[半導体プロセスシート]
本発明の半導体プロセスシートは、粘着力低減型粘着剤層、粘着剤層、及びこれらの間に位置する基材を少なくとも含む積層構造を有する両面粘着シートと、上記両面粘着シートにおける少なくとも一方の粘着面上に剥離可能に密着している熱硬化性樹脂層と、を備える。本発明の半導体プロセスシートの一実施形態について、以下に説明する。
図1は、本発明の半導体プロセスシートの一実施形態を示す断面模式図である。図1に示すように、半導体プロセスシートXは、半導体パッケージの製造過程で使用することのできるものであり、両面粘着シート10及び熱硬化性樹脂層20を備える。両面粘着シート10は、粘着面10a及びこれとは反対の粘着面10bを有し、これら粘着面10a、10b間において、基材11と、粘着力低減型の粘着剤層12と、粘着剤層13とを含む積層構造を有する。熱硬化性樹脂層20は、両面粘着シート10における粘着面10b上に剥離可能に密着している。
図1に示す実施形態では、上述のように、粘着力低減型粘着剤層である粘着剤層12は基材11よりも粘着面10a側に位置し、且つ、粘着剤層13は基材11よりも粘着面10b側に位置する。半導体プロセスシートXの両面粘着シート10については、このような積層構成に代えて、粘着剤層13が基材11よりも粘着面10a側に位置し、粘着剤層12が基材11よりも粘着面10b側に位置してもよい。
また、図1に示す実施形態では、上述のように、熱硬化性樹脂層20は、両面粘着シート10における粘着剤層13が提供する粘着面10b上に剥離可能に密着しており、粘着力低減型粘着剤層である粘着剤層12が粘着面10a側に位置している。このような構成であることにより、粘着剤層12の粘着力を低減させる処置を施した際に粘着剤層12の支持体等からの剥離が容易となる。また上記処置を施した際の熱硬化性樹脂層20への影響も抑えることができる。さらに、封止工程後に、支持体を効率よく回収することができる。
本発明の半導体プロセスシートにおいて、上記熱硬化性樹脂層のガラス転移温度(Tg)が、半導体素子封止材の成形温度以上又は120℃以上である。これにより、本発明の半導体プロセスシートは、半導体チップ等の半導体素子を封止する封止材の成形時において、熱硬化性樹脂層の流動が抑制され半導体素子を強固に固定することで、封止工程や、封止工程後における半導体素子の移動(いわゆる「チップシフト」)を抑制又は防止することができる。また、熱硬化性樹脂層の硬化後では、封止樹脂の硬化収縮による反り発生を、熱硬化性樹脂層の硬化収縮が打ち消すように調整することにより、封止後の反りを抑制又は防止することができる。
また、このような熱硬化性樹脂層を、両面粘着シートの少なくとも一方の粘着面上に予め剥離可能に密着した構成とすることにより、半導体チップを両面粘着シートに仮固定させる際に熱硬化性樹脂層を備えた状態で用いることができるため、熱硬化性樹脂層を別途利用する工程が不要であり、また、封止工程前に反り防止用シートに貼り替える工程も必要ない。このため、本発明の半導体プロセスシートを用いることで半導体パッケージを効率よく製造することができる。
上記熱硬化性樹脂層のガラス転移温度は、特に限定されないが、120℃以上が好ましく、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは150℃以上である。上記ガラス転移温度が120℃以上であると、封止工程及びその後における半導体素子の移動をより抑制することができる。上記ガラス転移温度の上限は、硬化前後において粘着性を有する範囲内であればよいが、例えば200℃である。上記ガラス転移温度は、動的粘弾性測定(DMA)装置を用いて算出することができる。
本発明の半導体プロセスシートにおいて、上記熱硬化性樹脂層のタック力は、200g以上が好ましく、より好ましくは300g以上、さらに好ましくは400g以上である。上記タック力が200g以上であると、熱硬化性樹脂層が半導体素子を固定する力が充分となるため、封止工程や、封止工程後における半導体素子の移動をより抑制することができる。本発明の半導体プロセスシートは、熱硬化性樹脂が少なくとも1点の実質的未硬化状態又は硬化状態において、上記タック力を満たすことが好ましい。なお、本明細書において、実質的に未硬化状態とは、熱硬化性樹脂層について硬化処理を行っていないか、又は硬化度が90%未満となるように部分的に硬化させた状態をいうものである。一方、実質的に硬化状態とは、硬化度が90%以上となるように部分的に硬化させた状態、又は完全硬化した状態をいうものとする。なお、熱硬化性樹脂層の硬化度は、積極的に硬化処理を行っていない状態の発熱量に対する発熱量の割合として算出される。
上記タック力は、40℃の温度条件において、熱硬化性樹脂層に100gの荷重がかかるようにSUS製プレートを1秒間押し付け、その後SUS製プレートを上部に上げて引き離した時にSUS製プレートから熱硬化性樹脂シートが剥離するときのSUS製プレートに掛かる荷重値として得ることができる。
上記熱硬化性樹脂層の硬化開始温度は、特に限定されないが、120~180℃が好ましく、より好ましくは130~150℃である。上記硬化開始温度が上記範囲内であると、封止工程前に、熱硬化性樹脂層を、有効に(例えば、加熱発泡型粘着剤層を膨張させずに)所望の硬化度に硬化させることができるため、封止工程後における半導体素子の移動をより抑制することができる。上記硬化開始温度は、示差走査熱量(DSC)測定により、発熱ピークの立ち上がり温度を反応開始温度として求められる。
本発明の半導体プロセスシートにおいて、少なくとも一部が硬化した状態における上記熱硬化性樹脂層の弾性率は、特に限定されないが、2000Pa以上が好ましく、より好ましくは2500Pa以上、さらに好ましくは3000Pa以上である。上記弾性率は、10000Pa以下が好ましく、より好ましくは7000Pa以下である。上記弾性率が2000Pa以上(特に、上記範囲内)であると、封止工程における封止材の硬化収縮による反り発生を、熱硬化性樹脂層の硬化収縮が打ち消すようにより容易に調整することができ、封止後の反りを抑制又は防止することができる。上記弾性率は、動的粘弾性(DMA)測定により、25℃での貯蔵弾性率E’として求められる。
上記熱硬化性樹脂層が少なくとも1点の未硬化状態又は硬化状態において、上記熱硬化性樹脂層のシリコンに対する、剥離角度180°の条件での剥離試験における剥離力(「第1剥離力」と称する場合がある)が5N以上であることが好ましく、より好ましくは6N以上、さらに好ましくは7N以上、特に好ましくは8N以上である。上記第1剥離力が5N以上であると、半導体チップをより強固に固定(仮固定)でき、封止工程及びその後における半導体チップの移動をいっそう抑制することができる。上記第1剥離力は、高いほど好ましいが、例えば50N以下であってもよく、また、30N以下、20N以下であってもよいが、通常、12N以下であることが多い。なお、上記剥離力は、幅20mmにおける値である。また、上記第1剥離力は、後述の第2剥離力よりも大きく且つ実質的未硬化である状態及び実質的硬化状態における任意の1点において満たすものであることが好ましい。
上記熱硬化性樹脂層が少なくとも1点の未硬化状態又は硬化状態において、上記熱硬化性樹脂層の前記両面粘着シートに対する、剥離角度180°の条件での剥離試験における剥離力(「第2剥離力」と称する場合がある)が0.05N以上であることが好ましく、より好ましくは0.1N以上である。上記第2剥離力が0.05N以上であると、熱硬化性樹脂層と両面粘着シートの間で意図しない剥離が生じるのを抑制することができる。上記第2剥離力は、特に限定されないが、3N以下が好ましく、より好ましくは1N以下、さらに好ましくは0.5N以下である。上記第2剥離力が3N以下であると、半導体チップの封止工程後に両面粘着シートを剥離する際に容易に剥離することができる。なお、上記剥離力は、幅20mmにおける値である。
なお、上記少なくとも1点における実質的に未硬化状態又は硬化状態における熱硬化性樹脂層の両面粘着シートに対する第2剥離力は、両面粘着シートの上記少なくとも1点における実質的に未硬化状態又は硬化状態における熱硬化性樹脂層(第2剥離力における熱硬化性樹脂層の硬化度と略同じ硬化度の未硬化状態又は硬化状態における熱硬化性樹脂層)に対する剥離力と実質的に同じである。
上記第1剥離力は、上記第2剥離力よりも大きいことが好ましい。樹脂からなる粘着剤を備える粘着シートの剥離力について、一般的に、樹脂に対する剥離力とシリコンに対する剥離力は、同程度又は樹脂に対する剥離力の方が高いと言われている。このため、上記第2剥離力は、両面粘着シートのシリコンに対する剥離力を表す指標となる。すなわち、熱硬化性樹脂層のシリコンに対する剥離力が熱硬化性樹脂層の両面粘着シート粘着面に対する剥離力よりも高いことは、熱硬化性樹脂層のシリコンに対する剥離力が両面粘着シートのシリコンに対する剥離力よりも高いことを示し得る。このような実質的に未硬化状態又は硬化状態を少なくとも1点有すると、本発明の半導体プロセスシートを用いることで、上記少なくとも1点の状態において、両面粘着シート上に半導体チップ(半導体素子)を固定する場合や、当該両面粘着シートよりもシリコンに対する剥離力が弱い樹脂層上に半導体チップを固定する場合と比べて、熱硬化性樹脂層の半導体チップを固定(仮固定)する力が充分となるため、封止工程や、封止工程後におけるチップシフトをより抑制又は防止することができる。特に、熱硬化性樹脂層を硬化させることにより、封止工程などでチップシフトをよりいっそう抑制又は防止することができる。また、熱硬化性樹脂層の硬化後では、封止樹脂の硬化収縮による反り発生を、熱硬化性樹脂層の硬化収縮が打ち消すように調整することにより、封止後の反りをより抑制又は防止することができる。上記第2剥離力は、両面粘着シートにおける少なくとも一方の粘着面に対するものであればよいが、本発明の半導体プロセスシートは、上記第1剥離力が、両面粘着シートにおける両方の粘着面に対する第2剥離力よりも大きいことが好ましい。
上記第1剥離力及び上記第2剥離力は、互いに同条件において測定される剥離力であれば特に限定されないが、23℃、剥離角度180°、及び引張速度300mm/分の条件での剥離試験における剥離力であることが重要である。上記第1剥離力及び第2剥離力については、引張試験機(商品名「オートグラフAG-X」、株式会社島津製作所製)を使用して測定することができる。その測定に供される試験片の作製手法及び測定手法は、具体的には次のとおりである。
第1剥離力の測定にあたり、熱硬化性樹脂層から幅20mm×長さ100mmのサイズの熱硬化性樹脂層を試験片として切り出す。次に、試験片をその一方の面にてシリコン板(一般的な未研削ウエハのミラー面側)に貼り合わせる。この貼り合わせは、2kgのハンドローラーを1往復させる圧着作業によって行う。次に、必要に応じて、加熱により熱硬化性樹脂層を所望の硬化度となるように硬化させる。そして、引張試験機(商品名「オートグラフAG-X」、株式会社島津製作所製)を使用して、23℃、剥離角度180°、及び引張速度300mm/分の条件で当該試験片について剥離試験を行い、未硬化状態又は硬化状態における熱硬化性樹脂層のシリコン板に対する剥離力(第1剥離力)を測定する。
第2剥離力の測定にあたり、半導体プロセスシートから幅20mm×長さ100mmのサイズの試験片を切り出す。次に、必要に応じて、加熱により熱硬化性樹脂層を所望の硬化度となるように硬化させる。なお、熱硬化性樹脂層を硬化させる場合、第2剥離力における硬化性樹脂層の硬化度は、第1剥離力を測定する際の熱硬化性樹脂層の硬化度と同じ又は略同じ(同程度)とする。すなわち、第2剥離力の測定にあたり、熱硬化性樹脂層を硬化させる際の加熱条件を、第1剥離力を測定する際の熱硬化性樹脂を硬化させる際と同じ又は略同じ条件とする。そして、引張試験機(商品名「オートグラフAG-X」、株式会社島津製作所製)を使用して、23℃、剥離角度180°、及び引張速度300mm/分の条件で当該試験片について剥離試験を行い、未硬化状態又は硬化状態における熱硬化性樹脂層の両面粘着シートの粘着面に対する剥離力(第2剥離力)を測定する。
本発明の半導体プロセスシートにおいて、上記第1剥離力の上記第2剥離力に対する比は、特に限定されないが、2以上であることが好ましく、より好ましくは10以上、さらに好ましくは20以上、特に好ましくは30以上である。上記比が2以上であると、上記少なくとも1点の状態における熱硬化性樹脂層が両面粘着シートの粘着面よりもシリコンに対する剥離力が充分に高いことを示すため、両面粘着シート上に半導体チップを固定する場合や、当該両面粘着シートよりもシリコンに対する剥離力が弱い樹脂層上に半導体チップを固定する場合と比べて、熱硬化性樹脂層の上記少なくとも1点の状態において半導体チップをより強固に固定(仮固定)することができ、封止工程及びその後における半導体チップの移動をよりいっそう抑制することができる。また、このような上記熱硬化性樹脂層の熱硬化により、封止樹脂の硬化収縮による反り発生を、熱硬化性樹脂層の硬化収縮が打ち消すようにより適度に調整することができる。これにより、反りをより抑制することができる。上記比は、高いほど好ましいが、例えば100以下であってもよく、90以下、80以下、70以下などであってもよい。
