本発明により製造する光学フィルムにおけるポリマーは、透明な熱可塑性のポリマーである。熱可塑性ポリマーが吸湿性をもつ場合に本発明は効果があり、吸湿性が高いものほど、本発明は効果が大きい。本実施形態ではこのような吸湿性がある熱可塑性ポリマーとしてセルロースアシレートを用いている。
セルロースアシレートの中でも、セルロースの水酸基へのアシル基の置換度が下記式(1)〜(3)を満たすようなTAC(セルローストリアセテート)を用いる場合に、本発明は特に有効である。式(1)〜(3)において、A及びBは、セルロースの水酸基中の水素原子に対するアシル基の置換度を表し、Aはアセチル基の置換度、Bは炭素原子数が3〜22のアシル基の置換度である。なお、セルロースアシレートの総アシル基置換度Zは、A+Bで求める値である。
(1) 2.7≦A+B≦3.0
(2) 0≦A≦3.0
(3) 0≦B≦2.9
また、TACに代えて、または加えて、セルロースの水酸基へのアシル基の置換度が下記式(4)を満たすようなDAC(セルロースジアセテート)を用いる場合にも、本発明は特に有効である。
(4)2.0≦A+B<2.7
レタデーションの波長分散性の観点から、式(4)を満たしながらも、DACのアセチル基の置換度A、及び炭素数3以上22以下のアシル基の置換度の合計Bは、下記式(5)および(6)を満たすことが、好ましい。
(5) 1.0<A<2.7
(6) 0≦B<1.5
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基(ヒドロキシル基)を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位及び6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化の場合を置換度1とする)を意味する。
図1の溶液製膜設備10は、ドープ11からセルロースアシレートフィルム(以下、単に「フィルム」と称する)12を製造するためのものである。ドープ11はポリマーが溶媒に溶解したものである。溶液製膜設備10は、流延装置15と、第1テンタ16と、第1切除装置17と、第2テンタ20と、第2切除装置21と、乾燥室25と、冷却室26と、巻取装置27とを、上流側から順に備える。
流延装置15は、ドープ11から溶媒を含んだ状態のフィルム12を形成するためのものである。流延装置15は、ベルト30と、流延ダイ31と、バックアップローラ33と、剥取ローラ35とを、外部空間と仕切るチャンバ36の中に備える。流延ダイ31は、ベルト30に向けてドープ11を流出する。ベルト30は、環状に形成された無端の流延支持体であり、1対のバックアップローラ33に掛け渡される。
1対のバックアップローラ33の少なくともいずれか一方は駆動部(図示無し)を有し、この駆動部によって、断面円形の中央に設けられた軸33aを中心に矢線A1で示す周方向に回転する。この回転により、周面に掛け渡されているベルト30は長手方向に搬送される。搬送されているベルト30の周面に向けて、流延ダイ31からドープ11が流出することにより、ベルト30の周面上でドープが流延されて流延膜32が形成する。流延ダイ31からベルト30にかけては、ドープ11からなるビードが形成される。バックアップローラ33の回転方向A1におけるビードの上流には、空気を吸引することによりビードの上流側エリアを減圧するチャンバ(図示無し)が備えてある。
各バックアップローラ33は、温調機33bにより、周面の温度が制御される。バックアップローラ33の内部には、伝熱媒体が流れる流路が形成されている。温調機33bは、伝熱媒体の温度を調整し、バックアップローラ33との間で、伝熱媒体を循環させる。バックアップローラ33の周面温度を調整することにより、ベルト30を介して流延膜32の温度が制御される。例えば、流延膜32を冷却固化(ゲル化)させるいわゆる冷却流延の場合には、温調機33bは伝熱媒体を冷却し、冷却された伝熱媒体をバックアップローラ33に送り込む。この送り込みを例えば連続的に行うことにより、伝熱媒体は、バックアップローラ33の内部の流路を巡り、温調機33bに戻る。流延膜32を乾燥して固化させるいわゆる乾燥流延の場合には、温調機33bは、バックアップローラ33を加熱する。
なお、流延支持体は、ベルト30に限定されない。例えば、ベルト30に代えて、周方向に回転するドラム(図示無し)を流延支持体として用いてもよい。乾燥流延の場合には、ベルト30を用いることが多く、冷却流延の場合にはドラムを用いることが多い。ドラムを流延支持体として用いる場合には、ドラムの内部に伝熱媒体を通過させることにより、ドラムの周面の温度を調整し、このドラムを通じて流延膜32の温度を制御する。
剥取ローラ35は、流延膜32がベルト30から剥ぎ取られる剥取位置を一定に保持するためのものであり、軸方向がバックアップローラ33の軸方向と平行になるように配される。フィルム12が搬送方向Z1に引っ張られ、このフィルム12を剥取ローラ35が周面で支持することにより、流延膜32は所定の位置でベルト30から剥がされる。この連続的な剥ぎ取りにより、フィルム12が長尺に形成される。
