次に、本発明の幾つか実施形態について図面を参照して以下に説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る金属−炭素粒子複合材(金属−炭素粒子複合体)20は、金属マトリックス(ドットハッチングで示す)21からなる金属層Bと、金属マトリックス21中に炭素粒子としての炭素繊維1が分散した炭素粒子分散層としての炭素繊維分散層Cとが交互に複数積層した状態に接合一体化されて形成されたものである。炭素繊維1は各炭素繊維分散層C中に多数分散している。
複合材20において、複数の炭素繊維分散層Cのうち、符号「C1」が付された炭素繊維分散層Cの炭素繊維1の配向方向Eは、複合材20の長さ方向(即ち図1の紙面の左右方向)である。符号「C2」が付された炭素繊維分散層Cの炭素繊維1の配向方向Eは、炭素繊維分散層C1の炭素繊維1の配向方向Eと相異する方向であり、詳述すると複合材20の幅方向(即ち図1の紙面に垂直な方向)である。金属層Bと炭素繊維分散層Cとの積層方向である複合材20の厚さ方向は、複合材20の上下方向(即ち図1の紙面の上下方向)と一致している。
複合材20では、複数の炭素繊維分散層Cのうち少なくとも一つの炭素繊維分散層C1の炭素繊維1の配向方向Eは他の少なくとも一つの炭素繊維分散層C2の炭素繊維1の配向方向Eと相異している。これにより、複合材全体の平面方向の物性(特に熱特性)の異方性が緩和されている。なお熱特性には熱伝導率(熱伝導性)、線膨張係数(線熱膨張性)等が含まれる。
詳述すると、複合材20において、金属層Bと炭素繊維分散層Cは、複合材20の厚さ方向(即ち複合材20の上下方向)において炭素繊維分散層Cの炭素繊維1の配向方向Eが規則的に変化するように交互に複数積層された状態に配列している。さらに詳述すると、金属層Bと炭素繊維分散層Cは、複合材20の厚さ方向において炭素繊維分散層Cの炭素繊維1の配向方向Eが平面視で時計回り(又は反時計回り)に90°ずつ変化するように交互に複数積層された状態に配列している。これにより、複合材20では複合材全体の平面方向の物性の異方性が確実に緩和されている。
ここで、炭素粒子分散層の炭素粒子の配向方向とは炭素粒子分散層の炭素粒子の最長軸の配向方向を意味している。したがって、炭素粒子が本実施形態のように炭素繊維1である場合、炭素繊維分散層Cの炭素繊維1の配向方向Eとは炭素繊維分散層Cの炭素繊維1の繊維軸の配向方向を意味している。
次に、本実施形態の複合材20の製造方法について以下に説明する。
複合材20の製造方法は、図2に示すように、塗工箔を得る工程S1と、素材箔を得る工程S2と、積層体を形成する工程S3と、積層体を焼結する工程S4とを含んでおり、この記載の順にこれらの工程が行われる。
塗工箔を得る工程S1は、図3に示すように、炭素粒子としての炭素繊維1を含む塗工液5を長尺な帯状金属箔10(即ち金属箔10の条材)の塗工予定表面10aに一方向に連続的に層状に塗工することにより、金属箔10の塗工予定表面10aに炭素繊維層11が形成(塗工)された長尺な帯状塗工箔12(即ち塗工箔12の条材)を得る工程である。本実施形態では、塗工液5の塗工方向Dは金属箔10の長さ方向である。
金属箔10の塗工予定表面10aは、金属箔10の厚さ方向の両側の表面のうち少なくとも一方の片側の表面である。本実施形態では、塗工予定表面10aは金属箔10の厚さ方向の一方の片側の表面であり、詳述すると金属箔10の上表面である。
塗工液5は、上述したように炭素繊維1を含むものであり、更にバインダー2とバインダー2用溶剤3とを混合状態に含んでいる。
塗工箔を得る工程S1は、更に、金属箔10の塗工予定表面10aに形成された炭素繊維層11から溶剤3を除去する工程S1aを含んでいる(図2参照)。
素材箔を得る工程S2は、図10に示すように、塗工箔12を所定の形状に裁断することにより塗工箔12から素材箔13を切り出す工程である。すなわち、素材箔13は、塗工箔12を裁断した裁断片からなるものである。素材箔13の形状は例えば円形状である。
積層体を形成する工程S3は、図11に示すように、素材箔13を複数積層して積層体15を形成する工程である。
積層体15を焼結する工程S4では、図12に示すように、積層体15を積層体15の厚さ方向に加圧しながら加熱することにより積層体15を焼結し、これにより素材箔13を焼結一体化する。この工程S4は、積層体15を加熱することにより積層体15からバインダー2を除去する工程S4aを含んでいる(図2参照)。
次に、各工程について以下に詳細に説明する。
<塗工箔12を得る工程S1>
図3に示すように、本工程S1で使用される塗工液5は、上述したように炭素繊維1とバインダー2と溶剤3とを混合状態に含むものであり、例えば次のようにして得られる。
多数の炭素繊維1とバインダー2と溶剤3とを混合容器7内に入れてこれらを撹拌器8により撹拌混合する。これにより、炭素繊維1とバインダー2と溶剤3とを混合状態に含有した塗工液5が得られる。なお必要に応じて、分散剤、消泡剤、表面調整剤、粘度調整剤などを更に混合容器7内に入れて撹拌混合することで塗工液5にこれらを添加しても良い。
撹拌器8は限定されるものではなく、撹拌羽根付き撹拌器、プラネタリーミキサー、ホモディスパー、ビーズミルなどを使用可能である。
炭素繊維1、バインダー2及び溶剤3についての具体的な説明は後述する。
