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JP3542185B2 - シリコーンレジン、これを含む組成物およびその硬化方法 - Google Patents

シリコーンレジン、これを含む組成物およびその硬化方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、優れた硬度、耐熱性を有する光学的に透明な硬化物を与える熱硬化型シリコーン樹脂と、その硬化方法とに関する。
【0002】
【従来の技術】
シリコーンレジンはオルガノシラン化合物の共加水分解、および、これに続く縮合反応により得られる三次元構造のポリマーであり、シリコーンレジンの製法および性状、ならびにこのレジンの硬化方法および硬化物の物性に関しては多くの知見がある(伊藤邦雄編 シリコーンハンドブック P.468、日刊工業新聞社;Chemistry and Technology of Silicones, 2nd edition,P.409,Walter Noll Academic Press,Inc.(London)Ltd.1968)。
【0003】
即ち、一般に、これらのシリコーンレジンには3官能性(加水分解性の官能基を3個持つシラン化合物でT単位とよばれるシロキサン単位を与える。表1参照)と2官能性(同じく、加水分解性の官能基を2個持つシラン化合物でD単位とよばれるシロキサン単位を与える。表1参照)の加水分解性のシラン化合物の共加水分解によって作られるもの(所謂DTレジン)、あるいは3官能性のみの加水分解性のシラン化合物の加水分解によって作られるもの(所謂ポリシルセスキオキサン)、また、場合によっては、1官能性(同じく、加水分解性の官能基を1個持つシラン化合物でM単位とよばれるシロキサン単位を与える。表1参照)と四塩化ケイ素のように全ての官能基が加水分解性(4官能性=Q単位を与える。表1参照)のシラン化合物の共加水分解によって作られる(所謂MQレジン)ものがあり、また、これらの混合系とも言える多成分のレジンも多数知られている。
【0004】
〔表1〕
Figure 0003542185
【0005】
これらのシリコーンレジンは硬化物として、耐熱コーティング、保護コーティング、電気絶縁コーティング等に利用されるが、これらの用途では、未架橋レジンの形成性の良さ、硬化物の耐熱性、硬化物の硬さ等が要求される。
【0006】
シリコーンレジンの硬化方法のうち、副生物のない硬化反応としては、ビニル基やアリル基等のアルケニル基とSiH基の関与するヒドロシリル化反応、又は、シリコーンに結合したエポキシ基、メタクリロキシ基等の反応性有機官能基の重合があるが、いずれも架橋基の熱安定性が低いため、この方法は硬化物に高い耐熱性を要する用途には向かない。
【0007】
高い耐熱性が要求される用途では架橋基として、シロキサン結合を生成する硬化方法があり、多くの架橋反応が知られている。その中で、特によく用いられるものは、
シラノール基の縮合反応(下式)、
SiOH+SiOH → SiOSi +H2O
シラノール基−アルコキシ基の脱アルコール反応(下式)、
SiOR+SiOH → SiOSi +ROH
脱オキシム反応(下式)
SiON=CR2 +SiOH → SiOSi +HON =CR2
脱アミド反応(下式)
SiN(R)C(=O)R1+SiOH → SiOSi + HN(R)C(=0)R1
脱酢酸反応(下式)
SiOC (=O)CH3 +SiOH → SiOSi +CH3COOH
脱アセトン反応(下式)
SiOC (=CH2)CH3 +SiOH → SiOSi + (CH3)2C=O
であり、それぞれ、水、アルコール、オキシム、アミド、酢酸、アセトンを副生する。
【0008】
硬化物の硬さが重要な用途においては、いわゆる、Q単位を多く含むレジンが使用されるが、この単位の含有量が高くなるに従い、未架橋レジンがゲル化しやすくなる。この問題を避ける目的で、Q単位をアルコキシ基等の加水分解基のかたちで有せしめたレジンにおいては硬化時の重量減少が大きい。
【0009】
以上の点を考慮すると、耐熱性が高く、硬度の高い硬化物を与えるレジンで加工性および成型性がすぐれたものを得るためには、構成成分の耐熱性が高いこと、硬化物の架橋密度が高いこと、硬化時の重量減少の少ない硬化反応を用いることが重要なことがわかる。
【0010】
一方、ジフェニルシロキサン及びハイドロジェンシルセスキオキサンを必須成分とするポリシロキサンとしては次のような報告がある。