流延装置15の内部には、ドープ11、流延膜32、フィルム12のそれぞれから蒸発して気体となった溶媒を凝縮させる凝縮器(コンデンサ)が備えられる。この凝縮器で液化した溶媒は、チャンバ36の外部に配された回収装置へ案内され、この回収装置で回収される。なお、凝縮器と回収装置との図示は略す。
ポリマーとしてTACを用いる場合には、フィルム12はTACからなる単層構造であることが好ましい。これに対し、ポリマーとしてDACを用いる場合には、フィルム12は複層構造であることが好ましい。好ましい複層構造は、DACからなる層の一方の面にTACからなる層が設けられている構造である。より好ましい複層構造は、DACからなる層の一方の面及び他方の面にそれぞれTACからなる層が設けられている構造である。このようなDACからなる層をもつ複層構造の光学フィルムは、溶液製膜方法でつくることが好ましく、同時共流延もしくは逐次流延でつくることが好ましい。同時共流延の場合の流延ダイ31は、周知のマルチマニホールドダイである。マルチマニホールドダイに代えて、フィードブロックとシングルマニホールドダイとを組み合わせて用いてもよい。フィードブロックは、供給されてきた複数種類のドープを内部で合流させ、合流した流れをシングルマニホールドダイへ送る。
フィルム12は、ローラ40により、流延装置15から第1テンタ16へ案内される。第1テンタ16は、後述する第2テンタ20による第1延伸工程と第2延伸工程との前の予備延伸処理を行う(予備延伸工程)ためのものである。第1テンタ16は、フィルム12の各側部を複数のクリップ16aで挟持(把持)することにより保持するいわゆるクリップテンタであり、クリップ16aが所定軌道を走行する。クリップ16aの走行によりフィルム12は搬送される。
第1テンタ16はエア供給部16bとダクト(エア流出部)16cとを備える。エア供給部16bがダクト16cに対して、所定の温度の乾燥した空気(以下、乾燥空気と称する)を送り、ダクト16cから乾燥空気がフィルム12へ送られる。これにより、第1テンタ16を通過する間にフィルム12は乾燥が進む。この第1テンタ16では、フィルム12の乾燥をすすめることにより、フィルム12の残留溶媒量を3質量%以上20質量%以下の範囲内にすることが好ましい。なお、本明細書における残留溶媒量とは、残留溶媒量を求めるべき測定対象のフィルム12の質量をX、このフィルム12を完全に乾燥した後の質量をYとするときに、{(X−Y)/Y}×100で求めるいわゆる乾量基準の値である。なお、「完全に乾燥」とは溶媒の量が厳格に0(ゼロ)である必要はない。例えば、110℃で3時間、測定対象のフィルム12に対して乾燥処理を行った後の質量をYとすればよい。
なお、本実施形態においては、第1テンタ16としてクリップテンタを用いているが、クリップテンタに代えて、ピンテンタを用いてもよい。ピンテンタは、フィルム12の側部に複数のピンを貫通して保持するピンプレートを有し、このピンプレートが所定軌道を走行することにより、フィルム12は搬送される。ピンテンタを第1テンタ16として用いる場合も、クリップテンタを用いる場合と同様に、フィルム12の乾燥をすすめることにより、フィルム12の残留溶媒量を3質量%以上20質量%以下の範囲内にすることが好ましい。後述の第2テンタ20へ案内する前にフィルム12を幅方向に伸ばす場合、すなわち幅方向に延伸する場合には、第1テンタ16はクリップテンタとすることが多い。
第1切除装置17は、フィルム12の各側部をカットする切断刃(図示無し)を備える。フィルム12が切断刃に連続的に案内されて、各側部を切り離すことにより第1テンタ16でのクリップ16aによる保持跡を除去する。前述のようにクリップテンタに代えてピンテンタを第1テンタ16として用いる場合には、第1切除装置17は各側部を切り離すことによりピンによる保持跡を除去する。
本実施形態では、フィルム12を第1テンタ16で乾燥してから第2テンタ20に案内する。しかし、第1テンタ16は必ずしも用いなくともよい。しかし、TACからなる2層の間にDACの層を備える複層構造のフィルムを製造する場合には、第1テンタ16を用いてこれにより幅方向に延伸することが好ましい。なお、乾燥流延の場合にはピンテンタを用いなくてもよい。
第1切除装置17で両側部を切除されたフィルム12は、第2テンタ20に案内される。フィルム12は、残留溶媒量を20質量%以下にされてから第2テンタ20に案内される。本実施形態では、前述の通り、第1テンタ16により残留溶媒量が20質量%以下になるまでフィルム12を乾燥している。第2テンタ20は、後述の第1延伸処理と第2延伸処理とを行うためのものである。第2テンタ20及び第1延伸処理と第2延伸処理との詳細については、別の図面を用いて後述する。
第2切除装置21は、第1切除装置17と同じ構成を有する。フィルム12を切断刃に連続的に案内して、第2テンタ20でのクリップ50(図2参照)による保持跡が除去されるように各側部を切り離す。
乾燥室25には、フィルム12を周面で支持するローラ41が複数備えられる。これら複数のローラ41の中には、周方向に回転する駆動ローラがあり、この駆動ローラの回転によりフィルム12が搬送される。乾燥室25には、加熱された乾燥空気が供給されている。この乾燥室25を通過させることによりフィルム12をさらに乾燥する。
