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JP2013068505A - X線導波路 - Google Patents

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JP2013068505A JP2011206998A JP2011206998A JP2013068505A JP 2013068505 A JP2013068505 A JP 2013068505A JP 2011206998 A JP2011206998 A JP 2011206998A JP 2011206998 A JP2011206998 A JP 2011206998A JP 2013068505 A JP2013068505 A JP 2013068505A
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篤史 ▲高▼本
Atsushi Takamoto
Wataru Kubo
亘 久保
Kohei Okamoto
康平 岡本
Hirokatsu Miyata
浩克 宮田
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Abstract

【課題】 空間的コヒーレンスの空間範囲の大きなX線を形成することができ、かつX線の導波特性を外部からの操作によって変調可能なX線導波路を提供する。
【解決手段】 周期性構造体から構成されるコアと、前記コアの外側に形成されたクラッドと、前記クラッドの少なくとも一部と前記コアとの間に設けられたギャップと、前記クラッドの少なくとも一部あるいは前記コアを駆動させることにより、前記ギャップの間隔を変化させる駆動手段とを有し、前記クラッドと前記ギャップとの界面におけるX線の全反射臨界角が、前記コアの構造周期に対応するブラッグ角よりも大きく、且つ前記コアの周期構造体を形成する屈折率実部の異なる複数の成分の界面における全反射臨界角が前記ブラッグ角よりも小さいX線導波路。
【選択図】 図1

Description

本発明は、X線を導波するX線導波路に関し、特にコアに周期性構造体を用いたX線導波路に関するものである。
数10nm以下の短い波長の電磁波を扱う際、異物質間における電磁波に対する屈折率差が10−4以下と非常に小さいため、全反射臨界角も非常に小さくなることなどにより、X線を含めたこのような電磁波をコントロールするために、大型の空間光学系が用いられてきており、今でもなお主流となっている。空間光学系をなしている主な部品として、異なる屈折率の材料を交互に積層した多層膜反射鏡があり、ビーム整形、スポットサイズ変換、波長選択などの様々な役割を担っている。
主流であるこのような空間光学系に対し、近年では光学系の小型化、高性能化を目指し、クラッドに囲まれたコア中に電磁波を閉じ込めて伝搬させる、X線導波路の研究が行われている。具体的にはクラッド層がコア層を挟み込んだ1次元構造の薄膜導波路(非特許文献1参照)や、クラッド材料中にファイバー状のコアを貫通させた2次元閉じ込め構造のX線導波路(非特許文献2参照)などの研究が行われている。
Salditt,T.,Kru‥ger,S.P.,Fuhse,C.& Ba‥htz,C.High−transmission planar x−ray waveguides.Physical Review Letters 100 (2008). Jarre,A.et al.Two−Dimensional Hard X−Ray Beam Compression by Combined Focusing and Waveguide Optics.Physical Review Letters 94 (2005).
しかしながら、従来のX線導波路には改善すべき課題があった。
非特許文献1及び非特許文献2では、ともにX線の導波損失を小さくするために、導波モードの中でも最も伝搬角度が小さい0次モードを主に利用している。X線帯域の電磁波では、物質間の屈折率差(実部)が極めて小さいため、0次モードの伝搬角度が小さくなり、その結果X線導波路では極めて微小なコアを作製する必要があった。そのため、伝搬させるX線の面積が小さくなり、X線導波路が出射するX線ビームが小さく、また、導波路の特長の一つである空間的コヒーレンスの空間範囲に制限があった。さらに、非特許文献2のような2次元閉じ込め構造のX線導波路の場合、必要となる数10nm程度の大きさのコアを作製することが非常に困難であった。
さらには、これらのX線導波路では、コア断面の大きさやクラッドとコアの材質等の導波路の構成よって決定された一定のX線導波特性を示すのみであり、そのX線導波特性を外部からの操作等によって変調することはできなかった。