即ち、WuはSiH(OSiA3 )O(式中Aはアリール基を表す。)とSiA2 O(式中Aはアリール基を表す。)からなるシクロトリシロキサンおよびシクロテトラシロキサンおよび、同じくWuの報告になるSiH(OSiA3 )O(式中Aはアリール基を表す。)とSiA2 O(式中Aはアリール基を表す。)からなる重合物を報告している(米国特許3,372,178(1968)、米国特許3,234,180(1966))。
【0011】
また、Scholzeによる、原料として加水分解性ケイ酸誘導体および1〜3個の炭化水素基を有するシラン誘導体を必須成分とするシロキサンコーティング、多孔性ポリシロキサンおよび吸着性ポリシロキサンレジンの特許がある。この特許中、加水分解性ケイ酸誘導体としてオルトケイ酸アルキル、四塩化ケイ素等ケイ酸エステルの他、Si−H結合を有する化合物もこれに含めている(米国特許4,374,933、米国特許4,243,692、米国特許4,238,590)。
【0012】
トリクロロシランとジフェニルシランジオールとの反応から、AndrianovらはHSi(OSiPh2 O)3 SiH(式中Phはフェニル基を表す。)なるビシクロペンタシロキサン化合物を得ている。また、この反応は重合物を与えるとしているが、その素性は明らかにされていない。Andrianovらが報告をしているビシクロペンタシロキサンは、成分的にはジフェニルシロキサンとハイドロジェンシルセスキオキサンを有するものであるが、このビシクロペンタシロキサンのみの硬化反応に関する記述はない。(Andrianov,K.et al.,Dokl,Akad.Nauk SSSR,220(4-6)1321(1975)
【0013】
ケイ素に直接結合した水素原子と水、アルコール、シラノール等の水酸基が反応し、水素分子とケイ素酸素結合即ち、Si−O、を生成することは、ケイ素化学及びシリコーン工業においては周知の事実である(Chemistry and Technologyof Silicones, 2nd edition,P.90 ; Organosilicon Compounds,P.200.C.EabomButterworths Scientific Publications(London) 1960参照)。この反応は高温に於ては無触媒でも進行するが、白金、パラジウム等の遷移金属触媒、アルカリ金属の水酸化物、アミン等の塩基性触媒、および錫化合物等のルイス酸触媒の存在下でより容易に進行することが広く知られている。また、この反応を利用したSi−H及びSiOHの関与する架橋反応をシリコーンの室温硬化反応に用いることが提案されている(Chemistry and Technology of Silicones,P.205,P.397)。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
硬化物物性に優れるDTレジンあるいはポリシルセスキオキサンの硬化物強度を上げるためには架橋性のより高いQ成分を導入する方法が考えられるが、そうすると未架橋レジンのゲル化が容易に進行し、レジンの溶解性、溶液粘度、スピンコート性等、硬化性組成物の加工性が極端に低下する。すなわち、硬化物の硬さをあげるために硬化物により多くのQ単位を導入するに当たって、いかにして、硬化物前駆体の加工性を損なわずにその目的を達成できるかという課題がある。
【0015】
また、熱安定性の高いシロキサン結合の生成により硬化が起こる場合、通常のシリコーンレジンの硬化に用いられるごとく、架橋形成が脱水、脱アルコール、脱オキシム、脱酢酸、脱アセトンまたは脱アミド等の湿気硬化反応で起きる場合は硬い厚膜の形成が困難である上、硬化に伴う重量減少が大きく、これに基づく体積減少、反り、ひび割れ等の問題が顕著である。また、厚みのある堅い一体物を作る場合、硬化反応によって生じる揮発性副生物の気化に伴い硬化物中にボイドやクラックが形成されるという問題がある。即ち、硬化に伴う重量減少そして体積収縮をいかにおさえ、高い寸法安定性を有する硬化性組成物を得るかという課題がある。
そのうえ、これらの方法においては脱離成分が有機化合物である場合、硬化に伴い揮発性有機成分を発生し、作業環境および一般環境に悪影響を及ぼす。
【0016】
一方、Si−H基とケイ素に結合したアルケニル基(たとえば、ビニル基、アリル基等)を利用するヒドロシリル化反応による硬化では、触媒被毒による硬化阻害があるなどの硬化反応での問題点の他に、硬化反応により生じる官能基、すなわち、ジメチレン、トリメチレン等の炭化水素基の熱安定性がシロキサン結合に比較して非常に低いという問題がある。過酸化物等のラジカル発生剤を用い、ビニル基とメチル基の関与する硬化も熱安定性に関しては同様の問題がある。即ち、どのような熱安定性の高い架橋基を用い、熱安定性の高い硬化物を得るかという課題がある。
【0017】
