明 細 書
ルシフ ラーゼ発光方法および発光試薬
技術分野
[0001] 本発明は、甲虫ルシフ ラーゼの発光反応を安定化させる方法、その利用法、およ び発光試薬に関する。本発明の発光試薬は、ルシフェラーゼ酵素をレポーターおよ びシグナルとしたあらゆるルシフェラーゼアツセィ法、ならびに ATPアツセィ法、さらに はルシフェリンアツセィ法に適用できる。
背景技術
[0002] 従来、 in vitroで甲虫ルシフェリン Zルシフェラーゼによる発光反応を行わせる際、 その発光パターンはフラッシュ状に観察されるため、試薬注入の特別な機構を持つ 装置を用いなければ発光反応を正確に測定することができな力つた。
[0003] これを改善すべく、ルシフェラーゼの検出方法 (ルシフェラーゼアツセィ法)として補 酵素 A (Coenzy.me A: CoA)及びジチオスレィトール(DTT)などのチオール試薬類を 用いる方法により発光の半減期をおよそ 5分間と延長し、かつ発光量を増大させ得る 手法が発明された (特許文献 1参照)。この方法により、ルシフヱラーゼによる発光量 の正確な測定が試薬の自動注入装置を持たな ヽルミノメーターや液体シンチレーシ ヨンカウンターによっても可能となり、培養細胞の中でレポーターとして発現されたル シフェラーゼを高感度で測定するレポーターアツセィ法に広く用いられるようになった
[0004] し力し、薬剤の開発に向けた多検体のサンプルに対する High-throughputスクリー ユング (HTS)にレポーターアツセィを適用する場合、発光半減期が 5分間では試薬を 随時添加してその度ごとに測定をしなければならないため、更なる発光半減期の延 長が求められていた。それに対応して、ルシフェリン Zルシフェラーゼ反応系に AMP を共存させる方法 (特許文献 2参照)や炭酸ガスを溶存させる方法 (特許文献 3参照) が発明され、発光半減期を 8時間まで延長させる系が報告されている。しかしながら、 これらの何れの方法においても、反応溶液中に高価な CoAならびに 5mM以上の高濃 度の DTTなどチオール試薬を共存させる必要があった。これらチオール試薬類は構
造上 SH基を持っため、特に高濃度の水溶液中では劣化し易ぐ溶存酸素などにより 酸化もしくは劣化したチオール試薬類は、ルシフェリン Zルシフェラーゼ反応の効率 を著しく阻害することが知られている。
[0005] これら CoAならびに DTTなどのチオール試薬を用いずに発光反応を改善する例と して、ピロリン酸塩を反応系に加えることによる発光強度の増加が確認 (文献 4, 5、特 許文献 6参照)されてはいる力 発光反応の安定化に対する効果は見られなかった。 また、甲虫ルシフェリン Zルシフェラーゼ発光反応の主要な用途として認知されて 、 る、試料中の ATP量を発光反応により測定する ATPアツセィ法における発光反応に 対しては、ピロリン酸塩を反応系に加えても発光半減期の延長に対する効果は認め られなかった。
[0006] 塩濃度を高めて発光反応を阻害することにより発光半減期を延長させる発明は為 されてはいる(特許文献 7参照)力 ルシフェラーゼアツセィ法ならびに ATPアツセィ法 、さらにはルシフヱリンアツセィ法の何れに対しても適用可能な発光半減期を延長さ せる方法は見 ヽだされて ヽな 、。
[0007] 特許文献 1 :特許第 3171595号公報
特許文献 2 : US5,866,348
特許文献 3 : US6,060,261
非特許文献 4:J.Biol.Chem. 233, 1528-1537 (1958)
非特許文献 5 : Arch. Biochem.Biophys. 46, 399-416 (1953)
特許文献 6:特開平 8—47399号公報
特許文献 7 : US6,503,723
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0008] 本発明は、ルシフェリン Zルシフェラーゼの発光反応の半減期を延長させ、安定ィ匕 した発光系を供給することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0009] 本発明者らは、ルシフェリン Zルシフェラーゼの発光反応にピロリン酸あるいはピロ リン酸塩を介在させることにより、発光半減期を延長させ、発光反応を安定化させるこ
とに成功し、本発明を完成させるに至った。
[0010] 本発明の要旨は以下の通りである。
[0011] (1) ピロリン酸および Zまたはピロリン酸塩の存在下で、ルシフェリンと甲虫ルシフエ ラーゼを反応させ、発光半減期が 5分以上である発光を生ぜしめることを特徴とする
、ルシフェリン Zルシフェラーゼの発光方法。
[0012] (2) ピロリン酸および Zまたはピロリン酸塩が 0.01mM〜10mMの濃度で存在する、 (
1)記載のルシフヱリン Zルシフヱラーゼの発光方法。
[0013] (3) さらに、アデノシン三リン酸およびマグネシウムイオンが存在する、(1)記載のル シフェリン Zルシフェラーゼの発光方法。
[0014] (4) さらに、有機ィォゥ試薬が存在する、(1)〜(3)のいずれかに記載のルシフェリ ン Zルシフェラーゼの発光方法。
[0015] (5) 有機ィォゥ試薬が 10mM以下の濃度で存在する、(4)記載のルシフェリン Zル シフェラーゼの発光方法。
[0016] (6) (1)記載の方法を利用して、試料中の甲虫ルシフ ラーゼ量を測定する方法。
[0017] (7) (1)記載の方法を利用して、試料中の ATP量を測定する方法。
[0018] (8) (1)記載の方法を利用して、試料中のルシフ リン量を測定する方法。
