数百万円を払って、ヘリコプターから獣を撃つ。1600万円を払って、酸欠と極寒に身を置く。ゴルフとワインに飽きた一部の超富裕層がいま熱狂しているのは、「命を奪う」という耐えがたい現実と向き合う体験だ。なぜ、成功の頂点に立った人間ほど血生臭い遊びに惹き寄せられるのか。富裕層マーケティングを長く手掛ける西田理一郎さんが解説する――。
ヘリコプターからシカを乱射する遊び
ニュージーランド南島、サザンアルプスの険しい山岳地帯。轟音を響かせて飛行するヘリコプターのドアが開かれる。冷たい風が機内に吹き込む中、迷彩服に身を包んだ男が眼下を凝視する。
ターゲットは、険しい崖に生息するヒマラヤタールやアカシカだ。ガイドの合図とともに、男はライフルのスコープをのぞき込む。そして、引き金に指をかけた――。
これは映画のワンシーンではない。今、世界の一部の超富裕層の間で密かなブームとなっている「ヘリコプター・ハンティング」の一幕だ。オーストラリアからニュージーランドにかけて、増えすぎた野生のシカを環境保護を目的に大量駆除するというもの。費用は驚くほど高額で、5日間のパッケージは約1万5000ドルから2万ドル(230万円~300万円)、ヘリコプター費用などを含めると総額で3万ドルから5万ドル(800万円)に達することもある。
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