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JP5322151B2 - 稲わらの糖化法 - Google Patents

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Description

本発明は、稲の植物体地上部を原料とした酵素を用いた糖化法に関するものである。
詳しくは、茎葉部に乾燥重量あたり5%以上のでん粉を含有する稲の植物体地上部を原料とし、且つ、アミログルコシダーゼおよびβ−グルカン分解酵素を含む酵素液を用いて糖化処理することによって、糖化の効率が顕著に高められた糖化法に関するものである。
バイオ燃料への世界的ニーズの高まりに対応して、糖質系バイオマス由来のバイオエタノール製造技術開発競争が世界的規模で繰り広げられている。特に、食料資源と競合しないリグノセルロース系バイオマスの利用技術開発が、欧米のみならず我が国においても最も重要なブレイクスルーとなりうると考えられている。
リグノセルロース系バイオマスの糖化技術開発は約200年の歴史を有しているが、現在、再び活発化している。特に、酸糖化を中心に展開した糖化技術に代わり、セルラーゼを中心とした酵素糖化技術が高い期待を集めている。しかしながら、一般的に、リグノセルロース系バイオマス中の多糖は複雑な構造をとる細胞壁中に埋め込まれており、糖化工程に先立つ前処理工程の開発が不可欠とされていた。
農産廃棄物を中心とした草本系バイオマス原料は、木質系原料と比較して、穏和な前処理工程により酵素糖化効率が上昇するものと期待されており、現在までに、希硫酸・水蒸気爆砕法、アンモニア処理法等の前処理技術開発が精力的に行われてきた。
しかしながら、これらの前処理工程においても、化学薬品の使用に伴うコストや環境負荷の問題などが指摘されており、より穏和で低コストな前処理技術の開発が望まれている。特に、稲わらを中心とするイネ科植物の茎葉を原料とした効率的糖化技術の開発については、我が国や米国、中国、韓国、ベトナム、タイなどにおいて農業政策とバイオマスエネルギー政策との両方に深く関与するものとして、高い期待を集めているところである。我が国でも、農産廃棄物資源として最も豊富な稲わらのバイオエタノール変換技術開発は喫緊の課題となっている。
稲わらをはじめとする単子葉植物系植物細胞壁の前処理技術としては、比較的穏和な処理法が検討されてきた。例えば、2005年まで行われた米国農務省プロジェクト「未来型農業・食品産業システムのための農業イニシアチブ(IFAFS)」では、成分分析データを添えたコーンストーバの均一試料を供給し、多数の機関がそれぞれ手持ちの要素技術(希酸、水蒸気、水酸化カルシウム、アンモニア、アンモニア爆砕等の前処理技術)によるエタノール変換技術について有用性を比較し、それぞれの技術の特徴を評価した(例えば、非特許文献1参照)。また、草本系原料に対する水蒸気爆砕法についても研究が行われている。
しかしながら、これらの方法は、全て、140℃を超える高温での反応、または高濃度の酸・アルカリを用いた反応のいずれかを軸とする前処理であり、反応槽の高度化に伴うコスト、酸・アルカリの回収または処理コストや環境負荷等の問題が解決されていない。
バイオマスの糖化は、可能な限り熱変化やpH変化が少なく、糖化産物の発酵を行う場合には、容易に発酵工程に受け渡すことができるような穏和な方法で行うことが望ましい。既に実用化されているコーンでん粉のドライミルによる糖化技術は、原料の粉砕、100℃前後の比較的低温での加熱および酵素糖化工程により構成されている(例えば、非特許文献2参照)。この技術では、反応装置に係る投資が抑制されるとともに、穏和な酵素反応により化学薬品の使用を抑える点などがメリットとなり、中小規模のバイオエタノールプラント用に急速に普及しているところである。
現在、稲を含むイネ化植物などの草本系バイオマスを原料とした、このような容易な糖化技術の開発が求められている。
Wyman, C. E.,et al., Bioresour. Technol. 2005, 96:1959-1966 山田富明、「バイオ液体燃料」株式会社エヌ・ティー・エス (2007)、pp.91-114
本発明は、上記従来の課題を解決し、稲の植物体地上部を原料とした場合に、強酸・強アルカリを用いた化学的前処理を行わずに、化学薬品の使用に伴うコストや環境負荷の問題のない、容易な操作のみで効率が顕著に高い糖化法を提供することにある。
本発明者は、稲の植物体地上部を原料として用いて糖化する方法において、茎葉部の乾燥重量あたり5%以上のでん粉を含有する稲の植物体地上部を原料とし、且つ、アミログルコシダーゼおよびβ−グルカン分解酵素を含む酵素液を用いて糖化処理することによって、糖化の効率を顕著に高めることができることを見出し、本発明の完成に至った。
本発明は以下に関するものである。
即ち、請求項1に記載の本発明は、下記(A1)〜(A3)に記載の条件を満たす稲の茎葉部を回収し、;前記回収後24時間以内に、40〜130℃での加熱乾燥処理を行い、;粉砕した後に、;下記(B)に記載の酵素を含む酵素液を用いて糖化処理することを特徴とする糖化法に関するものである。
(A1):乾燥重量あたり5%以上のでん粉を含有する稲の茎葉部。
(A2):出穂期にある稲の茎葉部。
(A3):地面から15cmまでの植物体地上部を含む稲の茎葉部。
(B):アミログルコシダーゼ、セロビオハイドロラーゼ活性を有するセルラーゼ、エンドグルカナーゼ活性を有するセルラーゼ、及びβ-グルコシダーゼ。
また、請求項2に記載の本発明は、前記加熱乾燥処理後の稲の茎葉部が、含水率5%以下になったものである、請求項1に記載の糖化法に関するものである。
また、請求項3に記載の本発明は、前記(A1)に記載の条件が、乾燥重量あたり20%以上のでん粉を含有する稲の茎葉部である、請求項1又は2に記載の糖化法に関するものである。
また、請求項4に記載の本発明は、前記酵素液が、さらにヘミセルロース分解酵素を含むものである、請求項1〜3のいずれかに記載の糖化法に関するものである。
また、請求項に記載の本発明は、前記茎葉部に含有される総グルカン量50%以上を糖化してグルコースとして回収することを可能とする、請求項1〜のいずれかに記載の糖化法に関するものである。
また、請求項に記載の本発明は、前記糖化処理の前において、および/または、前記糖化処理において、;前記茎葉部を粉砕したものを湿潤状態又は懸濁状態にして70〜130℃の加熱処理を行うことを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の糖化法に関するものである。
本発明は、稲の植物体地上部を原料とした場合に、強酸・強アルカリを用いた化学的前処理を行わず、化学薬品の使用に伴うコストや環境負荷の問題のない、容易な操作のみで顕著に効率の高い糖化を行うこと、特にはグルコースを生産すること、を可能とする。詳しくは、本発明は、前記原料に含有される総グルカン量の50%以上を糖化することを可能とする。
また、本発明は、低コスト・低環境負荷性の効率的なバイオマス糖化技術の開発に繋がるものであり、特に、我が国のみならず世界中で喫緊の課題となっている、バイオエタノール生産技術開発に新機軸を提供するものとして、極めて重要性が高い、バイオマス糖化技術を提供することを可能とする。
本発明は、稲の植物体地上部を原料として用いて糖化する方法において、茎葉部に乾燥重量あたり5%以上のでん粉を含有する稲の植物体地上部を原料とし、且つ、アミログルコシダーゼおよびβ−グルカン分解酵素を含む酵素液を用いて糖化処理することによって、糖化の効率が顕著に高められた糖化法に関する。
「糖化」とは、多糖類やオリゴ糖のグリコシド結合を切断することにより加水分解し、より低重合度のオリゴ糖や単糖にまで低分子化することをいう。なお、本発明においては、グルコース、マルトース、イソマルトース、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、セロビオース、セロオリゴ糖にまで、望ましくは、グルコースにまで分解することをさす。
本発明において、でん粉含量は、でん粉の熱糊化後にα-アミラーゼおよびアミログルコシダーゼ処理を行うことにより単糖として測定でき、例えば、メガザイム社のTotal Starch Kitを用いて分析することができる。
なお、稲の茎葉部に含有されるでん粉が、貯蔵でん粉に特有のアミロース/アミロペクチン構造を主体としているか否かは不明であり、グリコーゲン状の構造を取っている可能性等も考えられる。
本発明においては、便宜上、α-アミラーゼおよびアミログルコシダーゼによる糖化が可能である高分子を「でん粉」として定義する。
本発明において、総グルカン量は、原料である稲の植物体地上部の加水分解物として得られる全グルコースがグルコースの直鎖多糖を基本骨格とすると仮定し、グルコース量から計算式(グルコース量÷180×162)により求めることができる。
また、本発明の目的の一つは、食料との競合を避けるため、食料に利用されないバイオマス原料を活用することにあるので、原料であるイネ科植物の植物体地上部としては、好ましくは、「成熟した実(お米)を除いた」ものであることが望ましい。
