次に、本発明の実施形態についてさらに具体的に説明する。
[プライマーおよびプライマーセット]
本発明のプライマーは、前述のように、標的核酸配列を増幅するためのプライマーであって、下記式(16)、(16b)、(17)、(17b)、(18)または(18b)で表される構造を少なくとも一つ含む標識核酸であることを特徴とする。また、これらの互変異性体若しくは立体異性体、またはそれらの塩も、本発明における標識核酸に含まれる。また、本発明のプライマーセットは、標的核酸配列を増幅するためのプライマーセットであって、一対のプライマーを含み、前記一対のプライマーの少なくとも一方のプライマーが、本発明のプライマーであることを特徴とする。以下、蛍光性を示す原子団Z11およびZ12を有する、下記各式で表される構造を、「標識構造」といい、前記標識構造を含む前記標識核酸、すなわち、本発明のプライマーを「標識プライマー」ともいう。
本発明において、「標的核酸配列」とは、増幅目的の核酸配列だけでなく、これに相補的な配列も含む。
式(16)、(16b)、(17)、(17b)、(18)および(18b)中、
Bは、天然核酸塩基(アデニン、グアニン、シトシン、チミンまたはウラシル)骨格または人工核酸塩基骨格を有する原子団であり、
Eは、
(i)デオキシリボース骨格、リボース骨格、もしくはそれらのいずれかから誘導される構造を有する原子団、または
(ii)ペプチド構造もしくはペプトイド構造を有する原子団であり、
Z11およびZ12は、それぞれ、蛍光性を示す原子団であり、同一でも異なっていてもよく、
L1、L2およびL3は、それぞれ、リンカー(架橋原子または原子団)であり、主鎖長(主鎖原子数)は任意であり、主鎖中に、C、N、O、S、PおよびSiを、それぞれ含んでいても含んでいなくても良く、主鎖中に、単結合、二重結合、三重結合、アミド結合、エステル結合、ジスルフィド結合、イミノ基、エーテル結合、チオエーテル結合およびチオエステル結合を、それぞれ含んでいても含んでいなくても良く、L1、L2およびL3は、互いに同一でも異なっていても良く、
Dは、CR、N、P、P=O、BもしくはSiRであり、Rは、水素原子、アルキル基または任意の置換基であり、
bは、単結合、二重結合もしくは三重結合であるか、
または、前記式(16)および(16b)中、L1およびL2は前記リンカーであり、L3、Dおよびbは存在せず、L1およびL2がBに直接結合していてもよく、
ただし、
式(16)、(17)および(18)中、Eは、前記(i)の原子団であり、リン酸架橋中の少なくとも一つのO原子がS原子で置換されていても良く、
式(16b)、(17b)および(18b)中、Eは、前記(ii)の原子団であり、
式(17)および(17b)中、各Bは、同一でも異なっていても良く、各Eは、同一でも異なっていても良い。
前記式(16)、(17)、(16b)、(17b)、(18)および(18b)中、L1、L2およびL3の主鎖長(主鎖原子数)は、それぞれ2以上の整数であることが好ましい。L1、L2およびL3の主鎖長(主鎖原子数)は、上限は特に制限されないが、例えば100以下であり、より好ましくは30以下であり、特に好ましくは10以下である。
Z11およびZ12は、エキシトン効果を示す原子団であることが好ましい。これにより、例えば、二重らせん構造となったときの蛍光の増大が大きく、二重らせん構造をいっそう効果的に検出することができる。ただし、本発明においては、Z11およびZ12が、エキシトン効果を示す原子団でなくても、また、蛍光性を示す原子団(色素)が1分子中に1個のみ導入されていても、二重らせん構造を効果的に検出することは可能である。
Z11およびZ12は、蛍光性を有する原子団であればよく、前記蛍光性を有する原子団は、特に制限されない。Z11およびZ12は、例えば、それぞれ独立に、チアゾールオレンジ、オキサゾールイエロー、シアニン、ヘミシアニン、その他のシアニン色素、メチルレッド、アゾ色素またはそれらの誘導体から誘導される基であることがより好ましい。また、その他の公知の色素から誘導される基も、適宜用いることができる。DNA等の核酸に結合することによって蛍光強度を変化させる蛍光色素は、数多く報告されている。典型的な例では、エチジウムブロミドがDNAの二重らせん構造にインターカレーションして強い蛍光を示すことが知られており、DNA検出に多用されている。また、ピレンカルボキシアミドやプロダンのような微視的極性に応じて蛍光強度を制御できる蛍光色素も知られている。また、前記チアゾールオレンジは、ベンゾチアゾール環とキノリン環をメチン基で連結した蛍光色素であり、通常微弱な蛍光を示すが、二重らせん構造をもつDNAにインターカレーションすることによって強い蛍光発光を与えるようになる。その他、例えば、フルオレセインやCy3等の色素も挙げられる。
Z11およびZ12は、それぞれ独立に、下記式(7)から(9)のいずれかで表される原子団であることがより好ましい。
式(7)〜(9)中、
X1およびX2は、SまたはOであり、
nは、0または正の整数であり、
R1〜R10、R13〜R21は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ニトロ基、またはアミノ基であり、
R11およびR12のうち、一方は、前記式(16)、(17)、(16b)、(17b)、(18)および(18b)中のL1もしくはL2に結合する連結基であり、他方は、水素原子または低級アルキル基であり、
R15は、式(7)、(8)または(9)中に複数存在する場合は、同一でも異なっていても良く、
R16は、式(7)、(8)または(9)中に複数存在する場合は、同一でも異なっていても良く、
Z11中のX1、X2およびR1〜R21と、Z12中のX1、X2およびR1〜R21とは、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記式(7)〜(9)中、R1〜R21において、前記低級アルキル基が、炭素数1〜6の直鎖または分枝アルキル基であり、前記低級アルコキシ基が、炭素数1〜6の直鎖または分枝アルコキシ基であることがさらに好ましい。
前記式(7)〜(9)中、R11およびR12において、前記連結基が、炭素数2以上のポリメチレンカルボニル基であり、カルボニル基部分で前記式(16)、(16b)、(17)、(17b)、(18)および(18b)中のL1もしくはL2に結合することがさらに好ましい。前記ポリメチレンカルボニル基の炭素数は、その上限は特に制限されないが、例えば100以下、好ましくは50以下、より好ましくは30以下、特に好ましくは10以下である。
Z11およびZ12は、前記式(7)〜(9)で表される場合は、例えば、それぞれ独立に、式(19)または(20)で示される基であることがより好ましい。
式(19)および(20)中、X1は−S−又は−O−を示す。R1からR10、R13およびR14はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ニトロ基、又はアミノ基を示す。R11及びR12の一方は、前記式(16)、(17)、(16b)、(17b)、(18)および(18b)中のL1およびL2に結合する連結基を示し、R11及びR12の他方は水素原子、または低級アルキル基を示す。
前記式(16)、(17)、(16b)、(17b)、(18)および(18b)中、Bは、天然核酸塩基骨格を有していても良いが、前述の通り、人工核酸塩基骨格を有していてもよい。例えば、Bが、Py(ピリミジン環)、Py der.、Pu(プリン環)、またはPu der.で表される構造であることが好ましい。ただし、
前記Pyとは、下記式(11)で表記される6員環のうち、1位にEと結合する共有結合手を有し、5位にリンカー部と結合する共有結合手を有する原子団であり、
前記Py der.とは、前記Pyの6員環の全原子の少なくとも一つがN、C、SまたはO原子で置換された原子団であり、前記N、C、SまたはO原子は、適宜、電荷、水素原子または置換基を有していても良く、
前記Puとは、下記式(12)で表記される縮合環のうち、9位にEと結合する共有結合手を有し、8位にリンカー部と結合する共有結合手を有する原子団であり、
前記Pu der.とは、前記Puの5員環の全原子の少なくとも一つがN、C、SまたはO原子で置換された原子団であり、前記N、C、SまたはO原子は、適宜、電荷、水素原子または置換基を有していても良い。
前記標識プライマーに含まれる前記標識構造の数は、特に限定されないが、例えば、1〜100個程度、好ましくは、1から20個程度である。また、前記標識プライマーにおいて、前記標識構造が含まれる部位も特に制限されない。
本発明の標識プライマー(標識核酸)およびそれを含む本発明のプライマーセット、ならびに、後述する核酸試料および標的核酸配列において、それぞれの核酸の基本骨格は、特に制限されず、例えば、オリゴヌクレオチド、修飾オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシド、修飾オリゴヌクレオシド、ポリヌクレオチド、修飾ポリヌクレオチド、ポリヌクレオシド、修飾ポリヌクレオシド、DNA、修飾DNA、RNA、修飾DNA、LNA、PNA(ペプチド核酸)、または、これらキメラ分子のいずれであっても良いし、その他の構造であっても良い。また、前記核酸の基本骨格は、天然のものであっても、人工的に合成されたものであってもよい。前記核酸は、本発明のプライマーやプライマーセットの場合、例えば、塩基対結合を形成し得るものであればよく、核酸試料や標的核酸配列の場合、例えば、相補鎖合成のための鋳型として機能すればよい。このため、前記核酸は、例えば、部分的に、または、全体が完全に人工的な構造からなるヌクレオチド誘導体であってもよい。前記核酸を構成する人工塩基としては、例えば、2-amino-6-(N,N-dimethylamino)purine pyridin-2-one、5-methylpyridin-2-one、2-amino-6-(2-thienyl)purine、pyrrole-2-carbaldehyde、9-Methylimidazo[(4,5)-b]pyridine、5-iodo-2-oxo(1H)pyridine 2-oxo-(1H)pyridine、2-amino-6-(2-thiazolyl)purine、7-(2-thienyl)-imidazo[4,5-b]pyridine等があげられるが、これには限定されない。本発明のプライマーとしては、基本骨格は、例えば、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、DNA、それらの修飾体であることが好ましい。本発明において、「ヌクレオチド」とは、例えば、デオキシヌクレオチドおよびリボヌクレオチドのいずれであってもよく、「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」は、例えば、デオキシヌクレオチドおよびリボヌクレオチドのいずれか一方から構成されてもよいし、両者を含んでもよい。本発明において、核酸の構成塩基数は、特に制限されない。核酸という用語は、一般に、ポリヌクレオチドという用語と同義である。オリゴヌクレオチドという用語は、一般に、ポリヌクレオチドの中でも、特に構成塩基数が少ないものを示す用語として用いる。一般には、例えば、2〜100塩基長、より一般的には2〜50塩基長程度のポリヌクレオチドを「オリゴヌクレオチド」と呼ぶが、これらの数値に限定されるものではない。ポリヌクレオチドという用語は、本発明において、例えば、ポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド、ならびに、ペプチド核酸、モルホリノ核酸、メチルフォスフォネート核酸、S-オリゴ核酸などの人工合成核酸をも含むものとする。
前記ペプチド核酸(PNA)は、一般に、オリゴヌクレオチドのデオキシリボース主鎖が、ペプチド主鎖で置換された構造を有する。前記ペプチド主鎖としては、例えば、アミド結合によって結合したN−(2−アミノエチル)グリシンの反復単位があげられる。PNAのペプチド主鎖に結合させる塩基としては、例えば、チミン、シトシン、アデニン、グアニン、イノシン、ウラシル、5−メチルシトシン、チオウラシルおよび2,6−ジアミノプリン等の天然に存在する塩基、ブロモチミン、アザアデニンおよびアザグアニン等の人工塩基があげられるが、これに限定されない。
LNAは、一般に、糖−リン酸骨格において、リボースの2'位の酸素原子と4'位の炭素原子との間がメチレン架橋で結合された、2つの環状構造を持つ核酸である。LNAを含むオリゴヌクレオチドがDNAとアニールすると、二本鎖のコンフォメーションが変化し、熱安定性が上昇する。LNAは、通常のオリゴヌクレオチドに比較して核酸に対する結合力が強いため、例えば、オリゴヌクレオチドの設計条件によって、より確実、強固なハイブリダイゼーションが可能となる。
本発明の標識プライマーは、前述の蛍光性原子団を有する標識構造を少なくとも一つ含むことによって、例えば、前記蛍光性原子団を含まない未標識核酸と比較して、ターゲットに対する特異性が高く、ハイブリダイゼーションが強くなる。すなわち、本発明の標識プライマーは、例えば、基本骨格が同じ塩基配列であり且つ同じ核酸断片長である未標識核酸と比べて、融解温度(Tm値)が向上する。このため、前記未標識核酸よりも、より強固にターゲットにハイブリダイズすることが可能となる。したがって、本発明の標識プライマーによれば、例えば、効率良く、特異性の高い検出が可能となる。
本発明の標識核酸は、このような特徴も有することから、例えば、従来のPNAやLAN等と同様に、Tm値を上げることで増幅の特異性を向上させるという応用技術になり得る。また、本発明の標識プライマーの基本骨格をPNAやLNAとすることによって、未標識のPNAやLANよりも、さらにTm値を高くできるため、より一層ハイブリダイゼーションの効率を向上できる。特に、後述するように、1塩基から数塩基の変異を識別する場合や、挿入や欠失を検出する場合、本発明の標識核酸(例えば、標識PNA、標識LNA等も含む)を用いることで、効率よく、特異性の高い検出が可能となる。本発明の標識核酸を、例えば、プライマーまたはプローブとして用いれば、ターゲット配列に対するフルマッチかミスマッチかによってTm値の差が大きく、ハイブリダイゼーション効率が異なる。このため、1塩基識別等の変異の検出がさらに容易になる。また、本発明における標識プライマーは、未標識核酸と比較してTm値が高くなるため、例えば、特定領域に強固に結合し、その領域をマスクし、増幅の鋳型にならないような、PCR clamp法、PNA PCR clamp法、LNA PCR clamp法、PNA-LNA PCR clamp法への応用も可能である。
本発明のプライマーおよび本発明のプライマーセットに含まれる各プライマーの塩基数は、特に制限されず、各プライマーが同じ塩基数であってもよいし、それぞれ異なる塩基数であってもよい。前記塩基数の具体例としては、プライマーであることから、好ましくは、10〜100bp程度のオリゴヌクレオチドであり、さらに好ましくは10〜50bp程度であり、特に好ましくは、10〜30bp程度である。
本発明のプライマーの配列は、特に制限されず、前記標識構造を有していればよい。また、本発明における前記一対のプライマーを構成する各プライマーの配列は、特に制限されず、少なくとも一方のプライマーが、前記標識構造を有していればよい。前記各プライマーの配列は、例えば、増幅目的の標的核酸配列の配列や、例えば、DNAやRNAにおける前記標的核酸配列の周辺の配列情報、また、本発明のプライマーおよびプライマーセットを適用する核酸増幅反応(核酸増幅法)の種類に応じて適宜設定することができる。各プライマーの配列は、従来公知の方法により設定でき、通常、DNAやRNA等の核酸における標的核酸配列が、増幅産物に含まれるように、ストリンジェントな条件下で、前記核酸にハイブリダイズするように設計される。「ストリンジェントな条件」は、例えば、本発明のプライマー、または、本発明のプライマーセットにおける各プライマーとそれらの相補鎖との二重鎖の融解温度Tm(℃)、および、ハイブリダイゼーション溶液の塩濃度等に依存して決定できる。具体例として、J. Sambrook, E. F. Frisch, T. Maniatis; Molecular Cloning 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory (1989)等を参照できる。例えば、使用するプライマーの融解温度よりわずかに低い温度下でハイブリダイゼーションを行なうと、標的核酸配列を有する核酸にプライマーを特異的にハイブリダイズできる。このようなプライマーは、市販のプライマー構築ソフト、例えば、Primer3(Whitehead Institute for Biomedical Research社製)等を用いて設計できる。
本発明の標識プライマーは、蛍光性を有する原子団(色素)を1分子当たり1個のみ有していても良いが、2個以上有することが好ましい。これにより、例えば、前記蛍光性を有する原子団(色素)がエキシトン効果を有することになる。エキシトン効果によれば、例えば、一本鎖状態での蛍光強度を抑え、二重らせん構造を一層効果的に検出可能である。なお、エキシトン効果(exciton coupling)とは、例えば、複数の色素が並行に集合し、H会合体(H-aggregate)を形成することにより、ほとんど蛍光発光を示さなくなる効果である。この効果は、色素の励起状態が、Davydov splittingにより2つのエネルギーレベルに分裂し、上位エネルギーレベルへの励起→下位エネルギーレベルへの内部変換(internal conversion)→発光が熱的に禁制、という理由で生じると考えられる。ただし、これらの説明は、本発明を何ら制限しない。エキシトン効果が起こりうることは、H会合体を形成した色素の吸収バンドが単一の色素の吸収バンドより短い波長に現れることで確認できる。このような効果を示す色素としては、例えば、前述したチアゾールオレンジとその誘導体、オキサゾールイエローとその誘導体、シアニンとその誘導体、ヘミシアニンとその誘導体、メチルレッドとその誘導体、ほか一般的にシアニン色素、アゾ色素と呼ばれる色素群が挙げられる。
これらの色素は、二重らせんを形成したDNA-DNA二本鎖やDNA-RNA二本鎖、もしくはホスホチオエート核酸やPNA(ペプチド核酸)やLNA(BNA)のような人工核酸とDNAもしくはRNAによって形成される二本鎖にインターカレーションによって結合しやすい。これらのような色素複数個をプライマーに導入しておくと、通常の一本鎖状態(つまりハイブリダイゼーション前のプライマーだけの状態)ではエキシトン効果によって強く消光されるが、標的のDNAもしくはRNAとハイブリダイゼーションすると会合体が解除されそれぞれの色素がばらばらに二本鎖にインターカレーションする。このとき色素間に電子的相互作用は無いのでエキシトン効果は生じず、強い蛍光発光を示す。このときの色素の吸収バンドは、単一の色素の吸収バンドと同じであり、色素間でエキシトン効果が生じていないことを示している。また、色素が二本鎖にインターカレーションしたときに、色素が本来有している構造上のねじれが解消されるので、蛍光発光をさらに強くしている。
従って、例えば、複数個の色素によってエキシトン効果が現れるようにプライマーを設計することにより、目的配列へのハイブリダイゼーションによる極めて明確な蛍光のオンとオフが可能になる。なお、プライマー配列に1分子の色素のみを結合するだけでは、エキシトン効果は現れないが、例えば、二本鎖形成による色素のインターカレーションが色素の構造を平坦化する等の理由により、一本鎖のときより強い蛍光を発揮することも可能である。また、2分子以上の色素が結合されていても、それぞれの色素が電子的相関を示さない距離にまで離れている場合は、エキシトン効果は現れない。すなわち、エキシトン効果が発揮されるためには、2分子以上の色素が十分近接できる距離に配置されるよう本発明の化合物または核酸の分子上に結合されなければならない。すなわち、本発明における標識プライマーは、前記プライマー内のひとつのヌクレオチドに2個以上の色素を結合するか、連続する2個以上のヌクレオチドに1つずつの色素を結合することが好ましい。
本発明のプライマーおよびプライマーセットは、例えば、核酸増幅の効率を向上可能なことから、さらに、アウタープライマーを含んでもよい。アウタープライマーとしては、例えば、鋳型核酸上において標的核酸配列の外側に位置する部分に相補鎖合成起点を提供しうるプライマーがあげられる。本発明のプライマーセットがアウタープライマーを含む場合、前記アウタープライマーが、前述のプライマーセットの標識プライマーに加えて、または、代えて、標識核酸であってもよい。
本発明のプライマーおよびプライマーセットは、後述するように、核酸増幅方法に適用することから、さらに、核酸増幅に使用できる試薬を含んでもよい。前記試薬としては、例えば、DNAポリメラーゼ等のポリメラーゼ;dNTP mix(dATP、dTTP、dCTPおよびdGTP)等の基質、トリス塩酸バッファー、トライシンバッファー、リン酸ナトリウムバッファー、リン酸カリウムバッファー等の緩衝液;塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム等の触媒;ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide)やベタイン(N,N,N-trimethylglycine)等の添加物;国際公開第99/54455号パンフレットに記載の酸性物質、陽イオン錯体;酵素安定剤等を含んでもよい。前記酵素安定剤としては、制限されないが、例えば、グリセロール、ウシ血清アルブミン、糖類等があげられ、中でも、糖類が好ましく、より好ましくは単糖またはオリゴ糖、より好ましくは、トレハロース、ソルビトールもしくはマンニトール、またはこれらの2種以上の混合物である。また、本発明のプライマーおよびプライマーセットは、例えば、核酸増幅率を向上できることから、さらに、融解温度調整剤を含んでもよい。前記融解温度調整剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ベタイン、ホルムアミドもしくはグリセロール、またはこれらの任意の組合せ等があげられ、好ましくは、DMSOである。また、核酸増幅方法に供する核酸試料が後述するようにRNAを含み、これを鋳型とする場合は、さらに、逆転写酵素を含むことが好ましい。なお、本発明のプライマーおよびプライマーセットにおいて、これらの試薬の割合等は、制限されず、当業者であれば適宜決定できる。
本発明のプライマーおよびプライマーセットは、従来公知の種々の核酸増幅方法に適用でき、その反応形式は、何ら制限されない。前記核酸増幅方法としては、例えば、等温増幅法や、ポリメラーゼチェーンリアクション(PCR)法等があげられる。以下、等温増幅法に使用する本発明のプライマーおよびプライマーセットを、それぞれ「等温増幅用プライマー」、「等温増幅用プライマーセット」、PCR法に使用する本発明のプライマーおよびプライマーセットを「PCR用プライマー」、「PCR用プライマーセット」という。
等温増幅用プライマーおよびプライマーセット
前記等温増幅法とは、一般に、等温で核酸増幅反応を行う方法である。このような方法としては、例えば、特公平7−114718号公報等に開示される鎖置換型増幅(SDA;strand displacement amplification)法;米国特許第5824517号明細書、国際公開第99/09211号パンフレットまたは国際公開第95/25180号パンフレット等に開示されている改良SDA法;日本国特許第2650159号公報等に開示されている核酸配列増幅(NASBA;nucleic acid sequence based amplification)法;国際公開第00/28082号パンフレット等に開示されているランプ法(LAMP;Loop-Mediated Isothermal Amplification)法;国際公開第02/16639号パンフレット等に開示されているICAN法(Isothermal and Chimeric primer-initiated Amplification of Nucleic acids);自立複製(3SR;self-sustainedsequence replication)法;TMA(transcription-mediated amplification)法;日本国特許第2710159号公報に開示されているQベータレプリカーゼ法;日本国特許第389726号公報、特許第3942627号公報およびNATURE METHODS(Vol.4,No.3,March 2007,pp.257-262)、Mitani Y., Lezhava A., Kawai Y., Kikuchi T., Oguchi-Katayama A., Kogo Y., Itoh M., Miyagi T. et al. 2007. “Rapid SNP diagnostics using asymmetric isothermal amplification and a new mismatch-suppression technology.” Nat. Methods 4(3): 257-262.等に開示されている方法(以下、「SMAP(Smart Amplification Process)法」という)、Invader法、RCA(rolling cycle amplification)法等があげられる。
前記等温増幅法の場合、鎖置換(strand displacement)能(鎖置換活性)を有するポリメラーゼを使用することが好ましい。このことから、本発明の等温増幅用プライマーおよびプライマーセットは、鎖置換能を有するポリメラーゼを含むことが好ましい。前記鎖置換能を有するポリメラーゼは、例えば、常温性、中温性および耐熱性のいずれであってもよい。また、前記鎖置換能を有するポリメラーゼは、例えば、天然由来酵素でもよし、遺伝子工学等により調製した酵素でもよく、また、人工的に変異を加えた変異体酵素であってもよい。このようなポリメラーゼとしては、例えば、DNAポリメラーゼが好ましく、より好ましくは、実質的に5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を有しないDNAポリメラーゼである。鎖置換能を有するDNAポリメラーゼの具体例としては、例えば、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus;以下、「B.st」という)、バチルス・カルドテナックス(Bacillus caldotenax、以下、「B.ca」という)等の好熱性バチルス属細菌由来DNAポリメラーゼや、それらの5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を欠失した変異体、大腸菌(E.coli)由来DNAポリメラーゼIや、そのクレノウフラグメント等があげられる。この他にも、例えば、Vent DNAポリメラーゼ、Vent (Exo-) DNAポリメラーゼ、DeepVent DNAポリメラーゼ、DeepVent (Exo-) DNAポリメラーゼ、Φ29ファージDNAポリメラーゼ、MS−2ファージDNAポリメラーゼ、Z-Taq DNAポリメラーゼ、Pfu DNAポリメラーゼ、Pfu turbo DNAポリメラーゼ、KOD DNAポリメラーゼ、9°Nm DNAポリメラーゼ、Therminater DNAポリメラーゼ、Aac DNA ポリメラーゼ、Gca DNA ポリメラーゼ、Bsm DNA ポリメラーゼ等があげられる。
前記鎖置換能を有するポリメラーゼとしては、さらに、逆転写活性を併せ持つDNAポリメラーゼが好ましい。前記DNAポリメラーゼとしては、例えば、BcaBEST DNAポリメラーゼ、Bca(exo-)DNAポリメラーゼ等が使用できる。このようなDNAポリメラーゼによれば、例えば、全RNAもしくはmRNAからの逆転写反応とcDNAを鋳型にしたDNAポリメラーゼ反応を1種類のポリメラーゼで行なうことができる。また、DNAポリメラーゼと、MMLV逆転写酵素等の前記逆転写酵素とを組み合わせて使用することもできる。
本発明の等温増幅用プライマーおよびプライマーセットは、例えば、特異性を向上できることから、さらに、ミスマッチ結合タンパク質を含むことが好ましい。前記ミスマッチ結合タンパク質(「ミスマッチ認識タンパク質」ともいう)としては、例えば、二重鎖核酸におけるミスマッチを認識し、そのミスマッチの部位に結合することが可能なタンパク質であればよく、例えば、当業者に公知のタンパク質が使用できる。また、前記ミスマッチ結合タンパク質は、例えば、二重鎖核酸におけるミスマッチを認識しうる限り、野生型タンパク質のアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質(変異体)であってもよい。前記ミスマッチ結合タンパク質としては、例えば、MutSタンパク質(例えば、特表平9−504699号公報)、MutMタンパク質(例えば、特開2000−300265号公報)、GFP(Green Fluorescence Protein)に結合したMutSタンパク質(国際公開第99/06591号パンフレット)、Taq MutS、これらの類似体等、多くのものが知られている(Radman,M.et al.,Annu.Rev.Genet.20:523-538(1986); Radaman,M.etal.,Sci.Amer.,August 1988,pp40-46; Modrich,P.,J.Biol.Chem.264:6597-6600(1989); Lahue,R.S. et al.,Science 245:160-164(1988); Jiricny,J.et al,.Nucl.Acids Res.16:7843-7853(1988); Su,S.S.et al.,J.Biol.Chem.263;6829-6835(1988); Lahue,R.S.et al.,Mutat.Res.198:37-43(1988); Dohet,C.et al.,Mol.Gen.Gent.206:181-184(1987); Jones,M.et al.,Gentics 115:605-610(1987); Salmonella typhimuriumのMutS(Lu,A.L.,Genetics 118:593-600(1988); HaberL.T. et al.,J.Bacteriol.170:197-202(1988); Pang,P.P.et al.,J.Bacteriol.163:1007-1015(1985));およびPriebe S.D.et al.,J.Bacterilo.170:190-196(1988)等)。本発明においては、例えば、MutS、MSH2、MSH6、MutH、MutL、酵母由来ミスマッチ結合タンパク質が好ましい。
また、前記ミスマッチ結合タンパク質は、例えば、ミスマッチを含まない二重鎖核酸への結合を防ぐため、活性化剤により活性化されていることが好ましい。前記活性剤は、特に限定されないが、例えば、ATP(アデノシン5’−三リン酸)、ADP(アデノシン5’−二リン酸)、ATP−γ−S(アデノシン5’−O−(3−チオ三リン酸))、AMP−PNP(アデノシン5’−[β,γ−イミド]三リン酸)等があげられ、この他に、ミスマッチ結合タンパク質に結合できるヌクレオチドの一つであってもよい。活性化は、例えば、前記ミスマッチ結合タンパク質と前記活性剤とを、室温で数秒間から数分間インキュベートすることにより行うことができる。
本発明の等温増幅用プライマーおよびプライマーセットとしては、例えば、前記ミスマッチ結合タンパク質の一本鎖核酸への結合を防ぐため、さらに、一本鎖結合タンパク質(SSB)を含むことが好ましい。前記SSBとしては、特に制限されず、従来公知のタンパク質が使用できる。SSBの具体例としては、例えば、Escherichia coli、ショウジョウバエ、およびアフリカツメガエルに由来する一本鎖結合タンパク質、T4バクテリオファージ由来の遺伝子32タンパク質、この他に、他の種に由来するこれらのタンパク質があげられる。この場合、前記ミスマッチ結合タンパク質としては、MutS、MutH、MutL、HexA、MSH1〜6、Rep3、RNaseA、ウラシル−DNAグリコシダーゼ、T4エンドヌクレアーゼVII、レゾルバーゼなどがあげられ、好ましくは、MutS、MSH2、MSH6、または、これらの2種以上の混合物であり、より好ましくは、MutSである。
本発明の等温増幅用プライマーセットとしては、例えば、前記一対のプライマーが、一方のプライマーの形態と他方のプライマーの形態とが異なる非対称型のプライマーセット(以下、「非対称型プライマーセット」という)や、前記一対のプライマーが、一方の形態と他方のプライマーの形態とが同じである対称型のプライマーセット(以下、「対称型プライマーセット」という)があげられる。前記非対称型プライマーセットは、例えば、前記SMAP法に適しており、前記対称型プライマーセットは、LAMP法に適している。なお、これらの非対称型プライマーセットおよび対称型プライマーセットについては、後述する。
PCR用プライマーおよびプライマーセット
PCR法は、従来広く知られた核酸増幅方法であり、等温増幅方法に対して、反応温度を変化させることにより、例えば、二重鎖核酸の解離、解離した一重鎖へのプライマーのアニーリング、プライマーからの核酸合成を行う方法である。PCR法に使用するポリメラーゼとしては、例えば、Taq DNAポリメラーゼ等、従来公知のポリメラーゼが使用できる。
なお、各種核酸増幅方法に対する本発明のプライマーおよびプライマーセットの具体例については、本発明の核酸増幅方法とあわせて後述する。
また、本発明における標識プライマーの効果としては、従来の一本鎖状態消光型蛍光プライマー(モレキュラービーコンなど)と比較して、例えば、以下の利点を挙げることができる。ただし、これらも例示であって、本発明を何ら制限しない。
(1)色素を1種類しか用いない場合、合成が容易である。
(2)本発明のDNAプライマーの末端がフリーである場合、プライマーとして使いやすい。
(3)ヘアピン構造など特殊な高次構造を形成する必要がないので、ステム配列など配列認識に関与しない配列を必要としない(無駄な配列が無く、配列の拘束もない)。
(4)プライマーの複数の箇所(望む場所)に蛍光色素を導入できる。
(5)色素構造を1分子中に2つ以上含む場合、色素間の位置関係が拘束されているので、S/N比(ハイブリダイゼーション前後の蛍光強度比)が大きい。
[標識プライマーの材料]
本発明における標識プライマー(前記標識核酸)は、例えば、以下に示す化合物、核酸および標識物質から調製できる。これらの化合物や核酸は、例えば、本発明における前記標識プライマーとして、また、その合成原料もしくは合成中間体として使用できる。本発明における化合物、核酸および標識物質について、より詳しくは、例えば以下の通りである。
前記化合物は、モノヌクレオシドまたはモノヌクレオチドから誘導される構造を有する化合物であって、前記構造が下記式(1)、(1b)または(1c)で表される化合物、その互変異性体若しくは立体異性体、またはそれらの塩である。
前記式(1)、(1b)および(1c)中、
Bは、天然核酸塩基(アデニン、グアニン、シトシン、チミンまたはウラシル)骨格または人工核酸塩基骨格を有する原子団であり、
Eは、
(i)デオキシリボース骨格、リボース骨格、もしくはそれらのいずれかから誘導される構造を有する原子団、または
(ii)ペプチド構造もしくはペプトイド構造を有する原子団であり、
Z11およびZ12は、それぞれ、水素原子、保護基、または蛍光性を示す原子団であり、同一でも異なっていてもよく、
Qは、
Eが前記(i)の原子団である場合はOであり、
Eが前記(ii)の原子団である場合はNHであり、
Xは、
