JP4042016B2 - 繊維シート状複合物の製造方法及び人工皮革 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水系ウレタン樹脂と特定の増粘剤とからなる水系ウレタン樹脂組成物を繊維材料基体に含浸又は塗布し、スチームで感熱凝固させる繊維シート状複合物の製造方法に関するものである。さらに詳しくはスチーム凝固においてシャープな感熱凝固性を有し、かつ感熱凝固により繊維間に均一に充填された水系樹脂組成物が乾燥後に、マイクロポーラス層を形成し、しかも溶剤系と同等の風合い、即ち充実感、腰のある風合いを与える繊維シート状複合物、特に人工皮革を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の人工皮革の製造方法は、ウレタン樹脂の有機溶媒溶液を繊維材料基体に含浸又は塗布し、ウレタン樹脂に対し貧溶媒で、かつ当該有機溶媒と相溶性のある凝固液(通常は水)中に通して凝固させ、次いで水洗、乾燥させる湿式凝固法と呼ばれる方法が知られている。しかしこの際、工業的に使用されているジメチルホルムアミド(DMF)等の有機溶剤は毒性が強く、回収に多額のコストがかかるという問題があった。これらの問題点を解決するために、繊維材料基体に含浸又は塗布するウレタン樹脂を有機溶剤タイプから水系ウレタン樹脂に移行すべく検討がなされているが、満足すべき風合いと物性とを有した人工皮革は得られていない。
【0003】
この大きな理由としては、水系ウレタン樹脂を繊維材料基体に含浸し加熱乾燥した場合、水が繊維材料基体の表面より蒸発し、水の移動に引き連られて水系ウレタン樹脂が繊維材料基体の表面に移行するマイグレーションを起こすことが挙げられる。このマイグレーションによって、ウレタン樹脂は繊維材料基体の表面に移行し内部にはほとんど付着していない状態となるため、風合いが硬く、折れ皺の出来やすい状態の人工皮革しか得られなかった。そこで、このマイグレーションを防止するため種々の検討がなされてきた。
【0004】
例えば▲1▼特公昭55−51076号公報に開示されているような感熱ゲル化剤を添加し感熱凝固性を付与した合成樹脂エマルジョンを熱水中で凝固する方法がある。▲2▼特公昭59−1823号公報に開示されているような、アニオン性界面活性剤で乳化して、カルボキシル基を持つウレタン樹脂を作成し、後で少量のノニオン性界面活性剤を添加し貯蔵安定性を有したポリウレタンエマルジョンに、感熱凝固剤を付与したポリウレタンエマルジョン配合液を含浸または塗布したのち、熱風または熱水で加熱し感熱凝固する方法がある。また、▲3▼特開平6−316877号公報に開示されているような強制乳化されたエマルジョンに無機塩類を溶解した水系樹脂組成物を付与し加熱乾燥する方法もある。更に、▲4▼特公平6−60260公報に開示されているようにマイクロバルーンを加えた水系ウレタン樹脂組成物を感熱凝固させるとともに、マイクロバルーンを発泡させて発泡体を形成したものがある。
【0005】
しかし▲1▼においてはマイグレーション防止は可能であるが、含浸液の一部が凝固浴中に流出して凝固し、凝固したゲル物が加工物の表面に再付着するという問題が起こる。またポリウレタン樹脂濃度が低下するにつれて感熱凝固性が低下し、ウレタン樹脂の熱水中への流出が更に起こりやすくなる問題がある。▲2▼においては樹脂組成物が主にアニオン性であるため、感熱凝固性促進剤の無機塩(特に2価以上の金属塩)を添加した場合、樹脂組成物の安定性が非常に悪く配合上問題がある。また加工方法が熱風乾燥の場合は、皮膜化した樹脂内部を見るとマイクロポーラスを形成せず、また樹脂付着量が増加するにつれて風合いが硬くなる傾向にある。加工方法が熱水凝固の場合は▲1▼と同様の問題が起こる。▲3▼においては熱風乾燥であるため▲2▼と同様マイクロポーラスを形成しない。また無機塩類を多量に使用するため加工後の繊維中に無機塩類が残留し、そのまま人工皮革として使用するには問題がある。▲4▼においてはマイクロポーラスを形成させるためにマイクロバルーンを添加したものであるが、添加したマイクロバルーンに起因して熱やけによる着色がおきたり、風合いが硬くなったり、ポーラスの径が大きくまた基本的には独立した孔であるため、風合いや物性の点でまだ十分な性能が得られない。
【0006】
以上の如く従来の技術では人工皮革として満足すべき風合いと物性を有するものは得られず、特に本発明の目的である、乾燥後のウレタン樹脂がマイクロポーラス層を形成し、溶剤系と同等の充実感と腰のある風合いを与えるものは全く無かった。
尚、本発明における「マイクロポーラス」とは、繊維中に充填された水系ウレタン樹脂組成物の乾燥皮膜中に、均一に多数の小さな孔が存在している状態を表すものである。(図1を参照下さい)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、配合液(水系樹脂組成物)が安定で、かつスチーム凝固によりシャープな感熱凝固性を有し、更に感熱凝固により繊維材料基体中に均一に充填された水系樹脂組成物が乾燥後に、マイクロポーラス層を形成し、しかも溶剤系と同等の風合い、即ち充実感、腰のある風合いを与える繊維シート状複合物の製造方法及びそれにより得られる人工皮革にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決する繊維シート状複合物特に人工皮革の製造方法について鋭意研究の結果、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
即ち、本発明は、(イ)1)感熱凝固温度が40〜90℃であるHLB 10〜18のノニオン性乳化剤で分散された水系ウレタン樹脂と、2)末端に疎水基を含有し、分子鎖中にウレタン結合を含有する会合型増粘剤からなる水系樹脂組成物を、
