1.加飾シート
本発明の加飾シートは、少なくとも、基材層と、表面層とを有しており、沸点が140℃以上の溶剤を含んでいることを特徴としている。本発明の加飾シートは、このような特定の溶剤を含んでいることにより、成形過程における気泡の発生が効果的に抑制されている。
以下、本発明の加飾シートについて詳述する。なお、本明細書において、「以上」、「以下」と明記している箇所を除き、「~」で示される数値範囲は「以上」、「以下」を意味する。例えば、2~15mmとの表記は、2mm以上15mm以下を意味する。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレートまたはメタクリレート」を意味し、他の類似するものも同様の意である。また、本発明の加飾シートは、絵柄層などを有していなくてもよく、例えば透明であってもよい。
加飾シートの積層構造
本発明の加飾シートは、少なくとも、基材層1と、表面層2とが積層された積層構造を有する。
本発明の加飾シートにおいて、基材層1と表面層2との間には、表面層2とその下に位置する層(例えば、絵柄層4など)との密着性を向上するために、必要に応じてプライマー層3が設けられていてもよい。
また、表面層2の下には、装飾性を付与する目的で、必要に応じて、絵柄層4を設けてもよい。例えば、プライマー層3を設ける場合であれば、基材層1とプライマー層3の間に絵柄層4を設ければよい。
また、基材層1と表面層2の間には、基材層1の色の変化やバラツキを抑制する目的で、必要に応じて、隠蔽層(図示しない)が設けられていてもよい。例えば、プライマー層3を設ける場合であれば、当該隠蔽層は基材層1とプライマー層3の間に設ければよく、また、絵柄層4を設ける場合であれば、当該隠蔽層は、基材層1と絵柄層4の間に設ければよい。
更に、表面層2の下には、耐摩耗性(耐傷付き性)を向上させる目的で、必要に応じて、透明樹脂層(図示しない)を設けてもよい。例えば、プライマー層3と絵柄層4を設ける場合であれば、当該透明樹脂層は、絵柄層4とプライマー層3の間に設ければよい。
更に、本発明の加飾シートにおいて、加飾シートの成形の際に成形樹脂との密着性を高めることを目的として、加飾シートの裏面(表面層2とは反対側の面)には、必要に応じて、裏面接着層(図示しない)が設けられてもよい。
本発明の加飾シートの積層構造の例として、基材層1/表面層2が積層された積層構造;基材層1/プライマー層3/表面層2が順に積層された積層構造;基材層1/絵柄層4/表面層2が順に積層された積層構造;基材層1/絵柄層4/プライマー層3/表面層2が順に積層された積層構造;基材層1/絵柄層4/透明樹脂層/プライマー層3/表面層2が順に積層された積層構造などが挙げられる。
図1に、本発明の加飾シートの積層構造の一態様として、基材層1/表面層2が積層された加飾シートの断面図を示す。図2に、本発明の加飾シートの積層構造の一態様として、基材層1/絵柄層4/プライマー層3/表面層2が順に積層された加飾シートの断面図を示す。
本発明の加飾シートには、沸点が140℃以上の溶剤(以下、「高沸点溶剤」ということがある)が含まれている。当該高沸点溶剤は、加飾シートの製造過程で含まれるものである。すなわち、基材層の上に位置する表面層、プライマー層、印刷層を印刷によって形成する際、印刷に使用される組成物に当該高沸点溶剤を配合することによって、加飾シート中に当該溶剤を含ませることができる。
また、従来、加飾シートの製造過程において、表面層、プライマー層、印刷層などの基材層の上に積層される層の形成において、印刷に使用される組成物中には、一般に、メチルエチルケトン、酢酸エチルなどの沸点が90℃未満の溶剤(以下、「低沸点溶剤」という)が広く使用されている。このような低沸点溶剤が使用された組成物を用いて、基材層の上の層が形成されると、低沸点溶剤が加飾シート中に残存し、加飾シートの射出成形や予備成形において、基材層と表面層との間などに閉じ込められた状態で溶剤が気化して、気泡の原因になることがある。これに対して、本発明の加飾シートには、沸点が140℃以上の溶剤が含まれる(すなわち、基材層の上に位置する表面層、プライマー層、絵柄層などを印刷によって形成する際、印刷に使用される組成物に当該高沸点溶剤を配合する)ことによって、加飾シートの射出成形や予備成形で高温(例えば140℃以上)に加熱された場合にも、高沸点溶剤は気化し難く、さらに、高沸点溶剤と共に低沸点溶剤が含まれている場合にも、低沸点溶剤の気化を抑制することができ、結果として、成形過程における気泡の発生が効果的に抑制される。
なお、本発明の加飾シートにおいて、高沸点溶剤及び/又は低沸点溶剤が含まれている層については、特に制限されない。加飾シートの製造過程において、溶剤が使用されると、溶剤は、通常、層間を超えて移動し、成形過程で存在する層内で気化し、気泡発生させることになるが、本発明の加飾シートにおいては、溶剤が何れの層に位置している場合にも、気泡の発生が効果的に抑制されている。
高沸点溶剤としては、沸点が140℃以上であり、かつ、印刷などによる層の形成に使用できるものであれば特に制限されない。高沸点溶剤の沸点としては、好ましくは140~300℃程度が挙げられる。高沸点溶剤の具体例としては、酢酸ジエチレングリコールモノブチルエーテル(1気圧下の沸点が247℃)、イソホロン(1気圧下の沸点が215℃)、コハク酸ジエチル(1気圧下の沸点が218℃)、乳酸エチル(1気圧下の沸点が154℃)、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル(1気圧下の沸点が145.8℃)などが挙げられる。高沸点溶剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
本明細書において、溶剤の沸点は、1気圧下における沸点(℃)を意味している。
