JP2008169941A - 車輪用軸受装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 軸受部品の製造に要する時間・エネルギーの低減を図ると共に、転動疲労寿命の向上を図ることができる車輪用軸受装置を提供する。
【解決手段】 外方部材2および内方部材1の少なくともいずれか一方の部材の軌道面のうち表層部分が、熱間鍛造時または熱間鍛造後に局所的に冷却されて調質処理が施され、さらに、これら外方部材2および内方部材1の軌道面8,9,6の表層部分に高周波熱処理が施された処理層が設けられる。
【選択図】 図1
【解決手段】 外方部材2および内方部材1の少なくともいずれか一方の部材の軌道面のうち表層部分が、熱間鍛造時または熱間鍛造後に局所的に冷却されて調質処理が施され、さらに、これら外方部材2および内方部材1の軌道面8,9,6の表層部分に高周波熱処理が施された処理層が設けられる。
【選択図】 図1
Description
この発明は、例えば、自動車用等の車輪用軸受装置に関し、詳しくは軌道面の表層部分の熱処理後組織を微細化することにより、転動疲労寿命の向上を図った車輪用軸受装置に関する。
ボールタイプのハブベアリングの内輪と鋼球は、SUJ2等の高炭素クロム鋼で作られ、焼入れ・焼き戻しにより芯まで硬化されている。円錐ころタイプでは、SCr435等の肌焼鋼を内輪、円錐ころに使用し、浸炭熱処理等で表面が硬化されているものもある。
一方、車体取付フランジや車輪取付フランジのある外輪、ハブ輪は、その形状を鍛造で作るため、成形しやすさの点等からS53C等の中高炭素鋼で作られ、旋削後の高周波熱処理により軌道面等の一部の表面のみを50HRC以上64HRC以下(軌道面・ハブ輪のシールランドは58HRC以上64HRC以下、ハブ輪軸部の内輪嵌合部等は50HRC以上)に硬化処理されている。
一方、車体取付フランジや車輪取付フランジのある外輪、ハブ輪は、その形状を鍛造で作るため、成形しやすさの点等からS53C等の中高炭素鋼で作られ、旋削後の高周波熱処理により軌道面等の一部の表面のみを50HRC以上64HRC以下(軌道面・ハブ輪のシールランドは58HRC以上64HRC以下、ハブ輪軸部の内輪嵌合部等は50HRC以上)に硬化処理されている。
この高周波熱処理は、次のような(1)〜(6)の点で時間・エネルギーの節約、機能面の長所が多い(例えば、非特許文献1)。
(1)熱処理箇所をコントロールできる
(2)表面硬さが高く優れた耐摩耗性・疲れ強さが得られる
(3)表面残留圧縮応力が大きく優れた疲れ強さが得られる
(4)脱炭がほとんど無い
(5)熱処理の酸化スケールが少ない
(6)短時間加熱であるためオーステナイト粒が成長しにくく組織の微細であり優れた靭性が得られる。
特開2005−3061号公報
熱処理技術便覧(日本熱処理技術協会編、日刊工業新聞社発行、第181頁〜第195頁)
(1)熱処理箇所をコントロールできる
(2)表面硬さが高く優れた耐摩耗性・疲れ強さが得られる
(3)表面残留圧縮応力が大きく優れた疲れ強さが得られる
(4)脱炭がほとんど無い
(5)熱処理の酸化スケールが少ない
(6)短時間加熱であるためオーステナイト粒が成長しにくく組織の微細であり優れた靭性が得られる。
前述の高周波熱処理は、短時間の加熱であるが故に、熱処理を行う場所の熱処理前組織、炭素や合金元素の分布の不均一さが焼入れ組織の特性に反映されやすいことが知られている(非特許文献1、第183頁参照)。この短時間加熱のためオーステナイト化時間が短く、オーステナイト化が悪いと、次のような(1)〜(3)の問題点が現れる。
(1)不完全な組織になる
(2)焼入れ後の硬さがばらつく
(3)有効硬化層深さが浅くなる
オーステナイト化しやすい組織としては、調質(焼入れ焼き戻し)組織のいわゆる焼戻マルテンサイト組織が挙げられる(非特許文献1、第187頁〜第188頁参照)。通常のハブベアリングでは、鍛造のままで高周波熱処理されるため、組織はフェライト・パーライト組織であり、焼戻マルテンサイト組織ほど高周波熱処理に適してはいない。
(1)不完全な組織になる
(2)焼入れ後の硬さがばらつく
(3)有効硬化層深さが浅くなる
オーステナイト化しやすい組織としては、調質(焼入れ焼き戻し)組織のいわゆる焼戻マルテンサイト組織が挙げられる(非特許文献1、第187頁〜第188頁参照)。通常のハブベアリングでは、鍛造のままで高周波熱処理されるため、組織はフェライト・パーライト組織であり、焼戻マルテンサイト組織ほど高周波熱処理に適してはいない。