一方、ジフェニルシロキサン及びハイドロジェンシルセスキオキサンを必須成分とするポリシロキサンのうち、Wuの報告になるシロキサンは、はじめに、トリアリールシラノールとトリクロロシランの反応により1,1,1−トリアリール−2,2−ジクロロジシロキサンを合成し、これとジアリールシランジオールとの反応により、シクロシロキサンを作り、このシクロシロキサンの開環重合によりつくる。このシロキサン化合物およびポリマーではトリクロロシラン由来のT単位(HSiO3/2 )には必ず少なくとも1個のトリアリールシロキシ基が結合しているため、このT単位の実質的な架橋度は最高3個の結合形成までであり、Qのような、4本の結合による架橋ではない。その上、嵩高い末端基であるトリアリールシロキシ基が大量に存在するため、架橋密度はより低下する。WuはこのシロキサンのT単位上の水素原子を用いるヒドロシリル化反応によるポリマーの硬化にも言及しているが、ヒドロシリル化反応による架橋ではシリコン−炭素結合による架橋が生じるため熱安定性の高い硬化物は得られない。
【0018】
Scholzeらの報告になるシロキサンレジンは原料として加水分解性ケイ酸誘導体および1〜3個の炭化水素基を有するシラン誘導体を必須成分とするものであるが、このレジンは高い加水分解官能性ケイ酸誘導体由来の、所謂、Q単位を含有し、ゆえに、このようにして得られたレジンは、縮合反応によるシロキサン形成反応が完全でない場合は、有機溶媒への溶解性、レジンとしての流動性があるが、この場合には、硬化に伴ない重量減少が大きく、また、大量の揮発物が生成するという問題が予想される。
【0019】
Andrianovらが報告しているビシクロペンタシロキサンは、成分的にはジフェニルシロキサンとハイドロジェンシルセスキオキサンを有するものであるが、このビシクロペンタシロキサンのみの硬化反応に関する記述はない。
【0020】
本発明の目的は上記従来技術の課題を解決し、優れた硬度、耐熱性を有し、光学的に透明な硬化物を与えるスピンコート性のよい熱硬化型樹脂を提供することである。
【0021】
【課題を解決するための手段】
この発明の目的を達成するため、本発明に係わる発明者は、シリコーンレジン硬化技術における三つの重要な問題点、即ち、1)未架橋レジンの溶解性、溶液粘度、スピンコート性等を損なうことなく、いかにして、硬化物中の架橋度をあげるか、2)硬化に伴う重量減少そして体積収縮をいかにおさえ、これによって、優れた加工性及び高い寸法安定性を達成するか、そして、3)いかにして、架橋に関与する官能基として熱安定性の高いものを用い、これによって、熱安定性の高い硬化物を得るかという課題に関して鋭意検討を重ね以下の発明に達した。即ち、我々はこのような条件を満足させるシリコーンレジンとして、ジフェニルシロキサン単位とハイドロジェンシルセスキオキサン単位を有するものが有効であることをみいだした。
【0022】
即ち、本発明の第1の態様は下記一般式(1)で示されるシリコーン重合体からなるシリコーンレジンである。(式中R1 はそれぞれ独立に、少なくとも1個の酸素、窒素、塩素、フッ素、ケイ素から選ばれる原子を含んでもよい炭素原子数1〜18の炭化水素基を表し、Phはフェニル基を表し、ケイ素原子に結合している2価の酸素原子であるOのもう一方の結合は、他のケイ素に結合してシロキサン結合を形成しているが、水素原子に結合しシラノールを形成していてもよい。また、重合体分子の平均重合度、即ち、a+b+cは6〜1000であり、重合体分子に対する単量体単位の平均部分はつぎの範囲内にある。
0.6>a/(a+b+c)≧0.4
1.0≧b/(b+c)≧0.2)。
【0023】
(Ph 2 SiO 2/2 ) a (HSiO3/2)b (R 1 SiO 3/2 ) c (1)
【0024】
重合体分子の組成で、aが上記の範囲より大きくずれると、生成物の分子量が低下する。bとcの和におけるbの部分の割合が上記範囲より小さくなると、硬化物中のQ単位の含有量が低下し、硬化物の硬さが低下する。
【0025】
