配列表の簡単な説明
配列番号1〜29,482は、BCL11A遺伝子またはBCL11A遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の中またはその付近で、S.pyogenes Cas9エンドヌクレアーゼを用いて標的化するための20bpスペーサー配列である。
配列番号29,483〜32,387は、BCL11A遺伝子またはBCL11A遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の中またはその付近で、S.aureus Cas9エンドヌクレアーゼを用いて標的化するための20bpスペーサー配列である。
配列番号32,388〜33,420は、BCL11A遺伝子またはBCL11A遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の中またはその付近で、S.thermophilus Cas9エンドヌクレアーゼを用いて標的化するための20bpスペーサー配列である。
配列番号33,421〜33,851は、BCL11A遺伝子またはBCL11A遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の中またはその付近で、T.denticola Cas9エンドヌクレアーゼを用いて標的化するための20bpスペーサー配列である。
配列番号33,852〜36,731は、BCL11A遺伝子またはBCL11A遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の中またはその付近で、N.meningitides Cas9エンドヌクレアーゼを用いて標的化するための20bpスペーサー配列である。
配列番号36,732〜71,947は、BCL11A遺伝子またはBCL11A遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の中またはその付近で、Acidominococcus、Lachnospiraceae、及びFranciscella Novicida Cpf1エンドヌクレアーゼを用いて標的化するための22bpスペーサー配列である。
配列番号71,948は、S. pyogenes Cas9エンドヌクレアーゼのためのサンプルガイドRNA(gRNA)である。
配列番号71,949は、構造によって分類されるホーミングエンドヌクレアーゼの既知のファミリーを示している。
配列番号71,950はgRNA A(CLO1)である。
配列番号71,951はgRNA B(CLO8)である。
配列番号71,952はgRNA C(CSO2)である。
配列番号71,953はgRNA D(CSO6)である。
配列番号71,954はgRNA E(HPFH−15)である。
配列番号71,955はgRNA F(HPFH−4)である。
配列番号71,956はgRNA G(Kenya02)である。
配列番号71,957はgRNA H(Kenya17)である。
配列番号71,958はgRNA I(SD2)である。
配列番号71,959はgRNA J(SPY101)である。
配列番号71,960〜71,962はサンプルsgRNA配列を示している。
詳細な説明
胎児ヘモグロビン
胎児ヘモグロビン(HbF、α2γ2)は、ヒト胎児における主な酸素運搬タンパク質であり、これにはアルファ(α)及びガンマ(γ)サブユニットが含まれる。HbFは生後約6ヵ月で発現しなくなる。成人ヘモグロビン(HbA、α2β2)は、生後約34週のヒトにおける主な酸素運搬タンパク質であり、これにはアルファ(α)及びベータ(β)サブユニットが含まれる。34週後、発生スイッチによってγ−グロブリン遺伝子の転写が減少しβ−グロブリン遺伝子の転写が増加する。ヘモグロビン異常症の多くの形態が、十分な量の正常なβ−グロビンタンパク質を生成できない、または正常なβ−グロビンタンパク質を完全に生成できないことによる結果であるため、γ−グロビン(すなわち、HbF)の発現を増加させることによってβ−グロビン疾患の重症度が緩和されることになる。
B細胞リンパ腫11A(BCL11A)
B細胞リンパ腫11A(BCL11A)は、染色体2に位置する遺伝子であり、60,451,167〜60,553,567bp(GRCh38)を範囲とする。BCL11Aは、ジンクフィンガー転写因子であり、胎児ヘモグロビン(HbF)を抑制し、生後約6週に始まるHbF発現を下方調節する。BCL11A遺伝子は、ゲノムDNAの102.4kbにわたる4エキソンを含有する。またBCL11Aは、主要転写因子GATA−1向けのイントロン2内の結合ドメインを含めた転写調節下にある。GATA−1結合はBCL11A発現を向上させ、ひいてはHbF発現を抑制する。イントロン2は複数のDNアーゼ高感受性部位(DHS)を含有し、これには転写開始点からのキロベースの距離に基づき+55、+58、及び+62と呼ばれる部位が含まれる。BCL11Aの転写制御配列に対する欠失、修飾、または不活性化を行うための様々な編集戦略が以下で論じられる。この領域中の天然SNPが、BCL11A発現の減少や胎児Hbレベルの増加と関連付けられている(Orkin et al.2013 GWAS study)。このSNPは、3つのDNA高感受性部位、+55DHS、+58DHS、及び+62DHSの周囲で編成されている。3つの領域のうち、+58 DHS領域は、胎児Hbレベルの増加に関連した主要な領域であるように思われ、またGATA1転写制御領域も有する。
治療アプローチ
非相同末端結合(NHEJ)は、BCL11Aの転写制御配列のセグメントを欠失させるのに使用することができ、これは直接、または複数の位置を標的とする1つのgRNAもしくは複数のgRNAによる切断を通じて1つのgRNAスプライスドナー部位もしくはアクセプター部位を変更することによって行う。
また、BCL11A遺伝子の転写制御配列は、修飾または不活性化を行うこともでき、これは改変転写制御配列を含む野生型BCL11A遺伝子またはcDNAを挿入することによって行う。例えば、相同組換え修復(HDR)による修飾または不活性化に用いるドナーは、アニーリングを可能にするための小型または大型の相同アームが隣接するBCL11A遺伝子の改変転写制御配列を含有する。本質的にはHDRは、DSB修復の間、供給される相同のDNA配列をテンプレートとして使用するエラーフリー機構である。相同組換え修復(HDR)の比率は、転写制御配列と切断部位との間の距離の関数であるため、重複する標的部位または近くにある標的部位を選ぶことが重要である。テンプレートは相同領域に隣接する余分な配列を含むことができ、またはゲノム配列とは異なる配列を含有してもよく、このようにして配列編集が可能になる。