先の問題点を解消するため、より長い時間、より高出力での加熱を行うと、加熱部分が過熱し組織(結晶粒)の粗大化、過熱部分の微小亀裂の発生を起こすことがあり、その場合は軸受の転動寿命に悪影響を及ぼす。特に、ボールタイプのハブベアリングの外輪軌道溝の肩部は、凸形状となっており高周波誘導加熱のエネルギーが集中しやすいうえ、車両の旋回走行時に軸受が傾き、外輪軌道溝の肩部を転動体が高面圧で転がるため、組織(結晶粒)の粗大化や過熱部分の微小亀裂による転動寿命の低下が現れやすかった。また、JISの結晶粒度番号で「2」乃至「3」程度にまで粗粒化してしまう場合もあった。
前記組織の調整として、焼準や調質を行うことで対策することができるが(例えば、特許文献1)、熱処理の加熱の工程が1回(焼準)または2回(調質)行われるため、時間とエネルギーが必要となっていた。
前記組織の調整として、焼準や調質を行うことで対策することができるが(例えば、特許文献1)、熱処理の加熱の工程が1回(焼準)または2回(調質)行われるため、時間とエネルギーが必要となっていた。
この発明の目的は、軸受部品の製造に要する時間・エネルギーの低減を図ると共に、転動疲労寿命の向上を図ることができる車輪用軸受装置を提供することである。
この発明の車輪用軸受装置は、内周に複列の軌道面を有する外方部材と、前記軌道面に対向する複列の軌道面を外周に有する内方部材と、これら外方部材と内方部材の軌道面間に介在した複列の転動体とを備え、前記外方部材および前記内方部材が熱間鍛造されたものである車輪用軸受装置において、前記外方部材および内方部材の少なくともいずれか一方の部材の軌道面のうち表層部分が、前記熱間鍛造時または前記熱間鍛造後に局所的に冷却されて調質処理が施され、さらに、これら外方部材および内方部材の軌道面の表層部分に高周波熱処理が施された処理層が設けられたことを特徴とする。
この構成によると、軌道面のうち表層部分が、熱間鍛造時または熱間鍛造後に局所的に冷却されて調質処理が施されることで、非標準組織を得ることができる。この非標準組織とは、(1)焼戻マルテンサイト組織(調質組織)、(2)上部ベイナイト組織,下部ベイナイト組織、(3)微細フェライト・パーライト組織(焼準組織)、(4)前記(1)〜(3)の2つ以上の混合組織、のうちのいずれか一つと同義である。このような非標準組織つまり表層部分に、高周波熱処理を施すことで、この熱処理後組織を微細化し、転動疲労寿命の向上を図ることができる。また、従来技術のものより、軸受部品の製造に要する時間・エネルギーの低減を図ることが可能となる。
この発明において、前記高周波熱処理が施された処理層は、結晶粒度番号が8番以上であることが好ましい。この結晶粒度とは、顕微鏡観察断面で表された結晶粒の大きさと同義であり、これを比較法または切断法によって求めた結晶粒度番号で表す。この結晶粒度番号は、日本工業規格(略称JIS)に規定されている。
高周波熱処理が施された処理層の結晶粒度を結晶粒度番号で8番以上とする場合、旧オーステナイトの結晶の粒界に生じる応力集中が緩和される。これにより、疲労亀裂が開口し難くなり、転動疲労寿命の低下を抑制することが可能となる。逆に、処理層の結晶粒度を結晶粒度番号で8番未満とする場合、旧オーステナイトの結晶粒界への応力集中を緩和する効果が小さい。
高周波熱処理が施された処理層の結晶粒度を結晶粒度番号で8番以上とする場合、旧オーステナイトの結晶の粒界に生じる応力集中が緩和される。これにより、疲労亀裂が開口し難くなり、転動疲労寿命の低下を抑制することが可能となる。逆に、処理層の結晶粒度を結晶粒度番号で8番未満とする場合、旧オーステナイトの結晶粒界への応力集中を緩和する効果が小さい。
この発明において、前記処理層が設けられた軌道面の表面硬さを、58HRC以上64HRC以下にすることが好ましい。この場合、旧オーステナイトの結晶の粒界に生じる応力集中が緩和され、疲労亀裂が開口し難くなり、転動疲労寿命の向上を図ることができる。また、軌道面の表面硬さに基づいて、容易に寿命判定することができる。
この発明の車輪用軸受装置は、軌道面のうち表層部分が、熱間鍛造時または熱間鍛造後に局所的に冷却されて、非標準組織を得ることができる。この非標準組織に高周波熱処理を施すことで、この熱処理後組織を微細化し、転動疲労寿命の向上を図ることができる。また、従来技術のものより、軸受部品の製造に要する時間・エネルギーの低減を図ることが可能となる。
