明細書 抗生物質によるタンパク質の転写 ·分解二重制御法 技術分野
本発明は、 抗生物質による遺伝子の転写制御方法おょぴノまたはタン パク質の分解制御方法に関する。 特に、 本発明は、 抗生物質による遺伝 子の転写制御およびタンパク質の分解制御を含む二重制御方法に関する。 背景技術
細胞タンパク質の機能解析等を目的として、 外来刺激により制御可能 な遺伝子発現系を開発する試みがなされている。
特表平 1 1一 5 0 6 9 0 1は、 1つ以上の t e tオペレーターに結合 した遺伝子の発現を調節することができる、 転写ァクチべ一ターおよび 転写ィンヒ ビター融合タンパク質を開示する。 特表平 1 1— 5 0 6 9 0 1に開示される転写ァクチベータ一によれば、 テトラサイタリンの存在 時に t e tオペレーターに結合して t e tオペレーターに結合された遺 伝子の転写を刺激するが、 不在時には結合等しない (したがって、 転写 の刺激をしない) 、 という制御が可能であると報告されている。
S ί ANKUNA^ K et al. , 'Conditional protein alleles using knockin mice and a chemical inducer of dimer ization" , Mol Cell., 2003, Vol. 12, No. 6, p.1615- 24は、 F RAP ( F K B P 1 2—ラパマイシン結合 タンパク質) の F KB P— 1 2ラパマイシン結合のための最小領域であ る 8 9アミノ酸ドメインである F R B *と、 G S K— 3 (内因性のグ リコーゲンシンターゼキナーゼー 3 β ) との融合タンパク質 G S K— 3 I3 F R B *を開示する。 STANKUNAS K et al は、 F R B *が G S K _ 3 j8の不安定化を引き起こすこと、 すなわち、 G S K— 3 |3が F R B *と 融合することによって不安定化し、 分解することを記載する。 さらに、 STANKUNAS K et al は、 G S K_ 3 i3 F R B *力 ラパマイシン誘導体
(C 2 0— M a R a p ) の存在下で、 F K B P 1 2に結合し、 この相互 作用が G S K— 3 |3 F R B *を安定化することを記載する。 STANKUNAS K et al のシステムは、専らラパマイシン誘導体を利用することによって、 F KB *と F KB P 1 2の 2量体化を促進するものとして記載されてい る.。 発明の開示
STANKUNAS K et al 記載のシステムでは、( i )標的タンパク質(Target)、 ( i i ) F R B *、 ( i i i ) F KB P 1 2、 および ( i v) ラパマイ シン誘導体(C20- MaRap) の 4要素を必要とする。 すなわち、 STANKUNAS K et al の 2量体化システムにおいては、 G S K— 3 j3 F R B *融合タン パク質を安定化する要素として、 細胞内に元々存在する FKB P 1 2の 存在を必要とする。 外来の融合タンパク質と細胞内の正常タンパク質と が結合してはじめて分解制御がかかるため、 STANKUNAS K et al 記載の システムを使用する際には細胞への有害作用の可能性を考慮しながら実 験をしなくてはならない。 また、 STANKUNAS K et al で使用されるラパ マイシン誘導体は、 臨床での使用例もなく、 また免疫制御効果など余分 な作用がどう生物に影響するか未知数な部分が多く、 実験後の廃棄物に 関しても、 取り扱いに注意が必要である。
したがって、 生きた細胞中でのタンパク質量を、 人工的分解制御機構 を用いてコントロールするための、 代華的システムまたはより使いやす いシステムが求められている。
他方、 本発明者の知見から、 特表平 1 1一 5 0 6 9 0 1に記載される ような遺伝子の転写制御のシステムにおいても、また、 STANKUNAS K et al に記載されるようなタンパク質の分解制御のシステムにおいても、 生き た細胞中でのタンパク質発現量の制御効果が不十分な場合が生じること がわかっている。 そのような場合、 導入遺伝子の非誘導時の発現抑制が 不十分であるために、 細胞毒性を示す遺伝子、 細胞の増殖に影響するよ うな遺伝子等の導入が極めて困難であり、 遺伝子発現の効果の正確な判
定が難しい。
したがって、 生きた細胞内でのタンパク質の発現の制御をより確実に するためのシステムが求められている。 したがって、 本発明は、 以下のような目的のタンパク質の発現制御の ための発現べクター、 該発現べクターを導入された宿主細胞もしくは宿 主生物、 該発現ベクターを含む組成物、 キッ ト、 発現制御システム、 お よび発現制御方法を提供する。
( 1 ) ( a ) 抗生物質に結合するリブレッサータンパク質の変異体と 目 的のタンパク質との融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、 お よび
( b ) ( a ) のポリヌクレオチドの転写を制御するタンパク質をコー ドするボリヌク レオチド、
を発現可能に含む発現ベクターであって、
細胞内での ( a ) のポリヌクレオチドの転写および ( a ) のポリヌク レオチドの発現産物である上記融合タンパク質の分解が、 細胞内での抗 生物質の有無によって制御される、 発現ベクター。
( 2 ) 上記 ( b ) のポリヌク レオチドが、 上記 ( a ) のポリヌク レオチ ドの転写制御領域に結合して該ポリヌクレオチドの転写を増強するタン パク質をコードし、 該タンパク質は、 上記抗生物質と結合した場合にの み該転写制御領域に結合することができる、 上記 ( 1 ) に記載の発現べ クタ一。
( 3 ) 上記 ( a ) のポリヌクレオチドの発現産物である上記融合タンパ ク質が、 上記細胞内で、 上記抗生物質と結合していないときに分解され る、 上記 ( 1 ) または ( 2 ) に記載の発現ベクター。
( 4 ) 上記抗生物質が、 テ トラサイク リ ン系抗生物質である、 上記 ( 1 ) 〜 ( 3 ) のいずれかに記載の発現ベクター。
( 5 ) 上記テ トラサイク リ ン系抗生物質が、 テ トラサイク リ ン、 または その誘導体である ドキシサイク リ ン、 ォキシテ トラサイク リ ン、 クロル
テ トラサイク リ ン、 もしくは無水テ トラサイク リ ンである、 上記 (4) に記載の発現ベクター。
( 6 ) 上記リプレッサータンパク質の変異体が、 変異型 T e t Rタンパ ク質である、 上記 ( 1 ) 〜 ( 5) のいずれかに記載の発現ベクター。 ( 7) 上記変異型 T e t Rタンパク質が、 野生型 T e t Rタンパク質の ァミノ酸配列において、 少なく とも 1つのアミノ酸残基が置換されてい るアミノ酸配列を有する、 上記 ( 6 ) に記載の発現ベクター。
( 8 ) 上記ァミノ酸残基の置換が、 野生型 T e t Rタンパク質のアミノ 酸配列の 9 5位のァスパラギン酸、 1 0 1位のロイシン、 および 1 0 2 位のグリ シンのいずれか少なく とも 2つの部位において存在する、 上記
( 7) に記載の発現ベクター。
( 9 ) 上記目的のタンパク質が、 蛍光タンパク質または発光タンパク質 である、 上記 ( 1 ) 〜 ( 8) のいずれかに記載の発現ベクター。
( 1 0) 上記目的のタンパク質が、 治療用タンパク質である、 上記 ( 1 ) 〜 ( 9) のいずれかに記載の発現ベクター。
( 1 1 ) 上記目的のタンパク質が、 機能解析に供するためのタンパク質 である、 上記 ( 1 ) 〜 ( 9 ) のいずれかに記載の発現ベクター。
( 1 2) 上記 ( 1 ) 〜 ( 1 1 ) のいずれかに記載の発現ベクターで遺伝 子導入された宿主細胞または宿主生物。
( 1 3 ) 上記 ( 9 ) に記載の発現ベクターを含有する、 細胞内または生 体内ィメージング用組成物。
( 1 4) 上記 ( 1 0) に記載の発現ベクターを含有する、 治療用組成物。
( 1 5 ) 上記 ( 1 1 ) に記載の発現ベクターを含有する、 タンパク質機 能解析用組成物。
( 1 6 )テ トラサイタ リ ン系抗生物質と組み合わせて使用する、上記( 1 3) 〜 ( 1 5) のいずれかに記載の組成物。
( 1 7 ) 上記テ トラサイク リ ン系抗生物質が、 テ トラサイク リ ン、 また はその誘導体である ドキシサイク リ ン、 ォキシテ トラサイク リ ン、 クロ ノレテ トラサイク リ ン、 もしく は無水テ トラサイク リ ンである、 上記 ( 1
6 ) に記載の組成物。
( 1 8 ) 上記 ( 1 ) 〜 ( 1 1 ) のいずれかに記載の発現ベクター、 上記 ( 1 0 ) に記載の宿主細胞もしくは宿主生物、 または上記 ( 1 1 ) 〜 ( 1 5 ) のいずれかに記載の組成物を含む、 キッ ト。
( 1 9 ) 細胞内での目的のタンパク質の発現を転写レベルおよびタンパ ク質分解レベルで制御するためのタンパク質発現制御システムであって 細胞、
上記細胞内に導入される上記 ( 1 ) 〜 ( 1 1 ) のいずれかに記載の発 現べクター、 および
上記細胞内に導入される抗生物質、
を含む、 システム。
( 2 0 ) 細胞内での目的のタンパク質の発現を転写レベルおよびタンパ ク質分解レベルで制御するタンパク質発現制御システムであって、
( a ) 抗生物質に結合するリプレッサータンパク質の変異体と 目的の タンパク質との融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを発現可 能に含む第 1 の発現ベクター、 および
( b ) ( a ) のボリヌクレオチドの転写を制御するタンパク質をコー ドするポリヌク レオチドを発現可能に含む第 2の発現ベクター、
を含み、
上記第 1およぴ第 2の発現ベクターが導入された細胞内で、 ( a ) の ポリヌク レオチ ドの転写および ( a ) のポリヌク レオチ ドの発現産物で ある上記融合タンパク質の分解が、 該細胞内での抗生物質の有無によつ て制御される、 タンパク質発現制御システム。
( 2 1 ) 抗生物質によって、 細胞内での目的のタンパク質の発現レベル を制御する方法であって、
上記 ( 1 ) 〜 ( 1 1 ) のいずれかに記載の発現ベクターを細胞内に導 入する工程、 および
上記細胞内での抗生物質の濃度を調節することによって、 上記目的の タンパク質の発現レベルを調節する工程
を含む、 また、 本発明の別の局面では、 以下の目的遺伝子発現制御用組成物、 キッ ト、 システム、 および方法が提供される。
( 2 2 ) 目的遺伝子を組換え配列の間および Zまたは下流に発現可能に 含む発現ベクターを導入した細胞において、 抗生物質の有無によって該 細胞内での該目的遺伝子の発現を制御するための、 部位特異的組換え酵 素を利用した遺伝子発現制御組成物であって、
( a ) 抗生物質に結合するリプレッサータンパク質の変異体およぴ組換 え酵素との融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを発現可能に 含む発現ベクター、 ならびに
( b ) ( a ) のポリヌクレオチドの転写を制御するためのタンパク質を コードするポリヌクレオチドを発現可能に含む発現ベクターを含む、 組 成物。
( 2 3 ) 上記組換え酵素が、
( a ) C r e リ コンピナーゼ ;
( b ) F L P リ コンピナーゼ ;
( c ) ファージ ph i (フアイ) 13ィンテグラーゼ ;
( d ) ファージ R4イ ンテグラーゼ ;
( e ) ファージ TP901- 1イ ンテグラーゼ ;
( f ) ファージ λ (ラムダ) ィンテグラーゼ ;
( g ) ファージ HK022インテグラーゼ ;
( h ) β (ベータ) リ コンビナーゼ ;
( i ) Rリ コンピナーゼ ;
( j ) γ δ (ガンマデルタ) レソルバーゼ ;
( k ) Dre リ コンビナーゼ ; および
( 1 ) フアイ Rvlイ ンテグラーゼ
からなる群から選択される 1以上のタンパク質である、 上記 ( 2 2 ) に 記載の組成物。
上記組換え酵素が、
( a ) I n t
(b ) I H F
( c ) X i s
( d) F i s
( e ) H i n
( f ) G i n
( g ) C i n
(h) T h 3 レソノレバーゼ
( i ) T n d X ;
( i ) X e r C ; および
(k) X e r D
からなる群から選択される 1以上のタンパク質である、 上記 ( 2 2) に 記載の組成物。 '
( 2 4) 上記組換え配列が、
( a ) ΙοχΡ;
、 b ) irt (Fkp recombination target) ;
( c ) attB/attP;
( d ) six;
( e ) R S ;
( f ) res;
( g ) rox; およぴ
(h) 組換えを起こす能力を保持した ( a ) 、 (b ) 、 ( c ) 、 ( d) 、
( e ) 、 ( f ) 、 または ( g) の組換え部位の変異体、 改変体、 および 誘導体からなる群から選択される 1以上の組換え配列を含む、 上記 (2 2 ) または ( 2 3 ) に記載の組成物。
( 2 4 a ) 上記組換え配列が、
、 a ) p s 1 ;
( ) d i f ;
( c ) c e r
( d ) f r t
( e ) a t t ; ぉよび
( f ) 組換えを起こす能力を保持した ( a ) 、 (b ) 、 ( c ) 、 ( d) 、 または ( e ) の組換え部位の変異体、 改変体、 および誘導体からなる群 より選択される 1以上の組換え配列を含む、 上記 (2 2) または ( 2 3 a ) に記載の組成物。
( 2 5) 上記組換え酵素が C r e リコンビナーゼであり、 上記組換え配 列が Ι ο χ Ρ配列である、 上記 (2 2) 〜 (2 4) のいずれかに記載の 組成物。