本発明の半導体プロセスシートにおいて、硬化状態における上記熱硬化性樹脂層のシリコンに対する剥離力(「第3剥離力」と称する場合がある)は、特に限定されないが、通常、未硬化状態における熱硬化性樹脂層のシリコンに対する剥離力よりも大きい。本発明の半導体プロセスシートでは、具体的には、上記第3剥離力は、5N以上であり、好ましくは5Nを超え、より好ましくは6N以上、さらに好ましくは8N以上、さらに好ましくは10N以上、特に好ましくは12N以上である。上記第3剥離力は、高いほど好ましいが、例えば50N以下であってもよく、また、30N以下、20N以下であってもよい。上記第3剥離力が5N以上であると、熱硬化性樹脂層の硬化状態において半導体チップを固定する力が充分となるため、封止工程及びその後における半導体チップの移動をより抑制することができる。また、熱硬化後において、封止樹脂の硬化収縮による反り発生を、熱硬化性樹脂層の硬化収縮が打ち消すように調整することにより、反りをよりいっそう抑制することができる。なお、上記第3剥離力は、幅20mmにおける値である。また、上記第3剥離力は、上記第2剥離力よりも大きく且つ硬化状態における任意の1点において満たすものであればよい。
上記第3剥離力も、第1剥離力や第2剥離力と同条件において測定される剥離力であれば特に限定されないが、23℃、剥離角度180°、及び引張速度300mm/分の条件での剥離試験における剥離力であることが重要である。上記第3剥離力は、引張試験機(商品名「オートグラフAG-X」、株式会社島津製作所製)を使用して測定することができる。その測定に供される試験片の作製手法及び測定手法は、具体的には次のとおりである。
上記第3剥離力の測定にあたり、熱硬化性樹脂層から幅20mm×長さ100mmのサイズの試験片を切り出す。次に、試験片をその一方の面にてシリコン板(一般的な未研削ウエハのミラー面側)に貼り合わせる。この貼り合わせは、2kgのハンドローラーを1往復させる圧着作業によって行う。次に、加熱により熱硬化性樹脂層を90%以上の硬化度となるように硬化させる。そして、引張試験機(商品名「オートグラフAG-X」、株式会社島津製作所製)を使用して、23℃、剥離角度180°、及び引張速度300mm/分の条件で当該試験片について剥離試験を行い、硬化状態における熱硬化性樹脂層のシリコン板に対する剥離力(第3剥離力)を測定する。
なお、第1剥離力が、熱硬化性樹脂層の硬化状態における剥離力である場合、第1剥離力と、第3剥離力は、同じ又は略同じ条件の測定方法となる。よって、第1剥離力が硬化状態における剥離力である場合、第1剥離力は第3剥離力と同じ又は同程度の大きさとなる場合もある。
本発明の半導体プロセスシートにおいて、上記第1剥離力及び/又は第3剥離力は、上記両面粘着シートのシリコンに対する剥離力よりも大きいことが好ましい。このような構成を有する場合、両面粘着シート上に半導体チップを固定する場合や、当該両面粘着シートよりもシリコンに対する剥離力が弱い樹脂層上に半導体チップを固定する場合と比べて、熱硬化性樹脂層の上記少なくとも1点の状態において半導体チップをより強固に固定することができるため、熱硬化性樹脂層の半導体チップを固定(仮固定)する力が充分となり、熱硬化後においては反りの発生を抑制するとともに、封止工程及びその後における半導体チップの移動をより抑制することができる。なお、本明細書において、上記両面粘着シートのシリコンに対する剥離力を「第4剥離力」と称する場合がある。
上記第1剥離力及び上記第4剥離力は、互いに同条件において測定される剥離力であれば特に限定されないが、23℃、剥離角度180°、及び引張速度300mm/分の条件での剥離試験における剥離力であることが好ましい。上記第3剥離力及び上記第4剥離力についても同様である。上記第4剥離力については、引張試験機(商品名「オートグラフAG-X」、株式会社島津製作所製)を使用して測定することができる。その測定に供される試験片の作製手法及び測定手法は、具体的には次のとおりである。
第4剥離力の測定にあたり、両面粘着シートから幅20mm×長さ100mmのサイズの試験片を切り出す。次に、試験片をその粘着面にてシリコン板(一般的な未研削ウエハのミラー面側)に貼り合わせる。この貼り合わせは、2kgのハンドローラーを1往復させる圧着作業によって行う。そして、引張試験機(商品名「オートグラフAG-X」、株式会社島津製作所製)を使用して、23℃、剥離角度180°、及び引張速度300mm/分の条件で当該試験片について剥離試験を行い、両面粘着シートの粘着面のシリコン板に対する剥離力(第4剥離力)を測定する。
本発明の半導体プロセスシートにおいて、上記少なくとも1点の状態における上記熱硬化性樹脂層のシリコンに対するせん断接着力が、上記少なくとも1点の状態における上記熱硬化性樹脂層の上記両面粘着シートに対するせん断接着力よりも大きいことが好ましい。また、本発明の半導体プロセスシートにおいて、硬化状態における上記熱硬化性樹脂層のシリコンに対するせん断接着力が、上記少なくとも1点の状態における上記熱硬化性樹脂層の上記両面粘着シートに対するせん断接着力と同程度又はそれ以上の大きさを有していることが好ましい。このような構成を有する場合、両面粘着シートの粘着面に対するせん断接着力よりもシリコンに対するせん断接着力が高い熱硬化性樹脂層を備えることとなるため、封止工程及びその後における半導体チップのせん断方向の移動をより抑制することができる。
本発明の半導体プロセスシートにおいて、上記少なくとも1点の状態における上記熱硬化性樹脂層のシリコンに対するせん断接着力が、上記両面粘着シートのシリコンに対するせん断接着力よりも大きいことが好ましい。このような構成を有する場合、両面粘着シートの粘着面よりもシリコンに対するせん断接着力がより高い熱硬化性樹脂層を備えることとなるため、封止工程及びその後における半導体チップのせん断方向の移動をより抑制することができる。
本発明の半導体プロセスシートにおいて、上記少なくとも1点の状態における上記熱硬化性樹脂層のシリコンに対するせん断接着力(第1せん断接着力)は、特に限定されないが、5kg以上が好ましく、より好ましくは6kg以上、さらに好ましくは10kg以上である。上記第1せん断接着力が5kg以上であると、半導体チップをより強固に固定(仮固定)でき、封止工程及びその後における半導体チップの移動をよりいっそう抑制することができる。上記第1せん断接着力は、高いほど好ましいが、例えば70kg以下、50kg以下、40kg以下であってもよい。なお、上記第1せん断接着力は、幅3mm×長さ3mmの熱硬化性樹脂層における値である。また、上記第1せん断接着力は、上記第1剥離力における、上記少なくとも1点の状態における熱硬化性樹脂層と同じ又は同程度の硬化度にて測定されるものである。すなわち、上記第1せん断接着力と、上記第1剥離力とでは、同じ又は略同じ加熱条件で熱硬化性樹脂を硬化させている。
上記第1せん断接着力は、以下のようにして測定される。熱硬化性樹脂層から幅3mm×長さ3mmのサイズの熱硬化性樹脂層を切り出す。また、シリコン板(一般的な未研削ウエハのミラー面側、厚さ500μm)から幅10mm×長さ10mmのシリコン板と、さらに、幅3mm×長さ3mmに個片化したシリコンチップとを準備する。そして、切り出した熱硬化性樹脂層と幅3mm×長さ3mmに個片化したシリコンチップとを温度70℃、圧力0.5MPaの条件下で貼り合わせ、熱硬化性樹脂層とシリコンチップとが積層した試験片(幅3mm×長さ3mm)の試験片を作製する。上記試験片を、ホットプレート(70℃)上に静置されたシリコン板(厚さ500μm×幅10mm×幅10mm)上に、熱硬化性樹脂層側の面が接触する形態で貼り合わせ、手で押して圧着させる。次に、必要に応じて、加熱により熱硬化性樹脂層を所望の硬化度となるように硬化させる。そして、このシリコン板/熱硬化性樹脂層/シリコンチップの積層体を、せん断接着力測定装置(商品名「DAGE4000」、Nordson社製)にセットして、温度23℃の条件下で、ジグの下面の位置の高さ80μm(シリコン板からの高さ)、速度500μm/sec、移動量500μmの条件でジグを、シリコンチップを押す状態で移動させて、上記少なくとも1点の状態における熱硬化性樹脂層のせん断接着力を測定する。
本発明の半導体プロセスシートにおいて、上記少なくとも1点の状態における上記熱硬化性樹脂層の上記両面粘着シートに対するせん断接着力(第2せん断接着力)は、特に限定されないが、0.1kg以上が好ましく、より好ましくは0.5kg以上、さらに好ましくは1kg以上、特に好ましくは2kg以上である。上記第2せん断接着力が0.1kg以上であると、熱硬化性樹脂層の半導体チップを固定(仮固定)する力がより充分となるため、封止工程及びその後における半導体チップの移動をより抑制することができる。上記第2せん断接着力は、高いほど好ましいが、例えば10kg以下、5kg以下、3kg以下であってもよい。なお、上記第2せん断接着力は、幅3mm×長さ3mmの熱硬化性樹脂層における値である。また、上記第2せん断接着力は、上記第1剥離力における、上記少なくとも1点の状態における熱硬化性樹脂層と同じ硬化度にて測定されるものである。
上記第2せん断接着力は、以下のようにして測定される。上記第1せん断接着力の測定において準備したシリコン板(厚さ500μm×幅10mm×幅10mm)上に、両面粘着シートを貼り合わせる。そして、上記第1せん断接着力の測定において作製した上記試験片を、上記両面粘着シート上に、熱硬化性樹脂層側の面が接触する形態で貼り合わせ、手で押して圧着させる。次に、必要に応じて、加熱により熱硬化性樹脂層を所望の硬化度となるように硬化させる。そして、このシリコン板/両面粘着シート/熱硬化性樹脂層/シリコンチップの積層体を、せん断接着力測定装置(商品名「DAGE4000」、Nordson社製)にセットして、温度23℃の条件下で、ジグの下面の位置の高さ80μm(両面粘着シートからの高さ)、速度500μm/sec、移動量500μmの条件でジグを、シリコンチップを押す状態で移動させて、両面粘着シートのせん断接着力を測定する。
本発明の半導体プロセスシートにおいて、硬化状態における上記熱硬化性樹脂層のシリコンに対するせん断接着力(第3せん断接着力)は、特に限定されないが、3kg以上が好ましく、より好ましくは10kg以上、さらに好ましくは20kg以上、特に好ましくは30kg以上である。上記せん断接着力が3kg以上であると、熱硬化性樹脂層の半導体チップを固定する力がより充分となるため、封止工程後における半導体チップの移動をより抑制することができる。上記第3せん断接着力は、高いほど好ましいが、例えば50kg以下であってもよい。上記第3せん断接着力は、幅3mm×長さ3mmの熱硬化性樹脂層における値である。また、上記第3せん断接着力は、上記第3剥離力における、硬化度における熱硬化性樹脂層と同じ硬化度にて測定されるものである。
上記第3せん断接着力は、以下のようにして測定される。上記第1せん断接着力の測定において作製したシリコン板/熱硬化性樹脂層/シリコンチップの積層体を、加熱して熱硬化性樹脂層を熱硬化させる。そして、このシリコン板/硬化状態の熱硬化性樹脂層/シリコンチップの積層体を、せん断接着力測定装置(商品名「DAGE4000」、Nordson社製)にセットして、温度23℃の条件下で、ジグの下面の位置の高さ80μm(シリコン板からの高さ)、速度500μm/sec、移動量500μmの条件でジグを、シリコンチップを押す状態で移動させて、硬化状態における熱硬化性樹脂層のせん断接着力を測定する。なお、第1せん断接着力が、熱硬化性樹脂層の硬化状態における剥離力である場合、第1せん断接着力と、第3せん断接着力は、同じ又は略同じ条件の測定方法となる。
本発明の半導体プロセスシートにおいて、上記両面粘着シートのシリコンに対するせん断接着力(第4せん断接着力)は、特に限定されないが、5kg以下が好ましく、より好ましくは3kg以下である。上記第4せん断接着力が5kg以下であると、半導体チップの封止工程後に両面粘着シートを剥離する際に容易に剥離することができる。上記第4せん断接着力は、例えば0.5kg以上、1kg以上であってもよい。なお、上記第4せん断接着力は、幅3mm×長さ3mmのシリコンに対する値である。
上記第4せん断接着力は、以下のようにして測定される。上記第1せん断接着力の測定において準備したシリコン板(厚さ500μm×幅10mm×幅10mm)上に、両面粘着シートを貼り合わせる。そして、上記第1せん断接着力の測定において準備したシリコンチップ(厚さ500μm×幅3mm×幅3mm)を、上記両面粘着シート上に貼り合わせ、手で押して圧着させる。このシリコン板/両面粘着シート/シリコンチップの積層体を、せん断接着力測定装置(商品名「DAGE4000」、Nordson社製)にセットして、温度23℃の条件下で、ジグの下面の位置の高さ80μm(両面粘着シートからの高さ)、速度500μm/sec、移動量500μmの条件でジグを、シリコンチップを押す状態で移動させて、両面粘着シートのせん断接着力を測定する。
本発明の半導体プロセスシートにおいて、下記位置ずれ評価により測定される、上記熱硬化性樹脂の熱硬化前後における半導体チップの位置ずれ距離は、特に限定されないが、150μm以下が好ましく、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下、特に好ましくは30μm以下である。なお、半導体チップの位置ずれ距離の下限値はゼロが好ましい。
