明細書
新規抗体 技術分野
本発明は、 レビ一小体等の α—シヌクレイン凝集物に特異的に結合する抗体、 該抗 体を含有するレビ一小体及びシヌクレイノパチ一 (シヌクレイン症) 病変の検出薬な らびにレビー小体及びシヌクレイノパチ一 (シヌクレイン症) 病変の検出方法に関す る。 背景技術
パーキンソン病 (PD) 、 レビー小体型痴呆症 (DLB) 等の変性神経細胞にはレ ビ一小体 (LB) などの形で《—シヌクレインが凝集'蓄積する [Am. J. Pathol , 152 879 (1998)]。 -シヌクレインは Ρ D、 D L B以外にも脊髄小脳変性症の一種で ある多系統萎縮症のグリア細胞や Hallervorden- Spatz病における LB、 変性神経突起 などに蓄積することが知られ、 これらの疾患はシヌクレイノパチ一 (シヌクレイン症 ) と総称される。 さらに家族性 PD家系で a—シヌクレインの変異が見出されたこと [Science 276:2045 (1997)]から α—シヌクレインの P Dならびにシヌクレイノパチ —発症における役割が注目されている。
しかし、 α—シヌクレインを細胞内で過剰発現させるのみでは L Βは形成されない という事実、 α—シヌクレイン変異が家族性 PD以外では認められないことなど、 Ρ D及び D L Βと《—シヌクレインとの関係には未だ不明な点が多く、 分子レベルでの 解明が待たれている。
これまで α—シヌクレインの研究にあたり種々の抗ひ一シヌクレイン抗体が調製さ れてきたが、 これら抗体はレビ一小体等と結合するとともに正常脳に存在するひーシ ヌクレインとも結合することが知られていた。
一方、 ひーシヌクレインの Serは G蛋白結合型受容体キナ一ゼ (GRK) 、 カゼィ ンキナーゼ (CK1、 CK2) などによりリン酸化されうる [J Biol Chem 275, 26515 (2000), J Biol Chem 275, 390 (2000)]が、 生理的条件下において、 あるい
は上記レビー小体など P Dあるいは他のシヌクレイノパチ一などの病的条件下におい てリン酸化されているという報告はない。 発明の開示
本発明者らは、 上記目的を達成するべく鋭意研究した結果、 レビ一小体等の凝集物 を構成するひ一シヌクレインにおいて構成アミノ酸の 1部がリン酸化されていること を発見した。 さらにこのリン酸化アミノ酸を有する合成ペプチドを抗原として調製し た抗体が、 α—シヌクレイン凝集物と特異的に結合することを見いだし、 本発明を完 成するに至った。
すなわち、 本発明は配列番号 1において 1又は 2以上の Serがリン酸化された蛋白 質と特異的に結合する抗体である。
また、 本発明は配列番号 1において Ser9、 Ser42、 Ser87又は Serl 29のいずれか 1つ がリン酸化された蛋白質と特異的に結合する抗体である。
また、 本発明は配列番号 1において Serl 29がリン酸化された蛋白質と特異的に結合 する抗体である。
また、 本発明は配列番号 2において Ser6がリン酸化されたペプチドと特異的に結合 する抗体である。
また、 本発明は配列番号 1において Ser87がリン酸化された蛋白質と特異的に結合 する抗体である。
また、 本発明は配列番号 3において Ser6がリン酸化されたべプチドと特異的に結合 する抗体である。
また、 本発明は上記抗体のいずれかを含有することを特徴とするシヌクレイノパチ 一病変検出薬である。
また、 本発明は上記抗体のいずれかを使用することを特徴とする配列番号 1におい て Serl29又は Ser87がリン酸化された α—シヌクレインの検出方法である。 図面の簡単な説明
図 1は D L B脳より抽出した -シヌクレインのウエスタンブロット解析の結果を
表す。 D L B脳を 50 mMトリス緩衝液 (Tris HC1)、 1 % Tri ton- X、 1 % SarkosyK 8 M尿素 (Urea)で可溶化することにより得られた画分を抗ヒト α-シヌクレイン抗体 LB509を用いてウェスタンプロット解析した。 Cは正常対照人脳、 Dは D L B患者脳 を表す。 分子量マ一カー位置 (キロダルトン表示) を左側に示す。 15キロダルトンの 位置に α-シヌクレイン蛋白のバンドが陽性を示す。