この発明の一実施形態を図1ないし図6と共に説明する。図1は車輪用軸受装置の一例を示しており、この例は第3世代型の従動輪支持用に適用するものである。以下の説明は、車輪用軸受装置の製造方法についての説明をも含む。この車輪用軸受装置は、複列の転動体3を介して互いに回転自在な内方部材1および外方部材2を有し、転動体3は各列毎に保持器4により保持されている。ここで言う複列とは、2列以上のことを言い、3列以上であっても良いが、図示の例では2列とされている。内方部材1および外方部材2は、それぞれ複列の軌道面6,7および軌道面8,9を有している。この車輪用軸受装置は、複列アンギュラ玉軸受型とされていて、転動体3はボールからなり、軌道面6,7は、接触角が外向きとなるように形成されている。内方部材1と外方部材2との間の軸受空間の両端は、シール10,11により密封されている。
外方部材2は、全体が一体の一つの部品からなり、幅方向の任意の位置に車体取付用フランジ12が設けられている。外方部材2の車体取付用フランジ12よりもインボード側の外径面部分は、車体の懸架装置となるナックル(図示せず)が嵌合する面となる。なお、この明細書で、車体に取付けた状態で車幅方向の外側寄りとなる側をアウトボード側と呼び、車幅方向の中央寄りとなる側をインボード側と呼ぶ。車体取付用フランジ12の円周方向の複数箇所には、ボルト挿通孔またはねじ孔からなる車体取付孔13が設けられている。
内方部材1は、ハブ輪14と、このハブ輪14の軸部14aのインボード側端の外周に嵌合した内輪15との2つの部品で構成される。これらハブ輪14および内輪15に、内方部材1側の上記各軌道面6,7がそれぞれ形成されている。ハブ輪14の軸部14aの外周におけるインボード側端には、段差を持って小径となる内輪嵌合面16が設けられ、この内輪嵌合面16に内輪15が嵌合している。内輪15は、ハブ輪14の軸部14aのインボード側端を外径側へ加締めた加締部14bによって、ハブ輪14に対して軸方向に固定されている。
ハブ輪14は、軸部14aのアウトボード側端の外周に車輪取付用フランジ17を有しており、この車輪取付用フランジ17の円周方向複数箇所に設けられた各ボルト圧入孔18に、ハブボルト19が圧入状態に取付けられている。ハブ輪14の車輪取付用フランジ17の根元部からは、ハブ輪14と同心の円環状のパイロット部20が突出している。このパイロット部20は、車輪取付用フランジ17のアウトボード側の側面に重ねて取付けられるブレーキディスクおよび車輪のホイールを案内する部分を有する。なお、パイロット部20は、円周方向複数箇所に切欠が設けられて複数個に分割されたものであっても良い。
ハブ輪14、内輪15、および外方部材2は、いずれも鋼材の熱間鍛造品であり、これらのうちハブ輪14の軌道面6の外周における表層部分、および外方部材2の複列の軌道面8,9の内周における表層部分が、非標準組織の部分6H,8H,9Hとされている。
ハブ輪14の母材部分、および外方部材2の母材部分は、標準組織である。また、内輪15は全体を焼入焼戻しにより硬化されている。非標準組織部分6H,8H,9Hの非標準組織は、熱間鍛造工程の途中または最後に、冷媒を浴びせることで、ハブ輪14、および外方部材2を局部的に冷却することなどで得た組織であり、例えば、微細フェライト・パーライト組織、上部ベイナイト組織、下部ベイナイト組織、焼戻マルテンサイト組織のうちのいずれか、もしくは少なくともこれらの組織のうちの2種類以上の混合組織とされる。
ハブ輪14の母材部分、および外方部材2の母材部分は、標準組織である。また、内輪15は全体を焼入焼戻しにより硬化されている。非標準組織部分6H,8H,9Hの非標準組織は、熱間鍛造工程の途中または最後に、冷媒を浴びせることで、ハブ輪14、および外方部材2を局部的に冷却することなどで得た組織であり、例えば、微細フェライト・パーライト組織、上部ベイナイト組織、下部ベイナイト組織、焼戻マルテンサイト組織のうちのいずれか、もしくは少なくともこれらの組織のうちの2種類以上の混合組織とされる。