[0019] (9) (1)記載の方法で発光を生ぜしめるための発光試薬であって、ピロリン酸およ び Zまたはピロリン酸塩を含む前記発光試薬。
[0020] (10) 試料中の甲虫ルシフェラーゼ量を測定するためのルシフェラーゼアツセィ試 薬として用いられる、(9)記載の発光試薬。
[0021] (11) 試料中の ATP量を測定するための ATPアツセィ試薬として用いられる、(9)記 載の発光試薬。
[0022] (12) 試料中のルシフェリン量を測定するためのルシフェリンアツセィ試薬として用 いられる、(9)記載の発光試薬。
[0023] (13) (9)記載の発光試薬を含む発光試薬キット。
[0024] 本発明者らは、発光甲虫による in vitroルシフェリン Zルシフェラーゼ発光反応のキ ネテイクスや発光強度に影響を与えるピロリン酸の効果を明らかにし、ピロリン酸が産 業用途に適した発光反応系の制御に向けて有望な因子となる可能性を確認した。
[0025] 既に産業用途で広く活用されているホタルルシフ ラーゼによる発光反応では、ピ 口リン酸の使用により発光強度ならびに発光半減期を制御できることを明らかにした。 また、ピロリン酸を適切な濃度で使用することにより、ルシフェラーゼアツセィ法のみな らず、 ATPアツセィ法においても、実用化に広く用いられてきた CoAや DTTなどのチ オール試薬を用いることなぐ発光強度が一定で、数時間レベルの発光半減期を持 つ、 High-through putスクリーニング (HTS)法で展開が可能な発光反応系の構築が 可能となることを確認した。これは、初期発光反応を制御し、かつルシフェラーゼ酵素 のターンオーバーを促進させるピロリン酸の 2種類の作用によって、長時間にわたつ て発光反応を持続できる発光反応系が構築できたものと考えられる。しかしながら、 本仮説の詳細な検証ならびに明確な作用メカニズムは未だ明ら力とされて ヽな 、。ま た、従来、 CoAが存在する発光反応系では、 DTTなどの有機ィォゥ試薬の存在が必 要とされたが、ピロリン酸によって可能となった数時間レベルの発光半減期を持つ発 光反応系において、有機ィォゥ試薬 (実施例では、ジェチルジチォカルバミン酸ソー ダを使用)が反応に及ぼす顕著な効果は確認されな力つた。ピロリン酸を用いた発光 反応系での有機ィォゥ試薬の役割についてもさらに詳細な検討が待たれる。
[0026] 本明細書は、本願の優先権の基礎である日本国特許出願、特願 2004-229197号の 明細書および Zまたは図面に記載される内容を包含する。
発明の効果
[0027] 本発明により、迅速性と高感度を特徴としていた従来のルシフェラーゼの発光測定 法に代わり、持続性と安定性に優れた発光反応が可能となる。
[0028] 例えば、本発明により、ルシフェリン Zルシフェラーゼの発光反応の発光半減期を 5 分から 6時間まで自在に制御することができる。
[0029] ルシフェリン Zルシフェラーゼの発光反応系にピロリン酸および Zまたはピロリン酸 塩を添加することにより、発光半減期を 2倍以上に延長することができる。
図面の簡単な説明
[0030] [図 1]ルシフェラーゼ発光試薬における種々のピロリン酸カリウム濃度での、ルシフェリ ン Zルシフェラーゼ発光反応の発光強度の時間経過を示す。
[図 2]ルシフェラーゼ発光試薬におけるピロリン酸カリウムの存在'不存在下でのルシ
フェリン Zルシフェラーゼ発光反応の発光強度の時間経過を示す。
[図 3]ルシフェラーゼ発光試薬におけるピロリン酸カリウムおよびジェチルジチォカル バミン酸ソーダの存在 ·不存在下でのルシフェリン zルシフェラーゼ発光反応の発光 強度の時間経過を示す。
[図 4]ATP発光試薬におけるピロリン酸カリウムおよびジェチルジチォカルバミン酸ソ ーダの存在 ·不存在下でのルシフェリン Zルシフェラーゼ発光反応の発光強度の時 間経過を示す。
[図 5]ルシフェラーゼ発光試薬におけるピロリン酸、ピロリン酸カリウムまたはピロリン酸 ナトリウムの存在下 ·不在下でのルシフェリン Zルシフェラーゼ発光反応の発光強度 の時間経過を示す。
[図 6]ATP発光試薬におけるピロリン酸、ピロリン酸カリウムまたはピロリン酸ナトリウム の存在下 ·不在下でのルシフェリン Zルシフェラーゼ発光反応の発光強度の時間経 過を示す。
発明を実施するための最良の形態
[0031] 本発明で使用されるルシフェラーゼは、甲虫由来のホタル.ルシフェリン、即ち多複 素式有機酸 D— (—)—2— (6 'ヒドロキシ— 2,—ベンゾチアゾリル)— Δ2—チアゾリ ンー4一力ルボン酸 (以降は特に記載のない限り「ルシフェリン」と表記する)を発光基 質とし、これを酸化触媒して光子を発する酵素で、ホタル科を始め、コメツキ科、ホタ ルモドキ科、イリォモテボタル科など甲虫由来で発光反応に与る酵素全てを含む。こ の中には組換え DNA技術や変異技術などにより、酵素タンパク自体の安定性や発光 特性などが人為的に改変された酵素も含まれる。
[0032] ルシフェリン Zルシフェラーゼの発光反応系におけるルシフェラーゼの濃度は、ル シフェラーゼアツセィ法の場合、 100 femto §/½し〜100 g/mLが適当であり、好ましく は lpg/mL〜10 g/mLである。また ATPアツセィ法ゃルシフェリンアツセィ法の場合、 0.1 §/½し〜100 /^/½しが適当でぁり、好ましくは1 2/½し〜20 /z g/mLである。
[0033] 本発明で使用するルシフェリンは、上記の甲虫ルシフェリンであり、甲虫より直接抽 出および精製されたものや、化学合成されたものを含む。さらには甲虫ルシフェリン の誘導体で、ある酵素の消化を受けた後に発光活性を持つ発光基質も含まれる。こ
