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JP2019031589A - ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物、それからなる成形品。 - Google Patents

ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物、それからなる成形品。 Download PDF

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JP2019031589A
JP2019031589A JP2017151575A JP2017151575A JP2019031589A JP 2019031589 A JP2019031589 A JP 2019031589A JP 2017151575 A JP2017151575 A JP 2017151575A JP 2017151575 A JP2017151575 A JP 2017151575A JP 2019031589 A JP2019031589 A JP 2019031589A
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直也 大内山
Naoya Ouchiyama
直也 大内山
松本 英樹
Hideki Matsumoto
英樹 松本
佑一郎 宮原
Yuichiro Miyahara
佑一郎 宮原
亮輔 鎗水
Ryosuke Yarimizu
亮輔 鎗水
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Abstract

【課題】本発明は、等方的な低収縮性(高寸法精度)、寸法安定性、薄肉耐熱性および薄肉流動性に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物およびそれからなる成形品を得ることを課題とする。【解決手段】(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂100重量部に対して、平均アスペクト比が200以上、重量平均粒子径が300μm以上1000μm以下である(B)非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物を1〜100重量部含有することを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、等方的な低収縮性(高寸法精度)、寸法安定性、薄肉耐熱性および薄肉流動性に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物およびそれからなる成形品に関するものである。
ポリアリーレンスルフィド樹脂(以下PAS樹脂と略す)は高い融点を示し、優れた難燃性、剛性、絶縁性、耐薬品性などエンジニアリングプラスチックとして好適な性質を有している。PPS樹脂は主に射出成形により成形され、各種電気・電子部品、機械部品、自動車部品および家電製品など幅広い分野で使用されている。
近年では、自動車へのエレクトロニクス導入のスピードは大幅に引き上げられており、そのスピードは年々増している。将来の自動車業界でのイノベーションが期待されている技術として、「ADAS(先進運転支援システム)」、「Infotainment(車載情報機器)」,「Powertrain(パワートレイン)」」が挙げられ,特にADAS分野の成長は著しく、同分野の自動車半導体市場は2015〜2020年で成長スピードが驚異的に伸びていく傾向である。このADAS分野で最も重要なデバイスが「ミリ波レーダー/車載カメラモジュール」であり、車両や壁といった大きな障害物の衝突予防や走行中の前車との車間距離調整や歩行者認識による衝突回避等の機能をコントロールしている。各自動車メーカー,部品メーカーでは、「より安全,快適なADAS技術確立」に向けて製品改良しており、最近では画像センサーに組み込む車載カメラ筐体の高機能化が要求されている。従来、車載カメラ筐体には金属材料もしくは金属材料/樹脂材料のインサート部品が使用されてきたが、次世代モデルニーズとして「製品設計の自由度向上」、「高耐久」、「軽量化」、及び「高画素化(認識性能向上)」等の要求に応えることができなかった.そこで、各メーカーでは上記のニーズを満たす車載カメラ筐体の樹脂材料開発に取り組み、ナイロン樹脂、PBT樹脂、SPS樹脂、PAS樹脂などが幅広く検討されてきた。しかし、ナイロン樹脂、PBT樹脂、SPS樹脂は車載カメラ筐体部品の使用環境(湿熱処理、乾熱処理)では寸法変化や強度低下などの技術課題があり、低吸水、高耐熱性のPAS樹脂が最有力候補として検討されてきた。但し、PAS樹脂材料にも技術課題があり、結晶性樹脂特有の「成形収縮大」により、カメラ筐体の寸法精度が不足し、低画素化(撮影枚数アップによる製品コストアップ)が発生し、成形収縮を改善するためにフィラー高配合するも流動性が大幅に低下し、カメラ筐体の複雑薄肉形状に射出成形で対応できない等の問題が発生している。
上記の技術課題は依然満足するレベルまで解消しておらず、これの課題を解決したPAS樹脂材料が強く望まれている。
例えば、特許文献1には、ポリアリーレンスルフィド樹脂、マイカ、カーボンファイバー及び導電性カーボンブラックを主要成分として含有することを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が開示されている。
特許文献2には、ポリフェニレンスルフィド樹脂に対して、ポリテトラフルオロエチレン、および無機充填材を配合してなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が開示されている。
特許文献3には、樹脂の主成分として、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂およびポリエチレン樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂と平面状の無機粒子と鎖長剤、可塑剤とを含む樹脂組成物が開示されている。
特開平8−302189号公報(特許請求の範囲、実施例) 特開2009−30030号公報(特許請求の範囲、実施例) 特開2015−224281号公報(特許請求の範囲、実施例)
特許文献1に記載された樹脂組成物では、成形収縮や線膨張特性は改善されるものの、配合するマイカサイズでは実使用環境(180℃以下)での薄肉耐熱性や成形収縮、線膨張特性に異方性が生じることから、薄肉軽量化設計が困難であり実使用上満足できるレベルではなかった。
特許文献2に記載された樹脂組成物では、ポリテトラフルオロエチレン配合により薄肉耐熱性は向上するものの、その他配合するフィラー形状では寸法精度は十分に改良されておらず、実使用上満足できるレベルではなかった。
特許文献3に記載された樹脂組成物では、平面状の無機粒子配合により寸法変化は抑制されるものの、フィラー平均粒子径が小さくフィラー補強効果が小さいために実使用環境下での反り量や耐熱温度不足により実使用上満足できるレベルではなかった。
本発明は、耐熱性、低吸水性に優れたポリアリーレンスルフィド樹脂に、特定のアスペクト比、平均粒子径を有する板状であるマイカを配合することで、本発明のPPS樹脂の有する特性を損なうことなく、等方的な低収縮性(高寸法精度)、薄肉耐熱性、薄肉流動性に極めて優れた、車載カメラ用筐体射出成形材料として好適なポリアリーレンスルフィド樹脂組成物およびそれからなる成形品を得ることを課題とする。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
1.(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂100重量部に対して、平均アスペクト比が200以上、重量平均粒子径が300μm以上1000μm以下である(B)非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物を1〜100重量部含有することを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
2.前記(B)非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物がマイカであることを特徴とする1記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
3.前記(B)非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物の平均アスペクト比が300以上800以下であることを特徴とする1または2項に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
4.前記(B)非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物がエポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、およびメルカプト基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するアルコキシシラン化合物で表面処理されていることを特徴とする1〜3項のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
5.前記(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂100重量部に対して、(C)ガラス転移温度150℃以上である非晶性樹脂1〜100重量部含有することを特徴とする1〜4のいずれか1項に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
6.前記(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂の反応性官能基含有量が100μmol/gを超えることを特徴とする1〜5のいずれか1項に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
7.1〜6のいずれか1項に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物からなる成形品。
8.成形品が車載カメラ用筐体部品である7項記載の成形品。
本発明によれば、PAS樹脂に、平均アスペクト比が200以上、重量平均粒子径が300μm以上1000μm以下の非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物を配合することにより、薄肉流動性を大幅に損なうことなく、結晶性樹脂特有の成形収縮量が大幅に低減でき、薄肉耐熱性も格段に向上したポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を得ることができる。
また、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物によって得られた成形品は、等方的な低収縮特性、高寸法精度を示し,実使用環境下(180℃)でも低反り性に優れることから車載カメラ用筐体部品として有用である。
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂
本発明の実施形態におけるポリアリーレンスルフィドとは、式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有するホモポリマーまたはコポリマーである。Arとしては下記の式(a)〜式(k)などで表される単位などがあるが、中でも式(a)が特に好ましい。
(R、Rはそれぞれ独立に水素、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリーレン基、およびハロゲン基から選ばれた置換基であり、RとRは同一でも異なっていてもよい)
この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、下記の式(l)〜式(n)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−の単位1モルに対して0〜1モル%の範囲であることが好ましい。
また、本発明の実施形態におけるポリアリーレンスルフィドは、上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物のいずれかであってもよい。
これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましいポリアリーレンスルフィドとしては、ポリマーの主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位
を80モル%以上、特に90モル%以上含有するポリフェニレンスルフィド樹脂が挙げられる。
本発明の実施形態の(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂の分子量(重量平均分子量)の下限値は、10000以上の範囲が選択され、好ましくは15000以上で、より好ましくは18000以上である。また、(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂の分子量(重量平均分子量)の上限値は、100000以下の範囲が選択され、好ましくは70000以下であり、より好ましくは50000以下である。(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂の重量平均分子量の下限値が10000未満では、成形加工時にガス発生量が多くなることで成形性が低くなり、成形品の機械強度も損なわれる。一方で重量平均分子量の上限値が100000を超えると、金型内の固化が遅くなるため、成形品が十分に結晶化せず、十分な耐熱性向上効果を得ることができなくなる可能性がある。本発明の実施形態の(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂の重量平均分子量がより小さい方が金型内の樹脂の固化が速くなり、成形品の高結晶化による耐熱性向上効果が発現する。