図2は、ハブ輪14の製造工程のうち熱間鍛造工程を示す。図2(a)に示すように、ハブ輪14はバー材W0からなり、このバー材W0を定寸に切断することで、図2(b)に示すように、ハブ輪14の1個分の素材となるビレットW1が準備される。このビレットW1は、熱間鍛造の工程として、複数の工程、ここでは鍛造1パスW2(同図(c))、鍛造2パスW3(同図(d))、鍛造3パスを経て、次第にハブ輪14の形状に近づけ、最終鍛造工程(鍛造3パス)で、ハブ輪14のおおまかな形状となる鍛造仕上がりの素材W4を得る(同図(c)〜(e))。
図3は、外方部材2の製造工程のうち熱間鍛造工程を示す。
図3(a)に示すように、外方部材2はバー材GW0からなり、このバー材GW0を定寸に切断することで、図3(b)に示すように、外方部材2の1個分の素材となるビレットGW1が準備される。このビレットGW1は、熱間鍛造の工程として、複数の工程、ここでは鍛造1パスGW2、鍛造2パスGW3、鍛造3パスを経て、次第に外方部材2の形状に近づけ、最終鍛造工程(鍛造3パス)で、外方部材2のおおまかな形状となる鍛造仕上がりの素材GW4を得る(同図(c)〜(e))。
図3(a)に示すように、外方部材2はバー材GW0からなり、このバー材GW0を定寸に切断することで、図3(b)に示すように、外方部材2の1個分の素材となるビレットGW1が準備される。このビレットGW1は、熱間鍛造の工程として、複数の工程、ここでは鍛造1パスGW2、鍛造2パスGW3、鍛造3パスを経て、次第に外方部材2の形状に近づけ、最終鍛造工程(鍛造3パス)で、外方部材2のおおまかな形状となる鍛造仕上がりの素材GW4を得る(同図(c)〜(e))。
図4は、ハブ輪14の熱間鍛造後の製造工程を示す。図1も参照しつつ説明する。
ハブ輪14のおおまかな形状となる鍛造仕上がりの素材W4は、図4(a)に示すように旋削される。次に、図4(b)に示すように、旋削後素材W4のうち、シール接触面41、軌道面6、この軌道面6近傍の周面部分14c、内輪嵌合面16における軸方向を向く段面16a、およびその近傍の周面部分16b等が高周波熱処理される。この後、軌道面6などの研削が行われる。必要なものは、研削の前に車輪取付用フランジ17の表面等の二次旋削が行われる。
ハブ輪14のおおまかな形状となる鍛造仕上がりの素材W4は、図4(a)に示すように旋削される。次に、図4(b)に示すように、旋削後素材W4のうち、シール接触面41、軌道面6、この軌道面6近傍の周面部分14c、内輪嵌合面16における軸方向を向く段面16a、およびその近傍の周面部分16b等が高周波熱処理される。この後、軌道面6などの研削が行われる。必要なものは、研削の前に車輪取付用フランジ17の表面等の二次旋削が行われる。
図5は、外方部材2の熱間鍛造後の製造工程を示す。図1も参照しつつ説明する。
外方部材2の鍛造仕上がりの素材GW4は旋削される(図5(a))。次に、図5(b)に示すように、旋削後素材GW4のうち、軌道面8,9が高周波熱処理され、この後、必要に応じて車体取付用フランジ12の表面等の二次旋削が行われる。次に、軌道面8,9などの研削が行われる。その後、軌道面6などの研削後のハブ輪14、軌道面8,9などの研削後の外方部材2は、車輪用軸受装置として組み立てられる(図4(c))。
外方部材2の鍛造仕上がりの素材GW4は旋削される(図5(a))。次に、図5(b)に示すように、旋削後素材GW4のうち、軌道面8,9が高周波熱処理され、この後、必要に応じて車体取付用フランジ12の表面等の二次旋削が行われる。次に、軌道面8,9などの研削が行われる。その後、軌道面6などの研削後のハブ輪14、軌道面8,9などの研削後の外方部材2は、車輪用軸受装置として組み立てられる(図4(c))。
ハブ輪14の前記非標準組織の部分6Hは、図2(e)に示すように、鍛造工程の終了時に、改質対象箇所に冷媒(矢符RBで表記)を部分的に吹き付けることにより改質され、または図2(d)に示すように、最終鍛造工程(鍛造3パス)の前の鍛造工程(鍛造2パス)の終了後に、改質対象箇所に冷媒を部分的に吹き付けることにより改質される。
外方部材2の前記非標準組織の部分8H、9Hは、図3(e)に示すように、鍛造工程の終了時に、改質対象箇所に冷媒を部分的に吹き付けることにより改質され、または図3(d)に示すように、最終鍛造工程(鍛造3パス)の前の鍛造工程(鍛造2パス)の終了後に、改質対象箇所に冷媒を部分的に吹き付けることにより改質される。
