【発明の詳細な説明】
熱処理可能なアルミニウム合金薄板の製法 発明の属する技術分野
本発明は、自動車用パーツの製造の間に一般に採用されている塗装および焼付
け操作を施すと、良好な成形性を示しかつ降伏点強度が改善された、アルミニウ
ム合金薄板材(シート材料)の製法に関する。特に、以下のものに制限されるも
のではないが、本発明は、自動車用スキンパネルなどのような、最終製品として
の乗用車においてヒトの目にさらされる自動車用パーツの製造に適したアルミニ
ウム合金薄板材の製法に関する。
従来の技術
自動車産業では、車体の軽量化のため、スチールパネルに代えて、アルミニウ
ム合金パネルの使用量が増大している。もちろん、軽量のパネルは、車体重量の
軽減に役立ち、燃費を低下させているが、アルミニウム合金パネルは、その導入
によって、それ自体、所定の要件が課せられている。アルミニウム合金薄板品は
、自動車での用途において有用なものとなるには、自動車製造業者に納入された
T4テンパー条件のままで、良好な成形性を有することが必要である。良好な成形
性を有すれば、アルミニウム合金は、クラッキングや引裂きやシワを形成せずに
、所望の角度に屈曲でき、また所望の形状に成形することができる。これと同時
に、合金パネルは、塗装および焼付けの後、衝突などの衝撃に耐えるのに充分な
強度を有する必要がある。
AA(Aluminum Association)2000系および6000系の数種のアルミニウム合金は
、自動車パネルの用途であると通常考えられている。AA60O0系合金は、マグネシ
ウムとケイ素を含んでおり、銅を含む場合も、含んでいない場合もあるが、その
銅含有量に応じて、AA2000系合金として分類されうる。これらの合金は、T4テン
パー条件下に形成でき、塗装/焼付け工程(通常、形成した自動車用パーツに対
し自動車製造業者が行う工程)後に、より強靭になる。塗装/焼付け工程後に、
強度が増加することは、より薄く、よってより軽量のパネルを使用
できるため、非常に望ましい。
ここで発明の内容を理解しやすいように、合金のテンパーを記述するのに使用
されている用語を、順次簡単に説明する。T4と呼ばれるテンパー(焼戻し)は、
よく知られており(例えば、The Aluminum Associationより発行されたAlummum S
tandards and Data(1984)11頁を参照されたし)、中間バッチアニールおよびブレ
エージングを行わずに常法で製造される合金に関する。これは、スキンパネルな
どの形成のために自動車用薄板材が通常パーツ製造業者に供給される際になされ
るテンパーである。T8テンパーは、溶体化し(拡散加熱し)冷間加工し次いで人
工エージングして得られるような合金に関する。人工エージングは、合金を高温
で長期間保持する処理である。T8Xテンパーは、T4テンパー材料を張力の適用に
よって2%変形処理し次いで177℃で30分間熱処理(形成処理+形成した自動車
パネルに対し通常施す塗料焼付け処理)したものに関する。溶体化および人工エ
ージングのみを行ってピーク強度に達した合金は、T6テンパーと呼ばれ、他方、
エージングを室温での自然条件下に行う場合、その合金は、前記したように、T4
テンパーと呼ぶ。中間バッチアニールを施すが、プレエージング処理を行わない
ような材料は、T4Aテンパーと呼ぶ。プレエージング処理を行うが、中間バッチ
アニール処理を行わないような材料は、T4Pテンパーと呼び、中間アニールとプ
レエージングの両処理を施すような材料は、T4PAテンパーと呼ぶ。
1997年4月1日発行、Jinらの米国特許第5,616,189号(本件と同じ譲受人に譲
渡)によれば、自動車用パーツの製造に適したT4およびT8テンパーを有する6000
系アルミニウム薄板の製法が開示され、この開示をもって本明細書の記載とする
