実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略することがある。なお、図を構成する同じ要素のハッチングを異なる図面間で適宜省略または変更する場合もある。
なお、第1、第2として付される序数詞は便宜的に用いるものであり、工程順または積層順を示すものではない。そのため、例えば、「第1の」を「第2の」または「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。また、本明細書などに記載されている序数詞と、本発明の一態様を特定するために用いられる序数詞は一致しない場合がある。
なお、「膜」という言葉と、「層」という言葉とは、場合によっては、または、状況に応じて、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である光電変換素子について、図面を参照して説明する。
<光電変換素子の構成例>
本発明の一態様に係る光電変換素子10Aの断面構造の模式図を図1(A)に示す。光電変換素子10Aは、第1の電極11と、第1の電極11上の光電変換層13と、光電変換層13上の正孔注入阻止層17と、正孔注入阻止層17上の第2の電極15と、を有する。
本発明の一態様は、光電変換層13にセレンを用いた光電変換素子であり、比較的低電圧でアバランシェ増倍効果を利用した撮像を行うことができる。また、光電変換層に結晶セレンを用いることにより、可視光領域のほぼ全域において光感度を向上させることができる。したがって、従来のシリコンを光電変換層に用いた光電変換素子よりも光感度を高めることができ、低照度下での撮像を容易にすることができる。また、高解像度の撮像が可能な撮像装置を実現することができる。
正孔注入阻止層17には、7.0eV以上のイオン化ポテンシャルと、4.0eV以上のバンドギャップを有し、かつドナー準位を形成する元素を含むn型半導体を用いることが好ましい。正孔注入阻止層17として、例えば、スズを含む酸化ガリウム(以下、スズ含有酸化ガリウムと記す)を好適に用いることができる。
本発明の一態様である光電変換素子は、光電変換層13にp型半導体であるセレンを用い、正孔注入阻止層17にn型半導体を用いることで、pn接合が形成されているともいえる。正孔注入阻止層17として、バンドギャップが広く、適切なキャリア密度を有するn型半導体層を用いることで、暗電流の低減および光電流の増大を実現できる。
図1(B)に示す光電変換素子10Bのように、正孔注入阻止層17は、第1の正孔注入阻止層17aと、第1の正孔注入阻止層17a上の第2の正孔注入阻止層17bの積層構造とすることが好ましい。第1の正孔注入阻止層17a及び第2の正孔注入阻止層17bとして、スズ含有酸化ガリウムを用いることができる。
また、本発明の一態様に係る光電変換素子は、図1(C)に示す光電変換素子10Cのように、光電変換層13と第1の電極11との間に電子注入阻止層19を有していてもよい。
光電変換素子は、基板上に形成されてもよく、基板に形成された、または、基板上に形成された駆動用のトランジスタの上に形成されてもよい。
光電変換素子10A、光電変換素子10B及び光電変換素子10Cにおいて、第2の電極15側を受光面とする。図1(A)、図1(B)及び図1(C)において、光電変換素子10A、光電変換素子10B及び光電変換素子10Cに入射する光(Light)を矢印で示している。
<光電変換素子の構成要素>
以下に、本発明の一態様に係る光電変換素子の各要素について説明する。
[光電変換層13]
光電変換層13について説明する。光電変換層13にセレン系材料を用いることができる。セレン系材料を用いた光電変換素子は、可視光に対する内部量子効率が高い特性を有する。当該光電変換素子では、アバランシェ現象による電荷増幅効果を用いて、入射光により生成されたキャリアの増幅を行うことにより光電変換効率を高めることができる。アバランシェ増倍効果を利用したフォトダイオードを、アバランシェフォトダイオード(APD:Avalanche Photodiode)と呼ぶ場合がある。
光電変換層13に結晶セレンを用いることが好ましい。セレンは、その結晶性により単結晶セレン、多結晶セレン、微結晶セレン、非晶質セレン(アモルファスセレン)等に分類できる。本明細書等において、結晶セレンとは結晶性を有するセレン、例えば単結晶セレン、多結晶セレン及び微結晶セレンを指す。また、結晶セレンと非晶質セレンが混合したセレンを用いてもよい。なお、本明細書等において、結晶性を有することを結晶質であると記す場合がある。
シリコン及び非晶質セレンと比較して、結晶セレンは可視光の波長の全領域にわたって高い吸収係数を持つことから、膜厚を薄くすることができる。膜厚を薄くすることで、高い電界の印加が可能となる。また、結晶セレンは低電圧でアバランシェ増倍効果が発生し、高い光感度をもつ。したがって、結晶セレンを光電変換層13に有する光電変換素子は、光感度が高く、低照度環境における撮像にも適している。また、低電圧で動作できることから好ましい。
セレンは融点が約221℃と低いことから、製造工程や使用環境において非晶質セレンが高温に曝されるとセレンが結晶化する場合があり、非晶質セレンの熱的安定性は低い。一方、本発明の一態様である光電変換素子の光電変換層13は均一な結晶セレンを有することから、熱的安定性が高い。
光電変換層13が有するセレンの結晶性の確認には、X線回折(XRD:X−ray Diffraction)、電子線回折(ED:Electron Diffraction)、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)像、走査透過電子顕微鏡(STEM:Scanning Transmission Electron Microscopy)像等を用いることができる。
結晶セレンを作製する方法として、非晶質セレンを成膜し、熱処理を行う方法が知られている。しかし、熱処理によって非晶質セレンが結晶化するのに伴い、セレンが凝集することで、セレンが存在しない領域が発生する場合がある。本明細書等において、セレンが存在しない領域を膜剥がれ領域と呼ぶ。光電変換層に膜剥がれ領域が発生すると、光電変換素子間に特性ばらつきが発生し、撮像装置の撮像性能を低下させる原因となりうる。また、セレンの凝集又は膜剥がれ領域の発生に伴い光電変換層13の凹凸が大きくなることで、光電変換層13上に設けられる第2の電極15の被覆性、密着性が悪くなる場合がある。第2の電極15の被覆性、密着性が悪くなると、第1の電極11及び第2の電極15の短絡の原因となりうる。また、光電変換層13の表面はpn接合面となる領域であり、凹凸などの形状は界面特性を悪化させる原因となる。したがって、光電変換層は膜剥がれ領域が少なく、凹凸が少なく、均一な結晶セレンであることが好ましい。
本発明の一態様である光電変換層13は、セレン及び元素Xを有する。元素Xは、銀、ビスマス、インジウム、スズ、テルルから選ばれる一以上である。元素Xは、セレンと化合物(以下、セレン化合物と記す)を形成する。本発明の一態様である光電変換層13は、セレン化合物を結晶核とする固相結晶化(SPC:Solid Phase Crystallization)により形成される結晶セレンを有する。固相結晶化の際、結晶粒の成長に伴い、光電変換層13の表面に凸凹が発生する場合がある。また、結晶粒が大きいと光電変換層13の表面の凹凸が大きくなる場合がある。したがって、結晶粒を小さくすることで、光電変換層13の表面の凹凸を小さくすることができる。なお、本発明の一態様である光電変換層13は、セレン及び元素X以外の元素を有していてもよい。元素X以外の元素としては、例えばシリコン、ゲルマニウムなどが挙げられる。
光電変換層13が有する結晶粒の結晶粒径(長径)は1.10μm以下であることが好ましい。さらには、光電変換層13が有する結晶粒の結晶粒径(長径)は1.00μm以下であることが好ましい。さらには、光電変換層13が有する結晶粒の結晶粒径(長径)は0.90μm以下であることが好ましい。前述の結晶粒径(長径)とすることで、光電変換層13の表面の凹凸を小さくすることができる。光電変換層13の表面の凹凸が小さくなることで、光電変換層13上に設けられる第2の電極15の被覆性、密着性が高くなり、第1の電極11及び第2の電極15の短絡を抑制できる。また、光電変換層13の表面の凹凸が小さくなることでpn接合面の界面特性が良好となり、良好な特性を有する光電変換素子を作製できる。なお、結晶粒径(長径)の最小値は特に制限はないが、0.010μm以上が好ましい。0.010μm以上とすることで、粒界起因のトラップ準位を少なくでき、良好な特性を有する光電変換素子を作製できる。
なお、本明細書等において、結晶粒径(長径)とは、結晶粒の外輪郭上の2点を結ぶ直線のうち最大値をとるものとする。
光電変換層13が有するセレンの結晶粒径(長径)の確認には、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscopy)像、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)像、走査透過電子顕微鏡(STEM:Scanning Transmission Electron Microscopy)像、電子後方散乱回折法(EBSD:Electron Backscatter Diffraction Pattern)等を用いることができる。
光電変換層13は、セレンの原子濃度に対する元素Xの原子濃度の比(X/Se)が0.0010以上0.70以下の領域を有することが好ましい。さらに、光電変換層13は、X/Seが0.0030以上0.50以下の領域を有することが好ましい。さらに、光電変換層13は、X/Seが0.0050以上0.30以下の領域を有することが好ましい。前述のX/Seの範囲とすることで、膜剥がれ領域が少ない、均一な結晶セレンを有する光電変換層13を作製できる。なお、結晶セレンの結晶粒界及び表面などに元素Xが偏析することで、暗電流が増加する場合がある。前述のX/Seの範囲とすることで、暗電流が低い光電変換素子、撮像装置とすることができる。
元素Xは、セレン中での拡散係数が大きく、セレンと化合物を形成することが好ましい。セレン化合物は結晶性を有することが好ましい。単結晶セレンとセレン化合物の格子定数の不整合度が小さいと好ましい。また、セレン化合物と単結晶セレンの結晶構造が同じであるとより好ましいが、格子定数の不整合度が小さければ、結晶構造は異なってもよい。なお、本発明の一態様である光電変換層13は、セレン化合物を有する場合がある。なお、元素Xとして2種以上の元素を用いる場合、それらの原子濃度の総和をXとして用いてもよい。
光電変換層13が有するセレン及び元素Xの原子濃度の確認には、エネルギー分散型X線分析(EDX:Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)、二次イオン質量分析(SIMS:Secondary ion mass spectrometry)、飛行時間型二次イオン質量分析(ToF−SIMS:Time−of−flight secondary ion mass spectrometry)、X線光電子分光(XPS:X−ray Photoelectoron Spectroscopy)、オージェ電子分光(AES:Auger Electron Spectroscopy)、電子エネルギー損失分光法(EELS:Electron Energy−Loss Spectroscopy)等を用いることができる。
本明細書等において、「原子濃度の比」と「原子数の比」は同義であり、「原子濃度の比」を「原子数の比」と置き換えることができる。つまり、X/Seの値は、セレンの原子濃度に対する元素Xの原子濃度の比であり、また、セレンの原子数に対する元素Xの原子数の比であるともいえる。
[正孔注入阻止層17]
本発明の一態様に係る光電変換素子は、図1(A)乃至図1(C)に示すように、光電変換層13と第2の電極15との間に、正孔注入阻止層17を有する。正孔注入阻止層17は、第2の電極15から光電変換層13への正孔の注入を抑制する機能を有する。正孔注入阻止層17は、光電変換層13への電荷の注入を抑制する機能を有することから、電荷注入阻止層と呼ばれる場合がある。
正孔注入阻止層17は、可視光に対して透光性を有することが好ましい。透光性を有することで、可視光領域全域で高い光感度を有する光電変換素子とすることができる。また、正孔注入阻止層17は、バンドギャップが大きいことが好ましい。バンドギャップが大きいことで、電極から光電変換層へ正孔が注入されるのを抑制でき、暗電流の低い光電変換素子とすることができる。また、正孔注入阻止層17は、電子に対する障壁が低いことが好ましい。電子に対する障壁が高いと電子が該障壁に捕獲され、撮像時に残像や焼付などの問題が発生する場合がある。電子に対する障壁が低いことで、残像や焼付などが少ない光電変換素子とすることができる。また、正孔注入阻止層17は、欠陥準位が少ないことが好ましい。欠陥準位が多いと正孔に対する実効的なエネルギー障壁が低くなり、暗電流が増加する場合がある。欠陥準位が少ないことで、暗電流の低い光電変換素子とすることができる。正孔注入阻止層17として、例えば、スズ含有酸化ガリウムを好適に用いることができる。
本発明の一態様である正孔注入阻止層17は、スズ、ガリウム及び酸素を有する。正孔注入阻止層17は、スズの原子濃度が0.020atomic%以上2.0atomic%以下の領域を有することが好ましい。さらに、正孔注入阻止層17は、スズの原子濃度が0.10atomic%以上1.2atomic%以下の領域を有することが好ましい。さらに、正孔注入阻止層17は、スズの原子濃度が0.20atomic%以上1.0atomic%以下の領域を有することが好ましい。前述のスズ濃度の範囲とすることで、電流増幅率の高い光電変換素子とすることができる。
また、正孔注入阻止層17は、ガリウムの原子濃度に対するスズの原子濃度の比(Sn/Ga)が0.0010以上0.050以下の領域を有することが好ましい。さらに、正孔注入阻止層17は、Sn/Gaが0.0030以上0.030以下の領域を有することが好ましい。さらに、正孔注入阻止層17は、Sn/Gaが0.0050以上0.020以下の領域を有することが好ましい。前述のSn/Gaの範囲とすることで、電流増幅率の高い光電変換素子とすることができる。
また、正孔注入阻止層17を十分に機能させるためには、正孔注入阻止層17を貫通するトンネル電流を抑制する必要があり、そのため該層は一定以上の膜厚とする必要がある。例えば、5nm以上50nm以下の膜厚とすることが好ましく、10nm以上40nm以下の膜厚とすることがさらに好ましい。前述の膜厚の範囲とすることで、暗電流が低い光電変換素子とすることができる。
非晶質セレンと比較して、結晶セレンはフェルミ準位と価電子帯のエネルギー差(Ef−Ev)が小さく、キャリア密度が高い場合がある。光電変換層13のキャリア密度が高いと、暗電流(Idark)が高くなり、電流増幅率(Iphoto/Idark)が低くなる場合がある。