本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、空間的コヒーレンスの空間範囲の大きなX線を形成することができ、かつX線の導波特性を外部からの操作によって変調可能なX線導波路を提供するものである。
上記の課題を解決するX線導波路は、複数の屈折率実部の異なる物質からなる基本構造が周期的に配された周期性構造体から構成されるコアと、前記コアの外側に形成された、X線を全反射によってコア内に閉じ込めるクラッドと、前記クラッドの少なくとも一部と前記コアとの間に設けられたギャップと、前記クラッドの少なくとも一部あるいは前記コアを駆動させることにより、前記ギャップの間隔を変化させる駆動手段とを有し、前記クラッドと前記ギャップとの界面におけるX線の全反射臨界角が、前記コアの構造周期に対応するブラッグ角よりも大きく、且つ前記コアの周期構造体を形成する屈折率実部の異なる複数の成分の界面における全反射臨界角が前記ブラッグ角よりも小さいことを特徴とする。
本発明によれば、空間的コヒーレンスの空間範囲の大きなX線を形成することができ、かつX線の導波特性を外部からの操作によって変調可能なX線導波路を提供することができる。
本発明のX線導波路の一実施態様を示す概略図である。 X線導波路の周期性構造体内でのX線電場強度分布を示す図である。 X線導波路のX線電場強度分布と伝搬損失の周期数依存性を示す図である。 本発明のX線導波路の電場強度分布のギャップの間隔依存性を示す図である。 コアとクラッド間のギャップの間隔を変化させる駆動手段を示す概略図である。 本発明の実施例1,2の導波X線強度の変化を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係るX線導波路は、複数の屈折率実部の異なる物質からなる基本構造が周期的に配された周期性構造体から構成されるコアと、前記コアの外側に形成された、X線を全反射によってコア内に閉じ込めるクラッドと、前記クラッドの少なくとも一部と前記コアとの間に設けられたギャップと、前記クラッドの少なくとも一部あるいは前記コアを駆動させることにより、前記ギャップの間隔を変化させる駆動手段とを有し、前記クラッドと前記ギャップとの界面におけるX線の全反射臨界角が、前記コアの構造周期に対応するブラッグ角よりも大きく、且つ前記コアの周期構造体を形成する屈折率実部の異なる複数の成分の界面における全反射臨界角が前記ブラッグ角よりも小さいことを特徴とする。
図1は、本発明のX線導波路の一実施態様を示す概略図である。同図1において、本発明のX線導波路は、コア101と、前記コア101の外側に形成されたクラッド102および103と、前記クラッド102と前記コア101との間に設けられたギャップ104と、前記クラッド102を駆動させることにより、前記ギャップ104の間隔Lを変化させる駆動手段105とを有する。
本発明において、駆動手段105は、前記クラッドの少なくとも一部を駆動させるか、あるいは前記クラッドの少なくとも一部以外の部分と前記コアとを一体で駆動させることにより、前記ギャップの間隔を変化させることを特徴とする。
本発明のX線導波路は、コア101に周期性構造体を用いることにより、その周期構造の周期性と共鳴する導波モードを利用することができるX線導波路である。クラッド102及び103とコア101の界面にはギャップ104が配置され、さらには該ギャップの間隔Lを変化させる駆動手段105によって、前記X線導波路の導波X線強度等のX線導波特性を変調することができる。
図1(a)はクラッド102のみを駆動させる駆動手段105を用いる実施形態を示す図である。図1(b)はクラッド103とコア101を一体で駆動させる駆動手段105を用いる実施形態を示す図である。いずれの場合においても、駆動手段105によってH方向に上下に駆動させることで、ギャップ104の間隔Lを調整することができる。駆動対象であるクラッド102(図1(a)の例)、あるいはクラッド103とコア101の結合体(図1(b)の例)は、駆動手段105に密着している。駆動手段105は、前記駆動対象に密着する駆動ステージ部106と、その駆動を制御する制御部107から構成される。
(X線)
本発明においてX線とは、物質の屈折率実部が1以下となる波長帯域の電磁波である。具体的には、本発明においてX線とは、極端紫外光(Extreme Ultra Violet(EUV)光)を含む100nm以下の波長の電磁波を指す。このような短い波長の電磁波の周波数には、非常に高く物質の最外殻電子が応答できないため、紫外光の波長以上の波長をもつ電磁波(可視光や赤外線)の周波数帯域と異なり、X線に対しては物質の屈折率の実部が1より小さくなることが知られている。このようなX線に対する物質の屈折率nは一般的に、下記の式(1)