本発明の第2の態様は上記第1の態様のシリコーンレジンの製造方法に関する。即ち、この方法は、このシリコーンレジンのT成分を与えるシラン化合物、即ち、HSiX3 、又はHSiX3 とR1 SiX3 (Xはそれぞれ独立に塩素、臭素から選ばれる加水分解基を表す。R1 は上記と同じ意味を表す。)の混合物に、好ましくはXの合計より少ないグラム当量数の酸受容体の存在下又は不存在下に、ジフェニルシランジオールを添加して得られるシリコーンレジンを100℃以下の温度で加水分解するものである。酸受容体はあらかじめHSiX3 、又はHSiX3 とR1 SiX3 の混合物に添加されていても、あるいは、ジフェニルシランジオールとともにHSiX3 、又はHSiX3 とR1 SiX3 の混合物に添加してもよい。酸受容体はしばしばジフェニルシランジオールの良溶媒であるので、これにジフェニルシランジオールを溶解してHSiX3 、又はHSiX3 とR1 SiX3 の混合物に添加する方法はことに好ましい。しかしながら酸受容体の添加量が多すぎ、加水分解時に系がアルカリ性になることは避けなければならない。又、添加順序としては、HSiX3 、又はHSiX3 とR1 SiX3 の混合物に、ジフェニルシランジオールを添加することが重要である。逆添加を行なうと、合成の初期段階に於てレジンの架橋構造が発達するためレジンがゲル化しやすく、また、加水分解時にT単位を主成分とするレジンが副生しやすくなる。
尚、前記HSiX3 、又はHSiX3 とR1 SiX3 の混合物は、有機溶媒に溶かしたものを使用してもよく、前記ジフェニルシランジオールについても同様である。
【0026】
上記のHSiX3 、又はHSiX3 とR1 SiX3 の混合物に、ジフェニルシランジオールを添加して得られるレジンを加水分解するに当たっては、シラノールの縮合によるレジンのゲル化を防ぐため、エーテル、トルエン等の溶媒で希釈したり、大量の水を急速に加えたりする等の手段をとり、生成物の温度が100℃を越えないようにする。より好ましくは50℃以下の温度に保つのがよい。
【0027】
より具体的には、本態様のレジンは、たとえば、以下に概要を述べる合成法で調製することができる。すなわち、反応容器中に本発明のレジンの構成成分を与える加水分解性シランのうち、HSiO3/2 およびR1 SiO3/2 を与える原料、たとえば、HSiCl3 、およびR1 SiCl3 、を反応容器中に置き、よく攪拌しながら、これにジフェニルシランジオールを反応容器中のクロロシランのケイ素に結合した塩素の合計より少ないモル当量の酸受容体とともに添加することによって、まず、加水分解性の塩化物基を有するシリコーンレジンを得ることができる。反応容器を50℃以下の温度に冷却しつつ、このレジンを多量の水で加水分解し、その後、このようにして得られた有機成分を十分水洗して、合成される。反応原料の添加順序、反応温度、および、加水分解条件は、該レジンのゲル化反応を抑制しつつ、反応を行なううえで非常に重要である。この反応での酸受容体の存在は必須ではないが、添加により反応が速まる。この添加順序で反応を行なうと、ジフェニルシランジオールのシラノール水素とトリクロロシラン化合物の脱塩化水素反応が迅速に起こり、これにより、生成物の基体構造が一般式(1)で示される交互構造が得られる。この目的の酸受容体に適するものとして、アンモニア、および、メチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、アニリン、ベンジルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジヘキシルアミン、エチルベンジルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジメチルベンジルアミンのアルキルアミンおよびアラルキルアミン類、ピリジン、ピコリン、キノリン等の芳香族アミンを挙げることができる。
【0028】
上記の合成反応を行なうに当たって、トリクロロシラン類とともに少量のトリメチルクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、ジメチルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン等の、加水分解によりM成分を与えうるシラン化合物を用いるとレジンの分子量の調節を図ることができるとともに、反応性の官能基の導入も可能となる。同様に少量のジメチルジクロロシラン、メチルジクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、フェニルメチルジクロロシラン等の、加水分解によりD成分を与えうるシラン化合物を用いるとレジンの硬さの調節を図ることができるとともに、反応性の官能基の導入も可能となる。また、四塩化ケイ素のような加水分解によりQ成分を与えうるシラン化合物を用いるとレジンの硬さの調節を図ることができる。しかし、これらのM,D,Q成分を与えるシランを用い過ぎると、すなわち、M,D,Q成分の和がa+b+cに対して20%以上になると、本発明のレジンの特徴である硬化物の硬さ、あるいはゲル化安定性に悪影響を与える。
【0029】
