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JP2018145326A - 吸水性樹脂 - Google Patents

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JP2018145326A JP2017042995A JP2017042995A JP2018145326A JP 2018145326 A JP2018145326 A JP 2018145326A JP 2017042995 A JP2017042995 A JP 2017042995A JP 2017042995 A JP2017042995 A JP 2017042995A JP 2018145326 A JP2018145326 A JP 2018145326A
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Abstract

【課題】 カルシウム成分との接触に伴う吸水・保水性能の低下が軽減され、かつ実質的に窒素成分を含まず、土壌中で分解が起きた場合でも環境への影響が小さい吸水性樹脂、および該吸水性樹脂を構成成分とする農業用保水材を提供すること。【解決手段】 実質的に窒素成分を含まず、かつ硬度20gpg相当のカルシウムイオンを含む水性液との接触前の純水吸水倍率Xaと、接触後の純水吸水倍率Xbの比Xb/Xaが0.1以上である、吸水性樹脂。【選択図】なし

Description

本発明は吸水性樹脂に関する。詳細には、本発明は、土壌中での作用が長期保持され、また環境への影響が少ない吸水性樹脂、および該吸水性樹脂を構成成分とする農業用保水材に関する。さらに詳細には、本発明は、土壌中あるいは灌漑用水に含まれるカルシウムイオンによる吸水特性の低下の度合いが小さく、また土壌中の菌類や酵素、物質の作用により分解して生じる分解物が廃水系の富栄養化による水質汚染を引き起こしにくい、環境への影響が軽微な農業用保水材に関する。
昨今、慢性的な水資源の枯渇に伴い、農業用水を有効にかつ適切に利用すること、あるいは従来よりも少量の灌漑水量でも農産物の収穫量を維持、あるいは増大させる試みが、いわゆる農業用保水材を用いて検討されている(例えば、特許文献1〜3を参照)。これらの農業用保水材は高吸水性樹脂(SAP)を主要構成成分としており、例えば土壌全体の保水性を改善することに用いられるピートモスなどに比べると、極めて少量で効果を発現することから、農家が用いる際の負担が少ないという利点がある。
代表的な高吸水性樹脂として、ポリアクリル酸塩ゲルがよく知られており、オムツなどの衛生用品用の液体吸収体に広く用いられている。特許文献1には、ポリアクリル酸塩ゲルにカルシウムイオンを最初から含有させることによって、カルシウムの過剰吸着による植物の成長阻害を防ぐ方法が示されている。
特許第4346112号公報 特表2013−544929号公報 米国特許9,181,377号公報
確かに特許文献1の方法によれば、カルシウムの過剰吸着が防がれるため植物の成長阻害は抑制されるが、一方で、土壌中、あるいは灌漑用水に含まれるカルシウム成分がポリアクリル酸塩ゲルに接触すると、ポリアクリル酸塩ゲルの架橋が進行し、本来の目的である吸水あるいは保水特性を喪失してしまう、という問題がある。この問題は、ポリアクリル酸塩ゲルにノニオン成分を導入することにより軽減され、例えばアクリルアミドユニットを導入することによる方法が知られている。しかしながらアクリルアミドユニットを導入する場合、製品内に毒性の高いアクリルアミドモノマー成分に残留する問題があること、アクリルアミドは窒素成分を含有するため、土壌中で分解された場合にアンモニアなどの窒素含有物質を生成し、これが廃水に流れ込むことによる廃水系の富栄養化、水質低下を招く恐れがある。
本発明の目的は、カルシウム成分との接触に伴う吸水・保水性能の低下が軽減され、かつ実質的に窒素成分を含まず、土壌中で分解が起きた場合でも環境への影響が小さい吸水性樹脂、および該吸水性樹脂を構成成分とする農業用保水材を提供することにある。
