JP2005002375A - 放電表面処理用電極及び放電表面処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】放電表面処理により形成される被膜の機械的性質を向上する。
【解決手段】金属粉末または金属の化合物の粉末,あるいはセラミックスの粉末を圧縮成形した圧粉体を電極として加工液中及び気中において電極とワークの間にパルス状の放電を発生させ,そのエネルギーにより,ワーク表面に電極材料あるいは電極材料が放電エネルギーにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理において,放電表面処理用電極として、圧粉体電極の材料としてカーボンナノチューブを所定量混入した。
【選択図】 図2
【解決手段】金属粉末または金属の化合物の粉末,あるいはセラミックスの粉末を圧縮成形した圧粉体を電極として加工液中及び気中において電極とワークの間にパルス状の放電を発生させ,そのエネルギーにより,ワーク表面に電極材料あるいは電極材料が放電エネルギーにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理において,放電表面処理用電極として、圧粉体電極の材料としてカーボンナノチューブを所定量混入した。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属粉末あるいは金属の化合物の粉末、あるいは、セラミックスの粉末を圧縮成形した圧粉体、もしくは、該圧粉体を加熱処理した圧粉体を電極として加工液中および気中において電極とワークの間にパルス状の放電を発生させ、そのエネルギーにより、ワーク表面に電極材料あるいは電極材料が放電エネルギーにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の放電表面の方法は、電極材質と、加工液中成分が放電による熱で分解してできた炭素Cとが反応して硬質の炭化物の被膜をワーク上に形成するものである。
その手法としては、電極材質に炭素系の材料を混合させることにより、電極内部での金属と炭素を反応させることにより硬質炭化物被膜を加工液(水)中で形成する技術が、国際公開番号WO99/47730号公報に記載されている。(特許文献1)
【0003】
この国際公開番号WO99/47730号公報には、電極中に炭素の供給源として放電エネルギーにより炭素を発生する材料、例えばエポキシ系接着剤を混合する。
このエポキシ系接着剤などの物質は、炭素原子Cと水素原子H、酸素原子Oなどからなる物質であり、放電エネルギーにより分解された水素原子は主に水H2O或いは水素ガスH2に、酸素原子は水H2O、二酸化炭素CO2に、炭素原子は、二酸化炭素CO2、炭素Cになる。
ここで生成した炭素Cが電極中のチタンTiと反応し、硬質の被膜炭化チタンTiCを形成する。
【0004】
また、非導電性セラミックスだけで電極を形成しても放電を発生できないため、非導電性セラミックスの粉末と導電性の粉末を混合して成形した電極で放電表面処理を行い、非導電性セラミックスを含んだ被膜を形成する技術が、特開平7−197275号公報に示されている。
導電性の粉末部で放電が発生すると、その周囲にある非導電性セラミックスの粉末も導電性粉末と一緒にワークに移行し、被膜となる。(特許文献2)
【0005】
【特許文献1】国際公開番号WO99/47730号公報
【特許文献2】特開平7−197275号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来、国際公開番号WO99/47730号公報に示されるように炭素を電極材料として、混入していたため、電極材料と炭素が結合した炭化チタン等の硬質炭化物被膜を形成することができたが、その他電極中の炭素が、被膜となった場合、被膜の硬さや導電性を向上することできず、むしろ、被膜の割れなどを引き起こすという問題点があった。
また、特開平7−197275号公報に示された、非導電性セラミックの電極を製造する場合には、導電性材料として、50%以上の金属粉末を混入することにより、電極に導電性を持たせて、放電表面処理の電極として使用することを可能としていたが、金属粉末の混入が多くなることにより、該金属の被膜が形成される。
ここで、金属の被膜が形成されると、高温の使用環境下において被膜の金属が酸化され、被膜が除去されると共に、耐酸化性を失い、母材が酸化される不具合があった。
これは、Al2O3やZrO2などの非導電性セラミックス被膜で耐摩耗性や耐酸化性などの被膜性能を得たい場合、被膜中の導電性の物質は一般に非導電性セラミックスより耐摩耗性や耐酸化性が劣るため不純物となり、被膜の性能を低下させてしまうからである。
なお、耐摩耗性や耐酸化性の高い被膜を形成するためには、非導電性セラミックスの量をできるだけ多くする必要があるが、それを実現できないのが現状である。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、被膜の機械的性質を向上することを目的とする。
また、導電性・熱伝導性・摺動性に優れた被膜を形成するものである。
【0008】
この発明に係る放電表面処理用電極は、金属粉末または金属の化合物の粉末、あるいはセラミックスの粉末を圧縮成形した圧粉体を電極として加工液中及び気中において電極とワークの間にパルス状の放電を発生させ、そのエネルギーにより、ワーク表面に電極材料あるいは電極材料が放電エネルギーにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理において、圧粉体電極の材料としてカーボンナノチューブを所定量混入したものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
放電表面処理の原理を図1に示す。
金属や導電性セラミックスの数μmの粉末を圧縮成形した後、加熱処理した電極を陰極、ワークを陽極とし、両者が接触しないよう主軸はサーボを取った状態で、加工液で満たされた放電領域で両者間に放電を発生させる。
すると、放電の熱によりワーク及び電極は溶融・気化され、気化により発生する爆風や静電気力よって、溶融した電極の一部(溶融粒子)がワーク表面に向かって輸送される。
そして、溶融した電極の一部がワーク表面に到達すると、再凝固し被膜となる。
【0010】
ここでカーボンナノチューブについて述べる。
