JP2018030118A - 塗工フィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】塗工層における欠陥の発生を抑制可能な塗工フィルムの製造方法を提供する。【解決手段】有機溶媒A、有機溶媒B及び溶質を含む塗工液を、熱可塑性樹脂フィルムに塗工して、前記塗工液の層を形成する第一工程と、塗工液の層を乾燥させる第二工程と、をこの順に含む、塗工フィルムの製造方法であって、20℃における有機溶媒Aの水への溶解度CA、20℃における有機溶媒Bの水への溶解度CB、酢酸ブチルの蒸発速度を1とした有機溶媒Aの蒸発速度VA、酢酸ブチルの蒸発速度を1とした有機溶媒Bの蒸発速度VB、有機溶媒A及び有機溶媒Bの合計量100%に対する有機溶媒Aの重量割合SA、及び、有機溶媒A及び有機溶媒Bの合計量100%に対する有機溶媒Bの重量割合SBが、所定の関係を満たす、塗工フィルムの製造方法。【選択図】なし
Description
本発明は、塗工フィルムの製造方法に関する。
熱可塑性樹脂フィルム上に塗工液を塗工して塗工フィルムを製造する方法が、従来から知られていた。この製造方法では、通常、熱可塑性樹脂フィルム上に塗工液を塗工して、塗工液の層を形成する。その後、この塗工液の層を乾燥させて、熱可塑性樹脂フィルム及び塗工層を含む塗工フィルムを得る(特許文献1参照)。
塗工フィルムの製造方法においては、ブラッシングが生じることがあった。ここで、ブラッシングとは、溶媒の揮発によって塗工液の層から気化熱が失われ、塗工液の層の温度が低下することにより、塗工液の層の表面に結露が生じる現象をいう。このようなブラッシングは、通常、塗工液の層を形成してから乾燥させるまでの期間において、塗工液の層に含まれる溶媒が揮発することによって生じる。ブラッシングが生じると、結露の作用によって塗工層の表面に窪み又は突起が生じ、これらの窪み又は突起が塗工フィルムに欠陥となって現れることがある。
ブラッシングによる欠陥の発生を抑制するために、発明者は、結露の発生を抑制することが試みた。具体的には、塗工液の層を形成してから乾燥させるまでの期間において、雰囲気温度を露点よりも大幅に高温にすることにより、結露が生じないようにして、欠陥を抑制することを試みた。
ところが、塗工液の層を形成してから乾燥させるまでの期間において、雰囲気温度を露点よりも大幅に高温にしても、塗工フィルムにおける欠陥の発生を十分に抑制することは、難しかった。
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、塗工層における欠陥の発生を抑制可能な塗工フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、前記の課題を解決するべく、鋭意検討した。その結果、本発明者は、塗工液の溶媒として水に対する溶解度が異なり且つ蒸発速度が所定の関係を満たす複数種類の有機溶媒を組み合わせ、それらの有機溶媒の量を調整することにより、塗工層における欠陥の発生を抑制できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のものを含む。
すなわち、本発明は、下記のものを含む。
〔1〕 有機溶媒A、有機溶媒B及び溶質を含む塗工液を、熱可塑性樹脂フィルムに塗工して、前記塗工液の層を形成する第一工程と、
前記塗工液の層を乾燥させる第二工程と、をこの順に含む、塗工フィルムの製造方法であって、
20℃における前記有機溶媒Aの水への溶解度CA、
20℃における前記有機溶媒Bの水への溶解度CB、
酢酸ブチルの蒸発速度を1とした前記有機溶媒Aの蒸発速度VA、
酢酸ブチルの蒸発速度を1とした前記有機溶媒Bの蒸発速度VB、
前記有機溶媒A及び前記有機溶媒Bの合計量100%に対する前記有機溶媒Aの重量割合SA、及び、
前記有機溶媒A及び前記有機溶媒Bの合計量100%に対する前記有機溶媒Bの重量割合SBが、下記式(1)〜(4):
CA>CB (1)
VA−VB>1.5 (2)
75%>SA≧50% (3)
50%≧SB>25% (4)
を満たす、塗工フィルムの製造方法。
〔2〕 前記溶解度CAが、100g/L以上であり、
前記溶解度CBが、100g/L未満である、〔1〕記載の塗工フィルムの製造方法。
〔3〕 前記有機溶媒A及び前記有機溶媒Bの両方が、前記熱可塑性樹脂フィルムに対する貧溶媒である、〔1〕又は〔2〕記載の塗工フィルムの製造方法。
〔4〕 前記有機溶媒A及び前記有機溶媒Bの一方が、前記熱可塑性樹脂フィルムに対する貧溶媒であり、
前記有機溶媒A及び前記有機溶媒Bの他方が、前記熱可塑性樹脂フィルムに対する良溶媒である、〔1〕又は〔2〕記載の塗工フィルムの製造方法。
〔5〕 前記熱可塑性樹脂フィルムが、シクロオレフィン重合体を含む、〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の塗工フィルムの製造方法。
前記塗工液の層を乾燥させる第二工程と、をこの順に含む、塗工フィルムの製造方法であって、
20℃における前記有機溶媒Aの水への溶解度CA、
20℃における前記有機溶媒Bの水への溶解度CB、
酢酸ブチルの蒸発速度を1とした前記有機溶媒Aの蒸発速度VA、
酢酸ブチルの蒸発速度を1とした前記有機溶媒Bの蒸発速度VB、
前記有機溶媒A及び前記有機溶媒Bの合計量100%に対する前記有機溶媒Aの重量割合SA、及び、
前記有機溶媒A及び前記有機溶媒Bの合計量100%に対する前記有機溶媒Bの重量割合SBが、下記式(1)〜(4):
CA>CB (1)
VA−VB>1.5 (2)
75%>SA≧50% (3)
50%≧SB>25% (4)
を満たす、塗工フィルムの製造方法。
〔2〕 前記溶解度CAが、100g/L以上であり、
前記溶解度CBが、100g/L未満である、〔1〕記載の塗工フィルムの製造方法。
〔3〕 前記有機溶媒A及び前記有機溶媒Bの両方が、前記熱可塑性樹脂フィルムに対する貧溶媒である、〔1〕又は〔2〕記載の塗工フィルムの製造方法。
〔4〕 前記有機溶媒A及び前記有機溶媒Bの一方が、前記熱可塑性樹脂フィルムに対する貧溶媒であり、
前記有機溶媒A及び前記有機溶媒Bの他方が、前記熱可塑性樹脂フィルムに対する良溶媒である、〔1〕又は〔2〕記載の塗工フィルムの製造方法。
〔5〕 前記熱可塑性樹脂フィルムが、シクロオレフィン重合体を含む、〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の塗工フィルムの製造方法。
本発明の製造方法によれば、塗工層における欠陥の発生を抑制可能な塗工フィルムを製造できる。
以下、例示物及び実施形態を示して本発明について詳細に説明するが、本発明は以下に示す例示物及び実施形態に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、用語「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含し、用語「(メタ)アクリロニトリル」は、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルの両方を包含し、用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの両方を包含する。
[1.塗工フィルムの製造方法の実施形態の概要]
本発明の一実施形態に係る塗工フィルムの製造方法は、有機溶媒A、有機溶媒B及び溶質を含む塗工液を、熱可塑性樹脂フィルムに塗工して、塗工液の層を形成する第一工程と;塗工液の層を乾燥させる第二工程と;をこの順に含む。
本発明の一実施形態に係る塗工フィルムの製造方法は、有機溶媒A、有機溶媒B及び溶質を含む塗工液を、熱可塑性樹脂フィルムに塗工して、塗工液の層を形成する第一工程と;塗工液の層を乾燥させる第二工程と;をこの順に含む。
また、第一工程と第二工程との間には、一般に、フィルム搬送等のハンドリングの操作を要する。よって、第一工程と第二工程との間には、通常、時間が空く。この空いた時間において、熱可塑性樹フィルム上に設けられた塗工液の層は、露点温度Trの雰囲気に晒されることが好ましい。このように第一工程と第二工程との間において、塗工液の層が露点温度Trの雰囲気に晒される工程を、以下、第三工程ということがある。
[2.塗工液]
本発明の一実施形態に係る塗工フィルムの製造方法では、塗工液を用意した後で、その塗工液を熱可塑性樹脂フィルムに塗工する第一工程を行う。塗工液は、有機溶媒A、有機溶媒B及び溶質を含み、更に必要に応じて任意の成分を含みうる。ここで、溶質とは、塗工液に含まれる有機溶媒A及び有機溶媒B以外の成分であって、塗工液中において有機溶媒A及び有機溶媒Bに溶解し、第二工程における乾燥によっては除去されない成分をいう。