上記の目的を達成すべく本発明者らは鋭意検討を重ねてきた。その結果、特定の分子構造を導入した樹脂、より詳細にはポリビニルアルコールの少なくとも一部をグリオキシル酸および/またはグリオキシル酸を用いてアセタール化して得られる変性ポリビニルアルコールが、高い吸水・保水特性を示し、かつこの性能がカルシウムイオンとの接触によっても失われにくいことを見出した。またこの樹脂は実質的に窒素成分を含有しないため、分解が起きた場合でも窒素含有分解物を生成しないことを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の目的は、以下の[1]〜[5]を提供することにより達成される。
[1]実質的に窒素成分を含まず、かつ硬度20gpg相当のカルシウムイオンを含む水性液との接触前の純水吸水倍率Xaと、接触後の純水吸水倍率Xbの比Xb/Xaが0.1以上である、吸水性樹脂。
[2]前記比Xb/Xaが0.25以上である、[1]の吸水性樹脂。
[3]少なくとも一部がグリオキシル酸および/またはグリオキシル酸誘導体によりアセタール化された変性ポリビニルアルコールを構成成分とする、[1]または[2]の吸水性樹脂。
[4][1]から[3]いずれかの吸水性樹脂を主成分とする農業用保水材。
[5]さらに肥料成分または農薬成分の少なくとも1種以上を含む、[4]の農業用保水材。
本発明の高吸水性樹脂は、カルシウム成分との接触に伴う吸水・保水性能の低下が軽減され、かつ実質的に窒素成分を含まず、土壌中で分解が起きた場合でも環境への影響が小さいため、農業用保水材として好適に使用でき、例えば従来に比べ少量の灌漑用水で農作物の育成が可能になり水資源の節約に繋がるほか、灌漑用水コストの低減を図ることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の吸水性樹脂は、実質的に窒素成分を含まず、かつ硬度20gpg相当のカルシウムイオンを含む水性液との接触前の純水吸水倍率Xaと、接触後の純水吸水倍率Xbの比Xb/Xaが0.1以上である。また、好適には前記比Xb/Xaが0.25以上であり、少なくとも一部がグリオキシル酸および/またはグリオキシル酸誘導体によりアセタール化された変性ポリビニルアルコールを構成成分とする吸水性樹脂である。
まず、好適な原料となるポリビニルアルコールについて説明する。
ポリビニルアルコールは、その構成単位としてビニルアルコール単位のみを含むものであってもよいし、他の構成単位を含むものであってもよい。他の構成単位の例としては、酢酸ビニル、ピバル酸ビニルなどのカルボン酸ビニル由来の構成単位;エチレン、1−ブテン、イソブチレンなどのオレフィン由来の構成単位;アクリル酸及びその誘導体、メタクリル酸及びその誘導体、マレイン酸及びその誘導体、無水マレイン酸及びその誘導体などに由来する構成単位などが挙げられる。他の構成単位は1種類を含有していても複数種類を含有していてもよい。他の構成単位の含有量があまり多い場合には、アセタール化反応においてグリオキシル酸および/またはその誘導体との反応点が少なくなるため本発明の効果を奏しなくなる恐れがある。したがって、他の構成単位の含有量は50質量%以下であるのが好ましく、より好適には30質量%以下、さらに好適には15質量%以下である。
ポリビニルアルコールの分子量に特に制限はないが、後段のアセタール化反応のしやすさやハンドリングのしやすさの観点から、100万g/mol以下であることが好ましく、50万g/mol以下であることがより好ましい。一方、得られる変性ポリビニルアルコールの力学特性の観点からは、5000g/mol以上であることが好ましく、より好ましくは1万g/mol以上、さらに好ましくは2万g/mol以上である。ポリビニルアルコールの分子量は、例えばJIS K 6726に準拠した方法により平均重合度を測定する手法によって決定できる。
本発明で原料として用いるポリビニルアルコールは、工業的に製造され市販されているものを用いてもよいし、酢酸ビニルモノマー等のカルボン酸ビニルモノマー、および必要に応じて他の構成単位を構成するモノマーを共存させて、公知の重合開始剤を用いて公知の重合反応を行い、次いで公知の方法でケン化反応を行って製造されるものでも、ビニルエーテルのカチオン重合反応とそれに引き続く加水分解反応を経て製造されるもの、アセトアルデヒドの直接重合により製造されるものなどであってもよい。
好ましくは、ポリビニルアルコールは、酢酸ビニルを重合させてポリ酢酸ビニルを得、次いでケン化反応を経て得られたものである。かつ、そのケン化度は30mol%以上であり、60mol%以上であることが好ましく、次に述べる、グリオキシル酸および/またはグリオキシル酸誘導体を用いるアセタール化を本発明の効果を奏する程度に行う観点からは、80mol%以上であることがより好ましい。