冷却室26には、室温の乾燥空気が供給されている。室温とは、15℃以上30℃以下の範囲内の温度である。この冷却室26を通過させることにより、フィルム12を降温させる。温度が低下したフィルム12は、冷却室26から巻取装置27に案内されて巻芯42に巻き取られる。
第2テンタ20は、図2,図3に示すように、フィルム12の搬送路を囲んでこの搬送路及び周辺を外部空間と仕切るチャンバ43を備える。チャンバ43は、搬送方向Z1の上流側から順に、予熱エリア45、第1延伸エリア46、第2延伸エリア47及び冷却エリア48を有する。ただし、チャンバ43は、予熱エリア45と第1延伸エリア46と第2延伸エリア47と冷却エリア48とがそれぞれ独立した空間となるように区画する仕切り部材が内部に設けてあるものではない。予熱エリア45と第1延伸エリア46と第2延伸エリア47と冷却エリア48とは、後述のように、クリップ50の走行軌道と、第1〜第4給気室55a〜55dのそれぞれから流出する乾燥空気とにより空間的に形成される。
第2テンタ20は、フィルム12の側部を把持する複数のクリップ50と、クリップ50の走行軌道を成すレール51,52と、乾燥空気を流出するダクト(エア流出部)55と、ダクト55に所定条件の乾燥空気を送り込むエア供給部56とを備える。レール51,52はフィルム12の搬送路の両側に設置される。
複数のクリップ50は、所定の間隔をもってチェーン(図示せず)に取り付けられている。このチェーンは、レール51とレール52とにそれぞれ取り付けられており、レール51,52に沿って移動自在とされている。チェーンは、予熱エリア45よりも上流側に配されるターンホイール57と、冷却エリア48の下流端に配されるスプロケット58とに噛み合っている。スプロケット58が回転することにより、チェーンは連続走行する。チェーンの走行により、クリップ50はレール51,52に沿って移動する。
予熱エリア45よりも上流には、クリップ50にフィルム12の側部の把持を開始させる把持開始部材(図示無し)が設けられ、冷却エリア48の下流側には、クリップ50にフィルム12の側部の把持を解除させる把持解除部材(図示無し)が設けられる。これにより、フィルム12は、予熱エリア45よりも上流でクリップ50に把持され、クリップ50がレール51,52に沿って移動することで長手方向へ搬送され、予熱エリア45と第1延伸エリア46と第2延伸エリア47と冷却エリア48とを順次通過する。予熱エリア45と第1延伸エリア46と第2延伸エリア47と冷却エリア48とを通過する間にフィルム12は予熱エリア45と第1延伸エリア46と第2延伸エリア47と冷却エリア48とにおいて後述の所定の処理が施され、冷却エリア48の下流端で把持を解除される。
レール51とレール52とは、所定のレール幅で互いに離間している。なお、本明細書においては、チェーンに取り付けられているクリップ50はレール上を移動するので、フィルムの幅とレール幅とは等しいものとみなす。レール幅は、予熱エリア45では幅W1と一定である。これにより、予熱エリア45では、フィルム12は幅を規制された状態で一定の幅を保持しながら搬送される。
第1延伸エリア46は、第1延伸処理を行う(第1延伸工程)ためのものであり、搬送方向Z1、すなわち下流に向かうに従ってレール幅は次第に広くなる。これにより第1延伸エリア46では、フィルム12は搬送されながら幅方向に延伸されることにより、幅を拡げられる。具体的には、第1延伸エリア46に導入されるフィルム12の幅をW1、第1延伸エリア46を出るフィルム12の幅をW2とするときに、第1延伸エリア46でのレール幅を調整することにより、W2/W1で求める延伸倍率を1.5倍以上にし、より好ましくは、1.5倍以上2.2倍以下にする。ここで、搬送方向Z1とフィルム12の側縁12eが通過する通過路とのなす角を延伸角度と称し、第1延伸エリア46における延伸角度をθ1とする。
延伸角度θ1は、一定である。目的とする光学特性をフィルム12に発現させる観点で、延伸角度θ1は0°より大きく10°以下であることが好ましい。延伸角度θ1が10°以下であれば、フィルム12は第2テンタ20内で破断しにくいので、好ましい。
第1延伸エリア46に連続して設けられる第2延伸エリア47は、第2延伸処理を行う(第2延伸工程)ためのものである。ここで、第2延伸エリア47における延伸角度をθ2とする。第2延伸エリア47においては、搬送方向Z1、すなわち下流に向かうに従い第1延伸エリア46と同様にレール幅は次第に広くなる。これにより、第2延伸エリア47では、フィルム12が、搬送されながら幅方向へ延伸されることにより幅を拡げられる。しかし、延伸角度θ2は延伸角度θ1よりも小さく設定される。したがって、第2延伸エリア47における単位時間あたりの幅の広がりの度合いは第1延伸エリア46におけるよりも小さい。本実施形態では第2延伸エリア47における延伸角度θ2を一定にしてある。なお、第2延伸エリア47を出るフィルム12の幅をW3とする。