本発明の第3の態様は上記第1の態様のシリコーン重合体分子と、これの硬化反応の触媒よりなる組成物に関する。即ち、第1の態様の一般式(1)で示されるシリコーン重合体分子(S)と、塩基性化合物、2価又は4価の錫化合物、パラジウム、白金、パラジウム化合物および白金化合物からなる群から選ばれた少なくとも一つの触媒成分からなる組成物である。好適な硬化特性および硬化物物性を得るためには塩基性化合物又は2価もしくは4価の錫化合物の場合、その添加量はシリコーン重合体分子(S)に対して0.01〜10重量%、より好ましくは、0.1〜5重量%の範囲であり、パラジウム、白金、パラジウム化合物および白金化合物の場合は、シリコーン重合体分子(S)に対して0.00001〜1重量%、より好ましくは、0.00005〜0.1重量%であることが適当である。
【0030】
硬化反応の触媒として用いられる塩基性化合物、錫化合物、パラジウム、白金、パラジウム化合物および白金化合物としては以下のものを使用することができる。
すなわち、塩基性化合物としてはアンモニア、一級、二級、三級の有機アミン類、アンモニウムハライド、4級アンモニウム水酸化物、4級ホスホニウム水酸化物を挙げることができる。錫化合物としては、2価のカルボン酸塩、2価のアルキル化合物、アリール化合物、同じく2価のアルコキシ化合物、4価のアルキル化合物、アリール化合物、4価のジアルキル錫ジカルボン酸塩、4価のジアルキル錫ビス(アセチルアセトナート)、4価のアルコキシ化合物を挙げることができる。パラジウム系触媒としてはパラジウムブラックに代表される金属パラジウムの他、2価のパラジウムハライドのオレフィン錯体を挙げることができ、白金系触媒としては白金ブラックに代表される金属白金の他、塩化白金酸、2価の白金ハライドのオレフィン錯体、2価の白金ハライドのホスフィン錯体、0価の白金のオレフィン錯体等を挙げることができる。これらの触媒は水酸基とケイ素原子に結合した水素原子とから水素分子とケイ素−酸素結合を生じる反応の触媒として作用する。また、上記の反応を阻害することがなければ、この組成物に他の触媒成分、たとえば、チタン化合物を添加しても差しつかえない。
【0031】
本発明の第4の態様は上記第1の態様のシリコーンレジン(S)、および、同じく、第3の態様のポリオルガノシロキサン組成物の硬化方法に関するものであり、第1の態様のシリコーンレジン(S)を、硬化触媒を添加せずに、200〜500℃の温度で、また、同じく第3の態様のポリオルガノシロキサン組成物を50℃以上500℃以下の温度で加熱することを特徴とする。硬化の所要時間に関しては特に限定はないが、実用的には、高温(500℃)では数秒から数十分程度、低い温度では1時間から数日で硬化が行なわれる。この条件ではシラノールとSiH基の脱水素縮合および空気中の酸素によるSiHの酸化あるいは同じく空気中の水による加水分解により、シロキサン結合が形成され、硬化する。ゆえに、もし、第一の態様のシリコーン重合体分子中にシラノールが存在しない場合には、加熱は空気中、あるいは酸素あるいは水の存在下で行われるが、通常の湿度、酸素濃度が存在すれば、特にこれを限定する必要はない。
【0032】
上記の条件下で加熱すると、この組成物中のシラノールは同じく組成物中のSiH基と脱水素縮合反応を行ない、水素分子を失って、シロキサン結合を形成する。SiH基に対して、シラノールが過剰に存在すると脱水素縮合反応とともにシラノールどうしの脱水縮合が起き、後者では水分子を失って、シロキサン結合を形成する。また、シラノール基に対して、SiH基が過剰に存在すると残存SiH基は雰囲気中の水または酸素と反応しシラノールを形成し、他のSiH基と脱水素縮合反応を行ない、水素分子を失って、シロキサン結合を形成する。故に、SiH基はシラノールとの反応では1モルのシロキサン結合形成につき2gの重量(水素分子)を失うのみであり、SiH基どうしでは酸素原子を取り込み水素分子を失う、すなわち、1モルのシロキサン結合形成につき14gの重量(酸素原子の増加、水素分子の減少)増加がみられる。これは、脱メタノール反応(2SiOCH3 +H2 O→SiOSi+2CH3 OH)の場合の48g/モル−シロキサン結合の重量減少、あるいは、脱アセトン反応(2SiOC(=CH2 )CH3 +H2 O→SiOSi+2((CH3)2 CO)の場合の100g/モル−シロキサン結合の重量減少と比較しはるかに小さい。
【0033】
【実施例】
