JP7770585B2 - 銅基合金粉末及びその製造方法 - Google Patents
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Description
したがって本発明の課題は、溶融した際におけるドロスの発生を抑制することができる銅基合金粉末及びその製造方法を提供することにある。
前記銅基合金粉末に含まれる前記銅基合金粒子のうち、断面観察したときにNiOの面積率が2%以上である粒子の個数割合であるNiO偏析粒子存在率が4.0個数%以下である、銅基合金粉末を提供するものである。
前記溶湯を用い、アトマイズ法によって、銅及びニッケルを含有する銅基合金粒子の集合体からなる銅基合金粉末を得る造粒工程と、を含む、銅基合金粉末の製造方法であって、
前記溶融工程において誘導炉を用い、該誘導炉の出力を100kW以上に設定して前記溶湯を得る、銅基合金粉末の製造方法を提供するものである。
本発明の銅基合金粉末に不可避不純物が含まれる場合、その量は0.01質量%以下であることが、銅基合金粉末が本来有する特性が損なわれにくい点から好ましい。
銅基合金粒子の一例として、銅及びニッケルを含有し、残部不可避不純物からなる合金の粒子が挙げられる。
銅基合金粒子の他の例として、銅、ニッケル及びリンを含有し、残部不可避不純物からなる合金の粒子が挙げられる。
また、銅基合金粒子における銅の含有割合は、銅基合金粉末の耐酸化性を十分に高める観点から、99.9質量%以下であることが好ましく、95.0質量%以下であることが更に好ましく、92.0質量%以下であることが一層好ましい。
また、銅基合金粒子におけるニッケルの含有割合は、銅基合金粉末の電気伝導性を十分に高める観点から、20.0質量%以下であることが好ましく、15.0質量%以下であることが更に好ましく、13.0質量%以下であることが一層好ましい。
また、銅基合金粒子におけるリンの含有割合は、銅基合金粉末の電気伝導性を十分に高める観点から、0.5質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以下であることが更に好ましく、0.1質量%以下であることが一層好ましい。
銅基合金粒子にリンが含まれていると耐酸化性が高まる理由は、銅基合金粒子の製造過程において、ニッケルが酸化される代わりにリンが犠牲酸化されて、後述するNiO(二価のニッケルと二価の酸素が結合した酸化物)の偏析が効果的に抑制されるからである。またリンは、犠牲酸化の後に昇華することから、銅基合金粒子に残留しづらく、銅基合金粒子の電気伝導性が低下しづらいという点でも有利である。
銅基合金粒子にリンが含まれる場合、後述する銅基合金粒子の好ましい製造方法の説明にあるとおり、リンは例えばCu3Pとして銅を含む溶湯中に添加されることが好ましい。
銅基合金粒子に含まれる酸素の量はその値が小さければ小さいほど、電気伝導性の向上の観点から好ましく、最も好ましくはゼロである。
銅基合金粒子にはNiOが存在しないことが理想的であるが、実際には銅基合金粒子の製造過程において不可避的にニッケルが酸化されてNiOが生じることがある。NiOを含む銅基合金粒子を溶融させると、NiOに起因するドロスが溶融液中に発生する場合がある。ドロスの発生は、銅基合金粒子の生産性が低下する一因となる。これに対して本発明によれば、銅基合金粉末を溶融したときに生じるドロスの量を低減させることが可能になるので、銅基合金粒子の生産性を高めることが可能になる。
NiO偏析粒子存在率はその値が小さければ小さいほど、ドロス発生の抑制の観点から好ましく、最も好ましくはゼロである。
なお銅基合金粒子は、その製造過程及び/又は保存状態において、不可避的に粒子の表面が酸化されて酸化物が生じることがある。この酸化物はNiOを含む場合がある。しかし本発明においては、粒子の表面に存在するNiOは、上述したNiO偏析粒子存在率の算出の対象としない。本発明でNiO偏析粒子存在率の算出の対象とするNiOは粒子の内部に存在するもののみである。粒子の内部に存在するNiOのみをNiO偏析粒子存在率の算出の対象とする理由は、粒子の表面に存在するNiOは、各種の還元処理によって除去可能であるのに対して、粒子の内部に存在するNiOは除去が極めて困難であるか、又は除去が不可能であることに起因して、本質的にドロスの発生の原因となるからである。なお、粒子の内部にNiOが存在する状態は、アトマイズ法によって製造された粉末であるアトマイズ粉末において特に顕著である。