( 2 6 ) 上記目的遺伝子が、 転写因子である、 上記 ( 2 2) 〜 (2 5) のいずれかに記載の組成物。
( 2 6 a ) 上記転写因子が、 0ct3/4、 Klf4、 Sox2、 または c- Myc遺伝子 のいずれかである、 上記 ( 2 6 ) に記載の組成物。
( 2 7) 上記 ( b ) のポリヌクレオチドが、 上記 (a ) のポリヌクレオ チドの転写制御領域に結合して該ポリヌク レオチドの転写を増強するタ ンパク質をコードし、 該タンパク質は、 上記抗生物質と結合した場合に のみ該転写制御領域に結合することができる、 上記 ( 2 2) 〜 (2 6 ) のいずれかに記載の組成物。
( 2 8 ) 上記 ( a ) のポリヌクレオチドの発現産物である上記融合タン パク質が、 上記細胞内で、 上記抗生物質と結合していないときに分解さ れる、 上記 ( 2 2) 〜 ( 2 7) のいずれかに記載の組成物。
( 2 9)上記抗生物質が、 テトラサイクリン系抗生物質である、上記( 2 2) 〜 (2 8 ) のいずれかに記載の組成物。
( 3 0 ) 上記テ トラサイク リン系抗生物質が、 テ トラサイク リ ン、 また はその誘導体である ドキシサイクリン、 ォキシテ トラサイクリン、 クロ ルテトラサイク リン、 もしくは無水テ トラサイク リンである、 上記 (2 9 ) に記載の組成物。
( 3 1 ) 上記リプレッサータンパク質の変異体が、 テトラサイクリンリ
プレッサータンパク質の変異体である、 上記 ( 2 2) 〜 ( 3 0 ) のいず れかに記載の組成物。
( 3 2) 上記テ トラサイク リ ンリプレッサータンパク質の変異体が、 野 生型テ トラサイク リ ンリブレッサータンパク質のァミノ酸配列において、 少なく とも 1つのアミノ酸残基が置換されているアミノ酸配列を有する、 上記 ( 3 1 ) に記載の組成物。
( 3 3) 上記アミノ酸残基の置換が、 野生型テ トラサイク リ ンリブレツ サータンパク質のァミノ酸配列の 9 5位のァスパラギン酸、 1 0 1位の ロイシン、 および 1 0 2位のグリシンのいずれか少なく とも 2つの部位 において存在する、 上記 ( 3 2) に記載の組成物。
( 3 4) 目的遺伝子を組換え配列の間およびノまたは下流に発現可能に 含む発現ベクターを導入した細胞において、 抗生物質の有無によって該 細胞内での該目的遺伝子の発現を制御するための、 部位特異的組換え酵 素を利用した遺伝子発現制御キッ トであって、
( a ) 抗生物質に結合するリブレッサータンパク質の変異体および組換 え酵素との融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを発現可能に 含む発現ベクター、 ならびに
( b ) ( a ) のポリヌク レオチドの転写を制御するためのタンパク質を コードするポリヌク レオチドを発現可能に含む発現ベクターを含む、 キ ッ 卜。
( 3 5) 上記組換え酵素が、
( a ) C r e リ コンビナーゼ ;
(b ) F L P リ コンピナーゼ ;
( c ) ファージ phi (フアイ) 13インテグラーゼ
( d ) ファ一ジ R4ィンテグラーゼ ;
( e ) ファ一ジ TP901-1インテグラーゼ ;
( f ) ファ一ジ; L (ラムダ) イ ンテグラーゼ ;
( g ) ファ一ジ HK022イ ンテグラーゼ ;
(h) β ('ベータ) リ コンビナーゼ ;
( i ) Rリ コンビナーゼ ;
( i ) y δ (ガンマデノレタ) レソルバ
( k ) Dre リ コンビナーゼ ;
( 1 ) フアイ Rvlインテグラーゼ ;
(m) I n t ;
( n ) I H F ;
( o ) X i s ;
( P ) F i s ;
( q ) H i n ;
( r ) G i n ;
( s ) C i 11 ;
( t ) T h 3 レソノレバーゼ ;
( u ) T n d X ;
( v ) X e r C ; および
( w ) X e r D
からなる群から選択される 1以上のタ 記載のキッ 卜。
( b ) frt
( c ) attB/attP;
( d ) six ,
( e ) R S
( f ) res
( g ) rox
( h ) P s 1 ;
( i ) d i f ;
( j ) c e r ; および
( k ) 組換えを起こす能力を保持した
( e ) 、 ( f ) 、 ( g ) 、 (h) 、 ( i ) 、 または ( j ) の組換え配列 の変異体、 改変体、 または誘導体からなる群から選択される 1以上の組 換え配列を含む、 上記 ( 3 4) または (3 5 ) に記載のキッ ト。
( 3 7 ) 上記組換え酵素が C r e リ コンビナーゼであり、 上記組換え配 列が Ι ο χ Ρ配列である、 上記 (3 4 ) 〜 ( 3 6 ) のいずれかに記載の ッ ト。
( 3 8 ) 上記目的遺伝子が、 転写因子である、 上記 ( 3 4 ) 〜 ( 3 7 ) のいずれかに記載のキッ ト。
( 3 8 a ) 上記転写因子が、 0ct3/4、 Klf4、 Sox2、 または c- Myc遺伝子 のいずれかである、 上記 ( 3 8 ) に記載のキッ ト。
( 3 9 ) 抗生物質の有無によって細胞内での目的遺伝子の発現を制御す るための、 部位特異的組換え酵素を利用した遺伝子発現制御システムで あって、
( a ) 細胞
( b ) 上記細胞内に導入される、 抗生物質に結合するリブレッサータン パク質の変異体おょぴ組換え酵素との融合タンパク質をコードするポリ ヌクレオチドを発現可能に含む発現ベクター、
( c ) 上記細胞内に導入される、 (b ) のポリヌクレオチドの転写を制 御するためのタンパク質をコードするポリヌクレオチドを発現可能に含 む発現べクタ一、
( d) 上記細胞内に導入される、 目的遺伝子を組換え配列の間および/ または下流に発現可能に含む発現ベクター、 ならびに
( e ) 上記細胞内に導入される抗生物質
を含み、
細胞内での (b ) のポリヌクレオチドの転写おょぴ (b ) のポリヌク レオチドの発現産物である上記融合タンパク質の分解が抗生物質の有無 によって制御され、 上記目的遺伝子の発現が上記融合タンパク質の発現 量によって制御される、 発現制御システム。
( 4 0 ) 上記組換え酵素が、
( a ) C r e
(b ) F L P
( c ) ファ一
( d) ファ一
( e ) ファ一
( f ) ファ一
( g) ファ一
( ) β (ベ
( i ) R y
( i ) 7 δ (
(k) Dre V
( 1 ) フアイ
(m) I η t
(n) I H F
( o ) X 1 s
(P ) F 1 s
( q) H i n
( r ) G i n
( s ) C i n
( t ) T h 3
(u) T 11 d
(v) X e r
( w ) X e r
からなる群か 上記 ( 3 9 ) に 記載の
(4 1 ) 上記組換え配列が、
( a ) ΙοχΡ;
( b ) frt;
( c ) attB/attP;
( d ) six;
( e ) R S ;
( f ) res;
( g ) rox;
( h ) p s i ;
( i ) d i f ;
( j ) c e r ;
および
(k) 組換えを起こす能力を保持した ( a ) 、 (b) 、 ( c ) 、 ( d) 、 ( e ) 、 ( f ) 、 (g) 、 (h) 、 ( i ) 、 (または (: j ) の組換え配 列の変異体、 改変体、 または誘導体からなる群から選択される 1以上の 組換え配列を含む、 上記 ( 3 9 ) または (4 0) に記載のシステム。
(4 2) 上記組換え酵素が C r e リ コンビナ一ゼであり、 上記組換え配 列が Ι ο χ Ρ配列である、 上記 (3 9 ) 〜 (4 1 ) のいずれかに記載の システム。
(4 3 ) 上記目的遺伝子が、 転写因子である、 上記 ( 3 9 ) 〜 (4 2) のいずれかに記載のシステム。
(4 3 a ) 上記転写因子が、 0ct3/4、 Klf4、 Sox2、 または c- Myc遺伝子 のいずれかである、 上記 (4 3) に記載のシステム。
(4 4 ) 抗生物質の有無によって細胞内での目的遺伝子の発現を制御す るための、 部位特異的組換え酵素を利用した遺伝子発現制御方法であつ て、
( a ) 抗生物質に結合するリプレッサータンパク質の変異体および組換 え酵素との融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを発現可能に 含む発現ベクター、
( b ) ( a ) のポリヌク レオチ ドの転写を制御するためのタンパク質を コードするポリヌクレオチドを発現可能に含む発現ベクター、 ならびに
( c ) 目的遺伝子を組換え配列の間および/または下流に発現可能に含 む発現べクター
を、 上記細胞内で抗生物質の存在下または非存在下で発現させる工程を 含む、 方法。
(4 5 ) 上記組換え酵素が、
( a ) C r e
(b ) F L P
( c ) ファ一
( d) ファ
( e ) ファ一
( f ) ファ一
( g ) ファ一
(h) β (ベ
( i ) Rリ コ
( i ) Ύ δ (
(k) Dre ジ
( 1 ) フアイ
(m) I η t
(n) I H F
( o ) X 1 S
( p ) F i S
( q) H 1 n
( r ) G 1 n
( s ) C i n
( t ) T h 3
(u) T n d
( v) X e r
( w ) X e r
からなる群から選択される 1以上のタンパク質である、 上記 (4 4) に 記載の方法。
(4 6 ) 上記組換え配列が、
( a ) loxP;
(b ) frt;
( c ) attB/attP;
( d) six;
( e ) R S ;
( f ) res;
( g) rox;
(h) p s i ;
( i ) d i f ;
( i ) c e r ;
および
(m) 組換えを起こす能力を保持した ( a ) 、 (b) 、 ( c ) 、 ( d) 、 ( e ) 、 ( f ) 、 ( g ) 、 (h) 、 ( i ) 、 または ( j ) の組換え配列 の変異体、 改変体、 または誘導体からなる群から選択される 1以上の組 換え配列を含む、 上記 (4 4) または (4 5 ) に記載の方法。
(4 7) 上記組換え酵素が C r e リ コンビナーゼであり、 上記組換え配 列が l o x P配列である、 上記 (4 4 ) 〜 (4 6 ) のいずれかに記載の 方法。
(4 8) 上記目的遺伝子が、 転写因子である、 上記 (4 4) 〜 (4 7) のいずれかに記載の方法。
(4 8 a ) 上記転写因子が、 0ct3/4、 Klf4、 Sox2、 または c-Myc遺伝子 のいずれかである、 上記 (4 8) に記載の方法。 本発明によれば、 簡単な分子システムを用いて、 目的のタンパク質の 機能解析、 イメージングによる薬物の動態解析、 副作用の少ない疾患の 治療等を行うことができる。
本発明において使用するテトラサイタリン系抗生物質 (本明細書中、 「T e t」 と略すことがある。 ) は、 例えば、 STANKUNAS K et al で使 用されるラパマイシンに比較して、 非常に安価であり、 また動物に用い
た際の吸収や体内での浸透が良く、 安全性も高いという利点を有する。 本発明において使用するテトラサイクリン系抗生物質は、 マウスでの投 与実験例も非常に多く、 またすでに臨床の現場で多く使用されている薬 物であり、 安全性について確認がなされている点で有利である。
本発明のタンパク質分解制御法によれば、 細胞へ外部から導入する融 合タンパク質以外のタンパク質 (例えば、 細胞内に元々存在するタンパ ク質)を使用しないため、細胞への余分な影響を排除することができる。 さらに、 本発明の遺伝子転写およびタンパク質分解の二重制御法によ れば、 転写段階での制御とタンパク質分解の制御が、 1種類の薬剤の添 加によって簡便に同時に実現可能になる。 それによつて、 非誘導時のタ ンパク質発現をほぼ完全に抑制し、 タンパク質発現の厳密な制御が可能 となる。 またこの効果によって、 非誘導時に比べて誘導時のタンパク質 発現誘導効率は数百倍となり、 転写制御のみまたはタンパク質分解制御 のみの場合に数十倍の誘導効率であることと比べて格段に改善される。 本発明の遺伝子転写制御およびタンパク質分解制御の組み合わせ (二 重制御法) によれば、 抗生物質による遺伝子転写制御のみまたはタンパ ク質分解制御のみでは十分に厳密な発現コントロールが難しい場合でも、 きわめて厳密な遺伝子発現制御が実現可能である。 図面の簡単な説明
図 1は、 (A ) TetR-EGFPをコードする cDNAの模式図 ;および (B〜 D ) 野生型 TetR- EGFPおよび変異 TetR- EGFPの安定性をフローサイ トメ 一ターを用いて試験した結果を示すグラフである。
図 2は、 変異型 T e t R - E G F Pを発現させた細胞をドキシサイク リ ンの存在下で培養した場合の蛍光変化を示す写真である。 (A ) 2 8 位アルギニンの置換無し。 (B ) 2 8位のアルギニンをグルタミンに置 換したもの。
図 3は、 様々.な濃度のドキシサイクリンを添加して、 変異型 T e t R - E G F Pを発現させた細胞の蛍光強度をフローサイ トメ ^"ターで解析
した結果を示すグラフである。
図 4は、 (A) 変異型 T e t R-E G F Pを発現する細胞のドキシサ イクリン添加後の蛍光強度の変化を、 単に E G F Pを発現するのみの細 胞と比較して示すグラフである。 (B) 変異型 T e t R_EG F Pを発 現する細胞のドキシサイク リ ン除去後の蛍光強度の変化を、 単に EGF Pを発現するのみの細胞と比較して示すグラフである。
図 5は、 変異型 T e t R- E G F Pおよび D s R e dの遺伝子を組み 込んだべクターを注射して発現させたマウスにおける蛍光を、 倒立顕微 鏡を用いて時間経過に伴い観察した結果を示す写真である。