本発明の加飾シートにおいて、高沸点溶剤の含有量としては、特に制限されないが、成形過程における気泡の発生を効果的に抑制する観点から、好ましくは10~200mg/m2程度、より好ましくは50~180mg/m2程度、さらに好ましくは80~150mg/m2程度が挙げられる。
また、本発明の加飾シートに低沸点溶剤が含まれる場合、低沸点溶剤としては、沸点が90℃未満であり、かつ、印刷などによる層の形成に使用できるものである。低沸点溶剤の具体例としては、メチルエチルケトン(沸点79.5℃)、酢酸エチル(沸点77.1℃)、イソプロピルアルコール(沸点89.5℃)などが挙げられる。低沸点溶剤は、1種類のみが含まれていてもよいし、2種類以上が含まれていてもよい。
本発明の加飾シートに低沸点溶剤が含まれる場合、低沸点溶剤の含有量としては、特に制限されないが、成形過程における気泡の発生を効果的に抑制する観点から、好ましくは1~300mg/m2程度、より好ましくは1~100mg/m2程度、さらに好ましくは1~60mg/m2程度が挙げられる。
本発明の加飾シートに低沸点溶剤が含まれる場合、高沸点溶剤と低沸点溶剤の含有割合としては、特に制限されないが、成形過程における気泡の発生を効果的に抑制する観点から、低沸点溶剤100質量部に対して、高沸点溶剤は、50~300質量部含まれることがより好ましく、70~200質量部含まれることが好ましく、80~150質量部含まれることがさらに好ましい。
加飾シートの各層の組成
[基材層1]
基材層1は、本発明の加飾シートにおいて支持体としての役割を果たす樹脂シート(樹脂フィルム)である。基材層1に使用される樹脂成分については、特に制限されず、成形性や成形樹脂との相性等に応じて適宜選定すればよいが、好ましくは、熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムが挙げられる。当該熱可塑性樹脂としては、具体的には、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(以下「ABS樹脂」と表記することもある)、アクリロニトリル-スチレン-アクリル酸エステル樹脂(以下「ASA樹脂」と表記することもある)、アクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられる。これらの中でも、ABS樹脂及びアクリル樹脂が成形性の観点から好ましい。また、基材層1は、これら樹脂の単層シートで形成されていてもよく、また同種又は異種樹脂による複層シートで形成されていてもよい。
前記の通り、本発明の加飾シートにおいて、高沸点溶剤及び/又は低沸点溶剤が含まれている層については、特に制限されず、基材層1に高沸点溶剤及び/又は低沸点溶剤が含まれていてもよい。
また、基材層1を構成する樹脂の中でも、ABS樹脂を用いると、ABS樹脂に溶剤が浸透しやすいため、加飾シートの製造過程において、溶剤が気化し難く、加飾シートの製造時に、特に、低沸点溶剤に起因する気泡が発生しやすいといえるが、前記のとおり、本発明の加飾シートにおいては、前記所定の高沸点溶剤が含まれているため、溶剤の気化に起因する気泡の発生が好適に抑制されており、基材層1を構成する樹脂として、ABS樹脂を好適に使用することができる。
基材層1の曲げ弾性率については、特に制限されない。例えば、本発明の加飾シートをインサート成形法によって成形樹脂と一体化させる場合には、本発明の加飾シートにおける基材層1の25℃における曲げ弾性率が500~4,000MPa、好ましくは750~3,000MPaが挙げられる。ここで、25℃における曲げ弾性率は、JIS K7171に準拠して測定された値である。25℃における曲げ弾性率が500MPa以上であると、加飾シートは十分な剛性を備え、インサート成形法に供しても、表面特性と成形性がより一層良好になる。また、25℃における曲げ弾性率が3,000MPa以下であると、ロール トゥ ロールで製造する場合に十分な張力をかけることができ、たるみが発生し難くなるため、絵柄がずれることなく重ねて印刷することができ、所謂絵柄見当が良好となる。
基材層1は、その上に設けられる層との密着性を向上させるために、必要に応じて、片面又は両面に酸化法や凹凸化法等の物理的又は化学的表面処理が施されていてもよい。基材層1の表面処理として行われる酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン紫外線処理法等が挙げられる。また、基材層1の表面処理として行われる凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理は、基材層1を構成する樹脂成分の種類に応じて適宜選択されるが、効果及び操作性等の観点から、好ましくはコロナ放電処理法が挙げられる。
また、基材層1は公知の接着層を形成する等の処理を施してもよい。
更に、基材層1は、着色剤を用いて着色されていてもよく、着色されていなくてもよい。また、基材層1は、不透明、無色透明、着色透明、及び半透明のいずれの態様であってもよい。基材層1に用いられる着色剤としては、特に制限されないが、好ましくは150℃以上の温度条件でも変色しない着色剤が挙げられ、具体的には、既存のドライカラー、ペーストカラー、マスターバッチ樹脂組成物等が挙げられる。
基材層1の厚みは、加飾シートの用途、成形樹脂と一体化させる成形法等に応じて適宜設定されるが、通常25~1000μm程度、50~700μm程度が挙げられる。より具体的には、本発明の加飾シートをインサート成形法に供する場合であれば、基材層1の厚みとして、通常50~1000μm程度、好ましくは100~700μm程度、更に好ましくは100~500μm程度が挙げられる。また、本発明の加飾シートを射出成形同時加飾法に供する場合であれば、基材層1の厚みとして、通常25~200μm程度、好ましくは50~200μm程度、更に好ましくは70~200μm程度が挙げられる。
[表面層2]
