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日米韓共同声明で、従来朝鮮半島に傾注してきた韓国がインド太平洋への関与を高めんとしていることは注目できる。また三国でインド太平洋に関する局長、次官補級会議の年一回開催も重要だ。中国も日米韓がQUAD化することを懸念し反発している。だが、日米韓の共同声明で中国に直接関わるのは南シナ海部分と台湾部分くらいで、各々広島G7の共同コミュニケの言葉を範とする。他方、広島G7の共同コミュニケで中国の内外政に直接言及した第51項のような内容は日米韓共同声明では記されず、回避されたことがわかる。恐らく韓国の主張だろう。韓国が今後インド太平洋にいかに関与し、対中認識や対中政策をいかに調整するのかが注目される。
米日韓の関係性が回復し、その協力体制が改めて築かれたことを内外に印象付ける意味で重要な会議となろうし、また北朝鮮に対する様々な対策を講じる上でも意義がある。だが、二点の懸念点がある。第一に、これは誰もが思いつくが、尹政権の安全保障政策が韓国で支持され、政策が持続的かという問題だ。この点、日米は数年後に変わったらそれは仕方ないとの姿勢かもしれない。第二に、今回の議題には朝鮮半島情勢だけしかないのか、ということだ。インド太平洋、あるいは中国、ロシアのことはどうなのか。韓国が「インド太平洋」、「中国」などの課題に取り組む姿勢を強化する契機になればとも思うが、それも難しいのかもしれない。
中国としては米中間の緊張が高まる中で日本との関係は一定程度良好な状態で維持しておきたい。だが、取引材料として持ち出した「処理水」問題が半導体問題などでも日本への圧力にならず苦慮しているだろう。また中国は日韓の離間を図るべく「処理水」問題を提起したが、尹政権が姿勢を変え、また北朝鮮との関係斡旋を求めて対中接近をしないので、使える材料があまりない。日本への観光もビザの面での日本側の譲歩が得られないまま、なし崩し的に解禁した。日本側の粘り勝ちだ。岸田政権は、「対話を通じた建設的で安定的な対中関係」の実現に向け、訪中する公明党の山口代表に親書を託し、秋の平和友好条約45周年前後の会談を目指すのだろう。
アメリカも中国もともに「関係を管理することの必要性」については合意している。お互いに「(戦略期)競争関係」にあり、「衝突せず」、「協力できるところでは協力する」という点も受け入れあっている。だからこそ、競争を衝突にしないように「対話」が求められるということなのであろう。だが、いくら対話を重ねても関係が改善するとか、競争を止めることではないということに留意が必要だ。対話はあくまでも関係を管理し、競争が衝突に至らないようにするためだ。また、習近平国家主席はじめ、中国高官が独自のアメリカ認識、世界認識を描いてそれに基づいて判断しないように、直接言葉を伝えることも必要となるのだろう。
習近平が琉球に言及することで、玉城デニー知事の中国訪問が注目され、アメリカ議会でもそれが話題に上る。これは、習近平の言葉の重さを示すというよりも、習近平のあらゆる言葉が政治、政策に結びつくこと考えられていることを示す。だからこそ、習近平が「琉球」に言及するだけで、中国国内では皆それを「忖度」して具体的な行動に移し、外国までもがそれに反応して身構える。他方、台湾でも、野党系メディアが玉城デニー知事を反東京、反ワシントン的存在として持ち上げ始めているなど注目されている。今後とも「沖縄/琉球」をめぐる議論が各地で続きそうだが、まずは、玉城知事自身の言動、沖縄内部の世論を大切にする姿勢が必要だろう。
記事が指摘するように、中国での席順は重要で西側とは異なる。左大臣が右大臣より上で、中国では皇帝の左手側が右手側よりも上位だ。これは習近平政権も同様で、序列2位の李強は習近平の左側に立つ。そのため、この記念写真では玉城沖縄知事の立ち位置の方が河野洋平会長よりも上位だと言える。国家版本館での習近平の琉球への言及以来、中国では急速に琉球/沖縄への関心が高まり、玉城知事の訪中でそれがさらに助長された。ただ、実際にはまず福建省と沖縄県との間の経済文化交流や、訪中ビザ取得問題解決などとして関係強化が始まるのであろう。他方、沖縄社会の対中認識の厳しさを踏まえれば、玉城知事の台湾訪問時の言動も焦点となろう。
米中関係は目下、「競争」関係を基調とし、「衝突はせず」「協力すべきは協力する」ということを基調とする。無論、中国は2049年に「中華民族の偉大なる復興の夢」を成し遂げ、アメリカに追いつくことを国是とする。アメリカも中国を既存の秩序への挑戦者と見做し、中国との競争に勝利するとしている。米中ともに軍事力を高め、技術開発競争も激化している。だが、抑止力を高めるには直接対話で互いに懸念を伝え、連絡メカニズムを強化、多元化することが必要になる。中国では、「台湾有事」や戦争が懸念されている。中国での理解は戦争の原因は米日などにあるとして入るが、「平和」のための対話や枠組み形成は国内的支持も得られよう。