。この製法によれば、薄板生成物を、冷間圧延後に、500〜570℃への加熱によっ
て溶体化処理し、次いで、急冷または冷却処理し、注意深く制御しながら冷却し
て「プレエージング」の程度の温度にしている。これらの処理によって、安定な
微粒子析出物クラスターが形成され、これにより、自動車パネルの塗装/焼付け
処理の間に、良好に分散した微粒子析出物構造の形成が促進され、その結果、比
較的硬いT8Xテンパーになる。
具体的には、この急冷または冷却方法によれば、中断することなく中間温度に
溶体化温度から冷却し、次いで、さらに中断することなく実質的により遅い速度
で室温にアルミニウム合金をさらに冷却している。この標的中間温度は、単一工
程または多数工程で達成することができる。
残念なことに、このようにして、直冷(DC,direct chill)キャストインゴッ
トから製造された薄板生成物は、しばしば、ローピング(roping)、リッジング(
ridging)または「ハケ」すじとして知られた現象(以下、「ローピング」なる
用語を用いる。)を被る。この現象は、薄板の自動車用パーツへの形成過程で適
用される、薄板生成物の圧延方向を横断する方向の歪成分によって現れる。ロー
ピングは、局部的で不均一な変形によって引き起こされる、不均一パターンの表
面レリーフであり、これは、薄板品の圧延方向に隆起する。局部的で不均一な変
形による、このようなバンドは、可視的な表面上のうねりとして現れ、自動車用
パーツ製品の最終表面仕上げが、損なわれる。
ローピングは、この分野では他の場合にも見られ、処理の中間段階で再結晶化
を行うように改良した薄板製造法によって、抑制しうることがわかっている。ロ
ーピングの抑制法は、例えば1996年1月2日発行、Armand J.Beaudoinらの米国
特許第5,480,498号(Reynolds Metals Companyに譲渡)および1990年1月30日発
行、Matsuoらの米国特許第4,897,124号(Sky Aluminum Co.,Ltd.に譲渡)におい
て提案されている。これらの特許によれば、バッチアニール工程(例えば、温度
316〜538℃での加熱)を、薄板生成物形成の中間段階(例えば、熱間圧延後で冷
間圧延前の段階または冷間圧延の早期段階)に導入することによって、ローピン
グを制御している。
しかしながら、この種の中間バッチアニール処理を、6000系または2000系アル
ミニウム合金に対して実施すると、T4テンパーの強度低下が起こるだけでなく、
Jinらの特許に記載の溶体化処理/制御冷却工程に合金を付すと、T8Xテンバーの
強度低下も生じる。このように、ローピングを制御/防止する試みは、この種の
合金で達成されるはずの好適なT4/T8Xテンパー特性の利点を減少/排除してし
まう。
したがって、所望のT4/T8Xテンパー特性を保持しつつローピングをほどんど
または全く示さないような、6000系または2000系自動車用アルミニウム合金薄板
生成物の改善された製造法についての開発が、必要である。
発明の概要
本発明の目的は、許容可能なT4/T8Xテンパー特性を保持しつつ6000系または2
000系アルミニウム合金薄板生成物のローピング傾向を減少または抑制するため
の改善された方法を提供することである。
本発明の別の目的は、6000系または2000系アルミニウム合金薄板生成物のロー
ピング傾向を減少または抑制するための改善された方法を提供することである。
本発明の1つの要旨によれば、本発明は、6000系または2000系アルミニウム合
金製のアルミニウム薄板品を製造する方法であって、キャストインゴットを直冷
キャスト法によって形成し、このインゴットを皮ムキ処理に付して皮ムキインゴ
ットを形成し、この皮ムキインゴットを温度範囲480〜580℃で48時間未満の期間
均質化、即ち拡散加熱して(好適には、インゴットを上記温度範囲の上限温度で