表面層2は、加飾シートの耐傷付き性、耐候性などを高めることを目的として、加飾シートの最表面に設けられる層である。表面層2を形成する素材は、特に限定されないが、通常は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などの樹脂が用いられ、好ましくは電離放射線硬化性樹脂が用いられる。
表面層2は、単層構成であってもよいし、複層構成であってもよい。また、表面層2が複層構成である場合、各層を構成する素材は、同一であってもよいし、異なってもよい。表面層2が複層構成である場合にも、各層は、電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物により形成されていることが好ましい。また、表面層2は加飾シートに立体的な触感や意匠感を付与することを目的として、表面に凹凸形状を有していてもよい。
表面層2が電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物により形成されている場合、表面層2が溶剤を透過し難い。このため、加飾シートの製造過程において、表面層2を介して溶剤が気化し難く、特に、低沸点溶剤に起因する気泡が発生しやすいといえる。これに対して、本発明の加飾シートにおいては、前記所定の高沸点溶剤が含まれているため、溶剤の気化に起因する気泡の発生が好適に抑制されており、表面層2の形成に電離放射線硬化性樹脂を好適に使用することができる。以下、表面層2の形成に好適に用いられる電離放射線硬化性樹脂について詳述する。
(電離放射線硬化性樹脂)
表面層2の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂とは、電離放射線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂であり、具体的には、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基を有する、プレポリマー、オリゴマー、及びモノマーなどのうち少なくとも1種を適宜混合したものが挙げられる。ここで電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋しうるエネルギー量子を有するものを意味し、通常紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線も含むものである。電離放射線硬化性樹脂の中でも、電子線硬化性樹脂は、無溶剤化が可能であり、光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるため、表面層2の形成において好適に使用される。
電離放射線硬化性樹脂として使用される上記モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートモノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)、好ましくは3個以上(3官能以上)有する(メタ)アクリレートモノマーであればよい。多官能性(メタ)アクリレートとして、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、電離放射線硬化性樹脂として使用される上記オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートオリゴマーが好適であり、中でも分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)有する多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、アクリルシリコーン(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー(例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等)等が挙げられる。ここで、ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、かつ末端または側鎖に(メタ)アクリレート基を有するものであれば特に制限されず、例えば、ポリカーボネートポリオールを(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートなどであってもよい。ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネートポリオールと、多価イソシアネート化合物と、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとを反応させることにより得られる。アクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、シリコーンマクロモノマーを(メタ)アクリレートモノマーとラジカル共重合させることにより得ることができる。ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネート化合物の反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレートは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレートを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートも用いることができる。ポリエステル(メタ)アクリレートは、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、或いは多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレートは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリブタジエン(メタ)アクリレートは、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。