以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
[熱可塑性エラストマー組成物]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a)を有しかつガラス転移点が25℃以下であるエラストマー性ポリマー(A)、並びに、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有されておりかつガラス転移点が25℃以下であるエラストマー性ポリマー(B)からなる群から選択される少なくとも1種のエラストマー成分と、
前記エラストマー成分100質量部に対して20質量部以下の含有比率のクレイと、
化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂と、
を含有してなるものである。
(エラストマー成分)
このようなエラストマー成分は、上述のエラストマー性ポリマー(A)~(B)からなる群から選択される少なくとも1種のものである。このようなエラストマー性ポリマー(A)~(B)において、「側鎖」とは、エラストマー性ポリマーの側鎖および末端をいう。また、「カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a)」とは、エラストマー性ポリマーの主鎖を形成する原子(通常、炭素原子)に、水素結合性架橋部位としてのカルボニル含有基および/または含窒素複素環(より好ましくはカルボニル含有基および含窒素複素環)が化学的に安定な結合(共有結合)をしていることを意味する。また、「側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有され」とは、水素結合性架橋部位を有する側鎖(以下、便宜上、場合により「側鎖(a’)」と称する。)と、共有結合性架橋部位を有する側鎖(以下、便宜上、場合により「側鎖(b)」と称する。)の双方の側鎖を含むことによってポリマーの側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方が含有されている場合の他、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を有する側鎖(1つの側鎖中に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を含む側鎖:以下、このような側鎖を便宜上、場合により「側鎖(c)」と称する。)を含むことで、ポリマーの側鎖に、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方が含有されている場合を含む概念である。
このようなエラストマー性ポリマー(A)~(B)の主鎖(主鎖部分を形成するポリマー)は、一般的に公知の天然高分子または合成高分子であって、そのガラス転移点が室温(25℃)以下のポリマーからなるものであればよく(いわゆるエラストマーからなるものであればよく)、特に限定されるものではない。そのため、エラストマー性ポリマー(A)~(B)は、例えば、天然高分子または合成高分子等のガラス転移点が室温(25℃)以下のエラストマー性ポリマーを主鎖とし、かつ、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a)を含むもの;天然高分子または合成高分子等のガラス転移点が室温(25℃)以下のエラストマー性ポリマーを主鎖とし、かつ、側鎖として、水素結合性架橋部位を有する側鎖(a’)及び共有結合性架橋部位を有する側鎖(b)を含有するもの;天然高分子または合成高分子等のガラス転移点が室温(25℃)以下のエラストマー性ポリマーを主鎖とし、かつ、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を含む側鎖(c)を含むもの;等としてもよい。
このようなエラストマー性ポリマー(A)~(B)の主鎖(主鎖部分を形成するポリマー)としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2-ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)などのジエン系ゴムおよびこれらの水素添加物;エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-アクリルゴム(AEM)、エチレン-ブテンゴム(EBM)、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、ポリエチレンゴム、ポリプロピレンゴムなどのオレフィン系ゴム;エピクロロヒドリンゴム;多硫化ゴム;シリコーンゴム;ウレタンゴム;等が挙げられる。
また、前記エラストマー性ポリマー(A)~(B)の主鎖(主鎖部分を形成するポリマー)は、樹脂成分を含むエラストマー性のポリマーからなるものであってもよく、例えば、水添されていてもよいポリスチレン系エラストマー性ポリマー(例えば、SBS、SIS、SEBS等)、ポリオレフィン系エラストマー性ポリマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー性ポリマー、ポリウレタン系エラストマー性ポリマー、ポリエステル系エラストマー性ポリマー、ポリアミド系エラストマー性ポリマー等が挙げられる。
このようなエラストマー性ポリマー(A)~(B)の主鎖としては、ジエン系ゴム、ジエン系ゴムの水素添加物、オレフィン系ゴム、水添されていてもよいポリスチレン系エラストマー性ポリマー、ポリオレフィン系エラストマー性ポリマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー性ポリマー、ポリウレタン系エラストマー性ポリマー、ポリエステル系エラストマー性ポリマー、及び、ポリアミド系エラストマー性ポリマーの中から選択される少なくとも1種が好ましい。また、このような前記エラストマー性ポリマー(A)~(B)の主鎖としては、老化しやすい二重結合がないという観点からは、ジエン系ゴムの水添物、オレフィン系ゴムが好ましく、コストの低さ、反応性の高さ(無水マレイン酸等の化合物のエン反応が可能な二重結合を多数有する)の観点からは、ジエン系ゴムが好ましい。
また、このようなエラストマー成分として含有されるポリマーの主鎖は、結晶性が低くゴム弾性を発現しやすい、また、老化しやすい二重結合がないという観点から、オレフィン系共重合体であることが好ましい。
さらに、エラストマー性ポリマー(A)~(B)は、液状または固体状であってもよく、その分子量は特に限定されず、本発明の熱可塑性エラストマー組成物が用いられる用途や要求される物性等に応じて適宜選択することができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を加熱(脱架橋等)した時の流動性を重視する場合は、上記エラストマー性ポリマー(A)~(B)は液状であることが好ましく、例えば、主鎖部分がイソプレンゴム、ブタジエンゴム等のジエン系ゴムである場合には、エラストマー性ポリマー(A)~(B)を液状のものとするために、該主鎖部分の重量平均分子量が1,000~100,000であることが好ましく、1,000~50,000程度であることが特に好ましい。
一方、本発明の熱可塑性エラストマー組成物の強度を重視する場合は、上記エラストマー性ポリマー(A)~(B)は固体状であることが好ましく、例えば、主鎖部分がイソプレンゴム、ブタジエンゴム等のジエン系ゴムである場合には、エラストマー性ポリマー(A)~(B)を固体状のものとするために、該主鎖部分の重量平均分子量が100,000以上であることが好ましく、500,000~1,500,000程度であることが特に好ましい。
このような重量平均分子量は、ゲルパーミエションクロマトグラフィー(Gel permeation chromatography(GPC))により測定した重量平均分子量(ポリスチレン換算)である。測定にはテトラヒドロフラン(THF)を溶媒として用いることが好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、前記エラストマー性ポリマー(A)~(B)は2種以上を混合して用いることができる。この場合の各エラストマー性ポリマー同士の混合比は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物が用いられる用途や要求される物性等に応じて任意の比率とすることができる。
また、前記エラストマー性ポリマー(A)~(B)のガラス転移点は、前述のように25℃以下である。エラストマー性ポリマーのガラス転移点がこの範囲であれば、本発明の熱可塑性エラストマー組成物が室温でゴム状弾性を示すためである。また、本発明において「ガラス転移点」は、示差走査熱量測定(DSC-Differential Scanning Calorimetry)により測定したガラス転移点である。測定に際しては、昇温速度は10℃/minにするのが好ましい。
このようなエラストマー性ポリマー(A)~(B)の主鎖は、エラストマー性ポリマー(A)~(B)のガラス転移点が25℃以下となり、得られる熱可塑性エラストマー組成物からなる成形物が室温(25℃)でゴム状弾性を示すことから、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2-ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)などのジエン系ゴム;エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-アクリルゴム(AEM)、エチレン-ブテンゴム(EBM)などのオレフィン系ゴム;であることが好ましい。また、前記エラストマー性ポリマー(A)~(B)の主鎖に、それぞれオレフィン系ゴムを用いると、得られる熱可塑性エラストマー組成物の引張強度が向上し、二重結合が存在しないため組成物の劣化がより十分に抑制される傾向にある。
エラストマー性ポリマー(A)~(B)に用いることが可能な前記スチレン-ブタジエンゴム(SBR)の結合スチレン量や、水添エラストマー性ポリマーの水添率等は、特に限定されず、本発明の熱可塑性エラストマー組成物が用いられる用途や、組成物に要求される物性等に応じて任意の比率に調整することができる。
また、上記エラストマー性ポリマー(A)~(B)の主鎖として、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、エチレン-アクリルゴム(AEM)、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-ブテンゴム(EBM)を用いる場合、室温における良好なゴム状弾性発現の観点から、特に、結晶化度が10%未満(より好ましくは5~0%)のものであることが好ましい。また、上記エラストマー性ポリマー(A)~(B)の主鎖として、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、エチレン-アクリルゴム(AEM)、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-ブテンゴム(EBM)を用いる場合、そのエチレン含有量は、好ましくは10~90モル%であり、より好ましくは30~90モル%である。エチレン含有量がこの範囲であれば、熱可塑性エラストマー(組成物)としたときの圧縮永久歪、機械的強度、特に引張強度に優れるため好ましい。
さらに、前記エラストマー性ポリマー(A)~(B)としては、室温における良好なゴム状弾性発現の観点から、非晶性のものが好ましい。また、このようなエラストマー性ポリマー(A)~(B)としては、一部に結晶性(結晶構造)を有するエラストマーであってもよいが、この場合であっても、結晶化度が10%未満(特に好ましくは5~0%)であることが好ましい。なお、このような結晶化度は、測定装置としてX線回折装置(例えば、リガク社製の商品名「MiniFlex300」を用い、回折ピークを測定し、結晶性/非晶性由来の散乱ピークの積分比を計算することにより求めることができる。
また、上記エラストマー性ポリマー(A)~(B)は、上述のように、側鎖として、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a);水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a’)及び共有結合性架橋部位を含有する側鎖(b);並びに、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位を含有する側鎖(c);のうちの少なくとも1種を有するものとなる。なお、本発明において、側鎖(c)は、側鎖(a’)としても機能しつつ側鎖(b)としても機能するような側鎖であるとも言える。以下において、各側鎖を説明する。
<側鎖(a’):水素結合性架橋部位を含有する側鎖>
水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a’)は、水素結合による架橋を形成し得る基(例えば、水酸基、後述の側鎖(a)に含まれる水素結合性架橋部位等)を有し、その基に基づいて水素結合を形成する側鎖であればよく、その構造は特に制限されるものではない。ここにおいて、水素結合性架橋部位は、水素結合によりポリマー同士(エラストマー同士)を架橋する部位である。なお、水素結合による架橋は、水素のアクセプター(孤立電子対を含む原子を含有する基等)と、水素のドナー(電気陰性度が大きな原子に共有結合した水素原子を備える基等)とがあって初めて形成されることから、エラストマー同士の側鎖間において水素のアクセプターと水素のドナーの双方が存在しない場合には、水素結合による架橋が形成されない。そのため、エラストマー同士の側鎖間において、水素のアクセプターと水素のドナーの双方が存在することによって初めて、水素結合性架橋部位が系中に存在することとなる。なお、本発明においては、エラストマー同士の側鎖間において、水素のアクセプターとして機能し得る部分(例えばカルボニル基等)と、水素のドナーとして機能し得る部分(例えば水酸基等)の双方が存在することをもって、その側鎖の水素のアクセプターとして機能し得る部分とドナーとして機能し得る部分とを、水素結合性架橋部位と判断することができる。
このような側鎖(a’)中の水素結合性架橋部位としては、より強固な水素結合を形成するといった観点から、以下において説明する、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位(側鎖(a)に含まれる水素結合性架橋部位)であることが好ましい。すなわち、かかる側鎖(a’)としては、後述の側鎖(a)がより好ましい。また、同様の観点で、前記側鎖(a’)中の水素結合性架橋部位としては、カルボニル含有基および含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位であることがより好ましい。
<側鎖(a):カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖>
カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a)は、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有するものであればよく、他の構成は特に限定されない。このような水素結合性架橋部位としては、カルボニル含有基および含窒素複素環を有するものがより好ましい。
このようなカルボニル含有基としては、カルボニル基を含むものであればよく、特に限定されず、その具体例としては、アミド、エステル、イミド、カルボキシ基、カルボニル基等が挙げられる。このようなカルボニル含有基は、カルボニル含有基を前記主鎖に導入し得る化合物を用いて、前記主鎖(主鎖部分のポリマー)に導入した基であってもよい。このようなカルボニル含有基を前記主鎖に導入し得る化合物は特に限定されず、その具体例としては、ケトン、カルボン酸およびその誘導体等が挙げられる。
このようなカルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の炭化水素基を有する有機酸が挙げられ、該炭化水素基は、脂肪族、脂環族、芳香族等のいずれであってもよい。また、カルボン酸誘導体としては、具体的には、例えば、カルボン酸無水物、アミノ酸、チオカルボン酸(メルカプト基含有カルボン酸)、エステル、アミノ酸、ケトン、アミド類、イミド類、ジカルボン酸およびそのモノエステル等が挙げられる。
また、前記カルボン酸およびその誘導体等としては、具体的には、例えば、マロン酸、マレイン酸、スクシン酸、グルタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、p-フェニレンジ酢酸、p-ヒドロキシ安息香酸、p-アミノ安息香酸、メルカプト酢酸などのカルボン酸および置換基含有するこれらのカルボン酸;無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸、無水プロピオン酸、無水安息香酸などの酸無水物;マレイン酸エステル、マロン酸エステル、コハク酸エステル、グルタル酸エステル、酢酸エチルなどの脂肪族エステル;フタル酸エステル、イソフタル酸エステル、テレフタル酸エステル、エチル-m-アミノベンゾエート、メチル-p-ヒドロキシベンゾエートなどの芳香族エステル;キノン、アントラキノン、ナフトキノンなどのケトン;グリシン、チロシン、ビシン、アラニン、バリン、ロイシン、セリン、スレオニン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、メチオニン、プロリン、N-(p-アミノベンゾイル)-β-アラニンなどのアミノ酸;マレインアミド、マレインアミド酸(マレインモノアミド)、コハク酸モノアミド、5-ヒドロキシバレルアミド、N-アセチルエタノールアミン、N,N’-ヘキサメチレンビス(アセトアミド)、マロンアミド、シクロセリン、4-アセトアミドフェノール、p-アセトアミド安息香酸などのアミド類;マレインイミド、スクシンイミドなどのイミド類;等が挙げられる。
これらのうち、カルボニル基(カルボニル含有基)を導入し得る化合物として、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸等の環状酸無水物であることが好ましく、無水マレイン酸であることが特に好ましい。
また、前記側鎖(a)が含窒素複素環を有する場合、前記含窒素複素環は、直接又は有機基を介して前記主鎖に導入されていればよく、その構成等は特に制限されるものではない。このような含窒素複素環は、複素環内に窒素原子を含むものであれば複素環内に窒素原子以外のヘテロ原子、例えば、イオウ原子、酸素原子、リン原子等を有するものでも用いることができる。ここで、前記側鎖(a)中に含窒素複素環を用いた場合には、複素環構造を有すると架橋を形成する水素結合がより強くなり、得られる本発明の熱可塑性エラスマー組成物の引張強度がより向上するため好ましい。
また、上記含窒素複素環は置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、(イソ)プロピル基、ヘキシル基などのアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、(イソ)プロポキシ基などのアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子からなる基;シアノ基;アミノ基;芳香族炭化水素基;エステル基;エーテル基;アシル基;チオエーテル基;等が挙げられ、これらを組み合わせて用いることもできる。これらの置換基の置換位置は特に限定されず、置換基数も限定されない。
さらに、上記含窒素複素環は、芳香族性を有していても、有していなくてもよいが、芳香族性を有していると得られる本発明の熱可塑性エラストマー組成物の圧縮永久歪や機械的強度がより向上するため好ましい。
また、このような含窒素複素環は、特に制限されるものではないが、水素結合がより強固になり、圧縮永久歪や機械的強度がより向上するといった観点から、5員環、6員環であることが好ましい。このような含窒素複素環としては、具体的には、例えば、ピロロリン、ピロリドン、オキシインドール(2-オキシインドール)、インドキシル(3-オキシインドール)、ジオキシインドール、イサチン、インドリル、フタルイミジン、β-イソインジゴ、モノポルフィリン、ジポルフィリン、トリポルフィリン、アザポルフィリン、フタロシアニン、ヘモグロビン、ウロポルフィリン、クロロフィル、フィロエリトリン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾピラゾール、ベンゾトリアゾール、イミダゾリン、イミダゾロン、イミダゾリドン、ヒダントイン、ピラゾリン、ピラゾロン、ピラゾリドン、インダゾール、ピリドインドール、プリン、シンノリン、ピロール、ピロリン、インドール、インドリン、オキシルインドール、カルバゾール、フェノチアジン、インドレニン、イソインドール、オキサゾール、チアゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、オキサトリアゾール、チアトリアゾール、フェナントロリン、オキサジン、ベンゾオキサジン、フタラジン、プテリジン、ピラジン、フェナジン、テトラジン、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、アントラニル、ベンゾチアゾール、ベンゾフラザン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、アントラゾリン、ナフチリジン、チアジン、ピリダジン、ピリミジン、キナゾリン、キノキサリン、トリアジン、ヒスチジン、トリアゾリジン、メラミン、アデニン、グアニン、チミン、シトシン、ヒドロキシエチルイソシアヌレートおよびこれらの誘導体等が挙げられる。これらのうち、特に含窒素5員環については、下記の化合物(化学式で記載の環状構造)、下記一般式(10)で表されるトリアゾール誘導体および下記一般式(11)で表されるイミダゾール誘導体が好ましく例示される。また、これらは上記した種々の置換基を有していてもよいし、水素付加または脱離されたものであってもよい。
上記一般式(10)及び(11)中の置換基X、Y、Zは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~30のアルキル基、炭素数7~20のアラルキル基、炭素数6~20のアリール基又はアミノ基である。なお、上記一般式(10)中のXおよびYのいずれか一方は水素原子ではなく、同様に、上記一般式(11)中のX、YおよびZの少なくとも1つは水素原子ではない。
このような置換基X、Y、Zとしては、水素原子、アミノ基以外に、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、オクチル基、ドデシル基、ステアリル基などの直鎖状のアルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、1-メチルブチル基、1-メチルヘプチル基、2-エチルヘキシル基などの分岐状のアルキル基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基;フェニル基、トリル基(o-、m-、p-)、ジメチルフェニル基、メシチル基などのアリール基;等が挙げられる。
これらのうち、置換基X、Y、Zとしては、アルキル基、特に、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、イソプロピル基、2-エチルヘキシル基であることが、得られる本発明の熱可塑性エラストマー組成物の加工性が良好となるため好ましい。
また、含窒素6員環については、下記の化合物が好ましく例示される。これらについても上記した種々の置換基(例えば、前述の含窒素複素環が有していてもよい置換基)を有していてもよいし、水素付加または脱離されたものであってもよい。
また、上記含窒素複素環とベンゼン環または含窒素複素環同士が縮合したものも用いることができ、具体的には、下記の縮合環が好適に例示される。これらの縮合環についても上記した種々の置換基を有していてもよいし、水素原子が付加または脱離されたものであってもよい。
このような含窒素複素環としては、中でも、得られる本発明の熱可塑性エラストマー組成物のリサイクル性、圧縮永久歪、硬度および機械的強度、特に引張強度に優れるため、トリアゾール環、イソシアヌレート環、チアジアゾール環、ピリジン環、イミダゾール環、トリアジン環及びヒダントイン環の中から選択される少なくとも1種であることが好ましく、トリアゾール環、チアジアゾール環、ピリジン環、イミダゾール環およびヒダントイン環の中から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
また、前記側鎖(a)において、上記カルボニル含有基および上記含窒素複素環の双方が含まれる場合、上記カルボニル含有基および上記含窒素複素環は、互いに独立の側鎖として主鎖に導入されていてもよいが、上記カルボニル含有基と上記含窒素複素環とが互いに異なる基を介して結合した1つの側鎖として主鎖に導入されていることが好ましい。このように、側鎖(a)としては、上記カルボニル含有基および上記含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖が1つの側鎖として主鎖に導入されていることが好ましく、下記一般式(1):
[式(1)中、Aは含窒素複素環であり、Bは単結合;酸素原子、式:NR’(R'は水素原子又は炭素数1~10のアルキル基である。)で表されるアミノ基又はイオウ原子;或いはこれらの原子又は基を含んでもよい有機基である。]
で表される構造部分を含有する側鎖が1つの側鎖として主鎖に導入されていることがより好ましい。このように、前記側鎖(a)の前記水素結合性架橋部位としては、上記一般式(1)で表される構造部分を含有することが好ましい。
ここで、上記式(1)における含窒素複素環Aは、具体的には、上記で例示した含窒素複素環が挙げられる。また、上記式(1)における置換基Bとしては、具体的には、例えば、単結合;酸素原子、イオウ原子または式:NR’(R’は水素原子または炭素数1~10のアルキル基)で表されるアミノ基(なお、以下、便宜上、場合により、式:NR’で表されるアミノ基を単に「アミノ基NR’」と称する。);これらの原子または基を含んでもよい炭素数1~20のアルキレン基またはアラルキレン基;これらの原子または基を末端に有する、炭素数1~20のアルキレンエーテル基(アルキレンオキシ基、例えば、-O-CH2CH2-基)、アルキレンアミノ基(例えば、-NH-CH2CH2-基等)またはアルキレンチオエーテル基(アルキレンチオ基、例えば、-S-CH2CH2-基);これらを末端に有する、炭素数1~20のアラルキレンエーテル基(アラルキレンオキシ基)、アラルキレンアミノ基またはアラルキレンチオエーテル基;等が挙げられる。
ここで、上記アミノ基NR’中のR’として選択され得る炭素数1~10のアルキル基としては、異性体を含む、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。上記式(1)における置換基B中の酸素原子、イオウ原子およびアミノ基NR’;ならびに;これらの原子または基を末端に有する炭素数1~20の、アルキレンエーテル基、アルキレンアミノ基、アルキレンチオエーテル基、または、アラルキレンエーテル基、アラルキレンアミノ基、アラルキレンチオエーテル基等の酸素原子、アミノ基NR’およびイオウ原子は、隣接するカルボニル基と組み合わされ共役系のエステル基、アミド基、イミド基、チオエステル基等を形成することが好ましい。
これらのうち、前記置換基Bは、共役系を形成する、酸素原子、イオウ原子またはアミノ基;これらの原子または基を末端に有する、炭素数1~20のアルキレンエーテル基、アルキレンアミノ基またはアルキレンチオエーテル基であることが好ましく、アミノ基(NH)、アルキレンアミノ基(-NH-CH2-基、-NH-CH2CH2-基、-NH-CH2CH2CH2-基)、アルキレンエーテル基(-O-CH2-基、-O-CH2CH2-基、-O-CH2CH2CH2-基)であることが特に好ましい。
また、側鎖(a)が、上記カルボニル含有基および上記含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖である場合、上記カルボニル含有基および上記含窒素複素環を有する前記水素結合性架橋部位は、下記式(2)または(3)で表される1つの側鎖として、そのα位またはβ位で上記ポリマー主鎖に導入されている側鎖であることがより好ましい。
[式中、Aは含窒素複素環であり、BおよびDはそれぞれ独立に単結合;酸素原子、アミノ基NR’(R’は水素原子または炭素数1~10のアルキル基である。)またはイオウ原子;あるいはこれらの原子または基を含んでもよい有機基である。]
ここで、含窒素複素環Aは上記式(1)の含窒素複素環Aと基本的に同様であり、置換基BおよびDはそれぞれ独立に、上記式(1)の置換基Bと基本的に同様である。ただし、上記式(3)における置換基Dは、上記式(1)の置換基Bで例示したもののうち、単結合;酸素原子、窒素原子またはイオウ原子を含んでもよい炭素数1~20のアルキレン基またはアラルキレン基の共役系を形成するものであることが好ましく、単結合であることが特に好ましい。すなわち、上記式(3)のイミド窒素と共に、酸素原子、窒素原子またはイオウ原子を含んでもよい炭素数1~20のアルキレンアミノ基またはアラルキレンアミノ基を形成することが好ましく、上記式(3)のイミド窒素に含窒素複素環が直接結合する(単結合)ことが特に好ましい。具体的には、上記置換基Dとしては、単結合;上記した酸素原子、イオウ原子またはアミノ基を末端に有する炭素数1~20のアルキレンエーテルまたはアラルキレンエーテル基等;異性体を含む、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、フェニレン基、キシリレン基等が挙げられる。
また、側鎖(a)が上記カルボニル含有基および上記含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖である場合、前記側鎖(a)の前記水素結合性架橋部位が下記一般式(101):
[式(101)中、Aは含窒素複素環である。]
で表される構造部分を含有することが好ましい。このような式(101)中の含窒素複素環Aは上記式(1)の含窒素複素環Aと基本的に同様のものである。また、このような側鎖(a)の前記水素結合性架橋部位としては、高モジュラス、高破断強度の観点から、下記一般式(102):
で表される構造を有するものがより好ましい。更に、前記側鎖(a)が上記一般式(102)で表される基であることが特に好ましい。
上記熱可塑性エラストマーが有する上記カルボニル含有基と上記含窒素複素環との割合は特に限定されず、2:1であると相補的な相互作用を形成しやすくなり、また、容易に製造できるため好ましい。
このようなカルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a)は、主鎖部分100モル%に対して、0.1~50モル%の割合(導入率)で導入されていることが好ましく、1~30モル%の割合で導入されていることがより好ましい。このような側鎖(a)の導入率が0.1モル%未満では架橋時の引張強度が十分でない場合があり、他方、50モル%を超えると架橋密度が高くなりゴム弾性が失われる場合がある。すなわち、導入率が上記した範囲内であれば、上記熱可塑性エラストマーの側鎖同士の相互作用によって、分子間で効率良く架橋が形成されるため、架橋時の引張強度が高く、リサイクル性に優れるため好ましい。
上記導入率は、側鎖(a)として、上記カルボニル含有基を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a-i)と上記含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a-ii)とがそれぞれ独立に導入されている場合には、該カルボニル含有基を含有する側鎖(a-i)と該含窒素複素環を含有する側鎖(a-ii)との割合に従って、これらを一組で1つの側鎖(a)として考えて算出する。なお、側鎖(a-i)及び(a-ii)のうちの何れかが過剰の場合は、多い方の側鎖を基準として、上記導入率を考えればよい。
また、上記導入率は、例えば、主鎖部分がエチレン-プロピレンゴム(EPM)である場合には、エチレンおよびプロピレンモノマー単位100ユニット当り、側鎖部分の導入されたモノマーが、0.1~50ユニット程度である。
また、側鎖(a)としては、反応後に前記主鎖を形成するポリマー(エラストマー性ポリマー形成用の材料)に、官能基として環状酸無水物基(より好ましくは無水マレイン酸基)を有するポリマー(環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー)を用いて、前記官能基(環状酸無水物基)と、該環状酸無水物基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物(含窒素複素環を導入し得る化合物)とを反応させて、水素結合性架橋部位を形成して、ポリマーの側鎖を側鎖(a)としたものが好ましい。このような含窒素複素環を導入し得る化合物は、上記で例示した含窒素複素環そのものであってもよく、無水マレイン酸等の環状酸無水物基と反応する置換基(例えば、水酸基、チオール基、アミノ基等)を有する含窒素複素環であってもよい。
ここで、側鎖(a)における含窒素複素環の結合位置について説明する。なお、窒素複素環を便宜上「含窒素n員環化合物(n≧3)」とする。
以下に説明する結合位置(「1~n位」)は、IUPAC命名法に基づくものである。例えば、非共有電子対を有する窒素原子を3個有する化合物の場合、IUPAC命名法に基づく順位によって結合位置を決定する。具体的には、上記で例示した5員環、6員環および縮合環の含窒素複素環に結合位置を記している。
このような側鎖(a)においては、直接または有機基を介して共重合体と結合する含窒素n員環化合物の結合位置は特に限定されず、いずれの結合位置(1位~n位)でもよい。好ましくは、その1位または3位~n位である。
含窒素n員環化合物に含まれる窒素原子が1個(例えば、ピリジン環等)の場合は、分子内でキレートが形成されやすく組成物としたときの引張強度等の物性に優れるため、3位~(n-1)位が好ましい。含窒素n員環化合物の結合位置を選択することにより、エラストマー性ポリマーは、エラストマー性ポリマー同士の分子間で、水素結合、イオン結合、配位結合等による架橋が形成されやすく、リサイクル性に優れ、機械的特性、特に引張強度に優れるものとなる傾向にある。
<側鎖(b):共有結合性架橋部位を含有する側鎖>
本明細書において「共有結合性架橋部位を含有する側鎖(b)」は、エラストマー性ポリマーの主鎖を形成する原子(通常、炭素原子)に、共有結合性架橋部位(後述するアミノ基含有化合物等の「共有結合を生成する化合物」等と反応することで、アミド、エステル、ラクトン、ウレタン、エーテル、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの結合を生起しうる官能基等)が化学的に安定な結合(共有結合)をしていることを意味する。なお、側鎖(b)は共有結合性架橋部位を含有する側鎖であるが、共有結合性部位を有しつつ、更に、水素結合が可能な基を有して、側鎖間において水素結合による架橋を形成するような場合には、後述の側鎖(c)として利用されることとなる(なお、エラストマー同士の側鎖間に水素結合を形成することが可能な、水素のドナーと、水素のアクセプターの双方が含まれていない場合、例えば、系中に単にエステル基(-COO-)が含まれている側鎖のみが存在するような場合には、エステル基(-COO-)同士では特に水素結合は形成されないため、かかる基は水素結合性架橋部位としては機能しない。他方、例えば、カルボキシ基やトリアゾール環のような、水素結合の水素のドナーとなる部位と、水素のアクセプターとなる部位の双方を有する構造をエラストマー同士の側鎖にそれぞれ含む場合には、エラストマー同士の側鎖間で水素結合が形成されるため、水素結合性架橋部位が含有されることとなる。また、例えば、エラストマー同士の側鎖間に、エステル基と水酸基とが共存して、それらの基により側鎖間で水素結合が形成される場合、その水素結合を形成する部位が水素結合性架橋部位となる。そのため、側鎖(b)が有する構造自体や、側鎖(b)が有する構造と他の側鎖が有する置換基の種類等に応じて、側鎖(c)として利用される場合がある。)。また、ここにいう「共有結合性架橋部位」は、共有結合によりポリマー同士(エラストマー同士)を架橋する部位である。
このような共有結合性架橋部位を含有する側鎖(b)は特に制限されないが、例えば、官能基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(前記主鎖部分を形成させるためのポリマー)と、前記官能基と反応して共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)とを反応させることで、形成される共有結合性架橋部位を含有するものであることが好ましい。このような側鎖(b)の前記共有結合性架橋部位における架橋は、アミド、エステル、ラクトン、ウレタン、エーテル、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの結合により形成されてなることが好ましい。そのため、前記主鎖を構成するポリマーが有する前記官能基としては、アミド、エステル、ラクトン、ウレタン、エーテル、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの結合を生起しうる官能基であることが好ましい。