塗工液5を金属箔10の塗工予定表面10aに塗工するための塗工方法は、限定されるものではない。好ましくは、塗工液5の塗工は、同図に示すように、金属箔10を巻き出す巻出しロール37aと金属箔10を巻き取る巻取りロール37bとを用いたロールtoロール方式により行われる。
巻出しロール37aと巻取りロール37bとの間には、塗工装置としてのグラビア塗工装置(例:グラビアコーター)30と乾燥装置としての乾燥炉38とが金属箔10の送り方向Fに並んで設置されている。
グラビア塗工装置30は、詳述するとダイレクトグラビア塗工装置(例:ダイレクトグラビアコーター)であり、グラビアロール31、バックアップロール33、グラビアロール31の周面31aに塗工液5を付着させる塗工液付着手段35などを備えている。
グラビアロール31の周面31aにはその全体に亘って多数のセル(凹部)32が整然と配列して設けられている(図4A、5A、6A及び7A参照)。隣り合うセル32間には隔壁部31bが形成されており、この隔壁部31bによって各セル32が仕切られている。バックアップロール33は、グラビアロール31に対向して配置されている。
グラビアロール31の回転方向は、通常、金属箔10の送り方向Fと同じ方向に設定される。グラビアロール31の周速度は、通常、金属箔10の送り速度と等しく設定される。
塗工液付着手段35は、塗工液5を収容した塗工液パン(図示せず)を備えたものであり、グラビアロール31の周面31aの周方向の一部がパン内の塗工液5に接触した状態でグラビアロール31がその中心軸を中心に回転することにより、グラビアロール31の周面31aに塗工液5が付着されるように構成されている。パン内の塗工液5中の炭素繊維1はその繊維軸方向がランダムになるように塗工液5中に分散している。
乾燥炉38は、金属箔10の塗工予定表面10aに形成された炭素繊維層11を加熱乾燥することにより炭素繊維層11中に含まれている溶剤3を炭素繊維層11から蒸発除去するためのものである。
図3に示したグラビア塗工装置30は上述したようにロールtoロール方式のものである。このグラビア塗工装置30では、巻出しロール37aから巻き出された金属箔10は、グラビアロール31とバックアップロール33との間と、乾燥炉38内とを所定の送り速度で略水平方向に順次通過したのち巻取りロール37bに巻き取られる。
金属箔10の送り方向Fは金属箔10の長さ方向に設定されており、この送り方向Fに平行な方向がグラビア塗工装置30(詳述するとグラビア塗工装置30のグラビアロール31)による金属箔10の塗工予定表面10aへの塗工液5の塗工方向Dである。また金属箔10はその塗工予定表面10aが上側に向けられた状態で送り方向Fに送られる。
グラビアロール31は金属箔10の上側(即ち塗工予定表面10a側)に金属箔10をその幅方向の全体に亘って横断する態様にして配置されている。また、バックアップロール33は金属箔10の下側に金属箔10をその幅方向の全体に亘って横断する態様にして配置されている。
巻出しロール37aから巻き出された金属箔10は、グラビア塗工装置30のグラビアロール31とバックアップロール33との間を通過する際に、グラビアロール31によって金属箔10の塗工予定表面10aに塗工液5が金属箔10の長さ方向に連続的に塗工される。
すなわち、グラビアロール31が回転することにより、グラビアロール31の周面31aに塗工液付着手段35により塗工液5が付着して各セル32内に入る。そして、グラビアロール31の回転に伴い、グラビアロール31の周面31aに付着した余分な塗工液5がドクターブレード(スクレーパ)34により掻き取られる。その後、グラビアロール31の周面31aが金属箔10の塗工予定表面10aに当接することによりセル32内の塗工液5が金属箔10の塗工予定表面10a上に転写塗工されて、当該転写塗工された塗工液5からなる炭素繊維層11が塗工予定表面10a上に形成される。これにより、金属箔10の塗工予定表面10a上に炭素繊維層11が形成された長尺な帯状塗工箔12(即ち塗工箔12の条材)が得られる。
グラビア塗工装置30のグラビアロール31において、セル32の形状は例えばカップ状であってセル32の周囲が全周に亘って略閉鎖された形状である。
具体的にはセル32の形状は、格子型32A(図4A及びABを見よ)、ピラミッド型32B(図5A及び5Bを見よ)、亀甲型32C(図6A及び6Bを見よ)及び円型32D(図7A及び7Bを見よ)からなる群より選択される少なくとも一つであることが望ましい。
格子型セル32Aは、図4A及び4Bに示すように四角錐台状に凹んで形成されている。
ピラミッド型セル32Bは、図5A及び5Bに示すように四角錐状に凹んで形成されている。
亀甲型セル32C、は図6A及び6Bに示すように六角錐台状に凹んで形成されている。
円型セル32Dは、図7A及び7Bに示すように円錐台状に凹んで形成されている。
さらに、セル32(例:格子型、ピラミッド型、亀甲型、円型)の底面32bの形状は限定されるものではなく、例えば、図8Aに示すように平坦状であっても良いし、図8Bに示すように凹曲面状(例:凹球面状)であっても良いし、図8Cに示すように凹錐面状(例:凹角錐面状、凹円錐面状)であっても良いし、更に、これらの形状のうち少なくとも二つが組み合わされた形状であっても良い。
さらに本実施形態では、セル32は、セル32の周囲が全周に亘って完全に閉鎖された形状であることが望ましいが、これに限定されるものではなく、図9に示すように、セル32の内周側面32aの一部に、セル32内の塗工液5の一部が隣りのセル32内へ流れうるようにするための小さな連絡口32cが形成された形状であっても良い。