のような甲虫ルシフェリンの誘導体としては、 4-メチル -D-ルシフェリン、 D-ルシフエ- ル- L-メチォニン、 6-0-ガラクトピラノシル -ルシフェリン、 DEVD—ルシフェリン、ル シフェリン- 6,メチルエステル、ルシフェリン 6,-クロ口ェチルエステル、 6,-デォキシル シフェリン、ルシフェリン 6,ベンジルエステルなどを挙げることができる。ルシフェリン およびその誘導体は塩の形態であってもよい。塩としては、カリウム塩、ナトリウム塩な どを挙げることができる。
[0034] ルシフェリン Zルシフェラーゼの発光反応系におけるルシフェリンの濃度は、 0.001 mM〜100 mMが適当であり、好ましくは 0.01 mM〜10 mMである。
[0035] 本発明で使用するピロリン酸および Zまたはピロリン酸塩は、水溶性のものが好まし ぐ溶液のピロリン酸を初め、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ピロリン酸アン モ-ゥム、ピロリン酸水素ナトリムなどを用いることができる。
[0036] ピロリン酸および Zまたはピロリン酸塩の使用濃度は、 0.0001 mMから 100 mMが適 当であり、好ましくは 0.001 mMから 10 mMである。
[0037] 本発明のルシフェリン Zルシフェラーゼの発光反応においては、さらに、有機ィォゥ 試薬、アデノシン三リン酸、マグネシウムイオンを添加してもよい。また、緩衝成分を 添カロしてちょい。
[0038] 本発明で用いる有機ィォゥ試薬は、一般的には還元剤としてルシフェラーゼ酵素を 保護する作用があると考えられている。有機ィォゥ試薬としては、ジチォ力ルバミン酸 塩類、キサントゲン酸塩類、チォりん酸塩、チアゾール類、さらにはチオール試薬な どを挙げることができる。
[0039] ジチォカルノ ミン酸塩類としては、ペンタメチレンジチォカルノ ミン酸ピペリジン、メ チルペンタメチルジチォカルノミン酸ピペコリン、ジメチルジチォカルバミン酸亜鉛、 ジェチルジチォカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチォカルバミン酸亜鉛、ェチルフエ- ルジチォカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチォカルバミン酸ソーダ、ジェチルジチォカ ルバミン酸ソーダ、ジブチルジチォカルバミン酸ソーダ、ジメチルジチォカルバミン酸 カリ、ジメチルジチォカルノミン酸銅、ジメチルジチヨ力ルバミン酸鉄、ェチルフエ-ル ジチカルバミン酸鉛、ジェチルジチカルバミン酸セレン、ジェチルジチォカルバミン 酸テルル、ジェチルジチォカルバミン酸アンモ-ゥムなどを挙げることができる力 金
属塩はこれに限定されることは無く目的に応じて周期律表に記載の金属塩であれば 使用可能である。
[0040] キサントゲン酸塩類としては、キサントゲン酸カリウム、ブチルキサントゲン酸亜鉛、 イソプロピルキサントゲン酸ソーダなどを挙げることができる力 これに限定されること はなぐ周期律表に記載の金属と塩が形成可能であれば使用可能である。
[0041] チォりん酸塩としては、ピぺリジン一ビス一(o, o ジステアリルジチォフォスフエ一 ト)などを挙げることができる。
[0042] チアゾール類としては 2 メルカプトべンゾチアゾール、 2 メルカプトべンゾチアゾ ール亜鉛塩、 2—メルカプトべンゾチアゾールナトリウム塩、 2—メルカプトべンゾチア ゾールシクロへキシルァミン塩、 2—メルカプトべンゾチアゾール銅塩などを挙げるこ とができるが、これに限定されることは無ぐ周期律表に記載の金属と塩あるいは錯体 を形成可能なら使用可能である。
[0043] 本発明にお 、ては、 CoAや DTTなどのチオール試薬類を用いな 、反応系でも、ピ 口リン酸及び Z又はその塩の添加により、フラッシュ発光を抑えたグロ一発光反応へ 改良することが可能である力 DTT、ジチォエリトルトール、 j8メルカプトエタノール、 2 メルカプトプロパノール、 3 メルカプトプロパノール、 2, 3 ジチォプロパノール、 グルタチオン、 CoAなどのチオール試薬類を使用してもよい。これらのチオール試薬 類を添加する場合には、 CoAの濃度は、 500 M以下、好ましくは、 300 M以下に することができる。また、 DTTの濃度は、 50 mM以下、好ましくは、 10 mM以下にするこ とがでさる。
[0044] 有機ィォゥ試薬は単独で使用することもできるが、混合して使用することも可能であ る。
[0045] 有機ィォゥ試薬の使用濃度は、 0 mM〜50 mMが適当であり、好ましくは 0.01 mM〜 10 mMであるが、 2 mM以下の濃度で使用することが可能である。場合によっては、有 機ィォゥ試薬を添加しなくてもょ 、。
[0046] アデノシン三リン酸は、ルシフェラーゼとの反応により、ルシフェリンからルシフェリル -AMP (アデ-レート)を生成し、発光反応に寄与する。アデノシン三リン酸は塩の形 態であってもよい。塩としては、 2ナトリウム塩、 2カリウム塩、マグネシウム塩などを挙
げることができる。
[0047] アデノシン三リン酸の使用濃度は、 0.01pM〜50 mMが適当であり、好ましくは 0.01 mM〜10 mMである。
[0048] マグネシウムイオンは、発光反応の補因子として考えられて!/、る。マグネシウムィォ ンを含む化合物としては、塩化マグネシウム、炭酸水酸ィ匕マグネシウム、硫酸マグネ シゥム、酢酸マグネシウム、リン酸水素マグネシムなどを挙げることができる。
[0049] マグネシウムイオンの使用濃度は、 0.001 mM〜100 mMが適当であり、好ましくは 0.