Figure 2013068505
で表されるように、実数部の1からのずれ量δ、吸収に関係する虚数部の
Figure 2013068505
を用いて表される。原子固有のエネルギー吸収端が寄与する場合を除き一般に、δは物質の電子密度ρに比例するため電子密度の大きい物質ほど屈折率の実部が小さくなることになる。また、屈折率実部は、
Figure 2013068505
となる。さらに、ρは原子密度ρと原子番号Zに比例する。このようにX線に対する物質の屈折率は複素数で表されるが、その実部を本明細書中では屈折率実部または屈折率の実部と称し、虚部を屈折率虚部または屈折率の虚部と称する。X線の帯域では、屈折率実部が最大の1となる物質は真空であり、空気に代表される気体は真空とほぼ同じ屈折率を持つが、気体以外のほぼすべての物質の屈折率実部は、1よりも小さい値となる。本明細書中では、「成分」、「材料」、「物質」という文言を真空や空気等の気体に対しても適用する。
(コアとクラッドの関係)
本発明のX線導波路は、コアとクラッドの界面における全反射によりX線をコアに閉じ込めてX線を導波させる。この全反射を実現するために、本発明のX線導波路は、コアとクラッドの界面におけるコアの屈折率実部がクラッドの屈折率実部より大きいものである。このときの全反射臨界角を界面からの角度として、θと表す。
(コア)
本発明のX線導波路は、コアに屈折率実部の異なる複数の物質からなる周期性構造体を用いることを特徴とする。コアが周期構造を有していることにより、導波路中に形成される導波モードが周期構造と共鳴したものとなる。このような異なる屈折率実部の周期構造は、周期数が無限の場合、伝搬定数とX線の角周波数との間でフォトニックバンドを形成し、コアの周期性と共鳴する特定のモードのX線しかこの構造中には存在できないことになる。前記屈折率実部が異なる複数の物質のうち少なくとも一つの物質が酸化物であることが好ましい。
前記周期性構造体は、基本構造が周期的に配列した構造体であり、層状構造を基本構造としてそれらが積層した1次元周期構造、シリンダー状構造を基本構造としてそれらが配列した2次元周期構造、ケージ構造を基本構造としてそれらが配列した3次元周期構造を例示することができる。本発明のX線導波路内に形成される導波モードは、前記周期性構造体の周期構造の各次元に対応した多重反射に起因するものとなる。またこのようなモードは周期性により形成されるもので、X線の電場分布や電場強度分布の腹と節の位置は、基本構造を構成しているそれぞれの物質領域内の位置に一致する。その際、前記周期性構造体の電子密度の小さい物質にX線の電場強度が集中する導波モードの伝搬損失が他の導波モードに比べて小さくなり、その導波モードを選択的に取り出すことが可能となる。
図2に、シリカ202中で一方向に伸びるシリンダー状の空気の孔201が、孔の長さ方向(図中z方向)に垂直な方向(x−y面内方向)で2次元三角格子構造を形成している周期性構造体中でのX線の電場強度分布の例を示す。図2では、破線により構造周期dを表し、シリンダー状の空気の孔201中の白黒の濃淡はX線の電場強度を表し、この材料中に形成される導波モードのうちの一つについての電場強度分布である。黒、白がそれぞれ電場強度の大、小に相当する。電場強度を、白黒の濃淡の変わりに多数の円の間隔により説明する。シリンダー状の空気の孔201中の多数の円の間隔の大小はX線の電場強度205を表し、この材料中に形成される導波モードのうちの一つについての電場強度分布である。多数の円の間隔の小が電場強度の大、間隔の大が電場強度の小に相当する。空気の孔201の中心部分は円の間隔が小で電場強度205が強く、中心部分から孔の周囲の方向に円の間隔が傾斜して大きくなるように変化し、孔の周辺部分は円の間隔が大で電場強度が弱く表れている。電場強度の極大、極小となる領域が、x方向及びy方向で周期的に繰り返されており、電場が周期性構造体の孔(周期性構造体の基本構造205)に集中する。空気の孔101は、周期性構造体の基本構造を表す。204は周期方向を表す。
(閉じ込め関係)
このような周期構造と共鳴する電場強度分布を有するX線をクラッドによりコアに閉じ込めることにより、周期性と共鳴する導波モードを形成してX線を導波させることができる。この導波モードを、周期共鳴導波モードと称する。一方、本発明のX線導波路のコアは無限に続く周期構造ではなく、クラッドに挟まれた有限の厚さをもつ周期性構造体なので、周期共鳴導波モード以外にも、コア全体をある平均的な屈折率をもつ均一な媒質とした場合の導波モードが存在し、これを一様導波モードと称する。