TACからなる2層の間にDACの層を備える複層構造のフィルム12を製造する場合には、W3/W1で求める延伸倍率は、1.51倍以上2.5倍以下の範囲内とすることが好ましく、1.55倍以上2.2倍以下の範囲内とすることがより好ましく、1.6倍以上2.0倍以下とすることがさらに好ましい。W3/W1で求める延伸倍率を1.51倍以上とすることにより、1.51倍未満の場合と比べて、目的とするレタデーションが確実に発現する。W3/W1で求める延伸倍率を2.5倍以下とすることにより、2.5倍よりも大きい場合に比べて、フィルム12の内部ヘイズの上昇、すなわち透明性の低下が抑制され、かつ、破断も防止される。
冷却エリア48は、冷却処理を行う(冷却工程)ためのものであり、レール幅は一定とされる。これにより、冷却エリア48では、フィルム12は幅をW3で一定に保持された状態で搬送される。
ただし、予熱エリア45及び冷却エリア48におけるレール幅に関する上記「一定」とは、厳密である必要はない。つまり、目的とする光学特性を発現させるために、予熱エリア45と冷却エリア48とのそれぞれにおいて、上流から下流にかけて幅W1、幅W3でそれぞれ略一定と言える程度にレール幅を若干変化させる態様でもよい。
図3に示すように、ダクト55は、フィルム12の搬送路との間隔が略一定となるように、搬送路の上方に設けられる。なお、搬送路の下方にも、搬送路との間隔が略一定となるように、ダクト55と同様の構成をもつダクトを設けているが、図示は略す。ダクト55の下部には、フィルム12の幅方向Z2に延びたスリット61が形成されており、スリット61は搬送方向Z1に沿って複数設けられている。これに対し、搬送路の下方のダクト(図示無し)では、各スリットは、上部に形成されている。なお、搬送方向Z1と幅方向Z2とは直交する。
ダクト55の内部は、複数の仕切り板62により第1〜第4給気室55a〜55dに区画されている。なお、本実施形態においては、図3に示すように、第1〜第4給気室55a〜55dのスリット61をそれぞれ複数としている。具体的には、第1給気室55aのスリット61はひとつ、第2〜第4給気室55b〜55dのスリット61はそれぞれ3つである。しかし、各給気室55a〜55dにおける各スリット61の数はこれに限られない。つまり、第1給気室55aにおけるスリット61の数を1または3以上、第2〜第4給気室55b〜55dにおけるスリット61の数を1、2,4以上のいずれにしてもよい。
エア供給部56は、ダクト55の第1〜第4給気室55a〜55dに乾燥空気を供給する。エア供給部56は、第1〜第4給気室55a〜55dにそれぞれ供給する各乾燥空気の温度を独立して制御する温調機(図示無し)を備える。この温調機により、所定温度に調節された乾燥空気が、それぞれ第1〜第4給気室55a〜55dを介して予熱エリア45、第1延伸エリア46、第2延伸エリア47、冷却エリア48へ供給される。なお、各給気室55a〜55d内の温度は一定でもよいし、あるいは、さらに温度領域をフィルム12の搬送方向Z1で細分化されていてもよい。
第1給気室55aからの乾燥空気の供給により、フィルム12を第1延伸エリア46へ入る前に予め加熱する。この予熱エリア45による加熱により、第1延伸エリア46での延伸が迅速に開始されるようになるとともに、第1延伸エリア46での延伸の際に、フィルム12に対して幅方向Z2でより均一な張力が付与されるようになる。
ここで、フィルム12のガラス転移点をTg(℃)とする。第2給気室55bからの乾燥空気の供給により、第1延伸エリア46では、フィルム12を加熱してフィルム12の温度を(Tg+10℃)以上(Tg+50℃)以下の範囲内に維持する。第1延伸エリア46においてフィルム12の温度を(Tg+10℃)以上にすることにより、内部ヘイズの上昇が確実に抑制される。また、第1延伸エリア46においてフィルム12の温度を(Tg+50℃)以下にすることにより、目的とする厚み方向レタデーションRthが確実に発現する。また、(Tg+50℃)以下にすることにより、フィルム12が弛みにくくなるので、弛みによる傷の発生が防止される。TACからなる2層の間にDACの層を備える複層構造のフィルム12を製造する場合には、第1延伸エリア46におけるフィルム12の温度は、より好ましくは(Tg+10℃)以上(Tg+40℃)以下の範囲内であり、さらに好ましくは(Tg+10℃)以上(Tg+30℃)以下の範囲内である。
第2延伸エリア47におけるフィルム12の温度は、製造する光学フィルムのレタデーション等の光学特性と、第1延伸エリア46での延伸によりフィルム12の内部に残留した応力(残留応力)を緩和させる緩和作用の度合いとに基づき設定する。この緩和作用により、フィルム12中の分子配向を目的とする状態にする。
第2延伸エリア47においては、フィルム12の温度を、搬送方向Z1に向かうに従い、第1延伸エリア46におけるフィルム12の温度から下げていくことが好ましい。この降温は、連続的な下降でもよいし、段階的な下降でもよい。第2延伸エリア47におけるフィルム12の温度は、(Tg−50℃)以上(Tg+50℃)以下の範囲内にすることが好ましい。これにより、第2延伸エリア47においてθ1よりも小さい延伸角度θ2で延伸処理を行っても、内部ヘイズが上昇せず、目的とする厚み方向レタデーションRthがフィルム12に発現するとともに、湿熱耐久試験によるレタデーションの変化が小さく抑えられる。第2延伸エリア47におけるフィルム12の温度は、(Tg−30℃)以上(Tg+50℃)以下の範囲内にすることがより好ましい。より具体的には、第2延伸エリア47では、フィルム12の温度を(Tg−50℃)まで下げることが好ましく、Tg−30℃まで下げることがより好ましい。