以下に実施例および参考例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に示す例中の生成物の特性化の記述における 1H−NMR,29Si{1H}−NMRはそれぞれプロトン核磁気共鳴スペクトル、およびケイ素29核磁気共鳴スペクトル(プロトンデカップル)を表わす。29Si−NMRは、サンプルの重クロロホルム溶液にトリスアセチルアセトナートクロム(III) を添加し、定量測定を行なった。この詳細は、p.377,The Analytical Chemistry of Silicones,edited by A.Lee Smith,John Wiley & Sons,Inc.(1991)に記載されている。a:b:cの比は、この文献に記載されているように29Si−NMRにおける各官能基に対応する相対強度として求められる。CDCl3 は重クロロホルムを表し、 1H−NMRスペクトルのケミカルシフトは全て、CDCl3 溶媒中の残存CHCl3 の共鳴位置を7.24ppm とした場合の値である。29Si−NMRスペクトルのケミカルシフトは、外部標準のテトラメチルシラン(CDCl3 溶液)のケイ素のケミカルシフトを0ppm とした値である。TGは熱重量分析を意味し、以下に示す実施例、比較例においては空気中で毎分10℃の昇温条件での重量変化を測定し、Td10はこの測定におけるサンプルの重量が10%減少した温度を意味する。GPCはゲルパーミエーションクロマトグラフを表わし、以下の実施例、比較例に於てはトルエンを溶媒として用い、分子量はポリスチレン換算の値である。以下、Mnは数平均分子量を、Mwは重量平均分子量を表わし、Phはフェニル基を、Meはメチル基を表わす。
【0034】
尚、GPC測定により得たジフェニルシロキサン単位等を含有するシリコーン類の分子量は、実際の分子量よりやや低めの値を示す傾向がある。また該シリコーン類がシラノール基を有する場合には、GPC測定により得られる分子量の値は、実際の分子量に対してわずかに差が生じる傾向がある。
【0035】
(実施例1)(ジフェニルシロキサン−ハイドロジェンシルセスキオキサンレジンの合成)
窒素を充填した300mlの三口フラスコに100mlのエーテルと16.8mlのトリクロロシランを入れたのち−78℃に冷却した。よく攪拌しながらこれに22.5mlのピリジンに溶解した30gのジフェニルシランジオールを10分間かけて添加した。反応物を攪拌しながら室温まで昇温しさらに1時間攪拌した。溶液を一旦0℃に冷却し、激しく攪拌しながら50mlの水を加え、さらに30分間攪拌した。反応物に200mlのエーテルを加え、有機層を数回水洗した。ヘキサンを加えた後濾過し、これから室温で溶媒を除去し、27gの透明なレジンを得た。このレジンをトルエンに溶かし(20重量%溶液)30分間加熱還流し、この溶液を以後の反応に利用した。GPC分子量(ポリスチレン換算)Mn=1900、Mw=9600、赤外吸収2239cm-1(Si−H)、3200〜3700cm-1(SiOH)、29Si−NMR(CDCl3 ):δ(官能基,相対強度)−38〜−47ppm (Ph2 SiO,10),−73〜−79ppm (HSiO(OH),2.0),−80〜−83(HSiO3/2 ,10.3)。
【0036】
(実施例2)(ジフェニルシロキサン−メチルシルセスキオキサン−ハイドロジェンシルセスキオキサンレジンの合成)
上記実施例1と同様な方法で合成を行なった。ただし、16.8mlのトリクロロシランの代わりに9.8mlのメチルトリクロロシランと8.4mlのトリクロロシランを用いて合成を行ない32gの透明なレジンを得た。GPC分子量(ポリスチレン換算)Mn=3720、Mw=110,000、赤外吸収2230cm-1(Si−H)、1128cm-1(Si−Ph)、1092cm-1(Si−Me)、29Si−NMR(CDCl3 ):δ(官能基,相対強度)−32〜−48ppm (Ph2 SiO,10),−53〜−57ppm (MeSiO(OH),2.8),−62〜−67(MeSiO3/2 ,2.9),−71〜−86(HSiO3/2 ,5.4)。
【0037】
(実施例3)(ジフェニルシロキサン−フェニルシルセスキオキサン−ハイドロジェンシルセスキオキサンレジンの合成)
上記実施例1と同様な方法を用いた。ただし、20gのジフェニルシランジオールと8.84mlのフェニルトリクロロシランと5.61mlのトリクロロシランを用いた。また、溶媒として用いたエーテルの量は66mlであった。単離精製の後、25gの透明で高粘性なレジンを得た。GPC分子量(ポリスチレン換算)Mn=1870、Mw=3070、赤外吸収3200〜3600cm-1(SiOH)、2234cm-1(Si−H)、1130cm-1(Si−Ph)、1094cm-1(Si−O)、29Si−NMR(CDCl3 ):δ(官能基,相対強度)−33〜−46ppm (Ph2 SiO,10),−66〜−85ppm (HSiO3/2 及びPhSiO3/2 ,12.4)。
【0038】