図 2は D L Β脳組織の抗ひ -シヌクレイン抗体ならびにリン酸化特異抗ひ-シヌクレ イン抗体による染色の結果を表す。 D L B脳大脳皮質をホルマリン固定後、 50ミクロ ン厚に薄切し、 抗ヒトひ -シヌクレイン抗体 LB509 (Α) 及び Ser 129リン酸化特異 α -シヌクレイン抗体 (Β) を用いてアビジン ·ピオチン複合体法により免疫染色し 、 ジァミノべ チジンで褐色に発色した。 Αでは L Bが円形に陽性を示す (矢印) ほ か、 正常な -シヌクレインがニューロピルの全域にびまん性に微細顆粒状の陽性染 色を示しているが、 神経細胞体は陰性である (* ) 。 Bでは L B (矢印) の他に、 短 く縮れた Lewy neuri te (矢頭) が明瞭に描出されている。
図 3は D L B脳より抽出した -シヌクレインのリン酸化特異抗ひ -シヌクレイン抗 体によるウェスタンプロット解析の結果を表す。 D L B脳を 50 mMトリス緩衝液 (Tris HC1)、 1 % Tri ton- X、 1 % SarkosyK 8 M尿素 (Urea)で可溶化することにより 得られた画分を Serl29リン酸化特異 α-シヌクレイン抗体を用いてウェスタンブロッ ト解析した。 Cは正常対照人脳、 Dは D L B患者脳を表す。 分子量マーカー位置 (キ 口ダルトン表示) を左側に示す。 15キロダルトンの位置に尿素可溶画分特異的にリン 酸ィ匕 α -シヌクレイン蛋白のバンドが陽性を示す。
図 4はァフィ二ティ精製後の Ser 129リン酸化 α-シヌクレイン特異抗体の特異性の ELISAによる検討を表す。 横軸に表示された量の Serl29リン酸化ペプチド (配列は実 施例 2の通り) あるいはリコンピナント全長ひ-シヌクレインをマイクロウェルプレ ートに固着させ、 Ser 129リン酸化ひ-シヌクレイン特異抗体と反応後 TMB Microwel l Peroxidase Subs trate (フナコシ) を用いて発色させた。 Serl 29リン酸ィ匕 α-シヌク レイン特異抗体は Serl29リン酸化べプチドと特異的に反応するが、 リン酸化されてい ないリコンビナントひ -シヌクレインとは反応しない。
図 5はの特異性の ELISAによる検討を表す。 横軸に表示された量の Serl29リン酸化
(配列は実施例 5の通り) あるいはリコンビナント全長《■
マイクロゥエルプレートに固着させ、 Serl 29リン酸ィ匕 α -シヌクレイン特異抗体と反 応後 TMB Mi crowe l l Peroxidase Subs t rate (フナコシ) を用いて発色させた。 Serl 29 リン酸化ひ-シヌクレイン特異抗体は Ser l 29リン酸化べプチドと特異的に反応するが 、 リン酸化されていないリコンビナント -シヌクレインとは反応しない。
図 6は D L B脳より抽出した 0! -シヌクレインのウェスタンプロット解析の結果を 表す。 D L B脳を 50 mMトリス緩衝液(Tr i s HC1)、 1 % Tr i ton- X、 1 % SarkosyK 8 M尿素 (Urea)、 SDSで可溶化することにより得られた画分をを用いてウエスタンブ ロット解析した。 分子量マーカー位置 (キロダルトン表示) を左側に示す。 15キロダ ルトンの位置に a -シヌクレイン蛋白のバンドが陽性を示す。
図 7はァフィ二ティ精製後の Ser87リン酸化 α -シヌクレイン特異抗体の特異性の EUSAによる検討を表す。 横軸に表示された量の Ser87リン酸化ペプチド (配列は実施 例 8の通り) あるいはリコンビナント全長 -シヌクレインをマイクロウェルプレー トに固着させ、 Serl 29リン酸化ひ -シヌクレイン特異抗体と反応後 TMB Mi crowel l Peroxi dase Subs t rate (フナコシ) を用いて発色させた。 Ser87リン酸化《-シヌクレ ィン特異抗体は Ser87リン酸化べプチドと特異的に反応するが、 リン酸化されていな いリコンビナント α -シヌクレインとは反応しない。 発明を実施するための最良の形態
本発明において、 「配列番号 1において 1又は 2以上の Serがリン酸化された蛋白 質」 とは、 配列番号 1の 9、 42、 87又は 129番目のいずれかの Serがリン酸化された蛋 白質であり、 リン酸化される Serは 1箇所であっても複数箇所であってもよい。