外方部材2の前記非標準組織の部分8H、9Hは、図3(e)に示すように、鍛造工程の終了時に、改質対象箇所に冷媒を部分的に吹き付けることにより改質され、または図3(d)に示すように、最終鍛造工程(鍛造3パス)の前の鍛造工程(鍛造2パス)の終了後に、改質対象箇所に冷媒を部分的に吹き付けることにより改質される。
冷媒は、液体、そのミストや気体、例えば、油、または低温エアー等が用いられる。また、冷媒には、用途に応じて、潤滑剤、メディア、防錆剤などを混入し、素材の潤滑・離型効果、金型の摩耗防止、冷却効果、鍛造後のショットブラスト等によるスケール落としの省略、防錆効果等を得るようにしても良い。
冷媒の吹き付け時は、全周に均一に冷却が行われるように、ハブ輪14となる素材W3,W4、外方部材2となる素材GW3,GW4を、各素材の軸心回りに回転させながら、冷媒を吹き付けても良い。また、素材W3,W4、GW3,GW4は回転させずに、冷媒吹付け装置(図示せず)を回転させても良い。
冷媒の吹き付けは、噴出し孔を多数開けたリング状の冷却ジャケット(図示せず)を使用しても良いし、またハブ輪14となる素材W3,W4、外方部材2となる素材GW3,GW4を回転させるのであれば、1箇所のノズルから吹き付けるものであっても良い。
冷媒の吹き付けは、噴出し孔を多数開けたリング状の冷却ジャケット(図示せず)を使用しても良いし、またハブ輪14となる素材W3,W4、外方部材2となる素材GW3,GW4を回転させるのであれば、1箇所のノズルから吹き付けるものであっても良い。
冷却時に、ハブ輪14となる素材W3,W4、外方部材2となる素材GW3,GW4を回転させる場合は、縦軸,横軸のどちらでも良い。また、冷媒の噴出し方向も、回転縦軸のときに上向き,下向きのいずれとしても良く、回転横軸のときに横向きの他、いずれの方向としても良い。
冷却時の素材W3,W4、素材GW3,GW4の保持方法は、冷却部が均一に冷却されるのを阻害しなければ良い。例えば、軸部14aの保持、車輪取付用フランジ17の外径部の保持、パイロット部20の外径部または内径部の保持等としても良い。ハブ輪14が、後に図8と共に説明する駆動輪用のように中心に貫通孔を有するものである場合は、この貫通孔をガイドとしてセンタリング保持するようにしても良い。
冷却により、非標準組織部分6H,8H,9Hの組織を、前記微細フェライト・パーライト組織、上部ベイナイト組織、下部ベイナイト組織、焼戻マルテンサイト組織のうちのいずれか、もしくは少なくともこれらの組織のうちの2種類以上の混合組織にするかは、図6と共に示すように、冷却方法によって選択することができる。
図6において、横軸は時間の経過を、縦軸は温度を示す。図中のA3 は、A3 変態点となる温度、A1 はA1 変態点となる温度である。Ms はマルテンサイト・スタート・ポイント(以下「Ms 点」と称す)であり、Mf はマルテンサイト・フィニッシュ・ポイント(以下「Mf 点」と称す)である。
素材となる鋼材は、例えばS53C等のC量が0.4〜0.8%の炭素鋼である。
図6において、横軸は時間の経過を、縦軸は温度を示す。図中のA3 は、A3 変態点となる温度、A1 はA1 変態点となる温度である。Ms はマルテンサイト・スタート・ポイント(以下「Ms 点」と称す)であり、Mf はマルテンサイト・フィニッシュ・ポイント(以下「Mf 点」と称す)である。
素材となる鋼材は、例えばS53C等のC量が0.4〜0.8%の炭素鋼である。
図6において、曲線(0) に示すように、部品を鍛造温度T1(A3 変態点よりも高い)から単に空冷すると、従来の鍛造による組織である標準組織、すなわちフェライト・パーライト組織となる。
曲線(1) は、非標準組織として微細フェライト・パーライト組織を得る場合の冷却曲線である。熱間鍛造工程の最後、つまり熱間鍛造を終えて冷却されるまでの間に、図2(e)(または図2(d)),図3(e)(または図3(d))のように冷媒を浴びせることで改質対象の部品(素材)を部分的に冷却し、冷却時間を制限して、冷却後に自己復熱させることにより、前記非標準組織として微細フェライト・パーライト組織が得られる。微細フェライト・パーライト組織は、焼準によって得られる組織、つまり焼準組織である。