NHEJまたはHDRにより、BCL11A遺伝子の転写制御配列に欠失、修飾、または不活性化を行うことに加えて、他にも様々な選択肢が考えられる。小さなまたは大きな欠失が存在する場合、BCL11A遺伝子の改変転写制御配列を含有するcDNAをノックインすることができる。全長cDNAのノック先を、好適な調節配列を伴ってまたは伴わずに、任意の「セーフハーバー」に、すなわちBCL11A遺伝子そのものではない有害性のない挿入ポイントにすることができる。このコンストラクトをBCL11A調節エレメント付近にノックインする場合、当該コンストラクトは正常な遺伝子と同様の生理的制御を有するべきである。2つ以上(例えば、1対)のヌクレアーゼを使用して転写制御配列領域の欠失を行ってもよいが、機能の修飾または不活性化を行うには通常はドナーが提供されなければならない。この場合、2つのgRNA及び1つのドナー配列が供給されることになる。
本明細書では、ゲノム操作ツールを用いて、下記を行うことによって永続的な変化をゲノムに創出する細胞のex vivo及びin vivoの方法が提供される:1)NHEJ経路によって生じる欠失により、BCL11A遺伝子の転写制御配列に対する修飾または不活性化を行う、2)HDRにより、BCL11A遺伝子の転写制御配列に対する修飾または不活性化を行う、3)転写制御配列の少なくとも一部の欠失、及び/または改変転写制御配列を含む野生型BCL11A遺伝子もしくはcDNAを遺伝子座位もしくはセーフハーバー座位にノックインすることにより、BCL11A遺伝子の転写制御配列に対する修飾または不活性化を行う。このような方法は、CRISPR関連(Cas9、Cpf1など)ヌクレアーゼなどのエンドヌクレアーゼを使用して、BCL11A遺伝子またはBCL11A遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列のゲノム座位の中またはその付近で、転写制御配列に対する永続的な欠失、挿入、または編集を行う。このようにして、本開示で示す例は、(患者の一生にわたって有望な療法を送達するのではなく)単回処置または限られた回数の処置で、BCL11A遺伝子の転写制御配列に対する欠失、修飾、または不活性化を行う一助になり得る。
本明細書では、ヘモグロビン異常症を有する患者を処置する方法が提供される。このような方法の一態様は、ex vivoの細胞ベース療法である。例えば、患者特異的人工多能性幹細胞(iPSC)が創出され得る。次に、本明細書に記載の材料及び方法を用いてこのiPS細胞の染色体DNAを編集することができる。次に、ゲノム編集されたiPSCを造血前駆細胞に分化させることができる。最後に、この造血前駆細胞を患者に植え込むことができる。
このような方法のまた別の態様は、ex vivoの細胞ベース療法である。例えば、患者から間葉系幹細胞が単離され得るが、この間葉系幹細胞は患者の骨髄または末梢血から単離することができる。次に、本明細書に記載の材料及び方法を用いてこの間葉系幹細胞の染色体DNAを編集することができる。次に、ゲノム編集された間葉系幹細胞を造血前駆細胞に分化させることができる。最後に、この造血前駆細胞を患者に植え込むことができる。
このような方法のさらなる一態様は、ex vivoの細胞ベース療法である。例えば、造血前駆細胞が患者から単離され得る。次に、本明細書に記載の材料及び方法を用いてこの細胞の染色体DNAを編集することができる。最後に、ゲノム編集された造血前駆細胞を患者に植え込むことができる。
ex vivoの細胞療法アプローチにおける1つの利点は、治療薬の包括的な解析を行ってから投与することができる点である。ヌクレアーゼベースの治療薬は、一定レベルのオフターゲット作用を有し得る。ex vivoで遺伝子修正を実施することにより、修正された細胞集団の特性決定を実施してから植え込むことができる。本開示は、修正された細胞のゲノム全体をシークエンシングして、オフターゲット作用が存在する場合、それが患者に対する最小のリスクと関連するゲノム位置に存在できるように保証することを含む。さらに、クローン集団を含めた特定の細胞集団は、植え込みの前に単離され得る。
ex vivoの細胞療法における別の利点は、他の初代細胞源と比較してのiPSCの遺伝子修正に関する。iPSCは増殖性が高いため、細胞ベース療法に必要となる多数の細胞を容易に得ることができる。さらに、iPSCはクローン単離の実施に理想的な細胞タイプである。このため、生存率低下のリスクを伴うことなく正しいゲノム修正についてスクリーニングすることができる。これに対し、他の初代細胞の生存率はわずか数継代に過ぎず、クローン拡大が困難である。したがって、ヘモグロビン異常症の処置向けのiPSC操作ははるかに容易であり、所望の遺伝子修正を行うために必要な時間を短縮することができる。
ex vivoの療法において、植え込みを行うには、移植する骨髄微小環境またはドナーHSCのクリアランスが必要である。現状の方法は、放射線照射及び/または化学療法に依存している。これらによる制約のため、より安全な条件付けのレジメンがこれまでに開発され、現在も開発中であるが、例としては、造血細胞表面マーカー(例えば、CD117、c−kitなど)に向けられた抗体または抗体毒素複合体による骨髄細胞の免疫枯渇がある。HSC移植が成功するかは、骨髄への効率的なホーミング、次に行う移植、及び骨髄の再増殖によって決まる。ゲノム編集された細胞が移植されるレベルは、細胞の多系列移植の能力が重要であるのと同じように重要である。
造血幹細胞(HSC)は、修正された細胞の供給源を持続させるため、ex vivoの遺伝子療法において重要な標的である。処置されたCD34+細胞は、患者に戻されることになる。
諸方法は、in vivoベース療法も含み得る。患者内の細胞の染色体DNAは、本明細書に記載の材料及び方法を用いて編集される。当該細胞は、骨髄細胞、造血前駆細胞、またはCD34+細胞とすることができる。
血球は、ex vivoの処置及び治療に対する魅力的な標的を提示するが、送達の有効性を増大させることで、造血幹細胞(HSC)及び/または他のB及びT細胞前駆体(例えば、CD34+細胞)に対し直接in vivoで送達できるようになり得る。理想的には、標的化及び編集は関連細胞に向けられる。他の細胞における切断は、ある特定の細胞及びまたは発生段階でのみ活性を有するプロモーターを使用することで防止することもできる。追加のプロモーターは誘導的であるため、ヌクレアーゼがプラスミドとして送達される場合は時間的に制御することができる。送達されたRNA及びタンパク質が細胞内にとどまる時間は、半減期を変えるために加える処置またはドメインを用いて調整することもできる。in vivoの処置は複数の処置ステップを減らすことになるが、送達率がより低いと編集率をより高くする必要が生じ得る。in vivoの処置は、ex vivoの処置及び移植からの問題や損失を減らし得る。
in vivoの遺伝子療法の利点は、治療薬の生成及び投与の容易さであり得る。同じ治療アプローチ及び療法が、2人以上の患者(例えば、同じまたは類似の遺伝型またはアレルを共有する複数の患者)の処置に使用される可能性を有することになる。これに対し、ex vivoの細胞療法は、典型的には患者自身の細胞を使用する必要があり、この細胞は単離され、操作され、同じ患者に戻される。