なお、稲のうちで実を食用目的としないもの、即ち、飼料稲やエネルギー用の稲を想定して作られたもので、穂に含まれる種子や花などの生殖器官が食料に相当しないものであれば、「成熟した実を含む植物体地上部」を本発明の糖化法の原料として用いることができる。
さらに、出穂期の稲のように、実が成熟していないものも、穂や実を分離せずに、植物体地上部を全量用いることにより、効率的な原料の運搬、貯蔵や粉砕などが可能となる。
本発明に用いることができる稲の品種系統としては、Oryza sativaとそれを母本とするものを広く利用することができる。
好ましくは、茎葉部にでん粉を多く含有する種類が好ましい。でん粉の含有率は、品種のみならず、栽培方法などにも依存するが、例えば、ジャポニカ型のふくひびき、北陸187号、北陸184号、どんとこい、インディカ型のハバタキ、タカナリなどの品種を挙げることができる。
本発明に原料として用いることができる稲の植物体地上部は、乾燥重量あたり、「茎葉部」に5%以上、好ましくは20%以上のでん粉を含有するものであればよい。
なお、茎葉部に乾燥重量あたり、5%を越すでん粉を含むものと、5%未満のでん粉を含むものが混合していて、全体の平均値が5%以上となる場合も、本発明に用いることがきる原料として含まれる。
本発明の技術を用いれば、茎葉部に5%以上のでん粉を含む稲の植物体地上部1kgからは、約170g以上のグルコースの回収が期待される。また、公知の方法により酵素反応条件を最適化することにより、グルコース回収効率を向上することが可能となる。
本発明に用いることができる「稲の植物体地上部」とは、茎葉部、成熟した実(お米)、稲の花序である穂、などの組織を指すものである。
また、本発明における「茎葉部」とは、葉鞘部や稈部を中心とした組織や葉を指すものであり、引き抜いた際の地下部の一部が混入したものも含むものである。
稲の茎葉部に含有されるでん粉量は、生育段階によって異なることが知られている。例えば、以下、稲において具体的に記載する。
コメ収穫後の稲の穂を除く茎葉部には僅かな量のでん粉が含まれているが、通常の刈り取りを行い常温で風乾させると、でん粉含量は、乾燥重量の0〜2%前後となることがある。
上記乾燥重量は、水分を蒸発させた際の残分の重量から計算する。例えば、105℃程度で乾燥させてほぼ恒量となった時の重量として求めることができる。
なお、本発明に用いる原料を「稲わら」と記載することがある。いわゆる「稲わら」とは、「刈り取った稲の成熟した実(お米)を除く植物体地上部」のことを漠然と指す場合があるが、本発明において「稲わら」とは、稲の植物体地上部を刈り取って回収したものであり、出穂期や成熟期の穂や実を含む植物体地上部全体や、コメ収穫の際に刈り取った成熟した実を除く植物体地上部、などを指すものである。これらは、刈り取った直後のものだけでなく、刈り取った後に乾燥させたものも指すものである。
稲の茎葉部に含有されるでん粉は、出穂期のものでは20%を超えるものもあり、糖質としては重要性が高い(He, Y., H., et al., Plant Prod. Sci. 2005, 8: 546-552.)。
この現象については、古くから、実へのでん粉蓄積と茎葉蓄積でん粉量やその時期との関係という観点から研究が行われてきた(例えば、Nagata, K., et al., Plant Prod. Sci., 2001, 4, 173-183. )。成熟に伴い、このでん粉の大部分は穂へ移行するが、成熟期になっても5%程度から20%以上のでん粉を茎葉部に残す品種の稲が存在し、成熟期に再度茎葉でん粉が蓄積するものも見られる。(例えば、山口弘道&松村修、日作紀、2004, 73, 402-409.)。
具体的には、ジャポニカ型のふくひびき、北陸187号、北陸184号、どんとこいなどの品種を挙げることができ、本発明に用いるのに特に好適である。
なお、稲の茎葉部におけるでん粉の蓄積は、品種のみに依存せず、栽培方法にも大きく依存することから、上記以外の多様な稲の品種系統を用いた場合にも、施肥管理等を中心とした栽培技術により、本発明の原料として用いることができるでん粉量を蓄積した稲の茎葉部を有する稲を栽培することが可能である。
通常、稲の茎葉部のでん粉蓄積量は出穂期近辺でピークとなることが知られている。従って、出穂期前後から成熟期にかけて稲の茎葉を回収することが望ましい。
成熟期には穀粒が得られるが、茎由来のでん粉は穂への転流によって減少する。しかしながら、成熟期に再度でん粉量が増加するケースも見受けられる。通常の穀粒でん粉は、アミロペクチンの房状粒子およびアミロースによって構成される数μm程度のでん粉粒となっており、生でん粉の酵素分解性は低い。
それに対し、出穂期における茎葉部のでん粉は、出穂期以降における穂への糖分転流を想定した酵素分解性の高い構造となっており、このことが本発明におけるアミログルコシダーゼによるでん粉糖化技術に繋がっていると考えられる。
また、出穂期前後を中心とした、二次壁分化が進んでいない時期は、β−(1→3),β−(1→4)−グルカンなどの非晶性β-グルカンが多いことが知られているが、出穂期のβ−(1→3),β−(1→4)−グルカンは、その分解酵素による分解を受けやすい状態で存在し、このことが、本発明における効率的グルコース生成の一因となると考えられる。
その一方で、成熟期の茎葉部について、でん粉含量が高い成熟期では、非でん粉性グルカンの分解率も高く維持されている傾向がある。つまり、でん粉含量が高い茎葉部の植物体地上部に含まれる非でん粉性グルカン部分の酵素糖化を行う上でメリットが存在する。 この原因は不明であるが、地際部分を中心とした茎部にでん粉が多く残存し、その転流機能が残っている段階の茎葉部で通導組織の生存率が比較的高く、木部分化の進行がある程度で留まっている可能性や、でん粉量と相関を示す非デンプン性のグルカンが存在している可能性などが考えられる。
茎葉部のでん粉含量が高い成熟期の稲を刈り取って回収した稲わらを原料として用い、本発明の方法により糖化する場合、グルカン量の50%以上のグルコースを容易に回収することができる。具体的には、1gの稲わらからは、160mg程度以上のグルコースが回収できることとなる。
また、稲の地上部の地面近くの部位である「地際部分(地面から0〜約15cmの地上部)」には、でん粉を多く含有している。しかし、通常の刈り取り機による収穫作業(通常の刈り取り方法)により回収した稲わらでは、この地際部分が含まれる割合が低く、平均でん粉量が低くなる。
そこで、地際部分を含めた回収方法により刈り取りを行うことで、乾燥重量あたりの茎葉部のでん粉含量が高い稲わらを得ることができる。
また、一般的に植物体内には、遊離性糖質として、ショ糖、グルコース、フラクトースが存在することが知られている。
例えば、He, Y., H., et al., Plant Prod. Sci. 2005, 8:546-552では、葉鞘におけるショ糖、グルコースおよびフラクトースの生成や分解に関する代謝が示されている。
また、稲わらには、セルロースが35%程度存在するという分析データが示されているが(例えば、Saha, B. C., J. Ind. Microbiol. Biotechnol., 2003, 30, 279-291)、これまで、稲わらに含有される“遊離性糖質”の存在や利用性については注目されておらず、バイオマス変換研究が行われてこなかった。
また、一般的に稲わらは、収穫後に天日干しまたは野積みなどにより徐々に乾燥される間に、植物体の細胞、および、植物体内や表面に生息する微生物の資化活性が保たれる温度や湿度の条件下に長時間放置されることが少なくない。そのため、一般的な方法で得られる稲わらには、易分解性の遊離性糖質が減少すると考えられる。
本発明の糖化法において、原料の稲の植物体地上部には、「遊離糖質」として、ショ糖、グルコース、フラクトースが含まれているものであることが望ましい。
これらの遊離糖質のうち、稲の植物体地上部に含まれるフラクトース量の定量は、Roe法による分析方法(福井作蔵著、生物化学実験法1「還元糖の定量法」、学会出版センターISBN4-7622-0102-2)を準用することで、稲の植物体地上部の水抽出物中の総フラクトース量の定量が可能である。
ここで、稲の植物体地上部の水抽出物中の“総フラクトース量”は、遊離フラクトース量とショ糖分子中のフラクトース残基の量を反映した値となる。
また、“遊離グルコース量”は、グルコースC-IIテストワコー(和光純薬工業株式会社)によるグルコース定量法により測定することができる。
なお、“ショ糖の量”は、上記測定した総フラクトース量と遊離グルコース量の値を用いることにより、推定することが可能となる。即ち、植物体中の遊離フラクトース量は遊離グルコース量とほぼ同程度の値であるため、ショ糖分子中のフラクトース量を推測することにより、ショ糖の量を推定することが可能となる。
具体的には、以下の式を当てはめることにより各遊離糖質の量を推定できる。
まず、遊離フラクトース量は、次の式(I)によって、推定することができる。
Figure 0005322151
また、ショ糖量は、次の式(II)によって、推定することができる。