本発明の一実施形態に係る塗工フィルムの製造方法では、塗工液を用意した後で、その塗工液を熱可塑性樹脂フィルムに塗工する第一工程を行う。塗工液は、有機溶媒A、有機溶媒B及び溶質を含み、更に必要に応じて任意の成分を含みうる。ここで、溶質とは、塗工液に含まれる有機溶媒A及び有機溶媒B以外の成分であって、塗工液中において有機溶媒A及び有機溶媒Bに溶解し、第二工程における乾燥によっては除去されない成分をいう。
〔2.1.溶媒〕
塗工液は、溶媒として、有機溶媒A及び有機溶媒Bを組み合わせて含む。これらの有機溶媒A及び有機溶媒Bの組み合わせは、20℃における水への溶解度CAが相対的に大きい有機溶媒Aと、20℃における水への溶解度CBが相対的に小さい有機溶媒Bとの組み合わせである。
塗工液は、溶媒として、有機溶媒A及び有機溶媒Bを組み合わせて含む。これらの有機溶媒A及び有機溶媒Bの組み合わせは、20℃における水への溶解度CAが相対的に大きい有機溶媒Aと、20℃における水への溶解度CBが相対的に小さい有機溶媒Bとの組み合わせである。
具体的には、20℃における有機溶媒Aの水への溶解度CA、及び、20℃における有機溶媒Bの水への溶解度CBは、下記式(1)を満たす。
CA>CB (1)
CA>CB (1)
有機溶媒Aの溶解度CAと有機溶媒Bの溶解度CBとの差CA−CBの範囲は、好ましくは0より大きく、より好ましくは100g/Lより大きく、特に好ましくは250g/Lより大きく、好ましくは1200g/L以下、より好ましくは1100g/L以下、特に好ましくは1000g/L以下である。前記の溶解度差CA−CBが、前記範囲の下限値より大きいことにより、塗工層における欠陥の発生を顕著に抑制できる。また、前記の溶解度差CA−CBが、前記範囲の上限値以下であることにより、有機溶媒Aと有機溶媒Bとの相溶性を高め易いので、塗工層の組成の均一性を容易に高めることができる。
有機溶媒Aの溶解度CAの具体的な範囲は、好ましくは100g/L以上、より好ましくは200g/L以上、特に好ましくは250g/L以上であり、好ましくは1300g/L以下、より好ましくは1200g/L以下、特に好ましくは1100g/L以下である。有機溶媒Aの溶解度CAが、前記範囲の下限値以上であることにより、塗工層における欠陥の発生を顕著に抑制できる。また、有機溶媒Aの溶解度CAが、前記範囲の上限値以下であることにより、有機溶媒Aと有機溶媒Bとの相溶性を高め易いので、塗工層の組成の均一性を容易に高めることができる。
有機溶媒Bの溶解度CBの具体的な範囲は、好ましくは0.1g/L以上、より好ましくは0.2g/L以上、特に好ましくは0.3g/L以上であり、好ましくは100g/L未満、より好ましくは50g/L未満、特に好ましくは30g/L未満である。有機溶媒Bの溶解度CBが、前記範囲の下限値以上であることにより、有機溶媒Aと有機溶媒Bとの相溶性を高め易いので、塗工層の組成の均一性を容易に高めることができる。また、有機溶媒Bの溶解度CBが、前記範囲の上限値未満であることにより、塗工層における欠陥の発生を効果的に抑制できる。
有機溶媒の溶解度の値は、通常、実測値を用いる。ただし、溶解度の値が既知である場合、その既知の値を採用してもよい。例えば、ある有機溶媒の溶解度の値が文献に記載されている場合には、その文献値を採用してもよい。また、例えば、ある有機溶媒の溶解度の値がPHYSPROP Database等のデータベースに記載されている場合、そのデータベースに記載の値を採用してもよい。
さらに、有機溶媒A及び有機溶媒Bの組み合わせは、蒸発速度が相対的に速い有機溶媒Aと、蒸発速度が相対的に遅い有機溶媒Bとの組み合わせである。具体的には、酢酸ブチルの蒸発速度を1とした有機溶媒Aの蒸発速度VA、及び、酢酸ブチルの蒸発速度を1とした有機溶媒Bの蒸発速度VBは、下記式(2)を満たす。ここで、有機溶媒Aの蒸発速度VAは、有機溶媒Bと混合した状態での蒸発速度ではなく、有機溶媒Aの単独状態において測定された蒸発速度を表す。また、有機溶媒Bの蒸発速度VBは、有機溶媒Aと混合した状態での蒸発速度ではなく、有機溶媒Bの単独状態において測定された蒸発速度を表す。
VA−VB>1.5 (2)
VA−VB>1.5 (2)
前記の蒸発速度VAと蒸発速度VBとの差VA−VBの範囲は、通常1.5より大きく、好ましくは1.54より大きく、より好ましくは1.58より大きく、好ましくは6.0以下、より好ましくは5.5以下、特に好ましくは5.0以下である。前記の蒸発速度差VA−VBが、前記範囲の下限値以上であることにより、塗工層における欠陥の発生を顕著に抑制できる。また、前記の蒸発速度差VA−VBが、前記範囲の上限値以下であることにより、有機溶媒A及び有機溶媒Bの入手が容易である。
酢酸ブチルの蒸発速度を1とした有機溶媒Aの蒸発速度VAの具体的な範囲は、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.7以上、特に好ましくは2以上であり、好ましくは6以下、より好ましくは5.9以下、特に好ましくは5.8以下である。有機溶媒Aの蒸発速度VAが、前記範囲の下限値以上であることにより、塗工層における欠陥の発生を顕著に抑制できる。また、有機溶媒Aの蒸発速度VAが、前記範囲の上限値以下であることにより、溶媒揮発に伴う液面の乱れを抑制できるので、塗工層の厚みの均一性を高めることができる。
酢酸ブチルの蒸発速度を1とした有機溶媒Bの蒸発速度VBの具体的な範囲は、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上、特に好ましくは0.4以上であり、好ましくは3.8以下、より好ましくは3.7以下、特に好ましくは3.6以下である。有機溶媒Bの蒸発速度VBが、前記範囲の下限値以上であることにより、溶媒の除去を円滑に行うことができるので、塗工フィルムの生産性を高めることができる。また、有機溶媒Bの蒸発速度VBが、前記範囲の上限値以下であることにより、塗工層における欠陥の発生を顕著に抑制できる。
有機溶媒の蒸発速度は、ASTM D 3539−87 Standard Test Methods for. Evaporation Rates of Volatile Liquids by Shell Thin−Film Evaporometer.に従って測定しうる。
有機溶媒A及び有機溶媒Bとして用いうる溶媒としては、例えば、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン溶媒;エタノール、メタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール溶媒;シクロヘキサン、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の炭化水素溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル等の酢酸エステル溶媒;トルエン、キシレン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロルエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒;1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル溶媒;などが挙げられる。
代表的な有機溶媒について、20℃における水への溶解度、及び、酢酸ブチルの蒸発速度を1とした蒸発速度を、下記の表1に示す。
有機溶媒A及び有機溶媒Bの少なくとも一方は、熱可塑性樹脂フィルムに対する貧溶媒であることが好ましい。これにより、塗工液の塗工による熱可塑性樹脂フィルムの破損を抑制することができる。ここで、熱可塑性樹脂フィルムに対する貧溶媒とは、熱可塑性樹脂フィルムの塗工液が塗工される側の最外層に含まれる樹脂を溶解し難い溶媒をいう。また、樹脂を溶解し難い溶媒とは、25℃において、樹脂0.5gを100gの溶媒に溶解させた場合に、不溶分が0.5重量%以上である溶媒をいう。他方、熱可塑性樹脂フィルムに対する良溶媒とは、熱可塑性樹脂フィルムの塗工液が塗工される側の最外層に含まれる樹脂を溶解させ易い溶媒をいう。また、樹脂を溶解させ易い溶媒とは、25℃において、樹脂0.5gを100gの溶媒に溶解させた場合に、不溶分が0.5重量%未満である溶媒をいう。
有機溶媒A及び有機溶媒Bの組み合わせとしては、例えば、有機溶媒A及び有機溶媒Bの両方が、熱可塑性樹脂フィルムに対する貧溶媒である組み合わせが、好ましい。この組み合わせによれば、塗工液の塗工による熱可塑性樹脂フィルムの破損を、効果的に抑制することができる。