また本明細書では、ゲノム編集によって細胞内のBCL11A遺伝子を編集するための細胞の方法が提供される。例えば、細胞は患者または動物から単離することができる。次に、本明細書に記載の材料及び方法を用いてこの細胞の染色体DNAを編集することができる。
本明細書で提供される方法は、細胞、ex vivo、in vivoのいずれの方法であるかにかかわらず、以下のうちの1つまたは組合せを伴い得る:1)NHEJ経路によって生じる欠失により、BCL11A遺伝子の転写制御配列に対する修飾または不活性化を行う、2)HDRにより、BCL11A遺伝子の転写制御配列に対する修飾または不活性化を行う、または3)転写制御配列の少なくとも一部の欠失、及び/または改変転写制御配列を含む野生型BCL11A遺伝子もしくはcDNAを、遺伝子座位もしくはゲノム内の異種の位置(例えば、AAVS1などのセーフハーバー部位)にノックインすることにより、BCL11A遺伝子の転写制御配列に対する修飾または不活性化を行う。HDR及びノックインの戦略は共に、相同組換え修復(HDR)におけるドナーDNAテンプレートを利用する。いずれの戦略におけるHDRも、1つ以上のエンドヌクレアーゼを使用することによりゲノム内の特定の部位で1つ以上の1本鎖切断(SSB)または2本鎖切断(DSB)を行うことによって達成することができる。
例えば、NHEJ戦略は、BCL11A遺伝子の転写制御配列の少なくとも一部の欠失を伴う可能性があり、これは、1つ以上のCRISPRエンドヌクレアーゼ及びgRNA(例えば、crRNA+tracrRNA、またはsgRNA)を用いてBCL11A遺伝子またはBCL11A遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の中またはその付近で1つの1本鎖切断または2本鎖切断を誘導することにより、あるいは2つ以上のCRISPRエンドヌクレアーゼ及び2つ以上のsgRNAを用いてBCL11A遺伝子またはBCL11A遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の中またはその付近で2つ以上の1本鎖切断または2本鎖切断を誘導することにより行われる。このアプローチは、BCL11A遺伝子の転写制御配列向けのsgRNAの開発及び最適化が必要となり得る。
例えば、HDR戦略は、BCL11A遺伝子の転写制御配列に対する修飾または不活性化を伴う可能性があり、これは、細胞のDSB応答を相同組換え修復に向けるために外来的に導入されたドナーDNAテンプレートの存在下で(ドナーDNAテンプレートは、短い1本鎖オリゴヌクレオチド、短い2本鎖オリゴヌクレオチド、長い1本鎖または2本鎖のDNA分子であり得る)、1つ以上のCRISPRエンドヌクレアーゼ及びgRNA(例えば、crRNA+tracrRNA、またはsgRNA)を用いてBCL11A遺伝子またはBCL11A遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の中またはその付近で1つの1本鎖切断または2本鎖切断を誘導することにより、あるいは1つ以上のCRISPRエンドヌクレアーゼ及び2つ以上のgRNAを用いてBCL11A遺伝子またはBCL11A遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の中またはその付近で2つ以上の1本鎖切断または2本鎖切断を誘導することにより行われる。このアプローチは、gRNAと、改変転写制御配列を含む野生型BCL11A遺伝子を含むドナーDNA分子との開発及び最適化が必要となり得る。
例えば、ノックイン戦略は、BCL11A遺伝子の転写制御配列の上流もしくは当該配列内、またはセーフハーバー部位(例えばAAVS1)内を標的とする1つのgRNA(例えば、crRNA+tracrRNA、またはsgRNA)または一対のgRNAを用いて、改変転写制御配列を含む野生型BCL11A遺伝子またはcDNAをBCL11A遺伝子の座位にノックインすることを伴う。ドナーDNAは1本鎖または2本鎖のDNAであり、改変転写制御配列を含む野生型BCL11A遺伝子を含む。
上述の戦略(欠失/修飾/不活性化及びノックイン)の利点は、原則的な短期・長期両方における臨床及び実験室の有益作用を含めて類似している。
上に挙げた編集の選択肢に加えて、Cas9または類似タンパク質は、エフェクタードメインを、編集用に特定することができる同じ標的部位に、またはエフェクタードメインの範囲内の追加の標的部位に標的化するのに使用することができる。一連のクロマチン改変酵素、メチラーゼまたはデメチラーゼは、標的遺伝子の発現の変更に使用することができる。このようなタイプのエピジェネティック調節は、とりわけ可能性のあるオフターゲット作用が限定されていることから、いくつかの利点を有する。
転写及び翻訳の調節は、細胞のタンパク質またはヌクレオチドと相互作用する複数の異なるクラスの部位を暗示する。しばしば、転写因子または他のタンパク質のDNA結合部位は、当該部位の役割を研究する目的での変異または欠失のために標的化され得るが、当該部位は遺伝子発現の変化のためにも標的化され得る。部位は、非相同末端結合NHEJまたは相同組換え修復(HDR)による直接的なゲノム編集を通じて付加することができる。ゲノムシークエンシング、RNA発現、及び転写因子結合のゲノムワイド研究を多く用いることで、我々は、部位がどのように発生的または時間的な遺伝子調節をもたらすかをますます特定できるようになった。これらの制御システムは、直接的であることもあれば、複数のエンハンサーからの活性の統合が必要となり得る広範な調節を伴うこともある。典型的には、転写因子は長さ6〜12bpの縮重DNA配列に結合する。個々の部位がもたらす低レベルの特異性は、複雑な相互作用及びルールが結合及び機能的結果に関与することを示唆する。縮重性の低い結合部位は、より簡略な調節手段を提供することができる。ゲノム内の類似配列が少なくオフターゲット切断の可能性が低い、より長い配列を特定するように人工転写因子を設計することができる。このようなタイプの結合部位はいずれも、遺伝子調節または発現の変化を可能にするように変異、欠失、または創出も行うことができる(Canver,M.C.et al.,Nature(2015))。GATA転写因子は、GATA DNA結合配列に結合する能力を特徴とする転写因子のファミリーである。GATA結合配列は、BCL11A遺伝子の+58 DNA高感受性部位(DHS)内に位置する。