(実施例4)(ジフェニルシロキサン−ハイドロジェンシルセスキオキサンレジンの熱硬化)
実施例1で調製したジフェニルシロキサン−ハイドロジェンシルセスキオキサンレジンの20重量%トルエン溶液に、レジンに対して白金100ppm になるように0価の白金ビニルシロキサン錯体を添加した。これをシリコンウエーハーにスピンコート(1000rpm 、5秒間)し、常温で乾燥した。このシリコンウエーハーを空気中400℃で1時間加熱しレジン硬化膜を得た。この硬化膜の赤外吸収スペクトルによると、Si−H基は完全に消失していた。また、この硬化膜の鉛筆硬度は3Hであった。
【0039】
(実施例5)(ジフェニルシロキサン−メチルシルセスキオキサン−ハイドロジェンシルセスキオサンレジンの硬化)
実施例2で調製したジフェニルシキサン−メチルシルセスキオキサン−ハイドロジェンシルセスキオキサンレジンの20重量%トルエン溶液を調製し、これにレジンに対して5重量%のシクロヘキシルアミンを添加した。これをシリコンウエーハーにスピンコート(1000rpm 、5秒間)し、常温で乾燥した。このシリコンウエーハーを空気中250℃で1時間加熱しレジン硬化膜を得た。この硬化膜の赤外吸収スペクトルによると、Si−H基は完全に消失していた。また、この硬化膜の鉛筆硬度は2Hであった。
同じく、実施例2で調製したジフェニルシロキサン−メチルシルセスキオキサン−ハイドロジェンシルセスキオキサンレジンを真空下、50℃で1時間加熱し、揮発物を除去したのち無触媒で400℃で3時間加熱し、柱状のサンプル(4mm×5mm×15mm)を作り、線熱膨張係数を測定したところ120ppm /℃であった。
【0040】
(実施例6)(ジフェニルシロキサン−メチルシルセスキオキサン−ハイドロジェンシルセスキオキサンレジンの硬化)
実施例2で調製したジフェニルシロキサン−メチルシルセスキオキサン−ハイドロジェンシルセスキオキサンレジンの20%トルエン溶液を調製し、これにレジンに対して1重量%の2価のオクタン酸錫を添加した。これをシリコンウエーハーにスピンコート(1000rpm 、5秒間)し、常温で乾燥した。このシリコンウエーハーを空気中250℃で1時間加熱しレジン硬化膜を得た。この硬化膜の赤外吸収スペクトルによると、Si−H基は完全に消失していた。また、この硬化膜の鉛筆硬度は2Hであった。
上記溶液を用い、キャステイング、加熱硬化(250℃、1時間)により、無色透明の硬化レジンを得た。この硬化レジンサンプルの空気中でのTd10は501℃であった。
【0041】
(実施例7)(ジフェニルシロキサン−メチルシルセスキオキサン−ハイドロジェンシルセスキオキサンレジンの硬化)
実施例2で調製したジフェニルシロキサン−メチルシルセスキオキサン−ハイドロジェンシルセスキオキサンレジンの20重量%トルエン溶液を調製し、これにレジンに対して白金1000ppm になるよう0価の白金ビニルシロキサン錯体を添加した。これをシリコンウエーハーにスピンコート(1000rpm 、5秒間)し、常温で乾燥した。このシリコンウエーハーを空気中250℃で1時間加熱しレジン硬化膜を得た。この硬化膜の赤外吸収スペクトルによると、Si−H基は完全に消失していた。また、この硬化膜の鉛筆硬度は3Hであった。
【0042】
(実施例8)(ジフェニルシロキサン−フェニルシルセスキオキサン−ハイドロジェンシルセスキオキサンレジンの硬化)
実施例3で調製したジフェニルシロキサン−フェニルシルセスキオキサン−ハイドロジェンシルセスキオキサンレジンの20%トルエン溶液を調製し、これにレジンに対して白金100ppm になるように0価の白金ビニルシロキサン錯体を添加した。これをシリコンウエーハーにスピンコート(1000rpm 、5秒間)し、常温で乾燥した。このシリコンウエーハーを空気中400℃で1時間加熱しレジン硬化膜を得た。この硬化膜の赤外吸収スペクトルによると、Si−H基は完全に消失していた。また、この硬化膜の鉛筆硬度は2Hであった。
【0043】
(実施例9)(ジフェニルシロキサン−ハイドロジェンシルセスキオキサンレジンの熱硬化)
実施例1で調製したジフェニルシロキサン−ハイドロジェンシルセスキオキサンレジンの20%トルエン溶液(触媒成分未添加)をシリコンウエーハーにスピンコート(1000rpm 、5秒間)し、常温で乾燥した。このシリコンウエーハーを空気中480℃で20分間加熱し、レジン硬化膜を得た。この硬化膜の赤外吸収スペクトルによると、Si−H基は完全に消失していた。また、この硬化膜の鉛筆硬度は3Hであった。
【0044】
(比較例1)(ジフェニルシロキサン−メチルシルセスキオキサンレジンの調製および硬化)