セル32の大きさは、セル32内に平均繊維長の炭素繊維1がセル32の開口面と略平行な状態で入るのに十分な大きさであり、且つ、セル32内に入った平均繊維長の炭素繊維1がセル32内でセル32の内周方向に360°回転可能な大きさであることが望ましい。具体的には、セル32の口形状に内接する円N(詳述するとセル32の開口周縁32dに内接する円N)の直径Wは炭素繊維1の平均繊維長よりも大きければ特に限定されるものではないが、炭素繊維1の平均繊維長に対して1.2倍以上に設定されていることが望ましい。
なお、図4A、5A及び6Aではセル32の口形状に内接する円Nは二点鎖線で示されており、図7Aではセル32の口形状に内接する円Nはセル32の開口周縁32dと一致する。
このように、セル32の形状がカップ状であり、且つ、セル32の口形状に内接する円Nの直径Wが炭素繊維1の平均繊維長に対して1.2倍以上に設定されることにより、グラビアロール31の周面31aに塗工液5が付着した時、塗工液5中の炭素繊維1がセル32内に確実に入る。そして、セル32内の塗工液5がグラビアロール31の回転に伴い金属箔10の塗工予定表面10aに転写塗工される。その結果、炭素繊維層11が金属箔10の塗工予定表面10a上に形成される。
セル32の口形状に内接する円Nの直径Wの上限については限定されるものではなく、例えば2500μmである。
セル32の開口周縁32dの形状が正方形状(例:格子型32A、ピラミッド型32B)である場合は、セル32の口形状に内接する円Nの直径Wは、セル32の形状が亀甲型32Cや円型32Dである場合よりも大きい方が望ましく、特に炭素繊維1の平均繊維長に対して1.5倍以上であることが非常に望ましい。
炭素繊維1は繊維状の炭素粒子であれば使用可能であり、具体的には例えば、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維及びカーボンナノファイバー(例:気相成長カーボンファイバー、カーボンナノチューブ)からなる群より選択される一種の炭素繊維か又は2種以上の混合炭素繊維が用いられる。
PAN系炭素繊維及びピッチ系炭素繊維のうち特にピッチ系炭素繊維を用いることが望ましい。その理由は、ピッチ系炭素繊維の繊維軸方向の熱伝導率がPAN系炭素繊維のそれよりも大きく、そのためより高い熱伝導率を有する複合材20を得られるからである。
炭素繊維1の長さは限定されるものではない。炭素繊維1の平均繊維長の上限は例えば1mmであり、その下限は例えば10μmである。
炭素繊維1の繊維直径は限定されるものではなく、炭素繊維1の平均繊維直径は例えば0.1nm〜20μmである。炭素繊維1がPAN系炭素繊維やピッチ系炭素繊維である場合は、炭素繊維1は例えばチョップドファイバーやミルドファイバーであってその平均繊維直径は例えば5μm〜15μmである。炭素繊維1が気相成長カーボンナノファイバーである場合は、炭素繊維1の平均繊維直径は例えば0.1nm〜20μmである。
バインダー2は、炭素繊維1に金属箔10の塗工予定表面10aへの付着力を付与し、これにより炭素繊維層11中の炭素繊維1が金属箔10の塗工予定表面10aから脱落するのを抑制するためのものであり、通常、樹脂からなる。
さらに、バインダー2は、非酸化雰囲気中にて200℃〜450℃の温度で炭化せずに昇華又は分解などにより消失するものを用いることが望ましい。そのようなバインダー2として、アクリル系樹脂、ポリエチレングリコール系樹脂、ブチレンゴム樹脂、フェノール樹脂、セルロース系樹脂などが好適に使用される。これらのバインダー2は一般に常温で固形である。
溶剤3は、バインダー2を常温で溶解するものであることが望ましく、水、アルコール系溶剤、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤などが好適に使用される。
塗工液5は、炭素繊維1とバインダー2を質量比で75:25〜99.5:0.5の割合で含有していることが望ましい。この場合には、塗工箔12を得る工程S1において炭素繊維1を金属箔10の塗工予定表面10aに確実に付着させることができるし、バインダー2を除去する工程S4aにおいてバインダー2を確実に消失除去することができる。特に望ましくは、塗工液5は炭素繊維1とバインダー2を質量比で80:20〜99:1の割合で含有していることが良い。
塗工箔12を得る工程S1では、炭素繊維層11に含まれる炭素繊維1の塗工量が40g/m2以下になるように塗工液5を金属箔10の塗工予定表面10aに塗工することが望ましい。その理由は次のとおりである。
すなわち、炭素繊維層11に含まれる炭素繊維1の塗工量が40g/m2以下になるように塗工液5を金属箔10の塗工予定表面10aに塗工する場合には、積層体15を焼結する工程S4において金属箔10の金属が炭素繊維層11内の空隙の略全部に十分に浸透するとともに積層体15が確実に焼結される。これにより、複合材20の強度(機械的強度等)を確実に高めることができる。さらに、複合材20の製造時間を短縮化するため、炭素繊維層11に含まれる炭素繊維1の塗工量は30g/m2以下であることが特に望ましい。
また、得られる複合材20において炭素繊維1の体積が複合材20全体の体積に対して50%未満になるように、塗工液5を金属箔10の塗工予定表面10aに塗工することが望ましく、これにより、積層体15を焼結する工程S4において金属箔10の金属を炭素繊維層11内に確実に浸透させることができて、積層体15を確実に強固に焼結することができる。