この一様導波モードに対し、本発明のX線導波路が発現する周期共鳴導波モードは、近接する一様導波モードに比べて損失が少なく、位相がそろったものとなる。クラッドとコアの界面における全反射により、一様導波モード以外に上記の周期共鳴導波モードを形成するために本発明のX線導波路は、以下の条件を満たすように設計されている(図1参照)。
図1において、クラッドとコアの界面におけるクラッド側の物質の屈折率実部をnclad、コア側の物質の屈折率実部をncoreとした場合の、膜の面に平行な方向からの全反射臨界角θc−total(°)は、nclad<ncoreとして、式(2)
Figure 2013068505
と表される。
またコアをなす周期構造体の構造周期をd(図2の203)とした場合、コア中での多重回折の有無に関わらず次の式(3)ようにブラッグ角θ(°)を定義する。
Figure 2013068505
mは次数(自然数)、λはX線の波長である。本発明のX線導波路を構成している物質の物性パラメータ、導波路の構造パラメータ、およびX線の波長は、θ<θc−totalを満たす必要がある。
本発明においては、もう一つの条件が満たされることが必要であり、以下に説明する。周期構造が、屈折率実部が異なる複数の成分から構成される場合、各成分間の界面におけるX線の反射を考慮する必要がある。本発明のX線導波路が機能するためには、周期構造に由来する多重反射が起こらなければならない。周期構造を構成する材料の界面で全反射が起こる場合には、例えば1次元周期構造体に関しては、X線は、積層構造を形成する材料のうちで最も屈折率の高い成分中に閉じ込められ、多重干渉が阻害される結果、本発明の目的を果たすことができなくなる。言い換えれば、周期構造を構成するユニットがマルチ全反射X線導波路として機能することになり、従来の平板型導波路と同じ構造になってしまう。従って、コアの周期構造を形成する屈折率実部が異なる成分間の界面における全反射臨界角が、前記ブラッグ角よりも小さいという条件が必要になる。このことは、数式を用いて下記のように表すことができる。
コアの周期構造を構成する屈折率実部の異なる成分間での全反射臨界角をθc−multi(°)とする場合、θc−multi<θの式が満たされる。
以上述べたような条件が満たされる場合、クラッドとコアとの界面による全反射により閉じ込められる導波モードを、コア内に局在させることができる。膜に平行な方向から測った有効伝搬角度
Figure 2013068505
は、導波モードの伝搬方向の波数ベクトル(伝搬定数)k、真空中の波数ベクトルkを用いて次式で表される。
Figure 2013068505
以上説明したような、本発明のX線導波路においては、多重干渉によって規則構造の周期に共鳴する導波モードのX線のみを、選択的に低損失で伝搬させることができる。このX線は、位相がコアの厚さ全体にわたって揃っている。つまり、空間的にコヒーレントなX線となり、導波路の端面から、X線の波長とコアの構造周期で決定される小さな発散角で出射される。
周期共鳴導波モードは、近接する一様導波モードよりも損失が小さくなるので、モード選択されたX線の導波が可能となる。図3は、X線導波路のX線電場強度分布と伝搬損失の周期数依存性を示す図である。図3(a)は、シリカ302と界面活性剤303の層状構造を基本構造とする1次元周期性構造体をコアし、クラッドを金301としたX線導波路の概略図である。図3(b)は、シリカと界面活性剤の層状構造を基本構造とする1次元周期性構造体をコアし、クラッドを金とした導波路(図3(a)、構造周期d=10nm)の周期共鳴導波モードのコア内での電場強度分布の有限要素法によるシミュレーション実験の結果である(X線エネルギー:17.5keV)。この導波路では、17.5keVのX線において、θc−total=0.243°、θ=0.203°およびθc−multi=0.058°であり、θ<θc−total及びθc−multi<θの条件を満たしている。
この導波モードの伝搬角度は周期性構造体のブラッグ角よりわずかに小さいものとなり、電場がコア中心付近に集中し、クラッドへの染み出しが少なく、位相がそろった導波モードを実現される。図3(c)に示すとおり、これら周期共鳴導波モードの利点は、周期数が増えるほどその効果が顕著になって伝搬損失が低下するという点にある。本発明のX線導波路のコアである周期構造の周期数は、20周期以上であることが好ましい。