また、有機溶媒A及び有機溶媒Bの組み合わせとしては、例えば、有機溶媒A及び有機溶媒Bの一方が、熱可塑性樹脂フィルムに対する貧溶媒であり、且つ、有機溶媒A及び有機溶媒Bの他方が、熱可塑性樹脂フィルムに対する良溶媒である組み合わせが、好ましい。この組み合わせによれば、塗工液を塗工された面の近傍で、フィルムに含まれる熱可塑性樹脂中の重合体の配向が、良溶媒によって緩和される。そうすると、重合体分子の絡み合いの程度が大きくなり、樹脂の靱性が高まるので、熱可塑性樹脂フィルムの破損による塗工層の剥離を生じ難くできる。そのため、熱可塑性樹脂フィルムと塗工層との密着力を高めることができ、特に、熱可塑性樹脂フィルムが延伸フィルムである場合に効果的である。
例えば、熱可塑性樹脂フィルムとして、シクロオレフィン重合体を含む樹脂フィルムを用いた場合、良溶媒としては、例えば、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロルエタン、1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、及びテトラヒドロピランが挙げられる。また、貧溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、エタノール、メタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸プロピル、及び酢酸イソプロピルが挙げられる。
有機溶媒Aと有機溶媒Bとの組み合わせの具体例としては、例えば、下記表2に示す組み合わせが挙げられる。
また、有機溶媒A及び有機溶媒Bの合計量100%に対する有機溶媒Aの重量割合SAは、下記式(3)を満たす。さらに、有機溶媒A及び有機溶媒Bの合計量100%に対する有機溶媒Bの重量割合SBは、下記式(4)を満たす。ここで、前記の重量割合SA及びSBは、第一工程において塗工される塗工液での重量割合を表す。
75%>SA≧50% (3)
50%≧SB>25% (4)
75%>SA≧50% (3)
50%≧SB>25% (4)
より詳細には、有機溶媒Aの重量割合SAは、通常50%以上、好ましくは55%以上、特に好ましくは60%以上であり、通常75%未満、好ましくは74%未満、より好ましくは73%未満である。
また、有機溶媒Bの重量割合SBは、通常25%より大きく、好ましくは26%より大きく、特に好ましくは27%より大きく、通常50%以下、好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下である。
有機溶媒Aの重量割合SA及び有機溶媒Bの重量割合SBが、前記の範囲に収まることにより、塗工層における欠陥の発生を抑制できる。
塗工液100重量%に対する有機溶媒A及び有機溶媒Bの合計量の割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは55重量%以上、特に好ましくは60重量%以上であり、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下、特に好ましくは85重量%以下である。有機溶媒A及び有機溶媒Bの合計量の割合が、前記範囲の下限値以上であることにより、塗工層における欠陥の発生を顕著に抑制できる。また、上限値以下であることにより、塗工された塗工液の層の厚みを厚くできるので、厚い塗工層を容易に形成することができる。
〔2.2.溶質〕
塗工液に含まれる溶質としては、塗工液において溶解できる任意の材料を用いうる。本実施形態に係る塗工フィルムの製造方法では、通常、塗工液に含まれる溶質又はその重合体等の反応生成物を含む層として、塗工層が形成される。よって、塗工層の溶質の種類は、塗工フィルムに設ける塗工層の種類に応じて、設定することが好ましい。
塗工液に含まれる溶質としては、塗工液において溶解できる任意の材料を用いうる。本実施形態に係る塗工フィルムの製造方法では、通常、塗工液に含まれる溶質又はその重合体等の反応生成物を含む層として、塗工層が形成される。よって、塗工層の溶質の種類は、塗工フィルムに設ける塗工層の種類に応じて、設定することが好ましい。
溶質としては、例えば、液晶化合物を用いうる。溶質として液晶化合物を用いた場合、塗工層として、所定のレターデーションを有する位相差層を得ることができる。中でも、機械的強度に優れた塗工層を得る観点から、液晶化合物としては、重合性液晶化合物が好ましい。重合性液晶化合物としては、例えば、特開平11−513360号公報、特開2002−030042号公報、特開2004−204190号公報、特開2005−263789号公報、特開2007−119415号公報、特開2007−186430号公報等の文献に記載された重合性基を有する棒状液晶化合物;特開2015−111257号公報等の文献に記載された逆波長分散重合性液晶化合物;特開2003−177242号公報等の文献に記載の側鎖型液晶ポリマー化合物;などが挙げられる。
また、溶質としては、例えば、アクリル系化合物が挙げられる。溶質としてアクリル系化合物を用いた場合、塗工層として、高い硬度を有するハードコート層を得ることができる。アクリル系化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリルアミド化合物、(メタ)アクリロニトリル化合物、ウレタン(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。これらの具体例としては、例えば、特開2012−236921号公報に記載のものなどが挙げられる。
さらに、溶質としては、例えば、レベリング剤、重合開始剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤等の添加剤が挙げられる。
溶質は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
塗工液における溶質の濃度は、塗工フィルムに設ける塗工層の厚み、溶質の種類などに応じて、任意に設定しうる。具体的な濃度は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは12重量%以上、特に好ましくは15重量%以上であり、好ましくは30重量%以下、より好ましくは27重量%以下、特に好ましくは25重量%以下である。溶質の濃度が、前記範囲の下限値以上であることにより、所望の厚みの塗工層を容易に形成することができ、また、前記範囲の上限値以下であることにより、有機溶媒A及び有機溶媒Bの割合を相対的に大きくできるので、欠陥抑制作用を顕著に発揮することができる。
〔2.3.任意の成分〕
塗工液は、上述した有機溶媒A、有機溶媒B及び溶質に組み合わせて、更に任意の成分を含みうる。例えば、有機溶媒A及び有機溶媒B以外の任意の溶媒;溶媒に溶解しない非溶解成分;などが挙げられる。また、非溶解成分としては、例えば、有機粒子、無機粒子等の粒子が挙げられる。
塗工液は、上述した有機溶媒A、有機溶媒B及び溶質に組み合わせて、更に任意の成分を含みうる。例えば、有機溶媒A及び有機溶媒B以外の任意の溶媒;溶媒に溶解しない非溶解成分;などが挙げられる。また、非溶解成分としては、例えば、有機粒子、無機粒子等の粒子が挙げられる。
[3.熱可塑性樹脂フィルム]
熱可塑性樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂からなるフィルムである。熱可塑性樹脂としては、熱可塑性の重合体と、必要に応じて任意の成分とを含む樹脂を用いうる。重合体としては、例えば、シクロオレフィン重合体、セルロースエステル、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、エポキシ重合体、ポリスチレン、アクリル重合体、メタクリル重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらの中でも、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性等の観点から、シクロオレフィン重合体及びセルロースエステルが好ましく、シクロオレフィン重合体がより好ましい。