シリコーン(メタ)アクリレートは、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーンの末端又は側鎖に(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。これらのオリゴマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記した電離放射線硬化性樹脂の中でも、優れた成形性を得る観点からは、ポリカーボネート(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。また、成形性と耐傷付き性を両立する観点からは、ポリカーボネート(メタ)アクリレートとウレタン(メタ)アクリレートを組み合わせて使用することがより好ましい。
表面層2は、電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物の硬化物により形成されていることがさらに好ましい。表面層2における電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との割合としては、質量比で、電離放射線硬化性樹脂:熱可塑性樹脂=10:90~25:75であることが好ましく、15:85~25:75程度であることがより好ましく、20:80~25:75程度であることがさらに好ましい。
熱可塑性樹脂としては、特に制限されないが、好ましくは、アクリル樹脂、アクリル変性ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂などが挙げられる。これらの中でも、優れた耐薬品性を得る観点からは、特にアクリル樹脂が好ましい。電離放射線硬化性樹脂とアクリル樹脂を併用すると、耐薬品性が向上する一方、表面層2が溶剤を透過し難いため、特に、低沸点溶剤に起因する気泡が発生しやすいといえるが、前記のとおり、本発明の加飾シートにおいては、前記所定の高沸点溶剤が含まれているため、溶剤の気化に起因する気泡の発生が好適に抑制されており、表面層2の形成に電離放射線硬化性樹脂とアクリル樹脂を併用して、気泡を抑制しつつ、好適に耐薬品性を高めることができる。
アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が挙げられ、具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステルを含む単独又は共重合体からなる(メタ)アクリル樹脂が好適に用いられる。
熱可塑性樹脂の重量平均分子量としては、特に制限されないが、優れた耐薬品性を得る観点からは、好ましくは9万~15万程度、より好ましくは10万~14万程度、さらに好ましくは11万~13万程度が挙げられる。
なお、本明細書における熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により、ポリスチレンを標準物質として測定した値である。
(他の添加成分)
表面層2には、表面層2に備えさせる所望の物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば紫外線吸収剤や光安定剤等の耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤等が挙げられる。これらの添加剤は、常用されるものから適宜選択して用いることができる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基等の重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
(表面層2の厚み)
表面層2の硬化後の厚みについては、特に制限されないが、例えば、1~100μm、好ましくは1~50μm、更に好ましくは1~30μmが挙げられる。このような範囲の厚みを満たすと、耐傷付き性、耐候性等の表面保護層としての十分な物性が得られると共に、表面層2を、電離放射線硬化性樹脂を用いて形成する場合には電離放射線を均一に照射することが可能であるため、均一に硬化することが可能となり、経済的にも有利になる。
(電離放射線硬化性樹脂を用いる場合の表面層2の形成)
表面層2の形成は、例えば、電離放射線硬化性樹脂を含む電離放射線硬化性樹脂組成物を調製し、これを塗布し、架橋硬化することにより行われる。なお、電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度は、後述の塗布方式により、表面層2に隣接する層の表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよい。
前記の通り、本発明の加飾シートにおいて、高沸点溶剤及び/又は低沸点溶剤が含まれている層については、特に制限されず、表面層2に高沸点溶剤及び/又は低沸点溶剤が含まれていてもよい。例えば、電離放射線硬化性樹脂を含む電離放射線硬化性樹脂組成物中に、高沸点溶剤及び/又は低沸点溶剤を配合して、表面層2を形成することができる。
本発明においては、調製された塗布液を、前記厚みとなるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗布し、未硬化樹脂層を形成させる。
このようにして形成された未硬化樹脂層に、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させて表面層2を形成する。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70~300kV程度が挙げられる。
