NIKKEI Primeについて
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「軍事と外交」はセットであり、通常兵器、サイバーなど多様な面で防衛力を向上させて抑止力を高めながら、外交の世界では無闇に相手を刺激したりしないでおき、何か生じたら事態の打開に向けて努力するのが、「平和と安定」を保つ上での基礎だ。中国を脅威と表現するか、挑戦にするかということは「言葉」の問題、すなわち外交だが、海保、サイバー攻撃、反撃能力は抑止力にも直結する問題だ。安定した関係は、こちらが抑止力を下がれば実現できるのだろうか。「軍事と外交」は両輪であり、その両面で中国を刺激しないように「低調」で臨めば、中国が一層日本に対して優勢になるだけで、「平和と安定」に至らないことも十分に考えられる。
中国政府は抗議活動前からゼロコロナの緩和を指示していたようだが、内容が明確でなく、現場では「忖度」して緩和を進めずに抗議活動が起きたようだ。抗議活動の結果、緩和に関する具体的指示がなされ、現場も緩和を進め、人々が突然街に溢れだした。その結果、徐々に緩和させるどころか、突然の自由化となり、感染が一気に拡大したのだと考えられる。首都北京でも、このままでは医療崩壊の可能性もあり、春節までの多くの行事が延期されている。問題は中国のワクチンで集団免疫ができるかどうか、また医療体制が十分でない農村などで治療ができるのかということだ。自らを否定できない習近平政権にとっては正念場となるだろう。
日本では愛国主義教育などナショナリズムを煽った政治家と見做されることが多いが、江沢民はやや強引に経済発展を推し進めた政治家であり、一面で「三つの代表」など多様化する社会に対応して共産党の基礎を多元化させ、他面でその政策がさまざまな格差や課題を生み出し、結果的に習近平政権の基礎となる共産党保守派の台頭を招いたと理解できる。対外政策では、陸上国境問題の大半を解決して、周辺外交、一帯一路の基礎を築くとともに、韜光養晦政策を採用して対米、対先進国協調外交を進めようとした。一部の報道では、江沢民の死亡によって習近平に一層権力が集まるという見方もなされるが、昨今は病床にあって実質的影響力はなかった。
地方選挙での敗北が民進党の打撃になるのは確かだが、台湾では地方選挙と総統選挙との性格は異なり、地方選挙では中国との関係はそこまで考慮されない。それよりも、この選挙結果を受けて中国が台湾の民意が中国によってきたと「勘違い」するほうが問題だ。2018年末の地方選挙で国民党が圧勝し、蔡英文政権への支持率が最低となったが、2019年1月に習近平が台湾への武力侵攻の可能性に言及すると、蔡政権の支持率は急速に回復した。今回の地方選挙では、手堅かった国民党の現職の知事たちの施政が評価された格好で、国民党の対中政策への支持は意味しないだろう。台湾の政治状況を統一か独立かという視点だけで見ることには限界がある。
現在、中国は台湾に対し以下のようにして圧力をかけている、(1)台湾に軍事侵攻できるだけの軍事力を持ち、それを演習などで見せつけること、(2)この記事にある「影響力工作」を行って台湾社会に浸透し、混乱を与えること、(3)経済制裁により台湾経済にダメージを与えることなどである。これらを通じて、台湾社会に独立や現状維持を諦めさせ、中国との統一を選択させたいのだ。ペロシ下院議長の訪台前後に中国が行ったのは、日常的に行っているこの(1)(2)(3)の拡大版だ。台湾側の備えは、何が偽ニュースかを公的機関が発表するなど周到だ。ただ問題は、この工作に効果がない時であり、その時中国は一層圧力を強化するだろう。
「民進党=独立派/国民党=統一派という前提で、目下中国の対台湾圧力が強まっているのだから民進党勝利を予測し、だから現在の国民党優勢は意外で、国民党が勝てば中国の台湾統一が早まるかもしれない。」こう考えるのは「誤解」だろう。第一に総統選と異なり地方選では対中関係は重要視されず、第二に台湾人は特定勢力への権力集中を嫌う平衡感覚があり、第三に勢力減退著しい国民党も依然基層レベルでは組織を保ち、第四に蔡英文政権の支持率が最低だった2018年選挙で国民党が圧勝した時以来の現職が(高雄は除き)比較的安定していることなどが背景にある。だが、地方選挙で負けても2024年総統選での民進党優位は変わらないだろう。
コロナによって一旦途切れていた安倍総理の引いた関係改善への道が元に戻ったということであろう。習近平の笑顔が、そのことを示す。ただ、この関係「改善」は、あくまでも首脳交流ができる程度の関係正常化を意味しているに過ぎない。今回の首脳会談では、日中が「衝突」しないという平和を大前提に、核戦力増強著しい中国に対してウクライナ戦争に関連づけて核兵器使用への懸念を言わせ、尖閣などについては言うべきことを言い、そして協力案件についても付け加えた。これは、お互いに用意された「作文」を読み上げて終わったと言うことであろう。今後、閣僚、実務交流が活発になろうか。そこでの「談判」で具体的な問題が浮き彫りになる。
