I.定義
本明細書で使用される「約」という用語は、当業者であれば容易に理解するそれぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(かつ説明する)。
本明細書の目的のための「アクセプターヒトフレームワーク」は、以下に定義される、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来する、軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワークまたは重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含んでもよく、またはそれは、アミノ酸配列変化を含有し得る。いくつかの実施形態では、アミノ酸変化の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、または2以下である。いくつかの実施形態では、VLアクセプターヒトフレームワークの配列は、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と同一である。
「親和性」とは、分子(例えば、抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合相互作用の合計の強度を指す。別途示されない限り、本明細書で使用されるとき、「結合親和性」とは、結合対のメンバー(例えば、抗体及び抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(Kd)で表され得る。親和性は、本明細書に記載される方法を含む当該技術分野で既知の一般的な方法によって測定され得る。結合親和性を測定するための具体的な例証的説明及び例示的な実施形態が、以下に記載される。
「親和性成熟」抗体は、変化を有しない親抗体と比較して、1つ以上の超可変領域(HVR)において1つ以上の変化を有し、かかる変化によって抗原に対する抗体の親和性を改善する、抗体を指す。
「抗CD3抗体」及び「CD3に結合する抗体」という用語は、抗体がCD3の標的化において診断剤及び/または治療剤として有用であるように、十分な親和性でCD3と結合することができる抗体を指す。一実施形態では、無関係の非CD3タンパク質への抗CD3抗体の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定した場合に、この抗体のCD3への結合の約10%未満である。ある特定の実施形態では、CD3に結合する抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下、または0.001nM以下(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。ある特定の実施形態では、抗CD3抗体は、異なる種に由来するCD3間で保存されるCD3のエピトープに結合する。
「抗体」という用語は、本明細書で最も広義に使用され、それらが所望の抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を含むが、これらに限定されない、種々の抗体構造を包含する。
「抗体断片」は、無傷抗体が結合する抗原と結合する、無傷抗体の一部を含む無傷抗体以外の分子を指す。抗体断片の例には、Fv、Fab、Fab′、Fab′-SH、F(ab′)2;ダイアボディ;線状抗体;単鎖抗体分子(例えばscFv);及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が含まれるが、これらに限定されない。
「結合ドメイン」とは、標的エピトープ、抗原、リガンド、または受容体に特異的に結合する化合物または分子の一部を意味する。結合ドメインは、抗体(例えば、モノクローナル、ポリクローナル、組み換え、ヒト化、及びキメラ抗体)、抗体断片またはその部分(例えば、Fab断片、Fab’2、scFv抗体、SMIP、ドメイン抗体、ダイアボディ、ミニボディ、scFv-Fc、アフィボディ、ナノボディ、ならびに抗体のVH及び/またはVLドメイン)、受容体、リガンド、アプタマー、及び特定された結合パートナーを有する他の分子を含むが、これらに限定されない。
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化学化合物である。化学療法剤の例としては、チオテパ及びシクロスホスファミド(CYTOXAN(登録商標))などのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファンなどのアルキルスルホネート;ベンゾドパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドパ(meturedopa)、及びウレドパ(uredopa)などのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、及びトリメチロメラミンを含むエチレンイミン及びメチルアメラミン;アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータ-ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成類似体トポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレクチン(scopolectin)、及び9-アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン、及びビゼレシン合成類似体を含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(とりわけクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビシン(novembichin)、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどの窒素マスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムヌスチン(ranimnustine)などのニトロソ尿素;エンジイン抗生物質(例えば、カリケアミシン、特にカリケアミシンガンマ1I及びカリケアミシンオメガ1I(例えば、Nicolaou et al.,Angew.Chem Intl.Ed.Engl.,33:183-186(1994)を参照されたい)などの抗生物質;CDP323、経口アルファ-4インテグリン(oral alpha-4integrin)阻害剤;ダイネマイシン(dynemicin)Aを含むダイネマイシン;エスペラミシン;ならびにネオカルジノスタチン発色団及び関連色素タンパク質エンジイン(enediyne)抗生物質発色団)、アクラシノマイシン(aclacinomysin)、アクチノマイシン、オウトラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カミノマイシン(caminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標)、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、ドキソルビシンHClリポソーム注射剤(DOXIL(登録商標))、リポソームドキソルビシンTLC D-99(MYOCET(登録商標))、ペグ化リポソームドキソルビシン(CAELYX(登録商標))、及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン、例えば、マイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗薬、例えば、メトトレキサート、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、テガフール(UFTORAL(登録商標))、カペシタビン(XELODA(登録商標))、エポチロン、及び5-フルオロウラシル(5-FU);コンブレタスタチン;葉酸類似体、例えば、デノプテリン(denopterin)、メトトレキサート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキサート;プリン類似体、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン(dideoxyuridine)、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン;男性ホルモン剤、例えば、カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎剤、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充薬、例えば、フロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド(aldophosphamide glycoside);アミノレブリン酸(aminolevulinic acid);エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジコン(diaziquone);エルフォルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);メイタンシノイド(maytansinoid)、例えば、メイタンシン及びアンサミトシン(ansamitocin);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダモール(mopidamol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン(losoxantrone);2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products,Eugene,Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン(rhizoxin);シゾフラン(sizofuran);スピロゲルマニウム(spirogermanium);テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテシン(特に、T-2トキシン、ベラクリンA(verracurin A)、ロリジンA(roridin A)、及びアングイジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(arabinoside)(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)、パクリタキセルのアルブミン操作されたナノ粒子製剤(ABRAXANE(商標))、及びドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhome-Poulene Rorer,Antony,France);クロランブシル;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金製剤、例えば、シスプラチン、オキサリプラチン(例えば、ELOXATIN(登録商標))、及びカルボプラチン;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標))、ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標))、ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標))、及びビノレルビン(vinorelbine)(NAVELBINE(登録商標))を含む、ビンカ(これは、チューブリン重合が微小管形成することを阻止する);エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ロイコボリン;ノバントロン;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロン酸(ibandronate);トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);ベキサロテン(TARGRETIN(登録商標))を含む、レチノイン酸(retinoic acid)などのレチノイド;ビスホスホネート、例えば、クロドロン酸(clodronate)(例えば、BONEFOS(登録商標)またはOSTAC(登録商標))、エチドロン酸(etidronate)(DIDROCAL(登録商標))、NE-58095、ゾレドロン酸(zoledronic acid)/ゾレドロネート(zoledronate)(ZOMETA(登録商標))、アレンドロン酸(alendronate)(FOSAMAX(登録商標))、パミドロン酸(pamidronate)(AREDIA(登録商標))、チルドロン酸(tiludronate)(SKELID(登録商標))、またはリセドロン酸(risedronate)(ACTONEL(登録商標));トロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、異常な細胞増殖に関与するシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの、例えば、PKC-アルファ、Raf、H-Ras、及び上皮細胞成長因子受容体(EGF-R)(例えば、エルロチニブ(Tarceva(商標)));及び細胞増殖を低減するVEGF-A;THERATOPE(登録商標)ワクチンなどのワクチン、ならびに遺伝子療法ワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、及びVAXID(登録商標)ワクチン;トポイソメラーゼ1阻害剤(例えば、LURTOTECAN(登録商標));rmRH(例えば、ABARELIX(登録商標));BAY439006(ソラフェニブ(sorafenib);Bayer);SU-11248(スニチニブ(sunitinib)、SUTENT(登録商標)、Pfizer);ペリフォシン(perifosine)、COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブまたはエトリコキシブ)、プロテアソーム阻害剤(例えば、PS341);ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標));CCI-779;ティピファニブ(R11577);オラフェニブ(orafenib)、ABT510;Bcl-2阻害剤、例えば、オブリメルセンナトリウム(GENASENSE(登録商標));ピクサントロン;EGFR阻害剤;チロシンキナーゼ阻害剤;セリン-スレオニンキナーゼ阻害剤、例えば、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標));ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、例えば、ロナファーニブ(lonafarnib)(SCH 6636、SARASAR(商標));及び上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体;ならびに上記のうちの2つ以上の組み合わせ、例えば、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾロンの併用療法の略称であるCHOP;ならびに5-FU及びロイコボリンと組み合わせたオキサリプラチン(ELOXATIN(商標))を用いた治療レジメンの略称であるFOLFOX、及び上記のうちのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体、ならびに上記のうちの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
本明細書で定義される化学治療剤は、癌の成長を促進し得るホルモンの作用を調節、低減、遮断、または阻害するように作用する「抗ホルモン剤」または「内分泌治療薬」を含む。それらは、それ自体がホルモンであってもよく、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストーン、及びFARESTON.cndot.トレミフェンを含む抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM);副腎におけるエストロゲン産生を調節する、酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)酢酸メゲストロール、AROMASIN(登録商標)エキセメスタン、ホルメスタニー(formestanie)、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)ボロゾール、FEMARA(登録商標)レトロゾール、及びARIMIDEX(登録商標)アナストロゾールなど;ならびに抗アンドロゲン、例えば、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリン;ならびにトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、具体的には、異常な細胞増殖に関与するシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの、例えば、PKC-アルファ、Raf、及びH-Rasなど;リボザイム、例えば、VEGF発現阻害剤(例えば、ANGIOZYME(登録商標)リボザイム)及びHER2発現阻害剤;ワクチン、例えば、遺伝子療法ワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、及びVAXID(登録商標)ワクチン;PROLEUKIN(登録商標)rIL-2;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;ビノレルビン及びエスペラミシン(米国特許第4,675,187号を参照のこと)、ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体、及び上記のうちの2つ以上の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
「キメラ」抗体という用語は、重鎖及び/または軽鎖の一部分が特定の源または種に由来する一方で、重鎖及び/または軽鎖の残りの部分が異なる源または種に由来する抗体を指す。
「表面抗原分類3」または「CD3」という用語は、本明細書で使用されるとき、別途指示されない限り、霊長類(例えばヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)等の哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然CD3を指し、例えば、CD3ε、CD3γ、CD3α、及びCD3β鎖を含む。この用語は、「完全長」のプロセシングされていないCD3(例えば、プロセシングされていない、もしくは修飾されていないCD3εまたはCD3γ)、ならびに細胞内のプロセシングから得られるCD3の任意の形態を包含する。この用語は、例えば、スプライス変異型または対立遺伝子変異型を含む、CD3の自然発生変異型も包含する。CD3は、例えば、207のアミノ酸長であるヒトCD3εタンパク質(NCBI参照配列番号NP_000724)、及び182のアミノ酸長であるヒトCD3γタンパク質(NCBI参照配列番号NP_000064)を含む。
抗体の「クラス」は、その重鎖によって保有される定常ドメインまたは定常領域の型を指す。抗体の5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2にさらに分類され得る。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
本明細書に記載の本発明の態様及び実施形態が、態様及び実施形態「を含む」、「からなる」、及び「から本質的になる」を含むことが理解される。
本明細書で使用される「細胞傷害性薬剤」という用語は、細胞機能を阻害するもしくは阻止する、かつ/または細胞死もしくは破壊を引き起こす、物質を指す。細胞傷害性薬剤には、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、およびLuの放射性同位体);化学療法剤もしくは化学療法薬(例えば、メトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン、または他のインターカレート剤);成長阻害剤;核酸分解酵素等の酵素及びそれらの断片;抗生物質;細菌、真菌、植物、または動物起源の小分子毒素または酵素活性毒素(それらの断片及び/または変異形を含む)等の毒素;ならびに下に記載される種々の抗腫瘍または抗癌薬剤が含まれるが、これらに限定されない。
「障害」とは、哺乳動物を問題の障害に罹患しやすくする病理学的状態を含む慢性及び急性障害または疾患を含むが、これらに限定されない、治療から恩恵を受けることになる任意の状態である。
「細胞増殖性障害」及び「増殖性障害」という用語は、ある程度の異常な細胞増殖に関連する障害を指す。一実施形態では、細胞増殖性障害は、癌である。一実施形態では、細胞増殖性障害は、腫瘍である。
用語「癌」及び「癌性」は、典型的に無秩序な細胞成長を特徴とする哺乳動物の生理的状態を指すか、または記述する。癌の例としては、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病またはリンパ性悪性腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。かかる癌のより具体的な例としては、扁平上皮癌(例えば、上皮扁平上皮癌)、肺癌、例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌及び肺扁平上皮癌、腹膜癌、肝細胞癌、胃癌(gastric cancer)または胃癌(stomach cancer)、例えば、胃腸癌及び胃腸間質癌、膵臓癌、膠芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿路癌、肝癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌または腎癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、黒色腫、表在拡大型黒色腫、悪性黒子型黒色腫、末端性黒子性黒色腫、結節型黒色腫、多発性骨髄腫及びB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽細胞性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非開裂細胞性NHL、巨大病変NHL、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、及びワルデンストレームマクログロブリン血症等)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、ヘアリー細胞白血病、慢性骨髄芽球性白血病、及び移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、ならびに母斑症に関連する異常な血管増殖、浮腫(脳腫瘍に関連するもの等)、メーグス症候群、脳癌、ならびに頭頸部癌、及び関連転移が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、本発明の抗体での治療に適する癌としては、乳癌、結腸直腸癌、直腸癌、非小細胞肺癌、膠芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、腎細胞癌、前立腺癌、肝臓癌、膵臓癌、軟組織肉腫、カポジ肉腫、カルチノイド癌、頭頸部癌、卵巣癌、中皮腫、及び多発性骨髄腫が挙げられる。いくつかの実施形態では、癌は、小細胞肺癌、膠芽細胞腫、神経芽細胞腫、黒色腫、乳癌、胃癌、結腸直腸癌(CRC)、及び肝細胞癌から選択される。またいくつかの実施形態では、癌は、非小細胞肺癌、結腸直腸癌、膠芽細胞腫、及び乳癌(これらの癌の転移型を含む)から選択される。他の実施形態では、癌は、ホジキンリンパ腫を除外するが、胚中心B細胞様(GCB)DLBCL、活性化B細胞様(ABC)DLBCL、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、小リンパ球性白血病(SLL)、リンパ形質細胞性リンパ腫(LL)、ワルデンストレームマクログロブリン血症(WM)、中枢神経系リンパ腫(CNSL)、バーキットリンパ腫(BL)、B細胞前リンパ球性白血病、脾臓周辺帯リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、脾臓リンパ腫/白血病、分類不能脾臓びまん性赤脾髄小型B細胞リンパ腫、ヘアリー細胞白血病変異型、ワルデンストレームマクログロブリン血症、鎖病、α鎖病、γ鎖病、μ鎖病、形質細胞性骨髄腫、骨の孤立性形質細胞腫、骨以外の形質細胞腫、粘膜関連リンパ組織の節外性辺縁帯リンパ腫(MALTリンパ腫)、節性辺縁帯リンパ腫、小児節性辺縁帯リンパ腫、小児濾胞性リンパ腫、原発性皮膚濾胞中心リンパ腫、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫、CNSの原発性DLBCL、原発性皮膚DLBCL下肢型、加齢性EBV陽性DLBCL、慢性炎症に関連するDLBCL、リンパ腫様肉芽腫症、原発性縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫(Primary mediastinal(thymic)large B-cell lymphoma)、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、ALK陽性大細胞型B細胞リンパ腫、形質芽球性リンパ腫、HHV8関連多中心性キャッスルマン病において生じる大細胞型B細胞リンパ腫、原発性体液性リンパ腫:びまん性大細胞型B細胞リンパ腫とバーキットリンパ腫との間の中間の特徴を有する分類不能B細胞リンパ腫、及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と古典的ホジキンリンパ腫との間の特徴を有する分類不能B細胞リンパ腫を含む成熟B細胞癌のクラスから選択される。
「腫瘍」は、本明細書で使用されるとき、悪性か良性かにかかわらず、全ての腫瘍性細胞の成長及び増殖、ならびに全ての前癌性及び癌性の細胞及び組織を指す。「癌」、「癌性」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」、及び「腫瘍」という用語は、本明細書で言及される場合、相互排他的ではない。
本明細書で使用されるとき、「腫瘍抗原」という用語は、腫瘍細胞上に提示されるそれらの抗原として理解され得る。これらの抗原は、分子の膜貫通及び細胞質部分と組み合わされることが多い細胞外部分と共に細胞表面上に提示され得る。これらの抗原は、時折、腫瘍細胞によってのみ提示され得、正常な細胞によっては決して提示されない。腫瘍抗原は、腫瘍細胞上にのみ発現され得るか、または正常な細胞と比較して腫瘍特異的突然変異を表し得る。この場合、それらは腫瘍特異的抗原と呼ばれる。腫瘍細胞及び正常な細胞によって提示される腫瘍抗原がより一般的であり、それらは腫瘍関連抗原と呼ばれる。これらの腫瘍関連抗原は、正常な細胞と比較して過剰発現され得るか、または正常な細胞と比較して腫瘍組織の構造があまりコンパクトではないため、腫瘍細胞における抗体結合にアクセスしやすい。一態様では、腫瘍抗原は、下の表1に記載されるものから選択される。
「エフェクター機能」とは、抗体のアイソタイプにより異なる抗体のFc領域に起因する生物学的活性を指す。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合及び補体依存性細胞傷害作用(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方調節、ならびにB細胞活性化が挙げられる。