このような「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」としては、例えば、1分子中にアミノ基および/またはイミノ基を2個以上(アミノ基およびイミノ基をともに有する場合はこれらの基を合計して2個以上)有するポリアミン化合物;1分子中に水酸基を2個以上有するポリオール化合物;1分子中にイソシアネート(NCO)基を2個以上有するポリイソシアネート化合物;1分子中にチオール基(メルカプト基)を2個以上有するポリチオール化合物;1分子中にエポキシ基を2個以上有するポリエポキシ化合物;1分子中にカルボキシ基を2個以上有するポリカルボキシ化合物;1分子中にアルコキシシリル基を2個以上有するポリアルコキシシリル化合物;等が挙げられる。ここにおいて「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」は、かかる化合物が有する置換基の種類や、かかる化合物を利用して反応せしめた場合に反応の進行の程度、等によっては、前記水素結合性架橋部位及び前記共有結合性架橋部位の双方を導入し得る化合物となる(例えば、水酸基を3個以上有する化合物を利用して、共有結合による架橋部位を形成する場合において、反応の進行の程度によっては、官能基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーの該官能基に2個の水酸基が反応して、残りの1個の水酸基が水酸基として残るような場合も生じ、その場合には、水素結合性の架橋を形成する部位も併せて導入され得ることとなる。)。そのため、ここに例示する「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」には、「水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物」も含まれ得る。このような観点から、側鎖(b)を形成する場合には、「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」の中から目的の設計に応じて化合物を適宜選択したり、反応の進行の程度を適宜制御する等して、側鎖(b)を形成すればよい。なお、共有結合性架橋部位を形成する化合物が複素環を有している場合には、より効率よく水素結合性の架橋部位も同時に製造することが可能になり、後述の側鎖(c)として、前記共有結合性架橋部位を有する側鎖を効率よく形成することが可能となる。そのため、かかる複素環を有しているような化合物の具体例については、側鎖(c)を製造するための好適な化合物として、特に側鎖(c)と併せて説明する。なお、側鎖(c)は、その構造から、側鎖(a)や側鎖(b)等の側鎖の好適な一形態であるとも言える。
このような「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」として利用可能なポリアミン化合物としては、例えば、以下に示す脂環族アミン、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、含窒素複素環アミン等が挙げられる。
このような脂環族アミンとしては、具体的には、例えば、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ジアミノシクロヘキサン、ジ-(アミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
また、前記脂肪族ポリアミンとしては、特に制限されないが、例えば、メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノヘプタン、ジアミノドデカン、ジエチレントリアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N-アミノエチルピペラジン、トリエチレンテトラミン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N’-ジエチルエチレンジアミン、N,N’-ジイソプロピルエチレンジアミン、N,N’-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ジエチル-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ジイソプロピル-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ジメチル-1,6-ヘキサンジアミン、N,N’-ジエチル-1,6-ヘキサンジアミン、N,N’,N’’-トリメチルビス(ヘキサメチレン)トリアミン等が挙げられる。
前記芳香族ポリアミンおよび前記含窒素複素環アミンとしては、特に制限されないが、例えば、ジアミノトルエン、ジアミノキシレン、テトラメチルキシリレンジアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール等が挙げられる。
また、前記ポリアミン化合物は、その水素原子の一つ以上を、アルキル基、アルキレン基、アラルキレン基、オキシ基、アシル基、ハロゲン原子等で置換してもよく、また、その骨格に、酸素原子、イオウ原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
また、前記ポリアミン化合物は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合の混合比は、本発明の熱可塑性エラストマー(組成物)が用いられる用途、本発明の熱可塑性エラストマー(組成物)に要求される物性等に応じて任意の比率に調整することができる。
上記で例示したポリアミン化合物のうち、ヘキサメチレンジアミン、N,N’-ジメチル-1,6-ヘキサンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン等が、圧縮永久歪、機械的強度、特に引張強度の改善効果が高く好ましい。
前記ポリオール化合物は、水酸基を2個以上有する化合物であれば、その分子量および骨格などは特に限定されず、例えば、以下に示すポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、その他のポリオール、およびこれらの混合ポリオール等が挙げられる。
このようなポリエーテルポリオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,1,1-トリメチロールプロパン、1,2,5-ヘキサントリオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、4,4’-ジヒドロキシフェニルプロパン、4,4’-ジヒドロキシフェニルメタン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールから選ばれる少なくとも1種に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等から選ばれる少なくとも1種を付加させて得られるポリオール;ポリオキシテトラメチレンオキサイド;等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記ポリエステルポリオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、1,1,1-トリメチロールプロパンその他の低分子ポリオールの1種または2種以上と、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸その他の低分子カルボン酸やオリゴマー酸の1種または2種以上との縮合重合体;プロピオンラクトン、バレロラクトンなどの開環重合体;等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
その他のポリオールとしては、具体的には、例えば、ポリマーポリオール、ポリカーボネートポリオール;ポリブタジエンポリオール;水素添加されたポリブタジエンポリオール;アクリルポリオール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコールラウリルアミン(例えば、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ラウリルアミン)、ポリプロピレングリコールラウリルアミン(例えば、N,N-ビス(2-メチル-2-ヒドロキシエチル)ラウリルアミン)、ポリエチレングリコールオクチルアミン(例えば、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)オクチルアミン)、ポリプロピレングリコールオクチルアミン(例えば、N,N-ビス(2-メチル-2-ヒドロキシエチル)オクチルアミン)、ポリエチレングリコールステアリルアミン(例えば、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ステアリルアミン)、ポリプロピレングリコールステアリルアミン(例えば、N,N-ビス(2-メチル-2-ヒドロキシエチル)ステアリルアミン)などの低分子ポリオール;等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記ポリイソシアネート化合物としては、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’-MDI)、1,4-フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)等の脂肪族ポリイソシアネート、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、H6XDI(水添XDI)、H12MDI(水添MDI)、H6TDI(水添TDI)等の脂環式ポリイソシアネートなどのジイソシアネート化合物;ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物;これらのイソシアネート化合物のカルボジイミド変性ポリイソシアネート;これらのイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性ポリイソシアネート;これらのイソシアネート化合物と上記で例示したポリオール化合物とを反応させて得られるウレタンプレポリマー;等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ポリチオール化合物は、チオール基を2個以上有する化合物であれば、その分子量および骨格などは特に限定されず、その具体例としては、メタンジチオール、1,3-ブタンジチオール、1,4-ブタンジチオール、2,3-ブタンジチオール、1,2-ベンゼンジチオール、1,3-ベンゼンジチオール、1,4-ベンゼンジチオール、1,10-デカンジチオール、1,2-エタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,9-ノナンジチオール、1,8-オクタンジチオール、1,5-ペンタンジチオール、1,2-プロパンジチオール、1,3-プロパジチオール、トルエン-3,4-ジチオール、3,6-ジクロロ-1,2-ベンゼンジチオール、1,5-ナフタレンジチオール、1,2-ベンゼンジメタンチオール、1,3-ベンゼンジメタンチオール、1,4-ベンゼンジメタンチオール、4,4’-チオビスベンゼンチオール、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、1,8-ジメルカプト-3,6-ジオキサオクタン、1,5-ジメルカプト-3-チアペンタン、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール(トリメルカプト-トリアジン)、2-ジ-n-ブチルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、トリメチロールプロパントリス(β-チオプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、ポリチオール(チオコールまたはチオール変性高分子(樹脂、ゴム等))、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
また、前記ポリエポキシ化合物としては、エポキシ基を2個以上有する化合物であれば、その分子量および骨格などは特に限定されず、その具体例としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、ビスフェノールFジグリシジルエーテル(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルー3’4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、DCPD型エポキシ樹脂、エポキシノボラック樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
また、前記ポリカルボキシ化合物としては、カルボキシ基を2個以上有する化合物であれば、その分子量および骨格などは特に限定されず、その具体例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、プロパントリカルボン酸、ベンゼントリカルボン酸が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
さらに、前記ポリアルコキシシリル化合物としては、アルコキシシリル基を2個以上有する化合物であれば、その分子量および骨格などは特に限定されず、その具体例としては、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミンが挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
このような「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」と反応する、前記主鎖を構成するポリマーが有する官能基としては、アミド、エステル、ラクトン、ウレタン、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの結合を生起(生成:形成)し得る官能基が好ましく、かかる官能基としては、環状酸無水物基、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、イソシアネート基、チオール基等が好適に例示される。
なお、前記側鎖(b)を有するエラストマー性ポリマー(B)は、かかる側鎖(b)の部分において、前記共有結合性架橋部位における架橋、すなわち、前記官能基と上述した「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」との反応により形成される共有結合による架橋を1分子中に少なくとも1個有しており、特に、ラクトン、ウレタン、エーテル、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの結合により架橋が形成される場合は、2個以上有しているのが好ましく、2~20個有しているのがより好ましく、2~10個有しているのがさらに好ましい。
また、前記側鎖(b)の共有結合性架橋部位における架橋が、第三級アミノ結合(-N=)、エステル結合(-COO-)を含有していることが、得られる熱可塑性エラストマー(組成物)の圧縮永久歪および機械的強度(破断伸び、破断強度)がより容易に改善され得るとの理由から好ましい。なお、この場合において、第三級アミノ結合(-N=)、エステル結合(-COO-)に対して、水素結合を形成することが可能な基を含む側鎖を有するエラストマーが含まれている場合(例えば、水酸基等を含む側鎖を有するエラストマーが他に存在する場合等)には、前記共有結合性架橋部位が、後述の側鎖(c)として機能し得る。例えば、前記側鎖(a’)として前記側鎖(a)を有するエラストマー性ポリマー(B)の場合(すなわちエラストマー性ポリマー(B)が側鎖(a)及び(b)の双方を有するエラストマー性ポリマーである場合)において、共有結合性架橋部位における架橋が前記第三級アミノ結合及び/又は前記エステル結合を有する場合、それらの基と、側鎖(a)(カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する側鎖)中の基とが水素結合(相互作用)することで、架橋密度をより向上させることも可能となるものと考えられる。なお、このような第三級アミノ結合(-N=)、エステル結合(-COO-)を含有している構造の側鎖(b)を形成するとの観点で、「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」としては、上記で例示したもののうち、ポリエチレングリコールラウリルアミン(例えば、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ラウリルアミン)、ポリプロピレングリコールラウリルアミン(例えば、N,N-ビス(2-メチル-2-ヒドロキシエチル)ラウリルアミン)、ポリエチレングリコールオクチルアミン(例えば、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)オクチルアミン)、ポリプロピレングリコールオクチルアミン(例えば、N,N-ビス(2-メチル-2-ヒドロキシエチル)オクチルアミン)、ポリエチレングリコールステアリルアミン(例えば、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ステアリルアミン)、ポリプロピレングリコールステアリルアミン(例えば、N,N-ビス(2-メチル-2-ヒドロキシエチル)ステアリルアミン)であることが好ましい。
なお、上述のような共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)を利用しても、反応の進行度や置換基の種類、用いる原料の化学量論比等によっては、水素結合性の架橋部位も併せて導入されるような場合もあるため、前記共有結合性架橋部位の好適な構造については、側鎖(c)中の共有結合性架橋部位の好適な構造と併せて説明する。
<側鎖(c):水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を含む側鎖>
このような側鎖(c)は、1つの側鎖中に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を含む側鎖である。このような側鎖(c)に含まれる水素結合性架橋部位は、側鎖(a’)において説明した水素結合性架橋部位と同様のものであり、側鎖(a)中の水素結合性架橋部位と同様のものが好ましい。また、側鎖(c)に含まれる共有結合性架橋部位としては、側鎖(b)中の共有結合性架橋部位と同様のものを利用できる(その好適な架橋も同様のものを利用できる。)。
このような側鎖(c)は、官能基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(前記主鎖部分を形成させるためのポリマー)と、前記官能基と反応して水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物(水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を導入する化合物)とを反応させることで、形成される側鎖であることが好ましい。 このような水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物(水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を導入する化合物)としては、複素環(特に好ましくは含窒素複素環)を有しかつ共有結合性架橋部位を形成することが可能な化合物(共有結合を生成する化合物)が好ましく、中でも、複素環含有ポリオール、複素環含有ポリアミン、複素環含有ポリチオール等がより好ましい。
なお、このような複素環を含有する、ポリオール、ポリアミンおよびポリチオールは、複素環(特に好ましくは含窒素複素環)を有するものである以外は、前述の「共有結合性架橋部位を形成することが可能な化合物(共有結合を生成する化合物)」において説明したポリオール、ポリアミンおよびポリチオールと同様のものを適宜利用することができる。また、このような複素環含有ポリオールとしては、特に制限されないが、例えば、ビス、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、コウジ酸、ジヒドロキシジチアン、トリスヒドロキシエチルトリアジンが挙げられる。また、前記複素環含有ポリアミンとしては、特に制限されないが、例えば、アセトグアナミン、ピペラジン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ベンゾグアナミン、メラミンが挙げられる。更に、このような複素環含有ポリチオールとしては、ジメルカプトチアジアゾール、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレートが挙げられる。このように、側鎖(c)としては、官能基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(前記主鎖部分を形成させるためのポリマー)と、複素環を含有するポリオール、ポリアミンおよびポリチオール等とを反応させて、得られる側鎖であることが好ましい。
なお、「水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物(水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を導入する化合物)」と反応する、前記主鎖を構成するポリマーが有する官能基としては、アミド、エステル、ラクトン、ウレタン、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの結合を生起(生成:形成)し得る官能基が好ましく、かかる官能基としては、環状酸無水物基、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、イソシアネート基、チオール基等が好適に例示される。
また、前記側鎖(c)を有するエラストマー性ポリマー(B)は、かかる側鎖(c)の部分において、前記共有結合性架橋部位における架橋を1分子中に少なくとも1個有しており、特に、ラクトン、ウレタン、エーテル、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの結合により架橋が形成される場合は、2個以上有しているのが好ましく、2~20個有しているのがより好ましく、2~10個有しているのがさらに好ましい。また、前記側鎖(c)の共有結合性架橋部位における架橋が、第三級アミノ結合(-N=)、エステル結合(-COO-)を含有していることが、得られる熱可塑性エラストマー(組成物)の圧縮永久歪および機械的強度(破断伸び、破断強度)がより改善されるとの理由から好ましい。
(側鎖(b)~(c)中の共有結合性架橋部位として好適な構造について)
側鎖(b)及び/又は(c)に関して、共有結合性架橋部位における架橋が、第三級アミノ結合(-N=)、エステル結合(-COO-)を含有している場合であって、これらの結合部位が水素結合性架橋部位としても機能する場合、得られる熱可塑性エラストマー(組成物)の圧縮永久歪および機械的強度(破断伸び、破断強度)がより高度に改善されるとの理由から好ましい。このように、共有結合性架橋部位を有する側鎖中の第三級アミノ結合(-N=)やエステル結合(-COO-)が、他の側鎖との間において、水素結合を形成するような場合、かかる第三級アミノ結合(-N=)、エステル結合(-COO-)を含有している共有結合性架橋部位は、水素結合性架橋部位も備えることとなり、側鎖(c)として機能し得る。
なお、例えば、前記側鎖(a’)として前記側鎖(a)を有するエラストマー性ポリマー(B)の場合であって、前記第三級アミノ結合及び/又は前記エステル結合を含有している共有結合性架橋部位を有する場合において、前記第三級アミノ結合及び/又は前記エステル結合が、前記側鎖(a)中の基と水素結合(相互作用)を形成すると、架橋密度をより向上させることが可能となるものと考えられる。ここで、前記主鎖を構成するポリマーが有する官能基と反応して前記第三級アミノ結合及び/又は前記エステル結合を含有している共有結合性架橋部位を形成させることが可能な化合物(水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成することが可能な化合物)としては、ポリエチレングリコールラウリルアミン(例えば、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ラウリルアミン)、ポリプロピレングリコールラウリルアミン(例えば、N,N-ビス(2-メチル-2-ヒドロキシエチル)ラウリルアミン)、ポリエチレングリコールオクチルアミン(例えば、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)オクチルアミン)、ポリプロピレングリコールオクチルアミン(例えば、N,N-ビス(2-メチル-2-ヒドロキシエチル)オクチルアミン)、ポリエチレングリコールステアリルアミン(例えば、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ステアリルアミン)、ポリプロピレングリコールステアリルアミン(例えば、N,N-ビス(2-メチル-2-ヒドロキシエチル)ステアリルアミン)を好適なものとして挙げることができる。
前記側鎖(b)及び/又は側鎖(c)の上記共有結合性架橋部位における架橋としては、下記一般式(4)~(6)のいずれかで表される構造を少なくとも1つ含有しているものが好ましく、式中のGが第三級アミノ結合、エステル結合を含有しているものがより好ましい(なお、以下の構造において、水素結合性架橋部位を含む場合、その構造を有する側鎖は、側鎖(c)として利用されるものである。)。
上記一般式(4)~(6)中、E、J、KおよびLはそれぞれ独立に単結合;酸素原子、アミノ基NR’(R’は水素原子または炭素数1~10のアルキル基である。)またはイオウ原子;あるいはこれらの原子または基を含んでもよい有機基であり、Gは酸素原子、イオウ原子または窒素原子を含んでいてもよく、直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数1~20の炭化水素基である。
ここで、置換基E、J、KおよびLはそれぞれ独立に、上記一般式(1)の置換基Bと基本的に同様である。
また、置換基Gとしては、例えば、メチレン基、エチレン基、1,3-プロピレン基、1,4-ブチレン基、1,5-ペンチレン基、1,6-ヘキシレン基、1,7-ヘプチレン基、1,8-オクチレン基、1,9-ノニレン基、1,10-デシレン基、1,11-ウンデシレン基、1,12-ドデシレン基などのアルキレン基;N,N-ジエチルドデシルアミン-2,2’-ジイル、N,N-ジプロピルドデシルアミン-2,2’-ジイル、N,N-ジエチルオクチルアミン-2,2’-ジイル、N,N-ジプロピルオクチルアミン-2,2’-ジイル、N,N-ジエチルステアリルアミン-2,2’-ジイル、N,N-ジプロピルステアリルアミン-2,2’-ジイル、;ビニレン基;1,4-シクロへキシレン基等の2価の脂環式炭化水素基;1,4-フェニレン基、1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,3-フェニレンビス(メチレン)基などの2価の芳香族炭化水素基;プロパン-1,2,3-トリイル、ブタン-1,3,4-トリイル、トリメチルアミン-1,1’,1’’-トリイル、トリエチルアミン-2,2’,2’’-トリイル等の3価の炭化水素基;イソシアヌレート基、トリアジン基等の酸素原子、イオウ原子または窒素原子を含む3価の環状炭化水素;下記式(12)および(13)で表される4価の炭化水素基;およびこれらを組み合わせて形成される置換基;等が挙げられる。また、このような式中の置換基Gとしては、耐熱性が高く、水素結合により、高強度になるという観点から、イソシアヌレート基(イソシアヌレート環)の構造を有するものであることが好ましい。また、このような式中の置換基Gとしては、耐熱性が高く、水素結合により、高強度になるという観点から、下記一般式(111)で表される基及び下記一般式(112)で表される基であることがより好ましい。
さらに、前記側鎖(c)の上記共有結合性架橋部位における架橋が、上述した上記エラストマー性ポリマーの主鎖にα位またはβ位で結合する下記式(7)~(9)のいずれかで表される構造を少なくとも1つ含有するのが好ましく、式中のGが第三級アミノ基を含有しているのがより好ましい(式(7)~(9)に示す構造は水酸基とカルボニル基を含有しており、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を含む構造といえ、かかる構造を有する側鎖は側鎖(c)として機能し得る。)。
式(7)~(9)中、置換基E、J、KおよびLはそれぞれ独立に、上記式(4)~(6)の置換基E、J、KおよびLと基本的に同様であり、置換基Gは、上記式(4)の置換基Gと基本的に同様である。
また、このような式(7)~(9)のいずれかで表される構造としては、具体的には、下記式(14)~(25)で表される構造が好適なものとして例示される。
(式中、lは、1以上の整数を表す。)
(式中、l、mおよびnは、それぞれ独立に1以上の整数を表す。)
また、前記側鎖(b)及び(c)において、上記共有結合性架橋部位における架橋は、環状酸無水物基と、水酸基あるいはアミノ基及び/又はイミノ基との反応により形成されることが好ましい。例えば、反応後に主鎖部分を形成するポリマーが官能基として環状酸無水物基(例えば無水マレイン酸基)を有している場合に、該ポリマーの環状酸無水物基と、水酸基あるいはアミノ基および/またはイミノ基を有する前記共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)とを反応させて、共有結合により架橋する部位を形成してポリマー間を架橋させることで、形成される架橋としてもよい。
また、このような側鎖(b)及び(c)において、前記共有結合性架橋部位における架橋は、アミド、エステル、ラクトン、ウレタン、エーテル、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの結合により形成されてなることがより好ましい。なお、このような側鎖(b)及び(c)において、前記共有結合性架橋部位における架橋は、尿素結合により形成されたものも好ましい。
以上、側鎖(a’)、側鎖(a)、側鎖(b)、側鎖(c)について説明したが、このようなポリマー中の側鎖の各基(構造)等は、NMR、IRスペクトル等の通常用いられる分析手段により確認することができる。
また、前記エラストマー性ポリマー(A)は、前記側鎖(a)を有するガラス転移点が25℃以下のエラストマー性ポリマーであり、前記エラストマー性ポリマー(B)は、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位を含有しているガラス転移点が25℃以下のエラストマー性ポリマー(側鎖として、側鎖(a’)及び側鎖(b)の双方を有するポリマーや、側鎖に側鎖(c)を少なくとも一つ含むポリマー等)である。このようなエラストマー成分としては、前記エラストマー性ポリマー(A)~(B)のうちの1種を単独で利用してもよく、あるいは、それらのうちの2種以上を混合して利用してもよい。
なお、エラストマー性ポリマー(B)は、側鎖(a’)及び側鎖(b)の双方を有するポリマーであっても、側鎖(c)を有するポリマーであってもよいが、このようなエラストマー性ポリマー(B)の側鎖に含有される水素結合性架橋部位としては、より強固な水素結合が形成されるといった観点から、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位(より好ましくはカルボニル含有基および含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位)であることが好ましい。
また、このようなエラストマー性ポリマー(A)及び(B)からなる群から選択される少なくとも1種のエラストマー成分としては、下記反応物(I)~(VI)からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
[反応物(I)]
無水マレイン酸変性エラストマー性ポリマー(以下、便宜上、場合により単に「エラストマー性ポリマー(E1)」と称する。)と、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいトリアゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいピリジン、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいチアジアゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいイミダゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいイソシアヌレート、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいトリアジン、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいヒダントイン、水酸基、チオール基及びアミノ基の中から選択される少なくとも1種の置換基を2つ以上有する炭化水素化合物、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、スルファミド、並びに、ポリエーテルポリオールのうちの少なくとも1種の化合物(以下、便宜上、場合により単に「化合物(M1)」と称する。)との反応物;
[反応物(II)]
水酸基含有エラストマー性ポリマー(以下、便宜上、場合により単に「エラストマー性ポリマー(E2)」と称する。)と、カルボキシ基、アルコキシシリル基及びイソシアネート基の中から選択される少なくとも1種の置換基を2つ以上有する化合物(以下、便宜上、場合により単に「化合物(M2)」と称する。)との反応物;
[反応物(III)]
カルボキシ基含有エラストマー性ポリマー(以下、便宜上、場合により単に「エラストマー性ポリマー(E3)」と称する。)と、水酸基、チオール基及びアミノ基の中から選択される少なくとも1種の置換基を2つ以上有する化合物(以下、便宜上、場合により単に「化合物(M3)」と称する。)との反応物;
[反応物(IV)]
アミノ基含有エラストマー性ポリマー(以下、便宜上、場合により単に「エラストマー性ポリマー(E4)」と称する。)と、カルボキシ基、エポキシ基、アルコキシシリル基及びイソシアネート基の中から選択される少なくとも1種の置換基を2つ以上有する化合物(以下、便宜上、場合により単に「化合物(M4)」と称する。)との反応物;
[反応物(V)]
アルコキシシリル基含有エラストマー性ポリマー(以下、便宜上、場合により単に「エラストマー性ポリマー(E5)」と称する。)と、水酸基、カルボキシ基及びアミノ基の中から選択される少なくとも1種の置換基を2つ以上有する化合物(以下、便宜上、場合により単に「化合物(M5)」と称する。)との反応物;
[反応物(VI)]
エポキシ基含有エラストマー性ポリマー(以下、便宜上、場合により単に「エラストマー性ポリマー(E6)」と称する。)と、チオール基及びアミノ基の中から選択される少なくとも1種の置換基を2つ以上有する化合物(以下、便宜上、場合により単に「化合物(M6)」と称する。)との反応物。
このようなエラストマー性ポリマー(E1)~(E6)は、通常行われる方法、例えば、上述のエラストマー成分の主鎖部分を形成することが可能なポリマーに、通常行われる条件、例えば、加熱下での撹拌等により、目的の設計に応じて、官能基を導入することが可能な化合物(例えば、マレイン酸無水物等)をグラフト重合させる方法で製造してもよい。また、このようなエラストマー性ポリマー(E1)~(E6)としては、市販品を用いてもよい。
また、このようなエラストマー性ポリマー(E1)~(E6)のガラス転移点は、前述のエラストマー成分と同様に25℃以下であることが好ましい。エラストマー性ポリマーのガラス転移点がこの範囲であれば、得られる本発明の熱可塑性エラストマー組成物が室温でゴム状弾性を示すものとなるためである。なお、このようなエラストマー性ポリマー(E1)~(E6)の主鎖部分の重量平均分子量の好適な範囲は、前述のエラストマー性ポリマー(A)及び(B)の主鎖部分の重量平均分子量の好適な範囲と同様である。
このような無水マレイン酸変性エラストマー性ポリマー(E1)としては、例えば、LIR-403(クラレ社製)、LIR-410A(クラレ社試作品)などの無水マレイン酸変性イソプレンゴム;ニュクレル(三井デュポンポリケミカル社製)、ユカロン(三菱化学社製)、タフマーM(例えば、MP0610(三井化学社製)、MP0620(三井化学社製))などの無水マレイン酸変性エチレン-プロピレンゴム;タフマーM(例えば、MA8510、MH7010、MH7020(三井化学社製)、MH5010、MH5020(三井化学社製)、MH5040(三井化学社製))などの無水マレイン酸変性エチレン-ブテンゴム;アドテックスシリーズ(無水マレイン酸変性EVA、無水マレイン酸変性EMA(日本ポリオレフィン社製))、HPRシリーズ(無水マレイン酸変性EEA、無水マレイン酸変性EVA(三井・ジュポンポリオレフィン社製))、ボンドファストシリーズ(無水マレイン酸変性EMA(住友化学社製))、デュミランシリーズ(無水マレイン酸変性EVOH(武田薬品工業社製))、ボンダイン(エチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸三元共重合体(アトフィナ社製))、タフテック(無水マレイン酸変性SEBS、M1943(旭化成社製))、クレイトン(無水マレイン酸変性SEBS、FG1901,FG1924(クレイトンポリマー社製))、タフプレン(無水マレイン酸変性SBS、912(旭化成社製))、セプトン(無水マレイン酸変性SEPS(クラレ社製))、レクスパール(無水マレイン酸変性EVA、ET-182G、224M、234M(日本ポリオレフィン社製))、アウローレン(無水マレイン酸変性EVA、200S、250S(日本製紙ケミカル社製))などの無水マレイン酸変性ポリエチレン;アドマー(例えば、QB550、LF128(三井化学社製))などの無水マレイン酸変性ポリプロピレン;等が挙げられる。
また、このような無水マレイン酸変性エラストマー性ポリマー(E1)としては、高分子量で高強度であるといった観点から、無水マレイン酸変性エチレン-プロピレンゴム、無水マレイン酸変性エチレン-ブテンゴムがより好ましい。
このような水酸基含有エラストマー性ポリマー(E2)としては、例えば、水酸基含有BR、水酸基含有SBR、水酸基含有IR、水酸基含有天然ゴム、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体等が挙げられる。
