以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂
具体的には、式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有するホモポリマーまたはコポリマーであり、Arとしては下記の式(a)〜式(k)などで表あらわされる単位などがあるが、中なかでも式(a)が特に好ましい。
(R1,R2は水素、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリーレン基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい)
この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、下記の式(l)〜式(n)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−の単位1モルに対して0〜1モル%の範囲であることが好ましい。
また、本発明に用いる(A)PPS樹脂は、上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物のいずれかであってもよい。
これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に低ガス、高耐熱の観点で、より好ましく用いられる(A)PPS樹脂としては、ポリマーの主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位
を80モル%以上、特に90モル%以上含有するポリフェニレンスルフィド樹脂が挙げられる。
本発明では、(A)PPS樹脂として、たとえば後述する製造方法などによって得ることができる、より滞留安定性に優れる(A’)PPS樹脂を用いることもできる。
本発明で用いられる(A)PPS樹脂の溶融粘度に制限はないが、薄肉の射出成形体が得られやすい観点から、300Pa・s(300℃、剪断速度1000/s)以下であることが好ましく、200Pa・s以下がより好ましく、100Pa・s以下がさらに好ましい。下限については、溶融成形加工性やガス発生量の観点から1Pa・s以上であることが好ましい。尚、本発明における溶融粘度は、300℃、剪断速度1000/sの条件下、東洋精機社製キャピログラフを用いて測定した値である。
上記溶融粘度を有する(A)PPS樹脂は、成形加工時の溶融滞留安定性の観点から、下記数式(1)で定義される溶融粘度変化率が30%以下が好ましい範囲として例示でき、25%以下がより好ましく20%以下がさらに好ましい。
溶融粘度変化率(%)=100(ηa/ηb−1) ・・・(1)
また(A)PPS樹脂の中でも、より溶融滞留安定性に優れる(A’)PPS樹脂は溶融粘度変化率が15%以下が好ましい範囲として例示でき、10%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましい。ここで上記数式のηaは測定温度300℃、滞留時間5分間、オリフィスL/D=10mm/1mm、剪断速度10〜6000/s、酸素雰囲気の条件下、東洋精機社製キャピログラフを用いて測定したポリフェニレンスルフィドの初期溶融粘度(Pa・s)を表し、ηbは滞留時間30分間に変更した以外はηaと同一条件で測定した溶融滞留後の溶融粘度(Pa・s)を表す。
尚、溶融粘度変化率が15%以下の場合は、特に溶融滞留時間が比較的長い多数個取り大型自動車部品の射出成形に好適であり、流動性バラツキによる製品不良(ショートショットや過充填)を抑制し、成形歩溜まり率(必要な製品個数を生産するのに必要な材料使用量/実際に使用した材料量×100)も100%に限りなく近づけることができるので生産性向上の面でも有利である。
本発明の実施形態の(A)PPS樹脂の分子量(重量平均分子量)の下限値は、10000以上の範囲が選択され、好ましくは15000以上で、より好ましくは18000以上である。また、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂の分子量(重量平均分子量)の上限値は、100000以下の範囲が選択され、好ましくは50000以下であり、より好ましくは30000以下である。(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂の重量平均分子量の下限値が10000未満では、成形加工時にガス発生量が多くなることで成形性が低くなり、成形品の機械強度も損なわれる。が、一方で重量平均分子量の上限値が100000を超えると、金型内の固化が遅くなるため、ことで成形品が十分に結晶化せず、十分な耐熱性向上効果を得ることができなくなる可能性がある。本発明の実施形態の(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂の重量平均分子量がより小さい方が金型内の樹脂の固化が速くなり、成形品の高結晶化による飛躍的な耐熱性向上効果が発現する。
本発明の実施形態における(A)PPS樹脂の分子量分布の広がり、即ち重量平均分子量と数平均分子量の比(重量平均分子量/数平均分子量)で表される分散度は5.0以下が好ましく、4.0以下が好ましく、3.0以下がさらに好ましい。また(A)PPS樹脂の中でも(A’)PPS樹脂は特に分子量分布が狭い特徴があり、分散度は2.5以下が好ましく、2.3以下がより好ましく、2.1以下が更に好ましく、2.0以下がよりいっそう好ましい。分散度が2.5以下の場合、PPS樹脂に含まれる低分子量成分の量が極めて少ない、このことはPPS樹脂を成形加工用途に用いた場合の機械特性の向上、加熱した際のガス発生量の減少、及び溶剤と接した際の溶出成分量の減少等の傾向が顕著であることを示す。尚、前記重量平均分子量及び数平均分子量は、例えば示差屈折率検出器を具備したSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)を使用して求めることができる。
本発明で用いる(A)PPS樹脂に含まれる不純物であるアルカリ金属含有量に特に制限はないが、電気絶縁性が要求される電気電子部品用途に展開する観点ではアルカリ金属含有量は重量比で1500ppm未満が好ましい範囲として例示できる。アルカリ金属含有量が1500ppm以上では、金属不純物による電気絶縁性低下などの問題が生じるため好ましくない。また電気絶縁性の要求が厳しい半導体封止部品用途に展開するためには(A’)PPS樹脂を用いることが好ましく、上記した電気絶縁性低下の観点から(A’)PPS樹脂のアルカリ金属含有量は重量比で700ppm未満が好ましい範囲として例示でき、100ppm未満がより好ましい。ここでいうアルカリ金属含有量とは、例えば(A)PPS樹脂を電気炉等を用いて焼成した残渣である灰分中のアルカリ金属量から算出される値であり、前記灰分を例えばイオンクロマト法や原子吸光法により分析することで定量することができる。
なお、アルカリ金属とは周期律表第IA属のリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムのことを指すが、本発明の(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂は、ナトリウム以外のアルカリ金属を含まないことが好ましい。ナトリウム以外のアルカリ金属を含む場合、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の電気特性や熱的特性に悪影響を及ぼす傾向にある。また(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂が各種溶剤と接した際の溶出金属量が増大する要因になる可能性があり、特に(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂がリチウムを含む場合にこの傾向が強くなる。ところで、各種金属種の中でも、アルカリ金属以外の金属種、たとえばアルカリ土類金属や遷移金属と比較して、アルカリ金属はポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の電気特性、熱的特性及び金属溶出量への影響が強い傾向にある。よって、各種金属種の中でも、特にアルカリ金属含有量を前記範囲にすることで(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂の品質を向上する事ができると推測している。
本発明の実施形態で用いる(A’)PPS樹脂は特に(A)PPS樹脂よりもガス発生量が少ない特徴があり、加熱した際の重量減少率が下記式(1)を満たす。
△Wr=(W1−W2)/W1×100≦0.18(%) ・・・(1)
ここで△Wrは重量減少率(%)であり、常圧の非酸化性雰囲気下で50℃から330℃以上の任意の温度まで昇温速度20℃/分で熱重量分析を行った際に、100℃到達時点の試料重量(W1)を基準とした330℃到達時の試料重量(W2)から求められる値である。
(A’)PPS樹脂の重量減少率は△Wrはが0.18%以下であり、0.12%以下であることが好ましく、0.10%以下であることが更に好ましく、0.085%以下であることがよりいっそう好ましい。△Wrが前記範囲を超える場合は、たとえば極めて低ガス性が要求される精密電気・電子部品へ用途展開に制限ができるといった問題が発生しやすくなる傾向があり、また成形品の機械強度が低下する傾向があるため好ましくない。
△Wrは一般的な熱重量分析によって求めることが可能であるが、この分析における雰囲気は常圧の非酸化性雰囲気を用いる。非酸化性雰囲気とは、試料が接する気相における酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、更に好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることを指す。
この中でも、特に経済性及び取扱いの容易さの面から窒素雰囲気が特に好ましい。また、常圧とは大気の標準状態近傍における圧力のことであり、約25℃近傍の温度、絶対圧で101.3kPa近傍の大気圧条件のことである。測定の雰囲気が前記以外では、測定中にPPS樹脂の酸化等が起こったり、実際にPPS樹脂の成形加工で用いられる雰囲気と大きく異なるなど、PPS樹脂の実際の使用条件に即した測定になり得ない可能性が生じる。
また、△Wrの測定においては、50℃から330℃以上の任意の温度まで昇温速度20℃/分で昇温して熱重量分析を行う。好ましくは50℃で1分間ホールドした後に昇温速度20℃/分で昇温して熱重量分析を行う。この温度範囲はポリフェニレンスルフィド樹脂を実使用する際に頻用される温度領域であり、また、固体状態のPPSを溶融させ、その後任意の形状に成形する際に頻用される温度領域でもある。このような実使用温度領域における重量減少率は、実使用時のPPS樹脂からのガス発生量や成形加工の際の口金や金型などへの付着成分量などに関連する。従って、このような温度範囲における重量減少率が少ないPPS樹脂の方が品質の高い優れたPPS樹脂であるといえる。△Wrの測定は約10mgmg程度の試料量で行うことが望ましく、またサンプルの形状は約2mm以下の細粒状であることが望ましい。
本発明の実施形態で用いる(A’)PPS樹脂の加熱時の重量減少率が前記式(1)を満足するようなきわめて優れた熱重量特性を発現する理由は現時点定かではないが、本発明の実施形態で用いる(A’)PPS樹脂はPPS成分以外の不純物成分の含有量が少ないことが奏功し、著しく少ない重量減少率を発現するものと推測している。
この様に前記式(1)の特徴を有する(A’)PPS樹脂は、後述するように環式ポリフェニレンスルフィドを含むポリフェニレンスルフィドプレポリマーを加熱して高重合度体に転化させることによって製造することが好ましい。高重合度体への転化に関しては後で詳述するが、ポリフェニレンスルフィドプレポリマーを高重合度体へ転化せしめる操作に処した後に得られるPPS樹脂に含有される環式PPSの重量分率が40%以下、好ましくは25%以下、より好ましくは15%以下であるPPS樹脂は、前述の△Wrの値が特に小さくなるため好ましい。環式PPSの重量分率この値が前記範囲を超える場合には△Wrの値が大きくなる傾向にあり、この原因は現時点定かではないが、PPS樹脂の含有する環式PPSが加熱時に一部揮散するためと推察している。