ポリビニルアルコールのアセタール化には、グリオキシル酸および/またはグリオキシル酸誘導体を用いる。グリオキシル酸は単独で用いてもよいし、グリオキシル酸塩やグリオキシル酸エステル、これら化合物のアセタール化物といったグリオキシル酸誘導体と共に用いてもよく、グリオキシル酸誘導体のみを用いてもよい。
グリオキシル酸塩の例としては、グリオキシル酸ナトリウム、グリオキシル酸カリウム、グリオキシル酸リチウムなどのグリオキシル酸のアルカリ金属塩、グリオキシル酸カルシウム、グリオキシル酸マグネシウムなどのグリオキシル酸のアルカリ土類金属塩などが挙げられる。中でも、農業用保水材として用いる場合に本発明の効果をより奏することができる観点から、グリオキシル酸カリウム、グリオキシル酸カルシウム、グリオキシル酸マグネシウムが好ましく、グリオキシル酸カリウムがより好ましい。
グリオキシル酸エステルの例としては、グリオキシル酸メチル、グリオキシル酸エチル、グリオキシル酸プロピル、グリオキシル酸イソプロピル、グリオキシル酸ブチル、グリオキシル酸イソブチル、グリオキシル酸sec−ブチル、グリオキシル酸tert−ブチル、グリオキシル酸ヘキシル、グリオキシル酸オクチル、グリオキシル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられる。
グリオキシル酸、グリオキシル酸塩及びグリオキシル酸エステルのアセタール化合物の例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールなどのアルコール化合物によりグリオキシル酸、グリオキシル酸塩、グリオキシル酸エステルのアルデヒド部がアセタールされた化合物を挙げられる。
ポリビニルアルコールのグリオキシル酸および/またはグリオキシル酸誘導体によるアセタール化反応の手法に特に制限はなく、均一反応であっても不均一反応であってもよい。具体的には、例えばポリビニルアルコール水溶液とグリオキシル酸水溶液を混合して反応させる手法を挙げることができる。反応を加速する目的で触媒を用いてもよい。触媒としては、例えば塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸;カルボン酸、スルホン酸などの有機酸;陽イオン交換樹脂、ヘテロポリ酸などの固体酸;などが挙げられる。なお、グリオキシル酸はアセタール化反応を促進できる酸でもあるので、これを自己触媒として用いることも可能である。これらの触媒は単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。反応後の処理の容易性の観点からは、グリオキシル酸を反応基質および自己触媒として用いる方法が好ましい。
ポリビニルアルコールのグリオキシル酸および/またはグリオキシル酸誘導体によるアセタール化反応において、ポリビニルアルコールに導入されるグリオキシル酸および/またはグリオキシル酸誘導体の量は、例えばポリビニルアルコールの持つ水酸基の消費量により定義できる。すなわち水酸基の消費量が低い場合はグリオキシル酸および/またはグリオキシル酸誘導体の導入量は低く、水酸基の消費量が高い場合はグリオキシル酸および/またはグリオキシル酸誘導体の導入量が高いことになる。グリオキシル酸および/またはグリオキシル酸誘導体の導入量が低すぎると得られる変性ポリビニルアルコールの吸水性が劣る傾向となり、一方で高すぎると得られる変性ポリビニルアルコールの吸水時の力学特性が劣る傾向となる。本発明の効果を奏する範囲を考慮すると、原料として用いるポリビニルアルコールが有する水酸基の消費量として、3〜87mol%の範囲であることが好ましく、5〜70mol%の範囲であることがより好ましく、10〜50モル%の範囲であることがさらに好ましい。なお、かかる水酸基の消費量は、例えばNMR(核磁気共鳴分光法)、FTIR(フーリエ変換赤外分光法)などによって測定することができる。