本発明のX線導波路のX線を閉じ込める次元は、膜状のコアをクラッドで挟み込んだ1次元のものであっても、導波方向に垂直な断面が円や方形等の形状のコアをクラッドで取り囲んだ2次元であっても構わない。2次元閉じ込め型導波路では、X線が2次元的に導波路内に閉じ込められることから、1次元閉じ込め型より発散性が抑制され、かつ小さなビームサイズのX線ビームを取り出すことができる。また、周期性構造体が前述の2次元構造(基本構造:シリンダー状構造)や3次元構造(基本構造:ケージ構造)である場合には、複数存在する周期方向の周期構造と共鳴する電場強度分布を、コア内により効率的に形成させることができる。
(クラッド材料)
クラッドとコアの界面におけるクラッド側の物質の屈折率実部をnclad、コア側の屈折率実部をncoreとした場合の、膜の面に平行な方向からの全反射臨界角θc−total(°)は、nclad<ncoreとして、式(2)で表される。本発明のX線導波路のクラッド材料は、導波路のその他の構造パラメータ、物性パラメータが、式(2)を満たすもので構成することができる。例えば、コアとして、構造周期10nmで三角格子状に空孔が配列した二次元周期構造を有するメソポーラスシリカを用いた場合、Au、W、Taなどでクラッドを構成することができる。
このような構成とすることにより、本発明のX線導波路は周期性と共鳴し、位相制御され、損失が少ない周期共鳴導波モードを形成して、X線を導波させることができる。
(ギャップ、周期性構造体との関係、厚さ)
本発明のX線導波路は、コアである周期性構造体とクラッドの間にギャップを配していることを特徴としている。前記ギャップには流体が充填されているか又は真空であることを特徴とする。このギャップは、その間隔を変化できるように流体、つまり気体または液体から構成されている。例えば、空気、窒素、ヘリウム、アルゴン等の気体や、水、アルコール等の液体を挙げることができる。本発明では、ギャップの流体の物質によるX線の吸収や散乱が比較的抑制できるように、電子密度の低い流体である気体を用いることが好ましく、空気、窒素、及びヘリウム等の気体や真空を用いることがさらに好ましい。
前述のとおり、図3に示す様に、ギャップがない場合には、X線の電場強度分布がコアの中心に集中し、クラッド部への電場の染み出しによる損失の少ない、すなわち近接するモードに比べて伝搬損失の小さい導波モードが形成される。
図4は、本発明のX線導波路の電場強度分布のギャップの間隔依存性を示す図である。図4(a)は、シリカ403と界面活性剤404の多層の周期性構造体(構造周期10nm)を用いたX線導波路のコアと、タングステン401のクラッドの間に空気からなるギャップ402を配した構成のX線導波路の概略図である。図4(a)のX線導波路の、有限要素法によるシミュレーション実験(X線エネルギー:8.04keV)の結果を、図4(b):ギャップ0nm、図4(c):ギャップ4nm、および図4(d):ギャップ8nmに示す。この導波路では、8.04keVのX線において、θc−total=0.515°、θ=0.442°およびθc−multi=0.128°であり、θ<θc−total及びθc−multi<θの条件を満たしている。
この図4では、ギャップの上端がy=−200nmの座標にある。ギャップ4nmの図4(c)に示すように、ギャップがない場合(図4(b))と比べて、周期共鳴導波モードのX線電場強度分布が変化することがわかる。ギャップの間隔が4nmである場合には、コアの中心に集中していた電場強度分布がギャップに集中してクラッドへのX線の染み出しが大きくなり、伝搬損失が他の近接するモードに比べて増大する。すなわち、周期共鳴導波モードが選択的に透過してこないことを意味する。
一方で、図4(d)のギャップの間隔を8nmに変化させた場合には、ギャップがない場合と同様にコア中心部に電場強度が集中し、周期性特有の導波モードの伝搬損失が近接する他の導波モードに比べて小さくなる。シミュレーション実験の結果、ギャップの間隔に対して周期的に周期共鳴導波モードの伝搬損失が変化することが分かる。
ギャップの間隔が大きくなりすぎると、周期共鳴導波モードの導波特性が顕著に見られなくなり、また、導波X線の損失が大きくなるため、ギャップの間隔は100nm以下、好ましくは50nm以下が望ましい。
図5は、コアとクラッド間のギャップの間隔を変化させる駆動手段を示す概略図である。図5のX線導波路は、図1(a)をより詳細に描画した図である。駆動されるクラッド502と、固定されたコア501及びクラッド503と、コア501とクラッド502の間に形成されたギャップ504を有するX線導波路である。図5のように本発明のギャップの間隔を変化させる駆動手段は、特に単一の駆動方向のみである必要はなく、複数の方向に駆動できる駆動手段505を用いることができる。駆動手段505は、一般に駆動対象であるクラッド502と密着した駆動ステージ部506とその制御部507から構成される。また、周期共鳴導波モードの変調に寄与する限り、その駆動方向を任意に選択することができる。図5において、ギャップの間隔を変化させるためには、主にz軸を変化させることになるが、X線導波方向(y軸)に対する角度調整が必要であれば、ω軸で補正することができる。一方で、ω軸の走査によるX線導波方向に対するクラッド501の角度変化によっても、本発明のX線導波路は、周期共鳴導波モードのX線電波強度分布等の特性がX線伝搬方向に進むにつれて、徐々に変化するため、導波モードの特性の変調を実行できる。