このような特徴を有する別のクラスの遺伝子調節領域は、マイクロRNA(miRNA)結合部位である。miRNAは非コードRNAであり、転写後の遺伝子調節で主要な役割を担う。miRNAは、全ての哺乳類のタンパク質コード遺伝子の30%の発現を調節することができる。2本鎖RNA(RNAi)による特異的かつ強力な遺伝子サイレンシングが発見され、またさらなる低分子非コードRNAも発見された(Canver,M.C.et al.,Nature(2015))。遺伝子サイレンシングに重要な最も大きなクラスの非コードRNAは、miRNAである。哺乳類において、miRNAは最初に長いRNA転写物として転写されるが、これは別々の転写ユニット、タンパク質イントロンの一部、または他の転写物であり得る。この長い転写物は1次miRNA(pri−miRNA)と呼ばれ、不完全な塩基対合のヘアピン構造を含む。このようなpri−miRNAは、ドローシャを伴う核内のタンパク質複合体であるマイクロプロセッサーによって1つ以上のより短いmiRNA前駆体(pre−miRNA)に切断され得る。
pre−miRNAは、2−ヌクレオチドの3’−オーバーハングを有する長さ約70ヌクレオチドの短いステムループであり、成熟した19〜25ヌクレオチドのmiRNA:miRNA*2本鎖に輸送される。塩基対合の安定性がより低いmiRNA鎖(ガイド鎖)は、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)にロードされる。パッセンジャーガイド鎖(*で示す)は機能し得るが、通常は分解する。成熟miRNAは、3’非翻訳領域(UTR)中で主に見いだされる標的mRNA内の部分的に相補的な配列モチーフにRISCを繋留し、転写後遺伝子サイレンシングを誘導する(Bartel,D.P.Cell 136,215−233(2009);Saj,A.& Lai,E.C.Curr Opin Genet Dev 21,504−510(2011))。
miRNAは、発生、分化、細胞周期、及び成長制御において、そして哺乳類及び他の多細胞生物における実質的に全ての生物学的経路において重要であり得る。また、miRNAは、細胞周期制御、アポトーシス、及び幹細胞分化、造血、低酸素、筋肉発生、神経発生、インスリン分泌、コレステロール代謝、老化、ウイルス複製、及び免疫応答にも関与し得る。
1つのmiRNAが何百もの異なるmRNA転写物を標的とすることができる一方、個々の転写物は多数の異なるmiRNAによって標的化され得る。最新のmiRBase(v.21)では、28645を超えるマイクロRNAが注釈されている。一部のmiRNAは複数の座位によってコードすることができ、そのうちの一部は直列的に共転写されたクラスターから発現され得る。当該機能は、複数の経路及びフィードバック制御を有する複雑な調節ネットワークを可能にする。miRNAは、これらフィードバック及び調節の回路の一体部分と考えられ、またタンパク質生成を限度内に維持することにより遺伝子発現を調節する一助となり得る(Herranz,H.& Cohen,S.M.Genes Dev 24,1339−1344(2010);Posadas,D.M. & Carthew,R.W.Curr Opin Genet Dev 27,1−6(2014))。
また、miRNAは、異常なmiRNA発現に関連する多数のヒト疾患においても重要であり得る。この関連は、miRNA調節経路の重要性を強調するものである。最近のmiRNA欠失研究では、miRNAが免疫応答の調節と結び付けられている(Stern−Ginossar,N.et al.,Science 317,376−381(2007))。
また、miRNAはがんとの強い結び付きがあり、異なるタイプのがんで役割を担っている可能性がある。miRNAは、複数の腫瘍で下方調節されていることが見いだされている。miRNAは、細胞周期制御及びDNA損傷応答などの主要ながん関連経路の調節において重要であり得るため、診断に使用することができ、臨床的に標的化することができる。マイクロRNAは血管新生のバランスをきめ細やかに調節することができるため、全てのマイクロRNAを枯渇させる実験は腫瘍の血管新生を抑制する(Chen,S.et al.,Genes Dev 28,1054−1067(2014))。
タンパク質コード遺伝子に関して示されたように、miRNA遺伝子は、がんと共に生じるエピジェネティックな変化に供することもできる。多くのmiRNA座位は、DNAメチル化によって調節の機会を増加させるCpGアイランドと関連する可能性がある(Weber,B.,Stresemann,C.,Brueckner,B.& Lyko,F.Cell Cycle 6,1001−1005(2007))。多くの研究で、エピジェネティック的にサイレンシングされたmiRNAを明らかにするためにクロマチン再形成薬物を用いた処置が使用されてきた。
RNAサイレンシングにおける役割に加えて、miRNAは翻訳を活性化することもできる(Posadas,D.M.& Carthew,R.W.Curr Opin Genet Dev 27,1−6(2014))。これらの部位のノックアウトが標的遺伝子の発現減少をもたらし得る一方で、これらの部位の導入は発現を増加させ得る。
個々のmiRNAは、結合特異性にとって重要であり得るシード配列(マイクロRNAの塩基2〜8)を変異させることにより、最も効果的にノックアウトすることができる。NHEJによる誤修復の前に行われるこの領域内の切断は、標的部位への結合をブロックすることにより、効果的にmiRNA機能を消失させることができる。miRNAは、パリンドローム配列に隣接する特別なループ領域の特異的標的化によっても阻害され得る。触媒不活性のCas9もshRNA発現の阻害に使用することができる(Zhao,Y.et al.,Sci Rep 4,3943(2014))。miRNAの標的化に加えて、結合部位にも標的化及び変異を行ってmiRNAによるサイレンシングを防止することもできる。
ヒト細胞
本明細書で説明し例示するように、ヘモグロビン異常症の緩和に関して、ゲノム編集の主な標的はヒト細胞である。例えば、ex vivoの方法では、ヒト細胞は体細胞であってもよく、体細胞は説明の方法を用いて改変した後に前駆細胞を生じ得る。例えば、in vivoの方法では、ヒト細胞は骨髄細胞、造血前駆細胞、またはCD34+細胞であってもよい。
患者由来の自己細胞内でゲノム編集を実施することにより、自己細胞は必要とする患者に既に完全に適合しているため、安全に患者に再導入することができる細胞を産生することや、患者の疾患に関連する1つ以上の臨床状態の緩和に有効であり得る細胞集団を効果的に生じさせることが可能である。