化合物、例えば、本発明の抗HER2抗体またはその組成物(例えば、薬学的組成物)の「有効量」は、特定の障害(例えば、細胞増殖性障害、例えば、癌)の測定可能な改善または予防など、所望の治療的または予防的結果を達成するのに必要な少なくとも最小量である。本明細書における有効量は、患者の疾患状態、年齢、性別、及び体重、ならびに個体における所望の応答を誘発する抗体の能力などの要因に応じて異なり得る。有効量は、治療上有益な作用が治療の任意の毒性作用または有害作用を上回るものでもある。予防的使用の場合、有益なまたは所望の結果には、疾患の生化学的、組織学的、及び/または挙動的症状、その合併症、ならびに疾患の発症中に現れる中間病理学的表現型を含む、疾患のリスクの排除もしくは低減、疾患の重症度の軽減、または疾患の発生の遅延などの結果が含まれる。治療的使用の場合、有益なまたは所望の結果には、疾患に起因する1つ以上の症状の減少、疾患に罹患している者の生活の質の向上、疾患の治療に必要な他の薬剤の用量の減少、別の薬剤の効果の増強(例えば、標的による)、疾患の進行の遅延、及び/または生存期間の延長などの臨床結果が含まれる。癌または腫瘍の場合、有効量の薬物は、癌細胞の数を低減させ、腫瘍サイズを低減させ、癌細胞の末梢器官への浸潤を阻害し(すなわち、ある程度遅らせるか、または望ましくは停止させ)、腫瘍転移を阻害し(すなわち、ある程度遅らせるか、または望ましくは停止させ)、腫瘍成長をある程度阻害し、かつ/または障害に関連する症状のうちの1つ以上をある程度軽減する効果を有し得る。有効量は、1回以上の投与で投与され得る。本発明の目的に関しては、薬物、化合物、または薬学的組成物の有効量は、予防的または治療的治療を直接または間接的に達成するのに十分な量である。臨床分野において理解されるように、薬物、化合物、または薬学的組成物の有効量は、別の薬物、化合物、または薬学的組成物と併せて達成されても、されなくてもよい。したがって、「有効量」は、1つ以上の療法剤を投与するという点で考慮され得、単剤は、1つ以上の他の薬剤と併せて、望ましい結果が達成され得るか、または達成される場合、有効量で与えられると見なされ得る。
本明細書における「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部分を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するように使用される。この用語は、天然配列Fc領域及び変異型Fc領域を含む。一実施形態では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、またはPro230から、重鎖のカルボキシル末端に及ぶ。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在する場合もあれば、しない場合もある。本明細書で別途指示がない限り、Fc領域または定常領域中のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載されている、EUインデックスとも称されるEU番号付け方式に従う。
「フレームワーク」または「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは一般に、4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3、及びFR4からなる。したがって、HVR及びFR配列は一般に、VH(またはVL)において次の配列:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4で出現する。
「完全長抗体」、「無傷抗体」、及び「全抗体」という用語は、天然の抗体構造に実質的に類似な構造を有するか、または本明細書に定義されるFc領域を含む重鎖を有する、抗体を指して、本明細書で互換的に使用される。
「成長阻害剤」は、本明細書で使用されるとき、インビトロまたはインビボのいずれかで細胞の成長を阻害する化合物または組成物を指す。一実施形態では、成長阻害剤は、抗体が結合する抗原を発現する細胞の増殖を予防または低減する成長阻害抗体である。別の実施形態では、成長阻害剤は、S期の細胞の割合を著しく低減させるものであり得る。成長阻害剤の例としては、細胞周期進行(S期以外の場所で)を遮断する薬剤、例えば、G1停止及びM期停止を誘導する薬剤が挙げられる。従来のM期遮断薬には、ビンカ(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキサン、及び、例えば、ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンなどのトポイソメラーゼII阻害剤が含まれる。G1で停止させるこれらの薬剤はまた、S期での停止、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、及びara-CなどのDNAアルキル化剤にも及ぶ。さらなる情報は、Mendelsohn and Israel,eds.,The Molecular Basis of Cancer,Chapter1、表題「Cell cycle regulation,oncogenes,and antineoplastic drugs」(Murakamiらによる)(W.B.Saunders,Philadelphia,1995)の例えば13頁に見出すことができる。タキサン(パクリタキセル及びドセタキセル)は、いずれもイチイ由来の抗癌薬である。ヨーロッパイチイ由来のドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer)は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)の半合成類似体である。パクリタキセル及びドセタキセルは、チューブリン二量体由来の微小管の構築を促進し、脱重合を阻止することによって微小管を安定させ、細胞内での有糸分裂を阻害する。
「HER2陽性」癌という用語は、正常レベルよりも高いHER2を有する癌細胞を含む。HER2陽性癌の例としては、HER2陽性乳癌及びHER2陽性胃癌が挙げられる。任意に、HER2陽性癌は、2+もしくは3+の免疫組織化学(IHC)スコア、及び/または2.0以上のin situハイブリダイゼーション(ISH)増幅率を有する。
「宿主細胞」、「宿主細胞系」、及び「宿主細胞培養」という用語は、互換的に使用され、外因性核酸が中に導入された細胞を指し、かかる細胞の子孫を含む。宿主細胞には、「形質転換体」及び「形質転換細胞」が含まれ、これらは、初代形質転換細胞及び継代の数にかかわらずそれに由来する子孫を含む。子孫は、親細胞と核酸含有量の点で完全に同一ではないが、突然変異を含み得る。元来形質転換された細胞についてスクリーニングまたは選択されたものと同じ機能または生物学的活性を有する変異子孫が、本明細書に含まれる。
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞によって産生された、またはヒト抗体レパートリーを利用する非ヒト源に由来する、抗体のアミノ酸配列、または他のヒト抗体コード配列に対応する、アミノ酸配列を保有するものである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を明確に除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリを含む当技術分野で既知の種々の技法を使用して産生され得る。Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381(1991)、Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581(1991)。Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985)、Boerner et al.,J.Immunol.,147(1):86-95(1991)に記載される方法も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である。van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.,5:368-74(2001)も参照されたい。ヒト抗体は、抗原攻撃に応答してかかる抗体を産生するように修飾されているが、その内因性遺伝子座が無効化されているトランスジェニック動物、例えば、免疫化異種マウスに抗原を投与することにより調製され得る(例えば、XENOMOUSE(商標)技術に関して、米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号を参照されたい)。また、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により生成されるヒト抗体に関して、例えば、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA103:3557-3562(2006)も参照されたい。
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列の下位集団からである。一般に、配列の下位集団は、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91-3242,Bethesda MD(1991),vols.1-3にあるような下位集団である。一実施形態では、VLについて、下位集団は、上記のKabatらにあるような下位集団カッパIである。一実施形態では、VHについて、下位集団は、上記のKabatらにあるような下位集団IIIである。
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVR由来のアミノ酸残基及びヒトFR由来のアミノ酸残基を含む、キメラ抗体を指す。ある特定の実施形態では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、そのHVR(例えば、CDR)の全てまたは実質的に全てが非ヒト抗体のものに対応し、FRの全てまたは実質的に全てがヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は、任意に、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部分を含んでもよい。抗体、例えば非ヒト抗体の、「ヒト化型」は、ヒト化を受けた抗体を指す。
「超可変領域」または「HVR」という用語は、本明細書で使用されるとき、配列中で超可変(「相補性決定領域」または「CDR」)であり、かつ/または構造的に定義されたループ(「超可変ループ」)を形成し、かつ/または抗原接触残基(「抗原接触体」)を含有する、抗体可変ドメインの領域の各々を指す。一般に、抗体は、3つがVH(H1、H2、H3)にあり、3つがVL(L1、L2、L3)にある、6つのHVRを含む。本明細書の例示的なHVRは、
(a)アミノ酸残基26~32(L1)、50~52(L2)、91~96(L3)、26~32(H1)、53~55(H2)、及び96~101(H3)で発生する超可変ループ(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987))、
(b)アミノ酸残基24~34(L1)、50~56(L2)、89~97(L3)、31~35b(H1)、50~65(H2)、及び95~102(H3)で発生するCDR(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991))、
(c)アミノ酸残基27c~36(L1)、46~55(L2)、89~96(L3)、30~35b(H1)、47~58(H2)、及び93~101(H3)で発生する抗原接触体(MacCallum et al.J.Mol.Biol.262:732-745(1996))、ならびに
(d)HVRアミノ酸残基46~56(L2)、47~56(L2)、48~56(L2)、49~56(L2)、26~35(H1)、26~35b(H1)、49~65(H2)、93~102(H3)、及び94~102(H3)を含む、(a)、(b)、及び/または(c)の組み合わせを含む。
別途指示されない限り、可変ドメインにおけるHVR残基及び他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書において上記のKabatらに従って番号付けされる。
「免疫コンジュゲート」は、細胞傷害性薬剤を含むがこれに限定されない1つ以上の異種性分子(複数可)にコンジュゲートされる抗体である。
「対象」または「個体」は、哺乳動物である。哺乳動物には、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト、及びサル等の非ヒト霊長類)、ウサギ、及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、対象または個体は、ヒトである。
「単離された」抗体は、その自然環境の構成成分から分離されているものである。いくつかの実施形態では、抗体は、例えば、電気泳動法(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)、またはクロマトグラフ法(例えば、イオン交換または逆相HPLC)によって決定される場合、95%または99%を超える純度まで精製される。抗体純度の評価のための方法の概説については、例えば、Flatman et al.,J.Chromatogr.B848:79-87(2007)を参照されたい。
「単離された」核酸とは、その天然環境の構成成分から分離されている核酸分子を指す。単離された核酸は、通常は核酸分子を含有する細胞内に含有される核酸分子を含むが、その核酸分子が染色体外に、またはその天然染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
「抗HER2抗体をコードする単離された核酸」は、抗体の重鎖及び軽鎖(またはそれらの断片)をコードする1つ以上の核酸分子を指し、それには単一のベクターまたは別個のベクターにおけるかかる核酸分子(複数可)が含まれ、かかる核酸分子(複数可)は、宿主細胞内の1つ以上の場所に存在する。
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を指す。すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、同一であり、かつ/または同じエピトープと結合するが、例えば、自然発生突然変異を含有する、またはモノクローナル抗体調製物の産生中に発生する、想定される変異型抗体を除いて、かかる変異型は一般に少量で存在する。異なる決定基(エピトープ)に対して指向される異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向される。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体の集団から得られるものとして抗体の特徴を示しており、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものとして解釈されるものではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組み換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全てまたは一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法を含むが、これらに限定されない、多様な技法によって作製されてもよく、モノクローナル抗体を作製するためのかかる方法及び他の例示的な方法が、本明細書に記載されている。
「裸の抗体」は、異種性部分(例えば、細胞傷害性部分)または放射標識に複合されていない抗体を指す。裸の抗体は、薬学的製剤中に存在してもよい。
「天然抗体」は、様々な構造を有する、自然発生免疫グロブリン分子を指す。例えば、天然IgG抗体は、ジスルフィド結合されている2つの同一の軽鎖及び2つの同一の重鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端まで、各重鎖は、可変重ドメイン(variable heavy domain)または重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)と、その後に3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3)とを有する。同様に、N末端からC末端まで、各軽鎖は、可変軽ドメイン(variable light domain)または軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)と、その後に定常軽(CL)ドメインとを有する。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの型うちの1つに割り当てられ得る。
「添付文書」という用語は、かかる治療製品の適応症、使用法、投薬量、投与、併用療法、禁忌症についての情報、及び/またはその使用に関する警告を含有する、治療剤製品のパッケージに通例含まれる指示書を指すように使用される。
「PD-1軸結合アンタゴニスト」という用語は、PD-1シグナル伝達軸上のシグナル伝達に起因するT細胞機能障害を除去するようにPD-1軸結合パートナーとその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上との相互作用を阻害し、結果として、T細胞機能(例えば、増殖、サイトカイン産生、標的細胞死滅)を復元または増強する分子を指す。本明細書で使用されるとき、PD-1軸結合アンタゴニストには、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニスト、及びPD-L2結合アンタゴニストが含まれる。
「PD-1結合アンタゴニスト」という用語は、PD-1とその結合パートナーのうちの1つ以上、例えば、PD-L1、PD-L2との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、または妨害する分子を指す。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のその結合パートナーのうちの1つ以上への結合を阻害する分子である。具体的な実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、PD-L1及び/またはPD-L2への結合を阻害する。例えば、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、ならびにPD-1とPD-L1及び/またはPD-L2との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、または妨害する他の分子を含む。一実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、機能障害T細胞の機能障害性をより低くする(例えば、抗原認識へのエフェクター応答を増強する)ように、PD-1を介して媒介されたシグナル伝達など、Tリンパ球で発現された細胞表面タンパク質によってまたはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減する。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体である。具体的な実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、MDX-1106(ニボルマブ)である。別の具体的な実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、MK-3475(ペンブロリズマブ)である。別の具体的な実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、CT-011(ピディリズマブ)である。別の具体的な実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、AMP-224である。別の具体的な実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、MED1-0680である。別の具体的な実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PDR001である。別の具体的な実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、REGN2810である。別の具体的な実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、BGB-108である。
「PD-L1結合アンタゴニスト」という用語は、PD-L1とその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上、例えば、PD-1、B7-1との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、または妨害する分子を指す。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、その結合パートナーへの結合を阻害する分子である。具体的な実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、PD-1及び/またはB7-1への結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、及びPD-L1とその結合パートナーのうちの1つ以上、例えば、PD-1、B7-1との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、または妨害する他の分子を含む。一実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、機能障害T細胞の機能障害性をより低くする(例えば、抗原認識へのエフェクター応答を増強する)ように、PD-L1を介して媒介されたシグナル伝達など、Tリンパ球で発現された細胞表面タンパク質によってまたはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減する。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。さらに別の具体的な実施形態では、抗PD-L1抗体は、MPDL3280A(アテゾリズマブ)である。具体的な実施形態では、抗PD-L1抗体は、YW243.55.S70である。別の具体的な実施形態では、抗PD-L1抗体は、MDX-1105である。別の具体的な実施形態では、抗PD-L1抗体は、MSB0015718Cである。さらに別の具体的な実施形態では、抗PD-L1抗体は、MEDI4736である。
「PD-L2結合アンタゴニスト」という用語は、PD-L2とその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上、例えば、PD-1との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、または妨害する分子を指す。いくつかの実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2のその結合パートナーのうちの1つ以上への結合を阻害する分子である。具体的な実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2のPD-1への結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD-L2アンタゴニストは、抗PD-L2抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、及びPD-L2とその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上、例えば、PD-1との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、または妨害する他の分子を含む。一実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、機能障害T細胞の機能障害性をより低くする(例えば、抗原認識へのエフェクター応答を増強する)ように、PD-L2を介して媒介されたシグナル伝達など、Tリンパ球で発現された細胞表面タンパク質によってまたはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減する。いくつかの実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、イムノアドヘシンである。
本明細書で使用される「タンパク質」という用語は、別途指示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)等の哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然タンパク質を指す。この用語は、「完全長」のプロセシングされていないタンパク質、ならびに細胞内のプロセシングから生じるタンパク質の任意の形態を包含する。この用語は、タンパク質の自然発生変異型、例えば、スプライス変異型または対立遺伝子変異型も包含する。本発明によるタンパク質は、例えば、表1に列挙される任意のタンパク質を含む。
参照ポリペプチド配列に関して「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、配列同一性最大パーセントを達成するために配列を整列させ、かつ必要に応じてギャップを導入した後の、配列同一性の一部としていずれの保存的置換も考慮しない、参照ポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一の候補配列におけるアミノ酸残基の割合と定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するためのアライメントは、当該技術分野の技術範囲内の種々の方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN等の公的に入手可能なコンピュータソフトウェア、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを使用して達成され得る。当業者であれば、比較される配列の全長にわたる最大アライメントを達成するのに必要な任意のアルゴリズムを含む、配列の整列に適切なパラメータを決定することができる。しかしながら、本明細書における目的のために、アミノ酸配列同一性%値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.によってオーサリングされ、ソースコードは、ユーザ文書と共に米国著作権局(U.S.Copyright Office)、Washington D.C.,20559に提出されており、米国著作権登録番号TXU510087の下に登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.,South San Francisco,Californiaから公的に入手可能であるか、またはソースコードからコンパイルされ得る。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含むUNIXオペレーティングシステムでの使用のためにコンパイルされるべきである。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定されており、変動しない。