なお、電子線の照射において、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、表面層2の下に電子線照射によって劣化しやすい樹脂を使用する場合には、電子線の透過深さと表面層2の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定する。これにより、表面層2の下に位置する層への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による各層の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、表面層2の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5~300kGy(0.5~30Mrad)、好ましくは10~50kGy(1~5Mrad)の範囲で選定される。
更に、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190~380nmの紫外線を含む光線を放射すればよい。紫外線源としては、特に制限されないが、例えば、高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈等が挙げられる。
かくして形成された表面層2には、各種の添加剤を添加することにより、ハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能等の機能を付与する処理を行ってもよい。
[プライマー層3]
プライマー層3は、表面層2の密着性を向上させること等を目的として、必要に応じて、表面層2の下に設けられる。プライマー層3は、基材層1と表面層2との間、絵柄層4を設ける場合には絵柄層4と表面層2との間及び/又は基材層1と絵柄層4の間等に、必要に応じて設けられる層である。
表面層2とその下に位置する層との密着性を高める観点から、表面層2の直下にプライマー層3が設けられていることが好ましい。
プライマー層3を構成するプライマー組成物としては、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル-ウレタン共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等をバインダー樹脂とするものが好ましく用いられ、これらの樹脂は一種又は二種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、及び(メタ)アクリル-ウレタン共重合体樹脂が好ましい。
ウレタン樹脂としては、ポリオール(多価アルコール)を主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするポリウレタンを使用できる。ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するもので、例えばポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール等が使用される。前記イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、或いはヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(又は脂環族)イソシアネートが用いられる。また、ウレタン樹脂とブチラール樹脂を混ぜて構成することも可能である。
架橋後の表面層2との密着性、表面層2を積層後の相互作用の生じ難さ、物性、成形性の面から、ポリオールとしてアクリルポリオール、又はポリエステルポリオールと、架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネートとから組み合わせることが好ましく、特にアクリルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートとを組み合わせて用いることが好ましい。
(メタ)アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が挙げられ、具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステルを含む単独又は共重合体からなる(メタ)アクリル樹脂が好適に用いられる。
(メタ)アクリル-ウレタン共重合体樹脂としては、例えばアクリル-ウレタン(ポリエステルウレタン)ブロック共重合系樹脂が好ましい。硬化剤としては、上記の各種イソシアネートが用いられる。アクリル-ウレタン(ポリエステルウレタン)ブロック共重合系樹脂は所望により、アクリル/ウレタン比(質量比)を好ましくは9/1~1/9、より好ましくは8/2~2/8の範囲で調整することが好ましい。
プライマー層3の厚みについては、特に制限されないが、例えば0.5~20μm程度であり、好ましくは、1~5μmが挙げられる。
プライマー層3は、プライマー組成物を用いて、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ホイラーコート、ディップコート、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、かけ流しコート、刷毛塗り、スプレーコート等の通常の塗布方法や転写コーティング法により形成される。ここで、転写コーティング法は、薄いシート(フィルム基材)にプライマー層や接着層の塗膜を形成し、その後に加飾シート中の対象となる層表面に被覆する方法である。
前記の通り、本発明の加飾シートにおいて、高沸点溶剤及び/又は低沸点溶剤が含まれている層については、特に制限されず、プライマー層3に高沸点溶剤及び/又は低沸点溶剤が含まれていてもよい。例えば、プライマー組成物中に、高沸点溶剤及び/又は低沸点溶剤を配合して、プライマー層3を形成することができる。
[絵柄層4]