Serl 29とはアミノ酸配列において N末端から 129番目に位置するアミノ酸である Ser を意味し、 Ser 6とはアミノ酸配列において N末端から 6番目に位置するアミノ酸で ある Serを意味し、 Ser87とはアミノ酸配列において N末端から 87番目に位置するアミ ノ酸である Serを意味する。
「特異的に結合する」 とは、 配列番号 1の Serがリン酸化されたひ—シヌクレイン には結合 (又は反応) するが、 リン酸化されていないひ—シヌクレインには結合 (又
は反応) しないことを意味する。 例えば、 配列番号 1において Serl29がリン酸ィ匕され た蛋白質とは結合するが、 Serl29がリン酸化されていない蛋白質とは結合しないこと である。
具体的には、 Serがリン酸化されたべプチドあるいは全長 α—シヌクレインと EL ISA法 あるいはウェスタンブロット法で陽性反応を呈するが、 Serがリン酸化されていない ペプチドあるいは全長ひーシヌクレインとは反応を示さないことを意味する。
「抗体」 とは、 完全な全長分子からなるシヌクレイン及びリン酸化された Serを含 むフラグメントと特異的に結合するポリク口一ナル抗体又はモノクローナル抗体、 又 はこれらの抗体の部分フラグメント (例えばパパインまたはペプシンで分解して得ら れる断片 (Fabまたは F(al')2または Fab') ) を意味し、 後述するように公知の製造方 法に従って製造することができる。
「シヌクレイノパチ一病変検出薬」 とは、 LBあるいはその他の α—シヌクレイン 陽性病変 (例えば、 GC Iや Lewy neuriteなどの変性神経突起) を呈するシヌクレイ ノパチ一の脳組織の免疫組織ィ匕学的検索において陽性反応を呈し、 あるいは脳組織の ウェスタンプロット解析により不溶化 ·蓄積したひ一シヌクレインと特異的に反応す る抗体、 試薬又は薬剤を意味する。
シヌクレイノパチー病変の検出には、 検出感度の点から、 配列番号 1において Serl29がリン酸化された蛋白質とは結合するが、 Serl29がリン酸化されていない蛋白 質とは結合しない抗体を用いることが好ましい。
本発明に係る抗体は以下のような製造法に従って製造することが可能である。
(1) 抗原の調製
DLB脳を各種界面活性剤、 例えば Triton- X、 Sarkosylなどを用い、 可溶性画分 と不溶性画分に分画する。 さらに、 不溶画分を尿素に溶解し、 陰イオン交換カラム、 例えば、 Q- sepharoseカラムにより精製を行う。 精製物を臭化シアンで消化後、 HPLC でペプチド断片を分離したところ、 Serのリン酸化された目的物を得ることができる 。 また、 リン酸化 Serを含む合成ペプチド、 例えば、
① CAYEMPS(P03H2)EEGYQ (配列番号 2の N末端にシスティンを付加したもの)
② CVEGAGS(P03H2)IAAAT (配列番号 3の N末端にシスティンを付加したもの)
は、 固相法により合成することができる。 合成したペプチドは N- (6- maleimidocaproy loxy) succ inimideを縮合試薬として用い、 Keyhole Lympet Hemocyaninと結合させ、 抗原として用いる。 なお、 ①及び②はアミノ酸は 1文字表記により表されたペプチド であり、 特に S (P03 ¾ )はリン酸ィ匕セリンを表す。
( 2 ) 抗体の調製
抗原ペプチド溶液を、 温血動物に対してそれ自体あるいは担体、 希釈剤とともに計 2〜10回程度投与することにより免疫する。 用いられる温血動物は、 例えば、 ゥサギ 、 ィヌ、 モルモット、 マウス、 ラットがあげられる。 4回ないし 6回皮下免疫を行つ た時点で試採血を行い、 抗体価を測定することが好ましい。 血清中の抗体価の測定は 、 抗原として用いたペプチドを 96 穴のマイクロタイ夕一プレートに固定し、 ELISA法 によって行うことができる。 抗体価が十分上昇したことを確認した後、 全採血し通常 行われる方法により抗体を分離精製することができる。 精製方法は、 例えばゲル濾過 法、 プロテイン Aなどの活性吸着剤による精製法をあげることができ、 さらにリン酸 化されていないリコンビナント α-シヌクレイン蛋白を結合したカラムの素通し画分 を採取することによりリン酸化 α-シヌクレインに対する特異性を向上させることが できる。
( 3 ) モノクローナル抗体の調製