中国でも「台湾有事」への懸念が高まっている。だが、先日発表された清華大学の安全保障関連の世論調査でもわかるように、中国の安全保障環境に脅威をもたらしているのはアメリカ、そして日本(あるいはロシア)だとする。そのアメリカが、自ら台湾海峡の緊張を高めておいて対話を求めてくるというのは何事かというのが中国の視線だろう。だが、別の可能性もある。第一に、中国は国防大臣レベルの会議を拒否しておいて、バイデンー習近平首脳会談を求め、その場でバイデン大統領の口から米中国防、外交大臣会合などを求めさせようとしている可能性。第二に、中国国内では解放軍内の対米反発が特に強く、その軍の雰囲気が反映されている可能性だ。
「台湾有事」を議論することは必要だが、現在は「台湾有事『前』」の状態にある。将来の「台湾有事」を念頭に置き準備を進めながら、同時に「台湾有事『前』」に何をなすべきか考えるべきだ。その意味でアメリカは、「台湾有事はいつか」という議論から、「台湾有事『前』」に何をなすべきかという方向へと次第に議論をシフトしてきている。抑止力の向上は直接対話とセットであり、また連絡メカニズムや事態のエスカレーションを防ぐ枠組みも必須だ。アメリカが軍事的抑止力を高めながら、直接対話を求めているのはそのためだ。台湾を含め、アメリカの同盟国サイドが現在何ができるのか、ともに協議しながら具体化すべき時であろう。
日本ではAIIBを一帯一路の動力であるかのような印象がある様だが、動力はむしろ輸出入銀行、国家開発銀行、そしてシルクロード基金などであり、これらに比べればAIIBはむしろ西側先進国も取り組んだ「(中国の中では比較的)国際的な」金融機関となっている。日米が深く関与するアジア開発銀行もAIIBの「国際化」に関与した。こうした政府系銀行の一帯一路関連投資は減少傾向にある。コロナの影響もあるが、2010年代末から大型投資を中国政府が控える様になったことも背景にある。中国には「ばら撒き」をする財政的な体力がなくなり、よほど戦略性、政治性がなければ、元本を回収できない案件への投資は一層困難になるだろう。
前回のサミットと比較すると、「台湾海峡の平和と安定」に関する部分が項目として独立し、また「indispensable/不可欠な」という言葉が加わった。言葉のレベルが引き上げられたのだ。中国側もそれに合わせて抗議のレベルを上げた。他方、ロシアと中国との扱いを区別し、中国には批判すべきは批判しつつも、関係や対話を拒否するつもりはないという姿勢を明確にした。ゼレンスキー大統領の参加で対ロシア批判の姿勢が強まったので、ロシアと中国との間の扱いのコントラストが際立ち、「中露一枚岩」論とは異なる認識になっていることが伺える。
この首脳宣言が必ずしも「中露一枚岩」論に基づかず、やや中露分離に傾斜していることが印象的。ロシアについては全面批判するが、中国については批判すべきは批判する是々非々であり、むしろ先進国に歩調を合わせる(engage)ように呼びかけ(call on)ている。その「非々」の中には台湾問題も含まれ、「台湾海峡の平和と安定」について、昨年のサミットよりも一段階上げて重視する姿勢を示し一項目として独立させ、「不可欠(indispensable)」という言葉を加え牽制の度合いを上げた。フランスのマクロン大統領の発言など、会議前には不安な点もあったが、中国に関してG7のコンセンサスが得られたことは大きい。
ウクライナをめぐるロシアへの断固たる抗議と、秩序への「挑戦者」である中国に対する、長期的な懸念表明とをどのように「色分け」するかが課題。アウトリーチ国を多く招くこともあり、先進国か「専制国家」かという二分法ではなく、ある程度中露を分けて表現することが求められる。その上で、地球規模の課題が重要だ。日本はカーボンニュートラルなどで対中協力を進めており、話題にしやすい。他方、欧州だけでなく、東アジアでも安全保障環境が大いに悪化していることをG7首脳に改めて共有してもらい、中国・北朝鮮・ロシアという脅威への一致したコミットメントも求めねばならない。議長国として難解な多元方程式を解くことが求められる。