Eが前記(i)の原子団である場合は、水素原子、酸で脱保護することが可能な水酸基の保護基、リン酸基(モノホスフェート基)、二リン酸基(ジホスフェート基)、または三リン酸基(トリホスフェート基)であり、
Eが前記(ii)の原子団である場合は、水素原子またはアミノ基の保護基であり、
Yは、
Eが前記(i)の原子団である場合は、水素原子、水酸基の保護基、またはホスホロアミダイト基であり、
Eが前記(ii)の原子団である場合は、水素原子または保護基であり、
L1、L2およびL3は、それぞれ、リンカー(架橋原子または原子団)であり、主鎖長(主鎖原子数)は任意であり、主鎖中に、C、N、O、S、PおよびSiを、それぞれ含んでいても含んでいなくても良く、主鎖中に、単結合、二重結合、三重結合、アミド結合、エステル結合、ジスルフィド結合、イミノ基、エーテル結合、チオエーテル結合およびチオエステル結合を、それぞれ含んでいても含んでいなくても良く、L1、L2およびL3は、互いに同一でも異なっていても良く、
Dは、CR、N、P、P=O、BもしくはSiRであり、Rは、水素原子、アルキル基または任意の置換基であり、
bは、単結合、二重結合もしくは三重結合であるか、
または、前記式(1)中、L1およびL2は前記リンカーであり、L3、Dおよびbは存在せず、L1およびL2がBに直接結合していてもよく、
前記式(1b)中、Tは、
Eが前記(i)の原子団である場合は、リン酸架橋(PO4 −)であり、1以上の酸素原子(O)が硫黄原子(S)で置換されていても良く、
Eが前記(ii)の原子団である場合は、NHである。
前記式(1)、(1b)および(1c)中、Eは、例えば、DNA、修飾DNA、RNA、修飾RNA、LNA、またはPNA(ペプチド核酸)の主鎖構造を有する原子団であることが好ましい。
また、前記式(1)および(1c)中、
で表される原子団が、下記式(2)〜(4)のいずれかで表される原子団であり、
前記式(1b)中、
で表される原子団が、下記式(2b)〜(4b)のいずれかで表される原子団であることが好ましい。
前記式(2)〜(4)および(2b)〜(4b)中、
Aは、水素原子、水酸基、アルキル基、または電子吸引基であり、
MおよびJは、それぞれ、CH2、NH、OまたはSであり、同一でも異なっていても良く、
B、XおよびYは、それぞれ、前記式(1)、(1b)または(1c)と同じであり、
前記式(2)、(3)、(2b)および(3b)において、リン酸架橋中のO原子は、1つ以上がS原子で置換されていてもよい。
Eは、例えば、DNA、修飾DNA、RNA、または修飾DNAの主鎖構造を有する原子団であることが、合成の容易さ等の観点から好ましいが、LNA、またはPNA(ペプチド核酸)の主鎖構造を有する原子団であっても良い。
前記式(2)および(2b)中、Aにおいて、例えば、前記アルキル基がメトキシ基であり、前記電子吸引基がハロゲンであることが好ましい。
前記式(1)、(1b)または(1c)中、L1、L2およびL3の主鎖長(主鎖原子数)が、それぞれ2以上の整数であることが好ましい。L1、L2およびL3の主鎖長(主鎖原子数)は、前述と同様に、上限は特に制限されず、例えば100以下である。
前記化合物は、例えば、下記式(5)、(6)、(6b)または(6c)で表される化合物、その互変異性体若しくは立体異性体、またはそれらの塩であることが好ましい。
前記式(5)、(6)、(6b)および(6c)中、l、mおよびnは任意であり、同一でも異なっていても良く、主鎖中に、C、N、O、S、PおよびSiを、それぞれ含んでいても含んでいなくても良く、主鎖中に、単結合、二重結合、三重結合、アミド結合、エステル結合、ジスルフィド結合、イミノ基、エーテル結合、チオエーテル結合およびチオエステル結合を、それぞれ含んでいても含んでいなくても良く、B、E、Z11、Z12 、b、X、YおよびTは、前記式(1)および(1b)と同じである。前記式(5)、(6)、(6b)および(6c)中、l、mおよびnが、それぞれ、2以上の整数であることが好ましい。l、mおよびnの上限は特に制限されないが、例えば100以下であり、より好ましくは30以下であり、特に好ましくは10以下である。
前記化合物において、Z11およびZ12が、エキシトン効果を示す原子団であることが好ましい。これにより、例えば、二重らせん構造となったときの蛍光の増大が大きく、二重らせん構造をいっそう効果的に検出することができる。ただし、前記化合物においては、Z11およびZ12が、エキシトン効果を示す原子団でなくても、また、蛍光性を示す原子団(色素)が1分子中に1個のみ導入されていても、二重らせん構造を効果的に検出することは可能である。
Z11およびZ12は、例えば、前述の通り、蛍光性を有する原子団であることが好ましい。前記蛍光性を有する原子団は、特に制限されない。Z11およびZ12は、例えば、それぞれ独立に、チアゾールオレンジ、オキサゾールイエロー、シアニン、ヘミシアニン、その他のシアニン色素、メチルレッド、アゾ色素またはそれらの誘導体から誘導される基であることがより好ましい。また、その他の公知の色素から誘導される基も、適宜用いることができる。DNA等の核酸に結合することによって蛍光強度を変化させる蛍光色素は、数多く報告されている。典型的な例では、エチジウムブロミドがDNAの二重らせん構造にインターカレーションして強い蛍光を示すことが知られており、DNA検出に多用されている。また、ピレンカルボキシアミドやプロダンのような微視的極性に応じて蛍光強度を制御できる蛍光色素も知られている。また、前記チアゾールオレンジは、ベンゾチアゾール環とキノリン環をメチン基で連結した蛍光色素であり、通常微弱な蛍光を示すが、二重らせん構造をもつDNAにインターカレーションすることによって強い蛍光発光を与えるようになる。その他、例えば、フルオレセインやCy3等の色素も挙げられる。
また、Z11およびZ12は、例えば、それぞれ独立に、下記式(7)から(9)のいずれかで表される原子団であることがより好ましい。
式(7)〜(9)中、
X1は、SまたはOであり、
nは、0または正の整数であり、
R1〜R10、R13〜R21は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ニトロ基、またはアミノ基であり、
R11およびR12のうち、一方は、前記式(1)、(1b)または(1c)中のL1もしくはL2、前記式(5)、(6)、(6b)または(6c)中のNHに結合する連結基であり、他方は、水素原子または低級アルキル基であり、
R15は、式(7)、(8)または(9)中に複数存在する場合は、同一でも異なっていても良く、
R16は、式(7)、(8)または(9)中に複数存在する場合は、同一でも異なっていても良く、
Z11中のX1およびR1〜R21と、Z12中のX1およびR1〜R21とは、互いに同一でも異なっていてもよい。
式(7)〜(9)中、R1〜R21において、前記低級アルキル基が、炭素数1〜6の直鎖または分枝アルキル基であり、前記低級アルコキシ基が、炭素数1〜6の直鎖または分枝アルコキシ基であることがさらに好ましい。
式(7)〜(9)中、R11およびR12において、前記連結基が、炭素数2以上のポリメチレンカルボニル基であり、カルボニル基部分で前記式(1)、(1b)または(1c)中のL1もしくはL2、前記式(5)、(6)、(6b)または(6c)中のNHに結合することがさらに好ましい。前記ポリメチレンカルボニル基の炭素数は、その上限は特に制限されないが、例えば100以下である。
Z11およびZ12は、前記式(7)〜(9)で表される場合は、例えば、それぞれ独立に、式(19)または(20)で示される基であることがより好ましい。
式(19)および(20)中、X1は−S−又は−O−を示す。R1からR10、R13およびR14はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ニトロ基、又はアミノ基を示す。R11及びR12の一方は、前記式(1)、(1b)または(1c)中のL 1 もしくはL 2 、前記式(5)、(6)、(6b)または(6c)中のNHに結合する連結基を示し、R11及びR12の他方は水素原子、または低級アルキル基を示す。
前記化合物は、例えば、下記式(10)で表される構造を有する化合物、その互変異性体若しくは立体異性体、またはそれらの塩であっても良い。
式(10)中、
E、Z11、Z12、Q、XおよびYは、前記式(1)と同じである。
前記式(1)、(1b)および(1c)中、Bは、天然核酸塩基骨格を有していても良いが、前述の通り、人工核酸塩基骨格を有していてもよい。
例えば、Bが、Py、Py der.、Pu、またはPu der.で表される構造であることが好ましい。ただし、
前記Pyとは、下記式(11)で表記される6員環のうち、1位にEと結合する共有結合手を有し、5位にリンカー部と結合する共有結合手を有する原子団であり、
前記Py der.とは、前記Pyの6員環の全原子の少なくとも一つがN、C、SまたはO原子で置換された原子団であり、前記N、C、SまたはO原子は、適宜、電荷、水素原子または置換基を有していても良く、
前記Puとは、下記式(12)で表記される縮合環のうち、9位にEと結合する共有結合手を有し、8位にリンカー部と結合する共有結合手を有する原子団であり、
前記Pu der.とは、前記Puの5員環の全原子の少なくとも一つがN、C、SまたはO原子で置換された原子団であり、前記N、C、SまたはO原子は、適宜、電荷、水素原子または置換基を有していても良い。
前記化合物は、例えば、下記式(13)または(14)で表される化合物、その互変異性体若しくは立体異性体、またはそれらの塩であっても良い。
前記式(13)および(14)中、E、Z11、Z12、Q、XおよびYは、前記式(1)と同じであり、Py、Py der.、Pu、およびPu der.は、前述の定義のとおりである。
前記化合物がホスホロアミダイト基を有する場合、前記ホスホロアミダイト基は、例えば、下記式(15)で表されることが好ましい。
−P(OR22)N(R23)(R24) (15)
式(15)中、R22はリン酸基の保護基であり、R23およびR24はアルキル基、またはアリール基である。
前記式(15)において、R15がシアノエチル基であり、R16およびR17において、前記アルキル基がイソプロピル基であり、前記アリール基がフェニル基であることがより好ましい。
前記化合物において、例えば、前記式(1)で表される化合物が、下記式(21)で表される化合物であっても良い。
式(21)中、Aは水素原子または水酸基を示す。好ましくは、Aは水素原子である。Bはアデニン、グアニン、シトシン、チミンまたはウラシルの残基を示す。例えば、アデニン及びグアニンは、8位で二重結合と結合し、シトシン、チミン又はウラシルは5位で二重結合と結合している。Z11及びZ12は各々独立に、蛍光性を示す原子団、水素原子、またはアミノ基の保護基を示し、チアゾールオレンジ誘導体、又はオキサゾールイエロー誘導体の残基が特に好ましい。Xは、水素原子、酸で脱保護できる水酸基の保護基、あるいはモノホスフェート基、ジホスフェート基又はトリホスフェート基を示す。Yは水素原子、水酸基の保護基、又はホスホロアミダイト基である。
前記式(21)で表される化合物は、例えば、下記式(22)で表されることがより好ましい。
(22)
式(22)中、Aは水素原子または水酸基を示す。Z11及びZ12は各々独立に、蛍光性を示す原子団、水素原子、又はアミノ基の保護基を示し、チアゾールオレンジ誘導体、又はオキサゾールイエロー誘導体の残基が特に好ましい。Xは、水素原子、酸で脱保護できる水酸基の保護基、あるいはモノホスフェート基、ジホスフェート基又はトリホスフェート基を示す。Yは水素原子、水酸基の保護基、又はホスホロアミダイト基である。
前記式(21)または(22)の化合物において、Z11およびZ12が水素原子、又はアミノ基の保護基である場合は、一分子中に2つのアミノ基(又は保護されたアミノ基)を有することから、これらのアミノ基を利用して一分子中に2分子の標識分子を導入することができる。例えば、蛍光物質、化学発光物質などを結合して、標識核酸を製造することにより、核酸検出の感度を向上させることが可能である。さらにZ11およびZ12が蛍光性を示す原子団である場合のように、特定の蛍光物質で標識することにより、核酸の検出を簡便に行うことも可能である。
また、前記式(21)または(22)の化合物において、Z11およびZ12が蛍光性を示す原子団である化合物は、2分子の蛍光性分子、例えば、チアゾールオレンジ誘導体又はオキサゾールイエロー誘導体で修飾したヌクレオシドまたはヌクレオチドである。このような化合物を含む一本鎖核酸からなるプライマーは、エキシトンカップリングによる消光が引き起こされることにより、プライマーのみの状態では蛍光は極めて弱いが、DNA又はRNAとハイブリダイズすることにより強い蛍光発光を示す。すなわち、例えば、チアゾールオレンジ誘導体又はオキサゾールイエロー誘導体の蛍光は、そのひずんだ構造により強く抑制されているが、チアゾールオレンジ誘導体又はオキサゾールイエロー誘導体は、DNAに結合することにより、構造のひずみが解消・固定化され、強い蛍光を示すようになる。蛍光は、例えば、488nm、514nmのArレーザーを使用して励起することにより検出できるが、これに限定されない。
前記式(1)、(1b)または(1c)で表される化合物は、例えば、本発明の標識プライマー(標識核酸)の合成に供することができる。すなわち、前記化合物は、核酸の標識物質(核酸ラベル化試薬)として用いることができる。例えば、前記式(1)、(1b)または(1c)で表される化合物をヌクレオチド基質として用いて、一本核酸を鋳型とした核酸合成反応を行うことによって、あるいは、前記式(1)、(1b)または(1c)で表される化合物を用いて一本鎖核酸を化学合成(例えば、核酸自動合成機を用いたホスホロアミダイト法などの化学合成法)することによって、一分子中に前記化合物を少なくとも1分子以上含む核酸を製造することができる。このとき、前記原子団Z11およびZ12は、それぞれ、蛍光性を示す原子団であっても良いが、水素原子または保護基であっても良い。前記原子団Z11およびZ12が、例えば、蛍光性を示す原子団であれば、本発明の標識プライマーを製造でき、水素原子または保護基であれば、さらに、これらの原子や基を、蛍光性を示す原子団で置換することにより、本発明の標識プライマーを製造できる。
本発明の標識プライマーに含まれる前記式(1)、(1b)または(1c)の化合物の数は特に限定されないが、例えば、1〜100個程度、好ましくは1から20個程度である。
前記化合物または核酸(本発明の標識プライマー)は、例えば、下記式(23)〜(25)のいずれかで表される構造を有していても良い。これにより、例えば、色素を導入した蛍光プライマーとして好ましく用いることができる。ただし、蛍光プライマーとして好適な化合物は、これらに限定されない。
式(23)において、塩基Bには、2個の色素(Fluo)が連結している。塩基Bがリンカーと結合する部位は特に制限されないが、例えば、ピリミジン4位、5位もしくは6位、プリン2位、3位、6位、7位もしくは8位のうち1ヶ所でリンカーに連結している。リンカーは、1ヶ所の塩基接続部位を有し、途中で2つ以上に分岐し、末端で色素と連結する。塩基もしくは色素との連結方法は、二重結合や三重結合に対する金属触媒反応や環形成縮合反応やマイケル付加反応などにより形成される結合のほかにも、アミド結合、エステル結合、ジスルフィド結合、イミン形成反応などにより形成される結合を用いることができる。リンカーについては、長さ(l, m, n)は自由であり、単結合、二重結合、三重結合、アミド結合、エステル結合、ジスルフィド結合、アミン、イミン、エーテル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合などを含んでもよい。また、2量化によって引き起こされるエキシトン効果を妨げないことが好ましい。分岐部(X)は、炭素、ケイ素、窒素、リン、ホウ素の各原子であり、プロトネーション(例えばNH+)や酸化(例えばP=O)が起こっていてもよい。色素は2量化によってエキシトン効果を示すものを用いることが好ましく、リンカーと接続する箇所は色素のどの部分でもよい。式(23)中では、DNAの部分構造であるデオキシリボヌクレオチドが示されているが、それに代わって核酸骨格がリボヌクレオチド(RNA)のほか、2’-O-メチルRNAや2’-フルオロDNAなどの糖修飾核酸、ホスホロチオエート核酸などのリン酸修飾核酸、PNAやLNA(BNA)などの機能性核酸でもよい。
式(24)中、塩基Bには、2個の色素(Fluo)が連結している。塩基Bとリンカーとの結合箇所は、特に制限されないが、例えば、ピリミジン4位、5位もしくは6位、プリン2位、3位、6位、7位もしくは8位のうち2ヶ所でリンカーに連結している。2つのリンカーは、それぞれ1ヶ所の塩基接続部位を有し、もうひとつの末端で色素と連結する。塩基もしくは色素との連結方法は、二重結合や三重結合に対する金属触媒反応や環形成縮合反応やマイケル付加反応などにより形成される結合のほかにも、アミド結合、エステル結合、ジスルフィド結合、イミン形成反応などにより形成される結合を用いることができる。リンカーについては、長さ(l, m)は自由であり、単結合、二重結合、三重結合、アミド結合、エステル結合、ジスルフィド結合、アミン、イミン、エーテル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合などを含んでもよい。また、2量化によって引き起こされるエキシトン効果を妨げないことが好ましい。色素は2量化によってエキシトン効果を示すものを用いることが好ましく、リンカーと接続する箇所は色素のどの部分でもよい。式(24)中では、DNAの部分構造であるデオキシリボヌクレオチドが示されているが、それに代わって核酸骨格がリボヌクレオチド(RNA)のほか、2’-O-メチルRNAや2’-フルオロDNAなどの糖修飾核酸、ホスホロチオエート核酸などのリン酸修飾核酸、PNAやLNA(BNA)などの機能性核酸でもよい。
式(25)においては、連続するヌクレオチドの各塩基(B1,B2)にそれぞれ1個の色素(Fluo)を連結している。各塩基がリンカーと結合する箇所は特に制限されないが、例えば、ピリミジン4位、5位もしくは6位、プリン2位、3位、6位、7位もしくは8位のうち1ヶ所でリンカーに連結している。2つのリンカーは、それぞれ1ヶ所の塩基接続部位を有し、もうひとつの末端で色素と連結する。塩基もしくは色素との連結方法は、二重結合や三重結合に対する金属触媒反応や環形成縮合反応やマイケル付加反応などにより形成される結合のほかにも、アミド結合、エステル結合、ジスルフィド結合、イミン形成反応などにより形成される結合を用いることができる。リンカーについては、長さ(l, m)は自由であり、単結合、二重結合、三重結合、アミド結合、エステル結合、ジスルフィド結合、アミン、イミン、エーテル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合などを含んでもよい。また、2量化によって引き起こされるエキシトン効果を妨げないことが好ましい。色素は2量化によってエキシトン効果を示すものを用いることが好ましく、リンカーと接続する箇所は色素のどの部分でもよい。式(25)中では、DNAの部分構造であるデオキシリボヌクレオチドが示されているが、それに代わって核酸骨格がリボヌクレオチド(RNA)のほか、2’-O-メチルRNAや2’-フルオロDNAなどの糖修飾核酸、ホスホロチオエート核酸などのリン酸修飾核酸、PNAやLNA(BNA)などの機能性核酸でもよい。
なお、前記化合物または核酸(例えば、本発明の標識核酸)に互変異性体または立体異性体(例:幾何異性体、配座異性体および光学異性体)等の異性体が存在する場合は、いずれの異性体も本発明に用いることができる。また、前記化合物または核酸の塩は、酸付加塩でも良いが、塩基付加塩でも良い。さらに、前記酸付加塩を形成する酸は無機酸でも有機酸でも良く、前記塩基付加塩を形成する塩基は無機塩基でも有機塩基でも良い。前記無機酸としては、特に限定されないが、例えば、硫酸、リン酸、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、次亜フッ素酸、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、亜フッ素酸、亜塩素酸、亜臭素酸、亜ヨウ素酸、フッ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過フッ素酸、過塩素酸、過臭素酸、および過ヨウ素酸等があげられる。前記有機酸も特に限定されないが、例えば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p−ブロモベンゼンスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸および酢酸等があげられる。前記無機塩基としては、特に限定されないが、例えば、水酸化アンモニウム、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩等があげられ、より具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウム等があげられる。前記有機塩基も特に限定されないが、例えば、エタノールアミン、トリエチルアミンおよびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等があげられる。これらの塩の製造方法も特に限定されず、例えば、前記電子供与体・受容体連結分子に、前記のような酸や塩基を公知の方法により適宜付加させる等の方法で製造することができる。また、置換基等に異性体が存在する場合はどの異性体でも良く、例えば、「ナフチル基」という場合は、1-ナフチル基でも2-ナフチル基でも良い。
また、本発明において、アルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基およびtert-ブチル基等が挙げられ、アルキル基を構造中に含む基(アルキルアミノ基、アルコキシ基等)においても同様である。また、ペルフルオロアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基およびtert-ブチル基等から誘導されるペルフルオロアルキル基が挙げられ、ペルフルオロアルキル基を構造中に含む基(ペルフルオロアルキルスルホニル基、ペルフルオロアシル基等)においても同様である。本発明において、アシル基としては、特に限定されないが、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、シクロヘキサノイル基、ベンゾイル基、エトキシカルボニル基、等が挙げられ、アシル基を構造中に含む基(アシルオキシ基、アルカノイルオキシ基等)においても同様である。また、本発明において、アシル基の炭素数にはカルボニル炭素を含み、例えば、炭素数1のアルカノイル基(アシル基)とはホルミル基を指すものとする。さらに、本発明において、「ハロゲン」とは、任意のハロゲン元素を指すが、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられる。また、本発明において、アミノ基の保護基としては、特に制限されないが、例えば、トリフルオロアセチル基、ホルミル基、C1−6アルキル−カルボニル基(例えばアセチル、エチルカルボニル等)、C1−6アルキル−スルホニル基、tert−ブチルオキシカルボニル基(以下、Bocとも称する)、ベンジルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、フルオレニルメチルオキシカルボニル基、アリールカルボニル基(例えばフェニルカルボニル、ナフチルカルボニル等)、アリールスルホニル基(例えばフェニルスルホニル、ナフチルスルホニル等)、C1−6アルキルオキシ−カルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)、C7−10アラルキル−カルボニル基(例えばベンジルカルボニル等)、メチル基、アラルキル基(例えばベンジル、ジフェニルメチル、トリチル基等)、等が用いられる。これらの基は1ないし3個のハロゲン原子(例えばフッ素、塩素、臭素等)、ニトロ基等で置換されていてもよく、その具体例としては、p−ニトロベンジルオキシカルボニル基、p−クロロベンジルオキシカルボニル基、m−クロロベンジルオキシカルボニル基、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基などが挙げられる。また、本発明において、水酸基の保護基(酸で脱保護することが可能なものを含む)としては、特に制限されないが、例えば、ジメトキシトリチル基、モノメトキシトリチル基、ピクシル基などが挙げられる。
前記化合物または核酸(本発明の標識核酸)として特に好ましいのは、例えば、後述の実施例に記載の化学式102〜106、110、113、114、116〜118、120、121、122、123、124、ODN1、ODN2、ODN3、ODN4、ODN5、ODN6、ODN7、ODN8、ODN9、ODN10、ODN(anti4.5S)およびODN(antiB1)ならびにそれらの幾何異性体、立体異性体および塩である。特に、化合物110、113、114、116〜118、120、121、122、123、124、ODN1、ODN2、ODN3、ODN4、ODN5、ODN6、ODN7、ODN8、ODN9、ODN10、ODN(anti4.5S)およびODN(antiB1)は、チアゾールオレンジとDNAとが独特の構造で共有結合されていることにより、核酸検出感度等が特に優れている。さらに、チアゾールオレンジ構造を1分子中に2個含む化合物110、113、117、118、120、121、122、123、124、ODN1、ODN2、ODN3、ODN4、ODN5、ODN9、ODN(anti4.5S)およびODN(antiB1)は、一本鎖状態の蛍光を抑え、相補的なDNAやRNAとの二重らせん形成により蛍光強度が増加する一本鎖DNAの蛍光プライマーとして、より一層効果的に用いることができる。
次に、本発明における標識物質について説明する。以下に示す標識物質は、本発明における標識プライマー(標識核酸)として使用できる。
すなわち、前記標識物質は、
(i)一つの分子内の二つの平面化学構造が同一平面内ではなく、ある一定の角度をもって存在するが、その分子が核酸にインターカレーションまたはグルーヴバインディング(溝結合)するときには二つの平面化学構造が同一平面内に並ぶように配置することによって蛍光発光が生じる標識物質であるか、
(ii)2つ以上の色素分子が並行に集合するために生じるエキシトン効果によって蛍光発光を示さないが、それらの分子が核酸にインターカレーションまたはグルーヴバインディング(溝結合)するときには、前記集合状態が解けることにより蛍光発光が生じる2つ以上の色素分子群からなる標識物質であるか、または、
(iii)2つ以上の色素分子が並行に集合するために生じるエキシトン効果によって蛍光発光を示さないが、それらの分子が核酸にインターカレーションまたはグルーヴバインディング(溝結合)するときには、前記集合状態が解けることにより蛍光発光が生じる2つ以上の色素分子の化学構造を同一分子内に有することを特徴的化学構造とする複合体標識物質である。
前記(ii)または(iii)の場合において、前記色素分子が、前記(i)記載の分子であることが好ましい。また、前記(iii)の場合において、標識されるべき核酸に結合しているリンカー分子に、枝分かれした構造をとるように更なるリンカー分子を介して、または、更なるリンカー分子を介さず直接的に、2つ以上の色素分子が、結合した構造を有することが好ましい。
本発明の標識物質は、前記原子団Z11およびZ12が蛍光性を示す原子団である前記本発明の化合物、その互変異性体若しくは立体異性体、またはそれらの塩、または前記本発明の核酸であることが好ましい。例えば、本発明の化合物または核酸において、Z11およびZ12が、エキシトン効果を示す原子団であることにより、二重らせん構造となったときの蛍光の増大が大きくなり、二重らせん構造をいっそう効果的に検出することができる。ただし、本発明の化合物または核酸においては、Z11およびZ12が、エキシトン効果を示す原子団でなくても、また、蛍光性を示す原子団(色素)が1分子中に1個のみ導入されていても、核酸等の標識物質として使用可能であり、二重らせん構造を効果的に検出することもできる。本発明の標識物質の形態としては、例えば、一本鎖核酸である蛍光プライマーの形態があるが、これに限定されず、標識モノヌクレオチド、標識オリゴヌクレオチド、二本鎖核酸等、どのような形態でもよい。
また、本発明の標識物質は、例えば、標識モノヌクレオチド、標識オリゴヌクレオチド、標識核酸または標識核酸類似体である標識物質であって、
前記(i)〜(iii)のいずれかに記載の標識物質、または、Z11およびZ12が蛍光性を示す原子団である前記本発明の化合物、その互変異性体若しくは立体異性体、もしくはそれらの塩、または前記本発明の核酸で標識された標識物質である。
あるいは、本発明の標識物質は、例えば、標識モノヌクレオチド、標識オリゴヌクレオチド、標識核酸または標識核酸類似体である標識物質であって、
モノヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸または核酸類似体中の一つまたはそれ以上の塩基分子または主鎖構成分子に結合しているリンカー分子を介して、前記(i)〜(iii)のいずれかに記載の標識物質、または、Z11およびZ12が蛍光性を示す原子団である前記本発明の化合物、その互変異性体若しくは立体異性体、もしくはそれらの塩、または前記本発明の核酸で標識された標識物質である。
あるいは、本発明の標識物質は、例えば、標識モノヌクレオチド、標識オリゴヌクレオチド、標識核酸または標識核酸類似体である標識物質であって、
モノヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸または核酸類似体中の一つまたはそれ以上の塩基分子のピリミジン核5位の炭素原子またはプリン核8位の炭素原子に結合しているリンカー分子を介して、前記(i)〜(iii)のいずれかに記載の標識物質、またはZ11およびZ12が蛍光性を示す原子団である前記本発明の化合物、その互変異性体若しくは立体異性体、もしくはそれらの塩、または前記本発明の核酸で標識された標識物質である。
[化合物および標識プライマーの製造方法]
本発明において、前記化合物、核酸および標識プライマー(標識核酸)の製造方法は、特に制限されず、公知の合成方法(製造方法)を適宜用いることができる。一例として、前記式(21)で表される化合物の場合は、下記式(26)で示される化合物のカルボキシル基を活性化した後、トリス(2−アミノエチル)アミンを反応させる工程;アミノ基を保護する工程:及び上記で得られた化合物中に存在する水酸基を保護基で保護する反応と、得られた化合物中に存在する水酸基にリン酸又はホスホロアミダイト基を付加する反応とを行う工程を含む製造方法により製造してもよい。
式(26)中、Aは水素原子または水酸基を示す。Bはアデニン、グアニン、シトシン、チミン又はウラシルの残基を示す。
本発明の化合物、核酸または標識プライマー(標識核酸)の製造に応用できる製造方法(合成方法)としては、例えば、以下の方法がある。すなわち、まず、DNAの簡便なラベル化法として、DNA中の活性なアミノ基とラベル化剤中の活性化されたカルボキシル基とを緩衝溶液中で反応させる方法が広く用いられている。この方法は、本発明の化合物または核酸のいずれの製造にも応用可能であり、特に、リンカーまたは色素の導入に応用できる。アミノ基の導入法としては、GLEN RESEARCH社が販売しているAmino modifierホスホロアミダイトを利用する方法などがある。
前記原子団Z11およびZ12は、例えば、保護基から水素原子に変換し(保護基を外し)、さらに、水素原子から、蛍光性を有する原子団(色素)で置換することができる。保護基を外す方法は特に制限されず、公知の方法を適宜用いることができる。蛍光性を有する原子団(色素)で置換する方法も特に制限されず、例えば、Z11およびZ12が水素原子である本発明の化合物または核酸と、蛍光性分子(色素)とを適宜反応させればよい。例えば、Z11およびZ12の少なくとも一方が活性アミノ基であると、蛍光性分子(色素)と反応しやすいため好ましく、Z11およびZ12の両方が活性アミノ基であることがより好ましい。蛍光性分子(色素)も特に制限されないが、例えば、前記式(7)〜(9)のいずれかで表される化合物(ただし、R11およびR12のいずれもが、水素原子もしくは低級アルキル基、またはカルボキシポリメチレン基である)であっても良い。また、核酸(ポリヌクレオチド、ポリヌクレオシド、オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオシド)の場合、保護基を外す工程および蛍光性を有する原子団(色素)で置換する工程は、重合(核酸合成)の前でもよいし、後でもよい。例えば、合成工程で色素部分がダメージを受けることを防止する観点から、重合(核酸合成)の後に蛍光性を有する原子団(色素)を導入することが好ましい。
色素としては、前述の通り、特に制限されず、あらゆる色素が使用可能であるが、例えば、シアニン色素が好ましく、チアゾールオレンジが特に好ましい。シアニン色素は、例えば、ヘテロ原子を有する2つの複素環がメチンリンカーで結ばれた化学構造をしている。複素環の種類やメチンリンカーの長さを変えること、または複素環への置換基導入などにより、さまざまな励起・発光波長の蛍光色素を合成することが可能である。また、DNA導入のためのリンカー導入も比較的容易である。なお、チアゾールオレンジは水中でほとんど蛍光を出さないが、DNAまたはRNAと相互作用することにより強い蛍光を発する。核酸との相互作用により、色素分子間の相互作用が抑制されること、そして色素分子の2つの複素環の間のメチンリンカー周りの回転が抑制されることが蛍光強度の増加につながると考えられている。なお、チアゾールオレンジ色素の使用方法については、良く知られているが、例えば、H. S. Rye, M. A. Quesada, K. Peck, R. A. Mathies and A. N. Glazer, High-sensitivity two-color detection of double-stranded DNA with a confocal fluorescence gel scanner using ethidium homodimer and thiazole orange, Nucleic Acids Res., 1991, 19, 327-33;及びL. G. Lee, C. H. Chen and L. A. Chiu, Thiazole orange: a new dye for reticulocyte analysis, Cytometry, 1986, 7, 508-17を参照して用いることができる。
本発明において、前記化合物、核酸または標識プライマー(標識核酸)の基本骨格は、前述の通り、特に制限されず、例えば、オリゴヌクレオチド、修飾オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシド、修飾オリゴヌクレオシド、ポリヌクレオチド、修飾ポリヌクレオチド、ポリヌクレオシド、修飾ポリヌクレオシド、DNA、修飾DNA、RNA、修飾DNA、LNA、またはPNA(ペプチド核酸)のいずれであっても良いし、その他の構造であっても良い。DNA、修飾DNA、RNA、または修飾DNAを基本骨格とする方が合成が容易であり、色素での置換(色素分子の導入)等もしやすいため好ましい。LNAまたはPNAに色素分子を導入する方法は特に制限されず、公知の方法を適宜用いることができる。具体的には、例えば、Analytical Biochemistry 2000, 281, 26-35.