モノクローナル抗体産生細胞の作製は、 抗原を免疫された温血動物から抗体価の認 められた個体を選択し最終免疫の 2〜 5日後に脾臓又はリンパ節を採取し、 それらに 含まれる抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させることにより、 モノクローナル抗体産 生八イブリドーマ細胞を調製することができる。 融合操作は既知の方法、 例えば Kohler等の方法 (Nature, 256、 495 (1975) ) に従い実施できる。 骨髄腫細胞として は例えば P A I、 P 3 U 1などがあげられる。 融合促進剤としては、 ポリエチレング リコール (P E G) やセンダイウィルス (HV J ) をあげることができるが、 好まし くは分子量 1000~6000の P E Gである。 10〜80%程度の濃度で添加し、 20〜40°Cでィ ンキュベ一卜することにより効率よく細胞融合を実施できる。
モノクローナル抗体の選別は、 公知の方法に準じて行なうことができる。 通常 HAT (ヒポキサンチン、 アミノプテリン、 チミジン) を添加した動物細胞用培地で
行なわれる。 選別及び育種用培地としては、 例えば、 10〜20%の牛胎児血清を含む RPMI 1640培地などを用いることができる。 培養は、 通常 5 %炭酸ガス下、 培養温度 20〜40 にて 5日〜 3週間行なわれる。
ハイプリドーマ細胞を培養したゥエルから培養上清を回収し, ELISA法 (enzyme- l i nked immunosorbent assay) によって抗原ペプチドと反応がある抗体を選択する。 ま ず 96穴プレートに抗原ペプチドをしき、 一晩底面に吸着させた後、 仔牛血清でブロッ キングする。 ハイプリドーマ細胞の上清を 37 :、 1時間反応させた後、 Mouse
Immunoglobul ins/HRP (DAK0)を 37°C、 1時間反応させ、 オルトフエ二レンジアミンを 基質に用いて発色させる。 酸で反応を停止させた後、 490nmの吸光度を測定して 3程 度の値がでた抗体を選択し, 限界希釈法によるクローニングを行う。
かくして得られる目的とするハイプリドーマ細胞を培養してその培養上清よりモノ クロ一ナル抗体を得ることができる。 あるいは八イブリドーマ細胞を例えばマウス (
Balb/c) に腹腔内投与し、 その腹水中からモノクローナル抗体を得ることもできる。 モノクロナール抗体の精製は通常のポリクローナル抗体の分離精製と同様に行うこ とができる。 産業上の利用可能性
本発明により、 レビー小体等の生体内で検出されるひ _シヌクレイン凝集物に特異 的に結合する抗体の提供が可能となり、 レビ一小体検出、 P D、 D L Bを含むシヌク 一の病理診断等に有用である。 実施例 1 D L B脳より抽出した《-シヌクレインのウエスタンブロット解析
D L B脳及び正常脳の大脳皮質より灰白質を切り出し、 各種界面活性剤を用いて次 のように段階的に可溶化した。 まず、 大脳皮質は Tris A溶液 pH 7. 5 [50 mM Tris ( Gibco BRL) , l mM EGTA (和光純薬), 0. 5 mM PMSF (Boehringer Mannheim) ,
1 g/ml ant ipain (SIGMA社), 1 x g/ml peps tat in (SIGMA社), 1 g/ml leupept in (和光純薬), 50 mM imidazole (関東化学), 25 mM i6 -glycerophosphate (関東化学), 20 mM NaF (関東化学), 10 mM Na4P207 (関東化学)] 中でホモジナイズ
し、 遠心機 (日立ェ機) で 4°C、 5分、 1,000 X gで遠心分離した。 得られた上清を 1000g sup、 得られた沈殿物を lOOOg pptとする。 lOOOg supは遠心機で 4° (:、 15分、 350, 000 X gで遠心分離した。 この上清を Tris 可溶画分とする。
1000g pptは Triton- X溶液 [Tris A溶液, 1 % Triton- X 100 (和光純薬), 10% sucrose (関東化学), 0.5 M NaCl (関東化学)]中でホモジナイズ後、 遠心機で 4°C 、 15分、 350,000 X gで遠心分離した。 上清は Triton- X可溶画分とした。