このような水酸基含有エラストマー性ポリマー(E2)の中でも、工業的に容易に入手でき、物性に優れるといった観点から、両末端が水酸基となるエラストマー性ポリマーが好ましく、中でも、水酸基含有BR、水酸基含有IR、エチレンビニルアルコール共重合体がより好ましく、水酸基含有BRが更に好ましい。
このようなカルボキシ基含有エラストマー性ポリマー(E3)としては、例えば、カルボキシ基含有BR、カルボキシ基含有SBR、カルボキシ基含有IR、カルボキシ基含有天然ゴム、ポリアクリル酸、エチレンアクリル酸共重合体、ポリメタアクリル酸、エチレンメタアクリル酸共重合体等が挙げられる。
このようなカルボキシ基含有エラストマー性ポリマー(E3)としては、工業的に容易に入手でき、物性に優れるといった観点から、カルボキシ基含有IR、エチレンアクリル酸共重合体、エチレンメタアクリル酸共重合体が好ましく、カルボキシ基含有IRがより好ましい。
さらに、このようなアミノ基含有エラストマー性ポリマー(E4)としては、アミノ基含有BR、アミノ基含有SBR、アミノ基含有IR、アミノ基含有天然ゴム、アミノ基含有ポリエチレンイミン等が挙げられる。
このようなアミノ基含有エラストマー性ポリマー(E4)としては、工業的に容易に入手でき、物性に優れるといった観点から、アミノ基含有ポリエチレンイミンがより好ましい。
また、アミノ基含有エラストマー性ポリマー(E4)としては、アミン価が1~50mmol/gであることが好ましく、5~40mmol/gであることがより好ましく、10~30mmol/gであることが更に好ましい。このようなアミン価が前記下限未満では大量に添加する必要があり、また架橋密度の低下により物性が低下してしまう傾向にあり、他方、前記上限を超えると少量添加により架橋密度が高くなりすぎてしまう傾向にある。なお、このようなアミン価としては電位差滴定法により測定した値を採用することができる。
また、このようなアルコキシシリル基含有エラストマー性ポリマー(E5)としては、例えば、アルコキシシリル基含有BR、アルコキシシリル基含有SBR、アルコキシシリル基含有IR、アルコキシシリル基含有天然ゴム、アルコキシシリル基含有ポリエチレン、アルコキシシリル基含有ポリプロピレン等が挙げられる。
このようなアルコキシシリル基含有エラストマー性ポリマー(E5)としては、工業的に容易に入手でき、物性に優れるといった観点から、アルコキシシリル基含有ポリエチレンがより好ましい。
このようなエポキシ基含有エラストマー性ポリマー(E6)としては、例えば、エポキシ基含有BR、エポキシ基含有SBR、エポキシ基含有IR、エポキシ基含有天然ゴム等が挙げられる。
このようなエポキシ基含有エラストマー性ポリマー(E6)としては、工業的に容易に入手でき、物性に優れるといった観点から、エポキシ基含有SBRがより好ましい。
また、このような化合物(M1)として利用する、水酸基、チオール基及びアミノ基の中から選択される少なくとも1種の置換基を2つ以上有する炭化水素化合物としては、前述のポリオール化合物、ポリチオール化合物、ポリアミン化合物の中で、主骨格が炭化水素化合物からなるものが挙げられる。このような主骨格の炭化水素基としては脂肪族炭化水素化合物(より好ましくは炭素数が1~30の脂肪族炭化水素化合物)であることが好ましい。また、このような化合物(M1)として利用する、水酸基、チオール基及びアミノ基の中から選択される少なくとも1種の置換基を2つ以上有する炭化水素化合物としては、工業的に容易に入手でき、架橋密度が高く物性に優れるといった観点からは、ペンタエリスリトール、エタンジチオール、エタンジアミンが好ましく、ペンタエリスリトールがより好ましい。
また、化合物(M2)として利用する、カルボキシ基、アルコキシシリル基及びイソシアネート基の中から選択される少なくとも1種の置換基を2つ以上有する化合物としては、前述のポリカルボキシ化合物、ポリアルコキシシリル化合物、ポリイソシアネート化合物を好適に利用でき、中でも、工業的に容易に入手でき、物性に優れるといった観点からは、2,6-ピリジンジカルボン酸、2,4-ピリジンジカルボン酸、キシリレンジイソシアネート(XDI)がより好ましい。
さらに、化合物(M3)として利用する、水酸基、チオール基及びアミノ基の中から選択される少なくとも1種の置換基を2つ以上有する化合物としては、前述のポリオール化合物、ポリチオール化合物、ポリアミン化合物を好適に利用でき、中でも、工業的に容易に入手でき、物性に優れるといった観点からは、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、2,4-ジアミノ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレートがより好ましい。
また、化合物(M4)として利用する、カルボキシ基、エポキシ基、アルコキシシリル基及びイソシアネート基の中から選択される少なくとも1種の置換基を2つ以上有する化合物としては、前述のポリカルボキシ化合物、ポリエポキシ化合物、ポリアルコキシシリル化合物、ポリイソシアネート化合物を好適に利用でき、中でも、工業的に容易に入手でき、物性に優れるといった観点からは、2,6-ピリジンジカルボン酸、2,4-ピリジンジカルボン酸、トリス-(2,3-エポキシプロピル)-イソシアヌレートがより好ましい。
また、化合物(M5)として利用する、水酸基、カルボキシ基及びアミノ基の中から選択される少なくとも1種の置換基を2つ以上有する化合物としては、前述のポリオール化合物、ポリカルボキシ化合物を好適に利用でき、中でも、工業的に容易に入手でき、物性に優れるといった観点からは、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、2,6-ピリジンジカルボン酸、2,4-ピリジンジカルボン酸がより好ましい。
さらに、化合物(M6)として利用する、チオール基及びアミノ基の中から選択される少なくとも1種の置換基を2つ以上有する化合物としては、前述のポリチオール化合物、ポリアミン化合物を好適に利用でき、中でも、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、2,4-ジアミノ-6-フェニル-1,3,5-トリアジンがより好ましい。
なお、前記エラストマー性ポリマー(E1)~(E6)の主鎖は、前記エラストマー性ポリマー(A)及び(B)の主鎖として説明したものと同様のものである(その好適なものも同様である。)。このような各反応物を製造するために用いるエラストマー性ポリマー(E1)~(E6)は、各ポリマーが有する官能基(無水マレイン酸基、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、アルコキシシリル基、エポキシ基)の部分に、各反応物を製造するために用いる化合物(M1)~(M6)が有する置換基が反応して、化合物(M1)~(M6)の主骨格に由来する構造を有する側鎖が形成されるが、基本的に反応の前後において主鎖に変化はないため、前記反応物(I)~(VI)の主鎖(前記エラストマー性ポリマー(A)及び(B)の主鎖)は、エラストマー性ポリマー(E1)~(E6)の主鎖に由来したものとなるためである。
また、このような反応物(I)~(VI)の中でも、工業的に容易に入手でき、物性に優れるの観点からは、実施例に挙げたもの(無水マレイン酸変性エチレン-ブテン共重合体とトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートとの反応物、後述の各実施例に関する表8に記載のエラストマー性ポリマー(E)と化合物(M)との反応物等)が好ましい。
なお、前記反応物(I)としては、工業的入手が容易で、反応が効率的に進行するという観点からは、無水マレイン酸変性エラストマー性ポリマーと、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいトリアゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいピリジン、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいチアジアゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいイミダゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいイソシアヌレート、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいトリアジン、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいヒダントイン、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、スルファミド、並びに、ポリエーテルポリオールのうちの少なくとも1種の化合物との反応物がより好ましい。
前記エラストマー成分として利用される前記反応物(I)~(VI)を製造する方法としては特に制限されず、エラストマー性ポリマー(E1)~(E6)と、それと反応させる化合物(M1)~(M6)とを、適宜選択して、目的の設計の側鎖が形成されるように適宜反応させることで反応物(I)~(VI)を得る方法を適宜使用することができ、そのような反応の条件(温度条件や雰囲気条件等)としては、反応物を得るための原料としてのエラストマー性ポリマー(E1)~(E6)の官能基や主鎖の種類、更には、それと反応させる化合物(M1)~(M6)の種類に応じて設定することができる。
このような反応物(I)~(VI)を調製する際には、例えば、目的の設計に応じて、エラストマー性ポリマー(E1)~(E6)から適宜選択したポリマーを加圧ニーダ―に添加して撹拌しながら、そこに、該ポリマーと反応させるための化合物(M1)~(M6)から選択された化合物を添加して反応させて調製してもよく、その際に、反応が進行するような温度に適宜設定すればよい。なお、前記反応物(I)~(VI)を調製する際に、反応物(I)~(VI)の調製に用いるエラストマー性ポリマー(E1)~(E6)から適宜選択したポリマーを、前記化合物(M1)~(M6)から選択された化合物と反応させる前に、該ポリマーと有機化クレイとを混合し、その後、前記化合物を添加して反応させることにより、エラストマー成分の調製と同時に、組成物を形成する方法(有機化クレイを先添加する方法)を採用してもよい。なお、有機化クレイの分散性がより向上し、より高度な耐熱性が得られることから、組成物の調製には、前述の有機化クレイを先添加する方法を採用することが好ましい。
また、前記エラストマー成分として含有されるポリマーとしては、二重結合がないため、劣化しづらく、イソシアヌレート環同志および他の水素結合部位やクレイとの水素結合等の相互作用が起こるといった観点から、該ポリマーの主鎖がオレフィン系共重合体でありかつ該ポリマーの側鎖がイソシアヌレート環を有することが好ましい。このような主鎖がオレフィン系共重合体でありかつ該側鎖がイソシアヌレート環を有するポリマーとしては、例えば、無水マレイン酸により変性したオレフィン系共重合体からなる無水マレイン酸変性エラストマー性ポリマー(より好ましくは無水マレイン酸変性エチレン-プロピレンゴム、無水マレイン酸変性エチレン-ブテンゴム)と、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートとの反応物が好適なものとして挙げられる。
また、前記エラストマー成分として含有されるポリマーが、前述のような主鎖がオレフィン系共重合体でありかつ側鎖がイソシアヌレート環を有するものである場合、そのポリマーが含まれる熱可塑性エラストマー組成物の赤外吸収スペクトルにおいて、オレフィン系樹脂(前記オレフィン系樹脂には、化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂の他、前記エラストマー成分として含有されるポリマーの主鎖を形成するオレフィン系樹脂(例えば前記オレフィン系共重合体)を含む。)のC-H伸縮振動に由来する波長2920cm-1付近のピークの吸収強度(A)と、イソシアヌレート環中のカルボニル基に由来する波長1695cm-1付近のピークの吸収強度(B)との比([吸収強度(B)]/[吸収強度(A)])が0.01以上であること(より好ましくは0.012~10、更に好ましくは0.015~5)であることが好ましい。このような赤外吸収スペクトル(IRスペクトル)における吸収ピーク強度(A)と吸収ピーク強度(B)の強度比が前記下限未満では組成物中におけるイソシアヌレート環を有する側鎖の存在比率が低くなり、系中において架橋密度が低下するため、機械強度等の物性が低下する傾向にある。他方、前記強度比が前記上限を超えると系中にエラストマー成分のブランチが多くなり、系全体の架橋密度が下がってしまうため、機械特性が低下する傾向にある。なお、このような熱可塑性エラストマー組成物の赤外吸収スペクトル(IRスペクトル)としては、全反射型ユニットを備えたIR測定装置(例えば、Thermo社製の「NICOLET380」)を用い、また、前記ポリマー(主鎖がオレフィン系共重合体でありかつ側鎖がイソシアヌレート環を有するものである、前記エラストマー成分として含有されるポリマー)を含む熱可塑性エラストマー組成物40gを表面が平滑になるように厚さ2mmでプレス成形して調製した測定用の試料を用いて、全反射測定(ATR)法により、400~4000cm-1の波数レンジで赤外吸収スペクトル(赤外減衰全反射(FTIR-ATR)スペクトル)の測定を行うことで求められる吸収スペクトルのグラフを利用する。このような測定により、側鎖のイソシアヌレート環中のカルボニル基の赤外吸収スペクトルのピークは波長1695cm-1付近(概ね1690~1700cm-1の範囲)に表れ、オレフィン系樹脂(前記オレフィン系樹脂には、前記化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂の他、前記エラストマー成分の主鎖(ベースポリマー)のオレフィン系樹脂(例えばオレフィン系共重合体)を含む。)のC-H伸縮振動の赤外吸収スペクトルのピークは波長2920cm-1付近(概ね2910~2930cm-1の範囲)に表れる。
なお、無水マレイン酸により変性したオレフィン系共重合体からなる無水マレイン酸変性エラストマー性ポリマー(より好ましくは、無水マレイン酸変性エチレン-プロピレンゴム又は無水マレイン酸変性エチレン-ブテンゴム)と、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートとの反応物を含む熱可塑性エラストマー組成物を例に挙げると、前記反応物は、その反応物の製造時に、無水マレイン酸変性エラストマー性ポリマー中の酸無水物基と、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートの水酸基との反応により側鎖が形成されて、ポリマーの側鎖にイソシアヌレート環が導入されたものとなるが、上述のように、かかるポリマー(反応物)の側鎖のイソシアヌレート環中のカルボニル基に由来する赤外吸収スペクトルのピークは波長1695cm-1付近(1690~1700cm-1の範囲)に表れ、他方、そのポリマー(反応物)の主鎖(ベースポリマー)のオレフィン系共重合体のC-H伸縮振動並びに前記化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂のC-H伸縮振動に由来するピークは波長2920cm-1付近(2910~2930cm-1の範囲)に表れるため、かかる反応物を含む前述の組成物においては、波長1695cm-1付近のピークと、波長2920cm-1付近のピークの強度の比を求めることで、系中に存在するオレフィン系樹脂の総量に対するイソシアヌレート環が導入された側鎖(上記例の場合には基本的に、形成される側鎖は水素結合性架橋部位と共有結合性架橋部位の双方を有するものとなる)の比率が分かり、これにより系全体の架橋密度を類推することができる。そして、このような強度比が前記下限値以上である場合には、イソシアヌレート環を有する側鎖の存在比率が十分なものとなり、系全体の架橋密度が十分なものとなって機械強度等の物性を十分なものとすることが可能となる。
このようなエラストマー性ポリマー(A)~(B)を製造する方法としては特に制限されず、上述のような側鎖(a);側鎖(a')及び側鎖(b);、並びに、側鎖(c);からなる群から選択される少なくとも1種を、ガラス転移点が25℃以下のエラストマー性ポリマーの側鎖として導入することが可能な公知の方法を適宜採用することができる。例えば、エラストマー性ポリマー(B)を製造するための方法としては、特開2006-131663号公報に記載の方法を採用してもよい。また、上述のような側鎖(a’)及び側鎖(b)を備えるエラストマー性ポリマー(B)を得るために、例えば、官能基としての環状酸無水物基(例えば無水マレイン酸基)を側鎖に有するエラストマー性ポリマーに、前記環状酸無水物基と反応して共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)と、前記環状酸無水物基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物(含窒素複素環を導入し得る化合物)との混合物(混合原料)を利用して、それぞれの側鎖を同時に導入してもよい。
また、このようなエラストマー性ポリマー(A)~(B)を製造する方法としては、例えば、官能基(例えば環状酸無水物基等)を側鎖に有するエラストマー性ポリマーを用いて、該エラストマー性ポリマーを、前記官能基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物、並びに、前記官能基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物及び前記官能基と反応して共有結合性架橋部位を形成する化合物の混合原料のうちの少なくとも1種の原料化合物と反応させて、前記側鎖(a)を有するエラストマー性ポリマー;側鎖(a')及び側鎖(b)を有するエラストマー性ポリマー;及び/又は前記側鎖(c)を有するエラストマー性ポリマー(前記エラストマー性ポリマー(A)~(B))を製造する方法を採用してもよい。なお、このような反応の際に採用する条件(温度条件や雰囲気条件等)は特に制限されず、官能基や該官能基と反応させる化合物(水素結合性架橋部位を形成する化合物及び/又は共有結合性架橋部位を形成する化合物)の種類に応じて適宜設定すればよい。なお、前記エラストマー性ポリマー(A)の場合は、水素結合部位を持つモノマーを重合して製造しても良い。
このような官能基(例えば環状酸無水物基)を側鎖に有するエラストマー性ポリマーとしては、前述のエラストマー性ポリマー(A)~(B)の主鎖を形成することが可能なポリマーであって、官能基を側鎖に有するものが好ましい。ここで、「官能基を側鎖に含有するエラストマー性ポリマー」とは、主鎖を形成する原子に官能基(上述の官能基等、例えば、環状酸無水物基等)が化学的に安定な結合(共有結合)をしているエラストマー性ポリマーをいい、エラストマー性ポリマー(例えば公知の天然高分子または合成高分子)と官能基を導入し得る化合物とを反応させることにより得られるものを好適に利用できる。
また、このような官能基としては、アミド、エステル、ラクトン、ウレタン、エーテル、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの結合を生起し得る官能基であることが好ましく、中でも、環状酸無水物基、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、イソシアネート基、チオール基等が好ましく、組成物中にクレイをより効率よく分散させることが可能であるといった観点からは、環状酸無水物基が特に好ましい。また、このような環状酸無水物基としては、無水コハク酸基、無水マレイン酸基、無水グルタル酸基、無水フタル酸基が好ましく、中でも、容易にポリマー側鎖に導入可能で、工業上入手が容易である観点からは、無水マレイン酸基がより好ましい。また、前記官能基が環状酸無水物基である場合には、例えば、前記官能基を導入しうる化合物として、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸およびこれらの誘導体等の環状酸無水物を用いて、エラストマー性ポリマー(例えば公知の天然高分子または合成高分子)に官能基を導入してもよい。
なお、前記官能基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物としては特に制限されないが、前述の「水素結合性架橋部位を形成する化合物(含窒素複素環を導入し得る化合物)」を利用することが好ましい。また、前記官能基と反応して共有結合性架橋部位を形成する化合物としては特に制限されないが、前述の「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」を利用することが好ましい。また、水素結合性架橋部位を形成する化合物(含窒素複素環を導入し得る化合物)、及び、共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)としては、前記官能基と反応して水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物(例えば、含窒素複素環を含むポリオール、ポリアミン、ポリチオール等)も好適に利用することができる。
また、このようなエラストマー成分(エラストマー性ポリマー(A)~(B))を製造する方法に、官能基(例えば環状酸無水物基)を側鎖に有するエラストマー性ポリマーを用いて、該エラストマー性ポリマーを、前記官能基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物、並びに、前記官能基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物及び前記官能基と反応して共有結合性架橋部位を形成する化合物の混合原料のうちの少なくとも1種の原料化合物と反応させて、前記側鎖(a)を有する前記エラストマー性ポリマー(A)、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有されている前記エラストマー性ポリマー(B)を製造する方法を採用する場合、官能基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーを、前記原料化合物と反応させる前に、クレイと官能基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーとを混合し、その後、前記原料化合物を添加し、反応させて、エラストマー成分の調製と同時に組成物を形成する方法(クレイを先添加する方法)を採用してもよい。
なお、クレイの分散性がより向上し、より高度な耐熱性が得られることから、エラストマー成分(エラストマー性ポリマー(A)~(B))を製造する際に、前述のクレイを先添加する方法を採用して、エラストマー成分の調製と同時に組成物を調製することが好ましい。また、このようなクレイを先添加する方法としては、後述の本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法を採用することがより好ましい。
(クレイ)
本発明にかかるクレイとしては特に制限されず、公知のクレイ(粘土鉱物等)を適宜利用することができる。また、このようなクレイとしては、天然のクレイ、合成クレイ、有機化クレイが挙げられる。このようなクレイとしては、例えば、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト、バーミキュライト、ハロイサイト、マイカ、フッ素化マイカ、カオリナイト(高陵石)、パイロフィロライト、スメクタイト、セリサイト(絹雲母)、イライト、グローコナイト(海緑石)、クロライト(緑泥石)、タルク(滑石)、ゼオライト(沸石)、ハイドロタルサイト等が挙げられる。
このようなクレイの中でも、ケイ素及びマグネシウムを主成分とするクレイ、並びに、有機化クレイからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
また、本発明において、ケイ素及びマグネシウムを主成分とするクレイとは、クレイの構成成分である金属酸化物の金属の主成分がケイ素(Si)及びマグネシウム(Mg)であるクレイを指し、その他の金属酸化物(アルミニウム(Al)、鉄(Fe)等)を副成分として含んでいても良い。ケイ素及びマグネシウムを主成分とするクレイとしては特に制限されず、公知のものを適宜利用することができる。ケイ素及びマグネシウムを主成分とするクレイを用いることで、粒径が小さいため補強性を高くすることが可能となる。また、このようなケイ素及びマグネシウムを主成分とするクレイとしては、入手のし易さの観点から、スメクタイト構造を有するクレイが好ましい。
また、このようなケイ素及びマグネシウムを主成分とするクレイとしては、例えば、スティブンサイト、ヘクトライト、サポナイト、タルク等を挙げることができるが、中でも、分散性の観点から、スティブンサイト、ヘクトライト、サポナイトを用いることがより好ましい。
また、ケイ素及びマグネシウムを主成分とするクレイとしては、合成クレイが好ましい。このような合成クレイとしては、市販のものを利用してもよく、例えば、クニミネ工業社製の商品名「スメクトンSA」、「スメクトンST」、水澤化学工業社製の商品名「イオナイト」、コープケミカル社製の商品名「ルーセンタイト」などを適宜利用することができる。
また、前記有機化クレイは特に制限されないが、クレイが有機化剤により有機化されてなるものであることが好ましい。このような有機化される前のクレイとしては特に制限されず、いわゆる粘土鉱物であればよく、例えば、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト、バーミキュライト、ハロイサイト、マイカ、フッ素化マイカ、カオリナイト(高陵石)、パイロフィロライト、スメクタイト、セリサイト(絹雲母)、イライト、グローコナイト(海緑石)、クロライト(緑泥石)、タルク(滑石)、ゼオライト(沸石)、ハイドロタルサイト等が挙げられる。また、このようなクレイは天然物であっても合成物であってもよい。
また、前記有機化剤としては特に制限されず、クレイを有機化することが可能な公知の有機化剤を適宜利用することができ、例えば、ヘキシルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオン、2-エチルヘキシルアンモニウムイオン、ドデシルアンモニウムイオン、ラウリルアンモニウムイオン、オクタデシルアンモニウムイオン、ジオクチルジメチルアンモニウムイオン、トリオクチルアンモニウムイオン、ジオクタデシルジメチルアンモニウムイオン、トリオクチルアンモニウムイオン、ジオクタデシルジメチルアンモニウムイオン、トリオクタデシルアンモニウムイオン等を用いることができる。
また、このような有機化クレイとしては、単層分散性の観点から、クレイの4級アンモニウム塩を好適に利用することができる。このような有機化クレイの4級アンモニウム塩としては、特に制限されないが、例えば、トリメチルステアリルアンモニウム塩、オレイルビス(2-ヒドロキシルエチル)の塩、メチルアンモニウム塩、ジメチルステアリルベンジルアンモニウム塩、ジメチルオクタデシルアンモニウム塩、及び、これらのうちの2種以上の混合物を好適に用いることができる。なお、このような有機化クレイの4級アンモニウム塩としては、引張強度、耐熱性向上の観点から、ジメチルステアリルベンジルアンモニウム塩、ジメチルオクタデシルアンモニウム塩、及び、これらの混合物をより好適に利用でき、ジメチルステアリルベンジルアンモニウム塩とジメチルオクタデシルアンモニウム塩との混合物を更に好適に利用できる。
また、このような有機化クレイとしては、市販のものを利用してもよく、例えば、クニミネ工業社製の商品名「クニフィル-D36」、「クニフィル-B1」、「クニフィル-HY」などの他、ホージュン社製の商品名「エスベンシリーズ(C,E,W,WX,N-400,NX,NX80,NZ,NZ70,NE,NEZ,NO12S,NO12」、「オルガナイトシリーズ(D,T)などを適宜利用することができる。このような市販の有機化クレイの中でも、クニミネ工業社製の商品名「クニフィル-D36」とホージュン社製の商品名「エスベンシリーズWX」を好適に利用できる。
このように、本発明にかかるクレイとしては、高分散性の観点から、ケイ素及びマグネシウムを主成分とするクレイ、有機化クレイが好ましく、中でも、より高度な引張応力(モジュラス)が得られることから、有機化クレイを用いることが特に好ましい。
(化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂)
本発明にかかるα-オレフィン系樹脂は、化学結合性の架橋部位を有さないものである。ここにいう「化学結合性の架橋部位」とは、水素結合、共有結合、金属イオン-極性官能基間のキレーション、金属-不飽和結合(二重結合、三重結合)間のσ-π相互作用により形成される結合等といった化学結合により架橋が形成されている部位をいう。そのため、本発明にいう「化学結合性の架橋部位を有さない」とは、上記に記載の水素結合、共有結合、金属イオン-極性官能基間のキレーション、金属-不飽和結合(二重結合、三重結合)間のσ-π相互作用により形成される結合等によって形成される化学結合を有さない状態であることをいう。このような化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂としては、化学結合による架橋点を形成するような、官能基(例えば、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基、チオール基、アミド基、アミノ基)を含まず、更に、高分子鎖同士を直接架橋する結合部位(共有結合による架橋部位等)を含まないものが好適に用いられる。また、このような化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂は、少なくとも、上述のような側鎖(a)、側鎖(a’)、側鎖(b)、側鎖(c)等を有していないポリマーとなる。
また、ここにいう「α-オレフィン系樹脂」とは、α-オレフィンの単独重合体、α-オレフィンの共重合体をいう。ここにいう「α-オレフィン」とは、α位に炭素-炭素二重結合を有するアルケン(末端に炭素-炭素二重結合を有するアルケン:なお、かかるアルケンは直鎖状のものであっても分岐鎖状のものであってもよく、炭素数が2~20(より好ましくは2~10)であることが好ましい。)をいい、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-へキセン、1-へプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン等が挙げられる。
このような化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂としては、α-オレフィンの重合体(ポリα-オレフィン:単独重合体であっても共重合体であってもよい。)であればよく、特に制限されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン共重合体等が挙げられる。このような化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂の中でも、母体となるエラストマーに対する相溶性の観点からは、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン共重合体が好ましく、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体がより好ましい。なお、このような化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂は1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
このような化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂としては、結晶化度が10%以上のものが好ましく、10~80%のものがより好ましく、10~75%のものが更に好ましい。このような結晶化度が前記下限未満では樹脂的な性質が希薄になるため、機械特性、流動性をより高度なものとすることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると樹脂的な性質が強くなるため、機械特性をより高い水準でバランスよく発揮させることが困難となる傾向にある。なお、このような結晶化度は、測定装置としてX線回折装置(例えば、リガク社製の商品名「MiniFlex300」を用い、回折ピークを測定し、結晶性/非晶性由来の散乱ピークの積分比を計算することにより求めることができる。
また、このような化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂としては、JIS K6922-2(2010年発行)に準拠して測定される、190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が40g/10分以上であることが好ましい。このようなメルトフローレート(MFR)が前記下限未満ではエラストマー組成物中に配合しても流動性を向上させることが困難となる傾向にある。なお、このようなメルトフローレート(MFR)は、JIS K6922-2(2010年発行)に記載のB法に準拠して測定される値であり、メルトフローレート測定装置として東洋精機製作所製の商品名「Melt Indexer G-01」を用いて、該装置の炉体内に前記α-オレフィン系樹脂を3g添加した後、温度を190℃にして5分間保持した後、190℃に維持しつつ2.16kgに荷重する条件で、前記炉体の下部に接続されている直径1mm、長さ8mmの筒状のオリフィス部材の開口部から、10分の間に流出するエラストマーの質量(g)を測定(前記炉体内において温度を190℃にして5分間保持した後に荷重を開始してから、流出するエラストマーの質量の測定を開始する。)することにより求めることができる。
さらに、前記化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1万以上200万以下であることが好ましく、3万以上150万以下であることがより好ましく、5万以上125万以下であることが更に好ましい。このような重量平均分子量が前記下限未満では機械強度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとエラストマー成分に対する相溶性が低下してしまい、相分離しやすくなる傾向にある。
また、前記化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂の数平均分子量(Mn)は、1万以上200万以下であることが好ましく、3万以上150万以下であることがより好ましく、5万以上125万以下であることが更に好ましい。このような数平均分子量が前記下限未満では機械強度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとエラストマー成分に対する相溶性が低下してしまい、相分離しやすくなる傾向にある。
また、前記化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂の分子量分布の分散度(Mw/Mn)は5以下であることが好ましく、1~3であることがより好ましい。このような分子量分布の分散度(Mw/Mn)の値が前記下限未満では流動性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとエラストマーに対する相溶性が低下する傾向にある。
なお、上述のようなα-オレフィン系樹脂の重量平均分子量(Mw)や前記数平均分子量(Mn)および分子量分布の分散度(Mw/Mn)は、いわゆるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めることができる。また、このような分子量等の測定の具体的な装置や条件としては、島津製作所製「Prominence GPCシステム」を利用できる。
また、前記化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂のガラス転移点は、-150~5℃であることが好ましく、-125~0℃であることがより好ましい。このようなガラス転移点が前記下限未満では融点が低くなるため耐熱性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとエラストマー配合後のゴム弾性が低下しやすい傾向にある。なお、ここにいう「ガラス転移点」は、前述のように、示差走査熱量測定(DSC-Differential Scanning Calorimetry)により測定したガラス転移点である。このようなDSC測定に際しては、昇温速度は10℃/minにするのが好ましい。
このような化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂の製造するための方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。また、このようなα-オレフィン系樹脂としては、市販品を用いてもよく、例えば、三井化学社製の商品名「タフマー」;日本ポリエチレン社製の商品名「ノバテックHD」「ノバテックLD」「ノバテックLL」「カーネル」;プライムポリマー社製の商品名「ハイネックス」「ネオゼックス」「ウルトゼックス」「エボリュー」「プライムポリプロ」「ポリファイン」「モストロンーL」;サンアロマー社製のPP等を適宜用いてもよい。
(組成物)
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、前記エラストマー成分と、前記クレイと、前記化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン樹脂とを含有するものである。
なお、本発明の熱可塑性エラストマー組成物によって、十分に高度な耐熱性及び破断強度を有することが可能となる理由は必ずしも明らかではないが、本発明者らは以下のように推察する。