1枚のグラファイトのシートが円筒状に丸まって出来ているカーボンナノチューブは、炭素の同素体(元素が同じでも、構造が異なる物質)であり、その他、ダイヤモンドや、黒鉛(グラファイト)がよく知られている。
円筒にしたときの重なり方によって、カーボンナノチューブは導体になったり半導体になったりする。
本実施の形態に用いる放電表面処理用電極には、導体のものを用いる。
カーボンナノチューブの機械的強度は、現存する物質の中で最も引っ張り強度が大きく(50GPa程度)、曲げに対する弾力性は非常にやわらかく、強い糸という感があり、強化材料への応用は幅広い。
また、円筒状のカーボンナノチューブ粉末は、粉末と粉末が複雑に絡み合っており、導電性・熱伝導性・摺動性に優れ、機械強度を向上させる。
つまり、金属や金属化合物の被膜中にカーボンナノチューブを含有すれば、被膜の機械的強度や弾性を向上できる。
【0011】
本発明の第1の実施の形態の放電表面処理用電極製造のためのプロセスを図2に示す。平均粒径3μm以下の金属粉末またはセラミックス粉末とカーボンナノチューブを混合機で約24hrしっかり混合する。
この行程で混合が十分でない場合、被膜にもカーボンナノチューブの濃度に分布を生じてしまう。
カーボンナノチューブと金属粉末は、密度差があるため、重力方向に粉末を攪拌することに特に注意する。
プレスの際に粉末内部へのプレスの圧力の伝わりを良くするために粉末にパラフィンなどのワックスを重量比1%から10%程度混入すると成形性を改善できるため、パラフィンなどのワックスとカーボンナノチューブと金属粉末の混合体(以下、混合体)とを混合する。
液体であるワックスと混合体を混合すると混合体は凝集し大きな塊を形成する。凝集した塊をバラバラにするために、メッシュサイズ0.3mm程度の網の上に置くことで篩いにかけ、凝集していない粉末、凝集した塊を分別する。
網の上に残った凝集した塊に対しては、セラミックス球または金属球を網の上に乗せ、網を振動させることにより、振動のエネルギーや球との衝突により凝集した塊がバラバラになり網を通過する。網を通過した粉末だけを次の工程で使用する。
その粉末を金型に入れてパンチにより上下から圧力をかけてプレスする。
所定のプレス圧を粉末にかけることで、粉末は固まり圧粉体となる。
圧縮成形された圧粉体は、その時点で所定の硬さ(圧縮強度で50MPa程度)が得られていればそのまま放電表面処理用の電極として使用することができるが、加熱することで強度を増すことができる。なお、ワックスを混入した場合でも、加熱することによりワックスは除去される。
【0012】
平均粒径1μm以下のCo(コバルト)やCo合金粉末、またはNi(ニッケル)やNi合金粉末とカーボンナノチューブを混合し、電極を製造する場合、パラフィンを混合せずともプレスの成形性が高い。
なぜならCoやNiは酸化しにくい材料であるため、粉末表面に形成された酸化膜が非常に薄く、プレス工程において粉末と粉末の結合が進み、電極がある程度の強度を持つからである。
このような場合、パラフィンを混合する工程と篩を掛ける工程を省略することができる。
【0013】
実施例1
平均粒径3μmのCo合金であるステライト粉末に対し、重量比で5%のカーボンナノチューブを加えて混合した混合体を準備した。
ここで、ステライトはCr(クロム)25wt%、Ni(ニッケル)10wt%、W(タングステン)7wt%、C(炭素)0.5wt%、残りCoで構成されている。ここでは上記ステライトを使用したが、または、Mo28wt%、Cr17wt%、Si3wt%、残りCo、または、Cr28wt%、Ni5wt%、W19wt%、残りCoからなるステライトでもよい。
混合体粉末を混合機で一時間程度かけて十分に混合した後、ワックスを重量比で10%混合した。
液体であるワックスと混合体を混合すると混合体は凝集し大きな塊を形成する。凝集した塊をバラバラにするために、メッシュサイズ0.05mmの篩いにかける。
篩を通過した粉末を用いて、所定のプレス圧力で成形し、その後、真空炉で一時間加熱して電極を製造した。
電極の形状はφ18×30である。
【0014】
これらの電極を用いて、被膜形成のための加工を行った。
なお、電極長さが1mm減少したら加工を終了した。
ここで、使用した放電のパルス条件は、電極側マイナス/ワーク側プラスの極性、ピーク電流値ie=5〜20A、放電持続時間(放電パルス幅)te=4〜100μmの様々な条件で加工を行った。
いずれの条件でも0.1mm程度の被膜を形成することができた。
なお、金属粉末のみで製造した電極による放電表面処理と比較しても、処理時間や被膜の面粗さはほとんど変わらない。
【0015】
ピーク電流ie=12A、放電持続時間te=64μsのときの被膜の断面写真を図3に示す。
多少の割れがあるが、緻密な被膜を形成できた。
この断面を元素分析した結果、被膜全体に渡って、炭素の存在を確認できた。すなわち、カーボンナノチューブが被膜に含まれていると考えられる。
【0016】
この被膜で被膜の平面と平面を向かい合わせ、適当な力で押しつけた状態で、それらの一方を平衡に振動させ(擦り合わせ)、その消耗量や摩擦係数を測定するフレッティング試験を行った。
φ2mmとφ8mmのワーク表面に、上記の条件で被膜を0.2mm程度形成した。
この二つの被膜を温度300℃の大気で繰り返し擦り、その消耗量を観察した。振幅は4mm、周波数は100Hz、φ2mmのワークをφ8mmのワークに押しつける力は、10Nである。
106回振動させたときの消耗量をカーボンナノチューブを含んだ被膜と含まない被膜(カーボンナノチューブが含まれない電極による表面処理被膜)で比較した。
この試験は、被膜の摺動性を評価できる。
その試験結果を表1に示す。
カーボンナノチューブを含んだ被膜が、消耗量を約1/10程度低減できた。
カーボンナノチューブを被膜に混入すると、被膜の摺動性を向上できることがわかった。
【0017】
【表1】
【0018】
本実施の形態では、カーボンナノチューブを電極に入れることにより、形成される被膜には、炭素を含んだ被膜が形成されるため、被膜の表面付近のカーボンナノチューブの持つ特性(強度や延性)の作用により、被膜の強度や摺動性が向上する。
一般的に、金属被膜にセラミックスなどの高強度材を体積で10%以上含めると、高強度材の性能を被膜に付与できると言われており、被膜の性能の向上していることから、本実施の形態により被膜に10%以上のカーボンナノチューブが含まれていると思われる。