なお、本明細書等において、電流増幅率(Iphoto/Idark)とは、暗電流(Idark)に対する光電流(Iphoto)の比、つまり光電流(Iphoto)/暗電流(Idark)の値を指す。
高い電流増幅率を得るには、暗電流を低く、又は光電流を高くする必要がある。光電流を高くするには、電圧印加時の光電変換層13中の空乏層幅Wpを大きくすることが有効である。電圧印加時の光電変換層13中の空乏層幅Wpは、数式1で表すことができる。
ここで、Wpは光電変換層13中の空乏層幅、Ndは正孔注入阻止層17中のキャリア密度、Naは光電変換層13中のキャリア密度、εは誘電率、qは素電荷、Vbiは内部電位、Vは印加電圧を示す。
数式1に示すように、光電変換層13中の空乏層幅Wpは、正孔注入阻止層17中のキャリア密度及び光電変換層13中のキャリア密度の比が大きく影響する。光電変換層13中のキャリア密度に適したキャリア密度を有する正孔注入阻止層17を用いることが、光電流を高めるには有効である。
前述したように、非晶質セレンと比較して、結晶セレンはキャリア密度が高い場合がある。光電変換層に結晶セレンを用いる場合、キャリア密度の高い正孔注入阻止層17を用いることで、光電流及び電流増幅率を高めることができる。
図2(A)は、第2の電極15、正孔注入阻止層17及び光電変換層13の接合状態におけるバンド図であり、光電変換層13として非晶質セレン、正孔注入阻止層17としてインジウム−ガリウム酸化物を用いた例である。非晶質セレンのバンドギャップは約2.3eV、フェルミ準位と価電子帯のエネルギー差(Ef−Ev)は、約0.2eVである。インジウム−ガリウム酸化物のバンドギャップは約4.6eVである。なお、該インジウム−ガリウム酸化物の原子数比はIn:Ga=5:95である。
図2(B)は、光電変換層13として結晶セレン、正孔注入阻止層17としてインジウム−ガリウム酸化物を用いた場合のバンド図である。結晶セレンのバンドギャップは約1.8eV、フェルミ準位と価電子帯のエネルギー差(Ef−Ev)は、約0.1eVである。非晶質セレンと比較して、結晶セレンはフェルミ準位と価電子帯のエネルギー差が小さいことから、キャリア密度が高くなる場合がある。したがって、図2(A)に示した非晶質セレンを用いる構成と比較して、図2(B)に示した結晶セレンを用いる構成では空乏層幅Wpが小さくなる。空乏層幅Wpが小さくなることで、入射される光は空乏層内で吸収されきれず、空乏層外の領域でも吸収されることになる。空乏層内で発生した光キャリアは内部電界によって効率良く外部に取り出すことができるが、空乏層外の領域で発生した光キャリアは失活してしまう。
したがって、光キャリアを外部に効率良く取り出す、すなわち、光電流(Iphoto)を増加させるには、光電変換層13内に形成される空乏層幅Wpを拡大することが好ましい。空乏層幅Wpを拡大させるには、正孔注入阻止層17のキャリア濃度を高めることで可能であるが、極端にキャリア濃度の高い材料を用いると深い準位を介して第2の電極15から光電変換層13に正孔が注入されることもある。したがって、正孔注入阻止層17は、インジウム−ガリウム酸化物よりもわずかにキャリア濃度の高い材料であることが好ましい。このような材料としては、例えば、スズ含有酸化ガリウムがある。
図3は、光電変換層13として結晶セレン、正孔注入阻止層17としてスズ含有酸化ガリウムを用いた場合のバンド図である。図3に示す構成は、本発明の一態様である。スズ含有酸化ガリウムのバンドギャップは約4.6eVであり、前述のインジウム−ガリウム酸化物と比較してキャリア密度が高い。したがって、図2(B)に示す構成と比較して、図3に示す構成では空乏層幅Wpが大きくなり、光電流の増加が見積もられる。
正孔注入阻止層17中のキャリア密度を高くする方法として、例えば、正孔注入阻止層17に用いる酸化物の酸素欠損(Vo)を増やすことが挙げられる。しかしながら、正孔注入阻止層17中の酸素欠損が多いと深い準位が増加し、正孔に対する実効的なエネルギー障壁が低くなる場合がある。正孔に対する実効的なエネルギー障壁が低くなると、暗電流が増加する場合があり好ましくない。したがって、正孔注入阻止層17中の酸素欠損は少ないことが好ましい。
酸素欠損(Vo)を増やす方法以外に、正孔注入阻止層17中のキャリア密度を高くする方法として、例えば、ドナー源となる元素を添加することが挙げられる。正孔注入阻止層17として、特にスズ含有酸化ガリウムを用いることが好ましい。
本発明の一態様である光電変換素子は、光電変換層13として結晶セレンを用い、正孔注入阻止層17としてスズ含有酸化ガリウムを用いる。前述の構成とすることで、電流増幅率が高く、熱的安定性が高い光電変換素子とすることができる。
図1(B)に示すように、正孔注入阻止層17は、第1の正孔注入阻止層17aと、第1の正孔注入阻止層17a上の第2の正孔注入阻止層17bの積層構造とすることが好ましい。第1の正孔注入阻止層17a及び第2の正孔注入阻止層17bには、正孔注入阻止層17に用いることができる材料を用いることができる。
第1の正孔注入阻止層17a及び第2の正孔注入阻止層17bとして、例えば、スズ含有酸化ガリウムを用いることができる。第1の正孔注入阻止層17a及び第2の正孔注入阻止層17bを概略同じ組成とすることで、同じスパッタリングターゲットを用いて形成できるため、製造コストを抑制できる。
第1の正孔注入阻止層17a、第2の正孔注入阻止層17bは、それぞれスズの原子濃度が0.020atomic%以上2.0atomic%以下の領域を有することが好ましい。さらに、第1の正孔注入阻止層17a、第2の正孔注入阻止層17bは、それぞれスズの原子濃度が0.10atomic%以上1.2atomic%以下の領域を有することが好ましい。さらに、第1の正孔注入阻止層17a、第2の正孔注入阻止層17bは、それぞれスズの原子濃度が0.20atomic%以上1.0atomic%以下の領域を有することが好ましい。前述のスズ濃度の範囲とすることで、電流増幅率の高い光電変換素子とすることができる。
また、第1の正孔注入阻止層17a、第2の正孔注入阻止層17bは、それぞれガリウムの原子濃度に対するスズの原子濃度の比(Sn/Ga)が0.0010以上0.050以下の領域を有することが好ましい。さらに、第1の正孔注入阻止層17a、第2の正孔注入阻止層17bは、それぞれSn/Gaが0.0030以上0.030以下の領域を有することが好ましい。さらに、第1の正孔注入阻止層17a、第2の正孔注入阻止層17bは、それぞれSn/Gaが0.0050以上0.020以下の領域を有することが好ましい。前述のSn/Gaの範囲とすることで、電流増幅率の高い光電変換素子とすることができる。
第1の正孔注入阻止層17a及び第2の正孔注入阻止層17bは、それぞれ組成の異なるターゲットを用いて成膜された膜を用いてもよいが、特に同じ組成のターゲットを用い、大気に曝すことなく、真空中で連続して成膜された積層膜を用いることが好ましい。連続して成膜することで、1つの成膜装置で処理を行えるほか、第1の正孔注入阻止層17a及び第2の正孔注入阻止層17bの間に大気成分等の不純物が残留することを抑制できる。正孔注入阻止層の不純物はキャリアトラップとして機能する欠陥準位を形成し、フォトダイオードの周波数特性を劣化させる場合があり、好ましくない。第1の正孔注入阻止層17a及び第2の正孔注入阻止層17bを真空中で連続して成膜することで、欠陥準位の増加を抑制でき、良好な特性を得られる。
第1の正孔注入阻止層17a及び第2の正孔注入阻止層17bとは、例えば成膜条件を異ならせることで作り分けることができる。例えば、第1の正孔注入阻止層17aと第2の正孔注入阻止層17bとで、成膜ガス中の酸素ガスの流量を異ならせることができる。
第1の正孔注入阻止層17aの成膜条件として、ガス流量全体に占める酸素ガス流量の割合(酸素流量比又は酸素分圧ともいう)を、0%以上30%以下、好ましくは5%以上15%以下とする。前述の酸素流量比とすることで、第1の正孔注入阻止層17aの被形成面となる光電変換層13の表面近傍が酸化されるのを抑制できる。
例えば、スパッタリング法で第1の正孔注入阻止層17aを形成する場合、スパッタ粒子の衝突により基板温度が上昇する場合がある。基板温度が上昇すると、光電変換層13が有するセレンが蒸発する場合がある。第1の正孔注入阻止層17aの形成を前述の酸素流量比とすることで第1の正孔注入阻止層17aの成膜速度を速くすることができる。つまり、第1の正孔注入阻止層17a形成時に光電変換層13の表面がスパッタ粒子に曝される時間を短くできることから、セレンの蒸発を抑制できる。
第2の正孔注入阻止層17bの成膜条件として、酸素流量比を30%より大きく100%以下、好ましくは35%以上100%以下、さらに好ましくは40%以上70%以下とする。前述の酸素流量比とすることで、酸素欠損の少ない第2の正孔注入阻止層17bを形成できる。
酸素流量比が高いと、結晶性を有する第2の正孔注入阻止層17bが形成される場合がある。第2の正孔注入阻止層17bが結晶性を有すると、抵抗が高くなり、光電流が低下する場合があり好ましくない。前述の酸素流量比とすることで第2の正孔注入阻止層17bの結晶性を低くすることができ、光電流の高い光電変換素子とすることができる。
第1の正孔注入阻止層17aの厚さとしては、1nm以上10nm以下、好ましくは2nm以上8nm以下とすればよい。また、第2の正孔注入阻止層17bの厚さとしては、1nm以上50nm以下、好ましくは5nm以上40nm以下とすればよい。
なお、第1の正孔注入阻止層17aと第2の正孔注入阻止層17bの境界(界面)を明確に確認できない場合がある。そこで、本発明の一形態を説明する図面では、これらの境界を破線で示している。
なお、正孔注入阻止層17は単層構造としてもよい。正孔注入阻止層17に第1の正孔注入阻止層17aと同様の構成を適用することができる。また、正孔注入阻止層17に第2の正孔注入阻止層17bと同様の構成を適用することができる。正孔注入阻止層17を単層構造とすることで生産性を高めることができる。
[電子注入阻止層19]
本発明の一態様に係る光電変換素子は、図1(C)に示すように、第1の電極11と光電変換層13との間に、さらに電子注入阻止層19を有していてもよい。電子注入阻止層19は、第1の電極11から光電変換層13への電子の注入を抑制する機能を有する。電子注入阻止層19は、光電変換層13への電荷の注入を抑制する機能を有することから、電荷注入阻止層と呼ばれる場合がある。
電子注入阻止層には、酸化ニッケルまたは硫化アンチモンなどを設ける構成とすることができる。
[第1の電極11]
第1の電極11について説明する。第1の電極11は、例えば、金、窒化チタン、モリブデン、タングステン、アルミニウム、チタンなどを用いることができる。また、例えば、アルミニウムをチタンで挟むような積層を用いることができる。第1の電極11は、スパッタ法やプラズマCVD法により形成することができる。なお、第1の電極11は、基板上に形成されてもよく、基板に形成された、または、基板上に形成された駆動用のトランジスタの上に形成されてもよい。
また、図1(A)乃至図1(C)に示す第1の電極11は、光電変換層13の被覆性不良などに起因する第2の電極15との短絡を防止するため、表面の凹凸が少ないことが好ましい。第1の電極11の凹凸が少ないと、光電変換層13の上面の凹凸の抑制にも寄与する。
表面の凹凸が少ない導電膜としては、例えば、酸化シリコンを1乃至20weight%含む酸化インジウム錫膜などが挙げられる。
表面の凹凸は、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)による観察等によって確かめられる。
酸化インジウム錫膜は、成膜時に非晶質であっても比較的低温で結晶化するため、結晶粒成長による表面荒れが生じやすい。一方、シリコンを含む酸化インジウム錫膜は、400℃超の熱処理を行ってもX線回折(XRD)分析において結晶性が認められない。つまり、シリコンを有する酸化インジウム錫膜は、比較的高温の熱処理を行っても非晶質状態を維持する。したがって、シリコンを含む酸化インジウム錫膜は表面荒れが生じにくい。
[第2の電極15]
第2の電極15について説明する。第2の電極15は、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、シリコンを含むインジウム錫酸化物、亜鉛を含む酸化インジウム、酸化亜鉛、ガリウムを含む酸化亜鉛、アルミニウムを含む酸化亜鉛、酸化錫、フッ素を含む酸化錫、アンチモンを含む酸化錫、またはグラフェン等を用いることができるが、インジウム錫酸化物、シリコンを含むインジウム錫酸化物が特に好ましい。第2の電極15は単層に限らず、異なる膜の積層であっても良い。なお、インジウム錫酸化物は、InとSnとOとを有する。
第2の電極15は、光を光電変換層13へ到達させるため光の透過性が高いことが好ましい。なお、第2の電極15の光の透過性を高めることで、精細度の高い撮像装置を提供できる。具体的には、精細度の高い撮像装置とするには、画素を多く配置することが好ましい。例えば、2Kの映像を撮像する場合には1920×1080個以上の画素を、4Kの映像を撮像する場合には3840×2160個以上の画素を、8Kの映像を撮像する場合には7680×4320個以上の画素を、それぞれ設けることが好ましい。特に、8Kの撮像装置においては、画素一つが占める面積は極めて小さく、受光に用いることができる領域が極めて小さいため、光の透過性がより重要となる。第2の電極15は、光電変換層13上にスパッタ法やプラズマCVD法により形成することができる。
<光電変換素子の作製方法1>
本発明の一態様に係る光電変換素子10Bの作製方法について説明する。
光電変換層13に結晶セレンを有する光電変換素子10Bの作製方法について、図を用いて説明する。図4は光電変換素子10Bの作製方法を示すフローチャートである。図5(A)乃至図5(E)は光電変換素子10Bの作製方法を示す断面図である。
まず、ステップS401として、層41上に第1の電極11を形成する(図5(A))。なお、図5(A)において、第1の電極11の被形成層を便宜上、層41として図示する。層41は基板でもよく、基板に形成された、または、基板上に形成された駆動用トランジスタを含む層であってもよい。
次に、ステップS402として、第1の電極11上に、下地層43と、下地層43上の非晶質セレン層45と、を形成する(図5(B))。
下地層43は、元素Xから選ばれる一以上を有する。元素Xとして、前述した元素を用いることができる。下地層43として、例えば、銀、ビスマス、インジウム、酸化インジウム、スズ、酸化スズ、テルル、In−Sn酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)、In−Sn−Si酸化物(ITSO)から選ばれる一以上を用いることができる。下地層43は単層としてもよいし、積層にして用いてもよい。