(ロ)繊維材料基体に含浸又は塗布し、(ハ)スチームで感熱凝固させることを特徴とする繊維シート状複合物の製造方法及びそれにより得られた人工皮革を提供するものである。
【0011】
本発明の目的である、スチーム凝固によりシャープな感熱凝固性を有し、かつ感熱凝固により繊維材料基体中に均一に充填された水系樹脂組成物が乾燥後に、マイクロポーラス層を形成し、しかも溶剤系と同等の風合い、即ち充実感、腰のある風合いを有する繊維シート状複合物は、1)感熱凝固温度が40〜90℃である水系ウレタン樹脂と、2)会合型増粘剤、及び3)スチームによる感熱凝固の組み合わせによってのみはじめて実現可能であり、これら構成因子のいずれか一つでも欠けると本発明の目的は達成されない。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の水系ウレタン樹脂は、樹脂自体(原液)の感熱凝固温度が40〜90℃である事が必須であり、ここで言う「感熱凝固温度」とは、その温度以上で水系ウレタン樹脂全体が流動性を失い凝固する温度を指す。
感熱凝固温度が40℃未満では、樹脂自体の安定性が悪く、特に夏場の加工時に配合浴内で凝集物を発生したり、ゲル化したりする等の問題があり、また90℃を越える場合は、凝固性がシャープでなくなり、繊維内に樹脂が均一に充填しにくくなるだけでなく、高温高圧のスチームを使用せねばならず経済的でないため不適当である。更に好ましい感熱凝固温度は、45〜80℃である。
【0013】
かかる水系ウレタン樹脂の製法としては従来公知のいかなる方法でもよく、例えば、
▲1▼特定のHLBを有するノニオン性乳化剤を使用してウレタン樹脂を乳化分散させる方法、
▲2▼特定のHLBを有するノニオン性乳化剤を使用して末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを乳化分散させポリアミンで鎖伸長させる方法、
▲3▼特開昭57−39286号報記載のポリエチレングリコールを共重合させる方法、
▲4▼感熱凝固剤を含有した水系ウレタン樹脂等が挙げられる。
【0014】
本発明の水系ウレタン樹脂の製造に用いられるジイソシアネートとしては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フエニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフエニレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる
【0015】
本発明の水系ウレタン樹脂の製造において用いられるイソシアネート基と反応し得る活性水素含有化合物は、好ましくは平均分子量300〜10,000、より好ましくは500〜5,000の高分子量活性水素含有化合物と、平均分子量300以下の低分子量活性水素含有化合物に分けられる。
【0016】
上記高分子量活性水素含有化合物としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリチオエーテルポリオール等が挙げられる。
【0017】
ポリエステルポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量300〜6,000)、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン及びそれらのアルキレンオキシド付加体等のグリコール成分とコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸及びこれらジカルボン酸の無水物あるいはエステル形成性誘導体;p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体等の酸成分とから脱水縮合反応によって得られるポリエステルの他にε−カプロラクトン等の環状エステル化合物の開環重合反応によって得られるポリエステルポリオール及びこれらの共重合ポリエステルポリオールが挙げられる。
【0018】
ポリエーテルポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、しょ糖、アコニット糖、トリメリット酸、ヘミメリット酸、燐酸、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリイソプロパノールアミン、ピロガロール、ジヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフタール酸、1,2,3−プロパントリチオール、等の活性水素原子を少なくとも2個有する化合物の1種または2種以上を開始剤としてエチレンオキシド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン、シクロヘキシレン、等のモノマーの1種または2種以上を常法により付加重合したもの、又は上記モノマーをカチオン触媒、プロトン酸、ルイス酸等を触媒として開環重合したものが挙げられる。
【0019】
ポリカーボネートポリオールとしては、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール等のグリコールとジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジフェニルカーボネート、ホスゲンとの反応により得られる化合物が挙げられる。
【0020】
上記低分子量活性水素含有化合物としては、分子量300以下の分子内に少なくとも2個以上の活性水素を含有する化合物で、例えば、ポリエステルポリオールの原料として用いたグリコール成分;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ペンタエリスリトール等のポリヒドロキシ化合物等があり、この他に更にエチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、ヒドラジン類、酸ヒドラジド類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミンが挙げられる。