すなわち、先ず、本発明において、エラストマー成分は、少なくとも水素結合性架橋部位を有する側鎖を含むエラストマー性ポリマー(側鎖に、側鎖(a);側鎖(a’)及び側鎖(b);並びに、側鎖(c)のうちの少なくとも1種を含むポリマー)を含有している。先ず、このようなエラストマー性ポリマーとクレイとを組み合わせると、クレイと水素結合性架橋部位との間で相互作用(新たな水素結合が形成される等)して、クレイの表面を利用してエラストマー成分が面架橋される。そして、このような面架橋が形成されると、その構造に由来して十分に高い耐熱性を発現させることが可能となる。また、このような面架橋が形成されると、架橋点への応力集中を抑えることが可能となり、クレイを含有させなかった場合と比較して、より高い破断強度(破断されるまでの引張強度)を発現させることが可能となるものと本発明者らは推察する。特に、水素結合性架橋部位が側鎖(a)において説明するような、「カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位(より好ましくは、カルボニル含有基および含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位)」である場合には、より多点での水素結合が可能となり、エラストマー同士において、より多点で水素結合するのに加え、クレイとの間においても、より多点で水素結合するため、より強固に面架橋させることが可能であり、引張強度(破断強度)や耐熱性の点でより高い効果が得られる傾向にある。
一方、水素結合性の架橋部位を側鎖に有する、エラストマー性ポリマー(A)及び(B)のうちの少なくとも1種をエラストマー成分として利用せず、他のエラストマー成分のみを用いた場合には、例えクレイと組み合わせて利用したとしても、上述のような効果を得ることができない。この点に関して検討すると、先ず、一般的な熱可塑性エラストマーは、高分子分子鎖間の物理的な相互作用による擬似的架橋を利用したタイプ(高分子の分子間力等による相互作用によって物理的に弱い結合が形成されているタイプ)と、熱可塑性樹脂のマトリックスにゴムを分散させたタイプの2つに大別される。このような擬似的架橋を利用したタイプの熱可塑性エラストマーは、代表的なものとして、ブロックポリマーやウレタンエラストマー等のソフトセグメントとハードセグメントを持つポリマーが挙げられる。ここで、上述のような側鎖を有するポリマーを導入することなく、単に、擬似的架橋を利用したタイプの熱可塑性エラストマーにクレイ等のフィラーを配合すると、擬似的架橋点における相互作用(高分子分子鎖間の物理的な相互作用)がクレイにより阻害されて、却って高分子の機械的な強度が低下してしまい、ゴム製品として実使用に耐えられないものとなってしまう。このように、擬似的架橋を利用したタイプの熱可塑性エラストマーのみからなるような従来の熱可塑性のエラストマーは、これを単にクレイと組み合わせた場合に、その組成物中において、却って擬似的架橋の形成が阻害され、組成物の機械的な強度(引張応力等)が低下してしまう。また、熱可塑性樹脂のマトリックスにゴムを分散させたタイプの熱可塑性エラストマーでは、その組成からも明らかなように、クレイ等のフィラーは、マトリックス相にしか導入されないこととなる。ここにおいて、上記側鎖を有していないような熱可塑性樹脂からなるマトリクスにおいては、マトリクスにおいてクレイとの相互作用が形成されることがない。そのため、単純にフィラーを導入しても、ある部分に高濃度にフィラーが導入され、また、ある部分にはまったくフィラーが導入されないといった状態となってしまう。その結果、かかるフィラーの濃度の差に起因して、エラストマーの内部において硬度の差が生まれ、機械的強度等が低下する。そのため、熱可塑性樹脂のマトリックスにゴムを分散させたタイプの熱可塑性エラストマーにおいて、水素結合性の架橋部位を側鎖を含まないポリマーを用いている場合においては、単純にクレイを導入したとしても、クレイを十分に分散させることができず、組成物の機械的な強度(破断強度等)が低下してしまう。このような観点で、エラストマー性ポリマー(A)及び(B)を、母体となるエラストマー成分に利用しなかった場合には、クレイとの間に相互作用を形成することができないばかりか、クレイの存在により、却って機械的な強度が低下してしまい、エラストマー(ゴム)として必ずしも十分な特性を有するものとすることができないものと本発明者らは推察する。
また、本発明においては、前記クレイの含有量は前記エラストマー成分100質量部に対して20質量部以下となっているが、このような含有比率(十分に低い比率)であっても、耐熱性等において十分に高い効果が得られる。この点については、上述のように、組成物中にクレイが十分に均一に分散されて、面架橋を十分に形成することが可能であることから(なお、単層で分散している割合をより高くした場合には、エラストマー内で面架橋をより多く形成することが可能な傾向にあり、より好ましい形態であるといえる。)、これにより含有量が20質量部以下と微量であっても、十分に高度な引張応力と十分に高い耐熱性とを発揮させることも可能になるためであると本発明者らは推察する。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、前記熱可塑性エラストマー組成物及びクレイと共に、化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン樹脂を含有している。このような化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン樹脂を組成物中に含有させた場合には、母体となるエラストマー成分の架橋構造の中に分散するため、α-オレフィン樹脂固有の物性を発現することが可能となる。そのため、本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン樹脂に由来して、優れた流動性、機械特性を付与することも可能となるものと本発明者らは推察する。また、本発明においては、α-オレフィン樹脂とエラストマー成分とは高い相溶性を有する組合せとなるため、α-オレフィン樹脂とエラストマー成分は互いに組成物中に十分に均一に分散される。そして、このように十分に分散されたエラストマー成分と、クレイとが相互作用(水素結合等)するため、クレイも十分に分散されることとなる。そのため、α-オレフィン樹脂を用いることにより得られる効果(例えば優れた流動性、機械特性を付与する効果等)を十分に維持しながら、クレイが十分に分散されて、耐熱性や破断強度等を十分に高い水準のものとすることができるものと本発明者らは推察する。また、本発明においては、エラストマー成分の全体の構造等にもよるが、エラストマー成分の種類によっては、そのエラストマー成分に含まれる側鎖中の水素結合性架橋部位によって形成される水素結合によっても、ゴム特性や流動性(成形性)を十分に発揮させることも可能とし得る。これは、その構造によっては、加熱加工時に水素結合が一度消失しても、硬化時に再度水素結合が形成されて、ゴム特性や流動性(成形性)を十分に保持させることが可能となり得るためである。また、本発明の組成物においては、上記各成分を含有することで、ゴム製品として利用可能な十分な硬度等も併せて発現させることも可能である。
更に、本発明において、側鎖に共有結合性架橋部位を含むエラストマー成分を含有する場合(例えば、エラストマー性ポリマー(B)を含む場合)には、共有結合性架橋部位を含む側鎖により、より高い水準の耐圧縮永久歪性を発現させることも可能となるものと本発明者らは推察する。また、エラストマー成分中に、水素結合性架橋部位と共有結合性架橋部位とが存在する場合(エラストマー性ポリマー(B)を含有する場合、エラストマー性ポリマー(B)と他のエラストマー性ポリマーの混合物を含有する場合、エラストマー性ポリマー(A)とエラストマー性ポリマー(B)との混合物を含有する場合、エラストマー性ポリマー(A)とエラストマー性ポリマー(B)以外の側鎖(b)を有するエラストマー性ポリマーとの混合物を利用する場合等)には、水素結合性架橋部位と共有結合性架橋部位の存在に起因して、使用時に、共有結合による、より高度な機械的強度と、水素結合による加熱時の開裂による、より高度な流動性(成形性)を同時に発現させることも可能となる。そのため、側鎖の種類に応じて組成を適宜変更して、用途に応じた特性を適宜発揮させることも可能となるものと本発明者らは推察する。なお、上述のようなエラストマー性ポリマー(B)以外の側鎖(b)を有するエラストマー性ポリマーは、官能基(例えば環状酸無水物基)を側鎖に有するエラストマー性ポリマーを用いて、該エラストマー性ポリマーを、前記官能基と反応して共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)と反応させて、前記側鎖(b)を有する前記エラストマー性ポリマーを製造する方法により得ることが可能である。なお、この場合においても、共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)としては、前述の「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」を利用することができる。
以上、本発明の熱可塑性エラストマー組成物によって、上述のような本発明の効果が得られる理由等について検討したが、以下、本発明の熱可塑性エラストマー組成物の好適な実施形態(各成分の含有比率の好適な条件等)について更に説明する。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、前記エラストマー成分と、前記クレイと、前記化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂とを含有するものであり、前記クレイの含有量は、前記エラストマー成分100質量部に対して20質量部以下である。このようなクレイの含有量が前記上限を超えると、耐熱性及び破断強度が低下する。このような熱可塑性エラストマー組成物におけるクレイの含有量としては、前記エラストマー成分100質量部に対して0.1~10質量部であることがより好ましく、0.5~5質量部であることが更に好ましく、1~3質量部であることが特に好ましい。このようなクレイの含有量が前記下限未満では、クレイの含有量が少なすぎて十分な効果が得られなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると架橋が強くなり過ぎて、却って伸びや強度が低下してしまい、各種用途に利用することが困難となる(実用性が低下する)傾向にある。
また、このようなクレイとしては、単層の形態のクレイ(単層のクレイ)が組成物中に存在することが好ましい。このような単層状の形態のクレイの存在は、組成物の表面を透過型電子顕微鏡(TEM)により測定することにより確認できる。
さらに、本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、前記熱可塑性エラストマー組成物の表面上の任意の3点以上の5.63μm2の大きさの測定点を透過型電子顕微鏡(TEM)により測定した場合において、全測定点において、個数を基準として、全クレイのうちの50%以上(より好ましくは70%以上、更に好ましくは80~100%、特に好ましくは85~100%)が単層のクレイとして存在することが好ましい。単層のクレイの存在率が前記下限未満では破断伸び、破断強度が低下する傾向にある。なお、このような単層のクレイの存在率(割合)の測定に際しては、透過型電子顕微鏡(例えば、日本電子社製の商品名「JEM-2010」)を用いて、試料として前記熱可塑性エラストマー組成物10gを準備し、前記熱可塑性エラストマー組成物の表面上の5.63μm2の大きさの測定点を3点以上それぞれ測定し、かかる測定により得られる各TEM画像において、単層のクレイの個数と、多層状のクレイの個数とをそれぞれ求めて、各測定点(各TEM画像)に関して、個数を基準として、全クレイのうちの単層のクレイの存在率(割合)を計算することで求めることができる。なお、単層の形態になる前の多層構造の場合に、モンモリロナイトの層間距離は9.8オングストローム程度であり、一般的な有機化クレイの層間距離は20~40オングストローム(2~4nm)程度である。また、一般的な有機化クレイを有機溶剤に分散させて単層にした場合、それらの層間距離は50オングストローム(>5nm)以上となることから、TEM画像により確認できる各層の層間距離がそのような層間距離よりも広くなっていることに基づいて、単層と判断してもよい。このように、クレイの種類にもよるが、例えば、5nm以上層の間隔があることをもって単層の状態であると判断してもよく、場合によっては、数10nm以上の層の間隔があることをもって単層の状態であると判断してもよい。
なお、組成物中に、上述のような割合(存在率)で単層のクレイが含有されている場合、多層状のクレイがそのまま分散されているよりも、クレイがより分散して含有された状態となるため(多層状のクレイが分解されて単層のクレイが形成されるためである。)、より高い分散性でクレイを組成物中に分散させることが可能となる。このように、前記クレイは、組成物中において多層状のまま存在するよりも、単層状のものが前記割合で存在する場合に、より高い分散性が得られ、耐熱性や破断強度をより高度なものとすることが可能である。そのため、上述のような割合で、単層の状態のクレイを含有させることがより好ましく、これによりクレイがより分散されて耐熱性や破断強度の向上をより効率よく図ることが可能となる。また、上述のような割合(存在率)で単層のクレイを含有させる方法としては、特に制限されないが、後述の本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法を採用して熱可塑性エラストマー組成物を製造することで、より効率よく、単層のクレイを上記割合で含有させることが可能となる。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、前記熱可塑性エラストマー組成物の表面上の任意の3点以上の5.63μm2の大きさの測定点を透過型電子顕微鏡により測定した場合において、全測定点において、1μm2あたり、1~100個(より好ましくは3~80個、更に好ましくは5~50個)分散されていることが好ましい。このような単層のクレイの個数が前記下限未満ではクレイの量が少なすぎて、十分な効果が得られなくなる傾向にある。なお、このような単層のクレイの個数は、単層のクレイの存在率(割合)の測定と同様の方法でTEM画像を確認することにより求めることができる。
上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物としては、前記化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂の含有量(含有比率)が、前記エラストマー成分100質量部に対して250質量部以下であることが好ましく、5~250質量部であることがより好ましく、10~225質量部であることが更に好ましく、25~200質量部であることが特に好ましく、35~175質量部であることが最も好ましい。このような化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂の含有量が前記下限未満では、流動性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、機械特性(破断強度、圧縮永久歪)が低下する傾向にある。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物において、前記化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂の含有量は、熱可塑性エラストマー組成物の総量に対して1~50質量%であることが好ましく、3~45質量%であることがより好ましく、5~40質量%であることが更に好ましい。このような化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂の含有量が前記下限未満では、流動性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、機械特性(破断強度、圧縮永久歪)が低下する傾向にある。
なお、本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては用いるエラストマー成分の種類に応じて、用途に応じた特性を適宜付与することもできる。例えば、エラストマー性ポリマー(A)をエラストマー成分とする熱可塑性エラストマー組成物においては、組成物中に側鎖(a)に由来する特性を付与できるため、特に破断伸び、破断強度、流動性を向上させることが可能となる。また、エラストマー性ポリマー(B)をエラストマー成分とする熱可塑性エラストマー組成物においては、組成物中に、側鎖中の共有結合性架橋部位に由来する特性を付与できるため、特に圧縮永久歪に対する耐性(耐圧縮永久歪性)を向上させることが可能となる。なお、エラストマー性ポリマー(B)をエラストマー成分として含有する熱可塑性エラストマー組成物においては、組成物中において、共有結合性架橋部位に由来する特性の他に、水素結合性架橋部位(側鎖(a’)において説明した水素結合性架橋部位)に由来する特性をも付与できるため、流動性(成形性)を保持した状態で、耐圧縮永久歪性をより向上させることも可能となり、その側鎖の種類やポリマー(B)の種類等を適宜変更することで、用途に応じた所望の特性を、より効率よく発揮させることも可能となる。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、エラストマー性ポリマー(A)をエラストマー成分とする熱可塑性エラストマー組成物と、エラストマー性ポリマー(B)をエラストマー成分とする熱可塑性エラストマー組成物とをそれぞれ別々に製造した後、これを混合して、エラストマー成分としてエラストマー性ポリマー(A)及び(B)を含有する熱可塑性エラストマー組成物としてもよい。また、本発明においては、エラストマー成分は、エラストマー性ポリマー(A)及び(B)を少なくとも含有していればよいが、組成物中に共有結合性架橋部位を存在せしめて、より効率よく共有結合性架橋部位の特性を利用するといった観点から、エラストマー性ポリマー(B)以外の側鎖(b)を有する他のエラストマー性ポリマーを混合して用いてもよい。例えば、エラストマー成分として、エラストマー性ポリマー(A)を用いる場合に、エラストマー性ポリマー(B)以外の側鎖(b)を有する他のエラストマー性ポリマーを組み合わせて用いた場合には、組成物中に含まれる側鎖に由来して、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位を含有するエラストマー性ポリマー(B)を利用した熱可塑性エラストマー組成物と、ほぼ同様の特性を付与することも可能となる。また、エラストマー成分としてエラストマー性ポリマー(A)及び(B)を含有する熱可塑性エラストマー組成物を製造する場合や、エラストマー性ポリマー(A)及びエラストマー性ポリマー(B)以外の側鎖(b)を有する他のエラストマー性ポリマーを含有する熱可塑性エラストマー組成物を製造する場合には、各成分(例えばエラストマー性ポリマー(A)とエラストマー性ポリマー(B)の各成分)の比率を適宜変更することで、所望の特性を適宜発揮させることも可能となる。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物がエラストマー成分として、エラストマー性ポリマー(A)及び(B)を含有する場合には、エラストマー性ポリマー(A)とエラストマー性ポリマー(B)の含有比率は質量比([ポリマー(A)]:[ポリマー(B)])で1:9~9:1とすることが好ましく、2:8~8:2とすることがより好ましい。このようなポリマー(A)の含有比率が前記下限未満では流動性(成形性)、機械的強度が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると圧縮永久歪に対する耐性が低下する傾向にある。
さらに、本発明の熱可塑性エラストマー組成物がエラストマー成分として、エラストマー性ポリマー(A)と、エラストマー性ポリマー(B)以外の側鎖(b)を有する他のエラストマー性ポリマー(以下、場合により「エラストマー性ポリマー(C)」と称する。)とを含有する場合には、エラストマー性ポリマー(A)とエラストマー性ポリマー(C)の含有比率は質量比([エラストマー性ポリマー(A)]:[エラストマー性ポリマー(C)])で1:9~9:1とすることが好ましく、2:8~8:2とすることがより好ましい。このようなポリマー(A)の含有比率が前記下限未満では流動性(成形性)、機械的強度が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると圧縮永久歪に対する耐性が低下する傾向にある。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、組成物中に側鎖(a’)と側鎖(b)の双方が存在する場合には、その側鎖(a’)の全量と側鎖(b)の全量とが、質量比を基準として、1:9~9:1となっていることが好ましく、2:8~8:2となっていることがより好ましい。このような側鎖(a’)の全量が前記下限未満では流動性(成形性)、機械的強度が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると圧縮永久歪に対する耐性が低下する傾向にある。なお、このような側鎖(a’)は、側鎖(a)を含む概念である。そのため、側鎖(a’)として側鎖(a)のみが含まれるような場合においても、上記質量比で、組成物中に側鎖(a)と側鎖(b)の双方が存在することが好ましい。
また、このような本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、前記エラストマー成分、前記クレイ及び前記化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂以外にも、更なる添加成分(他の成分:添加剤)を適宜含有させてもよい。
このように、本発明の熱可塑性エラストマー組成物に更に含有させる添加成分(他の成分:添加剤)としては、諸物性を低下させることなく、流動性をより向上させることが可能となるといった観点からは、パラフィンオイルが好ましい。なお、このようなパラフィンオイルを用いた場合には、後述するスチレン系ブロックポリマーと併用した場合、オイル成分をブロックポリマー内に吸収させることが可能となり、オイル添加による加工性改善(流動性の向上)とスチレン系ブロックポリマー添加による機械特性向上とを十分に高度な水準で両立することが可能となるため、機械的特性や耐熱性をより十分に維持しつつ、押し出し加工性や射出成型性などの生産加工性をより高度なものとすることができる。また、パラフィンオイルを用いた場合には、例えば、加熱してオリフィス(例えば直径1mmの開口部を有するようなもの等)から押し出した場合に、オリフィスの開口部から押し出された紐状の熱可塑性エラストマー組成物の形状(ストランド形状)が十分に均一の太さを有するものとなり、その表面に毛羽立ちが見られない状態となるような、優れた押し出し加工性が得られる傾向にある。このようなパラフィンオイルとしては特に制限されず、公知のパラフィンオイルを適宜利用することができる。
また、このようなパラフィンオイルとしては、そのオイルに対して、ASTM D3238-85に準拠した相関環分析(n-d-M環分析)を行って、パラフィン炭素数の全炭素数に対する百分率(パラフィン部:CP)、ナフテン炭素数の全炭素数に対する百分率(ナフテン部:CN)、及び、芳香族炭素数の全炭素数に対する百分率(芳香族部:CA)をそれぞれ求めた場合において、パラフィン炭素数の全炭素数に対する百分率(CP)が60%以上であることが好ましい。
また、このようなパラフィンオイルとしては、JIS K 2283(2000年発行)に準拠して測定される、40℃における動粘度が50mm2/s~700mm2/sのものが好ましく、150~600mm2/sのものがより好ましく、300~500mm2/sのものが更に好ましい。このような動粘度(ν)が前記下限未満ではオイルのブリードが起こりやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると充分な流動性を付与できなくなる傾向にある。なお、このようなパラフィンオイルの動粘度は、40℃の温度条件下において、JIS K 2283(2000年発行)に準拠して測定される値を採用するが、例えば、JIS K 2283(2000年発行)に準拠したキャノン・フェンスケ式粘度計(例えば柴田科学社製の商品名「SOシリーズ」)を利用して、40℃の温度条件で自動測定した値を採用してもよい。
さらに、このようなパラフィンオイルは、JIS K2256(2013年発行)に準拠したU字管法により測定されるアニリン点が80℃~145℃であることが好ましく、100~145℃であることがより好ましく、105~145℃であることが更に好ましい。なお、このようなパラフィンオイルのアニリン点は、JIS K2256(2013年発行)に準拠したU字管法により測定される値を採用するが、例えば、JIS K2256(2013年発行)に準拠したアニリン点測定装置(例えば田中科学機器社製の商品名「aap-6」)を利用して測定した値を採用してもよい。
また、このようなパラフィンオイルとしては、適宜市販のものを利用することができ、例えば、JX日鉱日石エネルギー社製の商品名「スーパーオイルMシリーズ P200」、「スーパーオイルMシリーズ P400」、「スーパーオイルMシリーズ P500S」;出光興産社製の商品名「ダイアナプロセスオイルPW90」、「ダイアナプロセスオイルPW150」、「ダイアナプロセスオイルPW380」;日本サン石油社製の商品名「SUNPARシリーズ(110、115、120、130、150、2100、2280など)」;モービル社製の商品名「ガーゴイルアークティックシリーズ(1010、1022、1032、1046、1068、1100など)」;等を適宜利用してもよい。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物において前記パラフィンオイルを更に含有させる場合、前記パラフィンオイルの含有量は、前記エラストマー成分100質量部に対して10~1500質量部であることが好ましく、10~1400質量部であることがより好ましく、50~1200質量部であることが更に好ましく、75~1100質量部であることが特に好ましく、100~1000質量部であることが最も好ましい。さらに、前記パラフィンオイルの含有量としては、前記エラストマー成分100質量部に対して600質量部以下であることがより好ましく、この場合、10~600質量部であることが好ましく、50~550質量部であることがより好ましく、75~500質量部であることが更に好ましく、100~400質量部であることが特に好ましい。このようなパラフィンオイルの含有量が前記下限未満では、パラフィンオイルの含有量が少なすぎて、パラフィンオイルを添加することにより得られる効果(特に流動性及び加工性を向上せしめる効果)が必ずしも十分なものではなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、パラフィンオイルのブリードが誘発されやすくなる傾向にある。なお、JIS-A硬度をより低い値(好ましくは10以下)に調整するといった観点からは、前記パラフィンオイルの含有量は500~1500質量部であることが好ましく、600~1400質量部であることがより好ましく、800~1200質量部であることが更に好ましい。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物において前記パラフィンオイルを更に含有させる場合、前記パラフィンオイルの含有量は、熱可塑性エラストマー組成物の総量に対して20~80質量%であることが好ましく、20~60質量%であることが好ましく、25~55質量%であることがより好ましく、35~55質量%であることが更に好ましい。このようなパラフィンオイルの含有量が前記下限未満では、パラフィンオイルの含有量が少なすぎて、特に流動性及び加工性の点で十分な効果が得られなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、パラフィンオイルのブリードが誘発されやすくなる傾向にある。なお、JIS-A硬度をより低い値(好ましくは10以下)に調整するといった観点からは、前記パラフィンオイルの含有量は50~80質量%であることが好ましく、55~75質量%であることがより好ましく、60~70質量%であることが更に好ましい。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物に更に含有させる前記添加成分(他の成分:添加剤)としては、母体となるエラストマーの架橋反応に干渉しない成分であるとの観点からは、化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体が好ましい。なお、このようなスチレンブロック共重合体を用いた場合、基本的に、母体となるエラストマー性ポリマー(前記エラストマー成分)の架橋構造や製造時の架橋反応に干渉しないため、架橋した母体となるエラストマー構造固有の物性が阻害されないことから、前記エラストマー成分に由来する特性を十分に維持しつつ、スチレンブロック共重合体に由来する優れた機械特性(特に引張特性、圧縮永久歪等)を、本発明の熱可塑性エラストマー組成物に反映させること(付与すること)ができ、より高度な特性を有するものとすることが可能であるものと本発明者らは推察する。
このような本発明の熱可塑性エラストマー組成物に好適に用いられる成分である前記スチレンブロック共重合体は、化学結合性の架橋部位を有さないものである。ここにいう「化学結合性の架橋部位を有さない」とは、前述のα-オレフィン系樹脂において説明したものと同義である。従って、化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体としては、化学結合による架橋点を形成するような、官能基(例えば、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基、チオール基、アミド基、アミノ基)を含まず、更に、高分子鎖同士を直接架橋する結合部位(共有結合による架橋部位等)を含まないものが好適に用いられる。また、このような化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体は、少なくとも、上述のような側鎖(a)、側鎖(a’)、側鎖(b)、側鎖(c)等を有していないポリマーとなる。
また、ここにいう「スチレンブロック共重合体」とは、いずれかの部位にスチレンブロック構造を有するポリマーであればよい。なお、一般に、スチレンブロック共重合体は、スチレンブロック構造を有し、常温では、そのスチレンブロック構造の部位が凝集して物理的架橋点(物理的な疑似架橋点)が形成され、加熱した場合にはかかる物理的な疑似架橋点が崩壊することに基づいて、熱可塑性を有しかつ常温でゴムのような特性(弾性等)を有するものとして利用可能なものである。
また、このような化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体としてはゴム弾性と熱可塑性の両立の観点から、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン‐エチレン‐プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン‐エチレン‐エチレン‐プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-イソプレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SIBS)、これらの水素添加物(いわゆる水添物)が好ましく、SEBS、SEEPSがより好ましい。このようなスチレンブロック共重合体は1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて利用してもよい。
また、前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体としては、スチレン含有量が20~40質量%(より好ましくは25~37質量%)のスチレンブロック共重合体であることが好ましい。このようなスチレン含有量が前記下限未満ではスチレンブロック成分の減少により熱可塑性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとオレフィン成分の減少によりゴム弾性が低下する傾向にある。なお、このようなスチレンブロックスチレンブロック共重合体中のスチレン含有量は、JIS K6239(2007年発行)に記載のIR法に準拠した方法により測定できる。
さらに、前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は、20万以上70万以下であることが好ましく、30万以上60万以下であることがより好ましく、35万以上55万以下であることが更に好ましい。このような重量平均分子量が前記下限未満では耐熱性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとエラストマー性ポリマーとの相溶性が低下する傾向にある。
また、前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は、10万以上60万以下であることが好ましく、15万以上55万以下であることがより好ましく、20万以上50万以下であることが更に好ましい。このような数平均分子量が前記下限未満では耐熱性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとエラストマー性ポリマー(前記エラストマー成分)との相溶性が低下する傾向にある。
また、前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体の分子量分布の分散度(Mw/Mn)は5以下であることが好ましく、1~3であることがより好ましい。なお、このような重量平均分子量(Mw)や前記数平均分子量(Mn)および分子量分布の分散度(Mw/Mn)は、いわゆるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めることができる。また、このような分子量等の測定の具体的な装置や条件としては、島津製作所製の「Prominence GPCシステム」を利用できる。
また、前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体のガラス転移点は、-80~-40℃であることが好ましく、-70~-50であることがより好ましい。このようなガラス転移点が前記下限未満では融点が低くなるため耐熱性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとゴム弾性が低下する傾向にある。なお、ここにいう「ガラス転移点」は、前述のように、示差走査熱量測定(DSC-Differential Scanning Calorimetry)により測定したガラス転移点である。このようなDSC測定に際しては、昇温速度は10℃/minにするのが好ましい。
前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体の製造するための方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。また、このようなスチレンブロック共重合体としては、市販品を用いてもよく、例えば、クレイトン社製の商品名「G1633」「G1640」「G1641」「G1642」「G1643」「G1645」「G1650」「G1651」「G1652」「G1654」「G1657」「G1660」;クラレ社製の商品名「S4055」「S4077」「S4099」「S8006」「S4044」「S8006」「S4033」「S8004」「S8007」「S8076」;旭化成社製の商品名「タフテックH1041」「タフテックN504」「タフテックH1272」「タフテックM1911」「タフテックM1913」「タフテックMP10」;アロン化成社製の商品名「AR-710」「AR-720」「AR-731」「AR-741」「AR-750」「AR-760」「AR-770」「AR-781」「AR-791」;等を適宜用いてもよい。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物において前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体を更に含有させる場合、前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体の含有量(含有比率)は、前記エラストマー成分100質量部に対して10~400質量部以下であることが好ましく、15~350質量部であることがより好ましく、20~300質量部であることが更に好ましく、30~250質量部であることが特に好ましい。このような化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体の含有量が前記下限未満では、化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体の含有量が少なすぎて、特に流動性及び加工性の点で十分な効果が得られなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、架橋したエラストマーによる母体構造の特性(前記エラストマー成分に由来する特性)が希薄になる傾向にある。
さらに、本発明の熱可塑性エラストマー組成物において前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体を更に含有させる場合、前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体の含有量は、熱可塑性エラストマー組成物の総量に対して5~60質量%であることが好ましく、7~45質量%であることがより好ましく、10~30質量%であることが更に好ましい。このような化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体の含有量が前記下限未満では、前記スチレンブロック共重合体の含有量が少なすぎて、特に流動性及び加工性の点で十分な効果が得られなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、架橋したエラストマーによる母体構造の特性(前記エラストマー成分に由来する特性)が希薄になる傾向にある。