図 6は、図 5の実験における蛍光強度の時間変化を示すグラフである。 図 7は、 変異型 T e t R— E G F Pをコードする mRNAをゼブラフ ィッシュの受精卵に注入して、 ドキシサイクリンの存在下または非存在 下で、 倒立顕微鏡を用いて蛍光を観察した結果を示す写真である。 (A) 処理なし、 ドキシサイクリンなしの細胞 ; (B) 処理無しの細胞にドキ シサイク リ ンを添加した細胞 ; (C) 変異型 T e t R— E GF Pをコー ドする mRN Aを導入し、 ドキシサイクリンを添加した細胞。
図 8は、 本発明のシステムを用いて遺伝子の転写および/またはタン パク質分解を制御した場合の細胞内タンパク質量の制御効果を示すダラ フである。
図 9は、 細胞中でのドキシサイクリンのみによる毒素遺伝子の転写の 制御と、 本発明のタンパク質分解制御方法を利用した毒素遺伝子の発現 制御との間で、 ドキシサイク リ ンの存在下おょぴ非存在下で、 生細胞数 を比較した結果を示すグラフである。
図 1 0は、 組換えレポーターべクター p E B 6 CAG_V e n u s — 1 o X— R 1を示す模式図である。
図 1 1は、 糸且換えレポーターベクター p E B 6 CAG_V e n u s — 1 o x -R 1を用いた遺伝子発現おょぴタンパク質分解の二重制御によ る細胞内 C r eタンパク質量の制御効果を示す図である。
図 1 2は、 抗生物質により細胞内でのタンパク質量の制御 (タンパク
質分解の制御) を行う場合に使用する代表的な発現ベクターの模式図で ある。 目的のタンパク質として E G F Pを使用する場合を示す。
図 1 3は、 抗生物質により細胞内でのタンパク質量の制御 (タンパク 質分解の制御) を行う場合に使用する代表的な発現ベクターの別の例を 示す模式図である。 目的の'タンパク質として任意のものを使用できるよ うに m c sが挿入されている。
図 1 4は、 抗生物質により遺伝子の転写レベルおよびタンパク質の分 解レベルの両方での制御 (二重制御) を行う場合に使用する、 代表的な 発現ベクターの模式図である。 目的のタンパク質挿入部位を m c s とし てある。
図 1 5は、 抗生物質により遺伝子の転写レベルおよびタンパク質の分 解レベルの両方での制御 (二重制御) を行う場合に使用する、 代表的な 発現べクターの模式図である。 目的のタンパク質として E G F Pを使用 する態様を示す。
図 1 6は、 本発明の抗生物質によるタンパク質の転写 ·分解制御 (二 重制御) システムの原理を説明する模式図である。
図 1 7は、 抗生物質によるタンパク質分解制御のみ、 または抗生物質 による転写制御のみで Creタンパク質の発現調節を行う場合と、 抗生物 質によるタンパク質分解制御および転写制御の両方 (二重制御) で Cre タンパク質の発現調節を行う場合との間での制御効率の比較 (または細 胞数および蛍光強度の比較) を示すグラフである。
図 1 8は、 本発明のタンパク質の Tetによる転写 .分解二重制御系の 制御効率の、 抗生物質濃度依存性を示すグラフである。
図 1 9は、 組換え効率を改善した Tet二重制御ベクターの Cre発現解 析の結果を示すグラフである。 発明を実施するための最良の形態
1 . 本発明の融合タンパク質
本発明は、 1つの実施形態において、 抗生物質に結合するタンパク質
の変異タンパク質おょぴそれに融合した目的のタンパク質を含む融合タ ンパク質を提供する。 ここで、 上記変異タンパク質は、 細胞内で、 上記 抗生物質と結合していない場合は分解されるが、 上記抗生物質と結合し ている場合には安定化され、 上記融合タンパク質は、 細胞内で、 上記抗 生物質と結合していない場合は分解されるが、 上記抗生物質と結合して いる場合には安定化される。 より具体的には、 本発明は、 大腸菌由来テ トラサイクリンリプレッサータンパク質 (T e t Rタンパク質) に点変 異を導入した変異タンパク質を提供する。 より詳細には、 T e t Rタン パク質に点変異を導入した変異タンパク質とそれに融合した目的のタン パク質を含む融合タンパク質が提供される。
本明細書中、 「抗生物質に結合するタンパク質の変異タンパク質」 と は、 抗生物質に結合するタンパク質のアミノ酸配列において、 少なく と も 1つのアミノ酸残基が置換、 欠失、 付加、 または挿入されているアミ ノ酸配列を有し、 該抗生物質の非存在下では不安定化してプロテアーゼ による分解を受けるが、 該抗生物質と結合すると安定化して分解を免れ るようになる該タンパク質の変異体のことをいうものとする。
「抗生物質」 の例としては、 テトラサイクリン系抗生物質、 ぺニシリ ン系抗生物質、 ク口ラムフエ二コール系抗生物質、 アミノグリ コシド系 抗生物質などが挙げられる。 またそのような抗生物質に結合する 「タン パク質」 の例としては、 該抗生物質のリプレッサータンパク質、 -ラタ タマーゼ、 ク 口ラムフエニコーノレァセチ /レ トランスフェラーゼ、 ァミノ ダリ コシ ド 3, 一ホスホ トランスフェラーゼなどが挙げられる。 本発明 の好ましい実施形態では、上記抗生物質がテトラサイタリン系抗生物質、 上記抗生物質に結合するタンパク質が上記抗生物質のリプレッサータン パク質である。
好ましくは、 上記リブレッサータンパク質は、 T e t Rタンパク質で あり、 前記変異タンパク質は、 変異型 T e t Rタンパク質である。 した がって、 本発明は 1つの好ましい実施形態において、 変異型 T e t Rタ ンパク質おょぴそれに融合した目的のタンパク質を含む、 融合タンパク
質を提供する。
本明細書中、 「T e t Rタンパク質」 または 「野生型 T e t Rタンパ ク質」 とは、 G e n B a n k G e n e l D : 2 6 5 3 9 7 0の DNA によってコードされる大腸菌由来テ トラサイク リ ンリプレッサータンパ ク質 (N C B I タンパク質データベース ァクセッショ ン番号 : N P— 9 4 1 2 9 2 (配列番号 2) ; CD S : NC— 0 0 5 2 1 1 (配列番号 1 ) ) のことをいう。
本明細書中、 「変異型 T e t Rタンパク質」 とは、 上記 T e t Rタン パク質のアミノ酸配列において、少なく とも 1つのァミノ酸残基が置換、 欠失、 付加、 または挿入されているアミノ酸配列を有し、 テ トラサイク リ ン系抗生物質の非存在下では不安定化してプロテアーゼによる分解を 受けるが、 テ トラサイタ リ ン系抗生物質と結合すると安定化して分解を 免れるようになる T e t Rタンパク質の変異体のことをいうものとする。 好ましくは、 上記変異型 T e t Rタンパク質は、 野生型 T e t Rタン パク質のアミノ酸配列において、 少なく とも 2つのアミノ酸残基が置換 されているアミノ酸配列を有する。 さらに好ましくは、 上記アミノ酸残 基の置換は、 野生型 T e t Rタンパク質のァミノ酸配列の 9 5位のァス パラギン酸、 1 0 1位のロイシン、 および 1 0 2位のグリシンのいずれ か少なく とも 2つの部位において存在する。 最も好ましく は、 前記変異 型 T e t Rタンパク質は、 野生型 T e t Rタンパク質のァミノ酸配列に おいて、 9 5位のァスパラギン酸がァスパラギンに、 1 0 1位の口イシ ンがセリ ンに、 および 1 0 2位のグリシンがァスパラギン酸に置換され る変異のうちのいずれか少なく とも 2つ、 もしくは上記 3つ全ての変異 を有するァミノ酸配列を有する。 変異型 T e t Rタンパク質のアミノ酸 配列の変異の形態は、 野生型 T e t Rタンパク質からのアミノ酸残基の 置換のみならず、 1つ以上のアミノ酸残基の欠失、 付加、 および Zまた は挿入であってもよい。 また、 そのような変異を有するアミノ酸の位置 は、 上記で例示したものに限定されない。
本発明の融合タンパク質において、 「目的のタンパク質」 とは、 ( 1 )
蛍光タンパク質または発光タンパク質; ( 2) 治療用タンパク質; ( 3) 機能解析に供するためのタンパク質、 (4) 組換え酵素のような、 その タンパク質の分解 (または安定性もしくは活性) を、 変異型 T e t Rタ ンパク質および T e tを利用して制御することによって産業上有用な効 果の得られるタンパク質のことをいうものとする。 目的のタンパク質が 公知のタンパク質であるような場合には、 通常、 それをコードする遺伝 子のヌク レオチ ド配列は、 公に利用可能な種々の配列データベース (例 えば、 G e n B a n kデータベース)から入手することができる。 また、 目的のタンパク質のアミノ酸配列もしく はそれをコードするヌクレオチ ドレセプター配列が未知の場合は、 当業者に周知の配列決定方法を用い て、 該タンパク質のアミノ酸配列およびそれをコードするヌクレオチド 配列を決定することができる (例えば、 S a m b r o o k & R u s s e l l 、 M o l e c u l a r C I o n i n g ; A L a b o r a t o r y Ma n u a l , T h i r d E d i t i o n, 2 0 0 1 , C o l d S p r i n g H a r b o r L a b o r a t o r y P r e s s , C o l d S p r i n g H a r b o r , N e w Y o r k などを参照) 。
本発明の融合タンパク質は、当該分野での常法に従って作製され得る。 簡単には、 目的のタンパク質をコードする c DN Aに、 変異型 T e t R タンパク質をコードする c DNAを連結させ、 該目的のタンパク質と変 異型 T e t Rタンパク質との融合タンパク質をコードする DN Aを構築 し、 この DNAを、 例えば、 真核生物用の発現ベクターに挿入し、 この 発現ベクターを真核生物へ導入することにより発現させることができる (例えば、 上記 S a mb r o o k & R u s s e l l を参照) 。
本発明の実施形態において使用される 「蛍光タンパク質」 の例と して は、 緑色蛍光タンパク質 (G r e e n F l u o r e s c e n t P r o t e i n (G F P) ) 、 強ィヒ (E n h a n c e d) 緑色蛍光タンパク 質 (E G F P) 、 シアン蛍光タンパク質 (C y a n F l u o r e s c e n t P r o t e i n) ( C F P ) ) 、 強化シアン蛍光タンパク質 ( E
C F P) 、 黄色蛍光タンパク質 (YF P) 、 強化黄色蛍光タンパク質 (E Y F P) 、 赤色蛍光タンパク質 D s R e dおよびその変異体 (D s R e d 2、 D s R e a— e x p r e s s、 タ マー (T i m e r ) 、 m R F P 1 とその変異体など) 、 Am C y a n、 Z s G r e e n、 Z s Y e l l o w、 A s R e d、 H c R e d、 Ku s a b i r a O r a n g e、 K a e d e、 A z a m i G r e e nなどが挙げられる。
本発明の実施形態において使用される' 「発光タンパク質」 の例と して は、 ホタノレノレシフェラーゼ、 ゥミシィタケノレシフェラーゼ、 クラゲェク ォリ ンなどが挙げられる。 これらの蛍光タンパク質または発光タンパク 質は、 当業者に周知の供給業者 (例えば、 C l o n t e c hや P r o m e g aなど) により市販されている。
本明細書中、 「治療用タンパク質 ( t h e r a p e u t i c p r o t e i n)j とは、 疾患の予防および/または治療に有効なタンパク質を いい、 例えば、 免疫を担う細胞を活性化するサイ ト力イン (例えば、 ヒ トインターロイキン 2、 ヒ ト顆粒球一マクロファージーコロニー刺激因 子、 ヒ トマクロファージコロニー刺激因子、 ヒ トインターロイキン 1 2 等) などが挙げられる。 また、 癌細胞などを直接殺傷するために、 リシ ンゃジフテリァ毒素などの毒素やへルぺスウィルスチミジンキナーゼを 抗ウィルス剤ガンシク口ビルと組み合わせて用いることもできる。また、 抗体なども用いることができる。 例えば、 抗体との融合タンパク質につ いては、 抗体または抗体断片をコードする c DNAに変異型T e t Rタ ンパク質をコードする c DN Aを連結させ、 抗体と変異型 T e t Rタン パク質との融合タンパク質をコードする D N Aを構築し、この D N Aを、 例えば、 真核生物用の発現ベクターに揷入し、 この発現ベクターを真核 生物へ導入することにより発現させることができる。 あるいは、 生体組 織中の特定の抗原に対して部位特異的な治療用タンパク質の送達を行う ために、 該抗原に対する抗体と、 治療用タンパク質と、 変異型 T e t R タンパク質との融合タンパク質をコードする DN Aを構築し、 この DN Aを、 例えば、 真核生物の発現べクターに挿入し、 この発現べクターを
真核生物へ導入して発現させることもできる。 あるいは、 そのような融 合タンパク質をェキソビボで作製した後、 生体内へ導入してもよい。
また、 本発明の別の実施形態において使用される 「機能解析に供する た'めのタンパク質」 の例と しては、 タンパク質キナーゼ、 転写因子など が挙げられる。 タンパク質キナーゼの例としては、 例えば、 M A P Kフ アミ リーキナーゼ、 P K Cファ ミ リーキナーゼ、 P K Aフアミ リーキナ ーゼ、 S r c ファ ミ リーキナーゼ、 】 & 1^ファ ミ リーキナーゼ、 13 1 ファ ミ リーキラ "一ゼ、 I K Kフア ミ リーキナーゼなどが挙げられる。 転 写因子の例と しては、 R U N Xファミ リー、 S T A Tファミ リー、 核内 受容体、ロイシンジッパーファ ミ リー、 N F - κ Bファ ミ リーなどがある。 上記本発明の融合タンパク質は、 テ トラサイク リ ン系抗生物質の非存 在下では、 不安定であるが、 テ トラサイク リ ン系抗生物質と結合すると 安定化する。 したがって、 本発明の融合タンパク質によって、 目的のタ ンパク質の分解の制御がテ トラサイタ リ ン系抗生物質の濃度によって可 能となるため、 本発明の融合タンパク質は、 蛍光または発光タンパク質 を用いた生体内イメージング、 治療用タンパク質の作用の制御、 タンパ ク質の生体内での機能解析等のために用いることができる。