【0021】
本発明の水系ウレタン樹脂は感熱凝固温度が、40〜90℃である以外は特に組成、構造上の限定を受けるものではなく、リニヤー構造あるいは分岐構造を有するウレタン樹脂が使用できるが、本発明で特に好ましいのは、分岐構造を有するウレタン樹脂である。その分岐の濃度としては、ウレタン樹脂固形分1kg当たり0.01〜0.8molが好ましい。分岐濃度が0.01molより小さい場合は、特に人工皮革用の極細繊維の不織布を用いた場合の極細化工程での耐久性に問題があり、更に最終的に得られる人工皮革の耐熱性、耐湿熱性、耐光性、耐加水分解性等の各種耐久性が劣るため好ましくない。また分岐濃度が0.8molより大きい場合は、スチーム凝固により形成させたマイクロポーラス層の造膜性が極端に悪くなるため、屈曲性等の機械的強度が十分発現されない等の問題が発生するため好ましくない。更に好ましくは、0.02〜0.3molである。かかる分岐構造を得るために使用される原料としては、前記三官能以上のポリオール、ポリアミン、あるいは前記ジイソシアネートを公知の技術で変性して得られる多官能ポリイソシアネートが挙げられる。
【0022】
本発明の水系ウレタン樹脂の製造に用いられる特定のHLBを有する乳化剤としては、HLBが10〜18であるノニオン性乳化剤が好ましい。ここで言う「HLB」とは、最終的に使用するノニオン性乳化剤全体のHLBであり、複数のノニオン性乳化剤を使用する場合は、それらの乳化剤のHLBを加重平均して求めたものである。
【0023】
更に、本発明の繊維シート状複合物、特に人工皮革の製造方法において、スチーム凝固により繊維材料基体中に均一に充填された水系樹脂組成物が乾燥後に、マイクロポーラス層を形成し、しかも溶剤系と同等の風合い、即ち充実感、腰のある風合いを与えるには、特に下記構造式(I)で表される骨格を有するノニオン性乳化剤を使用する事が好ましい。
【化3】
Ra−Ph− (I)
R:炭素数1〜9のアルキル基、アリール基あるいはアルキルアリール基
a:1〜3の整数
Ph:フェニル環残基
【0024】
具体的には、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジオクチルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ポリオキシエチレンモノスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレントリスチレン化フェニルエーテル及びこらの混合物を含むポリオキシエチレンスチレン化フェニルーテル類;ポリオキシエチレントリベンジルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンベンジルフェノールエーテル類が挙げられ、これら単独で使用されるか、あるいは併用しても差し支えない。
かかる乳化剤の使用量は特に限定されないが、通常ウレタン樹脂の固形分当たり1〜20重量%であり、更に好ましくは2〜10重量%である。
【0025】
また本発明の効果を損なわない範囲において、他の乳化剤を併用しても差し支えない。かかる乳化剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレン長鎖アルキルエーテル類;ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート等、あるいはポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレングリコールのブロックあるいはランダムポリマー、ポリアミンのポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレン付加物等;オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩、アルカンスルフォネートナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸ナトリウム塩等のアニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニル硫酸塩等のノニオンアニオン系乳化剤が挙げられる。
【0026】
本発明の水系ウレタン樹脂を得るために前記乳化剤以外に親水成分をウレタン樹脂中に導入することができ、かかる親水成分としてはノニオン性親水基が特に好ましい。かかるノニオン性親水基を導入するために用いられる原料としては、分子内に少なくとも1個以上の活性水素原子を有し、かつエチレンオキサイドの繰り返し単位からなる基、エチレンオキサイドの繰り返し単位とその他のアルキレンオキサイドの繰り返し単位からなる基を含有するノニオン性の化合物が挙げられる。
【0027】
本発明の水系ウレタン樹脂において、特に好ましいノニオン性親水基含有化合物としては、(A)エチレンオキサイドの繰り返し単位を少なくとも50重量%以上含有するポリオキシアルキレングリコール及び/又は(B)エチレンオキサイドの繰り返し単位を少なくとも50重量%以上含有する片末端ポリオキシアルキレングリコールである。
【0028】