ALIGN-2がアミノ酸配列比較に用いられる状況下で、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対する所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(代替的に、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対するある特定のアミノ酸配列同一性%を有するか、または含む所与のアミノ酸配列Aと表現され得る)は、以下のように計算される。
100×画分X/Y
式中、Xは、配列アライメントプログラムALIGN-2によって、そのプログラムのA及びBのアライメントにおいて完全な一致としてスコア化されたアミノ酸残基の数であり、Yは、B中のアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、Bに対するAのアミノ酸配列同一性%は、Aに対するBのアミノ酸配列同一性%と等しくはならないことが理解されるだろう。別途具体的に記されない限り、本明細書で使用される全てのアミノ酸配列同一性%値は、直前の段落に記載されるようにALIGN-2コンピュータプログラムを使用して得られる。
「薬学的製剤」という用語は、調製物の中に含有される活性成分の生物学的活性が有効になるような形態であり、かつ製剤が投与される対象にとって許容できないほど有毒である追加の構成成分を何ら含有しない調製物を指す。
「薬学的に許容される担体」とは、対象にとって無毒である、活性成分以外の薬学的製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体には、緩衝剤、賦形剤、安定剤、または防腐剤が含まれるが、これらに限定されない。
本明細書で使用されるとき、「治療」(及び「治療する」または「治療すること」等のその文法上の変形)とは、治療されている個体の自然経過を変更することを目的とした臨床介入を指し、予防のために、または臨床病理過程中のいずれかに実施され得る。治療の望ましい作用には、疾患の発生または再発の予防、症状の緩和、疾患の任意の直接的または間接的病理学的帰結の縮小、転移の予防、疾患進行速度の減少、病状の回復または寛解、及び緩解または予後の改善を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本発明の抗体を使用して、疾患の発症を遅延させるか、または疾患の進行を遅らせる。
本明細書で使用されるとき、障害または疾患の「進行を遅延させること」とは、疾患または障害(例えば、細胞増殖性障害、例えば、癌)の発症を延期する、妨げる、遅らせる、遅滞させる、安定化させる、及び/または延滞させることを意味する。この遅延は、治療されている病歴及び/または個体に応じて異なる期間であり得る。当業者に明らかであるように、十分なまたは著しい遅延は、個体が疾患を発症しないという点で、予防を事実上包含し得る。例えば、転移の発症などの末期癌を遅延させることができる。
「低減する」または「阻害する」とは、例えば、20%以上の、50%以上の、または75%、85%、90%、95%、もしくはそれ以上の全体的な減少を生じる能力を意味する。ある特定の実施形態では、減少する、または阻害するとは、抗体Fc領域によって媒介される抗体のエフェクター機能を指すことができ、かかるエフェクター機能は、具体的に補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、及び抗体依存性細胞食作用(ADCP)を含む。
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗体の抗原への結合に関与する抗体の重鎖または軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖及び軽鎖(それぞれ、VH及びVL)の可変ドメインは、一般に、各ドメインが4つの保存フレームワーク領域(FR)及び3つの超可変領域(HVR)を含む類似の構造を有する。(例えば、Kindt et al.Kuby Immunology,6thed.,W.H.Freeman and Co.,page91(2007)を参照されたい。)単一のVHドメインまたはVLドメインは、抗原結合特異性を付与するのに十分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体は、抗原と結合する抗体のVHドメインまたはVLドメインを使用して単離されて、それぞれ、相補的VLドメインまたはVHドメインのライブラリをスクリーニングすることができる。例えば、Portolano et al.,J.Immunol.150:880-887(1993)、Clarkson et al.,Nature352:624-628(1991)を参照されたい。
本明細書で使用される「ベクター」という用語は、それが結合している別の核酸を増殖させることができる核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、及び中に導入される宿主細胞のゲノム内に組み込まれたベクターを含む。ある特定のベクターは、それらが作動可能に結合される核酸の発現を指向することができる。かかるベクターは、本明細書で「発現ベクター」と称される。
本明細書で使用されるとき、「投与する」とは、ある投薬量の化合物(例えば、本発明の抗HER2抗体もしくは本発明の抗HER2抗体をコードする核酸)または組成物(例えば、薬学的組成物、例えば、本発明の抗HER2抗体を含む薬学的組成物)を対象に与える方法を意味する。本明細書に記載される方法に用いられる組成物は、例えば、筋肉内、静脈内、皮内、経皮、動脈内、腹腔内、病巣内、頭蓋内、関節内、前立腺内(intraprostatically)、胸膜内、気管内、鼻腔内、硝子体内、膣内、直腸内、局所、腫瘍内、腹膜内、皮下、結膜下、小胞内、経粘膜、心膜内、臍帯内、眼球内、経口、局所、局在、吸入により、注射により、注入により、持続注入により、標的細胞に直接的に流す局在灌流により、カテーテルにより、洗浄により、クリームで、または脂質組成物で投与することができる。投与方法は、種々の要因(例えば、投与される化合物または組成物、及び治療される状態、疾患、または障害の重症度)に応じて異なり得る。
II.組成物及び方法
本発明は、ヒト化抗HER2抗体hu4D5の変異型に関する。ある特定の実施形態では、抗HER2抗体は、HER2結合ドメイン及びCD3結合ドメインを含む二重特異性抗体である。かかる二重特異性抗体は、T細胞依存性二重特異性(TDB)抗体(本明細書でHER2 TDBとも称される)と称される。
本発明の抗HER2抗体は、例えば、HER2を発現する癌及びHER2陽性癌を含む、癌の診断または治療に有用である。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体は、hu4D5と比較して、改善された安定性を有する。いくつかの事例では、改善された安定性は、hu4D5のHVR領域に存在する特定の残基の脱アミド化または異性化の減少に関する。N30、T31、N54、G55、D98、及び/またはG99の位置のアミノ酸の置換により生成されたある特定の抗HER2抗体は、脱アミド化または異性化の低減に関連した、増加した安定性を呈した。これらの抗HER2抗体のいくつかは、意外にも、HER2標的に関して増加した親和性も呈した。
A.Hu4D5変異型
一態様では、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)と、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)とを含む抗HER2抗体を提供し、この軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインは、Kabat番号付けシステムに従って番号付けされた、N30(VL)及びT31(VL)(両方とも配列番号1)、ならびにN54(VH)、G55(VH)、D98(VH)、及びG99(VH)(全て配列番号2)からなる群から選択される1つ以上の位置にアミノ酸置換を含む。
一態様では、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む抗HER2抗体を提供し、この軽鎖可変ドメインは、Kabat番号付けシステムに従って番号付けされたN30(VL)及びT31(VL)からなる群から選択される1つまたは両方の位置にアミノ酸置換を含む。
一実施形態では、抗HER2抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含み、この軽鎖可変ドメインは、N30(VL)S、N30(VL)D、N30(VL)E、N30(VL)T、N30(VL)Q、N30(VL)N、N30(VL)H、N30(VL)K、N30(VL)R、T31(VL)D、T31(VL)V、及びT31(VL)Sからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む。
一実施形態では、抗HER2抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含み、この軽鎖可変ドメインは、N30(VL)にアミノ酸置換を含む。一実施形態では、抗HER2抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含み、この軽鎖可変ドメインは、アミノ酸置換N30(VL)Sを含む。一実施形態では、抗HER2抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含み、この軽鎖可変ドメインは、アミノ酸置換N30(VL)Dを含む。一実施形態では、抗HER2抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含み、この軽鎖可変ドメインは、アミノ酸置換N30(VL)Eを含む。一実施形態では、抗HER2抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含み、この軽鎖可変ドメインは、アミノ酸置換N30(VL)Tを含む。一実施形態では、抗HER2抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含み、この軽鎖可変ドメインは、アミノ酸置換N30(VL)Qを含む。
一実施形態では、抗HER2抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含み、この軽鎖可変ドメインは、N31(VL)にアミノ酸置換を含む。一実施形態では、抗HER2抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含み、この軽鎖可変ドメインは、アミノ酸置換T31(VL)Dを含む。
一態様では、本発明は、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む抗HER2抗体を提供し、この重鎖可変ドメインは、Kabat番号付けシステムに従って番号付けされたN54(VH)及びG55(VH)からなる群から選択される位置のうちの1つまたは両方にアミノ酸置換を含む。
一実施形態では、抗HER2抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、この重鎖可変ドメインは、N54(VH)E、N54(VH)A、N54(VH)S、N54(VH)Q、N54(VH)H、N54(VH)D、N54(VH)K、N54(VH)R、及びG55(VH)Aからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む。
一実施形態では、抗HER2抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、この重鎖可変ドメインは、N54(VH)にアミノ酸置換を含む。一実施形態では、抗HER2抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、この重鎖可変ドメインは、アミノ酸置換N54(VH)Eを含む。一実施形態では、抗HER2抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、この重鎖可変ドメインは、アミノ酸置換N54(VH)Aを含む。一実施形態では、抗HER2抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、この重鎖可変ドメインは、アミノ酸置換N54(VH)Sを含む。
一実施形態では、抗HER2抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、この重鎖可変ドメインは、G55(VH)にアミノ酸置換を含む。一実施形態では、抗HER2抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、この重鎖可変ドメインは、アミノ酸置換G55(VH)Aを含む。
一態様では、本発明は、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む抗HER2抗体に関し、この重鎖可変ドメインは、Kabat番号付けシステムに従って番号付けされたD98(VH)及びG99(VH)からなる群から選択される位置のうちの1つまたは両方にアミノ酸置換を含む。
一実施形態では、抗HER2抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、この重鎖可変ドメインは、D98(VH)T、D98VH)E、D98(VH)N、D98(VH)S、G99(VH)S、G99(VH)A、及びG99(VH)Tからなる群から選択されるアミノ酸置換を含む。
一実施形態では、抗HER2抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、この重鎖可変ドメインは、D98(VH)にアミノ酸置換を含む。一実施形態では、抗HER2抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、この重鎖可変ドメインは、アミノ酸置換D98(VH)Tを含む。一実施形態では、抗HER2抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、この重鎖可変ドメインは、アミノ酸置換D98(VH)Eを含む。一実施形態では、抗HER2抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、この重鎖可変ドメインは、アミノ酸置換D98(VH)Sを含む。
一実施形態では、抗HER2抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、この重鎖可変ドメインは、G99(VH)にアミノ酸置換を含む。一実施形態では、抗HER2抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、この重鎖可変ドメインは、アミノ酸置換G99(VH)Sを含む。一実施形態では、抗HER2抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、この重鎖可変ドメインは、アミノ酸置換G99(VH)Tを含む。
一態様では、本発明は、配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)と、配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)とを含む抗HER2抗体に関する。
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVX1X2AVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYTTPPTFGQGTKVEIK(配列番号3)
配列中、X1は、N、D、S、T、E、H、K、R、またはQであり、X2は、T、V、S、またはDである。
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTX3X4YTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGX5X6FYAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号4)
配列中、X3は、N、E、A、Q、H、D、K、R、またはSであり、X4は、GまたはAであり、X5は、D、E、S、N、またはTであり、X6は、G、S、A、またはTである。
一態様では、本発明は、軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)を含む、抗HER2抗体に関する。
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNX7YTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号5)
配列中、X7はG以外のアミノ酸である。一実施形態では、X7はAである。
一態様では、本発明は、配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)と、配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)とを含む抗HER2抗体に関する。
一態様では、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)と、配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)とを含む抗HER2抗体に関する。
一態様では、本発明は、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号57のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号53のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含むHER2結合ドメインを含む、抗HER2抗体を提供する。
一態様では、本発明は、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号57のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH HVR配列を含むHER2結合ドメインを含む、抗HER2抗体を提供する。さらなる実施形態では、HER2結合ドメインは、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号57のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む。
別の態様では、本発明は、(a)配列番号53のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(c)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVL HVR配列を含むHER2結合ドメインを含む、抗HER2抗体を提供する。さらなる実施形態では、HER2結合ドメインは、(a)配列番号53のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(c)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
一態様では、本発明は、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号57のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号53のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、HER2結合ドメインを含む、抗HER2抗体を提供する。
一態様では、本発明は、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号57のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号54のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含むHER2結合ドメインを含む、抗HER2抗体を提供する。
一態様では、本発明は、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号57のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH HVR配列を含むHER2結合ドメインを含む、抗HER2抗体を提供する。さらなる実施形態では、HER2結合ドメインは、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号57のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む。
別の態様では、本発明は、(a)配列番号54のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、(c)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVL HVR配列を含むHER2結合ドメインを含む、抗HER2抗体を提供する。さらなる実施形態では、HER2結合ドメインは、(a)配列番号54のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(c)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
一態様では、本発明は、HER2結合ドメイン:(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号57のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号54のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、抗HER2抗体を提供する。
一態様では、本発明は、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号58アミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号54のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含むHER2結合ドメインを含む、抗HER2抗体を提供する。
一態様では、本発明は、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号58のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH HVR配列を含むHER2結合ドメインを含む、抗HER2抗体を提供する。さらなる実施形態では、HER2結合ドメインは、配列番号58のアミノ酸配列を含むHVR-H2を含む。さらなる実施形態では、HER2結合ドメインは、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号58のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む。
一態様では、本発明は、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号58のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号54のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、HER2結合ドメインを含む、抗HER2抗体を提供する。
一態様では、本発明は、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号51のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号54のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含むHER2結合ドメインを含む、抗HER2抗体を提供する。
一態様では、本発明は、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号51のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH HVR配列を含むHER2結合ドメインを含む、抗HER2抗体を提供する。さらなる実施形態では、HER2結合ドメインは、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号51のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む。
一態様では、本発明は、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号51のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号54のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、HER2結合ドメインを含む、抗HER2抗体を提供する。
一態様では、本発明は、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号58のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号55のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含むHER2結合ドメインを含む、抗HER2抗体を提供する。
一態様では、本発明は、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号58のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH HVR配列を含むHER2結合ドメインを含む、抗HER2抗体を提供する。さらなる実施形態では、HER2結合ドメインは、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号58のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む。
別の態様では、本発明は、(a)配列番号55のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、(c)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVL HVR配列を含むHER2結合ドメインを含む、抗HER2抗体を提供する。さらなる実施形態では、HER2結合ドメインは、(a)配列番号55のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(c)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
一態様では、本発明は、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号58のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号55のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、HER2結合ドメインを含む、抗HER2抗体を提供する。
一態様では、本発明は、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号51のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号54のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含むHER2結合ドメインを含む、抗HER2抗体を提供する。