下地層43は、セレンに対してぬれ性が高いことが好ましい。また、セレン化合物は、セレンに対してぬれ性が高いことが好ましい。セレンに対するぬれ性が高いと、セレンが結晶化する際の凝集、または再蒸発等を抑制できる。したがって、結晶セレン形成の際、膜剥がれ領域が発生するのを抑制できる。具体的には、下地層43としては、銀を有する材料を用いることが好ましい。銀はセレン中での拡散速度が速い。また、セレンと銀との化合物(Ag2Se)は、ぬれ性が高い。同様に、下地層43としては、ビスマスを有する材料を用いることが好ましい。
下地層43の膜厚は0.20nm以上140nm以下が好ましい。さらに、0.60nm以上100nm以下が好ましい。さらに、1.0nm以上60nm以下が好ましい。前述の膜厚の範囲とすることで、膜剥がれ領域が少ない、均一な結晶セレンを有する光電変換素子を作製できる。また、膜剥がれ領域が少ない、結晶セレンを用いることで、特性ばらつきの少ない撮像装置を作製できる。また、暗電流が低い光電変換素子、撮像装置を作製できる。
下地層43の形成は、スパッタリング法、蒸着法、パルスレーザ堆積(PLD:Pulsed Laser Deposition)法、プラズマ化学気相堆積(PECVD:Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)法、熱CVD(Chemical Vapor Deposition)法、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法、真空蒸着法等を用いることができる。熱CVD法の例としては、有機金属CVD(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法が挙げられる。
図5(B)には下地層43の形状を加工しない例を示したが、これに限られない。図6(A)に示すように、下地層43は島状でもよい。また、縞状、網目状、開口を有する形状などでもよい。例えば、第1の電極11上にメタルマスクを用いて、部分的に下地層43を形成できる。または、第1の電極11上に形成した下地層43をドライエッチングまたはウエットエッチングにより、所定の形状に加工してもよい。下地層43を島状にすることで、セレン層が有するセレンの量に対する下地層43が有する元素Xの量を調整できる場合がある。また、所望の領域に下地層43を設けることができる。
非晶質セレン層45の成膜は、スパッタリング法、蒸着法、パルスレーザ堆積(PLD)法、プラズマ化学気相堆積(PECVD)法、熱CVD法、ALD法、真空蒸着法等を用いることができる。熱CVD法の例としては、MOCVD法が挙げられる。
非晶質セレン層45の成膜時の基板温度は、層41が室温(20℃)以上50℃未満となる温度が好ましい。前述の温度の範囲とすることで、非晶質セレン層45に膜剥がれ領域が発生するのを抑制できる。なお、非晶質セレン層45は非晶質であるが、部分的に結晶質であってもよい。
下地層43の形成後、時間を空けずに非晶質セレン層45を成膜することが好ましい。さらに、下地層43の形成後、下地層43の表面を大気雰囲気に晒さずに非晶質セレン層45を成膜することが好ましい。さらに、真空中で下地層43を形成した後、真空中で連続して非晶質セレン層45を成膜することが好ましい。下地層43と非晶質セレン層45を連続成膜とすることで、下地層43の表面に大気成分等の不純物が付着するのを抑制でき、不純物の少ない光電変換層13を形成できる。また、光電変換層13に膜剥がれ領域が発生するのを抑制できる。また、結晶性の高い光電変換層13を形成できる。
本明細書等において、下地層成膜と非晶質セレン層成膜の間に、処理基板が大気雰囲気に晒されず、常に真空、窒素又は希ガス雰囲気に置かれることを、連続成膜又は連続で成膜すると呼ぶ場合がある。また、下地層成膜後に、処理基板が一旦大気雰囲気に晒され、その後に非晶質セレン層が成膜されることを、不連続成膜又は不連続で成膜すると呼ぶ場合がある。
非晶質セレン層の成膜には、例えば、複数の成膜室及び複数のターゲットを有し、複数の種類の膜種を真空中で連続して成膜するマルチチャンバ型のスパッタリング装置を用いることができる。また、複数の蒸着源を有し、複数の種類の膜種を真空中で連続して成膜するマルチチャンバ型の蒸着装置を用いることができる。また、スパッタリングのチャンバ及び蒸着のチャンバを有し、複数の種類の膜種を真空中で連続して成膜する複合装置を用いることができる。
下地層43及び非晶質セレン層45の成膜に蒸着法を用いる場合、図5(B)に示した基板の向きは、上下が逆になる。蒸着を行う場合は、基板ホルダーと蒸着マスクの間に基板を挟み、基板ホルダーに設置された永久磁石によってメタルからなる蒸着マスクを引きつけて基板を固定し、露出している下地層43の下方に蒸着源が位置するようにして蒸着が行われる。なお、蒸着中の圧力は1.0×10−3Pa以下が好ましい。さらには、1.0×10−4Pa以下が好ましい。さらには、1.0×10−5Pa程度が好ましい。
次に、ステップS403として、加熱処理を行い、光電変換層13を形成する(図5(C))。
加熱処理は、それぞれ温度の異なる第1の工程乃至第3の工程に分け、段階的に処理することが好ましい。第1の工程を第1の温度(T1)で処理し、その後に第2の工程を第2の温度(T2)で処理し、その後に第3の工程を第3の温度(T3)で処理することが好ましい。
第1の温度(T1)は、50℃以上90℃以下が好ましい。さらには、第1の温度(T1)は、60℃以上80℃以下が好ましい。第1の温度(T1)は、下地層43が有する元素Xが非晶質セレン層45に拡散し、セレン及び元素Xを有するセレン化合物が形成される温度であることが好ましい。
第2の温度(T2)は、第1の温度(T1)より高く、かつ70℃以上170℃以下が好ましい。さらには、第2の温度(T2)は、第1の温度(T1)より高く、かつ90℃以上160℃以下が好ましい。さらには、第2の温度(T2)は、第1の温度(T1)より高く、かつ100℃以上150℃以下が好ましい。第2の温度(T2)は、第1の温度(T1)の処理で形成されたセレン化合物を結晶核として、非晶質セレンの固相結晶化が進む温度であることが好ましい。
第3の温度(T3)は、第2の温度(T2)より高く、かつ110℃以上220℃以下が好ましい。さらには、第3の温度(T3)は、第2の温度(T2)より高く、かつ130℃以上220℃以下が好ましい。さらには、第3の温度(T3)は、第2の温度(T2)より高く、かつ150℃以上210℃以下が好ましい。第3の温度(T3)は、非晶質セレンの固相結晶化が進む温度であることが好ましい。
加熱処理をそれぞれ温度の異なる第1の工程乃至第3の工程に分け、第1の温度(T1)、第2の温度(T2)及び第3の温度(T3)を前述の範囲とすることで、表面の凹凸が抑制された、均一な結晶セレンを形成できる。
本発明の一態様である結晶セレンの形成について、固相結晶化の模式図を図7(A)乃至図7(D)に示す。図7(A)乃至図7(D)は、非晶質セレン層が固相結晶化することにより、結晶セレン層が形成される際の断面図である。
第1の温度(T1)として例えば70℃で加熱処理を行うことにより、非晶質セレン層1001中に下地層から元素Xが拡散し、セレン及び元素Xを有するセレン化合物1003が形成される(図7(A))。
次に、第2の温度(T2)として例えば110℃で加熱処理を行うことにより、セレン化合物1003を結晶核として固相結晶化したセレンの結晶粒1005が形成される(図7(B))。第2の温度(T2)は比較的低いことから、結晶粒の成長速度は遅く、個々の結晶粒1005は略一様の成長速度で成長する。固相結晶化において、個々の結晶粒は、隣接する結晶粒とぶつかるまで成長する。つまり、結晶粒の成長は隣接する結晶粒とぶつかるところで終了する。図7(B)に示すように、第2の温度(T2)が低く、結晶粒の成長速度が遅いと、隣接する結晶粒とぶつかる前に多数の結晶粒1005が成長できる。
次に、第3の温度(T3)として例えば200℃で加熱処理を行うことにより、結晶粒1005がさらに成長していく(図7(C))。
さらに結晶粒が成長することで非晶質セレン層全体が結晶化し、結晶セレン層1007が形成される(図7(D))。前述したように多数の結晶粒1005が成長することから、固相結晶化が終了した際の個々の結晶粒1005は結晶粒径が小さく、略一様の結晶粒径となる。また、結晶粒1005の結晶粒径が小さいことから、結晶セレン層1007の表面の凹凸は小さくなる。つまり、光電変換層の表面の凸凹を小さくできることから、良好なpn接合面を形成でき好ましい。また、第2の温度(T2)が低いほど、多くの結晶粒1005が成長できることから、個々の結晶粒1005の結晶粒径が小さくなり、結晶セレン層1007の表面の凹凸を小さくできることが理解される。
また、結晶粒の成長は隣接する結晶粒とぶつかるところで終了することから、非晶質セレン層全体が結晶化した後の結晶粒は、図7(D)に示すように、多角形となる場合がある。また、角の丸い多角形となる場合がある。
比較として、第2の温度(T2)を設けずに、第1の温度(T1)で加熱処理した後に第3の温度(T3)で加熱処理する場合の、固相結晶化の模式図を図8(A)乃至図8(C)に示す。
第1の温度(T1)として例えば70℃で加熱処理を行うことにより、非晶質セレン層1001中に下地層から元素Xが拡散し、セレンと元素Xを有するセレン化合物1003が形成される(図8(A))。
次に、第3の温度(T3)として例えば200℃で加熱処理を行うことにより、セレン化合物1003を結晶核として固相結晶化したセレンの結晶粒1005が形成される。この際、第3の温度(T3)が比較的高く、結晶粒の成長速度が十分に速いことから、一部の結晶粒1005aは他よりも速く成長する(図8(B))。
非晶質セレン層全体が結晶化し、結晶セレン層1007が形成される(図8(C))。前述したように、一部の結晶粒が他よりも速く成長することから、個々の結晶粒の結晶粒径が大きくなる。また、結晶粒1005の結晶粒径が大きいことにより、結晶セレン層1007の表面の凹凸が大きくなってしまう。光電変換層の表面の凸凹が大きいと、pn接合面の界面特性を悪化させる原因となることから好ましくない。なお、図8(C)に示すように、第2の温度(T2)を設けない場合、結晶粒径が大きい結晶粒とともに小さい結晶粒も形成され、結晶セレン層1007が有する結晶粒の結晶粒径のばらつきが大きくなる場合がある。
本発明の一態様である加熱処理の熱プロファイルを図9に示す。図9において、横軸は時間(Time)を示し、縦軸は温度(Temperature)を示す。
第0の温度(T0)は加熱処理開始時の温度である。第0の温度(T0)としては、第1の温度(T1)以下、かつ室温(20℃)℃以上70℃以下が好ましい。第1の期間(P1)は、第0の温度(T0)で保持する期間である。なお、第1の期間(P1)を設けない熱プロファイルとしてもよい。
第2の期間(P2)は、第0の温度(T0)から第1の温度(T1)に昇温する期間である。第2の期間(P2)の時間は特に制限されない。
第3の期間(P3)は、第1の温度(T1)で保持する期間である。第3の期間(P3)の時間は、10秒以上60分以下とすることができる。
第4の期間(P4)は、第1の温度(T1)から第2の温度(T2)に昇温する期間である。第4の期間(P4)の時間は特に制限されない。
第5の期間(P5)は、第2の温度(T2)で保持する期間である。第5の期間(P5)の時間は、10秒以上60分以下とすることができる。
第6の期間(P6)は、第2の温度(T2)から第3の温度(T3)に昇温する期間である。第6の期間(P6)の時間は特に制限されない。
第7の期間(P7)は、第3の温度(T3)で保持する期間である。第7の期間(P7)の時間は、10秒以上60分以下とすることができる。
第8の期間(P8)は、第3の温度(T3)から降温する期間である。第8の期間(P8)の時間は特に制限されない。
加熱処理として、前述の第1の期間(P1)乃至第8の期間(P8)を連続して行う熱プロファイルを用いることが好ましい。連続で行うことで、生産性高く光電変換素子を作製できる。なお、第1の期間(P1)乃至第8の期間(P8)を連続して行わなくてもよい。
加熱処理には、電気炉、レーザアニール装置、ランプアニール装置等を用いることができる。抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を用いてもよい。また、ホットプレートを用いてもよい。また、急速加熱(RTA:Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。RTA装置として、例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、ランプ急速加熱(LRTA:Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等がある。GRTA装置は、高温のガスを用いて熱処理を行う装置である。高温のガスには、アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。
加熱処理の雰囲気は、アルゴン(Ar)等の希ガス、大気、窒素、酸素、乾燥空気等を用いることができる。また、希ガス及び酸素の混合雰囲気、若しくは希ガス及び窒素の混合雰囲気を用いることができる。
光電変換層13形成後に、下地層43を明確に確認できない場合がある。図5(C)には光電変換層13形成後に、下地層43を明確に確認できず、第1の電極11上に光電変換層13が形成される例を示したが、これに限られない。図6(B)に示すように、下地層43形成時より薄い膜厚の下地層43aとなり、下地層43a上に光電変換層13が形成されてもよい。下地層43aは、下地層43形成時と同程度の膜厚であってもよいし、又は下地層43形成時より厚い膜厚であってもよい。図6(C)に示すように、下地層43が島状の下地層43bとなり、第1の電極11及び下地層43b上に光電変換層13が形成されてもよい。また、下地層43a及び下地層43bは、光電変換層13との境界が明確でなくてもよい。
下地層43a及び下地層43bは、下地層43が有する成分に加え、セレンを有する場合がある。
次に、ステップS404として、光電変換層13上に、正孔注入阻止層17を形成する(図5(D))。
正孔注入阻止層17の成膜は、スパッタリング法、蒸着法、パルスレーザ堆積(PLD)法、プラズマ化学気相堆積(PECVD)法、熱CVD法、ALD法、真空蒸着法等を用いることができる。熱CVD法の例としては、MOCVD法が挙げられる。
図1(B)に示すように、正孔注入阻止層17は、第1の正孔注入阻止層17aと、第1の正孔注入阻止層17a上の第2の正孔注入阻止層17bとの積層構造とすることが好ましい。第1の正孔注入阻止層17a及び第2の正孔注入阻止層17bとして、前述の材料を適用できる。
第1の正孔注入阻止層17a及び第2の正孔注入阻止層17bは、例えば成膜条件を異ならせることで作り分けることができる。例えば、第1の正孔注入阻止層17a及び第2の正孔注入阻止層17bとで、成膜ガス中の酸素ガスの流量を異ならせることができる。
第1の正孔注入阻止層17aを形成する際に、酸素ガスを含む雰囲気にてプラズマを放電させる。その際に、第1の正孔注入阻止層17aの被形成面となる光電変換層13に酸素が打ち込まれ、光電変換層が酸化されるおそれがある。したがって、第1の正孔注入阻止層17aの成膜条件として、ガス流量全体に占める酸素ガス流量の割合(酸素流量比又は酸素分圧ともいう)が少ないことが好ましい。
