JP7070248B2 - ハット形鋼矢板の製造方法及び圧延機 - Google Patents
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Description
なお、本明細書では、被圧延材Aに関し、圧延方向を被圧延材の「長手方向」と称し、当該長手方向に直交し且つ圧延ロール軸に平行な方向を被圧延材の「幅方向」と称し、長手方向及び幅方向の両方に直交する方向を被圧延材の「高さ方向」と称し説明する。また、被圧延材の「厚み圧下」とは、被圧延材の板厚方向に対する板厚圧下を示すものである。
先ず、ハット形鋼矢板を製造する製造装置1として基本的な構成である圧延ラインLの概略について説明する。図1は、ハット形鋼矢板を製造する圧延ラインLと、圧延ラインLに備えられる圧延機等についての説明図である。図1において圧延ラインLの圧延進行方向は矢印で示されている方向であり、当該方向へ被圧延材Aが流れ、ライン上の各孔型圧延機(以下に説明する粗圧延機、中間圧延機、仕上圧延機)において圧延が行われ、製品が造形される。なお、圧延ラインL上には図示しない複数の搬送ロールが設置されており、それら搬送ロールによって被圧延材Aは圧延ラインL上を搬送される。
次に、圧延ラインLに配置される粗圧延機17、第1中間圧延機18、第2中間圧延機19、仕上圧延機30に設けられる孔型の形状について上流側から順に図面を参照して簡単に説明する。なお、以下の説明において参照する図2~6には、参考のため各孔型において圧下が完了したときの被圧延材Aの断面を一点鎖線にて図示している。
本発明者らの検討によれば、上記製造工程における孔型59や孔型69による中間圧延工程では、ウェブ対応部3とフランジ対応部5、6との延伸の釣り合いを保って圧延が行われた場合でも、図3、4に示すように、上下孔型ロールは部位によって上下のロール径が異なるため、被圧延材A(特にフランジ対応部5、6)とロールとの相対滑り速度が部位によって異なる。フランジ対応部5、6において、上下のロール径の差が大きい部位では上下ロールの周速差によって被圧延材の伸びが抑制され、一方、上下ロールの直径が等しいピッチラインに対応する位置(以下、「中立線」と記載する)では伸びが生じやすいため、ロールバイト出口の中立線近傍のフランジに長手方向に圧縮応力が発生しやすく、圧縮応力が座屈限界を超えた場合、フランジ対応部5、6にはいわゆるフランジ波と呼ばれる形状不良が発生する。
同一の孔型により1パスの圧延を行う場合、直前の孔型の形状との関係によりフランジ延伸やウェブ延伸を考慮した形状の孔型を設計することで、フランジ波を抑制することができる。しかし、同一の孔型により2パス以上の圧延を行う場合、第2パス以降の圧延ではウェブ対応部とフランジ対応部及び腕対応部の各延伸が当該孔型の形状により規定されるため、従来のように孔型の形状を設計しても、リバース圧延途中におけるフランジ波の発生を抑制することはできないことが判明した。例えば、これら孔型59、69でリバース圧延が行われる場合、フランジ対応部5、6では、圧延のたびにこれらフランジ対応部5、6の中央部(中立線近傍)に肉が集まり、フランジ厚みの復元といった現象が発生しやすいことが検討の結果明らかとなった。厚みの復元が発生すると、次パスでのフランジ延伸が増大してしまい、更にフランジ波が生じやすくなり好ましくない。
このような問題点に鑑み、本発明者らは、孔型59での圧延や、孔型69での圧延において、被圧延材Aのフランジ対応部5、6に好適な潤滑を施工することで、フランジ波の発生を抑制させることができるとの知見を得て、その好適な潤滑技術について鋭意検討を行った。以下では、本知見について詳細に説明する。なお、以下の説明では孔型69において圧延されるフランジ対応部5を例示して図示・説明しているが、孔型59等の他の孔型での圧延や、フランジ対応部6の圧延についても同様の技術を適用できる。また、以下の説明においてフランジ対応部5の各部(内面、外面)を潤滑する際には、他方のフランジ対応部6についても同様に潤滑を行っているものとして説明している。
なお、摩擦係数が0.1未満となるような条件で圧延を行うと、孔型ロールと被圧延材Aとの間で必要以上に滑りが生じ、通材が不安定となってしまうといった事情がある。