なお、前記重量平均分子量及び数平均分子量は、例えば示差屈折率検出器を具備したSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)を使用して求めることができる。
また、本発明の実施形態の(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂の溶融粘度に特に制限はないが、通常、溶融粘度が5〜10,000Pa・s(300℃、剪断速度1000/秒)の範囲が好ましい範囲として例示でき、この範囲の溶融粘度を有する(A)ポリアリーレンサルファイド樹脂は成形加工性に優れる傾向にある。
また、本発明のPAS樹脂に含有される反応性官能基については、PAS樹脂の主骨格を構成するアリーレンスルフィド単位に導入されたものでも、末端を構成するアリールスルフィド単位に導入されたものでもよい。ここでいう反応性官能基とは、アミノ基、アセトアミド基、スルホンアミド基、スルホン酸基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、チオール基、シアノ基、イソシアネート基、アルデヒド基、アセチル基、酸無水物基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基、およびそれらから誘導される官能基から選ばれた官能基であり、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、酸無水物基が好ましい官能基として挙げられる。また、反応性官能基は、アリーレンスルフィド単位またはアリールスルフィド単位に直接結合した構造であっても、アリーレンスルフィド単位またはアリールスルフィド単位にアミノ基、アミド基、エステル基、イミド基、アルキル基、アルコキシ基、フェニレン基などを介して間接的に結合した構造であってもよい。ただし、PAS樹脂のアリーレンスルフィド単位において反応性官能基がアミノ基、アミド基、エステル基、イミド基、アルキル基、アルコキシ基、フェニレン基などを介して間接的に結合した構造であると、PASの主鎖に対して嵩高な成分が側鎖として導入されることになり、融点低下や機械物性の低下につながる。そのため、PASのアリーレンスルフィド単位に反応性官能基が直接結合した構造、または、PASの末端を構成するアリールスルフィド単位に反応性官能基が直接または間接的に結合した構造であることが好ましい。なお、反応性官能基がカルボキシル基の場合、カルボキシル基が直接結合したアリーレンスルフィド単位のなかでも、2,5−安息香酸スルフィド単位のようにp−フェニレンスルフィド単位を構成していることが、高い融点や優れた機械物性の観点からより好ましい。
本発明のPAS樹脂は、カルボキシル基含有量が100μmol/gを超えることが好ましい。フィラーとの密着性向上による機械強度向上の観点からすると、全カルボキシル基の内、PASのアリーレンスルフィド単位またはアリールスルフィド単位にカルボキシル基が直接結合した構造は、100μmol/g超えることが好ましく、120μmol/g超えることがより好ましい。PASのアリーレンスルフィド単位またはアリールスルフィド単位に、反応性官能基が、アミノ基、アミド基、エステル基、イミド基、アルキル基、アルコキシ基、フェニレン基などを介して間接的に結合した構造は、高い融点や優れた機械物性の観点からすると少ないほうが好ましいものの、90μmol/g未満であれば実使用上好ましく、50μmol/g未満がより好ましい。
本発明に用いられる(A)PAS樹脂のカルボキシル基含有量は、例えばフーリエ変換赤外分光装置(以下、FT−IRと略す)を用いて算出することができる。具体的には、標準物質として安息香酸をFT−IRにて測定し、ベンゼン環のC−H結合の吸収である3066cm−1のピークの吸収強度(b1)とカルボキシル基の吸収である1704cm−1のピークの吸収強度(c1)を読み取り、ベンゼン環1単位に対するカルボキシル基量(U1)、(U1)=(c1)/[(b1)/5]を求める。次に、PAS樹脂を320℃にて1分間溶融プレスした後、急冷して得られた非晶フィルムのFT−IR測定を行う。3066cm−1の吸収強度(b2)と1704cm−1の吸収強度(c2)を読み取り、ベンゼン環1単位に対するカルボキシル基量(U2)、(U2)=(c2)/[(b2)/4]を求めた。PAS樹脂の場合、フェニレンスルフィド単位から構成されていることから、PAS樹脂1gに対するカルボキシル基含有量を以下の式から算出することができる。
PAS樹脂のカルボキシル基含有量(μmol/g)=(U2)/(U1)/108.161×1000000
本発明に用いられるポリアリーレンスルフィドは、いかなる方法で製造されても良いが、代表的な方法としてスルフィド化剤及びジハロゲン化芳香族化合物を有機極性溶媒中で反応させる方法および環式ポリアリーレンスルフィドを含むポリアリーレンスルフィドプレポリマーを加熱する方法を例示することができる。上記の2方法について以下で説明する。
(A)スルフィド化剤及びジハロゲン化芳香族化合物を有機極性溶媒中で反応させる方法
PAS樹脂は、重合反応により調製することが可能であり、以下PASの重合に用いるスルフィド化剤、有機極性溶媒、ジハロゲン化芳香族化合物、モノハロゲン化化合物、重合助剤、分子量調整剤、重合安定剤、脱水工程、重合工程、ポリマー回収、生成PASの順に説明する。
(A−1)スルフィド化剤
スルフィド化剤としては、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。取り扱い性、汎用性などから、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、およびそれらの混合物が好ましく用いられる。スルフィド化剤は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで調製されるスルフィド化剤も用いることができる。
好ましいスルフィド化剤としては、硫化ナトリウム、水硫化ナトリウムが挙げられ、取り扱い性の観点から水性混合物の状態で用いることが好ましい。
以下の説明において、スルフィド化剤の量は、後述の脱水操作などにより重合反応開始前にスルフィド化剤の一部損失が生じる場合には、仕込み量から当該損失分を差し引いた残存量を意味するものとする。
スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましい。アルカリ金属水酸化物の使用量はアルカリ金属水硫化物100モルに対し、好ましくは90モル以上120モル未満、より好ましくは95モル以上115モル未満、さらに好ましくは95モル以上110モル未満の範囲が例示できる。使用量をこの範囲にすることで、分解を引き起こすことなく、重合副生物量の少ないPASを得ることができる。
(A−2)有機極性溶媒
重合溶媒として有機極性溶媒を用いる。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類;N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホキシドなどに代表されるアプロチック有機溶媒;およびこれらの混合物などが反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでも、特にN−メチル−2−ピロリドン(NMP)が好ましく用いられる。
PASの重合溶媒として用いる有機極性溶媒の使用量は、特に制限はないが、安定した反応性および経済性の観点から、スルフィド化剤100モル当たり、好ましくは250モル以上550モル未満、より好ましくは250モル以上500モル未満、より好ましくは250モル以上450モル未満の範囲が例示される。
(A−3)ジハロゲン化芳香族化合物
PASを製造する際、原料としてジハロゲン化芳香族化合物を用いる。PASの代表であるPPSを製造する際、ベンゼン環と硫黄がポリマーの主骨格となるため、用いるジハロゲン化芳香族化合物としては、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、p−ジブロモベンゼンなどのジハロゲン化ベンゼンが挙げられる。また、反応性官能基の導入を目的に、2,4−ジクロロ安息香酸、2,5−ジクロロ安息香酸、2,6−ジクロロ安息香酸、3,5−ジクロロ安息香酸、2,4−ジクロロアニリン、2,5−ジクロロアニリン、2,6−ジクロロアニリン、3,5−ジクロロアニリン、2,4−ジクロロフェノール、2,5−ジクロロフェノール、2,6−ジクロロフェノール、3,5−ジクロロフェノール、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼン、4,4’−ジクロロフェニルエーテル、4,4’−ジクロロジフェニルスルホキシド、4,4’−ジクロロフェニルケトンなどのジハロゲン化芳香族化合物などを用いることも可能である。なかでも、p−ジクロロベンゼンに代表されるp−ジハロゲン化ベンゼンを主成分とすることが好ましく、高い融点を維持する観点では、2,5−ジクロロ安息香酸や2,5−ジクロロアニリンをより好ましい共重合成分として挙げることができる。
ジハロゲン化芳香族化合物の使用量は、分解を抑制すると共に加工に適した粘度のPASを効率よく得る観点から、スルフィド化剤100モル当たり、好ましくは80モル以上150モル未満、より好ましくは90モル以上110モル未満、さらに好ましくは、95モル以上105モル未満の範囲が例示できる。スルフィド化剤100モル当たり、ジハロゲン化芳香族化合物が80モル以上とすることで、得られるPASの分解を抑制することができる。スルフィド化剤100モル当たり、ジハロゲン化芳香族化合物を150モル未満とすることで、得られるPASの分子量が低下し、機械物性や耐薬品性が低下することを抑制することができる。共重合成分として反応性官能基含有ジハロゲン化芳香族化合物を使用する場合は、ジハロゲン化芳香族化合物の合計量の内、反応性官能基含有ジハロゲン化芳香族化合物の使用量がスルフィド化剤100モル当たり、好ましくは0.1モル以上20モル未満、より好ましくは1モル以上15モル未満、さらに好ましくは2モル以上10モル未満の範囲が例示できる。反応性官能基含有ジハロゲン化芳香族化合物を、スルフィド化剤100モル当たり0.1モル以上とすることで、得られるPASに十分な反応性官能基を導入することができる。反応性官能基含有ジハロゲン化芳香族化合物が、スルフィド化剤100モル当たり、20モル未満とすることで、得られるPASの分子量が低下し、機械物性や耐薬品性が低下することを抑制することができる。
反応性官能基含有ジハロゲン化芳香族化合物を使用する場合、その添加時期に特に制限はなく、後述する脱水工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよい。脱水工程時に添加すると、脱水工程時にカルボキシル基含有ジハロゲン化芳香族化合物が揮散しないような還流装置が必要である。また、重合途中(加圧状態)で添加するには圧入装置が必要であるとともに、重合途中から反応性官能基含有ジハロゲン化芳香族化合物が反応することになるため、重合終了時点で反応性官能基含有ジハロゲン化芳香族化合物の消費が完結せず、重合系内に残存するため収率が悪くなる傾向がある。よって、反応性官能基含有ジハロゲン化芳香族化合物の添加時期は、ジハロゲン化芳香族化合物の転化率が80%未満の時点が好ましく、70%未満の時点がより好ましく、脱水工程完了後から重合開始までの間がさらに好ましく、重合開始時つまりジハロゲン化芳香族化合物と同時に添加することが最も好ましい。
(A−4)モノハロゲン化化合物
PASを製造する際、反応性官能基含有量の多いPASを得る目的で反応性官能基含有モノハロゲン化化合物を添加することも好ましい態様の一つである。反応性官能基含有モノハロゲン化化合物としては、反応性官能基含有モノハロゲン化芳香族化合物が好ましい例として挙げられる。具体的には、2−クロロ安息香酸、3−クロロ安息香酸、4−クロロ安息香酸、4−クロロフタル酸無水物、4−クロロフタル酸水素ナトリウム、2−アミノ−4−クロロ安息香酸、4−クロロ−3−ニトロ安息香酸、4’−クロロベンゾフェノン−2−カルボン酸、2−クロロアニリン、3−クロロアニリン、4−クロロアニリン、2−クロロフェノール、3−クロロフェノール、4−クロロフェノール、4−クロロベンズアミド、4−クロロベンゼンアセトアミド、4−クロロベンゼンスルホンアミド、4−クロロベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンチオール、2−アミノ−5−クロロベンゾフェノン、2−アミノ−4−クロロフェノール、2−クロロニトロベンゼン、3−クロロニトロベンゼン、4−クロロニトロベンゼンなどのモノハロゲン化化合物、およびそれらの混合物を用いることも可能である。重合時の反応性や汎用性などから、4−クロロ安息香酸、4−クロロフタル酸水素ナトリウム、3−クロロアニリン、4−クロロアニリン、3−クロロフェノール、4−クロロフェノールが好ましいモノハロゲン化化合物として挙げられる。
モノハロゲン化化合物を使用する場合、その使用量は、スルフィド化剤100モル当たり0.01モル以上20モル未満が好ましく、より好ましくは0.1モル以上15モル未満、さらに好ましくは1.0モル以上10モル未満、特に好ましくは2.0モル以上8モル未満の範囲である。スルフィド化剤100モル当たり、モノハロゲン化化合物が0.01モル未満であると、得られるPASの反応性官能基量が少なくなる。スルフィド化剤100モル当たり、モノハロゲン化化合物が20モル以上であると、得られるPASの分子量が低下し、機械物性や耐薬品性が低下する傾向にある。