ポリオキシアルキレングリコール(A)及び片末端ポリオキシアルキレングリコール(B)としては、ポリエチレングリコール、又はブロックあるいはランダム型のポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体グリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシブチレン共重合体グリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシアルキレン共重合体グリコール、及びそれらのメチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル等のモノアルキルエーテル類が挙げられる。
また、かかるポリオキシアルキレングリコール(A)及び片末端ポリオキシアルキレングリコール(B)の含有量は、本発明で得られるウレタン樹脂固形分中にそれぞれ1〜10重量%であることが好ましい。
【0029】
本発明で用いられる特定の感熱凝固温度を有する水系ウレタン樹脂は、前記したように基本的にはノニオン性の水系ウレタン樹脂が好ましいが、本発明のその他の実施態様として、感熱凝固性を付与するために感熱凝固剤を含有した水系ウレタン樹脂を用いることもできる。
かかる水系ウレタン樹脂としては、前記したノニオン性の水系ウレタン樹脂の他に、更にウレタン樹脂骨格中に親水成分としてカルボキシル基を含有したものが挙げられる。
【0030】
かかるカルボキシル基を導入するために用いられる原料としては、例えば、分子内に少なくとも1個以上の活性水素原子を有し、かつ少なくとも一つのカルボキシル基を含有する化合物が挙げられる。かかるカルボキシル基含有化合物としては、例えば2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸、ジオキシマレイン酸、2,6−ジオキシ安息香酸、3,4−ジアミノ安息香酸等のカルボン酸含有化合物及びこれらの誘導体又はこれらを共重合して得られるポリエステルポリオールが挙げられる。これらのカルボキシル基を中和するために用いられる塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の不揮発性塩基;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類、アンモニア等の揮発性塩基が挙げられる。
【0031】
かかるカルボキシル基の含有量は、最終的に得られるウレタン樹脂固形分中の酸価として0〜15、好ましくは1〜10であることが必要である。酸価が15を越えると、十分な感熱ゲル化性が得られなかったり、配合安定性が不安定になったり、耐水性等の耐久性が低下するため好ましくない。
【0032】
また本発明で用いられる感熱凝固剤としては、珪弗化ナトリウム、珪弗化カリウム;塩酸、硝酸、硫酸、リン酸のアンモニウム塩、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、バリウム、ニッケル、スズ、鉛、鉄及びアルミニウム等の多価金属塩;セルロースメチルエーテル、ポリビニルメチルエーテル等のような冷水に可溶性で温水に不溶性であるメチルエーテル基を有する高分子化合物;ポリエーテルチオエーテルグリコール類、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン系化合物;アルキルフェノール−ホルマリン縮合物のアルキレンオキシド付加物、あるいは特開昭51−127142号報、特開昭51−63841号報、特開昭60−65015号報記載のポリエーテルウレタン等が挙げられ、これら単独であるいは併用して使用される。
【0033】
かかる感熱凝固剤は、水系ウレタン樹脂の製造途中あるいは製造後に添加するか、あるいは会合型増粘剤を配合する時に一緒に添加配合されても構わない。
【0034】
本発明にかかわるウレタン樹脂及び末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは、従来公知の方法で製造され、例えば、前記ジイソシアネートと活性水素含有化合物(親水成分も含む)を、イソシアネート基と活性水素基の当量比をそれぞれウレタン樹脂の場合は、好ましくは0.8:1〜1.2:1、より好ましくは0.9:1〜1.1:1の比率で、また末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの場合は、好ましくは1.1:1〜3:1、より好ましくは1.2:1〜2:1の比率で、好ましくは20〜120℃、より好ましくは30〜100℃にて反応する。
【0035】
これらの反応は、無溶剤下にて行なうこともできるが、反応系の反応制御あるいは粘度低下等の目的で有機溶剤を使用することもできる。かかる有機溶剤はとくに限定されないが、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類が挙げられるが、蒸留除去が容易な比較的沸点が低いものを用いることが好ましい。
【0036】
かくして得られたウレタン樹脂あるいは末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは、前記ノニオン性の乳化剤を使用して従来公知の方法で水に分散される。末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを使用した場合は、水に分散させた後に、引き続き前記ポリアミンあるいは水で鎖伸長される。
【0037】
またウレタン樹脂あるいは末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーに親水成分としてカルボキシル基を導入した場合は、ウレタン化反応の前、途中、反応後、あるいは水に分散させる際に前記中和剤を使用して中和され、水に分散される。
【0038】
かくして得られた水系ウレタン樹脂は、反応のために有機溶剤を使用した場合は、最終的に有機溶剤を減圧蒸留等により蒸留除去し、実質的に有機溶剤を含有しない水系ウレタン樹脂として用いられる。
