術を吸収する。そして、軍にとって「民」は「民兵」としても重要だ。コロナ対策では都市の民兵、海では「漁船」を操る海上民兵がいる。「軍」の存在、その関与する領域は先進国のそれとは異なる。その点の理解が必要だろう。
王毅外相は、中国外交の目標は10月中旬の第20回党大会に向けて(中国にとって)安定した国際環境を作ることだと言う。日本とは経団連会長と李克強首相のオンライン会議を実施し、訪米中の王毅はオーストラリア外相とも会談して関係改善を印象付け、アメリカとも外相会談で緊張を和らげようとする。これら西側先進国向け緊張緩和外交は党大会に向けた政治的演出だとも言えるが、それだけでもない。中国では目下経済回復が急務であり、相互依存が依然として強い先進国との関係改善が急務だ。しかし、経済安保はもとより、台湾問題をめぐる「一つの中国原則」などの具体的な問題はそのままだ。これらは習近平政権三期目への宿題となろう。
バイデン大統領の発言は際立っている。行政レベルでは「変化ない」と言いながらも、大統領は軍事侵攻があれば関与すると明言する。これがバイデン政権の新しい「曖昧(わかりにくい)」政策なのかもしれない。台湾社会では「台湾有事」に際して、米軍は来ないだろうと懐疑的な目を向ける。そうした見方がウクライナ戦争の下で30ポイントも増えた。ただ、バイデン発言によって台湾の世論が動くかと言われれば、そうでもない。他方、ただ、バイデンのいう「前例のない攻撃」とは何を指すのかも問題だ。軍事侵攻だけを指すのか、サイバー攻撃なども含むのか。米中間では、当面は、言葉やグレーゾーンめぐる駆け引きが続きそうである。
SCOでの会議だけに、まずはNATOの東方拡大への反対、アメリカを中心とする安保ネットワークに反対を示し、西側の人権や民主主義などの価値観への反発も入るでしょう。次に、ロシアが建前ではウクライナに内政干渉していないとしているので、西側諸国の内政干渉反対などと言うでしょう。ここに台湾などの核心的利益の相互確認も含まれる可能性があります。そして、食糧問題やエネルギー問題、コロナ対策などについて、中露こそが発展途上国の利益を代弁するとして、協力方針を打ち出すものと思います。ただし、これは中露vs先進国という新冷戦と言うことは意味していません。中国から見てロシア以外のアクターもたくさんいるからです。
先進国は中露を一括りにするが、中露関係は依然単純ではない。東方経済フォーラムに参加した栗戦書は間も無く退任する存在だ。王毅は、7月にラブロフ外相と会談した際にウクライナ問題には触れなかったようだし、また同月のG20の会議で中国にとってはロシアもウクライナも共に友人と述べた。2月後半の中露首脳会談の際には、中国側が会議内容を公表した後に、北京のロシア大使館がそれを修正し、習近平主席がプーチン大統領を支持したと強調する一幕もあった。習近平主席としては、三期目に入る前に対露関係を再確認したいのだろうが、「核心的利益」を相互確認し、「新型大国関係」が実現していることを示す程度に止まるのではなかろうか。
10月16日からの中国共産党第20回党大会で習近平が三期目に入ることを一定程度前提とした、ある意味で異例のメッセージ。三期目に入ったところで、まずは米中首脳会談を行うという「お膳立て」をアメリカの側がしたということだろう。ペロシ下院議長の台湾訪問はあったものの、そこからの米中関係の立て直しの意味も込めた、このバイデン大統領からのメッセージを中国としても軽んじるわけにはいかない。しかし、具体的に何を話し合うのか、何か成果があるのかということも、三期目発足直後の習近平にとっても重要だ。「ただ会う」だけでなく、三期目発足に花を添えるメッセージのようなものをアメリカに水面下で求める可能性もあろう。