また、ジハロゲン化芳香族化合物やモノハロゲン化化合物などのハロゲン化化合物の合計量を特定の範囲にすることが好ましい。スルフィド化剤100モルに対してハロゲン化化合物の合計量を98モル以上110モル未満にすることが好ましく、100モル以上108モル未満がより好ましく、103モル以上107モル未満が一層好ましい。スルフィド化剤100モルに対してハロゲン化化合物の合計量を98モル以上とすることで、得られるPASの分解を抑制することができる。スルフィド化剤100モルに対してハロゲン化化合物の合計量が110モル未満とすることで、得られるPASの分子量が低下し機械物性や耐薬品性が低下することを抑制することができる。なお、ハロゲン化化合物としては、上述のジハロゲン化芳香族化合物や反応性官能基を有するモノハロゲン化芳香族化合物のみならず、後述の分岐・架橋剤で使用するトリハロゲン化以上のポリハロゲン化化合物も含む。
モノハロゲン化化合物の添加時期には特に制限はなく、後述する脱水工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよい。脱水工程時に添加すると、脱水工程時にモノハロゲン化化合物が揮散しないような還流装置が必要である。また、ジハロゲン化芳香族化合物の転化率が高くなった時点でモノハロゲン化化合物を添加した場合、反応率が低くなり重合系中に多く残存することがある。特にモノハロゲン化化合物に反応性官能基含有モノハロゲン化芳香族化合物を使用した場合ではPASへの反応性官能基導入量が少なくなるため好ましくない。よって、モノハロゲン化化合物の添加時期は脱水工程完了後から重合開始までの間が好ましく、重合開始時以降がさらに好ましい。また添加時期の後限は、ジハロゲン化芳香族化合物の転化率が90%未満の時点が好ましく、80%未満の時点がより好ましい。
なお、モノハロゲン化化合物は、PASの分子量を調整する目的、またはPASの塩素含有量を低減する目的で使用することも可能であり、反応性官能基含有モノハロゲン化化合物を用いた場合、PAS中の反応性官能基含有量の増大のみならず塩素量の低減にも寄与する。
(A−5)重合助剤
PASを製造する際、重合助剤を用いることも好ましい態様の一つである。重合助剤を用いる目的は、得られるPASを所望の溶融粘度に調整するためである。重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸金属塩、水、アルカリ金属塩化物(ただし、塩化ナトリウムは除く)、有機スルホン酸金属塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩などが挙げられる。これらは単独で用いても2種以上同時に用いても差し障りない。なかでも、有機カルボン酸金属塩および/または水が好ましく用いられる。
有機カルボン酸金属塩は、水和物、無水物または水溶液としても用いることができる。具体例としては、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、およびそれらの混合物などが挙げられる。安価でかつ反応系への適度な溶解性を有する酢酸ナトリウムが好ましく用いられる。
重合助剤として上記有機カルボン酸金属塩を用いる場合の使用量は、仕込みスルフィド化剤100モルに対し、1モル以上70モル未満の範囲が好ましく、2モル以上60モル未満の範囲がより好ましく、2モル以上55モル未満の範囲がいっそう好ましい。
重合助剤として有機カルボン酸金属塩を使用する場合、その添加時期には特に制限はなく、後述する脱水工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよい。添加の容易性からすると、脱水工程開始時あるいは重合開始時に、スルフィド化剤と同時に添加することが好ましい。
重合助剤として水を用いる場合、水単独で用いることも可能であるが、有機カルボン酸金属塩を同時に用いることが好ましい。これにより重合助剤としての効果をより高めることができ、より少ない重合助剤の使用量でも短時間で所望の溶融粘度のPASを得ることができる傾向にある。この場合の重合系内の好ましい水分量の範囲は、スルフィド化剤100モルに対し80モル以上300モル未満であり、85モル以上180モル未満がより好ましい。水分量をスルフィド化剤100モルに対し300モル未満とすることで反応器内圧の上昇を抑えることができ、過剰に高い耐圧性能を有した反応器は必要でなくなるため、経済的にも安全性の面でも好ましい。
また、重合後に水を添加することも好ましい様態の一つである。重合後に水を添加した後の重合系内の水分量の好ましい範囲は、スルフィド化剤100モルに対して100〜1500モルであり、150〜1000モルがより好ましい。
(A−6)分子量調整剤
PASを製造する際、分岐または架橋重合体を形成させ、得られるPASを所望の溶融粘度に調整するために、トリハロゲン化以上のポリハロゲン化合物などの分岐・架橋剤を併用することも可能である。ポリハロゲン化合物としてはポリハロゲン化芳香族化合物が好ましく、具体例としては、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンが挙げられる。
(A−7)重合安定剤
PASを製造する際、重合反応系を安定化し、副反応を防止するために、重合安定剤を用いることも可能である。重合安定剤は、重合反応系の安定化に寄与し、チオフェノールの生成など望ましくない副反応を抑制する。重合安定剤の具体例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、およびアルカリ土類金属炭酸塩などの化合物が挙げられる。そのなかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。前述した有機カルボン酸金属塩も重合安定剤として作用する。また、スルフィド化剤としてアルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいことを前述したが、ここでスルフィド化剤に対して過剰となるアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。
これら重合安定剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合安定剤は、重合反応開始前の反応系内のスルフィド化剤100モルに対して、好ましくは1〜20モル、より好ましくは3〜10モルの割合で使用することが望ましい。スルフィド化剤100モルに対して20モル未満とすることでポリマー収率の低下を抑制することができ、経済的にも合理的である。なお、反応時にアルカリ金属硫化物の一部が分解して、硫化水素が発生する場合には、その結果生成したアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。
重合安定剤の添加時期には特に限定はなく、後述する脱水工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよい。
(A−8)脱水工程
PASを製造する際、スルフィド化剤は通常水を含んだ形で使用される。ジハロゲン化芳香族化合物やモノハロゲン化化合物を添加する前に、有機極性溶媒とスルフィド化剤を含む混合物を昇温し、過剰量の水を系外に除去することが好ましい。この工程を脱水工程と呼ぶ。この方法には特に制限はないが、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜150℃、好ましくは常温〜100℃の温度範囲で、有機極性溶媒にアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を加え、常圧または減圧下、少なくとも150℃以上、好ましくは180℃〜260℃まで昇温し、水分を留去させる方法が挙げられる。この段階で重合助剤を加えてもよい。
脱水工程が終了した段階での系内の水分量は、仕込みスルフィド化剤100モル当たり90〜110モルであることが好ましい。ここで系内の水分量とは脱水工程で仕込まれた水分量から系外に除去された水分量を差し引いた量である。
(A−9)重合工程
PASを製造する際、上記脱水工程で調製した反応物と、ジハロゲン化芳香族化合物やモノハロゲン化化合物とを有機極性溶媒中で接触させて重合反応させる重合工程を行う。重合工程開始に際しては、望ましくは不活性ガス雰囲気下、100〜220℃、好ましくは130〜200℃の温度範囲で、ジハロゲン化芳香族化合物やモノハロゲン化化合物を加える。この段階で重合助剤を加えてもよい。これらの原料の仕込み順序は、順不同であってもよく、同時であってもさしつかえない。
重合工程は200℃以上280℃未満の温度範囲で行うことが好ましいが、本発明の効果が得られる限り重合条件に制限はない。例えば、一定速度で昇温した後、245℃以上280℃未満の温度範囲で反応を一定時間継続する方法、200℃以上245℃未満の温度範囲において一定温度で一定時間反応を行った後に245℃以上280℃未満の温度範囲に昇温して反応を一定時間継続する方法、200℃以上245℃未満の温度範囲、中でも230℃以上245℃未満の温度範囲において一定温度で一定時間反応を行った後、245℃以上280℃未満の温度範囲に昇温して短時間で反応を完了させる方法などが挙げられる。
重合の際における雰囲気は非酸化性雰囲気下が望ましく、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。特に、経済性および取扱いの容易さの面からは窒素が好ましい。反応圧力については、使用した原料および溶媒の種類や量、あるいは反応温度等に依存し一概に規定できないので、特に制限はない。
PASに反応性官能基を導入するために、重合工程に反応性官能基含有モノハロゲン化芳香族化合物を添加する場合、その化合物の化学式は
で表される。ここでXはハロゲン基である。R3〜R11のうち少なくとも1つがアミノ基、アセトアミド基、スルホンアミド基、スルホン酸基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、チオール基、シアノ基、イソシアネート基、アルデヒド基、アセチル基、酸無水物基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基、もしくはそれらから誘導される官能基から選ばれる反応性官能基であり、これら官能基を2つ以上含有する場合は同一でも異なってもよい。Yは硫黄、酸素、カルボニル、アミド、エステル、スルホニル、スルホキシドから選ばれる結合基であり、nは0〜10の整数である。また、2種以上の化合物を混合して反応に用いても良い。その反応量は、スルフィド化剤100モルに対し0.1モル以上20モル未満が好ましく、1.0モル以上6モル未満がさらに好ましく、1.5モル以上5モル未満が一層好ましい。ここで、反応量とは、重合工程終了後にサンプリングしたサンプル中に残存するカルボキシル基含有ハロゲン化芳香族化合物をガスクロマトグラフィーにて定量し、仕込量から残存量を差し引いた値のことである。該反応量が多いほどPASへの反応性官能基の導入量が多く、高い機械物性や耐薬品性を発現することを意味している。スルフィド化剤100モルに対し反応量を20モル未満とすることで、得られるPASが低分子量となることを抑制し、機械物性低下を抑制する。一方、反応量を0.1モル以上とすることで、反応性官能基量を導入することができる傾向にある。
(A−10)ポリマー回収
PASを製造する際、重合工程終了後に、重合工程で得られたPAS成分および溶剤などを含む重合反応物からPASを回収する。回収方法としては、例えばフラッシュ法、すなわち重合反応物を高温高圧(通常250℃以上、0.8MPa以上)の状態から常圧もしくは減圧の雰囲気中へフラッシュさせ、溶媒回収と同時に重合体を粉粒状にして回収する方法や、クエンチ法、すなわち重合反応物を高温高圧の状態から徐々に冷却して反応系内のPAS成分を析出させ、かつ70℃以上、好ましくは100℃以上の状態で濾別することでPAS成分を含む固体を回収する方法等が挙げられる。
回収方法は、クエンチ法、フラッシュ法いずれかに限定されるものではない。
このような方法で得られたPASには重合副生物であるアルカリ金属ハロゲン化物やアルカリ金属有機物などのイオン性不純物が含まれているため、洗浄を行うことが好ましい。洗浄条件としては、かかるイオン性不純物を除去するに足る条件であれば特に限定されるものではない。洗浄液としては例えば水や有機溶媒を用いて洗浄する方法が挙げられる。水、酸または酸の水溶液、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の水溶液のいずれかの液体にPASを浸漬させる処理を1回以上行うことが好ましく、各洗浄処理の間にはポリマーと洗浄液を分離する濾過工程を経ることがより好ましい。
酸または酸の水溶液にPASを浸漬させる場合は、処理後の洗浄液のpHが2〜8であることが好ましい。酸または酸の水溶液とは、有機酸、無機酸または水に有機酸、無機酸等を添加して酸性にしたものである。使用する有機酸、無機酸としては、酢酸、プロピオン酸、塩酸、硫酸、リン酸、蟻酸等が例示できる。酢酸または塩酸が好ましい。
アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の水溶液にPASを浸漬させる場合、水溶液中のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の量はPASに対し、0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜0.7質量%がさらに好ましい。アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の水溶液とは、水にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等を添加して溶解させたものである。使用するアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩としては、上記有機酸のカルシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