一態様では、本発明は、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号51のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH HVR配列を含むHER2結合ドメインを含む、抗HER2抗体を提供する。さらなる実施形態では、HER2結合ドメインは、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号51のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む。
一態様では、本発明は、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号51のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号54のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、HER2結合ドメインを含む、抗HER2抗体を提供する。
一態様では、本発明は、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号51のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号54のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含むHER2結合ドメインを含む、抗HER2抗体を提供する。
一態様では、本発明は、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号51のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH HVR配列を含むHER2結合ドメインを含む、抗HER2抗体を提供する。さらなる実施形態では、HER2結合ドメインは、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号51のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む。
一態様では、本発明は、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号51のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号54のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、HER2結合ドメインを含む、抗HER2抗体を提供する。
一態様では、本発明は、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号58のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号53のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含むHER2結合ドメインを含む、抗HER2抗体を提供する。
一態様では、本発明は、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号58のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH HVR配列を含むHER2結合ドメインを含む、抗HER2抗体を提供する。さらなる実施形態では、HER2結合ドメインは、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号58のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む。
一態様では、本発明は、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号58のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号53のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、HER2結合ドメインを含む、抗HER2抗体を提供する。
一態様では、本発明は、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号51のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号55のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含むHER2結合ドメインを含む、抗HER2抗体を提供する。
一態様では、本発明は、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号51のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH HVR配列を含むHER2結合ドメインを含む、抗HER2抗体を提供する。さらなる実施形態では、HER2結合ドメインは、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号51のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む。
一態様では、本発明は、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号51のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号55のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、HER2結合ドメインを含む、抗HER2抗体を提供する。
上記実施形態のいずれかにおいて、HER2結合ドメインを含む抗HER2抗体はヒト化されている。一実施形態では、HER2結合ドメインを含む抗HER2抗体は、上記実施形態のいずれかにあるように、HVRを含み、ヒトアクセプターフレームワーク、例えば、ヒト免役グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークをさらに含む。ある特定の実施形態では、ヒトアクセプターフレームワークは、ヒトVLカッパIコンセンサス(VLKI)フレームワーク及び/またはVHフレームワークVH1である。
一態様では、本発明は、配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)と、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)とを含む抗HER2抗体に関する。
一態様では、本発明は、配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)と、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)とを含む抗HER2抗体に関する。
一態様では、本発明は、配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)と、配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)とを含む抗HER2抗体に関する。
一態様では、本発明は、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)と、配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)とを含む抗HER2抗体に関する。
一態様では、本発明は、配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)と、配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)とを含む抗HER2抗体に関する。
一態様では、本発明は、配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)と、配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)とを含む抗HER2抗体に関する。
一態様では、本発明は、配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)と、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)とを含む抗HER2抗体に関する。
一態様では、本発明は、配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)と、配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)とを含む抗HER2抗体に関する。
一態様では、本発明は、配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)と、配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)とを含む抗HER2抗体に関する。
別の態様では、HER2結合ドメインを含む抗HER2抗体が提供され、この抗体は、上述の実施形態のいずれかにあるようなVH、及び上述の実施形態のいずれかにあるようなVLを含み、これらの配列の翻訳後修飾を含む。
本発明のさらなる態様では、上記実施形態のいずれかによるHER2結合ドメインを含む抗HER2抗体は、ヒト抗体を含むモノクローナル抗体である。一実施形態では、HER2結合ドメインを含む抗HER2抗体は、抗体断片、例えば、Fv、Fab、Fab’、scFv、ダイアボディ、またはF(ab’)2断片である。別の実施形態では、本抗体は、実質的に完全長の抗体、例えば、本明細書に定義されるIgG1抗体、IgG2a抗体、または他の抗体クラスもしくはアイソタイプである。
図1、3、及び4に示されるhu4D5と比較してアミノ酸置換を有するHVRを含む軽鎖可変ドメインを含むHER2結合ドメインを含む、抗HER2抗体が本明細書において提供される。
HER2 TDB
上記態様のいずれか1つにおいて、本明細書に提供される抗HER2抗体は、T細胞依存性二重特異性(TDB)抗体であり、結合特異性のうちの一方はHER2に対してであり、もう一方はCD3(例えば、CD3εまたはCD3γ)に対してである。
いくつかの実施形態では、抗HER2抗体のCD3結合ドメインは、ヒトCD3ポリペプチドまたはカニクイザル(cyno)CD3ポリペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、ヒトCD3ポリペプチドまたはcynoCD3ポリペプチドは、それぞれ、ヒトCD3εポリペプチドまたはcynoCD3εポリペプチドである。いくつかの実施形態では、ヒトCD3ポリペプチドまたはcynoCD3ポリペプチドは、それぞれ、ヒトCD3γポリペプチドまたはcynoCD3γポリペプチドである。ある特定の実施形態では、ヒトCD3εのアミノ酸1~26または1~27からなるCD3(例えば、ヒトCD3ε)の断片内のエピトープに結合するCD3結合ドメインを含む、抗HER2抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体は、二重特異性抗体である。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体は、二重特異性IgG抗体である。
いくつかの実施形態では、CD3結合ドメインは、250nM以下のKdでヒトCD3εポリペプチドと結合する。いくつかの実施形態では、CD3結合ドメインは、100nM以下のKdでヒトCD3εポリペプチドと結合する。いくつかの実施形態では、CD3結合ドメインは、15nM以下のKdでヒトCD3εポリペプチドと結合する。いくつかの実施形態では、CD3結合ドメインは、10nM以下のKdでヒトCD3εポリペプチドと結合する。いくつかの実施形態では、CD3結合ドメインは、5nM以下のKdでヒトCD3εポリペプチドと結合する。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体のCD3結合アームは、50nM未満及び1nM超の親和性でヒトCD3と結合する。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体のCD3結合アームは、1nM未満及び0.1nM超の親和性でヒトCD3と結合する。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体のCD3結合アームは、0.1nM未満及び0.01nM超の親和性でヒトCD3と結合する。いくつかの実施形態では、CD3結合アームの親和性は、Biacoreにより決定される。いくつかの実施形態では、ヒトCD3は、hCD3εγである。いくつかの実施形態では、ヒトCD3は、hCD3ε1~27Fcである。
いくつかの実施形態では、抗HER2抗体のCD3結合ドメインは、3.5オングストローム、3.25オングストローム、3.00オングストローム、2.75オングストローム以下の距離でヒトCD3εのアミノ酸と結合または接触する。ある特定の実施形態では、3.5オングストローム、3.25オングストローム、3.00オングストローム、2.75オングストローム以下の距離でヒトCD3εの1つ、2つ、3つ、4つ、または5つのアミノ酸からなるエピトープに結合するCD3結合ドメインが提供される。一実施形態では、抗HER2抗体のCD3結合ドメインは、3.5オングストローム以下の距離でヒトCD3εのアミノ酸と独特に接触する。ある特定の実施形態では、3.5オングストローム以下の距離でヒトCD3εの1つ、2つ、3つ、4つ、または5つのアミノ酸からなるエピトープに結合するCD3結合ドメインが提供される。例えば、ある特定の実施形態では、Gln1、Asp2、Asn4、Glu6、及びMet7から選択されるヒトCD3εのアミノ酸からなるエピトープに結合するCD3結合ドメインが提供される。特定の一実施形態では、CD3結合ドメインは、具体的にGlu6を含むエピトープに結合する。ある特定の他の実施形態では、ヒトCD3εアミノ酸Glu5を含むエピトープに結合しないCD3結合ドメインが提供される。ある特定の他の実施形態では、ヒトCD3εアミノ酸Gly3及びGlu5を含むエピトープに結合しないCD3結合ドメインが提供される。
CD3エピトープは、エピトープのペプチド断片に結合するCD3結合ドメインによって決定され得る。代替的に、CD3エピトープは、アラニンスキャニング変異誘発により決定され得る。一実施形態では、CD3結合ドメインの突然変異したCD3への結合における20%、30%、50%、80%以上の低減は、アラニンスキャニング変異誘発アッセイにおいて突然変異されたCD3の残基がそのCD3結合ドメインのエピトープ残基であることを示す。代替的に、CD3エピトープは、質量分析によって決定され得る。いくつかの実施形態では、エピトープは、結晶解析(例えば、結晶解析法)によって決定される。
いくつかの実施形態では、結晶解析により決定されるCD3エピトープは、CD3のアミノ酸Q1~M7を使用して決定される。いくつかの実施形態では、結晶解析により決定されるCD3エピトープは、CD3のアミノ酸QDGNEEMGGITQTPYK(配列番号89)を使用して決定される。
いくつかの実施形態では、結晶解析により決定されるCD3エピトープは、10mg/mlで0.15M NaCl、25mMトリス、pH7.5に溶解した抗CD3抗体Fabを、2倍のモル過剰(1mg)のCD3εペプチドと混合し、シッティングドロップ蒸気拡散形式で沈殿物の疎行列を最初にスクリーニングすることにより行うことができる。最適化した結晶は、70%v/vメチル-ペンタンジオール及び0.1M HEPES緩衝剤、pH7.5を含有するリザーバ溶液との1:1混合物から成長させることができる。リザーバは、凍結保護剤として使用されてもよい。結晶は、液体窒素への急激な浸漬により、極低温度に移されてもよい。
結晶の回折データは、MAR300 CCD検出器を使用して、Advanced Photon Sourceビームライン22IDで収集することができる。記録した回折を統合し、プログラムHKL2000を使用してスケーリングすることができる。
構造は、プログラムPhaserを使用して分子置換(MR)方法によって一致させて(phased)もよい。例えば、MRサーチモデルは、HGFA/Fab複合体(PDBコード:2R0L)の結晶構造に由来するFabサブユニットである。CD3εペプチドは、Fo-Fcマップに基づいて構造に組み込まれる。構造は、その後、最大尤度標的関数、異方性の個別B因子精密化方法、及びTLS精密化方法を使用して、収束を達成するために、プログラムREFMAC5及びPHENIXで精密化することができる。
一実施形態では、抗HER2 TDBのCD3結合ドメインは、超可変領域(HVR)である(a)配列番号84のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号85のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号86のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号69のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号87のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号88のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
一実施形態では、抗HER2 TDBのCD3結合ドメインは、(a)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号67のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号68のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号69のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号70のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
一実施形態では、CD3結合ドメインは、配列番号77もしくはその配列に対する少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメインと、配列番号78もしくはその配列に対する少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメインとを含む。一実施形態では、CD3結合ドメインは、配列番号77のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号78のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。特定の事例では、CD3結合ドメインは、40G5c、またはその誘導体もしくはクローン類縁体であり得る。
一実施形態では、抗HER2 TDBのCD3結合ドメインは、超可変領域(HVR)である(a)配列番号72のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号73のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号74のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号69のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号75のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号76のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
一実施形態では、CD3結合ドメインは、配列番号79もしくはその配列に対する少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメインと、配列番号80もしくはその配列に対する少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメインとを含む。一実施形態では、CD3結合ドメインは、配列番号79のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号80のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。特定の事例では、CD3結合ドメインは、38E4v1、またはその誘導体またはクローン類縁体であり得る。
一実施形態では、抗HER2 TDBのCD3結合ドメインは、超可変領域(HVR)である(a)配列番号72のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号73のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号74のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号69のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号75のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
一実施形態では、CD3結合ドメインは、配列番号79もしくはその配列に対する少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメインと、配列番号81もしくはその配列に対する少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメインとを含む。一実施形態では、CD3結合ドメインは、配列番号79のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号81のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。特定の事例では、CD3結合ドメインは、38E4v11、またはその誘導体もしくはクローン類縁体であり得る。
一態様では、抗HER2 TDBは、(i)(a)配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)、及び(b)配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)を含むHER2結合ドメインであって、この軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインが、Kabat番号付けシステムに従って番号付けされた、N30(VL)及びT31(VL)(両方とも配列番号1)、ならびにN54(VH)、G55(VH)、D98(VH)、及びG99(VH)(全て配列番号2)からなる群から選択される1つ以上の位置にアミノ酸置換を含む、HER2結合ドメインと、(ii)(c)配列番号77のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)及び(d)配列番号78のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)を含む、CD3結合ドメインとを含む。
一態様では、抗HER2 TDBは、(i)(a)配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)及び(b)配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)を含むHER2結合ドメインであって、この軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインが、Kabat番号付けシステムに従って番号付けされた、N30(VL)及びT31(VL)(両方とも配列番号1)、ならびにN54(VH)、G55(VH)、D98(VH)、及びG99(VH)(全て配列番号2)からなる群から選択される1つ以上の位置にアミノ酸置換を含む、HER2結合ドメインと、(ii)(c)配列番号79のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)及び(d)配列番号80のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)を含む、CD3結合ドメインとを含む。
一実施形態では、抗HER2 TDBは、(i)(a)配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)及び(b)配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)を含む、HER2結合ドメインと、(ii)(c)配列番号77のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)及び(d)配列番号78のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)を含む、CD3結合ドメインとを含む。
一実施形態では、抗HER2 TDBは、(i)(a)配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)及び(b)配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)を含む、HER2結合ドメインと、(ii)(c)配列番号79のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)及び(d)配列番号80のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)を含む、CD3結合ドメインとを含む。
一実施形態では、抗HER2 TDBは、(i)(a)配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)及び(b)配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)を含む、HER2結合ドメインと、(ii)(c)配列番号77のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)及び(d)配列番号78のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)を含む、CD3結合ドメインとを含む。
一実施形態では、抗HER2 TDBは、(i)(a)配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)及び(b)配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)を含む、HER2結合ドメインと、(ii)(c)配列番号79のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)及び(d)配列番号80のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)を含む、CD3結合ドメインとを含む。