窒素を充填した500mlの三口フラスコに42.7gのメチルトリクロロシランを入れたのち0℃に冷却した。よく攪拌しながらこれに37.4gのピリジンに溶解した46.4gのジフェニルシランジオールを10分間かけて添加した。反応物を攪拌しながら室温まで昇温しさらに1時間攪拌した。溶液に93mlのトルエンを加え、つぎに、激しく攪拌しながら200mlの水を加え、さらに30分間攪拌した。反応物に200mlのエーテルを加え、有機層を数回水洗した。ヘキサンを加えた後濾過し、これから室温で溶媒を除去し、54.7gのレジンを得た。このレジンをトルエンに溶かし(20重量%溶液)30分間加熱還流し、この溶液を以後の反応に利用した。赤外吸収3000〜3600cm-1(SiOH)、1127cm-1(Si−Ph)、1030cm-1、1090cm-1、(Si−O)、29Si−NMR(CDCl3 ):−35〜−47ppm (Ph2 SiO)、−50〜−60ppm (MeSiO(OH),−60〜−70(MeSiO3/2 )。このように得たジフェニルシロキサン−メチルシルセスキオキサンレジンの20%トルエン溶液にレジンに対して1重量%のオクタン酸錫(II)を加え、この溶液をシリコンウエーハーにスピンコート(1000rpm 、5秒間)し、常温で乾燥した。このシリコンウエーハーを空気中250℃で1時間加熱しレジン硬化膜を得た。この硬化膜の鉛筆硬度はHであった。
【0045】
【発明の効果】
本発明によって、ジフェニルシランジオールとトリクロロシランを必須な原料として、ジフェニルシロキサン(Ph2 SiO2/2 )とハイドロジェンシロセスキオキサン(HSiO3/2 )を必須成分として含み、スピンコート性がよく、硬化時に大量の揮発物を発生しないシリコーン重合体分子を用い、硬度、耐熱性に優れた透明な硬化物の製造が可能になった。すなわち、この重合体分子のハイドロジェンシロセスキオキサン単位(HSiO3/2 )は水酸基(OH)と反応し、ケイ素酸素結合(Si−O)と水素分子(H2 )を形成することが可能であり、また、酸素存在下での加熱により酸化され同じくケイ素酸素結合(Si−O)を形成し、よって、前記シリコーン重合体分子を熱安定性に優れたシロキサン結合で架橋硬化する。従って、この硬化性シリコーン重合体分子を用いて耐熱性の極めて高いシリコーン硬化物の製造が可能になった。

Claims (4)

  1. 下記一般式(1)で示されるシリコーン重合体からなるシリコーンレジン。(式中R1 はそれぞれ独立に少なくとも1個の酸素、窒素、塩素、フッ素、ケイ素から選ばれる原子を含んでもよい炭素原子数1〜18の炭化水素基を表し、Phはフェニル基を表し、下記一般式(1)に示されたケイ素原子に結合している2価の酸素原子であるOのもう一方の結合は、他のケイ素に結合してシロキサン結合を形成しているが、水素原子に結合しシラノールを形成していてもよい。また、重合体分子の平均重合度、即ち、a+b+cは6〜1000であり、重合体分子に対する単量体単位の平均部分はつぎの範囲内にある。
    0.6>a/(a+b+c)≧0.4
    1.0≧b/(b+c)≧0.2)。
    (Ph 2 SiO 2/2 ) a (HSiO3/2)b (R1SiO3/2)c (1)
  2. (1)HSiX3 、又は(1)HSiX3 と(2)R1 SiX3 (ここに、Xはそれぞれ独立に塩素、臭素から選ばれる加水分解性基を表し、R1 は前記と同じ意味を表す。)の混合物に(3)ジフェニルシランジオールを添加することによりシリコーンレジンを合成し、更に該シリコーンレジンを100℃以下の温度で加水分解させる請求項1記載のシリコーンレジンの製造方法。
  3. 請求項2記載のシリコーンレジンの製造方法において(4)酸受容体(但し該酸受容体の使用量は、前記混合物中において、(1)及び(2)のSi原子に結合した塩素または臭素の総合計量より少ないモル当量に限られる)の存在下に、(3)ジフェニルシランジオールを添加する前記方法。
  4. (イ)請求項1に記載のシリコーンレジン(S)と、(ロ)塩基性化合物、2価又は4価の錫化合物、金属パラジウム、金属白金、パラジウム化合物および白金化合物からなる群から選ばれた少なくとも一つの触媒成分とからなり、前記触媒成分が塩基性化合物又は2価もしくは4価の錫化合物の場合は、これらはシリコーンレジン(S)に対して0.01〜10重量%であり、前記触媒成分が金属パラジウム、金属白金、パラジウム化合物又は白金化合物の場合はシリコーンレジン(S)に対して0.00001〜1重量%である熱硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
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