得られた沈殿物 Sarkosyl 溶液 [50 mM Tris pH7.5, ImM EGTA, 1 % Sarkosyl ( 和光純薬)] 中でホモジナイズ後、 遠心機で 25°C、 15分、 350,000 X gで遠心分離し た。 上清は Sarkosyl可溶画分とした。
こうして得られた沈殿物を再び Sarkosyl 溶液中でホモジナイズ後、 遠心機で 25°C 、 15分、 350,000 X gで遠心分離した。 ここで得られる Sarkosyl不溶性の沈殿物を Tris A溶液 pH 7.5中でホモジナイズ後、 遠心機で 25Τ 15分、 350,000 X gで遠心 分離した。 得られた沈殿物を尿素溶液 [50mM Tris pH7.5, ImM EGTA、 8 M尿素 (nacalai tesque)] 中で超音波破砕機 (Brans on社)により超音波処理後、 37°Cの湯浴 に 30分間静置した。 その後、 25°C、 15分、 350,000 X gで遠心分離した。 この上清 を尿素可溶画分とする。
こうして得られた、 Tris可溶画分、 Triton-X可溶画分、 Sarkosyl可溶画分、 尿素 可溶画分を SDS- PAGE (SDS polyacrylamide gel electrophoresis) を用いて電気泳動 し、 ィモビロン膜 (MILLIPORE) に転写した後、 ヒト α—シヌクレインを特異的に認 識するモノクローナル抗体 LB509 [Am. J. Pathol , 152 879 (1998)]でィムノブロッ ティング法 [Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94 2025 (1997)]により解析した結果、 正常な可溶性ひ _シヌクレインは D L B脳、 正常脳の Tris 可溶画分及び Tri ton- X可 溶画分に回収された。 一方、 尿素可溶画分においては、 DLB脳に特異的にウェス夕 ンブロット上 15キロダルトン (kDa) の位置に正常 α—シヌクレインとほぼ同じ泳動 パターンを示す不溶性ひーシヌクレインが検出された (図 1) 。
正常なひ一シヌクレインは以下のように精製した。 D L Β脳及び正常脳の大脳皮質 から得られた Tris可溶画分に硫酸アンモニゥム (関東化学) を最終濃度 50%となるよ うに加え、 氷上で 30分以上静置した後、 遠心機で 4°C、 15分、 350, 000 X gで遠心分
離した。 上清を取り除き、 沈殿物を Tris B溶液 pH7.5 [50mM Tris, ImM EGTA, 1 % 2 -メルカプトエタノール (関東化学), 0.5M NaCl] に懸濁後、 熱処理 [100°C, 5分 ] し、 遠心操作により上清を回収した。 上清に含まれた塩を PD- 10 カラム (Pharmaci a Biotech社) で取り除いた後、 DEAE Celluloseカラム (Whatman社) を用いて精製 すると可溶性ひーシヌクレインは約 0.1M NaCl 画分に溶出された。 凍結乾燥機 (Tom y社) で濃縮した後、 TSKgel SuperSW3000カラム (4.6X600匪, Tosoh) を用いたゲ レ爐過 HPLC (high-performance liquid chromatography, Hewlett Packard社)によ り分画した。 SDS- PAGEを用いたウェスタンブロッテイング法により α—シヌクレイン が含まれていることを確認した分子量約 15 kDaの画分を Aquapore RP300カラム(2.1 X 30 mm, Applied Biosystems社)を用いた逆相 HPLCにより分画したところ、 ひ_シヌク レインはァセトニトリル (関東化学) 濃度約 60%の画分に分画された。
D L B脳由来の尿素可溶画分に含まれる α—シヌクレインは次のように精製した。 まず尿素可溶画分に含まれる蛋白を Q-sepharoseカラム (Pharmacia Biotech社) に吸着させ、 0M, 0.1M, 0.2M, 0.3M, 0.5Mの NaClを含む尿素溶液で段階的に吸 着した蛋白質を溶出すると、 ーシヌクレインは 0.3M NaCl画分に溶出された。 この 画分を逆相 HPLCで Aquapore RP300カラムを用いて分画したところ、 —シヌクレイン はァセトニトリル濃度約 60%の画分に回収された。