またカルシウム成分との接触に伴う吸水・保水性能の低下を抑制することを目的に、ポリビニルアルコールのグリオキシル酸および/またはグリオキシル酸誘導体によるアセタール化反応の際に他のアルデヒドを共存させて反応を行い、変性ポリビニルアルコールを得ることもできる。すなわち、いわゆる共アセタール化を施してかかる他のアルデヒドに由来するアセタール構造を導入することにより、カルシウム成分との接触に伴う吸水・保水性能の低下がさらに抑制されることを見出した。かかる他のアルデヒドとしては、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、i−ブチルアルデヒド、sec−ブチルアルデヒド、tert−ブチルアルデヒドなどの脂肪族アルデヒド;ベンズアルデヒド、アニスアルデヒド、4−ベンジルオキシベンズアルデヒド、3−ベンジルオキシベンズアルデヒド、4−アミルオキシベンズアルデヒド、3−アミルオキシベンズアルデヒドなどの芳香族アルデヒド;などが挙げられる。中でも、導入の容易性や得られる変性ポリビニルアルコールの吸水特性の観点から、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、n−ブチルアルデヒドが好ましい。他のアルデヒドを共存させる場合、その量に特に制限はないが、グリオキシル酸および/またはグリオキシル酸誘導体に対して通常0.01−30モル%の範囲内、好ましくは0.1−10モル%の範囲内、さらに好ましくは1−5モル%の範囲内である。この範囲よりも大きいと得られる変性ポリビニルアルコールの吸水特性が低下する場合があり、一方、この範囲よりも小さいと、変性ポリビニルアルコールへの他のアルデヒド成分の導入による、カルシウム成分との接触に伴う吸水・保水性能の低下を抑制する効果が得られにくい傾向となる。なお、前記した他のアルデヒドは、例えばアセタール体などの誘導体として用いてもよい。
本発明の吸水性樹脂は、ポリビニルアルコールのグリオキシル酸および/またはグリオキシル酸誘導体によるアセタール化反応で好適に得られる変性ポリビニルアルコールが、使用時の溶出を防ぐ観点よりさらに架橋が施されていること、すなわち使用時にはいわゆるゲルの状態となっていることが好ましい。架橋の形態に特に制限はなく、例えばエステル結合、エーテル結合、アセタール結合、炭素−炭素結合などによる架橋構造が挙げられる。
エステル結合の例としては、ポリビニルアルコール由来の水酸基と、グリオキシル酸(誘導体)に由来するカルボキシル基との間で形成されるエステル結合を挙げることができる。エーテル結合の例としては、ポリビニルアルコール由来の水酸基間の脱水縮合により形成されるエーテル結合を挙げることができる。アセタール結合の例としては、ポリビニルアルコール分子間の水酸基がグリオキシル酸とアセタール化反応することにより形成されるアセタール結合を挙げることができる。炭素−炭素結合の例としては、例えば活性エネルギー線の照射により発生する、変性ポリビニルアルコールの炭素ラジカル間のカップリングにより形成される炭素−炭素結合を挙げることができる。これらの架橋構造は単独で含まれていても、複数種が含まれていてもよい。中でも、エステル結合、アセタール結合による架橋構造が好ましく、エステル結合による架橋構造がより好ましい。このような架橋の形態は、ポリビニルアルコールのグリオキシル酸および/またはグリオキシル酸誘導体によるアセタール化反応の際に同時に形成されてもよいし、別々に形成されてもよい。
ポリビニルアルコールのグリオキシル酸および/またはグリオキシル酸誘導体によるアセタール化反応によって導入されたカルボキシル基は、その一部または全てが処理されてカルボン酸塩の形状となっていてもよい。カルボン酸塩の対カチオンの例としては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオンなどのアルカリ金属イオン;マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオンなどのアルカリ土類金属イオン;アルミニウムイオン、亜鉛イオンなどのその他金属イオン;アンモニウムイオン、イミダゾリウム類、ピリジニウム類、ホスホニウムイオン類などのオニウムカチオン;などを挙げることができる。中でも、特に農業用保水材として用いる場合には、カリウムイオン、カルシウムイオン、アンモニウムイオンであることが好ましく、カリウムイオンであることがより好ましい。これらの対カチオンは単独でも複数種を組み合わせて含んでいてもよい。
本発明の吸水性樹脂は実質的に窒素成分を含まず、かつカルシウムイオンを含む水溶液との接触前後において、吸水倍率の変化が小さいことを特徴とする。ここで、実質的に窒素成分を含まないとは、本明細書においては、乾燥状態にある吸水性樹脂が含有する窒素元素の量が多くとも5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下であることを意味する。窒素元素の含有量は、例えば、当業者に公知である赤外分光法、紫外−可視分光法、核磁気共鳴分光法、有機元素分析法などの方法によって測定することができる。中でも、有機元素分析法による分析手法を採用することが、測定の容易性や定量性の観点から好ましい。