前駆細胞(本明細書では幹細胞とも呼ばれる)は、増殖させることもさらに前駆細胞を生じさせることも可能であり、次にこれらは多数の母細胞を産生することができ、次に母細胞は分化したまたは分化可能な娘細胞を生じることができる。娘細胞自体を、増殖し1つ以上の成熟細胞タイプに分化する後代を産生するように誘導させる一方で親の発生可能性を有する1つ以上の細胞も保持させることができる。そこで「幹細胞」という用語は、特定の状況下でさらに特化または分化した表現型に分化する能力または可能性を有し、ある特定の状況下で実質的な分化を伴うことなく増殖する能力を保持する細胞を指す。一態様において、前駆細胞または幹細胞という用語は、その子孫(後代)が、分化によって、例えば、胚細胞及び胚組織の進行的多様化で生じるように、完全に個別の特徴を獲得することによって、しばしば異なる方向に特化する全般的な母細胞を指す。細胞分化は、典型的には多くの細胞分割を通じて生じる複雑なプロセスである。分化細胞は、自らが多能性細胞由来である多能性細胞に由来してもよい。このような多能性細胞の各々は幹細胞とみなすことができるが、各々が生じ得る細胞タイプの範囲はかなり変動し得る。一部の分化細胞は、発生的可能性がさらに大きい細胞を生じる能力も有する。このような能力は、天然であることもあれば、様々な因子を用いた処置によって人工的に誘導されることもある。多くの生物学的事例において、幹細胞は、2つ以上の異なる細胞タイプの後代を生成することができることから「多能性」である可能性もあるが、このことは「幹細胞性」の要件ではない。
自己再生は、幹細胞におけるもう1つの重要な態様である。理論上、自己再生は2つの主要な機構のいずれかによって生じ得る。幹細胞は非対称的に分割して、一方の娘細胞が幹細胞状態を保持し、他方の娘細胞が何らかの異なる他の特定機能及び表現型を発現することがある。あるいは、集団内の幹細胞の一部が対称的に2つの幹細胞へと分割することがあり、このようにして全体としては集団内の一部の幹細胞が保持され、一方、集団内の他の細胞は分化した後代のみを生じる。概して、「前駆細胞」は、より原始的な(すなわち、発生経路または進行において完全に分化した細胞よりも早期のステップにある)細胞表現型を有する。しばしば、前駆細胞は顕著なまたは非常に高い増殖可能性も有する。前駆細胞は、発生経路に応じて、また細胞が発生し分化する環境に応じて、複数の異なる分化細胞タイプを生じることもあれば、単一の分化細胞タイプを生じることもある。
細胞個体発生の文脈において、「分化した」または「分化させる」という形容詞は相対的な用語である。「分化細胞」とは、比較対象の細胞よりもさらに発生経路に沿って進行した細胞のことである。したがって、幹細胞は、系列が限定された前駆体細胞(例えば、造血前駆細胞)に分化することができ、次にこの前駆体細胞はさらに経路に沿った他のタイプの前駆体細胞(例えば、造血前駆体)に分化し、次に最終段階の分化細胞(例えば、赤血球)に分化することができるが、この最終段階の分化細胞はある組織タイプで特徴的な役割を担い、さらに増殖する能力を保持することもあれば保持しないこともある。
「造血前駆細胞」という用語は、赤血球系(赤血球(erythrocyte)または赤血球(red blood cell)(RBC))、骨髄系(単球及びマクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、巨核球/血小板、ならびに樹状細胞)、及びリンパ系(T細胞、B細胞、NK細胞)を含めた全ての血球タイプを生じる幹細胞系列の細胞を指す。
「赤血球系列の細胞」とは、接触されている細胞が、赤血球新生を経て、最終分化の際に赤血球(erythrocyte)または赤血球(red blood cell)を形成する細胞であることを指す。このような細胞は、骨髄の造血前駆細胞から生じる。造血前駆細胞は、造血微小環境における特定の成長因子及び他の構成要素の曝露を受けると、一連の中間分化細胞タイプ、赤血球系列の全ての中間体を介し、RBCに成熟することができる。したがって、「赤血球系列」の細胞は、造血前駆細胞、前赤芽球、前赤血球、赤芽球、後赤血球、網状赤血球、及び赤血球を含む。
造血前駆細胞は、下記の造血前駆細胞に特有の細胞表面マーカーのうちの少なくとも1つを発現することができる:CD34+、CD59+、Thyl/CD90+、CD381o/−、及びC−kit/CDl 17+。本明細書で提供される一部の例において、造血前駆細胞はCD34+であり得る。
造血前駆細胞は、患者を顆粒球コロニー刺激因子などの1つ以上の因子を用いて(任意選択でプレリキサフォルと組み合わせて)処置した後に患者から得られる末梢血幹細胞であり得る。CD34+細胞は、CliniMACS(登録商標)Cell Selection System(Miltenyi Biotec)を用いて豊富化することができる。CD34+細胞は、ゲノム編集前に血清フリー培地(例えば、CellGrow SCGM培地、CellGenix)内でサイトカイン(例えば、SCF、rhTPO、rhFLT3)を用いて刺激することができる。長期移植を改善するために、SR1及びdmPGE2及び/または他の因子の付加が企図されている。
赤血球系列の造血前駆細胞は、CD71及びTerl 19などの赤血球系列に特有の細胞表面マーカーを有し得る。
造血幹細胞(HSC)は、修正された細胞の持続的供給源をもたらすため、遺伝子療法の重要な標的であり得る。HSCは、骨髄系及びリンパ系両系列の血球を生じさせる。成熟血球は有限の寿命を有し、一生を通じて継続的に置き換えられなければならない。血球は多能性HSC集団の増殖及び分化によって絶えず生成され、多能性HSC集団は自己再生によって補充され得る。骨髄(BM)は、ヒトにおける主要な血球新生部位であり、造血幹細胞及び造血前駆細胞(HSPC)の良好な供給源である。HSPCは、末梢血(PB)中にも少数が見いだされ得る。一部の徴候または処置において、HSPCの数は増加する。HSCの後代は段階を通じて成熟し、BCL11Aを発現する細胞を生じさせるリンパ系前駆細胞を含めた、多分化能の系列決定された後代細胞を産生する。B細胞前駆体及びT細胞前駆体は、再配置の前の段階でこれらを編集され得るようにするためBCL11Aの活性を必要とする2つの細胞集団であるが、前駆体の修正は、修正された細胞の供給源であり続けるという利点を有する。処置された細胞(例えば、CD34+細胞)は、患者に戻されることになる。移植のレベルは、in vivoでのCD34+注入後の遺伝子編集された細胞に対する細胞の多系列移植能力が重要であり得るのと同じように、重要であり得る。
人工多能性幹細胞
本明細書に記載の遺伝子操作されたヒト細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)であり得る。iPSCを使用する利点は、当該細胞が、前駆細胞を投与する同じ対象に由来し得ることである。すなわち体細胞は、対象から取得し、人工多能性幹細胞に初期化し、次に対象に投与する前駆細胞(例えば、自己細胞)に再分化させることができる。前駆体は本質的に自己供給源に由来するため、別の対象または別の対象群からの細胞を使用することに比べると、移植拒絶反応またはアレルギー応答のリスクが低減され得る。加えて、iPSCを使用することで胚供給源から細胞を得る必要性がなくなる。そのため一態様では、本開示の方法で使用される幹細胞は胚幹細胞ではない。
分化は概して生理的文脈下では非可逆的であるが、近年、体細胞をiPSCに初期化するいくつかの方法が開発されている。例示的な方法は当業者にとって公知であり、本明細書では下記で簡単に説明する。