熱可塑性樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂からなるフィルムである。熱可塑性樹脂としては、熱可塑性の重合体と、必要に応じて任意の成分とを含む樹脂を用いうる。重合体としては、例えば、シクロオレフィン重合体、セルロースエステル、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、エポキシ重合体、ポリスチレン、アクリル重合体、メタクリル重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらの中でも、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性等の観点から、シクロオレフィン重合体及びセルロースエステルが好ましく、シクロオレフィン重合体がより好ましい。
シクロオレフィン重合体は、その重合体の構造単位が脂環式構造を有する重合体である。シクロオレフィン重合体は、主鎖に脂環式構造を有する重合体、側鎖に脂環式構造を有する重合体、主鎖及び側鎖に脂環式構造を有する重合体、並びに、これらの2以上の任意の比率の混合物としうる。中でも、機械的強度及び耐熱性の観点から、主鎖に脂環式構造を有する重合体が好ましい。
脂環式構造の例としては、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、及び不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造が挙げられる。中でも、機械強度及び耐熱性の観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、シクロアルカン構造が特に好ましい。
脂環式構造を構成する炭素原子数は、一つの脂環式構造あたり、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上、特に好ましくは6個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下である。脂環式構造を構成する炭素原子数がこの範囲であると、熱可塑性樹脂フィルムの機械強度、耐熱性及び成形性が高度にバランスされる。
シクロオレフィン重合体において、脂環式構造を有する構造単位の割合は、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。シクロオレフィン重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合がこの範囲にあると、熱可塑性樹脂フィルムの透明性及び耐熱性が良好となる。
シクロオレフィン重合体の具体例としては、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン重合体、(3)環状共役ジエン重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素添加物が挙げられる。これらの中でも、透明性や成形性の観点から、ノルボルネン系重合体及びこれらの水素添加物がより好ましい。
ノルボルネン系重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体及びその水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体及びその水素化物が挙げられる。また、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の開環単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の開環共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体との開環共重合体が挙げられる。さらに、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の付加単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の付加共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体との付加共重合体が挙げられる。これらの重合体としては、例えば、特開2002−321302号公報等に開示されている重合体が挙げられる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の水素化物は、透明性、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性の観点から、特に好適である。
ノルボルネン系重合体の好適な具体例としては、日本ゼオン社製「ゼオノア」;JSR社製「アートン」;TOPAS ADVANCED POLYMERS社製「TOPAS」などが挙げられる。
熱可塑性樹脂に含まれる重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000以上、より好ましくは25,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは80,000以下、特に好ましくは50,000以下である。重合体の重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、熱可塑性樹脂フィルムの機械的強度および成型加工性が高度にバランスされる。
熱可塑性樹脂に含まれる重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、好ましくは1以上、より好ましくは1.2以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは4以下、特に好ましくは3.5以下である。
ここで、重合体の重量平均分子量及び数平均分子量は、溶媒としてシクロヘキサンを用いて(但し、試料がシクロヘキサンに溶解しない場合にはトルエンを用いてもよい)、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより、ポリイソプレン換算(溶媒がトルエンのときは、ポリスチレン換算)の値として測定しうる。
熱可塑性樹脂における重合体の量は、好ましくは70重量%〜100重量%、より好ましくは80重量%〜100重量%である。
熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上であり、好ましくは250℃以下の範囲である。ガラス転移温度がこのような範囲にある熱可塑性樹脂は、高温下での使用における変形及び応力の発生が抑制されるので、耐久性に優れる。
熱可塑性樹脂は、その分子量2,000以下の樹脂成分(すなわち、オリゴマー成分)の含有量が、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下である。オリゴマー成分の含有量が、前記範囲内にあると、熱可塑性樹脂フィルムの表面における微細な凸部の発生が減少し、厚みのばらつきが小さくなり、面精度が向上する。オリゴマー成分の量の低減は、例えば、重合触媒及び水素化触媒の選択;重合、水素化等の反応条件;樹脂を成形用材料としてペレット化する工程における温度条件;を適切に設定することにより、行いうる。また、オリゴマー成分の量は、前述のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによって測定しうる。
熱可塑性樹脂フィルムは、1層のみを備える単層構造のフィルムを用いてもよく、2層以上の層を備える複層構造のフィルムを用いてもよい。熱可塑性樹脂フィルムが2層以上の層を備える場合、塗工液を塗布される側の最外層が、シクロオレフィン重合体を含むことが好ましい。シクロオレフィン重合体を含む樹脂からなる層の表面は、一般に、他の層に対する密着性が乏しい傾向がある。これに対し、有機溶媒A及び有機溶媒Bの一方として良溶媒を含む塗布液を用いた場合、シクロオレフィン重合体を含む樹脂からなる最外層と塗工層との密着性を改善できるので、機械的強度に優れた塗工フィルムを得ることができる。
熱可塑性樹脂フィルムとしては、枚葉のフィルムを用いてもよいが、長尺のフィルムを用いることが好ましい。「長尺のフィルム」とは、幅に対して5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。フィルムの幅に対する長さの割合の上限は、特に限定されないが、例えば100,000倍以下としうる。長尺の熱可塑性樹脂フィルムを用いることにより、ロールトゥロールでの製造が可能になり、塗工フィルムの生産性を高めることができる。
熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、塗工フィルムの用途に応じて任意に設定してもよく、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、特に好ましくは10μm以上であり、好ましくは1000μm以下、より好ましくは300μm以下、特に好ましくは100μm以下である。このような厚みを有する熱可塑性樹脂フィルムは、生産性が良好であり、厚みが薄く、且つ、軽量化が可能である。