炭化しやすい材料であるMoやCrの電極で表面処理をした場合、一部はMo2CやCr3C2などの金属間化合物になるが、大部分はMoやCrの単体のまま堆積する。
更にcBN(キュービックボロンナイトライド)などを含んだ電極で放電表面処理した場合、一部はcBNのまま被膜になり、一部は硼素が金属と結合して被膜内で硼化物を形成する。
それと同様に、カーボンナノチューブの場合、一部は金属を炭化し、一部はカーボンナノチューブのまま被膜となると思われる。
今回、被膜の摺動性や強度を向上させるため、カーボンナノチューブを用いた。しかし、カーボンナノチューブの他にフラーレンでも同様の効果を得ることができる。
フラーレンは、炭素の五員環12個と六員環20個からなるサッカーボール状の結晶構造で、15,000m/hで硬い物質をぶつけても壊れないほどの硬さを持ち、それ自体を70%に圧縮するほどの圧力を加えても、その構造自体はびくともしないという性質を持っているためである。
【0019】
実施例2
更に、平均粒径2μmのFe(鉄)粉末とFe粉末に重量比で5%のカーボンナノチューブを混入した粉末でそれぞれ電極を製造した。
電極形状は、長さ20mm、幅5mm、高さ50mmである。
Fe粉末は成形性が、中程度であったため、ワックスは重量比で2%程度とし、所定のプレス圧力で電極を成形した。
その後真空炉で加熱状態で保持し、電極を完成させた。
それらの電極を用いて、厚さ0.1mm、長さ20mm、幅5mmの鉄製ワーク表面を完全に覆うように上記電極で放電表面処理した。
加工条件は、ピーク電流ie=12A、放電持続時間te=64μs、加工時間は、5分である。
形成された被膜厚さは、いずれも約0.1mm程度であった。
【0020】
これらワークを長手方向に引っ張り、被膜の引っ張り強度を測定した。
その結果、カーボンナノチューブの含んだ被膜が、そうでない被膜より約1.2倍の引っ張り強度を有していることがわかった。
金属にカーボンナノチューブの被膜を形成すれば、カーボンナノチューブの強度がその部材に付与され、その部材の引っ張り強度を向上できるという効果がある。
一般に高強度材は、延性が無い。
しかしカーボンナノチューブは強度と延性を併せ持つ。
従って従来のセラミックスコートが適用できなかった曲げと引っ張っりの両方の性能が必要な部材の表面にこの被膜を適用できる。
【0021】
本実施の形態によれば、カーボンナノチューブを圧粉体電極に混入したことにより、放電表面処理による被膜形成時にカーボンナノチューブの被膜が形成されるため、被膜の強度や摺動性が向上すると共に、部材の引っ張り強度を向上することができる。
そして、このように形成された被膜は、プレス加工等の金型に適用できる。
【0022】
実施の形態2.
本発明の第2の実施の形態の放電表面処理用電極製造のためのプロセスを図4に示す。本実施の形態では、カーボンナノチューブのみで電極を製造した。
プレスの際に粉末内部へのプレスの圧力の伝わりを良くするために粉末にパラフィンなどのワックスを重量比1%から10%程度混入すると成形性を改善できるため、パラフィンなどのワックスとカーボンナノチューブを混合する。
液体であるワックスとカーボンナノチューブを混合するとカーボンナノチューブは凝集し大きな塊を形成する。
凝集した塊をバラバラにするために、メッシュサイズ0.3mm程度の網の上に置くことで篩いにかけ、凝集していない粉末、凝集した塊を分別する。
網の上に残った凝集した塊に対しては、セラミックス球または金属球を網の上に乗せ、網を振動させることにより、振動のエネルギーや球との衝突により凝集した塊がバラバラになり網を通過する。網を通過した粉末だけを次の工程で使用する。
その粉末を金型に入れてパンチにより上下から所定の圧力をかけてプレスし、粉末を固めて圧粉体とする。
圧縮成形された圧粉体は、その時点で所定の硬さ(圧縮強度で50MPa程度)が得られていればそのまま放電表面処理用の電極として使用することができるが、加熱することで強度を増すことができる。なお、ワックスを混入した場合でも、加熱することによりワックスは除去される。
【0023】
本実施の形態では、カーボンナノチューブに重量比で3%のパラフィンを混合し、凝集した塊をバラバラにするためにメッシュサイズ0.05mmの篩いを用いた。
そして、篩を通過した粉末を用いて、所定のプレス圧力で成形し、その後、真空炉で一時間加熱して電極を製造した。電極の形状はφ18×30である。
【0024】
その電極を用い、Feワークに被膜を形成させた。
電極長さが1mm減少したら加工を終了した。
使用した放電のパルス条件は、電極側マイナス/ワーク側プラスの極性、ピーク電流値ie=5〜20A、放電持続時間(放電パルス幅)te=4〜100μs程度を使用した。
いずれの条件でも0.1mm程度の被膜を形成することができた。
ピーク電流ie=8A、放電持続時間te=8μsのときの被膜の断面写真を図5に示す。
厚さ10μm程度の被膜を形成できた。
【0025】
次に、この被膜の特性について説明する。
この形成された被膜をESCA(XPS:X線光電子分光分析)により分析すると、その被膜成分は、炭素であった。
すなわち、カーボンナノチューブ粉末による電極で放電表面処理を行うことにより、ワーク表面に、カーボンとカーボンナノチューブを両方含んだの皮膜が形成されたことが実験により確かめられた。
例えば、本実施の形態で形成された被膜は、変圧器などに適用することができる。
すなわち、高周波電流は、金属の表面を流れるため、表面での抵抗が大きく影響する。
そこで、高導電性のカーボンナノチューブを高周波電流が流れる個所の被膜として形成すれば、カーボンナノチューブの高導電性により損失を低減できるからである。
【0026】
本実施の形態によれば、カーボンナノチューブを圧縮形成した圧粉体電極を用いて表面処理を行うことにより、カーボンナノチューブの被膜がワーク表面上に形成されるので、部材の導電性を向上することができた。
なお、従来のグラファイト電極は、放電による型彫りを目的としたものであるのに対し、本実施の形態で説明したカーボンナノチューブの圧粉体電極は、電極材料をワークに供給し、被膜を堆積するものであり、従来使用している電極とは、粒径はナノオーダー、硬さは圧縮強度が100MPa程度、熱伝導率は5W/mK以下といったように大きく異なる。
【0027】
実施の形態3.