<位置ずれ評価>
熱硬化性樹脂層を備える半導体プロセスシートの粘着剤層面をシリコン板(一般的な未研削ウエハのミラー面側)に貼り合わせ、シリコン板/両面粘着シート/熱硬化性樹脂層の積層体を作製する。上記積層体の熱硬化性樹脂層に、チップ(幅10mm×長さ10mmに個片化されたシリコンチップ;厚み100μm)を、積層体の中心部と、中心部のチップの各辺から70mm離れた4か所に貼り付ける。次いで、必要に応じて、上記積層体を加熱して熱硬化性樹脂層を硬化させる。そして、チップを貼り合わせた面より各チップの座標を求めて、このチップの位置を初期位置とする。その後、封止用シート(200μm)を用いてチップを封止し、150℃で1時間の条件で熱硬化させ、封止硬化物体を得る。この封止硬化物体から[熱硬化性樹脂層/チップ/封止層]を剥離し、熱硬化性樹脂層を研磨により除去して、チップの表面を露出させる。その後、チップ露出面側より各チップの座標を求めて、このチップの位置を封止硬化後位置とする。そして、中心部から離れた4箇所のチップについて、初期位置から封止硬化後位置までチップが動いた距離の平均値を位置ずれ距離とする。
本発明の半導体プロセスシートにおいて、上記熱硬化性樹脂層の下記反り矯正量評価により測定される反り矯正量は、封止材(封止シートなど)の反り量に対応した量であればよく、封止材の種類などに応じて適宜設定することが重要である。なお、具体的な数値としては、例えば、1~20mmの範囲から、適宜設定できる。
<反り矯正量評価>
シリコン板(一般的な未研削ウエハ)を200μm厚みに#2000仕上げで研削し、研削面側に熱硬化性樹脂層(厚さ40μm)を貼り合わせて、直径300mmの円盤状のシリコン板/熱硬化性樹脂層の積層体を作製する。上記積層体を130℃のオーブンで2時間加熱して、熱硬化性樹脂層を硬化させる。その後、上記積層体を、熱硬化性樹脂層が上面側となる形態で、平面台上に常温で1時間放置する。その後、上記積層体の円盤外周部と、上記平面台上の平坦面との距離を測定し、最も差がある(最も大きい)距離を、反り矯正量とする。
(基材)
両面粘着シートにおける基材は、両面粘着シートや半導体プロセスシートにおいて支持体として機能する要素である。基材としては、例えば、プラスチック基材(特にプラスチックフィルム)が挙げられる。上記基材は、単層であってもよいし、同種又は異種の基材の積層体であってもよい。
上記プラスチック基材を構成する樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体等のポリオレフィン樹脂;ポリウレタン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル;ポリカーボネート;ポリイミド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルイミド;アラミド、全芳香族ポリアミド等のポリアミド;ポリフェニルスルフィド;フッ素樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;セルロース樹脂;シリコーン樹脂などが挙げられる。上記樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
基材がプラスチックフィルムである場合、上記プラスチックフィルムは、無配向であってもよく、少なくとも一方向(一軸方向、二軸方向等)に配向していてもよい。上記少なくとも一方向に配向したプラスチックフィルムは、無延伸のプラスチックフィルムを当該少なくとも一方向に延伸(一軸延伸、二軸延伸等)することにより得ることができる。
基材の表面は、粘着剤層との密着性、保持性等を高める目的で、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、サンドマット加工処理、オゾン暴露処理、火炎暴露処理、高圧電撃暴露処理、イオン化放射線処理等の物理的処理;クロム酸処理等の化学的処理;コーティング剤(下塗り剤)による易接着処理等の表面処理が施されていてもよい。また、帯電防止能を付与するため、金属、合金、これらの酸化物等を含む導電性の蒸着層を基材表面に設けてもよい。密着性を高めるための表面処理は、基材における粘着剤層側の表面全体に施されていることが好ましい。
基材の厚さは、両面粘着シート及び半導体プロセスシートにおける支持体として基材が機能するための強度を確保するという観点からは、5μm以上が好ましく、より好ましくは10μm以上である。また、両面粘着シート及び半導体プロセスシートにおいて適度な可撓性を実現するという観点からは、基材の厚さは、300μm以下が好ましく、より好ましくは200μm以下である。
(粘着力低減型粘着剤層)
上記粘着力低減型粘着剤層は、粘着力低減型の粘着剤から形成される。上記粘着力低減型粘着剤層としては、例えば、加熱発泡型粘着剤から形成される粘着剤層(加熱発泡型粘着剤層)や、放射線照射によって粘着力が半導体パッケージ製造プロセスにて利用できない程度に低下するタイプ(第1タイプ)の放射線硬化性粘着剤から形成される粘着剤層(放射線硬化性粘着剤層)が挙げられる。上記粘着力低減型粘着剤層においては、粘着力低減型粘着剤を一種のみ使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
上記加熱発泡型粘着剤層は、例えば、粘着主剤と、加熱によって発泡や膨張をする成分とを少なくとも含有する。加熱発泡型粘着剤層は、それに含有される発泡性成分や膨張性成分が充分な加熱を受けると、膨張し、その表面(粘着面)にて凹凸形状を生じる。被着体に粘着面が貼着している状態で加熱発泡型粘着剤層がそのような加熱を受けると、当該粘着剤層が膨張してその粘着面にて凹凸形状を生じて被着体に対する接着総面積を減じ、当該被着体に対する粘着力が低下することとなる。
加熱発泡型粘着剤層用の粘着主剤としては、公知乃至慣用の感圧型の粘着剤を用いることができ、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられる。
上記アクリル系ポリマーは、ポリマーの構成単位として、アクリル系モノマー(分子中に(メタ)アクリロイル基を有するモノマー成分)に由来する構成単位を含むポリマーである。
上記アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を質量割合で最も多く含むポリマーであることが好ましい。なお、アクリル系ポリマーは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。また、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び/又は「メタクリル」(「アクリル」及び「メタクリル」のうち、いずれか一方又は両方)を表し、他も同様である。
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステルなどが挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s-ブチルエステル、t-ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2-エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル(ラウリルエステル)、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、エイコシルエステルなどが挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸のシクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステルなどが挙げられる。上記(メタ)アクリル酸アリールエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸のフェニルエステル、ベンジルエステルなどが挙げられる。
上記炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルによる粘着性等の基本特性を粘着剤層において適切に発現させるためには、アクリル系ポリマーを形成するための全モノマー成分における炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルの割合は、40質量%以上が好ましく、より好ましくは60質量%以上である。
上記アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性等の改質を目的として、上記炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他のモノマー成分に由来する構成単位を含んでいてもよい。上記他のモノマー成分としては、例えば、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物モノマー、ヒドロキシ基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、窒素原子含有モノマー等の極性基含有モノマーなどが挙げられる。
上記カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などが挙げられる。上記酸無水物モノマーとしては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられる。
上記ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
上記グリシジル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどが挙げられる。
上記スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などが挙げられる。
上記リン酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどが挙げられる。
上記窒素原子含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイルモルホリン等のモルホリノ基含有モノマー、(メタ)アクリロニトリル等のシアノ基含有モノマー、(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマーなどが挙げられる。
上記他のモノマー成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルによる粘着性等の基本特性を粘着剤層において適切に発現させるためには、アクリル系ポリマーを形成するための全モノマー成分における、上記極性基含有モノマーの割合は、60質量%以下が好ましく、より好ましくは50質量%以下である。
上記アクリル系ポリマーは、そのポリマー骨格中に架橋構造を形成するために、アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分と共重合可能な多官能性モノマーに由来する構成単位を含んでいてもよい。上記多官能性モノマーとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート(例えば、ポリグリシジル(メタ)アクリレート)、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等の分子内に(メタ)アクリロイル基と他の反応性官能基を有する単量体などが挙げられる。
上記多官能性モノマーは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルによる粘着性等の基本特性を粘着剤層において適切に発現させるためには、アクリル系ポリマーを形成するための全モノマー成分における上記多官能性モノマーの割合は、40質量%以下が好ましく、より好ましくは30質量%以下である。
アクリル系ポリマーは、アクリル系モノマーを含む一種以上のモノマー成分を重合に付すことにより得られる。重合方法としては、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合などが挙げられる。
上記両面粘着シート及び本発明の半導体プロセスシートが使用される半導体パッケージ製造時における高度の清浄性の観点からは、両面粘着シート内の各粘着剤層中の低分子量成分は少ない方が好ましい。このため、上記アクリル系ポリマーの数平均分子量は、10万以上が好ましく、より好ましくは20万~300万である。アクリル系ポリマーの数平均分子量は、例えば、採用される重合手法や、用いられる重合開始剤の種類及びその使用量、重合反応の温度及び時間、全モノマー成分中の各種モノマーの濃度、モノマー滴下速度などによって制御することができる。
粘着剤層或いは粘着剤層を形成する粘着剤は、架橋剤を含有していてもよい。例えば、ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを用いる場合、アクリル系ポリマーを架橋させ、粘着剤層中の低分子量物質をより低減させることができる。また、アクリル系ポリマーの数平均分子量を高めることができる。