Svanvik, N., Westman, G., Wang, D., Kubista, M. (2000) Anal Biochem. 281, 26-35. Hrdlicka, P. J., Babu, B. R., Sorensen, M. D., Harrit, N., Wengel, J. (2005) J. Am. Chem. Soc. 127, 13293-13299.等を参照することができる。
オリゴヌクレオチド、修飾オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシド、修飾オリゴヌクレオシド、ポリヌクレオチド、修飾ポリヌクレオチド、ポリヌクレオシド、修飾ポリヌクレオシド、DNA、修飾DNA、RNA、または修飾DNAを基本骨格とする核酸の合成方法は良く知られており、例えば、いわゆるホスホロアミダイト法等により合成することができる。その原料となるホスホロアミダイト試薬も、公知の方法で簡便に合成することができる。本発明の核酸がDNA、特に短いオリゴDNAの場合、例えば、DNA自動合成機等で簡便に合成することができる。また、例えば、PCR等により、長鎖状の核酸(DNA)等を合成することもできる。DNAと色素分子との結合箇所は、前述の通り特に制限されないが、例えば、チミジンの5位が特に好ましい。チミジンの5位からさまざまな置換基を伸ばしたヌクレオチド誘導体の三リン酸はDNAポリメラーゼによる導入効率が比較的良いことが知られている。これにより、例えば、本発明の核酸が、短いオリゴDNAである場合のみならず、長鎖DNAである場合にも簡便な合成が可能である。
特に、例えば、チアゾールオレンジを利用した、一本鎖DNAである本発明の蛍光プライマー(標識核酸)は、例えば、(1)DNA自動合成機で合成したDNAに緩衝溶液中で色素をつけるだけで調製でき、合成的に容易である、(2)酵素的に調製した長鎖DNAと色素を反応させることで、長鎖の蛍光プライマーの作製も可能である、などの利点を有している。また、例えば、500nm付近の比較的長波長の光で励起できる。
本発明のプライマーセットは、例えば、検出波長が異なる蛍光性原子団を有する2種類以上の本発明の標識プライマーを含んでもよい。2種類以上の標的核酸配列に対して、それぞれを増幅させるためのプライマーとして、異なる蛍光性原子団を有する本発明の標識プライマーを併用すれば、同一反応液で増幅反応を行い、且つ、各蛍光性原子団に応じた検出波長で、それぞれの標的核酸配列の増幅を検出することができる。
本発明のプライマーセットは、標的核酸配列における変異部位の検出を目的とする場合、例えば、前記標的核酸配列における変異部位を含む領域に対して完全に相補な配列を有する本発明の標識プライマーと、前記変異部位を含む領域に対して前記変異部位を除いて完全に相補な配列を有するプライマーとを含むことが好ましい。完全に相補なプライマーを、フルマッチプライマー、変異部位を除いて相補なプライマーを、ミスマッチプライマーという。本発明において、ミスマッチプライマーは、例えば、変異部位の他に、さらに数個の塩基を除いて相補な配列であってもよい(以下同様)。このように、ミスマッチプライマーを共存させることによって、フルマッチプライマーが、例えば、鋳型におけるミスマッチ領域にハイブリダイズすることが抑制され、より特異性の高い増幅が可能となる。
[核酸増幅方法]
本発明の核酸増幅方法は、以下の第一の核酸増幅方法と第二の核酸増幅方法がある。
(1)第一の核酸増幅方法
本発明の第一の核酸増幅方法は、核酸試料中の標的核酸配列を増幅する方法であって、下記(A)および(B)工程を含むことを特徴とする。
(A) 前記核酸試料を準備する工程
(B) 本発明のプライマーまたは本発明のプライマーセットを用いて、核酸試料中の標的核酸配列を増幅する工程
本発明の核酸増幅方法は、本発明の標識プライマー、または、これを含む本発明のプライマーセットを使用すればよく、その他の条件や工程は何ら制限されない。核酸増幅の条件等は、例えば、採用する核酸増幅法の種類や、増幅目的の標的核酸配列の配列情報等に応じて、適宜設定できる。
本発明の核酸増幅方法によれば、本発明の標識プライマー、または、これを含む本発明のプライマーセットを使用するため、例えば、核酸増幅反応液の蛍光強度を検出するのみで、標的核酸配列の増幅の有無を判断することができる。これは、例えば、以下のような理由による。プライマーが標的核酸配列を含むDNAやRNA等にハイブリダイゼーションすると、二本鎖核酸が形成されるため、前記二重鎖核酸に前記標識プライマーの原子団(色素)がインターカレーションまたはグループバインディングされる。この際、例えば、前述のような前記原子団(色素)のエキシトン効果が生じないため、前記原子団は蛍光発光を生じる。一方、ハイブリダイゼーションしなかった場合には、エキシントン効果が生じるため、前記原子団は蛍光発光を生じない。このため、例えば、プライマーが鋳型にハイブリダイゼーションしない場合や、増幅が起きない場合、蛍光発光を生じる原子団が見られない、または、増加しないことなる。したがって、蛍光強度を検出すれば、増加した場合には、標的核酸配列が増幅したと判断でき、非増加の場合には、標的核酸配列が増幅していないと判断できる。
増幅した標的核酸配列の検出方法は、例えば、図1により概念的に表すことができる。同図(A)(左側の、「Non−hybrid」と記した図)は、エキシトン効果により消光したプライマーを示し、同図(B)(右側の、「Hybrid」と記した図)は、二本鎖形成によりインターカレーションし、蛍光発光するプライマーを示す。図中、符号1は、本発明のプライマー(蛍光プライマー)を示す。2は、蛍光性を示す原子団(色素)を示す。1’は、プライマー(蛍光プライマー)1に対する相補鎖を示す。3は、1と1’とから形成された二本鎖核酸を示す。また、図の上部は、電子遷移図である。「Allowed」は、許容遷移であることを示す。「Forbidden」は、禁制遷移であることを示す。「Emissive」は、蛍光発光可能であることを示す。「Non-emissive」は、理論上、蛍光発光不可能であることを示す。すなわち、一本鎖状態(図1(A))では、基底状態の色素2が会合することで、エキシトンカップリング理論により相互作用し、前記色素会合体の励起状態が2つのエネルギーレベルに分離して発光が抑えられると考えられる。低エネルギーレベルからの発光は、理論的には禁制であるので、会合体の一重項励起状態は、低い放射状態に留まる。一方、ハイブリダイゼーションして二本鎖を形成すると(図1(B))、色素2が二本鎖核酸3にインターカレーションまたはグルーヴバインディングしてエキシトンカップリングが解消されるため、蛍光を生じると考えられる。ただし、図1は、本発明による標的核酸の検出機構の一例を概念的に示す模式図であり、本発明は、図1およびその説明により何ら限定されない。エキシトン効果においては、2つの色素間の距離を制御することによって、蛍光発光をコントロールできる。このシステムを、配列を判別するためのDNAに取り付けることによって、配列選択的な蛍光発光を得ることができる。本発明の核酸増幅方法、核酸検出方法、変異検出方法またはキットでは、例えば、試料の下方から可視光を照射することによりハイブリダイゼーションの検出を行うことができ、目視でも明確に判別することができる。また、本発明では、例えば、蛍光セル・マイクロプレート・ゲル・キャピラリー・プラスチックチューブなどの容器の中でハイブリダイゼーションを観察可能である。さらに、本発明では、例えば、標的核酸と混合した直後からハイブリダイゼーションを観測可能である。
蛍光強度の検出は、例えば、前記(B)工程の核酸増幅反応と並行して、連続的または断続的に行ってもよいし、前記(B)工程の終了後に行ってもよい。前記(B)工程の反応終了後に行う場合は、あわせて、バックグラウンドとして、前記(B)工程の反応開始前にも検出することが好ましい。蛍光強度の検出は、例えば、反応液への可視光の照射により行うことができ、蛍光セル、マイクロプレート、ゲル、キャピラリー、プラスチックチューブ等の容器中で観察することも可能である。また、蛍光強度の検出は、目視で行ってもよいし、例えば、リアルタイムPCR装置等の市販の蛍光測定器等を用いて行うこともできる。
前記核酸試料としては、例えば、DNAまたはRNAを含む試料があげられる。前記DNAは、例えば、ゲノムDNA、cDNAおよび合成DNAのいずれであってもよい。RNAは、例えば、全RNA、mRNA、rRNA、siRNA、hnRNA、合成RNA、スプライスドRNA、アンスプライスドRNAのいずれであってもよい。
これらの核酸は、例えば、血液、組織、細胞等の生体由来試料や、食品、土壌、排水等から分離された微生物由来試料から調製できる。また、前記生体由来試料は、例えば、動物、植物等があげられる。また、核酸試料の調製方法は、特に制限されず、従来公知の方法により行うことができる。具体例としては、例えば、界面活性剤による溶解処理、音波処理、ガラスビーズ等を用いた振盪撹拌、フレンチプレスを用いる方法等があげられる。また、内在性ヌクレアーゼが存在する場合には、単離された核酸を精製することが好ましい。核酸の精製は、例えば、フェノール抽出、クロマトグラフィー、イオン交換、ゲル電気泳動、密度勾配遠心法等により行うことができる。
本発明の核酸増幅方法は、前記(B)工程において、例えば、検出波長が異なる蛍光性原子団を有する2種類以上の本発明の標識プライマーを使用することができる。具体的には、2種類以上の標的核酸配列を増幅させる場合、各標的核酸配列をそれぞれ増幅させるためのプライマーとして、異なる蛍光性原子団を有する2種類以上の本発明の標識プライマーを併用することが好ましい。これによって、例えば、同一反応液で、2種類以上の標的核酸配列の増幅を行い、且つ、各蛍光性原子団に応じた検出波長で各標的核酸配列の増幅を検出することができる。
本発明の核酸増幅反応は、標的核酸配列における変異部位の検出を目的として増幅を行う場合、例えば、前記(B)工程において、前記標的核酸配列における変異部位を含む領域に対して完全に相補な配列を有する本発明の標識プライマー(標識フルマッチプライマー)と、前記変異部位を含む領域に対して前記変異部位を除いて完全に相補な配列を有するプライマー(ミスマッチプライマー)とを使用することが好ましい。このように、ミスマッチプライマーを共存させれば、例えば、フルマッチプライマーが、鋳型におけるミスマッチ領域にハイブリダイズすることが抑制され、より特異性の高い増幅が可能となる。前記ミスマッチプライマーは、例えば、未標識プライマーでもよいし、本発明の標識プライマーであってもよい。
本発明の核酸増幅方法は、前述のように、適用する核酸増幅反応の形式には制限されず、例えば、SDA法、改良SDA法、NASBA法、LAMP法、ICAN法、自立複製法、TMA法、Qベータレプリカーゼ法、SMAP法等の等温増幅法や、PCR法等に適用できる。以下、等温増幅法を用いた本発明の核酸増幅方法を「本発明の等温増幅法」、PCRを用いた本発明の核酸増幅方法を「本発明のPCR法」という。
等温増幅法
本発明の等温増幅法は、前述のように、等温で核酸増幅反応を行う方法である。前記(B)工程の核酸増幅反応の条件は、特に制限されず、当業者であれば適宜決定できる。反応温度は、例えば、プライマーの融解温度(Tm)付近の温度、または、それ以下に設定することが好ましく、さらには、プライマーの融解温度(Tm)を考慮し、ストリンジェンシーのレベルを設定することが好ましい。反応温度の具体例としては、例えば、約20℃〜約75℃であり、好ましくは、約35℃〜約65℃である。
本発明の等温増幅方法について、前述のような、非対称型プライマーセットを用いる方法と、対称型プライマーセットを用いる方法とを例にあげて説明する。なお、本発明はこれには制限されない。
SMAP法
核酸増幅方法の中でもSMAP法は、例えば、優れた特異性で標的核酸配列を増幅できることから、遺伝子増幅によって、例えば、遺伝子中における変異、特に一塩基変異の有無や、塩基の欠失または挿入の有無等を判断することが可能である。このため、本発明のプライマーセットを適用することによって、例えば、より高感度且つ高精度なSMAP法の実施が可能といえる。
前記非対称型のプライマーセットは、前述のように、一方のプライマーの形態と他方のプライマーの形態とが異なる非対称型の一対のプライマーを有するプライマーセットであり、中でも、前記SMAP法に適用することが好ましい。このプライマーセットを、以下、「SMAP用プライマーセット」ともいう。
前記SMAP用プライマーセットの具体例としては、例えば、非対称型である一対のプライマーが、第一のプライマーと第二のプライマーとを含み、
前記第一のプライマーが、標的核酸配列の3’末端部分の配列(A)にハイブリダイズする配列(Ac’)を3’末端部分に含んでなり、かつ前記標的核酸配列において前記配列(A)よりも5’側に存在する配列(B)の相補配列(Bc)にハイブリダイズする配列(B’)を前記配列(Ac’)の5’側に含むものであり、
前記第二のプライマーが、前記標的核酸配列の相補配列の3’末端部分の配列(C)にハイブリダイズする配列(Cc’)を3’末端部分に含んでなり、かつ相互にハイブリダイズする2つの核酸配列を同一鎖上に含む折返し配列(D−Dc’)を前記配列(Cc’)の5’側に含むものである。
第一のプライマーによる核酸合成の作用機序を図45に模式的に示す。まず、鋳型となる核酸中の標的核酸配列を決定し、その標的核酸配列の3’末端部分の配列(A)、および配列(A)よりも5’側に存在する配列(B)を決定する。第一のプライマーは、配列(Ac’)を含んでなり、さらにその5’側に配列(B')を含む。配列(Ac')は、配列(A)にハイブリダイズするものであり、配列(B')は、配列(B)の相補配列(Bc)にハイブリダイズするものである。ここで、第一のプライマーは、前記配列(Ac')と前記配列(B')の間に、反応に影響を与えない介在配列を含んでいてもよい。このようなプライマーを鋳型核酸にアニーリングさせると、プライマー中の配列(Ac')が標的核酸配列の配列(A)にハイブリダイズした状態となる(図45(a))。この状態でプライマー伸長反応が起こると、標的核酸配列の相補配列を含む核酸が合成される。そして、合成された核酸の5’末端側に存在する配列(B')が、同核酸中に存在する配列(Bc)にハイブリダイズし、これにより、合成された核酸の5’末端部分においてステム−ループ構造が形成される。その結果、鋳型核酸上の配列(A)が一本鎖となり、この部分に先の第一のプライマーと同一の配列を有する他のプライマーがハイブリダイズする(図45(b))。その後、鎖置換反応により、新たにハイブリダイズした第一のプライマーからの伸長反応が起こると同時に、先に合成された核酸が鋳型核酸から分離される(図45(c))。
上記の作用機序において、配列(B')が配列(Bc)にハイブリダイズする現象は、典型的には、同一鎖上に相補領域が存在することにより起こる。一般に、二本鎖核酸が一本鎖に解離するときは、その末端あるいはそれ以外の比較的不安定な部分から部分的な解離が始まる。上記第一のプライマーによる伸長反応で生成した二本鎖核酸は、比較的高温では末端部分の塩基対は解離と結合の平衡状態にあり、全体としては二本鎖を保っている。そのような状態で末端の解離した部分に相補的な配列が同一鎖上に存在すると、準安定な状態としてステム−ループ構造を形成することができる。このステムループ構造は安定的には存在しないが、その構造の形成により剥き出しとなった相補鎖部分(鋳型核酸上の配列(A))に同一の他のプライマーが結合し、すぐさまポリメラーゼが伸長反応を行うことにより、先に合成された鎖が置換されて遊離すると同時に、新たな二本鎖核酸を生成することができる。
本発明の好ましい態様における第一のプライマーの設計基準は次のとおりである。まず、プライマーの伸長により鋳型核酸の相補鎖が合成された後に新たなプライマーが効率よく同鋳型核酸にアニーリングするためには、合成された相補鎖の5’末端におけるステム−ループ構造形成により、鋳型核酸上の前記配列(A)の部分を一本鎖とする必要がある。そのためには、配列(Ac')の塩基数Xと標的核酸配列中における前記配列(A)と前記配列(B)に挟まれた領域の塩基数Yとの差(X−Y)の、Xに対する割合(X−Y)/Xが重要となる。ただし、鋳型核酸上において配列(A)よりも5’側に存在する、プライマーのハイブリダイズとは関係無い部分まで一本鎖とする必要はない。また、新たなプライマーが効率よく鋳型核酸にアニーリングするためには、上述のステム−ループ構造形成を効率よく行なうことも必要となる。そして、効率の良いステム−ループ構造形成、すなわち、効率の良い配列(B')と配列(Bc)とのハイブリダイゼーションには、前記配列(B')と前記配列(Bc)との間の距離(X+Y)が重要となる。一般に、プライマー伸長反応のための最適温度は最高でも72℃付近であり、そのような低い温度では、伸長鎖が長い領域にわたって解離することは困難である。従って、配列(B')が配列(Bc)に効率よくハイブリダイズするためには、両配列の間の塩基数は少ないほうが好ましいと考えられる。一方で、配列(B')が配列(Bc)にハイブリダイズして鋳型核酸上の前記配列(A)の部分を一本鎖とするためには、配列(B')と配列(Bc)との間の塩基数は多い方が好ましいと考えられる。
以上のような観点から、本発明の好ましい実施態様による前記第一のプライマーは、プライマーを構成する配列(Ac')と配列(B')の間に介在配列が存在しない場合において、(X−Y)/Xが−1.00以上、好ましくは0.00以上、さらに好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.10以上となり、また、1.00以下、好ましくは0.75以下、さらに好ましくは0.50以下、さらに好ましくは0.25以下となるように設計される。さらに、(X+Y)は、好ましくは15以上、さらに好ましくは20以上、さらに好ましくは30以上とされ、また、好ましくは50以下、さらに好ましくは48以下、さらに好ましくは42以下とされる。
また、プライマーを構成する配列(Ac')と配列(B')の間に介在配列(塩基数はY’)が存在する場合には、本発明の好ましい実施態様による前記第一のプライマーは、{X−(Y−Y’)}/Xが−1.00以上、好ましくは0.00以上、さらに好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.10以上となり、また、1.00以下、好ましくは0.75以下、さらに好ましくは0.50以下、さらに好ましくは0.25以下となるように設計される。さらに、(X+Y+Y’)は、好ましくは15以上、さらに好ましくは20以上、さらに好ましくは30以上とされ、また、好ましくは100以下、さらに好ましくは75以下、さらに好ましくは50以下とされる。
前記第一のプライマーは、与えられた条件下で必要な特異性を維持しながら標的核酸との塩基対結合を行うことができる程度の鎖長を有するものである。このプライマーの鎖長は、好ましくは15〜100ヌクレオチド、より好ましくは20〜60ヌクレオチドとする。また、前記第一のプライマーを構成する配列(Ac')と配列(B')の長さは、それぞれ、好ましくは5〜50ヌクレオチド、より好ましくは7〜30ヌクレオチドである。また、必要に応じて、配列(Ac')と配列(B')の間に、反応に影響を与えない介在配列を挿入してもよい。
本発明によるプライマーセットに含まれる第二のプライマーは、上述のように、前記標的核酸配列の相補配列(第一のプライマーがハイブリダイズする鎖に対して反対側の鎖)の3’末端部分の配列(C)にハイブリダイズする配列(Cc')を3’末端部分に含んでなり、かつ相互にハイブリダイズする2つの核酸配列を同一鎖上に含む折返し配列(D-Dc')を前記配列(Cc')の5’側に含むものである。このような第二のプライマーの構造は、例えば、図46に示すようなものであるが、図46に示される配列やヌクレオチド数に限定されるものではない。第二のプライマーを構成する配列(Cc')の長さは、好ましくは5〜50ヌクレオチド、より好ましくは10〜30ヌクレオチドである。また、前記折返し配列(D-Dc')の長さは、好ましくは2〜1000ヌクレオチド、より好ましくは2〜100ヌクレオチド、さらに好ましくは4〜60ヌクレオチド、さらに好ましくは6〜40ヌクレオチドであり、折返し配列の内部におけるハイブリダイゼーションによって形成される塩基対のヌクレオチド数は、好ましくは2〜500bp、より好ましくは2〜50bp、さらに好ましくは2〜30bp、さらに好ましくは3〜20bpである。折返し配列(D-Dc')のヌクレオチド配列はいかなる配列であってもよく、特に限定されるものではないが、好ましくは標的核酸配列にハイブリダイズしない配列とされる。また、必要に応じて、配列(Cc')と折返し配列(D-Dc')の間に、反応に影響を与えない介在配列を挿入してもよい。
これら第一のプライマーおよび第二のプライマーによる核酸増幅反応について考えられる作用機序を、図47(図47Aおよび図47B)を用いて説明する。なお、図47では、説明を簡略化するため、ハイブリダイズする2つの配列を相互に相補的な配列としているが、これにより本発明が限定されるものではない。まず、第一のプライマーが標的核酸のセンス鎖にハイブリダイズし、該プライマーの伸長反応が起きる(図47A(a))。次いで、伸長鎖(−)上においてステム−ループ構造が形成され、これにより一本鎖となった標的核酸センス鎖上の配列(A)に新たな第一のプライマーがハイブリダイズし(図47A(b))、該プライマーの伸長反応が起きて、先に合成された伸長鎖(−)が脱離する。次に、脱離した伸長鎖(−)上の配列(C)に第二のプライマーがハイブリダイズし(図47A(c))、該プライマーの伸長反応が起き、伸長鎖(+)が合成される(図47A(d))。生成した伸長鎖(+)の3’末端と伸長鎖(−)の5’末端ではステム−ループ構造が形成され(図47A(e))、遊離型の3’末端である伸長鎖(+)のループ先端から伸長反応が起こると同時に、前記伸長鎖(−)が脱離する(図47A(f))。ループ先端からの前記伸長反応により、伸長鎖(+)の3’側に配列(A)および配列(Bc)を介して伸長鎖(−)が結合したヘアピン型の二本鎖核酸が生成し、その配列(A)および配列(Bc)に第一のプライマーがハイブリダイズし(図47A(g))、その伸長反応により伸長鎖(−)が生成する(図47A(h)および(i))。また、前記ヘアピン型二本鎖核酸の3’末端に存在する折返し配列によって遊離型の3’末端が提供され(図47A(h))、そこからの伸長反応により(図47B(i))、両端に折返し配列を有し、第一および第二のプライマーに由来する配列を介して伸長鎖(+)と伸長鎖(−)とを交互に含む一本鎖核酸が生成する(図47B(j))。この一本鎖核酸では、その3’末端に存在する折返し配列により遊離型の3’末端(相補鎖合成起点)が提供されるため(図47B(k))、同様の伸長反応が繰り返され、1回の伸長反応あたり2倍の鎖長となる(図47B(l)および(m))。また、図47B(i)において脱離した第一のプライマーからの伸長鎖(−)では、その3’末端に存在する折返し配列により遊離型の3’末端(相補鎖合成起点)が提供されるため(図47B(n))、そこからの伸長反応により、両端にステム−ループ構造が形成され、プライマーに由来する配列を介して伸長鎖(+)と伸長鎖(−)とを交互に含む一本鎖核酸が生成する(図47B(o))。この一本鎖核酸においても、3’末端におけるループ形成によって相補鎖合成起点が順次提供されるため、そこからの伸長反応が次々に起こる。このようにして自動的に延長される一本鎖核酸には、第一のプライマーおよび第二のプライマーに由来する配列が伸長鎖(+)と伸長鎖(−)との間に含まれているため、各プライマーがハイブリダイズして伸長反応を起こすことが可能であり、これにより標的核酸のセンス鎖およびアンチセンス鎖が顕著に増幅される。
また、本発明のSMAP用プライマーセットは、第一のプライマーおよび第二のプライマー以外に、第三のプライマーを含んでもよい。前記第三のプライマーは、例えば、前記標的核酸配列またはその相補配列にハイブリダイズするものであって、標的核酸配列またはその相補配列へのハイブリダイゼーションについて他のプライマーと競合しないプライマーである。本発明において「競合しない」とは、そのプライマーが標的核酸にハイブリダイズすることによって他のプライマーによる相補鎖合成起点の付与が妨げられないことを意味する。
第一のプライマーおよび第二のプライマーにより標的核酸配列が増幅された場合には、上述のように、増幅産物は標的核酸配列とその相補配列とを交互に有するものとなる。その増幅産物の3’末端には折返し配列またはループ構造が存在し、これにより提供される相補鎖合成起点から次々に伸長反応が起こっている。第三のプライマーは、このような増幅産物が部分的に一本鎖の状態になった時に、その一本鎖部分に存在する標的配列にアニ−リングすることができるプライマーであることが好ましい。これにより、増幅産物中の標的核酸配列内に新たな相補鎖合成起点が提供され、そこからの伸長反応が起こるため、核酸増幅反応がより迅速に行われるようになる。
前記第三のプライマーは、制限されず、1種類でもよいし、例えば、核酸増幅反応の迅速性および特異性を向上させるため、2種類以上の第三のプライマーを同時に用いてもよい。これらの第三のプライマーは、例えば、典型的には第一のプライマーおよび第二のプライマーとは異なる配列からなるが、これらのプライマーと競合しない限りにおいて、部分的に重なる領域にハイブリダイズするものとしてもよい。第三のプライマーの鎖長は、好ましくは2〜100ヌクレオチド、より好ましくは5〜50ヌクレオチド、さらに好ましくは7〜30ヌクレオチドである。
前記第三のプライマーは、例えば、第一のプライマーおよび第二のプライマーによる核酸増幅反応をより迅速に進めるための補助的な働きをその主目的とする。従って、前記第三のプライマーは、第一のプライマーおよび第二のプライマーの各3’末端のTmよりも低いTmを有するものとすることが好ましい。また、第三のプライマーの増幅反応液への添加量は、例えば、第一のプライマーおよび第二のプライマーのそれぞれの添加量よりも少ない方が好ましい。
前記第三のプライマーとしては、例えば、国際公開第02/24902号パンフレットに記載のような、ループを形成できる構造をもつものを鋳型として、そのループ部分に相補鎖合成の起点を与えるものをあげることができるが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、標的核酸配列内であれば、いかなる部位に相補鎖合成起点を提供するものであってもよい。
前記SMAP用プライマーセットにおいては、例えば、前記第一のプライマーおよび前記第二のプライマーのいずれか一方、または、前記両方のプライマーが、前記標識核酸であってもよいし、前記第三のプライマーが前記標識核酸であってもよい。また、第一のプライマーおよび第二のプライマーのいずれか一方もしくは両方と、第三のプライマーとが、全て前記標識核酸であってもよい。
また、本発明のSMAP法を、例えば、後述する変異検出方法に適用する場合、前記SMAP用プライマーを以下のように設計することが好ましい。すなわち、前記SMAP用プライマーセットは、目的の部位に変異を有する核酸配列(以下、「変異型核酸配列」という)または前記目的の部位に変異を有さない核酸配列(以下、「野生型核酸配列」という)を、標的核酸配列とし、目的の変異を生じる部位が、配列(A)、配列(B)もしくは配列(C)に含まれるか、または、配列(A)と配列(B)との間もしくは配列(A)と配列(C)との間に配置されるようにプライマーセットを設計することが好ましい。
前記プライマーセットとして、目的の部位に変異を有する核酸配列(変異型配列)を標的核酸配列として設計したプライマーセットを用いる場合、例えば、核酸増幅反応後における増幅産物の存在が、変異型配列の存在を示し、増幅産物の不在または減少が、変異型配列の不在を示す。一方、目的の部位に変異を有さない核酸配列(野生型配列)を標的核酸配列として設計したプライマーセットを用いる場合、例えば、核酸増幅反応後における増幅産物の存在が、変異型配列の不在を示し、増幅産物の不在または減少が、変異型配列の存在を示す。ここで、「増幅産物の減少」とは、得られた増幅産物の量が、核酸試料中に標的核酸配列が存在する場合に得られる増幅産物の量と比較して、減少していることを意味する。
前記プライマーセットとしては、例えば、前記目的の部位が、前記配列(A)に含まれるように設計されたプライマーセットが好ましい。このようなプライマーセットであれば、例えば、核酸試料中に標的核酸配列(例えば、野生型配列)が含まれる場合、核酸増幅反応において第一のプライマーが配列(A)にアニーリングするため、増幅産物が得られる。一方、核酸試料中に前記標的核酸配列とは異なる核酸配列(例えば、変異型配列)が含まれている場合、核酸増幅反応において第一のプライマーが配列(A)にアニーリングし難いため、増幅産物が得られないか、または、得られる増幅産物の量が著しく減少する。第一のプライマーに含まれる配列(Ac')は、前記配列(A)に相補的な配列とすることが好ましい。
また、前記プライマーセットとしては、例えば、前記目的部位が、前記配列(C)に含まれるように設計されたプライマーセットが好ましい。このようなプライマーセットであれば、例えば、核酸試料中に標的核酸配列(例えば、野生型配列)が含まれている場合、核酸増幅反応において第二のプライマーが配列(C)にアニーリングするため、増幅産物が得られる。一方、核酸試料中に、前記標的核酸配列とは異なる核酸配列(例えば、変異型配列)が含まれている場合、核酸増幅反応において第二のプライマーが配列(C)にアニーリングし難いため、増幅産物が得られないか、または得られる増幅産物の量が著しく減少する。第二のプライマーに含まれる配列(Cc')は、前記配列(C)に相補的な配列とすることが好ましい。