平均粒径1μmのAl2O3(アルミナ)粉末にカーボンナノチューブの体積比を10%、20%、30%、40%、50%を混合し、パラフィンを重量比で3%混合した後、メッシュサイズ0.05mm篩にかけた。
篩を通過した粉末を用い、所定のプレス圧力で成形した後、真空炉で一時間加熱して電極を製造した。
電極の形状はφ18×30である。
【0028】
従来の製造方法では、導電性の粉末が50%程度なければ、導電性を持つ電極を製造できなかった。
カーボンナノチューブは、円筒形をした物質で、それぞれが複雑に絡み合って、繋がっている上、導電性も高いため、カーボンナノチューブの体積比20%程度で導電性を持つ電極を製造することができた。
カーボンナノチューブの体積比20%の電極で実際に加工した。
加工条件は上記実施の形態2と同様である。
0.02mm程度のAl2O3の被膜を形成することができた。
【0029】
Al2O3などのセラミックスは、耐酸化性を必要とされる環境下で使用される。
このような場合、その他の物質が被膜に混入すると、耐酸化性が低下する。
従来の方法では、50%近くの導電性の金属を電極が含んでいるため、それにより形成される被膜は多量の金属を含んでしまう。
しかし、本実施の形態により、導電性物質の電極への混入量を抑えることができるようになった。
今回、電極に導電性を持たせるために混入したカーボンナノチューブはわずか20%程度であるため、カーボンナノチューブの被膜への混入量は、10%程度にとどまっていた。
【0030】
Ni合金のワーク上に、カーボンナノチューブとAl2O3の混合粉末の圧粉体からなる電極(本実施の形態)で形成した被膜と、CoとAl2O3の混合粉末の圧粉体からなる電極で形成した被膜を、1100℃の大気中に暴露させ、耐酸化試験を実施した。
Coを用いた従来の電極の被膜は、被膜のCo部が酸化され、ワークの表面が見えかけていた。
それに対し、本実施の形態からなる電極を用いて形成された被膜は、ほとんど酸化されておらず、Al2O3被膜本来の性能を発揮できた。
なお、耐酸化性については、炭素10%程度の混入であれば、耐酸化性を低下させなかった。
また、非導電性の電極材料に、導電性材料として、カーボンナノチューブを入れると、少ないカーボンナノチューブで導電性が得られ、電極に使用できるようになる。
そのため、酸化される金属を導電性材料として混入することがないので耐酸化性を持ったセラミックスの濃度が高く熱伝導率が小さい被膜を形成でき、その被膜の耐酸化性を向上できる。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、カーボンナノチューブの被膜を形成でき、様々な部材に強度と延性と導電性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】放電表面処理の原理を示す図である。
【図2】放電表面処理用電極製造のためのプロセスを示す図である。
【図3】ピーク電流ie=12A、放電持続時間te=64μsで加工した際の被膜の断面写真である。
【図4】放電表面処理用電極製造のためのプロセスを示す図である。
【図5】ピーク電流ie=8A、放電持続時間te=8μsで加工した際の被膜の断面写真である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属粉末あるいは金属の化合物の粉末、あるいは、セラミックスの粉末を圧縮成形した圧粉体、もしくは、該圧粉体を加熱処理した圧粉体を電極として加工液中および気中において電極とワークの間にパルス状の放電を発生させ、そのエネルギーにより、ワーク表面に電極材料あるいは電極材料が放電エネルギーにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の放電表面の方法は、電極材質と、加工液中成分が放電による熱で分解してできた炭素Cとが反応して硬質の炭化物の被膜をワーク上に形成するものである。
その手法としては、電極材質に炭素系の材料を混合させることにより、電極内部での金属と炭素を反応させることにより硬質炭化物被膜を加工液(水)中で形成する技術が、国際公開番号WO99/47730号公報に記載されている。(特許文献1)
【0003】
この国際公開番号WO99/47730号公報には、電極中に炭素の供給源として放電エネルギーにより炭素を発生する材料、例えばエポキシ系接着剤を混合する。
このエポキシ系接着剤などの物質は、炭素原子Cと水素原子H、酸素原子Oなどからなる物質であり、放電エネルギーにより分解された水素原子は主に水H2O或いは水素ガスH2に、酸素原子は水H2O、二酸化炭素CO2に、炭素原子は、二酸化炭素CO2、炭素Cになる。
ここで生成した炭素Cが電極中のチタンTiと反応し、硬質の被膜炭化チタンTiCを形成する。
【0004】
また、非導電性セラミックスだけで電極を形成しても放電を発生できないため、非導電性セラミックスの粉末と導電性の粉末を混合して成形した電極で放電表面処理を行い、非導電性セラミックスを含んだ被膜を形成する技術が、特開平7−197275号公報に示されている。
導電性の粉末部で放電が発生すると、その周囲にある非導電性セラミックスの粉末も導電性粉末と一緒にワークに移行し、被膜となる。(特許文献2)
【0005】
【特許文献1】国際公開番号WO99/47730号公報
【特許文献2】特開平7−197275号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来、国際公開番号WO99/47730号公報に示されるように炭素を電極材料として、混入していたため、電極材料と炭素が結合した炭化チタン等の硬質炭化物被膜を形成することができたが、その他電極中の炭素が、被膜となった場合、被膜の硬さや導電性を向上することできず、むしろ、被膜の割れなどを引き起こすという問題点があった。