絵柄層4は、加飾シートに装飾性を付与する目的で、表面層2の下に、必要に応じて設けられる層である。絵柄層4は、基材層1と表面層2の間、プライマー層3を設ける場合は、基材層1とプライマー層3の間、又は隠蔽層を設ける場合は隠蔽層と表面層2の間等に、必要に応じて設けられる層である。
絵柄層4は、例えば、インキ組成物を用いて所望の絵柄を形成した層とすることができる。絵柄層4の形成に用いられるインキ組成物としては、バインダーに、顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を適宜混合したものが使用される。
インキ組成物に使用されるバインダーとしては、特に制限されないが、例えば、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等が挙げられる。これらのバインダーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
インキ組成物に使用される着色剤としては、特に制限されないが、例えば、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が挙げられる。
絵柄層4によって形成される絵柄についても、特に制限されないが、例えば、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様等が挙げられ、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様であってもよく、あるいは単色無地(いわゆる全面ベタ)であってもよい。これらの絵柄は、通常の黄色、赤色、青色、及び黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成されるが、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成することができる。
前記の通り、本発明の加飾シートにおいて、高沸点溶剤及び/又は低沸点溶剤が含まれている層については、特に制限されず、絵柄層4に高沸点溶剤及び/又は低沸点溶剤が含まれていてもよい。例えば、インキ組成物中に、高沸点溶剤及び/又は低沸点溶剤を配合して、絵柄層4を形成することができる。
絵柄層4の厚みは、特に制限されないが、例えば1~30μm、好ましくは1~20μmが挙げられる。
また、絵柄層4は金属薄膜層であってもよい。金属薄膜層を形成する金属としては、例えば、スズ、インジウム、クロム、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、金、白金、亜鉛、及びこれらのうち少なくとも1種を含む合金などが挙げられる。金属薄膜層の形成方法は特に制限されず、例えば上記の金属を用いた、真空蒸着法などの蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などが挙げられる。金属薄膜層は全面に設けられても、部分的に設けられてもよい。また、隣接する層との密着性を向上させるため、金属薄膜層の表面や裏面には公知の樹脂を用いたプライマー層を設けてもよい。
[隠蔽層]
隠蔽層は、基材層1の色の変化やバラツキを抑制する目的で、基材層1と表面層2の間、プライマー層3を設ける場合であれば基材層1とプライマー層3の間、又は絵柄層4を設ける場合であれば基材層1と絵柄層4の間に、必要に応じて設けられる層である。
隠蔽層は、基材層が加飾シートの色調や絵柄に悪影響を及ぼすのを抑制するために設けられるため、一般的には、不透明色の層として形成される。
隠蔽層は、バインダーに、顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を適宜混合したインキ組成物を用いて形成される。隠蔽層を形成するインキ組成物は、前述した絵柄層に使用されるものから適宜選択して使用される。
隠蔽層は、通常、厚みが1~20μm程度に設定され、所謂ベタ印刷層として形成されることが望ましい。
隠蔽層は、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写による印刷、インクジェット印刷等の通常の印刷方法;グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート等の通常の塗布方法等によって形成される。
前記の通り、本発明の加飾シートにおいて、高沸点溶剤及び/又は低沸点溶剤が含まれている層については、特に制限されず、隠蔽層に高沸点溶剤及び/又は低沸点溶剤が含まれていてもよい。例えば、インキ組成物中に、高沸点溶剤及び/又は低沸点溶剤を配合して、隠蔽層を形成することができる。
[透明樹脂層]
透明樹脂層は、耐薬品性や耐摩耗性を向上させる目的で、基材層1と表面層2の間、プライマー層3を設ける場合は基材層1とプライマー層3の間、絵柄層4を設ける場合は絵柄層4と表面層2の間、又は基材層1上にプライマー層3と絵柄層4をこの順に設ける場合はプライマー層3と絵柄層4の間等に、必要に応じて設けられる層である。透明樹脂層は、インサート成形法によって成形樹脂と一体化される加飾シートにおいて、好適に設けられる層である。
透明樹脂層を形成する樹脂成分としては、透明性、三次元成形性、形状安定性、耐薬品性等に応じて適宜選定されるが、通常、熱可塑性樹脂が使用される。熱可塑性樹脂としては、特に制限されないが、例えば、アクリル樹脂、ポリプロピレン,ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂等が使用される。これらの熱可塑性樹脂の中でも、耐薬品性、耐摩耗性等の観点から、好ましくは、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂;更に好ましくは、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂;より好ましくは、ポリエステル樹脂が挙げられる。