Figure 0005322151
そして、上記のように測定、推定した各遊離糖質の量の値から、次の式(III)によって、遊離糖質の総量を推定することができる。
Figure 0005322151
即ち、本発明における、遊離糖質の総量は、ショ糖の量、遊離グルコース量および遊離フラクトース量の和として求めることができる。
本発明では、原料の稲の植物体地上部は、収穫後可能な限り迅速に、“植物体の細胞および植物体内や表面に生息する微生物の資化活性を抑制する処理”を行うことが望ましい。
当該資化活性を抑制する処理は、加熱処理、もしくは、乾燥処理の少なくともいずれかを施すことにより、行うことができる。好ましくは、加熱処理を行うことで、さらに好ましくは両者を組み合わせた処理を行うことで、前記資化活性の抑制効果を向上させることができ好適である。また、乾燥処理を行った後は、当該原料の乾燥状態が維持されるように保存することが望ましい。
当該資化活性を抑制する処理は、前記原料の稲の植物体地上部回収後、可能な限り迅速に、具体的には24時間以内、好ましくは収穫または脱穀後直ちに行うべきである。
回収後の原料の温度や含水率などによって、原料中の遊離性糖質が資化される速度は異なるが、これらの処理を24時間以内に行うことにより、当該原料(バイオマス原料)の変換特性が高い状態で維持されると期待される。
また、当該資化活性を抑制する処理において、加熱処理を施す場合、加熱は、40〜130℃、望ましくは50〜75℃、より望ましくは、50℃以上70℃程度の比較的低い温度での加熱を行う。
なお、本発明の糖化法を商業的プロセスで行う場合、大量の原料の加熱処理を効率的に行うことができるスチーム吹きつけにより行うことができる。商業的プロセスで使用する一般的なスチーム吹きつけの温度は、130℃程度の温度であることから、これが上限の温度となる。
当該加熱処理の処理時間は、処理温度にも大きく依存するが、数秒間〜120時間、100℃以下の温度では、1分間〜72時間程度、行うことにより、当該原料中の遊離糖質を資化する植物体の細胞および前記微生物の殆どを、死滅させることができる。また、胞子の発芽を考慮した、繰り返し加熱処理法も利用することが可能である。
なお、十分な乾燥を行わない加熱処理によって当該資化活性を抑制する処理とする場合には、処理後に外部から微生物が侵入したり胞子等の形態で休眠中の微生物が生育することにより、再度、遊離性糖質の資化が起こる危険性を孕む。そのため、貯蔵を行う際には、原料中に存在する胞子の殺菌を行った後に原料を外部から隔離した状態で貯蔵するか、加熱処理後に乾燥処理を行うことが望ましい。
加熱処理後の当該原料(バイオマス原料)は、外部からの微生物侵入や発生を防ぎつつ、微生物による遊離性糖質の分解が問題とならないような期間の保存を経て、直ちに糖化工程に移行させるべきである。特に、でん粉の糊化温度を越える条件で加熱処理を行った場合、でん粉が吸水し分解性が向上するため、微生物侵入後には、遊離性糖質のみならずでん粉の資化も促進されることとなる。
また、当該資化活性を抑制する処理において、乾燥処理を施す場合、含水率を20%以下、望ましくは5%程度あるいはそれ以下に下げることにより、当該原料中の遊離糖質を資化する微生物の生育が大きく抑制される。
なお、当該乾燥処理は、原料を室内または天日下で風乾させることで行ってもよいが、熱風乾燥または恒温器中での加熱乾燥を行うことにより、短時間で当該原料を乾燥状態にすることができる。また、同時に、上記加熱処理を同時に行うことが可能となる。
なお、上記したように、当該乾燥処理を行った後は、当該原料の乾燥状態が維持されるように保存することが望ましい。
本工程では、上記のように当該資化活性を抑制する処理を行うことによって、前記植物体の細胞および微生物の資化活性を十分に低下でき、当該原料に含まれる遊離糖質であるグルコース、フラクトース、ショ糖の資化を抑えることができる。
また、当該処理によって、原料の稲の植物体地上部は、これら前記遊離性糖質を含有するものとなり、乾燥重量の5%以上、好ましくは、6%以上、具体的には、成熟期において乾燥重量の7%程度またはそれ以上の量の、前記遊離糖質を蓄積させることができる。
このように、本工程を経ることによって、原料の稲の植物体地上部は、遊離性糖質を多く含む原料とすることができるため、本発明の糖化法の糖化効率を大幅に向上させることができ、稲わらをバイオマス原料として高品質化させることが可能となる。
稲の茎葉部を含む植物体地上部をバイオマス原料として利用し糖化する方法においては、特に、刈り取った稲の成熟した実を除く植物体地上部(いわゆる「稲わら」)を用いた研究が行われてきた。
従来、稲わらを原料として、糖化する場合、高熱、圧力または酸・アルカリ等を用いた前処理が必要とされてきた。
その目的は、糖化基質としてのセルロースやヘミセルロースを可能な限り残しつつ、リグニンを除去・乖離させたり、ヘミセルロースに付いたエステルを除いたり、酵素糖化に適した組織構造に改変したりすることによって、次段の酵素糖化を効率化することにある。
しかしながら、高熱、圧力または酸・アルカリ等を用いた過酷な前処理により、糖化基質の溶離・改質や、リグニンの沈着や副反応の促進、そしてそれに伴う有用物質の損耗や発酵阻害・有害物質の生成などが誘導される。
また、耐熱・耐圧容器の製造や加熱・加圧工程または酸・アルカリ処理工程や回収・廃棄工程などにおいて、処理コストや作業安全性管理上の問題が生じることが懸念されてきた。
また、茎葉部にでん粉を多く含む稲については、飼料稲としての利用の観点から注目されてきたため、「飼料消化性」の予測のための品質評価技術として、酵素分解後の定量技術が開発されている。例えば、松山裕城らの報告(畜産草地研究成果情報、2004年3号51-52ページ)が成果として挙げられる。
しかしながら、バイオマスの直接的に「糖化」する(グルコースなど単糖類や低重合度の糖類を生産する)という観点から、茎葉部にでん粉を高い濃度で蓄積した稲の植物体地上部(稲わら)の酵素を用いた加水分解特性を調べた報告は存在しない。
本発明は、稲の植物体地上部を原料として用いて糖化する方法において、強酸・強アルカリを用いた化学的前処理を行わず、化学薬品の使用に伴うコストや環境負荷の問題のない、糖化の効率を顕著に高い、酵素を用いた糖化法に関するものである。
本発明において、酵素を用いた糖化処理とは、アミログルコシダーゼおよびβ−グルカン分解酵素を含む酵素液を用いて、前記原料である稲の植物体地上部の糖化を行うこと指す。
前記原料である稲の植物体地上部を、根から切り離した直後に酵素を直接作用させる際には、酵素の浸透効率が低いことから、適度な粉砕(裁断も含む)を行う。粉砕により表面積が増し、後段の酵素反応を促進する。
粉砕には、回転刃等による裁断、ローラー等による押し潰し、石ヤスリ等による磨り潰し、ハンマーミル等による叩き潰し等の方法などにより行うことができる。
また、本発明においては、前記原料の溶解を細胞壁溶解酵素を用いて行い、表面積を増すことも可能である。粉砕を行えば必然的に反応効率が向上するので、コスト、エネルギー効率、作業効率や環境負荷を考慮する限り粉砕条件を制約する要素はないが、ハンドリングを考慮した場合、長軸で2cm以下、数十μm以上の大きさが主成分となることが望ましい。粒度が小さいと、表面積は増すものの、粉砕コストの上昇、粉塵による作業性の低下や、熱変質などの弊害が生じることとなる。
前記原料の乾燥状態によっては、必要に応じて、粉砕前または後に70℃以下の温度で乾燥を行うことにより、機械による粉砕効率が向上するとともに、データに再現性が得られる。
また、湿潤状態の基質(原料粉末)または基質(原料粉末)の懸濁液を70℃以上、好ましくは80℃以上の温度で加熱処理することにより、でん粉が吸水糊化し、稲わらの酵素糖化速度が向上する。なお、本発明の糖化法を商業的プロセスで行う場合、大量の原料の加熱処理を効率的に行うことができるスチーム吹きつけにより行うことができる。商業的プロセスで使用する一般的なスチーム吹きつけの温度は、130℃程度の温度であることから、これが上限の温度となる。従って、加熱処理温度は、70℃〜130℃、好ましくは80℃〜130℃の範囲の温度である。
加熱処理の時間については、熱交換速度や水分量にも影響されるが、数秒から数十分の間、具体的には、5〜30分間、でん粉の糊化が十分に行われるまでの間行うことが望ましい。
なお、本発明においては、最終的なでん粉変換量のみを考えた場合、この加熱処理工程は必ずしも必要ないことを見出している。しかしながら、酵素の作用性が増し、反応時間の短縮に繋がる点において、加熱処理工程の導入を妨げる理由はない。
当該加熱処理は、でん粉を糊化させるために基質(原料粉末)を湿潤状態にして加熱する際に、基質(原料粉末)の湿潤または懸濁のために水を用いるほか、pH2以上の希薄な酸またはpH12以下の希薄なアルカリを加えた水を用いることが可能である。
当該加熱処理をこのような条件で行うことによって、続く酵素糖化を行う際にpHを3〜7に調整するためのコストを十分に低く抑えることが可能であるとともに、でん粉の糊化を促す工程に加えて僅かの酵素糖化促進効果を期待される。