また、特開平7−197275号公報に示された、非導電性セラミックの電極を製造する場合には、導電性材料として、50%以上の金属粉末を混入することにより、電極に導電性を持たせて、放電表面処理の電極として使用することを可能としていたが、金属粉末の混入が多くなることにより、該金属の被膜が形成される。
ここで、金属の被膜が形成されると、高温の使用環境下において被膜の金属が酸化され、被膜が除去されると共に、耐酸化性を失い、母材が酸化される不具合があった。
これは、Al2O3やZrO2などの非導電性セラミックス被膜で耐摩耗性や耐酸化性などの被膜性能を得たい場合、被膜中の導電性の物質は一般に非導電性セラミックスより耐摩耗性や耐酸化性が劣るため不純物となり、被膜の性能を低下させてしまうからである。
なお、耐摩耗性や耐酸化性の高い被膜を形成するためには、非導電性セラミックスの量をできるだけ多くする必要があるが、それを実現できないのが現状である。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、被膜の機械的性質を向上することを目的とする。
また、導電性・熱伝導性・摺動性に優れた被膜を形成するものである。
【0008】
この発明に係る放電表面処理用電極は、金属粉末または金属の化合物の粉末、あるいはセラミックスの粉末を圧縮成形した圧粉体を電極として加工液中及び気中において電極とワークの間にパルス状の放電を発生させ、そのエネルギーにより、ワーク表面に電極材料あるいは電極材料が放電エネルギーにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理において、圧粉体電極の材料としてカーボンナノチューブを所定量混入したものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
放電表面処理の原理を図1に示す。
金属や導電性セラミックスの数μmの粉末を圧縮成形した後、加熱処理した電極を陰極、ワークを陽極とし、両者が接触しないよう主軸はサーボを取った状態で、加工液で満たされた放電領域で両者間に放電を発生させる。
すると、放電の熱によりワーク及び電極は溶融・気化され、気化により発生する爆風や静電気力よって、溶融した電極の一部(溶融粒子)がワーク表面に向かって輸送される。
そして、溶融した電極の一部がワーク表面に到達すると、再凝固し被膜となる。
【0010】
ここでカーボンナノチューブについて述べる。
1枚のグラファイトのシートが円筒状に丸まって出来ているカーボンナノチューブは、炭素の同素体(元素が同じでも、構造が異なる物質)であり、その他、ダイヤモンドや、黒鉛(グラファイト)がよく知られている。
円筒にしたときの重なり方によって、カーボンナノチューブは導体になったり半導体になったりする。
本実施の形態に用いる放電表面処理用電極には、導体のものを用いる。
カーボンナノチューブの機械的強度は、現存する物質の中で最も引っ張り強度が大きく(50GPa程度)、曲げに対する弾力性は非常にやわらかく、強い糸という感があり、強化材料への応用は幅広い。
また、円筒状のカーボンナノチューブ粉末は、粉末と粉末が複雑に絡み合っており、導電性・熱伝導性・摺動性に優れ、機械強度を向上させる。
つまり、金属や金属化合物の被膜中にカーボンナノチューブを含有すれば、被膜の機械的強度や弾性を向上できる。
【0011】
本発明の第1の実施の形態の放電表面処理用電極製造のためのプロセスを図2に示す。平均粒径3μm以下の金属粉末またはセラミックス粉末とカーボンナノチューブを混合機で約24hrしっかり混合する。
この行程で混合が十分でない場合、被膜にもカーボンナノチューブの濃度に分布を生じてしまう。
カーボンナノチューブと金属粉末は、密度差があるため、重力方向に粉末を攪拌することに特に注意する。
プレスの際に粉末内部へのプレスの圧力の伝わりを良くするために粉末にパラフィンなどのワックスを重量比1%から10%程度混入すると成形性を改善できるため、パラフィンなどのワックスとカーボンナノチューブと金属粉末の混合体(以下、混合体)とを混合する。
液体であるワックスと混合体を混合すると混合体は凝集し大きな塊を形成する。凝集した塊をバラバラにするために、メッシュサイズ0.3mm程度の網の上に置くことで篩いにかけ、凝集していない粉末、凝集した塊を分別する。
網の上に残った凝集した塊に対しては、セラミックス球または金属球を網の上に乗せ、網を振動させることにより、振動のエネルギーや球との衝突により凝集した塊がバラバラになり網を通過する。網を通過した粉末だけを次の工程で使用する。
その粉末を金型に入れてパンチにより上下から圧力をかけてプレスする。
所定のプレス圧を粉末にかけることで、粉末は固まり圧粉体となる。
圧縮成形された圧粉体は、その時点で所定の硬さ(圧縮強度で50MPa程度)が得られていればそのまま放電表面処理用の電極として使用することができるが、加熱することで強度を増すことができる。なお、ワックスを混入した場合でも、加熱することによりワックスは除去される。
【0012】
平均粒径1μm以下のCo(コバルト)やCo合金粉末、またはNi(ニッケル)やNi合金粉末とカーボンナノチューブを混合し、電極を製造する場合、パラフィンを混合せずともプレスの成形性が高い。
なぜならCoやNiは酸化しにくい材料であるため、粉末表面に形成された酸化膜が非常に薄く、プレス工程において粉末と粉末の結合が進み、電極がある程度の強度を持つからである。
このような場合、パラフィンを混合する工程と篩を掛ける工程を省略することができる。
【0013】
実施例1
平均粒径3μmのCo合金であるステライト粉末に対し、重量比で5%のカーボンナノチューブを加えて混合した混合体を準備した。