なお、本発明で用いる(A’)ポリフェニレンスルフィド樹脂の特徴である、加熱した際の重量減少率が前記式(1)を満たす場合、(A’)PPS樹脂の重量平均分子量、分散度の範囲および/またはアルカリ金属含有量から選択される条件は、必ずしも前記した範囲内である必要はなく、前述したように環式PPSを一定量含んでいるPPS樹脂などでも前記式(1)の熱重量特性を満たすことが可能である。ただし、PPS樹脂の重量平均分子量及び分散度の範囲が前記範囲内である場合、および/またはPPSのアルカリ金属含有量から選択される条件が前記した範囲内である場合には、加熱した際の重量減少が特に少なくなる傾向にあり望ましい。
上述の様に本発明の実施形態で用いる(A’)PPS樹脂は、昇温した際の加熱時の重量減少率減量△Wrが少ないという優れた特徴を有するが、任意のある一定温度で(A’)PPS樹脂を保持した際の、加熱の前後を比較した重量の減少率(加熱減量)も少ないという優れた特徴を有する傾向がある。
また、本発明で用いる(A’)PPS樹脂は、加熱した際のラクトン型化合物および/またはアニリン型化合物の発生量が(A)PPS樹脂よりも著しく少ない特徴も有する。ここでラクトン型化合物とは、例えばβ−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、β−ペンタノラクトン、β−ヘキサノラクトン、β−ヘプタノラクトン、β−オクタノラクトン、β−ノナラクトン、β−デカラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ペンタノラクトン、γ−ヘキサノラクトン、γ−ヘプタノラクトン、γ−オクタラクトン、γ−ノナラクトン、γ−デカラクトン、δ−ペンタノラクトン、δ−ヘキサノラクトン、δ−ヘプタノラクトン、δ−オクタノラクトン、δ−ノナラクトン、およびδ−デカラクトンなどが例示できる。、また、アニリン型化合物とは、アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N−エチルアニリン、N−メチル−N−エチルアニリン、4−クロロ−アニリン、4−クロロ−N−メチルアニリン、4−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、4−クロロ−N−エチルアニリン、4−クロロ−N−メチル−N−エチルアニリン、3−クロロ−アニリン、3−クロロ−N−メチルアニリン、3−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、3−クロロ−N−エチルアニリン、および3−クロロ−N−メチル−N−エチルアニリンなどが例示できる。
PPS樹脂を加熱した際のラクトン型化合物及び/またはアニリン型化合物の発生は、成形加工時の樹脂の発泡や金型汚れ等の要因となり成形加工性を悪化させることのみならず周辺環境の汚染の要因にもなるため、できるだけ少なくすることが望まれており、(A’)PPS樹脂のラクトン型化合物の発生量は、加熱を行う前のPAS重量基準でラクトン型化合物の発生量が好ましくは500ppm以下、より好ましくは300ppm、更に好ましくは100ppm以下、よりいっそう好ましくは50ppm以下が望ましい。同様にアニリン型化合物の発生量は、好ましくは300ppm以下、より好ましくは100ppm、更に好ましくは50ppm以下、よりいっそう好ましくは30ppm以下が望ましい。なお、PAS樹脂を加熱した際のラクトン型化合物及び/またはアニリン型化合物の発生量を評価する方法としては、非酸化性雰囲気下320℃で60分処理した際の発生ガスを、ガスクロマトグラフィーを用いて成分分割して定量する方法が例示できる。
本発明で用いる(A’)PPS樹脂の加熱時にこれら化合物の発生量が(A)PPS樹脂よりも少ない理由は現時点定かでは無いが、後述する好ましい製造方法で用いるポリフェニレンスルフィドプレポリマーが環式ポリフェニレンスルフィドを少なくとも50重量%含む純度の高いものであることが、加熱した際にラクトン型化合物及び/またはアニリン型化合物を発生する不純物の含有量が少ないことに寄与していると推測している。
以下に、本発明に用いる(A)PPS樹脂の製造方法について説明するが、上記構造の(A)PPS樹脂が得られれば下記方法に限定されるものではない。
まず、製造方法において使用するポリハロゲン芳香族化合物、スルフィド化剤、重合溶媒、分子量調節剤、重合助剤および重合安定剤の内容について説明する。
[ポリハロゲン化芳香族化合物]
ポリハロゲン化芳香族化合物とは、1分子中にハロゲン原子を2個以上有する化合物をいう。具体例としては、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロ-p-キシレン、1,4−ジブロモベンゼン、1,4−ジヨードベンゼン、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼンなどのポリハロゲン化芳香族化合物が挙げられ、好ましくはp−ジクロロベンゼンが用いられる。また、異なる2種以上のポリハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて共重合体とすることも可能であるが、p−ジハロゲン化芳香族化合物を主要成分とすることが好ましい。
ポリハロゲン化芳香族化合物の使用量は、加工に適した粘度の(A)PPS樹脂を得る点から、スルフィド化剤1モル当たり0.9から2.0モル、好ましくは0.95から1.5モル、更に好ましくは1.005から1.2モルの範囲が例示できる。
[スルフィド化剤]
スルフィド化剤としては、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。
アルカリ金属硫化物の具体例としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
アルカリ金属水硫化物の具体例としては、例えば水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化リチウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも水硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属水硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物からアルカリ金属硫化物を調整し、これを重合槽に移して用いることができる。
あるいは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素から反応系においてin situで調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素からアルカリ金属硫化物を調整し、これを重合槽に移して用いることができる。
仕込みスルフィド化剤の量は、脱水操作などにより重合反応開始前にスルフィド化剤の一部損失が生じる場合には、実際の仕込み量から当該損失分を差し引いた残存量を意味するものとする。
なお、スルフィド化剤と共に、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物を併用することも可能である。アルカリ金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を好ましいものとして挙げることができ、アルカリ土類金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどが挙げられ、なかでも水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。
スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいが、この使用量はアルカリ金属水硫化物1モルに対し0.95から1.20モル、好ましくは1.00から1.15モル、更に好ましくは1.005から1.100モルの範囲が例示できる。
[重合溶媒]
重合溶媒としては有機極性溶媒を用いるのが好ましい。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホキシドなどに代表されるアプロチック有機溶媒、およびこれらの混合物などが挙げられ、これらはいずれも反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでも、特にN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略記することもある)が好ましく用いられる。
有機極性溶媒の使用量は、スルフィド化剤1モル当たり2.0モルから10モル、好ましくは2.25から6.0モル、より好ましくは2.5から5.5モルの範囲が選ばれる。
[分子量調節剤]
生成する(A)PPS樹脂の末端を形成させるか、あるいは重合反応や分子量を調節するなどのために、モノハロゲン化合物(必ずしも芳香族化合物でなくともよい)を、上記ポリハロゲン化芳香族化合物と併用することができる。
[重合助剤]
比較的高重合度の(A)PPS樹脂をより短時間で得るために重合助剤を用いることも好ましい態様の一つである。ここで重合助剤とは得られる(A)PPS樹脂の粘度を増大させる作用を有する物質を意味する。このような重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸塩、水、アルカリ金属塩化物、有機スルホン酸塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩などが挙げられる。これらは単独であっても、また2種以上を同時に用いることもできる。なかでも、有機カルボン酸塩、水、およびアルカリ金属塩化物が好ましく、さらに有機カルボン酸塩としてはアルカリ金属カルボン酸塩が、アルカリ金属塩化物としては塩化リチウムが好ましい。
上記アルカリ金属カルボン酸塩とは、一般式R(COOM)n(式中、Rは、炭素数1〜20を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基である。Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選ばれるアルカリ金属である。nは1〜3の整数である。)で表される化合物である。アルカリ金属カルボン酸塩は、水和物、無水物または水溶液としても用いることができる。アルカリ金属カルボン酸塩の具体例としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、p−トルイル酸カリウム、およびそれらの混合物などを挙げることができる。
アルカリ金属カルボン酸塩は、有機酸と、水酸化アルカリ金属、炭酸アルカリ金属塩および重炭酸アルカリ金属塩よりなる群から選ばれる一種以上の化合物とを、ほぼ等化学当量ずつ添加して反応させることにより形成させてもよい。上記アルカリ金属カルボン酸塩の中で、リチウム塩は反応系への溶解性が高く助剤効果が大きいが高価であり、カリウム、ルビジウムおよびセシウム塩は反応系への溶解性が不十分であると思われるため、安価で、重合系への適度な溶解性を有する酢酸ナトリウムが最も好ましく用いられる。
これらアルカリ金属カルボン酸塩を重合助剤として用いる場合の使用量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常0.01モル〜2モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.1〜0.6モルの範囲が好ましく、0.2〜0.5モルの範囲がより好ましい。
また水を重合助剤として用いる場合の添加量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常0.3モル〜15モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.6〜10モルの範囲が好ましく、1〜5モルの範囲がより好ましい。
これら重合助剤は2種以上を併用することももちろん可能であり、例えばアルカリ金属カルボン酸塩と水を併用すると、それぞれより少量で高分子量化が可能となる。