希酸存在下で前記所定の温度での加熱処理を行うことにより、でん粉の糊化に加え、キシランの部分分解あるいはシリカの構造変化などによる次段酵素処理効率の僅かな向上が期待できる。また、希アルカリ存在下で前記所定の温度での加熱処理を行うことにより、でん粉の糊化に加え、キシランのアセチルエステルの分解あるいはリグニンの構造変化や遊離、シリカの部分的遊離などによる次段酵素処理効率の僅かな向上が期待できる。
当該加熱処理を、希薄な酸または希薄なアルカリを加えた水を用いて行った場合、酸としては、塩酸や硫酸などを用いることができ、アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、アンモニアなどを用いることができる。
また、当該希薄な酸または希薄なアルカリを用いて加熱処理を行った後には、加えた酸またはアルカリを揮発させるか、あるいはそれぞれアルカリまたは酸を加えて、pHを3〜7に調整することが望ましい。このことにより、糊化したでん粉や遊離性糖質の流亡を避けることができる。
また、化学的処理効果を期待するような、上記のような希薄な酸や希薄なアルカリの他にも、予め、酵素の利用に適したpH3〜7程度に調整した緩衝液や弱酸溶液を用いて、でん粉糊化のための加熱処理を行うことができる。
なお、加熱処理の際に、酸素、オゾン、過酸化水素などの酸化剤を使用すれば、リグニン遊離が促されることにより、酵素糖化効率を向上させることが可能となる。
また、加熱処理時には、耐熱性α-アミラーゼを用いることが望ましい。耐熱性α-アミラーゼは100℃前後の高度な加熱処理においても失活しにくい。
この酵素を加熱処理時に利用すれば、当該加熱処理において糊化したでん粉を迅速に消化し、粘度低下によりハンドリング性が向上する。
なお、本発明の特徴である、アミログルコシダーゼによる糖化処理は、このような、既存のα-アミラーゼによる液化技術やプルラナーゼやイソアミラーゼによる枝切り酵素利用技術の導入を妨げるものではない。
また、当該加熱処理は、糖化処理を行う前に行ってもよいし、糖化処理を行っている最中に行ってもよい。好ましくは、糖化酵素の全てが耐熱性を持っている場合には、糖化工程と同時に加熱し、糖化酵素の少なくとも一部が加熱処理時に失活する場合には、糖化処理の前に加熱を行い、酵素が安定に作用する温度に冷却した後に酵素糖化を行うことが望ましい。
本発明における、アミログルコシダーゼおよびβ−グルカン分解酵素を含む酵素液とは、アミログルコシダーゼおよびβ−グルカン分解酵素を含むものである。
また、好ましくは、ヘミセルロース分解酵素、β−グルコシダーゼ、およびα−アミラーゼのうちの少なくとも一つを含有するものであることが好ましい。
また、本発明における、アミログルコシダーゼおよびβ−グルカン分解酵素を含む酵素液は、セロビオハイドロラーゼおよびエンドグルカナーゼの両方の活性を有するものであることが好ましい。
本発明におけるアミログルコシダーゼ(=グルコアミラーゼ)とは、α−グルカンの分解酵素であり、でん粉の非還元末端側からα−(1→4)結合やα−(1→6)結合を加水分解する酵素である。
具体的には、Aspergillus属菌由来の物やRhizopus属菌由来のものなどを挙げることができる。
また、本発明におけるアミログルコシダーゼは、α−アミラーゼ、プルラナーゼやイソアミラーゼのようなエンド型加水分解酵素との併用により、非還元末端数が増加し、ある程度の効率化が可能である。
セルラーゼ製剤などの酵素製剤内には、α−アミラーゼ活性を示すものもあり、このような酵素の作用でアミログルコシダーゼによるグルコース生産(糖化)が促されると考えられる。
なお、一般に、生のでん粉は、酵素消化性の高い画分と難消化性画分から構成されることが知られており、後者はでん粉の由来や処理工程によって変動する。水中でのでん粉の加熱によりでん粉は吸水・糊化し、難消化性画分の消化性が向上するが、組織破砕物などのマトリックス中で糊化すると、ゲル化したでん粉がマトリクス内に留まり回収率が下がる危険性がある。
そのため、従来においては、でん粉の効率的糖化のため、適宜、ジェットクッカー等を用いて、耐熱性α-アミラーゼを含んだ状態で95℃前後に加熱し、糊化させながら液化させる方法を用いてきた。
また、標準的な総でん粉分析法(メガザイム社のTotal Starch Kit=AOAC法996.11、AACC法76.13)では、粉砕試料を80%エタノールで分散させ、耐熱性アミラーゼを加えて直ちに100℃で加熱する方法ででん粉を液化している。また、アミログルコシダーゼ単独での糖化方法も存在するが、80%エタノールによる予備的処理や数時間の加熱処理を伴うものであり、複雑な工程となっている。(He, Y., H., et al., Plant Prod. Sci. 2005, 8: 546-552.、前出文献。)
このような中で、本発明においては、でん粉の糊化は必ずしも必要でないことを見出した。また、アミログルコシダーゼ(=グルコアミラーゼ)を用いたでん粉の糖化により迅速かつ効率的に大部分がグルコースに変換されることが、本発明の原料においても適用できることを見出した。なお、茎葉部にでん粉を多く含有する稲の植物体地上部(稲わら)の糖化を目的とした変換特性データはこれまでに存在しておらず、当該稲の植物体地上部を用いた場合のでん粉の分解特性は未解明であった。
本発明における、糖化処理は、前記原料の糖化処理において、アミログルコシダーゼ分解とともに、β−グルカン分解酵素による分解を行うことを特徴としている。
ここでいうβ−グルカン分解酵素とは、前記原料中のセルロース、β−(1→3),β−(1→4)−グルカン、キシログルカン等のβ-グルカンに対して加水分解活性を示す酵素を広く示し、その中には、セルロース以外の基質に対してより高い活性を示す酵素も含まれることとなる。
また、イネ科植物の幼植物体を中心に広く存在するβ−(1→3),β−(1→4)−グルカンやキシログルカンを切断する酵素もβ-グルカン分解酵素に該当する。
なお、従来技術として、特に、β−(1→3),β−(1→4)−グルカンのβ−(1→3)結合を加水分解するリケナーゼは、β-グルコシダーゼと併用することにより効率的にグルコースを生産することができる。この技術は、AACC法(32−23)やAOAC法(995−16)として知られているが、オオムギや麦汁などを主対象とした技術である。
しかし、β−(1→3),β−(1→4)−グルカンは、植物の成長に伴い減少することが知られているが、茎葉部にでん粉を多く含有する稲の植物体地上部という特殊な原料において、総グルカンに占める様々な多糖のバランスや、β−(1→3),β−(1→4)−グルカンの存在量や分解特性など、バイオマス糖化に関する情報については全く解明されておらず、そのバイオマス成分としての価値は注目されてこなかった。
一般的な、コメ収穫後の稲の植物体地上部は、乾燥重量の30%前後のグルカンを有している。発酵効率90%、蒸留効率100%と仮定した場合、稲わら中のグルコースのみを発酵原料としたバイオエタノール製造時は、9kg台、8kg台、7kg台、6kg台、5kg台または4kg台の乾燥稲わらを使用して1リットルのエタノールを製造するためには、1kgの稲わらからそれぞれ約156g, 174g, 196g, 224g, 261gまたは314g以上のグルカンを加水分解してグルコースに変換する必要がある。
そこで、現在、セルロース由来のグルコースの収率を向上するための検討以外に、乾燥稲わらに含まれるキシランを糖化して得られるキシロースを発酵原料として利用し、エタノールを製造する方法が精力的に検討されている。
しかしながら、キシロース発酵に組換え微生物を用いる方法は、通常の酵母を用いた発酵施設と比較して、高度管理された発酵・廃棄物処理施設の整備が必要となるため、可能ならば、通常の非組換え酵母を用いてグルコースを基質とした発酵を行うことが望まれている。
本発明の糖化法は、バイオマス原料である前記原料に含まれるでん粉のみならず、前記原料に含まれる非でん粉性グルカンをも糖化し、グルコースとして回収できるものである。
また、特には、本発明の糖化法は、前記稲の植物体地上部に含有される総グルカン量のうち、50%以上をグルコースとして回収することができるものである。
また、本発明の糖化法においては、原料として、茎葉部にでん粉を多く含量する稲の植物体地上部を用いることで、原料に含有されるグルカンの糖化効率も高めることができるものである。
前記原料に含有されるでん粉とグルカンの加水分解効率の関係のメカニズムについては、明らかではないが、成熟期のものと同様に、本発明者は、でん粉の多い出穂期の品種系統から得られる、コメ収穫後の稲の植物体地上部(いわゆる「稲わら」)でも、非でん粉性グルカンが少ない傾向があることを見出し、また、成熟期において非でん粉性の易分解グルカン画分が存在し、その量はでん粉含量にかかわらずほぼ一定量であることを発見した。これらの傾向は、成熟期のものと共通しており、でん粉含量が高い稲わらの方が非でん粉性グルカンの分解率が高いという傾向は、非でん粉性グルカンの中に占める易分解グルカンの存在比が高く、結晶性セルロースを主要構成成分とする難分解性グルカンの存在比が低いことが一因となっていると考えられる。