また、上記の基本的な潤滑技術に関し、上下孔型ロールの中立線よりも大径ロール側が潤滑され摩擦係数が小さくなると、当該大径ロール側の領域での被圧延材の伸びが低下するため、中立線近傍の伸びとの差が拡大し、フランジ波抑制効果が低下することが分かった。そこで、本発明者らは、図7に示した潤滑の構成に改良を加え、よりフランジ波抑制効果を向上させることが可能な構成について更なる検討を行った。
また、圧延ラインLに設置される各圧延機にはそれぞれロール冷却を行う冷却機構が設けられており、例えばこの孔型69を構成する上下孔型ロール65、68の上方及び下方には、ロールへ冷却水を供給する供給機構105、106が設けられる。水切り板103は、これら供給機構105、106のうち、上方に位置する供給機構105からロールに供給された冷却水の、フランジ対向部分への流れ込みを防止する装置である。水切り板103は一般的に圧延機に取り付けられる装置であれば良く、例えばワイパー状に構成されるゴム板等を用いた装置が例示される。
また、潤滑剤除去機構102a、102bによる潤滑剤の除去範囲としては、フランジ対向部分の全幅端部から最大1/4の範囲内において、幅端部から所望の範囲で広く設定することが好ましい。これは、フランジ対向部分の幅端部ほど、ロール直下での伸びがフランジ幅方向で小さく、全幅端部から最大1/4の範囲内においては潤滑剤の除去範囲はできるだけ広い方が効果は大きいからである。
一方、いずれの場合においても、摩擦係数が0.1未満となるような条件で圧延を行うと、孔型ロールと被圧延材Aとの間で必要以上に滑りが生じ、通材が不安定となってしまうといった事情がある。
この点を考慮し、以下にそれぞれの場合(内面5aと外面5bの両方を潤滑、内面5aのみを潤滑、外面5bのみを潤滑)に好適に設定される摩擦係数の条件について説明する。
(1)フランジ対応部5の内面5aと外面5bの両方を潤滑する場合に、摩擦係数を0.1以上0.2以下とする。
(2)フランジ対応部5の外面5bのみを潤滑する場合に、摩擦係数を0.1以上0.15以下とする。
また、以下の(3)~(5)に記載の条件にて圧延を行うことで、圧延後に発生するフランジ波を十分に低減させることができる。
(3)フランジ対応部5の内面5aと外面5bの両方を潤滑する場合に、摩擦係数を0.1以上0.25以下とする。
(4)フランジ対応部5の内面5aのみを潤滑する場合に、摩擦係数を0.1以上0.15以下とする。
(5)フランジ対応部5の外面5bのみを潤滑する場合に、摩擦係数を0.1以上0.2以下とする。
図12は本発明の変形例に関する概略説明図である。図12に記載の各構成要素に関し、上記実施の形態と同じ機能構成を有する構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する場合がある。上記実施の形態で説明したフランジ対応部の内面5aおよび外面5bにおいて、中立線Oを中心とした所定の範囲に加え、図12に示すように、上下ロールの中立線Oよりも小径ロール側にあたる範囲を潤滑機構110、111により潤滑してもよい。ここで、「小径ロール側」とは、上下孔型ロールそれぞれにおいて、中立線Oを境界としてロール径が小さくなる領域を言う。中立線Oを中心とした所定範囲の潤滑でフランジ波高さが十分に小さくできない場合、例えば、中立線Oを中心とした所定範囲の潤滑に加え、小径ロール側にあたるフランジ対応部5全体を潤滑することが好ましい。中立線よりもロール径が小さい側のフランジ対応部を潤滑することによって長手方向に伸びが生じやすくなるため、中立線近傍のフランジ対応部との伸びの差が低減され、中立線Oを中心とした所定範囲のみを潤滑する場合よりも更にフランジ波を小さくすることができる。なお、図12に示す潤滑機構110、111の配置や数、構成等は図示の形態に限定されず、任意に設けることができる。
この結果より明らかなように、中立線と中立線より小径ロール側を潤滑すれば、フランジ対応部5の内面5aか外面5bのどちらか一方のみを潤滑した場合でも、図11で示した同じ摩擦係数において、図11で示したフランジ波の急峻度に比べ、さらに低減させることができる。
一方、従来法としては、フランジ対応部の潤滑はロール冷却水のみで行い、その摩擦係数は0.3であった。
以下の表1に結果を示す。なお、本実施例における試行回数nは15とした。
これらの場合、フランジ波が発生したものでも急峻度が十分に小さかったため、仕上圧延後にフランジ波は残存しなかった。本実施例の結果から、本発明を適用することでフランジ波の発生が十分に抑制されることが分かった。