第1延伸エリア46におけるフィルム12の温度を(Tg+10℃)以上(Tg+50℃)以下の範囲内という高温にして、第2延伸エリア47でこの温度を維持すると、フィルム12が弛んで各装置とぶつかる等干渉してしまい、その結果フィルム12に傷がつく場合がある。しかし、第1延伸エリア46から供給されてきたフィルム12の温度を第2延伸エリア47において上記の温度にすることにより、フィルム12には傷が付かない。
上記の通り、第1延伸エリア46では、フィルム12の温度を(Tg+10℃)以上(Tg+50℃)以下の範囲内にした状態で、延伸角度θ1で幅方向に延伸することによりフィルム12の幅を1.5倍以上にする第1延伸処理を行う(第1延伸工程)。また、第2延伸エリア47では、第1延伸エリア46での延伸角度θ1よりも小さな延伸角度θ2でフィルム12を幅方向に延伸する第2延伸処理を行う(第2延伸工程)。これにより、得られるフィルム12は、透明性に優れ、湿熱耐久試験を経てもレタデーションの変化が小さく抑えられる。また、フィルム12の厚みが薄いものほど、これらのレタデーションの変化の抑制はより顕著である。なお、予熱エリア45,第1延伸エリア46,第2延伸エリア47における第1〜第3給気室55a〜55cからの乾燥空気による加熱により、フィルム12の乾燥はさらに進められる。
冷却エリア48では、第2延伸エリア47で目的とする光学特性及び分子配向となったフィルム12を、乾燥空気により冷却して分子を固定する。なお、図3では、煩雑さを避けるために、クリップ50やターンホイール57、スプロケット58の図示を略す。
第1延伸工程から第2延伸工程へ切り替えるタイミング、すなわち第1延伸エリア46と第2延伸エリア47との境界の位置は、目的とする性能を得るために適宜選択してもよい。しかし、第2テンタ20の搬送方向Z1における長さは通常長さに制約があり、その中で予熱エリア45における予熱処理と、冷却エリア48における冷却処理との時間を確保する必要がある。そこで、予熱処理の時間Taと、第1延伸処理の時間Tbと、第2延伸処理の時間Tcと、冷却処理の時間Tdとを、下記の(1)及び(2)を満たす時間に設定する。これにより、第1延伸工程から第2延伸工程へ切り替えるタイミングが設定され、湿熱耐久試験によるレタデーションの変化が確実に抑制される。なお、各時間Ta〜Tdは、各エリア45〜48をそれぞれフィルム12が通過する時間であるので、各エリア45〜48の搬送方向Z1における長さを調節することにより下記の(1)及び(2)を満たす時間を設定することができる。
0.5≦(Ta+Td)/(Tb+Tc)≦3.0・・・(1)
0.2≦(Tb/Tc)≦4.5 ・・・(2)
延伸角度θ1から延伸角度θ2へ延伸角度が変化する際の変化量も目的とする性能を得るために適宜選択してもよい。しかし、(θ2/θ1)×100(単位;%)で表す角度変化率が40%を超えて大きい場合には、湿熱耐久試験によるレタデーションの変化の抑制効果が低減する。また角度変化率が0%の場合には、θ1=θ2なので従来のテンタでの延伸条件と同じであるので、湿熱耐久試験によるレタデーションの変化率が大きい。角度変化率は0.5%以上40%以下の範囲内が好ましく、1%以上30%以下の範囲がより好ましく、1.5%以上20%以下の範囲内が特に好ましい。この第2テンタ20での第1延伸処理と第2延伸処理とを行うことにより、フィルム12は光学フィルムとしての機能を発現する。
なお、第2テンタ20において上記の第1延伸処理と第2延伸処理とを行う場合には、第1テンタ16における予備延伸工程は、フィルム12の温度を140℃以下に保った状態でフィルム12を幅方向に延伸することが好ましい。この第1テンタ16における予備延伸処理の延伸倍率は、1.01倍以上1.20倍以下の範囲内にすることが好ましい。これにより、湿熱耐久試験によるレタデーションの変化率が、より確実に小さく抑えられる。なお、第1テンタ16における延伸倍率は、第1テンタ16に入るフィルム12の幅をW4、第1テンタ16を出るフィルム12の幅をW5とするときに、W5/W4で求める。
第1テンタ16は第2テンタ20と同じくレール上を移動する複数のクリップ16a(図1参照)をもつ。したがって、レール間の距離を搬送方向Z1に向かうに従い拡げて設定することにより、フィルム12を幅方向に延伸する。この延伸によりフィルム12は幅を拡げられる。また、第1テンタ16は、第2テンタ20と同じく、ダクト16c(図1参照)とエア供給部16b(図1参照)とを有し、エア供給部16bからの乾燥空気により、フィルム12の温度を調節する。
第1テンタ16における上記延伸倍率及び温度の予備延伸処理は、TACからなる2層の間にDACを備える複層構造のフィルム12を製造する場合には、湿熱耐久試験によるレタデーションの変化率を小さく抑える観点で、特に有効である。