洗浄液でPASを洗浄する際の温度は80℃以上220℃以下が好ましく、イオン性不純物の少ないPASを得る点において150℃以上200℃以下がより好ましく、さらには180℃以上200℃以下がより好ましい。
洗浄液に使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましく、PASと洗浄液の割合は、通常、洗浄液1リットルに対し、PAS10〜500gの範囲が好ましく選択される。
いずれの洗浄液を用いても差し支えないが、酸で処理するとより高い溶融流動性が得られるため、好適な方法として例示できる。
かくして得られたPASは、常圧下および/または減圧下で乾燥する。かかる乾燥温度としては、120〜280℃の範囲が好ましい。乾燥雰囲気は、窒素、ヘリウム、減圧下などの不活性雰囲気、酸素、空気などの酸化性雰囲気、空気と窒素の混合雰囲気の何れでもよいが、溶融粘度の関係から不活性雰囲気が好ましい。乾燥時間は、0.5〜50時間が好ましい。
得られたPASを、揮発性成分を除去するために、あるいは架橋高分子量化して好ましい溶融粘度に調整するために、酸素含有雰囲気下、130〜260℃の温度で0.1〜20時間処理することも可能である。
(A−11)生成PAS
また、(A)の方法で製造するポリアリーレンスルフィドの特性として、真空下320℃×2時間加熱溶融した際に揮発する揮発性成分量が1.0質量%以下であることが好ましい。PASに含まれる揮発性成分を少なくすることで、PAS樹脂組成物を射出成形などで各種製品に成形する際、金型汚れや金型ベント詰まりを引き起こしづらく生産効率が向上する。また、成形品中における揮発成分が起因するボイド形成を引き起こしづらくなり、成形品の優れた機械物性や耐薬品性発現につながりやすい傾向にある。そのため揮発性成分量は少ないことが望まれており、0.9質量%以下がより好ましく、0.8質量%以下がいっそう好ましい。揮発性成分量は少ないことが好ましいため下限はないものの、通常、0.01質量%以上は発生する。
なお、上記揮発性成分量とは、PASを真空下で加熱溶融した際に揮発する成分が冷却されて液化または固化した付着性成分の量を意味しており、PASを真空封入したガラスアンプルを管状炉を用いて、上記条件(320℃×2時間)で加熱することにより測定されるものである。
PASを得る際、反応性官能基含有モノハロゲン化化合物を重合時に添加する場合、PASの末端塩素の一部が反応性官能基に置き換わるため、PASの塩素含有量が低減する傾向にある。電気電子部品分野では、環境に対する取り組みとして低ハロゲン化への動きが活発化しており、塩素含有量の低いPASは環境負荷低減材料としての効果も有している。反応性官能基含有モノハロゲン化化合物を用いた重合反応で得られるPASの塩素含有量は、3500ppm以下が好ましく、より好ましくは3000ppm以下、さらに好ましくは2500ppm以下である。 (A’)ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを加熱する方法
(A’−1)ポリアリーレンスルフィドプレポリマー
本発明におけるポリアリーレンスルフィドプレポリマーとは、式−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とし、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有する下記式(I)のごとき環式ポリアリーレンスルフィドを、少なくとも50重量%以上含むものであり、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上含むものが好ましい。Arとしては前記式(a)〜(k)などで表される単位などがあるが、なかでも式(a)が特に好ましい。
(mは4〜50の整数であり、異なるmを有する複数種類の環式ポリアリーレンスルフィドの混合物でもよい。)
なお、ポリアリーレンスルフィドプレポリマー中の前記式(I)の環式ポリアリーレンスルフィドにおいては前記式(a)〜(k)などの繰り返し単位をランダムに含んでもよいし、ブロックで含んでもよく、それらの混合物のいずれかであってもよい。これらの代表的なものとして、環式ポリフェニレンスルフィド、環式ポリフェニレンスルフィドスルホン、環式ポリフェニレンスルフィドケトン、これらが含まれる環式ランダム共重合体、環式ブロック共重合体およびそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましい前記式(A)の環式ポリアリーレンスルフィドとしては、主要構成単位として前記式(o)のp−フェニレンスルフィド単位を80モル%以上、特に90モル%以上含有する環式ポリアリーレンスルフィドが挙げられる。
ポリアリーレンスルフィドプレポリマーに含まれる前記式(I)中の繰り返し数mは4〜50である。ここで下限は4以上であり、5以上がより好ましく、6以上がさらに好ましく、7以上がよりいっそう好ましく、8以上がさらにいっそう好ましい。mが小さい環式ポリアリーレンスルフィドは反応性が低い傾向があるため、短時間でポリアリーレンスルフィドが得られるようになるとの観点ではmを前記範囲にすることが好ましい。一方上限は50以下であり、25以下がより好ましく、15以下がさらに好ましい。後述するようにポリアリーレンスルフィドプレポリマーの加熱によるポリアリーレンスルフィドへの重合反応はポリアリーレンスルフィドプレポリマーが融解する温度以上で行うことが好ましいが、mが大きくなるとポリアリーレンスルフィドプレポリマーが融解する温度が高くなる傾向にある。そのため、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーのポリアリーレンスルフィドへの重合反応をより低い温度で行うためには、mを前記範囲にすることが好ましい。
また、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーに含まれる前記式(I)の環式ポリアリーレンスルフィドは、mが単一の環式ポリアリーレンスルフィド、mが異なる値を有する環式ポリフェニレンスルフィドの混合物のいずれでもよいが、mが異なる値を有する環式ポリアリーレンスルフィドの混合物の方がmが単一の環式ポリアリーレンスルフィドよりも融解する温度が低い傾向があり、mが異なる値を有する環式ポリアリーレンスルフィドの混合物の使用はポリアリーレンスルフィドへの重合反応を行う際の加熱温度をより低くできるため好ましい。
ポリアリーレンスルフィドプレポリマーにおける前記式(I)の環式ポリアリーレンスルフィド以外の成分は、ポリアリーレンスルフィドオリゴマーであることが特に好ましい。ここでポリアリーレンスルフィドオリゴマーとは、式−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有する線状のホモオリゴマーまたはコオリゴマーである。Arとしては前記式(a)〜(k)などであらわされる単位などがあるが、なかでも式(a)が特に好ましい。ポリアリーレンスルフィドオリゴマーはこれら繰り返し単位を主要構成単位とする限り、前記式(l)〜(n)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−の単位1モルに対して0〜1モル%の範囲であることが好ましい。また、ポリアリーレンスルフィドオリゴマーは上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体およびそれらの混合物のいずれかであってもよい。
これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィドオリゴマー、ポリフェニレンスルフィドスルホンオリゴマー、ポリフェニレンスルフィドケトンオリゴマー、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体およびそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましいポリアリーレンスルフィドオリゴマーとしては、ポリマーの主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位を80モル%以上、特に90モル%以上含有するポリフェニレンスルフィドオリゴマーが挙げられる。
ポリアリーレンスルフィドオリゴマーの分子量としては、ポリアリーレンスルフィドよりも低分子量のものが例示でき、具体的には重量平均分子量で10,000未満であることが好ましい。
ポリアリーレンスルフィドプレポリマーが含有するポリアリーレンスルフィドオリゴマー量は、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーが含有する前記式(I)の環式ポリアリーレンスルフィドよりも少ないことが特に好ましい。すなわちポリアリーレンスルフィドプレポリマー中の前記式(I)の環式ポリアリーレンスルフィドとポリアリーレンスルフィドオリゴマーの重量比(前記式(I)の環式ポリアリーレンスルフィド/ポリアリーレンスルフィドオリゴマー)は1を超え、2.3以上が好ましく、4以上がより好ましく、9以上がさらに好ましく、このようなポリアリーレンスルフィドプレポリマーを用いることで重量平均分子量が10,000以上のポリアリーレンスルフィドを容易に得ることが可能である。従って、ポリアリーレンスルフィドプレポリマー中の前記式(I)の環式ポリアリーレンスルフィドとポリアリーレンスルフィドオリゴマーの重量比の値が大きいほど、本発明によって製造されるポリアリーレンスルフィドの重量平均分子量は大きくなる傾向にある。この重量比に特に上限は無いが、該重量比が100を超えるポリアリーレンスルフィドプレポリマーを得るためには、ポリアリーレンスルフィドプレポリマー中のポリアリーレンスルフィドオリゴマー含有量を著しく低減する必要があり、これには多大の労力を要する。本発明のポリアリーレンスルフィドポリマー製造方法として、例えば以下の(1)、(2)の方法が挙げられる。
(1)少なくともポリハロゲン化芳香族化合物、スルフィド化剤および有機極性溶媒を含有する混合物を加熱してポリアリーレンスルフィド樹脂を重合することにより、80meshふるい(目開き0.125mm)で分離される顆粒状PAS樹脂、重合で生成したPAS成分であって前記顆粒状PAS樹脂以外のPAS成分(ポリアリーレンスルフィドオリゴマーと称する)、有機極性溶媒、水、およびハロゲン化アルカリ金属塩を含む混合物を調製する。その後、この混合物に含まれるポリフェニレンスルフィドオリゴマーを分離回収し、これを精製操作に処すことでポリフェニレンスルフィドプレポリマーを得る方法。
(2)少なくともポリハロゲン化芳香族化合物、スルフィド化剤および有機極性溶媒を含有する混合物を加熱してポリアリーレンスルフィド樹脂を重合する。重合終了後に公知の方法によって有機極性溶媒の除去を行い、ポリアリーレンスルフィド樹脂、水、およびハロゲン化アルカリ金属塩を含む混合物を調製する。これを公知の方法で精製することにより、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを含むポリフェニレンスルフィド樹脂を得て、得られたポリアリーレンスルフィド樹脂を貧溶媒を用いて再沈させて、ポリフェニレンスルフィドプレポリマーを回収する方法。
上述の本発明の製造方法によれば該重量比が100以下のポリアリーレンスルフィドプレポリマーを用いても、重量平均分子量が10,000以上のポリアリーレンスルフィドを容易に得ることが可能である。
ポリアリーレンスルフィドプレポリマー中の前記式(I)の環式ポリアリーレンスルフィドとポリアリーレンスルフィドオリゴマーの重量比は、HPLCを用いて定量したポリアリーレンスルフィドプレポリマー中の前記式(I)の環式ポリアリーレンスルフィド量から算出することができる。例えばポリアリーレンスルフィドプレポリマーにおける前記式(I)の環式ポリアリーレンスルフィド以外の成分がポリアリーレンスルフィドオリゴマーである場合には、
重量比=前記式(I)の環式ポリアリーレンスルフィド量(%)/(100−前記式(I)の環式ポリアリーレンスルフィド量(%))
と算出できる。
ポリアリーレンスルフィドオリゴマーの末端構造は、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの合成方法にもよるが、例えばN−メチル−2−ピロリドンなどの有機アミド溶媒中、希薄条件下で、硫化ナトリウムなどのアルカリ金属硫化物とp−ジクロロベンゼンなどのポリハロ芳香族化合物を反応させる場合には、原料の仕込み比率などに応じて存在量は異なるものの、通常は硫黄化合物に由来するチオラート末端、ポリハロ芳香族化合物に由来するハロゲン末端が存在し、溶媒由来の末端としてN−メチル−2−ピロリドンに由来する末端が存在する場合もある。
本発明のポリアリーレンスルフィドの製造に用いるポリアリーレンスルフィドプレポリマーの分子量の上限値は、重量平均分子量で10,000未満が好ましく、5,000以下が好ましく、3,000以下がさらに好ましく、一方、下限値は重量平均分子量で300以上が好ましく、400以上が好ましく、500以上がさらに好ましい。
(A’−2)ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの加熱