熱可塑性樹脂フィルムは、例えば、熱可塑性樹脂を任意のフィルム成形法で成形することによって製造しうる。フィルム成形法としては、例えば、キャスト成形法、押出成形法、インフレーション成形法などが挙げられる。中でも、溶媒を使用しない溶融押出法は、揮発性成分の量を効率よく低減させることができ、地球環境の観点、作業環境の観点、及び、製造効率の観点から好ましい。溶融押出法としては、例えばダイスを用いるインフレーション法などが挙げられ、生産性及び厚み精度に優れる点で、Tダイを用いる方法が好ましい。
また、熱可塑性樹脂フィルムの製造方法は、得られたフィルムに延伸処理を施す工程を含んでいてもよい。これにより、熱可塑性樹脂フィルムとして、延伸フィルムが得られる。このような延伸フィルムでは、通常、当該フィルムに含まれる重合体の分子が配向している。よって、延伸フィルムは、レターデーション等の光学特性を有しうる。また、延伸フィルムは、当該フィルム表面に塗工された液晶化合物を配向させる配向規制力を有しうる。
延伸処理としては、例えば、一方向のみに延伸を行う一軸延伸処理を行ってもよく、異なる2方向に延伸を行う二軸延伸処理を行ってもよい。また、二軸延伸処理では、2方向に同時に延伸を行う同時二軸延伸処理を行ってもよく、ある方向に延伸を行った後で別の方向に延伸を行う逐次二軸延伸処理を行ってもよい。さらに、延伸処理は、フィルム長手方向に延伸を行う縦延伸処理、フィルム幅方向に延伸を行う横延伸処理、フィルム幅方向に平行でもなく垂直でもない斜め方向に延伸を行う斜め延伸処理のいずれを行ってもよく、これらを組み合わせて行ってもよい。延伸処理の方式は、例えば、ロール方式、フロート方式、テンター方式などが挙げられる。
[5.第一工程]
本発明の一実施形態に係る複層フィルムの製造方法では、塗工液及び熱可塑性樹脂フィルムを用意した後で、塗工液を熱可塑性樹脂フィルムに塗工する第一工程を行う。塗工液の塗工により、熱可塑性樹脂フィルム上に前記塗工液の層が形成される。
本発明の一実施形態に係る複層フィルムの製造方法では、塗工液及び熱可塑性樹脂フィルムを用意した後で、塗工液を熱可塑性樹脂フィルムに塗工する第一工程を行う。塗工液の塗工により、熱可塑性樹脂フィルム上に前記塗工液の層が形成される。
第一工程において、塗工される塗工液の液温Tは、下記式(5)を満たすことが好ましい。
20℃>T>10℃ (5)
20℃>T>10℃ (5)
より詳細には、塗工液の液温Tは、好ましくは10℃より高く、好ましくは11℃より高く、特に好ましくは12℃より高く、また、好ましくは20℃未満、好ましくは19.5℃未満、特に好ましくは19℃未満である。塗工液の液温Tが前記の温度範囲にある場合に、塗工層における欠陥の発生を顕著に抑制できる。
また、複層フィルムの製造方法が第三工程を含む場合、第一工程における雰囲気は、当該第一工程における雰囲気の露点温度が第三工程における雰囲気の露点温度Trと同じになるように調整することが好ましい。これにより、塗工層における欠陥の発生を特に効果的に抑制できる。通常、第一工程と第三工程とは、同じ室内で行われるので、第三工程における雰囲気を露点温度Trが得られるように調整することで、第一工程における雰囲気の露点温度も前記温度Trに調整される。
塗工方法に制限は無く、例えば、スプレーコート法、バーコート法、ロールコート法、ダイコート法、インクジェットコート法、スクリーンコート法、ディップコート法、スロットダイコート法、凸版印刷法、凹版印刷法、グラビア印刷法等が挙げられる。
[6.第三工程]
第一工程以後、第二工程の前には、熱可塑性樹脂フィルム上に形成された塗工液の層を、露点温度Trの雰囲気に晒す第三工程を行うことが好ましい。第三工程において塗工液の層が晒される雰囲気の露点温度Trは、通常、式(6)を満たす。
8℃>T−Tr>0℃ (6)
第一工程以後、第二工程の前には、熱可塑性樹脂フィルム上に形成された塗工液の層を、露点温度Trの雰囲気に晒す第三工程を行うことが好ましい。第三工程において塗工液の層が晒される雰囲気の露点温度Trは、通常、式(6)を満たす。
8℃>T−Tr>0℃ (6)
より詳細には、第一工程において塗工される塗工液の液温Tと第三工程における雰囲気の露点温度Trとの差T−Trは、好ましくは0℃より大きく、また、好ましくは8℃未満、より好ましくは7.5℃未満、特に好ましくは7℃未満である。前記の温度差T−Trが前記の温度範囲にある場合に、塗工層における欠陥の発生を顕著に抑制できる。
第三工程は、第一工程以後第二工程より前の期間の、少なくとも一部の期間において行いうる。中でも、第三工程は、第一工程から連続する少なくとも一部の期間において行うことが、好ましい。さらには、第三工程は、第一工程以後第二工程より前の全ての期間で行うことが、特に好ましい。よって、例えば長尺の熱可塑性樹脂フィルムを搬送しながら塗工フィルムの製造を行う場合には、第一工程を行うための塗工装置以降、塗工液の層の乾燥を行うための乾燥装置よりも前の区間において、フィルム搬送路の雰囲気を露点温度Trが得られるように調整することが好ましい。これにより、塗工層における欠陥の発生を特に効果的に抑制できる。
熱可塑性樹脂フィルム上に形成された塗工液の層を、露点温度Trの雰囲気に晒す時間は、塗工層における欠陥の発生を抑制できる限り任意であるが、好ましくは3秒以上、より好ましくは5秒以上、特に好ましくは7秒以上であり、好ましくは30秒以下、より好ましくは27秒以下、特に好ましくは25秒以下である。塗工液の層を露点温度Trの雰囲気に晒す時間が、前記範囲の下限値以上であることにより、均一な結露を安定して発生させられるので、塗工層における欠陥の発生を顕著に抑制できる。また、上限値以下であることにより、過剰な結露の発生を抑制したり、塗工フィルムの生産性を高めたりできる。
[7.第二工程]
第一工程を行い、更に通常は第三工程を行った後で、熱可塑性樹脂フィルム上に形成された塗工液の層を乾燥させる第二工程を行う。第二工程により、塗工液の層に含まれていた塗工液から有機溶媒A、有機溶媒B、並びに任意の揮発成分が除去されて、塗工層が形成される。これにより、熱可塑性樹脂フィルム及び塗工層を備える塗工フィルムが得られる。
第一工程を行い、更に通常は第三工程を行った後で、熱可塑性樹脂フィルム上に形成された塗工液の層を乾燥させる第二工程を行う。第二工程により、塗工液の層に含まれていた塗工液から有機溶媒A、有機溶媒B、並びに任意の揮発成分が除去されて、塗工層が形成される。これにより、熱可塑性樹脂フィルム及び塗工層を備える塗工フィルムが得られる。
第二工程では、通常、塗工液の層を加熱することによって、乾燥を行う。加熱は、例えば、塗工液の層を高温の乾燥雰囲気に晒すことで、達成しうる。乾燥雰囲気の温度は、通常は、第一工程における塗工液の液温Tより高温である。乾燥雰囲気の具体的な温度は、溶媒の除去が可能である限り任意であるが、好ましくは70℃以上、より好ましくは75℃以上、特に好ましくは80℃以上であり、好ましくは110℃以下、より好ましくは105℃以下、特に好ましくは100℃以下である。
また、塗工液の層が液晶化合物を含み、且つ、熱可塑性樹脂フィルムが配向規制力を有する場合には、第二工程で塗工液の層を加熱することにより、液晶化合物を配向させることができる。
[8.任意の工程]
本発明の一実施形態に係る塗工フィルムの製造方法は、上述した工程に加えて、更に任意の工程を含んでいてもよい。
塗工フィルムの製造方法は、例えば、塗工層を硬化させる工程を含んでいてもよい。以下、その例を説明する。上述した第二工程によって得られる塗工層は、通常、溶質を含む。この溶質が紫外線等の活性エネルギー線によって重合しうる場合には、第二工程の後で、塗工層に活性エネルギー線を照射する工程を行ってもよい。活性エネルギー線の照射により、溶質が重合して、塗工層の硬度を高めることができる。これにより、機械的強度の高い塗工フィルムを得ることができる。
本発明の一実施形態に係る塗工フィルムの製造方法は、上述した工程に加えて、更に任意の工程を含んでいてもよい。
塗工フィルムの製造方法は、例えば、塗工層を硬化させる工程を含んでいてもよい。以下、その例を説明する。上述した第二工程によって得られる塗工層は、通常、溶質を含む。この溶質が紫外線等の活性エネルギー線によって重合しうる場合には、第二工程の後で、塗工層に活性エネルギー線を照射する工程を行ってもよい。活性エネルギー線の照射により、溶質が重合して、塗工層の硬度を高めることができる。これにより、機械的強度の高い塗工フィルムを得ることができる。