上記の実施形態は、溶液製膜過程で幅方向Z2に延伸する場合であるが、本発明はこの態様に限定されるものではない。例えば、一旦製造されたポリマーフィルムを幅方向Z2に延伸するいわゆるオフライン延伸の場合にも、第2テンタ20による上記の第1延伸処理と第2延伸処理とを行ってもよい。これにより、オフライン延伸で製造されるフィルムは、湿熱耐久試験によるレタデーションの変化率が小さく抑えられ、光学フィルムとして用いることができる。特に、TACからなる2層の間にDACからなる層を備える複層構造のフィルムを、オフライン延伸して光学フィルムにする場合には、特に顕著な効果が得られる。
一旦製造されたポリマーフィルムとしては、溶融押出で製造された溶媒が非含有のポリマーフィルムや、溶液製膜で製造され、残留溶媒量が数%未満というように実質的に非含有と通常みなすようなポリマーフィルムがある。この場合には、上記の実施形態におけるフィルム12を、溶媒が非含有あるいは実質的に非含有とみなすポリマーフィルムに代えて実施する。上記のように、オフライン延伸に供するフィルムは、溶液製膜方法と溶融押出方法とのいずれの方法で製造されたものであってよい。また、溶液製膜方法で製造されたポリマーフィルムあるいは溶液製膜の過程におけるフィルム12に対して本発明を適用する場合には、本実施形態のように単層構造のものであってもよいし、同時共流延と逐次流延等による複層構造のものであってもよい。
湿熱耐久試験によるレタデーションの変化率を抑えた上で、さらに、フィルム12の透明性を確保するためには、乾燥室25の内部、または乾燥室25と冷却室26との間に、例えば図4に示す水蒸気接触装置120を設けることが好ましい。本実施形態では、乾燥室25の内部に水蒸気接触装置120を設けてある。
水蒸気接触装置120は、フィルム12に水蒸気を接触させ、フィルム12を後述の温度範囲に維持する水蒸気接触処理を行うためのものである。水蒸気接触装置120は、結露防止処理ケーシング140と、湿潤気体接触ケーシング141とを備え、湿潤気体接触ケーシング141は結露防止処理ケーシング140内に設けられる。また、水蒸気接触装置120は、フィルム12を搬送するローラ41が結露防止処理ケーシング140及び湿潤気体接触ケーシング141の各内部に複数配されている。
結露防止処理ケーシング140には、フィルム12を内部に導入するための入口140bと、フィルム12を外部へ出すための出口140cとが形成されている。湿潤気体接触ケーシング141には、フィルム12を内部に導入するための入口141bとフィルム12を外部へ出すための出口141cとが形成されている。フィルム12は、ローラ41に案内されて、入口140bから結露防止処理ケーシング140内に入り、その後、入口141bから湿潤気体接触ケーシング141内に入る。フィルム12は、湿潤気体接触ケーシング141内を通過して、出口141cから出て、結露防止処理ケーシング140を通過して出口140cから出る。
結露防止処理ケーシング140は、結露防止処理を行うためのものであり、内部に低露点乾燥気体404が充填される。低露点乾燥気体404は、露点がフィルム12の温度よりも低い乾燥した気体である。湿潤気体接触ケーシング141は、フィルム12に対して湿潤気体接触処理を行うためのものであり、内部に湿潤気体400が充填される。湿潤気体400は、水蒸気を含む気体である。
湿潤気体接触ケーシング141は、送りダクト142及び戻りダクト143により、湿潤気体供給設備145と接続する。湿潤気体供給設備145は、戻りダクト143を介して、湿潤気体接触ケーシング140の内部の気体を回収気体300として回収する。湿潤気体供給設備145は、回収気体300から所定の条件に調節された湿潤気体400をつくり、送りダクト142を介して、湿潤気体400を湿潤気体接触ケーシング141に供給する。
湿潤気体接触ケーシング141におけるフィルム12の温度は、湿潤気体400によって調節される。湿潤気体接触ケーシング141での湿潤気体接触処理は、フィルム12の温度を100℃以上150℃以下の範囲内に保持しながら、このフィルム12を相対湿度が20%RH以上の湿潤気体400と、5秒以上60分以下の範囲内で接触させることが好ましい。より好ましくは、フィルム12の温度を100℃以上140℃以下の範囲内に保持しながら、このフィルム12を相対湿度が25%RH以上の湿潤気体400と、30秒以上30分以下の範囲内で接触させることであり、さらに好ましくは、フィルム12の温度を100℃以上130℃以下の範囲内に保持しながら、このフィルム12を相対湿度が30%RH以上の湿潤気体400と、1分以上15分以下の範囲内で接触させることである。
結露防止処理ケーシング140は、ダクト122及び123により、低露点乾燥気体供給設備121と接続する。低露点乾燥気体供給設備121は、湿潤気体供給設備145と同様の構成を有し、ダクト123を介して結露防止処理ケーシング140にある低露点乾燥気体404の一部を回収する。低露点乾燥気体供給設備121は、所定の温度の新たな低露点乾燥気体404をつくり、ダクト122を介して結露防止処理ケーシング140へ新たな低露点乾燥気体404を供給する。これにより、結露防止処理ケーシング140内には低露点乾燥気体404が充填される。