図5はクラッド502のみを駆動させる場合の例であるが、本発明では、クラッドの一部が駆動してギャップの間隔を変化させることができればよく、図1(b)のようにクラッドの一部とコアが結合した状態で両者が一体となって駆動する場合も含まれる。
本発明において、コアとクラッドの間に配されるギャップの間隔を変化させる駆動手段としては、高い分解能での位置制御と精度が必要となるため、ピエゾアクチュエータが好ましく用いられる。
(周期性構造体の材料)
本発明のX線導波路のコアに用いられる周期性構造体は、前述の本発明の導波路の構成を満たす限り、特に限定はされない。スパッタや蒸着法によって作製される多層膜や、フォトリソグラフィーや電子ビームリソグラフィー、エッチングプロセス、積層や貼り合わせ、などといった従来の半導体プロセスによって作製される周期性構造体等を用いることができる。また、周期性構造体を構成する物質に酸化物を用いることによって、酸化劣化を防ぐことができる。
コアの材料の屈折率の違いが、導波モードの変調のギャップの間隔依存性に寄与するため、必要とする導波路特性に応じて、適宜、コアの材料の屈折率を選定することができる。
本発明のX線導波路のコアとしては、特に、その製造工程の簡便性や規則性の高い周期構造の観点から、有機無機多層膜やメソポーラス材料膜を好ましく用いることができる。多孔質材料は、IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry)によって、その孔径により分類されており、孔径が2から50nmの多孔質材料は、メソポーラス材料膜に分類される。これらの材料は、主に酸化物の前駆体である反応液を基板上に塗布等のプロセスによって付与することによって、自己集合的に周期構造が形成されることを特徴としている。そのため、従来の半導体プロセスの多数のプロセスを要せず、極めて簡便かつ高いスループットで作製することが可能である。数十nmの周期性構造体を形成することは、従来の半導体プロセスでは極めて困難であり、特に2次元以上の周期性構造体を作製することはほぼ不可能であると言ってよい。
本発明で用いられる周期性構造体は、有機無機多層膜やメソポーラス材料膜の無機成分と有機成分(あるいは空孔)によって周期構造を形成している。無機物には、無機酸化物が用いられることが好ましく、シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム等を例示することができる。有機物には、例えば界面活性剤に代表される両親媒性分子、シロキサンオリゴマーのアルキル鎖部分、あるいはシランカップリング剤のアルキル鎖部分等を挙げることができる。界面活性剤としては、C1225(OCHCHOH、C1635(OCHCH10OH、C1837(OCHCH10OH、Tween 60(東京化成工業)、Pluronic L121(BASF社)、Pluronic P123(BASF社)、Pluronic P65(BASF社)、Pluronic P85(BASF社)等を例示することができ、それらを適切に選択することにより周期性構造体の周期構造の次元や構造周期(ブラッグ回折から得られる面間隔)を調整することができる。用いる有機物に対する周期性構造体の構造を表1に例示する。
Figure 2013068505
メソポーラス材料膜の場合、前駆体反応液の付与によって自己集合によって形成された際には、その細孔内部に有機物を含有したままとなっている。これらの有機成分は、焼成、有機溶媒による抽出、オゾン酸化処理等の従来公知の方法によって除去することができる。本発明においては、必要とする性能を有する限りにおいて、メソポーラス材料膜の細孔内に有機成分が残存していいても構わないが、有機成分を除去することにより、X線の吸収成分が少なくなるため、より伝搬損失の小さいX線導波路を提供することができる。ただし、有機成分が残存率が高い方がメソポーラス材料膜の構造周期性がより良好である場合が多く、周期共鳴導波モードの特性が比較的明瞭に得ることができる。そのため、適宜、目的とする導波路特性に応じて有機成分の残存率(除去率)を決めることができる。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