今回の日中首脳会談では何かの転換があるわけでもないだろうし、諸問題について互いの主張を言い合い、首脳会談の継続などの「(小さな)成果」を残す程度に止まるだろう。習近平は20回党大会で、大国との関係性について「平和共存、全体としての安定、均衡の取れた発展」を掲げており、アメリカや西側先進国の首脳との会談にも応じる姿勢を示している。今回もその一環だ。だが、岸田首相としてはこの機会を生かすべきだ。権威主義体制の国家では果たしてどれほど「正確」な情報がトップにあげられているか疑わしい。その点で、岸田首相が直接日本の立場を習近平主席に伝える意味は大きい。「会って言い合う」ことも、大切な外交の一環だ。
この記事にはやや疑問がある。「8月のペロシ米下院議長の台湾訪問に中国は対抗し、米中間の対話を停止」とあるが、9月には王毅外相が訪米しブリンケン国務長官と対面で会談した。バイデン大統領と習近平国家主席の「米中首脳の対面での会談は2019年6月以来、3年5カ月ぶり。バイデン政権の発足後は初めて」というのは間違いないが、これはコロナも影響しており、オンラインであれば2021年11月、2022年3月のオンライン会談、2022年7月の電話会談など、非対面を含めれば5回会談している。対面会議は重要だが、米中は「対立」しているから首脳会談はほとんど行われていないはずだ、という印象を読者に与えないだろうか。
日本の対中感情は極めて悪く、8割以上が「親しみを感じない」。そのため政治家は対中関係には慎重だ。政権の対外政策の順番は、一般的に、まず対米関係を強固にし、次にG7や豪州との関係で成果を上げ、そしてインドなどの戦略的重要国との交流、その上で漸く中国ということになる。まして、安倍晋三総理ならいざ知らず、「親中」を思われかねない岸田文雄首相である。対中接近にはいっそう慎重になる。他方、ドイツ首相もそうだが、G7の首脳は中国との「外交」は形式だけでも維持しており、岸田総理が漸く動いたということだろう。しかし、何を話すのか。実現するなら、まずは国内世論を見ながら日本としての主張を述べることになろう。
第20回党大会閉幕式の、外国人記者を会場に入れるタイミングで生じた騒動は、習近平主導で起きた胡錦濤粛清劇ではなく、胡錦濤が起こした「胡錦濤劇場」だったという認識が中国専門家の間でできつつある。今回は、結果として党主席制度が採用されず、「二つの確立」も習近平思想も党規約に入らなかった点では習近平にはマイナスだが、最終的に人事はほぼ習近平の「思い通り」になった。これが予定された取引の結果ならば、胡錦濤劇場は生じなかっただろう。党大会の開幕式の時、胡錦濤の習近平への表情は明るかったが、一週間で一変したのだ。やはり、人事の詳細を事前に知らされていなかったか、胡錦濤にとって予想外のことが起きたのだろう。
習近平新政権の「中央」から経済発展を担ってきた改革派がほぼ姿を消した。李克強、汪洋、胡春華、そして劉鶴の名もない。また人民銀行系統の財政担当者の姿もほとんど見えない。国務院発展改革委員会主任の何立峰はいるが、劉鶴と比べればその手腕の差は歴然だ。この布陣を見れば、「共同富裕」の富裕よりも、(不公平さを多く制度的に残した)社会保障や分配を重んじる「共同」ばかりが推進されると読める。また、習近平演説では「国家の安全」が全面に押し出され、発展よりも安全が重視されることは明白だ。「発展」「富裕」に期待をかけ、脱コロナを進め出した香港経済界にとって、20回党大会は期待を裏切られるものであったのだろう。
習近平は党主席にならず、総書記に留まり集団指導体制は維持された。その代わり徹底的に「異分子」が排除され、中央は一層習近平派で固められ、ダイバーシティも減じられた。また世代交代という意味では、1970年代生まれを中心とする第七世代は政治局員に入れず、候補にとどまった。68歳定年制を反故にした分、世代交代も緩慢になる。後継者も明確ではない。2049年には社会主義現代化強国、2035年に社会主義現代化を達成するとするが、達成に向けて困難は経済、社会保障面、対米関係など、少なくない。いわゆる改革派がトップ層に殆どいない状態でいかに経済を立て直すのか。権力集中では解決できない問題への対処が課題となろう。