上記架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、ポリオール化合物(ポリフェノール系化合物等)、アジリジン化合物、メラミン化合物などが挙げられる。架橋剤を使用する場合、その使用量は、ベースポリマー100質量部に対して、6質量部以下が好ましく、より好ましくは0.1~5質量部である。
粘着剤層を形成する粘着剤は、重合開始剤を含有していてもよい。上記重合開始剤としては、例えば、アゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤、レドックス系重合開始剤などが重合手法に応じて用いられる。アゾ系重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4’-アゾビス-4-シアノバレリアン酸などが挙げられる。過酸化物系重合開始剤としては、例えば、ジベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルマレエートなどが挙げられる。
上記加熱によって発泡や膨張をする成分としては、例えば、発泡剤、熱膨張性微小球が挙げられる。上記発泡剤としては、無機系発泡剤及び有機系発泡剤が挙げられる。無機系発泡剤としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、アジド類などが挙げられる。有機系発泡剤としては、例えば、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロモノフルオロメタン等の塩フッ化アルカン;アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ系化合物;パラトルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホニルヒドラジド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アリルビス(スルホニルヒドラジド)等のヒドラジン系化合物;ρ-トルイレンスルホニルセミカルバジド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)等のセミカルバジド系化合物;5-モルホリル-1,2,3,4-チアトリアゾール等のトリアゾール系化合物;N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’-ジメチル-N,N’-ジニトロソテレフタルアミド等のN-ニトロソ系化合物などが挙げられる。
上記熱膨張性微小球としては、例えば、加熱によって容易にガス化して膨張する物質が殻内に封入された構成の微小球が挙げられる。加熱によって容易にガス化して膨張する物質としては、例えば、イソブタン、プロパン、ペンタンなどが挙げられる。加熱によって容易にガス化して膨張する物質をコアセルベーション法や界面重合法などによって殻形成物質内に封入することによって、熱膨張性微小球を作製することができる。殻形成物質としては、熱溶融性を示す物質や、封入物質の熱膨張の作用によって破裂し得る物質を用いることができる。そのような物質としては、例えば、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホンなどが挙げられる。
上記粘着力低減型粘着剤層が加熱発泡型粘着剤層である場合、当該粘着剤層の厚さは例えば5~100μmである。
上記放射線硬化性粘着剤としては、例えば、電子線、紫外線、α線、β線、γ線、又はX線の照射により硬化するタイプの粘着剤を用いることができ、紫外線照射によって硬化するタイプの粘着剤(紫外線硬化性粘着剤)を特に好ましく用いることができる。
上記放射線硬化性粘着剤としては、例えば、上記アクリル系ポリマー等のベースポリマーと、放射線重合性の炭素-炭素二重結合等の官能基を有する放射線重合性のモノマー成分やオリゴマー成分とを含有する添加型の放射線硬化性粘着剤が挙げられる。
上記放射線硬化性粘着剤に含まれ得るアクリル系ポリマーとしては、加熱発泡型粘着剤層に含まれ得るアクリル系ポリマーとして例示及び説明されたものが挙げられる。
上記放射線重合性のモノマー成分としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
上記放射線重合性のオリゴマー成分としては、例えば、ウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系などの種々のオリゴマーが挙げられ、分子量100~30000程度のものが適当である。放射線硬化性粘着剤中の放射線重合性のモノマー成分やオリゴマー成分の総含有量は、形成される放射線硬化性粘着剤層の粘着力を放射線照射によって適切に低下させ得る範囲で決定され、アクリル系ポリマーなどのベースポリマー100質量部に対して、例えば5~500質量部であり、好ましくは40~150質量部である。
また、添加型の放射線硬化性粘着剤としては、例えば特開昭60-196956号公報に開示のものを用いてもよい。
上記放射線硬化性粘着剤としては、放射線重合性の炭素-炭素二重結合等の官能基をポリマー側鎖や、ポリマー主鎖中、ポリマー主鎖末端に有するベースポリマーを含有する内在型の放射線硬化性粘着剤も挙げられる。このような内在型の放射線硬化性粘着剤を用いると、形成された粘着剤層内での低分子量成分の移動に起因する粘着特性の意図しない経時的変化を抑制することができる傾向がある。
上記内在型の放射線硬化性粘着剤に含有されるベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーが好ましい。上記アクリル系ポリマーとしては、加熱発泡型粘着剤層に含まれ得るアクリル系ポリマーとして例示及び説明されたものが挙げられる。アクリル系ポリマーへの放射線重合性の炭素-炭素二重結合の導入方法としては、例えば、官能基(第1の官能基)を有するモノマー成分を含む原料モノマーを重合(共重合)させてアクリル系ポリマーを得た後、上記第1の官能基との間で反応を生じて結合を形成し得る官能基(第2の官能基)及び放射線重合性の炭素-炭素二重結合を有する化合物を、炭素-炭素二重結合の放射線重合性を維持したままアクリル系ポリマーに対して縮合反応又は付加反応させる方法が挙げられる。
上記第1の官能基と上記第2の官能基の組み合わせとしては、例えば、カルボキシ基とエポキシ基、エポキシ基とカルボキシ基、カルボキシ基とアジリジル基、アジリジル基とカルボキシ基、ヒドロキシ基とイソシアネート基、イソシアネート基とヒドロキシ基などが挙げられる。これらの中でも、反応追跡の容易さの観点から、ヒドロキシ基とイソシアネート基の組み合わせ、イソシアネート基とヒドロキシ基の組み合わせが好ましい。中でも、反応性の高いイソシアネート基を有するポリマーを作製することは技術的難易度が高く、一方でヒドロキシ基を有するアクリル系ポリマーの作製及び入手の容易性の観点から、上記第1の官能基がヒドロキシ基であり、上記第2の官能基がイソシアネート基である組み合わせが好ましい。
放射性重合性の炭素-炭素二重結合及びイソシアネート基を有する化合物としては、メタクリロイルイソシアネート、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)、m-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネートなどが挙げられる。
上記放射線硬化性粘着剤は、光重合開始剤を含有することが好ましい。上記光重合開始剤としては、例えば、α-ケトール系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ケタール系化合物、芳香族スルホニルクロリド系化合物、光活性オキシム系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、カンファーキノン、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、アシルホスフォナートなどが挙げられる。
上記α-ケトール系化合物としては、例えば、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、α-ヒドロキシ-α,α’-ジメチルアセトフェノン、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが挙げられる。
上記アセトフェノン系化合物としては、例えば、メトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフエノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-1などが挙げられる。
上記ベンゾインエーテル系化合物としては、例えば、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテルなどが挙げられる。上記ケタール系化合物としては、例えば、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられる。
上記芳香族スルホニルクロリド系化合物としては、例えば、2-ナフタレンスルホニルクロリドなどが挙げられる。上記光活性オキシム系化合物としては、例えば、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシムなどが挙げられる。
上記ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
上記チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントンなどが挙げられる。
放射線硬化性粘着剤中の光重合開始剤の含有量は、ベースポリマー100質量部に対して、例えば0.05~20質量部である。
上記粘着力低減型粘着剤層が放射線硬化型粘着剤層である場合、当該粘着剤層の厚さは例えば2~50μmである。
上記粘着力低減型粘着剤層又は当該粘着剤層を形成する粘着剤は、上述の各成分以外に、粘着付与剤、老化防止剤、着色剤(顔料、染料等)等の公知乃至慣用の粘着剤層に用いられる添加剤が配合されていてもよい。
上記着色剤としては、例えば、放射線照射により着色する化合物が挙げられる。放射線照射により着色する化合物を含有する場合、放射線照射された部分のみを着色することができる。上記放射線照射により着色する化合物は、放射線照射前には無色又は淡色であるが、放射線照射により有色となる化合物であり、例えば、ロイコ染料などが挙げられる。上記放射線照射により着色する化合物の使用量は特に限定されず適宜選択することができる。
(粘着剤層)
上記両面粘着シートが有する、上記粘着力低減型粘着剤層と対となる粘着剤層(例えば粘着剤層13)は、半導体プロセスシートの使用過程において外部からの作用によっては粘着力がほとんど又は全く低減しない粘着剤層(粘着力非低減型粘着剤層)であることが好ましい。上記粘着力低減型粘着剤層は粘着力低減の処理を行うことで(特に、加熱発泡型粘着剤層の場合は加熱により発泡することで)被着体から容易に剥離することが可能であり、一方で粘着力非低減型粘着剤層は加熱による発泡等の粘着力低減を起こさない。このため、このような構成を有する本発明の半導体プロセスシートによれば、両面粘着シートを、加熱により容易に一方の粘着面の被着体のみから剥離することができる。
上記粘着力非低減型粘着剤層としては、例えば、感圧型粘着剤層や、放射線照射によって粘着力が低下するものの半導体パッケージ製造プロセスにて利用できる程度に粘着力を維持するタイプ(第2タイプ)の放射線硬化性粘着剤から形成される粘着剤層が挙げられる。
上記粘着剤層としての感圧型粘着剤層を形成する感圧型粘着剤としては、公知乃至慣用の感圧型の粘着剤を用いることができ、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられる。上記粘着剤層がアクリル系ポリマーを含有する場合、当該アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を質量割合で最も多い構成単位として含むポリマーであることが好ましい。上記アクリル系ポリマーとしては、例えば、上述の加熱膨張型粘着剤層に含まれ得るアクリル系ポリマーとして例示及び説明されたものが挙げられる。上記粘着剤層を形成する粘着剤は、一種のみであってもよいし、二種以上であってもよい。
上記第2タイプの放射線硬化性粘着剤としては、例えば、上記アクリル系ポリマー等のベースポリマーと、放射線重合性の炭素-炭素二重結合等の官能基を有する放射線重合性のモノマー成分やオリゴマー成分とを含有する添加型の放射線硬化性粘着剤が挙げられる。上記添加型の放射線硬化性粘着剤を構成する成分としては、例えば、上記粘着力低減型粘着剤層用の添加型の放射線硬化性粘着剤を構成する成分として例示及び説明されたものが挙げられる。添加型の放射線硬化性粘着剤における放射線照射による粘着力低下の程度については、例えば、放射線重合性の炭素-炭素二重結合等の官能基の含有量、並びに、光重合開始剤の種類及び配合量によって制御することができる。なお、第2タイプの放射線硬化性粘着剤としては、通常、予め放射線により硬化させた放射線硬化型粘着剤が用いられる。このように、放射線硬化型粘着剤は、予め硬化させても、ある程度の粘着力を維持している。また、このような硬化は、粘着剤層の全面で行ってもよく、又は、粘着剤層の中央側の任意の部位のみに行ってもよい。