また、前記プライマーとしては、例えば、前記目的部位が、前記配列(B)に含まれるように設計されたプライマーセットであることが好ましい。このようなプライマーセットであれば、例えば、核酸試料中に標的核酸配列(例えば、野生型配列)が含まれている場合、核酸増幅反応において、第一のプライマーが配列(A)にアニーリングして伸長反応が行なわれた後、前記プライマーに含まれる配列(B')が伸長鎖上の配列(Bc)にハイブリダイズする。このため、ステム−ループ構造が効率的に形成される。この効率的なステム−ループ構造の形成により、他の第一のプライマーが鋳型にアニーリングすることが可能となり、前述の図45に示した作用機序が効率的に進行するため、増幅産物が得られる。一方、核酸試料中に前記標的核酸配列とは異なる核酸配列(例えば、変異型配列)が含まれている場合、核酸増幅反応における前記ステム−ループ構造の形成が困難となるため、前記図45に示される作用機序が妨げられ、増幅産物が得られないか、または得られる増幅産物の量が著しく減少する。また、第一のプライマーに含まれる配列(B')は、前記配列(B)と同一の配列とすることが好ましい。
また、前記プライマーセットしては、例えば、前記目的部位が、前記配列(A)と前記配列(B)との間に配置されるように設計されたプライマーセットが好ましい。このようなプライマーセットによれば、核酸試料中に標的核酸配列(例えば、野生型配列)が含まれている場合、核酸増幅反応において、第一のプライマーが配列(A)にアニーリングして伸長反応が行なわれた後、前記プライマーに含まれる配列(B')が伸長鎖上の配列(Bc)にハイブリダイズするため、ステム−ループ構造が効率的に形成される。この効率的なステム−ループ構造の形成により、他の第一のプライマーが鋳型にアニーリングすることが可能となり、前記図45に示される作用機序が効率的に進行するため、増幅産物が得られる。一方、核酸試料中に、前記標的核酸配列とは異なる核酸配列(例えば、変異型配列)が含まれている場合、第一のプライマーに含まれる配列(B')と伸長鎖上の配列(Bc)とが適切な距離を維持していないため、核酸増幅反応における上記ステム−ループ構造の形成が困難となる。従って、この場合、前記図45に示される作用機序が妨げられ、増幅産物が得られないか、または得られる増幅産物の量が著しく減少する。
また、前記プライマーセットとしては、前記目的部位が、前記配列(A)と前記配列(C)との間に配置されるように設計されたプライマーセットが好ましい。このようなプライマーセットによれば、核酸試料中に標的核酸配列が含まれている場合(例えば、野生型配列)、核酸増幅反応において、第一のプライマーが配列(A)にアニーリングして伸長反応が行なわれた後、前記プライマーに含まれる配列(B')が伸長鎖上の配列(Bc)にハイブリダイズするため、ステム−ループ構造が効率的に形成される。この効率的なステム−ループ構造の形成により、他の第一のプライマーが鋳型にアニーリングすることが可能となり、前記図45に示される作用機序が効率的に進行するため、増幅産物が得られる。一方、核酸試料中に、前記標的核酸配列とは異なる核酸配列(例えば、変異型配列)が含まれている場合、増幅産物が得られないか、または得られる増幅産物の量が著しく減少する。例えば、配列(A)と配列(C)との間における長い配列の挿入により、標的核酸配列とは異なる核酸配列が核酸試料中に含まれている場合、核酸増幅の速度(効率)が著しく低減されるため、増幅産物が得られないか、または得られる増幅産物の量が著しく減少する。また、配列(A)と配列(C)との間における配列の欠失により、標的核酸配列とは異なる核酸配列が核酸試料中に含まれており、かつ、この欠失により配列(B)の一部または全部が失われている場合、第一のプライマーに含まれる配列(B')が伸長鎖上にハイブリダイズできないため、ステム−ループ構造の形成が不可能となるか、または困難となる。このため、前記図45に示される作用機序が妨げられ、増幅産物が得られないか、または得られる増幅産物の量が著しく減少する。さらに、配列(A)と配列(C)との間における配列の欠失により、標的核酸配列とは異なる核酸配列が核酸試料中に含まれており、かつこの欠失による配列(B)の部分的欠失が生じない場合にも、核酸増幅の速度(効率)が低減されるため、増幅産物が得られないか、または得られる増幅産物の量が著しく減少する。
LAMP法
前記対称型のプライマーセットは、前述のように、一方のプライマーの形態と他方のプライマーの形態とが同じである対称型の一対のプライマーを有するプライマーセットであり、中でも、前記LAMP法に適用することが好ましい。このプライマーセットを、以下、「LAMP用プライマーセット」ともいう。
LAMP法は、例えば、4種類のプライマーが必要とされ、それらが6個所の領域を認識することにより、目的遺伝子の増幅が可能となる。すなわち、この方法では、まず、第一のプライマーが鋳型鎖にアニーリングして伸長反応が起こる。次に、第一のプライマーよりも上流側に設計された第二のプライマーによる鎖置換反応によって、第一のプライマーによる伸長鎖が鋳型鎖から分離する。この時、剥ぎ取られた第一のプライマー伸長産物の構成に起因して伸長鎖の5’末端部分でステム−ループ構造が形成される。これと同様の反応が二本鎖核酸のもう一方の鎖、もしくは、剥ぎ取られた第一のプライマー伸長産物の3’末端側についても行なわれる。そして、これらの反応が繰り返されることにより、標的核酸が増幅される。LAMP法における鋳型は、例えば、3’末端と5’末端において、それぞれ末端領域に相補的な塩基配列からなる領域を同一鎖上に備え、この互いに相補的な塩基配列がアニールしたときに両者の間に塩基対結合が可能となるループが形成される鋳型である(「ダンベル型鋳型核酸」ともいう)。LAMP法は、例えば、国際公開第00/28082号パンフレット、国際公開第01/034838号パンフレット等に従って行うことができる。
PCR法
PCR法は、前述のように、反応温度を変化させることにより、例えば、二重鎖核酸の解離、解離した一重鎖へのプライマーのアニーリング、プライマーからの核酸合成により、標的核酸配列の増幅を行うことができる。PCR法の条件は、特に制限されず、当業者であれば適宜設定できる。
本発明のプライマーの蛍光強度は、例えば、結合した色素部分のエキシトン相互作用のコントロールにより、効果的に変化させることができる。本発明において、特に、エキシトン相互作用を用いたアプローチによれば、on-offプローブとして機能するために十分高い消光性能を得ることができ、かつ、例えば、従来のアッセイと比較して明確に異なる多くの利点を得ることができる。エキシトン効果を利用したプライマーが示す光物理的性質は、非常に特徴的であるのみならず、DNAシークエンシング(配列決定)、ジェノタイピング(遺伝子型解析)および遺伝子発現観測のための新規な蛍光DNAプライマーのデザインに好適である。
(2)第二の核酸増幅方法
本発明の第二の核酸増幅方法は、核酸試料中の標的核酸配列を増幅する方法であって、下記(A)工程と下記(B’)工程とを含むことを特徴とする。
(A) 前記核酸試料を準備する工程
(B’) 下記(B1’)工程および(B2’)工程を含む工程
(B1’) プライマー、または、一対のプライマーを含むプライマーセットを用いて、核酸試料中の標的核酸配列を増幅する工程
(B2’) 前記(B1’)工程で増幅した一本鎖の核酸配列と、前記式(16)、(16b)、(17)、(17b)、(18)または(18b)で表される構造を少なくとも一つ含む標識核酸からなるプローブとのハイブリダイゼーションを行う工程
本発明の第二の核酸増幅方法において、前記式(16)、(16b)、(17)、(17b)、(18)または(18b)で表される構造は、前述と同様の標識構造であり、具体例も前述のようなものがあげられる。また、本発明の第二の核酸増幅方法において、前記標識構造を含む前記標識核酸を「標識プローブ」という。
本発明における前記標識プローブは、前記核酸構造を含んでいればよく、その他の構成は特に制限されない。前記標識プローブとしては、例えば、前述の標識プライマーと同様にして、設計、製造することができる。また、前記プローブの配列は、特に制限されず、例えば、検出目的の標的核酸配列の配列や、DNAやRNAにおける前記標的核酸配列の周辺の配列情報等に応じて、適宜設定できる。
本発明の第二の核酸増幅方法におけるプライマーおよびプライマーセットは、特に制限されず、例えば、目的の標的核酸配列や、核酸増幅反応の種類等に応じて、適宜設定できる。また、本発明における核酸増幅方法の種類は、特に制限されず、前述のような、SMAP法やLAMP法等の各種等温増幅法やPCR法等があげられ、前記第一の核酸増幅方法と同様に行うことができる。
本発明の第二の核酸増幅方法によれば、前記標識プローブを使用するため、例えば、核酸増幅反応液の蛍光強度を検出するのみで、例えば、標的核酸配列の増幅の有無を判断することができる。これは、例えば、以下のような理由による。プローブが相補的な核酸配列にハイブリダイゼーションすると、二本鎖核酸が形成されるため、前記二本鎖核酸に前記標識プライマーの原子団(色素)がインターカレーションまたはグループバインディングされる。この際、例えば、前述のような前記原子団(色素)のエキシトン効果が生じないため、前記原子団は蛍光発光を生じる。一方、ハイブリダイゼーションしなかった場合には、エキシントン効果が生じるため、前記原子団は蛍光発光を生じない。このため、例えば、プローブが、核酸増幅反応により得られた増幅産物にハイブリダイゼーションしない場合や、増幅が起きない場合、蛍光発光を生じる原子団が見られない、または、増加しないことなる。したがって、蛍光強度を検出すれば、増加した場合には、標的核酸配列が増幅したと判断でき、非増加の場合には、標的核酸配列が増幅していないと判断できる。
前記標識プローブは、例えば、前記(B1’)工程の核酸増幅反応の前に反応液に添加してもよいし、前記(B1’)工程の核酸増幅反応の後に反応液に添加してもよい。前者の場合、蛍光強度の検出は、例えば、前記(B1’)工程の核酸増幅反応と並行して、連続的または断続的に行ってもよいし、前記(B1’)工程の終了後に行ってもよい。前記(B1’)工程の反応終了後に行う場合は、あわせて、バックグラウンドとして、前記(B1’)工程の反応開始前にも検出することが好ましい。他方、前記(B1’)工程と(B2’)工程とを別個に行う場合は、例えば、前記標識プローブを前記(B1’)工程の核酸増幅反応の後に反応液に添加することが好ましい。この場合、蛍光強度の検出は、例えば、(B1’)工程の後に行う。その際、バックグラウンドとして、例えば、前記(B1’)工程の後であって、前記標識プローブの添加前もしくは添加直後の蛍光強度を、あわせて検出することが好ましい。検出方法の具体例は、前述の通りである。
(1)本発明におけるプローブは、液相でのホモジニアスアッセイ(96穴マイクロプレート又はキャピラリーなどを使用)で使用できる。
(2)本発明のプローブは、PCRプローブとして使用できる。DNA増幅反応中での増幅曲線の検出(リアルタイムPCR)、TaqManプローブに代わるローコストな手法として応用できる。プライマーの標識、もしくは内部標識プローブとして使用することができる。
(3)本発明のプローブは、DNAチップにおける捕捉プローブもしくは標識プローブとして使用することができる。ハイスループットで試薬不要なシステムであり、標識過程・洗浄過程が不要である。人為的に生じる誤差を大きく回避できる。ガラスやそれに代わる固相担体素材(金、ITO、銅などの基板、ダイヤモンドやプラスチックなど多検体を貼り付けることが可能な素材)においての同時多項目(ハイスループット)な解析が可能である。
(4)本発明のプローブは、ビーズ、ファイバー、又はヒドロゲルへ固定化できる。半液体・半固体での環境下で遺伝子を検出することができる。液体のような測定環境を有しながら、固体のように持ち運ぶことが可能である。
(5)本発明のプローブは、ブロッティング(サザンブロット、ノーザンブロット、ドットブロットなど)用のプローブとして使用できる。目的の遺伝子断片だけを発光させて検出することができる。本発明の方法によれば、ハイブリダイゼーション操作の後、洗浄が不要である。
(6)本発明のプローブは、細胞内核酸の検出・追跡のためのプローブとして使用することができる。これにより、細胞内のDNA/RNAの時空間的解析が可能になる。蛍光顕微鏡やセルソーターを使用することができる。DNAの標識、RNAへの転写・スプライシングの追跡、RNAiの機能解析などに応用できる。本発明の方法では、洗浄の必要が無いので、生細胞の機能追跡に適している。
(7)本発明のプローブは、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)のプローブとして使用することができる。本発明の方法により、組織の染色などを行うことができる。本発明の方法では、洗浄の必要が無いので、人為的に生じる誤差が小さい。すなわち、本発明のプローブは、標的生体分子を認識しないときは蛍光を発しない蛍光色素として働くため、これを用いれば、煩雑な洗浄工程を必要としないバイオイメージングが確立できる。そのことは、高信頼性、低労力でリアルタイムな蛍光観測につながる。
また、本発明の蛍光プローブ(標識物質)の効果としては、従来の一本鎖状態消光型蛍光プローブ(モレキュラービーコンなど)と比較して、例えば、以下の利点を挙げることができる。ただし、これらも例示であって、本発明を何ら制限しない。
(1)色素を1種類しか用いない場合、合成が容易である。
(2)本発明のDNAプローブ(標識物質)の末端がフリーである場合、PCRプローブとして使いやすい。
(3)ヘアピン構造など特殊な高次構造を形成する必要がないので、ステム配列など配列認識に関与しない配列を必要としない(無駄な配列が無く、配列の拘束もない)。
(4)プローブの複数の箇所(望む場所)に蛍光色素を導入できる。
(5)色素構造を1分子中に2つ以上含む場合、色素間の位置関係が拘束されているので、S/N比(ハイブリダイゼーション前後の蛍光強度比)が大きい。
本発明のプローブの蛍光強度は、例えば、結合した色素部分のエキシトン相互作用のコントロールにより、効果的に変化させることができる。本発明において、特に、エキシトン相互作用を用いたアプローチによれば、on-offプローブとして機能するために十分高い消光性能を得ることができ、かつ、例えば前述のように、従来のアッセイと比較して明確に異なる多くの利点を得ることができる。このようなon-off蛍光ヌクレオチドのデザインは、例えば、洗浄を必要としないバイオイメージングアッセイの確立のために非常に重要である。エキシトン効果を利用したプローブが示す光物理的性質は、非常に特徴的であるのみならず、DNAシークエンシング(配列決定)、ジェノタイピング(遺伝子型解析)、DNA構造遷移のモニタリングおよび遺伝子発現観測のための新規な蛍光DNAプローブのデザインに好適である。
また、本発明のプローブ(核酸)を用いれば、例えば、標的核酸配列を定量することにより、当該配列の増幅・分解・タンパク結合等の現象が生じたことを即座に検出するとともに、それらの現象量を定量することもできる。この検出および定量は、以下の説明により可能となるが、この説明は例示であり、本発明を限定するものではない。すなわち、まず、本発明のプローブ(核酸)が前記標的核酸配列と一定の物質量比でハイブリダイゼーションし、二本鎖を形成する。形成される二本鎖の物質量は、前記標的核酸配列の物質量と正比例するので、前記二本鎖の蛍光強度を測定することで、標的核酸配列を検出するとともに、その物質量を定量することができる。この場合において、本発明のプローブ(核酸)は、蛍光発光が抑制されているので、前記二本鎖の蛍光強度測定を妨害せず、正確な測定が可能となる。
[変異検出方法]
本発明の変異検出方法は、核酸試料中の標的核酸配列における変異の有無を検出する方法であって、下記(a)〜(c)工程を含むことを特徴とする。
(a) 本発明の核酸増幅方法により、核酸試料中の標的核酸配列を増幅する工程
(b) 前記(a)工程の前後における蛍光強度をそれぞれ測定する工程
(c) 前記(b)工程で測定した前記(a)工程前後の蛍光強度を比較することにより、変異の有無を検出する工程
本発明の変異検出方法は、前記本発明のプライマーまたはプライマーセットを用いた核酸増幅方法により標的核酸配列を増幅させればよく、その他の条件や工程は何ら制限されない。蛍光強度の測定方法や測定条件等は、例えば、前記本発明の標識プライマーの原子団の種類等に応じて、適宜設定できる。なお、前記(b)工程における蛍光強度の測定方法は、特に制限されず、前述と同様である。
本発明において「変異」とは、核酸配列中に、対照となる核酸配列に対して異なる塩基(二本鎖核酸の場合には塩基対)が存在することを意味する。前記変異としては、例えば、塩基の置換、欠失または挿入があげられる。前記対照としては、例えば、ある特定の塩基配列に関して、標準的な塩基配列、例えば、標準的な遺伝子型であるとされる野生型(wildtype;正常型(normal type)ともいう)の核酸配列があげられる。
本発明の変異検出方法によれば、本発明の標識プライマーまたはこれを含む本発明のプライマーセットを使用するため、前記(b)および(c)工程において、核酸増幅反応液の蛍光強度を検出して、反応前後の蛍光強度の変化を比較するのみで、変異の有無を判断することができる。これは、例えば、以下のような理由による。プライマーが標的核酸配列を含むDNAやRNA等にハイブリダイゼーションすることにより、二本鎖核酸が形成されると、前記二重鎖核酸に前記標識プライマーの原子団(色素)がインターカレーションまたはグループバインディングされる。この場合、例えば、前述のような前記原子団(色素)のエキシトン効果は生じないため、前記原子団は蛍光発光を生じる。一方、ハイブリダイゼーションしなかった場合には、エキシントン効果が生じるため、前記原子団は蛍光発光を生じない。このため、例えば、一つのプライマーを、検出目的の変異を含む配列の相補的配列に設計した場合、鋳型における標的核酸配列が変異を有すると、前記プライマーは標的核酸配列にハイブリダイゼーションし、核酸合成が進行するため、結果的に、増幅は起こらず、蛍光発光を生じる。しかしながら、前記標的核酸配列が変異を有さないと、前記プライマーは標的核酸配列にハイブリダイゼーションできないため、結果的に、増幅は起こらず、蛍光発光は生じない。このため、蛍光強度を検出すれば、増加した場合には、目的の変異が存在すると判断でき、非増加の場合には、目的の変異が存在しないと判断できる。なお、前記プライマーを野生型に相補的な配列に設計した場合は、反対に、蛍光強度が増加した場合には、目的の変異が存在しないと判断し、非増加の場合には、目的の変異が存在すると判断することも可能である。
本発明においては、いずれのプライマーが、前記標識プライマーであってもよい。また、本発明のプライマーセットは、例えば、検出目的の塩基が変異型であるプライマー(変異型プライマー)と、前記塩基が野生型であるプライマー(野生型プライマー)とを含んでもよい。この場合、変異型プライマーと野生型プライマーとが、例えば、それぞれ異なる検出条件の蛍光性原子団を有する標識プライマーであることが好ましい。これによって、核酸試料に含まれる変異型DNAと野生型DNAの量的な解析も可能になる。
本発明の変異検出方法は、前記(a)工程において、例えば、検出波長が異なる蛍光性原子団を有する2種類以上の本発明の標識プライマーを使用することができる。具体的には、2種類以上の標的核酸配列の変異を検出する場合、前記(a)工程において、各標的核酸配列をそれぞれ増幅させるためのプライマーとして、異なる蛍光性原子団を有する2種類以上の本発明の標識プライマーを併用し、前記(c)工程において、前記各蛍光性原子団に応じた各検出波長により、それぞれの蛍光強度を測定することが好ましい。これによって、例えば、同一反応液で、2種類以上の標的核酸配列の増幅を行い、且つ、各蛍光性原子団に応じた検出波長で各標的核酸配列の変異増幅を検出することができる。
本発明の変異検出方法は、標的核酸配列における変異部位の検出を目的として増幅を行う場合、例えば、前記(a)工程において、前記標的核酸配列における変異部位を含む領域に対して完全に相補な配列を有する本発明の標識プライマー(標識フルマッチプライマー)と、前記変異部位を含む領域に対して前記変異部位を除いて完全に相補な配列を有するプライマー(ミスマッチプライマー)とを使用することが好ましい。このように、ミスマッチプライマーを共存させれば、例えば、フルマッチプライマーが、鋳型におけるミスマッチ領域にハイブリダイズすることが抑制され、より特異性の高い増幅が可能となる。前記ミスマッチプライマーは、例えば、未標識プライマーでもよいし、本発明の標識プライマーであってもよい。
[特異性の向上方法]
また、本発明は、さらに、標的核酸配列に対するプライマーの特異性を向上させる方法を含む。本発明の第一の特異性向上方法は、前記標的核酸配列を増幅するための前記プライマーとして、本発明の蛍光原子団を有する標識プライマーを使用することを特徴とする。すなわち、プライマー構造を、前記式(16)、(16b)、(17)、(17b)、(18)または(18b)で表される構造を少なくとも一つ含む標識核酸に設計することで、前述のように、標的核酸配列に対するプライマーの特異性を向上することができる。なお、本発明は、前記構造の標識核酸とすることで、前記構造を含まない未標識核酸と比較して、Tm値が向上することから、Tm値の向上方法ということもできる。なお、標識プライマーの具体例や、使用方法等は、前述の通りである。
本発明の第二の特異性向上方法は、前記標的核酸配列を増幅するための前記プライマーとして、前記標的核酸配列における変異部位を含む領域に対して完全に相補な配列を有する本発明の標識プライマー(標識フルマッチプライマー)を使用し、さらに、前記プライマーの特異性を向上させるプライマーとして、前記変異部位を含む領域に対して前記変異部位を除いて完全に相補な配列を有するプライマー(ミスマッチプライマー)を併用することを特徴とする。このように、本発明の標識フルマッチプライマーとミスマッチプライマーを併用することで、標識フルマッチプライマーが、例えば、鋳型におけるミスマッチ領域にハイブリダイズすることが抑制され、標識フルマッチプライマーの特異性が向上できる。なお、標識プライマーやミスマッチプライマーの具体例、使用方法等は、前述の通りである。
[キット]
本発明の核酸増幅用キットは、標的核酸配列を増幅する核酸増幅方法に使用するキットであり、本発明のプライマーまたはプライマーセットを含むことを特徴とする。本発明の核酸増幅用キットは、本発明のプライマーまたはプライマーセットを含んでいればよく、その他の構成や含有割合等は何ら制限されない。また、本発明の核酸増幅用キットを適用する核酸増幅方法は、何ら制限されないが、前述のように各種等温増幅法やPCR法等に適用できる。
本発明の変異検出用キットは、標的核酸配列における変異の有無を検出する変異検出方法に使用するキットであり、本発明の核酸増幅用キットを含むことを特徴とする。本発明の変異検出用キットは、本発明の核酸増幅用キットを含んでいればよく、その他の構成や含有割合等は何ら制限されない。また、本発明の変異検出用キットを適用する変異検出方法は、何ら制限されないが、例えば、前述のような各種等温増幅法やPCR法等を利用した方法に適用できる。
本発明の核酸増幅用キットならびに変異検出用キットは、例えば、本発明の核酸増幅方法ならびに変異検出方法に使用できる。
また、本発明の核酸増幅用キットならびに変異検出用キットは、さらに、核酸合成手段や、蛍光強度測定手段等を備えてもよい。前記核酸合成手段は、特に制限されず、例えば、公知の自動核酸合成機等があげられ、前記蛍光強度測定手段も、特に制限されず、例えば、公知の蛍光測定器等があげられる。
[装置]
つぎに、本発明の核酸増幅装置は、本発明の核酸増幅方法を実施するための核酸増幅装置であって、核酸増幅反応を実施する反応部と、前記反応部の温度を制御する温度制御手段と、前記反応部の蛍光強度を検出する検出手段とを備えることを特徴とする。また、本発明の変異検出装置は、本発明の変異検出方法を実施するための変異検出装置であって、核酸増幅反応を実施する反応部と、前記反応部の温度を制御する温度制御手段と、前記反応部の蛍光強度を検出する検出手段とを備えることを特徴とする。なお、これらの各装置は、例えば、その他の構成として、例えば、前記反応部に試薬を供給する試薬供給手段、前記試薬を収納する試薬収納部等を備えてもよい。
以上のような本発明の各方法、各キットおよび各装置は、研究、臨床、診断等において、極めて有用である。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下において「ODN」とは、オリゴDNA(DNAオリゴマー)を意味するものとする。
[測定条件等]
試薬、溶媒は一般に市販されているものを使用した。ビオチンのN-ヒドロキシスクシンイミジルエステルはPIERCE社のものを使用した。化合物精製用のシリカゲルはWakoゲルC-200(和光純薬)を使用した。1H、13C、および31PNMRスペクトルは、JEOL(日本電子株式会社)のJNM-α400(商品名)により測定した。カップリング定数(J値)は、ヘルツ(Hz)で表している。ケミカルシフトは、ppmで表し、内部標準には、ジメチルスルホキシド(δ=2.48 in 1HNMR, δ=39.5 in 13CNMR)及びメタノール(δ=3.30 in 1HNMR, δ=49.0 in 13CNMR)を用いた。31PNMR測定には、外部標準としてH3PO4(δ=0.00)を用いた。ESIマススペクトルは、Bruker社のBruker Daltonics APEC-II(商品名)を用いて測定した。DNA自動合成機はApplied Biosystems社の392 DNA/RNA synthesizer(商品名)を使用した。逆相HPLCは、ギルソン社の装置Gilson Chromatograph, Model 305(商品名)とケムコ社のCHEMCOBOND 5-ODS-H分取用カラム(商品名、10×150mm)を用いて分離を行い、UV検出器Model 118(商品名)により、波長260nmで検出した。DNAの質量は、MALDI-TOF MSにより測定した。MALDI-TOF MSは、Applied Biosystems社のPerseptive Voyager Elite(商品名)を用い、加速電圧21kV、ネガティブモードで測定し、マトリクスとしては2',3',4'-トリヒドロキシアセトフェノンを用い、T8([M.H]. 2370.61)およびT17([M.H]. 5108.37)を内部標準として用いた。UVおよび蛍光スペクトルは、株式会社島津製作所のShimadzu UV-2550(商品名)分光光度計と、RF-5300PC(商品名)蛍光分光光度計をそれぞれ用いて測定した。蛍光寿命は、株式会社堀場製作所の小型高性能蛍光寿命測定機器HORIBA JOBIN YVON FluoroCube(商品名)に、NanoLED-05A(商品名)を装備して測定した。二本鎖核酸の融点(Tm)の測定は、100mM塩化ナトリウムを含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH=7.0)中において、最終二本鎖濃度2.5μMで行った。試料の吸光度は、波長260nmで測定し、10℃から90℃の範囲において、0.5℃/minの速度で加熱しながら追跡した。これにより観測された特性から、最初に変化が生じた温度を融点Tmとした。
吸収スペクトル、蛍光スペクトルおよびCDスペクトル測定は、特に記載しない限り、ストランド濃度2.5μM(一本鎖または二本鎖)で、100mM塩化ナトリウムを含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH=7.0)中、光路長1cmの測定セルを用いて行った。励起および蛍光発光のバンド幅は1.5nmであった。蛍光量子収率(ΦF)は、9,10-ジフェニルアントラセンを対照物質として用い、エタノール中における9,10-ジフェニルアントラセンの量子収率ΦF=0.95に基づいて算出した。発光スペクトルの面積は、インストールメンテーションソフトウェアを用いた積分により算出した。量子収率(ΦF)は、下記式(1)により算出した。
ΦF(S)/ΦF(R)=[A(S)/A(R)]×[(Abs)(R)/(Abs)(S)]×[n(S) 2/n(R) 2] (1)
上記式(1)中、ΦF(S)は、試料(Sample)の蛍光量子収率であり、ΦF(R)は、対照物質(Reference)の蛍光量子収率である。A(S)は、試料の蛍光スペクトル面積であり、A(R)は、対照物質の蛍光スペクトル面積である。(Abs)(S)は、励起波長における試料溶液の光学密度であり、(Abs)(R)は、励起波長における対照物質溶液の光学密度である。n(S)は、試料溶液の屈折率であり、n(R)は、対照物質溶液の屈折率であり、n(S)=1.333およびn(R)=1.383として計算した。
[中間体合成例1〜3]
下記スキーム1にしたがって、2つの活性アミノ基がそれぞれトリフルオロアセチル基で保護された化合物102および103を合成(製造)し、さらに、ホスホロアミダイト104を合成した。
スキーム1 反応試薬と反応条件 (a) (i) N-hydroxysuccinimide, EDC/DMF, (ii) tris(2-aminoethyl)- amine/CH3CN, (iii) CF3COOEt, Et3N; (b) DMTrCl/pyridine; (c) 2-cyanoethyl-N,N,N',N'-tetraisopropyl phosphoramidite, 1H-tetrazole/CH3CN.