本発明では、前記ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを加熱してポリアリーレンスルフィドを製造する。ここで、加熱の温度は200℃以上が選択され、230℃以上が好ましく、250℃以上がより好ましい。加熱温度の上限としては400℃以下が例示でき、好ましくは380℃以下、より好ましくは360℃以下である。加熱温度を200℃以上とすることで容易に前記ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを高重合度体に転化することができ、前記ポリアリーレンスルフィドプレポリマーが溶融解する温度以上とすることでより短時間で高重合度体に転化できるため好ましい。なお、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーが溶融解する温度は、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの組成や分子量、また、加熱時の環境により変化するため、一意的に示すことはできないが、例えばポリアリーレンスルフィドプレポリマーを示差走査型熱量計で分析することで溶融解温度を把握することが可能である。但し、温度が高すぎるとポリアリーレンスルフィドプレポリマー間、加熱により生成したPAS間、及びPASとポリアリーレンスルフィドプレポリマー間などでの架橋反応や分解反応に代表される好ましくない副反応が生じやすくなる傾向にあり、得られるPASの特性が低下する場合がある。このため、このような好ましくない副反応が顕著に生じる温度は避けることが望ましい。前記加熱を行う時間は使用するポリアリーレンスルフィドプレポリマーにおける環式ポリアリーレンスルフィドの含有率やm数、及び分子量などの各種特性、また、加熱の温度等の条件によって異なるため一様には規定できないが、前記した好ましくない副反応がなるべく起こらないように設定することが好ましい。加熱時間としては0.05〜100時間が例示でき、0.1〜20時間が好ましく、0.1〜10時間がより好ましい。0.05時間未満ではポリアリーレンスルフィドプレポリマーのPASへの転化が不十分になりやすく、100時間を超えると好ましくない副反応による得られるPASの特性への悪影響が顕在化する可能性が高くなる傾向にあるのみならず、経済的にも不利益を生じる場合がある。
ここで、ポリアリーレンスルフィドに反応性官能基を導入する目的で反応性官能基量が100μmol/gを超えるポリアリーレンスルフィドをポリアリーレンスルフィドプレポリマーと混合して加熱を行うのも好ましい実施の態様である。ここで、反応性官能基とはアミノ基、アセトアミド基、スルホンアミド基、スルホン酸基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、チオール基、シアノ基、イソシアネート基、アルデヒド基、アセチル基、酸無水物基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基、およびそれらから誘導される官能基から選ばれる官能基である。反応性官能基量が100μmol/gを超えるポリアリーレンスルフィドの製造方法はこの範囲を満たす限り問わないが、前期(A)の方法において、反応性官能基を有するジハロゲン化芳香族化合物および/またはモノハロゲン化化合物を用いることで製造することができる。反応性官能基量が100μmol/gを超えるポリアリーレンスルフィドの添加量の下限値はポリアリーレンスルフィドプレポリマー100重量部に対して2重量部以上が選択され、好ましくは5重量部以上である。上限値はポリアリーレンスルフィドプレポリマー100重量部に対して50重量部が選択され、好ましくは35重量部以下である。添加量が上記の下限値以上であることで得られるPASに十分な量の官能基を導入することができる。また、ポリアリーレンスルフィドの添加量が多くなることで得られるPAS樹脂の分子量が小さくなる傾向にあるが、ポリアリーレンスルフィド添加量を上記範囲とすることで十分な機械物性や耐薬品性を発現する分子量のPAS樹脂を容易に製造することができる。
ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの加熱は、通常溶媒の非存在下で行うが、溶媒の存在下で行うことも可能である。溶媒としては、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの加熱による高重合度体への転化の阻害や生成したPASの分解や架橋など好ましくない副反応を実質的に引き起こさないものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などがあげられる。また、二酸化炭素、窒素、水等の無機化合物を超臨界流体状態として溶媒に用いることも可能である。これらの溶媒は1種類または2種類以上の混合物として使用することができる。
前記、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの加熱は、通常の重合反応装置を用いる方法で行うのはもちろんのこと、成形品を製造する型内で行ってもよいし、押出機や溶融混練機を用いて行うなど、加熱機構を具備した装置であれば特に制限無く行うことが可能であり、バッチ方式、連続方式など公知の方法が採用できる。
ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの加熱の際の雰囲気は非酸化性雰囲気で行うことが好ましく、減圧条件下で行うことも好ましい。また、減圧条件下で行う場合、反応系内の雰囲気を一度非酸化性雰囲気としてから減圧条件にすることが好ましい。これによりポリアリーレンスルフィドプレポリマー間、加熱により生成したPAS間、及びPASとポリアリーレンスルフィドプレポリマー間などで架橋反応や分解反応等の好ましくない副反応の発生を抑制できる傾向にある。なお、非酸化性雰囲気とはポリアリーレンスルフィドプレポリマーが接する気相における酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、更に好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることを指し、この中でも特に経済性及び取扱いの容易さの面からは窒素雰囲気が好ましい。また、減圧条件下とは反応を行う系内が大気圧よりも低いことを指し、上限として50kPa以下が好ましく、20kPa以下がより好ましく、10kPa以下が更に好ましい。下限としては0.1kPa以上が例示できる。減圧条件が好ましい上限を越える場合は、架橋反応など好ましくない副反応が起こりやすくなる傾向にあり、一方好ましい下限未満では、反応温度によってはポリアリーレンスルフィドプレポリマーに含まれる分子量の低い環式ポリアリーレンスルフィドが揮散しやすくなる傾向にある。
(A’−3)生成ポリアリーレンスルフィド
本発明で用いるポリアリーレンスルフィドは、その製造方法においてN−メチルピロリドンのような溶媒を必要としないこと、また、ラジカル発生能を有する化合物やイオン性化合物などの触媒を使用しないことなどから、加熱加工時のガス発生量が少ない傾向にある。
このガス発生量は、一般的な熱重量分析によって求められる、下記式で表される、加熱した際の重量減少率ΔWrから評価できる。
△Wr=(W1−W2)/W1×100 ・・・(1)
ここで△Wrは重量減少率(%)であり、常圧の非酸化性雰囲気下で50℃から330℃以上の任意の温度まで昇温速度20℃/分で熱重量分析を行った際に、100℃到達時点の試料重量(W1)を基準とした330℃到達時の試料重量(W2)から求められる値である。
本発明で用いるPASは△Wrが0.18%以下であることが好ましく、0.12%以下であることが好ましく、0.10%以下であることが更に好ましく、0.085%以下であることがよりいっそう好ましい。△Wrが前記範囲にある場合、たとえばPASを成形加工する際の揮発成分発生量(ガス発生量)が少なく、さらに、成形品中に含まれる、揮発成分である低分子量成分量が少ないため、良好な機械強度得られ易く好ましい。また、押出成形時の口金やダイス、また射出成型時の金型への付着物が少ないために、高い生産性が得られ易いため好ましい。
△Wrは一般的な熱重量分析によって求めることが可能である。この分析における雰囲気は常圧の非酸化性雰囲気を用いる。非酸化性雰囲気とは試料が接する気相における酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、更に好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることを指す。この中でも特に経済性及び取扱いの容易さの面からは窒素雰囲気が特に好ましい。また、常圧とは大気の標準状態近傍における圧力のことであり、約25℃近傍の温度、絶対圧で101.3kPa近傍の大気圧条件のことである。測定の雰囲気が前記以外では、測定中にPASの酸化等が起きたり、実際にPASの成形加工で用いられる雰囲気と大きく異なるなど、PASの実使用に即した測定になり得ない可能性が生じる。
また、△Wrの測定においては50℃から330℃以上の任意の温度まで昇温速度20℃/分で昇温して熱重量分析を行う。好ましくは50℃で1分間ホールドした後に昇温速度20℃/分で昇温して熱重量分析を行う。この温度範囲はポリフェニレンスルフィドに代表されるPASを実使用する際に頻用される温度領域であり、また、固体状態のPASを溶融させ、その後任意の形状に成形する際に頻用される温度領域でもある。このような実使用温度領域における重量減少率は、実使用時のPASからの揮発成分発生量や成形加工の際の口金や金型などへの付着成分量などに関連する。従って、このような温度範囲における重量減少率が少ないPASの方が品質の高い優れたPASであるといえる。△Wrの測定は約10mg程度の試料量で行うことが望ましく、またサンプルの形状は約2mm以下の細粒状であることが望ましい。
(B)平均アスペクト比200以上、重量平均粒子径300μm以上1000μm以下の非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物
本発明のPAS樹脂組成物は、平均アスペクト比が200以上、重量平均粒子径300μm以上1000μm以下である非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物を含有する。本発明で用いる非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物とは、[四面体シート]と[八面体シート]という板状の結晶体が重なり合ってできており、この板状結晶体の間に水分子を含まない交換性陽イオンだけを挟んだ結晶構造体のことをいう。本発明で用いる非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物としては、具体的にマイカ、タルク、カオリン、モンモリロナイトなどが挙げられるが、特に優れた高寸法精度、高耐熱性付与の観点からマイカが好ましく用いられる。本発明では膨潤性層状ケイ酸塩鉱物を用いると、板状結晶体の間に水分子が入り込みやすく、空気中の吸水による寸法変化などが起こりやすくなると共に、取り込んだ水分子の放出・吸収を繰り返すことで機械強度が大きく低下する技術課題もあることから、本発明では非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物を選択的に用いている。
非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物の平均アスペクト比が200未満であると、PAS樹脂組成物の薄肉耐熱性向上効果が乏しく、結果として、PAS樹脂100重量部に対して100重量部を超える多量の非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物を配合しなくてはならず、この場合、薄肉流動性が低下すると共に、得られる成形品の機械強度も顕著に損なわれるため好ましくない。本発明の効果である優れた薄肉耐熱性を得る観点からは、非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物の平均アスペクト比は200以上が好ましく、300以上がより好ましく、450以上がさらに好ましい範囲として例示できる。非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物の平均アスペクト比の上限は、溶融加工時のフィラー破損抑制およびハンドリング性の観点から、800以下が好ましく、700以下がより好ましく、600以下がさらに好ましい。
また、層状ケイ酸塩の重量平均粒子径が300μm未満であると、PAS樹脂組成物の等方的な超低収縮化効果が得られず、得られる成形品も寸法誤差が大きくなり、且つ線膨張特性も悪化するため好ましくない。本発明効果である等方的な低収縮特性を得る観点から、非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物の重量平均粒子径は300μm以上が好ましく、450μm以上がより好ましく、600μm以上がさらに好ましい範囲として例示できる。非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物の重量平均粒子径の上限は、溶融加工時の流動性低下およびハンドリング性の観点から、1000μm以下が好ましく、900μm以下が好ましく、800μm以下がさらに好ましい。
ここで、非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物の重量平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定機を用いて常法に従って測定した径分布に基づき求められる重量平均径(レーザー法)、または乾式篩分け法に準じて測定した径分布に基づき求められる重量平均粒径で求められる値である。一般的に重量平均粒子径が30μm以下の粉体はレーザー法、それ以上の大きさの粉体は乾式篩分け法を用いることができる。