1 mM〜50 mMである。
[0050] 緩衝成分は、 pHの安定化、発光反応の最適化の効果を奏する。緩衝成分としては 、トリス—硫酸、 Tridneなどを挙げることができる。緩衝成分の種類は、発光反応を利 用する各種アツセィの種類に応じて決めるとよ 、。
[0051] 緩衝成分の使用濃度は、 1 mM〜500 mMが適当であり、好ましくは 5 mM〜100 mM である。
[0052] 発光反応の制御に寄与するのは、上記成分がメインである力 その他、培養細胞の 溶解に必要な界面活性剤やグリセリンなど、発光反応の利用法に応じてさまざまな組 成を添加することができる。
[0053] ルシフェリン Zルシフェラーゼの発光反応は、 20°C〜25°Cの温度で、 pH5.0〜8.5の 条件下で行うとよい。
[0054] 本発明のルシフェリン Zルシフェラーゼ発光反応において、発光半減期を 5分以上 、 10分以上、 30分以上、 1時間以上または 2時間以上 (例えば 6時間)に制御すること ができる。
[0055] また、本発明のルシフェリン Zルシフェラーゼ発光反応にぉ 、て、ピロリン酸及び Z 又はピロリン酸塩を添加しない場合と比較して、発光半減期を 2倍以上、 4倍以上、 1 2倍以上、 24倍以上または 48倍以上 (例えば 144倍)に制御することができる。
[0056] 本発明の方法によるルシフェリン Zルシフェラーゼの発光反応は、甲虫ルシフェラ ーゼ量の測定 (ルシフェラーゼアツセィ法)、 ATP量の測定 (ATPアツセィ法)、ルシフ エリン量の測定 (ルシフェリンアツセィ法)などに利用することができる。
[0057] ルシフェラーゼアツセィ法は、レポータージーンにルシフェラーゼ遺伝子を用いて
その発光活性を測定することにより、遺伝子の転写活性を調べる方法である。例えば 、解析対象のプロモーター下流にルシフェラーゼ遺伝子を結合させたベクターを培 養細胞にトランスフエクシヨンし、培養を行う。細胞の増殖過程で、プロモーターの転 写活性が強ければ細胞内に多くのルシフ ラーゼ酵素が産生され、また、活性が弱 ければルシフェラーゼ酵素の産生量が低下する。本発明の方法によるルシフェリン
Zルシフェラーゼの発光反応により、ルシフェラーゼ酵素の量を高感度かつ簡便に 定量することができる。ルシフェラーゼアツセィ法は、遺伝子発現の解析 (プロモータ 一、ェンハンサ一の転写活性解析)、細胞中の mRNAの作用機序の解析、レセプタ 一など遺伝子調節機能を持つ蛋白質の構造と作用機序の解明、トランスジエニック 植物における器官特異的な発現様式の解析などに利用することができる。
[0058] ATPアツセィ法は、 ATP量を測定する方法である。 ATPとは Adenosine triphosphate
(アデノシン三リン酸)の略称で、分子量 507.2の高エネルギー物質であり、生物の種 々の代謝活動に関与している。生物は食物から吸収した物質を用い、代謝経路を介 して ATP等の化合物を合成し、エネルギーを一時 ATPという形で体内に貯蔵し、必要 に応じて ATPを分解し、エネルギーを得る。この ATPを迅速、高感度に測定するため に、ルシフェリン Zルシフェラーゼ反応を利用することができる。ルシフェリン Zルシフ エラーゼ反応は ATP量に依存する反応である。ルシフヱリンと ATPが反応し、アデ- ル酸ルシフェリンとなり、このアデ-ル酸ルシフェリンと酸素がルシフェラーゼ酵素の 存在下で酸化的脱炭酸反応により分解され、この反応の過程において得られるエネ ルギ一の一部が発光と 、う反応として現れる。この発光を定量することで ATPの定量 を行う。
[0059] [化 1]
甲虫ルシフェラーゼ発光反応
ルシフェラーゼ酵素
ATP+ルシフェリン +02 ► AMP+ォキシルシフェリン +光 (560nm)+CO2
Mg2+
[0060] 本発明の方法によるルシフ リン Zルシフ ラーゼの発光反応により、 ATPの定量 を高感度かつ簡便に行うことができる。この ATPアツセィ法は、 ATPaseなどの酵素活 性の測定、生きている微生物の定量、生きている細胞の定量などに利用することがで
きる。
[0061] ルシフェリンアツセィ法は、ルシフェラーゼが触媒することによって発光反応を生じ る発光基質ルシフェリン量を測定する方法である。甲虫由来のホタル'ルシフエリンは 発光甲虫の発光器官にしか存在しない分子量 280.3の化合物であり、その基本構造 の周隨こ位置する置換基に修飾を施したィ匕合物は発光活性を持たないことが広く知 られている。そこで、ルシフェリンの置換基にガラクトースを結合させた 6-0-ガラクトビ ラノシル -ルシフェリンは、ルシフェラーゼ酵素や充分量の ATPが存在しても発光反応 は生じない。しかし、 β ガラクトシダーゼによる酵素反応が行われ 6-0-ガラクトピラ ノシルが遊離することにより発光活性を持つ D-ルシフェリンが生じる。この D-ルシフ エリン量をルシフェリン Ζルシフェラーゼの発光反応による発光量を測定すれば、 D- ルシフェリン量の生成量すなわち /3 -ガラタトシダーゼの酵素活性が測定できる。本 アツセィ法はルシフェリン Ζルシフェラーゼの発光反応を用いていることから、従来法 の呈色反応に比べ高感度による酵素活性の測定が可能となる。この方法の適用例と しては、ルシフェリン 6' -クロ口ェチルエステル、 6' -デォキシルシフェリン、ルシフェリ ン 6'ベンジルエステル、力 D-ルシフェリンを生成 '定量するキナーゼ活性の測定、 また DEVD—ルシフェリンによるカスパーゼ活性の測定法などがある。
[0062] 本明細書において、「発光半減期」とは、発光量が最大発光量の 1Z2になるのに 要する時間をいう。発光半減期は、経時発光量を測定することにより、求めることがで きる。ルシフェリン Ζルシフェラーゼの発光反応の発光量は、公知の方法により測定 することができる。例えば、市販のルミノメーターにより発光強度を測定する。