上記第2タイプの放射線硬化性粘着剤としては、放射線重合性の炭素-炭素二重結合等の官能基をポリマー側鎖や、ポリマー主鎖中、ポリマー主鎖末端に有するベースポリマーを含有する内在型の放射線硬化性粘着剤も挙げられる。上記内在型の放射線硬化性粘着剤を構成する成分としては、例えば、上記粘着力低減型粘着剤層用の内在型の放射線硬化性粘着剤を構成する成分として例示及び説明されたものが挙げられる。内在型の放射線硬化性粘着剤における放射線照射による粘着力低下の程度については、例えば、放射線重合性の炭素-炭素二重結合等の官能基の含有量、並びに、光重合開始剤の種類及び配合量によって制御することができる。
上記粘着剤層の厚さは、例えば1~50μmである。
上記粘着剤層又は当該粘着剤層を形成する粘着剤は、上述の各成分以外に、粘着付与剤、老化防止剤、着色剤(顔料、染料等)等の公知乃至慣用の粘着剤層に用いられる添加剤が配合されていてもよい。
上記着色剤としては、例えば、放射線照射により着色する化合物が挙げられる。放射線照射により着色する化合物を含有する場合、放射線照射された部分のみを着色することができる。上記放射線照射により着色する化合物は、放射線照射前には無色又は淡色であるが、放射線照射により有色となる化合物であり、例えば、ロイコ染料などが挙げられる。上記放射線照射により着色する化合物の使用量は特に限定されず適宜選択することができる。
本発明の半導体プロセスシートの両面粘着シートは、以上のような基材、粘着力低減型の粘着剤層、及び粘着剤層に加えて他の層を積層構造中に有していてもよい。上記他の層としては、例えば、粘着力低減型粘着剤層が加熱発泡型粘着剤層である場合の当該粘着剤層上に設けられて粘着面を提供する薄い粘着剤層や、粘着力低減型粘着剤層が加熱発泡型粘着剤層である場合の当該粘着剤層と基材との間に設けられるゴム状有機弾性層などが挙げられる。
加熱発泡型粘着剤層表面を被覆する薄い粘着剤層が被着体に貼着している状態で、加熱によって加熱発泡型粘着剤層が膨張してその表面凹凸形状を変形させると、これに伴って当該薄い粘着剤層も変形し、その対被着体接着総面積を減じ、当該被着体に対する粘着力が低下することとなる。加熱発泡型粘着剤の粘着力低減機能を利用しつつ、薄い粘着剤層における所望の粘着力を利用することが可能となる。上記薄い粘着剤層の厚さは例えば2~30μmである。
また、基材と加熱発泡型粘着剤層との間にゴム状有機弾性層を設けることにより、加熱によって加熱発泡型粘着剤層をその厚さ方向へ優先的に且つ高い均一性をもって膨張させやすくなる。このようなゴム状有機弾性層は、例えば、ASTM D-2240に基づくショアD型硬度が50以下の天然ゴム、合成ゴム、或いはゴム弾性を有する合成樹脂により形成される。ゴム状有機弾性層用の合成ゴムや上記合成樹脂としては、例えば、ニトリル系ゴム、ジエン系ゴム、アクリル系ゴム等の合成ゴム;ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂等の熱可塑性エラストマー;エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリブタジエン、軟質ポリ塩化ビニル等のゴム弾性を有する合成樹脂などが挙げられる。上記ゴム状有機弾性層の厚さは、例えば1~500μmである。
(熱硬化性樹脂層)
上記熱硬化性樹脂層は、上述のように、両面粘着シートにおける少なくとも一方の粘着面上に剥離可能に密着している。上記熱硬化性樹脂層の厚さは、例えば1~300μmである。
上記熱硬化性樹脂層は、製造目的物の半導体パッケージの一要素である半導体チップを固定するためのチップ固定用樹脂層である。上記熱硬化性樹脂層は、半導体チップのチップ電極を包埋するためのチップ電極包埋用接着剤層(チップ電極包埋用接着剤層)であってもよい。すなわち、本発明の半導体プロセスシートは、熱硬化性樹脂層に対して、フェイスアップ及びフェイスダウンのいずれの形態で半導体チップがマウントされるタイプのものとして設計されてもよい。
チップ電極包埋用樹脂層である場合の上記熱硬化性樹脂層の厚さは、1~300μmが好ましく、より好ましくは5~250μm、さらに好ましくは10~200μmである。また、包埋対象のチップ電極の高さに対する熱硬化性樹脂層の厚さの比の値は、0.1~10が好ましく、より好ましくは0.2~9である。
上記熱硬化性樹脂層は、例えば、樹脂成分として熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含有する。或いは、上記熱硬化性樹脂層は、硬化剤と反応して結合を生じ得る熱硬化性官能基を有する熱可塑性樹脂を樹脂成分として含有していてもよい。上記熱硬化性樹脂層が未硬化の状態で本発明の半導体プロセスシートは半導体パッケージ製造プロセスに供される。
上記熱硬化性樹脂層が熱硬化性樹脂を熱可塑性樹脂とともに含む場合、当該熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂などが挙げられる。上記熱硬化性樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。エポキシ樹脂は、半導体チップの腐食原因となり得るイオン性不純物等の含有量が少ない傾向にある観点から好ましい。また、エポキシ樹脂に熱硬化性を発現させるための硬化剤としては、フェノール樹脂が好ましい。
上記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオレン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型、ヒダントイン型、トリスグリシジルイソシアヌレート型、グリシジルアミン型のエポキシ樹脂などが挙げられる。上記エポキシ樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
エポキシ樹脂の硬化剤として作用し得るフェノール樹脂としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレンなどが挙げられる。ノボラック型フェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、t-ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂などが挙げられる。上記フェノール樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
上記熱硬化性樹脂層において、エポキシ樹脂とフェノール樹脂との硬化反応を充分に進行させるという観点からは、フェノール樹脂は、エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1当量当たり、当該フェノール樹脂中の水酸基が好ましくは0.5~2.0当量、より好ましくは0.7~1.5当量となる量で含まれる。
上記熱硬化性樹脂層が熱硬化性樹脂を含む場合、上記熱硬化性樹脂の含有割合は、熱硬化性樹脂層を適切に硬化させるという観点から、上記熱硬化性樹脂層の総質量に対して、5~60質量%が好ましく、より好ましくは10~50質量%、さらに好ましくは15~45質量%、特に好ましくは20~40質量%である。上記熱硬化性樹脂の含有割合が上記範囲内であると、上記熱硬化性樹脂層の熱硬化により、従来の半導体パッケージに生じる反りとは反対方向に適度に反りを発生させることができ、これにより、反りをより抑制することができる。
上記熱硬化性樹脂層中の熱可塑性樹脂は、例えばバインダー機能を担うものである。上記熱硬化性樹脂層が熱硬化性樹脂を熱可塑性樹脂とともに含む場合、上記熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、6-ナイロンや6,6-ナイロン等のポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、PETやPBT等の飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。上記熱可塑性樹脂としては、イオン性不純物が少なく且つ耐熱性が高い観点から、アクリル系樹脂が好ましい。
上記アクリル系樹脂は、アルコキシ基を有していてもよい炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を質量割合で最も多い構成単位として含むことが好ましい。当該アルコキシ基を有していてもよい炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、上述の粘着力低減型粘着剤層に含まれ得るアクリル系ポリマーを形成するアルコキシ基を有していてもよい炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルとして例示及び説明されたものが挙げられる。
上記アクリル系樹脂は、炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他のモノマー成分に由来する構成単位を含んでいてもよい。上記他のモノマー成分としては、例えば、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物モノマー、ヒドロキシ基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、アクリルアミド、アクリロニトリル等の官能基含有モノマーや、各種の多官能性モノマーなどが挙げられ、具体的には、上述の粘着力低減型粘着剤層に含まれ得るアクリル系ポリマーを構成する他のモノマー成分として例示及び説明されたものが挙げられる。
上記熱硬化性樹脂層が熱硬化性官能基を有する熱可塑性樹脂を含む場合、当該熱可塑性樹脂としては、例えば、熱硬化性官能基含有アクリル系樹脂を用いることができる。この熱硬化性官能基含有アクリル系樹脂におけるアクリル系樹脂は、好ましくは、炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を質量割合で最も多い構成単位として含む。当該炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、上述の粘着力低減型粘着剤層に含まれ得るアクリル系ポリマーを形成する炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルとして例示及び説明されたものが挙げられる。
熱硬化性官能基含有アクリル系樹脂における熱硬化性官能基としては、例えば、グリシジル基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、イソシアネート基などが挙げられる。中でも、グリシジル基、カルボキシ基が好ましい。すなわち、熱硬化性官能基含有アクリル系樹脂としては、グリシジル基含有アクリル系樹脂、カルボキシ基含有アクリル系樹脂が特に好ましい。また、熱硬化性官能基含有アクリル系樹脂とともに硬化剤を含むことが好ましく、当該硬化剤としては、例えば、上述の粘着力低減型粘着剤層形成用の放射線硬化性粘着剤に含まれ得る架橋剤として例示及び説明されたものが挙げられる。熱硬化性官能基含有アクリル系樹脂における熱硬化性官能基がグリシジル基である場合には、硬化剤としてポリフェノール系化合物を用いることが好ましく、例えば上述の各種フェノール樹脂を用いることができる。
上記熱硬化性樹脂層を形成するための粘着剤は、熱硬化触媒を含有することが好ましい。上記熱硬化触媒を用いると、上記熱硬化性樹脂層の硬化にあたって樹脂成分の硬化反応を充分に進行させたり、硬化反応速度を高めたりすることができる。上記熱硬化触媒は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
上記熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール系化合物、トリフェニルフォスフィン系化合物、アミン系化合物、トリハロゲンボラン系化合物などが挙げられる。
上記イミダゾール系化合物としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールなどが挙げられる。
上記トリフェニルフォスフィン系化合物としては、例えば、トリフェニルフォスフィン、トリブチルフォスフィン、トリ(p-メチルフェニルフォスフィン、トリ(ノニルフェニル)フォスフィン、ジフェニルトリルフォスフィン、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、メチルトリフェニルホスホニウム、メチルトリフェニルホスホニウムクロライド、メトキシメチルトリフェニルホスホニウム、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライドなどが挙げられる。