一実施形態では、抗HER2 TDBは、(i)(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号57のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号53のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、HER2結合ドメインと、(ii)(a)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号67のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号68のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号69のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号70のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、CD3結合ドメインとを含む。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体は、配列番号7の配列を含む重鎖可変領域と、配列番号6の配列を含む軽鎖可変領域とを含む、HER2結合ドメインを含む。
一実施形態では、抗HER2 TDBは、(i)(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号57のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号54のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、HER2結合ドメインと、(ii)(a)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号67のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号68のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号69のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号70のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、CD3結合ドメインとを含む。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体は、配列番号9の配列を含む重鎖可変領域と、配列番号8の配列を含む軽鎖可変領域とを含む、HER2結合ドメインを含む。
一実施形態では、抗HER2 TDBは、(i)(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号58のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号54のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、HER2結合ドメインと、(ii)(a)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号67のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号68のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号69のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号70のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、CD3結合ドメインとを含む。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体は、配列番号11の配列を含む重鎖可変領域と、配列番号10の配列を含む軽鎖可変領域とを含む、HER2結合ドメインを含む。
一実施形態では、抗HER2 TDBは、(i)(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号51のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号54のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、HER2結合ドメインと、(ii)(a)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号67のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号68のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号69のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号70のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、CD3結合ドメインとを含む。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体は、配列番号13の配列を含む重鎖可変領域と、配列番号12の配列を含む軽鎖可変領域とを含む、HER2結合ドメインを含む。
一実施形態では、抗HER2 TDBは、(i)(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号58のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号55のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、HER2結合ドメインと、(ii)(a)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号67のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号68のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号69のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号70のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、CD3結合ドメインとを含む。
一実施形態では、抗HER2 TDBは、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号51のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号54のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-L3、ならびに(ii)(a)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号67のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号68のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号69のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号70のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、CD3結合ドメインを含む。
一実施形態では、抗HER2 TDBは、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号51のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号54のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-L3、ならびに(ii)(a)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号67のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号68のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号69のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号70のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、CD3結合ドメインを含む。
一実施形態では、抗HER2 TDBは、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号58のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号53のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-L3、ならびに(ii)(a)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号67のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号68のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号69のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号70のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、CD3結合ドメインを含む。
一実施形態では、抗HER2 TDBは、(a)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号58のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号55のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-L3、ならびに(ii)(a)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号67のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号68のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号69のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号70のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、CD3結合ドメインを含む。
さらなる態様では、上記実施形態のいずれかによる抗HER2抗体は、下の1~7節に記載される特長のいずれかを、単独でまたは組み合わせで組み込み得る。
1.抗体親和性
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下、または0.001nM以下(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。
一実施形態では、Kdは、放射標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。一実施形態では、RIAは、Fabバージョンの目的の抗体及びその抗原を用いて実施される。例えば、抗原に対するFabの溶液結合親和性は、非標識抗原の一連の滴定の存在下で、Fabを最小濃度の(125I)標識抗原と平衡化し、次いで抗Fab抗体でコーティングされたプレートと結合した抗原を捕捉することによって、測定される(例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照されたい)。アッセイの条件を確立するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を、50mMの炭酸ナトリウム(pH9.6)中5μg/mlの捕捉抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩コーティングし、その後、PBS中2%(w/v)ウシ血清アルブミンで2~5時間にわたって室温(約23℃)で遮断する。非吸着性のプレート(Nunc番号269620)中で、100pMまたは26pM[125I]-抗原を、目的のFabの段階希釈液と混合する(例えば、Presta et al.,Cancer Res.57:4593-4599(1997)における抗VEGF抗体Fab-12の評価と一貫する)。その後、目的のFabを一晩インキュベートするが、インキュベーションをより長い期間(例えば、約65時間)続けて、平衡に達することを確実にすることができる。その後、室温でのインキュベーション(例えば、1時間)のために混合物を捕捉プレートに移す。その後、溶液を除去し、プレートをPBS中0.1%ポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))で8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μl/ウェルのシンチラント(scintillant)(MICROSCINT-20(商標);Packard)を添加し、プレートをTOPCOUNT(商標)ガンマ計数器(Packard)上で10分間、計数する。最大結合の20%以下をもたらす各Fabの濃度を競合結合アッセイでの使用に選択する。
別の実施形態によると、Kdは、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定される。例えば、BIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を使用するアッセイは、約10の応答単位(RU)で固定化抗原CM5チップを用いて25℃で実施される。一実施形態では、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサチップ(CM5、BIACORE,Inc.)は、供給者の指示書に従って、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いて活性化される。抗原を10mMの酢酸ナトリウム(pH4.8)で5μg/ml(約0.2μM)になるまで希釈した後に、5μl/分の流量で注入して、およそ10応答単位(RU)のカップリングしたタンパク質を得る。抗原の注入後、1Mのエタノールアミンを注入して、未反応基を遮断する。反応速度測定のために、Fabの2倍連続希釈液(0.78nM~500nM)を、25℃の0.05%ポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤(PBST)を有するPBS中におよそ25μl/分の流量で注入する。会合速度(kon)及び解離速度(koff)は、単純な1対1のラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)Evaluation Softwareバージョン3.2)を使用して、会合センサグラムと解離センサグラムとを同時に当てはめることによって計算される。平衡解離定数(Kd)を、比率kon/koffとして計算する。例えば、Chen et al.,Biol.293:865-881(1999)を参照されたい。上記表面プラズモン共鳴アッセイによるon速度が106M-1s-1を超える場合、on速度は、ストップトフローを備えた分光光度計(Aviv Instruments)、または撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM-AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)等の分光計で測定される場合に、増加する抗原濃度の存在下で、25℃で、PBS中20nMの抗-抗原抗体(Fab型)(pH7.2)の蛍光発光強度(励起=295nm、発光=340nm、16nm帯域通過)の増加または減少を測定する蛍光消光技法を使用して決定することができる。
2.抗体断片
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、抗体断片である。抗体断片には、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、及びscFv断片、ならびに以下に記載される他の断片が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の抗体断片の概説については、Hudson et al.Nat.Med.9:129-134(2003)を参照されたい。scFv断片の概説については、例えば、Pluckthun,in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag,New York),pp.269-315(1994)を参照されたく、また、WO93/16185号、ならびに米国特許第5,571,894号及び同第5,587,458号も参照されたい。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、増加したインビボ半減期を有するFab及びF(ab’)2断片の考察については、米国特許第5,869,046号を参照されたい。
ダイアボディは、二価または二重特異性であり得る2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、EP404,097、WO1993/01161、Hudson et al.Nat.Med.9:129-134(2003)、及びHollinger et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:6444-6448(1993)を参照されたい。トリアボディ及びテトラボディもまた、Hudson et al.Nat.Med.9:129-134(2003)に記載されている。
単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てもしくは一部、または軽鎖可変ドメインの全てもしくは一部を含む、抗体断片である。ある特定の実施形態では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,MA、例えば、米国特許第6,248,516B1号を参照されたい)。
抗体断片は、本明細書に記載される無傷抗体のタンパク質消化ならびに組み換え宿主細胞(例えばE.coliまたはファージ)による産生を含むが、これらに限定されない種々の技法によって作製することができる。
3.キメラ抗体及びヒト化抗体
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、キメラ抗体である。ある特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号、及びMorrison et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984))に記載されている。一例において、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、または非ヒト霊長類、例えば、サル由来の可変領域)及びヒト定常領域を含む。さらなる例では、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のクラスまたはサブクラスから変更された「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合断片を含む。
ある特定の実施形態では、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、ヒトに対する免疫原性を低減する一方で、親非ヒト抗体の特異性及び親和性は保持するようにヒト化される。一般に、ヒト化抗体は、1つ以上の可変ドメインを含み、そのHVR、例えば、CDR(またはそれらの部分)は、非ヒト抗体に由来し、FR(またはそれらの部分)は、ヒト抗体配列に由来する。ヒト化抗体は、任意に、ヒト定常領域の少なくとも一部も含む。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体におけるいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性または親和性を復元または改善するように、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換される。
ヒト化抗体及びそれらの作製方法は、例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)で概説されており、例えば、Riechmann et al.,Nature332:323-329(1988)、Queen et al.,Proc.Nat′l Acad.Sci.USA86:10029-10033(1989)、米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、及び同第7,087,409号、Kashmiri et al.,Methods36:25-34(2005)(特異性決定領域(SDR)移植について説明する)、Padlan,Mol.Immunol.28:489-498(1991)(「リサーフェイシング(resurfacing)」を記載する)、Dall’Acqua et al.,Methods36:43-60(2005)(「FRシャフリング」を記載する)、ならびにOsbourn et al.,Methods36:61-68(2005)及びKlimka et al.,Br.J.Cancer,83:252-260(2000)(FRシャフリングへの「誘導選択(guided selection)」アプローチについて説明する)にさらに記載されている。
ヒト化に使用され得るヒトフレームワーク領域には、「ベストフィット」法を使用して選択されるフレームワーク領域(例えば、Sims et al.J.Immunol.151:2296(1993)を参照されたい)、軽鎖または重鎖可変領域の特定の下位集団のヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992)、及びPresta et al.J.Immunol.,151:2623(1993)を参照されたい)、ヒト成熟(体細胞突然変異した)フレームワーク領域またはヒト生殖系列フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)を参照されたい)、ならびにFRライブラリのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(例えば、Baca et al.,J.Biol.Chem.272:10678-10684(1997)及びRosok et al.,J.Biol.Chem.271:22611-22618(1996)を参照されたい)が含まれるが、これらに限定されない。
4.ヒト抗体
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野で既知の種々の技法を使用して産生され得る。ヒト抗体は、一般に、van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.5:368-74(2001)及びLonberg,Curr.Opin.Immunol.20:450-459(2008)に記載されている。
ヒト抗体は、抗原攻撃に応答してヒト可変領域を有する無傷ヒト抗体または無傷抗体を産生するように修飾されたトランスジェニック動物に免疫原を投与することによって調製することができる。かかる動物は、典型的には、内因性免疫グロブリン遺伝子座を置き換えるか、または染色体外に存在するか、もしくは動物の染色体に無作為に組み込まれるヒト免疫グロブリン遺伝子座の全てまたは一部を含有する。かかるトランスジェニックマウスにおいて、内因性免疫グロブリン遺伝子座は、一般に、不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の概説については、Lonberg,Nat.Biotech.23:1117-1125(2005)を参照されたい。例えば、XENOMOUSE(商標)技術について記載している米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号、HUMAB(登録商標)技術について記載している米国特許第5,770,429号、K-M MOUSE(登録商標)技術について記載している米国特許第7,041,870号、ならびに米国特許出願公開第2007/0061900号(VELOCIMOUSE(登録商標)技術について記載)も参照されたい。かかる動物によって生成された無傷抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによってさらに修飾され得る。
ヒト抗体は、ハイブリドーマに基づく方法によって作製することもできる。ヒトモノクローナル抗体を産生するためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞系が記載されている。(例えば、Kozbor J.Immunol.,133:3001(1984)、Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987)、及びBoerner et al.,J.Immunol.,147:86(1991)を参照されたい。)ヒトB細胞ハイブリドーマ技術によって生成されるヒト抗体も、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562(2006)に記載されている。追加の方法には、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞系由来のモノクローナルヒトIgM抗体の産生を記載する)、及びNi,Xiandai Mianyixue,26(4):265-268(2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマを記載する)に記載されるものを含む。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)についても、Vollmers and Brandlein,Histology and Histopathology,20(3):927-937(2005)及びVollmers and Brandlein,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185-91(2005)に記載されている。
ヒト抗体は、ヒト由来のファージディスプレイライブラリから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによって生成することもできる。その後、かかる可変ドメイン配列は、所望のヒト定常ドメインと組み合わせられ得る。抗体ライブラリからヒト抗体を選択するための技法が以下に記載されている。
5.ライブラリ由来抗体
本発明の抗体は、所望の活性(複数可)を有する抗体についてコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることによって単離され得る。例えば、ファージディスプレイライブラリを生成し、所望の結合特性を保有する抗体についてかかるライブラリをスクリーニングするための多様な方法が、当該技術分野で既知である。かかる方法は、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001)に概説され、例えば、McCafferty et al.,Nature348:552-554、Clackson et al.,Nature352:624-628(1991)、Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1992)、Marks and Bradbury,in Methods in Molecular Biology248:161-175(Lo,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2003)、Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299-310(2004)、Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073-1093(2004)、Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA101(34):12467-12472(2004)、及びLee et al.,J.Immunol.Methods284(1-2):119-132(2004)にさらに記載されている。