銅基合金粒子の断面に観察されるNiOの面積は、画像解析ソフトウェアによって測定できる。NiOの面積の具体的な測定方法は、以下に示すとおりである。
この試料を走査型電子顕微鏡(以下「SEM」ともいう。)観察する。SEM像の一例を図1に示す。同図中、粒子の長手方向に沿って延びる濃い灰色の領域が、NiOが偏析している領域である。その領域を囲んでいる薄い灰色の領域は銅ニッケル合金からなる。
NiOの面積の測定には、粒子の断面積及びNiOが偏析している領域の面積を求める。粒子の断面積は図2に示すハッチング領域S2から算出される。
NiOが偏析している領域の面積は、図3に示すハッチング領域の面積S3から、図4に示すハッチング領域の面積S4を差し引いた値(S3-S4)と、図5に示すハッチング領域の面積S5と、図6に示すハッチング領域の面積S6との和である。すなわちS3-S4+S5+S6である。
前記の値を、先に求めたS2で除し、100を乗じることで、すなわち(S3-S4+S5+S6)/S2×100の計算を行うことで、NiOの面積率が算出される。
以上の操作を、100個以上の粒子を対象として行う。NiOの面積率を測定した全粒子数に対する、NiOの面積率が2%以上である粒子数の割合(単位は個数%)を、NiO偏析粒子存在率と定義する。
本発明の銅基合金粉末は、製造されたままの状態において、累積体積90容量%における体積累積粒径D90が、1.0μm以上であることが好ましく、2.0μm以上であることが更に好ましく、2.5μm以上であることが一層好ましい。また本発明の銅基合金粉末は、体積累積粒径D90が50μm以下であることが好ましく、40μm以下であることが更に好ましく、35μm以下であることが一層好ましい。
銅の地金及びニッケルの地金としては、当該技術分野で知られているものを特に制限なく用いることができる。例えば銅の地金として電気銅を用いることができる。ニッケルについても同様であり、地金として電気ニッケルを用いることができる。
誘導炉は、電磁誘導を利用して地金を加熱する方式の炉である。誘導炉では、それに備えられたコイルに交流を流すことで該コイル内に起電力を誘起させ、該コイル内の導体中に渦電流を生じさせる。この渦電流によるジュール熱を利用して地金を加熱する。一方、燃焼炉は例えばプロパン、都市ガス、LNG、灯油及び重油などの燃料を燃焼させることによって生じる熱を利用して地金を加熱する方式の炉である。
地金の加熱に特に誘導炉を用いると、得られた銅基合金粒子中にNiOが偏析しづらくなることが本発明者の検討の結果判明した。この理由は、誘導炉を用いた加熱では、加熱中に磁場に沿って溶湯が流動するようになり、そのことに起因してNiOが小さく分散し、偏析しづらくなるからであると考えられる。特に、誘導炉のライニング材がカーボンである場合(例えば、誘導炉で黒鉛坩堝を使用する場合)、生成したNiOがカーボンと反応して還元されることとの相乗効果によって、NiOが一層小さく分散しやすくなる。これに対して燃焼炉を用いた加熱では、加熱中の溶湯の流動が活発でなく、そのことに起因してNiOが偏析しやすくなると考えられる。
なお、Cu3Pの添加後に得られた銅基合金粒子中のP元素の質量は、添加したCu3PのP元素の質量よりも減少する場合がある。この理由は、粒子の製造中にリン元素が昇華することがあるからであると推察される(後述する実施例12参照)。したがって、リン元素に換算したCu3Pの添加量は、銅基合金粒子におけるリンの含有割合と異なる場合がある。銅基合金粒子におけるリンの含有は、0.007質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることが更に好ましく、0.012質量%以上であることが一層好ましく、0.013質量%以上であることが更に一層好ましい。また、銅基合金粒子におけるリンの含有割合は、0.5質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以下であることが更に好ましく、0.1質量%以下であることが一層好ましい。