これら重合助剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、重合助剤としてアルカリ金属カルボン酸塩を用いる場合は前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することが、添加が容易である点からより好ましい。また水を重合助剤として用いる場合は、ポリハロゲン化芳香族化合物を仕込んだ後、重合反応途中で添加することが効果的である。
[重合安定剤]
重合反応系を安定化し、副反応を防止するために、重合安定剤を用いることもできる。重合安定剤は、重合反応系の安定化に寄与し、望ましくない副反応を抑制する。副反応の一つの目安としては、チオフェノールの生成が挙げられ、重合安定剤の添加によりチオフェノールの生成を抑えることができる。重合安定剤の具体例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、およびアルカリ土類金属炭酸塩などの化合物が挙げられる。そのなかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。上述のアルカリ金属カルボン酸塩も重合安定剤として作用するので、重合安定剤の一つに入る。また、スルフィド化剤としてアルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいことを前述したが、ここでスルフィド化剤に対して過剰となるアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。
これら重合安定剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合安定剤は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対して、通常0.02〜0.2モル、好ましくは0.03〜0.1モル、より好ましくは0.04〜0.09モルの割合で使用することが好ましい。この割合が少ないと安定化効果が不十分であり、逆に多すぎても経済的に不利益であったり、ポリマー収率が低下する傾向となる。
重合安定剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することが容易である点からより好ましい。
次に、本発明に用いる(A)PPS樹脂の好ましい製造方法について、前工程、重合反応工程、回収工程、および後処理工程と、順を追って具体的に説明するが、勿論この方法に限定されるものではない。
[前工程]
(A)PPS樹脂の製造方法において、スルフィド化剤は通常水和物の形で使用されるが、ポリハロゲン化芳香族化合物を添加する前に、有機極性溶媒とスルフィド化剤を含む混合物を昇温し、過剰量の水を系外に除去することが好ましい。
また、上述したように、スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで、あるいは重合槽とは別の槽で調製されるスルフィド化剤も用いることができる。この方法には特に制限はないが、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜150℃、好ましくは常温から100℃の温度範囲で、有機極性溶媒にアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を加え、常圧または減圧下、少なくとも150℃以上、好ましくは180〜260℃まで昇温し、水分を留去させる方法が挙げられる。この段階で重合助剤を加えてもよい。また、水分の留去を促進するために、トルエンなどを加えて反応を行ってもよい。
重合反応における、重合系内の水分量は、仕込みスルフィド化剤1モル当たり0.3〜10.0モルであることが好ましい。ここで重合系内の水分量とは重合系に仕込まれた水分量から重合系外に除去された水分量を差し引いた量である。また、仕込まれる水は、水、水溶液、結晶水などのいずれの形態であってもよい。
[重合反応工程]
有機極性溶媒中でスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物とを200℃以上290℃未満の温度範囲内で反応させることにより(A)PPS樹脂を製造する。
重合反応工程を開始するに際しては、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜240℃、好ましくは100〜230℃の温度範囲で、有機極性溶媒とスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物を混合する。この段階で重合助剤を加えてもよい。これらの原料の仕込み順序は、順不同であってもよく、同時であってもさしつかえない。
かかる混合物を通常200℃〜290℃の範囲に昇温する。昇温速度に特に制限はないが、通常0.01〜5℃/分の速度が選択され、0.1〜3℃/分の範囲がより好ましい。
一般に、最終的には250〜290℃の温度まで昇温し、その温度で通常0.25〜50時間、好ましくは0.5〜20時間反応させる。
最終温度に到達させる前の段階で、例えば200℃〜260℃で一定時間反応させた後、270〜290℃に昇温する方法は、より高い重合度を得る上で有効である。この際、200℃〜260℃での反応時間としては、通常0.25時間から20時間の範囲が選択され、好ましくは0.25〜10時間の範囲が選ばれる。
なお、より高重合度のポリマーを得るためには、複数段階で重合を行うことが有効である場合がある。複数段階で重合を行う際は、245℃における系内のポリハロゲン化芳香族化合物の転化率が、40モル%以上、好ましくは60モル%に達した時点であることが有効である。
なお、ポリハロゲン化芳香族化合物(ここではPHAと略記)の転化率は、以下の式で算出した値である。PHA残存量は、通常、ガスクロマトグラフ法によって求めることができる。
(1)ポリハロゲン化芳香族化合物をアルカリ金属硫化物に対しモル比で過剰に添加した場合
転化率=〔PHA仕込み量(モル)−PHA残存量(モル)〕/〔PHA仕込み量(モル)−PHA過剰量(モル)〕
(2)上記(1)以外の場合
転化率=〔PHA仕込み量(モル)−PHA残存量(モル)〕/〔PHA仕込み量(モル)〕
[回収工程]
(A)PPS樹脂の製造方法においては、重合終了後に、重合体、溶媒などを含む重合反応物から固形物を回収する。回収方法については、公知の如何なる方法を採用しても良い。
例えば、重合反応終了後、徐冷して粒子状のポリマーを回収する方法を用いても良い。この際の徐冷速度には特に制限は無いが、通常0.1℃/分〜3℃/分程度である。徐冷工程の全行程において同一速度で徐冷する必要はなく、ポリマー粒子が結晶化析出するまでは0.1〜1℃/分、その後1℃/分以上の速度で徐冷する方法などを採用しても良い。
また上記の回収を急冷条件下に行うことも好ましい方法の一つであり、この回収方法の好ましい一つの方法としてはフラッシュ法が挙げられる。フラッシュ法とは、重合反応物を高温高圧(通常250℃以上、8kg/cm2以上)の状態から常圧もしくは減圧の雰囲気中へフラッシュさせ、溶媒回収と同時に重合体を粉末状にして回収する方法であり、ここでいうフラッシュとは、重合反応物をノズルから噴出させることを意味する。フラッシュさせる雰囲気は、具体的には例えば常圧中の窒素または水蒸気が挙げられ、その温度は通常150℃〜250℃の範囲が選ばれる。
[後処理工程]
(A)PPS樹脂は、上記重合、回収工程を経て生成した後、酸処理、熱水処理、有機溶媒による洗浄、アルカリ金属やアルカリ土類金属処理を施されたものであってもよい。
酸処理を行う場合は次のとおりである。(A)PPS樹脂の酸処理に用いる酸は、(A)PPS樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、珪酸、炭酸およびプロピル酸などが挙げられ、なかでも酢酸および塩酸がより好ましく用いられるが、硝酸のような(A)PPS樹脂を分解、劣化させるものは好ましくない。
酸処理の方法は、酸または酸の水溶液に(A)PPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。例えば、酢酸を用いる場合、PH4の水溶液を80〜200℃に加熱した中にPPS樹脂粉末を浸漬し、30分間撹拌することにより十分な効果が得られる。処理後のPHは4以上例えばPH4〜8程度となっても良い。酸処理を施された(A)PPS樹脂は残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。洗浄に用いる水は、酸処理による(A)PPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で、蒸留水、脱イオン水であることが好ましい。
熱水処理を行う場合は次のとおりである。(A)PPS樹脂を熱水処理するにあたり、熱水の温度を100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上、特に好ましくは170℃以上とすることが好ましい。100℃未満では(A)PPS樹脂の好ましい化学的変性の効果が小さいため好ましくない。
熱水洗浄による(A)PPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するため、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作に特に制限は無く、所定量の水に所定量の(A)PPS樹脂を投入し、圧力容器内で加熱、撹拌する方法、連続的に熱水処理を施す方法などにより行われる。(A)PPS樹脂と水との割合は、水の多い方が好ましいが、通常、水1リットルに対し、(A)PPS樹脂200g以下の浴比が選ばれる。
また、処理の雰囲気は、末端基の分解が好ましくないので、これを回避するため不活性雰囲気下とすることが望ましい。さらに、この熱水処理操作を終えた(A)PPS樹脂は、残留している成分を除去するため温水で数回洗浄するのが好ましい。
有機溶媒で洗浄する場合は次のとおりである。(A)PPS樹脂の洗浄に用いる有機溶媒は、(A)PPS樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホラスアミド、ピペラジノン類などの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、パークロルエチレン、モノクロルエタン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、パークロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒およびベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒のうちでも、N−メチル−2−ピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどの使用が特に好ましい。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。
有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中に(A)PPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒で(A)PPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなる程洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分効果が得られる。圧力容器中で、有機溶媒の沸点以上の温度で加圧下に洗浄することも可能である。また、洗浄時間についても特に制限はない。洗浄条件にもよるが、バッチ式洗浄の場合、通常5分間以上洗浄することにより十分な効果が得られる。また連続式で洗浄することも可能である。