あるピーク温度に単に加熱して)、均質化インゴットを形成し、均質化インゴッ
トを圧延して、最終厚みの薄板品を形成する方法において、均質化インゴットを
最終厚みに、熱間圧延によって直接圧延するか、または均質化インゴットを、熱
間圧延および所望により冷間圧延して、中間厚み(これは、最終厚みに達するの
に15〜40%の厚みの減少が必要な厚み)の薄板品を形成し、次いで中聞厚みの薄
板品を冷間圧延して、最終厚みの薄板品を形成することを特徴とする方法を提供
する。
本明細書に用いられる「冷間圧延」なる用語は、室温から最大で約150℃の温度
で実施する圧延操作を意味する。また本明細書に用いられる「熱間圧延」なる用語
は、約300℃を超える温度、好適には約520℃の温度で実施する圧延操作を意味す
る。
本発明は、また本発明の方法によって製造されるアルミニウム薄板品を提供す
る。
本発明の方法は、最終薄板生成物にローピング傾向を導入しうるのは、冷間圧
延工程であるとの知見に基づく。冷間圧延工程において、厚みの減少を過度(40
%またはそれ以上)に行えば、ローピング欠陥は、許容されないものとなる。
これとは対照的に、熱間圧延工程は、ローピング傾向を最終薄板品に導入しな
い。このため、最終厚みへの減少を、熱聞圧延単独によって達成することができ
れば、ローピング欠陥を形成する傾向を伴う冷間圧延工程を省略することができ
る。
冷間圧延工程を採用する方法の場合、冷間圧延によって、合金薄板の厚みを、
好適には最終厚みまで18〜40%、より好適には20〜35%、特に好適には20〜30%
の範囲で減少させる。
冷間圧延を採用する本発明の方法では、好適には熱処理工程(例えば、薄板を
温度280〜560℃に18時間まで加熱する工程)を用いて、薄板の厚み減少の段階で
アニールし、次いで熱間圧延工程を、例えば、冷間圧延の開始前、または1また
はそれ以上の冷間圧延工程を用いる場合には冷間圧延工程と冷間圧延工程の間に
行う。熱処理工程は、冷間圧延工程と冷間圧延工程との間で行う場合、通常、最
後から2番目の冷間圧延工程と最後の冷間圧延工程との間で実施する。次いで、
最終の冷間圧延工程によって、15〜40%の厚みの減少を行う。
本発明の方法(即ち、冷間圧延を用いる方法および用いない方法)では、また
好適には溶体化工程(例えば、480〜580℃の温度で加熱)を採用して、この工程
を最終厚みの薄板品に対し行う。この工程の後、好適には、前記特許(Jinら)
記載のタイプの制御したプレエージング工程を行い、この工程によれば、例えば
、薄板品を、溶体化温度から中間温度に急冷し、次いで、中間温度から室温まで
より遅い速度(例えば、≦2℃/時)で冷却する。
上記した工程によって処理される合金は、好適にはAA6111アルミニウム合金で
あるが、本発明の方法は、6000系または2000系合金のような他の合金(特に、銅
を含む場合にはAA6016合金)にも有効である。
したがって、本発明の好適な態様によれば、合金から、キャストインゴットを
直冷キャスト法によって形成し、このキャストインゴットを皮ムキ処理に付して
、
皮ムキインゴットを形成し、この皮ムキインゴットを温度480〜580℃で48時間未
満の期間均質化して、均質化インゴットを形成し、この均質化インゴットを中間
厚みに熱間圧延および冷間圧延して、中間薄板品を形成し、この中間薄板品を温
度280〜560℃で18時間まで熱処理して、熱処理中間薄板品を形成し、この熱処理
中間薄板品を冷間圧延して、その厚みを15〜40%減少させて最終の厚みを得る。
最終厚みの薄板品は、次いで温度範囲480〜580℃で、好適には連続熱処理炉によ
って溶体化処理し、急冷し、次いでJinら記載の方法に従いプレエージングする
。最後に所望により、プレエージングした材料を、レベリング(平滑化)を含め
、種々の仕上げ操作に付して、平らな薄板品を得る。