曲線(2) は、非標準組織として微細フェライト・パーライト組織を得る場合の別の冷却曲線を示す。この場合、図2、図3のように熱間鍛造工程が複数段階の鍛造工程からなるときに、最終段階の鍛造工程(図2(e),図3(e))の前(図2(d),図3(d))に部品(素材W3、GW3)の一部の冷却を行い、その後に最終段階の鍛造工程(図2(e),図3(e))を行う。最終鍛造工程は、前記冷却の後の自己復熱の途中などで行われる。これにより、冷却後に鍛造工程の一つが加わることで、動的な歪みが与えられ、微細フェライト・パーライト組織が得られる。
曲線(3) ,(4) は、それぞれ非標準組織として、調質組織である焼戻マルテンサイト組織を得る場合の冷却曲線を示す。熱間鍛造工程の最後に部品を部分的にMs 点以下でMf 点以上の範囲まで冷却し、その後、所定温度範囲内で復熱焼戻しを行うことで、非標準組織として調質組織、すなわち焼戻マルテンサイト組織が得られる。復熱焼戻しの温度を約500℃以上600℃以下程度とすると、組織はソルバイトとなる。復熱焼戻しの温度を約350℃以上400℃以下程度とすると、組織はトルースタイトとなる。
曲線(5) ,(6) は、それぞれ非標準組織として上部ベイナイトおよび下部ベイナイトを得る場合の冷却曲線を示す。熱間鍛造工程の最後に、制御冷却として、焼入れの冷却速度(マルテンサイトが生成する冷却速度)よりややゆっくり冷却することで、組織は上部ベイナイトとなる。この冷却速度よりもさらにゆっくりとした冷却速度の焼入れを行うと、組織は下部ベイナイトとなる。
なお、図6では各種の冷却方法を述べたが、図1の例におけるハブ輪14のシール接触面41や内輪嵌合面16付近に非標準組織の部分を設ける場合は、図6の各曲線(1) 〜 (6) で示す冷却方法のうち、冷却曲線(3),(4) に示す方法、または冷却曲線(5) (6) に示す方法が好ましい。ハブ輪14の軌道面6に非標準組織の部分を設ける場合、冷却曲線(3),(4) に示す方法で焼戻マルテンサイト組織を得るものが最も好ましい。
この構成の車輪用軸受装置によると、次の作用効果が得られる。
ハブ輪14の軌道面6の外周における表層部分6H、および外方部材2の複列の軌道面8,9の内周における表層部分8H,9Hを非標準組織とし、その非標準組織を、微細フェライト・パーライト組織、上部ベイナイト組織、下部ベイナイト組織、焼戻マルテンサイト組織のうちのいずれか、もしくは少なくともこれらの組織のうちの2種類以上の混合組織とした。この非標準組織に高周波熱処理を施すことで、この熱処理後組織を、標準組織からなる母材部分(または標準組織を高周波熱処理したもの)に比べて微細化し、転動疲労寿命の向上を図ることができる。
例えば、非標準組織が図6の冷却曲線(3),(4) に示す焼戻マルテンサイト組織(ソルバイト)の場合、このソルバイトを高周波熱処理することで、硬化層としてより微細なマルテンサイトを得ることができる。
ハブ輪14の軌道面6の外周における表層部分6H、および外方部材2の複列の軌道面8,9の内周における表層部分8H,9Hを非標準組織とし、その非標準組織を、微細フェライト・パーライト組織、上部ベイナイト組織、下部ベイナイト組織、焼戻マルテンサイト組織のうちのいずれか、もしくは少なくともこれらの組織のうちの2種類以上の混合組織とした。この非標準組織に高周波熱処理を施すことで、この熱処理後組織を、標準組織からなる母材部分(または標準組織を高周波熱処理したもの)に比べて微細化し、転動疲労寿命の向上を図ることができる。
例えば、非標準組織が図6の冷却曲線(3),(4) に示す焼戻マルテンサイト組織(ソルバイト)の場合、このソルバイトを高周波熱処理することで、硬化層としてより微細なマルテンサイトを得ることができる。
また、非標準組織に高周波熱処理を施した処理層のうち、軌道面6,8,9の表面硬さを、58HRC以上64HRC以下にしている。この箇所は、日本工業規格(略称JIS)結晶粒度番号で8番以上に相当する。結晶粒度とは、顕微鏡観察断面で表された結晶粒の大きさと同義であり、これを比較法または切断法によって求めた結晶粒度番号Nで表している。ここで結晶粒度番号Nとは、対象物を倍率100倍で観察したときに断面積1mm2あたりの結晶粒の数mを用いて、m=8×2Nから定義される。
高周波熱処理が施された処理層の結晶粒度を結晶粒度番号で8番以上とする場合、旧オーステナイトの結晶の粒界に生じる応力集中が緩和される。これにより、疲労亀裂が開口し難くなり、転動疲労寿命の低下を抑制することが可能となる。逆に、処理層の結晶粒度を結晶粒度番号で8番未満とする場合、旧オーステナイトの結晶粒界への応力集中を緩和する効果が小さい。