アルカリ金属、アルカリ土類金属処理する方法としては、上記前工程の前、前工程中、前工程後にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法、重合行程前、重合行程中、重合行程後に重合釜内にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法、あるいは上記洗浄工程の最初、中間、最後の段階でアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法などが挙げられる。中でももっとも容易な方法としては、有機溶剤洗浄や、温水または熱水洗浄で残留オリゴマーや残留塩を除いた後にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法が挙げられる。アルカリ金属、アルカリ土類金属は、酢酸塩、水酸化物、炭酸塩などのアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンの形でPPS中に導入するのが好ましい。また過剰のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩は温水洗浄などにより取り除く方が好ましい。上記アルカリ金属、アルカリ土類金属導入の際のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン濃度としてはPPS1gに対して0.001mmol以上が好ましく、0.01mmol以上がより好ましい。温度としては、50℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましく、90℃以上が特に好ましい。上限温度は特にないが、操作性の観点から通常280℃以下が好ましい。浴比(乾燥PPS重量に対する洗浄液重量)としては0.5以上が好ましく、3以上がより好ましく、5以上が更に好ましい。
本発明においては、成形品外観を向上させる観点で、有機溶媒洗浄と80℃程度の温水または前記した熱水洗浄を数回繰り返すことにより、曇りや表面固着などの原因となる残留オリゴマーを除去する方法が好ましい。また、相溶化剤である(C)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物との反応性が向上する観点から、酸処理する方法が好ましい。
その他、(A)PPS樹脂は、重合終了後に酸素雰囲気下においての加熱および過酸化物などの架橋剤を添加しての加熱による熱酸化架橋処理により高分子量化して用いることも可能である。
熱酸化架橋による高分子量化を目的として乾式熱処理する場合には、その温度は160〜260℃が好ましく、170〜250℃の範囲がより好ましい。また、酸素濃度は5体積%以上、更には8体積%以上とすることが望ましい。酸素濃度の上限には特に制限はないが、50体積%程度が限界である。処理時間は、0.5〜100時間が好ましく、1〜50時間がより好ましく、2〜25時間がさらに好ましい。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よく、しかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
また、熱酸化架橋を抑制し、揮発分除去を目的として乾式熱処理を行うことが可能である。その温度は130〜250℃が好ましく、160〜250℃の範囲がより好ましい。また、この場合の酸素濃度は5体積%未満、更には2体積%未満とすることが望ましい。処理時間は、0.5〜50時間が好ましく、1〜20時間がより好ましく、1〜10時間がさらに好ましい。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よく、しかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
本発明に用いる(A)PPS樹脂は、優れた表面平滑性、耐熱性を得るために、高温剛性に優れる熱酸化架橋処理により高分子量化したPPS樹脂と残留オリゴマーの少ない直鎖状PPS樹脂を混合して使用しても良いし、溶融粘度の異なる複数の(A)PPS樹脂を混合して使用することも可能である。
本発明で用いるPPS樹脂としては、上記前工程、重合反応工程、回収工程、後処理工程を要する(A)PPS樹脂を製造する方法以外に、下記に後述するような製造方法を用いることで、より好ましい(A’)PPS樹脂を得ることが可能であるが、勿論この方法に限定されるものではない。また上記(A)PPS樹脂と(A’)PPS樹脂を混合して使用することも可能である。
本発明の実施形態の(A’)PPS樹脂の製造方法としては、環式ポリフェニレンスルフィドを少なくとも50重量%以上含み、且つ重量平均分子量が10,000未満のポリフェニレンスルフィドプレポリマーを加熱して重量平均分子量10,000以上の高重合度体に転化させることによって製造する方法ことが例示できる。この方法によれば、容易に、前述した特性を有する本発明の実施形態で用いる(A’)PPS樹脂を得ることができる。
<環式ポリフェニレンスルフィド>
本発明の実施形態で用いる(A’)ポリフェニレンスルフィド樹脂の好ましい製造方法における環式ポリフェニレンスルフィドとしては、下記一般式(I)で表される、m=4〜20の整数で表される環式ポリフェニレンスルフィド(以下、環式PPSと略すこともある)を使用することができる。ここで、mは4〜20の整数であり、用いる環式ポリフェニレンスルフィドは、異なるmを有する複数種類の環式ポリフェニレンスルフィドは4〜20の混合物でもよい。
また、環式ポリフェニレンスルフィドは、単一の繰り返し数を有する単独化合物、異なる繰り返し数を有する環式ポリフェニレンスルフィドの混合物のいずれでもよい良い。ただしが、異なる繰り返し数を有する環式ポリフェニレンスルフィドの混合物の方が単一の繰り返し数を有する単独化合物よりも溶融解温度が低い傾向があり、異なる繰り返し数を有する環式ポリフェニレンスルフィドの混合物の使用は後述する高重合度体への転化を行う際の温度をより低くできるため好ましい。
<ポリフェニレンスルフィドプレポリマー>
本発明の実施形態で用いる(A’)ポリフェニレンスルフィド樹脂の好ましい製造方法では、前記したごとき環式ポリフェニレンスルフィドを含むポリフェニレンスルフィドプレポリマーを加熱して高重合度体に転化させることを特徴とするが、ここで用いるポリフェニレンスルフィドプレポリマーは、環式ポリフェニレンスルフィドを少なくとも50重量%以上含むものであり、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、更に好ましくは90重量%以上含むものが好ましい。また、ポリフェニレンスルフィドプレポリマーに含まれる環式ポリフェニレンスルフィドの含有率の上限値には特に制限は無いが、98重量%以下が好ましい範囲として例示できる。通常、ポリフェニレンスルフィドプレポリマーにおける環式ポリフェニレンスルフィドの重量比率が高いほど、加熱後に得られるPPSの重合度および溶融粘度が高くなる傾向にある。すなわち、本発明の実施形態の(A’)ポリフェニレンスルフィド樹脂の製造法においては、ポリフェニレンスルフィドプレポリマーにおける環式ポリフェニレンスルフィドの存在比率を調整することで、得られるPPSの重合度および溶融粘度を容易に調整することが可能である。また、ポリフェニレンスルフィドプレポリマーにおける環式ポリフェニレンスルフィドの重量比率が前記した上限値を超えると、ポリフェニレンスルフィドプレポリマーの溶融解温度が高くなる傾向にあるため、ポリフェニレンスルフィドプレポリマーにおける環式ポリフェニレンスルフィドの重量比率を前記範囲にすることは、ポリフェニレンスルフィドプレポリマーを高重合度体へ転化する際の温度をより低くできるため好ましい。
ポリフェニレンスルフィドプレポリマーにおける環式ポリフェニレンスルフィド以外の成分は、線状のポリフェニレンスルフィドオリゴマーであることが特に好ましい。ここで線状のポリフェニレンスルフィドオリゴマーとは、式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位としておりする、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有するホモオリゴマーまたはコオリゴマーである。Arとしては前記した式(a)〜式(k)などであらわされる単位などがあるが、なかでも式(a)が特に好ましい。線状のポリアリーレンスルフィドオリゴマーはこれら繰り返し単位を主要構成単位とする限り、前記した式(l)〜式(n)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−の単位1モルに対して0〜1モル%の範囲であることが好ましい。また、線状のポリフェニレンスルフィドオリゴマーは上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物のいずれかであってもよい。
このような環式ポリフェニレンスルフィド以外の成分これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィドオリゴマー、ポリフェニレンスルフィドスルホンオリゴマー、ポリフェニレンスルフィドケトンオリゴマー、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましい線状のポリフェニレンスルフィドオリゴマーとしては、ポリマーの主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位を80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上含有する線状のポリフェニレンスルフィドオリゴマーが挙げられる。
ポリフェニレンスルフィドプレポリマーが含有する線状ポリフェニレンスルフィド量は、ポリフェニレンスルフィドプレポリマーが含有する環式ポリフェニレンスルフィドよりも少ないことが特に好ましい。即ちポリフェニレンスルフィドプレポリマー中の環式ポリフェニレンスルフィドと線状ポリフェニレンスルフィドの重量比(環式ポリフェニレンスルフィド/線状ポリアリーレンスルフィド)は1以上であることが好ましく、2.3以上がより好ましく、4以上が更に好ましく、9以上がよりいっそう好ましい。く、このようなポリフェニレンスルフィドプレポリマーを用いることで、重量平均分子量が10,000以上のポリフェニレンスルフィドを容易に得ることが可能になである。従って、ポリフェニレンスルフィドプレポリマー中の環式ポリフェニレンスルフィドと線状ポリフェニレンスルフィドの重量比の値が大きいほど、本発明の実施形態の(A’)ポリフェニレンスルフィド樹脂の好ましい製造方法により得られるPPSの重量平均分子量は大きくなる傾向にあり、よってこの重量比に特に上限は無いが、該重量比が100を越えるポリフェニレンスルフィドプレポリマーを得るためには、ポリフェニレンスルフィドプレポリマー中の線状PPS含有量を著しく低減する必要があり、これには多大の労力を要する。本発明の実施形態の(A’)ポリフェニレンスルフィド樹脂の好ましい製造方法によれば、該重量比が100以下のポリフェニレンスルフィドプレポリマーを用いても十分な高分子量PPSを容易に得ることが可能である。
本発明の実施形態で用いる(A’)ポリフェニレンスルフィド樹脂の好ましい製造方法に用いるポリフェニレンスルフィドプレポリマーの分子量の上限値は、重量平均分子量で10,000未満であり、5,000以下が好ましく、3,000以下が更に好ましい。く、一方、下限値は、重量平均分子量で300以上が好ましく、400以上が好ましく、500以上が更に好ましい。
本発明の実施形態で用いる(A’)ポリフェニレンスルフィド樹脂は高純度であることが特徴であり、製造に用いられるポリフェニレンスルフィドプレポリマーも高純度であることが好ましい。したがって、ポリフェニレンスルフィドプレポリマーにおいて、不純物であるアルカリ金属含有量は、重量比で700ppm未満が好ましく、500ppm以下が更に好ましく、300ppm以下がよりいっそう好ましい。本発明の実施形態で用いる(A’)ポリフェニレンスルフィド樹脂の製造に際し、ポリフェニレンスルフィドプレポリマーを加熱して高重合度体に転化する方法を用いる場合、得られるPPSのアルカリ金属含有量は、通常、ポリフェニレンスルフィドプレポリマーのアルカリ金属含有量に依存するため、ポリフェニレンスルフィドプレポリマーのアルカリ金属含有量が前記範囲を超えると、得られるPPSのアルカリ金属含有量が本発明の実施形態の(A’)ポリフェニレンスルフィド樹脂のアルカリ金属含有量の範囲を超える恐れが生じる。ここでポリフェニレンスルフィドプレポリマーのアルカリ金属含有量とは、例えばポリフェニレンスルフィドプレポリマーを電気炉等を用いて焼成した残渣である灰分中のアルカリ金属から算出される値であり、前記灰分を例えばイオンクロマト法や原子吸光法により分析することで定量することができる。