上記トリフェニルフォスフィン系化合物には、トリフェニルフォスフィン構造とトリフェニルボラン構造とを併有する化合物も含まれるものとする。そのような化合物としては、例えば、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリボレート、ベンジルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルフォスフィントリフェニルボランなどが挙げられる。
上記アミン系化合物としては、例えば、モノエタノールアミントリフルオロボレート、ジシアンジアミドなどが挙げられる。上記トリハロゲンボラン系化合物としては、例えばトリクロロボランなどが挙げられる。
上記熱硬化性樹脂層は、フィラーを含有していてもよい。上記熱硬化性樹脂層へのフィラーの配合により、熱硬化性樹脂層の弾性率や、降伏点強度、破断伸度などの物性を調整することができる。フィラーとしては、無機フィラー及び有機フィラーが挙げられる。
無機フィラーの構成材料としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミニウムウィスカ、窒化ホウ素、結晶質シリカ、非晶質シリカなどが挙げられる。また、無機フィラーの構成材料としては、アルミニウム、金、銀、銅、ニッケル等の金属単体や、合金、アモルファスカーボンブラック、グラファイトなども挙げられる。有機フィラーの構成材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミドなどが挙げられる。フィラーは、球状、針状、フレーク状等の各種形状を有していてもよい。上記フィラーは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
上記フィラーの平均粒径は、0.002~10μmが好ましく、より好ましくは0.005~1μmである。上記平均粒径が10μm以下であると、上記各特性の付与のために加えたフィラーの効果を充分なものとすることができると共に、耐熱性を確保することができる。なお、フィラーの平均粒径は、例えば、光度式の粒度分布計(例えば、商品名「LA-910」、株式会社堀場製作所製)を用いて求めることができる。
上記熱硬化性樹脂層がフィラーを含有する場合の当該フィラーの含有割合は、熱硬化性樹脂層の総質量に対して、10質量%以上が好ましく、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。上記含有割合は、例えば50質量%以下であり、好ましくは47質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。
上記熱硬化性樹脂層は、着色剤を含有していてもよい。上記着色剤は、顔料であってもよいし、染料であってもよい。上記着色剤としては、例えば、黒系着色剤、シアン系着色剤、マゼンダ系着色剤、イエロー系着色剤が挙げられる。上記着色剤は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
黒系着色剤としては、例えば、酸化銅、二酸化マンガン、アゾメチンアゾブラック等のアゾ系顔料、アニリンブラック、ペリレンブラック、チタンブラック、シアニンブラック、活性炭、フェライト、マグネタイト、酸化クロム、酸化鉄、二硫化モリブデン、複合酸化物系黒色色素、アントラキノン系有機黒色染料、アゾ系有機黒色染料などが挙げられる。黒系着色剤としては、C.I.ソルベントブラック3、同7、同22、同27、同29、同34、同43、同70も挙げられる。黒系着色剤としては、C.I.ダイレクトブラック17、同19、同22、同32、同38、同51、同71も挙げられる。黒系着色剤としては、C.I.アシッドブラック1、同2、同24、同26、同31、同48、同52、同107、同109、同110、同119、同154も挙げられる。黒系着色剤としては、C.I.ディスパーズブラック1、同3、同10、同24も挙げられる。黒系着色剤としては、C.I.ピグメントブラック1、同7も挙げられる。
上記熱硬化性樹脂層における着色剤の含有割合は、熱硬化性樹脂層の総質量に対して、0重量%であってもよいが、用いる場合は例えば0.5重量%以上であり、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上である。上記含有割合は、例えば10重量%以下であり、好ましくは8重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。
上記熱硬化性樹脂層は、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては、例えば、難燃剤、シランカップリング剤、イオントラップ剤などが挙げられる。上記他の成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
上記難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、臭素化エポキシ樹脂などが挙げられる。
上記シランカップリング剤としては、例えば、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。
上記イオントラップ剤としては、例えば、ハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス、含水酸化アンチモン(例えば東亜合成株式会社製の「IXE-300」)、特定構造のリン酸ジルコニウム(例えば東亜合成株式会社製の「IXE-100」)、ケイ酸マグネシウム(例えば協和化学工業株式会社製の「キョーワード600」)、ケイ酸アルミニウム(例えば協和化学工業株式会社製の「キョーワード700」)などが挙げられる。
金属イオンとの間で錯体を形成し得る化合物もイオントラップ剤として使用することができる。そのような化合物としては、例えば、トリアゾール系化合物、テトラゾール系化合物、ビピリジル系化合物などが挙げられる。これらのうち、金属イオンとの間で形成される錯体の安定性の観点からはトリアゾール系化合物が好ましい。
上記トリアゾール系化合物としては、例えば、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-{N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル}ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-t-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、6-(2-ベンゾトリアゾリル)-4-t-オクチル-6’-t-ブチル-4’-メチル-2,2’-メチレンビスフェノール、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)ベンゾトリアゾール、1-(1,2-ジカルボキシジエチル)ベンゾトリアゾール、1-(2-エチルヘキシルアミノメチル)ベンゾトリアゾール、2,4-ジ-t-ペンチル-6-{(H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル}フェノール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、オクチル-3-[3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネート、2-エチルヘキシル-3-[3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネート、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-t-ブチルフェノール、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル)-ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロ-ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ジ(1,1-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、メチル-3-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネートなどが挙げられる。
また、キノール化合物や、ヒドロキシアントラキノン化合物、ポリフェノール化合物などの特定の水酸基含有化合物も、イオントラップ剤として使用することができる。そのような水酸基含有化合物としては、具体的には、1,2-ベンゼンジオール、アリザリン、アントラルフィン、タンニン、没食子酸、没食子酸メチル、ピロガロールなどが挙げられる。
本発明の半導体プロセスシートは、両面粘着シートの一方の粘着面上にて上記熱硬化性樹脂層を形成することによって作製してもよいし、セパレータ上にて形成された熱硬化性樹脂層を別途作製された両面粘着シートの一方の粘着面側に貼り合わせることによって作製してもよい。両面粘着シートは、基材上にて上記粘着力低減型粘着剤層及び上記粘着剤層を形成することによって作製してもよいし、セパレータ上にて形成された粘着力低減型粘着剤層及び別のセパレータ上にて形成された粘着剤層それぞれを基材に対して貼り合わせることによって作製してもよい。各層は、例えば、層ごとに調製された粘着剤組成物の塗布及び脱溶媒を経て形成することができる。
[半導体パッケージの製造方法]
本発明の半導体プロセスシートを用いて半導体パッケージを製造することができる。図2~7は、本発明の半導体プロセスシートの一実施形態である半導体プロセスシートXを用いた半導体パッケージの製造方法の一実施形態を表す。
図2~7に示す半導体パッケージの製造方法は、半導体プロセスシートXを使用して半導体パッケージを製造するための方法であって、チップマウント工程、封止工程、デタッチ工程、配線形成工程、薄化工程、及び個片化工程をこの順に含む。
まず、上記チップマウント工程では、図2(a)及び図2(b)に示すように、粘着面10a側が支持体Sに貼り合わせられている半導体プロセスシートXにおける熱硬化性樹脂層20に対して複数の半導体チップCがマウントされる。支持体Sは、例えば、金属製、ガラス製、又は透明樹脂製である。半導体チップCは、チップ本体とこれから延出するチップ電極Eとを有する。本実施形態では、半導体チップCのチップ電極Eを有しない面を熱硬化性樹脂層20に向けてのフェイスアップでのマウントが行われる。なお、図4(a)に示すように、半導体チップCを熱硬化性樹脂層20上にマウントした後、熱硬化性樹脂層が所定の硬化度となるように(例えば、第1剥離力が5N以上であり、且つ、第1剥離力が第2剥離力よりも大きい値となる硬化度となるように)、加熱して熱硬化性樹脂20を硬化させてもよい。上記硬化は、半硬化(実質的未硬化状態の範囲内における硬化)及び硬化(実質的硬化状態までの硬化)のいずれであってもよい。
次に、上記封止工程では、図3(a)に示すように、半導体プロセスシートX上において複数の半導体チップCを包埋するように封止材30’が供給され、その後、図3(b)に示すように、封止材30’が硬化されて封止材部30が形成される。この封止材30’の硬化の際に、熱硬化性樹脂層20も、完全硬化していない状態であれば、硬化される。これにより、半導体チップCを包埋して伴う封止材部30としてのパッケージP(チップ包埋封止材部)が得られる。封止材30’は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の硬化剤、無機フィラー、硬化促進剤、及び黒系着色剤を含む組成物であり、本封止工程において、液状組成物、パウダー、及びシートのいずれの形態で供給されてもよい。このような封止材30’の構成材料としては、例えば、半導体プロセスシートXの熱硬化性樹脂層20の構成材料として例示及び説明されたものを用いることができる。本工程において、封止材部30を形成するための加熱温度は例えば150~185℃であり、加熱時間は例えば60秒~数時間である。
本製造方法においては、図2を参照して上述したチップマウント工程の後、半導体プロセスシートX上への封止材30’の供給より前に、図4(a)に示すように、熱硬化性樹脂層20を所定の硬化度となるように硬化させてもよく、完全硬化させてもよい(硬化工程)。この場合、封止工程では、まず、図4(b)に示すように、半導体プロセスシートX上において複数の半導体チップCを包埋するように封止材30’が供給され、この後、封止材30’が、所定の硬化度(特に、硬化状態の硬化度)で硬化済みの熱硬化性樹脂層20上で硬化されて、図3(b)に示すように封止材部30が形成される。なお、この際、所定の硬化度で硬化済みの熱硬化性樹脂層20がさらに硬化される場合がある。このような構成によると、半導体プロセスシートXによる半導体チップCの保持力が熱硬化性樹脂層20の硬化(特に、硬化状態の硬化度での硬化)によって強化された状態で、封止工程が行われる。したがって、当該構成は、封止工程において、封止材30’の硬化時の収縮や両面粘着シートの粘着力に起因する半導体チップCの移動(位置ずれ)をより抑制することができる。このような半導体チップ位置ずれ抑制は、例えば、後の配線形成工程において半導体チップCごとの配線を含む配線構造部を精度よく形成する際にも好ましい。
