本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。さらに本明細書に記載される数値範囲の上限及び下限は、数値範囲として例示された数値をそれぞれ任意に選択して組み合わせることが可能である。本明細書において、蛍光体又は発光材料の組成を表す式中、カンマ(,)で区切られて記載されている複数の元素は、これらの複数の元素のうち少なくとも1種の元素を組成中に含有することを意味する。また、蛍光体の組成を表す式中、コロン(:)の前は母体結晶を表し、コロン(:)の後は賦活元素を表す。本明細書において、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係等は、JIS Z8110に従う。半導体ナノ粒子の半値幅は、半導体ナノ粒子の発光スペクトルにおいて、最大発光強度に対して発光強度が50%となる発光スペクトルの波長幅(半値全幅;FWHM)を意味する。以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための、半導体ナノ粒子及びその製造方法を例示するものであって、本発明は、以下に示す半導体ナノ粒子及びその製造方法に限定されない。
半導体ナノ粒子の製造方法
半導体ナノ粒子の製造方法は、インジウム(In)-硫黄(S)結合を有する化合物、及びガリウム(Ga)-硫黄(S)結合を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種と、有機溶剤と、を含む第1混合物を準備する第1工程と、第1混合物を40℃以上180℃以下の範囲にある第1温度に調整し、銀(Ag)塩及び有機溶剤を含む溶液と混合して、硫化銀とインジウム及びガリウムの少なくとも一方を含む硫化物との複合粒子を含む第2混合物を得る第2工程と、第2混合物を130℃以上240℃以下の範囲にある第2温度に調整し、第2温度を1秒以上保持して第2混合物を熱処理し、第1半導体ナノ粒子を得る第3工程と、を含む。
In-S結合を有する化合物及びGa-S結合を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む第1混合物を所定の第1温度になるように調整し、その状態でAg塩と混合することで、硫化銀(例えば、Ag2S)を含むナノ粒子が生成すると考えられる。生成した硫化銀ナノ粒子は、インジウム及びガリウムの少なくとも一方を含む硫化物と複合粒子を形成していると考えられる。複合粒子は例えば、硫化銀ナノ粒子とその表面に配置されるインジウム及びガリウムの少なくとも一方を含む硫化物とを含んで構成されていると考えられる。そのような複合粒子を含む第2混合物を第2温度で熱処理することで、例えば、硫化銀ナノ粒子の表面に堆積した硫化インジウム、硫化ガリウム等による硫化銀ナノ粒子の結晶転換が進行して、粒径が揃った第1半導体ナノ粒子が得られると考えられる。さらに、得られる第1半導体ナノ粒子の表面に、硫化ガリウムを含む第2半導体が配置されて第2半導体ナノ粒子が形成される。これにより、バンド端発光を示し、発光スペクトルにおける半値幅が狭い半導体ナノ粒子が得られると考えられる。
第1工程では、In-S結合を有する化合物及びGa-S結合を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種と、有機溶剤と、を混合して第1混合物が準備される。In-S結合を有する化合物におけるIn-S結合は、共有結合、イオン結合、配位結合等のいずれであってもよい。In-S結合を有する化合物としては、例えば含硫黄化合物のIn塩が挙げられ、Inの有機酸塩、無機酸塩、有機金属化合物等であってよい。含硫黄化合物として具体的には、チオカルバミン酸、ジチオカルバミン酸、チオ炭酸エステル、ジチオ炭酸エステル(キサントゲン酸)、トリチオ炭酸エステル、チオカルボン酸、ジチオカルボン酸及びそれらの誘導体等を挙げることができる。中でも比較的低温で分解することからジチオカルバミン酸、キサントゲン酸及びそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。含硫黄化合物の具体例は上記と同様である。In-S結合を有する化合物の具体例としては、トリスジメチルジチオカルバミン酸インジウム、トリスジエチルジチオカルバミン酸インジウム(In(DDTC)3)、クロロビスジエチルジチオカルバミン酸インジウム、エチルキサントゲン酸インジウム(In(EX)3)等を挙げることができる。第1混合物は、In-S結合を有する化合物を1種単独で含んでいてもよく、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
Ga-S結合を有する化合物のGa-S結合は、共有結合、イオン結合、配位結合等のいずれであってもよい。Ga-S結合を有する化合物としては、例えば含硫黄化合物のGa塩が挙げられ、Gaの有機酸塩、無機酸塩、有機金属化合物等であってよい。含硫黄化合物として具体的には、チオカルバミン酸、ジチオカルバミン酸、チオ炭酸エステル、ジチオ炭酸エステル(キサントゲン酸)、トリチオ炭酸エステル、チオカルボン酸、ジチオカルボン酸及びそれらの誘導体等を挙げることができる。中でも比較的低温で分解することからジチオカルバミン酸、キサントゲン酸及びそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。含硫黄化合物の具体例は、上記と同様である。Ga-S結合を有する化合物の具体例としては、トリスジメチルジチオカルバミン酸ガリウム、トリスジエチルジチオカルバミン酸ガリウム(Ga(DDTC)3)、クロロビスジエチルジチオカルバミン酸ガリウム、エチルキサントゲン酸ガリウム(Ga(EX)3)等を挙げることができる。第1混合物は、Ga-S結合を有する化合物を1種単独で含んでいてもよく、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
第1混合物を構成する有機溶剤としては、例えば、炭素数4から20の炭化水素基を有するアミン、例えば炭素数4から20のアルキルアミンもしくはアルケニルアミン、炭素数4から20の炭化水素基を有するチオール、例えば炭素数4から20のアルキルチオールもしくはアルケニルチオール、炭素数4から20の炭化水素基を有するホスフィン、例えば炭素数4から20のアルキルホスフィンもしくはアルケニルホスフィン等を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの有機溶剤は、例えば、最終的には、得られる第1半導体ナノ粒子を表面修飾してもよい。有機溶剤は2種以上を組み合わせて使用してよく、例えば炭素数4から20の炭化水素基を有するチオールから選択される少なくとも1種と、炭素数4から20の炭化水素基を有するアミンから選択される少なくとも1種とを組み合わせた混合溶剤を使用してよい。これらの有機溶剤は他の有機溶剤と混合して用いてもよい。有機溶剤が前記チオールと前記アミンとを含む場合、アミンに対するチオールの含有体積比(チオール/アミン)は、例えば、0より大きく1以下であり、好ましくは0.007以上0.2以下であってよい。
第1混合物は、In-S結合を有する化合物及びGa-S結合を有する化合物以外のインジウム(In)塩及びガリウム(Ga)塩からなる群から選択される少なくとも1種を更に含んでいてよい。第1混合物におけるIn塩及びGa塩は、有機酸塩又は無機酸塩のいずれであってもよい。具体的に無機酸塩としては、硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩、スルホン酸塩等を挙げることができる。また有機酸塩としては、ギ酸塩、酢酸塩、シュウ酸、アセチルアセトナート塩等を挙げることができる。In塩及びGa塩は、好ましくはこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種であってよく、有機溶剤への溶解度が高く、反応がより均一に進行することから、より好ましくは酢酸塩、アセチルアセトナート塩等の有機酸塩からなる群から選択される少なくとも1種であってよい。第1混合物は、In塩及びGa塩をそれぞれ1種単独で含んでいてもよく、それぞれ2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
第1混合物は、好ましくはGa-S結合を有する化合物の少なくとも1種を含んでいてよい。第1混合物は、Ga-S結合を有する化合物に加えて、In-S結合を有する化合物、In塩及びGa塩からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、少なくともIn塩を含んでいてよい。
第1混合物におけるIn及びGaの総原子数に対するInの原子数の比(In/(In+Ga))は、例えば、0.01以上1未満であってよく、好ましくは0.1以上、又は0.15以上であってよく、また0.99以下、0.95以下、0.6以下、0.5以下、又は0.4以下であってよい。In及びGaの総原子数に対するInの原子数の比が所定の範囲であると、短波長の発光ピーク波長(例えば、545nm以下)を得ることができる。
一態様において、第1混合物におけるIn及びGaの総原子数に対するInの原子数の比(In/(In+Ga))は、好ましくは0.5以上、0.7以上、又は0.8以上であってよく、また0.99以下、又は0.95以下であってよい。In及びGaの総原子数に対するInの原子数の比が所定の範囲であると、長波長の発光ピーク波長(例えば、600nm以上)を得ることができる。
また、第1混合物は、In及びGa以外の第13族元素源の少なくとも1種を更に含んでいてもよい。In及びGa以外の第13族元素は、Al及びTlの少なくとも一方を含んでいてよい。第13族元素源は、第13族元素の有機酸塩又は無機酸塩のいずれであってもよい。有機酸塩及び無機酸塩については既述の通りである。第1混合物は、In及びGa以外の第13族元素源を実質的に含んでいなくてもよい。ここで「実質的に」とは、第13族元素の総原子数に対するIn及びGa以外の第13族元素の原子数の割合が、例えば10%以下であり、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下であることを示す。
第1混合物は、実質的にAg塩を含まないことが好ましい。ここで「実質的に」とは、第1混合物における第13族元素の総原子数に対するAgの原子数の割合が、例えば10%以下であり、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下であることを示す。
第1混合物に含まれるIn及びGaの合計モル濃度は、例えば、5ミリモル/リットル以上200ミリモル/リットル以下であってよく、好ましくは20ミリモル/リットル以上、又は40ミリモル/リットル以上であってよく、また150ミリモル/リットル以下、100ミリモル/リットル以下、又は80ミリモル/リットル以下であってよい。
第1混合物は、第1半導体ナノ粒子の粒径制御の観点から、溶液状態であることが好ましい。溶液である第1混合物は、例えば、In-S結合を有する化合物及びGa-S結合を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種と、必要に応じて含まれるIn塩及びGa塩からなる群から選択される少なくとも1種と、有機溶剤とを含む前駆混合物を、40℃以上150℃以下の温度で熱処理することで調製されてよい。熱処理の温度は、好ましくは60℃以上、80℃以上、又は100℃以上であってよく、また160℃以下、又は150℃以下であってよい。熱処理の時間は、例えば5秒以上60分以下であってよく、好ましくは30秒以上、1分以上、又は3分以上であってよく、また30分以下、又は10分以下であってよい。
第2工程では、第1混合物を40℃以上180℃以下の範囲にある第1温度に調整し、銀(Ag)塩及び有機溶剤を含む溶液(以下、Ag溶液ともいう)と混合して第2混合物を得る。第1温度は、好ましくは60℃以上、80℃以上、又は100℃以上であってよく、また160℃以下、又は150℃以下であってよい。第1温度への調整は、第1混合物の温度を昇温して調整してもよいし、降温して調整してもよい。
第1混合物と混合するAg溶液に含まれるAg塩は、有機酸塩又は無機酸塩のいずれであってもよい。無機酸塩としては、硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩、スルホン酸塩等を挙げることができる。また有機酸塩としては、ギ酸塩、酢酸塩、シュウ酸、アセチルアセトナート塩等を挙げることができる。Ag塩は、好ましくはこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種であってよく、有機溶剤への溶解度が高く、反応がより均一に進行することから、より好ましくは酢酸塩、アセチルアセトナート塩等の有機酸塩からなる群から選択される少なくとも1種であってよい。Ag塩は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
Ag塩を溶解する有機溶剤としては、第1混合物における有機溶剤と同様の有機溶剤を挙げることができる。Ag塩を溶解する有機溶剤は、第1混合物を構成する有機溶剤と同一であっても異なっていてもよく、好ましくは同一であってよい。Ag溶液は、Ag塩と有機溶剤とを混合することで調製することができる。Ag塩と有機溶剤の混合では、必要に応じて加熱してもよい。加熱の温度は、例えば30℃以上100℃以下であってよい。
Ag溶液におけるAg塩の濃度は、例えば5ミリモル/リットル以上100ミリモル/リットル以下であってよく、好ましくは10ミリモル/リットル以上、又は20ミリモル/リットル以上であってよく、また80ミリモル/リットル以下、又は50ミリモル/リットル以下であってよい。
Ag溶液は、Ag塩に加えてAg塩以外の他の金属塩を更に含んでいてもよい。他の金属塩としては、銅(Cu)塩、リチウム(Li)塩、ナトリウム(Na)塩、カリウム(K)塩等が挙げられる。Ag溶液がAg塩に加えて、例えばCu塩を含む場合、Ag溶液におけるAg及びCuの総原子数に対するCuの原子数の比(Cu/(Ag+Cu))は、例えば0.01以上1未満であってよく、好ましくは0.02以上、0.05以上、又は0.07以上であってよく、また0.8以下、0.7以上、又は0.5以下であってよい。Ag及びCuの総原子数に対するAgの原子数の比が所定の範囲であると、長波長の発光ピーク波長(例えば、600nm以上)を得ることができる。
第1混合物とAg溶液の混合は、例えば所定の第1温度に加熱された第1混合物に、Ag溶液を添加することで行うことができる。混合は、必要に応じて第1混合物を撹拌しながら行ってよい。Ag溶液は、第1混合物に徐々に添加されてもよく、一度に添加されてもよい。好ましくは、Ag溶液は、例えば10秒以下、又は2秒以下の短時間で添加されてよい。第1混合物とAg溶液の混合は、例えば不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガス雰囲気とすることで、酸化物の副生及び得られる第1半導体ナノ粒子表面の酸化を、低減ないしは防止することができる。不活性ガス雰囲気は、例えばアルゴン等の希ガス雰囲気、窒素雰囲気等であってよい。