ある特定のファージディスプレイ法では、VH及びVL遺伝子のレパートリーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別個にクローニングされ、ファージライブラリ中で無作為に組み換えられ、それは次いで、Winter et al.,Ann.Rev.Immunol,12:433-455(1994)に記載されるように、抗原結合ファージについてスクリーニングすることができる。ファージは、典型的には、抗体断片を一本鎖Fv(scFv)断片またはFab断片のいずれかとしてディスプレイする。免疫化源由来のライブラリは、ハイブリドーマの構築を必要とすることなく、免疫原に高親和性な抗体を提供する。代替的に、Griffiths et al.,EMBO J,12:725-734(1993)によって記載されるように、ナイーブレパートリーは、クローニングされ(例えば、ヒトから)、いかなる免疫化も伴わずに、幅広い非自己抗原また自己抗原に対する抗体の単一の源を提供することができる。最後に、Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381-388(1992)に記載されるように、ナイーブライブラリは、幹細胞から再配列されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、無作為配列を含有するPCRプライマーを使用して、高度可変CDR3領域をコードし、かつインビトロで再配列を達成することによって、合成的に作製することもできる。ヒト抗体ファージライブラリについて記載している特許公開には、例えば、米国特許第5,750,373号、ならびに米国特許公開第2005/0079574号、同第2005/0119455号、同第2005/0266000号、同第2007/0117126号、同第2007/0160598号、同第2007/0237764号、同第2007/0292936号、及び同第2009/0002360号が含まれる。
ヒト抗体ライブラリから単離された抗体または抗体断片は、本明細書においてヒト抗体またはヒト抗体断片と見なされる。
6.多重特異性抗体
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗HER2抗体は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。ある特定の実施形態では、結合特異性のうちの一方は、HER2に対するものであり、他方は、任意の他の抗原に対するものである。ある特定の実施形態では、二重特異性抗体は、HER2の2つの異なるエピトープに結合し得る。二重特異性抗体をまた使用して、細胞傷害性薬剤を、HER2を発現する細胞に限局させてもよい。二重特異性抗体は、完全長抗体または抗体断片として調製され得る。ある特定の実施形態では、多重特異性抗体は、上述のTDBである。
多重特異性抗体を作製するための技法は、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組み換え同時発現(Milstein and Cuello,Nature305:537(1983))、WO93/08829、及びTraunecker et al.,EMBO J.10:3655(1991)を参照されたい)、ならびに「ノブ・イン・ホール(knob-in-hole)」操作(例えば、米国特許第5,731,168号を参照されたい)が挙げられるが、これらに限定されない。多重特異性抗体の「ノブ・イン・ホール」操作は、ノブを含有する第1のアーム、及び第1のアームのノブが結合され得るホールを含有する第2のアームを生成するように利用され得る。本発明の多重特異性抗体のノブは、一実施形態では、抗CD3アームであり得る。代替的に、本発明の多重特異性抗体のノブは、一実施形態では、抗HER2アーム等の抗標的/抗原アームであり得る。本発明の多重特異性抗体のホールは、一実施形態では、抗CD3アームであり得る。代替的に、本発明の多重特異性抗体のホールは、一実施形態では、抗HER2アーム等の抗標的/抗原アームであり得る。多重特異性抗体は、免疫グロブリンクロスオーバー(Fabドメイン交換またはCrossMab形式としても知られる)技術を使用して操作されてもよい(例えば、WO2009/080253、Schaefer et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,108:11187-11192(2011)を参照されたい)。多重特異性抗体は、抗体Fc-ヘテロ二量体分子を作製するための静電気ステアリング(electrostatic steering)作用の操作(WO2009/089004A1)、2つ以上の抗体または断片の架橋(例えば、米国特許第4,676,980号、及びBrennan et al.,Science,229:81(1985)を参照されたい)、二重特異性抗体を産生するためのロイシンジッパーの使用(例えば、Kostelny et al.,J.Immunol.,148(5):1547-1553(1992)を参照されたい)、二重特異性抗体断片を作製するための「ダイアボディ」技術の使用(例えば、Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444-6448(1993)を参照されたい)、及び一本鎖Fv(sFv)二量体の使用(例えば、Gruber et al.,J.Immunol.,152:5368(1994)を参照されたい)、ならびに例えば、Tutt et al.J.Immunol.147:60(1991)に記載される三重特異性(trispecific)抗体の調製によって作製することもできる。多重特異性抗体は、ビスFab形式を使用して生成され得る(例えば、WO2011069104を参照されたい)。
「オクトパス(Octopus)抗体」を含む、3つ以上の機能抗原結合部位を有する操作された抗体も、本明細書に含まれる(例えば、US2006/0025576A1を参照されたい)。
抗体またはその抗体断片は、CD3、ならびに別の異なる抗原(例えば、第2の生物学的分子)に結合する抗原結合部位を含む「二重作用FAb」または「DAF」も含み得る(例えば、US2008/0069820を参照されたい)。
7.抗体変異型
ある特定の実施形態では、本発明の抗HER2抗体のアミノ酸配列変異型が企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/または他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列変異型は、抗体をコードするヌクレオチド配列中に適切な修飾を導入することによって、またはペプチド合成によって調製することができる。かかる修飾には、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/またはそこへの挿入、及び/またはその置換が挙げられる。欠失、挿入、及び置換を任意に組み合わせて最終構築物を得ることができるが、但し、その最終構築物が、所望の特性、例えば、抗原結合性を保有することを条件とする。
a.置換、挿入、及び欠失変異型
ある特定の実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体変異型が提供される。置換型変異誘発の目的の部位には、HVR及びFRが含まれる。保存的置換は、表2において、「好ましい置換」の見出しの下に示される。より実質的な変化は、表2において、「例示的な置換」の見出しの下に提供され、またアミノ酸側鎖クラスを参照して以下にさらに記載される。アミノ酸置換は、目的の抗体中に導入され得、その産物は、所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合、減少した免疫原性、または改善されたADCCもしくはCDCについてスクリーニングされ得る。
表2.例示的、かつ好ましいアミノ酸置換
アミノ酸は、一般的な側鎖特性に従って群分けされ得る。
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile、
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln、
(3)酸性:Asp、Glu、
(4)塩基性:His、Lys、Arg、
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro、
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのあるメンバーと別のクラスとの交換を伴う。
ある種類の置換型変異型は、親抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基を置換することを伴う。一般に、さらなる試験ために選択される結果として生じる変異型(複数可)は、親抗体と比較したある特定の生物学的特性(例えば、親和性の増加、免疫原性の低減)の修正(例えば、改善)を有し、かつ/または実質的に保持された親抗体のある特定の生物学的特性を有する。例示的な置換型変異型は、例えば、本明細書に記載される技法等のファージディスプレイに基づく親和性成熟技法を使用して簡便に生成され得る親和性成熟抗体である。簡潔には、1つ以上のHVR残基が突然変異され、変異型抗体がファージ上にディスプレイされ、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。
改変(例えば、置換)がHVRに行われて、例えば、抗体親和性を改善することができる。かかる改変は、HVR「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセス中に高頻度で突然変異を経るコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.207:179-196(2008)を参照されたい)、及び/または抗原と接触する残基において行われてもよく、結果として生じる変異型VHまたはVLは、結合親和性について試験される。二次ライブラリを構築し、そこから再選択することによる親和性成熟は、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology178:1-37に記載されている(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,(2001)。)親和性成熟のいくつかの実施形態では、多様性が、多様な方法(例えば、エラー-プローンPCR、鎖シャフリング、またはオリゴヌクレオチド指向性変異誘発)のうちのいずれかによって、成熟させるために選択された可変遺伝子に導入される。その後、二次ライブラリが作製される。その後、このライブラリがスクリーニングされて、所望の親和性を有する任意の抗体変異型を特定する。多様性を導入する別の方法は、数個のHVR残基(例えば、一度に4~6個の残基)が無作為化されるHVR指向性アプローチを伴う。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異誘発またはモデリングを使用して、具体的に特定され得る。特にCDR-H3及びCDR-L3が標的とされることが多い。
ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、かかる改変が抗原に結合する抗体の能力を実質的に低下させない限り、1つ以上のHVR内で生じ得る。例えば、結合親和性を実質的に低減しない保存的改変(例えば、本明細書に提供される保存的置換)がHVRで行われ得る。かかる改変は、例えば、HVR内の抗原接触残基の外側であってもよい。上述の変異型VH配列及びVL配列のある特定の実施形態では、各HVRは、改変されないか、または1つより多く、2つより多く、もしくは3つより多くのアミノ酸置換を含有しないかのいずれかである。
変異誘発のために標的とされ得る抗体の残基または領域の特定に有用な方法は、Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081-1085によって説明される「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれる。この方法では、残基または標的残基群(例えば、arg、asp、his、lys、及びglu等の荷電残基)が特定され、中性または負荷電アミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)によって置き換えられて、抗体と抗原との相互作用に影響が及ぼされたかを決定する。さらなる置換が最初の置換に対する機能感受性を示すアミノ酸位置に導入され得る。代替的に、または加えて、抗体と抗原との間の接触点を特定するための抗原-抗体複合体の結晶構造。かかる接触残基及び隣接する残基が置換の候補として標的とされ得るか、または排除され得る。変異型がスクリーニングされて、それらが所望の特性を有するかを決定することができる。
アミノ酸配列挿入としては、長さが1残基から100以上の残基の範囲を含有するポリペプチドの範囲であるアミノ末端及び/またはカルボキシル末端の融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が挙げられる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入変異型には、酵素(例えば、ADEPTのための)またはポリペプチドへの抗体のN末端もしくはC末端の融合が挙げられ、これは抗体の血清半減期を増加させる。
b.グリコシル化変異型
ある特定の実施形態では、本発明の抗HER2抗体を改変して、抗体がグリコシル化する程度を増加または減少させることができる。本発明の抗HER2抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、1つ以上のグリコシル化部位を作り出すかまたは除去するように、アミノ酸配列を改変することによって簡便に達成することができる。
この抗体がFc領域を含む場合、それに結合した炭水化物が改変され得る。哺乳類細胞によって産生される天然抗体は、典型的には、一般にN結合によってFc領域のCH2ドメインのAsn297に結合される分岐状の二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al.TIBTECH15:26-32(1997)を参照されたい。オリゴ糖としては、種々の炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、ならびに二分岐オリゴ糖構造の「幹」のGlcNAcに結合したフコースが挙げられ得る。いくつかの実施形態では、ある特定の特性が改善された抗体変異型を作製するために、本発明の抗体におけるオリゴ糖の修飾が行われ得る。
一実施形態では、Fc領域に(直接的または間接的に)結合されたフコースを欠く炭水化物構造を有する抗HER2抗体変異型が提供される。例えば、かかる抗体中のフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%、または20%~40%であり得る。フコースの量は、例えば、WO2008/077546に記載されるMALDI-TOF質量分析によって測定される、Asn297に結合した全ての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッド、及び高マンノース構造)の合計に対するAsn297での糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定される。Asn297は、Fc領域内の約297位(Fc領域残基のEU番号付け)に位置するアスパラギン残基を指すが、Asn297はまた、抗体における小規模な配列変異に起因して、297位から約±3アミノ酸、上流または下流、すなわち、294~300位の間に位置してもよい。かかるフコシル化変異型は、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許公開第2003/0157108号(Presta,L.)、同第2004/0093621号(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)を参照されたい。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体変異型に関する刊行物の例には、US2003/0157108、WO2000/61739、WO2001/29246、US2003/0115614、US2002/0164328、US2004/0093621、US2004/0132140、US2004/0110704、US2004/0110282、US2004/0109865、WO2003/085119、WO2003/084570、WO2005/035586、WO2005/035778、WO2005/053742、WO2002/031140、Okazaki et al.J.Mol.Biol.336:1239-1249(2004)、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生することができる細胞系の例には、タンパク質フコシル化が欠損したLec13CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986)、米国特許出願第2003/0157108A1号(Presta,L)、及びWO2004/056312A1(Adamsら)、特に実施例11)、及びアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞等のノックアウト細胞系(例えば、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)、Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680-688(2006)、及びWO2003/085107を参照されたい)が挙げられる。
例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分されている、二分されたオリゴ糖を有する抗HER2抗体変異型がさらに提供される。かかる抗体変異型は、低減されたフコシル化及び/または改善されたADCC機能を有し得る。かかる抗体変異型の例は、例えば、WO2003/011878(Jean-Mairet et al.)、米国特許第6,602,684号(Umana et al.)、及び2005/0123546(Umana et al.)に記載されている。Fc領域に結合したオリゴ糖内に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体変異型も提供される。かかる抗体変異型は、改善されたCDC機能を有し得る。かかる抗体変異型は、例えば、WO1997/30087(Patel et al.)、WO1998/58964(Raju、S.)、及びWO1999/22764(Raju、S.)に記載されている。
c.Fc領域変異型
ある特定の実施形態では、1つ以上のアミノ酸修飾が、本発明の抗HER2抗体のFc領域内に導入され得、それによりFc領域変異型が生成され得る(例えば、US2012/0251531を参照されたい)。Fc領域変異型は、1つ以上のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fc領域)を含み得る。
ある特定の実施形態では、本発明は、全てではなくいくつかのエフェクター機能を保有し、それにより、インビボでの抗体の半減期が重要であるが、さらにある特定のエフェクター機能(補体及びADCC等)が不必要であるか、または有害である用途に対して望ましい候補となる、抗HER2抗体変異型を企図する。インビトロ及び/またはインビボ細胞傷害性アッセイを行って、CDC及び/またはADCC活性の低減/枯渇を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを行って、抗体がFcγR結合を欠く(故にADCC活性を欠く可能性が高い)が、FcRn結合能力を保持していることを確実にすることができる。ADCCを媒介するための初代細胞であるNK細胞が、Fc(RIIIのみを発現する一方で、単球は、Fc(RI、Fc(RII、及びFc(RIIIを発現する。造血細胞でのFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-492(1991)の頁464の表3に要約されている。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom,I.et al.Proc.Nat′l Acad.Sci.USA83:7059-7063(1986)を参照されたい)、及びHellstrom,I et al.,Proc.Nat′l Acad.Sci.USA82:1499-1502(1985)、5,821,337(Bruggemann,M.et al.,J.Exp.Med.166:1351-1361(1987)を参照されたい)に記載される。代替的に、非放射性アッセイ方法が用いられ得る(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA、及びCytoTox96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ(Promega,Madison,WI)を参照されたい。かかるアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。代替的に、または加えて、目的の分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes et al.Proc.Nat′l Acad.Sci.USA95:652-656(1998)に開示の動物モデルで評価され得る。C1q結合アッセイを実行して、抗体がC1qに結合することができず、それ故にCDC活性を欠くことを確認することもできる。例えば、WO2006/029879及びWO2005/100402におけるC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを行ってもよい(例えば、Gazzano-Santoro et al.J.Immunol.Methods202:163(1996)、Cragg,M.S.et al.Blood.101:1045-1052(2003)、及びCragg,M.S.and M.J.Glennie Blood.103:2738-2743(2004)を参照されたい)。FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期の決定も、当該技術分野で既知の方法を使用して行うことができる(例えば、Petkova,S.B.et al.Int′l.Immunol.18(12):1759-1769(2006)を参照されたい)。
低減したエフェクター機能を有する抗体としては、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、及び329のうちの1つ以上の置換を有する抗体が挙げられる(米国特許第6,737,056号及び同第8,219,149号)。かかるFc突然変異型は、アラニンへの残基265及び297の置換を有するいわゆる「DANA」Fc突然変異型を含む、アミノ酸位置265、269、270、297、及び327のうちの2つ以上に置換を有するFc突然変異型を含む(米国特許第7,332,581号及び同第8,219,149号)。
ある特定の実施形態では、抗体の野生型ヒトFc領域の位置329におけるプロリンが、グリシンもしくはアルギニン、または、Fcのプロリン329とFcgRIIIのトリプトファン残基Trp87及びTrp110との間に形成される、Fc/Fcガンマ受容体界面内のプロリンサンドイッチを破壊するのに十分に大きなアミノ酸残基で置換される(Sondermann et al.:Nature406,267-273(20 Jul.2000))。ある特定の実施形態では、抗体は、少なくとも1つのさらなるアミノ酸置換を含む。一実施形態では、さらなるアミノ酸置換は、S228P、E233P、L234A、L235A、L235E、N297A、N297D、またはP331Sであり、さらに別の実施形態では、少なくとも1つのさらなるアミノ酸置換は、ヒトIgG1 Fc領域のL234A及びL235A、またはヒトIgG4 Fc領域のS228P及びL235Eであり(例えば、US2012/0251531を参照されたい)、さらに別の実施形態では、少なくとも1つのさらなるアミノ酸置換は、ヒトIgG1 Fc領域のL234A及びL235AならびにP329Gである。
FcRへの結合が改善または縮小されたある特定の抗体変異型が記載される。(例えば、米国特許第6,737,056号、WO2004/056312、及びShields et al.,J.Biol.Chem.9(2):6591-6604(2001)を参照されたい。)
ある特定の実施形態では、抗体変異型は、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の位置298、333、及び/または334(残基のEU番号付け)に置換を有するFc領域を含む。
いくつかの実施形態では、例えば、米国特許第6,194,551号、WO99/51642、及びIdusogie et al.J.Immunol.164:4178-4184(2000)に記載されるように、改変は、改変された(すなわち、改善された、または縮小された)C1q結合及び/または補体依存性細胞傷害(CDC)をもたらすFc領域において行われる。
母体IgGの胎児への移入に関与する、半減期が増加しかつ新生児型Fc受容体(FcRn)への結合が改善された抗体(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)及びKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))については、US2005/0014934A1(Hinton et al.)に記載される。それらの抗体は、Fc領域のFcRnへの結合を改善する1つ以上の置換を有するFc領域をそこに含む。かかるFc変異型は、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、または434のうちの1つ以上に置換、例えば、Fc領域残基434の置換を有するものを含む(米国特許第7,371,826号)。
Fc領域変異型の他の例に関して、Duncan & Winter,Nature322:738-40(1988)、米国特許第5,648,260号、米国特許第5,624,821号、及びWO94/29351も参照されたい。
いくつかの態様では、抗HER2抗体は、N297G突然変異を含むFc領域を含む。
いくつかの実施形態では、N297G突然変異を含む抗HER2抗体は、1つ以上の重鎖定常ドメインを含み、この1つ以上の重鎖定常ドメインは、第1のCH1(CH11)ドメイン、第1のCH2(CH21)ドメイン、第1のCH3(CH31)ドメイン、第2のCH1(CH12)ドメイン、第2のCH2(CH22)ドメイン、及び第2のCH3(CH32)ドメインから選択される。いくつかの事例では、1つ以上の重鎖定常ドメインのうちの少なくとも1つは、別の重鎖定常ドメインと対になる。いくつかの事例では、CH31及びCH32ドメインは各々、突起または空隙を含み、CH31ドメイン内のこの突起または空隙は、それぞれ、CH32ドメイン内の空隙または突起中に位置付けることができる。いくつかの事例では、CH31及びCH32ドメインは、該突起と空隙との間の境界面において接触する。いくつかの事例では、CH21及びCH22ドメインは各々、突起または空隙を含み、CH21ドメイン内のこの突起または空隙は、それぞれ、CH22ドメイン内の空隙または突起中に位置付けることができる。他の事例では、CH21及びCH22ドメインは、該突起と空隙との間の境界面において接触する。いくつかの事例では、抗HER2抗体は、IgG1抗体である。