前記スキーム1について、より詳しくは以下の通りである。
[中間体合成例1:2-[2-[N,N-ビス(2-トリフルオロアセトアミドエチル)]-アミノエチル]カルバモイル-(E)-ビニル)-2'-デオキシウリジン(2-[2-[N,N-bis(2-trifluoroacetamidoethyl)]-aminoethyl]carbamoyl-(E)-vinyl)-2'-deoxyuridine、化合物102)の合成]
出発原料の(E)-5-(2-カルボキシビニル)-2'-デオキシウリジン((E)-5-(2-carboxyvinyl)-2'-deoxyuridine、化合物101)は、Tetrahedron 1987, 43, 20, 4601-4607に従って合成した。すなわち、まず、430mgの酢酸パラジウム(II)(FW224.51)と1.05gのトリフェニルホスフィン(FW262.29)に71mLの1,4-ジオキサンを加え、さらに7.1mLのトリエチルアミン(FW101.19, d=0.726)を加え、70℃で加熱撹拌した。反応溶液が赤褐色から黒褐色に変化したら14.2gの2'-デオキシ-5-ヨードウリジン(FW354.10)と7.0mLのアクリル酸メチル(FW86.09,d=0.956)を1,4-ジオキサンに懸濁させたものを加え、125℃で1時間加熱還流させた。その後、熱いうちにろ過し、メタノールで残さを洗浄し、ろ液を回収した。そのろ液から溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムで生成物を精製した(5-10% メタノール/ジクロロメタン)。集めたフラクションの溶媒を減圧留去し、残った白色固体を減圧下で乾燥した。その乾燥固体に約100mLの超純水を加え、3.21gの水酸化ナトリウム(FW40.00)を加え、25℃で終夜撹拌した。その後、濃塩酸を加えて溶液を酸性にし、生じた沈殿をろ過、超純水で洗浄し、減圧下で乾燥した。これにより、目的化合物(化合物101)8.10g(収率68%)を白色粉末として得た。なお、前記白色粉末が目的化合物101であることは、1HNMR測定値が文献値と一致することから確認した。また、13CNMR測定値を以下に記す。
(E)-5-(2-カルボキシビニル)-2'-デオキシウリジン(化合物101):
13CNMR(DMSO-d6):δ168.1, 161.8, 149.3, 143.5, 137.5, 117.8, 108.4, 87.6, 84.8, 69.7, 60.8, 40.1.
次に、1.20gの(E)-5-(2-カルボキシビニル)-2'-デオキシウリジン 101(分子量298.25)と925mgのN-ヒドロキシスクシンイミド(分子量115.09)と1.54gの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(分子量191.70)を撹拌子の入ったナスフラスコに入れ、20mLのDMFを加えて、25℃で16時間撹拌した。約1mLの酢酸を加え、300mLの塩化メチレンと100mLの超純水を加え、激しく撹拌した。水層を除き、さらに100mLの超純水を加え、同様に2回洗浄した。生じた沈殿をろ過し、塩化メチレンで洗浄し、減圧下で乾燥した。ろ液から溶媒を留去し、生じた沈殿に塩化メチレンを加えて、沈殿を前記と同様に回収した。回収した沈殿を全て合わせ、それを80mLのアセトニトリルに懸濁させ、激しく撹拌した。そこに3.0mLのトリス(2-アミノエチル)アミン(分子量146.23, d=0.976)を一気に加え、25℃でさらに10分間撹拌した。その後、4.8mLのトリフルオロ酢酸エチル(分子量142.08, d=1.194)を加え、さらに5.6mLのトリエチルアミン(分子量101.19, d=0.726)を加え、25℃で3時間撹拌した。溶媒を留去し、シリカゲルカラムで精製した(5-10% MeOH/CH2Cl2)。溶媒を留去し、少量のアセトンに溶解させ、エーテルを加えると白色沈殿を生じた。ろ過、エーテルで洗浄後、減圧下で乾燥し、884mg(33.5%)の目的物質(化合物102)を得た。
なお、原料、溶媒等の使用量、反応時間および工程を若干変化させる以外は上記と同様に合成したところ、収率を37%まで向上させることができた。すなわち、597mg(2.0mmol)の(E)-5-(2-カルボキシビニル)-2'-デオキシウリジン 101(分子量298.25)と460mg(4.0mmol)のN-ヒドロキシスクシンイミド(分子量115.09)と(767mg, 4.0mmol)の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド ヒドロクロリド(分子量191.70)を撹拌子の入ったナスフラスコに入れ、5.0mLのDMFを加えて、25℃で3時間撹拌した。約0.5mLの酢酸を加え、100mLの塩化メチレンと100mLの超純水を加え、激しく撹拌した。生じた沈殿をろ過し、水で洗浄し、減圧下で終夜乾燥させた。得られた白色の残渣を50mLのアセトニトリルに懸濁させ、激しく撹拌した。そこに3.0mL(20mmol)のトリス(2-アミノエチル)アミン(分子量146.23, d=0.976)を一気に加え、25℃でさらに10分間撹拌した。その後、4.8mLのトリフルオロ酢酸エチル(分子量142.08, d=1.194)を加え、さらに5.6mL(40mmol)のトリエチルアミン(分子量101.19, d=0.726)を加え、25℃で16時間撹拌した。溶媒を留去し、シリカゲルカラムで精製した(5-10% MeOH/CH2Cl2)。溶媒を留去し、少量のアセトンに溶解させ、エーテルを加えると白色沈殿を生じた。ろ過、エーテルで洗浄後、減圧下で乾燥し、453mg(37%)の目的物質(化合物102)を白色粉末として得た。以下に、化合物102の機器分析値を示す。また、図2に、1HNMRスペクトル図を示す。
2-[2-[N,N-ビス (2-トリフルオロアセトアミドエチル)]-アミノエチル]カルバモイル-(E)-ビニル)-2'-デオキシウリジン(化合物102):
1HNMR(CD3OD):δ8.35(s,1H), 7.22(d, J=15.6Hz, 1H), 7.04(d, J=15.6Hz, 1H), 6.26(t, J=6.6Hz, 1H), 4.44-4.41(m, 1H), 3.96-3.94(m, 1H), 3.84(dd, J=12.2, 2.9Hz, 1H), 3.76(dd, J=12.2, 3.4Hz, 1H), 3.37-3.30(m, 6H), 2.72-2.66(m, 6H), 2.38-2.23(m, 2H).13CNMR(CD3OD):δ169.3, 163.7, 159.1(q,J=36.4Hz), 151.2, 143.8, 134.3, 122.0, 117.5(q,J=286Hz), 110.9, 89.1, 87.0, 71.9, 62.5, 54.4, 53.9, 41.7, 38.9, 38.7. HRMS(ESI) calcd for C22H29F6N6O8 ([M+H]+) 619.1951, found 619.1943.
[中間体合成例2:5'-O-ジメトキシトリチル-(2-[2-[N,N-ビス(2-トリフルオロアセタミドエチル)]-アミノエチル]カルバモイル-(E)-ビニル)-2'-デオキシウリジン(5'-O-DMTr-(2-[2-[N,N-bis(2-trifluoroacetamidoethyl)]-aminoethyl]carbamoyl-(E)-vinyl)-2'-deoxyuridine、化合物103)の合成]
化合物102の5'-水酸基をDMTr基で保護し、化合物103を得た。すなわち、まず、618mgの化合物102(分子量618.48)と373mgの4,4'-ジメトキシトリチルクロリド(分子量338.83)を撹拌子の入ったナスフラスコに入れ、10mLのピリジンを加えて、25°で16時間撹拌した。少量の水を加え、溶媒を留去し、シリカゲルカラムで精製した(2-4% MeOH, 1% Et3N/CH2Cl2)。目的化合物103を含むフラクションの溶媒を留去し、735.2mg(79.8%)の目的物質(化合物103)を得た。以下に、化合物103の機器分析値を示す。また、図3に、1HNMRスペクトル図を示す。
5'-O-(ジメトキシトリチル)-(2-[2-[N,N-ビス(2-トリフルオロアセタミドエチル)]-アミノエチル]カルバモイル-(E)-ビニル)-2'-デオキシウリジン(化合物103):
1HNMR(CD3OD):δ7.91(s, 1H), 7.39-7.11(m, 9H), 7.02(d, J=15.6Hz, 1H), 6.93(d, J=15.6Hz, 1H), 6.80-6.78(m, 4H), 6.17(t, J=6.6Hz, 1H), 4.38-4.35(m, 1H), 4.06-4.04(m, 1H), 3.68(s, 6H), 3.32-3.22(m, 8H), 2.66-2.55(m, 6H), 2.40(ddd, J=13.7, 5.9, 2.9Hz, 1H), 2.33-2.26(m, 1H).13CNMR(CD3OD):δ168.9, 163.7, 160.1, 159.1(q, J=36.9Hz), 151.0, 146.1, 143.0, 137.0, 136.9, 134.1, 131.24, 131.16, 129.2, 128.9, 128.0, 122.5, 117.5(q, J=286.7Hz), 114.2, 110.9, 88.1, 87.9, 87.6, 72.6, 65.0, 55.7, 54.2, 53.9, 41.7, 38.9, 38.6. HRMS(ESI) calcd for C43H47F6N6O10([M+H]+) 921.3258, found 921.3265.
[中間体合成例3:5'-O-(ジメトキシトリチル)-(2-[2-[N,N-ビス(2-トリフルオロアセタミドエチル)]-アミノエチル]カルバモイル-(E)-ビニル)-2'-デオキシウリジン 3'-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホロアミダイト(5'-O-DMTr-(2-[2-[N,N-bis(2-trifluoroacetamidoethyl)]-aminoethyl]carbamoyl-(E)-vinyl)-2'-deoxyuridine, 3'-[(2-cyanoethyl)-(N,N-diisopropyl)]-phosphoramidite、化合物104)の合成]
188mg(0.20mmol)の化合物103(分子量920.85)をCH3CNと共沸させ、28.6mg(0.40mmol)の1H-テトラゾール(分子量70.05)を加え、真空ポンプで一晩吸引乾燥した。この乾燥物に5.1mLのCH3CNを加えて溶解後、撹拌し、194μL(0.60mmol)の2-シアノエチル-N,N,N',N'-テトライソプロピルホスホロアミダイト(分子量301.41, d=0.949)を一気に加え25℃で2時間撹拌した。50mLの酢酸エチルと50mLの飽和重曹水を混合したものを加え、分液し、有機層を飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムをろ過により除去した後、溶媒を留去した。この分液による粗生成物をCH3CN共沸後、収率100%で生成物(化合物104)を得たと仮定して0.1MのCH3CN溶液とし、DNA合成に使用した。なお、化合物104が得られていることは、前記粗生成物の31PNMR(CDCl3)とHRMS(ESI)から確認した。これらの値を以下に示す。
化合物104:
31PNMR(CDCl3) δ 149.686, 149.430; HRMS (ESI) calcd for C52H64F6N8O11P([M+H]+) 1121.4336, found 1121.4342.
[中間体合成例4:DNAオリゴマー合成]
スキーム2
化合物104を用いたDNA自動合成機によるオリゴDNA合成は、1μmolスケールで通常のホスホロアミダイト法(DMTr OFF)によって行い、5'-d(CGCAATXTAACGC)-3'(13量体、Xの構造は化学式105の通り)という配列(配列番号1)のDNAオリゴマーを合成した。脱保護は、濃アンモニア水(28質量%)により、55℃で16時間行った。スピードバックでアンモニアを揮発させ、0.45μmフィルターに通した後、切り出したDNAオリゴマーを逆相HPLCにより分析し、約10.5分に現れたピークを精製した(CHEMCOBOND 5-ODS-H(商品名)10×150mm、3mL/min、5-30% CH3CN/50mM TEAAバッファー pH7(20分)、260nmで検出)。精製した生成物はMALDI TOFマスのネガティブモードにより分子量を測定し、前記5'-d(CGCAATXTAACGC)-3'という配列(13量体、Xの構造は化学式105の通り)から予想される分子量(C134H176N52O76P12に基づく計算値4102.8)を有することが確認された([M-H]-の実測値4101.9、計算値4101.8)。図4に、MALDI TOFマスのスペクトルを示す。
また、濃アンモニア水による脱保護を、55℃で4時間行った後さらに25℃で16時間行うことと、逆相HPLCにおいてTEAA(トリエチルアミンアセテート)バッファー(pH7)の濃度を0.1Mとすることと、逆相HPLCにおける展開時間を30分以上とすること以外は上記と同様にして5'-d(CGCAATXTAACGC)-3'(13量体、Xの構造は化学式105の通り)を合成することができた。さらに、同じ方法で、Table1に示す各ODNの原料となるDNA(化学式105で表されるヌクレオチドを含む)を合成することができた。
合成した各DNAの濃度を決定するために、精製した各DNAを、ウシ腸アルカリホスファターゼ(50U/mL)、ヘビ毒液ホスホジエステラーゼ(0.15U/mL)およびP1ヌクレアーゼ(50U/mL)により、25℃で16時間かけて完全消化した。得られた消化液を、CHEMCOBOND 5-ODS-H(商品名)カラム(4.6×150mm)のHPLCで解析した。その際、展開液としては0.1M TEAA(pH 7.0)を用い、流速は1.0mL/minとした。前記合成したDNAの濃度は、dA、dC、dGおよびdTをそれぞれ0.1mM濃度で含む標準溶液のピーク面積と比較して決定した。さらに、前記合成したDNAは、MALDI TOFマススペクトルによっても同定した。以下に、その質量分析値を示す。なお、[105]は、その位置に、化学式105で表されるヌクレオチドが挿入されていることを示す。
CGCAAT[105]TAACGC, calcd for C134H177N52O76P12 ([M+H]+) 4103.8, found 4107.0;
TTTTTT[105]TTTTTT, calcd for C138H187N30O90P12 ([M + H]+) 4077.8, found 4076.9;
TGAAGGGCTT[105]TGAACTCTG, calcd for C205H265N77O122P19 ([M+H]+) 6348.2, found 6348.7;
GCCTCCT[105]CAGCAAATCC[105]ACCGGCGTG, calcd for C285H376N108O169P27 ([M+H]+) 8855.0, found 8854.8;
CCTCCCAAG[105]GCTGGGAT[105]AAAGGCGTG, calcd for C289H376N116O168P27 ([M+H]+) 8999.1, found 9002.2.
[実施例1:2つのアミノ基をもつヌクレオチドを含むDNAオリゴマーのビオチン修飾]
スキーム3
合成したDNAオリゴマー5'-d(CGCAATXTAACGC)-3'(Xの構造は前記105の通り)とビオチンのN-ヒドロキシスクシンイミジルエステルとを反応させることにより2つのアミノ基を2つのビオチンでラベル化した(上記スキーム3)。すなわち、まず、30μLの5'-d(CGCAATXTAACGC)-3'(化合物105、ストランド濃度320μM)と10μLのNa2CO3/NaHCO3 buffer(1M, pH9.0)と60μLのH2Oを混合し、ビオチンのN-ヒドロキシスクシンイミジルエステルDMF溶液(20mM)100μLを加え、よく混合した。25℃で16時間静置した後、800μLのH2Oを加え、0.45μmのフィルターに通し、逆相HPLCで約14分に現れたピークを精製した(CHEMCOBOND 5-ODS-H 10×150mm、3mL/min、5-30% CH3CN/50mM TEAAバッファー(20分)、260nmで検出)。このHPLC精製で得られた生成物をMALDI TOFマスのネガティブモードにより測定したところ、4554.3にピークが見られた。このピーク値は、2つのアミノ基に2つのビオチン分子が反応した目的生成物106の分子量4555.4(C154H204N56O80P12S2による計算値)より求めた[M-H]-の計算値4554.4と一致した。図5に、MALDI TOFマスのスペクトルを示す。
この化合物106(一本鎖状態)を用いて二本鎖DNAおよびRNAを合成し、一本鎖状態と二本鎖状態との蛍光強度を比較した。その結果、一本鎖状態では蛍光DNAオリゴマー(プライマー(化合物106))の蛍光発光は抑えられ、相補的な核酸と二重らせん形成したときに強く蛍光発光することが確認された。
以下の実施例2〜12および参考例1〜2では、例えば、下記化学式のbおよびcで示したカルボキシメチレンリンカーを有するチアゾールオレンジ誘導体等の色素を合成し、それらをN-ヒドロキシスクシンエステルとして活性化し、活性なアミノ基を有するDNAオリゴマー(オリゴヌクレオチド)と反応させることにより、蛍光性を有する種々のオリゴヌクレオチド(蛍光DNAオリゴマー)を調製した。すなわち、色素から伸びるメチレンリンカーの長さと、チミジンの5位から伸びたアミノ基を含むリンカーをさまざまに変えた種々のオリゴヌクレオチド(蛍光DNAオリゴマー)を製造した。その結果、いずれの種々の蛍光DNAオリゴマー(蛍光DNAプライマー)においても、一本鎖状態のDNA蛍光プライマーの蛍光発光を抑え、相補的な核酸と二重らせん形成したときに強く蛍光発光させることが可能であった。なお、下記化学式bおよびc中、nは、リンカー長(架橋原子数)を表す。
[実施例2:チアゾールオレンジから誘導される構造を1分子中に2箇所有する化合物の合成]
スキーム4
上記スキーム4の通り、チアゾールオレンジから誘導される構造を1分子中に2箇所有するDNAオリゴマー(オリゴヌクレオチド)110を合成した。より詳しくは、以下の通りである。
チアゾールオレンジ誘導体107の合成は、Organic Letters 2000, 6, 517-519を参考に下記スキーム5の通り行った。
スキーム5
(1)N-メチルキノリニウムヨージド(化合物111)の合成
まず、N-メチルキノリニウムヨージド(化合物111)を、前記文献の記載に従って合成した。具体的には、無水ジオキサン42mL中に、キノリン2.4mLとヨウ化メチル4mLを加え、150℃で1時間撹拌した後、ろ過によって沈殿物を集め、エーテル及び石油エーテルで洗浄、乾燥し、N-メチルキノリニウムヨージド(化合物111)を得た。
(2)3-(4-カルボキシブチル)-2-メチルベンゾチアゾリウム ブロミド(化合物112)の合成
8mLの2-メチルベンゾチアゾール(FW149.21, d=1.173)と9.4gの5-ブロモ吉草酸(5-ブロモペンタン酸)(FW181.03)を110℃で16時間撹拌した。粗生成物を室温に冷却し、生じた固体をメタノール20mLに懸濁させ、さらにエーテル40mLを加えた。生じた沈殿をろ過し、ジオキサンで2-メチルベンゾチアゾールの匂いがなくなるまで洗浄し、エーテルでさらに洗浄し、減圧下で乾燥して9.8gの白色粉末を得た。この白色粉末の1HNMRを測定したところ、2位がアルキル化された目的物3-(4-カルボキシブチル)-2-メチルベンゾチアゾリウム ブロミド(化合物112)と、2位がアルキル化されていない3-(4-カルボキシブチル)-ベンゾチアゾリウム ブロミドとの混合物であった。プロトンのピーク比は、アルキル化されていないもの:アルキル化されたもの=10:3であった。この粗生成物を、そのまま次の反応に用いた。
(3)1-メチル-4-[{3-(4-カルボキシブチル)-2(3H)-ベンゾチアゾリリデン}メチル]キノリニウム ブロミド(化合物107)の合成
上記(2)で得られた、3-(4-カルボキシブチル)-2-メチルベンゾチアゾリウム ブロミド(化合物112)を含む粗生成物2.18gと、700mgのN-メチルキノリニウムヨージド(化合物111)(FW271.10)を、3.6mLのトリエチルアミン(FW101.19, d=0.726)存在下、10mLの塩化メチレン中、25℃で2時間撹拌した。その後、エーテル50mLを加え、生じた沈殿を濾取し、エーテルで洗浄し、減圧下で乾燥した。その沈殿を超純水50mLに懸濁させ、濾取し、超純水で洗浄し、減圧下で乾燥した。さらに前記沈殿をアセトニトリル50mLに懸濁させ、濾取し、アセトニトリルで洗浄し、減圧下で乾燥させて307.5mgの赤色粉末を得た(収率25.3%)。この赤色粉末が目的物(化合物107)であることは、1HNMRスペクトルを文献値と対比して確認した。
また、3-(4-カルボキシブチル)-2-メチルベンゾチアゾリウム ブロミド(化合物112)および1-メチル-4-[{3-(4-カルボキシブチル)-2(3H)-ベンゾチアゾリリデン}メチル]キノリニウム ブロミド(化合物107)は、以下のようにしても合成することができた。すなわち、まず、11.7mL(92mmol)の2-メチルベンゾチアゾール(FW149.21, d=1.173)と13.7g(76mmol)の5-ブロモ吉草酸(5-ブロモペンタン酸)(FW181.03)を150℃で1時間撹拌した。粗生成物を室温に冷却し、生じた固体をメタノール50mLに懸濁させ、さらにエーテル200mLを加えた。生じた沈殿をろ過し、エーテルで洗浄し、減圧下で乾燥して19.2gの淡紫色粉末を得た。この粉末は、目的化合物112(3-(4-カルボキシブチル)-2-メチルベンゾチアゾリウム ブロミド)と2-メチルベンゾチアゾリウムブロミドとの混合物であった。この混合物を1H NMR(in DMSO-d6)測定し、8.5ppmのピーク(目的化合物112由来)と、8.0ppmのピーク(2-メチルベンゾチアゾリウムブロミド由来)とのピーク面積比から、目的化合物112の収量を9.82g(14mmol, 32%)と算出した。この混合物(粗生成物)は、精製せずに次の反応に使用した。なお、5-ブロモ吉草酸(5-ブロモペンタン酸)を4-ブロモ酪酸(4-ブロモブタン酸)に変える以外は同様の方法でリンカー(カルボキシル基に連結したポリメチレン鎖)の炭素数n=3の3-(4-カルボキシプロピル)-2-メチルベンゾチアゾリウム ブロミドを合成したところ、収率4%で得られた。また、5-ブロモ吉草酸(5-ブロモペンタン酸)を6-ブロモヘキサン酸に変える以外は同様の方法でリンカー(カルボキシル基に連結したポリメチレン鎖)の炭素数n=5の3-(4-カルボキシペンチル)-2-メチルベンゾチアゾリウム ブロミドを合成したところ、収率35%で得られた。さらに、5-ブロモ吉草酸(5-ブロモペンタン酸)を7-ブロモヘプタン酸に変える以外は同様の方法でリンカー(カルボキシル基に連結したポリメチレン鎖)の炭素数n=6の3-(4-カルボキシプロピル)-2-メチルベンゾチアゾリウム ブロミドを合成したところ、収率22%で得られた。
次に、化合物112(3-(4-カルボキシブチル)-2-メチルベンゾチアゾリウム ブロミド)と2-メチルベンゾチアゾリウムブロミドとを含む前記混合物(粗生成物)3.24gに、1.36g(5.0mmol)のN-メチルキノリニウムヨージド(化合物111)(FW271.10)、7.0mL(50mmol)のトリエチルアミン(FW101.19, d=0.726)、および100mLの塩化メチレンを加え、透明な溶液を得た。この溶液を、25℃で16時間攪拌した。その後、溶媒を減圧留去した。残渣にアセトン(200mL)を加え、得られた沈殿を濾取し、アセトンで洗浄した。そうして得られた残渣を減圧乾燥し、乾燥後の赤色残渣を蒸留水(50mL)で洗浄した。これをさらに濾取し、蒸留水で洗浄し、減圧下で乾燥させて、目的物(化合物107)を赤色粉末として得た(654mg, 1.39mmol, 28%)この赤色粉末が目的物(化合物107)であることは、1HNMRスペクトルを文献値と対比して確認した。以下に、1HNMRおよび13CNMR(DMSO-d6)のピーク値と、HRMS(ESI)の測定値を示す。また、図6に、化合物107の1HNMRスペクトル(DMSO-d6)を示す。
化合物107:1HNMR(DMSO-d6):δ 8.74(d, J=8.3Hz, 1H), 8.51(d, J=7.3Hz, 1H), 7.94-7.89(m, 3H), 7.74-7.70(m, 1H), 7.65(d, J=8.3Hz, 1H), 7.55-7.51(m, 1H), 7.36-7.32(m, 1H), 7.21(d, J=7.3Hz, 1H), 6.83(s, 1H), 4.47(t, J=7.1Hz, 2H), 4.07(s, 3H), 2.22(t, J=6.6Hz, 1H), 1.77-1.63(m, 4H); 13CNMR(DMSO-d6, 60℃) δ 174.6, 158.8, 148.4, 144.5, 139.5, 137.6, 132.7, 127.9, 126.8, 125.5, 124.1, 123.7, 123.6, 122.4, 117.5, 112.6, 107.6, 87.4, 45.6, 42.0, 35.5, 26.2, 22.3; HRMS (ESI) calcd for C23H23N2O2S ([M.Br]+) 391.1480, found 391.1475.