なお、アルカリ金属とは周期律表第IA属の、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムのことを指すが、本発明の実施形態のポリアリーレンスルフィドプレポリマーはナトリウム以外のアルカリ金属を含まないことが好ましい。
また、ポリフェニレンスルフィドプレポリマーには加熱による高重合度体への転化に際して、転化を促進する各種触媒成分を使用することも可能である。このような触媒成分としてはイオン性化合物やラジカル発生能を有する化合物が例示できる。イオン性化合物としては、たとえばチオフェノールのナトリウム塩等、硫黄のアルカリ金属塩が例示できる。、また、ラジカル発生能を有する化合物としては、たとえば加熱により硫黄ラジカルを発生する化合物を例示でき、より具体的にはジスルフィド結合を含有する化合物が例示できる。但し、このような場合でもポリフェニレンスルフィドプレポリマーのアルカリ金属含有量、アルカリ金属種、含有ハロゲン種は前記した条件に準じることが望ましい。く、また、ポリフェニレンスルフィドプレポリマーを加熱して高重合度体に転化させる反応を、反応系内のアルカリ金属量が重量比で好ましくは700ppm未満、より好ましくは500ppm以下、更に好ましくは300ppm以下であって、なお且つ、反応系内の全イオウ重量に対するジスルフィド重量が1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.3重量%未満、更に好ましくは0.1重量%未満として行うことが望ましい。好ましく、これにより本発明の実施形態の(A’)ポリフェニレンスルフィド樹脂を得ることが容易となる。なお、各種触媒成分を使用する場合、触媒成分は通常はPASに取り込まれ、得られるPPSは触媒成分を含有するものになることが多い。特に触媒成分としてアルカリ金属及び/または他の金属成分を含有するイオン性の化合物を用いた場合、これに含まれる金属成分の大部分は得られるPPS中に残存する傾向が強い。また、各種触媒成分を使用して得られたPPSは、前記したPPSを加熱した際の重量減少率が増大する傾向にある。従って、より純度の高いPPSを所望する場合および/または加熱した際の重量減少率の少ないPPSを所望する場合には、触媒成分の使用をできるだけ少なくする、好ましくは使用しないことが望まれる。
<ポリフェニレンスルフィドプレポリマーの製造方法>
前記ポリフェニレンスルフィドプレポリマーを得る方法としては例えば以下の方法が挙げられる。
(1)少なくともポリハロゲン化芳香族化合物、スルフィド化剤および有機極性溶媒を含有する混合物を加熱してポリアリーレンスルフィド樹脂を重合することによりで、80meshふるい(目開き0.125mm)で分離される顆粒状PPS樹脂、重合で生成したPPS成分であって前記顆粒状PPS樹脂以外のPPS成分(ポリフェニレンスルフィドオリゴマーと称する)、有機極性溶媒、水、およびハロゲン化アルカリ金属塩を含む混合物を調製する。その後し、この混合物ここに含まれるポリフェニレンスルフィドオリゴマーを分離回収し、これを精製操作に処すことでポリフェニレンスルフィドプレポリマーを得る方法。
(2)少なくともポリハロゲン化芳香族化合物、スルフィド化剤および有機極性溶媒を含有する混合物を加熱してポリフェニレンスルフィド樹脂を重合する。して、重合終了後に公知の方法によって有機極性溶媒の除去を行い、ポリフェニレンスルフィド樹脂、水、およびハロゲン化アルカリ金属塩を含む混合物を調製し、これを公知の方法で精製することにより得られるポリフェニレンスルフィドプレポリマーを含むポリフェニレンスルフィド樹脂を得て、得られたポリフェニレンスルフィド樹脂を貧溶媒を用いて再沈させて、ポリフェニレンスルフィドプレポリマーを回収する方法。
<ポリフェニレンスルフィドプレポリマーの高重合度体への転化>
前記した本発明の実施形態の(A’)ポリフェニレンスルフィド樹脂は、前記ポリフェニレンスルフィドプレポリマーを加熱して高重合度体に転化させる方法によって製造することが好ましい。この加熱の温度は前記ポリフェニレンスルフィドプレポリマーが溶融解する温度であることが好ましく、このような温度条件であれば特に制限は無い。加熱温度がポリフェニレンスルフィドプレポリマーの溶融解温度未満ではPPSの高重合度体を得るのに長時間が必要となる傾向がある。なお、ポリフェニレンスルフィドプレポリマーが溶融解する温度は、ポリフェニレンスルフィドプレポリマーの組成や分子量、また、加熱時の環境により変化するため、一意的に示すことはできないが、例えばポリフェニレンスルフィドプレポリマーを示差走査型熱量計で分析することで溶融解温度を把握することが可能である。但し、加熱時の温度が高すぎると、ポリフェニレンスルフィドプレポリマー間、加熱により生成した高重合度体PPS間、及び高重合度体PPSとポリフェニレンスルフィドプレポリマー間などでの架橋反応や分解反応に代表される好ましくない副反応が生じやすくなる傾向にあり、得られるPPS樹脂の特性が低下する場合がある。そのため、このような好ましくない副反応が顕著に生じる温度は避けることが望ましい。加熱温度としては180以上が例示でき、好ましくは200℃以上、より好ましくは250℃以上である。また、加熱温度としては〜400℃以下が例示でき、好ましくは200〜380℃以下、より好ましくは250〜360℃以下である。
前記加熱を行う時間は使用するポリフェニレンスルフィドプレポリマーにおける環式ポリフェニレンスルフィドの含有率、m数、及び分子量などの各種特性、およびまた、加熱の温度等の条件によって異なるため一様には規定できないが、前記した好ましくない副反応がなるべく起こらないように設定することが好ましい。加熱時間としては0.05時間以上が例示でき、0.1時間以上が好ましい。また、加熱時間としては〜100時間以下が例示でき、0.1〜20時間以下が好ましく、0.1〜10時間以下がより好ましい。加熱時間が0.05時間未満では、ポリフェニレンスルフィドプレポリマーの高重合度体PPSへの転化が不十分になりやすい。また、加熱時間が100時間を超えると、好ましくない副反応によって得られるPPS樹脂の特性への悪影響が顕在化する可能性が高くなる傾向にあるのみならず、経済的にも不利益を生じる場合がある。
ポリフェニレンスルフィドプレポリマーの加熱による高重合度体への転化は、通常溶媒の非存在下で行うが、溶媒の存在下で行うことも可能である。溶媒としては、ポリフェニレンスルフィドプレポリマーの加熱による高重合度体への転化の阻害や生成した高重合度体PPSの分解や架橋など好ましくない副反応を実質的に引き起こさないものであれば特に制限はなく、溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、およびジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、およびアセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、およびテトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、およびクロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、およびポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、ベンゼン、トルエン、およびキシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などがあげられる。また、二酸化炭素、窒素、および水等の無機化合物を、超臨界流体状態として溶媒に用いることも可能である。これらの溶媒は1種類または2種類以上の混合物として使用することができる。
前記、ポリフェニレンスルフィドプレポリマーの加熱による高重合度体への転化は、通常の重合反応装置を用いる方法で行うのはもちろんのこと、成形品を製造する型内で行ってもよい良いし、押出機や溶融混練機を用いて行うなど、加熱機構を具備した装置であれば特に制限無く行うことが可能であり、バッチ方式、連続方式など公知の方法が採用できる。ポリフェニレンスルフィドプレポリマーの加熱による高重合度体への転化の際の雰囲気は非酸化性雰囲気で行うことが好ましく、減圧条件下で行うことも好ましい。また、減圧条件下で行う場合、反応系内の雰囲気を一度非酸化性雰囲気としてから減圧条件にすることが好ましい。これによりポリフェニレンスルフィドプレポリマー間、加熱により生成した高重合度体PPS間、及び高重合度体PPSとポリフェニレンスルフィドプレポリマー間などで架橋反応や分解反応等の好ましくない副反応の発生を抑制できる傾向にある。なお、非酸化性雰囲気とは、ポリフェニレンスルフィドプレポリマーが接する気相における酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、更に好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気をいう。酸素を実質的に含有しない雰囲気とは、即ち窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることを指す。し、この中でも特に経済性及び取扱いの容易さの面からは窒素雰囲気が好ましい。また、減圧条件下とは、反応を行う系内の圧力が大気圧よりも低いことを指し、上限として50kPa以下が好ましく、20kPa以下がより好ましく、10kPa以下が更に好ましい。系内の圧力の下限としては、0.1kPa以上が例示できる。減圧条件の圧力が好ましい上限を越える場合は、架橋反応など好ましくない副反応が起こりやすくなる傾向にある。り、一方、減圧条件の圧力が好ましい下限未満では、反応温度によっては、ポリフェニレンスルフィドプレポリマーに含まれる分子量の低い環式ポリフェニレンスルフィドが揮散しやすくなる傾向にある。
(B)マイカ
本発明のPPS樹脂組成物は、アマニ油吸油量が67ml/100g以上90ml/100g以下であるマイカを含有する。マイカのアマニ油吸油量が67ml/100g未満であると、PPS樹脂とフィラーの界面密着性向上効果が十分に得られないために機械強度向上効果に乏しく、結果として、PPS樹脂100重量部に対して30重量部を越える多量のマイカを配合しなくてはならず、この場合、流動性が低下すると共に、得られる成形品の表面平滑性も損なわれるため好ましくない。
また、一方でマイカのアマニ油吸油量が90ml/100gを越えると、溶融混練時にマイカ折損が起こりやすくなり、本来のフィラー補強効果が発現せず、機械強度が殆ど向上しないために好ましくない。
流動性を犠牲にしないために、マイカ少量配合でフィラー密着性向上による補強効果を最大限に発揮させるためには、マイカのアマニ油吸油量が67ml/100g以上90ml/100g以下である必要があり、70ml/100g以上87ml/100g以下が好ましく、75ml/100g以上80ml/100g以下がより好ましい範囲として例示できる。
ここで、マイカのアマニ油吸油量は、JISK5101−13−2に準じて測定を行った値を意味し、具体的にはマイカ試料とアマニ油を少量ずつまぜ、ヘラを用いてらせん状に巻くことができる状態になったときの、試料100g当たりのアマニ油使用量を算出する。
また本発明で用いる(B)マイカのアマニ油吸油量はマイカ構造と密接な関係があり、吸油量が大きくなるとマイカ多孔性が向上してPPS樹脂がマイカ内部に入り込みアンカー効果でフィラーとの密着性が向上する反面、同時に溶融混練時にマイカ折損が起こりやすくなりフィラー補強効果も低下することから、本発明に用いる(B)マイカ吸油量コントロールにより、フィラーとの密着性とフィラー補強効果が最大限に発揮したものと推測している。
本発明のPPS樹脂組成物において、吸油量が67ml/100g以上90ml/100g以下であるマイカの含有量は、PPS樹脂100重量部に対して1〜30重量部である。マイカの含有量が1重量部未満であると、機械強度向上が不十分となる。一方、マイカの含有量が30重量部を越えると、流動性、表面平滑性が著しく低下し、材料比重も大きくなってしまうため好ましくない。