第1混合物に対するAg溶液の混合量は、第2混合物におけるAgのモル数に対するIn及びGaの合計モル数の比が、例えば0.8以上10以下となる量であってよく、好ましくは0.9以上、1以上、又は1.1以上となる量であってよく、また8以下、6以下、又は4以下となる量であってよい。
第2工程は、第1混合物にAg溶液を混合した後、第1温度を維持する第1温度維持工程を含んでいてよい。第1温度を維持する時間は、例えば1分以上120分以下であってよく、好ましくは5分以上、又は30分以下であってよい。第1温度を維持する時間が前記範囲内であると、生成する第1半導体ナノ粒子に含まれるAgの総モル数の第2混合物に含まれるAgの総モル数に対する比率(Ag基準生成収率ともいう)がより向上する傾向がある。
第3工程では、第2混合物を130℃以上240℃以下の範囲にある第2温度に調整し、第2温度を1秒以上保持して第2混合物を熱処理し、第1半導体ナノ粒子を得る。第2混合物を熱処理する第2温度は、好ましくは140℃以上、又は150℃以上であってよく、また220℃以下、又は200℃以下であってよい。第2温度は第1温度よりも高い温度であってよい。第2温度と第1温度の差は、例えば10℃以上100℃以下であってよく、好ましくは20℃、又は40℃以上であってよく、又好ましくは80以下、又は60℃以下であってよい。第1温度から第2温度までの温度の調整速度は、例えば5℃/分以上1000℃/分以下であってよく、好ましくは10℃/分以上、又は30℃/分以上であってよく、また500℃/分以下、又は100℃/分以下であってよい。
第2混合物の熱処理時間は、好ましくは5秒以上、10秒以上、60秒以上、又は5分以上であってよく、また60分以下、又は30分以下であってよい。ここで第2混合物の熱処理時間は、上述の第2温度に到達した時点を開始時間とし、降温のための操作を行った時点を終了時間とする。第3工程の雰囲気は、例えば不活性ガス雰囲気であってよい。不活性ガス雰囲気とすることで、酸化物の副生及び得られる第1半導体ナノ粒子表面の酸化を、低減ないしは防止することができる。不活性ガス雰囲気は、例えばアルゴン等の希ガス雰囲気、窒素雰囲気等であってよい。
半導体ナノ粒子の製造方法は、上述の第3工程に続いて、得られる第1半導体ナノ粒子を含む分散液の温度を降温する冷却工程をさらに有してよい。冷却工程は、降温のための操作を行った時点を開始とし、50℃以下まで冷却された時点を終了とする。
半導体ナノ粒子の製造方法は、第1半導体ナノ粒子を分散液から分離する分離工程を更に含んでいてもよく、必要に応じて、さらに精製工程を含んでいてよい。分離工程では、例えば、第1半導体ナノ粒子を含む分散液を遠心分離に付して、第1半導体ナノ粒子を含む上澄み液を取り出してよい。精製工程では、例えば、分離工程で得られる上澄み液に、アルコール等の適当な有機溶剤を添加して遠心分離に付し、第1半導体ナノ粒子を沈殿物として取り出してよい。なお、上澄み液から有機溶剤を揮発させることによっても、第1半導体ナノ粒子を取り出すことができる。取り出した沈殿物は、例えば、真空脱気、もしくは自然乾燥、又は真空脱気と自然乾燥との組み合わせにより、乾燥させてよい。自然乾燥は、例えば、大気中に常温常圧にて放置することにより実施してよく、その場合、20時間以上、例えば、30時間程度放置してよい。また、取り出した沈殿物は、適当な有機溶剤に分散させてよい。
半導体ナノ粒子の製造方法では、アルコール、ケトン系溶剤、エステル系溶剤等の有機溶剤の添加と遠心分離による精製工程を必要に応じて複数回実施してよい。精製に用いるアルコールとしては、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール等の炭素数1から4の低級アルコールを用いてよい。また、ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン等を用いてよく、エステル系溶剤としては、酢酸エチル、酢酸プロピル等を用いてよい。沈殿物を有機溶剤に分散させる場合、有機溶剤として、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン等のハロゲン系溶剤、トルエン、シクロヘキサン、ヘキサン、ペンタン、オクタン等の炭化水素系溶剤等を用いてよい。沈殿物を分散させる有機溶剤は、内部量子収率の観点より、ハロゲン系溶剤であってよい。
以上で得られる第1半導体ナノ粒子は、分散液の状態であってもよく、乾燥された粉体であってもよい。第1半導体ナノ粒子は、バンド端発光を示してもよく、欠陥発光を示してもよい。また、バンド端発光と欠陥発光の両方を同時に示してもよい。半導体ナノ粒子の製造方法で得られる半導体ナノ粒子は、第1半導体ナノ粒子であってもよいし、後述する第4工程後に得られる第2半導体ナノ粒子であっても、第5工程後に得られる第3半導体ナノ粒子であってもよい。
上述した製造方法で得られる第1半導体ナノ粒子の平均粒径は、例えば2nm以上8nm以下であってよく、好ましくは3nm以上、または6nm以下であってよい。また、第1半導体ナノ粒子の平均粒径の標準偏差は、例えば0.6nm以下であってよく、好ましくは0.5nm以下、又は0.4nm以下であってよい。標準偏差の下限は、例えば0.1nm以上であってよい。なお、半導体ナノ粒子の平均粒径の測定方法については後述する。
半導体ナノ粒子の製造方法で得られる第1半導体ナノ粒子は、複合粒子の結晶転換によって生成するため、第2混合物に含まれるAgが効率的に利用される。すなわち、半導体ナノ粒子の製造方法は、Agを基準とする第1半導体ナノ粒子の生成収率の点で優れている。具体的には、第2混合物に含まれる銀(Ag)の総モル数に対する生成する第1半導体ナノ粒子に含まれる銀(Ag)の総モル数の比率(Ag基準生成収率;%)が、例えば40%以上であってよく、好ましくは50%以上、又は55%以上であってよい。なお、このことは、例えば、AgとIn及びGaの少なくとも一方とS源とを含む混合物を熱処理して第1半導体ナノ粒子を生成する従来の方法では、副生する粗大粒子を除去するために遠心分離が必要であったのに対して、本実施形態に係る製造方法では、粗大粒子の生成が抑制され、遠心分離を要しないことにも示されている。
半導体ナノ粒子の製造方法は、上述した製造方法で得られる第1半導体ナノ粒子の表面に、硫化ガリウムを含む第2半導体を配置して、第2半導体ナノ粒子を得る工程を更に含んでいてもよい。すなわち、半導体ナノ粒子の製造方法は、上述した第1工程から第3工程を含む製造方法で得られる第1半導体ナノ粒子と、ガリウム(Ga)-硫黄(S)結合を含む第1化合物、及びガリウム(Ga)を含み硫黄(S)を含まない第2化合物と硫黄(S)を含む化合物との混合物からなる群から選択される少なくとも1種と、有機溶剤と、を含む第3混合物を第3温度で熱処理して、表面に第2半導体が配置された第1半導体を含む第2半導体ナノ粒子を得る第4工程を含んでいてよい。第2半導体ナノ粒子では、第1半導体ナノ粒子の表面に第2半導体を含む層が配置されていてよく、第1半導体ナノ粒子の表面に第2半導体を含む付着物が配置されていてもよい。
第4工程では、第1半導体ナノ粒子と、Ga-S結合を含む第1化合物、及びGaを含みSを含まない第2化合物とSを含む化合物との混合物からなる群から選択される少なくとも1種からなるGa源及びS源と、有機溶剤と、を含む第3混合物を準備して、準備した第3混合物を第3温度で熱処理することで第2半導体ナノ粒子を得る。第3混合物は、第1化合物、及び第2化合物とSを含む化合物との混合物からなる群から選択される少なくとも1種のGa源及びS源を含む。すなわち、第3混合物は、第1半導体ナノ粒子と有機溶剤に加えて、第1化合物の少なくとも1種をGa源及びS源として含んでいてもよく、第2化合物とSを含む化合物との混合物の少なくとも1種をGa源及びS源として含んでいてもよく、第1化合物の少なくとも1種及び第2化合物とSを含む化合物との混合物の少なくとも1種をGa源及びS源として含んでいてもよい。
第1化合物はGa-S結合を有する化合物である。第1化合物は、第2半導体を構成するGa源及びS源を兼ねていてよい。Ga-S結合を有する化合物としては、例えば含硫黄化合物のGa塩が挙げられ、Gaの有機酸塩、無機酸塩、有機金属化合物等であってよい。含硫黄化合物として具体的には、チオカルバミン酸、ジチオカルバミン酸、チオ炭酸エステル、ジチオ炭酸エステル(キサントゲン酸)、トリチオ炭酸エステル、チオカルボン酸、ジチオカルボン酸及びそれらの誘導体等を挙げることができる。中でも比較的低温で分解することから、ジチオカルバミン酸、キサントゲン酸及びそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。含硫黄化合物の具体例は、上記と同様である。Ga-S結合を有する化合物の具体例としては、トリスジメチルジチオカルバミン酸ガリウム、トリスジエチルジチオカルバミン酸ガリウム(Ga(DDTC)3)、クロロビスジエチルジチオカルバミン酸ガリウム、エチルキサントゲン酸ガリウム(Ga(EX)3)等を挙げることができる。第3混合物は、Ga-S結合を有する化合物を1種単独で含んでいてもよく、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
第2化合物はGaを含みSを含まない化合物である。第2化合物は第2半導体を構成するGa源であってよい。第2化合物は、Ga塩であってよく、Gaの有機酸塩又は無機酸塩のいずれであってもよい。具体的に無機酸塩としては、硝酸塩、塩酸塩等を挙げることができる。また有機酸塩としては、ギ酸塩、酢酸塩、シュウ酸、アセチルアセトナート塩等を挙げることができる。Ga塩は、好ましくはこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種であってよく、有機溶剤への溶解度が高く、反応がより均一に進行することから、より好ましくは酢酸塩、アセチルアセトナート塩等の有機酸塩からなる群から選択される少なくとも1種であってよい。第3混合物は、第2化合物を1種単独で含んでいてもよく、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
第2化合物と組み合わされて混合物を構成するSを含む化合物は、第2半導体を構成するS源であってよい。Sを含む化合物としては、ジエチルジチオカルバミド酸塩;チオ尿素;ジメチルチオ尿素、ジエチルチオ尿素等のアルキルチオ尿素等が挙げられる。また、Sを含む化合物として液体状化合物を用いてもよい。Sを含む液体状化合物としては、例えば、4-ペンタンジチオンなどのβ-ジチオン類;1,2-ビス(トリフルオロメチル)エチレン-1,2-ジチオールなどのジチオール類等が挙げられる。Sを含む化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上の組み合わせて用いてもよい。第3混合物では、Sを含む化合物の一部がS以外の第16族元素を含む化合物に置換されていてもよい。第3混合物における第16族元素の総原子数に対するSの原子数の比率は、例えば90%以上であってよく、好ましくは95%以上、又は99%以上であってよい。
第3混合物を構成する有機溶剤としては、第1混合物における有機溶剤と同様の有機溶剤を挙げることができる。第3混合物を構成する有機溶剤は、第1混合物を構成する有機溶剤と同一であってもよく、異なっていてもよい。
第3混合物は、例えば、第1化合物、及び第2化合物とSを含む化合物との混合物からなる群から選択される少なくとも1種からなるGa源及びS源と有機溶剤とを含む混合液と、第1半導体ナノ粒子を含む分散液とを混合することで調製することができる。
第1半導体ナノ粒子を分散させる溶媒は、任意の有機溶媒とすることができる。有機溶媒は、表面修飾剤、または表面修飾剤を含む溶液とすることができる。例えば、有機溶媒は、炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含窒素化合物から選ばれる少なくとも1つとすることができる。あるいは、炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含硫黄化合物から選ばれる少なくとも1つとすることができる。あるいは炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含窒素化合物から選ばれる少なくとも1つと炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含硫黄化合物から選ばれる少なくとも1つとの組み合わせとすることができる。含窒素化合物としては、特に、特に純度の高いものが入手しやすい点と沸点が290℃を超える点とから、n‐テトラデシルアミン、オレイルアミン等が好ましい。含硫黄化合物としては、ドデカンチオール等が好ましく挙げられる。具体的な有機溶媒としては、オレイルアミン、n‐テトラデシルアミン、ドデカンチオール、またはその組み合わせが挙げられる。また、第1半導体ナノ粒子を分散させる溶媒は、クロロホルム等のハロゲン系溶剤であってもよい。
第3混合物は、第3混合物に含まれる第1半導体ナノ粒子の濃度が、例えば、5.0×10-7モル/リットル以上5.0×10-5モル/リットル以下、特に1.0×10-6モル/リットル以上、1.0×10-5モル/リットル以下となるように調製されてよい。第3混合物に含まれる第1半導体ナノ粒子の濃度が小さすぎると貧溶媒による凝集・沈澱プロセスによる生成物の回収が困難になり、大きすぎるとコアを構成する材料のオストワルド熟成、衝突による融合の割合が増加し、粒径分布が広くなる傾向にある。ここで、第1半導体ナノ粒子の濃度というのは、第1半導体ナノ粒子1つを巨大な分子と見なしたときのモル濃度であり、分散液1Lに含まれる第1半導体ナノ粒子の個数を、アボガドロ数(NA=6.022×1023)で除した値に等しい。
第3混合物におけるGa源及びS源の仕込み比は、GaとSを含む第2半導体の化学量論組成比に対応させて仕込み比を決めてもよく、必ずしも化学量論組成比にしなくてもよい。仕込み比を化学量論組成比にしない場合、目的とする第2半導体の生成量よりも過剰量で原料を仕込んでもよく、例えば、S源を化学量論組成比より少なくしてよく、例えば、仕込み比(Ga:S)を1:1としてもよい。また、Ga源及びS源の仕込み比(Ga:S)はGa2S3の組成式に対応した1:1.5から1:1の範囲としてもよい。
第3混合物におけるGa源とS源の仕込み量は、第1半導体ナノ粒子に所望の厚みの第2半導体が配置されるように、第3混合物に含まれる第1半導体ナノ粒子の量を考慮して選択してよい。例えば、第1半導体ナノ粒子の、粒子としての物質量10nmolに対して、Ga及びSから成る化学量論組成の化合物半導体が1μmol以上10mmol以下、特に5μmol以上1mmol以下生成されるように、Ga源及びS源の仕込み量を決定してよい。なお、粒子としての物質量については、既述の通りである。