ここで、非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物の平均アスペクト比は、非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物の重量平均粒子径と数平均厚みを求め、重量平均粒子径(μm)/数平均厚み(μm)により算出する。数平均厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子(株)社製JSM−6360LV)により2000倍の倍率で観察した非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物の画像から無作為に選んだ10個の厚みを測定し、その数平均値を求める。
本発明のPAS樹脂組成物において、平均アスペクト比が200以上、重量平均粒子径が300μm以上1000μm以下である非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物の含有量は、PAS樹脂100重量部に対して1〜100重量部である。(B)非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物の含有量が1重量部未満であると、等方的な低収縮化、耐熱性向上が不十分となる。一方、非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物の含有量が100重量部を越えると、薄肉流動性、機械強度が著しく低下し、材料比重も大きくなってしまうことから、薄肉成形性、車載カメラ用筐体部品の寸法精度低下や軽量化効果が損なわれる。等方的な超低収縮化、薄肉耐熱性と、薄肉流動性を両立するためには、非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物の含有量は90重量部以下が好ましく、75重量部以下がより好ましく、50重量部以下がさらに好ましい範囲として例示できる。
また、本発明に用いられる非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物の数平均厚みは、少量配合でのフィラー補強効果を最大限に発現させる観点から、1.5μm以下が好ましく、1.0μm以下がより好ましく、0.80μm以下がさらに好ましい。下限については、0.10μm以上が好ましく、0.15μm以上がより好ましく、0.30μm以上がさらに好ましい。
本発明において使用される(B)非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物の中で好ましく用いられるマイカは、天然に産出される白雲母、黒雲母、金雲母、セリサイト、人工的に製造される合成マイカのいずれでもよい。これらを2種以上含んでもよい。
マイカの製造方法としては、例えば、水流式ジェット粉砕、石臼による湿式摩砕等の湿式粉砕や、乾式ボールミル粉砕、加圧ローラーミル粉砕、気流式ジェットミル粉砕、アトマイザー等の衝撃粉砕機による乾式粉砕などが挙げられる。
また、本発明においては、非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物とPAS樹脂との密着性を向上させる目的で、非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物をエポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、およびメルカプト基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するアルコキシシラン化合物で表面処理することが可能である。かかる化合物の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有アルコキシシラン化合物;γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物;γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアネート基含有アルコキシシラン化合物;γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物;およびγ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランなどの水酸基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物への表面処理量としては、成形加工時の熱分解ガス抑制しつつ、フィラーとの密着性を最大限に発現する観点より、2.0%以下が好ましく、1.5%以下がより好ましく、1.0%以下がさらに好ましい。また、不純物の除去、フィラーの硬質化を目的に熱処理加工をした非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物を用いてもよい。
(C)ガラス転移温度が150℃以上である非晶性樹脂
本発明の樹脂組成物は、(C)ガラス転移温度が150℃以上である非晶性樹脂を含有していてもよい。本発明で用いられる(C)ガラス転移温度が150℃以上である非晶性樹脂としては、この条件を満たすものであればよく、例えばポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などが使用できるが、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂が好ましく用いられる。ここで、ガラス転移温度は、JIS K7121に従い、DSCにより、20℃/分で測定した値を指す。本発明で用いられる(C)ガラス転移温度が150℃以上である非晶性樹脂の配合量は、(A)PAS樹脂100重量部に対して1〜100重量部であり、好ましくは5〜80重量部、更に好ましくは10〜60重量部である。(C)ガラス転移温度が150℃以上である非晶性樹脂の配合量が少なすぎるとさらなる寸法安定向上効果が得られず、また、多すぎると薄肉流動性が極端に低下し実用的でない。
(D)繊維状および/または非繊維状フィラー
本発明のPAS樹脂組成物は、本発明PAS樹脂組成物の特性を損なわない範囲で繊維状および/または非繊維状フィラーを含んでいてもよい。
本発明の実施形態における繊維状フィラーとしては、ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、炭素繊維、セラミック繊維、および鉱物繊維などが挙げられる。この中で、鉱物繊維などが挙げられる。この中で、鉱物繊維としては、例えば、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、炭酸カルシウムウィスカ、ワラストナイトウィスカ、アスベスト繊維、及び石こう繊維などが挙げられる。セラミック繊維としては、例えばアルミナ繊維および炭化珪素繊維などが挙げられる。本発明の実施形態において好ましい繊維状フィラーは、一般に短繊維と称される、配合前の繊維長1〜150μm、繊維直径1〜25μmのものである。このような短繊維フィラーを用いることで、フィラー異方性が緩和され、等方的な反り低減効果を付与できる。
一方、非繊維状フィラーとしては、ワラストナイト、ゼオライト、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケート、およびアルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、および酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、およびドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウムおよび硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、および水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、グラファイト、カーボンブラック、フラーレンなどが挙げられる。ここで、非繊維状フィラーとして、非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物は含まない。
これらの繊維状および/または非繊維状フィラーの中でも、ガラス繊維、ワラストナイト、が好ましく、流動性を大きく損なわずに高寸法安定性、高強度が発現できる点より、ガラス繊維が特に好ましい。繊維状および/または非繊維状フィラーは中空であってもよく、さらにはこれらフィラーを2種類以上併用することも可能である。また、これらフィラーをイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物あるいはエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用することは、より優れた機械的強度を得る意味において好ましい。
さらに、繊維状フィラーとして、異形断面ガラス繊維を用いることで、成形品流れ方向と直角方向の反り低減と高強度を両立させることができるので好ましい。ここで、異形断面ガラス繊維の断面形状は、扁平形、まゆ形、長円形、楕円形、半円若しくは円弧形、矩形又はこれらの類似形状の断面形状が好ましく、特に扁平形の断面形状であることがより好ましい。断面形状が扁平形状を有するガラス繊維の、長さ方向に直角の断面に於いて、長径(断面の最長の直線距離)と短径(長径と直角方向の最長の直線距離)の比(異形比)は、1.3〜10が好ましく、さらに好ましくは1.5〜5である。
上記の繊維状および/または非繊維状フィラーの配合量は、前記(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂100重量部に対して、1〜40重量部が好ましく、さらに好ましくは5〜35重量部、より好ましくは10〜30重量部である。上記の成分を1重量部以上配合することで、(B)非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物との相乗効果で寸法安定性や機械強度がさらに改良されるので好ましく、また40重量部以下の配合量にすることで、本発明のPAS樹脂組成物の等方的な超低収縮特性、薄肉耐熱性を損なうことなく、車載カメラ筐体部品用PAS樹脂組成物として良好な超高寸法精度、薄肉流動性を維持できるので好ましい。
さらに、本発明の実施形態のPAS樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、(A)PAS樹脂以外の樹脂を配合しても良い。その具体例としては、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、エチレン・1−ブテン共重合体などのエポキシ基を含有しないオレフィン系重合体、共重合体が挙げられる。
また、改質を目的として、以下のような化合物の添加が可能である。ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン系化合物などの可塑剤、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、モンタン酸ワックス類、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミ等の金属石鹸、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物、シリコーン系化合物などの離型剤、次亜リン酸塩などの着色防止剤、(3,9−ビス[2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)などの様なフェノール系酸化防止剤、(ビス(2,4−ジ−クミルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト)などのようなリン系酸化防止剤、その他、水、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、発泡剤などの通常の添加剤をPAS樹脂組成物に配合することができる。上記化合物は何れも組成物全体の20重量%を越えると(A)PAS樹脂本来の特性が損なわれるため好ましくなく、10重量%以下、更に好ましくは1重量%以下の添加がよい。
本発明の実施形態のPAS樹脂組成物は、通常溶融混練によって得られる。溶融混練は、単軸、2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、及びミキシングロールなど通常公知の溶融混練機に原材料を供給してPAS樹脂の融解ピーク温度+5〜100℃の加工温度の温度で混練する方法などを代表例として挙げることができる。この際、原料の混合順序には特に制限はなく、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混練し更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後単軸あるいは2軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。また、少量添加剤成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加して成形に供することも勿論可能である。
さらに、本発明の実施形態の組成物は、溶融混練以外の方法により製造してもよい。例えば、配合物を固体状態で錠剤形に圧縮して固め、これを射出成形などの成形に供する方法も採用することができる。
本発明の実施形態のPAS樹脂組成物は射出成形、射出圧縮成形、ブロー成形、および押出成形により、種々の成形品を製造するために用いることができる。本発明の実施形態のPAS樹脂組成物からなる成形品の用途としては、電気・電子部品、家庭用・事務用OA機器部品、光学機器・精密機械関連部品、自動車・車両関連部品など、その他各種用途が例示できる。その中でも特に、実使用環境下での高寸法精度や反り変形抑制が必要になるコネクタ部品や筐体部品用途が好適であり、IT機器分野(パソコン筐体、スマートフォン関連)、自動車分野(制御システムや電装部品関連)、および産業分野(産業用機械関連)など幅広い分野での展開が期待できる。