次に、上記デタッチ工程では、図5(a)に示すように、支持体SによるパッケージPの支持状態が解除される。本工程では、例えば、半導体プロセスシートXと支持体Sとの間が離され、その後、両面粘着シート10或いはその粘着面10bがパッケージP(チップ包埋封止材部)から離される。或いは、支持体S上の両面粘着シート10からパッケージPが離された後、支持体Sから両面粘着シート10が剥離される。
半導体プロセスシートXにおける両面粘着シート10の粘着剤層12(粘着力低減型粘着剤層)が加熱発泡型粘着剤層である場合、粘着力低減措置としての加熱によって当該粘着剤層12或いは粘着面10aの粘着力を低下させて、支持体Sと両面粘着シート10との間を離すことができる。そのための加熱温度は例えば170~200℃である。
半導体プロセスシートXにおける両面粘着シート10の粘着剤層12(粘着力低減型粘着剤層)が上述の第1タイプの放射線硬化性粘着剤層である場合、粘着力低減措置としての紫外線照射など放射線照射によって当該粘着剤層12或いは粘着面10aの粘着力を低下させて、支持体Sと両面粘着シート10との間を離すことができる。そのための放射線照射が紫外線照射である場合、その照射量は例えば50~500mJ/cm2である。
フェイスアップでの上述のチップマウント工程において、半導体チップCのチップ電極Eが封止材部30中に包埋している場合には、デタッチ工程の後、封止材部30内の各半導体チップCのチップ電極Eを外部に露出させるための研削加工が封止材部30に対して行われる。
次に、上記配線形成工程では、図5(b)に示すように、半導体チップCごとの配線を含む配線構造部40が封止材部30上及びパッケージP上に形成される。半導体チップCごとの配線には、本製造方法によって半導体チップCごとに製造されることとなる各半導体パッケージにおけるバンプ電極等の外部電極41が含まれる。
次に、上記薄化工程では、図6(a)に示すように配線構造部40側にバックグラインドテープYが貼り合わされた後、図6(b)に示すように、封止材部30に対して研削加工が施されてパッケージPが薄化される。バックグラインドテープYは、配線構造部40の外部電極41を包埋可能な厚さの粘着層Yaを有する。本工程では、例えば、半導体チップCのいわゆる裏面が露出するように、或いはこれとともに半導体チップCが薄化するように、封止材部30に対して研削加工が施される。
次に、図7(a)に示すように、バックグラインドテープYに保持されたパッケージPに対し、ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムZが貼り合わせられる。ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムZは、粘着層を有するダイシングテープ50とその粘着層上の半導体チップ裏面保護用の硬化性のフィルム60とを備え、パッケージPの研削加工面に対してダイシングテープ一体型裏面保護フィルムZのフィルム60側が貼り合わせられる。半導体チップ裏面保護用のフィルム60は、黒系着色剤などの着色剤が配合された接着剤フィルムである。フィルム60用の着色剤としては、例えば、熱硬化性樹脂層20用の着色剤として例示及び説明されたものを用いることができる。また、フィルム60は、熱硬化タイプの接着剤フィルムであってもよいし、例えば70℃程度の温度条件下で被着体に貼り合わせられることによって当該被着体に対して充分な密着力を発現することが可能な硬化レスタイプの接着剤フィルムであってもよい。
次に、バックグラインドテープYが除かれる。フィルム60が熱硬化タイプの接着剤フィルムである場合には、バックグラインドテープYの除去の後、図7(b)に示すようにフィルム60が加熱硬化される。
次に、上記個片化工程では、図7(c)に示すように、例えばブレードダイシングによって封止材部30及び配線構造部40が半導体チップCごとに分割される(図7(c)では分割箇所を模式的に太線で表す)。こうして個片化された各半導体パッケージは、この後、ダイシングテープ50からピックアップされる。
なお、図6(b)に示すような研削加工によるパッケージPの薄化を行わない場合は、図6(a)に示す、バックグラインドテープYに保持されたパッケージPにおけるバックグラインドテープYは使用せずに、封止材部30の表面にダイシングテープが貼り合わせられてもよい。そして、続く図7(c)に示す個片化工程により半導体チップCごとに分割することができる。パッケージPの薄化を行わない場合、薄化工程を経る必要がないため、コストを低減することができる。また、この場合、熱硬化性樹脂層20が個片化工程により得られる半導体チップCに残ることとなるため、熱硬化性樹脂層20は黒系着色剤などの着色剤が配合された接着フィルムとすることが重要である。なお、図6(b)に示すパッケージPの薄化を行う場合、研削加工により熱硬化性樹脂層20は除去され、半導体チップCに残らないため、熱硬化性樹脂層20は着色剤を含む必要がない。
以上のようにして、半導体プロセスシートXを使用して半導体パッケージを製造することができる。このような半導体パッケージ製造方法は、半導体パッケージを効率よく製造するのに適する。その理由は、以下のとおりである。
熱硬化性樹脂層20を備えない両面粘着シートからなる従来型の半導体プロセスシートを使用して半導体パッケージを製造する場合、そのチップマウント工程では、一方面側が支持体Sに貼り合わせられている両面粘着シートの他方面に対して複数の半導体チップCがマウントされる。このとき、半導体チップCのチップ電極Eとは反対の側を両面粘着シートに接合するフェイスアップでのマウントが行われる。次に、両面粘着シート上において、複数の半導体チップCを包埋する封止材部が形成される。次に、複数の半導体チップCを包埋して伴う封止材部(従来型のチップ包埋封止材部)から両面粘着シートが剥離される(デタッチ工程)。従来型のチップ包埋封止材部において両面粘着シートが剥離された側の面には各半導体チップCのいわゆる裏面が露出している。次に、このような封止材部において両面粘着シートが剥離された側の面に樹脂シートが貼り合わせられる。封止材部において両面粘着シートが剥離された側の面には上述のように各半導体チップCの裏面が露出しており、当該封止材部の厚さ方向における対称性は低いので、当該封止材部は不可避的に反ってしまう。このような反りが生じた状態では後続のプロセスを適切に進めることができない。そのため、両面粘着シートからなる従来型の半導体プロセスシートが使用される半導体パッケージ製造方法では、デタッチ工程の後、封止材部において両面粘着シートが剥離された側の面に上記樹脂シートを貼り合わせて、従来型のチップ包埋封止材部についていわゆるワーページ(反り)コントロールを行う必要があるのである。
これに対し、本発明の半導体プロセスシートを用いた半導体パッケージの製造においては、図5(a)を参照して上述したデタッチ工程を経たパッケージP(チップ包埋封止材部30)についてのワーページコントロールのための特別の工程は必須ではない。本製造方法では、両面粘着シート10上に熱硬化性樹脂層20を伴う半導体プロセスシートXが使用されるからである。具体的には、図2を参照して上述したチップマウント工程にて半導体プロセスシートXの熱硬化性樹脂層20に対して複数の半導体チップCがマウントされ、その後の封止工程では、複数の半導体チップCを包埋するように設けられた封止材30’と熱硬化性樹脂層20又は硬化済み熱硬化性樹脂層20とから封止材部30が形成され、このようにして形成されるチップ包埋封止材部30(パッケージP)は、上述の従来型のチップ包埋封止材部よりも厚さ方向における対称性が高く、反りを抑制するのに適するからである。チップ包埋封止材部30或いはパッケージPのワーページコントロールのための工程が必須ではない本製造方法は、半導体パッケージを効率よく製造するのに好ましい。
さらに、本発明の半導体プロセスシートは、熱硬化性樹脂20のガラス転移温度が、半導体素子封止材の成形温度以上又は120℃以上である。これにより、半導体チップ等の半導体チップCを封止する封止材の成形時において、熱硬化性樹脂層20の流動が抑制され半導体チップCを強固に固定することで、反りを抑制するとともに、封止工程及びその後における半導体チップCの移動(位置ずれ)を抑制することができる。また、このような効果は、図2(b)に示すように、半導体チップCの裏面が熱硬化性樹脂層20側となるようなフェイスアップでのチップマウント工程はもちろん、半導体チップCの表面が熱硬化性樹脂層20側となるようなフェイスダウンでのチップマウント工程においても、チップ電極Eが包埋し、チップ本体が熱硬化性樹脂層20と粘着面を形成し得るため、フェイスアップでのマウント工程と同様の効果が得られる。
本実施形態のチップマウント工程では、上述のように、好ましくは、半導体チップCがそのチップ本体におけるチップ電極Eとは反対の側で熱硬化性樹脂層20に接合されるように、熱硬化性樹脂層20に対する半導体チップCのマウントが行われる。この場合、図5(a)を参照して上述したデタッチ工程の後に封止材部30を研削して半導体チップCのチップ電極Eを露出させる研削工程を本半導体パッケージ製造方法は更に含み、且つ、図5(b)を参照して上述した配線形成工程では、封止材部30の表面に露出しているチップ電極Eと電気的に接続される配線を含む配線構造部40が形成される。このような構成によると、配線構造部40を適切に形成することができる。
本発明の半導体パッケージ製造方法におけるチップマウント工程では、フェイスアップでのマウントの代わりに、半導体チップCのチップ電極Eが半導体プロセスシートXにおける熱硬化性樹脂層20に突入し且つ両面粘着シート10の粘着面10bに至るように、各半導体チップCは熱硬化性樹脂層20に対してマウントされてもよい。この場合、後の配線形成工程では、封止材部30の表面に既に露出しているチップ電極Eと電気的に接続される配線を含む配線構造部40が形成される。これらの構成によると、フェイスアップでのチップマウント工程を経る場合に配線形成工程前に要する封止材部30研削工程を行うことなく、配線構造部40を適切に形成することができる。
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における熱硬化性樹脂層を構成する各成分の組成を表に示す。但し、表において、層の組成を表す各数値の単位は、当該層内での相対的な“質量部”である。
実施例1
(熱硬化性樹脂層)
アクリル樹脂(商品名「AC-017」、根上工業株式会社製)100質量部(アクリル樹脂としての配合量)と、エポキシ樹脂E1(商品名「EPICLON HP-4700」、DIC株式会社製)206質量部と、エポキシ樹脂E2(商品名「YSLV-80XY」、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)47質量部と、フェノール樹脂(商品名「MEH7851-SS」、明和化成株式会社製)145質量部と、シリカフィラー(商品名「SO-25R」、平均粒径:0.5μm、株式会社アドマテックス製)434質量部と、熱硬化触媒(商品名「TPP-MK」、北興化学工業株式会社製)2質量部とを、メチルエチルケトンに加えて混合し、固形分濃度28質量%の樹脂組成物を得た。
次に、シリコーン離型処理の施された面を有するPETセパレータ(厚さ50μm)のシリコーン離型処理面上にアプリケーターを使用して当該樹脂組成物を塗布して樹脂組成物層を形成した。次に、この組成物層について130℃で2分間の加熱を行って脱溶媒させ、PETセパレータ上に厚さ40μmの実施例1の熱硬化性樹脂層を作製した。
(半導体プロセスシートの作製)
両面粘着シート(商品名「リバアルファNo.3195V」、日東電工株式会社製、[加熱発泡型粘着剤層/プラスチック製基材/粘着力非低減型粘着剤層]の三層構成)の加熱膨張型粘着剤層に実施例1の熱硬化性樹脂層を貼り合わせた。貼り合わせには、ハンドローラーを用いた。以上のようにして、実施例1の半導体プロセスシートを作製した。
実施例2~3
熱硬化性樹脂層の作製に用いた各種原料の配合量を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2及び3の半導体プロセスシートを作製した。
実施例4
実施例3の半導体プロセスシート用いることは、実施例3と同じであるが、その使用方法が異なる。具体的には、半導体プロセスシートに、半導体チップを載置させた後に、熱硬化性樹脂層を硬化状態(90%以上の硬化度)に硬化させて、その後に、封止材を使用して、封止させる方法で使用する。なお、熱硬化性樹脂層を硬化状態(硬化度90%以上)に硬化させる条件は、下記の評価方法で示されるとおり、130℃で120分間の加熱条件である。
比較例1
熱硬化性樹脂層を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の半導体プロセスシートを作製した。
比較例2
熱硬化性樹脂層の作製に用いた各種原料の配合量を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例2の半導体プロセスシートを作製した。
<評価>