金属箔10は、塗工に耐えうるものであればその材料に限定されるものではない。特に、金属箔10はアルミニウム箔及び銅箔のうち少なくとも一方であることが望ましい。その理由は、高い熱伝導率を有する複合材20を確実に得られるからである。
金属箔10がアルミニウム箔である場合において、アルミニウム箔の材料は限定されるものではなく、A1000系、A3000系、A6000系等が用いられる。一般に、アルミニウム箔の材料は、得られる複合材20の物性(熱伝導率、線膨張係数など)が所望する設定値になるように複数種のアルミニウム材料の中から適宜選択される。金属箔10がアルミニウム箔である場合には、複合材20の金属マトリックス21がアルミニウムマトリックスになる。そのため、複合材20の軽量化を図ることができるし、複合材20の加工性を高めることができる。
金属箔10が銅箔である場合において、銅箔の種類及び材料は限定されるものではなく、電解銅箔、圧延銅箔などが用いられる。一般に、銅箔の材料は、得られる複合材20の物性(熱伝導率、線膨張係数など)が所望する設定値になるように複数種の銅材料の中から適宜選択される。
金属箔10の厚さは限定されるものではなく、得られる複合材20の物性が所望する設定値になるように金属箔10の厚さを選択可能である。
ここで、市販されている金属箔(アルミニウム箔、銅箔)10の最薄の厚さは6μmであることから、金属箔10の厚さの下限は6μmであることが金属箔10を容易に入手可能である点で特に望ましい。金属箔10の厚さの上限は通常100μmであり、特に概ね50μmであることが望ましい。
金属箔10の幅は限定されるものではなく、複合材20の用途などに応じて設定され、例えば10mm〜1200mmに設定される。
溶剤3を除去する工程S1aは、図3に示すように、塗工箔12が乾燥炉38内を通過することにより行われる。すなわち、塗工箔12が乾燥炉38内を通過した時に炭素繊維層11が乾燥炉38により加熱乾燥され、これにより炭素繊維層11に含まれている溶剤3が炭素繊維層11から蒸発除去される。その後、塗工箔12は巻取りロール37bに巻き取られる。
乾燥炉38による溶剤3の除去条件は、炭素繊維層11に含まれている溶剤3を炭素繊維層11から蒸発除去可能な条件であれば限定されるものではなく、通常、乾燥温度60℃〜250℃で乾燥時間1min〜120minである。
さらに、溶剤3を除去した後では炭素繊維層11内に大きな空隙が生じていることもあるので、押圧ロール(図示せず)で炭素繊維層11をその厚さ方向に押圧して炭素繊維層11のかさ密度を高めることも可能である。
<素材箔13を得る工程S2>
図10に示すように、素材箔13を得る工程S2では、巻取りロール37bから巻き解かれた塗工箔12を受けダイ(図示せず)で支持した状態で裁断装置40に備えられた裁断刃(打ち抜きパンチ)41で所定形状に裁断する(打ち抜く)。これにより、塗工箔12の裁断片からなる素材箔13を塗工箔12から複数切り出す。
図10中の矢印「D」は、上述したように塗工箔12を得る工程S1における金属箔10の塗工予定表面10aへの塗工液5の塗工方向を示しており、矢印「E」は上述したように塗工箔12の炭素繊維層11の炭素繊維1の配向方向を示している。
炭素繊維1の配向方向Eは一般に塗工液5の塗工方向Dによって決定されるものであり、炭素繊維1は塗工液5の塗工方向Dに対して所定の方向に配向する。本実施形態では、炭素繊維1の配向方向Eは塗工液5の塗工方向Dと一致している。
なお同図では、塗工箔12及び素材箔13における塗工液5の塗工方向Dを分かり易くするため、塗工箔12及び素材箔13の表面には塗工液5の塗工方向Dを表示する細線が描かれている。その他の図(図11、17及び図19)でも同じである。
<積層体15を形成する工程S3>
図11に示すように、積層体15を形成する工程S3では、素材箔13を複数積層することにより素材箔13の積層体15を形成する。積層体15はプリフォーム(焼結素材)として用いられる。
素材箔13の積層枚数は限定されるものではなく、所望する複合材20の厚さなどに応じて設定され、例えば5〜1000枚に設定される。
素材箔13の積層順序について以下に説明する。
積層体15を形成する工程S3では、複数の素材箔13を、少なくとも一つの素材箔13における塗工液5の塗工方向Dが他の少なくとも一つの素材箔13における塗工液5の塗工方向Dと相異するように積層する。望ましくは、素材箔13を、積層体15の厚さ方向(即ち積層体15の上下方向)において素材箔13における塗工液5の塗工方向Dが規則的に変化するように複数積層する。
本実施形態では、図1に示した複合材20を製造するため、素材箔13を、素材箔13における塗工液5の塗工方向Dが交互に直角になるように複数積層する。すなわち、素材箔13を、積層体15の厚さ方向において素材箔13における塗工液5の塗工方向Dが平面視で時計回り(又は反時計回り)に90°ずつ変化するように複数積層する。
このように素材箔13が複数積層されることにより、積層体全体の炭素繊維層11の炭素繊維1の平面方向の配向性が小さくなる(詳述すると消失する)ように緩和されている。換言すると、積層体15では、素材箔13は、積層体全体の炭素繊維層11の炭素繊維1の平面方向の配向性が緩和されるような規則的な配列で複数積層されている。
<積層体15を焼結する工程S4>