本発明の実施形態のPAS樹脂組成物は、等方的な低収縮性(高寸法精度)、高寸法安定性、薄肉耐熱性および薄肉流動性の特徴を有することから、特にADAS分野で歩行者衝突回避機能として重要な車載カメラ筐体部品として好適であり、高温環境下(180℃以下)での安定した高寸法精度発現、薄肉軽量化対応および撮影画像ブレ少なく画素数向上にも寄与できることから、大幅な製品コストダウンが可能であり、ADAS分野の飛躍的な市場成長への貢献が期待できる。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。以下の実施例において、材料特性については下記の方法により測定した。
<分子量測定>
ポリアリーレンスルフィド及びポリアリーレンスルフィドプレポリマーの分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の一種であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で算出した。GPCの測定条件を以下に示す。
装置:センシュー科学 SSC−7100
カラム名:センシュー科学 GPC3506
溶離液:1−クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/min
試料注入量:300μL (サンプル濃度:約0.2重量%)。
<カルボキシル基含有量>
PAS樹脂のカルボキシル基含有量は、フーリエ変換赤外分光装置(以下FT−IRと略す)を用いて算出した。まず、標準物質として安息香酸をFT−IRにて測定し、ベンゼン環のC−H結合の吸収である3066cm−1のピークの吸収強度(b1)とカルボキシル基の吸収である1704cm−1のピークの吸収強度(c1)を読み取り、ベンゼン環1単位に対するカルボキシル基量(U1)、(U1)=(c1)/[(b1)/5]を求めた。次に、PAS樹脂を320℃にて1分間溶融プレスした後、急冷して得られた非晶フィルムのFT−IR測定を行った。3066cm−1の吸収強度(b2)と1704cm−1の吸収強度(c2)を読み取り、ベンゼン環1単位に対するカルボキシル基量(U2)、(U2)=(c2)/[(b2)/4]を求めた。PAS樹脂がPPS樹脂の場合、フェニレンスルフィド単位から構成されていることから、PPS樹脂1gに対するカルボキシル基含有量を以下の式から算出した。
PPS樹脂のカルボキシル基含有量(μmol/g)=(U2)/(U1)/108.161×1000000
<スパイラル流動長>
1mm厚みのスパイラルフロー金型を用いて、シリンダ温度320℃、金型温度140℃
、射出速度230mm/s、射出圧力98MPa、射出時間5s、冷却時間15sの条件で成形し、流動長(n=10)を測定した(使用成形機:住友SE75DUZ)。この流動長の数値が大きいほど薄肉流動性に優れているといえる。
<ヒートサグ試験片の射出成形>
住友重機械社製射出成形機プロマット40/20を用い、樹脂温度320℃、金型温度140℃とする成形条件にて、(長さ)130mm×(幅)12.7mm×(厚み)1.0mmのヒートサグ試験片を成形した。
<成形収縮率評価用プレートの射出成形>
住友重機械社製射出成形機SE75DUZを用い、樹脂温度320℃、金型温度140℃、冷却時間15sとする条件にて、(長さ)70mm×(幅)70mm×(厚み)1.0mm(ゲート形状:フィルムゲート)のプレートを成形した。
<引張試験片の射出成形>
住友重機械社製射出成形機SE75−DUZを用い、樹脂温度320℃、金型温度130℃とする条件にて、ASTM1号ダンベル試験片を成形した。
<曲げ試験片の射出成形>
住友重機械社製射出成形機SE75−DUZを用い、樹脂温度320℃、金型温度130℃とする条件にて、(幅)12.5mm×(長さ)130mm×(厚み)3.2mmの曲げ試験片を成形した。
<ヒートサグ変形量>
前記射出成形したヒートサグ試験片の片端30mmを保持し、試験片が水平になるように片持ち状態で固定しながら、180℃の熱風オーブンで60分処理した後、保持した部分と反対側の先端が、水平状態から自重によって垂れ下がった距離をハイトゲージにて測定してヒートサグ変形量とした。尚、この熱変形量が小さいほど、薄肉耐熱性に優れているといえる。
<成形収縮率>
前記射出成形した成形収縮率評価用試験片にて、該プレートの流れ方向(MD方向)と直角方向(TD方向)の寸法をノギスにて実測し、金型実寸法に対する成形収縮率((金型寸法)−(成形品寸法)/金型寸法×100)を算出した。この成形収縮率の絶対値が小さく、流れ方向/直角方向の比が1.0に近いほど、射出成形時の成形収縮が少なく寸法精度に優れているといえる。
<引張試験>
前記射出成形したASTM1号ダンベル試験片を支点間距離114mm、引張速度10mm/minの条件でテンシロンUTA2.5T引張試験機を用い、ASTM D638に準じて引張強度および引張伸度を測定した。これらの値が大きいほど引張特性に優れているといえる。
<曲げ試験>
前記射出成形した曲げ試験片をスパン間距離100mm、クロスヘッドスピード1.0mm/minの条件で、ASTM D790に準じてテンシロンRTM1T曲げ試験機を用い、曲げ強度および曲げ弾性率を測定した。これらの値が大きいほど曲げ特性に優れているといえる。
<荷重たわみ温度測定>
前記射出成形した曲げ試験片を用いて、ASTM D648に準じて、0.46MPa荷重下での荷重たわみ温度を測定した。この値が大きいほど耐熱性に優れているといえる。
<線膨張係数>
前記射出成形した成形収縮率評価用プレートより、中央部から樹脂流れ方向および直角方向の試験片(10mm×4mm×1mm)を切り出す。熱機械的分析装置(TMA)を用いて、ASTM D696に準じて、試験片長手方向の23℃〜120℃の線膨張係数を測定したものである。この線膨張係数の値が小さく、且つ流れ方向(MD方向)と直角方向(TD)の比が1.0に近いほど、線膨張変化の異方性が小さく、寸法安定性に優れているといえる。
<参考例1>(A)PAS樹脂の重合(a−1)
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.94kg(70.63モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)、酢酸ナトリウム1.89kg(23.1モル)、及びイオン交換水5.50kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水9.77kgおよびNMP0.28kgを留出した後、反応容器を200℃に冷却した。アルカリ金属硫化物の仕込み量1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、アルカリ金属硫化物の仕込み量1モル当たり0.02モルであった。
反応容器を200℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン10.42kg(70.86モル)、NMP9.37kg(94.50モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら0.6℃/分の速度で200℃から270℃まで昇温し、270℃で140分反応した。その後、270℃から250℃まで15分かけて冷却しながら水2.40kg(133モル)を圧入した。ついで250℃から220℃まで75分かけて徐々に冷却した後、室温近傍まで急冷し、内容物を取り出した。
内容物を約35リットルのNMPで希釈しスラリーとして85℃で30分撹拌後、80メッシュ金網(目開き0.175mm)で濾別して固形物を得た。得られた固形物を同様にNMP約35リットルで洗浄濾別した。得られた固形物を70リットルのイオン交換水に加え、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過して固形物を回収する操作を合計3回繰り返した。得られた固形物および酢酸32gを70リットルのイオン交換水に加え、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過した。得られた固形物を、更に70リットルのイオン交換水に加え、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過して固形物を回収した。このようにして得られた固形物を窒素気流下、120℃で乾燥することにより、乾燥ポリフェニレンスルフィド樹脂(PAS樹脂(a−1))を得た。
得られた乾燥PPS樹脂は1−クロロナフタレンに210℃で全溶であり、得られた乾燥PPS樹脂についてGPC測定を行った結果、重量平均分子量は48600であった。FT−IRを用いて官能基量を定量したところカルボン酸が40μmol/g含まれていることが分かった。
<参考例2>(A)PAS樹脂の重合(a−2)
撹拌機および上部に抜き出しバルブを具備したオートクレーブに、水硫化ナトリウムの48重量%水溶液1.648kg(水硫化ナトリウム0.791kg(14.1モル))、水酸化ナトリウムの48重量%水溶液1.225kg(水酸化ナトリウム0.588kg(14.7モル))、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)35L、およびp−ジクロロベンゼン(p−DCB)2.120kg(14.4モル)を仕込んだ。
反応容器を室温・常圧下にて窒素ガス下に密閉した後、400rpmで撹拌しながら、室温から200℃まで25分かけて昇温した。次いで、250℃まで35分かけて昇温し、250℃で2時間反応を行った。次いで、内温を250℃に保ちながら、抜き出しバルブを徐々に開放し、40分かけて溶媒を26.6kg留去した。溶媒留去の完了後、オートクレーブを室温近傍にまで冷却し、内容物を回収した。
回収した内容物を、反応液の温度が100℃になるように窒素下にて加熱撹拌を行なった。100℃で20分間保持した後、平均目開き10μmのステンレス製金網を用いて固液分離を行ない、得られた濾液成分を約3倍量のメタノールに滴下し、析出成分を回収した。析出後に回収された固体成分を約2.5Lの80℃温水でリスラリー化し、30分間80℃で撹拌後、濾過する操作を3回繰り返したのち、得られた固形分を減圧下80℃で8時間乾燥を行ない、乾燥固体を得た。得られた乾燥固体の赤外吸収スペクトルおよび高速液体クロマトグラフィーによる分析の結果、得られた乾燥固体は、環式ポリフェニレンスルフィドを85重量%含有していることが分かった。
得られた乾燥固体を、留出管および撹拌翼を取り付けたガラス製の試験管に仕込んだ後、試験管内の減圧、窒素置換を3回繰り返した。試験管内を約0.1kPaに保ったまま340℃に温調して120分間加熱した後、室温まで冷却して重合物を得た。赤外分光スペクトルに基づいて、得られた生成物はポリフェニレンスルフィドであることがわかった。また、GPC測定により、得られた生成物は、重量平均分子量は約5万であることがわかった。上記得られた生成物を、PPS樹脂(a−2)と呼ぶ。FT−IRを用いて官能基量を定量したところカルボン酸が0μmol/g含まれていることが分かった。
<参考例3>(A)PAS樹脂の重合(a−3)
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム水溶液8.19kg(70.0モル)、96%水酸化ナトリウム3.02kg(75.6モル)、酢酸ナトリウム1.89kg(23.1モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)14.5kg(147モル)及びイオン交換水5.82kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら225℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、少量のNMPを含む水を系内から留去した後冷却を開始した。
200℃まで冷却し、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)10.1kg(69.3モル)、NMP8.74kg(88.2モル)を加えた後に反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら200〜218℃を1.0℃/分、218〜234℃を0.56℃/分、234〜240℃を0.25℃/分、240〜276℃を8.0℃/分で昇温し、276℃で75分間加熱を行った。276℃で75分間加熱を行った後、4−クロロ安息香酸0.64kg(4.10モル)を投入し、276℃で120分間反応を行った。
反応終了後、直ちにオートクレーブ底栓弁を開放し、内容物を撹拌機付装置にフラッシュさせ、重合時にしようしたNMPの95以上が揮発除去されるまで230℃の撹拌機付装置内で1.5時間乾固し、PPSと塩類を含む固形物を回収した。
得られた回収物及びイオン交換水74リットルを撹拌機付オートクレーブに入れ、75℃で15分洗浄した後、フィルターでろ過しケークを得た。得られたケークを75℃のイオン交換水で15分洗浄、ろ過する操作を3回行った後、ケーク及びイオン交換水74リットル、酢酸0.4kgを撹拌機付オートクレーブに入れ、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、195℃まで昇温した。その後、オートクレーブを冷却し、内容物を取り出した。内容物をフィルターでろ過して得たケークを窒素気流下、120℃で乾燥することで乾燥PPS(a−3)を得た。GPC測定を行ったところ、重量平均分子量は43000であった。FT−IRを用いて官能基量を定量したところカルボン酸が150μmol/g含まれていることが分かった。
<参考例4>(A)PAS樹脂の重合(a−4)