また、前記処理層が設けられた軌道面6,8,9の表面硬さを、58HRC以上64HRC以下にする場合、前記と同様に、旧オーステナイトの結晶の粒界に生じる応力集中が緩和され、疲労亀裂が開口し難くなり、転動疲労寿命の低下を抑制することが可能となる。また、軌道面の表面硬さに基づいて、容易に寿命判定することができる。したがって、部品の品質管理を簡単化できる。
また、前記処理層が設けられた軌道面6,8,9の表面硬さを、58HRC以上64HRC以下にする場合、前記と同様に、旧オーステナイトの結晶の粒界に生じる応力集中が緩和され、疲労亀裂が開口し難くなり、転動疲労寿命の低下を抑制することが可能となる。また、軌道面の表面硬さに基づいて、容易に寿命判定することができる。したがって、部品の品質管理を簡単化できる。
また、この構成の車輪用軸受装置によると、転動疲労寿命の低下を抑制することが可能となるので、通常の標準組織の車輪用軸受装置に比べて、小型化、および軽量化が図れる。したがって、車輪用軸受装置の製品製作の投入重量が削減されて、コストの削減が図れ、安価に提供することが可能となる。
前記非標準組織の部分6H,8H,9Hは、熱間鍛造の工程中または工程の最後に冷却することで得られるため、簡易な処理の追加で済み、工程増による生産性の低下が抑えられる。例えば、部品全体の焼準や調質を行う場合に比べて、工程が簡略化できる。また、熱間鍛造の熱を利用するため、別の熱源等を準備する必要がなく、組織の改質のための処理に用いるエネルギが削減できる。また、高周波熱処理は主に軌道面であり処理範囲が少ないため、消費電力が少なくて済む。また、複数のハブ輪14、複数の外方部材2を軸方向に重ねて高周波熱処理する場合、単位時間当たりの処理個数を高め、工数の低減を図ることが可能となる。したがって、製造コストの低減を図ることができる。
前記非標準組織とする部分6H,8H,9Hは、ハブ輪14の一部、外方部材2の一部であるため、被削性などの加工性の低下が最小限に抑えられ、また加締部14bは標準組織の状態で残すため、加締加工性が低下することが回避される。
前記非標準組織とする部分6H,8H,9Hは、ハブ輪14の一部、外方部材2の一部であるため、被削性などの加工性の低下が最小限に抑えられ、また加締部14bは標準組織の状態で残すため、加締加工性が低下することが回避される。
図7に示す本発明の実施形態は、第2世代型の車輪用軸受装置の一例であり、従動輪支持、外輪回転用としたものである。
以下の説明においては、各形態で先行する形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
以下の説明においては、各形態で先行する形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
内方部材1は複列の内輪15からなる。外方部材2は、車輪取付用フランジ17およびパイロット部20を有している。
この実施形態では、外方部材2の複列の軌道面8,9の内周における表層部分8H,9Hを非標準組織とし、その非標準組織を、微細フェライト・パーライト組織、上部ベイナイト組織、下部ベイナイト組織、焼戻マルテンサイト組織のうちのいずれか、もしくは少なくともこれらの組織のうちの2種類以上の混合組織とした。この非標準組織に高周波熱処理を施すことで、この熱処理後組織を、標準組織からなる母材部分(または標準組織を高周波熱処理したもの)に比べて微細化し、転動疲労寿命の向上を図ることができる。また、複数の外方部材2を軸方向に重ねて高周波熱処理する場合、単位時間当たりの処理個数を高め、工数の低減を図ることが可能となる。したがって、製造コストの低減を図ることができる。その他、図1に示す実施形態と同様の効果を奏する。
この実施形態では、外方部材2の複列の軌道面8,9の内周における表層部分8H,9Hを非標準組織とし、その非標準組織を、微細フェライト・パーライト組織、上部ベイナイト組織、下部ベイナイト組織、焼戻マルテンサイト組織のうちのいずれか、もしくは少なくともこれらの組織のうちの2種類以上の混合組織とした。この非標準組織に高周波熱処理を施すことで、この熱処理後組織を、標準組織からなる母材部分(または標準組織を高周波熱処理したもの)に比べて微細化し、転動疲労寿命の向上を図ることができる。また、複数の外方部材2を軸方向に重ねて高周波熱処理する場合、単位時間当たりの処理個数を高め、工数の低減を図ることが可能となる。したがって、製造コストの低減を図ることができる。その他、図1に示す実施形態と同様の効果を奏する。