このように HPLCを用いて精製した Tr i s可溶画分及び尿素可溶画分に含まれるひーシ ヌクレインを凍結乾燥機で乾固後、 70%ギ酸 (和光純薬) 溶液に懸濁し、 0.2%臭化 シアン (nacalai tesque社)で化学的にペプチド結合を切断した。 反応後、 溶液を約 10 倍に希釈し、 凍結乾燥機で乾固後、 8 Mグァニジン塩酸 (nacalai tesque社) 水溶液 に懸濁した。 こうして得られたペプチド断片を逆相 HPLCで Superspher Select Bカラ ム (2.1X125 腿, Merck社) を用いて分離、 分画した。
分離した各画分を TO F (time of flight) 型質量分析機 (PerSeptive Biosystem 社) 及びアミノ酸配列解析機 ( Applied Biosystems社)で解析 [J. Biol. Chem. 267 17047 (1992)] した。 その結果、 Tris 可溶画分由来からはァセトニトリル濃度約 31 %の画分に《—シヌクレインの C末端部分 117〜127に相当する質量数 1232のシグナル 、 ァセトニトリル濃度約 33%の画分に最 C末端部分 128〜140に相当する質量数 1515の
シグナルが検出された。 尿素可溶画分由来からはこれらのシグナルに加え、 ァセトニ トリル濃度約 31 %の画分に ο;—シヌクレインの最 C末端部分に 1個のリン酸が付加し た質量数 1595のシグナルが検出された。 さらに質量数 1595のピークをナノ 'エレクト ロスプレー法による MS /MS解析 [J. Neurochem.,71 2465 (1998)] に供し、 Serl2 9のリン酸化を確認した。 実施例 2 抗体 (anti- PSerl29)の調製
a—シヌクレインの 124- 134の配列を含み、 且つリン酸化した Serl29を含むぺプチ ド 、 CAYEMPS(P03¾)EEGYQ を固相法により合成し (ペプチド研究所) 、 KLH (Keyhol e Lympet Hemocyanin) とコンジュゲートし、 抗原とした。 KLHとのコンジユゲーショ ンは常法に従った。 1mlの lmg/ml抗原ペプチド生理食塩水溶液と 1mlのフロイント 完全アジュバント (SIGMA社) を超音波処理によってェマルジヨン化し、 ゥサギ (日 本白色、 体重 2.7kg、 雌) の背中 10箇所以上に分けて免疫した。 1ヶ月後に 0.5 mlの 1 mg/m 1抗原べプチド生理食塩溶液と lmlのフロイント不完全アジュバント (S I GMA 社) を超音波処理によってェマルジヨン化したものを同様に追加免疫し、 以降 1週間 毎に 0.5 mlの lmg/ml抗原ペプチド生理食塩溶液と lml のフロイント不完全アジュバ ントを超音波処理によってェマルジョン化したものを追加免疫した。 採血は免疫した 1週間後に行い、 採取した血液はパスツールピぺットでよく撹拌し室温で 1時間おい た後、 4°Cでー晚静置し、 5,000 X g、 10分間遠心して抗血清を得た。
抗体を精製するため、 Affi- gel 10 (810-1^0社)約21111に対し、 リコンビナントひ —シヌクレイン ([FEBS Lett. , 436 309 (1998)]によって作製した。 ) 約 7.5 mgを 反応させたカラムを作製した。 抗血清を 56 °C、 10分間処理することにより非働化し た後、 PBS (8iM Na2HP04 (和光純薬)、 2mM Na¾P04 (和光純薬), 131 mM NaCl)で 5倍希釈し、 5 m フィルター (MILLIP0RE社) に通してから、 このカラムに 10時間 以上循環し、 カラムに吸着されなかった抗体を Ser 129リン酸化 a—シヌクレイン特異 抗体とした。 実施例 3 病理組織の染色ならびにウエスタンブロッ卜解析
実施例 2において調製した Serl29リン酸化 —シヌクレイン特異抗体 (ant i-PSerl 29) を用いて PD、 D LB脳を染色した。