本発明の方法で製造した材料は、改善された曲げ成形性を示し、パネルへの成
形後にローピングライン(ハケすじ)を殆どまたは全く示さず、かつ、常法で処
理した同種の合金(例えば、AA6111-T4材)よりも塗料の硬化後に高い強度を示
した。
図面の簡単な説明
図1は、本発明の方法による好適な工程を示すフローチャート、
図2は、本発明の方法による別の好適な工程を示す、図1と同様なフローチャ
ート、および
図3は、図1および図2の方法に使用される好適な装置の模式図である。
発明の詳細な説明
前記したように、意外にも、本発明者らによれば、AA6111およびAA6016のよう
な6000系合金薄板材並びにある種の2000系合金薄板材は、熱間圧延による単独処
理の後でも、ローピングを示さないことが、判明した。熱間圧延材料は、その後
の冷間圧延(≧30%)によってローピングの徴候を示し、約40%の厚み減少で完
全なローピングを示す。したがって、冷間加工の程度は、ローピングに対し、影
響を与えるが、これに関するメカニズムは、完全には理解されていない。
以下の記載は、AA6111合金について実施されている方法を参考にしているが、
6000系および2000系などの他の合金の例示であると、理解される。
通常のAA6111合金薄板は、市販寸法のインゴットから製造されるが、この
インゴットを、皮ムキ処理し、均質化し、≧60%に熱間および冷間圧延し、その
後、溶体化熱処理(溶体化)して、T4テンパーを得る。このような材料は、形成
によってローピングを示す(標準試験法によれば、薄板を横断方向に15%歪ませ
、次いで表面を軽くストーニングする)。本発明によれば、熱間圧延後の冷間圧
延(冷間圧延が正に必要な場合)による減少量を次のように規定する限り、実質
的にローピングを形成しない薄板材を製造することができる。<40%、好適には
15〜40%、より好適には18〜40%、特に好適には20〜35%、最も好適には20〜30
%。15%未満の冷間圧延では、溶体化処理の間に粗い粒子が形成し、これにより
、形成後に「ユズ肌」パターンとなる。このような外観は、許容できるものでな
く、特に、自動車用外部パネル用途では受け入れられない。
工業プラントによって、15〜40%の最終冷間圧延に付されうるような、所定品
質の熱間圧延材料(再生薄板)を製造することは、非常に困難である。非常に薄
い厚みの再生薄板を製造することを除き、このような条件を獲得する唯一の方法
は、初期冷間圧延後に、中間厚み薄板の熱処理を含めることである。注目すべき
は、中間熱処理の目的は、熱間圧延および冷間圧延によって貯蔵されたエネルギ
ーを、析出粒子の過剰な粗粒子化を生じさせることなく、減少させることである
。粗粒子は、溶体化処理の間に完全に溶解させるのが困難であり、望ましくない
ものである。なぜなら、粗粒子は、プレエージング法(最終厚みの材料の溶体化
後に実施、JinらのUS-5,616,189)によって達成される強度増加に悪影響を与え
るからである。さらに、未溶解粒子は、一定の物性を達成するのを困難にさせる
ため、望ましくない。
所望による熱処理によれば、例えば、薄板を温度範囲280〜560℃に加熱し、18
時間までの期間均熱する。熱処理に必要な最小時間は、用いる温度に依存する。
温度範囲の上限では、必要な最小時間は、非常に短い(ピーク温度では、実質的
にゼロの時間)。具体的な事例に必要な時間は、当業者ならば、容易に決定でき
る。好適には、材料は、コイル形態にて、350℃またはそれ以下の温度で18時間
までバッチ熱処理する。これとは別の態様として、より高いバッチアニール温度
と、より短い時間とを用いて、材料を例えば、約400℃で約1時間の熱
処理に付す。しかしながら、350〜400℃の温度では、熱処理時間は、最短にすべ
きであり、これにより、前記した理由のため、過剰の粗粒子化を回避することが