「初期化」という用語は、分化細胞(例えば、体細胞)の分化状態を変更または反転するプロセスを指す。言い換えれば、初期化とは、細胞の分化を逆方向に促進し、より未分化のタイプまたはより原始的なタイプの細胞にするプロセスを指す。多くの初代細胞を培養液中に入れると、完全に分化した特性のいくらかの損失につながり得ることに留意されたい。したがって、分化細胞という用語に含まれるこのような細胞を単に培養することが当該細胞を非分化細胞(例えば、未分化細胞)または多能性細胞にすることにはならない。分化細胞が多能性に移行するには、培養液中での分化特性の部分的損失をもたらす刺激を超えた初期化刺激が必要である。また、初期化細胞は、培養液中では概して限られた回数の分割しかできない初代細胞の親に比べて、成長可能性を損失することなく継代を延長できるという特徴も有する。
初期化対象の細胞は、初期化する前に部分的に分化していても最終的に分化していてもよい。初期化は、分化細胞(例えば、体細胞)の分化状態における多能性状態または多分化能状態への完全な復帰を含み得る。初期化は、分化細胞(例えば、体細胞)の分化状態における未分化細胞(例えば、胚様細胞)への完全または部分的な復帰を含み得る。初期化は、細胞による特定の遺伝子の発現をもたらす可能性があり、この発現はさらに初期化に寄与する。本明細書に記載のある特定の例において、分化細胞(例えば、体細胞)の初期化により、分化細胞は未分化状態の(例えば、未分化細胞である)様相を呈することができる。得られた細胞は「初期化細胞」または「人工多能性幹細胞」(iPSCまたはiPS細胞)と呼ばれる。
初期化は、細胞分化中に生じる遺伝的パターン、例えば、核酸改変(例えば、メチル化)、クロマチン凝縮、エピジェネティック変化、ゲノムインプリンティングなどにおける少なくとも一部の変更(例えば、逆転)を伴い得る。初期化は、単に、既に多能性を有する細胞における既存の未分化状態を維持することや、既に多分化能を有する細胞(例えば、造血幹細胞)における既存の完全分化未満の状態を維持することとは異なる。また、初期化は、既に多能性または多分化能を有する細胞の自己再生または増殖を促進することとも異なるが、本明細書に記載の組成物及び方法は、一部の例において、このような目的に使用することもできる。
体細胞からの多能性幹細胞の産生に使用され得る多くの方法が、当技術分野で知られている。体細胞を多能性表現型に初期化するこのような方法はいずれも、本明細書に記載の方法での使用に適切であると考えられる。
定義された転写因子の組合せを用いた多能性細胞生成のための初期化方法論を説明してきた。マウス体細胞は、Oct4、Sox2、Klf4、及びc−Mycの直接的な形質導入により、発生可能性が拡大したES細胞様細胞に変換することができる。例えば、Takahashi and Yamanaka,Cell 126(4):663−76(2006)を参照。iPSCは、多能性関連の転写回路やエピジェネティックなランドスケープの多くを復元することから、ES細胞に似ている。加えて、マウスiPSCは、全ての多能性に関する標準アッセイ、具体的には、3胚葉における細胞タイプへのin vitro分化、奇形腫形成、キメラへの寄与、生殖系列の伝達[例えば、Maherali and Hochedlinger,Cell Stem Cell.3(6):595−605(2008)を参照]、及び4倍体補完法を満たす。
ヒトiPSCは同様の形質導入方法を用いて得ることができ、OCT4、SOX2、及びNANOGの3つの転写因子は多能性を司る転写因子のコアセットとして確立されている。例えば、Budniatzky and Gepstein,Stem Cells Transl Med.3(4):448−57(2014);Barrett et al.,Stem Cells Trans Med 3:1−6 sctm.2014−0121(2014);Focosi et al.,Blood Cancer Journal 4:e211(2014);及びこれらの文献内で引用されている文献を参照。iPSCの生成は、幹細胞関連の遺伝子をコードする核酸配列を、歴史的にはウイルスベクターを用いて、成人の体細胞に導入することにより達成され得る。
iPSCは、最終分化体細胞及び成人の幹細胞または体性幹細胞から産生する、または導き出すことができる。すなわち、非多能性前駆細胞は、初期化によって多能性または多分化能にすることができる。このような場合には、最終分化細胞の初期化に必要な初期化因子と同じ数の初期化因子を含める必要がない可能性がある。さらに、初期化の誘導は、初期化因子の非ウイルス導入により、例えばタンパク質そのものの導入により、または初期化因子をコードする核酸の導入により、または翻訳の際に初期化因子を生成するメッセンジャーRNAの導入により行うことができる(例えば、Warren et al.,Cell Stem Cell,7(5):618−30(2010)を参照)。初期化は、例えば、Oct−4(Oct−3/4またはPouf51としても知られる)、Soxl、Sox2、Sox3、Sox15、Sox18、NANOG、Klfl、Klf2、Klf4、Klf5、NR5A2、c−Myc、1−Myc、n−Myc、Rem2、Tert、及びLIN28を含めた、幹細胞関連遺伝子をコードする核酸の組合せの導入によって達成することができる。本明細書に記載の方法及び組成物を用いた初期化は、さらに、Oct−3/4、Soxファミリーのメンバー、Klfファミリーのメンバー、及びMycファミリーのメンバーのうちの1つ以上を体細胞に対し導入することを含み得る。本明細書に記載の方法及び組成物は、さらに、Oct−4、Sox2、Nanog、c−MYC、及びKlf4の各々のうちの1つ以上を初期化向けに導入することを含み得る。上で注記したように、初期化に使用する厳密な方法は、本明細書に記載の方法及び組成物に必ずしも決定的なものではない。ただし、初期化細胞から分化した細胞を、例えばヒトの治療で使用する場合、一態様において当該初期化はゲノムを変更する方法によって行われない。したがってこのような例において、初期化は、例えばウイルスまたはプラスミドのベクターを使用することなく、達成することができる。
開始細胞集団から導き出す初期化の効率(すなわち、初期化細胞の数)は、Shi et al.,Cell−Stem Cell 2:525−528(2008);Huangfu et al.,Nature Biotechnology 26(7):795−797(2008)、及びMarson et al.,Cell−Stem Cell 3:132−135(2008)により示されるように、様々な薬剤、例えば低分子の添加によって向上させることができる。したがって、人工多能性幹細胞生成の効率または速度を向上させる薬剤または薬剤の組合せは、患者特異的または疾患特異的iPSCの生成で使用することができる。初期化効率を向上させる薬剤の一部の非限定的な例としては、可溶性Wnt、Wnt条件培地、BIX−01294(G9aヒストンメチルトランスフェラーゼ)、PD0325901(MEK阻害剤)、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、バルプロ酸、5’−アザシチジン、デキサメタゾン、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、ビタミンC、及びトリコスタチン(TSA)が特に挙げられる。