【0039】
又、本発明の水系ウレタン樹脂を製造する際に、本発明の効果を損なわない範囲において、水に加えてその他の水系分散体や水分散液、例えば酢ビ系、エチレン酢ビ系、アクリル系、アクリルスチレン系等のエマルジョン;スチレン・ブタジエン系、アクリロニトリル・ブタジエン系、アクリル・ブタジエン系等のラテックス;ポリエチレン系、ポリオレフィン系等のアイオノマー;ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、エポキシ系樹脂等の各種水系分散体、水分散液を併用してもよい。
【0040】
かくして有機溶剤を除去して得られた水系ウレタン樹脂は、固形分が約10〜60重量%、好ましくは15〜50重量%の実質的に無溶剤の水分散体である。しかしながらやむ終えず沸点100℃以上の有機溶剤を水系ウレタン樹脂の製造に使用しなければならない場合でも、水系分散体の全重量当たり20重量%までにそのような有機溶剤の使用量は止めるべきである。
【0041】
本発明で用いられる会合型増粘剤は、スチーム凝固においてシャープな感熱凝固性を付与するとともに、感熱凝固により繊維材料基体中に均一に充填された水系樹脂組成物が乾燥後に、マイクロポーラス層を形成し、しかも溶剤系と同等の風合い、即ち充実感、腰のある風合いを得るために必須の成分である。かかる会合型増粘剤は公知であり、例えば特開昭54−80349号報、特開昭58−213074号報、特開昭60−49022号報、特公昭52−25840号報、特開平9−67563号報、特開平9−71766号報等に記載されたウレタン系の会合型増粘剤や、特開昭62−292879号報、特開平10−121030号報記載のノニオン性ウレタンモノマーを会合性モノマーとして他のアクリルモノマーと共重合して得られる会合性増粘剤、あるいはWO9640815記載のアミノプラスト骨格を有する会合型増粘剤等が挙げられる。
【0042】
これら会合型増粘剤の具体的な例としては、例えばRHEOX社のRHEOLATE 216,266、Bernd Schwegmann社製のSchwego Pur8020,Pur8050、MUNZING CHEMIE GMBH社製のTafigel PUR40,PUR45,PUR60、BASF社製のCollacral PU85、ヘキスト社製のBORCHIGEL L75N、ローム・アンド・ハース社製のプライマル QR−708,RM−825,RM−870,RM−1020,RM−2020NPR,SCT−200,SCT−270,RM−8W,RM−4,TT−935、第一工業製薬社製のDKシックナーSCT−275、旭電化社製のアデカノールUH−420,UH540,UH−550,UH−750、サンノプコ社製のSNシックナー603,612,A−803,A−812,A−814、三洋化成社製のエレミノールN62、ビスライザーAP−2、Sud−Chemie社製のOPTIFLO L150,M210,H400等が挙げられる。
【0043】
これらの会合型増粘剤の中で、特に末端に疎水基を含有し、分子鎖中にウレタン結合を含有するウレタン系の会合型増粘剤が好ましく、具体的には下記構造式を有する会合型増粘剤、あるいはこれらの反応混合物が挙げられる。
【0044】
(II) R1-X-(PEG-X-R2-X)m-PEG-X-R1'
(R1,R1':炭素数8〜36のアルキル基あるいは芳香環を有する炭化水素基でR1とR1'は同一でも異なっていても良い、R2:NCO基を除く炭素数6〜36のジイソシアネート残基、X:ウレタン結合、PEG:分子量1,500〜33,000のポリエチレングリコール残基、m:0以上の整数)
【0045】
(III) R1-Y-R2-(X-PEG-X-R3)m-X-PEG-X-R2-Y-R1'
(R1,R1':炭素数8〜36のアルキル基あるいは芳香環を有する炭化水素基でR1とR1'は同一でも異なっていても良い、R2,R3:NCO基を除く炭素数6〜36のジイソシアネート残基でR2とR3は同一でも異なっていても良い、X:ウレタン結合、Y:ウレタン結合あるいはウレア結合、PEG:分子量1,500〜33,000のポリエチレングリコール残基、m:0以上の整数)
【0046】
(IV) R1-(OA)p-X-R2-(X-PEG-X-R3)m-X-(AO)q-R1'
(R1,R1':炭素数8〜36のアルキル基あるいは芳香環を有する炭化水素基でR1とR1'は同一でも異なっていても良い、R2,R3:NCO基を除く炭素数6〜36のジイソシアネート残基でR2とR3は同一でも異なっていても良い、X:ウレタン結合、A:炭素数2〜4の炭化水素で少なくともエチレンを含む炭化水素残基、m:0以上の整数、p,q:1〜200の整数でpとqは同一でも異なっていても良い)
【0047】
(R1,R1',R1":炭素数8〜36のアルキル基あるいは芳香環を有する炭化水素基で、R1、R1'とR1"は同一でも異なっていても良い、R4:NCO基を除く多官能ポリイソシアネート残基、A:炭素数2〜4の炭化水素で少なくともエチレンを含む炭化水素残基、X:ウレタン結合、i,j,k:0以上の整数でかつ(i+j+k)が3以上の整数、p,q,r:1〜200の整数で、p、qとrは同一でも異なっていても良い)
【0048】
(R1,R1',R1":炭素数8〜36のアルキル基あるいは芳香環を有する炭化水素基で、R1、R1'とR1"は同一でも異なっていても良い、R4:NCO基を除く多官能ポリイソシアネート残基、A:炭素数2〜4の炭化水素で少なくともエチレンを含む炭化水素残基、X:ウレタン結合、Y:ウレタン結合あるいはウレア結合、i,j,k:0以上の整数でかつ(i+j+k)が3以上の整数、p,q:1〜200の整数で、pとqは同一でも異なっていても良い)
【0049】