図12に示すように、積層体15を焼結する工程S4では、まず加圧加熱焼結装置などの焼結装置(接合装置)50の焼結室51内に積層体15を配置する。そして、焼結装置50によって所定の焼結雰囲気中にて積層体15をその厚さ方向(即ち素材箔13の積層方向)に加圧しながら所定の焼結温度で加熱することにより積層体15を焼結し、これにより素材箔13を焼結一体化する。その結果、図14に示した複合材20が得られる。この複合材20の概略断面図は図1に示されている。
この工程S4では、積層体15が上述のように加圧加熱されることにより、炭素繊維層11がその厚さ方向に圧縮されて金属箔10の金属の一部が炭素繊維層11内に浸透して炭素繊維層11内に存在する微細な空隙(例:炭素繊維層11中の炭素繊維1間の隙間)に充填されて、当該空隙が略消滅する。これにより、得られる複合材20の密度を複合材20の理論密度の95%以上にすることができる。
なお、複合材20の理論密度とは、複合材20が金属箔10の金属と炭素繊維1とだけで形成されており且つ複合材20の内部に空隙が全く存在しない場合における複合材20の密度を意味する。
また、上述したように金属箔10の金属の一部が炭素繊維層11内に浸透することによって、各炭素繊維層11中の炭素繊維1は複合材20の金属マトリックス21中に分散した状態になり、即ち積層体15の各炭素繊維層11は複合材20の各炭素繊維分散層Cになる。また、積層体15の各金属箔10は複合材20の各金属層Bになる。
焼結装置50としては、ホットプレス装置(例:真空ホットプレス装置)、放電プラズマ焼結装置などが好適に用いられる。
積層体15への加圧は、例えば、焼結装置50に備えられた一対の押圧パンチ52、52で積層体15をその厚さ方向の両側から挟んで加圧することにより行われる。
焼結雰囲気は非酸化雰囲気であることが望ましい。非酸化雰囲気は、不活性ガス雰囲気(例:窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気)、真空雰囲気などを含む。
焼結温度とは、積層体15を焼結する温度を意味する。具体的には焼結温度は、金属箔10の金属の融点以下の温度に設定され、特に、金属箔10の金属の融点と当該融点よりも50℃程度低い温度との間の温度に設定されることが積層体15を確実に良好に焼結できる点で望ましい。金属箔10が例えばアルミニウム箔である場合、焼結温度は550℃〜620℃の範囲に設定されることが望ましい。
積層体15への加圧力は限定されるものではなく、積層体15を軽く押圧する程度の加圧力でも良い。さらに、積層体15への加熱時に積層体15を加圧すると金属箔10の金属の流動性が向上することがあるので、積層体15への加圧により金属箔10の金属が積層体15から流れ出ない程度の加圧力で加圧するか、あるいは金属箔10の金属が積層体15から流れ出ないように金型(図示せず)内で積層体15を加圧することが特に望ましい。
もし互いに重なり合う素材箔13、13間に空隙が残った状態で積層体15が焼結されると、当該空隙の部分が複合材20の内部欠陥になる。そこで、この欠陥の発生を抑制するため、積層体15を焼結雰囲気として真空雰囲気中にて加圧すること又は/及び積層体15を金型内にて加圧することが望ましい。
本実施形態では、バインダー2を除去する工程S4aは、積層体15を焼結する工程S4における積層体15を初期温度としての約室温から焼結温度まで加熱する途中で焼結装置50により行われる。この場合におけるバインダー2の除去工程S4aを以下に説明する。
図13は、積層体15を焼結する工程S4において積層体15を加熱する時の温度曲線の一例を示す図(グラフ)である。
同図中のT1〜T2(但し、T1<T2)の温度範囲は、積層体15の素材箔13の炭素繊維層11に含まれているバインダー2が昇華又は分解などにより消失する範囲であり、通常200℃〜450℃である。T3は焼結温度であり、T2よりも高い温度である(即ちT3>T2)。
積層体15を焼結する工程S4では、積層体15の温度が約室温から焼結温度T3まで上昇するように焼結装置50により積層体15を加熱する途中における積層体15の温度がT1〜T2の範囲内である時に、バインダー2が昇華又は分解などにより消失して積層体15(詳述すると積層体15の素材箔13の炭素繊維層11)から除去される。
積層体15の温度がT1〜T2の温度範囲内である時間Δtは、バインダー2を積層体15から除去しうる時間であれば限定されるものではなく、焼結装置50による積層体15の昇温速度、積層体15に含まれているバインダー2の全量、積層体15の厚さ(例:素材箔13の積層枚数)、焼結雰囲気などに応じて設定されるものであり、通常10min以上に設定される。
また、積層体15の温度がT1〜T2の温度範囲内である時に昇温を一旦停止したり昇温速度を緩やかにしたりすることにより上記時間Δtを長くし、これによりバインダー2の除去を確実に行うようにすることも可能である。
このように、バインダー2を除去する工程S4aを、積層体15を焼結する工程S4における積層体15を焼結温度T3まで加熱する途中で行うことにより、複合材20の製造工程数を削減することができて複合材20の製造を容易に行える。
なお本発明は、バインダー2を除去する工程S4aが、焼結装置50により積層体15を焼結する工程S4から独立して行われることを排除するものではない。