水蒸気接触装置120の作用を説明する。第2テンタ20で第1延伸工程と第2延伸工程とを経たフィルム12は、乾燥室25に案内され、乾燥室25内に設けられた水蒸気接触装置120の結露防止処理ケーシング140へ案内される。フィルム12は、結露防止処理ケーシング140へ案内されると、低露点乾燥気体404に接触する結露防止処理が為される。これにより、湿潤気体接触ケーシング141へ入っても、フィルム12に結露が生じることが防止される。また、湿潤気体接触ケーシング141が結露防止処理ケーシング140内に設けられているため、湿潤気体接触ケーシング141の外壁面での結露が防止され、外壁面での結露により生じた水滴がフィルムに滴下することも無い。
フィルム12は、結露防止処理ケーシング140から湿潤気体接触ケーシング141へ案内される。フィルム12には、湿潤気体接触ケーシング141において、湿潤気体400と接触させる湿潤気体接触処理が為される。湿潤気体400に接触すると、フィルム12は水分子を吸収する。この結果、フィルム12に含まれるセルロースアシレートのガラス転移点Tgが低下するとともに、フィルム12における水分子の拡散が促進される。フィルム12における水分子の拡散の促進により、セルロースアシレート分子の高次構造がより安定な構造に遷移しやすくなる。このため、単なる熱処理に比べ、セルロースアシレート分子の構造が短時間で安定化する。この結果、湿熱耐久試験の前後におけるレタデーション、特に、厚み方向レタデーションRthの変動量ΔRthがより小さいフィルム12が得られる。以上により、第2テンタ20を経たフィルム12には、結露防止処理と湿潤気体接触処理とからなる水蒸気接触処理が行われる(水蒸気接触工程)。
湿潤気体接触処理の前後において、低露点の加熱された高温乾燥気体に接触させて、任意のフィルム温度、搬送張力にて、一定時間熱処理する。この熱処理は、通常知られている条件範囲で任意に実施することができる。
フィルム12は、光学フィルムとして使用される。具体的には、フィルム12は、偏光板に用いられ光源からの光を光学的に補償する位相差フィルムとして、特に好ましく用いることができる。中でもVA用位相差フィルムやIPS用位相差フィルムとして、特に有効である。また、フィルム12は、透明性に優れ、温度や湿度条件が変化した際にもレタデーションの変化が小さく抑制されるので、これを用いた表示装置は、大画面で輝度が高く、環境変化に対して安定した表示性能を示す。
まず、表1に記載のようにアシル基の置換度が異なる2種類のセルロースアシレートを調製した。サンプル名はそれぞれC2、C4とした。サンプル名がC2のセルロースアシレートはTAC、サンプル名がC4のセルロースアシレートはDACである。調製の際には、触媒として硫酸を用いた。この触媒のセルロースアシレート100質量部に対する添加量は7.8質量部である。アシル置換基の原料となるカルボン酸を添加し40℃でアシル化反応を行った。アシル基の種類、置換度の調整は、カルボン酸の種類、量を調整することで行った。また、アシル化後に40℃で熟成を行った。さらにこのセルロースアシレートの低分子量成分をアセトンで洗浄し除去した。
以下に示す処方のドープを2種調製した。
(ドープC2)
セルロースアシレート:表1に記載のC2 100質量部
添加剤A:表2のA−3 11.3質量部
化合物D:化1に示す化合物D 4質量部
ジクロロメタン 406質量部
メタノール 61質量部
(ドープC4)
セルロースアシレート:表1に記載のC4 100質量部
添加剤A:表2のA−3 19質量部
化合物D:化1に示す化合物D 4質量部
ジクロロメタン 406質量部
メタノール 61質量部
また、以上の2つのドープのいずれにも、マット剤分散液を混合、攪拌した。微粒子であるマット剤(AEROSIL R972、日本エアロジル(株)製、2次平均粒子サイズ1.0μm以下)は、セルロースアシレート100質量部に対して0.13質量部とした。
なお、添加剤Aは、ポリエステルであり、このポリエステルは、表2に記載のジカルボン酸とジオールとの組み合わせ及び比率によって得られる。表2においては、「芳香族ジカルボン酸」欄の「TPA」はテレフタル酸、「脂肪族ジカルボン酸」欄の「SA」はコハク酸を表す。表2の「ジカルボン酸比」欄は、芳香族ジカルボン酸/脂肪族ジカルボン酸を示し、「ジオール比」欄はジオール1/ジオール2を示す。
以下に示す条件で実験1〜実験9を実施した。実験1〜4はTACからなる単層構造のフィルム12を製造するものであり、表3の「フィルム」の「セルロースアシレート」欄には「TAC」と記載する。実験5〜9はDACからなる層の両面にTACからなる層をそれぞれ配した3層構造のフィルム12を製造するものであり、表3の「フィルム」の「セルロースアシレート」欄には「DAC」と記載する。実験5〜9は、同時共流延により製造した。3層構造のうち露出する2つの表層は、互いに同じドープで形成した。以下の記載においては、3層構造のうちDACからなる層を主層と称する。
[実験1]〜[実験9]
溶液製膜設備10を用いて、ドープC2により、フィルム12を製造し、これらを実験1〜4とした。また、溶液製膜設備10を用いて、ドープC2とドープC4とにより、フィルム12を製造し、これらを実験5〜9とした。実験5〜9においては、ドープC2とC4とを共流延し、ドープC4から主層、ドープC2から表層を形成した。各実験で製造したフィルム12と後述の各比較実験において製造したフィルムとの各厚みは、表2の「フィルム」の「厚み」欄に示す。