DLB脳大脳皮質をホルマリン固定後、 50ミクロン厚に薄切し、 抗ヒトひ-シヌク レイン抗体 LB509 (A) 及び Serl29リン酸化特異ひ-シヌクレイン抗体 (B) を用いて アビジン 'ピオチン複合体法により免疫染色し、 ジァミノベンチジンで褐色に発色し た。 すると、 中脳黒質や大脳皮質において LB及び Lewy neuriteなどの関連病変が強 い陽性反応を示したが、 従来の抗 α—シヌクレイン抗体によって認識されるニューロ ピルに細顆粒状に分布する正常 α—シヌクレイン [Am. J. Pathol ,152 879 (1998)] (図 2 A) は、 本抗体には陰性であった (図 2B) 。 また、 多系統萎縮症 (MSA) 患者脳に出現する細胞内封入体 GC I (glial cytoplasmic inclusion) も従来の抗 ーシヌクレイン抗体と同様に本抗体に対しても強い陽性反応を示した。
実施例 1において D L B脳及び正常脳の大脳皮質を各種界面活性剤を用いて段階的 に可溶化した各画分を SDS- PAGEを用いたウエスタンブロッテイング法にて解析した結 果、 Serl29リン酸化ひ—シヌクレイン特異抗体は Tris可溶画分、 Triton-X可溶画分に 含まれる正常のひ一シヌクレインとは反応せず、 尿素可溶画分に含まれる α—シヌク レインのみと特異的に反応した (図 3) 。 実施例 4 · 抗体 (anti_PSerl29)の特異性
実施例 2において調製したひ一シヌクレイン抗体が Serl 29リン酸化 α _シヌクレイ ン特異抗体であることは EL IS Α法 (enzyme-linked immunosorbent assay) にて確認し た。
常法に従って 96穴プレート (Greiner) に、 5 zg/wel 1のリコンビナントひーシヌ クレインあるいは抗原べプチドを底面に吸着させた後、 実施例 2で調製したひーシヌ クレイン抗体を 100倍希釈して反応させ、 常法を用いて発色させると、 リコンビナン ト ο;—シヌクレインとは結合を示さなかったが、 抗原べプチドとは強い反応性を示し た (図 4) 。
また、 SDS- PAGEを用いたウエスタンブロッテイング法において、 この抗体は DLB 脳由来の尿素可溶画分のひーシヌクレインと強く反応したが、 この画分と
Escherichia coli alkaline phosphatase (SIGMA社)を 10 units/mK 65°C、 2時間 反応させる [J. Biol. Cheni.267 17047 (1992)]ことにより反応性が消失した。
さらに、 免疫組織化学的検討においては、 この抗体と抗原ペプチドを混和すること にって抗原に対する抗体の反応性を吸収したところ [Am. L Pathol. ,152 879 (199 8)]、 吸収抗体に対する LB及び Lewy neuriteなどの関連病変の反応性が消失した。 実施例 5 抗体 (mAb PSerl29) の作製
ひ -シヌクレインの 124-134の配列を含み、 且つリン酸化した Ser 129を含むぺプチド 、 CAYEMPS(P03H2)EEGYQを KLHとコンジュゲートし、 抗原とした。 100 1の 1 mg/ml抗 原ペプチド生理食塩水溶液に 0.5% SDSを加え、 フロイント完全アジュバントでエマ ルジョン化し、 マウス (Balb/c, 6週齢) 背中に免疫した。 2週間後に 50 1の lmg/ ml抗原ペプチド生理食塩水溶液、 0.5% SDS、 フロイント不完全アジュバントを超音 波処理によってェマルジョン化したものを追加免疫し、 以降 1週間毎に追加免疫を行 つた。 免疫後 40日目に脾臓を摘出し、 RPMI 1640培地(ペニシリン, ストレブトマイシ ン入り)中でリンパ球を取り出し、 0.17Mの塩化アンモニゥムで赤血球処理をおこな つた。 取り出したリンパ球をポリエチレングリコール法 (PEG4000) によりマウス 骨髄腫由来のミエローマ細胞 P A I株と融合させ、 ハイプリドーマ細胞を作製した。 ハイプリドーマ細胞をフィーダ一細胞入りの HAT培地に懸濁し 96穴プレート (Grei ner) に分注し 15日間培養した。 実施例 6 モノクローナル抗体 (mAb PSerl29) のスクリーニング