(反応性官能基含有PPSモノマー調製)
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム水溶液8.27kg(70.0モル)、96%水酸化ナトリウム3.60kg(86.4モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)及びイオン交換水5.50kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら225℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水9.82kgおよびNMP0.28kgを留出した時点で加熱を終え冷却を開始した。この時点での仕込みアルカリ金属水硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.01モルであった。また、硫化水素の飛散量は1.4モルであったため、本工程後の系内のスルフィド化剤は68.6モルであった。その後、200℃まで冷却し、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)9.28kg(63.1モル)、4−クロロ安息香酸2.44kg(15.6モル)、NMP9.37kg(94.50モル)を加えた後に反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら0.6℃/分の速度で250℃まで昇温し、250℃で180分反応した。
反応終了後、直ちにオートクレーブ底栓弁を開放し、内容物を撹拌機付き装置にフラッシュさせ、重合時に使用したNMPの95%以上が揮発除去されるまで230℃の撹拌機付き装置内で1.5時間乾固し、PPSと塩類を含む固形物を回収した。
得られた回収物およびイオン交換水74リットルを撹拌機付きオートクレーブに入れ、75℃で15分洗浄した後、フィルターでろ過しケークを得た。得られたケークを75℃のイオン交換水で15分洗浄、ろ過する操作を3回行った後、ケークおよびイオン交換水74リットル、酢酸0.4kgを撹拌機付きオートクレーブに入れ、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、195℃まで昇温した。その後、オートクレーブを冷却し、内容物を取り出した。内容物をフィルターでろ過しケークを得た。得られたケークを窒素気流下、120℃で乾燥することで乾燥PPSを得た。GPC測定を行ったところ、重量平均分子量は5100であった。FT−IRを用いて官能基量を定量したところカルボン酸基が700μmol/g含まれていることが分かった。
(ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの調製)
撹拌機および上部に抜き出しバルブを具備したオートクレーブに、水硫化ナトリウムの48重量%水溶液165kg(水硫化ナトリウム79.0kg(1.41kmol))、水酸化ナトリウムの48重量%水溶液123kg(水酸化ナトリウム59.0kg(1.47kmol))、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)3590kg(36.3kmol)、およびp−ジクロロベンゼン212kg(1.44kmol)を仕込んだ。
反応容器を室温・常圧下にて窒素雰囲気下に密閉した後、400rpmで撹拌しながら、室温から200℃まで25分かけて昇温した。次いで、250℃まで35分かけて昇温し、250℃で120分反応を行った。次いで、内温を250℃に保持しながら、抜き出しバルブを徐々に開放し、溶媒26.6kgを40分かけて留去した。その後、オートクレーブを室温近傍にまで冷却し、内容物を回収した。
内容物の温度が100℃になるように窒素下にて加熱撹拌を行なった後、100℃で20分間保持し、目開き20μmの金網を用いて濾別した。得られた濾液を400リットルのメタノールに滴下し、室温で30分撹拌後、析出成分を回収した。回収した固形分にイオン交換水25リットルを加えスラリーとして、80℃で30分撹拌後、濾過して固形分を回収する操作を3回繰り返した。得られた固形分を減圧下80℃で8時間乾燥し、乾燥固体を得た。得られた乾燥個体を10kg分取し、溶剤としてクロロホルム150kgを用いて、常圧還流下で1時間撹拌することでポリフェニレンスルフィドプレポリマーと溶剤を接触させた。ついで熱時濾過により固液分離を行い抽出液を得た。ここで分離した固形物にクロロホルム150kgを加え、常圧還流下で1時間撹拌した後、同様に熱時濾過により固液分離を行い、抽出液を得て、先に得た抽出液と混合した。得られた抽出液は室温で一部固形状成分を含むスラリー状であった。
この抽出液スラリーを減圧下で処理する事で、抽出液重量が約40kgになるまでクロロホルムの一部を留去してスラリーを得た。次いでこのスラリー状混合液をメタノール600kgに撹拌しながら滴下した。これにより生じた沈殿物を濾過して固形分を回収し、次いで80℃で減圧乾燥することで白色粉末3.0kgを得た。白色粉末の収率は、精製前のポリフェニレンスルフィドプレポリマーに対して30%であった。
この白色粉末の赤外分光分析における吸収スペクトルより、白色粉末はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。また、高速液体クロマトグラフィー(装置;株式会社島津製作所製 LC−10,カラム;C18,検出器;フォトダイオードアレイ)より成分分割した成分のマススペクトル分析(装置;日立製M−1200H)、更にMALDI−TOF−MSによる分子量情報より、この白色粉末は繰り返し単位数4〜12の環式ポリフェニレンスルフィドを主要成分とするポリアリーレンスルフィドプレポリマーであり、環式ポリフェニレンスルフィドの重量分率は約94%であることがわかった。また、このポリアリーレンスルフィドプレポリマーのGPC測定を行った結果、重量平均分子量は900であった。
(官能基含有PPS樹脂調製)
留出管および撹拌翼を取り付けたガラス製の試験管に「官能基含有PPSモノマー」30gとポリアリーレンスルフィドプレポリマー70gを測り取って仕込んだ後、試験管内の減圧、窒素置換を3回繰り返した。試験管内を約0.1kPaに保ったまま340℃に温調して4時間加熱したあと、室温まで冷却して重合物(a−4)を得た。FT−IRスペクトルよりそれぞれポリフェニレンスルフィドであることを確認しGPC測定を行ったところ、重量平均分子量は40000であった。FT−IRを用いて官能基量を定量したところカルボン酸が120μmol/g含まれていることが分かった。
<参考例5>(B)非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物
(b−1)マイカ、重量平均粒子径:300μm、数平均厚み:0.50μm、平均アスペクト比:600
(b−2)マイカ、重量平均粒子径:500μm、数平均厚み:0.80μm、平均アスペクト比:600
(b−3)マイカ、重量平均粒子径:300μm、数平均厚み:1.0μm、平均アスペクト比:300
(b−4)マイカ、重量平均粒子径:200μm、数平均厚み:0.67μm、平均アスペクト比:300
(b−5)マイカ、重量平均粒子径:300μm、数平均厚み:3.0μm、平均アスペクト比:100
(b−6)マイカ、重量平均粒子径:800μm、数平均厚み:8.0μm、平均アスペクト比100
(b−7)マイカ、重量平均粒子径:20μm、数平均厚み:0.30μm、平均アスペクト比:80
(b−8)マイカ、重量平均粒子径:50μm、数平均厚み:1.0μm、平均アスペクト比:50
(b−9)マイカ、重量平均粒子径:100μm、数平均厚み:3.0μm、平均アスペクト比:30
(b−10)マイカ、重量平均粒子径:300μm、数平均厚み:0.50μm、平均アスペクト比:600、3−グリシジルプロピルトリメトキシシラン化合物表面処理(2wt%)
ここで、マイカの重量平均粒子径は、乾式篩分け法に準じて測定した径分布に基づき求めた値である。また数平均厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子(株)社製JSM−6360LV)を用いて2000倍の倍率で観察した画像から無作為に10個のマイカ粒子を選び、その厚みを測定し、その数平均値を求めた。アスペクト比は重量体積平均粒子径(μm)/数平均厚み(μm)として算出した。
<参考例6>(C)ガラス転移温度150℃以上である非晶性樹脂
(c−1)ポリエーテルイミド樹脂、製品名ULTEM1010、SABIC社製、ガラス転移温度217℃。
<参考例7>(D)繊維状および/または非繊維状フィラー
(d−1)チョップドガラス繊維(繊維状、製品名ECOST−760H、平均繊維径10.5μm、日本板硝子(株)製)
(d−2)ガラスフレーク(板状、製品名REFG−112、重量平均粒子径500μm、平均アスペクト比100、日本板硝子(株)製)
(d−3)炭酸カルシウム(球状、製品名KSS1000、重量平均粒子径2.0μm、カルファイン(株)製)
<実施例1〜8、比較例1〜9>
表1に示す(A)成分、(C)成分を表1に示す割合でドライブレンドした後、真空ベントを具備した日本製鋼所社製TEX30α型二軸押出機(L/D=45.5、ニーディング部は5箇所)の根元(ダイヘッドからL/D=45.5の箇所)から供給し、(B)成分、(D)成分は表1に示した割合になるように、ダイヘッドからL/D=15の箇所からサイドフィーダーを用いて途中から供給し、スクリュー回転数300rpm、ダイス吐出部の樹脂温度が330℃以下になるようにシリンダ温度を設定する押出条件で溶融混練しペレタイズした。得られたペレットを130℃一晩乾燥した後で射出成形に供し、薄肉流動性、ヒートサグ変形量、機械特性、耐熱性、成形収縮、寸法安定性につき評価した。結果は表1に示すとおりであった。
上記実施例1〜8と比較例1〜9の結果を比較して説明する。
実施例1〜3は、本発明(B)成分以外のマイカを用いた比較例1〜3に対して、ヒートサグ変形量、成形収縮率(MD方向/TD方向)が低減し、薄肉流動性、寸法安定性も共に向上する結果であった。また、実施例1に対して、(a−1)成分以外のPAS樹脂を用いた実施例4でも実施例1同様に優れた薄肉流動性、薄肉耐熱性、高寸法精度、高寸法安定性が発現する結果を示した。さらに、実施例1に対して反応性官能基含有量が100μmol/gを超えるPAS樹脂を用いた以外は同一である実施例5、6は機械強度がさらに向上し、フィラーとの接着性向上によるフィラー補強効果が最大限に発現したことを示唆する結果が得られた。実施例1に対して、さらにガラス転移温度150℃以上の非晶性樹脂およびマイカ以外の繊維状フィラー(d−1)を配合した実施例7、8は、実施例1の優れた薄肉耐熱性、寸法精度、寸法安定性が大幅に向上し、より高寸法精度、高寸法安定性が要求される車載カメラ筐体部品関連等への展開が期待できる結果が得られた。一方、実施例1に対して本発明マイカと形状が異なる繊維状フィラーおよび非繊維状フィラーである(d−1)、(d−2)、(d−3)を配合した以外は同一である比較例7〜9は、実施例1よりも薄肉耐熱性が低下し、成形収縮率や線膨張係数の数値および異方性(MD方向/TD方向)が極めて大きくなる結果であったことから、本発明非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物の形状でないと本発明の実施例と同じ改良効果が得られないことがわかる。

Claims (8)

  1. (A)ポリアリーレンスルフィド樹脂100重量部に対して、平均アスペクト比が200以上、重量平均粒子径が300μm以上1000μm以下である(B)非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物を1〜100重量部含有することを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  2. 前記(B)非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物がマイカであることを特徴とする請求項1記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  3. 前記(B)非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物の平均アスペクト比が300以上800以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  4. 前記(B)非膨潤性層状ケイ酸塩鉱物がエポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、およびメルカプト基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するアルコキシシラン化合物で表面処理されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  5. 前記(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂100重量部に対して、(C)ガラス転移温度150℃以上である非晶性樹脂1〜100重量部含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  6. 前記(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂の反応性官能基含有量が100μmol/gを超えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物からなる成形品。
  8. 成形品が車載カメラ用筐体部品である請求項7項記載の成形品。
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