各実験について、第2テンタ20の第1延伸エリア46におけるフィルム12の温度(℃)及び延伸倍率W2/W1と、第2延伸エリア47における延伸角度θ2及び延伸倍率W3/W2とは、表3の各欄に示す。なお、延伸角度θ2は、表1の「延伸角度θ2」欄に、第1延伸エリア46における延伸角度θ1と同じ場合には「=θ1」と記載し、θ1よりも小さい場合には「<θ1」と記載する。また、乾燥室25内に水蒸気接触装置120を配し、フィルム12に対して水蒸気接触処理を行った場合には、「水蒸気接触工程の有無」欄に「有」と記載し、行わなかった場合には「無」と記載する。
実験1〜実験9で得られた各フィルム12につき、透明性と湿熱耐久試験によるレタデーションの変化についての評価を以下の方法で行った。各結果は表3に示す。
(1)透明性の評価
透明性は、内部ヘイズ(単位;%)をもって評価した。内部ヘイズは、次の方法で測定した。まず、得られたフィルム12からサンプリングしてサンプルフィルムを得た。サンプルフィルムを25℃、60%RHで2時間以上調湿した後に、2枚のスライドガラス板に流動パラフィンを介して挟み込み、ヘイズメータ(HGM−2DP、スガ試験機製)により、ヘイズを測定した。また、2枚のスライドガラス板にサンプルフィルム無しで流動パラフィンのみを挟み込み、これをブランクサンプルとした。このブランクサンプルのヘイズを前述のヘイズメータで測定した。そして、サンプルフィルムのヘイズ値から、ブランクサンプルのヘイズ値を減じたものを内部ヘイズとした。光学フィルムとして使用する実用上の観点から、内部ヘイズは0.1%以下であると合格と言える。
(2)湿熱耐久試験によるレタデーションの変化の評価
湿熱耐久試験は、フィルム12からサンプリングしたサンプルフィルムについて行った。サンプリングは、フィルムの搬送方向Z1と幅方向Z2とにそれぞれ沿う切断線で矩形に一定の大きさで複数枚切り出すことで行い、それぞれサンプルフィルムとした。
サンプルフィルムについて、湿熱耐久試験前と、試験中とで厚み方向レタデーションRthを求めた。湿熱耐久試験に供する前のサンプルフィルムの厚み方向レタデーションRth0、湿熱耐久試験に供して1日経過時の厚み方向レタデーションRth1、湿熱耐久試験に供して5日経過時の厚み方向レタデーションRth5をそれぞれ求め、{(Rth1−Rth0)/Rth0}×100で求める値と、{(Rth5−Rth0)/Rth0}×100で求める値とを変動量ΔRthとした。このΔRthの値を表3の「湿熱耐久試験によるレタデーションの変化」欄に記載する。
厚み方向レタデーションRthは、下記の方法で求めた。サンプルフィルムを温度25℃、湿度60%RHで2時間調湿した後、自動複屈折率計(KOBRA21DH、王子計測機器(株)製)にて、589.3nmにおけるフィルム面の垂直方向から測定した屈折率と、フィルム面を傾けながら測定した屈折率とから下記式により算出した。なお、下記式において、nZ2はフィルム12の幅方向Z2に対応するサンプルフィルムにおける方向の屈折率、nZ1はフィルム12の搬送方向Z1に対応するサンプルフィルムにおける方向の屈折率、nTHは厚み方向の屈折率、dは厚み(単位;μm)である。
Rth={(nZ2+nZ1)/2−nTH}×d
なお、湿熱耐久試験は、このサンプルフィルムを一定の試験環境内に一定期間継続して置くというものである。サンプルフィルムを置く試験室の内部を温度60℃、相対湿度90%RHでほぼ一定に保つことにより一定の試験環境を設けた。この試験室内にサンプルフィルムを置いた。なお、ΔRthは、湿熱耐久試験前のRthが低いフィルム12ほど大きくなる傾向がある。また、ΔRthが同じ値であっても、湿熱耐久試験前のRthが低いものほどRthの変化が大きいことを意味し、高いものほどRthの変化が小さいことを意味する。ここで、実験3で製造したフィルム12は、実験1で製造したフィルム12や後述の比較実験2で製造したフィルムよりも湿熱耐久試験前のRthは低い。光学フィルムとして使用する実用上の観点から、目的とするRthが同じである場合には、ΔRthは極力小さいことが好ましい。なお、表3の各実験及び下記の各比較実験の結果から、湿熱耐久試験によってRthが上昇することがわかる。
[比較例]
[比較実験1]〜[比較実験7]
溶液製膜設備10を用いて、ドープC2により、フィルムを製造し、これらを比較実験1〜3とした。また、溶液製膜設備10を用いて、ドープC2とドープC4とにより、フィルムを製造し、これらを比較実験4〜7とした。比較実験4〜7においては、ドープC2とC4とを共流延し、ドープC4から主層、ドープC2から表層を形成した。
各比較実験について、第2テンタ20の第1延伸エリア46におけるフィルムの温度(℃)及び延伸倍率W2/W1と、第2延伸エリア47における延伸角度θ2及び延伸倍率W3/W2とは、表3の各欄に示す。これら以外の条件は、実施例と同じである。
比較実験1〜比較実験7で得られた各フィルムにつき、透明性と湿熱耐久試験によるレタデーションの変化についての評価を実施例と同じ方法で行った。各結果は表3に示す。