カルシウムイオンを含む水溶液との接触および作用による、吸水性樹脂の吸水特性の変化としては、殆どの場合において吸水倍率の低下が観察されるが、その度合いは小さいほど好ましい。灌漑用水には地域や季節により量に変動はあるものの一般にカルシウム成分が含まれ、また土壌中にも地域や肥料の適用状況により変動はあるもののカルシウム成分が存在するので、吸水性樹脂を農業用保水材として用いる場合にはカルシウム成分の接触は避けられない。したがって、カルシウム成分との接触による吸水性樹脂の性能の低下、特に吸水倍率の低下の度合いが大きいと、該吸水性樹脂は容易にその吸水・保水性能を喪失することになる。実際の農業用保水材としての使用を考えたとき、カルシウム成分の含有量は地域や季節により大きく変化しうるため一義的にカルシウム成分による性能低下を定義することは難しいが、カルシウムイオンを含む水溶液へ浸漬前後の吸水性樹脂の吸水特性、例えば吸水倍率の変化により、実使用時のカルシウム成分への耐性を予測することができる。
吸水性樹脂の、カルシウムイオンを含む水溶液との接触前の純水吸水倍率Xa、および接触後の純水吸水倍率Xbを測定するにあたって、カルシウムイオンを含む水溶液は、いわゆる硬水と呼ばれる程度のカルシウムイオンを含むものを用いる。水の硬度の指標としては例えばgpg(grains per gallon)が採用され、1gpgとは、64.8mgの炭酸カルシウムが1ガロン(3.875L)の水に含まれることを意味し、1gpg未満の水が軟水、1.0−3.5の範囲がやや硬水、3.5−7.0の範囲が中程度の硬水、7.0−10.5の範囲が硬水、10.5以上の水が超硬水と称されることがある。本発明において、カルシウムイオンを含む水溶液とは、10.5−50gpgの範囲、詳細には15−35gpgの範囲、より詳細には20gpgの硬度を示す硬水を指す。
上述の通り、水の硬度の指標であるgpgは、水溶液中の炭酸カルシウムの量を用いて定義したものであるが、より正確な材料の評価を行うため、カルシウムを含む異なる塩の水溶液を用いてもよく、その場合にはカルシウムイオン量から炭酸カルシウム相当量を算出し、さらに硬度の指標であるgpgを求めることができる。使用できるカルシウム塩に特に制限はなく、例えば塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸水素カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、塩素酸カルシウム、臭素酸カルシウム、ギ酸カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、などが挙げられ、中でも取り扱いの容易性、水溶液調整の簡便性の観点から塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウムが好ましく、最も好ましくは塩化カルシウムである。
本明細書において、吸水性樹脂の純水吸水倍率は、下記式1のとおり、樹脂の質量と、その樹脂が吸収できる純水の質量の比で表すことができる。

純水吸水倍率=[樹脂が吸収できる純水の質量]/[樹脂の乾燥質量]・・・(式1)

本発明の吸水性樹脂の吸水倍率Xaは、JIS K 7223に準じて測定できる。また、本発明の吸水性樹脂を、カルシウムイオンを含む水溶液(例えば20gpg相当の塩化カルシウム水溶液)に室温で所定時間(例えば20℃で1日間)浸漬した後、真空乾燥して得られた樹脂について、上記したJIS K 7223に準じて吸水倍率Xbを測定する。このようにして得られた吸水倍率XaとXbの比Xb/Xaを、吸水性樹脂が持つカルシウム成分への耐性の指標として用いることができる。すなわち、Xb/Xaが大きいほどカルシウム成分への耐性が強いと言え、従ってこの値は高い方が好ましく、例えば0.1以上、好ましくは0.25以上、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.4以上、それよりもさらに好ましくは0.5以上である。