習近平が総書記となった10年前の2012年の第18回党大会は11月8日からであり、トップの交代がなかった2017年の第19回党大会は10月18日からであった。こうしたこともあり、人事交代のある第20回党大会は10月末から11月初旬ではないかと一般的に予測されていた。予測よりも早かったということだろう。これは北戴河「会議」から二ヶ月で党大会が開催できるということであり、習近平指導部が準備したトップや中央政治局の人事案に関するコンセンサスが既に形成されていることを意味する。また、共産党自身が党規約などを改正し党主席制度を復活させていく可能性も減じたのかもしれないが、この点は引き続き要観察である。
予測可能性が高く、およそ未来が見えていると思われているとき、過去の「歴史」は不要だと思われるが、現在は時代の転換点ではないかという雰囲気になると、「歴史」が参照されるようになる。将来が見えなくなると過去が気になるのだろう。歴史学のあり方も、過去に寄り添い、現在の問題を過去に投影するのではなく、過去おける問題を「虚心坦懐」にそのまま理解しようとするものの、その歴史家の立ち位置や生きている時代からの影響を完全に排除するのも無理だ。逆にその影響に自覚的あるべきだという意見もある。いまカーが新訳で読まれるのは、「歴史」そのものへの関心の高さを示すのだろう。それだけ読者にとって将来が不透明なのだろう。
中国で反共産党、反政府、親米的な言論が取り締まりの対象となることはいうまでもないが、同時に極端に愛国的、排外的な言論も時に取り締まりの対象となる。昨今、保守、愛国的なインフルエンサーの発言が「管理」対象となっていると言われている。これは秋の党大会を控えて国内の言論環境を落ち着かせたいということだけでなく、経済が深刻な状況に陥る中で、依然として先進国との関係が重要であり、目下欧州や日本との関係改善が進められようとしていることとも関わっているだろう。自由な言論を認めていない中国では、言論が加熱して社会が動揺したり、対外関係が過度に悪化すれば、それも中国共産党の「管理」責任になってしまうのである。
先進国から見ると、中露vs先進国、加えて第三勢力があるように見える。他方、中国は(中国の主導する)開発途上国+新興国vs(アメリカの主導する)先進国と見ている。だからこそ上海協力機構やBRICSを重視する。そもそも先進国と中国とでは異なる対立像をイメージしている。次に、その第三勢力だが、これらの国々は必ずしもまとまっているわけではない。世界をフラットに見て、それぞれの国益に即して、中国であれ、先進国であれ、利用すべきは利用しようとする。本来日本は、先進国の中で最も、中国のことも、あるいはアジア諸国のことも理解できる存在のはずだ。果たしてそうなっているか、そう振る舞えるか。大きな試練だ。
台湾有事を想定した取り組みは喫緊の課題。今回の中国の演習で中国のミサイルが日本のEEZ(中国政府は否定)に落ちたように、日本もまた「当事者」だと中国は考えている。日本が蔡英文政権を支えていると見ているからだ。そのため、南西諸島への「影響」だけでなく、「台湾有事」に際して尖閣諸島周辺での中国軍、海警、海上民兵の活動、日本本土へのサイバー攻撃、ウェブサイトの乗っ取り、フェイクニュース攻撃なども考慮に入れ、総合的な対処法を検討すべきだ。日本社会全体へのフェイクニュース攻撃などに対しどの機関が真偽を確かめて社会に示すのか。官庁のウェブサイトは大丈夫か。「台湾有事」対策の穴は三つだけではないだろう。
中国やロシアが日本の国会議員選挙に介入しようと思った場合、何をどうすればいいかなかなか判断がつかないだろう。無論、「親中派」を当選させるようにし、「嫌中派」を非難したり、あるいは与党を混乱に陥れるようなスキャンダル映像なり言説なりを流すことはあろう。しかし、大統領選に比べれば、議会制民主主義を採る日本への選挙介入は容易ではない。だとすれば、もっとも簡単なのは自民党総裁選になる。中国に都合のいい候補を応援するとか、あるいは混乱させるとか、様々な工作がフェイクニュース、議論誘導、さまざまな方法で行われる可能性がある。中国による智能化戦争、ハイブリッド戦は日常生活の中でなされることを意識すべきだ。