第3混合物は、必要に応じてハロゲン化合物の少なくとも1種を更に含んでいてもよい。ハロゲン化合物を含む第3混合物を熱処理することで、得られる第2半導体ナノ粒子の発光効率がより向上する場合がある。ハロゲン化合物としては、ハロゲン原子を含む有機化合物及びハロゲン原子を含む無機化合物が挙げられる。ハロゲン化合物の具体例については後述する。また、第3混合物がハロゲン化合物を含む場合、第3混合物におけるハロゲン化合物の含有量は、例えば0.1質量%以上1.0質量%以下であってよく、好ましくは0.15質量%以上、又は0.3質量%以下であってよい。また、第3混合物に含まれる第1半導体ナノ粒子の粒子数に対するモル比が、例えば3000以上50000以下であってよく、好ましくは4500以上9000以下であってよい。
第3混合物を準備し、これを第3温度で熱処理して第2半導体ナノ粒子を得る方法としては、例えば、Ga源及びS源を、有機溶媒に分散または溶解させた混合液を準備し、この混合液を、第1半導体ナノ粒子を含む分散液に少量ずつ、例えば、滴下する方法で添加してよい。この場合、混合液は、0.1mL/時間以上10mL/時間以下、特に1mL/時間以上5mL/時間以下の速度で添加してよい。また、混合液は、加熱した分散液に添加してよい。具体的には、例えば、分散液を昇温して、そのピーク温度が200℃以上310℃以下の第3温度となるようにし、第3温度に達してから、第3温度を保持した状態で、混合液を少量ずつ加え、その後、降温させる方法で、第1半導体ナノ粒子の表面に第2半導体を形成してよい(スローインジェクション法)。第3温度は、混合液の添加を終了した後も必要に応じて保持してよい。
第3温度が前記温度以上であると、第1半導体ナノ粒子を修飾している表面修飾剤が十分に脱離し、または第2半導体の生成のための化学反応が十分に進行する等の理由により、第2半導体の形成が十分に行われる傾向がある。第3温度が前記温度以下であると、第1半導体ナノ粒子に変質が生じることが抑制され、良好なバンド端発光が得られる傾向がある。第3温度を保持する時間は、混合液の添加が開始されてからトータルで、例えば1分間以上300分間以下、又は10分間以上120分間以下とすることができる。第3温度の保持時間は、第3温度との関係で選択され、第3温度がより低い場合には保持時間をより長くし、第3温度がより高い場合には保持時間をより短くすると、良好な第2半導体が形成されやすい。昇温速度及び降温速度は特に限定されず、降温は、例えば第3温度で所定時間保持した後、加熱源(例えば電気ヒーター)による加熱を停止して放冷することにより実施してよい。
あるいは、Ga源及びS源は、直接、全量を、第1半導体ナノ粒子を含む分散液に添加してよい。それから、Ga源及びS源が添加された分散液を加熱することにより、第2半導体を第1半導体ナノ粒子の表面に形成して配置してよい(ヒーティングアップ法)。具体的には、Ga源及びS源を添加した分散液について、例えば、徐々に昇温して、そのピーク温度が200℃以上310℃以下の第3温度となるようにし、第3温度で1分間以上300分間以下保持した後、徐々に降温させるやり方で加熱してよい。昇温速度は例えば1℃/分以上50℃/分以下としてよく、降温速度は例えば1℃/分以上100℃/分以下としてよい。あるいは、昇温速度を特に制御することなく、所定の第3温度となるように加熱してよく、また、降温を一定速度で実施せず、加熱源による加熱を停止して放冷することにより実施してもよい。第3温度が前記範囲であることの有利な点は、上記混合液を添加する方法(スローインジェクション法)で説明したとおりである。
熱処理の雰囲気は、不活性ガス雰囲気、例えば、アルゴン雰囲気又は窒素雰囲気が好ましい。不活性ガス雰囲気とすることで、酸化物の副生を、低減ないしは防止することができる。
以上のようにして、第1半導体ナノ粒子の表面に第2半導体が配置されて第2半導体ナノ粒子が形成される。得られた第2半導体ナノ粒子は、溶媒から分離してよく、必要に応じて、さらに精製及び乾燥してよい。分離、精製及び乾燥の方法は、先に説明したとおりであるから、ここではその詳細な説明を省略する。
半導体ナノ粒子の製造方法は、第2半導体ナノ粒子を、ハロゲン化合物の存在下に第4温度で熱処理して、第3半導体ナノ粒子を得る第5工程を更に含んでいてよい。第2半導体ナノ粒子をハロゲン化合物とともに熱処理することで、発光効率がより向上する場合がある。これは例えば、ハロゲン化合物から生成するハロゲンイオンによって、溶媒への溶解性が良好なハロゲン化ガリウムが生成し、これによって第2半導体の格子欠陥等が修復されて、原子配列が整った付着物又は半導体層が形成されるためと考えることができる。
ハロゲン化合物としては、ハロゲン原子を含む有機化合物及びハロゲン原子を含む無機化合物が挙げられる。ハロゲン化合物が含むハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、好ましくは塩素原子または臭素原子である。ハロゲン化合物が含むハロゲン原子は1種単独でも、2種以上の組み合わせであってもよい。また、第5工程に用いられるハロゲン化合物は1種単独でも、2種以上の組み合わせであってもよい。
ハロゲン原子を含む有機化合物としては、例えば、ハロゲン化炭化水素、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム等が挙げられる。ハロゲン原子を含む有機化合物の炭素数は、例えば、1以上20以下であってよく、好ましくは1以上12以下または1以上6以下であってよい。ハロゲン化炭化水素の具体例としては、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ブロモホルム、ヘキサクロロベンゼン、クロロベンゼン等を挙げることができる。ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムの具体例としては、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム等を挙げることができる。
ハロゲン原子を含む無機化合物としては、例えば、ハロゲン化水素、金属ハロゲン化物等が挙げられる。ハロゲン化水素には、塩化水素及び臭化水素が含まれる。金属ハロゲン化物には、塩化ガリウム、塩化アルミニウム等が含まれる。
第2半導体ナノ粒子をハロゲン化合物とともに熱処理する方法としては、例えば第2半導体ナノ粒子を含む分散液とハロゲン化合物とを混合してハロゲン混合物を準備して、準備したハロゲン混合物を熱処理する方法が挙げられる。また、第2半導体ナノ粒子をハロゲン化合物とともに熱処理する第5工程は、第4工程と連続して実施してもよく、第4工程において第3温度に調整した後、ハロゲン化合物を添加して第4温度で熱処理してもよい。あるいは、ハロゲン化合物を含む第3混合物を熱処理することで、第4工程と第5工程とを同時に実施してもよい。
第2半導体ナノ粒子とハロゲン化合物を含むハロゲン混合物の熱処理は、1回のみ実施してもよいし、2回以上実施してもよい。ハロゲン混合物の熱処理を複数回実施する場合、それぞれの熱処理に用いるハロゲン化合物の種類、使用量等は同一であっても異なっていてもよく、熱処理の温度も同一であっても異なっていてもよく、熱処理の時間も同一であっても異なっていてもよい。また、複数回のハロゲン混合物の熱処理は、連続して実施してもよく、1回毎に降温して断続的に実施してもよい。
ハロゲン混合物におけるハロゲン化合物の含有量は、例えば0.1質量%以上1.0質量%以下であってよく、好ましくは0.15質量%以上、又は0.3質量%以下であってよい。また、ハロゲン混合物に含まれる第2半導体ナノ粒子の粒子数に対する比が、例えば3000以上50000以下であってよく、好ましくは4500以上9000以下であってよい。
第5工程における熱処理の第4温度は例えば80℃以上330℃以下であってよく、好ましくは180℃以上、又は200℃以上であってよく、また300℃以下、又は280℃以下であってよい。熱処理の時間は例えば10分以上12時間以下であってよい。
このようにして、第3半導体ナノ粒子(例えば、コアシェル構造を有するコアシェル型半導体ナノ粒子)として半導体ナノ粒子が形成される。得られた半導体ナノ粒子は、分散液から分離してよく、必要に応じて、さらに精製及び乾燥してよい。分離、精製及び乾燥の方法は、先に第1半導体ナノ粒子に関連して説明したとおりであるから、ここではその詳細な説明を省略する。
半導体ナノ粒子の製造方法は、第4工程で得られる第2半導体ナノ粒子又は第5工程で得られる第3半導体ナノ粒子に表面修飾剤を配置する第6工程をさらに含んでいてもよい。第6工程は、例えば、第2半導体ナノ粒子又は第3半導体ナノ粒子と表面修飾剤とを接触させることを含んでいてよく、第2半導体ナノ粒子又は第3半導体ナノ粒子と酸化数が負のリン(P)を含む特定修飾剤とを接触させることを含んでいてよい。これにより、より優れた量子収率でバンド端発光を示す半導体ナノ粒子が製造される。
第6工程では、例えば、第2半導体ナノ粒子又は第3半導体ナノ粒子と表面修飾剤とを混合することで第2半導体ナノ粒子又は第3半導体ナノ粒子を表面修飾剤と接触させてよい。第6工程における第2半導体ナノ粒子又は第3半導体ナノ粒子に対する表面修飾剤の量比は、例えば、第2半導体ナノ粒子又は第3半導体ナノ粒子の1×10-8モルに対して、1×10-6モル以上であればよく、好ましくは2×10-4モル以上5×10-2モル以下である。接触の温度は、例えば、マイナス80℃以上300℃以下であってよく、好ましくはマイナス40℃以上200℃以下であってよい。接触の時間は、例えば、10秒以上10日以下であってよく、好ましくは1分以上1日以下であってよい。接触の雰囲気は、大気雰囲気であっても不活性ガス雰囲気であってもよい。好ましくは不活性ガス雰囲気であってよく、より好ましくはアルゴン雰囲気又は窒素雰囲気であってよい。
第6工程に用いる表面修飾剤の具体例としては、炭素数2以上20以下のアミノアルコール、イオン性表面修飾剤、ノニオン性表面修飾剤、炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含窒素化合物、炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含硫黄化合物、炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含酸素化合物、炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含リン化合物等を挙げることができる。表面修飾剤は、1種単独でも、異なる2種以上のものを組み合わせて用いてよい。
表面修飾剤として用いられるアミノアルコールは、アミノ基及びアルコール性水酸基を有し、炭素数2以上20以下の炭化水素基を含む化合物であればよい。アミノアルコールの炭素数は、好ましくは10以下、より好ましくは6以下である。アミノアルコールを構成する炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルカン、アルケン、アルキン等の炭化水素に由来してよい。炭化水素に由来するとは、炭化水素から少なくとも2つの水素原子を取り除いて構成されることを意味する。アミノアルコールとして具体的には、アミノエタノール、アミノプロパノール、アミノブタノール、アミノペンタノール、アミノヘキサノール、アミノオクタノール等を挙げることができる。例えば、半導体ナノ粒子表面にアミノアルコールのアミノ基が結合し、その反対側である粒子最表面に水酸基が露出することで半導体ナノ粒子の極性に変化が生じ、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等)への分散性が向上する。
表面修飾剤として用いられるイオン性表面修飾剤としては、分子内にイオン性官能基を有する含窒素化合物、含硫黄化合物、含酸素化合物等が挙げられる。イオン性官能基はカチオン性、アニオン性のいずれであってもよく、少なくともカチオン性基を有することが好ましい。表面修飾剤の具体例及び表面修飾の方法は、例えばChemistry Letters,Vol.45,pp898-900,2016の記載を参照することができる。
イオン性表面修飾剤は、例えば、3級又は4級アルキルアミノ基を有する含硫黄化合物であってよい。アルキルアミノ基のアルキル基の炭素数は、例えば1以上4以下であってよい。また、含硫黄化合物は、炭素数2以上20以下のアルキル又はアルケニルチオールであってよい。イオン性表面修飾剤として具体的には、ジメチルアミノエタンチオールのハロゲン化水素塩、トリメチルアンモニウムエタンチオールのハロゲン塩、ジメチルアミノブタンチオールのハロゲン化水素塩、トリメチルアンモニウムブタンチオールのハロゲン塩等が挙げられる。
表面修飾剤として用いられるノニオン性表面修飾剤としては、例えば、アルキレングリコール単位、アルキレングリコールモノアルキルエーテル単位等を含むノニオン性官能基を有する含窒素化合物、含硫黄化合物、含酸素化合物等が挙げられる。アルキレングリコール単位におけるアルキレン基の炭素数は、例えば、2以上8以下であってよく、好ましくは2以上4以下である。またアルキレングリコール単位の繰り返し数は、例えば1以上20以下であってよく、好ましくは2以上10以下である。ノニオン性表面修飾剤を構成する含窒素化合物はアミノ基を有していてよく、含硫黄化合物はチオール基を有していてよく、含酸素化合物は水酸基を有していてよい。ノニオン性表面修飾剤の具体例としては、メトキシトリエチレンオキシエタンチオール、メトキシヘキサエチレンオキシエタンチオール等が挙げられる。
炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含窒素化合物としてはアミン類、アミド類等が挙げられる。炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含硫黄化合物としてはチオール類等が挙げられる。炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含酸素化合物としてはカルボン酸類、アルコール類、エーテル類、アルデヒド類、ケトン類などが挙げられる。炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含リン化合物としては、例えば、トリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン、トリアルキルホスフィンオキシド、トリアリールホスフィンオキシド等が挙げられる。
また、特定修飾剤は、第15族元素として負の酸化数を有するPを含む。Pの酸化数は、Pに水素原子又は炭化水素基が1つ結合することで-1となり、酸素原子が単結合で1つ結合することで+1となり、Pの置換状態で変化する。例えば、トリアルキルホスフィン及びトリアリールホスフィンにおけるPの酸化数は-3であり、トリアルキルホスフィンオキシド及びトリアリールホスフィンオキシドでは-1となる。
特定修飾剤は、負の酸化数を有するPに加えて、他の第15族元素を含んでいてもよい。他の第15族元素としては、N、As、Sb等を挙げることができる。