本発明の吸水性樹脂は、実質的に窒素成分を含まず、かつカルシウム成分への耐性の指標であるXb/Xaが0.1以上であること以外には制約が無いが、好ましくはポリビニルアルコールの少なくとも一部をグリオキシル酸および/またはグリオキシル酸誘導体でアセタール化して得られる変性ポリビニルアルコールであり、さらに実使用時に水に溶出しない観点から架橋構造が導入されていることが好ましい。
本発明の吸水性樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲でその他の添加剤をさらに含む、組成物の形態であってもよい。かかるその他の添加剤の例としては、デンプン、変性デンプン、アルギン酸ナトリウム、セルロースおよびその誘導体などの多糖類、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリコハク酸、ポリアミド6、ポリアミド6・6、ポリフェニレンエーテル、ポリオキシメチレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル、ポリメタクリル酸塩、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸塩共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸塩共重合体などの樹脂類、天然ゴム、合成イソプレンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマーなどのゴム・エラストマー類、カオリナイト、スメクタイト、モンモリロナイト、セリサイト、クロライト、グローコナイト、タルク、天然ゼオライト、合成ゼオライトなどの粘土鉱物類、砂などを挙げることができる。これらは単独でも複数種を含んでいてもよい。
本発明の吸水性樹脂または組成物は、農業用保水材として好適に用いることができる。農業用保水材として用いる際の形態には種々の方法があり、圃場に直接散布する方法、作物種子を播種する際に種子とともに適用する方法、一旦種子にコーティングし、コーティングした種子を播種する方法など例示できる。また、本発明の高吸水性樹脂または組成物と水との混合物を培地として用いてもよい。適用対象とする作物に特に制限はなく、例えば各種野菜類、根菜類、果実類、穀類、イモ類、豆類、観賞用植物類、花卉類、芝、樹木類などを挙げることができる。
本発明の吸水性樹脂を農業用保水材として用いる際は、本発明の効果を損なわない範囲で肥料成分および/または農薬成分を含む組成物の形態であってもよい。肥料の例としては窒素系肥料、リン系肥料、カリウム系肥料、カルシウム系肥料などの三大肥料;カルシウム、マグネシウム、硫黄、鉄、銅、マンガン、亜鉛、ホウ素、モリブデン、塩素、ニッケルなど植物の必須要素を含む肥料などが挙げられる。農薬成分の例としては殺虫剤、殺菌剤、殺虫殺菌剤、除草剤、殺鼠剤、植物生長調整剤などが挙げられる。これらは単独でも複数種を含んでいてもよい。
本発明の吸水性樹脂は高い吸水特性と優れた力学特性を示すことから、例えば乳児用オムツ、幼児用オムツ、子供用オムツ、成人用オムツ、生理用品、保護下着などの衛生用品における吸収剤としての衛生材料に好ましく用いられる。本発明の吸水性樹脂は使用後には分解することが可能なことより、環境への影響の観点でも好ましい材料である。
本発明の吸水性樹脂は、一般的に知られている吸水性樹脂の用途、例えば地中の電力ケーブル、又は通信ケーブルにおける水浸透の防止;薬物送達系におけるキャリア;流出および排出水性液の吸収材;塗料;インク;着色剤組成物用の吸収性コーティング;殺虫剤、除草剤、芳香剤、および薬物を制御放出するためのキャリア;難燃性ゲル;葬儀用パッド;外科用パッド;創傷被服材;医療用廃物固化材;食料品用の吸収パッドおよび包装材料;化粧品のゲル化剤;シーリング複合材;濾過用途;航空機および自動車用の燃料監視システム;かご飼育動物用の給水体;静止ウォーターベッド;水中で大きくなる玩具;掘削液の添加剤;人工雪;などに用いることもできる。
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はかかる実施例等により何ら限定されるものではない。用いた原料、評価分析の手法について以下に示す。
(1)ポリアクリル酸ナトリウムゲル:
和光純薬工業株式会社製 高吸水性ポリマー(アクリル酸塩系)
(2)ポリアクリルアミドゲル:
ミラクルグロー(Miracle-Gro)社製 Water Storing Crystals
(3)ポリビニルアルコール:
株式会社クラレ製 PVA117S ケン化度98mol%、重合度1700