本発明において、前記添加成分としては、流動性、機械特性改善の観点から、前記パラフィンオイル及び前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体の双方を更に含有させることが好ましい。すなわち、本発明の熱可塑性エラストマー組成物としては、前記エラストマー成分、前記クレイ、前記化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂、前記パラフィンオイル及び前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体を含有しているものがより好ましい。
このように、前記エラストマー成分、前記クレイ、前記α-オレフィン系樹脂、前記パラフィンオイル及び前記スチレンブロック共重合体を含有する場合においては、耐熱性や破断強度、更には耐圧縮永久歪性等といった特性をより高度な水準でバランスよく発揮できる傾向にある。このような効果が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、先ず、前記パラフィンオイルと前記スチレンブロック共重合体とを組み合わせて利用した場合、これらの相溶性が十分に高いため、前記スチレンブロック共重合体が含まれる系中にパラフィンオイルが十分に均一に分散する。また、前記スチレンブロック共重合体と前記α-オレフィン系樹脂とは相溶性が高いため、系中で均一に分散する。また、このような前記スチレンブロック共重合体と前記α-オレフィン系樹脂とを含む系において、前記エラストマー成分が両者に対して高い相溶性を有するため、やはり組成物中において前記エラストマー成分も十分に均一に分散したものとなる。そして、前述のように、前記エラストマー成分と前記クレイとが相互作用して面架橋を形成するため、エラストマー成分の分散に伴ってクレイも十分に分散した状態で存在することとなる。このように、前記エラストマー成分、前記クレイ、前記α-オレフィン系樹脂、前記パラフィンオイル及び前記スチレンブロック共重合体を含有する場合においては、各成分がより十分に分散した状態で含有される。そのため、熱可塑性エラストマー組成物の特性に強く影響を与える前記エラストマー成分の状態が、前記クレイと相互作用した状態(面架橋により強い結合を形成した状態)で十分に分散されたものとなるため、より高度な機械的強度や耐熱性をバランスよく発揮することが可能となる。また、熱可塑性エラストマー組成物の流動性に強く影響を与える成分であるα-オレフィン系樹脂やパラフィンオイルもやはり十分に分散した状態となっているため、より高度な流動性(加熱時の流動性)を達成することが可能である。更に、前記スチレンブロック共重合体は、添加量によって機械強度を調節可能であるため、所望の機械物性に調節することも可能である。そのため、前記エラストマー成分、前記クレイ、前記α-オレフィン系樹脂、前記パラフィンオイル及び前記スチレンブロック共重合体を含有する場合においては、耐熱性や破断強度、更には耐圧縮永久歪性等といった特性をより高度な水準でバランスよく発揮できるといった効果が得られるものと本発明者らは推察する。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、更に、必要に応じて、本発明の目的を損わない範囲で、前記エラストマー成分、前記α-オレフィン系樹脂及び前記スチレンブロック共重合体)以外の他のポリマー、補強剤(充填剤)、水素結合性の補強剤(充填剤)、アミノ基を導入してなる充填剤(以下、単に「アミノ基導入充填剤」という。)、該アミノ基導入充填剤以外のアミノ基含有化合物、金属元素を含む化合物(以下、単に「金属塩」という。)、無水マレイン酸変性ポリマー、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、前記パラフィンオイル以外の可塑剤(いわゆる軟化剤も含む。)、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、溶剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、防錆剤、接着付与剤、帯電防止剤、フィラーなどの各種添加剤等を含有することができる。このような添加剤等は、特に制限されず、一般に用いられるもの(公知のもの)を適宜使用することができる。例えば、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤としては、以下に記載のようなものを適宜利用することができる。
前記エラストマー成分以外のポリマーとしては、熱可塑性エラストマーの分野において、硬度の調整や機械物性の保持の観点等から適宜用いられるような公知のポリマーを適宜利用でき、特に制限されるものではないが、エラストマー性ポリマー(B)以外の側鎖(b)を有する他のエラストマー性ポリマーを好適に利用することができる。
また、このような補強剤(充填剤)としては、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム等を上げることができる。カーボンブラックとしては、シリカとしては湿式シリカ、炭酸カルシウムとしてはが好適に用いられる。
このような老化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、脂肪族および芳香族のヒンダードアミン系等の化合物を適宜利用することができる。また、前記酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等を適宜利用することができる。また、前記顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩等の無機顔料、アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料等の有機顔料、およびこれらのマスターバッチ品等を適宜利用することができ(これらのカラーマスターバッチとしては市販品(例えば、日本ピグメント社製の商品名「Nippisun Colour」、東洋インキ社製カラーマスターバッチ、トーヨーカラー社製カラーマスターバッチ等を利用してもよい。)、また、前記可塑剤としては、例えば、安息香酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、アジピン酸、セバチン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、クエン酸等の誘導体をはじめ、ポリエステル、ポリエーテル、エポキシ系等を適宜利用することができる。また、前記可塑剤(軟化剤)としては、流動性をより向上させるといった観点から、熱可塑性エラストマーに用いることが可能なものを適宜利用でき、例えば、オイル類を用いることもできる。なお、このような添加剤等としては、特開2006-131663号公報に例示されているようなものを適宜利用してもよい。
なお、本発明の熱可塑性エラストマー組成物が、前記エラストマー成分、前記クレイ、前記化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂、前記パラフィンオイル及び前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体以外の他の成分(例えば、前記添加剤等)を含有する場合において、前記他の成分の含有量は特に制限されるものではないが、ポリマー類、補強材(充填剤)の場合は、それぞれ、前記エラストマー成分100質量部に対して400質量部以下であることが好ましく、20~300質量部であることがより好ましい。このような他の成分の含有量が前記下限未満では他の成分を利用することによる効果が十分に発現しなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、利用する成分の種類にもよるが、基質のエラストマーの効果が薄まって、物性が低下してしまう傾向にある。
前述の他の成分が、その他の添加剤の場合(ポリマー類、補強材(充填剤)以外のものである場合)は、前記他の成分の含有量は、それぞれ、前記エラストマー成分100質量部に対して20質量部以下であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましい。このような他の成分の含有量が前記下限未満では他の成分を利用することによる効果が十分に発現しなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、基質のエラストマーの反応に悪影響を及ぼし、却って物性が低下してしまう傾向にある。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、加熱(例えば100~250℃に加熱)することにより、水素結合性架橋部位において形成されていた水素結合や、他の架橋構造(スチレンブロック共重合体を含む場合にはその物理架橋等)が解離する等して軟化し、流動性を付与することができる。これは、主に、加熱により分子間または分子内で形成されている側鎖同士の相互作用(主に水素結合による相互作用)が弱まるためであると考えられる。なお、本発明においては、側鎖に、少なくとも水素結合性架橋部位を含むエラストマー成分が含有されていること等から、加熱により流動性が付与された後、放置した場合に、解離した水素結合が再び結合して硬化するため、その組成によっては、熱可塑性エラストマー組成物に、より効率よくリサイクル性を発現させることも可能となる。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、JIS K6922-2(2010年発行)に準拠して測定される230℃、10kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が2g/10分以上であることが好ましく、4g/10分以上であることがより好ましく、8g/10分以上であることが更に好ましい。このようなメルトフローレート(MFR)が前記下限未満では必ずしも充分な加工性を発現できない場合も生じ得る傾向にある。なお、このようなメルトフローレート(MFR)は、JIS K6922-2(2010年発行)に記載のB法に準拠して測定される値であり、メルトフローレート測定装置として東洋精機製作所製の商品名「Melt Indexer G-01」を用いて、該装置の炉体内に熱可塑性エラストマー組成物を3g添加した後、温度を230℃にして5分間保持した後、230℃に維持しつつ10kgに荷重する条件で、前記炉体の下部に接続されている直径1mm、長さ8mmの筒状のオリフィス部材の開口部から、10分の間に流出するエラストマーの質量(g)を測定(前記炉体内において温度を230℃にして5分間保持した後に荷重を開始してから、流出するエラストマーの質量の測定を開始する。)することにより求めることができる。
さらに、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、5%重量減少温度が320℃以上であることが好ましく、325℃以上であることがより好ましい。このような5%重量減少温度が前記下限未満では耐熱性に劣る傾向にある。なお、このような5%重量減少温度は、測定試料として10mgの熱可塑性エラストマー組成物を準備し、測定装置として熱重量測定装置(TGA)を用い、昇温速度10℃/minで加熱して、初期の重量(10mg)から5%重量が減少した際の温度を測定することにより求めることができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、その用途に応じて、組成を適宜変更することで硬度等の特性を適宜変更して用いることができる。例えば、ガスケット、パッキン、ストッパー、3Dプリンター用資材に利用する場合、硬度がより低いことが望ましいことから、組成物中のα-オレフィン樹脂の含有量をより少なくしたり、組成物中に好適な成分として利用可能なパラフィンオイルを多量に添加する等してJIS-A硬度を0~20に調整してもよく、あるいは、ウェザーストリップ等の自動車用ゴム部品に利用する場合、硬度がより高いことが望ましいことから、樹脂を増やすもしくはオイルを減量する等してJIS-A硬度を60~90に調整してもよい。このように、本発明の熱可塑性エラストマー組成物のJIS-A硬度は、用途に応じて組成を適宜変更して最適な値に調整して利用することが望ましく、その値は特に制限されるものではないが、0~90であることが好ましく、10~80であることがより好ましい。このようなJIS-A硬度が前記下限未満ではオイルがブリードしやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとゴム弾性が低下する傾向にある。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、例えば、ゴム弾性を活用して種々のゴム用途に使用することができる。またホットメルト接着剤として、またはこれに含ませる添加剤として使用すると、耐熱性およびリサイクル性を向上させることができるので好ましい。本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、自動車用ゴム部品、ホース、ベルト、シート、防振ゴム、ローラー、ライニング、ゴム引布、シール材、手袋、防舷材、医療用ゴム(シリンジガスケット、チューブ、カテーテル)、ガスケット(家電用、建築用)、アスファルト改質剤、ホットメルト接着剤、ブーツ類、グリップ類、玩具、靴、サンダル、キーパッド、ギア、ペットボトルキャプライナー等の用途に好適に用いられる。
上記自動車用ゴム部品としては、具体的には、例えば、タイヤのトレッド、カーカス、サイドウォール、インナーライナー、アンダートレッド、ベルト部などのタイヤ各部;外装のラジエータグリル、サイドモール、ガーニッシュ(ピラー、リア、カウルトップ)、エアロパーツ(エアダム、スポイラー)、ホイールカバー、ウェザーストリップ、カウベルトグリル、エアアウトレット・ルーバー、エアスクープ、フードバルジ、換気口部品、防触対策部品(オーバーフェンダー、サイドシールパネル、モール(ウインドー、フード、ドアベルト))、マーク類;ドア、ライト、ワイパーのウェザーストリップ、グラスラン、グラスランチャンネルなどの内装窓枠用部品;エアダクトホース、ラジエターホース、ブレーキホース;クランクシャフトシール、バルブステムシール、ヘッドカバーガスケット、A/Tオイルクーラーホース、ミッションオイルシール、P/Sホース、P/Sオイルシールなどの潤滑油系部品;燃料ホース、エミッションコントロールホース、インレットフィラーホース、ダイヤフラム類などの燃料系部品;エンジンマウント、インタンクポンプマウントなどの防振用部品;CVJブーツ、ラック&ピニオンブーツ等のブーツ類;A/Cホース、A/Cシール等のエアコンデショニング用部品;タイミングベルト、補機用ベルトなどのベルト部品;ウィンドシールドシーラー、ビニルプラスチゾルシーラー、嫌気性シーラー、ボディシーラー、スポットウェルドシーラーなどのシーラー類;等が挙げられる。
またゴムの改質剤として、例えば、流れ防止剤として、室温でコールドフローを起こす樹脂あるいはゴムに含ませると、押出し時の流れやコールドフローを防止することができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、より高度な耐熱性を有するものとすることが可能であるとともに、破断強度を基準とした引張特性をより高度なものとすることができる。なお、このような熱可塑性エラストマー組成物においては、組成を適宜変更することで、用途に応じて必要となる特性(例えば、自己修復性等の特性)も適宜発揮させることが可能である。このように、組成を適宜変更することで熱可塑性エラストマー組成物の用途に応じて、必要となる特性をバランスよく適宜発揮させることが可能であるため、上述のような各種用途に用いる場合には、その用途に応じて必要となる特性を考慮して、組成物中の成分の種類(組成)を適宜変更して利用することが好ましい。
以上、本発明の熱可塑性エラストマー組成物について説明したが、以下において、そのような本発明の熱可塑性エラストマー組成物を製造するための方法としても好適に利用することが可能な本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法について説明する。
[熱可塑性エラストマー組成物の製造方法]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法は、環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーと、クレイと、化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂とを混合して混合物を得る第一工程と、
前記混合物に、前記環状酸無水物基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物(I)、並びに、前記化合物(I)及び前記環状酸無水物基と反応して共有結合性架橋部位を形成する化合物(II)の混合原料のうちの少なくとも1種の原料化合物を添加し、前記ポリマーと前記原料化合物とを反応させることにより、熱可塑性エラストマー組成物を得る第二工程と、
を含み、
前記第二工程において得られる前記熱可塑性エラストマー組成物が、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a)を有しかつガラス転移点が25℃以下であるエラストマー性ポリマー(A)、並びに、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有されておりかつガラス転移点が25℃以下であるエラストマー性ポリマー(B)からなる群から選択される少なくとも1種のエラストマー成分と、
前記エラストマー成分100質量部に対して20質量部以下の含有比率の前記クレイと、
前記α-オレフィン系樹脂と、
を含有してなる組成物であり、
前記第一工程において、前記熱可塑性エラストマー組成物中の前記クレイの含有量が前記エラストマー成分100質量部に対して20質量部以下となるような割合で前記クレイを用いて、前記環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーと、前記クレイと、前記α-オレフィン系樹脂とを混合する、方法である。以下、第一工程と第二工程とを分けて説明する。
(第一工程)
第一工程は、環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーと、クレイと、化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂とを混合して混合物を得る工程である。
ここで、「環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー」とは、ポリマーの主鎖を形成する原子に環状酸無水物基が化学的に安定な結合(共有結合)をしているエラストマー性ポリマーのことをいい、例えば、前記エラストマー性ポリマー(A)~(B)の主鎖部分を形成することが可能なポリマーと、環状酸無水物基を導入し得る化合物とを反応させることにより得られるものを好適に利用することができる。
なお、このような主鎖部分を形成することが可能なポリマーとしては、一般的に公知の天然高分子または合成高分子であって、そのガラス転移点が室温(25℃)以下のポリマーからなるものであればよく(いわゆるエラストマーからなるものであればよく)、特に限定されるものではない。
このようなエラストマー性ポリマー(A)~(B)の主鎖部分を形成することが可能なポリマーとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2-ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)などのジエン系ゴムおよびこれらの水素添加物;エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-アクリルゴム(AEM)、エチレン-ブテンゴム(EBM)、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、ポリエチレンゴム、ポリプロピレンゴムなどのオレフィン系ゴム;エピクロロヒドリンゴム;多硫化ゴム;シリコーンゴム;ウレタンゴム;等が挙げられる。
また、このようなエラストマー性ポリマー(A)~(B)の主鎖部分を形成することが可能なポリマーとしては、樹脂成分を含むエラストマー性のポリマーであってもよく、例えば、水添されていてもよいポリスチレン系エラストマー性ポリマー(例えば、SBS、SIS、SEBS等)、ポリオレフィン系エラストマー性ポリマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー性ポリマー、ポリウレタン系エラストマー性ポリマー、ポリエステル系エラストマー性ポリマー、ポリアミド系エラストマー性ポリマー等が挙げられる。
さらに、このようなエラストマー性ポリマー(A)~(B)の主鎖部分を形成することが可能なポリマーとしては、ジエン系ゴム、ジエン系ゴムの水素添加物、オレフィン系ゴム、水添されていてもよいポリスチレン系エラストマー性ポリマー、ポリオレフィン系エラストマー性ポリマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー性ポリマー、ポリウレタン系エラストマー性ポリマー、ポリエステル系エラストマー性ポリマー、及び、ポリアミド系エラストマー性ポリマーの中から選択される少なくとも1種からなることが好ましい。また、このようなポリマーとしては、環状酸無水物基として好適な無水マレイン酸基の導入のし易さといった観点からは、ジエン系ゴムが好ましく、耐老化性の観点からは、オレフィン系ゴムが好ましい。
また、前記環状酸無水物基を導入し得る化合物としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸およびこれらの誘導体等の環状酸無水物が挙げられる。
また、第一工程に用いられる環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーの前記環状酸無水物基としては、無水コハク酸基、無水マレイン酸基、無水グルタル酸基、無水フタル酸基が好ましく、中でも、原料の反応性が高く、しかも工業的に原料の入手が容易であるといった観点からは、無水マレイン酸基がより好ましい。
さらに、第一工程に用いられる環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーは、通常行われる方法、例えば、エラストマー性ポリマー(A)~(B)の主鎖部分を形成することが可能なポリマーに、通常行われる条件、例えば、加熱下での撹拌等により環状酸無水物をグラフト重合させる方法で製造してもよい。また、第一工程に用いられる環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーとしては、市販品を用いてもよい。
このような環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーの市販品としては、例えば、LIR-403(クラレ社製)、LIR-410A(クラレ社試作品)などの無水マレイン酸変性イソプレンゴム;LIR-410(クラレ社製)などの変性イソプレンゴム;クライナック110、221、231(ポリサー社製)などのカルボキシ変性ニトリルゴム;CPIB(日石化学社製)、HRPIB(日石化学社ラボ試作品)などのカルボキシ変性ポリブテン;ニュクレル(三井デュポンポリケミカル社製)、ユカロン(三菱化学社製)、タフマーM(例えば、MP0610(三井化学社製)、MP0620(三井化学社製))などの無水マレイン酸変性エチレン-プロピレンゴム;タフマーM(例えば、MA8510、MH7010、MH7020(三井化学社製)、MH5010、MH5020(三井化学社製)、MH5040(三井化学社製))などの無水マレイン酸変性エチレン-ブテンゴム;アドテックスシリーズ(無水マレイン酸変性EVA、無水マレイン酸変性EMA(日本ポリオレフィン社製))、HPRシリーズ(無水マレイン酸変性EEA、無水マレイン酸変性EVA(三井・ジュポンポリオレフィン社製))、ボンドファストシリーズ(無水マレイン酸変性EMA(住友化学社製))、デュミランシリーズ(無水マレイン酸変性EVOH(武田薬品工業社製))、ボンダイン(エチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸三元共重合体(アトフィナ社製))、タフテック(無水マレイン酸変性SEBS、M1943(旭化成社製))、クレイトン(無水マレイン酸変性SEBS、FG1901,FG1924(クレイトンポリマー社製))、タフプレン(無水マレイン酸変性SBS、912(旭化成社製))、セプトン(無水マレイン酸変性SEPS(クラレ社製))、レクスパール(無水マレイン酸変性EVA、ET-182G、224M、234M(日本ポリオレフィン社製))、アウローレン(無水マレイン酸変性EVA、200S、250S(日本製紙ケミカル社製))などの無水マレイン酸変性ポリエチレン;アドマー(例えば、QB550、LF128(三井化学社製))などの無水マレイン酸変性ポリプロピレン;等が挙げられる。
また、前記環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーとしては、無水マレイン酸変性エラストマー性ポリマーが好ましく、高分子量で高強度であるといった観点から、無水マレイン酸変性エチレン-プロピレンゴム、無水マレイン酸変性エチレン-ブテンゴムがより好ましい。
さらに、第一工程に用いられる前記クレイは、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物において説明したクレイと同様のものである(その好適なものも同様である)。また、第一工程に用いられる前記化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂は、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物において説明した化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂と同様のものである(その好適なものも同様である)。
また、第一工程においては、環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーと、クレイと、化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂とを混合して混合物を得る。このような混合物の調製工程においては、環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーと、クレイと、前記α-オレフィン系樹脂の添加順序は特に制限されるものではないが、クレイの分散性をより向上させるといった観点から、前記α-オレフィン系樹脂と環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーとを含む混合物の前駆体を調製した後、該前駆体中にクレイを添加することが好ましい。
また、前記混合物を得るためにクレイを添加する際には、クレイが十分に分散するように、予め環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーを可塑化した後に、クレイを添加することが好ましく、前記混合物前駆体を可塑化して、そこにクレイを添加することがより好ましい。
このように、環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーや前記混合物前駆体を可塑化する方法としては特に制限されず、例えば、これらを可塑化することが可能となるような温度(例えば100~250℃程度)でロール、ニーダー、押出し機、万能攪拌機等を用いて素練りする方法等を適宜採用できる。このような環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーや前記混合物前駆体の可塑化を行う際の温度等の条件は特に制限されず、含有している成分の種類(例えば環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーの種類)等に応じて適宜設定すればよい。
また、このような混合物の調製工程においては、最終的に得られる熱可塑性エラストマー組成物中のクレイの含有量が前記エラストマー成分100質量部に対して20質量部以下(より好ましくは0.1~10質量部、更に好ましくは0.5~5質量部、特に好ましくは1~3質量部)となるような割合で前記クレイを用いて、前記環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーと前記クレイと前記化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂とを混合することが好ましい。このようなクレイの含有量が前記上限を超えると架橋が強すぎて、却って伸びや強度が低下する傾向にあり、他方、前記下限未満では、クレイの量が少なすぎて、クレイを用いることにより得られる効果が低下してしまう傾向にある。
また、このような混合物中のクレイの含有量としては、環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー100質量部に対して20質量部以下であることが好ましく、0.5~5質量部であることがより好ましく、1~3質量部であることが更に好ましい。このような含有量が前記下限未満では、クレイの量が少なすぎて、クレイを用いることにより得られる効果が低下してしまう傾向にあり、他方、前記上限を超えると、架橋が強すぎて、却って伸びや強度が低下する傾向にある。なお、このような含有量でクレイを用いることで、最終的に得られる熱可塑性エラストマー組成物中のクレイの含有量が前記範囲内の値となる。
更に、このような混合物の形成の際に用いるクレイの量としては、前記環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー中の環状酸無水物基1mmolに対して、クレイが0.01g~2.0g(より好ましくは0.02~1.0g)となるような割合で含有することが好ましい。このような酸無水物基に対するクレイの割合が前記下限未満では少なすぎて効果が低下してしまう傾向にあり、他方、前記上限を超えると架橋が強すぎて、却って伸びや強度が低下する傾向にある。なお、このような割合の範囲内でクレイを含有させることで、混合物中に含有せしめたクレイが効率よく分解されて、単層のクレイを効率よく製造することができ、クレイの分散性をより高度のものとすることができる傾向にある。
また、このような混合物の調製工程においては、最終的に得られる熱可塑性エラストマー組成物中の前記α-オレフィン系樹脂(化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂)の含有量が前記エラストマー成分100質量部に対して250質量部以下(より好ましくは5~250質量部、更に好ましくは10~225質量部、特に好ましくは25~200質量部、最も好ましくは35~175質量部)となるような割合で前記α-オレフィン系樹脂を用いて、前記環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーと前記クレイと前記α-オレフィン系樹脂とを混合することが好ましい。このようなα-オレフィン系樹脂の含有量が前記上限を超えると機械特性(破断強度、圧縮永久歪)が低下する傾向にあり、他方、前記下限未満では、流動性が低下する傾向にある。
また、このような混合物中の前記α-オレフィン系樹脂の含有量としては、環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー100質量部に対して250質量部以下(より好ましくは5~250質量部、更に好ましくは10~225質量部、特に好ましくは25~200質量部、最も好ましくは35~175質量部)とすることが好ましい。このような含有量が前記下限未満では、機械特性(破断強度、圧縮永久歪)が低下する傾向にあり、他方、前記下限未満では、流動性が低下する傾向にある。
また、このような混合物を得るための混合の方法は特に制限されず、公知の方法等を適宜採用することができ、例えば、ロール、ニーダー、押出し機、万能攪拌機等により混合する方法を採用することができる。
なお、このような混合物には、更に、流動性、機械強度の増加の観点から、パラフィンオイル及び/又は化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体を更に含有させてもよい。このようなパラフィンオイル及び化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体は、それぞれ、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物において説明したパラフィンオイル及び化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体と同様のものである(それぞれ、その好適なものも同様である)。
また、このように、パラフィンオイル及び/又は化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体を更に含有させる場合において、環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーと、クレイと、前記α-オレフィン系樹脂、パラフィンオイル及び/又は化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体の添加順序は特に制限されるものではないが、クレイの分散性をより向上させるといった観点から、前記α-オレフィン系樹脂と、環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーと、前記パラフィンオイル及び/又は前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体とを含む混合物の前駆体を調製した後、該前駆体中にクレイを添加することが好ましい。
また、前記パラフィンオイルを前記混合物中に含有させる場合、パラフィンオイル含有量は、前記エラストマー成分100質量部に対して1500質量部以下であることが好ましく、この場合、前記エラストマー成分100質量部に対して10~1500質量部であることが好ましく、10~1400質量部であることがより好ましく、50~1200質量部であることが更に好ましく、75~1100質量部であることが特に好ましく、100~1000質量部であることが最も好ましい。また、前記パラフィンオイルの含有量としては、前記エラストマー成分100質量部に対して600質量部以下であることがより好ましく、この場合、10~600質量部であることがより好ましく、50~550質量部であることが更に好ましく、75~500質量部であることが特に好ましく、100~400質量部であることが最も好ましい。このようなパラフィンオイルの含有量が前記下限未満では、パラフィンオイルの含有量が少なすぎて、パラフィンオイルを添加することにより得られる効果(特に最終的に得られる熱可塑性エラストマー組成物の流動性及び加工性を向上せしめる効果)が必ずしも十分なものではなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、最終的に得られる熱可塑性エラストマー組成物においてパラフィンオイルのブリードが誘発されやすくなる傾向にある。また、前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体を前記混合物中に含有させる場合、前記エラストマー成分100質量部に対して400質量部以下であることが好ましく、10~400質量部であることがより好ましく、15~350質量部であることが更に好ましく、20~300質量部であることが特に好ましく、30~250質量部であることが最も好ましい。
また、最終的に得られる熱可塑性エラストマー組成物の用途等に応じ、前記混合物に対して、本発明の目的を損わない範囲で、前記エラストマー成分、前記α-オレフィン系樹脂および前記スチレンブロック共重合体以外のポリマー、補強剤(充填剤)、アミノ基を導入してなる充填剤(以下、単に「アミノ基導入充填剤」という。)、該アミノ基導入充填剤以外のアミノ基含有化合物、金属元素を含む化合物(以下、単に「金属塩」という。)、無水マレイン酸変性ポリマー、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、溶剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、防錆剤、接着付与剤、帯電防止剤、フィラーなどの各種添加剤等の他の成分を更に含有することができる。このように、前記混合物に対して他の成分を含有せしめることにより、最終的に得られる熱可塑性エラストマー組成物中に、かかる成分を適宜含有せしめることが可能となる。なお、このような添加剤等は、特に制限されず、一般に用いられるものを適宜使用することができる。また、このような添加剤等としては、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物において説明したものを適宜利用できる。
また、このような他の成分の含有量は、前記他の成分がポリマー類、補強材(充填剤)の場合は、前記エラストマー成分100質量部に対して500質量部以下とすることが好ましく、20~400質量部とすることがより好ましい。このような他の成分の含有量が前記下限未満では他の成分を利用することによる効果が十分に発現しなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、利用する成分の種類にもよるが、基質のエラストマーの効果が薄まって、物性が低下してしまう傾向にある。
また、他の成分が、その他の添加剤の場合(ポリマー類、補強材(充填剤)以外のものである場合)は、前記他の成分の含有量は前記エラストマー成分100質量部に対して20質量部以下とすることが好ましく、0.1~10質量部とすることがより好ましい。このような他の成分の含有量が前記下限未満では他の成分を利用することによる効果が十分に発現しなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、基質のエラストマーの反応に悪影響を及ぼし、却って物性が低下してしまう傾向にある。
(第二工程)