なお、リンカー(カルボキシル基に連結したポリメチレン鎖)の炭素数n=3の4-((3-(3-カルボキシプロピル)ベンゾ[d]チアゾール-2(3H)-イリデン)メチル)-1-メチルキノリニウムブロミドを、前記3-(4-カルボキシプロピル)-2-メチルベンゾチアゾリウム ブロミドと2-メチルベンゾチアゾリウム ブロミドの混合物から上記化合物107と同様の方法で合成したところ、収率43%で得られた。以下に、機器分析値を示す。
4-((3-(3-カルボキシプロピル)ベンゾ[d]チアゾール-2(3H)-イリデン)メチル)-1-メチルキノリニウムブロミド:
1HNMR (DMSO-d6) δ 8.85 (d, J=8.3Hz, 1H), 8.59 (d, J=7.3Hz, 1H), 8.02.7.93 (m, 3H), 7.78.7.70 (m, 2H), 7.61.7.57 (m, 1H), 7.42.7.38 (m, 1H), 7.31 (d, J=6.8Hz, 1H), 7.04 (s, 1H), 4.47 (t, J=8.1Hz, 2H), 4.13 (s, 3H), 2.52.2.48 (m, 2H), 1.99.1.92 (m, 2H); 13CNMR (DMSO-d6, 60℃) δ 174.3, 158.9, 148.6, 144.5, 139.5, 137.7, 132.7, 127.9, 126.7, 125.6, 124.1, 124.0, 123.7, 122.5, 117.5, 112.5, 107.6, 87.7, 45.6, 42.0, 31.6, 22.4; HRMS (ESI) calcd for C22H21N2O2S ([M.Br]+) 377.1324, found 377.1316.
また、リンカー(カルボキシル基に連結したポリメチレン鎖)の炭素数n=5の4-((3-(3-カルボキシペンチル)ベンゾ[d]チアゾール-2(3H)-イリデン)メチル)-1-メチルキノリニウムブロミドを、前記3-(4-カルボキシペンチル)-2-メチルベンゾチアゾリウム ブロミドと2-メチルベンゾチアゾリウム ブロミドの混合物から上記化合物107と同様の方法で合成したところ、収率26%で得られた。以下に、機器分析値を示す。
4-((3-(3-カルボキシペンチル)ベンゾ[d]チアゾール-2(3H)-イリデン)メチル)-1-メチルキノリニウムブロミド:
1HNMR(DMSO-d6) δ 8.70 (d, J=8.3Hz, 1H), 8.61(d, J=6.8Hz, 1H), 8.05.8.00(m, 3H), 7.80.7.73(m, 2H), 7.60.7.56(m, 1H), 7.41.7.35(m, 2H), 6.89(s, 1H), 4.59(t, J=7.3Hz, 2H), 4.16(s, 3H), 2.19(t, J=7.3Hz, 1H), 1.82.1.75(m, 2H), 1.62.1.43(m, 4H); 13CNMR (DMSO-d6, 60℃) δ 174.5, 159.0, 148.6, 144.7, 139.7, 137.8, 132.9, 127.9, 126.9, 125.2, 124.2, 123.8, 123.6, 122.6, 117.8, 112.6, 107.7, 87.4, 45.6, 42.1, 36.0, 26.3, 25.9, 24.9; HRMS(ESI) calcd for C24H25N2O2S ([M.Br]+) 405.1637, found 405.1632.
さらに、リンカー(カルボキシル基に連結したポリメチレン鎖)の炭素数n=6の4-((3-(3-カルボキシヘキシル)ベンゾ[d]チアゾール-2(3H)-イリデン)メチル)-1-メチルキノリニウムブロミドを、前記3-(4-カルボキシヘキシル)-2-メチルベンゾチアゾリウム ブロミドと2-メチルベンゾチアゾリウム ブロミドの混合物から上記化合物107と同様の方法で合成したところ、収率22%で得られた。以下に、機器分析値を示す。
4-((3-(3-カルボキシヘキシル)ベンゾ[d]チアゾール-2(3H)-イリデン)メチル)-1-メチルキノリニウムブロミド:
1HNMR(DMSO-d6) δ 8.72(d, J=8.3Hz, 1H), 8.62(d, J=6.8Hz, 1H), 8.07.8.01(m, 3H), 7.81.7.75(m, 2H), 7.62.7.58(m, 1H), 7.42.7.38(m, 2H), 6.92(s, 1H), 4.61(t, J=7.3Hz, 2H), 4.17(s, 3H), 2.18(t, J=7.3Hz, 1H), 1.82.1.75(m, 2H), 1.51.1.32(m, 6H); 13CNMR(DMSO-d6, 60℃) δ 174.0, 159.1, 148.6, 144.7, 139.8, 137.8, 132.9, 127.9, 126.8, 125.0, 124.2, 123.8, 123.6, 122.6, 118.0, 112.7, 107.8, 87.4, 45.5, 42.1, 33.4, 27.9, 26.4, 25.5, 24.1; HRMS(ESI) calcd for C25H27N2O2S ([M.Br]+) 419.1793, found419.1788.
(4)N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル109の合成
9.4mg(20μmol)の1-メチル-4-[{3-(4-カルボキシブチル)-2(3H)-ベンゾチアゾリリデン}メチル]キノリニウム ブロミド(化合物107)(FW471.41)、4.6mg(40μmol)のN-ヒドロキシコハク酸イミド(化合物108)(FW115.09)、および7.6mg(40μmol)のEDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)(FW191.70)を、1mLのDMF中において25℃で16時間撹拌し、色素(化合物107)のカルボキシ基が活性化されたN-ヒドロキシスクシンイミジルエステル(化合物109)を得た。この反応生成物は、精製せず、反応溶液(色素20mM)をそのままオリゴマーDNA(オリゴヌクレオチド)105との反応に使用した。
さらに、原料として、化合物107に代えてリンカー(ポリメチレン鎖)の炭素数を変化させた化合物を用いる以外は上記化合物109と同様の方法で、リンカー(ポリメチレン鎖)の炭素数n=3の4-((3-(4-(スクシンイミジルオキシ)-4-オキソブチル)ベンゾ[d]チアゾール-2(3H)-イリデン)メチル)-1-メチルキノリニウム ブロミドを合成した。さらに、同様に、リンカー(ポリメチレン鎖)の炭素数n=5の4-((3-(4-(スクシンイミジルオキシ)-4-オキソヘキシル)ベンゾ[d]チアゾール-2(3H)-イリデン)メチル)-1-メチルキノリニウム ブロミドと、リンカー(ポリメチレン鎖)の炭素数n=6の4-((3-(4-(スクシンイミジルオキシ)-4-オキソヘプチル)ベンゾ[d]チアゾール-2(3H)-イリデン)メチル)-1-メチルキノリニウム ブロミドとを合成した。
(5)2分子のチアゾールオレンジで修飾されたDNAオリゴマー(オリゴヌクレオチド110の合成
二つの活性アミノ基を有するDNAオリゴマー(オリゴヌクレオチド)105は、前記中間体合成例4と同様に、DNA自動合成機により通常の方法で合成した。化合物105の配列は、中間体合成例4と同じく5'-d(CGCAATXTAACGC)-3'(Xは前記化合物104)を用いた。次に、このDNAオリゴマー(オリゴヌクレオチド)105を、N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル(化合物109)と反応させ、チアゾールオレンジから誘導される構造を1分子中に2箇所有するDNAオリゴマー(オリゴヌクレオチド)110を合成した。すなわち、まず、30μLの5'-d(CGCAATXTAACGC)-3'(化合物105、ストランド濃度320μM)と10μLのNa2CO3/NaHCO3 buffer(1M, pH9.0)と60μLのH2Oを混合し、N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル(化合物109)のDMF溶液(20mM)100μLを加え、よく混合した。25℃で16時間静置した後、800μLのH2Oを加え、0.45μmのフィルターに通し、逆相HPLCで約14.5分に現れたピークを精製した(CHEMCOBOND 5-ODS-H 10×150mm、3mL/min、5-30% CH3CN/50mM TEAAバッファー(20分)、260nmで検出)。図7に、逆相HPLCのチャートを示す。矢印のピークで表されるフラクションを分取・精製した。このHPLC精製で得られた生成物をMALDI TOFマスのネガティブモードにより測定したところ、4848.8にピークが見られ、DNAオリゴマー(オリゴヌクレオチド)110であることが確認された。図8に、DNAオリゴマー(オリゴヌクレオチド)110のMALDI TOF MASSスペクトルを示す。同図中、矢印は、前記精製した生成物由来のマスピーク(4848.8)である。このピーク値は、正電荷を2つ有するDNAオリゴマー(オリゴヌクレオチド)110の分子M(C180H220N56O78P12S2)から3つのプロトンが抜けた[M2+-3H+]-の計算値4848.8と一致した。また、左右のピークは、標準物質として加えたDNAのT8量体とT18量体由来のピークである。
[実施例3:DNAオリゴマー(オリゴヌクレオチド)110の、蛍光プライマーとしての使用]
実施例2で精製したDNAオリゴマー(オリゴヌクレオチド)110(色素が2分子ついたDNA)を脱塩し、凍結乾燥した後、水溶液とし、UV吸収により濃度決定した(XはTと近似)。その後、ストランド濃度2.5μM、リン酸バッファー50mM(pH7.0)、そしてNaCl 100mMの条件で、蛍光プライマー(DNAオリゴマー110)が一本鎖状態のとき、DNA-DNA二重らせんのとき、そしてDNA-RNA二重らせんのそれぞれについてUV測定を行った。図9に、これら3つのサンプルのスペクトルを示す。図示の通り、二重らせん形成することにより500nm付近のUV吸収の極大波長が移動した。
次に、同じくストランド濃度2.5μM、リン酸バッファー50mM(pH7.0)、そしてNaCl 100mMの条件で、488nmの励起光(バンド幅1.5nm)により励起した後に蛍光測定を行った。図10に、蛍光プライマー(蛍光DNAオリゴマー)が一本鎖状態のとき、DNA-DNA二重らせんのとき、そしてDNA-RNA二重らせんの3つのサンプルのスペクトルをそれぞれ示す。図示の通り、一本鎖状態の蛍光プライマーの530nmの蛍光強度と比較すると、DNA-DNAでは15倍、DNA-RNAでは22倍の蛍光強度の増加が見られた。
また、488nmの励起光に代えて510nmの励起光を用いても同様の結果が得られた。図11に、そのスペクトルを示す。
[実施例
4:リンカーの長さを種々変化させた化合物の合成および蛍光プライマーとしての使用]
下記化学式113で表される化合物(DNAオリゴマー)を、リンカー長nを種々変化させて合成した。合成は、原料の5-ブロモ吉草酸(5-ブロモペンタン酸)を、リンカー長に合わせて炭素数(鎖長)を変えた化合物とする以外は前記
中間体合成例1〜4および
実施例2と同様に行った。本実施例においては、下記化合物113の配列は、5'-d(CGCAATXTAACGC)-3'(Xは、色素導入部分)とした。さらに、それぞれを、実施例
3と同様に蛍光プライマーとして使用し、蛍光測定により性能を評価した。その結果、以下に示すリンカーの長さの範囲内であれば、プライマー一本鎖に比べて約10倍近くまたはそれ以上の蛍光増大が、標的核酸とのハイブリダイゼーションによって得られることが確認された。また、プライマーと標的核酸によって得られる二本鎖は、天然配列の二本鎖より高い熱的安定性を示した。
5'-d(CGCAATTTAACGC)-3'/5'-d(GCGTTAAATTGCG)-3' Tm(℃) 58
5'-d(CGCAATTTAACGC)-3'/5'-r(GCGUUAAAUUGCG)-3' Tm(℃) 46
測定条件:プライマー(化合物113)2.5μM、リン酸バッファー 50mM(pH7.0)、NaCl 100mM、相補鎖 2.5μM
蛍光の極大波長は488nm(1.5nm幅)の光で励起した場合の値。
量子収率は9,10-ジフェニルアントラセンを参照物質として計算した。
図12に、実施例4におけるリンカー長n=4のときの吸収スペクトルを示す。400〜600nmでの吸収に注目すると、一本鎖状態のときの吸収バンドがハイブリダイゼーション後の吸収バンドに比べ短波長側に現れており、一本鎖状態での色素二量体によるH会合体の形成を明確に示している。
また、図13に、実施例4におけるリンカー長n=4のときの励起スペクトルと蛍光発光スペクトルを併せて示す。同図中、左側(短波長側)の曲線が励起スペクトルを示し、右側(長波長側)の曲線が蛍光発光スペクトルを示す。また、同図中、凡例の括弧内は、励起スペクトルでは参照する蛍光発光の波長、蛍光発光スペクトルでは励起波長をそれぞれ示している。励起スペクトルから、蛍光発光に関与する吸収は、図12における長波長側の吸収バンドだけであり、短波長側の吸収は蛍光発光に関与しないことがわかる。つまり、エキシトン効果による蛍光発光制御が働いていることが明確に示されている。したがって、蛍光発光は、ハイブリダイゼーション後に強く、一本鎖状態ではきわめて弱い。これにより、ハイブリダイゼーション前後の状態を明確に区別できる。
[参考例1]
下記化学式114で表される、1分子中に色素構造1個のみを含む化合物(DNAオリゴマー)を、リンカー長nを種々変化させて合成した。合成は、原料の5-ブロモ吉草酸(5-ブロモペンタン酸)を、リンカー長に合わせて炭素数(鎖長)を変えた化合物とすることと、化合物102合成においてトリス(2-アミノエチル)アミンに代えてビス(2-アミノエチル)メチルアミンを用いること以外は前記中間体合成例1〜4および実施例2と同様に行った。n=3、4、5、6の化合物を、それぞれ同様の方法で合成することができた。
より具体的には、下記スキームの通り合成した。下記スキームは、n=4の場合であるが、nが他の数値である場合も同様に合成した。
[(E)-5-(3-(2-(N-メチル-N-(2-(2,2,2-トリフルオロアセタミド)エチル)アミノ)エチルアミノ)-3-オキソプロピ-1-エニル)-2'-デオキシウリジン((E)-5-(3-(2-(N-Methyl-N-(2-(2,2,2-trifluoroacetamido)ethyl)amino)ethylamino)-3-oxoprop-1-enyl)-2'-deoxyuridine)(102’)の合成]
1.19g(4.0mmol)の(E)-5-(2-カルボキシビニル)-2'-デオキシウリジン 101(分子量298.25)と921mg(8.0mmol)のN-ヒドロキシスクシンイミド(分子量115.09)と1.53g(8.0mmol)の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(分子量191.70)を撹拌子の入ったナスフラスコに入れ、1.0mLのDMFを加えて、25℃で8時間撹拌した。約1mLの酢酸を加え、250mLの塩化メチレンと250mLの超純水を加え、激しく撹拌した。生じた沈殿をろ過し、水で洗浄し、減圧下で終夜乾燥した。得られた白色残渣を100mLのアセトニトリルに懸濁させ、激しく撹拌した。そこに2.34g(20mmol)のN-メチル-2,2'-ジアミノジエチルアミン(分子量146.23, d=0.976)を一気に加え、25℃でさらに10分間撹拌した。その後、4.8mL(40mmol)のトリフルオロ酢酸エチル(分子量142.08, d=1.194)、5.6mL(40mmol)のトリエチルアミン(分子量101.19, d=0.726)および50mLのエタノールを加え、25℃で16時間撹拌した。得られた混合物から溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムで精製した(10-20% MeOH/CH2Cl2)。目的物を含むフラクションから溶媒を減圧留去し、少量のアセトンに溶解させ、エーテルを加えると白色沈殿を生じた。ろ過、エーテルで洗浄後、減圧下で乾燥し、750mg(76%)の目的物質(化合物102’)を白色粉末として得た。以下に、機器分析値を示す。
化合物102’:
1HNMR(CD3OD) δ 8.29(s, 1H), 7.17(d, J=15.6Hz, 1H), 6.97(d, J=15.6Hz, 1H), 6.21(t, J=6.3Hz, 1H), 4.40.4.36(m, 1H), 3.92.3.90(m, 1H), 3.80(dd, J=11.7, 2.9Hz, 1H), 3.72(dd, J=11.7, 3.4Hz, 1H), 3.37.3.25(m, 5H), 2.60.2.53(m, 5H), 2.33.2.19(m, 5H); 13CNMR(CD3OD) δ 169.2, 158.7 (q, J=36.4Hz), 151.2, 143.7, 143.6, 134.1, 122.2, 117.5 (q, J=286.2Hz), 111.0, 89.2, 87.0, 72.1, 62.6, 57.4, 56.7, 42.4, 41.8, 38.5, 38.3; HRMS(ESI) calcd for C19H27F3N5O7 ([M+H]+) 494.1863, found 494.1854.
[(E)-5-(3-(2-(N-メチル-N-(2-(2,2,2-トリフルオロアセタミド)エチル)アミノ)エチルアミノ)-3-オキソプロピ-1-エニル)-5'O-(4,4'-ジメトキシトリチル)-2'-デオキシウリジン 3'O-(2-シアノエチル)-N,N-ジイソプロピルホスホロアミダイト((E)-5-(3-(2-(N-Methyl-N-(2-(2,2,2-trifluoroacetamido)ethyl)amino)ethylamino)-3-oxoprop-1-enyl)-5'O-(4,4'-dimethoxytrityl)-2'-deoxyuridine 3'O-(2-cyanoethyl)-N,N-diisopropylphosphoramidite)(化合物104’)の合成]
まず、296mg(0.60mmol)の化合物102’(分子量494.19)と224mg(0.66mmol)の4,4'-ジメトキシトリチルクロリド(分子量338.83)を撹拌子の入ったナスフラスコに入れ、4mLのピリジンを加えて、25℃で2時間撹拌した。1mLの水を加え、溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムで精製した(1.5% MeOHおよび1% Et3N/CH2Cl2)。目的とする102’のトリチル化物(104’の中間体)を含むフラクションを濃縮し、残渣に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた。その混合物を酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、減圧下で乾燥して、白色泡状のトリチル化物(366mg, 77%)を得た。
1HNMR(CD3OD) δ 7.94(s, 1H), 7.42.7.17(m, 9H), 7.01(d, J=15.6Hz, 1H), 6.95(d, J=15.6Hz, 1H), 6.86.6.83(m, 4H), 6.21(t, J=6.3Hz, 1H), 4.41.4.38(m, 1H), 4.09.4.06(m, 1H), 3.75(s, 6H), 3.40.3.30(m, 6H), 2.59(t, J=6.8Hz, 2H), 2.53(t, J=6.8Hz, 2H), 2.46.2.31(m, 5H); 13CNMR(CD3OD) δ 169.2, 158.7(q, J=36.4Hz), 151.2, 143.7, 143.6, 134.1, 122.2, 117.5 (q, J=286.2Hz), 111.0, 89.2, 87.0, 72.1, 62.6, 57.4, 56.7, 42.4, 41.8, 38.5, 38.3; HRMS(ESI) calcd for C40H45F3N5O9 ([M+H]+) 796.3169, found 796.3166.
前記102’のトリチル化物159mg(0.20mmol)(分子量920.85)および1H-テトラゾール28.6mg(0.40mmol)(分子量70.05)丸底フラスコ内に入れ、真空ポンプで一晩吸引乾燥した。そこに4.0mLのCH3CNを加えて試薬を溶解後、撹拌し、191μL(0.60mmol)の2-シアノエチル-N,N,N',N'-テトライソプロピルホスホロアミダイト(分子量301.41, d=0.949)を一気に加え25℃で2時間撹拌した。TLCで反応修了を確認後、飽和重曹水を加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムをろ過により除去した後、溶媒を減圧留去して目的化合物104’を含む粗生成物を得た。この組成物は、精製せずにそのままDNA合成に使用した。なお、化合物104’が得られていることは、前記粗生成物の31PNMR(CDCl3)とHRMS(ESI)から確認した。これらの値を以下に示す。
化合物104’:
31PNMR(CDCl3) δ 149.686, 149.393; HRMS(ESI) calcd for C49H61F3N7O10P([M+H]+) 996.4248, found 996.4243.
DNA105’の合成は、前記化合物105と同様にして行った。以下に、機器分析値を示す。
DNA105’:
CGCAAT[105’]TAACGC, calcd for C133H174N51O76P12([M+H]+) 4074.8, found 4072.0;
CGCAAT[105’][105’]AACGC, calcd for C140H187N54O77P12([M+H]+) 4230.0, found 4228.9.
チアゾールオレンジを導入したDNA114の合成は、前記化合物113と同様にして行った。以下に、機器分析値を示す。
CGCAAT[114](4)TAACGC, calcd for C156H194N53O77P12S(M+) 4447.3, found 4445.6; CGCAAT[114](4)[114](4)AACGC, calcd for C186H228N58O79P12S2([M.H]+) 4976.0, found 4976.9.
合成したDNAオリゴマー(ODN)のうち、5'-d(CGCAAT[114]
(n)TAACGC)-3'の配列を有するODN(色素1個のみを含むプライマー)について、実施例
3および
4と同様に蛍光挙動を観測した。下記表2、図14および15に、その結果を示す。図14は吸収スペクトルを示し、図15は、励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す。図15中、左側(短波長側)の曲線が励起スペクトルを示し、右側(長波長側)の曲線が蛍光発光スペクトルを示す。また、同図中、凡例の波長は、励起スペクトルでは参照する蛍光発光の波長、蛍光発光スペクトルでは励起波長をそれぞれ示している。図示の通り、化合物114は色素構造を1分子中に1個のみ有し、H会合体を形成しないので、エキシトン効果を生じない(吸収スペクトルで短波長側へのシフトが観察されない)。したがって、一本鎖状態での蛍光消光は、色素構造を2個有する化合物と比較して弱く、二本鎖と一本鎖の蛍光強度比I
ds/I
ssは比較的小さい。しかし、二本鎖形成による色素のインターカレーションが色素の構造を平坦化するため、下記表2に示すように、一本鎖よりも二本鎖状態のほうが大きい蛍光強度が得られた。なお、一本鎖において、励起波長を488nmからUV吸収スペクトルにおけるλ
max(λ
maxが2つあるときは長波長側)に変えたところ、量子収率Φ
F=0.120という測定結果が得られた。さらに、DNA-DNA二本鎖において、励起波長を488nmからUV吸収スペクトルにおけるλ
max(λ
maxが2つあるときは長波長側)に変えたところ、量子収率Φ
F=0.307、二本鎖と一本鎖の蛍光強度比I
ds/I
ss=3.4という測定結果が得られた。
測定条件:プライマー2.5μM、リン酸バッファー50mM(pH7.0)、NaCl 100mM、相補鎖 2.5μM
蛍光の極大波長は488nm(1.5nm幅)の光で励起した場合の値である。
量子収率は9,10-ジフェニルアントラセンを参照物質として計算した。
[参考例2]
色素として、前記化合物107に代えて下記化学式115で表される化合物を用いる以外は参考例1と同様にして、1分子中に色素構造1個のみを含む化合物(DNAオリゴマー)を合成した。合成は、リンカー長nを1〜4まで種々変化させて行った。配列は、前記化合物105と同じく5'-d(CGCAATXTAACGC)-3'(Xは色素導入部分)とした。
下記化合物116は、n=2の場合である。化合物116について実施例3〜4および参考例1と同様に蛍光強度を評価したところ、DNA-RNA二本鎖の場合に、一本鎖と比較して蛍光強度の増加が見られた。
[蛍光寿命測定]
実施例4(色素2個)および参考例1(色素1個)のDNAオリゴマー(オリゴヌクレオチド)について、一本鎖の場合と二本鎖DNAの場合とで、それぞれ蛍光寿命を測定した。測定対照のDNAオリゴマーは、下記配列中Xの箇所に色素導入ヌクレオチドが入っている。
5'-d(CGCAATXTAACGC)-3' (配列番号1)
5'-d(GCGTTAAATTGCG)-3' (配列番号2)
下記表3に、前記蛍光寿命測定の結果を示す。表中、Tは蛍光寿命(ns)である。CHISQは、測定誤差である。T1は、励起終了直後からの経過時間を示す。T2は、実施例
4の色素2個プライマーでは、時間T1が経過後、さらに経過した時間を示し、
参考例1の色素1個プライマーでは、励起終了直後からの経過時間を示す。T3は、時間T2が経過後、さらに経過した時間を示す。表中、「%」で表した数値は、時間T1、T2またはT3がそれぞれ経過する間における蛍光減衰率(励起終了直後の蛍光強度を100%とする)であり、それぞれのプライマー(DNAオリゴマー)について、合計は100%となる。表3に示すとおり、色素2個を含むプライマー(実施例
4)一本鎖状態できわめて短い消光過程(励起後0.0210nsで蛍光減衰率81.54%)があり、エキシトン効果の存在を示している。他のケースでは、見られない。この、2個の色素で標識したODNの一本鎖状態における蛍光消光は、蛍光強度の、ハイブリダイゼーション特異的かつシャープな変化において、鍵となる役割をする。また、表3から分かる通り、蛍光消光特性は、二次または三次関数特性に一致した。なお、下記表3の色素2個二本鎖について再度同条件で測定(ただし、T1測定は省略)したところ、T2=2.05における蛍光減衰率44%、T3=4.38における蛍光減衰率56%、T=3.33(ns)、CHISQ=1.09であり、下記表3ときわめて近い値が得られた。すなわち、本実施例のプライマーは、この蛍光寿命測定における再現性が優れていることが分かる。
ストランド2.5μM
リン酸バッファー50mM(pH7.0)
NaCl 100mM
455nm(prompt)600nm(decay)で測定した。
[実施例
5]
色素として、前記化合物107に代えて下記化学式115’で表される化合物を用いる以外は実施例
4と同様にして、下記化学式117で表されるDNAオリゴマーを合成した。n=3、4、5、6の化合物を、それぞれ同様の方法で合成することができた。さらに、実施例
4と同様にして蛍光プライマーとして使用し、蛍光測定により性能を評価した。下記表4に、その結果を示す。表4に示すとおり、化合物117は、実施例
4のDNAオリゴマー(化合物113)とは吸収帯が異なるが、同様に良好なエキシトン効果を示した。このことは、本発明において、吸収帯が異なる蛍光プライマーを用いてマルチカラーでの検出が可能であることを示す。
[実施例6]
下記配列で表されるDNAオリゴマー(化合物118)を合成した。Xは、参考例1と同様の色素構造を有するヌクレオチド(下記式:化学式118とする)である。下記配列が示すとおり、このDNAオリゴマーは、色素導入ヌクレオチドが2つ連続して配列されている。色素の導入およびDNAオリゴマーの合成は、前記各実施例および参考例と同様の手法により行った。
5'-d(TTTTTTXXTTTTT)-3' (配列番号3)
さらに、このDNAオリゴマーを前記各実施例および参考例と同様に蛍光プライマーとして使用し、蛍光測定により性能を評価した。
プライマー2.5μM(ストランド濃度)
リン酸バッファー50mM(pH7.0)
NaCl 100mM
相補鎖2.5μM(ストランド濃度)
図16および17に、その結果を示す。図16は吸収スペクトルを示す図であり、図17は、励起スペクトルと蛍光発光スペクトルを併せて示す図である。図17中、左側(短波長側)の曲線が励起スペクトルを示し、右側(長波長側)の曲線が蛍光発光スペクトルを示す。図示のとおり、このように色素導入ヌクレオチドを2つ連続して配列させた場合でも、色素間距離を近づけることができるのでエキシトン効果を示し、標的核酸とのハイブリダイゼーション前後の状態を、蛍光強度によって明確に区別できる。
[実施例
7]
前記化学式113または114で表される化合物(DNAオリゴマー)すなわち下記表5に示す各ODNを、リンカー長nおよび核酸配列を種々変化させて合成した。なお、「ODN」とは、前述の通り、オリゴDNA(DNAオリゴマー)を意味する。合成は、原料の5-ブロモ吉草酸(5-ブロモペンタン酸)を、リンカー長に合わせて炭素数(鎖長)を変えた化合物とすることと、オリゴDNA合成において配列を適宜変更すること以外は、前記
中間体合成例1〜4、
実施例2、4、6または
参考例1と同様に行った。なお、ODN1は、実施例
4で合成したオリゴDNA(DNAオリゴマー)と同じであり、ODN4
は、
参考例1で合成したオリゴDNA(DNAオリゴマー)と同じである。合成において、チアゾールオレンジのN-ヒドロキシスクシンイミジルエステル(化合物109)は、活性アミノ基の50当量またはそれ以上用いた。合成後、逆相HPLCにおける展開時間は、必要に応じ、20〜30分間またはそれ以上とした。なお、以下において、例えば、[113]
(n)または[114]
(n)は、その位置に、化学式113または114で表されるヌクレオチドが挿入されていることを示す。nはリンカー長である。また、下記表5において、ODN1'は、ODN1に相補的なDNA鎖を示す。同様に、ODN2'はODN2に相補的なDNA鎖を示し、ODN3'は、ODN3に相補的なDNA鎖を示す。
合成した各ODNは、前記中間体合成例4と同様、酵素消化により濃度を決定した。さらに、合成した各ODNは、MALDI TOFマススペクトルによって同定した。以下に、その質量分析値を示す。
ODN1(n=3), CGCAAT[113](3)TAACGC, calcd for C178H213N56O78P12S2 ([M.H]+) 4820.7, found 4818.9; ODN1(n=4), CGCAAT[113](4)TAACGC, calcd for C180H217N56O78P12S2 ([M.H]+) 4848.8, found 4751.4;
ODN1(n=5), CGCAAT[113](5)TAACGC, calcd for C182H221N56O78P12S2 ([M.H]+) 4876.8, found 4875.6;
ODN1(n=6), CGCAAT[113](6)TAACGC, calcd for C184H225N56O78P12S2 (([M.H]+) 4904.9, found 4903.6;
ODN2, TTTTTT[113](4)TTTTTT, calcd for C184H227N34O92P12S2 ([M.H]+) 4822.8, found 4821.4;
ODN3, TGAAGGGCTT[113](4)TGAACTCTG, calcd for C251H305N81O124P19S2 ([M.H]+) 7093.2, found 7092.3;
ODN(anti4.5S), GCCTCCT[113](4)CAGCAAATCC[113](4)ACCGGCGTG, calcd for C377H456N116O173P27S4 ([M.3H]+) 10344.9, found 10342.7;
ODN(antiB1),CCTCCCAAG[113](4)GCTGGGAT[113](4)AAAGGCGTG, calcd for C381H456N124O172P27S4 ([M.3H]+) 10489.0, found 10489.8.