この場合、バインダー2を除去する工程S4aは、積層体15を形成する工程S3の後であって且つ積層体15を焼結する工程S4の前に行われることが望ましい。その理由は、積層体15の形成時に炭素繊維層11中の炭素繊維1が金属箔10の塗工予定表面10aから脱落するのを確実に抑制できるからである。さらにこの場合、バインダー2を除去する工程S4aを行った後であって且つ積層体15を焼結する工程S4を行う前においては、積層体15を非酸化雰囲気中に配置しておくこと又は/及び積層体15の温度を300℃以下に設定しておくことが望ましい。その理由は、炭素繊維1の酸化消耗を確実に抑制できるし、金属箔10がアルミニウム箔である場合にアルミニウム箔の酸化を確実に抑制できるからである。
本実施形態の複合材20及びその製造方法には次の利点がある。
積層体15を形成する工程S3では、複数の素材箔13を、少なくとも一つの素材箔13における塗工液5の塗工方向Dが他の少なくとも一つの素材箔13における塗工液5の塗工方向Dと相異するように積層している。これにより、積層体全体の炭素繊維層11の炭素繊維1の平面方向の配向性が緩和されている。そして、この積層体15を焼結することにより、複合材全体の平面方向の物性(例:熱伝導率、線膨張係数)の異方性を緩和することができる。
この工程Sを詳述すると、素材箔13を、積層体15の厚さ方向において素材箔13における塗工液5の塗工方向Dが規則的に変化するように複数積層しているので、積層体全体の炭素繊維層11の炭素繊維1の平面方向の配向性が確実に緩和されている。そして、この積層体15を焼結することにより、複合材全体の平面方向の物性の異方性を確実に緩和することができる。
しかも、本実施形態では、上述したように塗工液5を金属箔10の塗工予定表面10aに塗工するための塗工装置がグラビア塗工装置30であり、グラビア塗工装置30のグラビアロール31のセル32の形状がカップ状であり、更に、セル22の口形状に内接する円Nの直径Wが炭素繊維1の平均繊維長に対して1.2倍以上に設定されている。これにより、金属箔10の塗工予定表面10a内における炭素繊維1の配向方向が比較的ランダムになるように炭素繊維層11を金属箔10の塗工予定表面10a上に形成することができる。そのため、素材箔13の炭素繊維層11の炭素繊維1の平面方向の配向性が大幅に緩和されている。
このような素材箔13を、上述したように積層体15の厚さ方向において素材箔13における塗工液5の塗工方向Dが規則的に変化するように複数積層することにより、積層体全体の炭素繊維層11の炭素繊維1の平面方向の配向性が大幅に緩和されている。そして、この積層体15を焼結することにより、複合材全体の平面方向の物性の異方性を大幅に緩和することができる。
ここで、塗工装置はグラビア塗工装置30であることが上述した理由により望ましいが、本発明では、塗工装置はグラビア塗工装置30であることに限定されるものではなく、その他に、ロールコート装置、3本ロールコート装置(例えばオフセットタイプのもの)、ダイコート装置、ナイフコート装置、カーテンコート装置、バーコート装置、ドクターブレードコート装置、スプレー塗布装置等であっても良い。すなわち、本発明において、塗工箔12を得る工程S1では、塗工液5を金属箔10の塗工予定表面10aにグラビアコート法により塗工することが望ましいが、その他に、ロールコート法、3本ロールコート法(例えばオフセットタイプのもの)、ダイコート法、ナイフコート法、カーテンコート法、バーコート法、ドクターブレードコート法、スプレー塗布法等の塗工方法により塗工しても良い。
本実施形態の複合材20は、上述したように複合材全体の平面方向の物性の異方性が緩和されているので、冷熱サイクル等の温度変化に対して高い信頼性を有している。したがって、複合材20は、図15に示した冷却器60を構成する複数の冷却器構成層のうち少なくとも一つの構成層の材料として好適に使用可能である。
冷却器60は、冷却対象物としての発熱体66(二点鎖線で示す)を冷却するものであり、複数の冷却器構成層として、配線層61、絶縁層62、緩衝層63及び冷却層64を備えている。そして、上から下へ順に、配線層61、絶縁層62、緩衝層63及び冷却層64が積層された状態でろう付け等の所定の接合手段によりこれらの層61〜64が接合一体化されることにより冷却器60が形成されている。
発熱体66としては、例えば、パワーモジュール素子等の電子素子が挙示される。発熱体66がパワーモジュール素子である場合、冷却器60はパワーモジュール用冷却器である。なお、パワーモジュールは、ハイブリッドカー(HEV)、電気自動車(EV)、電車などの車両に用いられたり、風力発電、太陽光発電などのエネルギー分野に用いられたりする。
配線層61の上面からなる搭載面61aには発熱体66がはんだ付け等の所定の接合手段により接合される。
絶縁層62は電気絶縁性を有しており、通常、セラミックからなる。
緩衝層63は、冷却器60に発生する熱応力等の応力を緩和するための層である。
冷却層64は、発熱体66の熱を放散して発熱体66を冷却するための層であり、例えば冷却部材(放熱部材を含む)からなり、複数の放熱フィン64aを有している。
上記の冷却器60では、詳述すると、上述した複数の構成層のうち絶縁層62を除く構成層(即ち、配線層61、緩衝層63及び冷却層64)からなる群より選択される少なくとも一つが本実施形態の複合材製である。したがって、冷却器60は、冷熱サイクル等の温度変化に対して高い信頼性(例:高い接合信頼性)を有している。