本実施例は、クラッドにタングステン、コアにBCとAlからなる多層膜、及びギャップに真空を用いたX線導波路の例である。
本実施例のX線導波路の作製方法は、スパッタ法による以下のような工程が挙げられる。図5に示すX線導波路の例を示す。
(a)クラッド層の形成
Si基板(図5のC)上にマグネトロンスパッタリングによってタングステン503を30nmの厚さで形成する。
(b)多層膜の形成(図5の501)
マグネトロンスパッタリングによってAl(図5のA)、BC(図5のB)の順に交互に成膜して多層膜を作製する。AlとBCの厚さは、それぞれ2.0nmと13.0nmとし、多層膜の最下部、及び最上部の層はAlとする。AlとBCは、それぞれ101層と100層形成する。
(c)導波路長の決定
導波路長が1mmになるように、ダイシング装置を用いて上記のSi基板上に形成された多層膜をSi基板と共に切断する。
(d)駆動手段を有するクラッドの配置
1mmの長さに切断したガラス基板506にマグネトロンスパッタリングで形成した30nmのタングステン膜(クラッド502)を、上記多層膜の表面に対向させて配置する。前記タングステン膜基板は、図5に示す駆動軸を有するピエゾアクチュエータ505によってその位置を制御することができる。
得られるX線導波路は、コアがクラッドにより挟まれた形となっており、コアとクラッドの界面での全反射によりX線をコアに閉じ込めるものである。この構成によれば、コアである多層膜の周期と、それをなす物質の屈折率実部の関係が、θ<θc−total及びθc−multi<θを満たしている。例えば、8.04keVのX線に対して、θc−total=0.472°(Alとタングステンの界面の全反射臨界角)、θ=0.295°およびθc−multi=0.182°(AlとBCの界面の全反射臨界角)であり、X線はクラッドおよびとコアとの界面における全反射によりコア中に閉じ込められ、周期共鳴導波モードを形成することができる。
X線(エネルギー:8.04keV)を前記X線導波路の端部から入射し、導波路終端部から出射される出射X線が導波路の後方(カメラ長:1500mm)で形成する干渉パターンをX線2次元検出器で測定する。測定システム内は、減圧し真空状態とする。
図6(a)はギャップ504の間隔を変化させた場合の、本実施例のX線導波路の透過率の変化である。ギャップの間隔が大きくなるにつれて、周期的に透過率が増減し、ギャップの間隔によってX線導波特性を変調できることが確認される。±0.0002°の範囲で図5のω軸を駆動させても、同様なX線導波強度の変化を観測することができる。
クラッド502を固定し、ピエゾアクチュエータでクラッド503、Si基板(図5のC)、及び多層膜からなるコア501を一体に駆動させても、ギャップ504の間隔を変化させることで図6(a)と同様な導波特性を観測することができる。
(実施例2)
本実施例は、クラッドにタングステン、コアにメソポーラスシリカ、及びギャップに空気が充填されているX線導波路の例である。
このメソポーラス材料膜は、X線の導波方向に垂直な方向(xy面内方向)で空孔が2次元周期構造を形成している。孔以外の部分の材料はシリカである、メソポーラスシリカである。このメソポーラスシリカを含む本実施例のX線導波路の作製方法を、以下に示す。
(a)クラッド層の形成
Si基板(図5のC)上にマグネトロンスパッタリングによってタングステン503を20nmの厚さで形成する。
(b)メソ構造体膜の前駆体溶液調製
メソポーラスシリカ膜は、ディップコート法で調製される。メソ構造体の前駆体溶液は、テトラエトキシシラン54.7mL、エタノール74.4mL、0.01Mの塩酸26.4mLの順に三角フラスコに加えて撹拌し、15分後に界面活性剤であるP123(BASF社)をエタノール49.6mLで十分に溶解させた溶液を加える。そののち、3時間攪拌したのち、純水を12.0mL加える。
(c)メソ構造体膜の成膜(図5の501)
タングステンをスパッタした基板に、ディップコート装置を用いて(b)のメソ構造体膜の前駆体溶液をディップコートする(引き上げ速度:毎秒0.5mm)。このときの温度は25℃、相対湿度は5%以下である。成膜後、膜は25℃、相対湿度40%の恒温恒湿槽で18時間以上保持される。その後、エタノールを用いた溶媒抽出によって、P123(BASF社)を除去する。図5は平面図として簡略化したものであるが、図5において、Aがシリカ、Bが細孔である。
(d)メソポーラスシリカ膜の評価
調製されたメソ構造体膜をBragg−Brentano配置のθ−2θスキャニングX線回折を行う。その結果、このメソ構造体膜は,基板面の法線方向に秩序性をもち、その面間隔つまり閉じ込め方向における構造周期が、10.2nmであることが確認される。その膜厚はおよそ480nmである。