3…ウェブ対応部
5、6…フランジ対応部
8、9…腕対応部
10、11…継手対応部
14、15…爪部
17…粗圧延機
18…第1中間圧延機
19…第2中間圧延機
30…仕上圧延機
45…(第1の孔型の)上孔型ロール
48…(第1の孔型の)下孔型ロール
49…第1の孔型
55…(第2の孔型の)上孔型ロール
58…(第2の孔型の)下孔型ロール
59…第2の孔型
65…(第3の孔型の)上孔型ロール
68…(第3の孔型の)下孔型ロール
69…第3の孔型
75…(第4の孔型の)上孔型ロール
78…(第4の孔型の)下孔型ロール
79…第4の孔型
85…(第5の孔型の)上孔型ロール
88…(第5の孔型の)下孔型ロール
89…第5の孔型
100、101…潤滑機構
102…潤滑剤除去機構
103…水切り板
105、106…(冷却水)供給機構
A(A1~A5)…被圧延材
L…圧延ライン
O…中立線
Claims (11)
- 被圧延材に粗圧延工程、中間圧延工程及び仕上圧延工程を行うハット形鋼矢板の製造方法であって、
前記中間圧延工程での前記被圧延材は、ウェブ対応部と、前記ウェブ対応部の両端部に一方の端部が接続する2つのフランジ対応部と、前記フランジ対応部の他方の端部と接続する腕対応部と、を備え、
前記中間圧延工程は前記被圧延材の断面全体を1又は複数の孔型による1又は複数パス圧延によって行われ、
前記中間圧延工程が行われる孔型のうち少なくとも1つの孔型における前記被圧延材の圧延は、前記2つのフランジ対応部の内面及び外面のうち少なくとも一方の面を潤滑して複数パス圧延によって行われることを特徴とする、ハット形鋼矢板の製造方法。 - 前記潤滑は、前記中間圧延工程における中立線を跨ぐ所定の範囲内において行われることを特徴とする、請求項1に記載のハット形鋼矢板の製造方法。
- 前記潤滑は、前記中間圧延工程における中立線を跨ぐ所定の範囲内と、当該所定の範囲に加え、中立線に対し小径ロール側に対しても行われることを特徴とする、請求項2に記載のハット形鋼矢板の製造方法。
- 前記潤滑は、被圧延材のフランジ対応部全幅において、中立線を跨ぐ当該全幅の1/4以上の範囲において行われることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のハット形鋼矢板の製造方法。
- 前記潤滑が行われる孔型には、当該孔型の上下孔型ロールの一方又は両方において、周面の一部の潤滑剤を除去する潤滑剤除去機構、及び、周面全面の水切りを行う水切り板が設けられることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のハット形鋼矢板の製造方法。
- 前記潤滑が行われる孔型において、前記潤滑剤除去機構は、当該孔型の上下孔型ロール周面のうち、フランジ対向部分の大径ロール側での全幅端部から当該フランジ対向部分の全幅の1/4以下の範囲において潤滑剤を除去することを特徴とする、請求項5に記載のハット形鋼矢板の製造方法。
- ハット形鋼矢板に対し上下孔型ロールによる中間圧延を行う圧延機であって、
前記上下孔型ロールには、被圧延材の2つのフランジ対応部の内面及び外面のうち少なくとも一方の面を潤滑する潤滑機構が設けられ、
前記潤滑機構による潤滑は、前記中間圧延における中立線を跨ぐ所定の範囲内において行われることを特徴とする、圧延機。 - 前記潤滑機構による潤滑は、前記所定の範囲に加え、前記中間圧延における中立線に対し小径ロール側に対しても行われることを特徴とする、請求項7に記載の圧延機。
- 前記潤滑機構による潤滑は、被圧延材のフランジ対応部全幅において、中立線を跨ぐ当該全幅の1/4以上の範囲において行われることを特徴とする、請求項7又は8に記載の圧延機
- 前記上下孔型ロールの一方又は両方において、周面の一部の潤滑剤を除去する潤滑剤除去機構、及び、周面全面の水切りを行う水切り板が設けられることを特徴とする、請求項7~9のいずれか一項に記載の圧延機。
- 前記潤滑剤除去機構は、前記上下孔型ロールの周面のうち、フランジ対向部分の大径ロール側での全幅端部から当該フランジ対向部分の全幅の1/4以下の範囲において潤滑剤を除去することを特徴とする、請求項10に記載の圧延機。
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