高流動、高寸法安定性、高強度化を満足するためには、マイカの含有量は27重量部以下が好ましく、25重量部以下がより好ましく、20重量部以下がさらに好ましい範囲として例示できる。
本発明に用いられるマイカの体積平均粒子径は、フィラー補強効果、表面平滑性を損なわない観点から、5μm以上10μm以下が好ましく、7μm以上9μm以下がさらに好ましい。マイカの体積平均粒子径が10μmより大きくなると本発明に用いる(B)マイカの吸油量67ml/100gを下回ることになり、本来のフィラー密着性向上による高強度化効果が発現しないために好ましくない。一方で、マイカの体積平均粒子径が5μmより小さくなるとフィラー補強効果が大幅に減退するために好ましくない。
ここでいうマイカの体積平均粒子径は、マイカを100mg秤量し、水中に分散させ、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(HORIBA社製LA−300)を用いて求められる。
本発明に用いられる(B)マイカは、アマニ油吸油量、体積平均粒子径以外にアスペクト比を大きくすることでも機械強度がさらに向上するが、この理由についてはマイカ積層によるフィラー補強効果と推測している。ここでいうアスペクト比とは、マイカの体積平均粒子径と数平均厚みを求め、体積平均粒子径(μm)/数平均厚み(μm)により算出した値のことをいう。体積平均粒子径は、マイカを100mg秤量し、水中に分散させ、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(HORIBA社製LA−300)を用いて求められる。また、数平均厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子(株)社製JSM−6360LV)により2000倍の倍率で観察したマイカの画像から無作為に選んだ10個の厚みを測定し、その数平均値を求める。
本発明において使用されるアマニ油吸油量が67ml/100g以上90ml/100g以下であるマイカは、天然に産出される白雲母、黒雲母、金雲母、セリサイト、人工的に製造される合成マイカのいずれでもよい。これらを2種以上含んでもよい。
マイカの製造方法としては、例えば、水流式ジェット粉砕、石臼による湿式摩砕等の湿式粉砕や、乾式ボールミル粉砕、加圧ローラーミル粉砕、気流式ジェットミル粉砕、アトマイザー等の衝撃粉砕機による乾式粉砕などが挙げられる。
また、本発明においては、マイカとPPS樹脂との密着性をさらに向上させる目的でマイカの表面をシランカップリング剤などで処理してもよい。また、不純物の除去、マイカの硬質化を目的に熱処理加工をしたマイカを用いてもよい。
(C)エポキシ基、アミノ基およびイソシアネート基から選ばれる少なくとも1種の基を有するアルコキシシラン化合物
本発明では(A)PPS樹脂と(B)マイカの密着性をさらに向上させる目的で、(C)成分をフィラー密着性改良助剤として添加する必要がある。
エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物などが例示できる。
アミノ基を有するアルコキシシラン化合物の具体例としては、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。
イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物の具体例としては、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリクロロシランなどを例示することができる。
中でも(A)PPS樹脂と(B)マイカの密着性向上効果を最大限に発揮させる上で、エポキシ基を含有するアルコキシシラン化合物が好ましく、さらにイソシアネート基を含有するアルコキシシラン化合物であることがより好ましい。
(C)成分の配合量は、PPS樹脂100重量部に対し、1〜30重量部であることが好ましく、2〜20重量部であることがより好ましく、5〜10重量部であることがさらに好ましい。(C)成分の配合量が1重量部未満では、十分なフィラーとの密着性改良効果を得ることが難しくなる。一方、30重量部を越える範囲では、溶融流動性が著しく阻害されてしまう他、材料コストが上昇してしまうために好ましくない。
(D)炭素数12〜40の脂肪族カルボン酸と多価アルコールとを反応せしめたエステル化合物
本発明では、良離型性付与による成形加工性を向上させることを目的に、(D)成分を離型剤として添加することができる。特に(D)成分は、低ガスと良離型性を高位でバランス化することが可能であり、金型汚れが発生しにくい離型剤として好適な性質を有する。
かかる(D)成分のエステル化合物として、炭素数12〜40の脂肪族カルボン酸と多価アルコールとを反応せしめたエステル化合物を用いる。炭素数12〜40の脂肪族カルボン酸としては、ステアリン酸、オレフィン酸、ペヘン酸、モンタン酸などの長鎖脂肪族カルボン酸があげられ、多価アルコールとしてはエチレングリコール、ペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ポリトリメチロールプロパンなどの多価アルコールがあげられる。これらを反応せしめたエステル化合物を用いることが好ましく、具体的にはエチレングリコールジステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ポリペンタエリスリトールポリステアレート、グリセリントリステアレート、トリメチロールプロパントリステアレート、ポリトリメチロールプロパンポリステアレート、エチレングリコールジモンタネート、ペンタエリスリトールテトラモンタネート、ポリペンタエリスリトールポリモンタネート、グリセリントリモンタネート、トリメチロールプロパントリモンタネート、ポリトリメチロールプロパンポリモンタネートなどが例示できる。
(D)成分の配合量は、PPS樹脂100重量部に対して、0.05〜5重量部であることが好ましく、0.05〜2重量部であることがより好ましい。(d)成分の配合量が0.05重量部未満では十分な離型性改良効果を得ることが難しくなる。一方で、5重量部を越える範囲では、成形品表面へのブリードアウトやガス発生量増加の観点から好ましくない。
(E)繊維状フィラー
本発明における(E)繊維状フィラーは高耐熱性や高寸法安定性を付与することを目的に配合することができる。また本発明に用いる(E)繊維状フィラーとは長さ/直径比が20以上のものと定義する。本発明で用い得る(E)繊維状フィラーとしては、ワラストナイト、ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、炭素繊維、金属繊維、カーボンナノチューブ、鉱物繊維などが挙げられる。ここで本発明に好ましい(E)繊維状フィラーは、一般に短繊維と称される、配合前の繊維長1〜5mm、繊維直径1〜25μmのものであり、このような短繊維充填材を用いることで充填材の分散性の良好な樹脂組成物を得やすくなる傾向にある。また(E)繊維状フィラーをイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用することは、より優れた機械的強度を得る観点から好ましい。
本発明に用いる(E)繊維状フィラーを配合する場合の配合量は(A)ポリフェニレンスルフィド100重量部に対し、50重量部以下の範囲が選択され、1〜30重量部の範囲がより好ましく、5〜20重量部の範囲がさらに好ましい。(E)繊維状フィラーの配合量が30重量部を越えると、表面平滑性が低下し優れた溶融流動性が発現しなくなるために好ましくない。
その他の無機フィラー
本発明のPPS樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲でさらに無機フィラーを配合して使用することも可能である。かかる無機フィラーの具体例としてはフラーレン、タルク、ゼオライト、セリサイト、カオリン、クレー、パイロフィライト、シリカ、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケートなどの珪酸塩、酸化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス粉、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、カーボンブラックおよびシリカ、黒鉛などの非繊維状充填材が用いられ、中でもシリカ、炭酸カルシウム、タルクが好ましく、さらに炭酸カルシウム、タルクが、樹脂成形品の表面平滑性と機械物性のバランスを両立する観点から好ましい。またこれらの無機フィラーは中空であってもよく、さらに2種類以上併用することも可能である。また、これらの無機フィラーをイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用してもよい。
かかる無機フィラーの配合量は、(A)PPS樹脂100重量部に対して、1〜50重量部の範囲が好ましく、2〜30重量部の範囲がより好ましく、5〜20重量部の範囲が更に好ましい。
その他の添加物
さらに、本発明のPPS樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、(A)PPS樹脂以外の樹脂を添加配合しても良い。その具体例としては、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリアリルサルフォン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、エチレン・1−ブテン共重合体などのエポキシ基を含有しないオレフィン系重合体、共重合体などが挙げられる。
また、改質を目的として、以下のような化合物の添加が可能である。ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン系化合物などの可塑剤、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、モンタン酸ワックス類、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミ等の金属石鹸、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物、シリコーン系化合物などの離型剤、次亜リン酸塩などの着色防止剤、(3,9−ビス[2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)などの様なフェノール系酸化防止剤、(ビス(2,4−ジ−クミルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト)などのようなリン系酸化防止剤、その他、水、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、発泡剤などの通常の添加剤を配合することができる。上記化合物は何れも組成物全体の20重量%を越えると(A)PPS樹脂本来の特性が損なわれるため好ましくなく、10重量%以下、更に好ましくは1重量%以下の添加がよい。
樹脂組成物の製造方法
本発明のPPS樹脂組成物は通常溶融混練によって得られる。溶融混練機は、単軸、2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、及びミキシングロールなど通常公知の溶融混練機に供給してPPS樹脂の融解ピーク温度+5〜100℃の加工温度の温度で混練する方法などを代表例として挙げることができる。この際、原料の混合順序には特に制限はなく、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混練し更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後単軸あるいは2軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。また、少量添加剤成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加して成形に供することも勿論可能である。
また本発明の組成物は、配合物を固体状態で錠剤形に圧縮して固め、これを射出成形などの成形に供する方法も採用することができる。