また、本発明者は、出穂期のβ−(1→3),β−(1→4)−グルカンの存在量が成熟期の稲わらと比較して多いことを見出した。前記原料にはβ−(1→3),β−(1→4)−グルカンの存在量が多く、これを基質とするβ−グルカン分解酵素を用いることにより、グルコースの生成量が増す可能性が考えられる。
また、エンドグルカナーゼなどのセルラーゼ製剤中の酵素がこれを基質とすることにより、グルコースの生成量が増す可能性が示唆された。
なお、従来、前記原料に含有されるβ−(1→3),β−(1→4)−グルカンと他成分との相互作用や直接酵素分解の受けやすさについては全く検討されていなかった。
本発明における、β−グルカン分解酵素とは、非晶質のセルロース、結晶性のセルロース、およびβ−(1→3),β−(1→4)−グルカンのうちの少なくとも一つを加水分解する活性を有するものである。
具体的には、「β−グルコシダーゼ」であるセロビアーゼ;、「セルラーゼ」である、セロビオハイドロラーゼ、エンドグルカナーゼ;、「ヘミセルロース分解酵素」である、キシラナーゼ、β−D−キシロシダーゼ、α−L−アラビノフラノシダーゼ、アセチルキシランエステラーゼ、フェルロイルエステラーゼ;、β−(1→3),β−(1→4)−グルカンの分解酵素である、リケナーゼなどを挙げることができる。
本発明における糖化処理に用いる酵素液としては、β−グルカン分解酵素として、上記のうち、少なくともβ−グルコシダーゼおよびセルラーゼを含有するものを用いることができる。また、好ましくは、β−グルコシダーゼ、セルラーゼおよびヘミセルロース分解酵素を含有するもの、β−グルコシダーゼ、セルラーゼおよびリケナーゼを含有するものであることが望ましい。
また、前記セルラーゼとしては、セロビオハイドロラーゼ活性を有するもの、エンドグルカナーゼ活性を有する酵素を含有するものであることが望ましい。
即ち、本発明における前記酵素液としては、セロビオハイドロラーゼ活性またはエンドグルカナーゼ活性を有するものであることが望ましく、さらには、セロビオハイドロラーゼ活性およびエンドグルカナーゼ活性の両方の活性を有するものであることが望ましい。
市販セルラーゼ製剤には、セルロースをはじめとする種々のβ−グルカンに対する分解酵素が含まれているものが多く、例えば、ノボザイムズ・ジャパン社の「Celluclast 1.5L」は、β−(1→3),β−(1→4)−グルカンやキシログルカンの加水分解活性が強く検出される。また、複数の酵素が存在することにより、単独の酵素よりも効果的に糖化を行える可能性がある。
ここでは、その例として、セロビオハイドロラーゼまたはエンドグルカナーゼとしての活性を有するものについて説明する。セロビオハイドロラーゼは結晶性セルロースを、そしてエンドグルカナーゼは非晶性セルロースを効率的に分解する。本発明においては、この両者を併用することで、糖化効率をさらに高めることができる。
本発明の糖化処理に用いる酵素液に含有されるβ−グルカン分解酵素としては、少なくともβ−グルコシダーゼおよびセルラーゼを含有するものである。
セルロースはセルラーゼにより大量のセロビオースを生成する可能性があることから、グルコースの収量を増やすためには、β−グルコシダーゼの利用が有効である。
即ち、β−グルコシダーゼは、セロビオースを基質として加水分解して、グルコースを生成するために有効である。また、セルラーゼの反応産物であるセロビオースの蓄積によるセルラーゼの活性の低下を抑制するために有効である。
なお、本発明による糖化法により糖化産物をバイオエタノールの原料とするにあたり、酵母が資化できないセロビオースを資化性のあるグルコースに変換するという意味においても有効である。
また、キシロースなどの、ヘミセルロース由来の単糖を得るためには、ヘミセルロース分解酵素系を添加することも効果的である。
ヘミセルロース分解酵素とは、キシラナーゼ、β−D−キシロシダーゼ、α−L−アラビノフラノシダーゼ、アセチルキシランエステラーゼ、フェルロイルエステラーゼなどが挙げられる。これらの一部を用いるか、あるいは微生物が生産し、単数または複数のヘミセルロース分解酵素を含む酵素製剤を用いることができる。例えば、ノボザイムズ・ジャパン社の「Viscozyme L」が酵素製剤として該当する。
さらに、糖化効率を高めるためには、リグニンなどの細胞壁を構成する他の成分を分解することにより、原料における新たな基質表面が露出し、他の糖化処理に用いた他の酵素による糖化を促進することができる。
また、稲の植物体地上部に存在するショ糖については、酵母をはじめとする多くの発酵微生物により直接資化されるが、グルコースの収率を上げる必要がある場合には、インベルターゼなどのシュークロース加水分解酵素を用いることが有効である。
なお、従来から行われているセルロースの酵素糖化を想定して化学的前処理を行う方法では、セルロースを不溶性生成物として回収し、化学的前処理に用いた薬液を含む液体は除去されることがあるが、前記薬液の除去とともに可溶性のショ糖も流亡し、糖のロスが生じることとなる。
その一方で、本発明による糖化法では、原料の粉砕物を用いて、適宜、加熱処理をした後に直接糖化液を得るため(液の除去操作が必要ないため)、粉砕後の原料中に含まれる可溶性ショ糖も全て回収することが可能となる。
本発明において、前記糖化処理を行う際には、前記原料である稲の植物体地上部の粉砕物の濃度は、乾物計算で1%(w/v)程度から30%(w/v)程度、好ましくは5%(w/v)程度から20%(w/v)程度とすることが望ましい。
3mmメッシュパス以下程度の粉砕物を用いて糖液を得ることを目的とする場合、糖化処理における酵素反応時間は、30分以上48時間以下程度、好ましくは、30分以上6時間以下とすることが望ましい。
また、糖化処理における酵素反応の温度は、20〜60℃、好ましくは30〜50℃である。また、糖化処理における酵素反応のpHは、pH3〜7、好ましくはpH3.5〜6の間である。
なお、本発明の本質的な部分は、α-グルカンの分解酵素であるアミログルコシダーゼとβ-グルカン分解酵素を作用させることにより、高い糖化効率が得られることにある。
これらの酵素の供給源としては、酵素製剤、精製酵素標品、微生物培養液、あるいは微生物の菌体外・菌体内あるいは菌体表面上の生産物など、様々な可能性を含み、本発明において用いることができる。
本発明では、これらの酵素の少なくとも一部を生産する能力のある発酵微生物を培養し、糖化と同時に発酵を行う場合にも適用されるが、好ましくは、微生物由来の酵素または酵素製剤を反応液に添加して用いることが好ましい。
なお、本発明の原料として、出穂期から成熟期の稲の植物体地上部を原料として用いた場合、その糖化処理液にはヘミセルロース分解物も含まれており、五炭糖発酵酵母などの微生物によりエタノール等の有用物質に変換することが可能となる。
さらには、当該微生物によるエタノール等の発酵残渣には、リグニン残渣、ヘミセルロースやセルロースの残渣や酵素由来のタンパク質が含まれており、飼料や肥料、または燃料としての利用、あるいは、さらなる化学的または生物的変換により化学品またはバイオエネルギーの抽出が可能となる。
また、強酸・強アルカリを用いた化学的前処理を行う従来の方法では、硫酸等による苛酷な前処理を行うことにより、リグニンは化学修飾を受けるため、糖化反応の副産物を回収する際にはその商品価値が低下するが、本発明の糖化法では、前記副産物の変質を最小限に抑えることができる。
本発明の糖化法により、穏やかな方法で原料から糖化液を得ることが可能となり、得られた糖化液を用いてエタノール発酵を行うことにより、エタノールを製造することができる。
前述のように、本発明における糖化法では、強酸・強アルカリ等の反応性の高い化学薬品を用いないことから、硫酸糖化で副生するようなフルフラールや5−ヒドロキシメチルフルフラールなどのエタノール発酵を阻害する物質の生成が抑制されるのみならず、pH調整を容易に行うことが可能となる。即ち、本発明の糖化法で得られた糖化液は、これをエタノール発酵に用いることは、操作の簡便性、効率、コストの点で大きい利点を有する。
また、本発明の糖化法では、加熱処理が行われるため、原料である稲の植物体地上部に付着する大部分の微生物が殺菌されることとなる。
本発明の糖化法で得られた糖化液を用いたエタノール発酵は、酵母、ザイモモナス属細菌など、低重合度の糖類、特にはグルコース、を資化してエタノール発酵を行う微生物を用いて行うことができる。具体的には、酵母であるSaccharomyces cerevisiae (NBRC 0224)を用いて行うことができる。
なお、組換え大腸菌などの遺伝子組換え技術によってエタノール発酵効率を向上させた微生物などを用いて行うことができるが、グルコースやフラクトースなどの六炭糖のみに注目し、酵母やザイモモナス属細菌などの非組換え微生物を用いることにより、遺伝子組換え微生物の拡散防止措置のための設備コストや管理コストを抑えることが可能となる。
本発明の糖化法で得られた糖化液を用いたエタノール発酵は、公知の発酵方法を用いて行うことができる。