本発明において使用される 「テ トラサイタ リ ン系抗生物質 (T e t ) 」 と しては、 本発明の変異型 T e t Rタンパク質に結合して、 その構造を 安定化し、 タンパク質分解酵素による分解を抑制するものであれば、 特 に限定されないが、 例えば、 テ トラサイク リ ンおよびその誘導体である ドキシサイク リ ン、ォキシテ トラサイク リ ン、クロルテ 1、ラサイク リン、 または無水テ トラサイク リ ンが挙げられる。 2 . 本発明の遺伝子発現調節およびタンパク質分解調節を含む二重制御 システムによる目的遺伝子の発現調節
本発明の別の局面では、 抗生物質の有無によって細胞内での目的遺伝 子の発現を制御するための、 部位特異的組換え酵素を利用した目的遺伝 子の発現制御システム、 組成物、 キッ ト、 および方法が提供される。
1つの実施形態では、 本発明は、 目的遺伝子を組換え配列の間および /または下流に発現可能に含む発現ベクターを導入した細胞において、 抗生物質の有無によって該細胞内での該目的遺伝子の発現を制御するた めの、 部位特異的組換え酵素を利用した発現制御組成物が提供する。 こ の組成物は、
( a ) 抗生物質に結合するリプレッサータンパク質の変異体およぴ組換 え酵素との融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを発現可能に 含む発現ベクター、 ならびに
( b ) ( a ) のポリヌクレオチドの転写を制御するためのタンパク質を コードするポリヌクレオチドを発現可能に含む発現ベクターを含む。 こ こで、 細胞内での ( a ) のポリヌクレオチドの転写および ( a ) のポリ ヌクレオチドの発現産物である上記融合タンパク質の分解は抗生物質の 有無によって制御される。 また、 目的遺伝子の発現は上記融合タンパク 質の発現量によって制御される。
本発明の別の実施形態では、 目的遺伝子を組換え配列の間および Zま たは下流に発現可能に含む発現ベクターを導入した細胞において、 抗生 物質の有無によって該細胞内での該目的遺伝子の発現を制御するための、 部位特異的組換え酵素を利用した発現制御キッ トが提供される。 このキ ッ トは、
( a ) 抗生物質に結合するリブレッサータンパク質の変異体および組換 え酵素との融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを発現可能に 含む発現ベクター、 ならびに
( b ) ( a ) のポリヌクレオチドの転写を制御するためのタンパク質を コードするボリヌク レオチドを発現可能に含む発現ベクターを含む。 こ こで、 細胞内での ( a ) のポリヌクレオチドの転写および (a ) のポリ ヌクレオチドの発現産物である前記融合タンパク質の分解は抗生物質の 有無によって制御される。 また、 目的遺伝子の発現は、 上記融合タンパ ク質の発現量によって制御される。
本発明のさらに別の実施形態では、 抗生物質の有無によって細胞内で
の目的遺伝子の発現を制御するための、 部位特異的組換え酵素を利用し た発現制御システムが提供される。 このシステムは、
( a ) 細胞
( b ) 前記細胞内に導入される、 抗生物質に結合するリブレッサータン パク質の変異体おょぴ組換え酵素との融合タンパク質をコードするポリ ヌクレオチドを発現可能に含む発現ベクター、
( c ) 前記細胞内に導入される、 (b ) のポリヌクレオチドの転写を制 御するためのタンパク質をコードするポリヌクレオチドを発現可能に含 む発現ベクター、
( d ) 前記細胞内に導入される、 目的遺伝子を組換え配列の間および Z または下流に発現可能に含む発現ベクター、 ならびに
( e ) 前記細胞内に導入される抗生物質
を含み、 細胞内での (b ) のポリヌクレオチドの転写および (b ) のポ リヌクレオチドの発現産物である前記融合タンパク質の分解は抗生物質 の有無によって制御され、 上記目的遺伝子の発現は上記融合タンパク質 の発現量によって制御される。
本発明のなおさらなる実施形態では、 抗生物質の有無によって細胞内 での目的遺伝子の発現を制御するための、 部位特異的組換え酵素を利用 した方法が提供される。 この方法は、
( a ) 抗生物質に結合するリブレッサータンパク質の変異体および組換 え酵素との融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを発現可能に 含む発現ベクター、
( b ) ( a ) のポリヌクレオチドの転写を制御するためのタンパク質を コードするポリヌクレオチドを発現可能に含む発現ベクター、 ならびに ( c ) 目的遺伝子を組換え配列の間および/または下流に発現可能に含 む発現べクタ一
を、 前記細胞内で抗生物質の存在下または非存在下で発現させる工程を 含む。 ここで、 細胞内での ( a ) のポリヌクレオチドの転写おょぴ ( a ) のポリヌクレオチドの発現産物である前記融合タンパク質の分解は、 抗
生物質の有無によって制御される。 また、 目的遺伝子の発現は、 上記融 合タンパク質の発現量によって制御される。
本発明において使用される 「組換え酵素」 は、 特定の複数の DNA配列 (組換え配列) の間の部位特異的な組換えを仲介する組換え酵素のこと をいう。 本発明において使用される 「組換え酵素」 および 「組換え配列」 の例には、 Garcia - Otin & Guillou, 'Mammalian genome targeting using site-specif IC recombinases , Frontiers m Bioscience 11, 1108 - 1136 January 1, 2006、 および W02001/042509 (特表 2004 - 500061) (これら の文献は全て、 具体的に、 本明細書中で参考として援用される) に記載 される組換え酵素/組換え配列が挙げられる。 なかでも代表的な組換え 酵素 Z組換え配列の例としては、 Cre リコンビナーゼ /ΙοχΡ配列が挙げ られる。
loxP (locus of crosscover (x) in PI) は、 3 4塩基対 (b p ) にわ たる配列であり、 8 b p の非対称的中央配列(これは loxP要素の方向を 決める) およびこれに隣接する 2つの 1 3 b pのパリ ンドローム配列か らなる。 Cre リコンビナーゼ (本明細書中、 単に 「Cre」 と略すことがあ る。 ) は P1 バタテリオファージの複製サイクルにおいてリゾルバーゼ (resolvase)として重要な働きをし、 ファージの複製したゲノムを切断、 再結合して 2つの類似の粒子にする。 Cre リコンビナーゼは 343 ァミノ 酸(aa)Z38kDaのタンパク質であり、補因子を必要としない 4量体の複 合体として機能する。 Creは 2つの loxP部位 (配列) を、 それらが同じ DNA鎖に配置されている場合および異なる DNA鎖に配置されている場合 のいずれにおいても、組み換えることができる。 2つの loxP配列が同じ DNA鎖上にある場合、それらが同じ方向を向いている場合は、 2つの loxP 配列間にある DNAセグメントを切り出す反応が起こる。 切り出された部 分は環状の粒子となり、1οχΡ配列はそれぞれの DNA部分に残る(例えば、 図 1 0を参照) 。
このような部位特異的組換え酵素および組換え配列を、 本発明の抗生 物質による細胞内での目的のタンパク質の発現を制御する方法と組み合
わせて使用することによって、 目的遺伝子の発現の制御を行うことがで
.きる。 すなわち、 ( c ) 2つの組換え配列 (例 : loxP) の間および Zま たは下流に目的遺伝子の DNAセグメントを発現可能に担持する発現べク ター、 ( a ) 抗生物質に結合するリブレッサータンパク質の変異体およ び組換え酵素 (例 : Cre リ コンビナーゼ) との融合タンパク質をコード するポリヌクレオチドを発現可能に含む発現ベクター、 ならびに (b ) 該融合タンパク質をコードするするポリヌクレオチドの転写を制御する ためのタンパク質をコードするボリヌクレオチド (例 : 人工転写因子 rtTA) を発現可能に含む発現ベクターを細胞内に導入して発現させ、 抗 生物質の存在/非存在 (または濃度) によって、 目的遺伝子の発現を制 御することが可能である。 ここで、 ベクター上の目的遺伝子は 1つに限 らず、 複数存在してもよい。 例えば、 2つの組換え配列の間に第一の目 的遺伝子、 2つの組換え遺伝子の下流の第二の目的遺伝子を連結して使 用することも可能であることは当業者ならば理解できるはずである。
このような本発明の遺伝子発現制御系によれば、 例えば、 Cre/loxP系 を用いて、 Cre リ コンビナーゼの発現を抗生物質 (例 : ドキシサイクリ ン) の有無 (または濃度) により制御することができ、 さらに Cre リコ ンビナーゼの有無により、 目的遺伝子の発現を制御することができる。 より具体的には、 抗生物質の非存在下では、 Cre リ コンビナーゼの発現 が転写レベルおよびタンパク質レベルで抑制されるため、 Cre リ コンビ ナーゼの作用による ΙοχΡ間の遺伝子セグメントの切り出しも起こらず、 目的遺伝子の発現が維持される。 他方、 抗生物質の存在下では、 Cre リ コンビナーゼと変異型 TetR の融合蛋白質の発現が転写レベルでもタン パク質レベルでも抑制されないため、 発現産物である融合蛋白質 (Cre リ コンビナーゼ +変異型 TetR) の Cre の作用により loxP間に挟まれた 目的遺伝子セグメントが切り出されるため、 この目的遺伝子の発現が抑 制される。 また、 例えば、 ここで第二の目的遺伝子が 2つの loxP配列の 下流に連結されていれば、 loxP間の目的遺伝子が切り出された後に、 第 二の目的遺伝子の発現が起こるようにすることができる。
例えば、 目的遺伝子として、 0ct3/4、 Klf4、 Sox2、および/または c- Myc 遺伝子を使用することができる。 0ct3/4、 Klf4、 Sox2、 および c_Myc遺 伝子は、 皮膚細胞の i P S糸田胞 ( induced pluripotent stem cel l s) ィ匕 に必要とされるが、 iPS 化後細胞の癌化を引き起こすことが問題となつ ていることが知られている。本発明の目的遺伝子発現制御方法によれば、 細胞の iPS化に必要とされる間は、 上記遺伝子を抗生物質の非存在下で 発現させておき、 iPS 細胞を分化させて必要でなくなったときには、 細 胞の癌化の原因となる上記遺伝子の発現を抗生物質の存在下で抑制する というような遺伝子発現制御が可能となる。 ここで、 本発明において使 用される 「目的遺伝子」 には、 その発現の制御を必要とされる任意の遺 伝子が含まれ、 0ct3/4、 Klf4、 Sox2、 および c- Myc遺伝子の他に、 例え ば、 細胞の分化や組織特異的な機能に関わることが知られている様々な 転写因子群、 例えばホメオボッタス遺伝子群の Hox遺伝子群や非 Hox遺 伝子群、 フォークヘッ ド遺伝子群、 T ボックス遺伝子群、 ポリコ ム遺 伝子群、 トリ ソラックス遺伝子群、 GATA 遺伝子群、 Maf 遺伝子群、 Hes 遺伝子群や、細胞のス ト レス応答に関与する転写因子、 ATF_2、Nrf2、HSFl、 HIF など、 あるいは、 細胞内のシグナル伝達に関与するキナーゼである セリンスレオニンキナーゼ群の MAP キナーゼ、 プロテインキナ一ゼ A、 プロテインキナーゼ (:、 プロテインキナーゼ D、 プロテインキナーゼ G などや、 チロシンキナーゼ群の Srcキナーゼ群、 受容体キナーゼ群等も 使用可能であることは当業者には理解できるはずである。
本発明によるタンパク質の転写および発現の二重制御系とともに使用 し得る、 Cre リコンビナーゼ Z loxP系以外の組換え酵素 Z組換え配列(部 位) 系の例と しては、 例えば、 Flp リ コ ンビナーゼ / frt (Fkp recombinat ion target)部位、ファージ phi l 3インテグラーゼ /att 咅位、 ファージ R4ィンテグラーゼ/ att 部位、ファージ TP901-1ィンテグラー ゼ / att 部位、 ファージラムダインテグラーゼ / att 部位、 ファージ HK022/ att 部位、 ベータリコンビナーゼ Z s ix部位、 ガンマデルタレソ ルバーゼ /res部位、 Dre リコンピナーゼ/ rox部位、 フアイ Rv lィンテ
グラーゼ Zatt部位等が挙げられる (Garc i a- Ot in & Gui l lou (前出) ) 。 さらなる組換え酵素の例としては、 ラムダ Intタンパク質、 IHF、 Xi s、 Fi s、 Hin、 Gin、 Cin、 Th3 レソルバーゼ、 TndX、 XerC、 および XerDが含 まれる。 組換え配列 (部位) としては、 ΙοχΡ部位、 frt部位、 att 部位、 s ix部位、 res部位、 rox部位、 ps i部位、 di f 部位、 および cer部位が 含まれる (W02001/042509 (特表 2004- 500061) ) 。
本発明の遺伝子発現調節およびタンパク質分解調節を含む二重制御シ ステムによる、 部位特異的組換え酵素を利用した目的遺伝子の発現制御 システム、 組成物、 キッ ト、 または方法の好ましい実施形態では、 組換 え効率を上げるために、 組換え酵素をコードする DNAセグメントの C末 端側に核外移行配列 (NES) を付加してもよい (実施例 8を参照) 。