[0063] 発光量の測定は、所望の期間にわたり、所望の時間間隔で行えばよい。例えば、 ルシフェラーゼアツセィ法においては、発光反応の開始 2秒後から、 1〜20秒間の積 算発光の測定、または薬剤の開発に向けた多検体のサンプルに対する High-throug hputスクリーニング (HTS)では、発光反応開始から 8時間までの 0.1秒から 10秒間あ たりのそれぞれの検体からの発光量が測定される。
[0064] ATPアツセィ法においては、発光反応の開始 2秒後から、 1〜20秒間の積算発光の 測定、または薬剤の開発に向けた多検体のサンプルに対する High-throughputスク リーニング (HTS)では、発光反応開始から 5時間までの 0.1秒から 10秒間あたりのそれ
ぞれの検体力 の発光量が測定される。
[0065] ルシフェリンアツセィ法においては、発光反応の開始 2秒後から、 1〜20秒間の積算 発光の測定、または薬剤の開発に向けた多検体のサンプルに対する High-throughp utスクリーニング (HTS)では、発光反応開始から 5時間までの 0.1秒から 10秒間あたり のそれぞれの検体力 の発光量が測定される。
[0066] 本発明は、本発明の方法で発光を生ぜしめるための発光試薬であって、ピロリン酸 および Zまたはピロリン酸塩を含む前記発光試薬も提供する。本発明の発光試薬は 、試料中の甲虫ルシフェラーゼ量を測定するためのルシフェラーゼアツセィ法、試料 中の ATP量を測定するための ATPアツセィ法、試料中のルシフェリン量を測定するた めのルシフェリンアツセィ法などに使用することができる。本発明の発光試薬は、ピロ リン酸および Zまたはピロリン酸塩の他、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、アデノシン三 リン酸、有機ィォゥ試薬、マグネシウムイオン、緩衝成分、その他の成分 (例えば、培 養細胞の溶解に必要な界面活性剤、グリセリンなど)を含んでもよい。本発明の発光 試薬に含まれるこれらの成分は上記の通りである。本発明の発光試薬は、各成分を 溶解した水溶液状態であってもよいし、凍結乾燥した状態であってもよい。水溶液状 態の発光試薬は凍結品として供給し、解凍後十分に室温に戻した後に使用するとよ い。また、発光試薬を凍結乾燥する場合には、試薬成分の内、溶液中では比較的不 安定な成分 (ルシフェリン、ルシフェラーゼ、アデノシン三リン酸など)のみを凍結乾燥 し (これを試薬 Aとする)、ピロリン酸および Zまたはピロリン酸塩の他、有機ィォゥ試 薬、マグネシウムイオン、緩衝成分、その他の成分 (例えば、培養細胞の溶解に必要 な界面活性剤、グリセリンなど)それぞれを使用時の溶液と同じ濃度となるように水に 溶解した水溶液 (これを試薬 Bとする)とに分けて、凍結乾燥品 (試薬 A)を冷凍保存、 また水溶液 (試薬 B)を冷蔵または冷凍保存するとよい。この場合、試薬 Bを十分に室 温に戻した後、試薬 Aに加えて溶解し、溶液状態にしてから、使用するとよい。
[0067] 本発明の発光試薬における組成の例を以下の表にまとめる。
[0068] [表 1]
表 1 . ルシフェラーゼアツセィ法に用いられる発光試薬(ルシフェラーゼアツセィ試薬) の組成
溶媒:水 (Milli-Q水)
pH 5.0〜8.5
[0069] 以上の組成を持つ発光試薬をキット化する場合は、上記組成の溶液を凍結させた 1液系の凍結品として供給するとよい。これは- 70°C以下で保存し、解凍後十分に室 温に戻した後に使用する。また上記成分の内、溶液中では比較的不安定な成分で あるルシフェリン、アデノシン三リン酸などを凍結乾燥した試薬 Aと、使用直前にその 他の成分から成る試薬 Bを加え溶解させて使用する 2液系の試薬キットとしても供給 できる。この場合、凍結乾燥品の試薬 Aは- 20°Cで、また試薬 Bは冷蔵 (4°C)または冷 凍 (-20°C)で保存される。
[0070] [表 2]
表 2 . ATPアツセィ法に用いられる発光試薬 (ATPアツセィ試薬) の組成
溶媒:水 (Milli-Q水)
pH 5·0〜8·5
[0071] 以上の組成を持つ発光試薬をキット化する場合は、上記組成の溶液を凍結させた 1液系の凍結品として供給するとよい。これは- 70°C以下で保存し、解凍後十分に室 温に戻した後に使用する。また上記成分の内、溶液中では比較的不安定な成分で あるルシフェリン、ルシフェラーゼなどを凍結乾燥した試薬 Aと、使用直前にその他の 成分力 成る試薬 Bを加え溶解させて使用する 2液系の試薬キットとしても供給できる
。この場合、凍結乾燥品の試薬 Aは- 20°Cで、また試薬 Bは冷蔵 (4°C)または冷凍 (-2 0°C)で保存される。
[0072] [表 3]
表 3 . ルシフェリンアツセィ法に用いられる発光試薬(ルシフェリンアツセィ試薬) の組成
溶媒:水 (Milli-Q水)
pH 5.0~8.5
[0073] 以上の組成を持つ発光試薬をキット化する場合は、上記組成の溶液を凍結させた 1液系の凍結品として供給するとよい。これは- 70°C以下で保存し、解凍後十分に室 温に戻した後に使用する。また上記成分の内、溶液中では比較的不安定な成分で あるルシフェラーゼ、アデノシン三リン酸などを凍結乾燥した試薬 Aと、使用直前にそ の他の成分力 成る試薬 Bを加え溶解させて使用する 2液系の試薬キットとしても供 給できる。この場合、凍結乾燥品の試薬 Aは- 20°Cで、また試薬 Bは冷蔵 (4°C)または 冷凍 (-20°C)で保存される。
[0074] 本発明は、本発明の発光試薬を含む発光試薬キットも提供する。本発明のキットは 、本発明の発光試薬の他、取扱説明書、大ま力な使用法を示した操作法のフローチ ヤートなどを含むとよい。
[0075] 取扱説明書には、発光反応の概要や測定原理、製品の特徴、保存条件、試薬の 調製法ならびに操作法、関連製品、トラブルシューティングなどが記載されているとよ い。本発明のキットは、さらに、用途に応じて、標準品となるルシフェラーゼ酵素 (ルシ フェラーゼアツセィ法に用いる場合)、標準品となる ATP溶液 (ATPアツセィ法に用い る場合)、標準品となるルシフェリン (ルシフェリンアツセィ法に用いる場合)などを含ん でもよい。