習近平政権は元来2049年の「中華民族の偉大なる復興の夢」の実現の時に、台湾統一することを目標とし、中間地点として2035年を設定していた。アメリカは、この目標より早く中国が台湾統一を行おうとすると見ているのだろう。ただ、核弾頭増加や弾道ミサイルなどの増強は単に台湾統一だけを目指してのことではない。中国は、軍事、安全保障面も含めて2049年にアメリカを追い越すことを目標としている。世界的な核兵器のバランスを見れば、依然として米露が突出しているが、それを打破すべく中国が名乗りをあげ、米中が中心となるよう舵を切ったということだ。それに伴って「先制不使用」政策も調整することが予想される。
今回の習近平演説は人材養成に相当の紙幅をさいた。これは日本にも見習ってほしいが、しかしこの演説は最後に「青年」に対する別の意味での関心を示した。青年を共産党の理論で武装するなど、今後青年に対する思想、政治教育をうかがわせるような発言をした。人材養成をしながら管理を強化し、動員、団結を求めるということであろう。また、これまで「中国的特色のある」といっていたものを「中国式」に改めた。これは自信の表れであると同時に、欧米先進国とは異なる道を進むことを明示しているともいえる。経済と社会保障など民政部門は、共産党が社会からの支持を集める上での基礎になる。それが3期目の最初の大きな課題になるであろう。
中国とミャンマーとの関係は現在の「良好」である。鉄道以外にも、チャウピュ港、その周囲の経済特区建設、同港から雲南へのパイプライン建設も進められている。なぜ、中国がこのルートを重視しているのか。それは将来の「台湾有事」、東・南シナ海の有事によって、中国の東側の海が使えなくなっても、エネルギー補給、物資供給などを維持するためだ。目下、ミャンマーの他、中央アジアラインがあり、パキスタンラインも模索されている。ミャンマーから見れば、中国の生命線を国内に握りむしろ中国に対する「強み」を得られるだろうし、債務の罠についても中国にとっても必要なのだから、どこかで折り合うとの見込みもあるのではないか。
TSMCは台湾を代表する半導体メーカーのトップで、最もハイスペックなものはこの会社の独占状態にある。だからこそ、アメリカもこの企業の動向に敏感になっている。台湾全体の人口は減少傾向に入りつつあるものの、TSMCをはじめとする半導体関連企業の収益が好調なため、台湾経済も好調だ。ここにきて、アメリカが中国との間の半導体関連産品の取引のさらなる抑制を決め、中国に工場を持つTSMCは1年間適用が猶予されたものの、一年後には適用される。また、一般的な半導体需要が頭打ちになっている。これまで極めて好調だったTSMCの先行きに薄い黄色信号が見え始めたというところだろうが、この企業の優位性は依然変わらない。
蔡英文政権は、米日との関係を強化し、欧州各国の議会などからの支持を後ろ盾にしながらも、いたずらに中国を刺激しない政策を採っている。TSMCに代表される半導体関連産業が好調で経済は良く、中国もこの半導体関連部品では台湾に依存する。台湾では「台湾有事」を長期的には想定しつつも、短期的にはないという見方が大勢を占める。当面は中国が台湾に軍事、経済、情報(心理)など各方面で台湾社会に圧力をかけ、独立や現状維持は困難と考え、統一しかないと台湾人に思わせようとするだろう、と認識しているからだ。目下、蔡英文の任期はあと一年半。次期総統が果たして中国を刺激しない政策を継続するのか。それはまだわからない。
安川電気は創業者一族が孫文らとも関わりがあったが、戦前来チャイナビジネスでは苦い思いもしてきた。そうした経験が判断に影響したかわからないが、サプライチェーンの面で中国からの部品に頼らない形態を獲得しようとしているのだろう。他方、中国に工場を持つ日系企業では、「中国では中国市場向けのものしか作らない」という風潮がすでに強まっており、既存の設備の更新をせずに減価償却のタイミングを見て工場を日本や第三国に移す動きが広く見られる。これは中国側から見れば大きな問題となるはずだ。
中国共産党は、第20回党大会で規約改正を行うとしている。「党主席」復活なのか、習近平思想を表現する用語の調整なのか未だ判然としない。党主席と総書記との根本的な相違点は、総書記制度があくまで「集団指導体制」を前提としており、制度的には習近平の独断では物事を決められず、常務委員の間で多数決ができるように人数は奇数とされているのに対して、党主席になれば他の常務委員が反対しようとも、多数決に依らず主席の判断で物事が決められるようになる点にある。鄧小平体制下、胡耀邦がこれを廃止したのは、党主席であれば文革期のような独裁、個人崇拝が継続すると懸念したためだ。中国は、時間を元に戻すのだろうか。
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