図8に示す本発明の実施形態は、第2世代型の車輪用軸受装置の一例であり、駆動輪支持用の円すいころ軸受型のものであって、内方部材1が、ハブ輪14と、このハブ輪14の軸部14aの外周に嵌合した複列の内輪15とからなる。内輪15は各列毎に設けられている。外方部材2Aは、一つの部品からなる。
この実施形態でも、外方部材2Aの複列の軌道面8,9の内周における表層部分8H,9Hを非標準組織とし、その非標準組織を、微細フェライト・パーライト組織、上部ベイナイト組織、下部ベイナイト組織、焼戻マルテンサイト組織のうちのいずれか、もしくは少なくともこれらの組織のうちの2種類以上の混合組織とした。この非標準組織に高周波熱処理を施すことで、この熱処理後組織を、標準組織からなる母材部分(または標準組織を高周波熱処理したもの)に比べて微細化し、転動疲労寿命の向上を図ることができる。その他、図1、図7に示す実施形態と同様の効果を奏する。
図9に示す本発明の実施形態は、第4世代型の車輪用軸受装置の一例であり、内方部材1が、ハブ輪14と、等速ジョイント31の一方の継手部材である継手外輪32とで構成され、ハブ輪14および継手外輪32に各列の軌道面6,7が形成されている。外方部材2は一つの部品からなり、車体取付用フランジ12を有している。
この実施形態では、外方部材2の複列の軌道面8,9の内周における表層部分8H,9H、およびハブ輪14および継手外輪32に各列の軌道面6,7の内周における表層部分6H,7Hを非標準組織としている。その非標準組織を、微細フェライト・パーライト組織、上部ベイナイト組織、下部ベイナイト組織、焼戻マルテンサイト組織のうちのいずれか、もしくは少なくともこれらの組織のうちの2種類以上の混合組織とした。この非標準組織に高周波熱処理を施すことで、この熱処理後組織を、標準組織からなる母材部分(または標準組織を高周波熱処理したもの)に比べて微細化し、転動疲労寿命の向上を図ることができる。その他、図1、図7および図8に示す実施形態と同様の効果を奏する。
なお、前記各実施形態は、いずれも内方部材1または外方部材2を構成する部品の表面に部分的に非標準組織の部分を設けるようにしたが、これら内方部材1または外方部材2を構成する部品、例えばハブ輪14や、外方部材2等の表面の全体を非標準組織の部分とすることも可能である。また、前記各実施形態で、熱間鍛造工程の最後を冷却することで得られるとしたものは通常の熱間鍛造品を加熱したものを冷却しても良い。
1…内方部材
2…外方部材
3…転動体
6〜9…軌道面
6H,8H,9H…非標準組織部分
14…ハブ輪
2…外方部材
3…転動体
6〜9…軌道面
6H,8H,9H…非標準組織部分
14…ハブ輪
Claims (3)
- 内周に複列の軌道面を有する外方部材と、前記軌道面に対向する複列の軌道面を外周に有する内方部材と、これら外方部材と内方部材の軌道面間に介在した複列の転動体とを備え、前記外方部材および前記内方部材が熱間鍛造されたものである車輪用軸受装置において、
前記外方部材および内方部材の少なくともいずれか一方の部材の軌道面のうち表層部分が、前記熱間鍛造時または前記熱間鍛造後に局所的に冷却されて調質処理が施され、さらに、これら外方部材および内方部材の軌道面の表層部分に高周波熱処理が施された処理層が設けられたことを特徴とする車輪用軸受装置。 - 請求項1において、前記高周波熱処理が施された処理層は、結晶粒度番号が8番以上である車輪用軸受装置。
- 請求項1または請求項2において、前記処理層が設けられた軌道面の表面硬さを、58HRC以上64HRC以下にした車輪用軸受装置。
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| JP2007004668A JP2008169941A (ja) | 2007-01-12 | 2007-01-12 | 車輪用軸受装置 |
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2007
- 2007-01-12 JP JP2007004668A patent/JP2008169941A/ja active Pending
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