特定修飾剤は、例えば、炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含リン化合物であってよい。炭素数4以上20以下の炭化水素基としては、n-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、オクチル基、エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基などの直鎖又は分岐鎖状の飽和脂肪族炭化水素基;オレイル基などの直鎖又は分岐鎖状の不飽和脂肪族炭化水素基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの脂環式炭化水素基;フェニル基、ナフチル基などの芳香族炭化水素基;ベンジル基、ナフチルメチル基などのアリールアルキル基などが挙げられ、このうち飽和脂肪族炭化水素基又は不飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。特定修飾剤が、複数の炭化水素基を有する場合、それらは同一であっても、異なっていてもよい。
特定修飾剤として具体的には、トリブチルホスフィン、トリイソブチルホスフィン、トリペンチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリス(エチルヘキシル)ホスフィン、トリデシルホスフィン、トリドデシルホスフィン、トリテトラデシルホスフィン、トリヘキサデシルホスフィン、トリオクタデシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィンオキシド、トリイソブチルホスフィンオキシド、トリペンチルホスフィンオキシド、トリヘキシルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド、トリス(エチルヘキシル)ホスフィンオキシド、トリデシルホスフィンオキシド、トリドデシルホスフィンオキシド、トリテトラデシルホスフィンオキシド、トリヘキサデシルホスフィンオキシド、トリオクタデシルホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィンオキシド等を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。
第2半導体ナノ粒子又は第3半導体ナノ粒子と特定修飾剤との接触は、例えば、第2半導体ナノ粒子又は第3半導体ナノ粒子の分散液と特定修飾剤とを混合することで行うことができる。また第2半導体ナノ粒子又は第3半導体ナノ粒子を、液状の特定修飾剤と混合して行ってもよい。特定修飾剤には、その溶液を用いてもよい。第2半導体ナノ粒子の分散液は、第2半導体ナノ粒子と適当な有機溶剤とを混合することで得られる。分散に用いる有機溶剤としては、例えばクロロホルム等のハロゲン溶剤;トルエン等の芳香族炭化水素溶剤;シクロヘキサン、ヘキサン、ペンタン、オクタン等の脂肪族炭化水素溶剤などを挙げることができる。第2半導体ナノ粒子の分散液における物質量の濃度は、例えば、1×10-7mol/L以上1×10-3mol/L以下であってよく、好ましくは1×10-6mol/L以上1×10-4mol/L以下であってよい。
特定修飾剤の第2半導体ナノ粒子又は第3半導体ナノ粒子に対する使用量は、例えば、モル比で1倍以上50,000倍以下である。また、第2半導体ナノ粒子の分散液における物質量の濃度が1.0×10-7mol/L以上1.0×10-3mol/L以下である第2半導体ナノ粒子の分散液を用いる場合、分散液と特定修飾剤とを体積比で1:1000から1000:1で混合してもよい。
第2半導体ナノ粒子又は第3半導体ナノ粒子と特定修飾剤との接触時の温度は、例えば、-100℃以上100℃以下であってよく、30℃以上75℃以下であってよい。接触時間は特定修飾剤の使用量、分散液の濃度等に応じて適宜選択すればよい。接触時間は、例えば、1分以上であってよく、好ましくは1時間以上であってよく、また100時間以下であってよく、好ましくは48時間以下であってよい。接触時の雰囲気は、例えば、窒素ガス、希ガス等の不活性ガス雰囲気であってよい。
半導体ナノ粒子
半導体ナノ粒子は、銀(Ag)と、インジウム(In)及びガリウム(Ga)の少なくとも一方と、硫黄(S)と、を含む第1半導体を含む。半導体ナノ粒子の表面には、ガリウム(Ga)及び硫黄(S)を含み、実質的に銀(Ag)を含まない第2半導体が配置される。半導体ナノ粒子は、365nmの波長の光照射により、450nm以上700nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有するバンド端発光を示し、バンド端発光純度が70%以上であって、バンド端発光の内部量子収率が、15%以上である。半導体ナノ粒子を構成する第1半導体は、平均粒径の標準偏差が0.6nm以下である。半導体ナノ粒子は、例えば既述の半導体ナノ粒子の製造方法で得られるものであってよい。
半導体ナノ粒子は、365nmの波長の光照射により、450nm以上700nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有するバンド端発光を示し、高いバンド端発光純度と高いバンド端発光の内部量子収率を示す。これは例えば、半導体ナノ粒子の中心部に存在する第1半導体の結晶構造が実質的に正方晶(カルコパイライト構造)であり、半導体ナノ粒子の表面に配置される第2半導体が、Ga欠陥(例えば、Gaが不足している部分)の少ない結晶構造を有しているためと考えることができる。第2半導体は、第1半導体に比べてGaの組成比が大きい半導体であってもよく、また第1半導体と比べてAgの組成比が小さい半導体であってもよく、実質的にGaとSからなる半導体であってよい。また、半導体ナノ粒子では、第1半導体を含む粒子の表面に、第2半導体を含む付着物が配置されていてよく、第1半導体を含む粒子を、第2半導体を含む付着物が被覆していてもよい。さらに、半導体ナノ粒子は、例えば、第1半導体を含む粒子をコアとし、第2半導体含む付着物をシェルとし、コアの表面にシェルが配置されるコアシェル構造を有していてもよい。
半導体ナノ粒子を構成する第1半導体は、Ag、In及びGaの少なくとも一方、並びにSを含む。一般的にAg、In及びSを含み、かつその結晶構造が正方晶、六方晶、または斜方晶である半導体は、AgInS2の組成式で表されるものとして、文献等において紹介されている。一方で、実際には、上記一般式で表される化学量論組成のものではなく、特にAgの原子数のIn及びGaの原子数に対する比(Ag/In+Ga)が1よりも小さくなる場合もあるし、あるいは逆に1よりも大きくなる場合もある。また、Agの原子数とIn及びGaの原子数の和が、Sの原子数と同じにならないことがある。よって本明細書では、特定の元素を含む半導体について、それが化学量論組成であるか否かを問わない場面では、Ag-In-Ga-Sのように、構成元素を「-」でつないだ式で半導体組成を表す。よって本実施形態にかかる半導体ナノ粒子の半導体組成は、例えばAg-In-S及び第13族元素であるInの一部又は全部を同じく第13族元素であるGaとしてAg-In-Ga-S、Ag-Ga-Sと考えることができる。
なお、上述の元素を含む第1半導体であって、六方晶の結晶構造を有するものはウルツ鉱型であり、正方晶の結晶構造を有する半導体はカルコパイライト型である。結晶構造は、例えば、X線回折(XRD)分析により得られるXRDパターンを測定することによって同定される。具体的には、第1半導体から得られたXRDパターンを、AgInS2の組成で表される半導体ナノ粒子のものとして既知のXRDパターン、又は結晶構造パラメータからシミュレーションを行って求めたXRDパターンと比較する。既知のパターン及びシミュレーションのパターンの中に、第1半導体のパターンと一致するものがあれば、当該半導体ナノ粒子の結晶構造は、その一致した既知又はシミュレーションのパターンの結晶構造であるといえる。
半導体ナノ粒子の集合体においては、異なる結晶構造の第1半導体を含む半導体ナノ粒子が混在していてよい。その場合、XRDパターンにおいては、複数の結晶構造に由来するピークが観察される。一態様の半導体ナノ粒子では、第1半導体が実質的に正方晶からなっていてよく、正方晶に対応するピークが観察され、他の結晶構造に由来するピークは実質的に観察されなくてよい。
第1半導体の組成におけるAgの総含有率は、例えば10モル%以上30モル%以下であってよく、好ましくは15モル%以上であってよく、また25モル%以下であってよい。第1半導体の組成におけるIn及びGaの総含有率は、例えば、15モル%以上35モル%以下であってよく、好ましくは20モル%以上であってよく、また30モル%以下であってよい。第1半導体の組成におけるSの総含有率は、例えば、35モル%以上55モル%以下であってよく、好ましくは40モル%以上であってよく、また55モル%以下であってよい。
第1半導体は、In及びGaの少なくとも一方を含み、その一部が置換されてAl及びTlの少なくとも一方をさらに含んでいてもよく、実質的にIn及びGaから構成されていてもよい。ここで「実質的に」とは、In及びGa並びにIn及びGa以外の元素の総原子数に対するIn及びGa以外の元素の原子数の割合が、例えば10%以下であり、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下であることを示す。
第1半導体におけるIn及びGaの総原子数に対するInの原子数の比(In/(In+Ga))は、例えば、0.01以上1未満であってよく、好ましくは0.1以上0.99以下である。In及びGaの総原子数に対するInの原子数の比が所定の範囲であると、短波長の発光ピーク波長(例えば、545nm以下)を得ることができる。また、InとGaの総原子数に対するAgの原子数の比(Ag/(In+Ga))は、例えば、0.3以上1.2以下であってよく、好ましくは0.5以上1.1以下であってよい。Ag、In及びGaの総原子数に対するSの原子数の比(S/(Ag+In+Ga))は、例えば、0.8以上1.5以下であってよく、好ましくは0.9以上1.2以下であってよい。
第1半導体は、Sを含み、その一部が置換されてSe及びTeの少なくとも一方の元素をさらに含んでいてもよく、実質的にSから構成されていてもよい。ここで「実質的に」とは、S及びS以外の元素の総原子数に対するS以外の元素の原子数の割合が、例えば10%以下であり、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下であることを示す。
第1半導体は、実質的にAg、In、Ga、S及び前述のそれら一部を置換する元素から構成されてよい。ここで「実質的に」という用語は、不純物の混入等に起因して不可避的にAg、In、Ga、S及び前述のそれら一部を置換する元素以外の他の元素が含まれることを考慮して使用している。
第1半導体は、例えば、以下の式(1)で表される組成を有していてよい。
AgqInrGa(1-r)S(q+3)/2 (1)
ここで、q及びrは、0.20<q≦1.2、0<r<1を満たす。
第1半導体は、その製造方法に起因して、第1半導体からなる各粒子の組成のバラツキが小さくなっている。これにより、発光スペクトルにおける半値幅をより狭くすることができる。第1半導体からなる各粒子の組成のバラツキは、例えば第1半導体からなる粒子を複数の粒子群に分割し、それぞれの粒子群の組成を分析することで評価することができる。また、逆に発光スペクトルにおける半値幅が狭いことは、各粒子の組成のバラツキが小さいことを示していると考えることもできる。
半導体ナノ粒子は、表面に第2半導体が配置されていてよい。第2半導体は、第1半導体よりバンドギャップエネルギーが大きい半導体を含んでいてよい。第2半導体の組成は、第1半導体の組成に比べて、Gaのモル含有量が大きい組成を有していてよい。第1半導体の組成におけるGaのモル含有量に対する第2半導体の組成におけるGaのモル含有量の比は、例えば1より大きく5以下であってよく、好ましくは1.1以上であってよく、また好ましくは3以下であってよい。
また、第2半導体の組成は、第1半導体の組成に比べて、Agのモル含有量が小さい組成を有していてよい。第1半導体の組成におけるAgのモル含有量に対する第2半導体の組成におけるAgのモル含有量の比は、例えば0.1以上0.7以下であってよく、好ましくは0.2以上であってよく、また好ましくは0.5以下であってよい。第2半導体の組成におけるAgのモル含有量の比は、例えば0.5以下であってよく、好ましくは0.2以下、又は0.1以下であってよく、実質的に0であってよい。ここで「実質的に」とは、第2半導体に含まれるすべての元素の原子数の合計を100%としたときに、Agの原子数の割合が、例えば10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下であることを示す。
半導体ナノ粒子において、表面に配置される第2半導体は、Ga及びSを含む半導体を含んでいてよい。Ga及びSを含む半導体は、第1半導体よりバンドギャップエネルギーが大きい半導体であってよい。
第2半導体に含まれるGa及びSを含む半導体の組成においては、Gaの一部が、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)及びタリウム(Tl)からなる群から選択される第13族元素の少なくとも1種で置換されていてもよい。また、Sの一部が、酸素(O)、セレン(Se)、テルル(Te)及びポロニウム(Po)からなる群から選択される第16族元素の少なくとも1種で置換されていてもよい。
Ga及びSを含む半導体は、実質的にGa及びSからなる半導体であってよい。ここで「実質的に」とは、Ga及びSを含む半導体に含まれるすべての元素の原子数の合計を100%としたときに、Ga及びS以外の元素の原子数の割合が、例えば10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下であることを示す。
Ga及びSを含む半導体は、上述の第1半導体のバンドギャップエネルギーに応じて、その組成等を選択して構成してもよい。あるいは、Ga及びSを含む半導体の組成等が先に決定されている場合には、第1半導体のバンドギャップエネルギーがGa及びSを含む半導体のそれよりも小さくなるように、第1半導体を設計してもよい。一般にAg-In-Sからなる半導体は、1.8eV以上1.9eV以下のバンドギャップエネルギーを有する。
具体的には、Ga及びSを含む半導体は、例えば2.0eV以上5.0eV以下、特に2.5eV以上5.0eV以下のバンドギャップエネルギーを有してよい。また、Ga及びSを含む半導体のバンドギャップエネルギーは、第1半導体のバンドギャップエネルギーよりも、例えば0.1eV以上3.0eV以下程度、特に0.3eV以上3.0eV以下程度、より特には0.5eV以上1.0eV以下程度大きいものであってよい。Ga及びSを含む半導体のバンドギャップエネルギーと第1半導体のバンドギャップエネルギーとの差が前記下限値以上であると、半導体ナノ粒子からの発光において、バンド端発光以外の発光の割合が少なくなり、バンド端発光の割合が大きくなる傾向がある。
第2半導体は、酸素(O)原子を含んでいてよい。酸素原子を含む半導体は、上述の第1半導体よりも大きいバンドギャップエネルギーを有する半導体となる傾向にある。第2半導体における酸素原子を含む半導体の形態は明確ではないが、例えば、Ga-O-S、Ga2O3等であってよい。