ナショナルセキュリティに関する法律は多くの国にある。だが、中国の場合、問題が多い。第一に、何が問題なのかの基準が曖昧で、その都度判断されているように思えること。第二に、法廷での審理内容が公開されず、法の適用の方法、犯罪の定義、基準性が不明なこと。第三に、拘束された場合の異議申し立て、逮捕されてからの権利の主張が極めて制限されていることなどだ。どこに基地があるのか、何が国家機密なのか、何が犯罪とされるのか。それらが曖昧で、反論もできないなら、多くの外国人は中国への渡航を躊躇することになろう。中国としては中国人に行っている管理統制と同じだと言うのだろうが、対外交流上大きな代償を払うことになろう。
「戦狼外交」への決別を秦剛外交部長が2023年に3月に述べたばかりだということもあり、中国国内でもこのフランス大使の発言には「波紋」が広がっている。バルト三国、とりわけリトアニアについては台湾との関係が強化されてきた。そうしたことへの反発もあるのだろうが、行きすぎた発言は北京の中央政府の方針とのずれをうみ、中央からの反発を招く可能性もある。数年前に中国のスウェーデン大使が「戦狼」ぶりが激しすぎ、事実上(任期満了前に)更迭されたという事例もある。フランス大使の人事に動きがある可能性もあろう。
この記事は経済面に注目するが、それはアメリカや西側諸国が中国でカラー革命(体制転覆)を起こそうとしていると懸念する中国の「脅威認識」に基づく。そのため中国は総合的な安全保障観を策定し、環境から生活ま、そして経済を含む全てが安全保障に関わり、安全保障こそが優先されるとした。双循環にしても輸出管理法についても、中国経済の自立性を高めようとするものだ。他方、アメリカによるデカップリング政策採用前から、習近平政権は、GPSシステムでもインターネットの海底ケーブルでも、西側のインフラに依拠しない自立システムを構築している。中国が仕掛けたデカップリングはその世界観に基づき、実際に多方面で見られている。
大学の現場にいる者として、いくつか問題提起したい。第一に、留学支援と共に日本人学生への奨学金をまず整備してほしい。授業料が払えず退学する学生も少なくない。格差は拡大している。第二に、学生の海外留学経費支援不足とともに、企業の一括採用の文化が障碍ではないか。留学すると学年が遅れることへの恐怖は強い。第三に、本当に若者が「内向き」なのか検証が必要。学生へのインタビューや定性分析ができているだろうか。特に、基本的に「お金がない」ことが若者の行動を制約していないか。そして「学年進行」から外れることへの忌避感も原因ではないか。大学院生については、日本人院生が激減している以上、海外留学が減るのは必然だ。
インドがG20の議長国になったのを契機として、国際政治の場で独自の観点を出そうとしている。この記事では明言していないが、1月中旬にあった「125カ国の代表が参加したオンライン会合「グローバルサウスの声サミット」に中国は呼ばれていない(会議開催についての事前通告あり)。モディの動きは、一面で先進国を批判しつつ、他面で中国に対してグローバルサウスの声はインドが代弁するとけん制している。インドは、ウクライナ戦争に関しても、国境問題で対立する中国とは距離をとりつつ、ロシアとの関係強化を崩さない。インドが国際政治の「極」になりつつある今、世界は本格的な多極化の時代を迎える。単純な外交では対応できない。
林外相の来訪を中国側も無碍にできない。第一にG7広島会合を控えた現在、日本の「外交ポテンシャル」が高まっているからであり、第二に習近平政権三期目の秦剛外交部が「戦狼外交」を払拭しようとしているからだ。日本としても山積する課題がある中で、中国と「話さない」のではなく、きちんと問題意識や懸念を伝える「軍事と外交との両輪」を維持する方向に行っている。無論、そこでは言うべきことを言うことが中心になり、新たな協力などはなかなか出てこない。しかし、それでもいい、と言うことだ。他方、外相会談があれば尖閣周辺が騒がしくなる。これも中国側からの外交面で関係が良くなっても軍事安保面では変わらないというシグナルだ。
これまでも首脳会談で提起されていた防衛「ホットライン」には、予想外の事態への対処や事態のエスカレーションを防ぐことへの貢献が期待されている。東アジアでは各国が軍事費を増大させているが、抑止力を高めるために相互のコミュニケーションが必須だ。なぜなら抑止には「認識」が前提となるからだ。東アジアで「平和」が特に重要となっている現在、日中間で「ホットライン」形成のための交渉、意思疎通をして、結果を出した意味は大きい。しかし、これは「終わり」ではなく「始まり」だ。実際に不測の事態があった時、この「ホットライン」は本当に機能するのか。これからのメンテナンスと機能如何こそがその価値を決めることになろう。
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