3 . 本発明のボリヌクレオチド、 発現ベクターおよびそれを用いて遺伝 子導入された宿主
本発明は、 別の実施形態において、 本発明の融合タンパク質をコード するポリヌク レオチ ドを提供する。 さらに、 本発明は、 本発明の融合タ ンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターを提供 する。 好ましくは、 本発明の発現ベクターは、 以下の (a ) 〜 ( c ) の 構成要素を含む発現カセッ トを含む:
( a ) 宿主細胞内で転写可能なプロモーター
( b ) 該プロモーターに結合した、 本発明の融合タンパク質をコード するポリヌクレオチド ;及び
( c ) R N A分子の転写終結およびポリアデュル化に関し、 宿主細胞 で機能するシグナル。
プロモーターおよび転写終結シグナル (ターミネータ一) としては、 上記発現カセッ トを導入する宿主に応じて、 遺伝子発現の効率を増大さ せるように適切な組み合わせを使用する。 当業者は、 そのような適切な 組み合わせを選択することができる。 このよ うな発現ベクターの非限定 的な例としては、 ヒ ト細胞中で安定に複製おょぴ維持される本願の実施
例において使用した発現べクター p E B 6 C AGが挙げられ、 これは、 プロモーターとして CAGプロモーター、 融合タンパク質として変異型 T e t R— E G F P、 および転写終結シグナル配列として S V 4 0 p o 1 y A配列を含んでいる。
本発明の発現ベクターは、 上記の発現カセッ トの他に、 他の構成要素 を含んでいても良い。そのような他の構成要素の非限定的な例としては、 本明細書の実施例で使用したような、 変異型 T e t R— E G F Pと S V 4 0 p o 1 y Aの間に挿入された、 I R E S配列およびその下流の D s R e dのタンデムダイマーのような蛍光タンパク質を発現することがで きる c D N Aが挙げられる。
その他、 細胞または生体内での本発明の融合タンパク質の発現のため に使用し得る発現ユニッ トまたは発現ベクターとしては、 例えば、 ブラ スミ ド pc DNA 3 ( I n v i t r o g e n) 、 プラスミ ド AH 5、 p R C/CMV ( I n v i t r o g e n) 、 p CAGG S、 p C X N 2、 pME 1 8 S、 p E F _ B O S等で見出される発現ユニッ トなどを使用 することができる。 発現ュニッ トおよび/またはベクターへの遺伝子の 導入は、 例えば、 Mo l e c u l a r C l o n i n g & C u r r e n t P r o t o c o l s i n M o l e c u l a r B i o l o g y (S a m b r o o k, J . ら、 Mo l e c u l a r C 1 o n i n g, C o l d S p r i n g H a r b o r P r e s s ( 1 9 8 9 ) ; A u s b e l . F. M. ら、 C u r r e n t P r o t o c o l s i, n Mo l e c u l a r B i o l o g y、 G r e e n P u b 1 i s h i n g A s s o c i a t e s a n d W i l e y— I n t e r s c i e n c e ( 1 9 8 9 ) のような説明書に記載されるような遺伝子 操作技術を使用して達成され得る。 生じる発現可能なポリヌクレオチド は、 発現可能な形態で (例えば、 裸のプラスミ ドもしくは他の DN Aと して、 標的化リボソームにおいて、 またはウィルスベクターの一部とし て) 、 ポリヌクレオチドを細胞へ配置し得る任意の方法によって被験体 (例えば、 ヒ ト被験体)の細胞へ導入され得る。遺伝子導入の方法には、
組織または患部 (例えば、 腫瘍) への直接注射、 リボソームによる トラ ンスフエクショ ン (F r a l e yら、 N a t u r e 3 7 0 : 1 1 1 - 1 1 7 ( 1 9 8 0 ) ) 、 レセプター媒介ェン ドサイ トーシス (Z a t 1 o u k a l ら、 A n n . N. Y . A c a d . S c i . 6 6 0 : 1 3 6 - 1 5 3 ( 1 9 9 2 ) ) 、 およびパーティクルボンバードメント媒介遺伝 子移入 (E i s e n b r a u nら、 DNA & C e l l . B i o l . 1 2 : 7 9 1 - 7 9 7 ( 1 9 9 3 ) ) などが含まれる。
本発明の一つの実施形態に従う、 細胞内での目的のタンパク質の分解 制御のために使用する発現ベクターの代表的な例を図 1 2および図 1 3 に示す。 図 1 2は、 目的のタンパク質として E G F Pを使用する態様で ある。 図 1 3は、 目的のタンパク質としてその他任意のタンパク質 (例 えば、 治療用タンパク質、 機能解析に供するためのタンパク質) の遺伝 子を揷入したい場合に使用するもので、 E G F P遺伝子の代わりにマル チク ロ一ユングサイ ト (m c s ) が揷入されている。
本発明は、 さらに別の実施形態において、 上記発現ベクターに本発明 の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの転写の制御を可能に するポリヌクレオチドをさらに組み込んだ、 発現ベクターを提供する。 このよ うな発現ベクターによれば、 抗生物質によるタンパク質分解の制 御に加えて、 遺伝子の転写の制御も同時に可能となる (細胞内でのタン パク質発現の二重制御) 。
本発明の一つの実施形態において抗生物質により遺伝子の転写レベル およびタンパク質の分解レベルの両方での制御 (二重制御) を行う場合 に使用する、 代表的な発現ベクターの模式図を図 1 4示す。 このべクタ 一の構造は、 大きく 4つのユニッ トから構成される。
( 1 ) EBV レプリ コンユニッ ト
CMV プロモーター、 EBNA- 1 cDNA、 および oriP (EBNA- 1 タンパク質が 結合して、 ヒ ト細胞中でベクターの複製を行う領域) を含む。
( 2) 目的タンパク質発現ユニッ ト
TREプロモーター (独自に改変) 、 hTetR、 MCS、 RNA不安定化配列、 お
よぴ SV40 polyAを含む。
( 3 ) 転写制御のための人工転写因子発現ユニッ ト
SRaプロモーター、 人工転写因子 rtTA、 および SV40 polyAを含む。
(4) シャ トルベクター機能ユニッ ト
ampプロモーター (図に記載なし) 、 SV40プロモーター、 薬剤体制遺 伝子 Kan/Neo、チミジンキナーゼ polyA (図に記載なし)、および pUC ori (大腸菌内での複製) を含む。
このような構成のベタターを使用することにより、 たった一つのベタ ターを細胞に導入するだけで、 目的のタンパク質の遺伝子の転写制御お よび該タンパク質の分解制御が可能となる。
なお、 たった 1つのベクターに上記 ( 2) および ( 3) のユニッ トの 両方を担持させて発現させる代わりに、上記( 2)のュニッ トと上記( 3 ) のュニッ トとをそれぞれ異なる発現ベクター中に発現可能に担持して、 細胞内で使用してもよいことは当業者に理解できる。
なお、 上記 ( 2) のユニッ トに含まれる T e t R遺伝子については、 ヒ ト由来の h T e t R遺伝子の代わりに、 E. c o l i 由来の e T e t R遺伝子を使用することもできる。 h T e t Rと e T e t Rは、 目的に 応じて次のように使い分けることができる。
•発現誘導時に、 なるべく高い発現を確保したい場合には hTetRを用 いる。
•非発現誘導時の抑制を最も厳密に (低く) したい場合には eTetRを 用いる。
これは、大腸菌由来のもの( e T e t R) をヒ ト細胞中で使用すると、 ヒ ト細胞中では頻度の低いコ ドンが使われているために塩基配列をアミ ノ酸に翻訳する際に、 一般的にタンパク質の合成が遅くなり発現レベル が低くなるという傾向があるためである。 ヒ ト細胞中では、 ヒ ト由来の TetR(hTetR) を用いると、翻訳効率が上がり発現レベルを高めることが できる。 このよ う に目的に合わせた使い分けにより、 より望ましい発現 調節系を実現しやすくなる。
図 1 5は、 図 1 4に示すものと実質的に同様の構成の発現ベクターに おいて、 目的のタンパク質を E G F Pとした場合の発現べクターの例を 示す。
本発明に従う抗生物質による細胞内タンパク質発現の二重制御法の一 つの代表的な実施形態では、 ドキシサイクリンにより分解調節が可能な 変異 TetRと目的のタンパク質との融合タンパク質をコードする cDNAを、 転写レベルでの調節発現が可能なベクター 「p0STet l5」 に組み込み、
「p0STet l 5 - eTetR- cDNAJ または 「p0STet l 5 - hTetR- cDNAj とレヽうべクタ 一を構築する (図 1 4または図 1 5を参照) 。
図 1 6は、 本発明に従う抗生物質によるタンパク質の転写 .分解制御 (二重制御) システムの原理を説明する模式図である。 この図では、 抗 生物質としてドキシサイク リ ン (図中、 楔形で示す要素。 ) を使用する 例を示している。 ドキシサイクリン非存在下 (図 1 6 ( A ) ) では、 ド キシサイクリンの結合していない人工転写因子 r t T Aは、 転写制御領 域(図 1 6中の T R Eに相当する)に結合できないため、転写量が低く、 わずかに転写が起こり産生されるタンパク質も、 本発明のタンパク質分 解制御機構により分解を受けるため、 結果としてタンパク質発現が厳密 に抑制される。 ドキシサイクリン存在下 (図 1 6 ( B ) ) では、 r t T Αが転写制御領域に結合し、 転写量も高くなり、 さらに産生されるタン パク質についても ドキシサイク リ ンの結合により安定化されるため、 タ ンパク質発現量が非常に高くなる。 このようにして、 細胞内でのタンパ ク質発現のオン · オフが明確に制御され得る。
本発明にしたがって、 一つのベタターに転写制御のためのポリヌタレ ォチドとタンパク質の分解制御のためのポリヌクレオチドを組み込むこ とによって、 1種類のベクターを細胞に導入するだけで、 導入した cDNA の発現を 2重制御することができる。
本発明はまた、 1つの実施形態において、 上記ポリヌクレオチドを導 入されたまたは上記発現ベクターで遺伝子導入された宿主細胞または宿 主生物を提供する。 そのような宿主生物および宿主細胞の非限定的な例
としては、脊椎動物およびその細胞が挙げられ、例えば、魚類、 両生類、 は虫類、 鳥類、 哺乳動物など、 またはそれらの細胞が使用され得る。 他 に昆虫類およびその細胞が使用されうる。哺乳動物の例としては、ヒ ト、 マウス、 ラッ ト、 ゥサギ、 ヒッジ、 ブタ、 ゥシ、 ゥマ、 トリ、 ネコ、 ィ ヌ、 サル、 チンパンジーなどが挙げられる。 より具体的な宿主細胞また は宿主生物の例としては、 これらに限定されることはないが、 本願の実 施例で使用したヒ ト細胞、 マウス、 ゼブラフィ ッシュの受精卵などが挙 げられる。 4 . 本発明の融合タンパク質または該融合タンパク質をコードするポリ ヌク レオチドを含有する組成物
本発明はさらに別の実施形態において、 本発明の融合タンパク質を含 有する組成物、 本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド を含有する組成物、 本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオ チドを含有する発現ベクターを含有する組成物、 ならびに本発明の融合 タンパク質をコードするポリヌクレオチドおよぴ該ポリヌクレオチドの 発現を制御するためのポリヌクレオチドを含有する発現べクターを含有 する組成物を提供する。 これらの本発明の組成物は、 上記融合タンパク 質に結合する抗生物質と組み合わせて用いられる。 例えば、 上記融合タ ンパク質がテトラサイクリン系抗生物質のリプレッサータンパク質の変 異型を含む場合、 本発明の組成物は、 テトラサイクリン系抗生物質 (テ トラサイタリンおよびその誘導体である ドキシサイクリン、 ォキシテト ラサイクリン、 ク ロルテトラサイクリン、 または無水テトラサイク リ ン) と組み合わせて用いられる。
1つの好ましい実施形態では、 本発明の組成物は、 蛍光タンパク質も しくは発光タンパク質と抗生物質に結合するタンパク質の変異タンパク 質との融合タンパク質を含有するか、 またはそのような融合タンパク質 をコードするポリヌク レオチドを含有する発現ベクターを含有する。 好 ましい変異タンパク質の例は、 変異型 T e t Rタンパク質であり、 好ま
しい蛍光タンパク質または発光タンパク質の例は、 既に本発明の融合タ ンパク質の説明において記載したものと同様である。 好ましい変異型 T e t Rタンパク質は、 既に本発明の融合タンパク質の説明において記載 したものと同様である。 好ましくは、 細胞の核内への蛍光の偏りを防ぐ ために、 上記変異型 T e t Rタンパク質は、 さらに 2 8位のアミノ酸残 基においてアルギニンからグルタミンへの置換を有していても良い。 本 発明の融合タンパク質は、 T e tの濃度によって分解が制御され得るた め、 本発明の組成物は、 テトラサイクリン系抗生物質の細胞内または生 体内での量を検出しイメージングすることに使用することができ、 薬物 の動態のモニタリングに使用することができる。