第2半導体は、Ga及びSに加えてアルカリ金属(Ma)を更に含んでいてもよい。第2半導体に含まれるアルカリ金属は、少なくともリチウムを含んでいてよい。第2半導体がアルカリ金属を含む場合、アルカリ金属の原子数とGaの原子数の総和に対するアルカリ金属の原子数の比は、例えば、0.01以上1未満、又は0.1以上0.9以下であってよい。また、アルカリ金属の原子数とGaの原子数の総和に対するSの原子数の比は、例えば、0.25以上0.75以下であってよい。
第2半導体は、その晶系が第1半導体の晶系となじみのあるものであってよく、またその格子定数が、第1半導体の格子定数と同じ又は近いものであってよい。晶系になじみがあり、格子定数が近い(ここでは、第2半導体の格子定数の倍数が、第1半導体の格子定数に近いものも格子定数が近いものとする)第2半導体は、第1半導体の周囲を良好に被覆することがある。例えば、上述の第1半導体は、一般に正方晶系であるが、これになじみのある晶系としては、正方晶系、斜方晶系が挙げられる。Ag-In-Sが正方晶系である場合、その格子定数は0.5828nm、0.5828nm、1.119nmであり、これを被覆する第2半導体は、正方晶系又は斜方晶系であって、その格子定数又はその倍数が、Ag-In-Sの格子定数と近いものであることが好ましい。あるいは、第2半導体はアモルファス(非晶質)であってもよい。
第2半導体がアモルファス(非晶質)であるか否かは、半導体ナノ粒子を、HAADF-STEMで観察することにより確認できる。第2半導体がアモルファス(非晶質)である場合、具体的には、規則的な模様、例えば、縞模様ないしはドット模様等を有する部分が中心部に観察され、その周囲に規則的な模様を有するものとしては観察されない部分がHAADF-STEMにおいて観察される。HAADF-STEMによれば、結晶性物質のように規則的な構造を有するものは、規則的な模様を有する像として観察され、非晶性物質のように規則的な構造を有しないものは、規則的な模様を有する像としては観察されない。そのため、第2半導体がアモルファスである場合には、規則的な模様を有する像として観察される第1半導体(正方晶系等の結晶構造を有していてよい)とは明確に異なる部分として、第2半導体を観察することができる。
また、第2半導体がGa-Sからなる場合、Gaが第1半導体に含まれるAg及びInよりも軽い元素であるために、HAADF-STEMで得られる像において、第2半導体は第1半導体よりも暗い像として観察される傾向にある。
第2半導体がアモルファスであるか否かは、高解像度の透過型電子顕微鏡(HRTEM)で本実施形態の半導体ナノ粒子を観察することによっても確認できる。HRTEMで得られる画像において、第1半導体の部分は結晶格子像(規則的な模様を有する像)として観察され、アモルファスである第2半導体の部分は結晶格子像として観察されず、白黒のコントラストは観察されるが、規則的な模様は見えない部分として観察される。
一方、第2半導体は、第1半導体と固溶体を構成しないものであることが好ましい。第2半導体が第1半導体と固溶体を形成すると両者が一体のものとなり、半導体ナノ粒子の表面に第2半導体が配置されることによりバンド端発光を得るという、本実施形態のメカニズムが得られなくなる。例えば、Ag-In-Sからなる第1半導体を含む半導体ナノ粒子の表面に、化学量論組成ないしは非化学量論組成の硫化亜鉛(Zn-S)が配置されても、半導体ナノ粒子からバンド端発光が得られないことが確認されている。Zn-Sは、Ag-In-Sとの関係では、バンドギャップエネルギーに関して上記の条件を満たし、type-Iのバンドアライメントを与えるものである。それにもかかわらず、前記特定の半導体からバンド端発光が得られなかったのは、第1半導体とZnSとが固溶体を形成したことによると推察される。
半導体ナノ粒子の粒径は、例えば、50nm以下の平均粒径を有してよい。平均粒径は、製造のしやすさとバンド端発光の内部量子収率の点より、1nm以上20nm以下の範囲が好ましく、1.6nm以上8nm以下がより好ましく、2nm以上7.5nm以下が特に好ましい。
半導体ナノ粒子の平均粒径は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて撮影されたTEM像から求めてよい。個々の粒子の粒径は、具体的には、TEM像で観察される粒子の外周の任意の2点を結び、粒子の内部に存在する線分のうち、最も長いものを指す。
ただし、粒子がロッド形状を有するものである場合には、短軸の長さを粒径とみなす。ここで、ロッド形状の粒子とは、TEM像において短軸と短軸に直交する長軸とを有し、短軸の長さに対する長軸の長さの比が1.2より大きいものを指す。ロッド形状の粒子は、TEM像で、例えば、長方形状を含む四角形状、楕円形状、又は多角形状等として観察される。ロッド形状の長軸に直交する面である断面の形状は、例えば、円、楕円、又は多角形であってよい。具体的にはロッド状の形状の粒子について、長軸の長さは、楕円形状の場合には、粒子の外周の任意の2点を結ぶ線分のうち、最も長い線分の長さを指し、長方形状又は多角形状の場合、外周を規定する辺の中で最も長い辺に平行であり、かつ粒子の外周の任意の二点を結ぶ線分のうち、最も長い線分の長さを指す。短軸の長さは、外周の任意の2点を結ぶ線分のうち、前記長軸の長さを規定する線分に直交し、かつ最も長さの長い線分の長さを指す。
半導体ナノ粒子の平均粒径は、50,000倍以上150,000倍以下のTEM像で観察される、すべての計測可能な粒子について粒径を測定し、それらの粒径の算術平均とする。ここで、「計測可能な」粒子は、TEM像において粒子全体の輪郭が観察できるものである。したがって、TEM像において、粒子の輪郭の一部が撮像範囲に含まれておらず、「切れて」いるような粒子は計測可能なものではない。1つのTEM像に含まれる計測可能な粒子数が100以上である場合には、そのTEM像を用いて平均粒径を求める。一方、1つのTEM像に含まれる計測可能な粒子の数が100未満の場合には、撮像場所を変更して、TEM像をさらに取得し、2以上のTEM像に含まれる100以上の計測可能な粒子について粒径を測定して平均粒径を求める。
半導体ナノ粒子において、第1半導体からなる部分は粒子状であってよく、例えば、10nm以下、8nm以下、又は7.5nm未満の平均粒径を有してよい。第1半導体の平均粒径は、例えば1.5nm以上10nm以下、好ましくは1.5nm以上8nm未満、又は1.5nm以上7.5nm未満の範囲内にあってよい。第1半導体の平均粒径が前記上限値以下であると、量子サイズ効果を得られ易い。第1半導体からなる部分の半導体ナノ粒子の平均粒径は、半導体ナノ粒子の製造方法における第1半導体ナノ粒子の平均粒径として算出された値であってよい。
半導体ナノ粒子において、第1半導体からなる部分の平均粒径の標準偏差は、例えば0.6nm以下であってよい。第1半導体からなる部分の平均粒径の標準偏差は、好ましくは0.5nm以下、又は0.4nm以下であってよく、その下限は例えば、0.1nm以上であってよい。平均粒径の標準偏差が0.6nm以下であることは、第1半導体からなる部分の粒度分布が狭いことを意味する。これにより、発光スペクトルにおける半値幅をより狭くすることができる。
半導体ナノ粒子おける第2半導体からなる部分の厚みは0.1nm以上50nm以下の範囲内、0.1nm以上10nm以下の範囲内、又は0.3nm以上3nm以下の範囲内にあってよい。第2半導体の厚みが前記下限値以上である場合には、半導体ナノ粒子において第2半導体が配置されることによる効果が十分に得られ、バンド端発光を得られ易い。
第1半導体の平均粒径及び第2半導体の厚みは、半導体ナノ粒子を、例えば、HAADF-STEMで観察することにより求めてよい。特に、第2半導体がアモルファスである場合には、HAADF-STEMによって、第1半導体とは異なる部分として観察されやすい第2半導体部分の厚みを容易に求めることができる。その場合、第1半導体の粒径は、半導体ナノ粒子について上記で説明した方法に従って求めることができる。第2半導体の厚みが一定でない場合には、最も小さい厚みを、当該半導体ナノ粒子における第2半導体の厚みとする。
半導体ナノ粒子は、結晶構造が実質的に正方晶であることが好ましい。結晶構造は、上述と同様にX線回折(XRD)分析により得られるXRDパターンを測定することによって同定される。実質的に正方晶であるとは、正方晶であることを示す26°付近のメインピークの高さに対する六方晶及び斜方晶であることを示す48°付近のピークの高さの比が、例えば、10%以下、又は5%以下であることをいう。
半導体ナノ粒子は、365nmの波長の光照射により、450nm以上700nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有するバンド端発光を示してもよい。一態様において、発光ピーク波長の範囲は好ましくは475nm以上560nm以下であってよく、510nm以上550nm以下、又は515nm以上545nm以下であってよい。また、一態様において、発光ピーク波長の範囲は好ましくは600nm以上700nm以下であってよく、640nm以上690nm以下、又は650nm以上680nm以下であってよい。また、半導体ナノ粒子は、その発光スペクトルにおける半値幅が、例えば、発光ピーク波長が475nm以上560nm以下の場合、45nm以下であってよく、好ましくは40nm以下、35nm以下、又は30nm以下であってよい。また例えば、発光ピーク波長が600nm以上700nm以下の場合、発光スペクトルにおける半値幅は、100nm以下であってよく、好ましくは80nm以下、60nm以下、又は55nm以下であってよい。半値幅の下限は例えば、15nm以上であってよい。また、主成分(バンド端発光)の発光の寿命が200ns以下であることが好ましい。
ここで、「発光の寿命」とは、蛍光寿命測定装置と称される装置を用いて測定される発光の寿命をいう。具体的には、上記「主成分の発光寿命」は、次の手順に従って求められる。まず、半導体ナノ粒子に励起光を照射して発光させ、発光スペクトルのピーク付近の波長、例えば、ピークの波長±50nmの範囲内にある波長の光について、その減衰(残光)の経時変化を測定する。経時変化は、励起光の照射を止めた時点から測定する。得られる減衰曲線は一般に、発光、熱等の緩和過程に由来する複数の減衰曲線を足し合わせたものとなっている。そこで、本実施形態では、3つの成分(すなわち、3つの減衰曲線)が含まれると仮定して、発光強度をI(t)としたときに、減衰曲線が下記の式で表せるように、パラメータフィッティングを行う。パラメータフィッティングは、専用ソフトを使用して実施する。
I(t) = A1exp(-t/τ1) + A2exp(-t/τ2) + A3exp(-t/τ3)
上記の式中、各成分のτ1、τ2及びτ3は、発光強度が初期の1/e(36.8%)に減衰するのに要する時間であり、これが各成分の発光寿命に相当する。発光寿命の短い順にτ1、τ2及びτ3とする。また、A1、A2及びA3は、各成分の寄与率である。例えば、Axexp(-t/τx)で表される曲線の積分値が最も大きいものを主成分としたときに、主成分の発光寿命τが200ns以下である。そのような発光は、バンド端発光であると推察される。なお、主成分の特定に際しては、Axexp(-t/τx)のtの値を0から無限大まで積分することによって得られるAx×τxを比較し、この値が最も大きいものを主成分とする。
なお、発光の減衰曲線が3つ、4つ、または5つの成分を含むものと仮定してパラメータフィッティングを行って得られる式がそれぞれ描く減衰曲線と、実際の減衰曲線とのずれは、それほど変わらない。そのため、本実施形態では、主成分の発光寿命を求めるにあたり、発光の減衰曲線に含まれる成分の数を3と仮定し、それによりパラメータフィッティングが煩雑となることを避けている。
半導体ナノ粒子の発光は、バンド端発光に加えて欠陥発光(例えば、ドナーアクセプター発光)を含むものであってもよいが、実質的にバンド端発光のみであることが好ましい。欠陥発光は一般に発光の寿命が長く、またブロードなスペクトルを有し、バンド端発光よりも長波長側にそのピークを有する。ここで、実質的にバンド端発光のみであるとは、発光スペクトルにおけるバンド端発光成分の純度(以下、「バンド端発光純度」ともいう)が、40%以上であることをいうが、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましく、95%以上が特に好ましい。バンド端発光成分の純度の上限値は、例えば、100%以下、100%未満、又は99%以下であってよい。「バンド端発光成分の純度」とは、発光スペクトルに対し、バンド端発光のピーク形状を正規分布と仮定したパラメータフィッティングを行って、バンド端発光のピークの面積をa1として算出し、発光スペクトル全体の面積をa2として算出した時、下記の式で表される。
バンド端発光成分の純度(%) = (a1/a2)×100
発光スペクトルがバンド端発光を全く含まない場合、すなわち欠陥発光のみを含む場合は0%、バンド端発光のみを含む場合は100%となる。
バンド端発光の内部量子収率は温度25℃において量子収率測定装置を用いて、励起光波長450nm、蛍光波長範囲470nm以上900nm以下の条件で計算された内部量子収率、あるいは励起光波長365nm、蛍光波長範囲450nm以上950nm以下の条件で計算された内部量子収率、あるいは励起光波長450nm、蛍光波長範囲500nm以上950nm以下の条件で計算された内部量子収率に上記バンド端発光成分の純度を乗じ、100で除した値として定義される。半導体ナノ粒子のバンド端発光の内部量子収率は、例えば15%以上であり、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上が更に好ましく、80%以上が特に好ましい。
半導体ナノ粒子が発するバンド端発光は、半導体ナノ粒子の粒径を変化させることによって、ピークの位置を変化させることができる。例えば、半導体ナノ粒子の粒径をより小さくすると、バンド端発光のピーク波長が短波長側にシフトする傾向にある。さらに、半導体ナノ粒子の粒径をより小さくすると、バンド端発光のスペクトルの半値幅がより小さくなる傾向にある。
半導体ナノ粒子がバンド端発光に加えて欠陥発光を示す場合、バンド端発光の強度比は、例えば、0.75以上であってよく、好ましくは0.85以上であり、より好ましくは0.9以上であり、特に好ましくは0.93以上であり、上限値は、例えば、1以下、1未満、又は0.99以下であってよい。なお、バンド端発光の強度比は、発光スペクトルに対し、バンド端発光のピークと欠陥発光のピークの形状をそれぞれ正規分布と仮定したパラメータフィッティングを行って、バンド端発光のピークと欠陥発光のピークの2つに分離し、それらの最大ピーク強度をそれぞれb1、b2とした時、下記の式で表される。
バンド端発光の強度比 = b1/(b1+b2)
バンド端発光の強度比は、発光スペクトルがバンド端発光を全く含まない場合、すなわち欠陥発光のみを含む場合は0、バンド端発光と欠陥発光の最大ピーク強度が同じ場合は0.5、バンド端発光のみを含む場合は1となる。