第1の正孔注入阻止層17aの成膜条件として、ガス流量全体に占める酸素ガス流量の割合(酸素流量比又は酸素分圧ともいう)を、0%以上30%以下、好ましくは5%以上15%以下とする。前述の酸素流量比とすることで、第1の正孔注入阻止層17aの被形成面となる光電変換層13の表面近傍が酸化されるのを抑制できる。
例えば、スパッタリング法で第1の正孔注入阻止層17aを形成する場合、スパッタ粒子の衝突により基板温度が上昇する場合がある。基板温度が上昇すると、光電変換層13が有するセレンが蒸発する場合がある。第1の正孔注入阻止層17aの形成を前述の酸素流量比とすることで第1の正孔注入阻止層17aの成膜速度を速くすることができる。つまり、第1の正孔注入阻止層17a形成時に光電変換層13の表面がスパッタ粒子に曝される時間を短くできることから、セレンの蒸発を抑制できる。
第2の正孔注入阻止層17bの成膜条件として、酸素流量比を30%より大きく100%以下、好ましくは35%以上100%以下、さらに好ましくは40%以上70%以下とする。前述の酸素流量比とすることで、酸素欠損の少ない第2の正孔注入阻止層17bを形成できる。
酸素流量比が高いと、結晶性を有する第2の正孔注入阻止層17bが形成される場合がある。第2の正孔注入阻止層17bが結晶性を有すると、抵抗が高くなり、光電流が低下する場合があり好ましくない。前述の酸素流量比とすることで第2の正孔注入阻止層17bの結晶性を低くすることができ、光電流の高い光電変換素子とすることができる。
第1の正孔注入阻止層17a及び第2の正孔注入阻止層17bの形成時の基板温度としては、室温(20℃)以上60℃以下が好ましく、室温以上50℃以下がより好ましい。基板温度を前述範囲とすることで、正孔注入阻止層17の被形成面となる光電変換層13が有するセレンが蒸発するのを抑制できる。ここで、第1の正孔注入阻止層17a及び第2の正孔注入阻止層17bとで、基板温度を同じ温度とすると、生産性を高めることができる。
第1の正孔注入阻止層17a及び第2の正孔注入阻止層17bの形成には、スパッタリングターゲットとしてSnO2を0.2mol%以上15mol%以下含むGa2O3を用いることができる。
次に、ステップS405として、正孔注入阻止層17上に、第2の電極15を形成する(図5(E))。以上の工程により、本発明の一態様に係る光電変換素子10Bを作製できる。
第2の電極15を形成した後に、さらに熱処理を行ってもよい。熱処理を行うことで光電変換層13が有する結晶セレンの結晶性をさらに高められる場合がある。なお、第2の電極15を形成した後に熱処理を行わなくてもよい。
<光電変換素子の作製方法2>
本発明の一態様に係る光電変換素子10Bの別の作製方法について、図を用いて説明する。前述の光電変換素子の作製方法1とは、ステップS402の工程が異なる。
まず、ステップS401として、層41上に第1の電極11を形成する(図5(A))。第1の電極11の形成については、前述の光電変換素子の作製方法1の記載を参照できるため、詳細を省略する。
次に、ステップS402として、第1の電極11上に、非晶質セレン層45と、非晶質セレン層45上の下地層43と、を形成する(図6(D))。非晶質セレン層45及び下地層43の形成については、前述の光電変換素子の作製方法1の記載を参照できるため、詳細を省略する。
次に、ステップS403として、加熱処理を行い、光電変換層13を形成する(図5(C))。加熱処理については、前述の光電変換素子の作製方法1の記載を参照できるため、詳細を省略する。
次に、ステップS404として、光電変換層13上に、正孔注入阻止層17を形成する(図5(D))。正孔注入阻止層17の形成については、前述の光電変換素子の作製方法1の記載を参照できるため、詳細を省略する。
次に、ステップS405として、正孔注入阻止層17上に、第2の電極15を形成する(図5(E))。以上の工程により、本発明の一態様に係る光電変換素子10Bを作製できる。
第2の電極15を形成した後に、さらに熱処理を行ってもよい。熱処理を行うことで光電変換層13が有する結晶セレンの結晶性をさらに高められる場合がある。なお、第2の電極15を形成した後に熱処理を行わなくてもよい。
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様を適用することのできる撮像装置の一例について、図面を参照して説明する。
図10(A)は、撮像装置の画素回路を説明する図である。当該画素回路は、光電変換素子50と、トランジスタ51と、トランジスタ52と、トランジスタ53と、トランジスタ54を有する。
光電変換素子50として、実施の形態1で説明した光電変換素子10A乃至光電変換素子10Cのいずれかを用いることができる。
光電変換素子50の一方の電極(アノード)は、トランジスタ51のソースまたはドレインの一方と電気的に接続される。光電変換素子50の一方の電極は、トランジスタ52のソースまたはドレインの一方と電気的に接続される。トランジスタ51のソースまたはドレインの他方は、トランジスタ53のゲートと電気的に接続される。トランジスタ53のソースまたはドレインの一方は、トランジスタ54のソースまたはドレインの一方と電気的に接続される。なお、トランジスタ53のゲートと電気的に接続される容量素子を設けてもよい。
光電変換素子50の他方の電極(カソード)は、配線72と電気的に接続される。トランジスタ51のゲートは、配線75と電気的に接続される。トランジスタ53のソースまたはドレインの他方は、配線79に電気的に接続される。トランジスタ52のゲートは、配線76と電気的に接続される。トランジスタ52のソースまたはドレインの他方は、配線73と電気的に接続される。トランジスタ54のソースまたはドレインの他方は、配線71と電気的に接続される。トランジスタ54のゲートは、配線78と電気的に接続される。配線72は、電源56の一方の端子と電気的に接続され、電源56の他方の端子は、配線77と電気的に接続される。
ここで、配線71は、画素から信号を出力する出力線としての機能を有することができる。配線73、配線77、配線79は、電源線としての機能を有することができる。例えば、配線73および配線77は、低電位電源線、配線79は高電位電源線として機能させることができる。配線75、配線76、配線78は、各トランジスタのオンオフを制御する信号線として機能させることができる。
光電変換素子50には、低照度時の光検出感度を高めるためアバランシェ増倍効果を生じる光電変換素子を用いることが好ましい。アバランシェ増倍効果を生じさせるためには、比較的高い電位HVDDが必要となる。したがって、電源56は電位HVDDを供給することのできる機能を有し、光電変換素子50の他方の電極には配線72を介して電位HVDDが供給される。なお、光電変換素子50は、アバランシェ増倍効果が生じない電位を印加して使用することもできる。
トランジスタ51は、光電変換素子50の出力に応じて変化する電荷蓄積部(NR)の電位を電荷検出部(ND)に転送する機能を有することができる。トランジスタ52は、電荷蓄積部(NR)および電荷検出部(ND)の電位を初期化する機能を有することができる。トランジスタ53は、電荷検出部(ND)の電位に応じた信号を出力する機能を有することができる。トランジスタ54は、信号を読み出す画素を選択する機能を有することができる。
光電変換素子50に高電圧を印加する場合、光電変換素子50と接続されるトランジスタには高電圧に耐えられる高耐圧のトランジスタを用いる必要がある。当該高耐圧のトランジスタには、例えば、OSトランジスタなどを用いることができる。具体的には、トランジスタ51およびトランジスタ52にOSトランジスタを適用することが好ましい。
トランジスタ51およびトランジスタ52はスイッチング特性が優れていることが望まれるが、トランジスタ53は増幅特性が優れていることが望まれるため、オン電流が高いトランジスタであることが好ましい。したがって、トランジスタ53およびトランジスタ54には、シリコンを活性層または活性領域に用いたトランジスタ(以下、Siトランジスタ)を適用することが好ましい。
トランジスタ51乃至トランジスタ54を上述した構成とすることで、低照度における光の検出感度が高く、ノイズの少ない信号を出力することのできる撮像装置を作製することができる。また、光の検出感度が高いため、光の取り込み時間を短くすることができ、撮像を高速に行うことができる。
なお、上記構成に限らず、トランジスタ53およびトランジスタ54にOSトランジスタを適用してもよい。または、トランジスタ51およびトランジスタ52にSiトランジスタを適用してもよい。いずれの場合においても当該画素回路の撮像動作は可能である。
次に、図10(B)のタイミングチャートを用いて、画素の動作を説明する。なお、以下に説明する一例の動作において、トランジスタ52のゲートに接続された配線76には、”H”としてHVDD、”L”としてGNDの電位が供給されるものとする。トランジスタ51のゲートに接続された配線75およびトランジスタ54のゲートに接続された配線78には、”H”としてVDD、”L”としてGNDの電位が供給されるものとする。また、トランジスタ53のソースに接続された配線79には、VDDの電位が供給されるものとする。なお、各配線に上記以外の電位を供給する形態とすることもできる。
時刻T1に配線76を”H”、配線75を”H”とし、電荷蓄積部(NR)および電荷検出部(ND)の電位をリセット電位(GND)に設定する(リセット動作)。なお、リセット動作時に配線76に”H”として電位VDDを供給してもよい。
時刻T2に配線76を”L”、配線75を”L”とすることで、電荷蓄積部(NR)の電位が変化する(蓄積動作)。電荷蓄積部(NR)の電位は、光電変換素子50に入射した光の強度に応じてGNDから最大でHVDDまで変化する。
時刻T3に配線75を”H”とし、電荷蓄積部(NR)の電荷を電荷検出部(ND)に転送する(転送動作)。
時刻T4に配線76を”L”、配線75を”L”とし、転送動作を終了させる。この時点で電荷検出部(ND)の電位が確定される。
時刻T5乃至T6の期間に配線76を”L”、配線75を”L”、配線78を”H”とし、電荷検出部(ND)の電位に応じた信号を配線71に出力する。すなわち、蓄積動作において光電変換素子50に入射した光の強度に応じた出力信号を得ることができる。
図11(A)に、上述した画素回路を有する撮像装置の画素の構成の一例を示す。当該撮像装置は、層61、層62および層63を有し、それぞれが互いに重なる領域を有する構成とすることができる。
層61は、光電変換素子50の構成を有する。光電変換素子50は、画素電極に相当する電極65と、光電変換部66と、共通電極に相当する電極67を有する。
電極65には、低抵抗の金属層などを用いることが好ましい。例えば、アルミニウム、チタン、タングステン、タンタル、銀またはそれらの積層を用いることができる。
電極67には、可視光に対して高い透光性を有する導電層を用いることが好ましい。例えば、インジウム酸化物、錫酸化物、亜鉛酸化物、インジウム−錫酸化物、ガリウム−亜鉛酸化物、インジウム−ガリウム−亜鉛酸化物、またはグラフェンなどを用いることができる。なお、電極67を省く構成とすることもできる。
光電変換部66には、例えばセレン系材料を光電変換層としたpn接合型フォトダイオードなどを用いることができる。光電変換層66aとしては実施の形態1に示したセレン系材料を用い、正孔注入阻止層66bとしては実施の形態1に示したバンドギャップの広い材料を用いることが好ましい。
セレン系材料を用いた光電変換素子は、可視光に対する外部量子効率が高い特性を有する。当該光電変換素子では、アバランシェ増倍効果を利用することにより、入射される光量に対する電子の増幅が大きいセンサ、つまり光感度が高いセンサとすることができる。また、セレン系材料は光吸収係数が高いため、光電変換層を薄膜で作製できるなどの生産上の利点を有する。セレン系材料の薄膜は、真空蒸着法またはスパッタ法などを用いて形成することができる。
セレン系材料としては、単結晶セレンや多結晶セレンなどの結晶性セレン、非晶質セレン、銅、インジウム、セレンの化合物(CIS)、または、銅、インジウム、ガリウム、セレンの化合物(CIGS)などを用いることができる。
n型半導体は、バンドギャップが広く、可視光に対して透光性を有する材料で形成することが好ましい。例えば、亜鉛酸化物、ガリウム酸化物、インジウム酸化物、錫酸化物、またはそれらが混在した酸化物などを用いることができる。また、これらの材料は正孔注入阻止層としての機能も有し、暗電流を小さくすることもできる。
なお、層61は上記構成に限らず、シリコンを用いたpn接合型フォトダイオードまたはpin接合型フォトダイオードであってもよい。
層62は、例えば、OSトランジスタ(トランジスタ51、トランジスタ52)を有する層とすることができる。図10(A)に示す画素の回路構成では、光電変換素子50に入射される光の強度が小さいときに電荷検出部(ND)の電位が小さくなる。OSトランジスタは極めてオフ電流が低いため、ゲート電位が極めて小さい場合においても当該ゲート電位に応じた電流を正確に出力することができる。したがって、検出することのできる照度のレンジ、すなわちダイナミックレンジを広げることができる。
また、トランジスタ51およびトランジスタ52の低いオフ電流特性によって、電荷検出部(ND)および電荷蓄積部(NR)で電荷を保持できる期間を極めて長くすることができる。そのため、回路構成や動作方法を複雑にすることなく、全画素で同時に電荷の蓄積動作を行うグローバルシャッタ方式を適用することができる。
層63は、支持基板またはSiトランジスタ(トランジスタ53、トランジスタ54)を有する層とすることができる。当該Siトランジスタは、単結晶シリコン基板に活性領域を有する構成のほか、絶縁表面上に結晶系のシリコン活性層を有する構成とすることができる。なお、層63に単結晶シリコン基板を用いる場合は、当該単結晶シリコン基板にシリコンを用いたpn接合型フォトダイオードまたはpin接合型フォトダイオードを形成してもよい。この場合、層61を省くことができる。
図11(B)は、本発明の一態様の撮像装置の回路構成を説明するブロック図である。当該撮像装置は、マトリクス状に配列された画素80を有する画素アレイ81と、画素アレイ81の行を選択する機能を有する回路82(ロードライバ)と、画素80の出力信号に対して相関二重サンプリング処理を行うための回路83(CDS回路)と、回路83から出力されたアナログデータをデジタルデータに変換する機能を有する回路84(A/D変換回路等)と、回路84で変換されたデータを選択して読み出す機能を有する回路85(カラムドライバ)と、を有する。なお、回路83を設けない構成とすることもできる。
例えば、光電変換素子を除く画素アレイ81の要素は、図11(A)に示す層62に設けることができる。回路82乃至回路85の要素は、層63に設けることができる。これらの回路はシリコントランジスタを用いたCMOS回路で構成することができる。