d.システイン操作された抗体変異型
ある特定の実施形態では、抗体の1つ以上の残基がシステイン残基で置換されている、システイン操作された抗体、例えば、「チオマブ(thioMAb)」を作製することが望ましい場合がある。特定の実施形態では、置換された残基は、抗体の利用しやすい部位で生じる。それらの残基をシステインで置換することによって、反応性のチオール基はそれによって、抗体の利用しやすい部位に位置付けられ、それを使用して、抗体を、薬物部分またはリンカー-薬物部分等の他の部分にコンジュゲートして、本明細書にさらに記載される、免疫コンジュゲートを作製してもよい。ある特定の実施形態では、次の残基のうちの任意の1つ以上が、システインで置換され得る:軽鎖のV205(Kabat番号付け)、重鎖のA118(EU番号付け)、及び重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)。システイン操作された抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されるように生成され得る。
e.抗体誘導体
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される本発明の抗HER2抗体は、当該技術分野で既知であり、かつ容易に入手可能な、追加の非タンパク質性部分を含有するようにさらに修飾されてもよい。抗体の誘導体化に好適な部分には、水溶性ポリマーが含まれるが、これに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な例には、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレン(propropylene)グリコールホモポリマー、プロリプロピレン(prolypropylene)オキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のため、製造時に有利であり得る。ポリマーは、任意の分子量のものであり得、分岐状または非分岐状であり得る。抗体に結合したポリマーの数は異なり得、1つより多くのポリマーが結合される場合、それらは、同じ分子または異なる分子であり得る。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/または種類は、改善される抗体の特定の特性または機能、抗体の誘導体が規定の条件下で療法で使用されるか等を含むが、これらに限定されない検討事項に基づいて決定され得る。
別の実施形態では、放射線への曝露によって選択的に加熱され得る、抗体及び非タンパク質性部分のコンジュゲートが提供される。一実施形態では、非タンパク質性部分は、カーボンナノチューブである(Kam et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA102:11600-11605(2005))。放射線は、任意の波長のものであってもよく、通常の細胞を傷つけないが、非タンパク質性部分を、抗体-非タンパク質性部分に近位の細胞を死滅させる温度まで加熱する波長を含むが、これらに限定されない。
B.組み換え法及び組成物
本発明の抗HER2抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号に記載される、組み換え方法及び組成物を使用して産生され得る。一実施形態では、本明細書に記載される抗HER2抗体をコードする単離された核酸が提供される。かかる核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列及び/または抗体のVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖及び/または重鎖)をコードし得る。さらなる実施形態では、かかる核酸を含む1つ以上のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。さらなる実施形態では、かかる核酸を含む宿主細胞が提供される。1つのかかる実施形態では、宿主細胞は、(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、または(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクター、及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクターを含む(例えば、それらで形質転換されている)。一実施形態では、宿主細胞は、真核生物のもの、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはリンパ系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。一実施形態では、抗HER2抗体を作製する方法が提供され、本方法は、上記抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を、抗体の発現に好適な条件下で培養することと、任意に、抗体を宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から回収することとを含む。
抗HER2抗体の組み換え産生のために、例えば、上述のものなどの、抗体をコードする核酸が単離され、宿主細胞内でのさらなるクローニング及び/または発現のために、1つ以上のベクター中に挿入される。かかる核酸は、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能であるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)、容易に単離され、配列決定され得る。
抗体をコードするベクターのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞は、本明細書に記載される原核生物細胞または真核生物細胞を含む。例えば、抗体は、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が必要とされない場合に、細菌において産生され得る。細菌における抗体断片及びポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5,648,237号、同第5,789,199号、及び同第5,840,523号を参照されたい。(また、E.coliにおける抗体断片の発現について説明するCharlton,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ,2003),pp.245-254も参照されたい)。発現後、抗体は、可溶性画分中で細菌細胞ペーストから単離されてもよく、さらに精製されてもよい。
原核生物に加えて、糸状菌または酵母等の真核微生物は、抗体をコードするベクターに好適なクローニングまたは発現宿主であり、グリコシル化経路が「ヒト化」されており、部分的または完全なヒトグリコシル化パターンを有する抗体の産生をもたらす、真菌及び酵母株を含む。Gerngross,Nat.Biotech.22:1409-1414(2004)、及びLi et al.,Nat.Biotech.24:210-215(2006)を参照されたい。
グリコシル化抗体の発現に好適な宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)にも由来する。無脊椎動物細胞の例としては、植物及び昆虫細胞が挙げられる。昆虫細胞と併せて、特にSpodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために使用され得る、多数のバキュロウイルス株が特定されている。
植物細胞培養物も宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、同第6,040,498号、同第6,420,548号、同第7,125,978号、及び同第6,417,429号(トランスジェニック植物において抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)技術について説明している)を参照されたい。
脊椎動物細胞も宿主として使用することができる。例えば、懸濁液中で成長するように適合される哺乳類細胞系が、有用であり得る。有用な哺乳類宿主細胞系の他の例は、SV40(COS-7)によって形質転換されたサル腎臓CV1系、ヒト胚性腎臓系(例えば、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977)に記載される293または293細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,Biol.Reprod.23:243-251(1980)に記載されるTM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76)、ヒト子宮頚部癌細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK、バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝臓細胞(Hep G2)、マウス乳房腫瘍(MMT 060562)、例えば、Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982)に記載されるTRI細胞、MRC5細胞、及びFS4細胞である。他の有用な哺乳類宿主細胞系には、DHFR-CHO細胞(Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA77:4216(1980))を含む、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ならびにY0、NS0、及びSp2/0等の骨髄腫細胞系が挙げられる。抗体産生に好適なある特定の哺乳類宿主細胞系の概説については、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ),pp.255-268(2003)を参照されたい。
C.アッセイ
本明細書に提供される本発明の抗HER2抗体は、それらの物理的/化学的特性及び/または生物学的活性について、当該技術分野で既知の種々のアッセイによって、特定されるか、スクリーニングされるか、または特徴付けられてもよい。
1.結合アッセイ及び他のアッセイ
一態様では、本発明の抗HER2抗体は、例えば、ELISA、ウェスタンブロットなどの既知の方法によって、その抗原結合活性に関して試験される。
別の態様では、競合アッセイを用いて、HER2への結合について本発明の抗HER2抗体と競合する抗体が特定され得る。
例示的な競合アッセイでは、固定化されたHER2が、HER2に結合する第1の標識抗体と、HER2への結合について第1の抗体と競合するその能力について試験されている第2の未標識抗体とを含む溶液中で、インキュベートされる。第2の抗体は、ハイブリドーマ上清中に存在してもよい。対照として、固定化されたHER2が、第1の標識抗体を含むが、第2の未標識抗体を含まない溶液中でインキュベートされる。HER2に第1の抗体が結合することを許容する条件下でのインキュベーション後、過剰な非結合抗体が除去され、固定化されたHER2に関連する標識の量が測定される。固定化されたHER2に関連する標識の量が、対照試料と比較して試験試料中で実質的に低減される場合、それは、第2の抗体がHER2への結合について第1の抗体と競合していることを示す。Harlow and Lane(1988)Antibodies:A Laboratory Manual ch.14(Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY)を参照されたい。
2.活性アッセイ
一態様では、生物学的活性を有するその抗HER2抗体を特定するためのアッセイが提供される。生物学的活性には、例えば、HER2またはそのペプチド断片に、インビボ、インビトロ、またはエキソビボのいずれかで結合することが含まれ得る。本発明の多重特異性(例えば、二重特異性)抗HER2抗体(例えば、1つの抗CD3アーム及びHER2を認識する1つのアームを有するTDB抗体)の場合、生物学的活性は、例えば、エフェクター細胞の活性化(例えば、T細胞(例えば、CD8+及び/またはCD4+T細胞)の活性化)、エフェクター細胞集団の拡張(すなわち、T細胞数の増加)、標的細胞集団の低減(すなわち、それらの細胞表面上に第2の生物学的分子を発現する細胞集団の減少)及び/または標的細胞死滅も含み得る。インビボ及び/またはインビトロでかかる生物学的活性を有する抗体が提供される。ある特定の実施形態では、本発明の抗体は、以下の本明細書の実施例に詳細に記載されるように、かかる生物学的活性について試験される。
D.免疫コンジュゲート
本発明はまた、化学療法剤または化学療法薬、成長阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、もしくは動物起源の酵素活性毒素、またはそれらの断片)、または放射性同位体等の1つ以上の細胞傷害性薬剤とコンジュゲートされた本明細書における抗HER2抗体を含む、免疫コンジュゲートを提供する。
一実施形態では、免疫コンジュゲートは、抗体が1つ以上の薬物にコンジュゲートされた抗体-薬物コンジュゲート(ADC)であり、この薬物としては、マイタンシノイド(米国特許第5,208,020号、同第5,416,064号、及び欧州特許第EP0425235B1号を参照されたい);モノメチルオーリスタチン薬物部分DE及びDF等のオーリスタチン(MMAE及びMMAF)(米国特許第5,635,483号及び同第5,780,588号及び同第7,498,298号を参照されたい);ドラスタチン;カリケアマイシンまたはその誘導体(米国特許第5,712,374号、同第5,714,586号、同第5,739,116号、同第5,767,285号、同第5,770,701号、同第5,770,710号、同第5,773,001号、及び同第5,877,296号、Hinman et al.Cancer Res.53:3336-3342(1993)、ならびにLode et al.,Cancer Res.58:2925-2928(1998)を参照されたい);ダウノマイシンまたはドキソルビシン等のアントラサイクリン(Kratz et al.,Current Med.Chem.13:477-523(2006)、Jeffrey et al.,Bioorganic & Med.Chem.Letters16:358-362(2006)、Torgov et al.,Bioconj.Chem.16:717-721(2005)、Nagy et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA97:829-834(2000)、Dubowchik et al.,Bioorg.&Med.Chem.Letters12:1529-1532(2002)、King et al.,J.Med.Chem.45:4336-4343(2002)、及び米国特許第6,630,579号を参照されたい)、メトトレキサート;ビンデシン;ドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル;テセタキセル、及びオルタタキセル等のタキサン;トリコテシン;ならびにCC1065を含むが、これらに限定されない、1つ以上の薬物にコンジュゲートされる。
別の実施形態では、免疫コンジュゲートは、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンシンタンパク質、Phytolaca americanaタンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、sapaonaria officinalis阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、及びトリコテセンを含むがこれらに限定されない酵素活性毒素またはその断片にコンジュゲートされた、本明細書に記載される抗HER2抗体を含む。
別の実施形態では、免疫コンジュゲートは、放射性原子にコンジュゲートされ、放射性コンジュゲートを形成する、本明細書に記載される抗HER2抗体を含む。多様な放射性同位体が、放射性コンジュゲートの産生に利用可能である。例には、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位体が挙げられる。放射性コンジュゲートを検出のために使用する場合、それは、シンチグラフィー研究のための放射性原子、例えば、tc99mもしくはI123、または核磁気共鳴(NMR)画像法(磁気共鳴画像法、mriとしても知られる)のためのスピン標識、例えば、再びヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン、もしくは鉄を含み得る。
抗体及び細胞傷害性薬剤のコンジュゲートは、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチルHCl)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン2,6-ジイソシアネート)、及びビス-活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)などの多様な二官能性タンパク質結合剤を使用して作製され得る。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta et al.,Science238:1098(1987)に記載されるように調製することができる。炭素-14で標識された1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体へのコンジュゲートのための例示的なキレート剤である。WO94/11026を参照されたい。リンカーは、細胞内において細胞傷害性薬物の放出を容易にする「切断可能リンカー」であってもよい。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、感光性リンカー、ジメチルリンカー、またはジスルフィド含有リンカー(Chari et al.,Cancer Res.52:127-131(1992)、米国特許第5,208,020号)が使用され得る。
本明細書の免疫コンジュゲートまたはADCは、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、及びスルホ-SMPB、ならびに市販されている(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,IL.,U.S.Aから)SVSB(サクシニミジル-(4-ビニルスルホン)安息香酸塩)を含むが、これらに限定されない架橋剤試薬を用いて調製されるかかるコンジュゲートを明白に企図するが、これに限定されない。
E.診断及び検出のための方法及び組成物
ある特定の実施形態では、本発明の抗HER2抗体のいずれも、生物学的試料中のHER2の存在の検出に有用である。本明細書で使用される「検出すること」という用語は、定量または定性検出を包含する。ある特定の実施形態では、生物学的試料は、細胞または組織を含む。
一実施形態では、診断または検出方法において使用するための抗HER2抗体が提供される。さらなる態様では、生物学的試料中のHER2の存在を検出する方法が提供される。ある特定の実施形態では、本方法は、生物学的試料と、本明細書に記載される抗HER2抗体とを、HER2に抗HER2抗体が結合することを許容する条件下で接触させることと、複合体が、抗HER2抗体とHER2との間で形成されるかどうかを検出することと、を含む。かかる方法は、インビトロ方法またはインビボ方法であり得る。
ある特定の実施形態では、標識された抗HER2抗体が提供される。標識としては、直接検出される標識または部分(蛍光標識、発色団標識、電子密度の高い標識、化学発光標識、及び放射性標識等)、ならびに間接的に、例えば、酵素反応または分子相互作用により検出される酵素またはリガンド等の部分が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な標識には、放射性同位体32P、14C、125I、3H、及び131I、希土類キレートまたはフルオレセイン及びその誘導体等のフルオロフォア、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルセリフェラーゼ(luceriferases)、例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖質オキシダーゼ、例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-リン酸塩デヒドロゲナーゼ、過酸化水素を用いて色素前駆体を酸化させる酵素、例えばHRP、ラクトペルオキシダーゼ、またはマイクロペルオキシダーゼとカップリングされた、ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼ等の複素環式オキシダーゼ、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定した遊離ラジカル等が含まれるが、これらに限定されない。
F.薬学的製剤
本発明の抗HER2抗体の薬学的製剤は、所望の程度の純度を有するかかる抗体を、1つ以上の任意の薬学的に許容される担体(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))と混合することによって、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で調製される。薬学的に許容される担体は一般に、用いられる投薬量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸等の緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化物質;防腐剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル、もしくはベンジルアルコール、メチルもしくはプロピルパラベン等のアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾール等);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジン等のアミノ酸;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトール等の糖類;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属複合体(例えば、Zn-タンパク質複合体)、ならびに/またはポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含むが、これらに限定されない。本明細書における例示的な薬学的に許容される担体は、可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)等のヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質等の介在性薬物分散剤をさらに含む。rHuPH20を含むある特定の例示的なsHASEGP及び使用方法は、米国特許公開第2005/0260186号及び同第2006/0104968号に記載されている。一態様では、sHASEGPは、コンドロイチナーゼ等の1つ以上のさらなるグリコサミノグリカナーゼと組み合わせられる。
例示的な凍結乾燥抗体製剤は、米国特許第6,267,958号に記載されている。水性抗体製剤は、米国特許第6,171,586号及びWO2006/044908に記載されるものを含み、後者の製剤は、ヒスチジン-アセテート緩衝剤を含む。
本明細書の製剤はまた、治療されている特定の適応症の必要に応じて、1つより多くの活性成分、好ましくは相互に悪影響を及ぼさない相補的活性を有する成分を含有してもよい。例えば、追加の治療剤(例えば、先の本明細書に列記されるものなど、化学療法剤、細胞傷害性薬剤、成長阻害剤、及び/または抗ホルモン剤)をさらに提供することが望ましい場合がある。かかる活性成分は、好適には、意図される目的に有効な量で、組み合わせで存在する。
活性成分は、例えば、コアセルベーション技法または界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中に、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)中に、またはマクロエマルジョン中に封入され得る。かかる技法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
徐放性調製物を調製してもよい。徐放性調製物の好適な例には、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、これらのマトリックスは、成形物品、例えば、フィルム、またはマイクロカプセルの形態である。
インビボ投与に使用される製剤は、一般に、滅菌のものである。滅菌性は、例えば、滅菌濾過膜を介する濾過によって容易に達成され得る。
G.治療方法及び組成物
本発明の抗HER2抗体のいずれか(抗HER2 TDBを含む)が、治療方法に使用され得る。
一態様では、薬剤として使用するための抗HER2抗体が提供される。さらなる態様では、細胞増殖性障害(例えば、HER陽性癌等の癌)の治療またはその進行の遅延において使用するための抗HER2抗体が提供される。ある特定の実施形態では、治療方法において使用するための抗HER2抗体が提供される。ある特定の実施形態では、本発明は、細胞増殖性障害を有する個体を治療する方法において使用するための抗HER2抗体を提供し、この方法は、有効量の抗HER2抗体を個体に投与することを含む。一実施形態では、本方法は、例えば、以下に記載されるような、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を個体に投与することをさらに含む。さらなる実施形態では、本発明は、細胞増殖性障害を有する個体において免疫機能の増強に使用するための抗HER2抗体(抗HER2 TDB等)を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、エフェクター細胞(例えば、T細胞、例えば、CD8+及び/またはCD4+T細胞)を活性化する、エフェクター細胞集団を拡張する(増加させる)、標的細胞(例えば、本発明の二重特異性TDB抗体など、本発明の抗HER2抗体により認識される第2の生物学的分子を発現する細胞)集団を低減する、及び/または標的細胞(例えば、標的腫瘍細胞)を死滅させるために有効量の抗HER2抗体を個体に投与することを含む、細胞増殖性障害を有する個体の免疫機能を増強する方法において使用するための抗HER2抗体を提供する。上記実施形態のいずれかによる「個体」は、ヒトであり得る。