半導体ナノ粒子は、その吸収スペクトル又は励起スペクトル(蛍光励起スペクトルともいう)がエキシトンピークを示すものであることが好ましい。エキシトンピークは、励起子生成により得られるピークであり、これが吸収スペクトル又は励起スペクトルにおいて発現しているということは、粒径の分布が小さく、結晶欠陥の少ないバンド端発光に適した粒子であることを意味する。エキシトンピークが急峻になるほど、粒径がそろった結晶欠陥の少ない粒子が半導体ナノ粒子の集合体により多く含まれていることを意味する。したがって、発光の半値幅は狭くなり、発光効率が向上すると予想される。本実施形態の半導体ナノ粒子の吸収スペクトル又は励起スペクトルにおいて、エキシトンピークは、例えば、400nm以上550nm以下、好ましくは430nm以上500nm以下の範囲内で観察される。エキシトンピークの有無を見るための励起スペクトルは、観測波長をピーク波長付近に設定して測定してよい。
半導体ナノ粒子は、その表面が表面修飾剤で修飾されていてもよい。表面修飾剤の具体例としては、炭素数2以上20以下のアミノアルコール、イオン性表面修飾剤、ノニオン性表面修飾剤、炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含窒素化合物、炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含硫黄化合物、炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含酸素化合物、炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含リン化合物、第2族元素、第12族元素又は第13族元素のハロゲン化物等を挙げることができる。表面修飾剤は、1種単独でも、異なる2種以上のものを組み合わせて用いてよい。なお、ここで例示した表面修飾剤の詳細は上述の通りである。
半導体ナノ粒子は、その表面がガリウムハロゲン化物により表面修飾されていてもよい。半導体ナノ粒子の表面がガリウムハロゲン化物により表面修飾されることにより、バンド端発光の内部量子収率が向上する。ガリウムハロゲン化物の具体例としては、塩化ガリウム、フッ化ガリウム、臭化ガリウム、ヨウ化ガリウム等が挙げられる。
半導体ナノ粒子における第2半導体は、その表面がガリウムハロゲン化物により表面修飾されていてもよい。半導体ナノ粒子における第2半導体の表面がガリウムハロゲン化物により表面修飾されることにより、バンド端発光の内部量子収率が向上する。
ガリウムハロゲン化物によって表面修飾された半導体ナノ粒子の発光は、バンド端発光に加えて欠陥発光(ドナーアクセプター発光)を含むものであってもよいが、実質的にバンド端発光のみであることが好ましい。実質的にバンド端発光のみであるとは、上述の半導体ナノ粒子で述べたとおりであり、バンド端発光成分の純度は、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましく、95%以上が特に好ましい。
ガリウムハロゲン化物によって表面修飾された半導体ナノ粒子のバンド端発光の内部量子収率の測定は、上述の半導体ナノ粒子で述べたとおりであり、バンド端発光の内部量子収率は、例えば、15%以上であり、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上が更に好ましく、80%以上が特に好ましい
発光デバイス
発光デバイスは、光変換部材及び半導体発光素子を備え、光変換部材に上記において説明した製造方法で得られる半導体ナノ粒子(例えば、コアシェル型半導体ナノ粒子)を含むものである。この発光デバイスによれば、例えば、半導体発光素子からの発光の一部を、半導体ナノ粒子が吸収してより長波長の光が発せられる。そして、半導体ナノ粒子からの光と半導体発光素子からの発光の残部とが混合され、その混合光を発光デバイスの発光として利用できる。
上記の製造方法で得られる半導体ナノ粒子は、その製造方法に起因して発光効率に優れる。上記の製造方法で製造される半導体ナノ粒子では、従来の製造方法で得られるコアシェル型半導体ナノ粒子に比べて、例えば、表面の半導体層(例えば、シェル)における格子欠陥等の発生が抑制されて発光効率が向上すると考えられる。表面の半導体層の結晶構造については、例えば、X線回折等の手法で調べることが考えられる。しかしながら、表面の半導体層における格子欠陥等の有無は、結晶構造上の微差に過ぎず、その分析は技術的に困難であると考えられる。したがって、表面の半導体層における結晶構造の詳細な態様を具体的に明らかにすることは、現時点では、技術的に不可能であるか、およそ実際的であるとはいえない。
具体的には、半導体発光素子としてピーク波長が400nm以上490nm以下程度の青紫色光又は青色光を発するものを用い、半導体ナノ粒子として青色光を吸収して黄色光を発光するものを用いれば、白色光を発光する発光デバイスを得ることができる。あるいは、半導体ナノ粒子として、青色光を吸収して緑色光を発光するものと、青色光を吸収して赤色光を発光するものの2種類を用いても、白色発光デバイスを得ることができる。
あるいは、ピーク波長が400nm以下の紫外線を発光する半導体発光素子を用い、紫外線を吸収して青色光、緑色光、赤色光をそれぞれ発光する、三種類の半導体ナノ粒子を用いる場合でも、白色発光デバイスを得ることができる。この場合、発光素子から発せられる紫外線が外部に漏れないように、発光素子からの光をすべて半導体ナノ粒子に吸収させて変換させることが望ましい。
あるいはまた、ピーク波長が490nm以上510nm以下程度の青緑色光を発するものを用い、半導体ナノ粒子として上記の青緑色光を吸収して赤色光を発するものを用いれば、白色光を発光するデバイスを得ることができる。
あるいはまた、半導体発光素子として可視光を発光するものを用い、例えば波長700nm以上780nm以下の赤色光を発光するものを用いる。半導体ナノ粒子として、可視光を吸収して近赤外線を発光するものを用いれば、近赤外線を発光する発光デバイスを得ることもできる。
半導体ナノ粒子は、他の半導体量子ドットと組み合わせて用いてよく、あるいは他の量子ドットではない蛍光体(例えば、有機蛍光体又は無機蛍光体)と組み合わせて用いてよい。他の半導体量子ドットは、例えば、背景技術の欄で説明した二元系の半導体量子ドットである。量子ドットではない蛍光体として、アルミニウムガーネット系等のガーネット系蛍光体を用いることができる。ガーネット系蛍光体としては、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体、セリウムで賦活されたルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体が挙げられる。他にユウロピウム及び/又はクロムで賦活された窒素含有アルミノ珪酸カルシウム系蛍光体、ユウロピウムで賦活されたシリケート系蛍光体、β-SiAlON系蛍光体、CASN系又はSCASN系等の窒化物系蛍光体、LnSi3N11系又はLnSiAlON系等の希土類窒化物系蛍光体、BaSi2O2N2:Eu系又はBa3Si6O12N2:Eu系等の酸窒化物系蛍光体、CaS系、SrGa2S4系、ZnS系等の硫化物系蛍光体、クロロシリケート系蛍光体、SrLiAl3N4:Eu蛍光体、SrMg3SiN4:Eu蛍光体、マンガンで賦活されたフッ化物錯体蛍光体としてのK2(Si,Al)F6:Mn蛍光体などを用いることができる。蛍光体の組成を表す式中、カンマ(,)で区切られて記載されている複数の元素は、これらの複数の元素のうち少なくとも1種の元素を組成中に含有することを意味する。また、蛍光体の組成を表す式中、コロン(:)の前は母体結晶を表し、コロン(:)の後は賦活元素を表す。
発光デバイスにおいて、半導体ナノ粒子を含む光変換部材は、例えばシート又は板状部材であってよく、あるいは三次元的な形状を有する部材であってよい。三次元的な形状を有する部材の例は、表面実装型の発光ダイオードにおいて、パッケージに形成された凹部の底面に半導体発光素子が配置されているときに、発光素子を封止するために凹部に樹脂が充填されて形成された封止部材である。
又は、光変換部材の別の例は、平面基板上に半導体発光素子が配置されている場合にあっては、前記半導体発光素子の上面及び側面を略均一な厚みで取り囲むように形成された樹脂部材である。あるいはまた、光変換部材のさらに別の例は、半導体発光素子の周囲にその上端が半導体発光素子と同一平面を構成するように反射材を含む樹脂部材が充填されている場合にあっては、前記半導体発光素子及び前記反射材を含む樹脂部材の上部に、所定の厚みで平板状に形成された樹脂部材である。
光変換部材は半導体発光素子に接してよく、あるいは半導体発光素子から離れて設けられていてよい。具体的には、光変換部材は、半導体発光素子から離れて配置される、ペレット状部材、シート状部材、板状部材又は棒状部材であってよく、あるいは半導体発光素子に接して設けられる部材、例えば、封止部材、コーティング部材(モールド部材とは別に設けられる発光素子を覆う部材)又はモールド部材(例えば、レンズ形状を有する部材を含む)であってよい。
また、発光デバイスにおいて、異なる波長の発光を示す2種類以上の半導体ナノ粒子を用いる場合には、1つの光変換部材内で前記2種類以上の半導体ナノ粒子が混合されていてもよいし、あるいは1種類の半導体ナノ粒子のみを含む光変換部材を2つ以上組み合わせて用いてもよい。この場合、2種類以上の光変換部材は積層構造を成してもよいし、平面上にドット状ないしストライプ状のパターンとして配置されていてもよい。
半導体発光素子としてはLEDチップが挙げられる。LEDチップは、GaN、GaAs、InGaN、AlInGaP、GaP、SiC、及びZnO等から成る群より選択される1種又は2種以上から成る半導体層を備えたものであってよい。青紫色光、青色光、又は紫外線を発光する半導体発光素子は、例えば、組成がInXAlYGa1-X-YN(0≦X、0≦Y、X+Y<1)で表わされるGaN系化合物を半導体層として備えたものである。
本実施形態の発光デバイスは、光源として液晶表示装置に組み込まれることが好ましい。半導体ナノ粒子によるバンド端発光は発光寿命の短いものであるため、これを用いた発光デバイスは、比較的速い応答速度が要求される液晶表示装置の光源に適している。また、本実施形態の半導体ナノ粒子は、バンド端発光として半値幅の小さい発光ピークを示し得る。したがって、発光デバイスにおいて:青色半導体発光素子によりピーク波長が420nm以上490nm以下の範囲内にある青色光を得るようにし、半導体ナノ粒子により、ピーク波長が510nm以上550nm以下、好ましくは530nm以上540nm以下の範囲内にある緑色光、及びピーク波長が600nm以上680nm以下、好ましくは630nm以上650nm以下の範囲内にある赤色光を得るようにする;又は発光デバイスにおいて、半導体発光素子によりピーク波長400nm以下の紫外光を得るようにし、半導体ナノ粒子によりピーク波長が430nm以上470nm以下、好ましくは440nm以上460nm以下の範囲内にある青色光、ピーク波長が510nm以上550nm以下、好ましくは530nm以上540nm以下の範囲内にある緑色光、及びピーク波長が600nm以上680nm以下、好ましくは630nm以上650nm以下の範囲内にある赤色光を得るようにすることによって、濃いカラーフィルターを用いることなく、色再現性の良い液晶表示装置が得られる。発光デバイスは、例えば、直下型のバックライトとして、又はエッジ型のバックライトとして用いられる。
あるいは、半導体ナノ粒子を含む、樹脂もしくはガラス等からなるシート、板状部材、又はロッドが、発光デバイスとは独立した光変換部材として液晶表示装置に組み込まれていてよい。
エレクトロルミネッセンス素子
エレクトロルミネッセンス素子は、陰極と、上記において説明した製造方法で得られる半導体ナノ粒子を含む発光層と、陽極とを備え、前記発光層が前記陰極と前記陽極の間に配置されてなる。エレクトロルミネッセンス素子の構成の詳細については、例えば、特開2022-018524号公報、特開2020-161476号公報等の記載を参照することができる。
エレクトロルミネッセンス素子は、例えば基板と、陰極と、電子注入層と、発光層と、正孔輸送層と、正孔注入層と、陽極とがこの順に積層した構成を有していてよい。発光層は半導体ナノ粒子に加えて、電子輸送材料を含んでいてよい。エレクトロルミネッセンス素子においては、電子注入層と発光層の間に電子輸送層を更に有していてもよい。
基板は、透光性材料であっても非透光性材料であってもよい。透光性材料としては、例えばガラス、石英、樹脂フィルム等を例示することができる。ここで、樹脂フィルムの材質としては、例えばポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレート等が挙げられる。基板の平均厚みは、例えば0.001mm以上30mm以下とすることができる。
陰極は、基板側より光を取り出すボトムエミッション型素子の場合は、透明で導電性の高い材料からなることが好ましい。この場合、陰極としては、例えばインジウム-スズ-酸化物(ITO)、インジウム-亜鉛-酸化物(IZO)等の導電性透明酸化物を用いることができる。陰極の平均厚みは、例えば10nm以上500nm以下とすることができる。
電子注入層の材料としては、例えば酸化亜鉛(ZnO)、フッ化リチウム(LiF)、酸化リチウム(Li2O)、酸化チタン(TiO2)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化スズ(SnO2)、酸化タングステン(WO3)、酸化タンタル(Ta2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)等が挙げられる。電子注入層の形成には、例えば平均粒径が1nm以上100nm以下のナノ粒子を用いることができる。電子注入層の平均厚みは、例えば5nm以上200nm以下とすることができる。
電子輸送層を構成する材料として、例えば、トリアジン誘導体、ピリジン誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体等の含窒素複素環式化合物が挙げられる。
発光層を構成する電子輸送材料としては、例えばホスフィンオキシド基を含む化合物を用いることができる。スフィンオキシド基を含む化合物として、具体的には、2,4,6-トリス[3-(ジフェニルホスフィニル)フェニル]-1,3,5-トリアジン(PO-T2T)、[4’-(9H-カルバゾール-9-イル)-2,2’-ジメチル-(1,1’-ビフェニル)-4-イル]ジフェニルホスフィンオキシド、{5-[9’H-(9,3’:6’,9”-テルカルバゾール)-9’-イル]ピリジン-3-イル}ジフェニルホスフィンオキシド、2-(ジフェニルホスフィニル)-スピロ[9H-フロオレン-9,9’-キノ[3.2.1-kl]フェノキサジン]、2,7-ビス(ジフェニルホスホリル)-9-フェニル-9H-カルバゾール、ビス[4-(N-カルバゾリル)フェニル]フェニルホスフィンオキシド、2,7-ビス(ジフェニルホスホリル)-9,9’-スピロビフルオレン、3-(ジフェニルホスホリル)-9-[4-(ジフェニルホスホリル)フェニル]-9H-カルバゾール、2,7-ビス(ジフェニルホスホリル)-9-(4-ジフェニルアミノ)フェニル-9’-フェニル-フルオレン、9-[3,5-ビス(ジフェニルホスホリル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-3-(ジフェニルホスホリル)-9H-カルバゾール、9-[8-(ジフェニルホスホリル)ジベンゾ[b,d]フラン-2-イル]-9H-カルバゾール、3,3’,3”-ホスフィニリジントリス(9-フェニル-9H-カルバゾール)、2,4,6-トリス[3-(ジフェニルホスフィニル)フェニル]ピリジン、3,5-ビス[3-(ジフェニルホスフィニル)フェニル]ピリジン、2,5-ビス[3-(ジフェニルホスフィニル)フェニル]-1,3,4-オキサジアゾール、3,5-ビス[3-(ジフェニルホスフィニル)フェニル]-1,2,4-トリアゾール、4,7-ビス[3-(ジフェニルホスフィニル)フェニル]-1,10-フェナントロリン等が挙げられる。発光層の平均厚みは、例えば5nm以上200nm以下とすることができる。