別の実施形態では、 本発明の組成物は、 治療用タンパク質と抗生物質 に結合するタンパク質の変異タンパク質との融合タンパク質を含有する カ またはそのような融合タ パク質をコードするポリヌクレオチドを 含有する発現ベクターを含有する。 好ましい変異タンパク質の例は、 変 異型 T e t Rタンパク質であり、 好ましい治療用タンパク質の例は、 既 に本発明の融合タンパク質の説明において記載したものと同様である。 好ましい変異型 T e t Rタンパク質は、 既に本発明の融合タンパク質の 説明において記載したものと同様である。 遺伝子治療として患者に外来 遺伝子を導入し、 その遺伝子の産物であるタンパク質の働きによって症 状を改善するような場合、 そのタンパク質が抗原となって予想外の副作 用を引き起こす危険が存在する。 そこで、 本発明の組成物を用いて、 例 えば、 治療用タンパク質をコードする遺伝子と変異 T e t Rの融合遺伝 子を導入すれば、 その産物である融合タンパク質の発現量は、 T e tに よりコン トロールでき、 患者の状況に応じて T e tを投与することによ つて、 副作用を抑えつつ治療することが可能となる。
さらに別の実施形態では、 本発明の組成物は、 機能解析に供するため のタンパク質と抗生物質に結合するタンパク質の変異タンパク質との融 合タンパク質を含有するか、 またはそのような融合タンパク質をコード するボリヌクレオチドを含有する発現ベクターを含有する。 好ましい変
異タンパク質は、 変異型 T e t Rタンパク質であり、 好ましい機能解析 に供するためのタンパク質は、 既に本発明の融合タンパク質の説明にお いて記載したものと同様である。好ましい変異型 T e t Rタンパク質は、 既に本発明の融合タンパク質の説明において記載したものと同様である。 本発明の組成物を使用して、 例えば、 変異 T e t Rと、 機能解析の対象 である目的のタンパク質との融合タンパク質を細胞に発現させると、 添 加する T e tの量により細胞内の目的のタンパク質の量をコントロール することができる。 これにより、 目的のタンパク質が、 細胞や生物個体 に与える影響を実験的に解析することが可能となる。
本発明の組成物が、 疾患の治療、 生体中での薬物動態のイメージング もしくはモニタリング等の診断おょぴ Zもしくは治療、 または生体中で のタンパク質の機能解析等の目的で使用される場合は、 本発明の組成物 は、 薬理学的に許容され得る担体、 希釈剤もしくは賦形剤をさらに含有 しても良く、 経口または非経口投与に適する医薬組成物として提供され 得る。
例えば、経口投与のための組成物は、固体または液体の剤形であり得、 具体的には錠剤 (糖衣錠、 フィルムコーティング錠を含む) 、 丸剤、 顆 粒剤、 散剤、 カプセル剤 (ソフ トカプセル剤を含む) 、 シロップ剤、 乳 剤、 懸濁剤などが含まれる。 このような組成物は、 公知の方法によって 製造され、 製剤分野において通常用いられる担体、 希釈剤もしくは賦形 剤を含有するものである。 例えば、 錠剤用の担体、 賦形剤としては、 乳 糖、でんぷん、ショ糖、ステアリン酸マグネシウムなどが用いられ得る。 また、 非経口投与のための組成物の剤形としては、 例えば、 注射剤、 坐 剤などが含まれ、 注射剤は静脈注射剤、 皮下注射剤、 皮内注射剤、 筋肉 注射剤、 点滴注射剤などの剤形を包含する。 このような注射剤は、 公知 の方法に従って、 例えば、 本発明の融合タンパク質またはそれをコード するポリヌクレオチドを含有する発現ベクターを通常注射剤に用いられ る無菌の水性もしくは油性液に溶解、 懸濁または乳化することによって 調製する。 注射用の水性液としては、 例えば、 生理食塩水、 プドウ糖や
その他の補助薬を含む等張液などが用いられ、 適当な溶解補助剤、 例え ば、 アルコール (例、 エタノール) 、 ポリアルコール (例、 プロ ピレン グリ コール、 ポリエチレングリコール) 、 非イオン界面活性剤 〔例、 ポ リ ソルベー ト 8 0、 HCO— 5 0 ( p o l y o x y e t h y 1 e n e ( 5 O m o l ) a d d u c t o f h y d r o g e n a t e d c a s t o r o i l ) ] などと併用してもよい。 油性液としては、 例えば、 ゴ マ油、 大豆油などが用いられ、 溶解補助剤として安息香酸ベンジル、 ベ ンジルアルコールなどを併用してもよい。 調製された注射液は、 通常、 適当なアンプルに充填される。 直腸投与に用いられる坐剤は、 例えば、 上記融合タンパク質またはそれをコードするポリヌク レオチドを含有す る発現ベクターを通常の坐薬用基剤に混合することによって調製される。 上記の経口用または非経口用医薬組成物は、 活性成分の投与量に適合 するような投薬単位の剤形に調製されることが好ましい。 そのような投 薬単位の剤形としては、 例えば、 錠剤、 丸剤、 カプセル剤、 注射剤 (ァ ンプル) 、 坐剤などが挙げられ、 それぞれの投薬単位剤形当たり通常 5 〜 5 0 0 m g、 注射剤では 5〜 1 0 0 m g、 その他の剤形では 1 0〜 2 5 0 m gの上記活性成分が含有されていることが好ましい。 このように して得られる製剤は安全で低毒性であるので、 例えば、 ヒ トまたは温血 動物 (例えば、 マウス、 ラッ ト、 ゥサギ、 ヒッジ、 ブタ、 ゥシ、 ゥマ、 トリ、 ネコ、 ィヌ、 サル、 チンパンジーなど) に対して経口的にまたは 非経口的に投与することができる。
本発明の融合タンパク質の分解を防止するために投与する抗生物質 (例えば、 テトラサイクリン系抗生物質) の投与量は、 対象疾患、 投与 対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、経口投与する場合、 一般的に成人 (体重 6 0 k gとして) においては、 一日につき該抗生物 質を約 1. 0〜 5 0 0 m g、 好ましくは約 5. 0〜 3 0 0 m g、 より好 ましくは約 5. 0〜 2 0 0 m g投与する。 非経口的に投与する場合は、 該抗生物質の投与量は投与対象、 対象疾患などによっても異なるが、 例 えば、 テトラサイクリン系抗生物質を注射剤の形で通常成人 (体重 6 0
k gとして) に投与する場合、 一日につき該抗生物質を約 0 . 1〜 3 0 O m g、 好ましくは約 l〜 2 0 0 m g、 より好ましくは約 1 0〜: L 0 0 m gを静脈注射により投与するのが好都合である。 他の動物の場合も、 体重 6 0 k g当たりに換算した量を投与することができる。
本発明の組成物は、 抗生物質 (例えば、 テトラサイクリン系抗生物質) と組み合わせて使用される。 1つの実施形態では、 本発明の組成物は、 さらに抗生物質) を含有する。 別の実施形態では、 本発明の組成物は、 抗生物質と同時、 または抗生物質を投与する前もしくは後に、 細胞また は被験体に投与することによって使用される。
5 . 本発明のキッ ト
本発明はまた、 1つの実施形態において、 本発明の融合タンパク質を 含有するキッ ト、 本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチ ドを含有するキッ ト、 本発明の融合タンパク質をコードするポリヌク レ ォチドを含有する発現ベクターを含有するキッ ト、 ならびに本発明の融 合タンパク質をコードするボリヌクレオチドおよぴ該ポリヌクレオチド の発現を制御するためのポリ ヌク レオチドを含有する発現べクターを含 有するキッ トを提供する。 また、 本発明は、 上記 4 . で説明した本発明 の組成物を含むキッ トを提供する。
本発明のキッ トは、 通常、 さらに抗生物質 (例えば、 テトラサイク リ ン系抗生物質) を含んでいる。 本発明のキッ トは、 例えば、 インビトロ またはェキソビボで、 細胞に本発明の融合タンパク質をコードするポリ ヌクレオチドを含有する発現ベクターを導入して、 形質転換細胞を作製 および選択するために使用され得る。 本発明のキッ トはさらに、 インビ ボでの使用のための所望の剤形に必要な緩衝液、 注射器、 バイアル等を 含んでいても良い。 また、 本発明のキッ トはさらに、 使用方法およびノ または使用上の注意などを記載した製造業者による指示書を含んでいて も良い。
6 . 本発明の抗生物質によってタンパク質の分解を制御する方法
本発明はまた、 1つの実施形態において、 細胞内に導入可能な抗生物 質 (例えば、 テトラサイクリン系抗生物質) によってタンパク質の分解 を制御する方法を提供する。 この方法は、 以下の (A ) または (B ) の いずれかの工程を包含する。
( A ) 上記抗生物質に結合するタンパク質の変異タンパク質およびそれ に融合した目的のタンパク質を含む融合タンパク質をコードするポリヌ クレオチドを、 上記抗生物質の存在下または非存在下で、 細胞内または 生体内で発現させる工程、
( B ) 上記抗生物質に結合するタンパク質の変異タンパク質およびそれ に融合した目的のタンパク質を含む融合タンパク質を、 上記抗生物質の 存在下または非存在下で、 細胞内または生体内で使用する工程。
好ましい実施形態では、 上記抗生物質はテトラサイクリン系抗生物質 であり、 上記抗生物質に結合するタンパク質は、 該抗生物質のリブレツ サータンパク質である。
上記本発明の 1つの好ましい実施形態は、 テトラサイクリン系抗生物 質によってタンパク質の分解を制御する方法である。 この方法は、 以下 の (A ) または (B ) いずれかの工程を包含する。
( A ) 変異型 T e t Rタンパク質およびそれに融合した目的のタンパク 質を含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを、 テトラサイ クリン系抗生物質の存在下または非存在下で、 細胞内または生体内で発 現させる工程、
( B ) 変異型 T e t Rタンパク質およびそれに融合した目的のタンパク 質を含む融合タンパク質を、 テトラサイクリン系抗生物質の存在下また は非存在下で、 細胞内または生体内で使用する工程。
本発明は、 さらに別の実施形態において、 細胞内に導入可能な抗生物 質 (例えば、 テトラサイクリン系抗生物質) によって、 目的のタンパク 質をコードする遺伝子の転写を制御し、 かつ該遺伝子の発現産物として の該目的のタンパク質の分解を制御する方法を提供する。 この方法は、
以下の工程を包含する。
( C ) 上記抗生物質に結合するタンパク質の変異タンパク質およびそれ に融合した目的のタンパク質を含む融合タンパク質をコードするポリヌ クレオチド、 ならぴに該ポリヌクレオチドの転写を制御するためのポリ ヌクレオチドを発現可能に含有する発現ベクターを用いて、 上記融合タ ンパク質をコードするポリヌクレオチドを、 上記抗生物質の存在下また は非存在下で、 細胞内または生体内で発現させる工程。
上記本発明の方法において、 ( i ) 抗生物質に結合するタンパク質の 変異タンパク質およびそれに融合した目的のタンパク質を含む融合タン パク質をコードするポリヌクレオチドと、 ( i i ) 該ポリヌク レオチド の転写を制御するためのポリヌクレオチドとは、 それぞれ別々の発現べ クターに発現可能に含有されていてもよい。
上記本発明の方法は、 例えば、 実験目的または疾患の診断、 予防、 治 療の目的で、 インビトロもしく はェキソビボで細胞内に本発明の融合タ ンパク質をコードする遺伝子を導入して、 抗生物質 (例えば、 テ トラサ イク リ ン系抗生物質) の存在下または非存在下で、 該遺伝子を発現させ るため、 あるいは、 インビボで被験体の細胞またはそのような細胞を含 む組織もしくは臓器内に本発明の融合タンパク質をコードする遺伝子を 導入し、 そこで抗生物質 (例えば、 テ トラサイク リ ン系抗生物質) の存 在下または非存在下で、 該遺伝子を発現させるために使用され得る。 細 胞内への本発明の融合タンパク質をコードする遺伝子 (またはポリヌク レオチド) の導入は、 既に上記 3 . において説明したものと同様の方法 に従って行い得る。
さらに、 上記本発明の方法は、 例えば、 実験目的または疾患の診断、 予防、 治療の目的で、 インビトロもしくはェキソビボで細胞内において 本発明の融合タンパク質を、 抗生物質 (例えば、 テ トラサイク リ ン系抗 生物質) の存在下または非存在下で使用するために、 あるいは、 インビ ボで被験体の細胞またはそのような細胞を含む組織もしくは臓器内で本 発明の融合タンパク質を、 抗生物質 (例えば、 テ トラサイク リ ン系抗生
物質) の存在下または非存在下で使用するために、 用いられ得る。
本発明の方法において、 上記融合タンパク質または上記融合タンパク 質をコードする遺伝子は、 直接細胞または被験体の組織などに投与また は接触されてもよいが、好ましくは、上記 4 . において説明したように、 適切な担体、 希釈剤もしくは賦形剤などとともに処方されて、 細胞また は生体内に導入されてもよい。 上記方法において、 抗生物質 (例えば、 テトラサイクリン系抗生物質) は、 上記融合タンパク質または上記融合 タンパク質をコードする遺伝子を細胞または生体内に投与または提供す る前、 同時、 または後のいずれかで該細胞または生体内に投与または提 供され得る。 上記方法において、 タンパク質の分解は、 抗生物質 (例え ば、 テ トラサイク リ ン系抗生物質) の (細胞または組織内での) 濃度を 調節 (加減) することによって、 調節され得る。
以下、 実施例を用いて本発明をより具体的に説明するが、 本発明の範 囲はこれらの実施例によって限定されない。 実施例
(実施例 1 )
野生型 TetR- EGFPおよび変異 TetR- EGFPの調製および安定性の検証
1 . 材料および方法
A . c D N Aの調製
抗生物質のテ トラサイク リン(Tet)に結合する大腸菌タンパク質であ る、 テトラサイクリンリブレッサー (TetR) に、 9 5番目のァスパラギ ン酸をァスパラギン、 1 0 1番目のロイシンをセリン、 および 1 0 2番 目のダリシンをァスパラギン酸に置換する 3種類の変異を全て、 または いずれか 2つの変異を組み合わせで導入した。 手順は、 以下の通りであ る。
(手順)
導入するべきアミノ酸置換を含むアミノ酸配列をコードするオリ ゴヌ クレオチドを合成し、これを用いて PCR反応によって、変異を含んだ DNA