第二工程は、前記混合物に、前記環状酸無水物基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物(I)、並びに、前記化合物(I)及び前記環状酸無水物基と反応して共有結合性架橋部位を形成する化合物(II)の混合原料のうちの少なくとも1種の原料化合物を添加し、前記ポリマーと前記原料化合物とを反応させることにより、熱可塑性エラストマー組成物を得る工程である。
前記環状酸無水物基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物(I)としては、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物において説明した水素結合性架橋部位を形成する化合物(含窒素複素環を導入し得る化合物)と同様のものを好適に利用することができ、例えば、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物において説明した含窒素複素環そのものであってもよく、あるいは、前記含窒素複素環に無水マレイン酸等の環状酸無水物基と反応する置換基(例えば、水酸基、チオール基、アミノ基等)が結合した化合物(前記置換基を有する含窒素複素環)であってもよい。なお、このような化合物(I)としては、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物(水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を同時に導入することが可能な化合物)を利用してもよい(なお、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を有する側鎖は、水素結合性架橋部位を有する側鎖の好適な一形態といえる。)。
また、このような化合物(I)としては、特に制限されず、目的とするポリマー中の側鎖の種類(側鎖(a)又は側鎖(a’))に応じて、上述のような化合物(I)の中から好適な化合物を適宜選択して用いることができる。このような化合物(I)としては、より高い反応性が得られるといった観点からは、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよい、トリアゾール、ピリジン、チアジアゾール、イミダゾール、イソシアヌレート、トリアジンおよびヒダントインであることが好ましく、前記置換基を有している、トリアゾール、ピリジン、チアジアゾール、イミダゾール、イソシアヌレート、トリアジンおよびヒダントインであることがより好ましく、前記置換基を有しているトリアゾール、イソシアヌレート、トリアジンであることが更に好ましく、前記置換基を有しているトリアゾールが特に好ましい。なお、このような置換基を有していてもよいトリアゾール、ピリジン、チアジアゾール、イミダゾールおよびヒダントインとしては、例えば、4H-3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、アミノピリジン、アミノイミダゾール、アミノトリアジン、アミノイソシアヌレート、ヒドロキシピリジン、ヒドロキシエチルイソシアヌレート等が挙げられる。
また、前記環状酸無水物基と反応して共有結合性架橋部位を形成する化合物(II)としては、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物において説明した「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」と同様のものを好適に利用することができる(その化合物として好適なものも同様である。)。また、このような化合物(II)としては、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物(水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を同時に導入することが可能な化合物)を利用してもよい(なお、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を有する側鎖は、共有結合性架橋部位を有する側鎖の好適な一形態といえる。)。
このような化合物(II)としては、耐圧縮永久歪性の観点から、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、スルファミド、ポリエーテルポリオールが好ましく、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、スルファミドがより好ましく、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートが更に好ましい。
また、前記化合物(I)及び/又は(II)としては、水素結合性架橋部位を導入する観点から、水酸基、チオール基、アミノ基及びイミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有する化合物を利用することが好ましい。さらに、前記化合物(I)及び/又は(II)としては、より効率よく組成物中に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を導入することが可能となることから、前記環状酸無水物基と反応して、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物(水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を同時に導入することが可能な化合物)を利用することが好ましい。このような水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物としては、前記複素環含有ポリオール、前記複素環含有ポリアミン、前記複素環含有ポリチオールを好適に利用することができ、中でも、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートが特に好ましい。
また、前記原料化合物(化合物(I)及び/又は(II))としては、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいトリアゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいピリジン、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいチアジアゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいイミダゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいイソシアヌレート、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいトリアジン、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいヒダントイン、水酸基、チオール基及びアミノ基の中から選択される少なくとも1種の置換基を2つ以上有する炭化水素化合物、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、スルファミド、並びに、ポリエーテルポリオールのうちの少なくとも1種の化合物が好ましい。また、このような水酸基、チオール基及びアミノ基の中から選択される少なくとも1種の置換基を2つ以上有する炭化水素化合物としては、ペンタエリスリトール、エタンジチオール、エタンジアミンが好ましく、ペンタエリスリトールがより好ましい。
また、化合物(I)及び化合物(II)の添加量(これらの総量:一方の化合物のみを利用する場合には、その一方の化合物の量となる。)は、特に制限されないが、該化合物中にアミン、アルコール等の活性水素が含まれる場合においては、環状酸無水物基100モル%に対して、該化合物中のアミン、アルコール等の活性水素が20~250モル%となる量であることが好ましく、50~150モル%となる量であることがより好ましく、80~120モル%となる量であることが更に好ましい。このような添加量が前記下限未満では、導入される側鎖の量が少なくなって、架橋密度を十分に高度なものとすることが困難となり、引張強度等の物性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、用いる化合物の量が多すぎて、ブランチが多くなり、却って架橋密度が下がってしまう傾向にある。
また、化合物(I)及び化合物(II)の添加量は、これらの総量が(一方の化合物のみを利用する場合には、その一方の化合物の量となる。)、前記混合物中の前記ポリマー(環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー)100質量部に対して0.1~10質量部であることが好ましく、0.3~7質量部であることがより好ましく、0.5~5.0質量部であることが更に好ましい。このような化合物(I)及び化合物(II)の添加量(質量部に基づく量)が前記下限未満では少なすぎて架橋密度が上がらず所望の物性が発現しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると多すぎてブランチが多くなり架橋密度が下がってしまう傾向にある。
化合物(I)及び化合物(II)の双方を利用する場合において、化合物(I)及び化合物(II)を添加する順序は特に制限されず、どちらを先に加えても良い。また、化合物(I)及び化合物(II)の双方を利用する場合において、化合物(I)を、環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーの、環状酸無水物基の一部と反応させてもよい。これにより、未反応の環状酸無水物基(反応させていない環状酸無水物基)に、化合物(II)を反応させて共有結合性架橋部位を形成させることも可能となる。ここにいう一部とは、環状酸無水物基100モル%に対して1モル%以上50モル%以下であることが好ましい。この範囲であれば、得られるエラストマー性ポリマー(B)において、化合物(I)に由来した基(例えば含窒素複素環等)を導入した効果が十分に発現され、リサイクル性がより向上する傾向にある。なお、化合物(II)は、共有結合による架橋が適当な個数(例えば、1分子中に1~3個)となるように前記環状酸無水物基と反応させることが好ましい。
前記ポリマーと前記原料化合物(化合物(I)及び/又は化合物(II))とを反応させると、前記ポリマーが有する環状酸無水物基が開環されて、環状酸無水物基と前記原料化合物(前記化合物(I)及び/又は化合物(II))とが化学結合される。このような前記ポリマーと前記原料化合物(前記化合物(I)及び/又は化合物(II))とを反応(環状酸無水物基を開環)させる際の温度条件は特に制限されず、前記化合物と環状酸無水物基との種類に応じて、これらが反応可能な温度に調整すればよいが、軟化させて反応を瞬時に進める観点からは、100~250℃とすることが好ましく、120~230℃とすることがより好ましい。
このような反応により、前記化合物(I)と環状酸無水物基とが反応した箇所においては、少なくとも水素結合性架橋部位が形成されるため、前記ポリマーの側鎖に水素結合性架橋部位(カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する部位、より好ましくはカルボニル含有基および含窒素複素環を有する部位)を含有させることが可能となる。このような反応により、形成(導入)される側鎖を、上記式(2)または(3)で表される構造を含有するものとすることができる。
また、このような反応により、前記化合物(II)と環状酸無水物基とが反応した箇所においては、少なくとも、共有結合性架橋部位が形成されるため、前記ポリマーの側鎖を共有結合性架橋部を含有するもの(側鎖(b)又は側鎖(c))とすることが可能となる。そして、このような反応により、形成される側鎖を、上記式(7)~(9)で表される構造を含有するものとすることもできる。
なお、このようなポリマー中の側鎖の各基(構造)、すなわち、未反応の環状酸無水物基、上記式(2)、(3)および(7)~(9)で表される構造等は、NMR、IRスペクトル等の通常用いられる分析手段により確認することができる。
このようにして反応させることで、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a)を有しかつガラス転移点が25℃以下であるエラストマー性ポリマー(A)、並びに、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有されておりかつガラス転移点が25℃以下であるエラストマー性ポリマー(B)からなる群から選択される少なくとも1種のエラストマー成分と、
前記エラストマー成分100質量部に対して20質量部以下の含有比率のクレイと、
前記α-オレフィン系樹脂と、
を含有してなる組成物を得ることができる。なお、このようにして得られる熱可塑性エラストマー組成物中のエラストマー性ポリマー(A)、エラストマー性ポリマー(B)は、各ポリマー中の側鎖(a)、側鎖(a’)、側鎖(b)、側鎖(c)がそれぞれ環状酸無水物基との反応に由来するもの(例えば、上記式(2)、(3)および(7)~(9)で表される構造を含有する側鎖等)となる以外は、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物において説明したエラストマー性ポリマー(A)、エラストマー性ポリマー(B)と同様のものである。
なお、本発明においては、環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーが無水マレイン酸変性エラストマー性ポリマーであり、かつ、
前記エラストマー成分が、無水マレイン酸変性エラストマー性ポリマーと、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいトリアゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいピリジン、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいチアジアゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいイミダゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいイソシアヌレート、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいトリアジン、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいヒダントイン、水酸基、チオール基及びアミノ基の中から選択される少なくとも1種の置換基を2つ以上有する炭化水素化合物、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、スルファミド、並びに、ポリエーテルポリオールのうちの少なくとも1種の化合物との反応物であること、
が好ましい。
なお、本発明によれば、十分に高度な耐熱性及び破断強度を有することが可能な熱可塑性エラストマー組成物を効率よく製造することが可能となる。本発明により、このような効果が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは、以下のように推察する。すなわち、先ず、本発明においては、熱可塑性エラストマー組成物が、前記環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(以下、場合により「酸無水物含有ポリマー」と称する。)を変性して製造される。このようにして、クレイと酸無水物ポリマーとを混合して予め酸無水物ポリマー中にクレイを分散させることにより、酸無水物基とクレイとが相互作用して、クレイの層間が剥離され易くなる。特にクレイが、本発明において好適に用いられる有機化されたクレイ(有機化クレイ)の場合には、層間に存在するアンモニウム塩等の有機物が、酸無水物とより効率よく相互作用するため、より層が剥離され易い傾向にある。そして、クレイが分散した後に、前記原料化合物(架橋を形成する架橋剤として機能する。以下、場合により、「架橋剤」と称する。)を入れることにより、架橋剤と酸無水物基とが反応して、少なくとも、水素結合性架橋部位(例えばカルボン酸基等)が系中で発生する。そのため、クレイとの間で、水素結合による相互作用が引き起こされ、さらにクレイがエラストマー中に分散される。従って、本発明により得られる熱可塑性エラストマー組成物は、クレイが十分に分散されたものとなり、また、かかるクレイと水素結合性架橋部位とが相互作用して均一に面架橋部位が形成されることから、十分な耐熱性が得られるものと本発明者らは推察する。また、本発明においては、得られる熱可塑性エラストマー組成物中に、前記クレイと前記エラストマー成分とともに前記α-オレフィン系樹脂が含有されている。このようなα-オレフィン系樹脂は、結晶性の高い物質であるため、加熱により結晶構造が変化することに由来して、高い流動性を示すことができるものと本発明者らは推察する。そのため、本発明においては、得られる熱可塑性エラストマー組成物が、十分に高度な耐熱性及び破断強度を有するとともに、ゴム製品として十分に利用可能な耐圧縮永久歪性や硬度を有し、更には、加熱時の流動性を付与することも可能となるものと本発明者らは推察する。
また、このようにして、本発明により得られる熱可塑性エラストマー組成物においては、組成物中において、単層のクレイを含有するものとすることができる。また、このようにして得られる熱可塑性エラストマー組成物においては、前記熱可塑性エラストマー組成物の表面上の任意の3点以上の5.63μm2の大きさの測定点を透過型電子顕微鏡(TEM)により測定した場合において、全測定点において、個数を基準として、全クレイのうちの50%以上(より好ましくは70%以上、更に好ましくは80~100%、特に好ましくは85~100%)が単層のクレイとして存在するものとすることも可能である。このような単層のクレイの存在率が前記下限未満では破断伸び、破断強度が低下する傾向にある。
なお、本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法においては、より効率よく、熱可塑性エラストマー組成物中の単層の形態のクレイ(単層のクレイ)の存在割合を上記好適な割合とすることが可能である。この点に関しては、上述の第一工程において、クレイが環状酸無水物基とが相互作用して、より効率よく、多層構造のクレイの層間を剥離することが可能となり、クレイを単層の状態で分散(微分散)させることが可能となるため、より高い割合で、単層の形態のクレイ(単層のクレイ)が組成物中に存在することとなって、上記好適な割合で単層のクレイを含有させることが可能となるものと本発明者らは推察する。なお、このような単層状の形態のクレイの存在は、得られた組成物の表面を透過型電子顕微鏡(TEM)により測定することにより確認できる。
また、本発明により、例えば、エラストマー性ポリマー(A)をエラストマー成分とする熱可塑性エラストマー組成物と、エラストマー性ポリマー(B)をエラストマー成分とする熱可塑性エラストマー組成物とをそれぞれ別々に製造した後、これを混合して、エラストマー成分としてエラストマー性ポリマー(A)及び(B)を含有する熱可塑性エラストマー組成物としてもよい。また、エラストマー成分としてエラストマー性ポリマー(A)及び(B)を組み合わせて含有する熱可塑性エラストマー組成物を製造する場合には、エラストマー性ポリマー(A)とエラストマー性ポリマー(B)の比率を適宜変更して、組成物中に存在する水素結合性架橋部位と共有結合性架橋部位の比率等を適宜変更することで、所望の特性を発揮させることも可能である。
このようにして得られる熱可塑性エラストマー組成物は、例えば、そのゴム弾性を活用して種々のゴム用途に好適に使用することができ、例えば、ホットメルト接着剤又はこれに含ませる添加剤、自動車用ゴム部品、ホース、ベルト、シート、防振ゴム、ローラー、ライニング、ゴム引布、シール材、手袋、防舷材、医療用ゴム(シリンジガスケット、チューブ、カテーテル)、ガスケット(家電用、建築用)、アスファルト改質剤、ホットメルト接着剤、ブーツ類、グリップ類、玩具、靴、サンダル、キーパッド、ギア、ペットボトルキャプライナー等の用途に好適に用いることができる。
このように、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、例えば、電気・電子、家電、化学、医薬品、ガラス、土石、鉄鋼、非鉄金属、機械、精密機器、化粧品、繊維、鉱業、パルプ、紙、建築・土木・建設、食料・飲料、一般消費財・サービス、運送用機器、建機、電気機器、設備(産業、空調、給湯、エネファーム)、金属、メディア、情報、通信機器、照明、ディスプレイ、農業、漁業、林業、水産業、アグリビジネス、バイオテクノロジー、ナノテクノロジー、等の分野において利用する各種ゴム部品を製造するための材料等として有用である。
以上、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を製造するために好適に利用することが可能な方法の一つとして、上記第一工程及び上記第二工程を含む本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法について説明したが、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を製造するために好適に利用することが可能な方法は、これに限定されない。例えば、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法は、前記エラストマー成分が上記反応物(I)である場合等に好適に利用できるが、例えば、前記エラストマー成分を反応物(II)をエラストマー成分とする熱可塑性エラストマー組成物を製造する場合、上記第一工程に用いる環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーの代わりに水酸基含有エラストマー性ポリマーを用い、かつ、上記第二工程に用いる原料化合物の代わりにカルボキシ基及びアルコキシシリル基の中から選択される少なくとも1種の置換基を2つ以上有する化合物を用いる以外は、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法と同様の方法を採用してもよい。このように、目的とするエラストマー成分の種類に応じて、第一工程に用いるエラストマー性ポリマーの種類と、原料化合物の種類を適宜変更する以外は上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法と同様の方法を採用することにより、例えば、上記反応物(II)~(VI)をエラストマー成分とする熱可塑性エラストマー組成物を適宜製造することが可能である。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
先ず、各実施例及び各比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価方法について説明する。
<メルトフローレート(MFR)>
各実施例及び各比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物をそれぞれ用いて、JIS K6922-2(2010年発行)に記載のB法に準拠してメルトフローレート(MFR、単位:g/10分)を測定した。すなわち、各実施例及び各比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物をそれぞれ用い、メルトフローレート測定装置として東洋精機製作所製の商品名「Melt Indexer G-01」を用いて、該装置の炉体内に熱可塑性エラストマー組成物を3g添加した後、温度を230℃にして5分間保持した後、230℃に維持しつつ10kgに荷重する条件(なお、実施例47及び実施例51~54並びに比較例17及び比較例21~24については荷重条件を5Kgに変更し、実施例48~50並びに比較例18~20については荷重条件を2.16Kgに変更した。)で、前記炉体の下部に接続されている直径1mm、長さ8mmの筒状のオリフィス部材の開口部(直径1mmの開口部)から、10分の間に流出するエラストマーの質量(g)を測定(前記炉体内において温度を230℃にして5分間保持した後に荷重を開始してから、流出するエラストマーの質量の測定を開始する。)することにより求めた。
また、各実施例及び各比較例で用いたα-オレフィン系樹脂(PP,PE、EBM)のメルトフローレート(MFR、単位:g/10分)を、温度を230℃から190℃に変更するとともに、荷重を10kgから2.16kgに変更する以外は、上記熱可塑性エラストマー組成物のメルトフローレート(MFR、単位:g/10分)の測定方法と同様の方法を採用して測定した。
<圧縮永久歪(C-Set)>
各実施例及び各比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物をそれぞれ用い、先ず、該熱可塑性エラストマー組成物を200℃で10分間熱プレスし、厚みが約2mmとなるようにシートを調製した。このようにして得られたシートを直径29mmの円盤状に打ち抜いて7枚重ね合わせ、高さ(厚み)が12.5±0.5mmになるようにサンプルを調製した。このようにして得られたサンプルを用い、専用治具で25%圧縮し、70℃で22時間放置した後の圧縮永久歪(単位:%)をJIS K6262(2013年発行)に準拠して測定した。なお、圧縮装置としてはダンベル社製の商品名「加硫ゴム圧縮永久歪試験器 SCM-1008L」を用いた。
<5%重量減少温度>
各実施例及び各比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物をそれぞれ用い、測定装置として熱重量測定装置(TGA)を用い、昇温速度10℃/minで測定し、初期の重量から5%重量が減少した温度(単位:℃)を測定した。なお、測定試料は約10mgを使用した。
<引張特性>
各実施例及び各比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物をそれぞれ用い、先ず、該熱可塑性エラストマー組成物を200℃で10分間熱プレスし、2mm厚のシートを調製した。このようにして得られたシートから3号ダンベル状の試験片を打ち抜き、引張速度500mm/分での引張試験をJIS K6251(2010年発行)に準拠して行い、破断強度(TB)[単位:MPa]、および、破断伸び(EB)[単位:%]を室温(25℃)にて測定した。
<JIS-A硬度>
各実施例及び各比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物をそれぞれ用い、先ず、該熱可塑性エラストマー組成物を200℃で10分間熱プレスし、厚みが約2mmとなるようにシートを調製した。次に、このようにして得られたシートを直径29mmの円盤状に打ち抜いて、7枚重ね合わせ、高さ(厚み)が12.5±0.5mmになるようにサンプルを調製した。このようにして得られたサンプルを用い、JIS K6253(2012年発行)に準拠して、JIS-A硬度を測定した。
(実施例1)
先ず、スチレンブロック共重合体(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS):クレイトン社製の商品名「G1633」、分子量:40万~50万、スチレン含有量:30質量%)50gを加圧ニーダーに投入して、200℃の条件で練りながら、前記加圧ニーダー中にパラフィンオイル(JX日鉱日石エネルギー社製の商品名「スーパーオイルMシリーズ P500S」、動粘度:472mm2/s、Cp値:68.7%、アニリン点:123℃)100gを滴下し、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体とパラフィンオイルとを1分間混合した。次いで、前記加圧ニーダー中に、無水マレイン酸変性エチレン-ブテン共重合体(マレイン化EBM:三井化学社製の商品名「タフマーMH5040」、結晶化度:4%)100g、α-オレフィン系樹脂であるポリプロピレン(PP:サンアロマー社製の商品名「PWH00N」、結晶化度:62%、MFR:500g/10分(2.16kg、190℃)、重量平均分子量(Mw):200000)100gおよび老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO-50」)0.3gを更に投入し、温度を200℃として2分間素練りして第一の混合物(PPとマレイン化EBMとを含む混合物)を得た。なお、かかる素練り工程により、前記第一の混合物は可塑化された。次に、前記加圧ニーダー中の前記第一の混合物に対して、有機化クレイ(クニミネ工業社製の商品名「クニフィルD-36」)2gを更に加えて、200℃で4分間混練して第二の混合物を得た。
次に、前記加圧ニーダー中の前記第二の混合物にトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート(日星産業社製の商品名「タナック」)を2.62g加え、200℃で8分間混合し、熱可塑性エラストマー組成物を調製した。得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果等を表1に示す。
なお、このような組成物においては、用いた原料化合物の赤外分光分析の結果から、無水マレイン酸変性エチレン-ブテン共重合体中の無水マレイン酸基とトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートとが反応して、下記式(26)で表される構造を含有する側鎖(以下、場合により単に「側鎖(i)」と称する。)、下記式(27)で表される構造を含有する側鎖(以下、場合により単に「側鎖(ii)」と称する。)、及び、下記式(28)で表される構造を含有する側鎖(以下、場合により単に「側鎖(iii)」と称する。)のうちの、前記側鎖(iii)を主として有するエラストマー性ポリマーが形成されたことが分かる(なお、このような側鎖(i)~(iii)に関して、用いた原料から化学量論的に考慮すれば、主として側鎖(iii)が形成されていることが明らかであるが、ポリマーの側鎖の位置等によっては、側鎖(i)及び/又は側鎖(ii)が形成され得る。以下、用いた原料に基づいて、反応により形成される側鎖の種類が主として側鎖(iii)となると考えられるエラストマー性ポリマーについては、場合により、単に「側鎖(iii)を主として有するエラストマー性ポリマー」と称する。)。また、このようなエラストマー性ポリマーは、主鎖がエチレンとブテンからなっているため、ガラス転移点は25℃以下のものであることが分かった。
[式(26)~(28)中、α及びβで示される炭素は、それらの炭素の位置(α位又はβ位)のいずれかにおいてエラストマー性ポリマーの主鎖に結合していることを示す。]
(実施例2~4)
α-オレフィン系樹脂の種類を変更し、ポリプロピレン(PP)の代わりに後述のα-オレフィン系樹脂をそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にして熱可塑性エラストマー組成物を得た。なお、このような製造方法の記載からも明らかなように、実施例1~4で得られた熱可塑性エラストマー組成物は、α-オレフィン系樹脂の種類が異なる以外は組成が同一のものである。このようにして各実施例において得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果等を表1に示す。
〈実施例2で用いたα-オレフィン系樹脂〉
ポリエチレン(PE:日本ポリエチレン社製の商品名「HJ590N」、結晶化度:74%、MFR:40g/10分(2.16kg、190℃)、Mw:70000)
〈実施例3で用いたα-オレフィン系樹脂〉
ポリエチレン(PE:日本ポリエチレン社製の商品名「UJ790」、結晶化度:74%、MFR:50g/10分(2.16kg、190℃)、Mw:120000)
〈実施例4で用いたα-オレフィン系樹脂〉
エチレン-ブテン共重合体(EBM:三井化学社製の商品名「タフマーDF7350」、結晶化度:10%、MFR:35g/10分(2.16kg、190℃)、Mw:100000)。
(比較例1)
前記第一の混合物に対して有機化クレイ(クニミネ工業社製の商品名「クニフィルD-36」)を添加することなく、前記第一の混合物に対してトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート(日星産業社製の商品名「タナック」)を2.62g加えて、200℃で8分間混合した以外(有機化クレイを用いなかった以外)は、実施例1と同様にして熱可塑性エラストマー組成物を得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果等を表1に示す。
[熱可塑性エラストマー組成物(実施例1~4及び比較例1)の特性評価]
表1に示す結果からも明らかなように、実施例4で得られた熱可塑性エラストマー組成物の組成と、比較例1で得られた熱可塑性エラストマー組成物の組成とは、有機化クレイの有無のみが異なっている。かかる組成の相違点と組成物同士の特性評価の結果とを併せ勘案すると、熱可塑性エラストマー組成物中に有機化クレイを含有する場合(実施例4)には、有機化クレイを用いなかった場合(比較例1)よりも、5%重量減少温度がより高い温度となっていることから、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例4)においては、より高度な耐熱性が得られることが確認された。
また、実施例4で得られた熱可塑性エラストマー組成物と、比較例1で得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果から、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例4)においては、有機化クレイを用いなかった場合(比較例1)よりも、破断強度がより高度な水準のものとなることが確認された。更に、実施例4で得られた熱可塑性エラストマー組成物と、比較例1で得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果から、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例4)においては、流動性(MFR)及び圧縮永久歪に対する耐性もより向上することが確認された。
このように、実施例4で得られた熱可塑性エラストマー組成物と、比較例1で得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果から、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例4)においてはクレイを用いることにより耐熱性、流動性、耐圧縮永久歪性、及び、機械的特性(破断強度)をいずれも、より高度なものとすることができ、これらの特性を十分に高度な水準でバランスよく有する組成物とすることが可能であることが分かった。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例1~4)はいずれも、比較例1で得られた熱可塑性エラストマー組成物と比較して、5%重量減少温度を基準とした耐熱性が向上し、更に、破断強度もより高い値を有するものとなることが確認された。特に、表1に示す結果から、α-オレフィン樹脂の種類を変更することにより、破断強度をより向上させることも可能となることが確認された。また、表1に示す結果から、実施例1~3で得られた熱可塑性エラストマー組成物においても、圧縮永久歪の値や硬度の値はゴム製品として利用するのに十分な水準にあることが分かる。また、表1に示す結果から、実施例1~4で得られた熱可塑性エラストマー組成物はいずれも流動性があることが確認されており、十分な加工性を有するものであることも分かった。
このように、本発明(実施例1~4)によれば、より高度な耐熱性と破断強度とを有するとともに、十分な加工性(流動性)及び耐圧縮永久歪性を有する熱可塑性エラストマー組成物が得られることが確認された。
(実施例5)
先ず、スチレンブロック共重合体(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS):クレイトン社製の商品名「G1633」、分子量:40万~50万、スチレン含有量:30質量%)50gを加圧ニーダーに投入して、200℃の条件で練りながら、前記加圧ニーダー中にパラフィンオイル(JX日鉱日石エネルギー社製の商品名「スーパーオイルMシリーズ P500S」、動粘度:472mm2/s、Cp値:68.7%、アニリン点:123℃)100gを滴下し、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体とパラフィンオイルとを1分間混合した。次いで、前記加圧ニーダー中に、無水マレイン酸変性エチレン-ブテン共重合体(マレイン化EBM:三井化学社製の商品名「タフマーMH5020」、結晶化度:4%)100g、α-オレフィン系樹脂であるエチレン-ブテン共重合体(EBM:三井化学社製の商品名「タフマーDF7350」、結晶化度:10%、MFR:35g/10分(2.16kg、190℃)、Mw:100000)100gおよび老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO-50」)0.3gを更に投入し、温度を200℃として2分間素練りして第一の混合物(EBMとマレイン化EBMとを含む混合物)を得た。なお、かかる素練り工程により、前記第一の混合物は可塑化された。次に、前記加圧ニーダー中の前記第一の混合物に対して、有機化クレイ(クニミネ工業社製の商品名「クニフィルD-36」)2gを更に加えて、200℃で4分間混練して第二の混合物を得た。
次に、前記加圧ニーダー中の前記第二の混合物にトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート(日星産業社製の商品名「タナック」)を1.31g加え、200℃で8分間混合し、熱可塑性エラストマー組成物を調製した。なお、このような組成物においては、用いた原料化合物の赤外分光分析の結果から、無水マレイン酸変性エチレン-ブテン共重合体中の無水マレイン酸基とトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートとが反応して、上記側鎖(iii)を主として有するエラストマー性ポリマー(上記側鎖(i)~(iii)が含まれ得る。)が形成されて含有されていることが分かる。また、このようなエラストマー性ポリマーは、主鎖がエチレンとブテンからなっているため、ガラス転移点は25℃以下のものであることが分かった。得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果等を表2に示す。