ここで、ステライトはCr(クロム)25wt%、Ni(ニッケル)10wt%、W(タングステン)7wt%、C(炭素)0.5wt%、残りCoで構成されている。ここでは上記ステライトを使用したが、または、Mo28wt%、Cr17wt%、Si3wt%、残りCo、または、Cr28wt%、Ni5wt%、W19wt%、残りCoからなるステライトでもよい。
混合体粉末を混合機で一時間程度かけて十分に混合した後、ワックスを重量比で10%混合した。
液体であるワックスと混合体を混合すると混合体は凝集し大きな塊を形成する。凝集した塊をバラバラにするために、メッシュサイズ0.05mmの篩いにかける。
篩を通過した粉末を用いて、所定のプレス圧力で成形し、その後、真空炉で一時間加熱して電極を製造した。
電極の形状はφ18×30である。
【0014】
これらの電極を用いて、被膜形成のための加工を行った。
なお、電極長さが1mm減少したら加工を終了した。
ここで、使用した放電のパルス条件は、電極側マイナス/ワーク側プラスの極性、ピーク電流値ie=5〜20A、放電持続時間(放電パルス幅)te=4〜100μmの様々な条件で加工を行った。
いずれの条件でも0.1mm程度の被膜を形成することができた。
なお、金属粉末のみで製造した電極による放電表面処理と比較しても、処理時間や被膜の面粗さはほとんど変わらない。
【0015】
ピーク電流ie=12A、放電持続時間te=64μsのときの被膜の断面写真を図3に示す。
多少の割れがあるが、緻密な被膜を形成できた。
この断面を元素分析した結果、被膜全体に渡って、炭素の存在を確認できた。すなわち、カーボンナノチューブが被膜に含まれていると考えられる。
【0016】
この被膜で被膜の平面と平面を向かい合わせ、適当な力で押しつけた状態で、それらの一方を平衡に振動させ(擦り合わせ)、その消耗量や摩擦係数を測定するフレッティング試験を行った。
φ2mmとφ8mmのワーク表面に、上記の条件で被膜を0.2mm程度形成した。
この二つの被膜を温度300℃の大気で繰り返し擦り、その消耗量を観察した。振幅は4mm、周波数は100Hz、φ2mmのワークをφ8mmのワークに押しつける力は、10Nである。
106回振動させたときの消耗量をカーボンナノチューブを含んだ被膜と含まない被膜(カーボンナノチューブが含まれない電極による表面処理被膜)で比較した。
この試験は、被膜の摺動性を評価できる。
その試験結果を表1に示す。
カーボンナノチューブを含んだ被膜が、消耗量を約1/10程度低減できた。
カーボンナノチューブを被膜に混入すると、被膜の摺動性を向上できることがわかった。
【0017】
【表1】
【0018】
本実施の形態では、カーボンナノチューブを電極に入れることにより、形成される被膜には、炭素を含んだ被膜が形成されるため、被膜の表面付近のカーボンナノチューブの持つ特性(強度や延性)の作用により、被膜の強度や摺動性が向上する。
一般的に、金属被膜にセラミックスなどの高強度材を体積で10%以上含めると、高強度材の性能を被膜に付与できると言われており、被膜の性能の向上していることから、本実施の形態により被膜に10%以上のカーボンナノチューブが含まれていると思われる。
炭化しやすい材料であるMoやCrの電極で表面処理をした場合、一部はMo2CやCr3C2などの金属間化合物になるが、大部分はMoやCrの単体のまま堆積する。
更にcBN(キュービックボロンナイトライド)などを含んだ電極で放電表面処理した場合、一部はcBNのまま被膜になり、一部は硼素が金属と結合して被膜内で硼化物を形成する。
それと同様に、カーボンナノチューブの場合、一部は金属を炭化し、一部はカーボンナノチューブのまま被膜となると思われる。
今回、被膜の摺動性や強度を向上させるため、カーボンナノチューブを用いた。しかし、カーボンナノチューブの他にフラーレンでも同様の効果を得ることができる。
フラーレンは、炭素の五員環12個と六員環20個からなるサッカーボール状の結晶構造で、15,000m/hで硬い物質をぶつけても壊れないほどの硬さを持ち、それ自体を70%に圧縮するほどの圧力を加えても、その構造自体はびくともしないという性質を持っているためである。
【0019】
実施例2
更に、平均粒径2μmのFe(鉄)粉末とFe粉末に重量比で5%のカーボンナノチューブを混入した粉末でそれぞれ電極を製造した。
電極形状は、長さ20mm、幅5mm、高さ50mmである。
Fe粉末は成形性が、中程度であったため、ワックスは重量比で2%程度とし、所定のプレス圧力で電極を成形した。
その後真空炉で加熱状態で保持し、電極を完成させた。
それらの電極を用いて、厚さ0.1mm、長さ20mm、幅5mmの鉄製ワーク表面を完全に覆うように上記電極で放電表面処理した。
加工条件は、ピーク電流ie=12A、放電持続時間te=64μs、加工時間は、5分である。
形成された被膜厚さは、いずれも約0.1mm程度であった。
【0020】
これらワークを長手方向に引っ張り、被膜の引っ張り強度を測定した。
その結果、カーボンナノチューブの含んだ被膜が、そうでない被膜より約1.2倍の引っ張り強度を有していることがわかった。
金属にカーボンナノチューブの被膜を形成すれば、カーボンナノチューブの強度がその部材に付与され、その部材の引っ張り強度を向上できるという効果がある。
一般に高強度材は、延性が無い。
しかしカーボンナノチューブは強度と延性を併せ持つ。
従って従来のセラミックスコートが適用できなかった曲げと引っ張っりの両方の性能が必要な部材の表面にこの被膜を適用できる。
【0021】
本実施の形態によれば、カーボンナノチューブを圧粉体電極に混入したことにより、放電表面処理による被膜形成時にカーボンナノチューブの被膜が形成されるため、被膜の強度や摺動性が向上すると共に、部材の引っ張り強度を向上することができる。
そして、このように形成された被膜は、プレス加工等の金型に適用できる。
【0022】
実施の形態2.