初期化を向上させる薬剤におけるその他の非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA(例えば、MK0683、ボリノスタット)及び他のヒドロキサム酸)、BML−210、デプデシン(例えば、(−)−デプデシン)、HCトキシン、ヌルスクリプト(4−(1,3−ジオキソ−1H,3H−ベンゾ[de]イソキノリン−2−イル)−N−ヒドロキシブタンアミド)、フェニル酪酸塩(例えば、フェニル酪酸ナトリウム)及びバルプロ酸((VP A)及び他の短鎖脂肪酸)、スクリプタイド、スラミンナトリウム、トリコスタチンA(TSA)、APHA化合物8、アピシジン、酪酸ナトリウム、酪酸ピバロイルオキシメチル(Pivanex、AN−9)、トラポキシンB、クラミドシン、デプシペプチド(FR901228またはFK228としても知られる)、ベンズアミド(例えば、CI−994(例えば、N−アセチルジナリン)及びMS−27−275)、MGCD0103、NVP−LAQ−824、CBHA(m−カルボキシケイ皮酸ビスヒドロキサム酸)、JNJ16241199、ツバシン、A−161906、プロキサミド、オキサムフラチン、3−Cl−UCHA(例えば、6−(3−クロロフェニルウレイド)カプロンヒドロキサム酸)、AOE(2−アミノ−8−オキソ−9,10−エポキシデカン酸)、CHAP31及びCHAP50。初期化を向上させる薬剤としては、例えば、HDACの優性阻害型(例えば、触媒不活性型)、HDACのsiRNA阻害剤、及びHDACに特異的に結合する抗体が挙げられる。このような阻害剤は、例えば、BIOMOL International、Fukasawa、Merck Biosciences、Novartis、Gloucester Pharmaceuticals、Titan Pharmaceuticals、MethylGene、及びSigma Aldrichから入手可能である。
本明細書に記載の方法と共に使用する多能性幹細胞の誘導を確認するために、単離されたクローンに対し、幹細胞マーカーの発現を試験することができる。体細胞由来の細胞内でこのような発現があれば、当該細胞は多能性幹細胞として特定される。幹細胞マーカーは、SSEA3、SSEA4、CD9、Nanog、Fbxl5、Ecat1、Esg1、Eras、Gdf3、Fgf4、Cripto、Dax1、Zpf296、Slc2a3、Rex1、Utf1、及びNat1を含む非限定的な群から選択され得る。例えば、ある場合において、Oct4またはNanogを発現する細胞は多能性であるものとして特定される。このようなマーカーの発現を検出する方法としては、例えば、RT−PCR及びコードされたポリペプチドの存在を検出する免疫学的方法(例えば、ウェスタンブロットまたはフローサイトメトリー解析)が挙げられ得る。検出は、RT−PCRを伴うだけではなく、タンパク質マーカーの検出も含み得る。細胞内マーカーはRT−PCR、または免疫組織化学検査などのタンパク質検出法によって最もよく特定することができ、一方、細胞表面マーカーは、例えば免疫組織化学検査によって容易に特定される。
単離された細胞の多能性幹細胞特性は、3胚葉の各細胞に分化するiPSCの能力を評価する試験によって確認することができる。一例として、ヌードマウスにおける奇形腫形成は、単離されたクローンの多能特性を評価するのに使用することができる。細胞をヌードマウスに導入し、細胞から生じた腫瘍に組織診断及び/または免疫組織化学検査を実施することができる。例えば、3胚葉全てからの細胞を含む腫瘍の成長は、この細胞が多能性幹細胞であることをさらに示す。
患者特異的iPSCの創出
本開示のex vivoの方法における一ステップは、患者特異的iPS細胞、患者特異的iPS細胞、または患者特異的iPS細胞株の創出を伴い得る。患者特異的iPS細胞の創出については、Takahashi and Yamanaka 2006;Takahashi,Tanabe et al.2007に記載のように、当技術分野において多くの確立した方法が存在する。例えば、創出するステップは、a)患者から体細胞(例えば、皮膚細胞または線維芽細胞)を単離することと、b)多能性細胞になるよう誘導するために、体細胞に多能性関連遺伝子のセットを導入することとを含み得る。多能性関連細胞のセットは、OCT4、SOX2、KLF4、Lin28、NANOG、及びcMYCからなる群から選択される1つ以上の遺伝子であってもよい。
患者骨髄の生検または吸引液の実施
生検または吸引液とは、身体から採取された組織または体液の試料のことである。生検または吸引液には多くの様々な種類が存在する。そのほぼ全てが、鋭利な道具を使用して少量の組織を取り出すことを伴う。生検が皮膚または他の敏感な部位である場合、最初に痺れ薬を適用することができる。生検または吸引液は、当技術分野で公知の方法のいずれかに従って実施することができる。例えば、骨髄穿刺液の場合、大型の針を使用して骨盤に侵入させ、骨髄を採取する。
間葉系幹細胞の単離
間葉系幹細胞は、例えば患者の骨髄または末梢血から、当技術分野で公知の任意の方法に従い単離することができる。例えば、骨髄穿刺液をヘパリンと共にシリンジに収集することができる。細胞は洗浄し、Percoll(商標)で密度勾配遠心分離することができる。血球、肝細胞、間質細胞、マクロファージ、肥満細胞、及び胸腺細胞などの細胞は、Percoll(商標)を用いて分離することができる。当該細胞は、10%のウシ胎児血清(FBS)を含有するダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(低グルコース)内で培養することができる(Pittinger MF,Mackay AM,Beck SC et al.,Science 1999;284:143−147)。
GCSFを用いた患者の処置
任意選択で、患者は、当技術分野で公知の任意の方法に従い、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)を用いて処置することができる。GCSFはプレリキサフォルと組み合わせて投与されてもよい。
患者からの造血前駆細胞の単離
造血前駆細胞は、当技術分野で公知の任意の方法によって、患者から単離することができる。CD34+細胞は、CliniMACS(登録商標)Cell Selection System(Miltenyi Biotec)を用いて豊富化することができる。CD34+細胞は、ゲノム編集前に血清フリー培地(例えば、CellGrow SCGM培地、CellGenix)内でサイトカイン(例えば、SCF、rhTPO、rhFLT3)を用いて弱く刺激することができる。