透明樹脂層は、接面する他の層との密着性を向上させるために、必要に応じて、片面又は両面に酸化法や凹凸化法等の物理的又は化学的表面処理が施されていてもよい。これらの物理的又は化学的表面処理は、基材層に施される表面処理と同様である。
透明樹脂層の厚みについては、特に制限されないが、例えば10~200μm、好ましくは15~150μmが挙げられる。
透明樹脂層は、接着剤を介して積層させてもよく、また接着剤を介さず直接積層させてもよい。接着剤を介して積層させる場合、使用される接着剤としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、アミノ樹脂、ゴム、シリコーン系樹脂等が挙げられる。また、接着剤を介さず積層させる場合には、押出し法、サンドラミ法、サーマルラミネート法等の方法で行うことができる。
[裏面接着層]
裏面接着層(図示しない)は、加飾樹脂成形品の成形の際に成形樹脂との密着性を高めることを目的として、加飾シートの外側表面とは反対側に、必要に応じて設けられる層である。
裏面接着層には、加飾樹脂成形品に使用される成形樹脂に応じて、熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂が用いられる。
裏面接着層の形成に使用される熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アクリル変性ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、裏面接着層の形成に使用される熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
(加飾シートの製造方法)
本発明の加飾シートは、例えば、基材層1の上に、沸点が140℃以上の溶剤を含む表面層2を積層する工程を備える方法によって製造することができる。また、本発明の加飾シートが、プライマー層3、絵柄層4などを有している場合であれば、例えば、表面層2、プライマー層3、絵柄層4などのうち少なくとも1層が、沸点140℃以上の溶剤を含むようにして、基材層1の上に積層することで加飾シートを製造することができる。このような製造方法により、本発明の加飾シートに高沸点溶剤を含ませることができる。
2.加飾樹脂成形品
本発明の加飾樹脂成形品は、本発明の加飾シートに成形樹脂を一体化させることにより成形されてなるものである。即ち、本発明の加飾樹脂成形品は、少なくとも、成形樹脂層と、基材層と、表面層とを有しており、沸点が140℃以上の溶剤を含んでいることを特徴とする。
図3に、本発明の加飾樹脂成形品の一態様について、その断面構造を示す。
本発明の加飾樹脂成形品は、本発明の加飾シートの基材層1側に、樹脂を射出することにより成形樹脂層を形成する工程を備える方法により製造することができる。具体的には、本発明の加飾シートを用いて、インサート成形法、射出成形同時加飾法、ブロー成形法、ガスインジェクション成形法等の各種射出成形法により作製される。
インサート成形法では、先ず、真空成形工程において、本発明の加飾シートを真空成形型により予め成形品表面形状に真空成形(オフライン予備成形)し、次いで必要に応じて余分な部分をトリミングして成形シートを得る。この成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を型締めし、流動状態の樹脂を型内に射出し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に加飾シートの基材層1側を一体化させることにより、加飾樹脂成形品が製造される。
より具体的には、下記の工程を含むインサート成形法によって、本発明の加飾樹脂成形品(または熱可塑性樹脂フィルム層付き加飾樹脂成形品)が製造される。
本発明の加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、
真空成形された加飾シートの余分な部分をトリミングして成形シートを得る工程、及び
前記工程で得られた成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を型内に射出して樹脂と成形シートを一体化する工程。
インサート成形法における真空成形工程では、加飾シートを加熱して成形してもよい。この時の加熱温度は、特に限定されず、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚みなどによって適宜選択すればよい。前記の通り、本発明の加飾シートにおいては、高沸点溶剤が含まれることによって、例えば140℃以上の高温に加熱された場合にも、気泡の発生が効果的に抑制されている。従って、本発明の加飾樹脂成形品の製造方法において、本発明の加飾シートの基材層側に、樹脂を射出することにより成形樹脂層を積層する際に、140℃以上に加熱されてもよい。加熱温度の具体例としては、例えば基材層としてABS樹脂フィルムを用いる場合であれば、通常140~250℃程度、好ましくは140~200℃程度とすることができる。また、一体化工程において、流動状態の樹脂の温度は、特に限定されないが、通常180~320℃程度、好ましくは220~280℃程度とすることができる。
また、射出成形同時加飾法では、本発明の加飾シートを射出成形の吸引孔が設けられた真空成形型との兼用雌型に配置し、この雌型で予備成形(インライン予備成形)を行った後、射出成形型を型締めして、流動状態の樹脂を型内に射出充填し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に本発明の加飾シートの基材層1側を一体化させることにより、加飾樹脂成形品が製造される。
より具体的には、下記の工程を含む射出成形同時加飾法によって、本発明の加飾樹脂成形品(または熱可塑性樹脂フィルム層付き加飾樹脂成形品)が製造される。