前記表5のODNのうち、配列とリンカー長を種々変化させた[113](n)含有ODN(ODN1、ODN2、ODN3)について、相補鎖とのハイブリダイゼーション前後で、それぞれ吸光スペクトル、励起スペクトルおよび発光スペクトルを測定した。結果を、下記表6、図18および図19にまとめて示す。
測定条件:2.5μM DNA, 50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH=7.0), 100mM塩化ナトリウム
b488nmで励起
cλ
maxで励起(λ
maxが2つあるときは、長波長側のλ
maxで励起)
d二本鎖状態と一本鎖状態とのλ
emにおける蛍光強度比
なお、表6中、ODN1(n=3〜6)は、前記実施例4のオリゴDNA(5'-d(CGCAATXTAACGC)-3'、Xは、色素113導入部分)と同じ構造である。ただし、実施例4では、蛍光量子収率ΦFおよび二重鎖(二本鎖)状態と単鎖(一本鎖)状態との蛍光強度比(Ids/Iss)は、波長488nmで励起して測定したが、本実施例(実施例7)では、上記の通り、UV吸収スペクトルにおけるλmaxで励起して測定した。このため、前記表1(実施例4)と、前記表6(実施例7)では、同じ物質でもΦFおよびIds/Issが異なっている。
図18は、[113](4)含有ODNの吸収スペクトル、励起スペクトルおよび発光スペクトルを示すグラフである。同図(a)、(b)および(c)において、それぞれ、左側のグラフは吸収スペクトルを示し、横軸は波長であり、縦軸は吸光度である。右側のグラフは、励起スペクトルおよび発光スペクトルを示し、横軸は波長であり、縦軸は発光強度である。各測定は、100mM塩化ナトリウムを含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH=7.0)中の[113](4)含有ODNを試料とし、25℃で行った。図18中の各グラフにおいて、黒線は、一本鎖ODN(ss)の測定結果を示し、灰色線は、対応する相補鎖DNAとハイブリダイズしたODN(ds)の測定結果を示す。
図18(a)は、ODN1(n=4)(2.5μM)の測定結果を示す。励起スペクトルは、ssにおいては波長534nmの発光強度を測定し、dsにおいては波長528nmの発光強度を測定した。発光スペクトルは、ssにおいては波長519nmで励起し、dsにおいては波長514nmで励起して測定した。
図18(b)は、ODN2の測定結果を示す。ストランド濃度は、左側のグラフにおいては2.5μMであり、右側のグラフにおいては1μMである。励起スペクトルは、ssにおいては波長534nmの発光強度を測定し、dsにおいては波長537nmの発光強度を測定した。発光スペクトルは、ssにおいては波長517nmで励起し、dsにおいては波長519nmで励起して測定した。
図18(c)は、ODN3の測定結果を示す。ストランド濃度は2.5μMである。励起スペクトルは、ssにおいては波長535nmの発光強度を測定し、dsにおいては波長530nmの発光強度を測定した。発光スペクトルは、ssにおいては波長518nmで励起し、dsにおいては波長516nmで励起して測定した。
図19は、ODN1(n=3、5および6)の吸収スペクトル、励起スペクトルおよび発光スペクトルを示すグラフである。同図(a)、(b)および(c)において、それぞれ、左側のグラフは吸収スペクトルを示し、横軸は波長であり、縦軸は吸光度である。右側のグラフは、励起スペクトルおよび発光スペクトルを示し、横軸は波長であり、縦軸は発光強度である。各測定は、100mM塩化ナトリウムを含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH=7.0)中のODN1(n=3、5または6)を試料とし、25℃で行った。図19中の各グラフにおいて、黒線は、一本鎖ODN(ss)の測定結果を示し、灰色線は、対応する相補鎖DNAとハイブリダイズしたODN(ds)の測定結果を示す。
図19(a)は、ODN1(n=3)(2.5μM)の測定結果を示す。励起スペクトルは、ssにおいては波長537nmの発光強度を測定し、dsにおいては波長529nmの発光強度を測定した。発光スペクトルは、ssにおいては波長521nmで励起し、dsにおいては波長511nmで励起して測定した。
図19(b)は、ODN1(n=5)(2.5μM)の測定結果を示す。励起スペクトルは、ssにおいては波長538nmの発光強度を測定し、dsにおいては波長529nmの発光強度を測定した。発光スペクトルは、ssにおいては波長520nmで励起し、dsにおいては波長512nmで励起して測定した。
図19(c)は、ODN1(n=6)の測定結果を示す。ストランド濃度は2.5μMである。励起スペクトルは、ssにおいては波長536nmの発光強度を測定し、dsにおいては波長528nmの発光強度を測定した。発光スペクトルは、ssにおいては波長523nmで励起し、dsにおいては波長514nmで励起して測定した。
表6、図18および図19に示したとおり、それぞれの[113](n)含有ODN試料に対し、400〜550nmの範囲に2つの吸収帯が観測された。短波長側(〜480nm)の吸収帯は、1(n)含有ODN試料が単鎖状態のとき、より強く、長波長側(〜510nm)の吸収帯は、1(n)含有ODN試料が相補鎖とハイブリダイズしたときに顕著に(優勢に)現れた。長波長側(〜510nm)の吸収帯は、チアゾールオレンジ単体の典型的な吸収帯である。発光スペクトルにおいては、〜530nmに、単一のブロードな吸収帯が観測された。[113](n)含有ODN試料と相補鎖とのハイブリダイゼーションにより、発光強度が明確に変化した。すなわち、標的DNA鎖にハイブリダイズした[113](n)含有ODN試料は強い蛍光を示し、ハイブリダイズ前の[113](n)含有ODN試料は、ハイブリダイズ後よりもきわめて弱い蛍光しか示さなかった。特に、ポリピリミジン配列からなるODN2の蛍光は、単鎖(一本鎖)状態ではほとんど完全に消光された。極大発光波長におけるODN2の二重鎖(二本鎖)状態と単鎖(一本鎖)状態との蛍光強度比(Ids/Iss)は、160に達した。20-merの一般的配列であるODN3’とODN3とをハイブリダイズさせた場合、ハイブリダイゼーションの前後で発光強度が明確に相違した。さらに、表6、図18(a)および図19から分かる通り、本実施例のODN1においてリンカー長nを3から6まで変化させた場合、いずれのリンカー長でも、大きいIds/Iss値が得られた。このように、表6に示したODNは、プライマーの配列およびリンカー長により消光性能に差はあるものの、いずれも良好な消光性能を示した。
また、前記表6に示したとおり、ODN1(n=4)/ODN1'の融点(Tm)は、天然二本鎖5'-CGCAATTTAACGC-3'/ODN1'と比較して7〜9℃上昇した。このTm値の上昇は、プライマーにおける2個のカチオン性色素が、標的配列とともに形成された二本鎖に効果的に結合したことを示唆する。さらに、図18および19から分かる通り、励起スペクトルは、化合物の構造に関わらず、510nm付近に、単一のブロードなピークを示した。この波長は、吸収帯の一つの波長と良い一致を示した。すなわち、蛍光発光に関与する吸収は510nm付近の吸収帯のみであり、480nm付近の吸収帯は発光にほとんど影響していないと考えられる。また、色素会合による510nmから付近480nm付近への吸収帯シフトから、エキシトンカップリングエネルギーは1230cm-1と見積もられた。これは、シアニン色素のH会合体について報告されているカップリングエネルギーと同等である。ただし、これらの理論的考察は、本発明を限定するものではない。
[吸収スペクトル]
前記ODN1(n=4)の吸収スペクトルを、種々の温度および濃度で測定し、温度および濃度が吸収帯に及ぼす影響を確認した。図20の吸収スペクトル図に、その結果を示す。同図(a)および(b)において、横軸は波長であり、縦軸は吸光度である。各測定は、100mM塩化ナトリウムを含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH=7.0)中のODN1(n=4)を試料として行った。
図20(a)は、溶液温度を変化させた際の吸収スペクトル変化を示す。ODN濃度は2.5μMである。スペクトルは、10℃から90℃まで10℃間隔で測定した。
図20(b)は、溶液濃度を変化させた際の吸収スペクトル変化を示す。測定温度は25℃である。ODN濃度は、0.5, 0.75, 1.0, 1.2, 1.5, 2.0, 2.5, 3.0, 4.0,および5.0μMである。
また、挿入図は、波長479nmにおける吸光度の対数(縦軸)と、波長509nmにおける吸光度の対数(横軸)との関係を示すグラフである。
図20(a)に示すとおり、試料温度を変化させて測定したところ、2つの吸収帯の吸光度比が若干変化した。すなわち、試料温度の上昇に伴い、479nmの吸収帯は次第に減少し、509nmの吸収帯は増大した。しかしながら、その変化は、同図から分かる通り、極めてわずかであった。このことは、本発明のプライマーであるODN1(n=4)において、温度変化に伴う構造の変化は極めてわずかであり、温度にほとんど影響されずに用いることができることを示している。なお、同図に示すとおり、487nmにおいて、2つのスペクトル構成要素の存在を示す等吸収点が観測された。
一方、図20(b)に示すとおり、ODN1(n=4)の試料濃度を増加させると、両方の吸収帯において吸光度の増加が観測された。また、挿入図に示すとおり、log(Abs479)対log(Abs509)のプロット、すなわち、各吸収帯における吸光度の対数の比は、直線を示した。このことは、ODN濃度に関わらず、2つのスペクトル構成要素の比がほとんど一定であったことを示す。すなわち、本発明のプライマーであるODN1(n=4)は、溶液中の濃度を変えても構造がほとんど変化しないため、濃度に影響されずに用いることが可能である。
なお、図20(a)および(b)のスペクトル変化の要因は、例えば以下のように説明できるが、これらの説明は理論的考察の一例であり、本発明を限定しない。すなわち、まず、ODN1(n=4)は、二色性システムにより、分子内H会合体を形成する。図20(a)におけるスペクトル変化は、温度上昇によりH会合体の構造が若干緩んでいるためと推測される。また、前記分子内H会合体は、分子内で完結しているため、濃度が上昇しても分子間相互作用等による構造の変化がほとんどなく、図20(b)および挿入図に示すように2つのスペクトル構成要素の比がほとんど一定になると考えられる。なお、ODN1(n=4)の試料溶液中には、分子内H会合体と色素モノマー(色素部分が会合していない)の2つのコンフォメーションモードが存在すると考えられる。短波長側(479nm)の吸収帯は、分子内H会合体由来と推測される。長波長側の吸収帯(509nm)は、加熱により増大したことから、色素モノマー由来と推測される。
[CDスペクトル]
ODN1(n=4)/ODN1'のCDスペクトルを測定した。ストランド濃度は2.5μMとし、100mM塩化ナトリウムを含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH=7.0)中、25℃で測定した。図21のCDスペクトル図に、その測定結果を示す。同図において、横軸は波長(nm)であり、縦軸は角度θである。図示の通り、ODN1(n=4)/ODN1'二本鎖は、450〜550nmにおいて、分裂型のコットン効果(split-Cotton effect)を示した。すなわち、測定されたCD対は、チアゾールオレンジ色素がDNA二本鎖にインターカレーションする際の典型的なパターンを示した。すなわち、ODN1(n=4)の色素部分が、形成された二本鎖DNAにインターカレーションし、二色性会合体(H会合体)の形成が強力に妨げられたと考えられる。このCD測定の結果は、前記Tm測定結果とあわせ、ODN1(n=4)における色素部分が二本鎖DNAに結合する際に、2つの色素部分がともに主溝にインターカレーションし、熱的に安定な二本鎖構造を形成することを示唆する。ただし、この理論的考察は、本発明を限定するものではない。形成される二本鎖構造が熱的に安定であることは、本発明のプライマー(核酸)が、相補的配列の検出に効果的に使用可能であることを示す。
[実施例
8]
前記ODN5(CGCAAT[114]
(4)[114]
(4)AACGC)について、二本鎖状態と一本鎖状態の吸収スペクトル、励起スペクトルおよび発光スペクトルを測定した。下記表7および図22に、その結果を示す。
測定条件:2.5μM DNA, 50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH=7.0), 100mM塩化ナトリウム
b488nmで励起
cλ
maxで励起(λ
maxが2つあるときは、長波長側のλ
maxで励起)
d二本鎖状態と一本鎖状態とのλ
emにおける蛍光強度比
図22は、ODN5すなわち[114](4)含有ODNの吸収スペクトル、励起スペクトルおよび発光スペクトルを示すグラフである。ODN5のストランド濃度は2.5μMであり、100mM塩化ナトリウムを含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH=7.0)中、25℃で測定した。黒線は一本鎖ODN5(ss)の測定結果を示し、灰色線はODN1'とハイブリダイゼーションした二本鎖のODN5(ds)の測定結果を示す。(a)は吸収スペクトルであり、横軸は波長であり、縦軸は吸光度である。(b)は励起スペクトルおよび発光スペクトルであり、横軸は波長であり、縦軸は発光強度である。励起スペクトルは、ssについては波長534nmの発光強度を測定し、dsについては波長514nmの発光強度を測定した。発光スペクトルは、ssについては波長528nmで励起し、dsについては波長519nmで励起した。
前記表7および図22に示すとおり、2つの[114](4)ヌクレオチドが連続した配列のODN5は、[114](4)ヌクレオチドを一つのみ含む一本鎖ODN4の発光抑制(前記参考例1の表2)と比較して、さらに効果的な蛍光消光を示した。ODN5の吸収スペクトルは、一本鎖状態では、吸収帯が短波長側にシフトした。このことは、ODN5に含まれる2個の[114](4)ヌクレオチドが分子内H会合体を形成したことを示唆する。この会合は、[113](n)含有ODNで観測されたと同様、一本鎖ODN5の消光につながった。すなわち、ODN5内における2個の[114](4)ヌクレオチドの色素部分がH会合することで、前記色素間にエキシトンカップリングが起きたことが、蛍光発光抑制(消光)の原因であると考えられる。これにより、2個の[114](4)ヌクレオチドを含むODN5が、[113](n)含有ODNと同様、相補鎖検出に有用であることが確認された。
[実施例9]
ODN1(n=4)を相補的なODN1'とハイブリダイゼーションさせたときの蛍光を、肉眼で測定した。図23に、その測定結果を示す。同図左のセルは、ODN1(n=4)一本鎖を含むセルであり、同図右のセルは、ODN1(n=4)/ODN1'二本鎖を含むセルであり、それぞれ、150Wハロゲンランプ照射後の状態を示す。各セル中のストランド濃度はそれぞれ2.5μMであり、リン酸バッファー(リン酸ナトリウム緩衝液)50mM(pH7.0)およびNaCl 100mMを含む。図示の通り、150Wハロゲンランプ照射後は、ODN1(n=4)一本鎖を含む図左のセルはほとんど蛍光発光しなかったが、ODN1(n=4)/ODN1'二本鎖を含む図右のセルは、きわめて明確に淡緑色の蛍光を示した。また、相補的DNA鎖ODN1'を対応する相補的RNA鎖に代えても同様の結果が得られた。さらに、ODN2とODN2’においても同様の結果が得られた。さらに、ODN2とODN2’の場合において、ODN2’を対応する相補的RNA(A13量体)に変えても同様の結果が得られた。なお、これらの場合のストランド濃度は5μMであった。また、その他、前記表6の全てのODNについて同様の結果が得られた。このように、本実施例のODNによれば、ハイブリダイゼーションに依存して蛍光強度が明確に変化するため、ハイブリダイゼーション可能な標的配列の裸眼による判定が容易であった。このことは、これらODNが、可視的な遺伝子分析に有用であることを示す。
[実施例10]
色素として、前記化合物107に代えて下記化学式119で表される化合物を用いる以外は実施例4と同様にして、下記化学式120で表されるDNAオリゴマーを合成した。
上記式120において、n=3、4、5および6の化合物(オリゴDNA)をそれぞれ同様の方法で合成することができた。さらに、配列5'-d(CGCAAT[120](5)TAACGC)-3'で表されるODN(ODN6(n=5)とする)を蛍光プライマーとして用い、吸収スペクトルおよび蛍光発光スペクトルを測定して性能を評価した。測定条件は、実施例3と同様とした。図24に、その測定結果を示す。図24(a)は、吸収スペクトルであり、横軸は波長(nm)であり、縦軸は吸光度である。図24(b)は、蛍光発光スペクトルであり、横軸は波長(nm)であり、縦軸は発光強度である。それぞれ、黒線は一本鎖ODNのスペクトルを示し、灰色の線は、相補的ODNのハイブリダイズした二本鎖ODNのスペクトルを示す。図24(a)に示すとおり、二本鎖ODNでは、二重らせん形成することにより600nm付近のUV吸収の極大波長が移動した。また、図24(b)に示すとおり、二本鎖ODNでは、一本鎖と比較して蛍光強度が大幅に増大した。これらのことから、一本鎖状態では、エキシトン効果が現れていると考えられる。すなわち、本実施例のODN(化合物120)は、実施例4のODN(化合物113)および実施例5のODN(化合物117)とは吸収帯が異なるが、同様に良好なエキシトン効果を示した。このことは、本発明において、吸収帯が異なる蛍光プライマーを用いてマルチカラーでの検出が可能であることを示す。
[実施例11:RNAとの二本鎖形成]
キュベット中で、前記ODN2(配列5'-d(TTTTTT[113](4)TTTTTT)-3')と、それに対応する相補的RNA鎖(RNA A13mer)との二本鎖ODNを形成させ、蛍光発光スペクトルを測定した。さらに、そこにRNase Hを添加し、スペクトルの変化を観察した。図25に、その結果を示す。同図において、横軸は時間であり、縦軸は蛍光強度である。図中、黒線は、途中でRNase Hを添加した前記二本鎖ODNのスペクトル変化を示し、灰色の線は、対照、すなわちRNase Hを添加しなかった前記二本鎖ODNのスペクトル変化を示す。測定は、37℃で攪拌しながら、前記蛍光分光器を用いて行った。図示の通り、RNase Hを添加すると、前記ODN2とハイブリダイゼーションしているRNAが消化され、前記ODN2が一本鎖に戻ることにより、蛍光強度が次第に減少した。
[実施例12]
前記ODN1(n=4)(配列5'-d(CGCAAT[113](4)TAACGC)-3')に対し、相補的DNA鎖であるODN1'(配列5'-d(GCGTTAAATTGCG)-3')の濃度比を変化させて蛍光発光強度の変化を観測した。測定条件としては、ODN1(n=4)のストランド濃度を1.0μMで固定し、リン酸バッファー 50mM(pH7.0)、NaCl 100mM、励起波長488nm(1.5nm幅)とした。相補鎖ODN1'の濃度は、0、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0、1.5、2.0または3.0μMの各濃度でそれぞれ測定した。図26に、その測定結果を示す。同図において、横軸は、ODN1(n=4)に対するODN1'の当量数を示す。縦軸は、蛍光のλmax(529nm)における蛍光発光強度(相対値)を示す。図示の通り、蛍光発光強度は、ODN1'の当量数が1以下では、前記当量数に対し、きわめて高い精度で正比例関係を示したが、前記当量数が1を超えると変化しなかった。このことは、ODN1(n=4)が、ODN1'と正確に1:1の物質量比(分子数比)でハイブリダイゼーションしたことを示す。
上記の通り、ODN1'(標的DNA)の物質量がODN1(n=4)と同量以下のときは、標的DNAの濃度に比例して蛍光強度が増大する。ODN1(n=4)は、例えば、プローブとして使用することも可能であるため、ODN1'(標的DNA)が存在する系中に、過剰量のODN1(n=4)(プローブ)を添加すれば、蛍光強度測定により前記標的DNAを定量することが可能である。また、前記蛍光強度の増減を追跡することにより、前記標的DNAの増減を測定することも可能である。
系中における前記標的DNAを定量するためには、例えば図26のように、あらかじめ検量線を作成しておけばよい。例えば、ODN1'(標的DNA)濃度未知の試料を本実施例と同条件で測定したときの蛍光強度が80であれば、図26から、前記ODN1'(標的DNA)濃度は約0.55μMであることが分かる。
実際に、上記の方法で核酸中のODN1'(標的DNA)配列を定量することにより、当該配列の増幅・分解・タンパク結合等の現象が生じたことを即座に検出するとともに、それらの現象量を定量することができた。
[参考例3:ドットブロッティング解析]
今回合成した新規な蛍光DNAオリゴマーの、ハイブリダイゼーションによる蛍光特性変化を見るために、前記ODN(antiB1)およびODN(anti4.5S)を用いてドットブロッティングによるDNA解析を行った。標的DNA配列は、B1 RNA配列を含む短鎖DNAフラグメントを用いた。この配列は、げっ歯類ゲノムにおける短分散型核内反復配列の一つである。また、前記短鎖DNAフラグメントは、4.5S RNA配列を含む。この配列は、げっ歯類細胞から単離した低分子核内RNAの一つであり、B1ファミリーと広範な相同性を有する。本参考例では、ブロッティング用のDNAオリゴマーとしてODN(antiB1)およびODN(anti4.5S)を調製し、これらに2個の[113](4)ヌクレオチドを組み込むことにより、高感度および高蛍光強度を持たせた。なお、DNAオリゴマーであるODN(antiB1)およびODN(anti4.5S)の構造は、前記実施例7の表5に記載の通りである。
本参考例のドットブロッティング解析は、より具体的には、以下のように行った。すなわち、まず、下記(1)および(2)の2つのDNAフラグメントを前記DNA自動合成機により調製した。
(1)下記の4.5S RNA配列およびその相補的DNAを含むDNA二本鎖。
5'-d(GCCGGTAGTGGTGGCGCACGCCGGTAGGATTTGCTGAAGGAGGCAGAGGCAGGAGGATCACGAGTTCGAGGCCAGCCTGGGCTACACATTTTTTT)-3' (配列番号11)
(2)下記のB1 RNA配列およびその相補的DNAを含むDNA二本鎖。
5'-d(GCCGGGCATGGTGGCGCACGCCTTTAATCCCAGCACTTGGGAGGCAGAGGCAGGCGGATTTCTGAGTTCGAGGCCAGCCTGGTCTACAGAGTGAG)-3' (配列番号12)
前記DNA二本鎖は、0.5M水酸化ナトリウムおよび1M塩化ナトリウム含有水溶液で変性させた。この変性DNAの一定分量を、正電荷ナイロン膜(Roche社)上にドット(スポット)した。この正電荷ナイロン膜シートを、0.5Mリン酸ナトリウムおよび1M塩化ナトリウム含有水溶液で湿らせた後、0.5Mリン酸ナトリウム、1M塩化ナトリウムおよび100μg/mLサケ精子DNA含有水溶液中、50℃で30分間インキュベートした。その後、前記正電荷ナイロン膜シートを、0.5Mリン酸ナトリウムおよび1M塩化ナトリウムを含むDNAオリゴマー水溶液(DNAオリゴマーは、150pmolのODN(anti4.5S)またはODN(antiB1))中において、50℃で1時間インキュベートした。これを室温に冷却後、ハイブリダイゼーション緩衝液を除去し、新たなリン酸緩衝液を加え、前記正電荷ナイロン膜シートが発する蛍光を、BioRad社のVersaDoc imaging system(商品名)により観測した。励起光としては、和研薬株式会社のUVトランスイルミネータModel-2270(商品名)から発せられた光をUV/青色光コンバータプレート(UVP)に通して変換した光を用いた。
図27に、測定結果を示す。
図27(a)は、ナイロン膜上に異なる配列のDNAブロットした状態を示す模式図である。上段の4つのスポットは、4.5S RNA配列含有DNAを示し、下段の4つのスポットは、B1 RNA含有DNAを示す。
図27(b)は、ODN(anti4.5S)含有溶液にインキュベートした後の蛍光発光を示す図である。
図27(c)は、ODN(antiB1)含有溶液にインキュベートした後の蛍光発光を示す図である。
図27に示すとおり、ブロットスポットの蛍光は、ブロッティングアッセイ後、繰り返し洗浄することなく、室温において、蛍光イメージング装置で読むことが可能であった。前記プローブによるインキュベーションの結果、ODN(anti4.5S)添加によれば、4.5S配列のスポットに由来する強い蛍光発光が得られたが、B1配列のスポットに由来する蛍光発光は、無視しうる程度であった。対照的に、ODN(antiB1)添加によれば、B1スポットが強い蛍光を示し、4.5Sスポットからはきわめて弱い蛍光しか観測されなかった。このように、本参考例で作製したDNAオリゴマーによれば、ブロッティング後に、多段階の煩雑な洗浄工程、および抗体または酵素処理工程を必要としない点で、従来のブロッティングアッセイとは明確に異なるアッセイを実現できる。また、モレキュラービーコン等のon-offオリゴマーと異なり、本発明におけるDNAオリゴマーでは、蛍光性色素標識部分を複数導入することも容易であり、これによりさらに蛍光強度を増進させることができる。これは本発明の大きな利点である。前記蛍光性色素標識部分は、例えば、本参考例のように、[113](4)ヌクレオチドに含まれているものでもよい。このように、本参考例により、2個の[113](4)ヌクレオチドを組みこんだDNAオリゴマーについて、標的DNAフラグメントとのハイブリダイゼーションによる蛍光特性変化が確認されたことから、同様に2個の[113](4)ヌクレオチドを組みこんだDNAオリゴマーをプライマーとして使用できることも明らかである。
[参考例4]
実施例4におけるリンカー長n=4の色素を含むポリT DNAオリゴマー(前記ODN2)を、微小ガラス管を用いたマイクロインジェクション法により細胞に導入し、水銀ランプと冷却CCDカメラおよび蛍光フィルターセット(YFP用)を備えた倒立型顕微鏡により蛍光発光を測定した。図28〜30に、その結果を示す。図28は、微分干渉測定のときの写真であり、図29は、蛍光観察時の写真であり、図30は、図28と図29との重ね合わせである。図示の通り、本発明の蛍光DNAオリゴマー(標識物質)は、細胞内に発現したmRNAのポリA末端配列に結合し発光した。すなわち、本発明における標識DNAオリゴマーは、試験管内遺伝子検出だけでなく、生体内遺伝子検出にも効果的である。
[参考例5]
前記ODN2(配列5'-d(TTTTTT[113](4)TTTTTT)-3')に、さらに、一般的な蛍光色素であるCy5を定法により結合させ、さらにそれを前記の方法で細胞に導入した。ここでCy5は前記ODN2を合成する過程において、DNA自動合成機により前記ODN2の5'末端に追加することで結合させた(配列5'-Cy5-d(TTTTTT[113](4)TTTTTT)-3')。蛍光発光はレーザー走査型共焦点顕微鏡により測定した。図31に、その結果を示す。図31Aは、633nmにより励起し650nm以上の蛍光を取得しており、Cy5由来の蛍光を示す。図31Bは、488nmにより励起し505‐550nmの蛍光を取得しており、2つのチアゾールオレンジ部分に由来する蛍光を示す。図示の通り、ODN2は、細胞内に発現したmRNAのポリA末端配列に結合し発光した。これにより、細胞内mRNAの分布を追跡可能であった。本発明の化合物または核酸は、このように、複数種類の色素(蛍光性を示す原子団)を導入してもよい。このようにすれば、例えば、各色素の蛍光のλmaxが異なることにより、マルチカラーによる検出も可能で
ある。
[参考例
6]
前記ODN2(配列5'-d(TTTTTT[113]
(4)TTTTTT)-3')を前記の方法で細胞核に注入し、直後(0秒後)から約4分半後まで、蛍光発光を前記レーザー走査型共焦点顕微鏡により追跡した(励起488nm、蛍光取得505-550nm)。図32に、その結果を示す。同図は、11の図に分かれており、左から右へ、および上段から下段へと向かって、ODN2注入後の経過を示す。各図における経過時間(ODN2注入後)は、下記表8の通りである。図示の通り、ODN2は、注入直後は細胞核に集中していたが、ハイブリダイズしたmRNA(ポリA)とともに、次第に細胞全体に分散したことが確認された。本発明によれば、このようにしてmRNAを追跡することも可能である。
[参考例7]
前記ODN2において、[113](4)の両側のTをそれぞれ24個に増やしたODNを合成した。これをODN7とする。合成は、ODN2の合成方法と同様にして行った。また、ODN7の配列は、5'-d(TTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTT[113](4)TTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTT)-3')である(配列番号13)。これを、実施例17と同様の方法で細胞核に注入し、蛍光強度を測定した。図33に、一定時間経過後の蛍光写真を示す。ODN7は、注入直後は細胞核に集中していたが、実施例17と同様、ハイブリダイズしたmRNA(ポリA)とともに、次第に細胞全体に分散し、やがて、図33のように、細胞核周辺に分散した状態となった。
[実施例13:マルチカラーによる検出]
実施例5、10等で述べた通り、本発明における蛍光DNAオリゴマーは、吸収波長、発光波長等を変化させることで、マルチカラーによる相補鎖検出が可能である。このマルチカラーによる検出は、例えば、前記化合物113、117および120のように、色素(蛍光性を示す原子団)部分の構造を変化させることにより達成可能である。本実施例では、さらに多種類の蛍光DNAオリゴマーを合成(製造)し、マルチカラーによる相補鎖検出を行った。
まず、下記式(121)で表されるヌクレオチド構造を含むDNA鎖(蛍光DNAオリゴマー)を、色素(蛍光性を示す原子団)部分の構造を種々変化させて合成した。下記式(121)において、「Dye」とは、色素部分を示す。