断片を調製した。 これを野生型タンパク質をコードする DNAの当該部位 と入れ替えることにより、 上記変異を導入した。
次いで、 野生型および変異導入 TetR 遺伝子を緑色蛍光タンパク質 (EGFP)と融合させた TetR- EGFPをコードする cDNAを作製した。手順は、 以下の通りである。
(手順)
TetR 遺伝子の終止コ ドンのかわりに他のアミノ酸をコードするよう に置換した塩基配列とその下流に制限酵素によって認識され切断される 配列を有するオリゴ DNAを合成し、 これを用いて PCR反応を行い終止コ ドンを持たない TetRをコードする DNA断片を調製し、これを野生型遺伝 子をコードする DNAの当該部位と置換した。 次に制限酵素にて切断し、 EGFPをコードする DNA断片の上流側とタンパク質合成の翻訳の読み枠が 合うように連結した (図 1 A ) 。
B . 遺伝子発現ベクターの作製
上記のように作製した c D N Aを、 本発明者おょぴ共同研究者らが開 発した、 ヒ ト細胞中で安定に複製 · 維持される遺伝子発現ベクター 「PEB6CAG」 に組み込んだ。 構築した発現ベクター DNAは、 市販の DNA精 製キッ トを用いて大腸菌から大量調製した。
C . 形質転換細胞の作製および選択
この DNAを市販のリポフエクション試薬を用いてヒ ト細胞株 HEp-2に 導入し、 4日間 1. 5 mg/ml G418存在下で培養し、 DNAが導入された細胞 だけを選択した。 細胞をトリプシン処理して回収し、 フローサイ トメ一 ター (BD社 FACSCal ibur) で蛍光陽性細胞率や個々の細胞の蛍光強度を 解析した。
2 . 結果
A . フローサイ トメーターによる蛍光強度の測定
図 1 B〜Dは、 野生型 TetR- EGFPおよび変異 TetR- EGFPの安定性をフ ローサイ トメーターを用いて試験した結果を示すグラフである。
野生型 TetR- EGFP を発現させた細胞では、 9 0 %以上の細胞で EGFP
由来の蛍光が認められたが、 変異 TetR- EGFPを発現させた細胞では、 1 0〜 2 0 %程度の細胞で、 非常に微弱な蛍光しか観察されなかった (図 1 B ) 。
これらの細胞を、 プロテアソーム阻害剤である MG132、 100 yg/ml存在 下で 1 2時間培養したところ、 野生型 TetR - EGFPを発現させた細胞では 蛍光強度に大きな変化は見られなかったが、 変異 TetR - EGFPを発現させ た細胞では著しい蛍光の増強が見られた (図 1 C ) 。 このことから、 変 異 TetR - EGFPタンパク質が細胞內でプロテアソームによつて分解されて いること力 S、わずかな蛍光しか観察されない原因であることがわかった。 またこの細胞を、 1. 5 yg/ml のドキシサイクリンを添加して 4 日間培 養した場合には、 野生型 TetR - EGFPでは変化が見られないが、 変異体を 発現させた細胞では、 MG132 を添加した場合以上に著しい蛍光の増強が 見られた (図 1 D ) 。 なお、 ここで TetRは、 上述の 3種類の変異を 3つ とも導入したものを使用した。
B . 倒立顕微鏡による観察
図 2 Aは、 上記の細胞の倒立顕微鏡写真である。 示されるように、 細 胞全体で緑色蛍光が観察されたが、 特に核に蛍光が片寄っていた (図 2 A ) 。 これは TetRが DNA結合タンパク質であるために、 ヒ ト細胞中のゲ ノム DNAに結合することにより、 タンパク質が核に片寄って存在するこ とが原因であると予想された。 これは一般的な目的に応用しょう とする 場合に問題となる場合もあることが予想される。 そこで DNA結合能を失 わせるために、 さらに 2 8番目のアルギニンをグルタミンに置換する変 異を導入した。
図 2 Bは、 R28Q変異を追加した TetR-EGFP変異体を使用して蛍光顕微 鏡観察を行った結果を示す写真である。 示されるように、 核への蛍光の 局在は解消され、 細胞内に均一に蛍光が観察され核と細胞質の境界がは つきり しなくなつた。 また、 この変異では、 ドキシサイクリン依存的な 蛍光増強の程度も維持されていた (図 2 B ) 。
C . ドキシサイク リン濃度と蛍光強度との相関
ドキシサイクリンの濃度と蛍光強度の相関を解析するために、 様々な 濃度のドキシサイクリンを添加した状態での蛍光強度をフローサイ トメ 一ターで解析した。図 3は、その結果を示す。示されるように、 0. 05 yg/ml 以上の濃度で蛍光の増強が見られはじめ、 1. 5 yg/ml の濃度のときに最 大の蛍光強度になった。
D . ドキシサイクリン添加後の経過時間と蛍光強度との相関
ドキシサイク リ ン添加後に時間変化を解析するために、 1. 5 yg/ml の ドキシサイク リ ン添加後 8時間ごとに蛍光強度を測定した。 図 4 Aは、 その結果を示す。 示されるように、 EGFPを単純に発現するだけのべクタ 一をトランスフエクシヨンした細胞と比較したところ、 変異型 T e t R - E G F Pを発現するべクターをトランスフェクシヨンした細胞は、 初 めの 8時間に急激な蛍光増強を示し、 2 4時間後には蛍光はほぼ平衡に 達していた (図 4 A ) 。 逆にドキシサイク リ ン除去後の時間経過を観察 するために、 1. 5 yg/ml のドキシサイクリンで 4 日処理した後、 ドキシ サイクリンを含まない MEM培地に交換し 8時間ごとの蛍光強度を測定し た。 その結果を図 4 Bに示す。 示されるように、 半減期は 8時間であり 2 4時間後にはほぼ完全に蛍光が消失した (図 4 B ) 。
(実施例 2 ) ·
本発明のタンパク質分解制御システムのインビボでの性能の評価
1 . トラスジエニックマウスにおける評価
このタンパク質分解制御システムを使って、 生きたままの動物個体中 でのドキシサイクリンの挙動を蛍光として検出可能かどうかを解析する ために、 トランスジェニックマウスを作成した。
マウスに全身性に導入遺伝子を発現させやすいことが知られている CAGプロモーターの下流に、 R28Q、 D95N、 L101S、 G102Dの変異を導入し た TetR - EGFPの cDNAを結合し、 さらに IRES配列をはさんで下流に蛍光 タンパク質 DsRedのタンデムダイマーを発現し得る cDNAを配置した。こ れにより、 TetR - EGFP タンパク質はドキシサイクリンの有無により分解
制御を受けるために緑の蛍光強度は変動するが、 DsRed の赤い蛍光は常 に一定になることが予想されるため、 各種臓器ごとの発現強度は赤色蛍 光でモニターし、ドキシサイクリンの挙動による緑の蛍光強度の変動は、 緑と赤の蛍光強度比をとることによって標準化して数値化し得ることが 期待された。
そこで、大量調製した DNAをマウス受精卵にィンジエタションした後、 偽妊娠マウスに戻し、 生まれてきた仔マウスの中から トランスジーンを 持つものを選択し飼育した。
このマウスでは期待通り、 普段から赤色蛍光が観察され、 さらに腹腔 にドキシサイクリンを投与すると 8時間後に全身性に緑の蛍光増強が起 こった (図 5 ) 。 赤と緑の蛍光強度比をグラフ化したところ、 8時間目 に緑の蛍光強度が最大となり、その後減衰することが確認された(図 6 )。 2 . ゼブラフィ ッシュでの評価
他の動物種においても同様な分解制御が起こるかどうかを確認するた めに、 R28Q、 D95N、 L101S、 G102Dの変異を導入した TetR- EGFPをコード する mRNAを、市販のキッ トによつて合成しゼブラフィッシュの受精卵に インジェクションを行った。
ドキシサイクリンを添加しない場合には、 緑の蛍光は検出されなかつ たが、 1. 5 pg/mlのドキシサイクリンを添加すると 2 4時間後には 4 0 % の卵において弱い蛍光が観察され、 15 yg/ml添加した場合には 1 0 0 % の卵において非常に強い蛍光が観察された (図 7 ) 。 以上のように、 魚 類においてもマウスにおいて使用したものと同様な分解制御システムを 利用することができることが示された。 (実施例 3 )
本発明の遺伝子発現調節および Zまたはタンパク質分解調節システムを 用いて発現されるタンパク質の定量分析 (その 1 )
A . 遺伝子発現ベクターの作製
cDNA を、 恒常的遺伝子発現ベクター 「pEB6CAG」 または本発明者が特
表 2003 - 515314 (その全体が本明細書中に参考として援用される) の方 法を応用して開発したドキシサイクリンにより転写での調節発現が可能 なベクター 「p0STet l 5」 に組み込んだ。 発現させる cDNAは、 単純な蛍光 タンパク質 EGFP、 またはドキシサイクリンによって分解制御が可能な eTetREGFPまたは hTetREGFP を組み込んだ。 これにより次の 6通りのベ クタ一を構築した。 1 )全く制御なしに恒常的に発現する「 PEB6CAG- EGFPJ、 2 ) 転写レベルでのみ制御が可能な 「p0STet l5- EGFPJ 、 3 ) タンパク質 分解レベルでのみ制御が可能な 「pEB6CAG - eTetREGFP」 「pEB6CAG - hTetREGFPj 、 4 ) 転写レベル、 タンパク質分解レベルで 2重制御が可能 な 「p0STet l 5- eTetREGFP」 「pOSTet l 5- hTetREGFP」 。 構築した発現べク ター DNAは、 市販の DNA精製キッ トを用いて大腸菌から大量調製した。 B . 形質転換細胞の作製おょぴ選択
この DNAを市販のリボフヱクション試薬を用いてヒ ト細胞株 HEp- 2に 導入し、 4 日間 1. 5 mg/ml G418 存在下で培養し、 DNAが導入された細 胞だけを選択した。 この細胞をフローサイ トメーターにかけ、 1つ 1つ の細胞の EGFPによる蛍光強度を測定し、 その平均蛍光強度を求めた。 . 結果
図 8に示すように、 転写またはタンパク質分解のいずれの制御もかけ ない場合には、 ドキシサイク リ ンの有無にかかわらず、 強い蛍光が検出 された。 転写のみ、 または分解のみで発現制御をかけた場合には、 ドキ シサイクリンを添加しない場合の蛍光強度が減弱し、 一定の制御の効果 がみられるものの、 やはりかなりの細胞において蛍光が検出された。 こ れは、 単独の制御では発現抑制が不十分であることを意味する。
一方、 2 重制御をかけた場合には、 ドキシサイクリン非添加時において 蛍光はほとんど検出されず、 また、 ここにドキシサイクリンを添加する と強い蛍光が検出されたため、 その誘導比率は単独の制御の場合が数十 倍であるのに対して、 4 0 0倍以上という著しい誘導がみられた。 しか も、 cDNAの配列が大腸菌由来のままの eTetRを用いた場合には、 より低 い発現レベルでの制御、 cDNAの配列をヒ トで使用頻度が高いコ ドンに変
換した hTetRではより高い発現レベルでの制御が可能であることが明ら かとなつた。 このことから、 導入 ·発現したい目的タンパク質の種類と 目指している発現レベルによって、 eTetR と hTetRを使い分けることが 可能であることが示された。
以上の結果より、 従来技術のドキシサイクリンによる転写制御だけで は、 十分に厳密な発現コン トロールが難しい場合でも、 本発明によるタ ンパク質分解の制御と組み合わせることにより、 きわめて厳密な遺伝子 発現制御を実現可能であることが示された。 (実施例 4 )
本発明の遺伝子発現調節および Zまたはタンパク質分解調節システムを 用いて発現されるタンパク質の定量分析 (その 2 )
ヒ ト細胞に対して強い毒性を示すジフテリァ由来の毒素タンパク質ジ フテリアトキシン A (DTA) 遺伝子を緑色蛍光タンパク質 (EGFP) と融合 させた DTA - EGFP お よびこれを さ ら に変異 TetR と融合させた eTetR- DTA - EGFPおよび hTetR- DTA-EGFPをコードする cDNAを作製し、 遺 伝子の転写を制御する実験を行った。 手順は、 以下の通りである。
(手順)
A . T e t R— D T A— E G F Pの作製
既存の pMCl DT - 3ベタターから制限酵素 BamHI - Dralで切り出して、 DTA をコードする cDNA断片を調製した。 これを上記、変異 TetR- EGFP遺伝子 の TetR部分を制限酵素 Bgl ll- Smalで切除したものに挿入して DTA- EGFP をコードする cDNA を作製した。 また TetR- EGFP遺伝子の TetR と EGFP の間に制限酵素 BamHIを用いて DTAをコードする cDNA断片を挿入するこ とによって、 eTetR - DTA - EGFPおよび hTetR - DTA - EGFPを作製した。
B . 遺伝子発現ベクターの作製
上記のよ う に作製した c D N Aを、 恒常的遺伝子発現べクター 「pEB6CAG」または本発明者が特許公開 2003-515314の方法を応用して開 発したドキシサイクリンにより調節発現が可能なベクター 「pOSTet l5」
に組み込んだ。 これにより次の 6通りのベクターを構築した。 1 ) 転写 レ ベ ル 、 タ ン ノ、。 ク 質 分 解 レ ベ ル で 2 重 制 御 が 可 能 な 「p0STet l 5 - eTetRDTAEGFPj 「p0STet l5 - hTetRDTAEGFPJ 、 2 ) 転写レべ ルでのみ制御が可能な 「p0STet l 5- DTAEGFPJ 、 3 ) タンパク質分解レべ ルでのみ制御が可能な「pEB6CAG- eTetRDTAEGFPj「pEB6CAG - hTetRDTAEGFPJ、 4 ) まったく制御なしに恒常的に発現する 「pEB6CAG_DTAEGFP」 。 これら に加えて、 比較実験のために DTA を有さず細胞毒性を示さない 「p0STet l 5- eTetREGFP」 「p0STet l 5-hTetREGFPj も作成した。 構築した 発現ベクター DNAは、 市販の DNA精製キッ トを甩いて大腸菌から大量調 製した。
C . 形質転換細胞の作製および選択