電気銅及び電気ニッケルの地金を用意した。これらの地金を表1に示す量用い、誘導炉に同時に投入した。更に表1に示す量の木炭を誘導炉に投入した。誘導炉の出力を150kWに設定して地金を大気下に加熱して、表1に示す温度の溶湯を得た。
得られた溶湯を、水アトマイズ装置におけるタンディッシュ中に注入した。タンディッシュ底部のノズルから溶湯を落下させながら、フルコーン型のノズルの噴射孔から水を逆円錐状の水流形状になるように溶湯にジェット噴射して球状粒子の集合体からなるアトマイズ粉末を製造した。加熱を開始してからアトマイズ法を行うまでの時間は表1に示すとおりとした。
分級装置を用いて、得られたアトマイズ粉末を分級し、目的とする銅基合金粉末を得た。
溶湯を得る条件を表1に示すとおりとした以外は実施例1と同様にして銅基合金粉末を得た。
電気ニッケルの地金に代えて銅ニッケル合金の地金(銅:ニッケル=85%:15%)を用いた。また、溶湯を得る条件を表1に示すとおりとした。これら以外は実施例1と同様にして銅基合金粉末を得た。
電気銅の地金を溶融させて銅の溶湯を得た後に、電気ニッケルの地金を添加して溶融させて、銅及びニッケルを含む溶湯を得た。また、溶湯を得る条件を表1に示すとおりとした。これら以外は実施例1と同様にして銅基合金粉末を得た。
電気銅及び電気ニッケルの地金に加えて銅ニッケル合金粉末を用いた。使用量は表1に示すとおりとした。この銅ニッケル合金粉末は、実施例1で得られたアトマイズ粉末のうち、分級によって取り除かれたものである。
電気銅の地金を溶融させて銅の溶湯を得た後に、電気ニッケルの地金及び銅ニッケル合金粉末を添加して溶融させて、銅及びニッケルを含む溶湯を得た。
また、溶湯を得る条件を表1に示すとおりとした。
これら以外は実施例1と同様にして銅基合金粉末を得た。
実施例11において、電気銅の地金を溶融させて銅の溶湯を得た後に、電気ニッケルの地金及び銅ニッケル合金粉末並びにCu3Pを添加して溶融させて、銅及びニッケルを含む溶湯を得た。Cu3Pの添加量は、リン元素換算で、溶湯中に0.03質量%となるような量とした。
また、溶湯を得る条件を表1に示すとおりとした。
これら以外は実施例11と同様にして銅基合金粉末を得た。
溶湯を得る条件を表1に示すとおりとした以外は実施例1と同様にして銅基合金粉末を得た。なお、実施例13は、実施例2と同じ製造条件であるところ、アトマイズのバッチ違いであることに起因して、得られる銅基合金粉末の粒度分布が実施例2とは異なっている。
電気銅及び電気ニッケルの地金を用意した。これらの地金を表1に示す量用い、プロパンを燃料とする燃焼炉に同時に投入した。更に表1に示す量の木炭を燃焼炉に投入した。地金を加熱して、表1に示す温度の溶湯を得た。
得られた溶湯を、実施例1と同様の条件で水アトマイズ法に付してアトマイズ粉末を製造した。加熱を開始してからアトマイズ法を行うまでの時間は表1に示すとおりとした。
得られたアトマイズ粉末を実施例1と同様の条件で分級し、目的とする銅基合金粉末を得た。
電気銅及び電気ニッケルの地金に加えて銅ニッケル合金粉末を用いた。使用量は表1に示すとおりとした。この銅ニッケル合金粉末は、実施例1で得られたアトマイズ粉末のうち、分級によって取り除かれたものである。
また、溶湯を得る条件を表1に示すとおりとした。
これら以外は実施例1と同様にして銅基合金粉末を得た。
比較例2において木炭の使用量を表1に示すとおりとした。これ以外は実施例11と同様にして銅基合金粉末を得た。
実施例及び比較例で得られた銅基合金粉末について、上述の方法でNiO偏析粒子存在率を測定した。また、以下の方法で粒度分布を測定した。更に、銅基合金粉末について、以下の方法で元素分析及びドロス発生量の測定を行った。それらの結果を表2に示す。
0.1gの測定試料を、ヘキサメタリン酸ナトリウムの20mg/L水溶液100mlと混合し、超音波ホモジナイザ(日本精機製作所製 US-300T)で10分間分散させた。次いでレーザー回折散乱式粒度分布測定装置(日機装社製マイクロトラックMT3300EX-II)を用いて粒度分布を測定し、累積体積10容量%における体積累積粒径D10、累積体積50容量%における体積累積粒径D50、及び累積体積90容量%における体積累積粒径D90を求めた。