本発明では、積層体15を形成する工程S3における素材箔13の積層方向の配列は上記実施形態に示したものに限定されるものではない。素材箔13の配列の幾つかの例を図16に示す。図17は、図16中の符号「A1」〜「A4」の素材箔13の種類を示すものである。なお本発明は、図16に示した素材箔13の配列に限定されるものではない。
図17(a)〜(d)中の矢印Dは、各素材箔13における塗工液5の塗工方向を示している。各素材箔13の炭素繊維層11の炭素繊維1の配向方向Eは塗工液5の塗工方向Dによって決定されるものであり、例えば塗工液5の塗工方向Dと一致している。
図17(a)に示した種類「A1」の素材箔13における塗工液5の塗工方向Dと図17(b)に示した種類「A2」の素材箔13おける塗工液5の塗工方向Dとのなす角度は90°である。図17(a)に示した種類「A1」の素材箔13における塗工液5の塗工方向Dと図17(c)に示した種類「A3」の素材箔13おける塗工液5の塗工方向Dとのなす角度は45°である。図17(c)に示した種類「A3」の素材箔13における塗工液5の塗工方向Dと図17(d)に示した種類「A4」の素材箔13における塗工液5の塗工方向Dとのなす角度は90°である。
図16(a)に示した積層体15の素材箔13の積層方向の配列の単位は、上記実施形態の図1に示した積層体15のそれと基本的に同じである。すなわち、図16(a)の積層体15の素材箔13の配列の単位はA1/A2という単位である。この配列単位全体の炭素繊維層11の炭素繊維1の平面方向の配向性は緩和されている。そして、この積層体15では、素材箔13は、この配列単位が積層体15の厚さ方向の全体に亘って繰り返されるという積層規則に従って複数積層されている。
図16(b)に示した積層体15の素材箔13の積層方向の配列の単位は、A1/A1/A2/A2という単位である。この配列単位全体の炭素繊維層11の炭素繊維1の平面方向の配向性は緩和されている。そして、この積層体15では、素材箔13は、この配列単位が積層体15の厚さ方向の全体に亘って繰り返されるという積層規則に従って複数積層されている。
図16(c)に示した積層体15の素材箔13の積層方向の配列の単位は、A1/A2/A3/A4という単位である。この配列単位全体の炭素繊維層11の炭素繊維1の平面方向の配向性は緩和されている。そして、この積層体15では、素材箔13は、この配列単位が積層体15の厚さ方向の全体に亘って繰り返されるという積層規則に従って複数積層されている。
図16(d)に示した積層体15の素材箔13の積層方向の配列の単位は、A1/A3/A2/A4という単位である。この配列単位全体の炭素繊維層11の炭素繊維1の平面方向の配向性は緩和されている。そして、この積層体15では、素材箔13は、この配列単位が積層体15の厚さ方向の全体に亘って繰り返されるという積層規則に従って複数積層されている。
図16(e)に示した積層体15の素材箔13の積層方向の配列の単位は、A1/A3/A2/A4/A4/A2/A3/A1という単位である。この配列単位全体の炭素繊維層11の炭素繊維1の平面方向の配向性は緩和されている。そして、この積層体15では、素材箔13は、この配列単位が積層体15の厚さ方向の全体に亘って繰り返されるという積層規則に従って複数積層されている。
したがって、図16(a)〜(e)の積層体15では、いずれも、素材箔13は、積層体15の厚さ方向において素材箔13における塗工液5の塗工方向Dが積層体15の厚さ方向の全体に亘って所定の積層規則に従って変化するように複数積層されている。これにより、積層体全体の炭素繊維層11の炭素繊維1の平面方向の配向性が緩和されている。
図18は、複合材20の炭素繊維分散層Cの配列の幾つかの例を示す概略図である。なお本発明は、図18に示した炭素繊維分散層Cの配列に限定されるものではない。
同図中の符号「C1」、「C2」、「C3」、「C4」、「C5」及び「C6」は、複合材20中の炭素繊維分散層Cの種類を示している。種類「C1」〜「C6」の炭素繊維分散層Cの炭素繊維1の配向方向は互いに相異している。なお同図では、複合材20の炭素繊維分散層Cの配列を理解し易くするため、複合材20の厚さ方向に隣り合う炭素繊維分散層C、C間に配置された金属層(図1参照、符号「B」)は図示省略されている。
図18(a)に示した複合材20の炭素繊維分散層Cの積層方向の配列の単位は、上記実施形態の図1に示した複合材20のそれと基本的に同じである。すなわち、図18(a)の複合材20の炭素繊維分散層Cの配列の単位は、C1/C2という単位である。この配列単位全体の炭素繊維分散層Cの炭素繊維1の平面方向の配向性は緩和されている。そして、この複合材20では、炭素繊維分散層Cは、この配列単位が複合材20の厚さ方向の全体に亘って繰り返されるという積層規則に従って配列している。
図18(b)に示した複合材20の炭素繊維分散層Cの積層方向の配列の単位は、C1/C1/C2/C2という単位である。この配列単位全体の炭素繊維分散層Cの炭素繊維1の平面方向の配向性は緩和されている。そして、この複合材20では、炭素繊維分散層Cは、この配列単位が複合材20の厚さ方向の全体に亘って繰り返されるという積層規則に従って配列している。
図18(c)に示した複合材20の炭素繊維分散層Cの積層方向の配列の単位は、C1/C2/C3という単位である。この配列単位全体の炭素繊維分散層Cの炭素繊維1の平面方向の配向性は緩和されている。そして、この複合材20では、炭素繊維分散層Cは、この配列単位が複合材20の厚さ方向の全体に亘って繰り返されるという積層規則に従って配列している。
