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朝日新聞デジタル

水戸まで行きたいと思わせる 地域活性化を目指す多彩なパン/Good bakes

FOOD
2026.01.13

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店内風景

店内風景

  • 池田浩明
    「パンラボ」主宰

    ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰。日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)。

ばりっ、もちもち「ツナと大葉のリュスティックサンド」

水戸市のど真ん中、京成百貨店のある泉町1丁目の交差点からすぐ。目抜き通りである黄門さん通り沿いに、宝飾店のようなたたずまいで「Good bakes」はある。コンクリート打ちっぱなしの床、壁にはアフリカのマスク。奥へ向かって伸びた陳列台に80種類ものパンが置かれる。ベーグルあり、菓子パンあり、食パンあり、高加水パンあり、デニッシュあり、ハード系あり。混み合う昼時の店内は、どれを買おうか迷いすぎて、陳列台の前をうろうろと何往復もする客が後を絶たない。

店内風景
店内風景

パンがこんなにも具材をおいしくする。そう感じさせられたのが「ツナと大葉のリュスティックサンド」。リュスティック(高加水のハード系パン)が、ばりっと割れ、もちもちと弾む。口の中で跳ねて跳ねて、そのたびにクラストからバターのような甘さが滲(にじ)みだす。中身もお餅のようにやわらかく、でも風味はお餅よりもっともっと甘い。きゅうりと大葉、ダブルでさわやかになったツナ。それがパンの甘さに包まれたときの至福はどうだ。

ツナと大葉のリュスティックサンド
ツナと大葉のリュスティックサンド

リュスティックは大内若葉シェフの原点のパンだ。

「パンを目指すきっかけになったのがリュスティック。はじめて食べたとき、『なんだこれ!』『パンってこんな美味(おい)しいんだ』。パンの概念が変わりました」

それまで美容師をしていたが、これを食べたことをきっかけにパン職人に転向。

「実家を継がないといけないと漠然と美容師をしてましたが、なにか自分でやりたいなと思いはじめた頃で。次なにかに鳥肌が立ったらそれを仕事にしようと思っていたんですよ」 

大内若葉シェフ
大内若葉シェフ
店内風景
店内風景

その鳥肌が立ったリュスティックこそ、水戸の名店「パンヤ・クルート」のもの。同店に即就職。そこで開かれた講習会では、リュスティックをフランスから日本に紹介した元ドンクの仁瓶利夫さん(故人)に直接教わる機会にも恵まれた。教え通り、こねすぎず「手で混ぜる感覚」。グルテンはあまり作らず、オーブンの熱で生地を持ち上げる。

「茨城の農家さんから直接仕入れた米粉と塩麴(こうじ)を入れて、ごはんに近いような感じに。日本人が好きな咀嚼(そしゃく)したときの感じを表現しています」

店内風景
店内風景
店内風景
店内風景

バゲットは、リュスティック生地を含め4種類も展開する。バゲットの硬さを苦手とする日本人が多い中、これは万人受けするだろうと思った「“ニシノカオリ”バゲット」。かりかりもかりかり。破裂する勢いで、軽やかに割れる。味わいも軽い。まるでソフトおかきのようにおだやかで、クルミかピーナツみたいなナッティさも兼ね備える。三重県産小麦「ニシノカオリ」100%使用。

「ニシノカオリに出会ったとき、国産でこういうナッティな風味を出せるんだなって衝撃でした。粉の甘さをなるべく残したまま焼いてあげたい」

“ニシノカオリ”バゲット
“ニシノカオリ”バゲット
バゲット、リュスティック、ホクシンバゲット、“ニシノカオリ”バゲット、大納言とクルミのバゲット、生ハムとローズマリーのバゲット、いちじくバゲットなど
バゲット、リュスティック、ホクシンバゲット、“ニシノカオリ”バゲット、大納言とクルミのバゲット、生ハムとローズマリーのバゲット、いちじくバゲットなど

こねは最小限でグルテンを作りすぎず、発酵も最小限、小麦の持っている風味を極力そのまま表現する。

ドーナツなど菓子パン類に使用するのはミルク生地。作るきっかけは、パンストック箱崎店で「白ストック」(ミルクパン)に衝撃を受けたこと。自分なりに解釈し、ものにするまで半年をかけた。

ハニーミルクドーナツ
ハニーミルクドーナツ

口の中が旨みの沼に「抹茶ミルクブレッドサンド」

その生地に抹茶クリームをはさんだのが「抹茶ミルクブレッドサンド」。はじめもっちり、やがてしゅわっと自己崩壊。抹茶のほろ苦さとともに、ぴかぴかのミルク風味が驚くほど湧きだす。クリームも生地もとろけまくって液体が舌を浸し、口の中が旨みの沼になる。

抹茶ミルクブレッドサンド
抹茶ミルクブレッドサンド

たたずまいはオーソドックスでいて、口にするといつのまにかやみつきの沼にはまっている。そんなパンが「キタノカオリ食パン」。

トーストすればぱりぱり、手で持つと垂れ下がるほどやわらかい。焼きこまれた耳が甘い。中身はぷるっとして、つるんと舌の上を滑り、とろけながら落ちていき、喉(のど)では快楽の甘い液体に変わっていて、胃の上に至るまでずっと甘さを感じている。

「最初はキタノカオリを50%ぐらい入れていましたが、甘すぎたので、30%に抑えました。『なにかわかんないけどおいしいよね』とか『ちょっとちがうかな』みたいなのをお客さんに感じとってもらえるラインを意識しています。『飛び抜けておいしい』っていうのは、興奮が入っちゃう。そういう興奮は僕はお店とパンには求めていなくて。なんかここいいねみたいな感覚を狙っています」

キタノカオリ食パン
キタノカオリ食パン

はっきりと意識はしないけれど、また食べたい、また来たいと思ってしまうような店。鳥肌が立ったり、食道のあたりがあったかくなったり。そんな“言葉未満”の体で感じるなにかにフォーカスするのが、大内さんのパンであり店作り。

「地方のパン屋さんは、東京のパン屋さんとちがって日が当たらないんですよ。僕が目指すのは、他県から茨城にわざわざ来てもらえるパン屋さん。それが地域の活性化になるって思っています」

偕楽園の梅だけではない。Good bakesがあるのだから、水戸はわざわざ行く価値がある。 

外観
外観

Good bakes
茨城県水戸市泉町2-2-36長谷川第3ビル1F
029-224-5005
10:30~18:30 
月水休み
https://www.instagram.com/goodbakes2023/

本編に載せきれなかったパンもたくさん!フォトギャラリーはこちら(写真をクリックすると、くわしくご覧いただけます)
「このパンがすごい!」紹介店舗マップ(店舗情報は記事公開時のものです)

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