(実施例6~8)
α-オレフィン系樹脂(EBM:三井化学社製の商品名「タフマーDF7350」、結晶化度:10%、MFR:35g/10分(2.16kg、190℃)、Mw:100000)の使用量を100gから、それぞれ、75g(実施例6)、50g(実施例7)、25g(実施例8)に変更した以外は、実施例5と同様にして熱可塑性エラストマー組成物を得た。なお、このような製造方法の記載からも明らかなように、実施例5~8で得られた熱可塑性エラストマー組成物は、α-オレフィン系樹脂の含有量が異なる以外は組成が同一のものである。このようにして各実施例において得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果等を表2に示す。
[熱可塑性エラストマー組成物(実施例5~8)の特性評価]
表2に示す結果からも明らかなように、前記エラストマー成分(上記側鎖(iii)を主として有するエラストマー性ポリマー)と、前記α-オレフィン系樹脂(EBM)と、クレイ(有機化クレイ)とを含有する本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例5~8)においては、5%重量減少温度が340℃以上となるような十分に高度な耐熱性を有するものとなることが確認された。また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例5~8)においては、5.1MPa以上の十分に高い水準の破断強度を有するものとなることが確認された。このように、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例5~8)によれば、十分に高度な耐熱性及び破断強度が得られることが確認された。また、表2に示す結果から、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例5~8)によれば、十分に高度な耐熱性及び破断強度が得られるとともに、加熱時の流動性と耐圧縮永久歪性も十分なものとなり、各種特性をバランスよく有する組成物が得られることが分かった。
このように、表2に示す結果を考慮すれば、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例5~8)によれば、耐熱性、流動性、耐圧縮永久歪性、及び、機械的特性(破断強度)をいずれも十分な水準のものとすることができ、これらの特性を十分に高度な水準でバランスよく有するものとすることが可能となることが分かった。
なお、上述のように、実施例5~8で得られた熱可塑性エラストマー組成物においては、α-オレフィン系樹脂であるエチレン-ブテン共重合体(EBM:三井化学社製の商品名「タフマーDF7350」、結晶化度:10%、MFR:35g/10分(2.16kg、190℃)、Mw:100000)の使用量が異なるが、いずれの例においても、耐熱性、流動性、耐圧縮永久歪性、及び、機械的特性(破断強度)の特性を十分に高度な水準でバランスよく有するものとなっていた。そして、このような実施例5~8の中でも、例えば、α-オレフィン系樹脂(EBM)の使用量が100gの場合(実施例5:EBMの使用量をマレイン化EBM100質量部に対して100質量部とした場合)には、流動性(MFR)及び硬度をより高いものとすることができ、また、α-オレフィン系樹脂(EBM)の使用量を25g、50g又は75gとした場合(実施例6~8:EBMの使用量をマレイン化EBM100質量部に対して25~75質量部とした場合)には破断強度をより高いものとすることができ、更には、α-オレフィン系樹脂(EBM)の使用量を50g又は75gとした場合(実施例6~7:EBMの使用量をマレイン化EBM100質量部に対して50~75質量部とした場合)には、圧縮永久歪の値をより高度な水準のものとすることができることが確認された。このように、本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、耐熱性、流動性、耐圧縮永久歪性、及び、機械的特性(破断強度)を十分に高度な水準のものとしつつ、目的の用途等に応じた特性がより高いものとなるように、α-オレフィン系樹脂(EBM)の使用量を適宜変更する等、設計を適宜変更して使用することが可能であることが分かった。
(実施例9)
先ず、スチレンブロック共重合体(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS):クレイトン社製の商品名「G1633」、分子量:40万~50万、スチレン含有量:30質量%)200gを加圧ニーダーに投入して、200℃の条件で練りながら、前記加圧ニーダー中にパラフィンオイル(JX日鉱日石エネルギー社製の商品名「スーパーオイルMシリーズ P500S」)400gを滴下し、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体とパラフィンオイルとを1分間混合した。次いで、前記加圧ニーダー中に、無水マレイン酸変性エチレン-ブテン共重合体(マレイン化EBM:三井化学社製の商品名「タフマーMH5040」、結晶化度:4%)100g、α-オレフィン系樹脂であるポリエチレン(PE:日本ポリエチレン社製の商品名「HJ590N」、結晶化度:74%、MFR:40g/10分(2.16kg、190℃)、Mw:70000)200gおよび老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO-50」)0.3gを更に投入し、温度を200℃として2分間素練りして第一の混合物(PEとマレイン化EBMとを含む混合物)を得た。なお、かかる素練り工程により、前記第一の混合物は可塑化された。次に、前記加圧ニーダー中の前記第一の混合物に対して、有機化クレイ(クニミネ工業社製の商品名「クニフィルD-36」)0.1gを更に加えて、200℃で4分間混練して第二の混合物を得た。
次に、前記加圧ニーダー中の前記第二の混合物にトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート(日星産業社製の商品名「タナック」)を2.62g加え、200℃で8分間混合し、熱可塑性エラストマー組成物を調製した。なお、このような組成物においては、用いた原料化合物の赤外分光分析の結果から、無水マレイン酸変性エチレン-ブテン共重合体中の無水マレイン酸基とトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートとが反応して、上記側鎖(iii)を主として有するエラストマー性ポリマー(上記側鎖(i)~(iii)が含まれ得る。)が形成されて含有されていることが分かる。また、このようなエラストマー性ポリマーは、主鎖がエチレンとブテンからなっているため、ガラス転移点は25℃以下のものであることが分かった。得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果等を表3に示す。
(実施例10~13)
α-オレフィン系樹脂(PE:日本ポリエチレン社製の商品名「HJ590N」、結晶化度:74%、MFR:40g/10分(2.16kg、190℃)、Mw:70000)の使用量を200gから、各実施例においてそれぞれ、150g(実施例10)、100g(実施例11)、75g(実施例12)、50g(実施例13)に変更した以外は、実施例9と同様にして熱可塑性エラストマー組成物を得た。なお、このような製造方法の記載からも明らかなように、実施例9~13で得られた熱可塑性エラストマー組成物は、α-オレフィン系樹脂の含有量が異なる以外は組成が同一のものである。このようにして各実施例において得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果等を表3に示す。
なお、実施例9~13で得られた熱可塑性エラストマー組成物に関して、以下のようにして赤外吸収スペクトルを測定した。すなわち、先ず、実施例9~13で得られた熱可塑性エラストマー組成物40gを表面が平滑になるように厚さ2mmでプレス成形して測定用の試料を調製し、測定装置として全反射型ユニットを備えたIR測定装置(Thermo社製の「NICOLET380」)を用いて、全反射測定(ATR)法により、400~4000cm-1の波数レンジで赤外吸収スペクトル(赤外減衰全反射(FTIR-ATR)スペクトル)の測定を行った。このようにして得られた赤外吸収スペクトルのグラフから、オレフィン系樹脂(組成物中に含まれるα-オレフィン系樹脂(PE)並びにエラストマー成分の主鎖のオレフィン系共重合体)のC-H伸縮振動に由来する波長2920cm-1付近のピークの吸収強度(A)と、前記イソシアヌレート環中のカルボニル基に由来する波長1695cm-1付近のピークの吸収強度(B)とを求めて、これらの強度比([吸収強度(B)]/[吸収強度(A)])を求めた。得られた結果を表3に併せて示す。
[熱可塑性エラストマー組成物(実施例9~13)の特性評価]
表3に示す結果からも明らかなように、前記エラストマー成分(上記側鎖(iii)を主として有するエラストマー性ポリマー)と、前記α-オレフィン系樹脂(PE)と、クレイ(有機化クレイ)とを含有する本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例9~13)においては、5%重量減少温度が335℃以上となっており、十分に高度な耐熱性が達成されることが分かった。また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例9~13)においては、破断強度が4.7MPa以上となるような十分に高い水準のものとなっていた。また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例9~13)においては、ゴム製品として十分に高い水準の耐圧縮永久歪性が得られることも確認された。更に、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例9~13)においてはいずれも加熱時に流動性が得られており、十分な加工性を有するものであることも確認された。さらに、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例9~13)においては、ゴム製品として十分に利用可能な硬度を有していることも確認された。
このような結果から、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例9~13)によれば、十分に高度な耐熱性及び破断強度が得られることが分かった。なお、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例9~13)によれば、上述のように、十分に高度な耐熱性及び破断強度が得られるとともに、加熱時の流動性と耐圧縮永久歪性も十分なものとすることが可能となっており、これらの各性能を十分にバランスよく有するものとすることが可能であることも分かった。
このように、表3に示す結果から、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例9~13)によれば、耐熱性、流動性、耐圧縮永久歪性、及び、機械的特性(破断強度)をいずれも十分な水準のものとすることができ、これらの特性を十分に高度な水準でバランスよく有するものとすることが可能となることが分かった。
さらに、実施例9~13で得られた熱可塑性エラストマー組成物においては、α-オレフィン系樹脂であるポリエチレン(PE:日本ポリエチレン社製の商品名「HJ590N」、結晶化度:74%、MFR:40g/10分(2.16kg、190℃)、Mw:70000)の使用量が異なるが、上述のように、いずれの例においても、耐熱性、流動性、耐圧縮永久歪性、及び、機械的特性(破断強度)の特性を十分に高度な水準でバランスよく有するものとなっていた。なお、このような実施例9~13の中でも、例えば、α-オレフィン系樹脂(PE)の使用量を100gよりも少なくした場合(マレイン化EBM100質量部に対して100質量部未満とした場合)には、圧縮永久歪が20%よりも小さくなっており、圧縮永久歪に対する耐性が更に高度なものとなることが確認され、また、α-オレフィン系樹脂(PE)の使用量を100g以上とした場合(マレイン化EBM100質量部に対して100質量部以上とした場合)には、MFRが20g/10分以上となっており、更に高度な流動性が得られることが確認された。また、実施例9~13で得られた熱可塑性エラストマー組成物においては、α-オレフィン系樹脂(PE)の使用量をより多くした場合に、破断強度及び硬度をより高い値とすることができることも分かった。このように、本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、耐熱性、流動性、耐圧縮永久歪性、及び、機械的特性(破断強度)を十分に高度な水準のものとしつつ、目的の用途等に応じた特性がより高いものとなるように、α-オレフィン系樹脂(EBM)の使用量を適宜変更する等して、用途に応じて設計を適宜変更して使用することが可能であることが分かった。
(実施例14)
先ず、スチレンブロック共重合体(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS):クレイトン社製の商品名「G1633」)50gを加圧ニーダーに投入して、200℃の条件で練りながら、前記加圧ニーダー中にパラフィンオイル(JX日鉱日石エネルギー社製の商品名「P200」、動粘度:75mm2/s、Cp値:67.9%、アニリン点:109℃)100gを滴下し、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体とパラフィンオイルとを1分間混合した。次いで、前記加圧ニーダー中に、無水マレイン酸変性エチレン-ブテン共重合体(マレイン化EBM:三井化学社製の商品名「タフマーMH5040」、結晶化度:4%)100g、ポリプロピレン(PP:サンアロマー社製の商品名「VMD81M」、結晶化度:60%)100gおよび老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO-50」)0.3gを更に投入し、温度を200℃として2分間素練りして第一の混合物(SEBS、パラフィンオイル、マレイン化EBM、PPおよび老化防止剤の混合物)を得た。なお、かかる素練り工程により、前記第一の混合物は可塑化された。次に、前記加圧ニーダー中の前記第一の混合物に対して、有機化クレイ(クニミネ工業社製の商品名「クニフィルD-36」)2gを更に加えて、200℃で4分間混練して第二の混合物を得た。
次に、前記第二の混合物にトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート(日星産業社製の商品名「タナック」)を2.62g加え、200℃で8分間混合し、熱可塑性エラストマー組成物を調製した。なお、このような組成物においては、用いた原料化合物の赤外分光分析の結果から、無水マレイン酸変性エチレン-ブテン共重合体中の無水マレイン酸基とトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートとが反応して、上記側鎖(iii)を主として有するエラストマー性ポリマー(上記側鎖(i)~(iii)が含まれ得る。)となることが分かる。また、このようなエラストマー性ポリマーは、主鎖がエチレンとブテンからなっているため、ガラス転移点は25℃以下のものであることが分かった。得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果等を表4に示す。
(実施例15~17)
パラフィンオイルの種類を変更して、各実施例において、後述のパラフィンオイルをそれぞれ用いた以外は、実施例14と同様にして熱可塑性エラストマー組成物を得た。なお、このような製造方法の記載からも明らかなように、実施例14~17で得られた熱可塑性エラストマー組成物は、パラフィンオイルの種類が異なる以外は組成が同一のものである。得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果等を表4に示す。
〈実施例15で用いたパラフィンオイル〉
JX日鉱日石エネルギー社製の商品名「スーパーオイルMシリーズ P400」、動粘度:156mm2/s、Cp値:68.1%、アニリン点:113℃
〈実施例16で用いたパラフィンオイル〉
出光興産社製の商品名「ダイアナプロセスオイルPW380」、動粘度:380mm2/s、Cp値:68.0%、アニリン点:143℃
〈実施例17で用いたパラフィンオイル〉
JX日鉱日石エネルギー社製の商品名「スーパーオイルMシリーズ P500S」、動粘度:472mm2/s、Cp値:68.7%、アニリン点:123℃。
(実施例18)
先ず、スチレンブロック共重合体(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS):クレイトン社製の商品名「G1633」)50gを加圧ニーダーに投入して、200℃の条件で練りながら、無水マレイン酸変性エチレン-ブテン共重合体(三井化学社製の商品名「タフマーMH5040」、結晶化度:4%)100g、α-オレフィン系樹脂であるポリプロピレン(PP:サンアロマー社製の商品名「VMD81M」、結晶化度:60%)100gおよび老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO-50」)0.3gを投入した後、温度を200℃として2分間素練りして、混合物の前駆体を得た。なお、かかる素練り工程により、前記混合物の前駆体が可塑化された。次に、前記加圧ニーダー中の前記混合物の前駆体に対して、有機化クレイ(クニミネ工業社製の商品名「クニフィルD-36」)2gを更に加えて、200℃で4分間混練して混合物を得た。
次に、前記混合物にトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート(日星産業社製の商品名「タナック」)を2.62g加え、200℃で8分間混合し、パラフィンオイルを含んでいないタイプの熱可塑性エラストマー組成物を調製した。このように、パラフィンオイルを利用しなかった以外は実施例14と同様にして熱可塑性エラストマー組成物を得た。このような製造方法の記載からも明らかなように、実施例18で得られた熱可塑性エラストマー組成物と、実施例14~17で得られた熱可塑性エラストマー組成物とは、パラフィンオイルを含有していない点以外は組成が同一のものである。得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果等を表4に示す。
[熱可塑性エラストマー組成物(実施例14~18)の特性評価]
表4に示す結果からも明らかなように、前記エラストマー成分(上記側鎖(iii)を主として有するエラストマー性ポリマー)と、前記α-オレフィン系樹脂(PP)と、クレイ(有機化クレイ)とを含有する本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例14~18)においてはいずれも、5%重量減少温度が337℃以上となっており、十分に高度な耐熱性が達成されることが分かった。また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例14~18)においては、破断強度が3.5MPa以上となるような十分に高い水準のものとなっていた。さらに、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例14~18)においては、ゴム製品として十分な耐圧縮永久歪性や硬度が得られることが確認された。更に、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例14~18)においてはいずれも加熱時に流動性が得られ、十分な加工性を有するものであることが確認された。
このような結果から、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例14~18)によれば、十分に高度な耐熱性及び破断強度が得られることが確認された。
また、実施例14~18で得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性評価の結果から、パラフィンオイルを用いた場合(実施例14~17)にはMFRの値が飛躍的に向上し、更に高度な流動性が達成できることが分かった。さらに、実施例14~18で得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性評価の結果から、パラフィンオイルを用いた場合(実施例14~17)には、圧縮永久歪の値をより小さな値とすることができることも分かった。また、実施例14~17で得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性評価の結果から、添加するパラフィンオイルの動粘度がより高い値となるほど、圧縮永久歪がより小さくなり、より高度な耐圧縮永久歪性を有するものとなることも分かった。このように、本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、目的の用途等に応じて必要となる特性がより高度なものとなるように、添加成分の使用の有無やその種類(パラフィンオイルの種類等)を適宜変更する等して、用途に応じて設計を適宜変更して使用することが可能であることが分かった。
(実施例19~21)
パラフィンオイルの種類を変更して、それぞれ、後述のパラフィンオイルを用いた以外は、実施例4と同様にして熱可塑性エラストマー組成物を得た。なお、このような製造方法の記載からも明らかなように、実施例19~21で得られた熱可塑性エラストマー組成物は、パラフィンオイルの種類が異なる以外は実施例4で得られた熱可塑性エラストマー組成物と組成が同一のものである。得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果等を表5に示す。
〈実施例19で用いたパラフィンオイル〉
JX日鉱日石エネルギー社製の商品名「スーパーオイルMシリーズ P200」、動粘度:75mm2/s、Cp値:67.9%、アニリン点:109℃
〈実施例20で用いたパラフィンオイル〉
JX日鉱日石エネルギー社製の商品名「スーパーオイルMシリーズ P400」、動粘度:156mm2/s、Cp値:68.1%、アニリン点:113℃
〈実施例21で用いたパラフィンオイル〉
出光興産社製の商品名「ダイアナプロセスオイルPW380」、動粘度:380mm2/s、Cp値:68.0%、アニリン点:143℃。
(実施例22)
パラフィンオイルを用いる代わりにアロマオイル(JX日鉱日石エネルギー社製の商品名「T-DAE」、動粘度:32mm2/s)を用いた以外は、実施例4と同様にして熱可塑性エラストマー組成物を得た。なお、このような製造方法の記載からも明らかなように、実施例22で得られた熱可塑性エラストマー組成物は、オイルの種類が異なる以外は実施例4で得られた熱可塑性エラストマー組成物と組成が同一のものである。得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果等を表5に示す。
(実施例23)
パラフィンオイルを用いる代わりにナフテンオイル(JX日鉱日石エネルギー社製の商品名「グレード200」、動粘度:1.56mm2/s)を用いた以外は、実施例4と同様にして熱可塑性エラストマー組成物を得た。なお、このような製造方法の記載からも明らかなように、実施例23で得られた熱可塑性エラストマー組成物は、オイルの種類が異なる以外は実施例4で得られた熱可塑性エラストマー組成物と組成が同一のものである。得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果等を表5に示す。
なお、表5には、実施例4及び比較例1で得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を併せて示す。
[熱可塑性エラストマー組成物(実施例4、19~23及び比較例1)の特性評価]
表5に示す結果からも明らかなように、前記エラストマー成分(上記側鎖(iii)を主として有するエラストマー性ポリマー)と、前記α-オレフィン系樹脂(PP)と、クレイ(有機化クレイ)とを含有する本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例4及び19~23)においてはいずれも、5%重量減少温度が334℃以上となっており、十分に高度な耐熱性が達成されることが分かった。また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例4及び19~23)においては、破断強度が4.2MPa以上となっており、十分に高い水準のものとなっていた。また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例14~18)においては、ゴム製品として十分な耐圧縮永久歪性や硬度が得られることも確認された。更に、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例4及び19~23)においてはいずれも加熱時に流動性が得られ、十分な加工性を有するものであることが確認された。
このような結果から、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例4及び19~23)によれば、十分に高度な耐熱性及び破断強度が得られることが確認されるとともに、ゴム製品として利用可能な十分な耐圧縮永久歪性及び硬度が得られることも分かった。
また、実施例4及び19~23で得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性評価の結果から、オイルとしてパラフィンオイルを用いた場合(実施例4及び実施例19~21)には、他のオイル類を用いた場合(実施例22~23)と比べて、MFRの値がより高いものとなり、更に高度な流動性が達成できるとともに、耐圧縮歪性をより高度なものとすることも可能となることが確認された。また、実施例4及び実施例19~21で得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性評価の結果から、添加するパラフィンオイルの動粘度がより高い値となるほど、圧縮永久歪がより小さくなり、より高度な耐圧縮永久歪性を有するものとなることも分かった。
(実施例24)
先ず、スチレンブロック共重合体(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS):クレイトン社製の商品名「G1633」)50gを加圧ニーダーに投入して、200℃の条件で練りながら、前記加圧ニーダー中にパラフィンオイル(JX日鉱日石エネルギー社製の商品名「スーパーオイルMシリーズ P200」、動粘度:75mm2/s、Cp値:67.9%、アニリン点:109℃)100gを滴下し、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体とパラフィンオイルとを1分間混合した。次いで、前記加圧ニーダー中に、無水マレイン酸変性エチレン-ブテン共重合体(マレイン化EBM:三井化学社製の商品名「タフマーMH5040」、結晶化度:4%)100g、エチレン-プロピレン共重合体(EPM:三井化学社製の商品名「タフマーPN20300」、結晶化度:12%)100gおよび老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO-50」)0.3gを更に投入し、温度を200℃として2分間素練りして第一の混合物(SEBS、パラフィンオイル、マレイン化EBM、EPMおよび老化防止剤の混合物)を得た。なお、かかる素練り工程により、前記第一の混合物は可塑化された。次に、前記加圧ニーダー中の前記第一の混合物に対して、有機化クレイ(クニミネ工業社製の商品名「クニフィルD-36」)2gを更に加えて、200℃で4分間混練して第二の混合物を得た。
次に、前記第二の混合物にトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート(日星産業社製の商品名「タナック」)を2.62g加え、200℃で8分間混合し、パラフィンオイルを含んでいないタイプの熱可塑性エラストマー組成物を調製した。得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果等を表4に示す。なお、このような組成物は、用いた原料化合物の赤外分光分析の結果から、前述のような、側鎖(iii)を主として有するエラストマー性ポリマーを含むものであることが分かる。また、このようなエラストマー性ポリマーは、主鎖がエチレンとブテンからなっているため、ガラス転移点は25℃以下のものであることが分かった。得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果等を表6に示す。
(実施例25~27)
パラフィンオイルの種類を変更して、各実施例において、後述のパラフィンオイルをそれぞれ用いた以外は、実施例24と同様にして熱可塑性エラストマー組成物を得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果等を表6に示す。
〈実施例25で用いたパラフィンオイル〉
JX日鉱日石エネルギー社製の商品名「スーパーオイルMシリーズ P400」、動粘度:156mm2/s、Cp値:68.1%、アニリン点:113℃
〈実施例26で用いたパラフィンオイル〉
出光興産社製の商品名「ダイアナプロセスオイルPW380」、動粘度:380mm2/s、Cp値:68.0%、アニリン点:143℃
〈実施例27で用いたパラフィンオイル〉
JX日鉱日石エネルギー社製の商品名「スーパーオイルMシリーズ P500S」、動粘度:472mm2/s、Cp値:68.7%、アニリン点:123℃
[熱可塑性エラストマー組成物(実施例24~27)の特性評価]
表6に示す結果からも明らかなように、前記エラストマー成分(上記側鎖(iii)を主として有するエラストマー性ポリマー)と、前記α-オレフィン系樹脂(EPM)と、クレイ(有機化クレイ)とを含有する本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例24~27)においてはいずれも、5%重量減少温度が337℃以上となっており、十分に高度な耐熱性が達成されることが分かった。また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例24~27)においては、破断強度も4.0MPa以上となっており、十分に高い破断強度が得られることが確認された。更に、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例24~27)においては、ゴム製品として利用可能な十分な耐圧縮永久歪性及び硬度が得られることが確認された。更に、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例24~27)においてはいずれも加熱時に流動性が得られ、十分な加工性を有するものであることが確認された。
このような結果から、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例24~27)によれば、十分に高度な耐熱性及び破断強度が得られることが確認された。また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例24~27)においては、十分に高度な耐熱性及び破断強度が得られるとともに、加熱時の流動性と耐圧縮永久歪性を十分にバランスよく有するものとなることも分かった。
また、実施例24~27で得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性評価の結果から、添加するパラフィンオイルの動粘度がより高い値となるほど、圧縮永久歪がより小さくなり、より高度な耐圧縮永久歪性を有するものとなることも分かった。このように、本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、添加成分としてパラフィンオイルを適宜利用する等して、用途に応じて必要となる特性をより高度なものとすることも可能であることが分かった。
(実施例28)
先ず、スチレンブロック共重合体(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS):クレイトン社製の商品名「G1633」、分子量:40万~50万、スチレン含有量:30質量%)50gを加圧ニーダーに投入して、200℃の条件で練りながら、前記加圧ニーダー中にパラフィンオイル(JX日鉱日石エネルギー社製の商品名「スーパーオイルMシリーズ P500S」)100gを滴下し、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体とパラフィンオイルとを1分間混合した。次いで、前記加圧ニーダー中に、無水マレイン酸変性エチレン-ブテン共重合体(マレイン化EBM:三井化学社製の商品名「タフマーMH5040」、結晶化度:4%)100g、エチレン-ブテン共重合体(EBM:三井化学社製の商品名「タフマーDF7350」、結晶化度:10%)75gおよび老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO-50」)0.3gを更に投入し、温度を200℃として2分間素練りして第一の混合物(EBMとマレイン化EBMとを含む混合物)を得た。なお、かかる素練り工程により、前記第一の混合物は可塑化された。次に、前記加圧ニーダー中の前記第一の混合物に対して、有機化クレイ(クニミネ工業社製の商品名「クニフィルD-36」)1gを更に加えて、200℃で4分間混練して第二の混合物を得た。
次に、前記加圧ニーダー中の前記第二の混合物にトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート(日星産業社製の商品名「タナック」)を2.62g加え、200℃で8分間混合し、熱可塑性エラストマー組成物を調製した。得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果等を表1に示す。なお、このような組成物は、用いた原料化合物の赤外分光分析の結果から、前述のような、側鎖(iii)を主として有するエラストマー性ポリマーを含むものであることが分かる。また、このようなエラストマー性ポリマーは、主鎖がエチレンとブテンからなっているため、ガラス転移点は25℃以下のものであることが分かった。得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果等を表7に示す。
(実施例29~32)
スチレンブロック共重合体の種類を変更して、各実施例において、後述のスチレンブロック共重合体をそれぞれ用いた以外は、実施例28と同様にして熱可塑性エラストマー組成物を得た。なお、このような製造方法の記載からも明らかなように、実施例28~32で得られた熱可塑性エラストマー組成物は、スチレンブロック共重合体の種類が異なる以外は組成が同一のものである。このようにして各実施例において得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果等を表7に示す。
〈実施例29で用いたスチレンブロック共重合体〉
SEBS:クレイトン社製の商品名「G1641」、分子量:25万~35万、スチレン含有量:33質量%
〈実施例30で用いたスチレンブロック共重合体〉
SEBS:クレイトン社製の商品名「G1651」、分子量:25万~35万、スチレン含有量:33質量%
〈実施例31で用いたスチレンブロック共重合体〉
SEEPS:クラレ社製の商品名「4077」、分子量:40万~50万、スチレン含有量:30質量%
〈実施例32で用いたスチレンブロック共重合体〉
SEEPS:クラレ社製の商品名「4099」、分子量:50万~60万、スチレン含有量:30質量%。
(比較例2)
先ず、スチレンブロック共重合体(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS):クレイトン社製の商品名「G1633」、分子量:40万~50万、スチレン含有量:30質量%)50gを加圧ニーダーに投入して、200℃の条件で練りながら、前記加圧ニーダー中にパラフィンオイル(JX日鉱日石エネルギー社製の商品名「スーパーオイルMシリーズ P500S」)100gを滴下し、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体とパラフィンオイルとを1分間混合した。次いで、前記加圧ニーダー中に、無水マレイン酸変性エチレン-ブテン共重合体(マレイン化EBM:三井化学社製の商品名「タフマーMH5040」、結晶化度:4%)100g、エチレン-ブテン共重合体(EBM:三井化学社製の商品名「タフマーDF7350」、結晶化度:10%)75gおよび老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO-50」)0.3gを更に投入し、温度を200℃として2分間素練りして混合物(EBMとマレイン化EBMとを含む混合物)を得た。なお、かかる素練り工程により、前記混合物は可塑化された。次に、前記混合物にトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート(日星産業社製の商品名「タナック」)を2.62g加え、200℃で8分間混合し、熱可塑性エラストマー組成物を調製した。得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果等を表7に示す。
[熱可塑性エラストマー組成物(実施例28~32及び比較例2)の特性評価]
表7に示す結果からも明らかなように、前記エラストマー成分(上記側鎖(iii)を主として有するエラストマー性ポリマー)と、前記α-オレフィン系樹脂(EBM)と、クレイ(有機化クレイ)とを含有する本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例28~32)においてはいずれも、5%重量減少温度が340℃以上となっていた。一方、クレイ(有機化クレイ)を含んでいない熱可塑性エラストマー組成物(比較例2)においては、5%重量減少温度が319℃となっていた。このような結果から、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例28~32)によれば、5%重量減少温度を基準とした耐熱性がより高度なものとなることが分かった。