できる。
熱処理後、最終厚みへの冷間圧延を開始し、完了し、最終厚みの材料を、好適
には温度範囲480〜580℃にて、好適には連続アニール/溶体化ラインで溶体化工
程に付し、次いでプレエージングに付す。
好適なプレエージング工程によれば、例えば、薄板を溶体化温度から温度範囲
65〜75℃に急冷し、次いで、≦2℃/時の速度で室温までゆっくり冷却する。
しかしながら、より複雑なプレエージング工程によれば、例えば、4つの非断
続冷却段階または経路を採用する。第1に、溶体化温度から約350〜約220℃の温
度に速度10〜2000℃/sで冷却し、第2に、合金薄板を約350〜約220℃の温度から
約270〜140℃の温度に速度約1〜約50℃/sで冷却し、第3に、約120〜約50℃の温
度に速度5℃/分〜20℃/秒で冷却し、第4に、約120〜約50℃の温度から室温に10
℃/時未満の速度で冷却する。
以上のプレエージング(または急冷)プロセスは、薄板を室温に10℃/時未満
の速度で冷却する最終工程前に、付加的な薄板巻取り工程と共に、実施すること
ができる。
これとは別の態様として、急冷法は、例えば次のように実施することができる
。薄板を、水冷、水煙冷却または強制空気冷却によって強制冷却し、冷却した薄
板を温度50〜100℃で巻取り、次いでコイルを約10℃/時未満の速度で冷却する。
薄板は、最も好適には、温度120〜150℃で強制冷却工程から導出し、また、好適
には温度60〜85℃で巻取り処理する。
以上の方法の一般的段階は、添付の図面の図1に示した。この図1は、冷間圧
延工程および中間熱処理工程の使用を示す。これとは対照的に、添付の図2は、
冷間圧延工程を行わずに熱間圧延を行って最終厚みにさせる場合の好適な方法を
示す。両方法とも、急冷およびプレエージングを最終厚みの材料に対し、行った
。
図3は、好適な態様の本発明の方法における種々の工程に使用される装置の
代表例を示す。直冷キャストインゴット10は、まず11によって均質化に付し、次
いで圧延機12によって熱間圧延して、コイル形態の熱間圧延材料(再生材料)13
を形成する。矢印14、15および16は、別々の経路を示す。矢印14は、最終厚みに
熱間圧延される再生材料13に関する。この材料は、溶体化工程およびプレエージ
ング処理に、連続アニール/溶体化ライン17によって付し、これにより、自動車
用パーツ製造業者への供給に適したT4テンパーの最終生成物を得る。
矢印15は、最終厚みではない熱間圧延した材料13によって採られる経路である
。この材料13は、まず18によって冷間圧延工程に付して、最終厚みではない材料
を形成する。次いでこの材料は、バッチアニール炉19または連続アニールライン
20によって熱処理に付す。次いで熱処理生成物は、圧延機21によって最終の冷間
圧延に付して、前記したような15〜40%の厚み減少を行って、所定の厚みを得る
。次いで、前記したような溶体化/プレエージング工程をライン17によって行う
ことができる。
矢印16は、前記したように、所望による工程として、熱処理後に冷間圧延のみ
を炉19またはライン20によって行う工程を示す(すなわち、この場合には、圧延
機18による予備的冷間圧延は、行わない)。その後の工程は、矢印15に従う材料
と同じである。
全ての場合、冷間圧延は、全く用いないか、または熱処理後に用いて、15〜40
%の範囲で最終厚みに、中間生成物の厚みを減少させることがわかる。熱間圧延
再生材料13と最終厚みの生成物との間で、厚み減少の程度が不十分な場合、予備
的冷間圧延を、熱処理に先立ち、圧延機18によって実施することができる。熱処
理前に冷間圧延によって形成された厚み減少の程度は、ローピング欠陥に影響を
与えない。この熱処理後の冷間圧延は、注意深く制御して、ローピング欠陥を生
成物に与えないことが必要である。