当該構成とすることで、それぞれの回路に適したトランジスタを用いることができ、かつ撮像装置の面積を小さくすることができる。
図12(A)、(B)、(C)は、図11(A)に示す撮像装置の具体的な構成を説明する図である。図12(A)はトランジスタ51、52、53、54のチャネル長方向を示す断面図である。図12(B)は、図12(A)に示す一点鎖線A1−A2の断面図であり、トランジスタ52のチャネル幅方向の断面を示している。図12(C)は、図12(A)に示す一点鎖線B1−B2の断面図であり、トランジスタ53のチャネル幅方向の断面を示している。
層61は、セレン層を有する光電変換素子50の他、隔壁92を有する構成とすることができる。隔壁92は、電極65の段差を覆うように設けられる。光電変換素子50に用いるセレン層は高抵抗であり、画素間で分離しない構成とすることができる。
層62にはOSトランジスタであるトランジスタ51、52が設けられる。トランジスタ51、52はともにバックゲート91を有する構成を示しているが、いずれかがバックゲートを有する形態であってもよい。バックゲート91は、図12(B)に示すように対向して設けられるトランジスタのフロントゲートと電気的に接続する場合がある。または、バックゲート91にフロントゲートとは異なる固定電位を供給することができる構成であってもよい。
また、図12(A)では、OSトランジスタとしてセルフアラインのトップゲート型トランジスタを例示しているが、図13(A)に示すように、ノンセルフアライン型のトランジスタであってもよい。
層63には、Siトランジスタであるトランジスタ53およびトランジスタ54が設けられる。図12(A)においてSiトランジスタはシリコン基板200に設けられたフィン型の半導体層を有する構成を例示しているが、図13(B)に示すように、シリコン基板201に活性領域を有するプレーナー型であってもよい。または、図13(C)に示すようにシリコン薄膜の半導体層210を有するトランジスタであってもよい。半導体層210は、例えば、シリコン基板202上の絶縁層220上に形成された単結晶シリコン(SOI(Silicon on Insulator))とすることができる。または、ガラス基板などの絶縁表面上に形成された多結晶シリコンであってもよい。この他、層63には画素を駆動するための回路を設けることができる。
OSトランジスタが形成される領域とSiトランジスタが形成される領域との間には、水素の拡散を防止する機能を有する絶縁層93が設けられる。トランジスタ53、54の活性領域近傍に設けられる絶縁層中の水素はシリコンのダングリングボンドを終端する。一方、トランジスタ51、52の活性層である酸化物半導体層の近傍に設けられる絶縁層中の水素は、酸化物半導体層中にキャリアを生成する要因の一つとなる。
絶縁層93により、一方の層に水素を閉じ込めることでトランジスタ53、54の信頼性を向上させることができる。また、一方の層から他方の層への水素の拡散が抑制されることでトランジスタ51、52の信頼性も向上させることができる。
絶縁層93としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)等を用いることができる。
図14(A)は、本発明の一態様の撮像装置にカラーフィルタ等を付加した例を示す断面図である。当該断面図では、3画素分の画素回路を有する領域の一部を示している。光電変換素子50が形成される層61上には、絶縁層300が形成される。絶縁層300は可視光に対して透光性の高い酸化シリコン膜などを用いることができる。また、パッシベーション膜として窒化シリコン膜を積層してもよい。また、反射防止膜として、酸化ハフニウムなどの誘電体膜を積層してもよい。
絶縁層300上には、遮光層310が形成されてもよい。遮光層310は、上部のカラーフィルタを通る光の混色を防止する機能を有する。遮光層310には、アルミニウム、タングステンなどの金属層を用いることができる。また、当該金属層と反射防止膜としての機能を有する誘電体膜を積層してもよい。
絶縁層300および遮光層310上には、平坦化膜として有機樹脂層320を設けることができる。また、画素別にカラーフィルタ330(カラーフィルタ330a、カラーフィルタ330b、カラーフィルタ330c)が形成される。例えば、カラーフィルタ330a、カラーフィルタ330bおよびカラーフィルタ330cに、R(赤)、G(緑)、B(青)、Y(黄)、C(シアン)、M(マゼンタ)などの色を割り当てることにより、カラー画像を得ることができる。
カラーフィルタ330上には、可視光に対して透光性を有する絶縁層360などを設けることができる。
また、図14(B)に示すように、カラーフィルタ330の代わりに光学変換層350を用いてもよい。このような構成とすることで、様々な波長領域における画像が得られる撮像装置とすることができる。
例えば、光学変換層350に可視光線の波長以下の光を遮るフィルタを用いれば赤外線撮像装置とすることができる。また、光学変換層350に近赤外線の波長以下の光を遮るフィルタを用いれば遠赤外線撮像装置とすることができる。また、光学変換層350に可視光線の波長以上の光を遮るフィルタを用いれば紫外線撮像装置とすることができる。
また、光学変換層350にシンチレータを用いれば、X線撮像装置などに用いる、放射線の強弱を可視化した画像を得る撮像装置とすることができる。被写体を透過したX線等の放射線がシンチレータに入射されると、フォトルミネッセンス現象により可視光線や紫外光線などの光(蛍光)に変換される。そして、当該光を光電変換素子50で検知することにより画像データを取得する。また、放射線検出器などに当該構成の撮像装置を用いてもよい。
シンチレータは、X線やガンマ線などの放射線が照射されると、そのエネルギーを吸収して可視光や紫外光を発する物質を含む。例えば、Gd2O2S:Tb、Gd2O2S:Pr、Gd2O2S:Eu、BaFCl:Eu、NaI、CsI、CaF2、BaF2、CeF3、LiF、LiI、ZnOなどを樹脂やセラミクスに分散させたものを用いることができる。
なお、セレン系材料を用いた光電変換素子50においては、X線等の放射線を電荷に直接変換することができるため、シンチレータを不要とする構成とすることもできる。
また、図14(C)に示すように、カラーフィルタ330a、カラーフィルタ330bおよびカラーフィルタ330c上にマイクロレンズアレイ340を設けてもよい。マイクロレンズアレイ340が有する個々のレンズを通る光が直下のカラーフィルタを通り、光電変換素子50に照射されるようになる。また、図14(B)に示す光学変換層350上にマイクロレンズアレイ340を設けてもよい。
以下では、イメージセンサチップを収めたパッケージおよびカメラモジュールの一例について説明する。当該イメージセンサチップには、上記撮像装置の構成を用いることができる。
図15(A1)は、イメージセンサチップを収めたパッケージの上面側の外観斜視図である。当該パッケージは、イメージセンサチップ450を固定するパッケージ基板410、カバーガラス420および両者を接着する接着剤430等を有する。
図15(A2)は、当該パッケージの下面側の外観斜視図である。パッケージの下面には、半田ボールをバンプ440としたBGA(Ball grid array)の構成を有する。なお、BGAに限らず、LGA(Land grid array)やPGA(Pin Grid Array)などであってもよい。
図15(A3)は、カバーガラス420および接着剤430の一部を省いて図示したパッケージの斜視図である。パッケージ基板410上には電極パッド460が形成され、電極パッド460およびバンプ440はスルーホールを介して電気的に接続されている。電極パッド460は、イメージセンサチップ450とワイヤ470によって電気的に接続されている。
また、図15(B1)は、イメージセンサチップをレンズ一体型のパッケージに収めたカメラモジュールの上面側の外観斜視図である。当該カメラモジュールは、イメージセンサチップ451を固定するパッケージ基板411、レンズカバー421、およびレンズ435等を有する。また、パッケージ基板411およびイメージセンサチップ451の間には撮像装置の駆動回路および信号変換回路などの機能を有するICチップ490も設けられており、SiP(System in package)としての構成を有している。
図15(B2)は、当該カメラモジュールの下面側の外観斜視図である。パッケージ基板411の下面および側面には、実装用のランド441が設けられるQFN(Quad flat no−lead package)の構成を有する。なお、当該構成は一例であり、QFP(Quad flat package)や前述したBGA等であってもよい。
図15(B3)は、レンズカバー421およびレンズ435の一部を省いて図示したモジュールの斜視図である。ランド441は電極パッド461と電気的に接続され、電極パッド461はイメージセンサチップ451またはICチップ490とワイヤ471によって電気的に接続されている。
イメージセンサチップを上述したような形態のパッケージに収めることでプリント基板等への実装が容易になり、イメージセンサチップを様々な半導体装置、電子機器に組み込むことができる。
本実施の形態は、他の実施の形態の記載と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態3)
本発明の一態様に係る撮像装置を用いることができる電子機器として、表示機器、パーソナルコンピュータ、記録媒体を備えた画像記憶装置または画像再生装置、携帯電話、携帯型を含むゲーム機、携帯データ端末、電子書籍端末、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ等のカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、デジタルオーディオプレイヤー等)、複写機、ファクシミリ、プリンタ、プリンタ複合機、現金自動預け入れ払い機(ATM)、自動販売機などが挙げられる。これら電子機器の具体例を図16に示す。
図16(A)は監視カメラであり、筐体951、レンズ952、支持部953等を有する。当該監視カメラにおける画像を取得するための部品の一つとして本発明の一態様の撮像装置を備えることができる。なお、監視カメラとは慣用的な名称であり、用途を限定するものではない。例えば監視カメラとしての機能を有する機器はカメラ、またはビデオカメラとも呼ばれる。
図16(B)はビデオカメラであり、第1筐体971、第2筐体972、表示部973、操作キー974、レンズ975、接続部976等を有する。操作キー974およびレンズ975は第1筐体971に設けられており、表示部973は第2筐体972に設けられている。当該ビデオカメラにおける画像を取得するための部品の一つとして本発明の一態様の撮像装置を備えることができる。
図16(C)はデジタルカメラであり、筐体961、シャッターボタン962、マイク963、発光部967、レンズ965等を有する。当該デジタルカメラにおける画像を取得するための部品の一つとして本発明の一態様の撮像装置を備えることができる。
図16(D)は腕時計型の情報端末であり、筐体931、表示部932、リストバンド933、操作用のボタン935、竜頭936、カメラ939等を有する。表示部932はタッチパネルとなっていてもよい。当該情報端末における画像を取得するための部品の一つとして本発明の一態様の撮像装置を備えることができる。
図16(E)は携帯電話機の一例であり、筐体981、表示部982、操作ボタン983、外部接続ポート984、スピーカ985、マイク986、カメラ987等を有する。当該携帯電話機は、表示部982にタッチセンサを備える。電話を掛ける、或いは文字を入力するなどのあらゆる操作は、指やスタイラスなどで表示部982に触れることで行うことができる。当該携帯電話機における画像を取得するための部品の一つとして本発明の一態様の撮像装置を備えることができる。
図16(F)は携帯データ端末であり、筐体911、表示部912、カメラ919等を有する。表示部912が有するタッチパネル機能により情報の入出力を行うことができる。当該携帯データ端末における画像を取得するための部品の一つとして本発明の一態様の撮像装置を備えることができる。
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
本実施例では、本発明の一態様に係る結晶セレンを作製し、結晶粒の結晶粒径、及び結晶セレン層の凹凸を評価した。
試料は、本発明の一態様である試料A1乃至試料A6の計6試料である。試料A1乃至試料A6は、それぞれ非晶質セレン層形成後の加熱処理の条件が異なっている。
<試料A1乃至試料A6の作製方法>
各試料の構成、作製方法について、図17(A)及び図17(B)を用いて説明する。図17(A)及び図17(B)は、試料の作製方法を示す断面図である。
まず、基板1061上に、下地層1063と、下地層1063上の非晶質セレン層1067と、を成膜した(図17(A)参照)。
試料A1乃至試料A6は、基板1061としてp型、面方位(100)のシリコンウェハを用いた。
試料A1乃至試料A6は、下地層1063として膜厚2nmの銀の膜を形成し、その後に膜厚700nmの非晶質セレン層1067を形成した。下地層1063と非晶質セレン層1067は、真空中で連続して成膜した。
試料A1乃至試料A6の下地層1063の形成は、神港精機社製の蒸着−スパッタリング複合装置(装置型番:VD15−065)の蒸着用チャンバを用いた。蒸着源に銀を用い、抵抗加熱(Taボード)を用いて約0.05nm/sec.の蒸着レートで下地層を成膜した。蒸着中の基板温度は室温とした。蒸着中の圧力は約1.5×10−5Paであった。
試料A1乃至試料A6の非晶質セレン層1067の形成は、神港精機社製の蒸着−スパッタリング複合装置(装置型番:VD15−065)の蒸着用チャンバを用いた。蒸着源にセレンを用い、抵抗加熱(Taボード)を用いて約0.20nm/sec.の蒸着レートで非晶質セレン層1067を成膜した。蒸着中の基板温度は室温とした。蒸着中の圧力は約1.5×10−5Paであった。
次に、加熱処理を行い、結晶セレン層1065を形成した(図17(B)参照)。
試料A1の加熱処理は、開始温度を室温とした。室温から70℃に昇温し、70℃で3分処理し、その後に110℃に昇温し、110℃で1分処理した。
試料A2の加熱処理は、開始温度を室温とした。室温から70℃に昇温し、70℃で3分処理し、その後に110℃に昇温し、110℃で1分処理し、その後に200℃に昇温し、200℃で1分処理した。
試料A3の加熱処理は、開始温度を室温とした。室温から70℃に昇温し、70℃で3分処理し、その後に150℃に昇温し、150℃で1分処理した。
試料A4の加熱処理は、開始温度を室温とした。室温から70℃に昇温し、70℃で3分処理し、その後に150℃に昇温し、150℃で1分処理し、その後に200℃に昇温し、200℃で1分処理した。
試料A5の加熱処理は、開始温度を室温とした。室温から70℃に昇温し、70℃で3分処理し、その後に200℃に昇温し、200℃で1分処理した。