実施例及び比較例で得られた半導体プロセスシートについて、以下の評価を行った。結果を表に示す。なお、下記評価において、所定の硬化度とは、硬化時間を調整して(10秒~2時間の範囲で調整して)、熱硬化性樹脂層の剥離力やせん断接着力を所定の値とするための硬化度である。実施例1~3については実質的未硬化状態の範囲内での硬化(半硬化)を行い、実施例4については実質的硬化状態まで硬化を行った。比較例1及び2については硬化を行わなかった。実施例4の硬化条件は、オーブン温度:130℃で、加熱時間:2時間である。
(1)熱硬化性樹脂層のシリコンに対する剥離力(第1剥離力)
実施例及び比較例で得られた熱硬化性樹脂層から、幅20mm×長さ100mmのサイズの試験片を切り出した。次に、試験片をその熱硬化性樹脂層が提供する面にてシリコン板(東京化工株式会社販売の未研削ベアーウエハ)のミラー面側に貼り合わせた。また、試験片をその両面粘着シート面が提供する粘着面にて支持体に貼り合わせた。これらの貼り合わせは、2kgのハンドローラーを1往復させる圧着作業によって行った。次に、上記積層体を130℃のオーブンで、所定の硬化度となるように、時間を調整して(10秒~2時間の範囲で調整して)、熱硬化性樹脂層を硬化させた。そして、引張試験機(商品名「オートグラフAG-X」、株式会社島津製作所製)を使用して、23℃、剥離角度180°、及び引張速度300mm/分の条件で当該試験片について剥離試験を行い、実施例及び比較例の半導体プロセスシートにおける、熱硬化性樹脂層のシリコン板に対する剥離力(第1剥離力)を測定した。なお、実施例4については、試験片と支持体との間で界面剥離が生じ、その剥離力は13.1Nであった。この結果から、実施例4の半導体プロセスシートにおける第1剥離力を、界面剥離が生じた試験片と支持体の剥離力である13.1Nよりも大きい値であると判定した。
(2)熱硬化性樹脂層の両面粘着シートに対する剥離力(第2剥離力)
実施例及び比較例で得られた半導体プロセスシートから、幅20mm×長さ100mmのサイズの試験片を切り出した。次に、上記積層体を130℃のオーブンで、所定の硬化度となるように、時間を調整して(10秒~2時間の範囲で調整して)、熱硬化性樹脂層を硬化させた。そして、引張試験機(商品名「オートグラフAG-X」、株式会社島津製作所製)を使用して、23℃、剥離角度180°、及び引張速度300mm/分の条件で当該試験片について、剥離試験を行い、実施例及び比較例の半導体プロセスシートにおける、熱硬化性樹脂層の両面粘着シートに対する剥離力(第2剥離力)を測定した。
(3)硬化後の熱硬化性樹脂層のシリコンに対する剥離力(第3剥離力)
実施例及び比較例で得られた熱硬化性樹脂層から、幅20mm×長さ100mmのサイズの試験片を切り出した。次に、試験片をその熱硬化性樹脂層が提供する面にてシリコン板(東京化工株式会社販売の未研削ベアーウエハ)のミラー面側に貼り合わせた。また、試験片をその両面粘着シート面が提供する粘着面にて支持体に貼り合わせた。これらの貼り合わせは、2kgのハンドローラーを1往復させる圧着作業によって行った。次に、150℃で3時間加熱することにより熱硬化性樹脂層を硬化させた。そして、引張試験機(商品名「オートグラフAG-X」、株式会社島津製作所製)を使用して、23℃、剥離角度180°、及び引張速度300mm/分の条件で当該試験片について剥離試験を行った。その結果、試験片と支持体との間で界面剥離が生じ、その剥離力は13.1Nであった。この結果から、実施例及び比較例の半導体プロセスシートにおける、硬化状態の熱硬化性樹脂層のシリコン板に対する剥離力(第3剥離力)を、界面剥離が生じた試験片と支持体の剥離力である13.1Nよりも大きい値であると判定した。
(4)両面粘着シートのシリコンに対する剥離力(第4剥離力)
実施例及び比較例で得られた両面粘着シートから、幅20mm×長さ100mmのサイズの試験片を切り出した。次に、試験片をその加熱発泡型粘着剤層が提供する粘着面にてシリコン板(東京化工株式会社販売の未研削ベアーウエハ)のミラー面側に貼り合わせた。この貼り合わせは、2kgのハンドローラーを1往復させる圧着作業によって行った。そして、引張試験機(商品名「オートグラフAG-X」、株式会社島津製作所製)を使用して、23℃、剥離角度180°、及び引張速度300mm/分の条件で当該試験片について剥離試験を行い、実施例及び比較例の半導体プロセスシートにおける両面粘着シートのシリコン板に対する剥離力(第4剥離力)を測定した。
(5)ガラス転移温度
実施例及び比較例で得られた熱硬化性樹脂層から、幅5mm×長さ30mmのサイズの試験片を切り出し、チャック間距離が20mmとなるように試験片をセットし、動的粘弾性測定装置「RSAIII」(TA Instruments社製)を用いて、温度範囲-20~260℃、昇温速度10℃/分の条件で測定した時の損失正接(tanδ)の最も大きいピーク温度をガラス転移温度として得た。
(6)熱硬化性樹脂層のタック力
実施例及び比較例で得られた熱硬化性樹脂層の一方のPETセパレータを剥離し、両面粘着テープをPETセパレータ剥離面側にハンドローラで貼り付け、動的粘弾性測定装置「RSAIII」(TA Instruments社製)の圧縮治具用の25mmΦのパラレルプレートに両面テープ面側を貼り付け、プレートからはみ出した熱硬化性樹脂層と両面粘着テープを切り取り、もう一方のPETセパレータを剥離して、剥離面が上側となるように、装置下側にセットする。次に8mmΦのSUS製プレートを上側にセットし、炉を閉じて40℃になるまで静置し、上部のプレートを下部のプレートに100gの荷重がかかるように1秒間押し付け、その後プレートを上部に上げて引き離した時に上部プレートから熱硬化性樹脂シートが剥離するときの上部プレートに掛かる荷重をタック力とした。
(7)熱硬化性樹脂層の硬化開始温度
実施例及び比較例で得られた熱硬化性樹脂層から4mgを切り取り、アルミパン(TA Instruments社製)に詰め込み、示差走査熱量計「DSC Q2000」(TA Instruments社製)にセットして、昇温速度10℃/分、温度範囲0℃~300℃で測定を行い、発熱ピークの立ち上がり温度を反応開始温度とした。
(8)硬化後弾性率
実施例及び比較例で得られた熱硬化性樹脂層から、幅5mm×長さ30mmのサイズの試験片を切り出し、次に、この試験片を130℃のオーブンで、所定の硬化度となるように、時間を調整して(10秒~2時間の範囲で調整して)、熱硬化性樹脂層を硬化させた。この硬化処理後のチャック間距離が20mmとなるようにセットし、動的粘弾性測定装置「RSAIII」(TA Instruments社製)を用いて、温度範囲-20~260℃、昇温速度10℃/分の条件で測定した時の25℃での貯蔵弾性率E’を硬化後弾性率として得た。
(9)熱硬化性樹脂層のシリコンに対するせん断接着力(第1せん断接着力)
実施例及び比較例で得られた熱硬化性樹脂層から幅3mm×長さ3mmのサイズの熱硬化性樹脂層を切り出した。また、シリコン板(東京化工株式会社販売の未研削ベアーウエハ、厚さ500μm)から幅10mm×長さ10mmのシリコン板と、さらに、幅3mm×長さ3mmに個片化したシリコンチップとを準備した。そして、切り出した熱硬化性樹脂層と幅3mm×長さ3mmに個片化したシリコンチップとを温度70℃、圧力0.5MPaの条件下で貼り合わせ、熱硬化性樹脂層とシリコンチップとが積層した試験片(幅3mm×長さ3mm)の試験片を作製した。上記試験片を、ホットプレート(70℃)上に静置されたシリコン板(厚さ500μm×幅10mm×幅10mm)上に、熱硬化性樹脂層側の面が接触する形態で貼り合わせ、手で押して圧着させた。次に、この試験片を130℃のオーブンで、所定の硬化度となるように、時間を調整して(10秒~2時間の範囲で調整して)、熱硬化性樹脂層を硬化させた。このシリコン板/熱硬化性樹脂層/シリコンチップの積層体を、せん断接着力測定装置(商品名「DAGE4000」、Nordson社製)を使用して、温度23℃の条件下で、シリコンチップを、ジグの下面の位置の高さ80μm(シリコン板からの高さ)、速度500μm/sec、移動量500μmの条件でジグを移動させて、せん断接着力(第1せん断接着力)を測定した。
(10)熱硬化性樹脂層の両面粘着シートに対するせん断接着力(第2せん断接着力)
上記第1せん断接着力の測定において準備したシリコン板(厚さ500μm×幅10mm×幅10mm)上に、実施例及び比較例で得られた両面粘着シートを貼り合わせた。そして、上記第1せん断接着力の測定において作製した上記試験片を、上記両面粘着シート上に、熱硬化性樹脂層側の面が接触する形態で貼り合わせ、手で押して圧着させた。次に、この積層体(シリコン板/両面粘着シート/熱硬化性樹脂層/シリコンチップの積層体)を130℃のオーブンで、所定の硬化度となるように、時間を調整して(10秒~2時間の範囲で調整して)、熱硬化性樹脂層を硬化させた。このシリコン板/両面粘着シート/熱硬化性樹脂層/シリコンチップの積層体を、せん断接着力測定装置(商品名「DAGE4000」、Nordson社製)を使用して、温度23℃の条件下で、シリコンチップを、ジグの下面の位置の高さ80μm(両面粘着シートからの高さ)、速度500μm/sec、移動量500μmの条件でジグを移動させて、せん断接着力(第2せん断接着力)を測定した。
(11)硬化後の熱硬化性樹脂層のシリコンに対するせん断接着力(第3せん断接着力)
上記第1せん断接着力の測定において作製したシリコン板/熱硬化性樹脂層/シリコンチップの積層体を、150℃で3時間加熱して熱硬化性樹脂層を熱硬化させ、せん断接着力測定装置(商品名「DAGE4000」、Nordson社製)を使用して、温度23℃の条件下で、シリコンチップを、ジグの下面の位置の高さ80μm(シリコン板からの高さ)、速度500μm/sec、移動量500μmの条件でジグを移動させて、せん断接着力(第3せん断接着力)を測定した。
(12)両面粘着シートのシリコンに対するせん断接着力(第4せん断接着力)
上記第1せん断接着力の測定において準備したシリコン板(厚さ500μm×幅10mm×幅10mm)上に、実施例及び比較例で得られた両面粘着シートを貼り合わせた。そして、上記第1せん断接着力の測定において準備したシリコンチップ(厚さ500μm×幅3mm×幅3mm)を、上記両面粘着シート上に貼り合わせ、手で押して圧着させた。このシリコン板/両面粘着シート/シリコンチップの積層体を、せん断接着力測定装置(商品名「DAGE4000」、Nordson社製)を使用して、温度23℃の条件下で、シリコンチップを、ジグの下面の位置の高さ80μm(両面粘着シートからの高さ)、速度500μm/sec、移動量500μmの条件でジグを移動させて、せん断接着力(第4せん断接着力)を測定した。
(13)半導体チップの位置ずれ
実施例及び比較例で得られた半導体プロセスシートの加熱発泡型粘着剤層面を、ラミネーターを用いて円盤状のシリコン板(直径300mm)に貼り合わせ、次いで、シリコン板の外周からはみ出た部分の半導体プロセスシートを切り取り、シリコン板/両面粘着シート/熱硬化性樹脂層の積層体を作製した。上記積層体の熱硬化性樹脂層に、チップ(幅10mm×長さ10mmに個片化されたシリコンチップ;厚み100μm)を、積層体の中心部と、中心部のチップの各辺から70mm離れた4か所に、フリップチップボンダー(商品名「FC3000W」、東レエンジニアリング株式会社製)を用いて、温度23℃(常温)、コレット温度70℃、荷重10Nの条件下で貼り付けた。次いで、上記積層体を130℃のオーブンで、所定の硬化度となるように、時間を調整して(10秒~2時間の範囲で調整して)、熱硬化性樹脂層を硬化させた。そして、CNC画像測定器(商品名「QUICKVISION PRO」、株式会社ミツトヨ製)を用いて、チップを貼り合わせた面より各チップの座標を求めて、このチップの位置を初期位置とした。その後、封止用シート(商品名「AS-110AB」、日東電工株式会社製、厚さ200μm)を用いて、平行平板プレス(商品名「VACCUM ACE」、ミカドテクノス株式会社製)にて、温度90℃、荷重50kNの条件下でチップを封止し、封止層厚さ200μmの封止体を得た。上記封止体を150℃で1時間の条件で加熱して熱硬化し、封止硬化物体を得た。上記封止硬化物体を180℃に加熱したホットプレート上に載置し、両面粘着シートの加熱発泡型粘着剤層を発泡(熱膨張)させて、シリコン板を剥がし、その後、両面粘着シートを熱硬化性樹脂層から[熱硬化性樹脂層/チップ/封止層]の積層体を剥離し、熱硬化性樹脂層を研磨により除去して、チップの表面を露出させた。その後、上記CNC画像測定器を用いてチップ露出面側より各チップの座標を求めて、このチップの位置を封止硬化後位置とした。そして、中心部から離れた4箇所のチップについて、初期位置から封止硬化後位置までチップが動いた距離の平均値を位置ずれ距離として求めた。
(14)反り
実施例及び比較例で得られた厚さ40μmの熱硬化性樹脂層をラミネーターを用いて円盤状の厚さ200μmに研削したシリコン板(直径300mm)の研削面に貼り合わせ、次いで、シリコン板の外周からはみ出た部分の熱硬化性樹脂層を切り取り、シリコン板/熱硬化性樹脂層の積層体を作製した。上記積層体を130℃のオーブンで2時間加熱して、熱硬化性樹脂層を硬化させた。その後、上記積層体を、熱硬化性樹脂層が上面側となる形態で、平坦な机上に常温で1時間放置した。その後、上記積層体の円盤外周部と、机の平坦面との距離を測定し、最も差がある(最も大きい)距離を、反り矯正量として求めた。