この DNAを市販のリポフエクション試薬を用いてヒ ト細胞株 HEp- 2に 導入し、 4 日間 1. 5 mg/ml G418存在下で培養し、 DNAが導入された細胞 だけを選択した。 このとき生き残った細胞数を計測した。 また遺伝子導 入の確認のため EGFPの蛍光観察を行った。
結果
図 9に示すように、 転写またはタンパク質分解のいずれかのみで制御 をかけた場合には、 発現制御が無い場合と同じく、 ドキシサイク リ ンを 添加せず発現が抑制されている場合でもほぼ全ての細胞が死滅した。 こ れは、 単独の制御では発現抑制が不十分であり、 低いレベルでの発現の 漏れであっても DTAの高い毒性のために細胞が死滅したことを意味する。 一方、 2重制御をかけた場合には、 hTetR を用いた場合には、 単独制 御の場合と同様にドキシサイクリンを添加していなくても細胞が死滅し てしまった。 一方、 eTetR を用いると、 ドキシサイクリン非添加時にお いて毒性のない遺伝子を導入した場合よりは細胞数が減少するものの、 毒素遺伝子が十分に発現抑制されていることにより十分な数の細胞が生 き残ることが示された。 また、 ここにドキシサイクリンを添加すると、 毒素遺伝子が発現し細胞が死滅することも明らかとなった。
以上の結果より、 従来技術のドキシサイクリンによる転写制御だけで
は、 十分に厳密な発現コン トロールが難しい場合でも、 本発明によるタ ンパク質分解の制御と組み合わせ'ることにより、 きわめて厳密な遺伝子 発現制御を実現可能であることが示された。 とくに、 今回のジフテリア 毒素のように、 わずかな発現でも細胞に与える影響が大きいような遺伝 子の発現制御を行いたい場合には、 eTetR を選択することによって、 最 も厳密な発現抑制が実現できることも明らかとなった。
(実施例 5 )
本発明の遺伝子発現調節およびタンパク質分解調節を含む二重制御シス テムによる目的遺伝子の発現調節
A . 遺伝子発現ベクターの作製
又ファージの Creタンパク質を発現制御するためのベタターとして、 タンパク質分解のみによる制御、 転写のみによる制御、 および二重制御 の 3種類のベクターを構築した。 またその際、 実施例 3および 4におい て TetRのコ ドンを変更した hTetRを用いたのと同様に、通常の塩基配列 の ere遺伝子と、 哺乳動物細胞中で翻訳効率を高くするためにアミノ酸 配列はそのままでコ ドンの種類を変更して塩基配列のみを改変した hCre (配列番号 3 ) を比較したところ、 hCre のほうが全体に組換え効率 が高くなることを確認したため、本実施例では hCreを用いた。 hCre cDNA を、 ドキシサイクリンによって分解制御が可能な TetRhCreにして、上述 の恒常的遺伝子発現ベクター 「pEB6CAG」 に組み込んだ、 分解のみによつ て制御する 「pEB6CAG - TetRhCreJ 、 「pOSTet l 5」 に hCre cDNAを組み込 んで転写のみによって制御できる 「pOSTet l5- hCre」 、 「pOSTet l5」 に TetRhCre を組み込んで二重制御が可能な 「pOSTet l 5- TetRhCre」 の 3種 類のベクターを構築した。 これに加えて、 Cre タンパク質による DNA組 換え効果を確認するためのモニターべクターとして、 黄色蛍光タンパク 質 Venus 、 ΙοχΡ 配列によって挟まれその下流に赤色蛍光タンパク質 DsRedl を 配 置 し た 組 換 え レ ポ ー タ ー べ ク タ ー 、 「pEB6CAG-Venus- lox-IU - SRZJ (図 1 0 ) も作成した。 これを上記の Cre
制御ベクターのいずれかと同時に細胞に導入することにより、 Cre の発 現が見られない細胞は黄色の蛍光を発するが、 Creによる ΙοχΡ間での組 換えが起こると、 Venus cDNAが排除され DsRedl の発現が開始されるた めに、 赤色蛍光を発するようになる。 この蛍光波長の変化から、 Cre の 発現効果を簡便に検出することができる (図 1 0 ) 。
構築した発現ベクター DNAは、 市販の DNA精製キッ トを用いて大腸菌か ら大量調製した。
B . 形質転換細胞の作製および選択
この DNAを市販のリポフエクション試薬を用いてヒ ト細胞株 HEp- 2に 導入し、 4 日間 1. 5 rag/ml G418 および 0. 1 rag/ml zeoc in存在下で培 養し、 2種類の DNAが導入された細胞だけを選択した。 フローサイ トメ 一ターによって黄色と赤の 2波長の蛍光を測定した。
結果
図 1 1に示すように、 ドキシサイクリン非添加時には、 ほとんどの細 胞が黄色の蛍光のみを示し、 赤い蛍光も同時に示す細胞は 5 %程度であ つた。 一方、 1 μ g/mlのドキシサイクリンを添加した場合には、 60%の 細胞が赤い蛍光のみを示し、黄色と赤の両方を示す細胞と合わせて 70 % 以上の細胞で、 赤い蛍光が検出され Creによるレポーターベクターの組 換えが観察された。 また黄色の蛍光しか発しない細胞でも、 その蛍光強 度は大きく減弱しており、 DsRedlは正しく発現していないものの、 組換 えそのものは起こっていることが示唆された。
(実施例 6 )
二重制御系と、 タンパク質分解制御系または転写制御系との間の制御効 率の比較
次に、 タンパク質分解制御のみ、 および転写制御のみで Creタンパク 質の発現調節を行う場合と本発明の二重制御系との性能の比較を行った。 2つのベクターを導入後、 1 ) まったく ドキシサイクリンを添加せずに 6 日培養したもの、 2 ) 1 日だけ 1. 0 ug/mlのドキシサイクリンを添加
し、 その後ドキシサイクリンを除去して 5 日培養したもの、 3 ) 3 日間 1. 0 yg/ml のドキシサイクリンを添加し、 その後ドキシサイクリンを除 去して 3 日培養したもの、 の 3通りの実験を実施した。
図 1 7 Aに示すように、 Creタンパク質を分解のみで制御しようとして も、 ドキシサイクリン非添加時においてすでに Creによるレポーターべ クターの組換えは完全に起こっており、 黄色い蛍光を発する非組換え細 胞は 1 0 %以下であった。さらにここにドキシサイクリンを添加すると、 Cre タンパク質を細胞に過剰に発現させた場合に見られる細胞毒性が出 現して細胞が死滅し、 ごくわずかな細胞しか回収されなかった。 このこ とから、 タンパク質分解のみによる制御では非誘導時の抑制が不十分で あることが明らかとなった。
次に、 図 1 7 Bに示すように、 Creタンパク質を転写のみで制御しよう とした場合においても、 分解のみの場合よりは軽減されているものの、 ドキシサイクリン非添加時においてすでに Creによるレポーターべクタ 一の組換えが顕著に見られ、 組換えが起こったことを示す赤い蛍光を強 く発している細胞が 3分の 2以上であり、 一方黄色い蛍光を発する非組 換え細胞は 2 5 %以下であった。 さらにここにドキシサイクリンを添加 すると、 分解制御の場合と同様に細胞毒性が見られ、 特に発現レベルの 高い、 赤い蛍光の強い細胞ほどよく死滅してしまったため、 細胞集団の 赤い蛍光の平均強度が著しく低下し、 ドキシサイク リ ンの処理時間を延 長するとさらに蛍光強度が低下した。 以上のことから、 転写のみで制御 する場合のほうが分解のみで制御する場合よりもいく らか厳密ではある 、 Creタンパク質の発現制御法としては不十分であることが示された。 次に図 1 7 C に示すように二重制御系を用いると、 7割以上の細胞が 全く組換えを起こさない黄色の蛍光のみを発する細胞であり、 かつその 蛍光強度も大きかった。ところがここにドキシサイクリンを添加すると、 1 日だけの処理においても 7割以上の細胞が赤い蛍光に変化し、 非常に 効率よく組換えを誘導することができた。 また 3 日処理した場合でも、 他の場合に見られたような細胞毒性による細胞数の減少はほとんど見ら
れなかったが、 組換え効率そのものには 1 日だけの処理と大きな変化は なかった。
以上のことから、 二重制御系を用いることにより、 目的タンパク質の酵 素活性を、 ドキシサイクリン非添加時には厳密に抑制することができ、 さらにドキシサイクリン添加によってほとんどの細胞で酵素活性が検出 可能になる事が明らかとなった。
(実施例 7 )
Te t二重制御系の抗生物質濃度依存性の検証
次に、 ドキシサイク リ ンの濃度が組換え効率に及ぼす影響について解 析を行った。 上記の Cre二重制御用べクターと組換えレポーターべクタ 一の 2種類を細胞に導入し、 薬剤選択の後、 0. 001 μ g/ral から 1. 0 μ g/ral まで 4段階の濃度のドキシサイク リ ンを 1 日または 3 日間細胞に 処理し、 組換え効率について検討した。
図 1 8に示すように濃度依存的に組換えの効率は上昇し、確実に組換え を起こすには 1 . 0 μ g/mlまで濃度を上げた方がよいことがわかった。逆 に処理時間を 3倍にしてもそれほど効率に変化がないことから、 ドキシ サイタリン処理は 2 4時間で十分でありかなり早い誘導が実現できてい ることが明らかとなった。
(実施例 8 )
二重制御システムによる Cre遺伝子の発現制御について、 制御の厳密さ を増す方法
A . 遺伝子発現ベクターの作製
実施例 5において作成した「p0STet l 5」 に TetRhCreを組み込んで二重 制御が可能な 「p0STet l 5 Te tRhCr e J のベクターにおいて、 TetRと hCre の融合タンパク質による DNA組換えをより厳密に制御する方法として、 融合タンパク質の細胞内局在を変化させる方法を試みた。 すなわち、 A ) もともとの Te tRhCre 融合タンパク質の他に、 B ) N末に核移行シグナル
(NLS) を付加したもの、 C ) C 末に核外移行配列 (NES) を付加したも の、 D ) N 末に NLS、 C末に NES の両方を配置したもの、 を新たに作成し た。 これらを実施例 5と同様に細胞へ導入し組換え効率について解析し た。
B . 形質転換細胞の作製および選択
これらを実施例 5と同様に細胞へ導入し組換え効率について解析した。 結果 .
図 1 9 A と Bに示すように、 一般的によく用いられている NLSを付カロ して核内への運び込みを促進した Creを用いると、 ドキシサイクリン非 添加時の非組換え細胞の割合が 8割から 7割に減ってしまい、 しかも ド キシサイクリンを添加した際の組換え効率も何も付加しないものと差が ないため、 発現制御の厳密さがよけいに損なわれることが明らかとなつ た。 一方、 図 1 9 Cに示すように、 NESを付加して核から排出される速度 をあげると、 ドキシサイク リン非添加時であるにもかかわらず組換えを 起こしてしまう細胞は 1 4 %から 7 %へと半減し厳密さが増しているこ とがわかった。 またドキシサイクリン添加による組換えの誘導効率もや や低下してしまったが、 処理時間を 3 日に延長することである程度改善 できることが示された。 図 1 9 Dに示すように、 NLS と NESの両方を付加 すると、 ドキシサイク リ ン非添加時の制御も向上せず、 添加時の組換え 公立は大幅に低下し望ましい性能を発揮しなかった。 以上のことより、 Creタンパク質の発現制御をより厳密に行いたい場合には、 NESを付加す ることが有効であることが示された。 産業上の利用可能性
本発明の融合タンパク質は、 生きた動物細胞中において、 単独の状態 では不安定で急速な分解を受けるが、 抗生物質 (例えば、 テトラサイク リン系) との結合により安定化し分解を免れるという性質を有する。 ま た、 遺伝子の転写制御と組み合わせた本発明のタンパク質分解制御シス テム (二重制御システム) によれば、 生きた細胞内でのタンパク質の発
現をより厳密に制御することが可能となる。
したがって、 本発明は、 以下の ( 1 ) 〜 ( 3 ) のような用途に使用す ることができる。
( 1 ) 大腸菌テ トラサイク リ ンリブレッサー (T e t R) タンパク質 は、 ヒ ト細胞中で安定であるが、 これに変異 (例えば、 2力所以上) を 導入した変異体は、 テ トラサイク リン系抗生物質のない状態では急速に 分解されるが、 T e tを添加すると分解を免れるようになり、 細胞中に 蓄積するようになる。 したがって、 例えば、 この変異型 T e t Rタンパ ク質と、 機能解析の対象である目的のタンパク質との融合タンパク質を 細胞に発現させると、 添加する T e tの量により細胞内の目的のタンパ ク質の量をコントロールすることができる。 これにより、 目的のタンパ ク質が、 細胞や生物個体に与える影響を実験的に解析することが可能と なる。
( 2) 遺伝子治療と して患者に外来遺伝子を導入し、 その遺伝子の産 物であるタンパク質の働きによって症状を改善する場合、 そのタンパク 質が抗原となって予想外の副作用を引き起こす危険が存在する。そこで、 治療のためのタンパク質と変異型 T e t Rタンパク質の融合遺伝子を導 入すれば、 その産物である融合タンパク質量は、 T e tにより コン ト口 ールし得、 患者の状況に応じて T e tを投与することによって副作用を 防ぎつつ治療を行うことが可能となる。 したがって、 本発明は医療分野 等での適用に有用である。
( 3) 抗生物質に結合するタンパク質の変異タンパク質 (例えば、 変 異 T e t R) を、 蛍光タンパク質や発光タンパク質 (例 : ルシフェラー ゼ) といった検出が可能なタンパク質との融合タンパク質と して細胞に 発現させれば、 抗生物質 (例えば、 T e t ) の量に応じて蛍光量や発光 量が変動するため、 生きた細胞中や生物個体中の抗生物質 (例えば、 T e t ) 量を検出し、 イメージングすることが可能となる。 したがって、 本発明は、 薬物のィンビボでのィメ—ジング等においても有用である。
(4) 本発明の目的遺伝子の発現制御のための組成物、 キッ ト、 シス
テム、 および方法によれば、 例えば、 細胞分化の過程のある時期に必要 とされる目的遺伝子の発現をその期間だけ維持し、 必要とされなくなつ た時点でその遺伝子の発現を抑制するというような目的遺伝子の発現調 節が可能となる。