本発明の第2の実施の形態の放電表面処理用電極製造のためのプロセスを図4に示す。本実施の形態では、カーボンナノチューブのみで電極を製造した。
プレスの際に粉末内部へのプレスの圧力の伝わりを良くするために粉末にパラフィンなどのワックスを重量比1%から10%程度混入すると成形性を改善できるため、パラフィンなどのワックスとカーボンナノチューブを混合する。
液体であるワックスとカーボンナノチューブを混合するとカーボンナノチューブは凝集し大きな塊を形成する。
凝集した塊をバラバラにするために、メッシュサイズ0.3mm程度の網の上に置くことで篩いにかけ、凝集していない粉末、凝集した塊を分別する。
網の上に残った凝集した塊に対しては、セラミックス球または金属球を網の上に乗せ、網を振動させることにより、振動のエネルギーや球との衝突により凝集した塊がバラバラになり網を通過する。網を通過した粉末だけを次の工程で使用する。
その粉末を金型に入れてパンチにより上下から所定の圧力をかけてプレスし、粉末を固めて圧粉体とする。
圧縮成形された圧粉体は、その時点で所定の硬さ(圧縮強度で50MPa程度)が得られていればそのまま放電表面処理用の電極として使用することができるが、加熱することで強度を増すことができる。なお、ワックスを混入した場合でも、加熱することによりワックスは除去される。
【0023】
本実施の形態では、カーボンナノチューブに重量比で3%のパラフィンを混合し、凝集した塊をバラバラにするためにメッシュサイズ0.05mmの篩いを用いた。
そして、篩を通過した粉末を用いて、所定のプレス圧力で成形し、その後、真空炉で一時間加熱して電極を製造した。電極の形状はφ18×30である。
【0024】
その電極を用い、Feワークに被膜を形成させた。
電極長さが1mm減少したら加工を終了した。
使用した放電のパルス条件は、電極側マイナス/ワーク側プラスの極性、ピーク電流値ie=5〜20A、放電持続時間(放電パルス幅)te=4〜100μs程度を使用した。
いずれの条件でも0.1mm程度の被膜を形成することができた。
ピーク電流ie=8A、放電持続時間te=8μsのときの被膜の断面写真を図5に示す。
厚さ10μm程度の被膜を形成できた。
【0025】
次に、この被膜の特性について説明する。
この形成された被膜をESCA(XPS:X線光電子分光分析)により分析すると、その被膜成分は、炭素であった。
すなわち、カーボンナノチューブ粉末による電極で放電表面処理を行うことにより、ワーク表面に、カーボンとカーボンナノチューブを両方含んだの皮膜が形成されたことが実験により確かめられた。
例えば、本実施の形態で形成された被膜は、変圧器などに適用することができる。
すなわち、高周波電流は、金属の表面を流れるため、表面での抵抗が大きく影響する。
そこで、高導電性のカーボンナノチューブを高周波電流が流れる個所の被膜として形成すれば、カーボンナノチューブの高導電性により損失を低減できるからである。
【0026】
本実施の形態によれば、カーボンナノチューブを圧縮形成した圧粉体電極を用いて表面処理を行うことにより、カーボンナノチューブの被膜がワーク表面上に形成されるので、部材の導電性を向上することができた。
なお、従来のグラファイト電極は、放電による型彫りを目的としたものであるのに対し、本実施の形態で説明したカーボンナノチューブの圧粉体電極は、電極材料をワークに供給し、被膜を堆積するものであり、従来使用している電極とは、粒径はナノオーダー、硬さは圧縮強度が100MPa程度、熱伝導率は5W/mK以下といったように大きく異なる。
【0027】
実施の形態3.