正孔輸送層を構成する材料としては、例えば、4,4’,4”-トリス(カルバゾール-9-イル)トリフェニルアミン(TCTA)、2,2’-ビス(N-カルバゾール)-9,9’-スピロビフルオレン(CFL)、4,4’-ビス(カルバゾール-9-イル)ビフェニル(CBP)、4,4’,4”-トリメチルトリフェニルアミン、N,N,N’,N’-テトラフェニル-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(TPD1)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(4-メトキシフェニル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(TPD2)、N,N,N’,N’-テトラキス(4-メトキシフェニル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(TPD3)、N,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニル-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(α-NPD)、4,4’,4”-トリス(N-3-メチルフェニル-N-フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m-MTDATA)等が挙げられる。正孔輸送層の平均厚みは、例えば10nm以上500nm以下とすることができる。
正孔注入層を構成する材料としては、例えば酸化モリブデン(MoO3)、酸化バナジウム(V2O5)、酸化ルテニウム(RuO2)、酸化レニウム、酸化タングステン、酸化マンガン等の無機材料が挙げられる。また、PEDOT:PSS等の高分子有機材料であってもよい。なお、PEDOTは、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)を示し、PSSは、ポリ(スチレンスルホン酸)を示す。正孔輸送層の平均厚みは、例えば1nm以上500nm以下とすることができる。
陽極としては、基板側から光を取り出すボトムエミッション型素子の場合は、金属の薄膜を用いることができる。陽極に用いる金属材料としては、例えばAl、Au、Pt、Ni、W、Cr、Mo、Fe、Co、Cu等が挙げられる。また、陽極側から光を取り出す場合には、導電性透明酸化物を用いることができる。陽極の平均厚みは、例えば10nm以上500nm以下とすることができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
第1工程から第3工程
0.15mmolの酢酸インジウム(In(OAc)3)、0.40mmolのトリスジエチルジチオカルバミン酸ガリウム(Ga(DDTC)3)をオレイルアミン10mL中、脱気操作の後、アルゴン雰囲気下において80℃で加熱することにより、完全溶解させて第1混合物を得た。これとは別に、0.20mmolの酢酸銀(Ag(OAc))をオレイルアミン1mLに穏やかに加温しながら溶かしてAg溶液を調製し、ガスタイトタイプのシリンジに充填した。続いて第1混合物を加熱する加熱装置の温度コントローラーを150℃に設定し、130℃の第1温度に到達した際、酢酸銀のオレイルアミン溶液(Ag溶液)を一気に注入した。注入操作によって5℃ほど温度が低下するが、すぐに回復したのでそのまま温度上昇させ、150℃の第2温度に到達後、その温度を20分間維持して熱処理した。その後、放冷して第1半導体ナノ粒子の分散液を得た。その後、アセトン、メタノールを貧溶媒、クロロホルムを良溶媒とした沈殿、再分散操作により粒子成分のみを単離し、ヘキサン1mLに分散して第1半導体ナノ粒子の分散液を得た。
第4工程及び第5工程
0.15mmolのガリウムアセチルアセトナート(Ga(acac)3)と、0.15 mmolの1,3-ジメチルチオ尿素と、0.05mmolのトリスジエチルジチオカルバミン酸ガリウム(Ga(DDTC)3)をオレイルアミン10mLに加えた。続いて上記で得られた第1半導体ナノ粒子の分散液の1/5量を加えて第3混合物を得た。脱気操作の後、アルゴン雰囲気下において230℃まで急速に昇温し、その後280℃の第3温度まで2℃/minの速度で昇温した後、第3温度を1分間維持した。その後、100℃以下まで放冷し、ハロゲン化合物として50μLの35重量%HCl水溶液を加え、260℃の第4温度にて30分間加熱を行った。得られた溶液は緑色の発光を示していた。上記と同様にして精製した後の粒子成分をクロロホルム4mLに分散して実施例1の半導体ナノ粒子(第3半導体ナノ粒子)の分散液を得た。
以下に示す実施例2から12では、第1工程から第3工程の合成条件を下表に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてそれぞれの第1半導体ナノ粒子の分散液を得た。さらに第4工程及び第5工程については、以下のように条件を変更してそれぞれの半導体ナノ粒子を得た。なお、第4工程と第5工程の変更点の概略を下表の備考欄に併せて示す。
実施例2
実施例1と同様にして得られた第1半導体ナノ粒子をクロロホルム1mLに分散し、第1半導体ナノ粒子の分散液としたこと、第4工程は実施例1と同様に実施し、第5工程の第4温度を280℃、熱処理時間を30分としたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の半導体ナノ粒子を得た。
実施例3
第5工程で添加するハロゲン化合物として、0.41mmolの塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例3の半導体ナノ粒子を得た。
実施例4
第4工程において280℃に到達の後、降温せずにハロゲン化合物として0.35mmolの塩化ガリウムを含むオレイルアミン溶液1.75mLを添加し、280℃の第4温度にて30分間の熱処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にして実施例4の半導体ナノ粒子を得た。
実施例5
第4工程において280℃に到達の後、降温せずにハロゲン化合物として0.30mmolの塩化ガリウムを含むオレイルアミン溶液1.5mLを添加し、280℃の第4温度にて30分間の熱処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にして実施例5の半導体ナノ粒子を得た。
実施例6
第5工程で添加するハロゲン化合物として0.30mmolの塩化ガリウムを含むオレイルアミン溶液1.5mLを添加し、280℃にて30分間の熱処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にして実施例6の半導体ナノ粒子を得た。
実施例7
第4工程において280℃に到達の後、降温せずにハロゲン化合物として0.30mmolの塩化ガリウムを含むオレイルアミン溶液1.5mLを添加し、280℃の第4温度にて30分間の熱処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にして実施例7の半導体ナノ粒子を得た。
実施例7において、第2工程で注入したAg溶液に含まれる銀の総モル数に対する単離された第1半導体ナノ粒子に含まれる銀の総モル数の比率(Ag基準生成収率)は、58%であった。
実施例8
第4工程において、第3混合物の脱気操作の後、アルゴン雰囲気下で50μLのクロロホルムを添加したこと、第4工程の終了後は室温まで放冷し、第5工程については実施しなかったこと以外は、実施例1と同様にして実施例8の半導体ナノ粒子を得た。
実施例9
第5工程で添加するハロゲン化合物として0.09mmolの塩化ガリウムを含むオレイルアミン溶液1mLを添加し、280℃にて30分間の熱処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にして実施例9の半導体ナノ粒子を得た。
実施例10
第4工程において280℃に到達の後、降温せずにハロゲン化合物として0.35mmolの塩化ガリウムを含むオレイルアミン溶液1.75mLを添加し、280℃の第4温度にて30分間の熱処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にして実施例10の半導体ナノ粒子を得た。
実施例11及び12
第1から第3工程の条件を下表のように変更したこと、第4工程において230℃に到達の際、ハロゲン化合物として0.35mmolの塩化ガリウムを含むオレイルアミン溶液1.75mLを添加した後、280℃の第3温度まで2℃/minの速度で昇温し、降温せずに280℃の第4温度にて30分間の熱処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にして実施例11及び12の半導体ナノ粒子をそれぞれ得た。
実施例12において、第2工程で注入したAg溶液に含まれる銀の総モル数に対する単離された第1半導体ナノ粒子に含まれる銀の総モル数の比率(Ag基準生成収率)は、60%であった 。
比較例1
反応容器中にて、酢酸銀(AgOAc)0.2mmolと、酢酸インジウム(In(OAc)3)0.1mmolと、ジエチルジチオカルバミン酸ガリウム(Ga(DDTC)3)0.4mmolとを、蒸留精製したオレイルアミン(OLA)10mLと混合して第1混合物を得た。第1混合物を80℃まで加熱し、真空脱気を行った後アルゴン雰囲気に置換した。続いて150℃まで加熱し、液温を150℃のまま30分間保持した。続いて室温まで放冷し、遠心分離によって粗大粒子を除去した後、上澄みにメタノールを加えてコアとなる半導体ナノ粒子を沈殿させ、遠心分離によって回収した。回収した固体をオレイルアミン2mLに分散させて比較例1の半導体ナノ粒子の分散液を得た。
ガリウムアセチルアセトナート(Ga(acac)3)0.1mmol、1,3-ジメチルチオ尿素0.1mmolを量り取り、蒸留精製したオレイルアミン8mLに加え、次いで上記で合成した半導体ナノ粒子のオレイルアミン分散液を、ナノ粒子濃度で30nmol相当分加えて第3混合物を得た。得られた第3混合物を60℃程度で脱気してアルゴン雰囲気に置換した後、230℃に達するまで急速昇温し(昇温速度約60℃/分)、230℃以降は2℃/分の速度でさらに280℃まで昇温し、280℃にて30分間熱処理した。続いて室温まで放冷し、メタノールを加えてコアシェル型半導体粒子を沈殿させ、洗浄を行った後、得られた半導体ナノ粒子をクロロホルムに分散させて、比較例1の第2半導体が付着した半導体ナノ粒子の分散液を得た。
比較例1においては、第2半導体を付着する前の半導体ナノ粒子の分散液を得るに際して、遠心分離による粗大粒子の除去が必要であった。一方、実施例に係る製造方法においては、第1半導体ナノ粒子の分散液を得るに際して、遠心分離による粗大粒子の除去が不要であった。
参考例1
第2温度を180℃に変更したこと以外は実施例1と同様にして、第1半導体ナノ粒子の分散液を得た。
発光スペクトルの測定
上記で得られた第1半導体ナノ粒子の発光スペクトルを測定し、発光ピーク波長、半値幅、発光量子収率を算出した。なお、発光スペクトルは、日本分光FP-8600分光蛍光光度計を、発光量子収率は浜松ホドニクスPMA-12量子効率測定システムを用いて、室温(25℃)で、励起光波長450nmで行い、460nmから1010nmの波長範囲で測定し、発光量子収率は480nmから950nmの波長範囲より計算した。
実施例1の第1半導体ナノ粒子は、発光ピーク波長が615nm、半値幅が127nm、発光量子収率が30%であった。実施例1の第1半導体ナノ粒子の発光スペクトル及び吸収スペクトルを図1に示す。
上記で得られた実施例1の半導体ナノ粒子の発光スペクトルを測定し、バンド端発光ピーク波長、半値幅、発光量子収率を上記と同様にして算出した。さらに半導体ナノ粒子分散液にトリオクチルホスフィンを0.5mL添加して処理した後に発光スペクトルを測定して発光量子収率を算出した。また、バンド端発光純度を以下のようにして算出した。発光スペクトルにおいて、バンド端発光部のみをガウス関数にフィッティングし、その面積をAとして算出した。続いて発光スペクトル全体を数値積分し、その面積をBとして算出した。フィッティングしたガウス関数の面積を発光スペクトル全体の面積で除したA/Bの百分率をバンド端発光純度(%)とした。
実施例1の半導体ナノ粒子は、発光ピーク波長が532nm、半値幅が37nm、発光量子収率が52%、バンド端発光純度は75.6%であった。また、トリオクチルホスフィン処理後は、発光ピーク波長が532nm、半値幅が37nm、発光量子収率が72%、バンド端発光純度は73.3%であった。また、トリオクチルホスフィン処理前の実施例1の半導体ナノ粒子について、発光スペクトル及び吸収スペクトルを図2に示す。
実施例2から12、及び比較例1で得られた半導体ナノ粒子について、バンド端発光ピーク波長(nm)、バンド端発光半値幅(nm)、バンド端発光純度(%)、発光量子収率(%)及びホスフィン処理後の発光量子収率(%)を上記と同様にして算出した。結果を表2に示す。なお、ホスフィン処理には、実施例1の半導体ナノ粒子ではトリオクチルホスフィンを用い、実施例4、10から12の半導体ナノ粒子ではトリブチルホスフィンを用いた。
組成分析
実施例1で得られた第1半導体ナノ粒子及び第2半導体ナノ粒子について、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置(島津製作所、ICPS-7510)を用いて組成を分析した。結果を表3に示す。表3では、銀(Ag)を基準(1.00)として、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及び硫黄(S)の各組成比を示す。
第1半導体ナノ粒子では第13族元素と16族元素が過剰量で含まれている。これはIn、GaのDDTC錯体が表面に吸着しているためと考えられる(例えば、Hoisang, W.; Uematsu, T.; Torimoto, T.; Kuwabata, S. Inorg. Chem., 2021, 60, 13101参照)。一方で、第2半導体ナノ粒子では、おおむね理論的に矛盾しない値に収まっている。例えば、この場合だと、Ag(In0.68Ga0.32)S2の第1半導体に、Ga0.67S0.99の第2半導体が付着した組成を有していると考えることができる。
透過型電子顕微鏡(TEM)観察