また、塗工フィルムの製造方法は、例えば、塗工フィルムに表面処理を施す工程、塗工フィルムを延伸する工程、塗工フィルムの塗工面あるいはその反対側の面(反塗工面)に保護フィルムを貼合する工程、塗工フィルムをスリットする工程、塗工フィルムを巻き取る工程、などを含んでいてもよい。
[9.塗工フィルム]
上述した製造方法により、熱可塑性樹脂フィルム及び塗工層を備える塗工フィルムを得ることができる。上述した製造方法では、塗工層における欠陥の発生を抑制することができる。そのため、得られた塗工フィルムの塗工層には、欠陥が少ない。
本発明者によれば、上述した製造方法によって塗工層における欠陥の発生を抑制できる仕組みは、下記の通りと推察される。ただし、本発明の技術的範囲は、下記に説明する仕組みによって制限されるものでは無い。
上述した製造方法により、熱可塑性樹脂フィルム及び塗工層を備える塗工フィルムを得ることができる。上述した製造方法では、塗工層における欠陥の発生を抑制することができる。そのため、得られた塗工フィルムの塗工層には、欠陥が少ない。
本発明者によれば、上述した製造方法によって塗工層における欠陥の発生を抑制できる仕組みは、下記の通りと推察される。ただし、本発明の技術的範囲は、下記に説明する仕組みによって制限されるものでは無い。
上述した塗工フィルムの製造方法では、第一工程において塗工液が熱可塑性樹脂フィルムに塗工された直後の時点において、熱可塑性樹脂フィルム上に形成された塗工液の層は、通常、塗工前の液温Tを維持している。その後、時間が経過するに従って、塗工液の層から溶媒等の揮発成分が揮発する。揮発成分が揮発すると、気化熱が失われるので、塗工液の層の温度は低下する。そして、塗工液の層の温度が露点温度に達すると、塗工液の層の表面に、結露が生じる。
式(1)で示すように、有機溶媒Aの水への溶解度CAが有機溶媒Bの水への溶解度CBよりも大きいから、有機溶媒Aの水に対する親和性は、有機溶媒Bの水に対する親和性よりも高い。よって、結露は、有機溶媒Bの分子が存在する部分では生じ難く、有機溶媒Aの分子が存在する部分に生じ易い。そのため、有機溶媒Aの量と有機溶媒Bの量とのバランスが適切であることによって、層の表面における有機溶媒A及び有機溶媒Bの分布が均一であると、結露は、塗工液の層の面内方向で均一に生じる。また、有機溶媒Aの量と有機溶媒Bの量とのバランスが適切であることによって、層の表面における有機溶媒Aが占める面積と有機溶媒Bが占める面積との割合が適切な範囲にあると、生じる結露のサイズを小さくできる。したがって、結露が生じ始めた時点において、塗工液の層に含まれる有機溶媒Aの量と有機溶媒Bの量とのバランスが好適な範囲にあれば、結露は、小さいサイズで、塗工液の層の面内方向で均一に生じる。
仮に、結露が大きなサイズで形成されると、その結露が生じた部分において塗工層の表面に大きな窪みが生じ、また、その周囲に大きな突起が生じて、欠陥が現れる可能性がある。これに対し、結露のサイズが小さいと、塗工層の表面の窪み又は突起の深さは小さくなるので、窪み又は突起による光学特性の変化を小さくすることができる。また、結露の生成が面内方向で均一であると、塗工層の表面での窪み又は突起の生成も面内方向で均一になるので、塗工層の全体を見ると、窪み又は突起それぞれによる光学特性の変化は目立たなくなる。一般に、欠陥は、当該欠陥部分とその周囲とで光学特性に差がある場合に生じるものであるので、周囲との光学特性の差が小さい部分には、欠陥が生じ難い。したがって、前記のように小さいサイズの結露を面内方向で均一に生させることにより、塗工層において、欠陥を発生し難くできる。
ここで、式(2)で示すように、有機溶媒Aの蒸発速度VAは相対的に速く、有機溶媒Bの蒸発速度VBは相対的に遅い。そのため、溶媒の揮発の際には、有機溶媒Aが速く揮発し、有機溶媒Bが遅く揮発する。さらに、一般に、2種類以上の溶媒を含む液体において、各溶媒は、液体中における当該溶媒の存在比率が高いほど、速く揮発する傾向がある。よって、上述したように有機溶媒A及び有機溶媒Bを組み合わせて含む塗工液では、各有機溶媒の存在比率も、当該有機溶媒の揮発の速さに影響する。このような塗工液において、有機溶媒Aの重量割合SA及び有機溶媒Bの重量割合SBが式(3)及び式(4)を満たすようにすると、露点温度になるまでに塗布液の層から失われる溶媒の量を適切にコントロールできるので、結露が生じるときに塗工液の層に含まれる有機溶媒Aの量と有機溶媒Bの量とのバランスを好適な範囲に収めることができ、その結果、欠陥を抑制することができる。
特に、有機溶媒Aの重量割合SAが式(3)の下限値以上、且つ、有機溶媒Bの重量割合SBが式(4)の上限値以下になるようにすることで、結露が生じ始める時点において有機溶媒Aが過少となることを抑制できるので、有機溶媒Bの量が過剰となることを抑制でき、その結果、液化した水の凝集による大きな結露の発生を抑制できる。
また、有機溶媒Aの重量割合SAが式(3)の上限値未満、且つ、有機溶媒Bの重量割合SBが式(4)の下限値より大きくなるようにすることでも、結露が生じ始める時点において有機溶媒Aが過少となることを抑制できる。前記のように、一般に、2種類以上の溶媒を含む液体において、各溶媒は、液体中における当該溶媒の存在比率が高いほど、速く揮発する傾向がある。よって、塗工液における有機溶媒Aの重量割合SAが過剰であると、揮発が過剰に速く進行し、その結果、結露が生じ始めるまでに大量の有機溶媒Aが失われる可能性がある。これに対し、有機溶媒Aの重量割合SAが式(3)の上限値未満、且つ、有機溶媒Bの重量割合SBが式(4)の下限値より大きくなるようにすると、有機溶媒Aが過少となることを抑制できるので、液化した水の凝集による大きな結露の発生を抑制できる。
さらに、有機溶媒Aの重量割合SAが式(3)の上限値未満、且つ、有機溶媒Bの重量割合SBが式(4)の下限値より大きくなるようにすると、結露が生じ始める時点だけでなく、その後でも、塗工液の層に含まれる有機溶媒Aの量と有機溶媒Bの量とのバランスを好適な範囲に収めることができる。仮に塗工される以前の塗工液における有機溶媒Aの重量割合SAが過剰であると、塗工液の層からの有機溶媒Aの揮発が過剰に速く進行する可能性がある。このような場合、結露が生じ始める時点では塗工液の層に含まれる有機溶媒Aの量と有機溶媒Bの量とのバランスが好適な範囲にあっても、その後、有機溶媒Aが急速に失われることで、前記のバランスが損なわれる可能性がある。しかし、有機溶媒Aの重量割合SAが式(3)の上限値未満、且つ、有機溶媒Bの重量割合SBが式(4)の下限値より大きくなるようにすることで、結露が生じる期間を通じて塗工液の層に含まれる有機溶媒Aの量と有機溶媒Bの量とのバランスを好適な範囲に収めることができる。したがって、大きなサイズの結露の発生を抑制できる。よって、欠陥の発生を抑制することが可能である。
また、塗工フィルムの製造方法が第三工程を含む場合、液温Tの塗工液が、式(4)及び式(5)で示すように、第三工程における雰囲気の露点温度Trに近い低温となっていると、塗工液を塗工してから塗工液の層の温度が露点温度Trに達するまでに要する時間を、短くできる。そうすると、塗工液の層の温度が露点温度Trに達するまでに揮発によって失われる有機溶媒Aの量を特に少なくできる。したがって、塗工液の層における有機溶媒Bの量が過剰となることを効果的に抑制できるので、液化した水の凝集による大きな結露の発生を効果的に抑制して、欠陥の発生を顕著に抑制できる。
さらに、有機溶媒Aの水への溶解度CAが特に大きい場合、液化した水の一部は、結露を形成せずに、有機溶媒Aに溶解する。そのため、形成される結露のサイズを、更に小さくできる。よって、有機溶媒Aとして水への溶解度CAが大きいものを用いることにより、欠陥の発生を特に効果的に抑制できる。
塗工フィルムの塗工層の厚みは、塗工フィルムの用途に応じて、任意に設定できる。具体的は範囲を示すと、塗工層の厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、特に好ましくは1.5μm以上であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下である。
塗工フィルムの用途に特に制限は無いが、欠陥を抑制できるという効果を有効に活用する観点から、位相差フィルム、偏光板保護フィルム、光学補償フィルム、光学用保護フィルムなどの光学フィルムとして用いることが好ましい。