本発明の方法は、曲げ成形性と、表面外観と、塗料焼付け特性とを良好に組み
合わせた、最適な薄板材を製造しうるように、設計されている。本発明の方法で
製造した材料は、現在市販の従来品よりも優れているようである。
次に、比較例および実施例を挙げて、本発明およびその利点をさらに詳しく説
明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
比較例1〜3
市販寸法の3つのインゴット(AA6111組成)を直冷キャストした。インゴット
を皮ムキ処理し、560℃で均質化し、2.54mmの厚みに熱間圧延した。2つの熱間
圧延コイルを一緒に、バッチ炉による400℃への加熱によって、アニールし、1
時間保持し、次いでファンで冷却した。これらのコイルを冷間圧延し、最終厚み
1.03mmおよび0.93mmに、それぞれ、59%および64%の厚み減少を行った。冷間圧
延コイルを560℃で溶体化し、65〜75℃で巻取り処理し、室温まで速度≦2℃/時
で冷却した。次いで材料を最終操作に付して、清浄し、レベリングし、所定の長
さに切断した。所定の長さに切断したサンプルを用いて、材料の特性を測定した
。
横断方向の引張特性は、標準ASTM試験片を用い、クロスヘッド速度2.54mm/分
(0.025歪)で測定し、次いで12.7mm/分で破断した。材料の曲げ特性を標準ASTM
E290-B7試験法で測定した。材料の微結晶構造は光学的に測定した。ローピング
試験は、次のように行った。45mm幅のパネルを15%、横断方向に歪ませ、次いで
表面を軽くストーニング(stoning)してその形状を明確にした。
表1に、プラントから回収した従来品バッチアニール材料の特性をまとめた。表1 種々のテンパーによるAA6111合金の物性 1:降伏点強度
2:極限引張強度
3:総伸び
4:歪焼入れ指数
5:長手方向
6:横断方向
7:2%ストレッチ+177℃×0.5時間によってシュミレーション
表1において、比較例1の従来品AA6111特性について、製造したままの材料お
よび塗料焼付けテンパー材料は、各々、140MPaの降伏点強度、276MPaの極限引張
強度および26%の総伸び並びに269MPaの降伏点強度、344MPaの極限引張強度およ
び19%の総伸びである。製造したままの材料は、長手方向および横断方向の各々
について、0.4および0.5の曲げ成形性(r/t)を示した。この材料の粒径は、35
×15μmであって、横断方向の15%歪の後、著しいローピングを示した。
表1の実施例2および3は、バッチ炉によって一緒にアニールした、2つのAA
6111コイルの特性を示す。2つのコイルの特性は、相互に著しく異なってお
り、これは、一定の特性を達成することを試みた場合のバッチアニール法に伴う
問題点を明確に示している。これらの差異は、析出粗粒子Mg2Si/Siの量の相違
によるものである。実施例2の合金は、実施例3の合金よりも粗い粒子を示す。
全般的に、バッチアニール材料の塗料焼付け特性は、非バッチアニール材料より
も低い(表1、比較例1と比較例2および3とを比較)。前記したように、この差
異は、バッチアニール材料がプレエージング処理に応答しないことに、ほぼ関係
する。
バッチアニール材料は、ローピングを示さず、これは、米国特許第4,897,124
号および第5,480,498号(各々の譲受人:Sky AluminiumおよびReynolds Metal C
ompany)の教示に一致する。しかしながら、バッチアニール生成物は、非バッチ
アニール生成物に通常見られるレベルの塗料焼付け強度が得られない。加えて、
バッチアニール材料の特性は、工業的な処理環境では制御するのが困難である。
これが、自動車用薄板の用途のために、より良好な製造法を開発することが必要
な理由である。実施例1および2