試料A6の加熱処理は、開始温度を室温とした。室温から70℃に昇温し、70℃で3分処理し、その後に110℃に昇温し、110℃で1分処理し、その後に150℃に昇温し、150℃で1分処理し、その後に200℃に昇温し、200℃で1分処理した。
試料A1乃至試料A6とも加熱処理にはアズワン社製ホットプレート(装置型番:EC−1200N)を用い、ドラフトチャンバ内にて大気雰囲気で行った。
以上の工程により、試料A1乃至試料A6を作製した。
<SEM観察>
次に、試料A1乃至試料A6のSEM観察を行い、セレン層の膜剥がれ領域の有無を評価した。SEM観察には、日立ハイテクノロジーズ社製走査電子顕微鏡装置SU8030を用い、加速電圧は1.0kVとした。
試料A1の平面のSEM像を図18(A)及び図18(B)、試料A2を図19(A)及び図19(B)、試料A3を図20(A)及び図20(B)、試料A4を図21(A)及び図21(B)、試料A5を図22(A)及び図22(B)、試料A6を図23(A)及び図23(B)に示す。図18(A)、図19(A)、図20(A)、図21(A)、図22(A)及び図23(A)は、倍率1万倍のSEM像である。図18(B)、図19(B)、図20(B)、図21(B)、図22(B)及び図23(B)は、倍率3万倍のSEM像である。
図18(A)、図18(B)、図19(A)、図19(B)、図20(A)、図20(B)、図21(A)、図21(B)、図22(A)、図22(B)、図23(A)及び図23(B)に示すように、本発明の一態様である試料A1乃至試料A6は、いずれも膜剥がれ領域が観察されなかった。試料A1乃至試料A6は、下地層1063に銀を用い、下地層1063上に非晶質セレン層1067を設けた後に、加熱処理を行うことで、膜剥がれ領域が少ない結晶セレンを作製できることが分かった。また、いずれの試料も結晶粒の形が略多角形になっていることを確認できた。
200℃の加熱処理を行わなかった試料A1及び試料A3は、結晶セレン層表面の凹凸が大きいことが分かった。また、200℃の加熱処理を行った試料A2、試料A4乃至試料A6において、試料A5は他の試料より結晶セレン層表面の凹凸が大きいことが分かった。
200℃の加熱処理を行った試料A2、試料A4、試料A5及び試料A6について、結晶粒の結晶粒径を算出した。本実施例では、結晶粒径(長径)を算出した。結晶粒径(長径)の算出には、図19(B)、図21(B)、図22(B)及び図23(B)に示した倍率3万倍のSEM像を用いた。
試料A2の結晶粒径(長径)を算出した箇所を図24(A)に示す。図24(A)は、図18(B)に示した倍率3万倍のSEM像と同じ像であり、図中の矢印が結晶粒径(長径)を算出した箇所である。
図24(B)乃至図24(D)に示すように、結晶粒1009の外輪郭上の2点を結ぶ直線のうち最大値をとるものを結晶粒径1011として算出した。なお、図24(D)に示すように、結晶粒1009が多角形の場合は、対角線のうち最大値をとるものを結晶粒径1011として算出したことと同義になる。なお、三角形の結晶粒については、三角形を成す辺のうち最大値を結晶粒径とした。
試料A2、試料A4、試料A5及び試料A6の結晶粒径(長径)について、算出した結晶粒のデータ数n、結晶粒径(長径)の最大値、最小値、平均値、中央値を表1に示す。
試料A2の結晶粒径(長径)のヒストグラムを図25(A)、試料A4を図25(B)、試料A5を図26(A)、試料A6を図26(B)に示す。図25(A)、図25(B)、図26(A)及び図26(B)において、横軸は結晶粒径(長径)[μm]を示し、0.1μmと記した棒は結晶粒径(長径)が0.00μm以上0.10μm以下の結晶粒を示し、0.2μmと記した棒は結晶粒径(長径)が0.10μmより大きく、0.20μm以下の結晶粒を示している。左の縦軸は結晶粒の度数[個]を示し、右の縦軸は累積相対度数[%]を示す。
試料A2、試料A4及び試料A6では結晶粒径(長径)が1.0μmを超える結晶粒は観察されず、最大値は1.10μm以下であった。一方、試料A5では結晶粒径(長径)が1.0μmを超える結晶粒が複数観察され、最大値は1.20μmであった。試料A2、試料A4及び試料A6と比較して、試料A5は結晶粒径(長径)が大きい結晶粒を有することが分かった。
また、試料A2、試料A4及び試料A6と比較して、試料A5は結晶粒径(長径)が大きい結晶粒が観察されるとともに、結晶粒径(長径)が小さい結晶粒が多い傾向となった。つまり、試料A5は結晶粒径(長径)のばらつきが大きいことが分かった。
また、試料A2及び試料A6と比較して、試料A4は結晶粒径(長径)が大きいことが分かった。なお、結晶粒径(長径)の最小値は、試料間で特に差は見られなかった。
前述した結晶セレン層表面の凹凸の大きさと、結晶粒径(長径)に相関関係を確認できる。結晶セレン層表面の凹凸が大きい試料は結晶粒径(長径)が大きい結晶粒を有し、結晶セレン層表面の凹凸が小さい試料は結晶粒径(長径)が小さい傾向であることが分かった。つまり、第1の温度(T1)を70℃、第3の温度(T3)を200℃とした場合、第2の温度(T2)を110℃程度にすることで、結晶粒径(長径)が1.10μm以下となり、結晶セレン層表面の凹凸が小さくなることが分かった。第2の温度(T2)が低いことで、固相結晶化の際に多数の結晶粒が成長することで個々の結晶粒が小さくなり、結晶セレン層表面の凹凸が小さくなったと考えられる。
本実施例では、本発明の一態様に係る光電変換素子を作製し、電流−電圧特性を評価した。
試料は、本発明の一態様である試料B1乃至試料B5の計5試料である。試料B1乃至試料B5は、それぞれ非晶質セレン層形成後の加熱処理の条件が異なっている。
<試料B1乃至試料B5の作製方法>
各試料の構成、作製方法について、図5(A)乃至図5(E)に示す光電変換素子10Bに付記した符号を用いて説明する。
まず、層41上に、第1の電極11を形成した(図5(A)参照)。第1の電極11として、厚さ50nmの第1のチタン膜と、厚さ200nmのアルミニウム膜と、厚さ50nmの第2のチタン膜とを順にスパッタリング装置を用いて形成した。
試料B1乃至試料B5は、層41として旭硝子社製ガラス基板AN100を用いた。
第1のチタン膜は、チタンターゲットを用いてスパッタリング法により成膜した。成膜ガスとしてアルゴンを用い、成膜時の圧力は0.1Paとなるように調整した。成膜電力は、DC電源を用いて12kWとした。成膜時の基板温度は室温とした。
アルミニウム膜は、アルミニウムターゲットを用いてスパッタリング法により成膜した。成膜ガスとしてアルゴンを用い、成膜時の圧力は0.4Paとなるように調整した。成膜電力は、DC電源を用いて1kWとした。成膜時の基板温度は室温とした。
第2のチタン膜は、チタンターゲットを用いてスパッタリング法により成膜した。成膜ガスとしてアルゴンを用い、成膜時の圧力は0.1Paとなるように調整した。成膜電力は、DC電源を用いて12kWとした。成膜時の基板温度は室温とした。
次に、下地層43と、非晶質セレン層45とを順に形成した(図5(B)参照)。
試料B1乃至試料B5は、下地層43として銀の膜を2nm形成し、その後、非晶質セレン層45を500nm形成した。下地層43と非晶質セレン層45は、真空中で連続して成膜した。
下地層43及び非晶質セレン層45の形成は、実施例1の記載を参照できるため、詳細を省略する。
次に、加熱処理を行い、光電変換層13を形成した(図5(C)参照)。
試料B1の加熱処理は、開始温度を室温とした。室温から70℃に昇温し、70℃で3分処理し、その後に200℃に昇温し、200℃で1分処理した。
試料B2の加熱処理は、開始温度を室温とした。室温から70℃に昇温し、70℃で3分処理し、その後に90℃に昇温し、90℃で2分処理し、その後に200℃に昇温し、200℃で1分処理した。
試料B3の加熱処理は、開始温度を室温とした。室温から70℃に昇温し、70℃で3分処理し、その後に110℃に昇温し、110℃で1分処理し、その後に200℃に昇温し、200℃で1分処理した。
試料B4の加熱処理は、開始温度を室温とした。室温から70℃に昇温し、70℃で3分処理し、その後に120℃に昇温し、120℃で1分処理し、その後に200℃に昇温し、200℃で1分処理した。
試料B5の加熱処理は、開始温度を室温とした。室温から70℃に昇温し、70℃で3分処理し、その後に150℃に昇温し、150℃で1分処理し、その後に200℃に昇温し、200℃で1分処理した。
試料B1乃至試料B5とも加熱処理にはアズワン社製ホットプレート(装置型番:EC−1200N)を用い、ドラフトチャンバ内にて大気雰囲気で行った。
次に、第1の正孔注入阻止層17aと、第2の正孔注入阻止層17bとを順にスパッタリング装置を用いて形成した(図5(D)参照)。第1の正孔注入阻止層17aとして、厚さ5nmの第1のスズ含有酸化ガリウム膜、第2の正孔注入阻止層17bとして、厚さ10nmの第2のスズ含有酸化ガリウム膜を形成した。
第1のスズ含有酸化ガリウム膜の形成は、スパッタリング法を用い、スパッタリングターゲットとしてスズ含有酸化ガリウム(Ga2O3:SnO2=95:5[mol比])を用いた。成膜ガスとして流量45sccmのアルゴンと、流量5sccmの酸素(酸素流量比10%)を用い、成膜時の圧力は0.4Paとなるように調整した。成膜電力は、RF電源を用いて400Wとした。成膜時の基板温度は室温とした。
第2のスズ含有酸化ガリウム膜の形成は、スパッタリング法を用い、スパッタリングターゲットとしてスズ含有酸化ガリウム(Ga2O3:SnO2=95:5[mol比])を用いた。成膜ガスとして流量25sccmのアルゴンと、流量25sccmの酸素(酸素流量比50%)を用い、成膜時の圧力は0.4Paとなるように調整した。成膜電力は、RF電源を用いて400Wとした。成膜時の基板温度は室温とした。
第1のスズ含有酸化ガリウム膜及び第2のスズ含有酸化ガリウム膜は、真空中で連続して成膜した。
次に、第2の電極15を形成した。第2の電極15として、厚さ110nmのITSO膜を、スパッタリング装置を用いて形成した(図5(E)参照)。
ITSO膜の形成は、スパッタリング法を用い、スパッタリングターゲットとして重量比でIn2O3:SnO2:SiO2=85:10:5のターゲットを用いた。成膜ガスとして流量50sccmのアルゴンと、流量2sccmの酸素を用い、成膜時の圧力は0.32Paとなるように調整した。成膜電力は、DC電源を用いて200Wとした。成膜時の基板温度は室温とした。
以上の工程により、試料B1乃至試料B5を作製した。
<電流−電圧特性>
次に、試料B1乃至試料B5の電流−電圧特性を測定した。試料B1の電流−電圧特性を図27(A)、試料B2を図27(B)、試料B3を図28(A)、試料B4を図28(B)、試料B5を図29に示す。図27(A)、図27(B)、図28(A)、図28(B)及び図29において、横軸は対向電極間の電圧(Voltage)[V]を示し、縦軸は電流値(Current)[A]を示す。
図27(A)、図27(B)、図28(A)、図28(B)及び図29において、暗電流(Idark)を実線で示している。波長450nm、放射照度20μW/cm2の光電流(Iphoto)を破線で示している。なお、いずれの試料も受光面のサイズは、2mm×2mmである。
図27(A)、図27(B)、図28(A)、図28(B)及び図29に示すように、試料B1及び試料B5は、暗電流が高い傾向となった。実施例1で示したように、試料B2乃至試料B4と比較して、試料B1及び試料B5は光電変換層表面の凹凸が大きいと推測される。したがって、試料B1及び試料B5は光電変換層と正孔注入阻止層との界面特性が悪化し、暗電流が高くなったと考えられる。また、試料B1、試料B2、試料B4及び試料B5と比較して、試料B3は光電流が高い傾向となった。
試料B1乃至試料B5の電流増幅率の波長依存性を図30に示す。図30において、横軸は照射光の波長λ[nm]を示し、縦軸は電流増幅率(Iphoto/Idark)を示す。電流増幅率の算出に用いた光電流は、照射光の放射照度が20μW/cm2、電極間の印加電圧(逆バイアス:VR)が−15Vの値を用いた。暗電流は、電極間の印加電圧(逆バイアス:VR)が−15Vの値を用いた。
図30に示すように、試料B3は電流増幅率が高い傾向となった。実施例1に示したように、試料B3に用いた加熱処理の条件は、光電変換層13が有する結晶セレンの結晶粒径(長径)が小さく、光電変換層13表面の凹凸が小さい条件である。光電変換層13表面の凹凸が小さいことにより光電変換層と正孔注入阻止層との界面特性が良好となり、電流増幅率の高い光電変換素子を得られたと考えられる。
<TEM観察>
次に、試料B3を集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)により薄片化し、試料B3の断面をSTEMで観察した。FIB加工には、SIIナノテクノロジー社製FIB−SEMダブルビーム装置XVision210DBを用い、加速電圧は30kV、照射イオンとしてガリウム(Ga)を用いた。STEM観察には、日立ハイテクノロジーズ社製走査透過電子顕微鏡HD−2700を用い、加速電圧は200kVとした。
試料B3の断面のSTEM像を図31(A)及び図31(B)に示す。図31(A)は倍率10万倍の透過電子像(TE像:Transmission Electron Image)である。図31(B)は図31(A)と同じ箇所の倍率10万倍のZコントラスト像(ZC像:Z Contrast Image)である。Zコントラスト像では、原子番号が大きい物質ほど明るく見える。図31(A)及び図31(B)に示すように、セレン層内のSTEM像の濃度(輝度)が略均一となっており、試料B3のセレン層内の膜質が略均一であることを確認できた。また、セレン層表面の凹凸は小さく、第2の電極であるITSO膜が被覆性高く形成されていることを確認できた。
図31(A)に示す断面STEM像を用いて、セレン層の膜厚を測長した。測長した箇所を図32に示す、point A及びpoint Bの2か所である。point Aは図32に示す断面STEM像内で最もセレン層の膜厚が薄い箇所、point Bは膜厚が最も厚い箇所とした。なお、図31(A)と図32は同じSTEM像である。測長の結果、point Aは592nm、point Bは661nmであった。したがって、セレン層表面の凹凸の高低差(最も高い箇所と最も低い箇所の差)は約70nmであることが分かった。
また、図31(A)においては、結晶粒径(長径)が0.3μm程度の結晶粒が多数観察された。
図33(A)、図33(B)、図34(A)及び図34(B)は倍率300万倍の透過電子像(TE像)である。図33(A)はセレン層の第2の電極付近の断面STEM像である。図33(B)はセレン層の厚さ方向の中央付近の断面STEM像である。図34(A)はpoint Bより第1の電極側の位置の断面STEM像である。図34(B)はセレン層の第1の電極付近の断面STEM像である。結晶格子像を確認できることから、試料B3が結晶セレンを有することを確認できた。