日本側に「身に覚え」があれば反日運動も「理解」可能だが、中国が自ら「問題」を設定し相手がそれを無視すると怒り出すなら、相手は反応できない。中国は、蔡英文政権を独立志向と見て、日本がその背後にいると見る。また、日本は50年台湾を統治し、現在も台湾に野心があると警戒し、日米が連携しているとする。だからこそ、アメリカが動くと中国の視線は日本に釘付けになる。だが日本側からすればこの独自の理論は理解困難だ。歴史認識どころか現状理解も日中でここまで異なれば対話も難しい。人事を控え、国内宣伝を強化して言説が保守化しているのだろうが、それが国境の外に溢れ出ても外国は受け入れられない。外国は国内とは異なるのだ。
アメリカ議会の中心的人物が台湾を訪問することで、果たして「台湾海峡の平和と安定」がより確実になるのか、その逆なのか。ペロシ訪台もそうだが、アメリカの上下院、あるいはホワイトハウスが台湾に関心を示すことは抑止力になるのか、それともその度に中国に利用され軍事演習やグレーゾーン浸透が強化されるだけなのか。北京での答えはあまりに明白だが、ワシントン、台北では賛否両論見られる。台湾では蔡英文政権がアメリカの関与を歓迎するが、国民党などは危機を煽るだけと批判する。この問題が、アメリカでも台湾でも国内政治の一案件になってしまえば、中国に利用されるだけにならないか。「政局」と区別した対応が求められよう。
本文にある「2050年までに科学技術強国になる」という目標は、中華人民共和国成立100周年にあたる2049年に「社会主義現代化強国」となり、「中華民族の偉大なる復興の夢」を実現するという政策目標と連動しています。今や中国共産党は、革命、豊かさ、ナショナリズムに続く四番目の正当性の源として「科学技術」を加えているようです。科学技術の向上は、軍事安全保障、経済などを支えるだけでなく高齢化や人口減少圧力がかかる中国にとっては切り札になります。単純労働を自動化、無人化することなどがそこに含まれます。ただ、スタートアップなどの「自由な空間」を統制せずに維持できるのかということなど、まだまだ課題山積です。
中国が台湾に日常的に仕掛けているグレーゾーン浸透工作がペロシ議長訪問に合わせて強化されたということだろう。中国軍の動向に関するフェイクニュースも流された。中国は演習などを通じて台湾に軍事力を見せつけながら、グレーゾーン浸透を図り、中国との統一やむなしとする世論の形成を目論む。成果はなかなか得られないだろうが、ここ数日、その現象が激化している。他方、重要なのは、例えばフェイクニュースについて、台湾の国防部などが「正誤表(何がフェイクニュースかわかる一覧)」を作成して公開している点だ。日本が中国の浸透工作の対象になった場合、果たしてどの部局が正誤表を作るのか。何も決まっていないのではなかろうか。
中国の演習については特に二点重要な点がある。第一に、一部のミサイルが台北市の上空を通ったことである。これは台北を狙えるということよりも、事故が起きて台北に不時着しても構わないという意思表示になる。第二に、日本のEEZにミサイルを落とした点である。日本側にその意識はなくても、台湾の民進党政権の背後にはアメリカのみならず、日本の保守派がいると中国は見ている。だからこそ、日本への警告もおこなっている、ということなのだろう。中国国内では党大会や北戴河を控えて緊張感が高まっており、その文脈で今回のことに厳しく対処する。他方、今回のことを受けて日本はどの程度の抗議ができるか。岸田政権の対処が問われる。
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民主主義が大きく後退していることは確かだが、果たして中国モデルが新興国や開発途上国から支持されているのかは疑問だ。中国は確かにデジタル建設を推進し、監視システムを開発途上国などに提供する。ただ、それは中国型の社会主義輸出でも、党国体制輸出でもない。ただ、経済発展し、治安も良く社会が安定しているように見えるものの、政治的、社会的人権が限定される状態が中国モデルだというなら、新興国それぞれが類似した形態を持つといえるかもしれない。だが、それも相当に多様だろう。民主主義か専制か、というが、「専制」とされるものも相当に多様だ。そして民主主義も同様だろう。二分法ではなく多様性や広がりにも留意したい。