[0076] 以下、本発明を実施例により具体的に説明する力 これらの実施例は本発明の範
囲を限定するものではな 、。
実施例 1
[0077] 「ピツカジーン発光キット (東洋インキ製造株式会社製:製品番号 PGL100)」に添付 されている取り扱い説明書に記載されている組成に従い、 20mMトリシン、 1.07mM(Mg CO ) Mg(OH) ·5Η 0、 2.67mM硫酸マグネシウム、 O.lmM EDTA、 470 μ Μルシフェリ
3 4 2 2
ン、 530 μ Μアデノシン 3リン酸 (ΑΤΡ)、 ρΗ7.8なる「ルシフェラーゼ発光試薬」を調製し た。なお同処方に記載のチオール試薬である 270 M CoAならびに 33.3mM DTTは 添加して ヽな 、。次にこの「ルシフェラーゼ発光試薬」にピロリン酸カリウム (和光純薬 工業株式会社製)ならびに有機ィォゥ試薬であるジェチルジチォカルバミン酸ソーダ (川口工業株式会社)を終濃度がそれぞれ 50 M、 2mMとなるように加えた「ルシフエ ラーゼ発光試薬 (+改良)」を用意した。
[0078] 「ピツカジーン発光キット (東洋インキ製造株式会社製:製品番号 PGL100)」に含ま れている「ルシフェラーゼ 'スタンダード酵素 (10 g/mL)」を「ピツカジーン培養細胞溶 解剤 LUC:製品番号 PGC50 (東洋インキ製造株式会社製)」で希釈して調製した 100η g/mLのルシフェラーゼ酵素溶液を、ルミノメーター (Berthold社製 LB9506)用のキュ ベット〖こ 10 L採った。まず調製した上記の「ルシフェラーゼ発光試薬」 100 μ Lを添加 し、即座にルミノメーターにセットして試薬添加直後から 25秒間経過ごとの経時発光 量 (RLUZ秒)を 200秒後まで測定した。続いて「ルシフ ラーゼ発光試薬 (+改良)」に っ ヽても同様の発光量を測定しそれぞれの測定値を得た (表 4)。
[0079] [表 4]
CoAと DTTのチオール試薬を使用しな 、「ルシフェラーゼ発光試薬」による発光反 応では、試薬添加直後から急速に発光が減衰するフラッシュ発光が観察され、半減 期は約 2分半であつたが、ピロリン酸カリウムと有機ィォゥ試薬を適用した「ルシフェラ ーゼ発光試薬 (+改良)」による発光反応では、試薬添加直後の僅かな減衰の後に 20
0秒間にわたってほぼ一定値を持続するグロ一発光が確認され、半減期は 5分間以 上となった。
[0081] さらに、上記の「ルシフェラーゼ発光試薬」にお 、て、ジェチルジチォカルバミン酸 ソーダを終濃度が 2 mMとなるように、またピロリン酸カリウム (PPiK)を終濃度がそれぞ れ 10 M、 25 M、 50 M、 75 M、 100 Mとなるように加え、上記の操作を繰り 返した。結果を図 1に示す。
[0082] ピロリン酸カリウムの添加濃度が低い 10 μ Μでは初期発光量が高 、ものの発光は 速やかに減衰した力 発光の半減期は 5分間以上となった。これに対してピロリン酸 カリウムの添加濃度が高くなるに従い初期発光量はそれに応じて減少はする力 発 光量の安定ィ匕への効果は高くなる傾向が認められ、ピロリン酸カリウムを 100 Μ添カロ させた場合には、発光半減期は 10分間以上に延長された。これにより初期発光量と 発光の安定ィ匕は、ピロリン酸カリウムの濃度によって制御することができることが確認 された。これは、甲虫ルシフェリン/ルシフェラーゼ発光反応において、初期発光反応 を制御し、かつルシフェラーゼ酵素のターンオーバーを促進させる、ピロリン酸が持 つ 2種類の作用による効果と考えられる。
実施例 2
[0083] 「ピツカジーン発光キット (東洋インキ製造株式会社製:製品番号 PGL100)」に添付 されている取り扱い説明書に記載されている組成に従い、 20mMトリシン、 1.07mM(Mg CO ) Mg(OH) ·5Η 0、 2.67mM硫酸マグネシウム、 O.lmM EDTA、 33.3mM DTTゝ 470
3 4 2 2
μ Mルシフェリン、 270 μ M CoA、 530 μ Μアデノシン 3リン酸 (ΑΤΡ)、 ρΗ7.8なる「ルシフ エラーゼ発光試薬」を調製した。一方、同処方に記載のチオール試薬である 270 Μ CoAならびに 33.3mM DTTは添加して!/、な!/、代わりにピロリン酸カリウム(和光純薬ェ 業株式会社製)ならびに有機ィォゥ試薬であるジェチルジチォカルバミン酸ソーダを それぞれ終濃度が 1.5mM、 2mMとなるように加えた「ルシフェラーゼ発光試薬 (+改良 )」を調製した。さらにそれぞれについて、ルシフェラーゼ酵素の安定ィ匕を促進させる ため終濃度 10%のグリセロールならびに ImM DTTを共存させた。
[0084] 「ピツカジーン発光キット (東洋インキ製造株式会社製:製品番号 PGL100)」に含ま れている「ルシフェラーゼ 'スタンダード酵素 (10 g/mL)」を「ピツカジーン培養細胞溶
解剤 LUC:製品番号 PGC50 (東洋インキ製造株式会社製)」で希釈して調製した 100η g/mLのルシフェラーゼ酵素溶液を、マイクロタイタープレートのゥエル内に 10 μしづ つ分注した。続いて調製した上記発光試薬をそれぞれの酵素溶液に 100 L加え、 速やかにルミノメーター(Berthold製 LB96V Plus)内に移し、装置内で測定を開始し てから 5時間の経時発光量の変動を測定した (表 5および 6、図 2)。なおルシフェリン Zルシフェラーゼ発光反応は温度によって大きく影響を受ける為、全ての操作ならび にルミノメーターによる測定は 23°Cに設定された恒温室にて行った。
[0087] 「ルシフェラーゼ発光試薬」による発光反応は、測定開始より高い発光量を示したが 、除々に減衰し、測定開始後 60分間で発光量は 50.4%にまで低下したことから発光半 減期は 61分間であった。これに対して「ルシフェラーゼ発光試薬 (+改良)」による発光 反応では、開始してから 10分後に発光量 (RLU/秒)は一定値を取って安定ィ匕しながら 、徐々に減衰した。その後 5時間を経過した時点でも最大発光量の 62.1%の発光量 を維持しており、発光半減期は 5. 5時間であった。