本実施例では、光電変換素子を作製し、電流−電圧特性を評価した。
本実施例で示す試料は、試料C1、試料C2及び試料B3である。本実施例で示す試料B3は実施例2で示した試料B3と同じである。試料C1、試料C2及び試料B3は光電変換層及び正孔注入阻止層の構成がそれぞれ異なっている。
試料C1は、光電変換層13として結晶セレンを用いた。正孔注入阻止層17としてインジウム−ガリウム酸化物を用いた。
試料C2は、光電変換層13として膜厚60nmの結晶セレンと、結晶セレン上の膜厚440nmの非晶質セレンとの積層構造を用いた。正孔注入阻止層17としてインジウム−ガリウム酸化物を用いた。
実施例2に示したように、試料B3は、光電変換層13として結晶セレンを用いた。正孔注入阻止層17としてスズ含有酸化ガリウムを用いた。
<試料C1の作製方法>
試料C1の構成、作製方法について、図5(A)乃至図5(E)に示す光電変換素子10Bに付記した符号を用いて説明する。
まず、層41上に、第1の電極11を形成した(図5(A)参照)。層41として旭硝子社製ガラス基板AN100を用いた。第1の電極11として、厚さ50nmの第1のチタン膜と、厚さ200nmのアルミニウム膜と、厚さ50nmの第2のチタン膜とを順にスパッタリング装置を用いて形成した。第1の電極11については、実施例2の記載を参照できるため、詳細を省略する。
次に、下地層43と、非晶質セレン層45とを順に形成した(図5(B)参照)。下地層43として銀の膜を2nm形成し、その後、非晶質セレン層45を500nm形成した。下地層43及び非晶質セレン層45については、実施例1の記載を参照できるため、詳細を省略する。
次に、加熱処理を行い、光電変換層13を形成した(図5(C)参照)。試料C1の加熱処理は、開始温度を室温とした。室温から70℃に昇温し、70℃で3分処理し、その後に110℃に昇温し、110℃で1分処理し、その後に200℃に昇温し、200℃で1分処理した。加熱処理にはアズワン社製ホットプレート(装置型番:EC−1200N)を用い、ドラフトチャンバ内にて大気雰囲気で行った。
次に、正孔注入阻止層17を、スパッタリング装置を用いて形成した(図5(D)参照)。試料C1は、正孔注入阻止層17として、厚さ10nmのインジウム−ガリウム酸化物膜を形成した。
インジウム−ガリウム酸化物膜の形成は、スパッタリング法を用い、スパッタリングターゲットとして原子数比がIn:Ga=5:95のインジウム−ガリウム酸化物を用いた。成膜ガスとして流量45sccmのアルゴンと、流量5sccmの酸素を用い、成膜時の圧力は0.4Paとなるように調整した。成膜電力は、RF電源を用いて400Wとした。成膜時の基板温度は室温とした。
次に、第2の電極15を形成した。第2の電極15として、厚さ110nmのITSO膜を、スパッタリング装置を用いて形成した(図5(E)参照)。第2の電極15については、実施例2の記載を参照できるため、詳細を省略する。
以上の工程により、試料C1を作製した。
<試料C2の作製方法>
試料C2の構成、作製方法について説明する。試料C2は、先に示す試料C1と光電変換層13の構成が異なる。それ以外の工程については、試料C1と同様とした。
試料C2は、第1の非晶質セレン層を10nm形成し、その後に銀の膜を2nm形成し、その後に第2の非晶質セレン層を50nm形成した。銀及び非晶質セレン層については、実施例1の記載を参照できるため、詳細を省略する。
次に、加熱処理を行い、第1の非晶質セレン層及び第2の非晶質セレン層を結晶化させた。試料C2の加熱処理は、開始温度を室温とした。室温から70℃に昇温し、70℃で3分処理し、その後に110℃に昇温し、110℃で10秒処理した。加熱処理にはアズワン社製ホットプレート(装置型番:EC−1200N)を用い、ドラフトチャンバ内にて大気雰囲気で行った。
次に、第3の非晶質セレン層を440nm形成した。非晶質セレン層については、実施例2の記載を参照できるため、詳細を省略する。
以上の工程により、試料C2を作製した。
<電流−電圧特性>
次に、試料C1及び試料C2の電流−電圧特性を測定した。試料C1の電流−電圧特性を図35(A)、試料C2を図35(B)に示す。図35(A)及び図35(B)において、横軸は対向電極間の電圧(Voltage)[V]を示し、縦軸は電流値(Current)[A]を示す。
図35(A)及び図35(B)において、暗電流(Idark)を実線で示している。波長450nm、放射照度20μW/cm2の光電流(Iphoto)を破線で示している。なお、いずれの試料も受光面のサイズは、2mm×2mmである。
試料B3及び試料C1はいずれも光電変換層に結晶セレンを用いている。正孔注入阻止層にインジウム−ガリウム酸化物を用いた試料C1と比較して、スズ含有酸化ガリウムを用いた試料B3は対向電極間の電圧−10V乃至−20Vの光電流が高くなっている。試料B3は正孔注入阻止層にキャリア密度の高いスズ含有酸化ガリウムを用いたことにより、空乏層幅が大きくなり、光電流が高くなったと考えられる。
試料B3及び試料C1と比較して、試料C2は暗電流が低い傾向となった。試料B3及び試料C1は光電変換層に結晶セレンを用いている。試料C2は光電変換層に結晶セレンと、結晶セレン上の非晶質セレンとの積層構造を用いている。試料B3及び試料C1と比較して、試料C2の光電変換層表面の凹凸が小さいことから、光電変換層と正孔注入阻止層の界面特性が良好となり、暗電流が低くなったと考えられる。
試料C1、試料C2及び試料B3の電流増幅率の波長依存性を図36に示す。図36において、横軸は照射光の波長λ[nm]を示し、縦軸は電流増幅率(Iphoto/Idark)を示す。電流増幅率の算出に用いた光電流は、放射照度が20μW/cm2、電極間の印加電圧(逆バイアス:VR)が−15Vの値を用いた。暗電流は、電極間の印加電圧(逆バイアス:VR)が−15Vの値を用いた。
試料C1及び試料C2と比較して、試料B3は波長400nm乃至700nmの全領域で高い電流増幅率となった。つまり、可視光の略全領域で高い電流増幅率を示すことが分かった。
<電流−電圧特性の測定温度依存>
次に、試料B3及び試料C2の電流−電圧特性の測定温度依存を評価した。試料B3は、光電変換層に結晶セレンを用いた光電変換素子である。試料C2は、光電変換層に結晶セレンと、結晶セレン上の非晶質セレンとの積層構造を用いた光電変換素子である。
試料B3は、まず1回目の測定として基板温度を室温(20℃)で電流−電圧特性を測定した。次に基板温度を40℃に昇温し、2回目の測定として40℃で測定した。次に基板温度を60℃に昇温し、3回目の測定として60℃で測定した。次に基板温度を80℃に昇温し、4回目の測定として80℃で測定した。次に基板温度を100℃に昇温し、5回目の測定として100℃で測定した。次に基板温度を120℃に昇温し、6回目の測定として120℃で測定した。次に基板温度を100℃に降温し、7回目の測定として100℃で測定した。次に基板温度を80℃に降温し、8回目の測定として80℃で測定した。次に基板温度を60℃に降温し、9回目の測定として60℃で測定した。次に基板温度を40℃に降温し、10回目の測定として40℃で測定した。次に基板温度を室温(20℃)に降温し、11回目の測定として室温(20℃)で測定した。なお、いずれの測定においても、それぞれの温度で5分保持した後に電流−電圧特性を測定した。
試料B3の電流−電圧特性の測定温度依存を図37(A)に示す。図37(A)において、横軸は測定時の基板の温度(Temperature)[℃]を示し、縦軸は暗電流Idark[A]を示す。図37(A)において、1回目の測定乃至6回目の測定による暗電流Idarkを黒塗り三角印で示し、7回目の測定乃至11回目の測定を白抜き丸印で示している。
図37(A)に示すように、試料B3は、1回目の測定(室温(20℃))と11回目の測定(室温(20℃))の暗電流は同程度であった。つまり、光電変換層に結晶セレン層を有する試料B3は、高温環境下においても電流−電圧特性の変化が小さい、熱的安定性の高い光電変換素子であることが分かった。
試料C2は、まず、1回目の測定として基板温度を室温(20℃)で電流−電圧特性を測定した。次に基板温度を80℃に昇温し、2回目の測定として80℃で測定した。次に基板温度を120℃に昇温し、3回目の測定として120℃で測定した。次に基板温度を80℃に降温し、4回目の測定として80℃で測定した。次に基板温度を室温(20℃)に降温し、5回目の測定として室温(20℃)で測定した。なお、いずれの測定においても、それぞれの温度で5分保持した後に電流−電圧特性を測定した。
試料C2の電流−電圧特性の測定温度依存を図37(B)に示す。図37(B)において、横軸は測定時の基板の温度(Temperature)[℃]を示し、縦軸は暗電流[A]を示す。図37(B)において、1回目の測定乃至3回目の測定による暗電流を黒塗り三角印で示し、4回目の測定及び5回目の測定を白抜き丸印で示している。
図37(B)に示すように、試料C2は、1回目の測定(室温(20℃))での暗電流の値と比較して、5回目の測定(室温(20℃))は暗電流の値が約1桁高くなった。試料C2は、光電変換層に非晶質セレン層を有することから、高温(例えば120℃)での測定時に非晶質セレン層の一部又は全てが結晶化し、5回目の測定(室温(20℃))で暗電流が高くなったと考えられる。つまり、光電変換層に非晶質セレン層を有する試料C2は、高温環境下において電流−電圧特性が変化し、試料B3と比較して熱的安定性が低い光電変換素子であることが分かった。
本実施例では、結晶セレン及び非晶質セレンについて、フェルミ準位(Ef)と価電子帯(Ev)のエネルギー差を評価した。
本実施例で示す試料は、試料D1及び試料D2である。試料D1は、ガラス基板上に膜厚500nmの結晶セレン層を形成した。試料D2は、ガラス基板上に膜厚500nmの非晶質セレン層を形成した。
<試料D1の作製方法>
試料D1は、基板上に下地層として膜厚2nmの銀の膜を形成し、その後、膜厚500nmの非晶質セレン層を形成した。下地層と非晶質セレン層は、真空中で連続して成膜した。
基板として旭硝子社製ガラス基板AN100を用いた。下地層及び非晶質セレン層については、実施例1の記載を参照できるため、詳細を省略する。
次に、加熱処理を行い、結晶セレン層を形成した。加熱処理は、室温から70℃に昇温し、70℃で3分処理し、その後に110℃に昇温し、110℃で1分処理し、その後に200℃に昇温し、200℃で1分処理した。加熱処理にはアズワン社製ホットプレート(装置型番:EC−1200N)を用い、ドラフトチャンバ内にて大気雰囲気で行った。
以上の工程により、試料D1を作製した。
<試料D2の作製方法>
試料D2は、基板上に膜厚500nmの非晶質セレン層を形成した。
基板として旭硝子社製ガラス基板AN100を用いた。非晶質セレン層については、実施例1の記載を参照できるため、詳細を省略する。
以上の工程により、試料D2を作製した。
<X線光電子分光法>
次に、試料D1及び試料D2のX線光電子分光(XPS:X−ray Photoelectron Spectroscopy)測定を行った。
XPS測定は、PHI社製のQuantera SXMを用いた。X線源には単色化したAl Kα線(1486.6eV)を用いた。検出領域は100μmφとした。取出角は45°とした。検出深さは約4nmから5nm程度と考えられる。
試料D1のフェルミ準位付近のXPSスペクトルを図38(A)、試料D2を図38(B)に示す。図38(A)及び図38(B)において、横軸は結合エネルギー(Binding Energy)[eV]を示し、縦軸は光電子の強度(Intensity)[arb.u.(任意単位)]を示す。また、図38(A)及び図38(B)において、測定値を実線、0.4eV乃至0.9eVの範囲で最小二乗法による線形近似を行った近似線を一点鎖線で示す。
図38(A)に示すように、近似線の外挿から結晶セレンである試料D1のフェルミ準位と価電子帯のエネルギー差(Ef−Ev)は、約0.1eVと見積もられた。図38(B)に示すように、近似線の外挿から非晶質セレンである試料D2のフェルミ準位と価電子帯のエネルギー差(Ef−Ev)は、約0.2eVと見積もられた。
非晶質セレンと比較して、結晶セレンはフェルミ準位と価電子帯のエネルギー差(Ef−Ev)が小さいことから、キャリア密度が高いと推測される。
前述したように、結晶セレンはキャリア密度が高いことから、光電変換層に結晶セレンを用いる場合は、正孔注入阻止層としてキャリア密度を高めたn型半導体(例えばスズ含有酸化ガリウム)を用いることで、光電流を高くできる。
本実施例では、スズ含有酸化ガリウム及びインジウム−ガリウム酸化物の組成等を評価した。
本実施例で示す試料は、試料E1乃至試料E4である。試料E1は、シリコンウェハ上に膜厚30nmのスズ含有酸化ガリウムの膜を形成した。試料E2及び試料E3は、ガラス基板上に膜厚100nmのスズ含有酸化ガリウムの膜を形成した。試料E4は、ガラス基板上に膜厚100nmのインジウム−ガリウム酸化物(IGO:indium gallium oxide)の膜を形成した。なお、試料E1及び試料E2のスズ含有酸化ガリウムの成膜条件は同じである。試料E2及び試料E3のスズ含有酸化ガリウムの成膜条件は異なる。
<試料E1乃至試料E4の作製方法>
試料E1は、シリコンウェハとしてp型、面方位(100)のものを用いた。試料E2乃至試料E4は、ガラス基板として旭硝子社製ガラス基板AN100を用いた。
試料E1及び試料E2は、それぞれスズ含有酸化ガリウムターゲットを用い、成膜ガスは流量45sccmのアルゴンガスと流量5sccmの酸素ガス(酸素流量比10%)を用いた。成膜時の基板温度は室温とした。成膜時の圧力は0.4Paとなるように調整した。成膜電力はRF電源を用いて400Wとした。スズ含有酸化ガリウムターゲットは、mol比でGa2O3:SnO2=95:5のターゲットを用いた。
試料E3はスズ含有酸化ガリウムターゲットを用い、成膜ガスは流量25sccmのアルゴンガスと流量25sccmの酸素ガス(酸素流量比50%)を用いた。成膜時の基板温度は室温とした。成膜時の圧力は0.4Paとなるように調整した。成膜電力はRF電源を用いて400Wとした。スズ含有酸化ガリウムターゲットは、mol比でGa2O3:SnO2=95:5のターゲットを用いた。
試料E4はインジウム−ガリウム酸化物ターゲットを用い、成膜ガスは流量45sccmのアルゴンガスと、流量5sccmの酸素ガスとを用いた。成膜時の基板温度は室温とした。成膜時の圧力は0.4Paとなるように調整した。成膜電力はRF電源を用いて400Wとした。インジウム−ガリウム酸化物ターゲットは、原子数比でIn:Ga=5:95のターゲットを用いた。
以上の工程により、試料E1乃至試料E4を作製した。
<X線光電子分光法>
次に、試料E1のX線光電子分光(XPS:X−ray Photoelectron Spectroscopy)測定を行った。
XPS測定は、PHI社製のQuantera SXMを用いた。X線源には単色化したAl Kα線(1486.6eV)を用いた。検出領域は100μmφとした。取出角は45°とした。検出深さは約4nmから5nm程度と考えられる。