本発明の加飾シートを、所定形状の成形面を有する可動金型の当該成形面に対し、前記加飾シートの基材層1側が対面するように設置した後、当該加飾シートを加熱、軟化させると共に、前記可動金型側から真空吸引して、軟化した加飾シートを当該可動金型の成形面に沿って密着させることにより、加飾シートを予備成形する工程、
成形面に沿って密着された加飾シートを有する可動金型と固定金型とを型締めした後、両金型で形成されるキャビティ内に、流動状態の樹脂成形材料を射出、充填して固化させることにより、形成された樹脂成形体と加飾シートを積層一体化させる射出成形工程、及び
可動金型を固定金型から離間させて、加飾シート全層が積層されてなる樹脂成形体を取り出す工程。
射出成形同時加飾法の予備成形工程において、加飾シートの加熱温度は、特に限定されず、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚みなどによって適宜選択すればよいが、基材層としてポリエステル樹脂フィルムやアクリル樹脂フィルムを使用する場合であれば、通常70~130℃程度とすることができる。また、射出成形工程において、流動状態の樹脂の温度は、特に限定されないが、通常180~320℃程度、好ましくは220~280℃程度とすることができる。
また、本発明の加飾樹脂成形品(または熱可塑性樹脂フィルム層付き加飾樹脂成形品)は、真空圧着法等の、予め用意された立体的な樹脂成形体(成形樹脂層)上に、本発明の加飾シートを貼着する加飾方法によっても作製することができる。
真空圧着法では、まず、上側に位置する第1真空室及び下側に位置する第2真空室からなる真空圧着機内に、本発明の加飾シート及び樹脂成形体を、加飾シートが第1真空室側、樹脂成形体が第2真空室側となるように、且つ加飾シートの基材層1側が樹脂成形体側に向くように真空圧着機内に設置し、2つの真空室を真空状態とする。樹脂成形体は、第2真空室側に備えられた、上下に昇降可能な昇降台上に設置される。次いで、第1の真空室を加圧すると共に、昇降台を用いて成形体を加飾シートに押し当て、2つの真空室間の圧力差を利用して、加飾シートを延伸しながら樹脂成形体の表面に貼着する。最後に2つの真空室を大気圧に開放し、必要に応じて加飾シートの余分な部分をトリミングすることにより、本発明の加飾樹脂成形品を得ることができる。
真空圧着法においては、上記の成形体を加飾シートに押し当てる工程の前に、加飾シートを軟化させて成形性を高めるため、加飾シートを加熱する工程を備えることが好ましい。当該工程を備える真空圧着法は、特に真空加熱圧着法と呼ばれることがある。当該工程における加熱温度は、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚みなどによって適宜選択すればよいが、基材層としてポリエステル樹脂フィルムやアクリル樹脂フィルムを使用する場合であれば、通常60~200℃程度とすることができる。
本発明の加飾樹脂成形品において、成形樹脂層は、用途に応じた成形樹脂を選択して形成すればよい。成形樹脂としては、熱可塑性樹脂であってもよく、また熱硬化性樹脂であってもよい。
成形樹脂として使用される熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、成形樹脂として使用される熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の加飾樹脂成形品は、優れた耐薬品性、耐摩耗性等を有しているので、例えば、自動車等の車両の内装材又は外装材;幅木、回縁等の造作部材;窓枠、扉枠等の建具;壁、床、天井等の建築物の内装材;テレビ受像機、空調機等の家電製品の筐体;容器等として利用することができる。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例1-5
基材層としてABS樹脂フィルム(厚み475μm)を用いた。基材層上に、熱可塑性樹脂(アクリル樹脂)14質量部と電離放射線硬化性樹脂(EB樹脂A)5質量部とを配合した樹脂組成物(それぞれ、溶剤として、表1に記載の溶剤A~Eを1.5質量%と、酢酸エチル(1気圧下の沸点77.1℃)を79.5質量%と、イソプロピルアルコール(IPA 1気圧下の沸点89.5℃)を19.0質量%含む)を、硬化後の厚さが10μmとなるように塗布して未硬化樹脂層を形成した。次に、これらの未硬化樹脂層の上から、加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)を照射して硬化させ、表面層を形成し、各加飾シートを製造した。
実施例及び比較例で用いた樹脂及び溶剤の詳細は、以下の通りである。
・EB樹脂A: 2官能ウレタンアクリレートモノマー(分子量500)
・アクリル樹脂:アクリルポリマー(重量平均分子量12万)
・溶剤A:酢酸ジエチレングリコールモノブチルエーテル(1気圧下の沸点が247℃)
・溶剤B:イソホロン(1気圧下の沸点が215℃)
・溶剤C:二塩基酸エステルコハク酸ジエチル(1気圧下の沸点が218℃)
・溶剤D:乳酸エチル(1気圧下の沸点が154℃)
・溶剤E:酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル(1気圧下の沸点が145.8℃)
比較例1
表面層を形成する樹脂組成物が、表1に記載の溶剤A~Eを含まないこと以外は、実施例1-5と同様にして、加飾シートを製造した。
<加熱による気泡発生の確認>
加飾シートから加飾樹脂成形品を製造する際の予備成形を想定して、得られた各加飾シートを金型に入れて、真空成形の条件で、赤外線ヒーターで室温から160℃まで、20秒間かけて加熱した。加熱後の加飾シートを金型から取り出して、加飾シートの表面を目視で観察し、気泡の発生の有無を確認した。結果を表1に示す。
表1において、EB樹脂とは、電離放射線硬化性樹脂を意味する。