(4)グリオキシル酸50%水溶液:東京化成工業株式会社製
(5)水酸化カリウム:和光純薬工業株式会社製 特級
[2]変性ポリビニルアルコールの特性評価
後述する実験例1で得られた変性ポリビニルアルコールの評価は、以下のようにして行った。
(1)吸水倍率
(1−a)JIS K 7223に準じて、得られた変性ポリビニルアルコールの純水吸収量を測定し、以下の式(2)に基づいて、カルシウムイオンを含む水溶液との接触前の吸水倍率Xa(g/g)を算出した。
Xa(g/g)=
[吸水後の試料質量−吸水前の試料質量]/[吸水前の質量]・・・式(2)
(1−b)JIS K 7223に指定されたティーバック、及び試料設置の方法に準拠して、得られた変性ポリビニルアルコールの試料を含むティーバックを、硬度20gpgに調整した炭酸カルシウム水溶液(1.296g CaCO/L)に20℃で1日浸漬した。この試料を40℃以下で恒量になるまで真空乾燥した後、試料質量B(g)を測定し、次いでJIS K 7223に従って純水に浸漬し、以下の式(3)に基づいて、カルシウムイオンを含む水溶液との接触後の吸水倍率Xb(g/g)を算出した。
Xb(g/g)=[純水での吸水試験後の試料質量−B]/B・・・式(3)
(2)変性ポリビニルアルコールの窒素元素含有量:パーキンエルマー社2400IIにより窒素含有量を測定した。
(3)分解物に含まれるアンモニウムイオン量Xc:模擬的な分解試験として以下の操作を行った。すなわち高吸水性樹脂試料0.1gを、1N塩酸水溶液10mLに浸漬し、70℃で3時間攪拌して、模擬的な分解試験とした。分解試験を実施した後、ろ別により固体を除去して得られたろ液を純水で100倍に希釈し、イオンクロマトグラフ(サーモフィッシャー社ICS−1600、カラムIonPac CS12A)を用いてアンモニウムイオンを定量した。アンモニウムイオン量Xc(質量%)の計算式を下記式(4)に示す。
分解物に含まれるアンモニウムイオン量Xc(質量%)=
[分解により生じたアンモニウムイオン(g)]/[0.1(g)]×100
・・・式(4)
この試験において、ろ液中の分解物が窒素を含む場合、分解試験に供した変性ポリビニルアルコールを高吸水性樹脂として含む農業用保水材が土壌中で分解された際には窒素化合物を産生し、周囲の土壌や水系に悪影響を及ぼす傾向が強いと考えられる。
実験例1
還流冷却管、攪拌翼を備え付けた500mLの四つ口セパラブルフラスコに、イオン交換水200.0g、ポリビニルアルコール40.0gを仕込み、攪拌下90℃まで加熱して溶解した。系内を80℃まで冷却し、グリオキシル酸50%水溶液19.1gを5分間かけて滴下し、1時間反応させた。フラスコ内容物を取り出し、熱風乾燥機(ヤマト科学株式会社製DKM400)にて105℃、3時間乾燥させた。得られた樹脂を室温に冷却し、300mLの50%水酸化カリウム水溶液に3時間浸漬させたのち、イオン交換水で洗浄して変性ポリビニルアルコールを得た。得られた変性ポリビニルアルコールについて、カルシウムイオンを含む水溶液との接触前の純水吸水倍率Xa、カルシウムイオンを含む水溶液との接触後の純水吸水倍率Xb、窒素元素含有量、分解物の窒素元素含有量を求めた。結果を表1に示す。
実験例2〜3
市販のポリアクリル酸ナトリウムゲルおよびポリアクリルアミドゲルについて、実験例1と同様の評価試験を行った。結果を表1に示す。
本発明の吸水性樹脂は、カルシウムイオンとの接触による機能低下が少ないことに加え、吸水性樹脂またはその分解物が窒素元素を含まないことから環境への影響が小さいため、例えば農業用保水材として好適に用いることができる。

Claims (5)

  1. 実質的に窒素成分を含まず、かつ硬度20gpg相当のカルシウムイオンを含む水性液との接触前の純水吸水倍率Xaと、接触後の純水吸水倍率Xbの比Xb/Xaが0.1以上である、吸水性樹脂。
  2. 前記比Xb/Xaが0.25以上である、請求項1に記載の吸水性樹脂。
  3. 少なくとも一部がグリオキシル酸および/またはグリオキシル酸誘導体によりアセタール化された変性ポリビニルアルコールを構成成分とする、請求項1または2に記載の吸水性樹脂。
  4. 請求項1から3いずれか一項に記載の吸水性樹脂を主成分とする農業用保水材。
  5. さらに肥料成分または農薬成分の少なくとも1種以上を含む、請求項4に記載の農業用保水材。

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