また、前記エラストマー成分(上記側鎖(iii)を主として有するエラストマー性ポリマー)と、前記α-オレフィン系樹脂(EBM)と、クレイ(有機化クレイ)とを含有する本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例28~32)においてはいずれも、破断強度が4.0MPa以上となっており、クレイ(有機化クレイ)を含んでいない熱可塑性エラストマー組成物(比較例2)よりも、更に高度な破断強度が得られることが確認された。また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例28~32)においてはいずれも、ゴム製品として利用可能な十分な耐圧縮永久歪性も得られるとともに十分な硬度を有することも確認された。更に、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例28~32)においてはいずれも加熱時に流動性が得られ、十分な加工性を有することが確認された。
このような結果から、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例28~32)によれば、十分に高度な耐熱性及び破断強度が得られることが確認された。また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例28~32)においては、十分に高度な耐熱性及び破断強度が得られるとともに、加熱時の流動性と耐圧縮永久歪性を十分にバランスよく有するものとなることも分かった。すなわち、表7に示す結果から、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例28~32)によれば、耐熱性、流動性、耐圧縮永久歪性、及び、機械的特性(破断強度)をいずれも十分な水準のものとすることができ、これらの特性を十分に高度な水準でバランスよく有するものとすることが可能となることが分かった。
なお、実施例28で得られた熱可塑性エラストマー組成物と、比較例2で得られた熱可塑性エラストマー組成物との組成を比較すると、組成としては有機化クレイの有無のみが異なっているが、このような組成の相違点と表7に示す結果とを併せ勘案すれば、熱可塑性エラストマー組成物中に有機化クレイを含有する場合(実施例28)には、有機化クレイを用いなかった場合(比較例2)よりも、破断強度及び破断伸びの値がより高度なものとなり、より高い引張特性が得られること(より伸びやすく、伸びに対する耐性がより高い組成物が得られること)も分かった。
また、表7に示す結果からも明らかなように、スチレンブロック共重合体を用いている系(実施例28~32)においては、スチレンブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)を40万~60万とした場合(実施例1及び実施例4~5)に、より高度な耐永久圧縮歪性が得られることも分かった。
このように、本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、十分に高度な耐熱性及び破断強度を有することが可能であることが確認された。また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、目的の用途等に応じて、組成を適宜変更する等(例えばα-オレフィン系樹脂の含有量を適宜変更したり、添加成分(スチレンブロック共重合体等)の種類や使用量を適宜変更する等)して、その用途に必要となる特性をより高度なものとして使用することが可能であることも分かった。
(実施例33)
先ず、スチレンブロック共重合体(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS):クレイトン社製の商品名「G1633」、分子量:40万~50万、スチレン含有量:30質量%)20gを加圧ニーダーに投入して、200℃の条件で練りながら、前記加圧ニーダー中にパラフィンオイル(JX日鉱日石エネルギー社製の商品名「スーパーオイルMシリーズ P500S」、動粘度:472mm2/s、Cp値:68.7%、アニリン点:123℃)40gを滴下し、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体とパラフィンオイルとを1分間混合した。次いで、前記加圧ニーダー中に、無水マレイン酸変性エチレン-ブテン共重合体(マレイン化EBM:三井化学社製の商品名「タフマーMH5040」、結晶化度:4%)10g、α-オレフィン系樹脂であるエチレン-ブテン共重合体(EBM:三井化学社製の商品名「タフマーDF7350」、結晶化度:10%、MFR:35g/10分(2.16kg、190℃)、Mw:100000)7.5gおよび老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO-50」)0.0778gを更に投入し、温度を200℃として2分間混練して第一の混合物(EBMとマレイン化EBMとを含む混合物)を得た。なお、かかる素練り工程により、前記第一の混合物は可塑化された。次に、前記加圧ニーダー中の前記第一の混合物に対して、有機化クレイ(株式会社ホージュン製の商品名「エスベンWX」)0.01gを更に加えて、200℃で4分間混練して第二の混合物を得た。
次に、前記加圧ニーダー中の前記第二の混合物にペンタエリスリトール(日本合成化学社製の商品名「ノイライザーP」)を0.102g加え、200℃で8分間混合し、熱可塑性エラストマー組成物を調製した。得られた熱可塑性エラストマー組成物の組成を表8に示し、特性の評価結果等を表10に示す。
なお、このようにして形成されるエラストマー性ポリマーは、前記無水マレイン酸変性エチレン-ブテン共重合体と、ペンタエリスリトールとの反応物となり、側鎖は無水マレイン酸変性エチレン-ブテン共重合体中の酸無水物基と、ペンタエリストール中の水酸基との反応により形成されたものとなる。そのため、側鎖にカルボン酸エステル基を含む架橋構造が形成される(側鎖が水素結合性架橋部位と共有結合性架橋部位との双方を含む側鎖となる。)。
(実施例34)
無水マレイン酸変性エチレン-ブテン共重合体(マレイン化EBM)を10g用いる代わりに水酸基両末端ポリブタジエン(出光興産社製の商品名「Polybd R-45HT」、水酸基当量:1400)を10g用い、ペンタエリスリトール(日本合成化学社製の商品名「ノイライザーP」)を0.102g用いる代わりに2,6-ピリジンジカルボン酸(エア・ウォーター社製の商品名「2,6-ピリジンジカルボン酸」)を0.597g用い、老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO-50」)の使用量を0.0778gから0.0782gに変更した以外は、実施例33と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物を調製した。得られた熱可塑性エラストマー組成物の組成を表8に示し、特性の評価結果等を表10に示す。
なお、このようにして形成されるエラストマー性ポリマーは、前記水酸基両末端ポリブタジエンと、2,6-ピリジンジカルボン酸との反応物となり、側鎖はポリブタジエンの末端の水酸基と、2,6-ピリジンジカルボン酸中のカルボニル基との反応により形成されたものとなる。そのため、側鎖にピリジン環とカルボン酸エステル基とを含む架橋構造が形成される(側鎖が水素結合性架橋部位と共有結合性架橋部位との双方を含む側鎖となる。)。
(実施例35)
無水マレイン酸変性エチレン-ブテン共重合体(マレイン化EBM)を10g用いる代わりにカルボキシ基含有ポリイソプレン(クラレ社製の商品名「LIR-410」、カルボキシ当量:4000)を10g用い、ペンタエリスリトール(日本合成化学社製の商品名「ノイライザーP」)を0.102g用いる代わりにトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート(日星産業社製の商品名「タナック」)を0.218g用い、エチレン-ブテン共重合体(EBM:三井化学社製の商品名「タフマーDF7350」)を7.5g用いる代わりに、高密度ポリエチレン(HDPE:日本ポリエチレン製の商品名「HJ590N」)を15g用い、老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO-50」)の使用量を0.0778gから0.0853gに変更した以外は、実施例33と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物を調製した。得られた熱可塑性エラストマー組成物の組成を表8に示し、特性の評価結果等を表10に示す。
なお、このようにして形成されるエラストマー性ポリマーは、前記カルボキシ基含有ポリイソプレンと、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートとの反応物となり、側鎖はポリイソプレンのカルボキシ基と、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート中の水酸基との反応により形成されたものとなる。そのため、側鎖にイソシアヌレート環とカルボン酸エステル基とを含む架橋構造が形成される(側鎖が水素結合性架橋部位と共有結合性架橋部位との双方を含む側鎖となる。)。
(実施例36)
トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート(日星産業社製の商品名「タナック」)を0.218g用いる代わりに、ペンタエリスリトール(日本合成化学社製の商品名「ノイライザーP」)を0.085g用い、老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO-50」)の使用量を0.0853gから0.0852gに変更した以外は、実施例35と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物を調製した。得られた熱可塑性エラストマー組成物の組成を表8に示し、特性の評価結果等を表10に示す。
なお、このようにして形成されるエラストマー性ポリマーは、前記カルボキシ基含有ポリイソプレンと、ペンタエリスリトールとの反応物となり、側鎖はポリイソプレンのカルボキシ基と、ペンタエリスリトール中の水酸基との反応により形成されたものとなる。そのため、側鎖にカルボン酸エステル基と水酸基とを含む架橋構造が形成される(側鎖が水素結合性架橋部位と共有結合性架橋部位との双方を含む側鎖となる。)。
(実施例37)
トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート(日星産業社製の商品名「タナック」)を0.218g用いる代わりに、2,4-ジアミノ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(日本触媒社製の商品名「ベンゾグアナミン」)を0.234g用いた以外は、実施例35と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物を調製した。得られた熱可塑性エラストマー組成物の組成を表8に示し、特性の評価結果等を表10に示す。
なお、このようにして形成されるエラストマー性ポリマーは、前記カルボキシ基含有ポリイソプレンと、2,4-ジアミノ-6-フェニル-1,3,5-トリアジンとの反応物となり、側鎖はポリイソプレンのカルボキシ基と、2,4-ジアミノ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン中のアミノ基(-NH2)との反応により形成されたものとなる。そのため、側鎖にトリアジン環と、アミド結合(式:-CONH-)で表される結合部位とを含む架橋構造が形成される(側鎖が水素結合性架橋部位と共有結合性架橋部位との双方を含む側鎖となる。)。
(実施例38)
トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート(日星産業社製の商品名「タナック」)を0.218g用いる代わりに、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート(SC有機化学社製)を0.438g用い、高密度ポリエチレン(HDPE:日本ポリエチレン製の商品名「HJ590N」)を15g用いる代わりに、エチレン-ブテン共重合体(EBM:三井化学社製の商品名「タフマーDF7350」)を7.5g用い、老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO-50」)の使用量を0.0853gから0.078gに変更した以外は、実施例35と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物を調製した。得られた熱可塑性エラストマー組成物の組成を表8に示し、特性の評価結果等を表10に示す。
なお、このようにして形成されるエラストマー性ポリマーは、前記カルボキシ基含有ポリイソプレンと、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレートとの反応物となり、側鎖はポリイソプレンのカルボキシ基と、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート中のチオール基(-SH)との反応により形成されたものとなる。そのため、側鎖にイソシアヌレート環と、チオエステル(式:-CO-S-で表される基)とを含む架橋構造が形成される(側鎖が水素結合性架橋部位と共有結合性架橋部位との双方を含む側鎖となる。)。
(実施例39)
無水マレイン酸変性エチレン-ブテン共重合体(マレイン化EBM)を10g用いる代わりにアミノ基含有ポリエチレンイミン(日本触媒社製の商品名「エポミンSP-200」、アミン価:18mmol/g)を10g用い、ペンタエリスリトール(日本合成化学社製の商品名「ノイライザーP」)を0.102g用いる代わりに2,6-ピリジンジカルボン酸(エア・ウォーター社製の商品名「2,6-ピリジンジカルボン酸」)を1.504g用い、エチレン-ブテン共重合体(EBM:三井化学社製の商品名「タフマーDF7350」)を7.5g用いる代わりに高密度ポリエチレン(HDPE:日本ポリエチレン製の商品名「HJ590N」)を15g用い、老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO-50」)の使用量を0.0778gから0.0866gに変更した以外は、実施例33と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物を調製した。得られた熱可塑性エラストマー組成物の組成を表8に示し、特性の評価結果等を表10に示す。
なお、このようにして形成されるエラストマー性ポリマーは、前記アミノ基含有ポリエチレンイミンと、2,6-ピリジンジカルボン酸との反応物となり、側鎖はポリエチレンイミンのアミノ基と、2,6-ピリジンジカルボン酸中のカルボキシ基との反応により形成されたものとなる。そのため、側鎖にピリジン環とアミド結合(式:-CONH-)で表される結合部位とを含む架橋構造が形成される(側鎖が水素結合性架橋部位と共有結合性架橋部位との双方を含む側鎖となる。)。
(実施例40)
2,6-ピリジンジカルボン酸(エア・ウォーター社製の商品名「2,6-ピリジンジカルボン酸」)を1.504g用いる代わりに、トリス-(2,3-エポキシプロピル)-イソシアヌレート(日産化学製)を1.784g用い、高密度ポリエチレン(HDPE:日本ポリエチレン製の商品名「HJ590N」)を15g用いる代わりに、エチレン-ブテン共重合体(EBM:三井化学社製の商品名「タフマーDF7350」)を7.5g用い、老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO-50」)の使用量を0.0866gから0.0794gに変更した以外は、実施例39と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物を調製した。得られた熱可塑性エラストマー組成物の組成を表8に示し、特性の評価結果等を表10に示す。
なお、このようにして形成されるエラストマー性ポリマーは、前記アミノ基含有ポリエチレンイミンと、トリス-(2,3-エポキシプロピル)-イソシアヌレートとの反応物となり、側鎖はポリエチレンイミンのアミノ基と、トリス-(2,3-エポキシプロピル)-イソシアヌレート中のエポキシ基との反応により形成されたものとなる。そのため、側鎖にイソシアヌレート環と水酸基(-OH基)とイミノ基とを含む架橋構造が形成される(側鎖が水素結合性架橋部位と共有結合性架橋部位との双方を含む側鎖となる。)。
(実施例41)
無水マレイン酸変性エチレン-ブテン共重合体(マレイン化EBM)を10g用いる代わりにアルコキシシリル基含有ポリエチレン(三菱化学社製の商品名「リンクロン」、アルコキシ基当量:10000)を10g用い、ペンタエリスリトール(日本合成化学社製の商品名「ノイライザーP」)を0.102g用いる代わりにトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート(日星産業社製の商品名「タナック」)を0.087g用い、エチレン-ブテン共重合体(EBM:三井化学社製の商品名「タフマーDF7350」)を7.5g用いる代わりに高密度ポリエチレン(HDPE:日本ポリエチレン製の商品名「HJ590N」)を15g用い、老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO-50」)の使用量を0.0778gから0.0852gに変更した以外は、実施例33と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物を調製した。得られた熱可塑性エラストマー組成物の組成を表8に示し、特性の評価結果等を表10に示す。
なお、このようにして形成されるエラストマー性ポリマーは、前記アルコキシシリル基含有ポリエチレンと、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートとの反応物となり、側鎖はポリエチレンが含むアルコキシシリル基と、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート中の水酸基との反応により形成されたものとなる。そのため、側鎖にイソシアヌレート環とシリルオキシ結合(-O-Si-O-)とを含む架橋構造が形成される(側鎖が水素結合性架橋部位と共有結合性架橋部位との双方を含む側鎖となる。)。
(実施例42)
トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート(日星産業社製の商品名「タナック」)を0.087g用いる代わりにペンタエリスリトール(日本合成化学社製の商品名「ノイライザーP」)を0.034g用い、老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO-50」)の使用量を0.0852gから0.0851gに変更した以外は、実施例41と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物を調製した。得られた熱可塑性エラストマー組成物の組成を表8に示し、特性の評価結果等を表10に示す。
なお、このようにして形成されるエラストマー性ポリマーは、前記アルコキシシリル基含有ポリエチレンと、ペンタエリスリトールとの反応物となり、側鎖はポリエチレンが含むアルコキシシリル基と、ペンタエリスリトール中の水酸基との反応により形成されたものとなる。そのため、側鎖にシリルオキシ結合(-O-Si-O-)と水酸基とを含む架橋構造が形成される(側鎖が水素結合性架橋部位と共有結合性架橋部位との双方を含む側鎖となる。)。
(実施例43)
無水マレイン酸変性エチレン-ブテン共重合体(マレイン化EBM)を10g用いる代わりにアルコキシシリル基含有ポリエチレン(三菱化学社製の商品名「リンクロン」)を10g用い、ペンタエリスリトール(日本合成化学社製の商品名「ノイライザーP」)を0.102g用いる代わりに2,4-ジアミノ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(日本触媒社製の商品名「ベンゾグアナミン」)を0.094g用い、老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO-50」)の使用量を0.0778gから0.0777gに変更した以外は、実施例33と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物を調製した。得られた熱可塑性エラストマー組成物の組成を表8に示し、特性の評価結果等を表10に示す。
なお、このようにして形成されるエラストマー性ポリマーは、前記アルコキシシリル基含有ポリエチレンと、2,4-ジアミノ-6-フェニル-1,3,5-トリアジンとの反応物となり、側鎖は前記ポリエチレンが含むアルコキシシリル基と、2,4-ジアミノ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン中のアミノ基との反応により形成されたものとなる。そのため、側鎖にイソシアヌレート環と、シリルアミノ結合とを含む架橋構造が形成される(側鎖が水素結合性架橋部位と共有結合性架橋部位との双方を含む側鎖となる。)。
(実施例44)
無水マレイン酸変性エチレン-ブテン共重合体(マレイン化EBM)を10g用いる代わりにスチレン-ブタジエンブロック共重合体のエポキシ化物(ダイセル社製の商品名「エポフレンド」、エポキシ当量:1000)を10g用い、ペンタエリスリトール(日本合成化学社製の商品名「ノイライザーP」)を0.102g用いる代わりに2,4-ジアミノ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(日本触媒社製の商品名「ベンゾグアナミン」)を0.936g用い、エチレン-ブテン共重合体(EBM:三井化学社製の商品名「タフマーDF7350」)を7.5g用いる代わりに高密度ポリエチレン(HDPE:日本ポリエチレン製の商品名「HJ590N」)を15g用い、老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO-50」)の使用量を0.0778gから0.086gに変更した以外は、実施例33と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物を調製した。得られた熱可塑性エラストマー組成物の組成を表8に示し、特性の評価結果等を表10に示す。
なお、このようにして形成されるエラストマー性ポリマーは、前記スチレン-ブタジエンブロック共重合体のエポキシ化物と、2,4-ジアミノ-6-フェニル-1,3,5-トリアジンとの反応物となり、側鎖は前記エポキシ化物が含むエポキシ基と、2,4-ジアミノ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン中のアミノ基との反応により形成されたものとなる。そのため、側鎖にトリアジン環と水酸基とイミノ結合とを含む架橋構造が形成される(側鎖が水素結合性架橋部位と共有結合性架橋部位との双方を含む側鎖となる。)。
(実施例45)
無水マレイン酸変性エチレン-ブテン共重合体(マレイン化EBM)を10g用いる代わりにスチレン-ブタジエンブロック共重合体のエポキシ化物(ダイセル社製の商品名「エポフレンド」)を10g用い、ペンタエリスリトール(日本合成化学社製の商品名「ノイライザーP」)を0.102g用いる代わりにトリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート(SC有機化学社製)を1.75g用い、老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO-50」)の使用量を0.0778gから0.0793gに変更した以外は、実施例33と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物を調製した。得られた熱可塑性エラストマー組成物の組成を表8に示し、特性の評価結果等を表10に示す。
なお、このようにして形成されるエラストマー性ポリマーは、前記スチレン-ブタジエンブロック共重合体のエポキシ化物と、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレートとの反応物となり、側鎖は前記エポキシ化物が含むエポキシ基と、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート中のアミノ基との反応により形成されたものとなる。そのため、側鎖に水酸基とチオエーテル結合とイソシアヌレート環とを含む架橋構造が形成される(側鎖が水素結合性架橋部位と共有結合性架橋部位との双方を含む側鎖となる。)。
(実施例46)
無水マレイン酸変性エチレン-ブテン共重合体(マレイン化EBM)を10g用いる代わりに水酸基両末端ポリブタジエン(出光興産社製の商品名「Polybd R-45HT」、水酸基当量:1400)を10g用い、ペンタエリスリトール(日本合成化学社製の商品名「ノイライザーP」)を0.102g用いる代わりにm-キシリレンジイソシアネート(三井化学社製)を0.672g用い、老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO-50」)の使用量を0.0778gから0.0783gに変更した以外は、実施例33と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物を調製した。得られた熱可塑性エラストマー組成物の組成を表8に示し、その特性の評価結果等を表10に示す。
なお、このようにして形成されるエラストマー性ポリマーは、前記水酸基両末端ポリブタジエンと、m-キシリレンジイソシアネートとの反応物となり、側鎖はポリブタジエンの末端の水酸基と、m-キシリレンジイソシアネート中のイソシアネート基との反応により形成されたものとなる。そのため、側鎖にベンゼン環とウレタン結合とを含む架橋構造が形成される(側鎖が水素結合性架橋部位と共有結合性架橋部位との双方を含む側鎖となる。)。
(比較例3~16)
有機化クレイを利用しなかった以外は、それぞれ実施例33~46と同様にして、比較のための熱可塑性エラストマー組成物をそれぞれ調製した。得られた熱可塑性エラストマー組成物の組成を表9に示し、その特性の評価結果等を表10に示す。
[熱可塑性エラストマー組成物(実施例33~46及び比較例3~16)の特性評価]
表10に示す結果からも明らかなように、エラストマー成分とα-オレフィン系樹脂(EBM又はHDPE)と有機化クレイとを含有する本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例33~46)と、有機化クレイを含有しなかった以外は同じ組成の比較のための熱可塑性エラストマー組成物(比較例3~16)とを比較すると、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例33~46)においては、5%重量減少温度が337℃以上となっているのに対して、有機化クレイを含んでいない熱可塑性エラストマー組成物(比較例3~16)においては、5%重量減少温度が322℃以下(325℃未満)となっていた。このような結果から、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例33~46)によれば、5%重量減少温度を基準とした耐熱性がより高度なものとなることが分かった。
また、エラストマー成分とα-オレフィン系樹脂(EBM又はHDPE)と有機化クレイとを含有する本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例33~46)と、有機化クレイを含有しなかった以外は同じ組成の比較のための熱可塑性エラストマー組成物(比較例3~16)とをそれぞれ比較すると、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例33~46)においては、有機化クレイを含んでいない熱可塑性エラストマー組成物(比較例3~16)よりも、更に高度な破断強度が得られることが確認された。また、表10に示す結果からも明らかなように、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例33~46)においてはいずれも、ゴム製品として利用可能な十分な耐圧縮永久歪性が得られるとともに十分な硬度を有することも確認された。更に、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例33~46)においてはいずれも加熱時に流動性が得られ、十分な加工性を有することが確認された。
このような結果から、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例33~46)は、十分に高度な耐熱性及び破断強度を有するものとすることが可能であることが確認された。
(実施例47)
先ず、スチレンブロック共重合体(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS):クレイトン社製の商品名「G1633」、分子量:40万~50万、スチレン含有量:30質量%)20gを加圧ニーダーに投入して、180℃の条件で練りながら、前記加圧ニーダー中にパラフィンオイル(出光興産社製の商品名「ダイアナプロセスオイルPW380」、動粘度:380mm2/s、Cp値:68.0%、アニリン点:143℃)40gを滴下し、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体とパラフィンオイルとを1分間混合した。次いで、前記加圧ニーダー中に、無水マレイン酸変性エチレン-ブテン共重合体(マレイン化EBM:三井化学社製の商品名「タフマーMH5040」、結晶化度:4%)10g、α-オレフィン系樹脂であるエチレン-ブテン共重合体(EBM:三井化学社製の商品名「タフマーDF7350」、結晶化度:10%、MFR:35g/10分(2.16kg、190℃)、Mw:100000)7.5gおよび老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO-50」)0.078gを更に投入し、温度を180℃として2分間混練して第一の混合物(EBMとマレイン化EBMとを含む混合物)を得た。なお、かかる素練り工程により、前記第一の混合物は可塑化された。次に、前記加圧ニーダー中の前記第一の混合物に対して、有機化クレイ(株式会社ホージュン製の商品名「エスベンWX」)0.01gを更に加えて、200℃で4分間混練して第二の混合物を得た。
次に、前記加圧ニーダー中の前記第二の混合物にトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート(日星産業社製の商品名「タナック」)を0.262g加え、180℃で8分間混合し、熱可塑性エラストマー組成物を調製した。得られた熱可塑性エラストマー組成物の組成及び特性の評価結果等を表11に示す。
なお、このようにして形成されるエラストマー性ポリマーは、前記無水マレイン酸変性エチレン-ブテン共重合体と前記トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートとの反応物となり、側鎖は無水マレイン酸変性エチレン-ブテン共重合体中の酸無水物基と、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート中の水酸基との反応により形成されたものとなる。そのため、側鎖にカルボン酸エステル基を含む架橋構造が形成される(側鎖が水素結合性架橋部位と共有結合性架橋部位との双方を含む側鎖となる。)。
(実施例48~49)
老化防止剤の使用量及びパラフィンオイルの使用量をそれぞれ表11に示す量に変更した以外は、実施例47と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物を調製した。なお、熱可塑性エラストマー組成物の組成及び特性の評価結果等を表11に示す。
(実施例50)
老化防止剤の使用量、パラフィンオイルの使用量及びスチレンブロック共重合体(SEBS)の使用量を表11に示す量に変更した以外は、実施例47と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物を調製した。なお、熱可塑性エラストマー組成物の組成及び特性の評価結果等を表11に示す。
(実施例51)
α-オレフィン系樹脂としてエチレン-ブテン共重合体(EBM)7.5gを用いる代わりにポリエチレン(PE(高密度ポリエチレン:HDPE):日本ポリエチレン製の商品名「HJ590N」、結晶化度:74%、MFR:40g/10分(2.16kg、190℃)、Mw:70000)2.5gを用い、スチレンブロック共重合体(SEBS)の使用量を20gから30gに変更し、パラフィンオイルの使用量を40gから100gに変更し、老化防止剤の使用量を0.078gから0.143gに変更した以外は、実施例47と同様にして熱可塑性エラストマー組成物を調製した。なお、熱可塑性エラストマー組成物の組成及び特性の評価結果等を表11に示す。
(実施例52)
老化防止剤の使用量及びポリエチレンの使用量を表11に示す量に変更した以外は、実施例51と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物を調製した。なお、熱可塑性エラストマー組成物の組成及び特性の評価結果等を表11に示す。
(実施例53)
老化防止剤の使用量及びポリエチレンの使用量を表11に示す量に変更し、黒色のカラーマスターバッチ(日本ピグメント社製の商品名「Nippisun」)0.3gをトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート添加の4分後に添加した以外は、実施例51と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物を調製した。なお、熱可塑性エラストマー組成物の組成及び特性の評価結果等を表11に示す。
(実施例54)
老化防止剤の使用量、ポリエチレンの使用量、スチレンブロック共重合体(SEBS)及びパラフィンオイルの使用量を表11に示す量に変更し、黒色のカラーマスターバッチ(日本ピグメント社製の商品名「Nippisun」)0.3gをトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート添加の4分後に添加した以外は、実施例51と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物を調製した。なお、熱可塑性エラストマー組成物の組成及び特性の評価結果等を表11に示す。
(比較例17~24)
有機化クレイを利用しなかった以外は、それぞれ実施例47~54と同様にして、比較のための熱可塑性エラストマー組成物をそれぞれ調製した(これにより、有機化クレイの有無以外は、実施例47と比較例17とが、実施例48と比較例18とが、実施例49と比較例19とが、実施例50と比較例20とが、実施例51と比較例21とが、実施例52と比較例22とが、実施例53と比較例23とが、実施例54と比較例24とが、それぞれ組成が共通するものとなる。)。なお、比較のための熱可塑性エラストマー組成物の組成及び特性の評価結果等を表12に示す。
[熱可塑性エラストマー組成物(実施例47~54及び比較例17~24)の特性評価]
表11及び12に示す結果からも明らかなように、エラストマー成分とα-オレフィン系樹脂(EBM又はHDPE)と有機化クレイとを含有する本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例47~54)と、有機化クレイを含有しなかった以外は同じ組成の比較のための熱可塑性エラストマー組成物(比較例17~24)とをそれぞれ比較すると、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例47~54)においては、5%重量減少温度が344℃以上となっているのに対して、有機化クレイを含んでいない熱可塑性エラストマー組成物(比較例17~24)においては、5%重量減少温度が329℃以下となっていた。このような結果から、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例47~54)によれば、5%重量減少温度を基準とした耐熱性がより高度なものとなることが分かった。
また、エラストマー成分とα-オレフィン系樹脂(EBM又はHDPE)と有機化クレイとを含有する本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例47~54)と、有機化クレイを含有しなかった以外は同じ組成の比較のための熱可塑性エラストマー組成物(比較例17~24)とをそれぞれ比較すると、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例47~54)においては、有機化クレイを含んでいない熱可塑性エラストマー組成物(比較例17~24)よりも、より高い破断強度が得られることが確認された。また、表11に示す結果からも明らかなように、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例47~54)においてはいずれも十分な耐圧縮永久歪性が得られることも確認された。更に、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例47~54)においてはいずれも加熱時に流動性が得られ、十分な加工性を有することが確認された。また、実施例48~51で得られた熱可塑性エラストマー組成物においては、硬度を10以下としながらも非常に高度な耐熱性が得られていることから、例えば、ガスケット、パッキン、ストッパー、3Dプリンター用資材等に好適に利用することも可能である。このように、表11及び12に示す結果から、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、その組成を変更することにより硬度などの特性を変更して利用することが可能であることも分かった。