本発明により得られるPPS樹脂組成物は、PPS樹脂本来の特性を損なうことなく、高流動、高寸法安定性、高強度が付与されており、得られた成形品も表面平滑性に優れ、射出成形、射出圧縮成形、ブロー成形用途のみならず、押出成形によりシート、フィルム、繊維及びパイプなどの押出成形品に成形することもできる。
本発明のPPS樹脂組成物の成形加工性、高寸法安定性、高強度を生かす用途として、
例えばセンサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品等に代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)、コンパクトディスク、デジタルビデオディスク等の音声・映像機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品等に代表される家庭、事務電気製品部品;オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品:顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計等に代表される光学機器、精密機械関連部品;水道蛇口コマ、混合水栓、ポンプ部品、パイプジョイント、水量調節弁、逃がし弁、湯温センサー、水量センサー、水道メーターハウジングなどの水廻り部品;バルブオルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター,ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、排気ガスバルブ等の各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、燃料タンク、点火装置ケース、車速センサー、ケーブルライナー等の自動車・車両関連部品、その他各種用途が例示できる。
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
以下の実施例において、材料特性については下記の方法により評価した。
〔棒流動長〕
住友重機械社製射出成形機プロマット40/20を用い、樹脂温度320℃、金型温度130℃、射出速度設定99%、射出圧力設定45%(実際の射出圧力98MPa)とする条件にて、(長さ)150mm×(幅)12.6mm×(厚み)0.5mm(ゲート位置:成形片の幅側、ゲート形状:フィルムゲート)の成形片を連続的に10回射出成形した。得られた成形片それぞれの、ゲート位置側から長手方向における充填末端長さを測定し、その平均値を棒流動長とした。棒流動長の値が大きいほど、高流動性であるといえる。
〔引張試験片の射出成形〕
住友重機械社製射出成形機SE75−DUZを用い、樹脂温度320℃、金型温度130℃とする条件にて、ASTM1号ダンベル試験片を成形した。
〔引張試験〕
前記射出成形したASTM1号ダンベル試験片を支点間距離114mm、引張速度10mm/minの条件でテンシロンUTA2.5T引張試験機を用い、ASTM D638に準じて引張強度および引張伸度を測定した。この値が大きいほど引張特性に優れているといえる。
〔曲げ試験片の射出成形〕
住友重機械社製射出成形機SE75−DUZを用い、樹脂温度320℃、金型温度130℃とする条件にて、(幅)12.5mm×(長さ)130mm×(厚み)3.2mmの曲げ試験片を成形した。
〔曲げ試験〕
前記射出成形した曲げ試験片をスパン間距離100mm、クロスヘッドスピード1.0mm/minの条件で、ASTM D790に準じてテンシロンRTM1T曲げ試験機を用い、曲げ強度および曲げ弾性率を測定した。この値が大きいほど曲げ特性に優れているといえる。
〔衝撃試験片の射出成形〕
住友重機械社製射出成形機SE75−DUZを用い、樹脂温度320℃、金型温度130℃とする条件にて、(幅)12.7mm×(長さ)60mm×(厚み)3.2mmのモールドノッチ付きアイゾット衝撃試験片を成形した。
〔アイゾット衝撃試験〕
前記射出成形したモールドノッチ付きアイゾット衝撃試験片を用いて、ASTM D256に準じてノッチ付きアイゾット衝撃強度を測定した。この値が大きいほど衝撃特性に優れているといえる。
〔表面平滑性評価用プレートの射出成形〕
住友重機械社製射出成形機SE75DUZを用い、樹脂温度320℃、金型温度150℃とする条件にて、(長さ)70mm×(幅)70mm×(厚み)1.0mm(ゲート形状:フィルムゲート、金型鏡面粗度:0.03s)のプレートを成形した。
〔表面平滑性〕
前記射出成形した表面平滑性評価用プレート(ゲート形状:フィルムゲート)について、ミツトヨ(株)製表面粗さ測定器を用い、測定端子を樹脂流動方向(ゲート部→充填末端部)に2cm走査させて、JISB0601に規定されている中心線平均粗さRaを測定し、n=3の平均値を採用した。尚、この値が小さいほど表面平滑性に優れているといえる。
〔材料比重〕
前記射出成形した表面平滑性評価用プレート(ゲート形状:フィルムゲート、金型鏡面粗度:0.03s)を(長さ)30mm×(幅)10mmの大きさに切削加工し、ミラージュ社製電子比重計ED−120Tを用い、水上置換法により比重を測定した。
〔成形収縮率〕
前記射出成形した表面平滑性評価用プレート(フィルムゲート、金型鏡面粗度:0.03s)の流れ方向(MD方向)、直角方向(TD方向)の金型原寸に対する変化量をノギスで測定して成形収縮率を算出し、n=3の平均値を採用した。尚、この値が小さいほど寸法安定性に優れているといえる。
〔PPS樹脂組成物の加熱減量測定〕
配合物を溶融混練し、大気下120℃で8時間乾燥して得られたPPS樹脂組成物ペレットを130℃で3時間予備乾燥した後、約10gをアルミカップに精秤した。これを大気下320℃で2時間処理した際の加熱減量を測定した。加熱減量が少ないほどガス発生量が少ないといえる。
〔IRリフロー試験片の射出成形〕
住友重機械社製射出成形機SE75−DUZを用い、樹脂温度320℃、金型温度130℃とする条件にて、(幅)12.6mm×(長さ)130mm×(厚み)1.5mmのIRリフロー試験片を成形した。
〔表面実装IRリフロー試験〕
前記射出成形したIRリフロー試験片を電子部品のハンダ付け表面実装工程を模擬したIRリフローシミュレーター装置にセットして、図3に示す温度プロファイルにしたがってIRリフロー試験を実施した。そして該試験片のリフロー試験前後の寸法変化量を反り変形量としてn=2で測定した。この数値が小さいほど高温時の寸法変化が小さく、耐IRリフロー性に優れているといえる。
〔離型性評価〕
離型性の指標として、離型時の抵抗力(離型力)を測定した。離型力の具体的な測定方法として、図1、図2に記載した成形品形状となる金型を使用し、住友重機械社製射出成形機SE75DUZを用いて、シリンダ温度320℃、金型温度150℃でその離型力を測定し、比較した。離型力測定にはテクノプラス社製“ロードセル1C−1B”を金型内に挿入し、歪み増幅器には東洋ポールドウィン社製“MD−1031”、記録装置には日置電機製“メモリーハイコーダ8840”を用いて、図1の成形品の底面をφ10のエジェクタピン4本で突き出す際の離型力を測定した。射出時間10秒、冷却時間を10秒とした。離型力の数値が低いと離型性に優れるといえる。
〔金属腐食試験〕
配合物を溶融混練し、大気下120℃で8時間乾燥して得られたPPS樹脂組成物ペレットを130℃で3時間予備乾燥した後、約10gをアルミカップに精秤した。次いで、ガラス製プレートをペレット上に静置し、さらに該プレート上に銅板を置いた後、最後にシャーレをアルミカップ上部に被せて金属腐食試験の前準備を実施した。金属腐食試験サンプルを熱風オーブンで300℃×30分間熱処理した後。該銅板をアルミカップ内から取り出した後、ミツトヨ(株)製表面粗さ測定器を用いて、銅板表面の中心線平均粗さRaをJISB0601に準拠して測定し、n=3の平均値を採用した。熱処理前後の銅板表面Raにより銅板表面Ra変化率を算出し、金属腐食性を評価した。尚、この変化率が小さいほど腐食による金属表面荒れが抑制され、耐腐食性に優れているといえる。
〔金型汚れ性評価〕
図4に記載した成形品のサイズとして最大長さ55mm、幅20mm、厚み2mm、ゲートサイズとして幅2mm、厚み1mm(サイドゲート)、ガスベント部最大長さ20mm、幅10mm、深さ5μmのガス評価用金型で、住友重機械社製射出成形機SE75DUZを用いて、シリンダ温度330℃、金型温度150℃、射出速度100mm/sとして、樹脂組成物ごとの充填時間が0.4秒となるよう射出圧力を50〜80MPa内で設定し、さらに保圧25MPa、保圧速度30mm/s、保圧時間3秒として連続成形を行い、ガスベント部およびキャビティ部に金型汚れが目視確認できるまで実施した。金型汚れが目視確認できた連続ショット数が多いと、金型汚れ性に優れているといえる。
〔溶融滞留安定性評価〕
配合物を溶融混練し、大気下120℃で8時間乾燥して得られたPPS樹脂組成物ペレットを130℃で3時間予備乾燥した後、約15gをアルミカップに精秤した。次いで、精秤した該ペレットを用い、東洋精機社製キャピログラフ(オリフィスL/D=10mm/1mm、測定温度300℃、剪断速度1000/s、酸素雰囲気下)にて溶融滞留時間5分間、30分間の溶融粘度(Pa・s)を測定した。そして、下記数式で定義される溶融粘度変化率を算出した。尚、溶融粘度変化率の値が小さいほど溶融滞留安定性に優れているといえる。
溶融粘度変化率(%)=100(ηa/ηb−1)
ここで、上記数式のηaは溶融滞留時間5分間とした初期溶融粘度を示し、ηbは溶融滞留時間30分間とした溶融滞留後の溶融粘度を示す。
[参考例1](A)PPS樹脂の重合(A−1)
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.37g(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2957.21g(70.97モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11434.50g(115.50モル)、酢酸ナトリウム861.00g(10.5モル)、及びイオン交換水10500gを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14780.1gおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
次に、p−ジクロロベンゼン10235.46g(69.63モル)、NMP9009.00g(91.00モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で238℃まで昇温した。238℃で95分反応を行った後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温した。270℃で100分反応を行った後、1260g(70モル)の水を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後200℃まで1.0℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷した。
内容物を取り出し、26300gのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を31900gのNMPで洗浄、濾別した。これを、56000gのイオン交換水で数回洗浄、濾別した後、0.05重量%酢酸水溶液70000gで洗浄、濾別した。70000gのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS粒子を80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥した。得られたPPS樹脂A−1は、溶融粘度が60Pa・s(300℃、剪断速度1000/s)であった。
[参考例2](A)PPS樹脂の重合(A−2)
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.37g(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2957.21g(70.97モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11434.50g(115.50モル)、酢酸ナトリウム2583.00g(31.50モル)、及びイオン交換水10500gを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14780.1gおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
