発達凸凹と向き合う
発達障害由来の「お金の失敗」 意思や努力ではなく「仕組み」で対策を 専門FPに聞く(上)
2025.10.09
発達障害の特性から、衝動的に高額な買い物をしてしまったり、お金の管理がうまくできなかったりと、金銭的な困難を抱える当事者は少なくありません。「自立したときにお金で失敗しないだろうか」と心配する保護者も多いのではないでしょうか。ADHD(注意欠如多動症)の当事者で、発達障害に特化したファイナンシャルプランナーの岩切健一郎さんに、発達障害の特性と金銭トラブルの関係性について聞きました。
(いわきり・けんいちろう)1986年生まれ。29歳で適応障害とADHDの診断を受ける。コンサルティング会社から外資系保険会社の営業職を経て、現在は保険代理店に在籍しながら、発達障害のある人やその家族に特化したファイナンシャルプランナーとして全国で活動している。著書に「発達障害かもだけど、お金のことちゃんとしたい人の本」(ダイヤモンド社)
特性が原因のコスト「ADHD税」
――岩切さんは29歳のときにADHDの診断を受けたそうですが、大学進学や就職も経験する中で、お金に関してどのような困難がありましたか。
私はもともとお金のことが苦手で、数多くの失敗をしてきました。奨学金の返済が遅れて裁判所に出頭することになったり、電気代やガス代の支払いを忘れて止められたり、ボーナスを毎日の立ち食い寿司で使い果たしたこともありました。
振り返ってみると、子どもの頃から忘れ物が非常に多かったです。毎朝、名札と帽子を探していましたし、ランドセルを家に忘れて学校に行ったこともありました。高学年になると、空気を読むといったコミュニケーションがうまくできず、友達関係を築くのが難しかったですね。
ADHDの特性として、衝動性が非常に強いという点があります。これによって、お金の管理が苦手になる傾向があるんです。これは私の肌感覚だけでなく、海外の論文などでも裏付けが取れている、世界共通の傾向のようです。
――具体的には、どのような失敗につながりやすいのでしょうか。
たとえば、リスクの高い無謀な投資をしてしまいがちというデータがあります。これは定型発達の人と比べて、有意な差が出ているという報告もあるほどです。「報酬系」という高揚感を覚える脳の部位が弱いので、日常生活では高揚感や刺激を感じにくいのです。満足を先に延ばすのが苦手という特性もあります。今「欲しい」と思ったら、今買わないと気が済まない、という感覚ですね。
「ADHD TAX」という言葉を聞いたことがありますか。海外のスラングで、直訳するとADHD税。つまりADHDの特性が原因でかかってしまうコストのことです。私はADHDの当事者として、また年間100件の相談を受けてきたFPとして、ADHD TAXを以下の七つに分けてみました。
・忘却税(税金やクレジットカードの支払い、レンタル品の返却忘れなど)
・衝動税(ネットショッピングやスーパーで目的外の商品を買うなど)
・時間税(電車に遅れてタクシーに乗る、時間管理ができず外部サービスを受けるなど)
・不安回避税(不要な機能がついた家電を買う、手厚すぎる保険に加入するなど)
・片付け迷子税(何度も同じ本を買う、食材を腐らせてしまうなど)
・疲労税(疲れやすく、自分にご褒美をあげたくなる)
・不注意税(忘れ物・落とし物、事故・破損など)
SNSではいろいろな人がADHD TAXを払った経験をシェアしてくれています。失敗しているのは自分一人ではないのだと、一緒に笑い飛ばしていきましょう。とはいえ、笑っているだけでは何も解決しないし、大きな失敗につながりかねません。ADHD TAXを少しでも減らすための対策を考えていく必要があります。