平均粒径1μmのAl2O3(アルミナ)粉末にカーボンナノチューブの体積比を10%、20%、30%、40%、50%を混合し、パラフィンを重量比で3%混合した後、メッシュサイズ0.05mm篩にかけた。
篩を通過した粉末を用い、所定のプレス圧力で成形した後、真空炉で一時間加熱して電極を製造した。
電極の形状はφ18×30である。
【0028】
従来の製造方法では、導電性の粉末が50%程度なければ、導電性を持つ電極を製造できなかった。
カーボンナノチューブは、円筒形をした物質で、それぞれが複雑に絡み合って、繋がっている上、導電性も高いため、カーボンナノチューブの体積比20%程度で導電性を持つ電極を製造することができた。
カーボンナノチューブの体積比20%の電極で実際に加工した。
加工条件は上記実施の形態2と同様である。
0.02mm程度のAl2O3の被膜を形成することができた。
【0029】
Al2O3などのセラミックスは、耐酸化性を必要とされる環境下で使用される。
このような場合、その他の物質が被膜に混入すると、耐酸化性が低下する。
従来の方法では、50%近くの導電性の金属を電極が含んでいるため、それにより形成される被膜は多量の金属を含んでしまう。
しかし、本実施の形態により、導電性物質の電極への混入量を抑えることができるようになった。
今回、電極に導電性を持たせるために混入したカーボンナノチューブはわずか20%程度であるため、カーボンナノチューブの被膜への混入量は、10%程度にとどまっていた。
【0030】
Ni合金のワーク上に、カーボンナノチューブとAl2O3の混合粉末の圧粉体からなる電極(本実施の形態)で形成した被膜と、CoとAl2O3の混合粉末の圧粉体からなる電極で形成した被膜を、1100℃の大気中に暴露させ、耐酸化試験を実施した。
Coを用いた従来の電極の被膜は、被膜のCo部が酸化され、ワークの表面が見えかけていた。
それに対し、本実施の形態からなる電極を用いて形成された被膜は、ほとんど酸化されておらず、Al2O3被膜本来の性能を発揮できた。
なお、耐酸化性については、炭素10%程度の混入であれば、耐酸化性を低下させなかった。
また、非導電性の電極材料に、導電性材料として、カーボンナノチューブを入れると、少ないカーボンナノチューブで導電性が得られ、電極に使用できるようになる。
そのため、酸化される金属を導電性材料として混入することがないので耐酸化性を持ったセラミックスの濃度が高く熱伝導率が小さい被膜を形成でき、その被膜の耐酸化性を向上できる。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、カーボンナノチューブの被膜を形成でき、様々な部材に強度と延性と導電性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】放電表面処理の原理を示す図である。
【図2】放電表面処理用電極製造のためのプロセスを示す図である。
【図3】ピーク電流ie=12A、放電持続時間te=64μsで加工した際の被膜の断面写真である。
【図4】放電表面処理用電極製造のためのプロセスを示す図である。
【図5】ピーク電流ie=8A、放電持続時間te=8μsで加工した際の被膜の断面写真である。
Claims (14)
- 金属粉末または金属の化合物の粉末、あるいはセラミックスの粉末を圧縮成形した圧粉体を電極として加工液中及び気中において電極とワークの間にパルス状の放電を発生させ、そのエネルギーにより、ワーク表面に電極材料あるいは電極材料が放電エネルギーにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理において、
圧粉体電極の材料としてカーボンナノチューブを所定量混入したことを特徴とする放電表面処理用電極。 - 金属粉末または金属の化合物の粉末に対して、カーボンナノチューブを3〜15重量%混入したことを特徴とする請求項1に記載の放電表面処理用電極。
- 金属粉末または金属の化合物の粉末として、CoやCo合金粉末、またはNiやNi合金粉末、Fe粉末を用いることを特徴とする請求項1、2に記載の放電表面処理用電極。
- Co合金粉末として、Cr25wt%、Ni10wt%、W7wt%、C0.5wt%、残りCo、または、Mo28wt%、Cr17wt%、Si3wt%、残りCo、または、Cr28wt%、Ni5wt%、W19wt%、残りCoからなる合金を用いたことを特徴とする請求項3に記載の放電表面処理用電極。
- セラミックスの粉末に対し、カーボンナノチューブを20〜30体積%混入したことを特徴とする請求項1に記載の放電表面処理用電極。
- セラミックスの粉末として、平均粒径1μmのAl2O3粉末を用いることを特徴とする請求項5に記載の放電表面処理用電極。
- 粉末を圧縮成形した圧粉体を電極として加工液中および気中において電極とワークの間にパルス状の放電を発生させ、そのエネルギーにより、ワーク表面に電極材料あるいは電極材料が放電エネルギーにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理において、
圧粉体電極の材料としてカーボンナノチューブの粉末を圧縮成形したことを特徴とする放電表面処理用電極。 - 金属粉末または金属の化合物の粉末、あるいはセラミックスの粉末を圧縮成形した圧粉体を電極として加工液中及び気中において電極とワークの間にパルス状の放電を発生させ、そのエネルギーにより、ワーク表面に電極材料あるいは電極材料が放電エネルギーにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理において、
カーボンナノチューブを電極材料として所定量混入した圧粉体電極を用いてワーク表面に電極材料を堆積加工することを特徴とする放電表面処理方法。 - 金属粉末または金属の化合物の粉末に対して、カーボンナノチューブを3〜15重量%混入した圧粉体電極を用いることを特徴とする請求項8に記載の放電表面処理方法。
- 金属粉末または金属の化合物の粉末として、CoやCo合金粉末、またはNiやNi合金粉末、Fe粉末を用いた圧粉体電極を用いることを特徴とする請求項8、9に記載の放電表面処理方法。
- Co合金粉末として、Cr25wt%、Ni10wt%、W7wt%、C0.5wt%、残りCo、または、Mo28wt%、Cr17wt%、Si3wt%、残りCo、または、Cr28wt%、Ni5wt%、W19wt%、残りCoからなる合金を用いたことを特徴とする請求項10に記載の放電表面処理方法。
- セラミックスの粉末に対し、カーボンナノチューブを20〜30体積%混入した圧粉体電極を用いることを特徴とする請求項8に記載の放電表面処理方法。
- セラミックスの粉末として、平均粒径1μmのAl2O3粉末を用いることを特徴とする請求項12に記載の放電表面処理方法。
- 粉末を圧縮成形した圧粉体を電極として加工液中および気中において電極とワークの間にパルス状の放電を発生させ、そのエネルギーにより、ワーク表面に電極材料あるいは電極材料が放電エネルギーにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理において、
圧粉体電極の材料としてカーボンナノチューブの粉末を圧縮成形した圧粉体電極を用いてワーク表面にカーボンナノチューブを堆積加工することを特徴とする放電表面処理方法。
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