本発明においては、糖化処理工程と発酵工程を分離し、得られた糖液をバッチ式または連続式発酵槽に移すことも可能であるが、糖化処理工程と発酵工程を同時に行うという、いわゆる「並行複発酵」を行うことは、省スペース化かつ処理時間短縮などの効果の点から特に望ましい。
当該エタノール発酵に用いる糖化液の糖類の濃度は、0.5%〜30%程度の範囲、望ましくは5%〜30%の範囲である。
糖化液の糖類の濃度が高い方が、発酵効率や蒸留効率が向上するが、操作性を考慮した場合、前記範囲であることが好ましい。例えば、リグノセルロース系原料を懸濁させる際には、かさ高くなり、撹拌等の操作性が低下する。
また、糖化液の糖類の濃度が0.5%程度(好ましくは5%)より低い場合、十分なエタノール量を生産することができず望ましくない。
なお、糖化反応とエタノール発酵を同時に行う並行複発酵を行う際には、生成されることが期待される糖類の濃度が、上記所定の範囲内に入るよう、原料である稲わらの量を調整すべきである。例えば、本発明における糖化法により、乾燥原料(乾燥稲わら)1グラムから0.25グラムのグルコースの生成が期待できる場合、並行複発酵を行う反応液に対して2%以上の前記乾燥原料(乾燥稲わら)を用いることで、0.5%以上のグルコースが生成されることが期待される。
当該エタノール発酵における反応温度は、用いる微生物によって異なるが、酵母の場合には25℃〜50℃の範囲、細菌では25℃〜60℃の範囲内である。反応時間は、酵母の菌体濃度や糖化酵素量、反応温度や撹拌速度などに大きく依存するが、バッチ法では10時間以上48時間以下程度が適当である。
また、糖化反応とエタノール発酵を同時に行う並行複発酵を行った場合、発酵後に、並行複発酵に用いた液を次の原料を含む発酵槽に移動させることにより、液に含まれる糖化酵素と酵母をそのまま次の原料に対して再度作用させることができる。
如上の如く、本発明の糖化法により、化学薬品の使用に伴うコストや環境負荷の問題のない、容易な操作のみで顕著に効率の高い糖化を行うこと、特にはグルコースを生産すること、が可能となり、これまで廃棄の対象であったり、十分な利用がなされていなかった稲の植物体地上部(稲わら)、即ち、具体的には、成熟した実(米)を食用としない稲の品種系統の植物体地上部や、コメ収穫の際に刈り取った成熟した実(米)を除く植物体地上部、エタノール製造の原料などの複合的バイオマスとして利用するシステムを構築することができる。
特に、本発明の糖化法の原料として、成熟した実(米)を食用としない出穂期の稲の植物体地上部を用いる場合、成熟した実(米)を刈り取る(回収する)までの栽培期間に比べて、栽培期間を大幅に短縮することが可能となり、日本全国において二期作以上の実施が可能となり、年間収量を増加させることが可能となる
なお、より高いでん粉含有量をもつ稲の成熟した実を除いた茎葉部(稲わら)が成熟期後期において得られる場合、本発明の技術の応用性は飛躍的に向上するものと考えられる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
実施例1
稲(品種名:ハバタキ)の地際で刈り取り穂を切り取った、出穂期の葉鞘および稈(稲わら)を、70℃で72時間乾燥し、粉砕機(シーエムティ科学高速振動試料粉砕機 TI-100)を用いて90秒間粉砕し、稲わら粉末を調製した。この稲わらの茎葉部の乾燥重量あたりのでん粉率(Total starch kit(メガザイム社)で分析)と総グルカン率(硫酸処理後のグルコース量をグルカンとして換算)は、それぞれ23%と44.6%だった。
これを稲わら粉末を100mg量り、2ml容のプラスチックチューブに入れたものを2本用意した。これらに水を0.5ml加え、うち1本(試料1−1)は100℃のヒートブロック中で10分間加熱処理した(2分ごとに撹拌)。
その後、双方にセルラーゼ製剤(0.01ml, Celluclast 1.5 L、ノボザイムズ・ジャパン社)、ヘミセルラーゼ製剤(0.01ml, Viscozyme L、ノボザイムズ・ジャパン社)、β-グルコシダーゼ製剤(0.003ml, Novozyme188、シグマ社)およびアミログルコシダーゼ(2mg, 92U/mg, オリエンタル酵母株式会社)および酢酸ナトリウム緩衝液(反応液の最終濃度50mM、pH5.0)を加えて1mlにメスアップして反応液とし、50℃ヒートブロック中、回転させながら糖化処理を行った。
途中、一部分をサンプリングして、水で希釈した後に、グルコースC-IIテストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いて遊離グルコース量を測定した。その結果、図1に示すように、双方のサンプルで、4時間の反応で理論量の7割程度のグルコースが遊離した。
その結果、その速度は、100℃で処理したもの(試料1−1)の方が高かったが、100℃で処理していないもの(試料1−2)と同程度の変換率でほぼ一定になった。
実施例2
実施例1で用いた稲わら粉末(品種名:ハバタキ)を50mg量り取った。これを2ml容のプラスチックチューブに入れたものを2本用意し、水を0.5ml加え、100℃のヒートブロック中で10分間加熱処理した(2分ごとに撹拌)。
その後、うち1本(試料2−1)には、セルラーゼ製剤(Celluclast 1.5 L、0.01 ml, ノボザイムズ・ジャパン社)、ヘミセルラーゼ製剤(Viscozyme L、0.01 ml, ノボザイムズ・ジャパン社)、β−グルコシダーゼ製剤(0.003ml, Novozyme188、シグマ社)およびアミログルコシダーゼ(2mg, 92U/mg, オリエンタル酵母株式会社)および酢酸ナトリウム緩衝液(反応液の最終濃度50mM、pH5.0)を加えた。
また、もう1本(試料2−2)には、後者2つの酵素(β-グルコシダーゼ製剤(0.003ml, Novozyme188、シグマ社)およびアミログルコシダーゼ(2mg, 92U/mg, オリエンタル酵母株式会社))と、酢酸ナトリウム緩衝液(反応液の最終濃度50mM、pH5.0)を加えた。
そして、それぞれを1mlにメスアップして反応液とし、50℃中、回転させながら糖化処理を行った。途中、一部分をサンプリングして、水で希釈した後に、グルコースC-IIテストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いて遊離グルコース量を測定した。
その結果、図2に示すように、双方のサンプルでグルコースが遊離したが、試料2−2では理論量の34%程度のグルカンがグルコースに変換されたのに対して、試料2−1では、セルロースやヘミセルロース分解酵素系の作用により、理論量の67%前後のグルカンがグルコースに変換された。
実施例3
稲(品種名:タカナリ)の地際で刈り取り穂を切り取った、出穂期の葉鞘および稈(稲わら)を、70℃で72時間乾燥し、粉砕機(ウイレイ粉砕機、3mmメッシュパス)を用いて粉砕し、稲わら粉末を調製した。この稲わらの茎葉部の乾燥重量あたりのでん粉率(Total starch kit(メガザイム社)で分析)と総グルカン率(硫酸処理後のグルコース量をグルカンとして換算)は、それぞれ9.79%と38.7%だった。これを2ml容のプラスチックチューブに50mg量り取り、試料3−1とした。
また、稲(品種名:ミルキークイーン)の通常の稲刈り機で刈り取った、コメ収穫後の穂を除く葉鞘および稈(稲わら)を、粗粉砕後にハンマーミル(吉田製作所製)で粉砕し、稲わら粉末を調製した。この稲わらの茎葉部の乾燥重量あたりのでん粉率(Total starch kit(メガザイム社)で分析)と総グルカン率(硫酸処理後のグルコース量をグルカンとして換算)は、それぞれ2.18%と34.0%だった。これを2ml容のプラスチックチューブに50mg量り取り、試料3−2とした。
これらに水を0.5ml加え、100℃のヒートブロック中で10分間加熱処理した(2分ごとに撹拌)。
その後、セルラーゼ製剤(0.01ml, Celluclast 1.5 L、ノボザイムズ・ジャパン社)、ヘミセルラーゼ製剤(0.01ml, Viscozyme L、ノボザイムズ・ジャパン社)、β-グルコシダーゼ製剤(0.003ml, Novozyme188、シグマ社)およびアミログルコシダーゼ(2mg, 92U/mg, オリエンタル酵母株式会社)および酢酸ナトリウム緩衝液(反応液の最終濃度50mM、pH5.0)を加えて、それぞれを1mlにメスアップしたものを反応液とし、50℃中、回転させながら糖化処理を行った。
途中、一部分をサンプリングして、水で希釈した後に、グルコースC-IIテストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いて遊離グルコース量を測定した。
その結果、図3に示すように、双方のサンプルでグルコースが遊離したが、試料3−1では12.2mgのグルコースが遊離したのに対して、試料3−2では4.39mgに留まった。
なお、試料3−1と同様の操作を、酵素処理前の10分間の加熱処理温度を60℃、70℃および80℃および熱処理無しの4種類に変更した試料を用いて行い、加熱処理の温度と酵素反応4時間後のグルコース遊離量の関係を調べた。その結果を表1に示す。
Figure 0005322151
実施例4