具体的には、前記式(121)において「Dye」の部分がそれぞれ下記式で表される化合物(DNA鎖)113、120、122、123および124を合成した。nは、それぞれリンカー長(炭素原子数)である。化合物113、120、122、123および124について、n=3、4、5および6である化合物をそれぞれ合成した。合成方法は、前記色素107に代えてそれぞれに対応する構造の色素を用いる以外は前記中間体合成例1〜4、実施例2、4、6、7もしくは10、または参考例1と同様に行った。前記色素107に代わる色素の合成も、原料の構造を適宜変える以外は前記色素107の合成(前記実施例2のスキーム5)と同様に行った。また、化合物113および120は、前記各実施例の化合物113および120とそれぞれ同じ構造である。
上記化合物113、120、122、123および124について、それぞれ、配列5'-d(CGCAATX(n)TAACGC)-3'で表されるODNを合成した。Xは、113、120、122、123または124である。nはリンカー長である。配列5'-d(CGCAAT[113](n)TAACGC)-3'で表されるODNは、前記ODN1と同じである。配列5'-d(CGCAAT[120](n)TAACGC)-3'で表されるODNは、前記ODN6と同じである。配列5'-d(CGCAAT[122](n)TAACGC)-3'で表されるODNを、ODN8とする。配列5'-d(CGCAAT[123](n)TAACGC)-3'で表されるODNを、ODN9とする。配列5'-d(CGCAAT[124](n)TAACGC)-3'で表されるODNを、ODN10とする。ODN1、ODN6、ODN8、ODN9およびODN10について、n=3、4、5および6であるODNをそれぞれ合成した。
ODN1(n=4)、ODN6(n=4)、ODN8(n=4)、ODN9(n=4)およびODN10(n=4)について、それぞれ、相補鎖であるODN1’と二本鎖を形成させた後に、蛍光発光スペクトルを測定した。励起波長以外の測定条件は、前記各実施例と同様である。その結果を、下記表9に示す。下記表9中、E
xは励起波長を示し、E
mは、蛍光発光の極大波長を示す。なお、励起波長E
xは、吸収の極大波長λ
maxとほぼ等しくした。
表9から分かる通り、各ODNは、二本鎖を形成した際に、456nmから654nmまでの幅広い波長範囲で、それぞれ異なる蛍光発光の極大波長Emを示した。すなわち、本実施例(実施例13)で合成したODNを用いて、マルチカラーによる相補鎖DNAの検出が可能であった。さらに、本実施例の化合物(DNA鎖)113、120、122、123および124、ODN1、ODN6、ODN8、ODN9およびODN10について、前記各実施例および参考例と同様に使用し、相補鎖RNAの検出、ドットブロッティング解析、細胞内mRNAの検出等の全てをマルチカラーで行うことが可能であることを確認した。
[実施例14]
本発明の標識プライマーを含むSMAP用プライマーセットを用いて、EGFRexon21の突然変異L858R(2573T>G)の検出を行った。
(1)鋳型DNA、セルライン
鋳型DNAは、exon21点突然変異L858Rを含む肺癌セルラインNCl−H1975から抽出した(American Type Culture Collection)。前記セルラインは、それぞれの突然変異について、1つの正常な対立遺伝子を有するヘテロ接合体である。前記セルラインから、常法によりゲノムDNAの抽出を行い、40ng/μLにまで希釈した。これをフルマッチ検出用の鋳型DNAという。なお、ミスマッチ検出用の鋳型DNAとして、exon21対立遺伝子について野生型ホモ接合体であるヒトゲノムDNAを使用した(Promega社製)。また、これらの鋳型DNAは、98℃で3分加熱処理後、急冷したものを、後述するアッセイに使用した。
(2)プライマー
SMAP用プライマーセットとして、4種類のプライマーを準備した。これらのプライマーを、exon21における標的核酸配列を含む領域(標的領域)とあわせて、図34に示す。同図においてAは、前記標的領域(配列番号14)、Bは、Folding Primer(FP;第2のプライマー;配列番号15)、Turn-back Primer(TP;第1のプライマー;配列番号16)、Boost Primer(BP;第三のプライマー;配列番号17)およびOuter Primer2(OP2;配列番号18)である。同図Aにおいて、下線FPにおける小文字「g」が検出目的の突然変異であり、野生型の場合、この部位は小文字「t」である。同図Aにおいて、下線部FPが、Folding Primerの3’末端に含まれる配列である。同図Aにおいて、点線枠TP1が、Turn-back Primerの5’末端に含まれる配列であり、点線枠TP2の相補鎖が、Turn-back Primerの3’末端に含まれる配列である。また、同図Aにおいて、下線部BPが、Boost Primerの配列であり、同図Bにおいて、下線部BPの太字で表したヌクレオチド残基(T)が、後述する蛍光性原子団で標識化された塩基(標識構造)である。また、同図Aにおいて、下線部OP2の相補鎖が、Outer Primer2の配列である。
前記FPは、その3’末端から3番目のヌクレオチド残基で、目的の突然変異部位と相同性を有する、突然変異検出用プローブとして設計した。鋳型DNAに目的の変異が存在する場合、前記変異を含む領域と突然変異検出用のFPは変異塩基部位で相同であり、このプライマーFPから伸長は、阻害されることなく起こる。
本実施例では、前述のように、Boost Primerを標識プライマーとした。この標識プライマーは、図34BのBoost Primerにおいて、前記標識化されたヌクレオチド残基の構造は、前記式(121)で表され、前記式(121)において「Dye」の部分は、それぞれ前記実施例13における前記式(113)で表される(チアゾールオレンジ)。前記式(113)においてリンカー長は、n=4とした。前記式(113)で表される蛍光性原子団の検出波長は、励起波長510nm/蛍光波長530nmである。この標識化プライマーは、配列番号17のオリゴマーとした以外は、前記実施例4または実施例13と同様の方法で合成した。
(3)SMAP反応
下記組成の反応液25μlを調製し、これを60℃で反応させた。前記反応中、60℃の等温状態を維持しながら、Mx3005P system(商品名、Stratagene社製)により、反応液の蛍光強度をリアルタイムでモニタリングした。なお、比較例としては、標識化したBoost Primer(標識プライマー)に代えて、同じ配列の未標識Boost Primerを使用し、且つ、下記反応液に、検出用のインターカレーターとしてSYBR(登録商標)GreenI(Moleculor Probes, Inc)を添加した以外は、同様にして蛍光強度をリアルタイムでモニタリングした。なお、前記インターカレーターは、反応液において10万倍希釈となるように添加した。
蛍光強度の検出は、FAMの波長(励起波長492nm/蛍光波長516nm)とHexの波長(励起波長535nm/蛍光波長555nm)を結合した波長範囲とした。これにより、標識プライマーの蛍光強度(実施例)とSYBR(登録商標)GreenIの蛍光強度の両方を測定した。これらの結果を図35および図36に示す。図35は、SMAP法による等温増幅反応を行った際の増幅プロフィールを示すグラフであり、図36は、その部分的な拡大図である。同図AおよびBにおいて、a−●が、フルマッチ検出用の鋳型DNAおよび標識プライマー(標識BP)を用いた等温増幅反応の結果、b−■が、ミスマッチ検出用の鋳型および標識プライマー(標識BP)を用いた等温増幅反応の結果、c−▲が、フルマッチ検出用の鋳型DNAおよびSYBR(登録商標)GreenIを用いた等温増幅反応の結果、d−◆が、ミスマッチ検出用の鋳型およびSYBR(登録商標)GreenIを用いた等温増幅反応の結果である。
同図に示すように、SYBR(登録商標)GreenIを用いた比較例(▲、◆)は、25サイクル付近から、フルマッチ(▲)とミスマッチ(◆)との間で、蛍光強度の有意な差が確認された。具体的には、プラトーに達した蛍光強度を比較すると、フルマッチ(▲)はミスマッチ(◆)の約1.4倍程度の蛍光強度であった。これに対して、標識プライマーを用いた実施例(●、■)では、36サイクル付近から、フルマッチの蛍光強度の急激な増加が確認され、フルマッチ(●)とミスマッチ(■)との間で、極めて大きな差が確認された。具体的には、例えば、50サイクル付近における蛍光強度を比較すると、フルマッチ(●)はミスマッチ(■)の約7.3倍程度の蛍光強度であった。これは、目視によっても十分に違いが確認できた。本発明によれば、同図に示すように、フルマッチの蛍光強度が極めて高いことから、目視による変異の確認も可能であると言える。また、図35の拡大図である図36に示すように、比較例のミスマッチ(◆)の蛍光強度よりも、実施例のミスマッチ(■)の蛍光強度が低いことから、実施例によれば、バックグラウンドを低減できたことがわかる。これは、SYBR(登録商標)GreenI等のインターカレーターを使用する際に見られる、核酸試料そのものに含まれるDNAに起因する蛍光や、標的配列を含まない領域の非特異的増幅に起因する蛍光を排除できるためと考えられる。なお、ミスマッチは、60分の反応によっても増幅は確認されなかった。以上の結果から、本発明によれば、極めて高い感度で、標的核酸配列の増幅ならびに変異の有無が確認できると言える。
[実施例15]
本発明の標識プライマーを含むSMAP用プライマーセットを用いて、ヒトインフルエンザH3N2亜型における野生型とタミフル耐性変異型の検出を行った。
(1)鋳型DNA
H3N2亜型の野生型コピー断片を有するプラスミドと、119番目のグルタミン酸がバリンに変換された変異型コピー断片を有するプラスミドを、東京大学メディカルセンターより入手した。そして、H3N2亜型のRNAからRT-PCRにより鋳型となるプラスミドDNAを増幅させた。得られたプラスミドDNAを5分間、95℃で加熱して、鋳型DNAとして後述するアッセイに供した。
(2)プライマー
SMAP用プライマーセットとして、以下に示す6種類のプライマーを準備した。これらのプライマーを、H3N2亜型における標的核酸配列を含む領域(標的領域)とあわせて、図37に示す。同図においてAは、野生型の標的領域(配列番号19)および変異型の標的領域(配列番号20)を示す概略図である。同図においてBは、Turn-back Primer(TP;第1のプライマー;配列番号21)、Folding Primer(FP;第2のプライマー;配列番号22)、野生型用Boost Primer(BPw;第三のプライマー;配列番号23)、変異型用Boost Primer(BPm;第三のプライマー;配列番号24)、Outer Primer1(OP1;配列番号25)およびOuter Primer2(OP2;配列番号26)である。同図Aにおいて、野生型の場合、119E(wild)の下線BPwにおける小文字「a」が検出目的の塩基であり、変異型の場合、119V(mutant)の下線部BPmにおける小文字「t」が検出目的の塩基である。同図Bにおいて、119E(野生型)のBPwにおける3’末端から2番目の塩基「T」が、検出目的の突然変異(A)に相補な塩基であり、119V(変異型)の下線BPmにおける3’末端から2番目の塩基「A」が、検出目的の突然変異(T)に相補な塩基である。同図Aにおいて、点線枠TP1の相補鎖が、Turn-back Primerの5’末端に含まれる配列であり、点線枠TP2が、Turn-back Primerの3’末端に含まれる配列である。同図Aにおいて、下線部FPの相補鎖が、Folding Primerの3’末端に含まれる配列である。また、同図Aにおいて、下線部BPwの相補鎖が、野生型用Boost Primerの配列であり、下線部BPmの相補鎖が、変異型用Boost Primerの配列である。また、同図Aにおいて、下線部OP1がOuter Primer1の配列であり、下線部OP2の相補鎖が、Outer Primer2の配列である。
本実施例では、野生型および変異型のBoost Primerを標識プライマーとした。図37において、BPwおよびBPmの下線を引いた太文字のヌクレオチド残基(T)が、それぞれ、蛍光性原子団で標識化された塩基(標識構造)である。前記野生型Boost Primerにおいて、前記標識化されたヌクレオチド残基の構造は、前記式(121)で表され、前記式(121)において「Dye」の部分は、それぞれ前記実施例13における前記式(113)で表される。前記式(113)においてリンカー長は、n=4とした。前記式(113)で表される蛍光性原子団の検出波長は、励起波長510nm/蛍光波長530nmである。また、前記変異型Boost Primerにおいて、前記標識化されたヌクレオチド残基の構造は、前記式(121)で表され、前記式(121)において「Dye」の部分は、それぞれ前記実施例13における前記式(120)で表される。前記式(120)においてリンカー長は、n=4とした。前記(120)で表される蛍光性原子団の検出波長は、励起波長630nm/蛍光波長650nmである。これらの標識プライマーは、それぞれ塩基配列を配列番号23(BPw)および配列番号24(BPm)とする以外は、前記実施例4または実施例13と同様の方法で合成した。
(3)SMAP反応
下記組成の反応液25μlを氷上で調製し、60℃で反応させた。前記反応中、60℃の等温状態を維持しながら、Mx3005P system(商品名、Stratagene社製)により、反応液の蛍光強度をリアルタイムでモニタリングした。蛍光強度の検出は、FAMの波長(492nm‐516nm)とCy5の波長(635nm‐665nm)を検出波長範囲とした。これにより、ラベル化した各Boost Primerの蛍光強度を測定した。FAM波長により、野生型検出用のBPwの蛍光原子団を検出でき、Cy5波長により、変異型検出用のBPmの蛍光原子団を検出できる。前記反応液における鋳型DNAの種類と割合ならびにBoost Primerの種類と割合を、下記表12に示す(実施例
15-1〜
15-2)。下記表12において、前記反応液中のBoost Primerにおける野生型検出用および変異型検出用の濃度、鋳型DNAにおける野生型および変異型のコピー数を示す。これらの結果を図38〜41に示す。
図38は、実施例15-1の反応液aからdについて、等温増幅反応を行った際の増幅プロフィールを示すグラフである。同図Aは、野生型検出用Boost Primerを使用した実施例15-1の反応液aおよびbについて、同図Bは、変異型検出用Boost Primerを使用した実施例15-1の反応液cおよびdについて、FAMの波長(492nm/516nm)およびCy5の波長(635nm/665nm)のそれぞれで蛍光強度を検出した結果である。同図AおよびBにおいて、■および□は野生型DNA(野生型プラスミド)の結果を、●および○は変異型DNA(変異型プラスミド)の結果を示している。同図Aに示すように、野生型検出用Boost Primerを使用した場合、野生型検出用Boost Primerとフルマッチである野生型DNA(■)では、27サイクル付近からFAMの波長で蛍光強度の急激な増加が確認された。これに対して、野生型検出用Boost Primerとミスマッチである変異型DNA(●)では、45サイクルになっても蛍光強度の増加は確認されなかった。また、これら2つの反応液では、Cy5の波長で蛍光強度の増加は確認されなかった(□および○)。他方、同図Bに示すように、変異型検出用Boost Primerを使用した場合、変異型検出用Boost Primerとフルマッチである変異型DNA(○)では、27サイクル付近からCy5の波長で蛍光強度の急激な増加が確認された。これに対して、変異型検出用Boost Primerとミスマッチである野生型DNA(□)では、45サイクルになっても蛍光強度の増加は確認されなかった。また、これら2つの反応液ではFAMの波長で蛍光強度の増加は確認されなかった(■および●)。これらの結果から、野生型検出用Boost Primerを用いてFAMの波長で野生型DNAの検出が、さらに変異型検出用Boost Primerを用いてCy5の波長で変異型DNAの検出ができることがわかった。なお、これらの結果は、目視によっても十分に違いが確認できた(以下、同様)。
図39は、実施例15-1の反応液eおよびfについて、等温増幅反応を行った際の増幅プロフィールを示すグラフである。前記反応液は、Boost Primerとして野生型検出用と変異型検出用の両方を含んでいる。同図において、■、□、●および○は、図38と同様の結果を示している。図39に示すように、野生型DNAを含む反応液eは、FAMの波長では27サイクル付近から蛍光強度の急激な増加が確認された(■)。それに対して、Cy5の波長では45サイクルにおいても蛍光強度の増加は確認できなかった(□)。他方、変異型DNAを含む反応液fは、Cy5の波長で29サイクル付近から蛍光強度の急激な増加が確認された(○)。それに対して、FAMの波長では45サイクルにおいても急激な蛍光強度の増加はおこらず、増幅はほとんど確認できなかった(●)。これらの結果から、野生型検出用Boost Primerと変異型検出用Boost Primerを両方用いることで、FAMの波長では野生型の検出が、Cy5の波長では変異型の検出が一つの反応液中で実施できることがわかった。
図40は、実施例15-1の反応液b、c、e、fについて、等温増幅反応を行った際の増幅プロフィールを示すグラフである。野生型検出用Boost Primerを用いた反応液bでは、50サイクル付近から野生型検出用Boost Primerによる変異型DNAのミスマッチの増幅が確認できた(■)。また、変異型検出用Boost Primerを用いた反応液cでは、52サイクル付近から変異型検出用Boost Primerによる野生型DNAのミスマッチの増幅が確認できた(□)。それに対して、野生型検出用と変異型検出用のBoost Primerを両方用いた反応液eおよびfでは、急激な蛍光強度の増加がおこらず、90サイクルにおいてもほとんどミスマッチの増幅を確認でなかった。これは、反応液に野生型検出用Boost Primerと変異型検出用Boost Primerの両方を共存させることによって、フルマッチのBoost PrimerとミスマッチのBoost Primerとの間で競合が生じ、ミスマッチであるBoost PrimerがDNAに結合することが抑制されたためである。これらの結果から、野生型検出用Boost Primerと変異型検出用Boost Primerを両方用いることで、ミスマッチの増幅を抑制できることがわかった。
図41は、実施例15-2の反応液g〜kについて、等温増幅反応を行った際の増幅プロフィールを示すグラフである。前記反応液は、Boost Primerとして、野生型検出用と変異型検出用の両方を、また、鋳型DNAとして、野生型DNAと変異型DNAの両方を含んでいる。同図Aにおいて、▲は、実施例15-2の反応液iについてFAMの波長で検出した結果、△は、前記反応液iについてCy5の波長で検出した結果を示している。同図Aに示すように、FAMおよびCy5の両方の波長において、急激な蛍光強度の増加が確認された。この結果から、両方のBoost Primerを共存させても、それぞれのBoost PrimerがフルマッチのDNAを増幅させることができ、さらにそれぞれの波長で増幅を検出できることがわかった。同図Bは、実施例15-2の反応液g〜kについてFAMの波長で検出した結果、同図Cは、前記反応液g〜kについてCy5の波長で蛍光強度を検出した結果を示している。前記各反応液は、前記表12に示すように、鋳型DNAとして野生型DNAと変異型DNAの含有量を変化させた。同図Bに示すように、野生型検出用Boost Primerとフルマッチである野生型DNAの割合が減少しても、FAMの波長で蛍光強度の増加が確認できた。また、同図Cに示すように、変異型検出用Boost Primerとフルマッチである変異型DNAの割合が減少しても、Cy5の波長で蛍光強度の増加が確認できた。これらの結果から、野生型検出用Boost Primerと変異型検出用Boost Primerとの両方を用いた場合、反応液に含まれる野生型DNAの含有量が少なくなってもFAMの波長で野生型の検出が、反応液に含まれる変異型DNAの含有量が少なくなってもCy5の波長で変異型の検出ができることがわかった。
[実施例16]
本発明の標識プライマーを含むプライマーセットを用いたPCRにより、EGFR遺伝子のexon21の増幅を行った。
(1)鋳型DNA
Human Genomic DNA(Promega社製)を使用した。
(2)プライマー
未標識フォワードプライマー(F1)と標識リバース(Labeled-R1)とからなるプライマーセットを用いた。なお、標識R1は、下線を付したヌクレオチド残基(T)を蛍光原子団で標識化した。前記標識化されたヌクレオチド残基の構造は、前記式(121)で表され、前記式(121)において「Dye」の部分は、それぞれ前記実施例13における前記式(113)で表される。前記式(113)においてリンカー長は、n=4とした。前記式(113)で表される蛍光性原子団の検出波長は、励起波長510nm/蛍光波長530nmである。この標識R1は、塩基配列を配列番号28とする以外は、前記実施例4または実施例13と同様の方法で合成した。
F1:5’‐AAACACCGCAGCATGTC−3’ (配列番号27)
Labeled-R1:5’‐TAAAGCCACCTCCTTAC−3’ (配列番号28)
なお、exon21の領域(配列番号30)におけるF1およびlabeled-R1の位置関係は、以下の下線部に示す通りである。
5’−AAACACCGCAGCATGTCAAGATCACAGATTTTGGGCGGGCCAAACTGCTGGGTG
F1
CGGAAGAGAAAGAATACCATGCAGAAGGAGGCAAAGTAAGGAGGTGGCTTTA−3’
labeled-R1
前記F1およびlabeled-R1からなるプライマーセットを使用した。そして、PrimeSTAR(登録商標)HS DNA Polymerase(Takara)を使用し、製品の説明書に記載される方法に従い、PCRを行った。そして、PCR反応液の蛍光強度を、Mx3000P system(Stratagene社製)を用いて、リアルタイムでモニタリングした。具体的には、98℃10秒のプレヒーティング後、98℃10秒、69℃10秒、72℃10秒を1サイクルとして、40サイクルのPCRを行った。この結果を、図42Aに示す。同図は、labeled-R1を含む前記プライマーセットを用いたPCR増幅曲線を示すグラフである。
また、PCR終了後、反応液9μlについて、4% NuSieve GTG Agarose(タカラバイオ社)を用いて、100Vで電気泳動を行った。そして、泳動後のゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)で染色することにより、核酸を検出した。その電気泳動写真の結果を、図42Bに示す。同図において、レーン1は、標識プライマー(labeled-R1)を含むプライマーセットを用いたPCRによる核酸増幅物、レーン2は、25bp毎のラダーマーカーを泳動した結果をそれぞれ示す。
図42Aに示すように、標識プライマーは、PCRでも増幅することが確認された。これは、目視によっても十分に違いが確認できた。また、図42Bに示すように、標識プライマーを用いた核酸増幅物を電気泳動で確認したところ、目的のバンドが確認された。以上のことから、前記蛍光原子団(510/530)で標識したプライマーは、PCRでも有効に機能することが判明した。
[実施例17]
本発明の標識プライマーを含むプライマーセットを用いたPCRにより、EGFR遺伝子のexon21の増幅を行い、融解曲線解析を行った。
(1)鋳型DNA
Human Genomic DNA(Promega社製)を使用した。
(2)プライマー
未標識フォワードプライマー(F1)と標識リバースプライマー(Labeled-R1)とからなるプライマーセット(実施例)、ならびに、未標識フォワードプライマー(F1)と未標識リバースプライマー(R1)とからなるプライマーセット(対照例)を用いた。前記標識R1(labeled-R1)は、前記実施例16と同様である。また、exon21の領域(配列番号30)におけるR1の位置関係は、標識R1と同じである。
F1:5’‐AAACACCGCAGCATGTC−3’ (配列番号27)
R1:5’‐TAAAGCCACCTCCTTAC−3’ (配列番号29)
Labeled-R1:5’‐TAAAGCCACCTCCTTAC−3’ (配列番号28)
F1、R1からなる通常のプライマーセットおよびF1、Labeled-R1からなる標識プライマーセットを使用した。SYBR(登録商標)Premix EX Taq(登録商標)(Takara社製)を使用し、製品の説明書に記載される方法に従い、PCRを行った。そして、PCR反応液の蛍光強度を、Mx3000P system(Stratagene社製)を用いて、リアルタイムでモニタリングした。具体的には、95℃10秒のプレヒーティング後、95℃30秒、60℃1分および72℃30秒を1サイクルとして、40サイクルのPCRを行った。PCR終了後、続いて、融解曲線測定ステップとして、95℃1分、55℃30秒で処理し、昇温速度2℃/1分で95℃にまで温度を上昇させ、95℃30秒処理し、55℃〜95℃における蛍光強度をリアルタイムでモニタリングした。これらの結果を、図43に示す。同図は、融解曲線のグラフであって、同図において、■(labeled-primer)は、F1、labeled-R1からなる標識プライマーセットを使用した実施例の結果(FAMの波長492nm/516nm)、●(regular primer)は、F1、R1からなるプライマーセットを使用した対照例の結果(FAMの波長492nm/516nm)である。
図43に示すように、標識プライマーを使用したPCRの融解曲線(実施例)は、未標識プライマーを使用したPCRの融解曲線(対照例)と比較して、高い温度にピークを示した。この結果から、本発明における標識核酸(プライマー)によれば、未標識プライマーよりも、Tm値が上昇することがわかった。このようにTm値が上昇することから、本発明における標識核酸は、通常の未標識プライマーよりも、さらに強固に相補的なDNAに結合することが示された。すなわち、本発明の標識核酸が、例えば、一般的に使用されるLNAやPNA等のTm値を高めるオリゴヌクレオチドと同様の機能を有することがわかった。この結果から、本発明の標識核酸によれば、例えば、増幅の特異性を向上させるという応用技術への発展も可能であるといえる。また、本発明における標識核酸は、Tm値を高めるためにLNAやPNAを使用する実験系への適用はもちろんのこと、例えば、LNAやPNAには無い蛍光を発する能力を有することから、分子生物学的手法において、LNAやPNAよりもさらに使用用途が広いことが容易に推測できる。
[実施例18]
本発明の標識プライマーを含むLAMP用プライマーセットを用いて、EGFRexon21の突然変異L858Rを含む領域の増幅を行った。
(1)鋳型DNA
鋳型DNAは、実施例14と同様に、exon21点突然変異L858Rを含む肺癌セルラインNCl−H1975から抽出した(American Type Culture Collection)。
(2)プライマーセット
前記突然変異を含む領域とフルマッチのLAMP用プライマーセットを調製した。プライマーセットは、下記LF(配列番号31)、LR(配列番号32)、標識化または未標識のBP(配列番号33)、および、OP(配列番号34)を含む。プライマーセットにおける各プライマーの割合は、LF:LR:BP:OP=8:8:4:1とした。
LF(EGFRex21(M)LF Primer) 5’-CCAAAATCTGGGAACGTACTGGTGAAACA-3’
LR(EGFRex21(M)LR Primer) 5’-CGAGCCAAACGCCTCCTTCTGCATGGTATT-3’
BP(Boost Primer;EGFR exon21 BP3) 5’-TGGGTGCGGAAGAGAAAG-3’
OP(Outer Primer2;EGFR exon21 OP3) 5’-TAAAGCCACCTCCTTAC-3’
前記標識BPは、下記蛍光原子団により所定のヌクレオチドを標識化した。下記表の配列において太字下線を付したヌクレオチドが標識部位である。下記BP-1において、前記標識化されたヌクレオチド残基の構造は、前記式(121)で表され、前記式(121)において「Dye」の部分は、それぞれ前記
実施例13における前記式(113)で表される。前記式(113)においてリンカー長は、n=4とした。前記式(113)で表される蛍光性原子団の検出波長は、励起波長510nm/蛍光波長530nmである。また、下記BP-2において、前記標識化されたヌクレオチド残基の構造は、前記式(121)で表され、前記式(121)において「Dye」の部分は、それぞれ前記
実施例13における前記式(123)で表される。前記式(123)においてリンカー長は、n=4とした。前記式(123)で表される蛍光性原子団の検出波長は、励起波長530nm/蛍光波長550nmである。これらの標識プライマーは、それぞれ塩基配列を配列番号33(BP)とする以外は、前記実施例
4または
実施例13と同様の方法で合成した。
下記組成の反応液25μLを調製し、これを60℃で1時間反応させた。前記反応中、60℃の等温状態を維持しながら、Mx3000P(商品名、Stratagene社製)により、反応液の蛍光強度をリアルタイムでモニタリングした。なお、対照例は、未標識のプライマーセットを使用し、さらに、SYBR(登録商標)GreenI(Moleculor Probes, Inc)を反応液中の濃度が10万倍希釈となるように添加して、同様に測定を行った。
これらの結果を図44に示す。同図は、LAMP法による等温増幅反応を行った際の増幅プロフィールを示すグラフであり、●が、BP-1を使用した実施例18-1、■が、BP-2を使用した実施例18-2、▲が、対照例の結果である。
同図に示すように、本発明の標識プライマーを用いた実施例18-1〜18-2によれば、対照例と同様に、LAMP法においても増幅を確認できることがわかった。また、前記式(113)の蛍光原子団(510/530)で標識化したBP-1を用いた実施例18-1は、前記式(123)の蛍光原子団(530/550)で標識化したBP-2を用いた実施例18-2よりもプラトーにおける蛍光値が非常に高かった。これは、目視によっても十分に違いが確認できた。このことから、前記蛍光原子団が、本発明のプライマーにおける標識として非常に検出感度に優れることがわかった。
以上の通り、本発明のプライマーは、前記式で表される構造を含む標識核酸とすることで、例えば、標的核酸配列の増幅方法に使用した際、前記標的核酸配列の増幅を効果的に検出することが可能となる。また、このように増幅を効果的に検出できることから、さらに、標的核酸配列における目的の変異の有無等も優れた感度で検出可能である。本発明は、核酸の検出感度等に優れることから、例えば、研究、臨床、診断、試験管内遺伝子検出、生体内遺伝子検出等、幅広い用途に使用可能である。