(f)導波路長の決定
導波路長が1mmになるように、ダイシング装置を用いてX線導波路を切断する。
(f)駆動手段を有するクラッドの配置
1mmの長さに切断したガラス基板にマグネトロンスパッタリングで形成した30nmのタングステン膜502を、上記メソポーラスシリカ膜の表面に対向させて配置する。前記タングステン基板は、図5に示す駆動軸を有するピエゾアクチュエータ505によってその位置を制御することができる。
得られたX線導波路のコアであるメソポーラスシリカ膜は、周期は10.2nmであるために、θ<θc−total及びθc−multi<θを満たしている。例えば、8.04keVのX線に対して、θc−total=0.515°(シリカとタングステンの界面の全反射臨界角)、θ=0.433°およびθc−multi=0.201°(シリカと空気の界面の全反射臨界角)であり、X線はクラッドおよびとコアとの界面における全反射によりコア中に閉じ込められ、周期共鳴導波モードを形成することができる。
X線(エネルギー:8keV)を前記X線導波路の端部から入射し、導波路終端部から出射される出射X線が導波路の後方(カメラ長:1500mm)で形成する干渉パターンをX線2次元検出器で測定する。測定システム内は、常圧の空気とする。
図6(b)、ギャップ504の間隔を変化させた場合の、本実施例のX線導波路の透過率の変化である。ギャップの間隔が大きくなるにつれて、周期的に透過率が増減し、ギャップの間隔によってX線導波特性を変調できることが確認される。図5のω軸を±0.0002°駆動させても、同様なX線導波強度の変化を観測することができる。
クラッド502を固定し、ピエゾアクチュエータでクラッド503、Si基板(図5のC)、及びメソポーラスシリカ膜からなるコア501を一体に駆動させても、ギャップ504の間隔を変化させることで図6(b)と同様な導波特性を観測することができる。
本実施例において、メソポーラスシリカ膜作製時のP123(BASF社)の抽出率を低くした場合、導波したX線の強度が小さくなるが、周期共鳴導波モードの特性、及びその変調された特性をより明確に観測することができる。
本発明にかかるX線導波路は、位相の揃ったX線ビームを提供することが可能となり、さらにその透過率などの導波特性を調整することができ、X線を用いた分析技術やイメージング手法等で有用である。
101 コア(周期性構造体)
102 クラッド
103 クラッド
104 ギャップ
105 ギャップの間隔を変化させる駆動手段
106 駆動手段の駆動ステージ部
107 駆動手段の制御部

Claims (7)

  1. 複数の屈折率実部の異なる物質からなる基本構造が周期的に配された周期性構造体から構成されるコアと、前記コアの外側に形成された、X線を全反射によってコア内に閉じ込めるクラッドと、前記クラッドの少なくとも一部と前記コアとの間に設けられたギャップと、前記クラッドの少なくとも一部あるいは前記コアを駆動させることにより、前記ギャップの間隔を変化させる駆動手段とを有し、前記クラッドと前記ギャップとの界面におけるX線の全反射臨界角が、前記コアの構造周期に対応するブラッグ角よりも大きく、且つ前記コアの周期構造体を形成する屈折率実部の異なる複数の成分の界面における全反射臨界角が前記ブラッグ角よりも小さいことを特徴とするX線導波路。
  2. 前記ギャップには流体が充填されているか又は真空であることを特徴とする請求項1に記載のX線導波路。
  3. 前記駆動手段は、前記クラッドの少なくとも一部を駆動させるか、あるいは前記クラッドの少なくとも一部以外の部分と前記コアとを一体で駆動させることにより、前記ギャップの間隔を変化させることを特徴とする請求項1または2に記載のX線導波路。
  4. 前記駆動手段がピエゾアクチュエータであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載のX線導波路。
  5. 前記コアの周期構造の周期数が20以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかの項に記載のX線導波路。
  6. 前記コアが無機多層膜またはメソポーラス材料膜であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかの項に記載のX線導波路。
  7. 前記屈折率実部が異なる複数の物質のうち少なくとも一つの物質が酸化物であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかの項に記載のX線導波路。
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