[0088] さらに、上記の「ルシフェラーゼ発光試薬」にお 、て、(1)ジェチルジチォカルバミン 酸ソーダもピロリン酸カリウムも添加しないもの、(2)ピロリン酸カリウム(終濃度 2 mM) を添カ卩したもの、(3)ジェチルジチォカルバミン酸ソーダ(終濃度 2 mM)を添カ卩したも の、(4)ジェチルジチォカルバミン酸ソーダ (終濃度 2 mM)とピロリン酸カリウム(終濃 度 2 mM)を添加したものを用意し、上記の操作を繰り返した。結果を表 7および図 3に 示す。なおこの実験系では、ルシフェラーゼ酵素の安定化のために 10%のグリセロー ルは共存させたが、有機ィォゥ試薬の効果を厳密に比較するために DTTは一切加え ていない。
[0089] [表 7]
[0090] 2mMピロリン酸カリウムの添カ卩により、初期発光の増加ならびにその急速な減衰が 抑えられ、発光半減期の延長に顕著な効果があることが認められた。すなわちピロリ ン酸カリウムを添加しな 、場合、有機ィォゥ試薬を含まな 、系で発光半減期が 28分 間、有機ィォゥ試薬を含んだ場合にも 50分間程度であるのに対し、ピロリン酸カリウム を加えた場合、有機ィォゥ試薬がない場合で 187分間、有機ィォゥ試薬存在下では 1 69分間と発光半減期の大幅な延長ならびに発光反応の安定化が確認され、この安 定ィ匕への効果はピロリン酸カリウム添カ卩により顕著となることが確認された。
[0091] CoAなどのチオール試薬存在下におけるルシフェラーゼアツセィ法の発光反応を 数十秒間単位で計測する際には、その発光反応における発光強度の増力 tlと発光キ ネテイクスの安定ィ匕においてジェチルジチォカルバミン酸ソーダ等の有機ィォゥ試薬 は顕著な効果を示した。しカゝしながら、 CoAなどのチオール試薬が存在せず、かつ発 光持続時間を数時間レベルまで延長させた反応系では、有機ィォゥ試薬は発光の 減衰を抑制させ発光強度を維持する若干の効果を示したが、発光安定化に寄与す る効果はピロリン酸の方が遥かに大きいことが確認された。これは、ピロリン酸自身が 甲虫ルシフェリン/ルシフェラーゼ発光反応の制御により直接的に作用するのに対し 、有機ィォゥ試薬はその補助的な役割を担っていることに拠ると推察される。
実施例 3
[0092] 「ATP測定試薬キット (東洋インキ製造株式会社製:製品番号 LL100-1)」に含まれ る ATP発光試薬 10mL (l mM DTT含有)を調製し、分け取った 5mLに対してピロリン 酸カリウム (PPiK) (和光純薬工業株式会社製)を終濃度 ImMとなるよう加えた。続 、て 同キットに含まれる ATP標準試薬 (ATP濃度 =1 X 10— 12M)をマイクロタイタープレートの ゥエル内に 100 L分注した。速やかにルミノメーター(Berthold製 LB96V Plus)内に
移し、装置内で測定を開始してから 5時間の経時発光量の変動を測定した (表 8)。な ぉルシフェリン Zルシフェラーゼ発光反応は温度によって大きく影響を受ける為、全 ての操作ならびにルミノメーターによる測定は 23°Cに設定された恒温室にて行った。 ピロリン酸カリウムを添カ卩して ヽな 、ATP発光試薬にっ ヽても上記の操作を行った。
[0093] [表 8]
[0094] ピロリン酸カリウムを添加していない ATP発光試薬による発光反応は、測定開始より 高い発光量を示した力 急速に減衰し、測定開始後 15分間で発光量は 45%にまで低 下したことから発光半減期は 11分間であった。これに対してピロリン酸カリウムを終濃 度 ImM加えた発光試薬による発光反応では、開始してから 5分後に発光量 (RLU/秒) は一定値を取って安定ィ匕し、その後徐々に減衰する。その後 5時間を経過した時点 でも最大発光量の 50.3%の発光量を維持しており、発光半減期はおよそ 5時間であ つた o
[0095] さらに、上記の ATP発光試薬に、(1)ジェチルジチォカルバミン酸ソーダもピロリン酸 カリウムも添加しないもの、(2)ピロリン酸カリウム(終濃度 1 mM)を添加したもの、(3)ジ ェチルジチォ力ルバミン酸ソーダ(終濃度 2 mM)を添カ卩したもの、(4)ジェチルジチォ 力ルバミン酸ソーダ (終濃度 2 mM)とピロリン酸カリウム(終濃度 1 mM)を添加したもの を用意し、上記の操作を繰り返した。結果を表 9および図 4に示す。
[0096] [表 9]
ImMピロリン酸カリウムの添カ卩により、初期発光の増加ならびにその急速な減衰が 抑えられ、発光半減期の延長に顕著な効果があることが認められた。またこの際に併 せて有機ィォゥ試薬としてジェチルジチォカルバミン酸ソーダを添加した力 効果と
しては若干の発光量の低下に作用しているが、発光反応の安定ィヒに対する効果は 認められなかった。
[0098] これまで ATPアツセィ法における発光反応系では、その発光半減期の延長や発光 キネテイクスの安定ィ匕に対して、ルシフェラーゼアツセィ法の発光反応系で効果を示 したチオール試薬、炭酸ガス、 AMPなどの何れの制御因子を用いても効果は認めら れな力つた。これに対し、ピロリン酸を反応系に加えることにより、初期発光反応を抑 制するとともに発光半減期を顕著に延長できる効果を確認した。 ATPアツセィ法にお ける発光反応系においても、初期発光反応の抑制、及びルシフ ラーゼ酵素のター ンオーバー向上による発光反応の継続促進にピロリン酸が効果を及ぼした結果、発 光反応の安定ィ匕が為されたものと考えられる。
実施例 4
[0099] 「ピツカジーン発光キット (東洋インキ製造株式会社製:製品番号 PGL100)」に添付 されている取り扱い説明書に記載されている組成に従い、 20mMトリシン、 1.07mM(Mg CO ) Mg(OH) ·5Η 0、 2.67mM硫酸マグネシウム、 O.lmM EDTA、 470 μ Μルシフェリ
3 4 2 2