(R1,R1',R1":炭素数8〜36のアルキル基あるいは芳香環を有する炭化水素基で、R1、R1'とR1"は同一でも異なっていても良い、R5:活性水素を除く多官能ポリオールあるいはポリアミン残基、A:炭素数2〜4の炭化水素で少なくともエチレンを含む炭化水素残基、X:ウレタン結合、i,j,k:0以上の整数でかつ(i+j+k)が3以上の整数、p,q,r:1〜200の整数で、p、qとrは同一でも異なっていても良い)
【0050】
またこれら会合型増粘剤の使用量は、固形分比で水系ウレタン樹脂100部に対して0.1〜20部が必要であり、好ましくは0.3〜10部である。会合型増粘剤の使用量が0.1部未満ではスチームによる感熱凝固においてシャープな感熱凝固性が得られず、また感熱凝固により繊維材料基体中に充填された水系樹脂組成物が乾燥後に、マイクロポーラス層を形成せず、しかも溶剤系と同等の充実感、腰のある風合いを得ることはできない。逆に20部を越えると、充実感は向上するものの風合いが硬くなり過ぎてしまい、また耐水性も低下するため不適当である。
【0051】
かくして本発明の(イ)水系樹脂組成物は1)感熱凝固温度が40〜90℃である水系ウレタン樹脂と、2)会合型増粘剤を、水系ウレタン樹脂の感熱凝固温度より十分に低い温度で、添加して十分に均一混合することによって得られる。あるいは会合型増粘剤を水系ウレタン樹脂の製造する途中で添加配合することも可能である。ただしその場合は、会合型増粘剤を含んだ水系ウレタン樹脂の感熱凝固温度より十分に低い温度で製造することは言うまでもない。
【0052】
かかる水系樹脂組成物はそのままで、あるいはマイクロポーラス層の形成を阻害しない範囲で他の水分散体、例えば酢ビ系、エチレン酢ビ系、アクリル系、アクリルスチレン系等のエマルジョン;スチレン・ブタジエン系、アクリロニトリル・ブタジエン系、アクリル・ブタジエン系等のラテックス;ポリエチレン系、ポリオレフィン系等のアイオノマー;ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、エポキシ系の水分散体と任意の割合で配合して使用することができる。
【0053】
また上記水分散体に加えて、造膜性を改良する目的でアルキレングリコール誘導体、あるいは脂肪族ジカルボン酸のジアルキルエステル、N−メチルピロリドン等の造膜助剤を、また加工適性を改善する目的でフッ素系のレベリング剤、ジアルキルスルホサクシネート系等の乳化剤、アセチレングリコール誘導体等の各種レベリング剤、浸透剤等を配合しても構わない。また配合液の発泡を抑制する目的で、鉱物油系、アマイド系、シリコーン系等の各種消泡剤あるいはエタノール、イソプロピルアルコール等の少量のアルコール類を配合することも可能である。
【0054】
更に着色を目的として水溶性あるいは水分散性の各種無機、有機顔料を配合することができ、また炭酸カルシウム、タルク、水酸化アルミ、シリカ等の無機フィラーや、セルロースパウダー、プロテインパウダー、シルクパウダー、有機短繊維等の有機フィラーを配合することもできる。また上記水分散体の耐光性、耐熱性、耐水性、耐溶剤性等の各種耐久性を改善する目的で酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤等の安定剤を水系ウレタン樹脂の製造工程中か、その製造後に添加し、或いはまたエポキシ樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、ポリカルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物等の架橋剤をそれに配合して使用することもできる。
【0055】
本発明に用いられる(イ)水系樹脂組成物は最終的には樹脂固形分5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%に調整された後、繊維材料基体に含浸又は塗布され、スチームで感熱凝固される。
【0056】
本発明に使用できる繊維材料基体(ロ)とは、従来から繊維材料基体の製造に用いられている不織布や編織布は全て特に制限無く用いられる。不織布には補強用等の目的で編織布等が内部または表面に積層されたものでも良い。構成繊維は、天然繊維、化学繊維のいずれでも良く、天然繊維としては綿、羊毛、絹、石綿等、化学繊維としてはレーヨン、テンセルなどの再生繊維、アセテート、トリアセテートなどの半合成繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、アクリルなどの合成繊維が挙げられる。またこれらを混合使用した繊維を適宜用いることも可能である。風合いの良好な繊維シート状複合物を得るためには極細繊維を用いることが望ましい。極細繊維としては海島型、分割または剥離型、直紡型等いずれでも良く、海島繊維の極細化方法としてはトルエン等の溶剤処理による溶解、アルカリ等による分解などが挙げられるが、極細化方法について特に限定されるものではない。
【0057】
本発明の(イ)水系樹脂組成物の繊維材料基体への含浸、塗布方法は、通常行われる方法であればいずれでも良く、例えばマングルによる含浸、ナイフコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、スプレーコーター等による塗布が挙げられる。ウレタン樹脂の付着量(固形分)は、含浸の場合、好ましくは繊維材料基体100重量部に対し3〜100重量部である。塗布の場合、塗布厚で好ましくは0.1〜10mmである。また本発明により得られる繊維シート状複合物の表面の毛羽を抑えたり、また表面の平滑性、クッション性を付与する目的で、含浸加工の後に引き続き塗布を行うことも好ましい。
【0058】