光学フィルムとして用いる観点から、塗工フィルムは、高い透明性を有することが好ましい。具体的には、塗工フィルムの全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。塗工フィルムの全光線透過率は、紫外・可視分光計を用いて、波長380nm〜780nmの範囲で測定しうる。
また、光学フィルムとして用いる観点から、塗工フィルムのヘイズは、小さいことが好ましい。具体的には、塗工フィルムのヘイズは、好ましくは1%以下、より好ましく0.7%以下、特に好ましくは0.5%以下である。塗工フィルムのヘイズは、JIS K7136に準拠して、ヘイズメーター(例えば、東洋精機社製「ヘイズガードII」)を用いて測定しうる。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。以下の操作は、別に断らない限り、常温常圧大気中にて行った。
[評価方法]
(溶媒の蒸発速度の測定方法)
溶媒の蒸発速度を、ASTM D 3539−87 Standard Test Methods for. Evaporation Rates of Volatile Liquids by Shell Thin−Film Evaporometer.に従って、測定した。測定された蒸発速度を、酢酸ブチルの蒸発速度で割算することにより、酢酸ブチルの蒸発速度を1とした当該溶媒の蒸発速度に換算した。
(溶媒の蒸発速度の測定方法)
溶媒の蒸発速度を、ASTM D 3539−87 Standard Test Methods for. Evaporation Rates of Volatile Liquids by Shell Thin−Film Evaporometer.に従って、測定した。測定された蒸発速度を、酢酸ブチルの蒸発速度で割算することにより、酢酸ブチルの蒸発速度を1とした当該溶媒の蒸発速度に換算した。
(欠陥の評価方法)
塗工フィルムを吊台に吊るして、塗工フィルムの塗工層側の面を、高輝度放電ランプ(HIDランプ;ポラリオン社製「ポラリオンライト」)の光で照らし、観察した。塗工フィルムの幅方向中央部を含む幅1.3m、長さ2mの範囲において、スジ状の欠陥の数を数えて、下記の基準で判定した。ここで、スジ状の欠陥は、円形の欠陥が連続的又は断続的に並んで形成された、長さ5cm以上の直線状の欠陥を表す。
優:スジ状の欠点の数が、0〜1本/2.6m2。
良:スジ状の欠点の数が、2本/2.5m2〜4本/2.6m2。
不良:スジ状の欠点の数が、5本/2.6m2以上。
塗工フィルムを吊台に吊るして、塗工フィルムの塗工層側の面を、高輝度放電ランプ(HIDランプ;ポラリオン社製「ポラリオンライト」)の光で照らし、観察した。塗工フィルムの幅方向中央部を含む幅1.3m、長さ2mの範囲において、スジ状の欠陥の数を数えて、下記の基準で判定した。ここで、スジ状の欠陥は、円形の欠陥が連続的又は断続的に並んで形成された、長さ5cm以上の直線状の欠陥を表す。
優:スジ状の欠点の数が、0〜1本/2.6m2。
良:スジ状の欠点の数が、2本/2.5m2〜4本/2.6m2。
不良:スジ状の欠点の数が、5本/2.6m2以上。
[実施例1]
(1−1.塗工液の用意)
有機溶媒Aとしてのアセトンと、有機溶媒Bとしての酢酸プロピルとを含む混合溶媒(重量比が、アセトン/酢酸プロピル=70/30)を用意した。アセトン及び酢酸プロピルは、いずれも、熱可塑性樹脂フィルムに含まれる樹脂に対して貧溶媒である。
この混合溶媒62.0部、1分子中に6個以上のアクリロイル基を有するウレタンアクリレートオリゴマー(日本合成化学工業社製「UV−7640B」)50.0部、シリカ粒子(CIKナノテック社製、数平均粒径30nm)10.0部、レベリング剤(DIC社製「GRANDIC PC11−6204L」)0.2部、及び、重合開始剤(BASF社製「イルガキュア379」)3.0部を混合して、ハードコート組成物としての塗工液を製造した。
(1−1.塗工液の用意)
有機溶媒Aとしてのアセトンと、有機溶媒Bとしての酢酸プロピルとを含む混合溶媒(重量比が、アセトン/酢酸プロピル=70/30)を用意した。アセトン及び酢酸プロピルは、いずれも、熱可塑性樹脂フィルムに含まれる樹脂に対して貧溶媒である。
この混合溶媒62.0部、1分子中に6個以上のアクリロイル基を有するウレタンアクリレートオリゴマー(日本合成化学工業社製「UV−7640B」)50.0部、シリカ粒子(CIKナノテック社製、数平均粒径30nm)10.0部、レベリング剤(DIC社製「GRANDIC PC11−6204L」)0.2部、及び、重合開始剤(BASF社製「イルガキュア379」)3.0部を混合して、ハードコート組成物としての塗工液を製造した。
(1−2.熱可塑性樹脂フィルムの用意)
熱可塑性樹脂フィルムとして、シクロオレフィン重合体を含む熱可塑性樹脂からなる長尺の横延伸フィルム(日本ゼオン社製「ゼオノアフィルム」、熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)126℃、厚み20μm、波長590nmにおける面内レターデーション130nm)を用意した。
熱可塑性樹脂フィルムとして、シクロオレフィン重合体を含む熱可塑性樹脂からなる長尺の横延伸フィルム(日本ゼオン社製「ゼオノアフィルム」、熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)126℃、厚み20μm、波長590nmにおける面内レターデーション130nm)を用意した。
(1−3.塗工フィルムの製造)
塗工液ストックタンク、ギアポンプ、送液チューブ及び塗工ダイからなるダイコーターを、塗工室に設置した。塗工液ストックタンク及び塗工ダイとしては、通水により温度調整可能なものを用いた。また、送液チューブは、通水ジャケットで覆うことにより、通水ジャケット中の通水によって温度調整できるように設置した。前記のストックタンク、塗工ダイ及び通水ジャケットには、16℃の水を流し、塗工液の液温Tが16℃に維持されるように調整した。
塗工液ストックタンク、ギアポンプ、送液チューブ及び塗工ダイからなるダイコーターを、塗工室に設置した。塗工液ストックタンク及び塗工ダイとしては、通水により温度調整可能なものを用いた。また、送液チューブは、通水ジャケットで覆うことにより、通水ジャケット中の通水によって温度調整できるように設置した。前記のストックタンク、塗工ダイ及び通水ジャケットには、16℃の水を流し、塗工液の液温Tが16℃に維持されるように調整した。
また、塗工室内の温度及び相対湿度を調節することにより、塗工室内の露点温度Trを11℃に調整した。
前記の熱可塑性樹脂フィルムを、長手方向に連続的に搬送しながら、下記の工程を行った。
熱可塑性樹脂フィルムを、塗工室に供給した。そして、熱可塑性樹脂フィルム上に、ダイコーターを用いて、ハードコート組成物としての液温T=16℃の塗工液を塗工し、塗工液の層を形成した(第一工程)。
その後、熱可塑性樹脂フィルムを、塗工室の直ぐ下流に設けられたオーブンに向けて搬送した。この際、塗工液の層は、ダイコーターによって塗工されてからオーブンに入るまでの20秒間、塗工室内を走行することにより、露点温度Tr=11℃の雰囲気に晒された(第三工程)。
その後、100℃のオーブンにおいて、塗工液の層が2分ほど乾燥された。これにより、塗工液の層から溶媒が除去されて、塗工層が形成された(第二工程)。
その後、紫外線照射装置(高圧水銀ランプ)を用いて、照度250mW/cm2、積算光量100mJ/cm2の条件で、塗工層に紫外線を照射した。これにより、塗工層に含まれるウレタンアクリレートオリゴマーが重合して、塗工層が硬化した。硬化後の塗工層の厚みは、3.0μmであった。
以上のようにして、熱可塑性樹脂フィルムと、この熱可塑性樹脂フィルム上に設けられたハードコート層としての塗工層とを備える塗工フィルムを得た。得られた塗工フィルムの欠陥を、上述した評価方法によって評価した。
[実施例2]
有機溶媒Bの種類を、酢酸プロピルからメチルシクロヘキサンに変更した。メチルシクロヘキサンは、熱可塑性樹脂フィルムに含まれる樹脂に対して良溶媒である。
以上の事項以外は、実施例1と同様にして、塗工フィルムの製造及び評価を行った。
有機溶媒Bの種類を、酢酸プロピルからメチルシクロヘキサンに変更した。メチルシクロヘキサンは、熱可塑性樹脂フィルムに含まれる樹脂に対して良溶媒である。
以上の事項以外は、実施例1と同様にして、塗工フィルムの製造及び評価を行った。
[実施例3]
有機溶媒Bの種類を、酢酸プロピルからトルエンに変更した。トルエンは、熱可塑性樹脂フィルムに含まれる樹脂に対して良溶媒である。
以上の事項以外は、実施例1と同様にして、塗工フィルムの製造及び評価を行った。
有機溶媒Bの種類を、酢酸プロピルからトルエンに変更した。トルエンは、熱可塑性樹脂フィルムに含まれる樹脂に対して良溶媒である。