市販寸法の2つのインゴット(AA6111組成)を工業的に直冷キャストした。イ
ンゴットを皮ムキ処理し、560℃で均質化した。一方のインゴットは、2.54mmの
厚みに熱間圧延し、他方のインゴットは、2.3mmの厚みに熱間圧延した。2.54mm
厚みの熱間圧延コイルおよび2.3mm厚みの熱間圧延コイルを、それぞれ、厚み1.5
mmおよび1.3mmに冷間圧延した。冷間圧延コイルを次いで550℃で連続アニール炉
によって熱処理し、急冷した。1.5mmおよび1.3mm厚みの熱処理コイルを、それぞ
れ、最終厚み1.0mmに対し33%および20%まで冷間圧延した。冷間圧延コイルを
、550℃で溶体化し、急冷し、65〜75℃で巻取り処理し、室温まで速度≦2℃/時
で冷却した。次いで材料を、レベリングせずに、所定の長さに切断した。所定の
長さに切断したサンプルを用いて、材料の特性を測定した。表2 本発明に従い製造したAA6611合金の物性 表2の製造したままの材料の降伏点強度は、比較例1(表1)よりも低い。こ
の相違は、主として、実施例の材料をレベリング操作に付さなかったためである
。実施例1および2の材料についての曲げ成形性は、相互に異なるが、表1の比
較例1と表2の実施例1および2とを比較すると、従来の材料よりも改善されて
いる。塗料焼付け特性については、実施例1および2の材料は、表1のバッチア
ニール材料よりも良好である。33%冷間圧延材料は、ローピングの低下を示すが
、20%冷間圧延材料は、いずれのローピングをも示さない。全般的に、ローピン
グ試験に付した後の表面外観は、従来の材料よりも良好である。20%冷間圧延材
料の粒径は、33%冷間圧延材料よりも大きい。これらの実施例の粒径は、共に、
通常の生成物についての粒径範囲に入る。
実施例3
1つの市販寸法のインゴット(AA6111組成)を、直冷キャストし、皮ムキ処理
し、560℃で均質化し、1.25mmの中間厚みに熱間圧延および冷間圧延した。この
材料を、300℃で4時間、バッチ炉によって熱処理し、最終厚み1.00mmに冷間圧
延した。冷間圧延コイルを550℃で溶体化し、連続アニールラインで急冷し、65
〜75℃で巻取り処理し、室温まで速度≦2℃/時で冷却した。得られた材料は、サ
ンプリングして種々の特性について評価した。
AA6111材料の引張特性を、表3に掲げた。表3 本発明に従い製造したAA6611合金の物性 得られた特性は、表2の実施例1および2の結果と同様である。曲げ成形性お
よび塗料焼付け特性は、従来の材料(表1の比較例1)よりも良好である。また
材料のローピング欠陥も、従来の材料よりも良好である。
以上の比較例および実施例から明らかなように、本発明の方法によれば、曲げ
成形性、ローピングおよび塗料焼付け特性に関し、今日市販されている製品より
も、より良好な薄板生成物を提供することができる。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
C22F 1/00 691 C22F 1/00 691C
692 692A
694 694A
(72)発明者 ジェフリー,ポール・ウィリアム
カナダ、ケイ7エム・5エイ6、オンタリ
オ、キングストン、ホルゲイト・クレセン
ト722番
(72)発明者 ロイド,デイビッド・ジェイムズ
カナダ、ケイ0エイチ・1ジー0、オンタ
リオ、バス、ルーラル・ルート・ナンバー
3番、ニコルソンズ・ポイント106
(72)発明者 バーガー,ジーン・ブルース
カナダ、ケイ7ピー・1シー7、オンタリ
オ、キングストン、アップル・ダウン・ド
ライブ853番
(72)発明者 エバンズ,ダニエル・ロナルド
カナダ、ケイ0エイチ・1ジー0、オンタ
リオ、バス、ルーラル・ルート・ナンバー
3番
(72)発明者 マロワ,ピエール・アンリ
カナダ、ケイ7エム・4ジェイ5、オンタ
リオ、キングストン、クレセント・ドライ
ブ38―ビー番