まず、0eV乃至1350eVの広いエネルギー範囲でXPS測定(以下、ワイドスキャンと記す)を行った。ワイドスキャンで得られたスペクトルを図39に示す。図39において、横軸は結合エネルギー(Binding Energy)[eV]を示し、縦軸は光電子の強度(Intensity)[arb.u.(任意単位)]を示す。図39に示すように、試料E1はGa、O、Sn、Cに起因するピークが観察された。
次に、Ga、O、Sn、Cのそれぞれの元素についてピークが得られるエネルギー範囲で、XPS測定(以下、ナロースキャンと記す)を行った。ナロースキャンで得られたGa3dのスペクトルを図40(A)に、O1sを図40(B)に、Sn3d5/2を図40(C)に、C1sを図40(D)に示す。図40(A)乃至図40(D)は、横軸に結合エネルギー(Binding Energy)[eV]を示し、縦軸に光電子の強度(Intensity)[arb.u.(任意単位)]を示す。
図40(A)乃至図40(C)に示すように、試料E1においてスズ含有酸化ガリウムのGa及びSnは酸化状態にあることが分かった。
XPSスペクトルから得られた各元素の定量値を表2に示す。なお、定量精度は±1atomic%程度、検出下限は1atomic%程度とされるが、検出下限は元素で差がある。表2に示すようにSn濃度は0.5atomic%と1atomic%未満であるものの、図40(C)に示すように微小ながら酸化スズに起因するピークが明確に確認されたことから、有意な値であると考えられる。
Cは主にC−C、C−H等の状態で存在しており、試料表面の有機物汚染に由来していると考えられる。表2に示した各元素の定量値から、Cを除外した定量値を表3に示す。表3に示すように、試料E1の組成は、Gaが39.4atomic%、Oが59.9atomic%、Snが0.6atomic%であることが分かった。また、ガリウムの原子濃度に対するスズの原子濃度の比(Sn/Ga)は、0.016であった。なお、表3において、各元素の値を小数第2位で四捨五入しているため、合計が100.0%になっていない。
なお、試料E1においてスズ含有酸化ガリウムの形成に用いたスパッタリングターゲット組成は、mol比でGa2O3:SnO2=95:5であり、原子数比に換算するとGa:O:Snは38.8:60.2:1.0となる。スパッタリングターゲットと比較して、スパッタリングで形成したスズ含有酸化ガリウム膜はSnの含有量が少なくなることが分かった。
<紫外光電子分光法>
次に、試料E1の紫外光電子分光法(UPS:Ultraviolet Photoelectron Spectroscopy)測定を行った。
UPS測定は、PHI社製のVersaProbeを用いた。紫外線源にはHe I線(21.22eV)を用いた。検出領域は8mm角以下とした。取出角は90°とした。バイアス電圧は−10Vとした。なお、測定前に、アルゴンイオンスパッタリングにより試料表面をクリーニングした。
UPSスペクトルを図41に示す。図41において、横軸は結合エネルギー(Binding Energy)[eV]を示し、縦軸は光電子の強度(Intensity)[arb.u.(任意単位)]を示す。
図41に示すように、フェルミ準位から放出された電子の運動エネルギー(EFermi)は約−5.0eV、ゼロ運動エネルギー(Ecutoff)は約7.6eVと算出された。これにより、試料E1のイオン化ポテンシャルは約8.6eVと見積もられた。なお、EFermiはスペクトルの裾を含めずに算出した。具体的には、価電子帯の頂点近傍のスペクトルを直線で外挿し、バックグラウンドと該直線の交点からEFermiを算出した。
<バンドギャップ>
次に、試料E2乃至試料E4の透過率及び反射率測定を行い、バンドギャップ(Eg)を算出した。試料E2の透過率及び反射率を図42(A)、試料E3を図42(B)、試料E4を図42(C)に示す。図42(A)、図42(B)及び図42(C)において、横軸は光の波長(Wavelength)[nm]を示し、縦軸は透過率(Transmittance)[%]及び反射率(Reflectance)[%]を示す。また、透過率を実線、反射率を破線で示す。
試料E2乃至試料E4のいずれも、波長300nm乃至1200nmにおいて高い透過率を示した。
透過率、反射率から算出した試料E2のTaucプロットを図43(A)、試料E3を図43(B)、試料E4を図43(C)に示す。図43(A)、図43(B)及び図43(C)において、横軸はエネルギーhν(Energy)[eV]を示し、縦軸は(αhν)2を示す。ここで、αは吸収係数、hはプランク定数、νは振動数を示す。Taucプロットは間接遷移型を想定している。
図43(A)、図43(B)及び図43(C)において、透過率及び反射率から算出した(αhν)2を実線、4.8eV乃至5.1eVの範囲で最小二乗法による線形近似を行った近似線を破線で示す。図43(A)、図43(B)及び図43(C)に示すように、近似線の外挿から試料E2乃至試料E4のいずれもバンドギャップ(Eg)は約4.6eVと見積もられた。
本実施例では、光電変換素子を作製し、電流−電圧特性を評価した。
本実施例で示す試料は、試料F1乃至試料F4、試料B3である。本実施例で示す試料B3は実施例2で示した試料B3と同じである。試料F1乃至試料F4、試料B3はいずれも光電変換層に結晶セレンを用い、正孔注入阻止層17の構成がそれぞれ異なっている。
試料F1は、正孔注入阻止層17として酸素流量比10%で形成した膜厚15nmのSn−GaOxを用いた。
試料F2は、正孔注入阻止層17として酸素流量比50%で形成した膜厚15nmのSn−GaOxを用いた。
試料F3は、正孔注入阻止層17として、第1の正孔注入阻止層17aと、第1の正孔注入阻止層17a上の第2の正孔注入阻止層17bとの積層構造とした。第1の正孔注入阻止層17aとして、酸素流量比10%で形成した膜厚5nmのスズ含有酸化ガリウムを、第2の正孔注入阻止層17bとして、酸素流量比50%で形成した膜厚5nmのスズ含有酸化ガリウムを用いた。
試料F4は、正孔注入阻止層17として、第1の正孔注入阻止層17aと、第1の正孔注入阻止層17a上の第2の正孔注入阻止層17bとの積層構造とした。第1の正孔注入阻止層17aとして、酸素流量比10%で形成した膜厚10nmのスズ含有酸化ガリウムを、第2の正孔注入阻止層17bとして、酸素流量比50%で形成した膜厚20nmのスズ含有酸化ガリウムを用いた。
なお、試料B3は、正孔注入阻止層17として、第1の正孔注入阻止層17aと、第1の正孔注入阻止層17a上の第2の正孔注入阻止層17bとの積層構造とした。第1の正孔注入阻止層17aとして、酸素流量比10%で形成した膜厚5nmのスズ含有酸化ガリウムを、第2の正孔注入阻止層17bとして、酸素流量比50%で形成した膜厚10nmのスズ含有酸化ガリウムを用いた。
<試料F1乃至試料F4の作製方法>
試料F1乃至試料F4の構成、作製方法について説明する。試料F1乃至試料F4は、先に示す試料B3と正孔注入阻止層17の構成が異なる。それ以外の工程については、試料B3と同様とした。
試料F1は、正孔注入阻止層17としてスズ含有酸化ガリウム膜を用いた。スズ含有酸化ガリウム膜の形成は、スパッタリング法を用い、スパッタリングターゲットとしてスズ含有酸化ガリウム(Ga2O3:SnO2=95:5[mol比])を用いた。成膜ガスとして流量45sccmのアルゴンと、流量5sccmの酸素(酸素流量比10%)を用い、成膜時の圧力は0.4Paとなるように調整した。成膜電力は、RF電源を用いて400Wとした。成膜時の基板温度は室温とした。
試料F2は、正孔注入阻止層17としてスズ含有酸化ガリウム膜を用いた。スズ含有酸化ガリウム膜の形成は、スパッタリング法を用い、スパッタリングターゲットとしてスズ含有酸化ガリウム(Ga2O3:SnO2=95:5[mol比])を用いた。成膜ガスとして流量25sccmのアルゴンと、流量25sccmの酸素(酸素流量比50%)を用い、成膜時の圧力は0.4Paとなるように調整した。成膜電力は、RF電源を用いて400Wとした。成膜時の基板温度は室温とした。
試料F3及び試料F4は、それぞれ第1の正孔注入阻止層17aと、第2の正孔注入阻止層17bとを順にスパッタリング装置を用いて形成した。
第1のスズ含有酸化ガリウム膜の形成は、スパッタリング法を用い、スパッタリングターゲットとしてスズ含有酸化ガリウム(Ga2O3:SnO2=95:5[mol比])を用いた。成膜ガスとして流量45sccmのアルゴンと、流量5sccmの酸素(酸素流量比10%)を用い、成膜時の圧力は0.4Paとなるように調整した。成膜電力は、RF電源を用いて400Wとした。成膜時の基板温度は室温とした。
第2のスズ含有酸化ガリウム膜の形成は、スパッタリング法を用い、スパッタリングターゲットとしてスズ含有酸化ガリウム(Ga2O3:SnO2=95:5[mol比])を用いた。成膜ガスとして流量25sccmのアルゴンと、流量25sccmの酸素(酸素流量比50%)を用い、成膜時の圧力は0.4Paとなるように調整した。成膜電力は、RF電源を用いて400Wとした。成膜時の基板温度は室温とした。
以上の工程により、試料F1乃至試料F4を作製した。
<電流−電圧特性>
次に、試料F1乃至試料F4の電流−電圧特性を測定した。試料F1の電流−電圧特性を図44(A)、試料F2を図44(B)、試料F3を図45(A)、試料F4を図45(B)に示す。図44(A)、図44(B)、図45(A)及び図45(B)において、横軸は対向電極間の電圧(Voltage)[V]を示し、縦軸は電流値(Current)[A]を示す。
図44(A)、図44(B)、図45(A)及び図45(B)において、暗電流(Idark)を実線で示している。波長450nm、放射照度20μW/cm2の光電流(Iphoto)を破線で示している。なお、いずれの試料も受光面のサイズは、2mm×2mmである。
図44(A)、図44(B)、図45(A)及び図45(B)に示すように、正孔注入阻止層の膜厚が薄いと暗電流が高くなり、正孔注入阻止層の膜厚が厚いと光電流が低くなる傾向となった。正孔注入阻止層の総膜厚としては、15nm程度が好ましいことが分かった。
試料B3及び試料F2と比較して、試料F1は暗電流が高い傾向となった。試料F1の正孔注入阻止層は酸素流量比10%で形成されたスズ含有酸化ガリウムであることから、正孔注入阻止層中の酸素欠損が多く、暗電流が増加したと考えられる。また、試料B3及び試料F1と比較して、試料F2は光電流が低い傾向となった。試料F2の正孔注入阻止層は酸素流量比50%で形成されたスズ含有酸化ガリウムであることから、正孔注入阻止層形成時に光電変換層の表面近傍が酸化されるなどし、光電流が低くなったと考えられる。一方、試料B3の正孔注入阻止層は、酸素流量比10%で形成されたスズ含有酸化ガリウムと、酸素流量比50%で形成されたスズ含有酸化ガリウムとの積層構造としていることから、低い暗電流と、高い光電流が両立していることを確認できた。
試料F1乃至試料F4、試料B3の電流増幅率の波長依存性を図46に示す。図46において、横軸は照射光の波長λ[nm]を示し、縦軸は電流増幅率(Iphoto/Idark)を示す。電流増幅率の算出に用いた光電流は、放射照度が20μW/cm2、電極間の印加電圧(逆バイアス:VR)が−15Vの値を用いた。暗電流は、電極間の印加電圧(逆バイアス:VR)が−15Vの値を用いた。
試料F1乃至試料F4と比較して、試料B3は波長400nm乃至700nmの全領域で高い電流増幅率となった。つまり、可視光の略全領域で高い電流増幅率を示すことが分かった。
本実施例では、光電変換素子を作製し、電流−電圧特性を評価した。
本実施例で示す試料は、試料G1乃至試料G3、試料B3である。本実施例で示す試料B3は実施例2で示した試料B3と同じである。試料G1乃至試料G3は、先に示す試料B3と光電変換層の膜厚が異なる。それ以外の工程については、試料B3と同様とした。
試料G1は、光電変換層13として膜厚300nmの結晶セレン層を用いた。試料G2は、光電変換層13として膜厚750nmの結晶セレン層を用いた。試料G3は、光電変換層13として膜厚1000nmの結晶セレン層を用いた。なお、試料B3は、光電変換層13として膜厚500nmの結晶セレン層を用いた。
<試料G1乃至試料G3の作製方法>
試料G1は、下地層43として銀の膜を2nm形成し、その後、非晶質セレン層45を300nm形成した。下地層43と非晶質セレン層45は、真空中で連続して成膜した。下地層43及び非晶質セレン層45の形成は、実施例1の記載を参照できるため、詳細を省略する。
試料G2は、下地層43として銀の膜を2nm形成し、その後、非晶質セレン層45を750nm形成した。下地層43と非晶質セレン層45は、真空中で連続して成膜した。下地層43及び非晶質セレン層45の形成は、実施例1の記載を参照できるため、詳細を省略する。
試料G3は、下地層43として銀の膜を2nm形成し、その後、非晶質セレン層45を1000nm形成した。下地層43と非晶質セレン層45は、真空中で連続して成膜した。下地層43及び非晶質セレン層45の形成は、実施例1の記載を参照できるため、詳細を省略する。
以上の工程により、試料G1乃至試料G3を作製した。
<電流−電界強度特性>
次に、試料G1乃至試料G3および試料B3の電流−電圧特性を測定した。試料G1の電流−電界強度特性を図47(A)、試料G2を図47(B)、試料G3を図48(A)、試料B3を図48(B)に示す。図47(A)、図47(B)、図48(A)及び図48(B)において、横軸は電界強度[MV/cm]を示し、縦軸は電流値(Current)[A]を示す。なお、試料G1乃至試料G3、試料B3は、それぞれ光電変換層の膜厚が異なるため、図47(A)、図47(B)、図48(A)及び図48(B)は対向電極間の電圧を光電変換層膜厚で除した値(電界強度)を示している。
図47(A)、図47(B)、図48(A)及び図48(B)において、暗電流(Idark)を実線で示している。波長450nm、放射照度20μW/cm2の光電流(Iphoto)を破線で示している。なお、いずれの試料も受光面のサイズは、2mm×2mmである。
図47(A)、図47(B)、図48(A)及び図48(B)に示すように、光電変換層の膜厚が厚いほど光電流が増加する傾向となった。
試料G1乃至試料G3、試料B3の電流増幅率の波長依存性を図49に示す。図49において、横軸は照射光の波長λ[nm]を示し、縦軸は電流増幅率(Iphoto/Idark)を示す。電流増幅率の算出に用いた光電流は、放射照度が20μW/cm2、電極間の印加電圧(逆バイアス:VR)が−15Vの値を用いた。暗電流は、電極間の印加電圧(逆バイアス:VR)が−15Vの値を用いた。
図49に示すように、光電変換層の膜厚が厚いほど電流増幅率が増加する傾向となった。
光電変換層の厚さは、用途に従って決定すればよい。例えば、当該光電変換素子を用いた撮像装置において、より低電圧でアバランシェ増倍効果を用いた撮像動作を行いたい場合は、光電変換層の厚さを相対的に薄くすればよい。また、電圧を問わず、より高い光感度で撮像動作を行いたい場合は、光電変換層の厚さを相対的に厚くすればよい。