以上の事項以外は、実施例1と同様にして、塗工フィルムの製造及び評価を行った。
[実施例4]
有機溶媒Bの種類を、酢酸プロピルからキシレンに変更した。キシレンは、熱可塑性樹脂フィルムに含まれる樹脂に対して良溶媒である。
以上の事項以外は、実施例1と同様にして、塗工フィルムの製造及び評価を行った。
有機溶媒Bの種類を、酢酸プロピルからキシレンに変更した。キシレンは、熱可塑性樹脂フィルムに含まれる樹脂に対して良溶媒である。
以上の事項以外は、実施例1と同様にして、塗工フィルムの製造及び評価を行った。
[実施例5]
有機溶媒Aの種類を、アセトンから酢酸エチルに変更した。酢酸エチルは、熱可塑性樹脂フィルムに含まれる樹脂に対して貧溶媒である。
また、有機溶媒Bの種類を、酢酸プロピルからトルエンに変更した。
さらに、有機溶媒Aと有機溶媒Bとの重量比を、SA/SB=70/30からSA/SB=65/35に変更した。
以上の事項以外は、実施例1と同様にして、塗工フィルムの製造及び評価を行った。
有機溶媒Aの種類を、アセトンから酢酸エチルに変更した。酢酸エチルは、熱可塑性樹脂フィルムに含まれる樹脂に対して貧溶媒である。
また、有機溶媒Bの種類を、酢酸プロピルからトルエンに変更した。
さらに、有機溶媒Aと有機溶媒Bとの重量比を、SA/SB=70/30からSA/SB=65/35に変更した。
以上の事項以外は、実施例1と同様にして、塗工フィルムの製造及び評価を行った。
[実施例6]
有機溶媒Bの種類を、酢酸プロピルからメチルシクロヘキサンに変更した。
また、有機溶媒Aと有機溶媒Bとの重量比を、SA/SB=70/30からSA/SB=65/35に変更した。
以上の事項以外は、実施例1と同様にして、塗工フィルムの製造及び評価を行った。
有機溶媒Bの種類を、酢酸プロピルからメチルシクロヘキサンに変更した。
また、有機溶媒Aと有機溶媒Bとの重量比を、SA/SB=70/30からSA/SB=65/35に変更した。
以上の事項以外は、実施例1と同様にして、塗工フィルムの製造及び評価を行った。
[比較例1]
有機溶媒Bの種類を、酢酸プロピルからメチルシクロヘキサンに変更した。
また、有機溶媒Aと有機溶媒Bとの重量比を、SA/SB=70/30からSA/SB=75/25に変更した。
以上の事項以外は、実施例1と同様にして、塗工フィルムの製造及び評価を行った。
有機溶媒Bの種類を、酢酸プロピルからメチルシクロヘキサンに変更した。
また、有機溶媒Aと有機溶媒Bとの重量比を、SA/SB=70/30からSA/SB=75/25に変更した。
以上の事項以外は、実施例1と同様にして、塗工フィルムの製造及び評価を行った。
[比較例2]
有機溶媒Aの種類を、アセトンから酢酸エチルに変更した。
また、有機溶媒Bの種類を、酢酸プロピルからメチルシクロヘキサンに変更した。
さらに、熱可塑性樹脂フィルム上に塗工される塗工液の液温Tを、20℃に変更した。
また、塗工室内の温度を調整することにより、塗工室内の露点温度Trを15℃に変更した。
以上の事項以外は、実施例1と同様にして、塗工フィルムの製造及び評価を行った。
有機溶媒Aの種類を、アセトンから酢酸エチルに変更した。
また、有機溶媒Bの種類を、酢酸プロピルからメチルシクロヘキサンに変更した。
さらに、熱可塑性樹脂フィルム上に塗工される塗工液の液温Tを、20℃に変更した。
また、塗工室内の温度を調整することにより、塗工室内の露点温度Trを15℃に変更した。
以上の事項以外は、実施例1と同様にして、塗工フィルムの製造及び評価を行った。
[比較例3]
有機溶媒Aの種類を、アセトンから酢酸エチルに変更した。
また、有機溶媒Bの種類を、酢酸プロピルからトルエンに変更した。
さらに、有機溶媒Aと有機溶媒Bとの重量比を、SA/SB=70/30からSA/SB=75/25に変更した。
以上の事項以外は、実施例1と同様にして、塗工フィルムの製造及び評価を行った。
有機溶媒Aの種類を、アセトンから酢酸エチルに変更した。
また、有機溶媒Bの種類を、酢酸プロピルからトルエンに変更した。
さらに、有機溶媒Aと有機溶媒Bとの重量比を、SA/SB=70/30からSA/SB=75/25に変更した。
以上の事項以外は、実施例1と同様にして、塗工フィルムの製造及び評価を行った。
[結果]
上述した実施例及び比較例の結果を、下記の表3及び表4に示す。下記の表において、略称の意味は、下記のとおりである。
COP:シクロオレフィン重合体。
UA:ウレタンアクリレート。
MCH:メチルシクロヘキサン。
VA:酢酸ブチルの蒸発速度を1とした有機溶媒Aの蒸発速度。
VB:酢酸ブチルの蒸発速度を1とした有機溶媒Bの蒸発速度。
SA:有機溶媒A及び有機溶媒Bの合計100%に対する有機溶媒Aの重量割合。
SB:有機溶媒A及び有機溶媒Bの合計100%に対する有機溶媒Bの重量割合。
CA:20℃における有機溶媒Aの水への溶解度。
CB:20℃における有機溶媒Bの水への溶解度。
T:塗工液の液温。
Tr:塗工室内雰囲気の露点温度。
上述した実施例及び比較例の結果を、下記の表3及び表4に示す。下記の表において、略称の意味は、下記のとおりである。
COP:シクロオレフィン重合体。
UA:ウレタンアクリレート。
MCH:メチルシクロヘキサン。
VA:酢酸ブチルの蒸発速度を1とした有機溶媒Aの蒸発速度。
VB:酢酸ブチルの蒸発速度を1とした有機溶媒Bの蒸発速度。
SA:有機溶媒A及び有機溶媒Bの合計100%に対する有機溶媒Aの重量割合。
SB:有機溶媒A及び有機溶媒Bの合計100%に対する有機溶媒Bの重量割合。
CA:20℃における有機溶媒Aの水への溶解度。
CB:20℃における有機溶媒Bの水への溶解度。
T:塗工液の液温。
Tr:塗工室内雰囲気の露点温度。
[検討]
比較例1〜3においては、いずれも、スジ状の欠陥の数が、塗工フィルムの面積2.6m2当たり5本以上であった。これに対し、実施例1〜6においては、スジ条の欠陥の数が、塗工フィルムの面積2.6m2当たり4本以下であり、特に実施例1〜4及び6では、欠陥の数が面積2.6m2当たり1本以下と大幅な改善が見られた。以上の結果から、本発明の製造方法により、欠陥の発生を抑制しながら塗工フィルムを製造できることが確認された。
比較例1〜3においては、いずれも、スジ状の欠陥の数が、塗工フィルムの面積2.6m2当たり5本以上であった。これに対し、実施例1〜6においては、スジ条の欠陥の数が、塗工フィルムの面積2.6m2当たり4本以下であり、特に実施例1〜4及び6では、欠陥の数が面積2.6m2当たり1本以下と大幅な改善が見られた。以上の結果から、本発明の製造方法により、欠陥の発生を抑制しながら塗工フィルムを製造できることが確認された。
Claims (5)
- 有機溶媒A、有機溶媒B及び溶質を含む塗工液を、熱可塑性樹脂フィルムに塗工して、前記塗工液の層を形成する第一工程と、
前記塗工液の層を乾燥させる第二工程と、をこの順に含む、塗工フィルムの製造方法であって、
20℃における前記有機溶媒Aの水への溶解度CA、
20℃における前記有機溶媒Bの水への溶解度CB、
酢酸ブチルの蒸発速度を1とした前記有機溶媒Aの蒸発速度VA、
酢酸ブチルの蒸発速度を1とした前記有機溶媒Bの蒸発速度VB、
前記有機溶媒A及び前記有機溶媒Bの合計量100%に対する前記有機溶媒Aの重量割合SA、及び、
前記有機溶媒A及び前記有機溶媒Bの合計量100%に対する前記有機溶媒Bの重量割合SBが、下記式(1)〜(4):
CA>CB (1)
VA−VB>1.5 (2)
75%>SA≧50% (3)
50%≧SB>25% (4)
を満たす、塗工フィルムの製造方法。 - 前記溶解度CAが、100g/L以上であり、
前記溶解度CBが、100g/L未満である、請求項1記載の塗工フィルムの製造方法。 - 前記有機溶媒A及び前記有機溶媒Bの両方が、前記熱可塑性樹脂フィルムに対する貧溶媒である、請求項1又は2記載の塗工フィルムの製造方法。
- 前記有機溶媒A及び前記有機溶媒Bの一方が、前記熱可塑性樹脂フィルムに対する貧溶媒であり、
前記有機溶媒A及び前記有機溶媒Bの他方が、前記熱可塑性樹脂フィルムに対する良溶媒である、請求項1又は2記載の塗工フィルムの製造方法。 - 前記熱可塑性樹脂フィルムが、シクロオレフィン重合体を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗工フィルムの製造方法。
Priority Applications (1)
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-
2016
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