図18(d)に示した複合材20の炭素繊維分散層Cの積層方向の配列の単位は、C1/C2/C3/C3/C2/C1という単位である。この配列単位全体の炭素繊維分散層Cの炭素繊維1の平面方向の配向性は緩和されている。そして、この複合材20では、炭素繊維分散層Cは、この配列単位が複合材20の厚さ方向の全体に亘って繰り返されるという積層規則に従って配列している。
図18(e)に示した複合材20の炭素繊維分散層Cの積層方向の配列の単位は、C1/C2/C3/C4/C5/C6という単位である。この配列単位全体の炭素繊維分散層Cの炭素繊維1の平面方向の配向性は緩和されている。そして、この複合材20では、炭素繊維分散層Cは、この配列単位が複合材20の厚さ方向の全体に亘って繰り返されるという積層規則に従って配列している。
したがって、図18(a)〜(e)の複合材20では、いずれも、炭素繊維分散層Cは、複合材20の厚さ方向において炭素繊維分散層Cの炭素繊維1の配向方向Eが複合材20の厚さ方向の全体に亘って所定の積層規則に従って変化するように配列している。これにより、複合材全体の炭素繊維分散層Cの炭素繊維1の平面方向の配向性が緩和されている。
また本発明に係る複合材の製造方法では、積層体を形成する工程S3及び積層体を焼結する工程S4は以下のように行われても良い。
すなわち、図19に示すように、積層体を形成する工程S3では、素材箔13を複数積層して第1積層体15aを形成し、その後、第1積層体15aを積層状態のままでその厚さ方向に裁断装置(図示せず)により所定形状に裁断して少なくとも一つの第2積層体15bを得ても良い。そして、積層体を焼結する工程S4では、積層体としての第2積層体15bをその厚さ方向に加圧しながら加熱して焼結し、これにより第2積層体15bを構成する素材箔13を焼結一体化する。本実施形態では、第1積層体15aを裁断して得られた第2積層体15bの数は複数であり詳述すると例えば四つである。
第1積層体15aは、複数の素材箔13を、少なくとも一つの素材箔13における塗工液の塗工方向(D、図11参照)が他の少なくとも一つの素材箔13における塗工液の塗工方向(D)と相異するように積層されたものである。望ましくは、第1積層体15aは、第1積層体15aの厚さ方向において素材箔13における塗工液の塗工方向(D)が規則的に変化するように複数積層されたものである。第1積層体15aの積層規則は、例えば上述の実施形態で示した積層規則と同じである。
第2積層体15bは、詳述すると、第1積層体15aを積層状態のままでその厚さ方向に裁断装置としての打ち抜き装置(図示せず)等により所定形状に打ち抜くことにより得られたものである。打ち抜き装置としては打ち抜きパンチを備えた打ち抜きプレス装置等が用いられる。第2積層体15bは略柱状(詳述すると略円柱状)に形成されている。第2積層体15bの平面方向の断面積は第1積層体15aのそれよりも小さい。
第2積層体15bの直径(即ち、第2積層体15bを構成する素材箔13の直径)は限定されるものではなく、例えば20〜200mmである。
このように、第1積層体15aをその厚さ方向に裁断して(打ち抜いて)第2積層体15bを得ることにより、平面方向の断面積が小さな積層体を容易に形成することができる。そして、この第2積層体15bを焼結することにより、平面方向の断面積が小さな複合材を容易に得ることができる。
以上で本発明の幾つかの実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々に変更可能である。
本発明では、積層体15を形成する工程S3において、素材箔として、炭素繊維層11が金属箔10の塗工予定表面10aに形成された素材箔13と、炭素繊維層以外の炭素粒子層が金属箔10の塗工予定表面10aに形成された素材箔とを用いて、積層体15を形成しても良い。
炭素繊維層以外の炭素粒子層の炭素粒子としては、天然黒鉛粒子、人造黒鉛粒子及び熱分解黒鉛粒子からなる群より選択される少なくとも一種の炭素粒子が例えば用いられる。これらの炭素粒子の最長軸方向の平均長さは限定されるものではなく、その上限は例えば1mmであり、その下限は例えば10μmである。
また本発明では、炭素繊維層11は天然黒鉛粒子、人造黒鉛粒子及び熱分解黒鉛粒子からなる群より選択される少なくとも一種の炭素粒子も含有するものであることを排除するものではない。
また本発明では、金属箔10は、その厚さ方向の一方の片側の表面と他方の片側の表面とをそれぞれ塗工予定表面とするものであって、塗工箔12(素材箔13)は、金属箔10の一方の塗工予定表面に炭素繊維粒子層が形成されるとともに金属箔10の他方の塗工予定表面に炭素繊維層以外の炭素粒子層が形成されたものであっても良い。
また本発明では、グラビア塗工装置30は、上記実施形態で示したようにダイレクトグラビア塗工装置であることが特に望ましいが、その他に例えばオフセットグラビア塗工装置(例:オフセットグラビアコーター)であっても良い。
また、本発明に係る複合材は、上記実施形態で示したようなパワーモジュール用冷却器60の構成層の材料として用いられることに限定されるものではなく、その他に、照明機器の構成部材の材料、携帯・モバイル端末の構成部材の材料、ヒートスプレッダーの構成部材の材料、ヒートパイプの構成部材の材料、電池モジュールの構成部材の材料などとしても用いることができる。