銅、ニッケル及びリンの割合は、銅基合金粒子を塩酸等の酸に溶解させて得られた試料液を対象としたICP発光分光分析法によって測定した。
銅基合金粒子に含まれる酸素の割合は次の方法で測定した。銅基合金粉末1gを秤量し、ニッケルカプセルに入れた後、黒鉛坩堝内で燃焼させて、酸素の含有割合を、酸素・窒素分析装置(株式会社堀場製作所社製のEMGA-920)を用いて求めた。
溶融及び噴霧後に誘導炉やタンディッシュの残留物を回収し計量した。
図7に、実施例及び比較例で採用した溶湯の温度と、銅基合金粉末のNiO偏析粒子存在率との関係をグラフで示した。同図に示すグラフから明らかなとおり、高い溶湯温度でアトマイズを行ってもNiO偏析粒子存在率が抑制されていることが分かる。また、溶湯の温度が低いほどNiO偏析粒子存在率が低い傾向を示すことが分かる。
Claims (10)
- 銅及びニッケルを含有し、残部不可避不純物からなる銅基合金粒子の集合体からなる銅基合金粉末であって、
ニッケルの含有割合が5.0質量%以上20.0質量%以下であり、
銅の含有割合が80.0質量%以上95.0質量%以下であり、
前記銅基合金粉末に含まれる前記銅基合金粒子のうち、断面観察したときにNiOの面積率が2%以上である粒子の個数割合であるNiO偏析粒子存在率が4.0個数%以下である、銅基合金粉末。 - 銅、ニッケル及びリンを含有し、残部不可避不純物からなる銅基合金粒子の集合体からなる銅基合金粉末であって、
ニッケルの含有割合が5.0質量%以上15.0質量%以下であり、
銅の含有割合が80.0質量%以上92.0質量%以下であり、
リンの含有割合が0.007質量%以上0.5質量%以下であり、
前記銅基合金粉末に含まれる前記銅基合金粒子のうち、断面観察したときにNiOの面積率が2%以上である粒子の個数割合であるNiO偏析粒子存在率が4.0個数%以下である、銅基合金粉末。 - 前記面積率が2%以上である前記粒子を対象として算出された前記面積率の平均値が30%以下である、請求項1又は2に記載の銅基合金粉末。
- アトマイズ粉末である、請求項1又は2に記載の銅基合金粉末。
- 銅及びニッケルを含む溶湯を得る溶融工程と、
前記溶湯を用い、アトマイズ法によって、銅の含有割合が80.0質量%以上95.0質量%以下であり、ニッケルの含有割合が5.0質量%以上20.0質量%以下である、銅及びニッケルを含有し、残部不可避不純物からなる銅基合金粒子の集合体からなる銅基合金粉末を得る造粒工程と、を含む、銅基合金粉末の製造方法であって、
前記溶融工程において炭素質物質を添加するとともに、誘導炉を用い、該誘導炉の出力を100kW以上に設定して前記溶湯を得る、銅基合金粉末の製造方法。 - 前記誘導炉による溶融を1850℃以下で行う、請求項5に記載の製造方法。
- 前記誘導炉に通電を開始してから120分以内に前記アトマイズ法を実施する、請求項5又は6に記載の製造方法。
- 銅及びニッケルを含む溶湯にCu3Pを添加して溶湯を得る溶融工程と、
前記溶湯を用い、アトマイズ法によって、銅の含有割合が80.0質量%以上92.0質量%以下であり、ニッケルの含有割合が5.0質量%以上15.0質量%以下であり、リンの含有割合が0.007質量%以上0.5質量%以下である、銅、ニッケル及びリンを含有し、残部不可避不純物からなる銅基合金粒子の集合体からなる銅基合金粉末を得る造粒工程と、を含む、銅基合金粉末の製造方法であって、
Cu3Pの添加量を、Cu3Pを添加した後の溶湯に対し、リン元素に換算して0.005質量%以上1.0質量%以下とし、
前記溶融工程において炭素質物質を添加するとともに、誘導炉を用い、該誘導炉の出力を100kW以上に設定して前記溶湯を得る、銅基合金粉末の製造方法。 - 前記溶融工程において、銅を溶融させた後にニッケルを添加して溶融させる、請求項5又は6に記載の製造方法。
- 前記造粒工程によって得られた前記銅基合金粉末を分級し、分級によって取り除かれた粉末を前記溶融工程に供給する、請求項5又は6に記載の製造方法。
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