ハイプリドーマ細胞を培養したゥエルから培養上清を回収し, ELISA法 (enzyme-li nked immunosorbent assay) によって抗原ペプチドと反応がある mAb PSerl29を選択 した。 まず 96穴プレートに 40 ^ 1の 10 g/ml抗原ペプチドをしき、 4°C、 ー晚底面に 吸着させた後、 IOO Iの 10%仔牛血清で 37°C、 30分間ブロッキングさせた。 ハイプリ ドーマ細胞の上清 50 を 37 、 1時間反応させた後、 Mouse I匪 unoglobul ins/HRP ( DAK0)を 1000倍に希釈して 37°C、 1時間反応させ、 オルトフエ二レンジアミンを基質 に用いて発色させた。 25 ^1の 8 N硫酸で反応を停止させた後、 490nmの吸光度を測定
して 3程度の値がでた mAb PSerl29を選択し, 限界希釈法によるクローニングを行つ た。
7日前、 3日前にそれぞれ 0. 5mlのプリスタンを腹腔内投与したマウス (Balb/c) に、 選択した mAb PSerl 29のハイプリドーマ細胞を腹腔内注射し、 約 10日後に腹水を 採取した。 採取した腹水は室温で 30分おいた後、 4 °Cでー晚静置し, 15Krpm、 10分間 遠心して上清を回収した。 実施例 7 モノクロ一ナル抗体 (mAb PSerl29) の特異性
96穴プレートに抗原べプチドあるいはリコンビナント α-シヌクレインを底面に吸 着させた後、 一シヌクレイン抗体 (腹水) を 1000倍希釈して反応させ発色させると リコンビナント α -シヌクレインとは結合しなかつたが、 抗原べプチドとは特異的に 強く反応した (図 5 ) 。
D L Β脳の大脳皮質を各種界面活性剤を用いて段階的に可溶化した各画分を SDS- PAGEを用いたウェスタンプロッティング法にて解析した結果、 Serl29リン酸化 «—シヌクレイン抗体は Tr is可溶画分、 Tri ton-X可溶画分に含まれる正常の α—シ ヌクレインとは反応せず、 尿素可溶画分に含まれるひーシヌクレインと特異的に反応 した (図 6 ) 。 実施例 8 抗体 (ant i-PSer87) の調製
ひ—シヌクレインの 82— 92の配列を含み、 且つリン酸化した Ser87を含むポリぺプ チド [ KLH ] - CVEGAGS (P03¾) IAAAT を合成し (ペプチド研究所) 、 抗原とした。
l mlの l mg/ml抗原ペプチド生理食塩溶液と l mlのフロイント完全アジュバント (SIGMA社) を超音波処理によってェマルジヨン化し、 ゥサギ (日本白色、 体重 2. 7kg、 雌) の背中 10箇所以上に分けて免疫した。 1ヶ月後に 0. 5 mlの l mg/ml 抗原ペプチド生理食塩溶液と l ml のフロイント不完全アジュバント (SIGMA社) を 超音波処理によってェマルジヨン化したものを同様に 2次免疫し、 以降 1週間毎に 0. 5mlの 1 mg/ml抗原べプチド生理食塩溶液と 1 ml のフロイント不完全アジュバントを 超音波処理によつてェマルジヨン化したものを追加免疫した。 採血は免疫した 1週間
後に行い、 採取した血液はパスツールピぺットでよく撹拌し室温で 1時間おいた後、 4°Cでー晚静置し、 5,000 X g、 10分間遠心して抗血清を得た。
抗体を精製するため、 Affi- gel 10 (BIO- RAD社) 約 2 mlに対し、 リコンビナン トひ一シヌクレイン ([ FEBS Lett. , 436 309 (1998)] によって作製した。 ) 約 7. 5 mgを反応させたカラムを作製した。 抗血清を 56 °C、 10分間処理することにより非 働化した後、 PBS (8mM Na2HP04 (和光純薬), 2mM Na¾P04 (和光純薬), 131 mM NaCl
) で 5倍希釈し、 5μπι フィルター (MILLIP0RE社) に通してから、 このカラムに 10 時間以上循環し、 カラムに吸着されなかった抗体を Ser 87リン酸ィヒひーシヌクレイン 特異抗体とした。 実施例 9 抗体 (anti-PSer87) の特異性
実施例 8において調製した α—シヌクレイン抗体が Ser87リン酸ィ匕 α—シヌクレイ ン特異抗体であることを EL IS Α法 (enzyme- linked immunosorbent assay) にて確認し た。
96穴プレート (Greiner) に、 1.25 g ellのリコンビナント α—シヌクレイン あるいは抗原ペプチド (抗体作成に使用したもの) を底面に吸着させた後、 実施例 8 で調製したひ—シヌクレイン抗体を 100倍希釈して反応させると、 リコンビナント α ーシヌクレインとは結合を示さなかったが、 抗原ペプチドとは強い反応性を示した。