稲(品種名:タカナリ)の地際で刈り取り穂を切り取った、出穂期の葉鞘および稈(稲わら)を、70℃で72時間乾燥し、粉砕機(ウイレイ粉砕機、3mmメッシュパス)を用いて粉砕し、稲わら粉末を調製した。この稲わらの茎葉部の乾燥重量あたりのでん粉率(Total starch kit(メガザイム社)で分析)と総グルカン率(硫酸処理後のグルコース量をグルカンとして換算)は、それぞれ9.79%と38.7%だった。
これを2ml容のプラスチックチューブに50mg量り取ったものを4本用意し、水を0.5ml加え、100℃のヒートブロック中で10分間加熱処理した(2分ごとに撹拌)。
その後、セルラーゼ1(セロビオハイドロラーゼI、0.7U/ml, メガザイム社)、セルラーゼ2(エンドグルカナーゼII、540U/ml, メガザイム社)を、4本それぞれ(試料4−1〜試料4−4)について以下のとおり添加した。
即ち、試料4−1には、セルラーゼ1=0ml、セルラーゼ2=0mlとなるように、試料4−2には、セルラーゼ1=0.1ml、セルラーゼ2=0mlとなるように、試料4−3には、セルラーゼ1=0ml、セルラーゼ2=0.1mlとなるように、試料4−4には、セルラーゼ1=0.05ml、セルラーゼ2=0.05mlとなるように添加した。
そして、それぞれの試料に対して、β-グルコシダーゼ製剤(0.003ml, Novozyme188、シグマ社)およびアミログルコシダーゼ(2mg, 92U/mg, オリエンタル酵母株式会社)および酢酸ナトリウム緩衝液(反応液の最終濃度50mM、pH5.0)を加えて、それぞれを1mlにメスアップしたものを反応液とし、50℃中、回転させながら糖化処理を行った。
途中、一部分をサンプリングして、水で希釈した後に、グルコースC-IIテストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いて遊離グルコース量を測定した。
その結果、図4に示すように、それぞれのサンプルでグルコースが遊離したが、試料4−1では4時間後には6mg前後のグルコースが遊離されたのに対して、試料4−2では、僅かに、そして試料4−3では比較的顕著にグルコース遊離量が増加した。そして、試料4−4については、セルラーゼ1(セロビオハイドロラーゼI)とセルラーゼ2(エンドグルカナーゼII)との相乗効果が確認された。
実施例5
表2に示す各試料(同一品種系統について複数の栽培条件で試験したものを含む。)を、表2内に記した時期に地際で刈り取り穂を切り取った、葉鞘および稈を、70℃で72時間乾燥し、粉砕機(シーエムティ科学高速振動試料粉砕機 TI-100)を用いて90秒間粉砕し、各稲わら粉末を調製した。これら稲わらの茎葉部の乾燥重量あたりのでん粉率(Total starch kit(メガザイム社)で分析)と総グルカン率(硫酸処理後のグルコース量をグルカンとして換算)を測定した。(測定結果を表2に示す。)
これらを50mgずつ量り取り、それぞれ2ml容のプラスチックチューブに入れたものを用意し、これらに水を0.5ml加え、100℃のヒートブロック中で10分間加熱処理した(2分ごとに撹拌)。
その後、セルラーゼ製剤(0.01ml, Celluclast 1.5 L、ノボザイムズ・ジャパン社)、ヘミセルラーゼ製剤(0.01ml, Viscozyme L、ノボザイムズ・ジャパン社)、β−グルコシダーゼ製剤(0.003ml, Novozyme188、シグマ社)およびアミログルコシダーゼ(2mg, 92U/mg, オリエンタル酵母株式会社)および酢酸ナトリウム緩衝液(反応液の最終濃度50mM、pH5.0)を加え、それぞれを1mlにメスアップしたものを反応液とし、50℃中、回転させながら糖化処理を行った。
そして、4時間後に一部分をサンプリングして、水で希釈した後に、グルコースC-IIテストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いて遊離グルコース量を測定した。測定結果を表2に示す。
Figure 0005322151
その結果、でん粉含有率が多い程、非でん粉性グルカンの含有率が少なくなる傾向と、でん粉含有率が多い程、酵素反応後のグルカンの糖化率が向上する傾向を確認した。
実施例6
稲(品種名:ハバタキ)の地際で刈り穂を切り取った、出穂期の葉鞘および稈(稲わら)を、70℃で72時間乾燥し、粉砕機(シーエムティ科学高速振動試料粉砕機 TI-100)を用いて90秒間粉砕し、稲わら粉末aを調製した。この稲わらの茎葉部の乾燥重量あたりのでん粉率(Total starch kit(メガザイム社)で分析)と総グルカン率(硫酸処理後のグルコース量をグルカンとして換算)は、それぞれ24%と44.6%だった。
これらを25mgずつ量り取り、それぞれ2ml容のプラスチックチューブに入れたものを用意し、試料6−1,試料6−2とした。
また、稲(品種名:コシヒカリ)の通常の稲刈り機で刈り取った、コメ収穫後の穂を除く葉鞘および稈を含む稲わらを、粗粉砕後にハンマーミル(吉田製作所製)で粉砕し、稲わら粉末bを調製した。この稲わらの茎葉部の乾燥重量あたりのでん粉率(Total starch kit(メガザイム社)で分析)と総グルカン率(硫酸処理後のグルコース量をグルカンとして換算)は、それぞれ2.77%と30.9%だった。
これを25mgずつ量り取り、2ml容のプラスチックチューブに入れたものを用意し、試料6−3とした。そして、試料6−1,試料6−2,試料6−3にそれぞれ水を0.5ml加え、100℃のヒートブロック中で10分間加熱処理した(2分ごとに攪拌)。
次に、試料6−1(稲わら粉末a)と試料6−3(稲わら粉末b)には、0.05mlのセルラーゼ1(セロビオハイドロラーゼI、0.7U/ml, メガザイム社)および0.05mlのセルラーゼ2(エンドグルカナーゼII、540U/ml, メガザイム社)、0.025mlのβ-グルコシダーゼ(40U/ml, メガザイム社)、2mgのアミログルコシダーゼ(92U/mg, オリエンタル酵母株式会社)および0.004mlのリケナーゼ(1000U/ml, メガザイム社)を加えた。
また、試料6−2(稲わら粉末a)は、上記と同量のセルラーゼ1、セルラーゼ2およびβ-グルコシダーゼのみを加えた。
これらに、酢酸ナトリウム緩衝液(反応液の最終濃度50mM、pH5.0)を加えた後、それぞれを1mlにメスアップしたものを反応液とし、50℃中、回転させながら糖化反応を行った。途中、一部分をサンプリングして、水で希釈した後に、グルコースC-IIテストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いて遊離グルコース量を測定した。
その結果、図5に示すように、試料6−1では4時間の反応で6.6mg以上のグルコースが遊離し、試料6−2では2.37mg、試料6−3では1.46mgであった。
試料6−1と6−2を比較すると、試料6−1の方が多量のグルコースが遊離していることが明らかとなった。試料6−2については、β-グルカン分解酵素のみでの分解を行っており、試料6−1ではα-グルカンおよびβ-グルカンの両方を想定した分解を行っている。
また、試料6−2のβ-グルカンの分解効率が試料6−3のものと比較して高いという結果は、でん粉を高濃度で含有する出穂期の稲わらのβ-グルカン構造が、でん粉を低い濃度でしか含有しない成熟期の稲わらのβ-グルカン構造と比較して、酵素分解を受けやすくなっていることを示した。
実施例7
実施例5の試料5−15(ハバタキ、出穂期)の稲わら粉末原料を25.0mg秤量し、2ml容プラスチックチューブに入れたものを2本用意した。これらに、それぞれ0.45mlのYEP培地(2% Yeast Extractおよび1% Bacto Peptoneを含み、pH5.0に調整したもの)を加え、100℃のヒートブロック上に10分間静置し、途中、2分ごとにボルテックスミキサーにより3秒程度撹拌した。
そのうちの1本には、セルラーゼ製剤(0.01ml, Celluclast 1.5 L、ノボザイムズ・ジャパン社)、ヘミセルラーゼ製剤(0.01ml, Viscozyme L、ノボザイムズ・ジャパン社)、β−グルコシダーゼ製剤(0.003ml, Novozyme188、シグマ社)およびアミログルコシダーゼ(2mg, 92U/mg, オリエンタル酵母株式会社)を含む、0.5mlのYEP培地を加えたものを試料7−1として調製した。もう1本には、0.5mlのYEP培地のみを加えたものを試料7−2として調製した。
また、試料7−1および試料7−2と同様の液体組成で、稲わら粉末原料を含まないものを、それぞれ、試料7−3および試料7−4として用意した。
次に、予め、YEPG培地(2% Yeast Extract、1% Bacto Peptoneおよび1% グルコースを含み、pH5.0に調整したもの)にSaccharomyces cerevisiae (NBRC 0224)を接種して30℃で5時間回転培養(24回転/分)した後の菌体懸濁液を、これらの試料に対して0.05mlずつ加え、閉栓後、同様に15時間回転培養した。