またこの含浸または塗布加工の際に、本発明の(イ)水系樹脂組成物にステアリン酸アンモニウム、高級脂肪酸の金属塩、ジアルキルスルホサクシネート系乳化剤等の発泡剤を添加して機械発泡して加工する事もできる。特に塗布加工の場合には、クッション性に富んだ発泡層の形成が可能になり、含浸加工の場合でも低付着量で非常にソフトな風合いに仕上がるので好ましい。
【0059】
本発明のスチームによる感熱凝固とは、スチームの温度を水系樹脂組成物の感熱ゲル化温度以上とすれば、加工可能であるが、より安定的に生産を行うためには配合液の感熱ゲル化温度の10℃以上とするのが好ましく、通常スチームの温度は60〜140℃である。経済性、効率を考えれば、特に70〜120℃のスチーム温度が好ましい。また湿度は100%に近づく程表面からの乾燥が抑えられ好ましい。またスチームの処理時間は、通常数秒〜30分程度で充分であり、更に好ましくは10秒〜20分である。
また、スチーム凝固と他の方法との併用も可能である。他の方法としては、例えば赤外線、電磁波、高周波等の凝固方法が挙げられる。
【0060】
本発明の方法によりスチーム凝固された加工布は、その後加熱乾燥される。その方法としては、例えば熱風加熱、赤外線加熱、電磁波加熱、高周波加熱、シリンダー加熱等任意の乾燥方法が可能であるが、一般的には設備投資額、ランニングコストの安い熱風加熱が好ましい。乾燥温度は加工布が熱により変質、劣化しない程度で、かつ繊維材料基体中の水系樹脂組成物が十分に乾燥し造膜しさえすればよく、好ましくは80〜150℃である。
【0061】
本発明により得られる繊維シート状複合物は、更に後処理として上記方法で得られた繊維シート状複合物を温水あるいは熱水により洗浄抽出(ソーピング)を行っても構わない。このソーピング工程により、本発明の水系ウレタン樹脂に含まれるノニオン性乳化剤や、感熱凝固を促進する目的で使用した無機塩類、感熱凝固剤などが抽出除去され、最終的に得られる繊維シート状複合物のマイクロポーラス構造がより微細になるだけでなく、繊維シート状複合物の耐光性、耐湿熱性などの各種耐久性が向上するため好ましい。またかかるソーピング工程は、繊維シート状複合物の染色工程や、極細繊維を使用した場合の極細化の工程で兼ねることも可能である。
【0062】
またかかるソーピング工程をとる場合に、特にマイクロポーラス構造をより微細にする目的で、本発明の感熱凝固性を阻害しない範囲でポバール、ゼラチンなどの水溶性ポリマーを添加しても構わない。
【0063】
かくして本発明により得られる繊維シート状複合物は、靴、鞄、衣料、椅子やソファ等の家具、車両シートやハンドル等の自動車用内装材、透湿防水素材等の各種合成皮革、人工皮革、あるいは研磨材、フェルトペンの芯材等に使用されるが、特に人工皮革用として有用である。
【0064】
本発明の繊維シート状複合物は、そのままでも前記用途に使用できるが、必要に応じて更に中間発泡層、表皮/接着層等を設けて銀付きの人工皮革とすることも好ましい実施態様である。あるいは表面処理コートのみを行って使用する事もできる。更に、これらの人工皮革に表面仕上げ処理や揉み加工等を施すことも可能である。
【0065】
【実施例】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。実施例中の部は重量部を示す。
【0066】
[水系ポリウレタン樹脂の合成例]
(合成例A)分子量1,300のポリテトラメチレングリコール500部、1,4−ブタンジオール15.3部、トリメチロールプロパン11.1部、分子量600のポリエチレングリコール39.4部とイソホロンジイソシアネート223.4部をメチルエチルケトン425部中でジブチル錫ジラウレート0.2部の存在下、NCO%が1.8%に達するまで70℃で反応させ末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを得た。このウレタンプレポリマーをポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(HLB=14)55.2部を溶解させた乳化剤水溶液1239部と混合してホモミキサーで乳化分散させた後、無水ピペラジン22部を溶解させた鎖伸長剤水溶液220部を添加して鎖伸長を行わせた。次いで減圧下メチルエチルケトンを留去して固形分40%の水系ウレタン樹脂Aを得た。
この水系ポリウレタン樹脂の感熱凝固温度は52℃であった。
【0067】
(合成例B)分子量1,000の1,4−ブタンジオール/アジピン酸のポリエステル500部、分子量2,000の1,4−ブタンジオール/アジピン酸のポリエステル18.5部、トリメチロールプロパン16.5部、分子量1,000のポリエチレングリコールモノメチルエーテル34.1部と4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート284.6部をトルエン366部中で、NCO%が2.9%に達するまで80℃で反応させ末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを得た。このウレタンプレポリマーをポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(HLB=16)42.7部とポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(HLB=12)42.7部を溶解させた乳化剤水溶液939部と混合してホモミキサーで乳化分散させた後、無水ピペラジン33部を溶解させた鎖伸長剤水溶液330部を添加して鎖伸長を行わせた。次いで減圧下トルエンを留去して固形分50%の水系ウレタン樹脂Bを得た。
この水系ポリウレタン樹脂の感熱凝固温度は60℃であった。
【0068】
(実施例1)