ン、 530 μ Μアデノシン 3リン酸 (ΑΤΡ)、 ρΗ7.8なる「ルシフェラーゼ発光試薬」を調製し た。なお同処方に記載のチオール試薬である 270 M CoAならびに 33.3mM DTTは 添加して ヽな 、。次にこの「ルシフェラーゼ発光試薬」にピロリン酸ナトリウム (和光純 薬工業株式会社製)ならびに有機ィォゥ試薬であるジェチルジチォカルバミン酸ソー ダを終濃度がともに 2mMとなるように加えた「ルシフェラーゼ発光試薬 (+改良)」を用 意した。さらにそれぞれについて、ルシフェラーゼ酵素の安定ィ匕を促進させるため終 濃度 10%のグリセロールを共存させた。
[0100] 「ピツカジーン発光キット (東洋インキ製造株式会社製:製品番号 PGL100)」に含ま れている「ルシフェラーゼ 'スタンダード酵素 (10 g/mL)」を「ピツカジーン培養細胞溶 解剤 LUC:製品番号 PGC50 (東洋インキ製造株式会社製)」で希釈して調製した 100η g/mLのルシフェラーゼ酵素溶液を、ルミノメーター (Berthold社製 LB9506)用のキュ ベット〖こ 10 L採った。まず調製した上記の「ルシフェラーゼ発光試薬」 100 μ Lを添加 し、即座にルミノメーターにセットして試薬添加直後から 25秒間経過ごとの経時発光 量 (RLUZ秒)を 200秒後まで測定した。続いて「ルシフ ラーゼ発光試薬 (+改良)」に
ついても同様の発光量を測定しそれぞれの測定値を得た。さらに、上記の「ルシフエ ラーゼ発光試薬 (+改良)」のピロリン酸ナトリウムの代わりにピロリン酸カリウム (和光純 薬工業株式会社製)またはピロリン酸 (和光純薬工業株式会社製)を終濃度がそれ ぞれ 2mMとなるようにカ卩えた「ルシフェラーゼ発光試薬 (+改良)」を用意して、上記の 操作を繰り返した。結果を表 10および図 5に示す。
[0101] [表 10]
[0102] 「ルシフェラーゼ発光試薬」による発光反応は、測定開始より高い発光量を示したが 、その後速やかに減衰を続け、測定開始後 60分間で発光量は 47%にまで低下し、発 光半減期は約 46分間であった。これに対してピロリン酸ならびにピロリン酸塩を加え た「ルシフェラーゼ発光試薬 (+改良)」による発光反応では、開始して力も 6から 12分 後に発光量 (RLU/秒)は最大値を取って安定ィ匕しながら徐々に減衰した。ピロリン酸 をカロえた反応系ではカ卩えないものに比べ最大発光量は 55.4%であった力 発光半減 期は 111分間に延長された。またピロリン酸塩を加えた発光反応系では、最大発光反 応はそれぞれ 24から 26%に抑えられた力 2時間以上の発光半減期と安定した発光 反応が得られた。
[0103] ピロリン酸 (PPi)に比べて、 2mMと同濃度の PPiKや PPiNaのピロリン酸塩はより強く発 光を抑制する効果が認められたが、これは水溶液中にピロリン酸イオンの解離の効 率の違いによるものと考えられる。反応液中でピロリン酸イオンを遊離する化合物で あれば、その作用の強弱は解離定数で異なるにしても、ルシフェラーゼアツセィ法に おいて発光反応を制御する効果を持つものと考察される。
実施例 5
[0104] 「ATP測定試薬キット (東洋インキ製造株式会社製:製品番号 LL100-1)」の中の AT P発光試薬 10mL (l mM DTT含有)を調製し、分け取った 5mLに対してピロリン酸(和
光純薬工業株式会社製)を終濃度 ImMとなるよう加えた。続いて同キットに含まれる A TP標準試薬 (ATP濃度 =1 X 10— 12M)をマイクロタイタープレートのゥエル内に 100 μし分 注した。速やかにルミノメーター(Berthold製 LB96V Plus)内に移し、装置内で測定を 開始してから 5時間の経時発光量の変動を測定した。なおルシフェリン Zルシフェラ ーゼ発光反応は温度によって大きく影響を受ける為、全ての操作ならびにルミノメー ターによる測定は 23°Cに設定された恒温室にて行った。ピロリン酸を添加していない ATP発光試薬についても上記の操作を行った。さらに、ピロリン酸の代わりにピロリン 酸カリウムまたはピロリン酸ナトリウムを終濃度 ImMとなるよう加えた ATP発光試薬も用 意して、上記の操作を行った。結果を表 11および図 6に示す。
[0105] [表 11]
[0106] ピロリン酸を添加していない ATP発光試薬による発光反応は、測定開始より 5分間 後に最も高い発光量を示した力 急速に減衰し、測定開始後 30分間には発光量は 6 6.6%にまで低下したことから発光半減期は約 42分間であった。これに対してピロリン 酸を終濃度 ImM加えた発光試薬による発光反応では、初期発光量こそ「ATP発光試 薬」の 50%弱と抑えられているが、発光反応開始後 5分間で発光量 (RLU/秒)は最大値 を取り、その後一定の割合で徐々に減衰し、その発光半減期は 136.5分間に延長さ れた。さらにピロリン酸塩を添加した反応系では、それぞれ 24から 26%に最大発光量 は抑えられた力 カリウム塩では 243.5分間、ナトリウム塩では 262.7分間の発光半減 期も顕著な延長が確認された。
[0107] ピロリン酸 (PPi)に比べて、 ImMと同濃度の PPiKや PPiNaのピロリン酸塩はより強く発 光を抑制する効果が認められたが、これは水溶液中にピロリン酸イオンの解離の効 率の違いによるものと考えられる。反応液中でピロリン酸イオンを遊離する化合物で あれば、その作用の強弱は解離定数で異なるにしても、 ATPアツセィ法において発
光反応を制御する効果を持つものと考察される。
[0108] 本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本 明細書にとり入れるものとする。
産業上の利用可能性
[0109] 本発明のルシフェリン Zルシフェラーゼ発光方法は、ルシフェラーゼアツセィ法、 A TPアツセィ法、ルシフェリンアツセィ法などに利用できる。従って、本発明のルシフェリ ン Zルシフェラーゼ発光方法を利用することにより、遺伝子の転写活性の測定、 ATP aseなどの酵素活性の測定、生きている微生物の定量、生きている細胞の定量、カス パーゼゃ βガラクトシダーゼなどの酵素活性の測定、細胞に対する薬剤の毒性試験 などを正確、かつ大量の検体を取り扱う HTSにおいて簡便に行うことができる。