培養後に、培養上澄部に含まれるエタノール量は、Ethanol Assay Kit (メガザイム社製)を用いて定量し、液量1mlあたりのエタノール含量として計算した。なお、測定は2回繰り返して行った。その結果を表3に示す。
Figure 0005322151
試料7−1が示すように、稲わら粉末(糖化原料)存在下で糖化反応とエタノール発酵を同時に行うこと(並行複発酵)により、エタノールが生産されることが示された。
また、糖化反応が進行しない試料である、稲わら粉末(糖化原料)のみを添加した試料7−2およびYEP培地のみの試料7−4では、エタノール生産量は極めて低く、エタノール発酵はほとんど行われなかった。
なお、糖化反応が進行しない試料である、稲わら粉末(糖化原料)が存在しない試料7−3でもエタノール発酵がおこることが観察されたが、一部の酵素製剤に含まれる糖質を主な発酵源としているものと考えられる。
これらの結果より、稲わら粉末を糖化処理することにより得られた糖化液を用いて酵母によるエタノール発酵を行うことで、エタノールが生産されることが示された。
試験例1
表4に示す各試料を調製するため、表4内に記した時期(成熟期又は出穂期)に稲の植物体地上部を地際から刈り取り、穂を除いて葉鞘と稈を取り出した後、“24時間以内に70℃で72時間乾燥させた(加熱乾燥処理)”。その後、粉砕機(シーエムティ科学高速振動試料粉砕機 TI-100)を用いて90秒間粉砕し、稲わら粉末(試料E1−1〜試料E1−13、試料E1−15)を調製した。
次に、これらの試料を水で抽出し、Roe法により総フラクトース量(遊離フラクトース量およびショ糖分子中のフラクトース残基を遊離フラクトースとして換算した総和量)を測定した。
また、グルコースC-IIテストワコー(和光純薬工業株式会社)により遊離グルコース量(ショ糖分子中のグルコース残基は含まない量)を測定した。
なお、比較対照として、成熟期の稲の植物体地上部(コシヒカリ、表4では*を付けて表示)を地際から刈り取り、穂を除いて葉鞘と稈を取り出した後、“二週間常温保存したもの”を粗粉砕後にハンマーミル(吉田製作所製)で粉砕した稲わら粉末(試料E1−14)についても、上記と同様に測定を行った。
そして、上記により測定した総フラクトース量、遊離グルコース量の値から、上記の式(I)〜(III)を用いて、試料に含有される遊離糖質の総量(ショ糖の量、遊離グルコース量および遊離フラクトース量の和)を算出した。結果を表4に示す。
Figure 0005322151
その結果、稲の植物体地上部を刈り取って、24時間以内に70℃で72時間乾燥させることで(加熱乾燥処理を行うことで)、当該処理後の稲の植物体地上部には、遊離糖質が高い濃度で保持されることが示された。
試験例2
成熟期の稲の植物体地上部(ミルキークイーン)を通常の収穫機で刈り取り、穂を除いて葉鞘と稈を取り出した後、“24時間以内に室内で風乾させた(乾燥処理)”。その後、粗粉砕し、さらにハンマーミル(吉田製作所製)を用いて粉砕し、含水率5%の稲わら粉末(試料E2−1)を調製した。
次に、この試料E2−1の稲わら粉末10mgを、2ml溶のプラスチックチューブに量り取り、閉栓後に72時間、室温(約25℃)で保存した稲わら粉末(試料E2−2)を調製した。即ち、乾燥した状態で室温保存した。
また、この試料E2−1の稲わら粉末10mgを、2ml溶のプラスチックチューブに量り取り、滅菌水を加水して含水率81%の稲わら粉末を得、その後閉栓し、室温(約25℃)で24時間保存した稲わら粉末(試料E2−3)、および、48時間保存した稲わら粉末(試料E2−4)を調製した。即ち、含水率が高い状態で室温保存した。
また、この試料E2−1の稲わら粉末10mgを、2ml溶のプラスチックチューブに量り取り、滅菌水を加水して含水率81%の稲わら粉末を得、その後閉栓し、65℃で4時間保存し、さらに、室温(約25℃)で44時間保存した稲わら粉末(試料E2−5)を調製した。即ち、含水率を高い状態にした後直ちに加熱処理し、その後含水率が高い状態で室温保存した。
そして、これら試料E2−1〜試料E2−5の稲わら粉末について、試験例1に記載の方法と同様にして、Roe法で総フラクトース量を測定した。結果を表5に示す。
Figure 0005322151
表5が示すように、稲わら粉末に含まれる総フラクトース量(遊離性糖質)は、含水率が高い状態で室温に保存することにより、急速にその含有率が減少した。
一方、含水率を高い状態にした後、直ちに65℃で加熱処理し、その後含水率が高い状態で室温保存したものでは、総フラクトース量(遊離性糖質)は、室温保存前(試験前)とほぼ同じ値であった。
また、含水率を低く維持した状態(乾燥状態)で室温保存したものでは、総フラクトース量(遊離性糖質)は、殆ど変化しなかった。
このように、稲わら粉末中の遊離性糖質は、加湿後の室温放置により急速に減少し、原料中の遊離糖を保持するためには、加熱処理をすること、または、乾燥処理後に乾燥状態で保存すること、が有効であることが示された。
試験例3
試験例1で調製した、稲わら粉末(試料E1−1,E1−2,E1−5〜E1−7,E1−9,E1−10,E1−12:いずれも、成熟期の植物体地上部を地際から刈り取り、穂を除いて葉鞘と稈を取り出したものからの稲わら粉末)中に存在するβ−(1→3),β−(1→4)グルカン量を、Mixed-Linkage Beta-Glucanキット(メガザイム社)を用いて測定した。
また、これらのでん粉含有量についても、Total starch kit(メガザイム社)を用いて測定し、茎葉部の乾燥重量あたりのでん粉率を求めた。結果を表6に示す。
Figure 0005322151
その結果、でん粉率が5%以上の稲の植物体地上部(試料E1−1,E1−2およびE1−5)には、でん粉率が5%より低い稲の植物体地上部(試料E1−6,E1−7,E1−9,E1−10およびE1−12)と比較して、β−(1→3),β−(1→4)グルカン含有量が高い値となる傾向が観察された。
本発明は、茎葉部の乾燥重量あたり5%以上のでん粉を含有する稲の植物体地上部を原料とした、低コスト・低環境負荷性の効率的なバイオマス糖化技術に関するものであり、バイオエタノール製造技術の開発、バイオリファイナリー技術の開発に繋がることが期待される。
特に、我が国のみならず世界中で喫緊の課題となっている、バイオエタノール生産技術開発に新機軸を提供するものとして、極めて重要性が高いと認められる。
また、本発明によれば、酵素糖化残渣などの副生成物の飼料、肥料や燃料分野への利用が可能である。
実施例1において、稲わら粉末の糖化処理におけるグルカン加水分解度の経時変化を示す図である。グラフにおける黒塗りの四角形は試料1−1を、黒塗りの菱形は試料1−2を示す。 実施例2における、稲わら粉末の糖化処理におけるグルカン加水分解度の経時変化を示す図である。グラフにおける黒塗りの菱形は試料2−1を、黒塗りの四角形は試料2−2を示す。 実施例3における、稲わら粉末の糖化処理におけるグルコース遊離量の経時変化を示す図である。グラフにおける黒塗りの菱形は試料3−1を、黒塗りの四角形は試料3−2を示す。 実施例4における、稲わら粉末の糖化処理におけるグルコース遊離量の経時変化を示す図である。グラフにおける黒塗りの菱形は試料4−1を、黒塗りの四角形は試料4−2を、黒塗りの三角形は試料4−3を、バツ印は試料4−4を示す。 実施例6における、稲わら粉末の糖化処理におけるグルコース遊離量の経時変化を示す図である。グラフにおける黒塗りの菱形は試料6−1を、黒塗りの四角形は試料6−2を、三角形は試料6−3を示す。

Claims (6)

  1. 下記(A1)〜(A3)に記載の条件を満たす稲の茎葉部を回収し、;前記回収後24時間以内に、40〜130℃での加熱乾燥処理を行い、;粉砕した後に、;下記(B)に記載の酵素を含む酵素液を用いて糖化処理することを特徴とする糖化法。
    (A1):乾燥重量あたり5%以上のでん粉を含有する稲の茎葉部。
    (A2):出穂期にある稲の茎葉部。
    (A3):地面から15cmまでの植物体地上部を含む稲の茎葉部。
    (B):アミログルコシダーゼ、セロビオハイドロラーゼ活性を有するセルラーゼ、エンドグルカナーゼ活性を有するセルラーゼ、及びβ-グルコシダーゼ。
  2. 前記加熱乾燥処理後の稲の茎葉部が、含水率5%以下になったものである、請求項1に記載の糖化法。
  3. 前記(A1)に記載の条件が、乾燥重量あたり20%以上のでん粉を含有する稲の茎葉部である、請求項1又は2に記載の糖化法。
  4. 前記酵素液が、さらにヘミセルロース分解酵素を含むものである、請求項1〜3のいずれかに記載の糖化法。
  5. 前記茎葉部に含有される総グルカン量50%以上を糖化してグルコースとして回収することを可能とする、請求項1〜のいずれかに記載の糖化法。
  6. 前記糖化処理の前において、および/または、前記糖化処理において、;前記茎葉部を粉砕したものを湿潤状態又は懸濁状態にして70〜130℃の加熱処理を行うことを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の糖化法。
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