水系ウレタン樹脂A50部に対して、会合型増粘剤であるエレミノールN62(三洋化成社品)を2部を予め水48部で希釈溶解した水溶液を配合し、ウレタン樹脂濃度が20%の水系樹脂組成物を調整した。この水系樹脂組成物をポリエステル繊維からなる目付300g/m2の不織布に含浸し、マングルでウエットピックアップ250%となるよう絞った。次いで100℃の飽和水蒸気中に2分間静置し、その後100℃の乾燥機で20分乾燥した。
【0069】
(実施例2)
水系ウレタン樹脂Bを使用した以外は実施例1と同様に加工を行った。
【0070】
(実施例3)
会合型増粘剤としてプライマル RM−8W(ローム・アンド・ハース社製)を使用した以外は実施例1と同様に加工を行った。
【0071】
(実施例4)
会合型増粘剤としてプライマル RM−2020NPR(ローム・アンド・ハース社製)を使用した以外は実施例1と同様に加工を行った。
【0072】
(実施例5)
会合型増粘剤としてアデカノール UH−420(旭電化社製)を使用した以外は実施例1と同様に加工を行った。
【0073】
(実施例6)
会合型増粘剤としてCOLLACRAL PU−85(BASF社製)を使用した以外は実施例1と同様に加工を行った。
【0074】
(実施例7)
会合型増粘剤としてBORCHGEL L75N(ヘキスト社製)を使用した以外は実施例1と同様に加工を行った。
【0075】
(比較例1)
水系ウレタン樹脂としてボンディック1850NS(大日本インキ化学工業社製、感熱凝固温度100℃以上)を使用した以外は実施例1と同様に加工を行った。
【0076】
(比較例2)
会合型増粘剤を無添加とした以外は実施例1と同様に加工を行った。
【0077】
(比較例3)
水系ウレタン樹脂A50部に対して、アルカリ可溶型アクリル系増粘剤であるボンコートHV(大日本インキ化学工業社製)2部を予め水47部で希釈溶解し、更に28%アンモニア水を1部添加して増粘させた水溶液を配合して水系樹脂組成物を調整し、その後は実施例1と同様に加工を行った。
【0078】
(比較例4)
実施例1の水系樹脂組成物をポリエステル繊維からなる目付300g/m2の不織布に含浸し、マングルでウエットピックアップ250%となるよう絞った。次いで150℃の乾燥機中で2分間静置し、その後100℃の乾燥機で20分間乾燥した。
これらの評価結果を以下の表に示した。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
<評価方法>
マイグレーションの有無 :
加工布の断面の電子顕微鏡写真によりウレタン樹脂の充填状態を目視観察した。
【0083】
マイクロポーラスの有無 :
加工布の断面の電子顕微鏡写真により充填されたウレタン樹脂の表面がマイクロポーラス状であるか否かを目視観察した。
【0084】
加工布風合 :
加工布を触感により評価した。
【0085】
以上の実施例・比較例より、感熱凝固により繊維間に均一に充填された水系樹脂組成物が乾燥後に、マイクロポーラス層を形成し、しかも溶剤系と同等の風合い、即ち充実感、腰のある風合いを与える繊維シート状複合物は、(イ)1)特定の感熱凝固温度を有する水系ウレタン樹脂と、2)会合型増粘剤からなる水系樹脂組成物を、(ロ)繊維材料基体に含浸又は塗布し、(ハ)スチームで凝固させる組み合わせによってのみ実現可能であり、これら構成因子のいずれか一つでも欠けると本発明の目的は達成されないことが確認した。
【0086】
【発明の効果】
かくして本発明により得られる繊維シート状複合物は、スチームによる感熱凝固においてシャープな感熱凝固性を有するためマイグレーションが無く、繊維材料基材中に水系樹脂組成物が均一に充填され、かつ乾燥後にその水系樹脂組成物がマイクロポーラス層を形成し、しかも溶剤系と同等の風合い、即ち充実感と腰のある風合いを与えるという極めて優れた特徴を有する。
【0087】
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1図は、実施例1における繊維シート複合物の断面の顕微鏡写真(500×)で、水系ウレタン樹脂がマイクロポーラス構造を形成しているのが解る。
Claims (7)
- (イ)1)感熱凝固温度が40〜90℃であるHLB 10〜18のノニオン性乳化剤で分散された水系ウレタン樹脂と、
2)末端に疎水基を含有し、分子鎖中にウレタン結合を含有する会合型増粘剤からなる水系樹脂組成物を、
(ロ)繊維材料基体に含浸又は塗布し、(ハ)スチームで感熱凝固させることを特徴とする繊維シート状複合物の製造方法。 - ノニオン性乳化剤が、下記構造式(I)で表される骨格を有するもの
【化1】
Ra−Ph− (I)
R:炭素数1〜9のアルキル基、アリール基あるいはアルキルアリール基
a:1〜3の整数
Ph:フェニル環残基
であることを特徴とする請求項1記載の繊維シート状複合物の製造方法。 - 前記水系ウレタン樹脂1)が、分子鎖中に(A)エチレンオキサイドの繰り返し単位を少なくとも50重量%以上含有するポリオキシアルキレングリコール及び/又は(B)エチレンオキサイドの繰り返し単位を少なくとも50重量%以上含有する片末端ポリオキシアルキレングリコールを含有することを特徴とする請求項1〜2いずれか記載の繊維シート状複合物の製造方法。
- スチームの温度が、70〜120℃であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の繊維シート状複合物の製造方法。
- スチームによる処理時間が10秒から20分である請求項1〜4記載の繊維シート状複合物の製造方法。
- スチームで感熱凝固させた後、更に、80〜150℃の温度で乾燥させることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の繊維シート状複合物の製造方法。
- 請求項1〜6いずれか記載の製造方法で得られた人工皮革。
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