次に、p−ジクロロベンゼン10235.46g(69.63モル)、NMP9009.00g(91.00モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で238℃まで昇温した。238℃で95分反応を行った後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温した。270℃で100分反応を行った後、1260g(70モル)の水を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後200℃まで1.0℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷した。
内容物を取り出し、26300gのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を31900gのNMPで洗浄、濾別した。これを、56000gのイオン交換水で数回洗浄、濾別した後、0.05重量%酢酸水溶液70000gで洗浄、濾別した。70000gのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS粒子を80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥した。得られたPPS樹脂A−2は、溶融粘度が200Pa・s(300℃、剪断速度1000/s)であった。
〔参考例3〕(A)PPS樹脂の重合(A−3)
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.91kg(69.80モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)、酢酸ナトリウム1.89kg(23.10モル)、及びイオン交換水10.5kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14.78kgおよびNMP0.28kgを留出した後、反応容器を200℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
その後200℃まで冷却し、p−ジクロロベンゼン10.45kg(71.07モル)、NMP9.37kg(94.50モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら0.6℃/分の速度で200℃から270℃まで昇温した。270℃で100分反応した後、オートクレーブの底栓弁を開放し、窒素で加圧しながら内容物を攪拌機付き容器に15分かけてフラッシュし、250℃でしばらく撹拌して大半のNMPを除去した。
得られた固形物およびイオン交換水76リットルを撹拌機付きオートクレーブに入れ、70℃で30分洗浄した後、ガラスフィルターで吸引濾過した。次いで70℃に加熱した76リットルのイオン交換水をガラスフィルターに注ぎ込み、吸引濾過してケークを得た。
得られたケークおよびイオン交換水90リットルを撹拌機付きオートクレーブに仕込み、pHが7になるよう酢酸を添加した。オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、30分保持した。その後オートクレーブを冷却して内容物を取り出した。
内容物をガラスフィルターで吸引濾過した後、これに70℃のイオン交換水76リットルを注ぎ込み吸引濾過してケークを得た。得られたケークを窒素気流下、120℃で乾燥することにより、乾燥PPS(a−3)を得た。得られたPPS樹脂A−3は、溶融粘度が140Pa・s(300℃、剪断速度1000/s)であった。
〔参考例4〕(A’)PPS樹脂の重合(A’−1)
撹拌機および上部に抜き出しバルブを具備した1リットルのオートクレーブに水硫化ナトリウムの48重量%水溶液を1.648kg(水硫化ナトリウム0.791kg(14.1モル))、水酸化ナトリウムの48重量%水溶液を1.225kg(水酸化ナトリウム0.588kg(14.7モル))、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)35L、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)2.120kg(14.4モル)を仕込んだ。
反応容器を室温・常圧下にて窒素ガス下に密閉した後、400rpmで撹拌しながら、室温から200℃まで25分かけて昇温した。次いで、250℃まで35分かけて昇温し、250℃で2時間反応を行った。次いで、内温を250℃に保ちながら、抜き出しバルブを徐々に開放し、40分かけて溶媒を26.6kg留去した。溶媒留去の完了後、オートクレーブを室温近傍にまで冷却し、内容物を回収した。
回収した内容物を、反応液の温度が100℃になるように窒素下にて加熱撹拌を行なった。100℃で20分間保持した後、平均目開き10μmのステンレス製金網を用いて固液分離を行ない、得られた濾液成分を約3倍量のメタノールに滴下し析出成分を回収した。得られた固体成分を約2.5Lの80℃温水でリスラリー化し、30分間80℃で攪拌後、濾過する操作を3回繰り返したのち、得られた固形分を減圧下80℃で8時間乾燥を行ない、乾燥固体を得た。得られた乾燥固体の赤外吸収スペクトルおよび高速液体クロマトグラフィーによる分析の結果、環式ポリフェニレンスルフィドを85重量%含有していることが分かった。
得られた乾燥固体を、留出管および撹拌翼を取り付けたガラス製の試験管に仕込んだ後、試験管内の減圧、窒素置換を3回繰り返した。試験管内を約0.1kPaに保ったまま340℃に温調して120分間加熱した後、室温まで冷却して重合物を得た。生成物の赤外分光スペクトルから得られた生成物はポリフェニレンスルフィドであること、またGPC測定から重量平均分子量は約5万、分散度は2.35であることがわかった。さらに得られたPPS樹脂A’−1は、溶融粘度が70Pa・s(300℃、剪断速度1000/s)であった。
[参考例5](B)マイカ
(B−1)マイカ、体積平均粒子径:7μm、数平均厚み0.06μm
アスペクト比110、アマニ油吸油量70ml/100g
(B−2)マイカ、体積平均粒子径:5μm、数平均厚み0.05μm
アスペクト比100、アマニ油吸油量80ml/100g
(B−3)マイカ、体積平均粒子径:3μm、数平均厚み0.05μm
アスペクト比60、アマニ油吸油量95ml/100g
(B−4)マイカ、体積平均粒子径:20μm、数平均厚み0.25μm
アスペクト比80、アマニ油吸油量60ml/100g
(B−5)マイカ、体積平均粒子径:40μm、数平均厚み0.50μm
アスペクト比80、アマニ油吸油量40ml/100g
(B−6)マイカ、体積平均粒子径:8μm、数平均厚み:0.045μm、
アスペクト比:177、アマニ油給油量:60ml/100g
上記体積平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置HORIBA社製LA−300により求めた。厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子(株)社製JSM−6360LV)を用いて2000倍の倍率で観察した。画像から無作為に10個のマイカ粒子を選び、厚みを測定し、その数平均値を求めた。アスペクト比は体積平均粒子径(μm)/数平均厚み(μm)として算出した。アマニ油吸油量はJISK5101−13−2測定方法(制定2004年2月20日)に準拠して測定した。
[参考例6](C)エポキシ基、アミノ基およびイソシアネート基から選ばれる少なくとも1種の基を有するアルコキシシラン化合物
(C−1)2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製KBM−303)
(C−2)3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製KBE−9007)。
[参考例7](D)炭素数12〜40の脂肪族カルボン酸と多価アルコールとを反応せしめたエステル化合物
(D−1)ペンタエリスリトールテトラステアレート(エメリーオレケミカルズ(株)製ロキシオールVPG861)。
[参考例8]参考例7以外の化合物
(D’−1)ステアリン酸とセバシン酸とエチレンジアミンからなるアミドワックス(共栄社化学(株)製ライトアマイドWH−255)
(D’−2)ポリエチレンワックス(クラリアントジャパン(株)製リコワックスPE190)。
〔参考例9〕(E)繊維状フィラー
(E−1)ワラストナイト(巴工業(株)製NYAD1250、数平均繊維径3μm、数平均繊維長9μm、アスペクト比3)
(E−2)ワラストナイト(巴工業(株)製NYGLOS4W、数平均繊維径4.5μm、数平均繊維長50μm、アスペクト比11)
(E−3)ガラス繊維(日本電気板硝子(株)製ミルドファイバーEPG70M−01N 、数平均繊維径9μm、数平均繊維長70μm、アスペクト比8)
[実施例1〜14、比較例1〜4]
表1、表2に記載の各成分を、表1、表2に示す割合でドライブレンドした後、真空ベントを具備した日本製鋼所社製TEX30α型二軸押出機(スクリュー径30mm、L/D=45、ニーディング部5箇所、同方向回転完全噛み合い型スクリュー)を用い、スクリュー回転数300rpm、吐出量20Kg/hrにて、ダイス出樹脂温度が310℃となるようにシリンダー温度を設定して溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。130℃で一晩乾燥したペレットを射出成形に供し、材料比重、棒流動長、機械特性、寸法安定性、表面平滑性、離型性、耐IRリフロー性、金型汚れ性、耐腐食性、溶融滞留安定性を評価した。結果は表1、表2に示す通りであった。
上記実施例1〜14と比較例1〜4の結果を比較して説明する。
マイカ吸油量が67ml/100g以上90ml/100g以下の範囲にある(B−1)、(B−2)マイカを(A−1)PPS樹脂に配合した実施例1、実施例5は、実施例で用いたマイカ吸油量の範囲から外れた(B−3)、(B−4)、(B−5)、(B−6)マイカを用いた比較例1〜4と比較して、いずれも流動性、寸法安定性を損なうことなく、樹脂とフィラーの密着性向上により高強度化する結果であった。
実施例1、実施例5に対して(C−1)アルコキシシラン化合物を配合した実施例2、実施例6は、(C)成分未配合の実施例1、実施例5と比較してPPS樹脂とマイカの密着性が改良され、さらに機械強度が向上する結果であった。実施例1に用いられている(A−1)PPS樹脂から(A−2)PPS樹脂に変更した実施例3は、靱性が改善されることで実施例1よりもさらに高強度化する結果が得られた。実施例2に対して、(C)アルコキシシラン化合物を(C−1)から(C−2)に変更した実施例4は、流動性は若干低下するものの機械強度はさらに改良される結果であった。
実施例1に対して、(D−1)エステル化合物やそれ以外の(D’−1)、(D’−2)成分を配合した実施例7〜9と比較して、機械物性、表面平滑性を損なうことなくいずれも離型性は改善される結果であった。特に(D−1)を配合した実施例7は実施例8、9と比較して、320℃ガス発生量が少なく金型汚れ性に極めて優れる結果であった。
実施例1に対して、(A−1)PPS樹脂から(A−3)PPS樹脂に変更した実施例10は、図1、図2に示す形状での離型力が実施例1よりも低減し、さらに離型性が向上する結果が得られた。また実施例1に対して、(A−1)PPS樹脂から(A’−1)PPS樹脂に変更した実施例11は、実施例1よりも大幅に低ガス化可能であり、且つ離型性、耐IRリフロー性、溶融滞留安定性、耐腐食性も格段に向上する結果が得られた。
実施例1に対して、(B−1)マイカに(E−1)、(E−2)、(E−3)繊維状フィラーを併用した実施例12〜14は、繊維状フィラー補強による相乗効果により、その他特性を大きく損なうことなく耐IRリフロー性がさらに向上する結果が得られた。