さらなる態様では、本発明は、薬剤の製造または調製における抗HER2抗体の使用を提供する。一実施形態では、本薬剤は、細胞増殖性障害(例えば、癌)の治療ためのものである。さらなる実施形態では、本薬剤は、細胞増殖性障害を有する個体に有効量の薬剤を投与することを含む、細胞増殖性障害を治療する方法において使用するためのものである。かかる一実施形態では、本方法は、例えば、以下に記載されるような、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を個体に投与することをさらに含む。さらなる実施形態では、本薬剤は、個体中の、エフェクター細胞(例えば、T細胞、例えば、CD8+及び/またはCD4+T細胞)を活性化する、エフェクター細胞集団を拡張する(増加させる)、標的細胞(例えば、本発明の二重特異性TDB抗体など、本発明の抗HER2抗体により認識される第2の生物学的分子を発現する細胞)集団を低減する、及び/または標的細胞(例えば、標的腫瘍細胞)を死滅させるためのものである。さらなる実施形態では、本薬剤は、エフェクター細胞(例えば、T細胞、例えば、CD8+及び/またはCD4+T細胞)を活性化する、エフェクター細胞集団を拡張する(増加させる)、標的細胞(例えば、本発明の二重特異性TDB抗体など、本発明の抗HER2抗体により認識される第2の生物学的分子を発現する細胞)集団を低減する、及び/または標的細胞(例えば、標的腫瘍細胞)を死滅させるために有効量の薬剤を個体に投与することを含む、細胞増殖性障害を有する個体の免疫機能を増強する方法において使用するためのものである。上記実施形態のいずれかによる「個体」は、ヒトであり得る。
さらなる態様では、本発明は、細胞増殖性障害(例えば、癌)を治療するための方法を提供する。一実施形態では、本方法は、かかる細胞増殖性障害を有する個体に、有効量の抗HER2抗体を投与することを含む。かかる一実施形態では、本方法は、例えば、以下に記載されるような、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を個体に投与することをさらに含む。上記実施形態のいずれかによる「個体」は、ヒトであり得る。
さらなる態様では、本発明は、細胞増殖性障害を有する個体において、細胞増殖性障害を有する個体の免疫機能を増強するための方法を提供する。一実施形態では、本方法は、エフェクター細胞(例えば、T細胞、例えば、CD8+及び/またはCD4+T細胞)を活性化する、エフェクター細胞集団を拡張する(増加させる)、標的細胞(例えば、本発明の二重特異性TDB抗体など、本発明の抗HER2抗体により認識される第2の生物学的分子を発現する細胞)集団を低減する、及び/または標的細胞(例えば、標的腫瘍細胞)を死滅させるために有効量の抗HER2抗体を個体に投与することを含む。一実施形態では、「個体」は、ヒトである。
さらなる態様では、本発明は、HER2陽性癌を含む、HER2を発現する癌の治療方法を提供する。一実施形態では、本方法は、かかる癌を有する個体に、有効量の本発明の抗HER2抗体を投与することを含む。一実施形態では、抗HER2抗体は、単一特異性の二価の抗体である。別の実施形態では、抗HER2抗体は、抗HER2標的アーム及び抗CD3標的アームを有する二重特異性TDB抗体である。好ましい実施形態では、HER2-TDBは、患者に有効用量で投与した場合、許容可能な毒性プロファイルを保有する。一実施形態では、許容可能な毒性プロファイルを有するHER2-TDBのCD3アームは、低親和性CD3アームである。一実施形態では、許容可能な毒性プロファイルを有するHER2-TDBのCD3アームは、40G5cである。
本発明の抗体は、療法において、単独で、または他の薬剤と組み合わせのいずれかで使用され得る。例えば、本発明の抗体は、少なくとも1つの追加の治療剤と共投与されてもよい。ある特定の実施形態では、追加の治療剤は、化学治療剤、成長阻害剤、細胞傷害性薬剤、放射線療法で使用される薬剤、抗血管新生剤、アポトーシス剤、抗チューブリン剤、または上皮成長因子受容体(EGFR)アンタゴニスト(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤)、HER1/EGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ(Tarceva(商標))、血小板由来成長因子阻害剤(例えば、Gleevec(商標)(メシル酸イマチニブ))、COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブ)、インターフェロン、サイトカイン、次の標的、ErbB2、ErbB3、ErbB4、PDGFR-ベータ、BlyS、APRIL、BCMA VEGF、もしくはVEGF受容体(複数可)のうちの1つ以上に結合する抗体等の本発明の抗HER2抗体以外の抗体、TRAIL/Apo2、PD-1、PD-L1、PD-L2、または別の生物活性もしくは有機化学剤等の他の薬剤である。
いくつかの実施形態では、抗HER2抗体は、PD-1軸結合アンタゴニストまたは追加の治療剤と組み合わせて対象に投与される。いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、抗HER2抗体の投与前または投与後に投与される。いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、抗HER2抗体と同時投与される。いくつかの実施形態では、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニスト、及びPD-L2結合アンタゴニストからなる群から選択される。
いくつかの実施形態では、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、またはPD-1とPD-L1及び/またはPD-L2との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、または妨害する他の分子である。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体である。具体的な実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、MDX-1106(ニボルマブ)である。別の具体的な実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、MK-3475(ペンブロリズマブ)である。別の具体的な実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、CT-011(ピディリズマブ)である。別の具体的な実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、AMP-224である。別の具体的な実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、MED1-0680である。別の具体的な実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PDR001である。別の具体的な実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、REGN2810である。別の具体的な実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、BGB-108である。
他の実施形態では、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、またはPD-L1とその結合パートナーのうちの1つ以上、例えば、PD-1、B7-1との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、または妨害する他の分子である。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。さらに別の具体的な実施形態では、抗PD-L1抗体は、MPDL3280A(アテゾリズマブ)である。具体的な実施形態では、抗PD-L1抗体は、YW243.55.S70である。別の具体的な実施形態では、抗PD-L1抗体は、MDX-1105である。別の具体的な実施形態では、抗PD-L1抗体は、MSB0015718Cである。さらに別の具体的な実施形態では、抗PD-L1抗体は、MEDI4736である。
他の実施形態では、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-L2結合アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、抗PD-L2抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、またはPD-L2とその結合パートナーのうちの1つ以上、例えば、PD-1との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、または妨害する他の分子である。いくつかの実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、抗PD-L2抗体である。いくつかの実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、イムノアドヘシンである。
好ましい実施形態では、HER2陽性癌は、HER2陽性乳癌またはHER2陽性胃癌である。一実施形態では、抗HER2抗体は、HER経路を標的とする1つ以上の追加の治療剤と共投与される。一実施形態では、HER経路を標的とする治療剤は、EGFR阻害剤、HER2阻害剤、HER3阻害剤、及び/またはHER4阻害剤から選択される。一実施形態では、抗HER2抗体は、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))、T-DM1(Kadcyla(登録商標))、及びペルツズマブ(Perjeta(登録商標))から選択される1つ以上の追加の治療剤と共投与される。一実施形態では、抗HER2抗体は、トラスツズマブと共投与される。一実施形態では、HER2 TDBは、T-DM1と共投与される。一実施形態では、抗HER2抗体は、ペルツズマブと共投与される。一実施形態では、抗HER2抗体は、トラスツズマブ及びペルツズマブと共投与される。一実施形態では、抗HER2抗体は、T-DM1及びペルツズマブと共投与される。
いくつかの実施形態では、本発明は、追加の治療剤がグルココルチコイドである方法を提供する。一実施形態では、グルココルチコイドは、デキサメタゾンである。
かかる併用療法には、組み合わせ投与(2つ以上の治療剤が同じまたは別個の製剤中に含まれる)及び別個の投与が含まれ、別個の投与の場合、本発明の抗体の投与は、追加の治療剤(複数可)の投与の前、それと同時、及び/またはその後に行うことができる。一実施形態では、抗HER2抗体の投与及び追加の治療剤の投与は、互いの約1ヶ月以内、または約1週間、2週間、もしくは3週間以内、または約1、2、3、4、5、もしくは6日以内に生じる。本発明の抗HER2抗体は、放射線療法と組み合わせて使用することもできる。
本発明の抗体(及び/または任意の追加の治療剤)は、非経口投与、肺内投与、及び鼻腔内投与、ならびに局所治療で所望される場合、病変内投与を含む、任意の好適な手段によって投与することができる。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与が含まれる。いくつかの実施形態では、抗体は、皮下投与により投与される。いくつかの実施形態では、皮下注射により投与された抗HER2抗体は、患者において、静脈内注射により投与された同じ抗HER2抗体よりも低い毒性応答を呈する。投薬は、投与が短時間であるか長期であるかに部分的に応じて、任意の好適な経路、例えば、静脈内または皮下注射などの注射によるものであってもよい。単回投与または種々の時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、及びパルス注入を含むが、これらに限定されない、種々の投薬スケジュールが本明細書で企図される。
本発明の抗体は、良好な医療行為と一致する様式で、製剤化され、投薬され、投与されるだろう。これに関連して考慮する要因には、治療されている特定の障害、治療されている特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与のスケジューリング、及び医師に既知である他の要因を含む。抗体は必然的にではなく任意に、問題の障害を予防または治療するために現在使用される1つ以上の薬剤と共に製剤化される。かかる他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する抗体の量、障害または治療の種類、及び上で考察される他の要因に左右される。これらは一般に、本明細書に記載されるものと同じ投薬量及び投与経路で、または本明細書に記載される投薬量の約1~99%で、または適切であると経験的/臨床的に決定される任意の投薬量及び任意の経路で使用される。
疾患の予防または治療に関して、本発明の抗体の適切な投薬量は(単独で、または1つ以上の他の追加の治療剤と組み合わせて使用される場合)、治療される疾患の種類、抗体の種類、疾患の重症度及び経過、抗体が予防目的または治療目的で投与されるかどうか、以前の療法、患者の病歴、及び抗体への応答、ならびに主治医の裁量に左右される。抗体は好適に、1回で、または一連の治療にわたって患者に投与される。
一般的な提案として、ヒトに投与される治療有効量の抗HER2抗体は、1回以上の投与によるかにかかわらず、約0.01~約100mg/患者の体重kgの範囲であろう。いくつかの実施形態では、使用される抗体は、例えば、約0.01~約45mg/kg、約0.01~約40mg/kg、約0.01~約35mg/kg、約0.01~約30mg/kg、約0.01~約25mg/kg、約0.01~約20mg/kg、約0.01~約15mg/kg、約0.01~約10mg/kg、約0.01~約5mg/kg、または約0.01~約1mg/kgであり、毎日投与される。一実施形態では、本明細書に記載される抗HER2抗体は、21日周期の1日目に、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、または約1400mgの用量でヒトに投与される。用量は、注入物等の、単回用量で、または複数回用量(例えば、2回用量または3回用量)で投与されてもよい。病態に応じて数日間以上にわたる反復投与では、治療は一般に、疾患症状の所望の抑制が生じるまで持続されるだろう。抗体の1つの例示的な投薬量は、約0.05mg/kg~約10mg/kgの範囲だろう。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、または10mg/kgの1つ以上の用量(またはそれらの任意の組み合わせ)が、患者に投与され得る。かかる用量は、断続的に、例えば、毎週、または3週間毎に投与されてもよい(例えば、患者が、約2回~約20回、または例えば、約6回用量の抗HER2抗体を受容するようにする)。より高い初回負荷量、続いて1回以上のより低い用量が、投与されてもよい。この療法の進行は、従来の技法及びアッセイによって容易に監視される。
いくつかの実施形態では、本方法は、追加の療法をさらに含み得る。追加の療法は、放射線療法、手術、化学療法、遺伝子療法、DNA療法、ウイルス療法、RNA療法、免疫療法、骨髄移植、ナノ療法、モノクローナル抗体療法、または前述のものの組み合わせであってもよい。追加の療法は、アジュバント療法またはネオアジュバント療法の形態であり得る。いくつかの実施形態では、追加の療法は、小分子酵素阻害剤または抗転移薬の投与である。いくつかの実施形態では、追加の療法は、副作用制限剤(例えば、治療の副作用の発生及び/または重症度を軽減するよう意図された薬剤、例えば、制嘔吐剤など)の投与である。いくつかの実施形態では、追加の療法は、放射線療法である。いくつかの実施形態では、追加の療法は、手術である。いくつかの実施形態では、追加の療法は、放射線療法と手術との組み合わせである。いくつかの実施形態では、追加の療法は、ガンマ照射である。いくつかの実施形態では、追加の療法は、上述の治療剤のうちの1つ以上の別個の投与であってもよい。
H.製品
本発明の別の態様では、上述の障害の治療、予防、及び/または診断に有用な材料を含有する製品が提供される。製品は、容器と、容器上のまたは容器に関連するラベルまたは添付文書と、を含む。好適な容器には、例えば、ボトル、バイアル瓶、シリンジ、IV溶液バッグ等が挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの多様な材料から形成され得る。容器は、組成物を単独で、または病態の治療、予防、及び/または診断に有効である別の組成物と組み合わせて保持し、滅菌アクセスポートを有してもよい(例えば、容器は、静脈注射溶液バッグまたは皮下注射針によって貫通可能な栓を有するバイアル瓶であり得る)。組成物中の少なくとも1つの活性薬剤は、本発明の抗体である。ラベルまたは添付文書は、組成物が、選定した病態を治療するために使用されることを示す。さらに、製品は、(a)本発明の抗体を含む組成物をその中に収容した第1の容器、及び(b)さらなる細胞傷害性薬剤、さもなければ治療剤を含む組成物をその中に収容した第2の容器を含み得る。本発明のこの実施形態の製品は、組成物を使用して特定の病態を治療することができることを示す添付文書をさらに含み得る。代替的に、または加えて、製品は、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンガー溶液、及びデキストロース溶液等の薬学的に許容される緩衝液を含む第2(または第3)の容器をさらに含み得る。それは、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業的観点及びユーザの観点から望ましい他の材料をさらに含んでもよい。
III.
以下は、本発明の方法及び組成物の実施例である。上に提供される一般的説明を考慮すると、種々の他の実施形態が実施され得ることが理解される。
実施例1.抗HER2抗体の生成及び特徴付け
hu4D5の軽鎖可変領域に2つ、及び重鎖可変領域に4つの、hu4D5の6つのアミノ酸残基を変異誘発のために選択した。
LC-Asn30=位置X1
LC-Thr30=位置X2
HC-Asn54=位置X3
HC-Gly55=位置X4
HC-Asp98=位置X5
HC-Gly99=位置X6
残基は、図1の配列アライメントに示される。
残基X1~X6は異なり、突然変異は、Kunkel部位指向性変異誘発により導入された。Kunkel TA.(1985).’’Rapid and efficient site-specific mutagenesis without phenotypic selection.’’(PDF).Proceedings of the National Academy of Sciences U S A.82(2):488-92。
軽鎖CDR L1配列「N30、T31」は、次の変異:QT、TT、ST、ET、DT、及びNDを含むように突然変異された。
重鎖CDR H2「N54、G55」は、AG、EG、SG、NAに突然変異された。
重鎖CDR H3「D98、G99」は、EG、TG、SG、DS、及びDTに突然変異された。
示される残基番号付けは、Kabatに従う。(Kabat et al.,Sequences of proteins of immunological interest,5th Ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991))
点突然変異の組み合わせは、野生型hu4D5配列を有する、精製された一本鎖重鎖及び軽鎖DNA上に導入された。選択された突然変異の組み合わせは、HEK293細胞においてFabとして発現され、タンパク質G親和性クロマトグラフィーにより精製された。野生型4D5Fabを含む23Fab構築物のそれぞれは、単離され、組み換えヒトHer2ECD(ヒトHer2/ErbB2タンパク質、カタログ番号10004-HCCH,Sino Biological Inc.)への結合についてスクリーニングされた。
一価の結合親和性は、Biacore T200機器を使用する表面プラズモン共鳴によって決定された。凍結乾燥された組み換えHER2タンパク質は、酢酸緩衝液(pH5.0)中中2μg/mlに希釈された。タンパク質は、GE Healthcareからのアミンカップリングキット及び製造業者のプロトコル(BR-1000-50)を使用してシリーズS CM5センサーチップ上に3つの異なる密度で固定化された。
精製された抗HER2 Fabを、1.56nM~50nMの濃度系列で0.5%P20、HBS-EP泳動緩衝液中に希釈し、ブランク参照としてフローセル1を使用して全てのフローセルにわたって30μl/分の流量で注入した。各試料を3分間会合及び解離させ、各サイクル後に50mM HCLを60秒間注入することにより、各サイクル後の再生を達成した。
1:1ラングミュア結合モデルを使用して、ka及びkdを同時に当てはめることによって反応速度相互作用を特徴付けした。図2。
実施例2.抗HER2抗体の生成及び特徴付け
野生型huMAb4D5重鎖及び軽鎖の可変ドメインのアミノ酸配列を、WT huIgG Fc、または突然変異を有すFc領域を含有するプラスミドのいずれかを含有するプラスミドにサブクローニングして、ノブまたはホール変異型構築物を作製した(Trill, et al.,Curr Opin Biotechnol 1995:553-560)。残基番号は、Kabatに従う(Kabat et al.,5th Ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991))。単一特異性の二価の抗体を生成するために、WT-Fc重鎖または軽鎖DNAを含有する別個のプラスミドを哺乳類CHO細胞にトランスフェクトすることにより、2つの抗原結合ドメインを有する無償完全長IgG1を産生した。モノクローナル抗体を発現させ、標準的な方法により精製した。(Liu et al.MAbs.2010Sep-Oct;2(5):480-499)。kunkel変異誘発により指示された位置に突然変異を導入して、4D5v3の二価の抗体を上記のように産生した。4D5v3抗体のアミノ酸配列は図1に示される。
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNAYTRYADSV KGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGTGFYAMDYWGQGTLVTVSS
VH:配列番号11
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSG SRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYTTPPTFGQGTKVEIK
VL:配列番号10
位置N30、G55、及びD98でのアミノ酸の置換は、抗体の脱アミド化または異性化のため、野生型4D5と比較して、増加した安定性を有する4D5v3をもたらした。
抗HER2変異型の親和性
HER2標的に対する抗HER2 4D5v3の二価の抗体の結合親和性は、上述の条件を使用して、Biacore分析により決定された。図3は、Biacore分析の結果を示す。4D5v3は、野生型4D5の結合親和性よりも約10倍大きい結合親和性を呈した。したがって、増加した安定性を有することに加えて、4D5v3も、意外にも、HER2標的に関して増加した親和性を呈した。
実施例3.抗HER2/CD3二重特異性抗体の生成及び特徴付け
「T細胞依存性二重特異性」(TDB)抗体とも称される、ある特定の抗HER抗体の有用性が、T細胞標的治療抗体の分野において、それらの有用性に関して試験された。TDB抗体は、T細胞上の細胞表面抗原(例えば、CD3)及び腫瘍細胞上の細胞表面抗原を同時に結合することができ、それにより結合T細胞が腫瘍細胞の破壊に寄与することを可能にする。
CD3(40G5C)に指向された1つのアーム及び細胞表面抗原HER2に指向された1つのアームを有する抗HER2 TDB抗体、HER2 TDBは、ヒトIgG1としてノブ・イントゥ・ホール(knob-into-hole)形式で完全長抗体として産生された(Atwell et al.J.Mol.Biol.270: 26-35,1997)。半抗体がタンパク質A-親和性クロマトグラフィーによって精製されたE.coliまたはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞内のいずれかで発現され、以前に記載されているように(Spiess et al.Nat.Biotechnol.2013)、適切な半抗体対がインビトロでアニーリングされた。CHO細胞内でTDB抗体産生を行った場合、TDB抗体が、エフェクターのない(effector-less)変異型であり、抗体依存性の細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を始めることが不可能であるように、抗体は、例えば、残基N297(例えば、N297G)に非グリコシル化突然変異を含んだ。アニーリング後、HER2 TDB抗体を、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)によって精製し、分析用ゲル濾過、質量分析、及びポリアクリルアミドゲル電気泳動によって特徴付けた。これらの方法により、抗CD3アームとして40G5Cを有する種々のHER2 TDBが生成された。
HER2に対する抗HER2 TDBの親和性
抗HER2/CD3二重特異性抗体の親和性は、上述の条件を使用して、Biacore分析によりそれらのHER2標的に対するそれらの親和性に関して試験された。図4は、Biacore分析の結果を示す。TDBは、HER2抗原に対するある範囲の結合親和性を示した。4D5v3、4D5v21、及び4D5v22の抗体は、野生型4D5 TDBの結合親和性よりも約10倍大きい結合親和性を呈した。
HER2 TDBのインビトロ試験
ヒトPBMCの単離及びCD8+細胞の精製
リンパ球分離培地Lymphoprep(StemCell Technologies,番号07811)を使用して、ヒトPBMCを健康なボランディアの血液から分離した。CD8+単離キット(Miltenyi,番号130-094-156)を使用して、負の選択により、CD8+細胞をPBMCから抽出した。
インビトロ細胞死滅アッセイ
1日目に、黒色の透明底の96ウェル皿(Corning,番号3904)において、1ウェル当たり10k細胞の密度でSK-BR-3細胞を平板培養した。2日目に、5:1のE:T比で精製したCD8+細胞を添加した。2日目に、1000、100、10、1、0.1、0.001、0.0001、0.00001ng/mLで、細胞をHER2 TDB変異型で処理するか、または処理しなかった。4日目に、CD8+細胞をプレートから取り出し、ウェルをPBSで2x洗浄した。製造業者の指示(Promega,番号G7572)に従いCell Titer Gloアッセイを行い、プレートを読み取った。
T細胞活性化の分析
標的細胞及び精製したCD8+T細胞を、種々のHER2 TDBの存在下または不在下で混合した。T細胞活性化は、フローサイトメトリーによって分析された。インキュベーションが終わった後、細胞を、CD8-FITC(BD Bioscience,番号555634)及びCD69-PE(BD Bioscience,番号555531)ならびにCD25-APC(BD Bioscience,番号555434)で染色した。
結果
精製したヒトCD8+細胞及びHER2発現標的細胞系を使用して4D5-40G5変異型の機能的活性を評価するために、細胞死滅アッセイを行った。変異型20~24は、WT4D5-40G5及び4D5v3-40G5変異型の両方と類似する死滅活性を呈した。変異型のうち、4D5v23が最も弱かった。死滅アッセイは3つの別個のドナーで繰り返された。結果は各事例において類似した。図5A~5C。
変異型は、T細胞活性を誘導するそれらの能力に関しても試験された。試験した変異型の全てが2人の患者からから単離された細胞を使用したアッセイにおいて細胞活性を示した。T細胞活性の結果は、CD8+細胞における活性化が最も弱く、インビトロ死滅が最も弱かった4D5v23の死滅アッセイとの一致を示した。死滅及びT細胞活性化の両方において、4D5v3、4D5v20、及び4D5v24は、エフェクターにおいて最も大きい活性及び標的に対してより高い効力を示す。図6
他の実施形態
前述の発明が明確な理解のために例証及び例によって多少詳しく説明されているが、これらの説明及び例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書で引用される全ての特許及び科学文献の開示は、参照によりそれらの全体が明示的に組み込まれる。