上記で得られた半導体ナノ粒子の形状を、透過型電子顕微鏡(TEM、(株)日立ハイテクノロジーズ製、商品名H-7650)を用いて観察するとともに、その平均粒径を8万倍から15万倍のTEM像から測定した。ここでは、TEMグリッドとして、商品名ハイレゾカーボンHRC-C10 STEM Cu100Pグリッド(応研商事(株)を用いた。得られた粒子の形状は、球状もしくは多角形状と考えられる。平均粒径は、3か所以上のTEM像を選択し、これらに含まれているナノ粒子のうち、計測可能なものをすべて、すなわち、画像の端において粒子の像が切れているようなものを除くすべての粒子について、粒径を測定し、その算術平均を求める方法で求めた。実施例及び後述する比較例の両方において、3以上のTEM像を用いて、合計100点以上のナノ粒子の粒径を測定した。
実施例1の第1半導体ナノ粒子の平均粒径は3.6nmであり、標準偏差は0.4nmであった。実施例1の半導体ナノ粒子の平均粒径は6.3nmであり、標準偏差は1.0nmであった。一方、比較例1の第1半導体ナノ粒子の平均粒径は4.4nmであり、標準偏差は0.8nmであった。また、実施例1の第1半導体ナノ粒子のTEM画像を図3に、実施例1の第2半導体ナノ粒子のTEM画像を図4に示す。
実施例1の半導体ナノ粒子について、高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM;JEM-2100;日本電子製)を用いて観察を行った。HRTEM画像を図5に示す。図5に示すように、格子縞が観察された粒子の周辺に格子縞が観察されない物質が存在していることから、結晶性の第1半導体ナノ粒子をアモルファス状の第2半導体が被覆していると考えられる。
X線回折パターン
実施例1及び参考例1で得られた第1半導体ナノ粒子について、X線回折装置(SmartLab;リガク製)を用いて、X線回折(XRD)パターンを測定した。結果を図6に示す。
熱処理温度が150℃である実施例1の第1半導体ナノ粒子では、XRDパターンがブロードニングしていることから、十分に結晶化が進んでいないか、結晶子サイズが1nm程度以下であると予想される。一方、熱処理温度が180℃である参考例1の第1半導体ナノ粒子では、正方晶AgInS2と正方晶AgGaS2の合金と思われる位置に、ナノ粒子に特有の半値幅を有するピークが観察された。
実施例13
第1工程から第3工程
0.20mmolの塩化インジウム(InCl3)、0.30mmolのトリスジエチルジチオカルバミン酸インジウム(In(DDTC)3)、0.10mmolのトリスジエチルジチオカルバミン酸ガリウム(Ga(DDTC)3)をオレイルアミン10mL中、脱気操作の後、アルゴン雰囲気下において80℃で加熱することにより、完全溶解させて第1混合物得た。これとは別に、0.225mmolの酢酸銀(Ag(OAc))と0.025mmolの酢酸銅(II)(Cu(OAc)2)をオレイルアミン1mLに穏やかに加温しながら溶かしてAg溶液を調製し、ガスタイトタイプのシリンジに充填した。続いて第1混合物を加熱する加熱装置の温度コントローラーを200℃に設定し、120℃の第1温度に到達した際、Ag溶液を一気に注入した。注入操作によって5℃ほど温度が低下するが、すぐに回復したのでそのまま温度上昇させ、200℃の第2温度に到達後、その温度を20分間維持して熱処理した。その後、放冷して第1半導体ナノ粒子の分散液を得た。その後、アセトン、メタノールを貧溶媒、クロロホルムを良溶媒とした沈殿、再分散操作により粒子成分のみを単離し、ヘキサン1mLに分散して第1半導体ナノ粒子の分散液を得た。
第4工程及び第5工程
0.10mmolのトリスジエチルジチオカルバミン酸ガリウム(Ga(DDTC)3)と0.20mmolの塩化ガリウムをオレイルアミン10mLに加えた。その溶液を100℃で真空引きして脱水・脱気を行った後、アルゴン雰囲気下において温度コントローラーを230℃に設定した。160℃に到達した際、前期第1半導体ナノ粒子分散液のうち200μLをガス体とシリンジによって注入した。溶液が230℃に到達した後、280℃の第3温度まで2℃/minの速度で昇温した。その後、第5工程として塩化ガリウム0.20mmolを含むオレイルアミン溶液をガスタイトシリンジによって注入した。第4温度を30分間維持した後、室温付近まで放冷した。メタノールを貧溶媒として粒子成分のみを単離し、クロロホルム1mLに分散して実施例13の半導体ナノ粒子(第3半導体ナノ粒子)の分散液を得た。
実施例14および実施例15
実施例14および15では、第1工程から第3工程の合成条件を表4に示すように変更したこと以外は、実施例13と同様にしてそれぞれの第1半導体ナノ粒子の分散液を得た。なお、Ag(DDTC)およびCu(DDTC)の各結晶はオレイルアミンには溶解したが、フタル酸ジオクチルには溶解しなかったため、溶媒とともに乳鉢で粉砕し、懸濁液として注入を行った。
実施例16
第1混合物のIn(DDTC)3の量を0.1mmolに変更し、さらにAg(DDTC)およびCu(DDTC)の分散溶媒をオクタデセンに変更した。オクタデセンに溶解しなかったため、乳鉢で粉砕して懸濁液として注入した。第4工程に使用する試薬を変更し、0.10mmolのGa(DDTC)3と0.10mmolの単体硫黄をオレイルアミン10mLと混合し、実施例13と同様の手順で加熱を行った。溶液の温度が230℃に到達した際に0.1mmolの塩化ガリウムを含むオレイルアミン溶液を注入し、280℃の第3温度に到達後、第5工程として塩化ガリウム0.40mmolを含むオレイルアミン溶液をガスタイトシリンジによって注入した(後処理として注入した塩化ガリウムの全量は0.50mmol)。第3温度を30分間維持した後、室温まで放冷して粒子成分を単離し、クロロホルム1mLに分散して実施例16の半導体ナノ粒子(第3半導体ナノ粒子)の分散液を得た。
実施例17
第1工程から第3工程は実施例16と同様に行った。第4工程に使用する試薬の濃度を変更し、0.20mmolのGa(DDTC)3と0.20mmolの単体硫黄をオレイルアミン10mLと混合し、実施例16と同様の手順で加熱を開始した。溶液の温度が160℃に達した際、第1半導体ナノ粒子分散液のうち400μLをシリンジによって注入した。溶液の温度が230℃に到達した際、塩化ガリウムを0.2mmol/mLの濃度で含むオレイルアミン溶液をシリンジポンプで滴下開始した。280℃の第3温度まで2℃/minの速度で昇温し、その温度を30分間維持した後、室温付近まで放冷した。粒子成分を単離し、クロロホルム1mLに分散して実施例17の半導体ナノ粒子(第3半導体ナノ粒子)の分散液を得た。
実施例18
第1工程を実施例16と同様に実施し、第2工程にて添加するAg(DDTC)、Cu(DDTC)とオクタデセンを遊星ボールミルで粉砕して分散液を得た。第3工程にて200℃の第2温度に到達後、同温度を60分間維持した。室温まで放冷した後は、実施例16と同様の手順でナノ粒子成分を単離し、第1半導体ナノ粒子分散液を得た。第4工程は実施例16と同様の手順で行い、230℃到達時に塩化ガリウム0.50mmolを含むオレイルアミン溶液を、280℃の第3温度に達した後、第5工程として塩化ガリウム0.50mmolを含むオレイルアミン溶液をガスタイトシリンジによって注入し、280℃の第4温度を60分間維持した(後処理として注入した塩化ガリウムの全量は0.60mmol)。室温まで放冷して粒子成分を単離し、クロロホルム1mLに分散して実施例18の半導体ナノ粒子(第3半導体ナノ粒子)の分散液を得た。
実施例19
第1工程は実施例16と同様に実施し、第2工程にてAg(DDTC)およびCu(DDTC)のオクタデセン分散液(ボールミルは使用せず調製)を第1混合物に注入する温度(第1温度)を160℃に変更した。第3工程は実施例16と同じ手順で実施した。なお、第4工程以降は実施例18と同様の手順で実施し(後処理として注入した塩化ガリウムの全量は0.60mmol)、実施例19の半導体ナノ粒子(第3半導体ナノ粒子)の分散液を得た。
実施例20及び21
実施例19をもとに、第2工程にて添加するAg(DDTC)およびCu(DDTC)のオクタデセン分散液のAg(DDTC)とCu(DDTC)の物質量を表4に示すように変更して、実施例20及び21の半導体ナノ粒子の分散液を得た。
実施例22
実施例19をもとに、第1混合物の物質量を表4のように変更して実施した。第2工程以降は実施例19と同じ手順で実施して、実施例22の半導体ナノ粒子の分散液を得た。
上記で得られた半導体ナノ粒子について、発光特性を評価した。結果を表5に示す。また、実施例17で得られた第1半導体ナノ粒子(コア)及び第3半導体ナノ粒子(コア/シェル)の発光スペクトルを図7に示す。
参考例2
実施例4と同様の条件で第1半導体ナノ粒子を調製した。すなわち、第1混合物の温度が第1温度である130℃に到達後、Ag溶液を注入し、第2温度である200℃まで温度を上昇させた後、そのまま20分間維持して熱処理を行って第1半導体ナノ粒子を調製した。Ag容液注入後、130℃、160℃、200℃到達直後、200℃で5分間維持後、及び200℃で20分間維持後の各時点においてサンプリングした。得られたサンプルについて、TEM画像、吸光スペクトル、発光スペクトル、ICPによる組成分析、XRDを評価した。
第1温度にてAg溶液を注入した直後、反応液は黒褐色へと変化した。TEM像からはこの時点で既にナノ粒子の存在が確認された。吸収スペクトルは700nmを吸収端とする左肩上がりであり、Ag2Sナノ粒子の特徴と一致した。しかし、組成分析により、その時点でナノ粒子成分にIn及びGaが含まれており、純粋なAg2Sナノ粒子でもないことがわかった。そこでXRDを確認したところと、InGaSの特徴と一致する回折パターンが得られた。このことから、Ag2SとInGaSが同時に存在することが明らかになった。その後、第2温度に達するまでの間にAg-In-Ga-Sへの転換が起こることから、Ag2SとInGaSは別々の粒子として存在しているのではなく、コア/シェル構造またはそれに類似する形態で共存していると推測される。
実施例23
第1工程から第3工程
0.3mmolの塩化インジウム(InCl3)、0.40mmolのトリスジエチルジチオカルバミン酸ガリウム(Ga(DDTC)3)をオレイルアミン10mL中、脱気操作の後、アルゴン雰囲気下において80℃で加熱することにより、完全溶解させて第1混合物得た。これとは別に、0.25mmolの酢酸銀(Ag(OAc))をオレイルアミン1mLに穏やかに加温しながら溶かし、ガスタイトタイプのシリンジに充填した。続いて第1混合物を加熱する加熱装置の温度コントローラーを130℃に設定し、130℃の第1温度に到達した際、酢酸銀のオレイルアミン溶液を一気に注入した。第1温度を10分間維持した後、温度コントローラーを200℃にセットした。200℃の第2温度に到達後、その温度を20分間維持して熱処理した。その後、放冷して第1半導体ナノ粒子の分散液を得た。その後、アセトン、メタノールを貧溶媒、クロロホルムを良溶媒とした沈殿、再分散操作により粒子成分のみを単離し、ヘキサン1mLに分散して第1半導体ナノ粒子の分散液を得た。
第4工程及び第5工程
0.10mmolのトリスジエチルジチオカルバミン酸ガリウム(Ga(DDTC)3)、0.1mmolの単体硫黄(S)をオレイルアミン10mLに加えた。脱気操作の後、アルゴン雰囲気下で温度コントローラーを230℃に設定し、溶液の温度が170℃に達した際、得られた第1半導体ナノ粒子の分散液の1/5量を加えた。230℃到達後、280℃の第3温度まで2℃/minの速度で昇温した後、ハロゲン化合物として0.60mmolの塩化ガリウムを含むオレイルアミン溶液1.5mLを添加し、280℃の第4温度にて30分間の熱処理を行った。放冷後に得られた溶液は緑色の発光を示していた。上記と同様にして精製した後の粒子成分をクロロホルム1mLに分散して実施例23の半導体ナノ粒子(第3半導体ナノ粒子)の分散液を得た。
実施例23における第1半導体ナノ粒子のAg基準生成収率は、75%であった。
実施例24
第1工程から第3工程に関しては、第2工程にて実施例23の酢酸銀のオレイルアミン溶液を注入する第1温度を100℃に変更した以外は、実施例23と同様に実施した。第1温度の保持時間は10分とした。第4工程及び第5工程については第3混合物の組成を表6のように変更したこと以外は、実施例23と同様に実施して、実施例24の半導体ナノ粒子(第3半導体ナノ粒子)の分散液を得た。
実施例24における第1半導体ナノ粒子のAg基準生成収率は、77%であった。
実施例25
第1工程から第3工程
0.05mmolの塩化インジウム(InCl3)、0.40mmolのトリスジエチルジチオカルバミン酸ガリウム(Ga(DDTC)3)、0.10mmolの塩化ガリウム(GaCl3)をオレイルアミン10mL中、脱気操作の後、アルゴン雰囲気下において80℃で加熱することにより、完全溶解させて第1混合物得た。これとは別に、0.10mmolの酢酸銀(Ag(OAc))をオレイルアミン1mLに穏やかに加温しながら溶かし、ガスタイトタイプのシリンジに充填した。続いて第1混合物を加熱する加熱装置の温度コントローラーを210℃に設定し、130℃の第1温度に到達した際、酢酸銀のオレイルアミン溶液を一気に注入した。210℃の第2温度に到達後、その温度を20分間維持して熱処理した。その後、放冷して第1半導体ナノ粒子の分散液を得た。その後、アセトン、メタノールを貧溶媒、クロロホルムを良溶媒とした沈殿、再分散操作により粒子成分のみを単離し、ヘキサン1mLに分散して第1半導体ナノ粒子の分散液を得た。
第4工程及び第5工程
0.10mmolのトリスジエチルジチオカルバミン酸ガリウム(Ga(DDTC)3)、0.1mmolの単体硫黄(S)、0.05mmolの塩化アルミニウム(AlCl3)をオレイルアミン10mLに加えた。脱気操作の後、アルゴン雰囲気下で温度コントローラーを230℃に設定し、溶液の温度が170℃に達した際、得られた第1半導体ナノ粒子の分散液の1/5量を加えた。230℃到達後、280℃の第3温度まで2℃/minの速度で昇温した後、再び230℃まで降温し、0.10mmolの塩化アルミニウムを含むオレイルアミン溶液0.375mLを添加し、同温度で10分間加熱した。再び280℃まで昇温し、0.3mmolの塩化ガリウムを含むオレイルアミン溶液1.125mLを加え、同温度で30分間加熱した。放冷後に得られた溶液は青色の発光を示していた。上記と同様にして精製した後の粒子成分をクロロホルム1mLに分散して実施例25の半導体ナノ粒子(第3半導体ナノ粒子)の分散液を得た。
実施例26
第2工程を以下のように変更したこと以外は実施例25と同様に実施して、実施例25の半導体ナノ粒子(第3半導体ナノ粒子)の分散液を得た。
第2工程にて130℃にて酢酸銀0.20mmolを注入した後、150℃を10分間保持した。その後温度コントローラーを240℃にセットし、240℃の第2温度に到達後、その温度を30分間維持して熱処理した。その後、放冷して第1半導体ナノ粒子の分散液を得た。その後、アセトン、メタノールを貧溶媒、クロロホルムを良溶媒とした沈殿、再分散操作により粒子成分のみを単離し、ヘキサン1mLに分散して第1半導体ナノ粒子の分散液を得た。
実施例23から26で得られた半導体ナノ粒子について、発光特性を評価した。結果を表7に示す。
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