ゲノム編集
一般にゲノム編集とは、ゲノムのヌクレオチド配列を改変するプロセスを指し、正確な方法または所定の方法で行われることが好ましい。本明細書に記載のゲノム編集方法の例としては、部位特異的ヌクレアーゼを使用してゲノム内の正確な標的位置でデオキシリボ核酸(DNA)を切断することにより、ゲノム中の特定の位置で1本鎖または2本鎖のDNA切断を創出する方法が挙げられる。このような切断は、近年Cox et al.,Nature Medicine 21(2),121−31(2015)で概説されているように、相同組換え修復(HDR)及びNHEJなどの天然の内因性細胞プロセスによって修復され得るものであり、また通常はそのように修復される。これら2つの主なDNA修復プロセスは、代替経路のファミリーからなる。NHEJは2本鎖切断から生じたDNA末端を直接連結するが、時としてヌクレオチド配列の損失または付加を伴い、遺伝子発現を分断するまたは向上させる可能性がある。HDRは、定義されたDNA配列を切断ポイントで挿入するためのテンプレートとして、相同配列、すなわちドナー配列を利用する。相同配列は、姉妹染色分体などの内因性ゲノム内に存在してもよい。代替的に、ドナーは外因性核酸であってもよく、例えば、ヌクレアーゼ切断される座位と相同性が高い領域を有し、ただし切断される標的座位に組み込むことができる追加の配列または配列変化(欠失を含む)も含有し得るプラスミド、1本鎖オリゴヌクレオチド、2本鎖オリゴヌクレオチド、デュプレックスオリゴヌクレオチド、またはウイルスであってもよい。第3の修復機構としては、少数の欠失及び挿入が切断部位で起こり得る点において遺伝子的結果がNHEJと同様のマイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ)(「代替的NHEJ」とも呼ばれる)が考えられる。MMEJは、DNA切断部位に隣接する少数の塩基対の相同配列を利用してさらに好ましいDNA末端修復結果を推進することができ、最近の研究ではこのプロセスにおける分子機構がさらに明らかになっている(例えば、Cho and Greenberg,Nature 518,174−76(2015);Kent et al.,Nature Structural and Molecular Biology,Adv.Online doi:10.1038/nsmb.2961(2015);Mateos−Gomez et al.,Nature 518,254−57(2015);Ceccaldi et al.,Nature 528,258−62(2015)を参照)。場合によっては、DNA切断部位における潜在的マイクロホモロジーの解析に基づいて、あり得る修復結果を予測することが可能であると考えられる。
このようなゲノム編集機構の各々は、所望のゲノム変更の創出に使用することができる。ゲノム編集プロセスにおける1つのステップは、変異が意図された部位付近としての標的座位で、1つまたは2つのDNA切断(後者は2本鎖切断または2つの1本鎖切断として)を創出することであってもよい。これは、本明細書で説明し例示する部位特異的ポリペプチドの使用によって達成することができる。
部位特異的ポリペプチド(例えば、DNAエンドヌクレアーゼ)は、核酸(例えば、ゲノムDNA)内に2本鎖切断または1本鎖切断を導入することができる。2本鎖切断は、細胞の内因性DNA修復経路(例えば、相同性依存修復、すなわち非相同末端結合、または代替的非相同末端結合(A−NHEJ)、すなわちマイクロホモロジー媒介末端結合)を刺激し得る。NHEJは、相同テンプレートの必要なしに、切断された標的核酸を修復することができる。このことにより、時として切断部位における標的核酸内で少数の欠失または挿入(インデル)がもたらされ、遺伝子発現の分断または変更につながり得る。HDRは、相同修復テンプレート、すなわちドナーが利用可能であるときに生じ得る。相同ドナーテンプレートは、標的核酸切断部位に隣接する配列に相同であり得る配列を含むことができる。姉妹染色分体が修復テンプレートとして細胞に使用されてもよい。ただしゲノム編集の目的においては、修復テンプレートは、外因性核酸(例えば、プラスミド、デュプレックスオリゴヌクレオチド、1本鎖オリゴヌクレオチド、2本鎖オリゴヌクレオチド、またはウイルス核酸)として供給され得る。外因性ドナーテンプレートを用いて、追加の核酸配列(例えば、導入遺伝子)または改変(例えば、単一または複数の塩基変化または欠失)を相同する隣接領域間に導入して、追加のまたは変更された核酸配列も標的座位に組み込まれるようにしてもよい。MMEJは、少数の欠失及び挿入が切断部位で生じ得るという点において、NHEJと同様の遺伝子的結果をもたらし得る。MMEJは、切断部位に隣接する少数の塩基対の相同配列を利用して、好ましい末端結合DNA修復結果を促進することができる。場合によっては、ヌクレアーゼ標的領域内の潜在的マイクロホモロジーの解析に基づいて、あり得る修復結果を予測することが可能であると考えられる。
したがって一部の場合において、相同組換えは、標的核酸切断部位に外因性ポリヌクレオチド配列を挿入するのに使用することができる。外因性ポリヌクレオチド配列は、本明細書ではドナーポリヌクレオチド(またはドナー、もしくはドナー配列、もしくはポリヌクレオチドドナーテンプレート)と称される。ドナーポリヌクレオチド、ドナーポリヌクレオチドの一部、ドナーポリヌクレオチドのコピー、またはドナーポリヌクレオチドのコピーの一部は、標的核酸切断部位に挿入することができる。ドナーポリヌクレオチドは、外因性ポリヌクレオチド配列、すなわち、標的核酸切断部位に天然には存在しない配列であってもよい。
NHEJ及び/またはHDRによる標的DNAの改変は、例えば、変異、欠失、変更、統合、遺伝子修正、遺伝子置き換え、遺伝子タグ付け、導入遺伝子挿入、ヌクレオチド欠失、遺伝子分断、転座、及び/または遺伝子変異をもたらし得る。ゲノムDNAを欠失させ、非ネイティブ核酸をゲノムDNAに組み込むプロセスは、ゲノム編集の例である。
CRISPRエンドヌクレアーゼシステム
CRISPR(クラスター化された規則的間隔の短回文のリピート(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats))ゲノム座位は、多くの原核生物(例えば、細菌及び古細菌)のゲノム内で見いだすことができる。原核生物において、CRISPR座位は免疫システムの1タイプとして機能する産物をコードして、原核生物をウイルス及びファージなどの外部侵入者から防御する一助となる。CRISPR座位機能には3つの段階が存在する:CRISPR座位への新規配列の統合、CRISPR RNA(crRNA)の発現、及び外部侵入者核酸のサイレンシング。5つのタイプのCRISPRシステム(例えば、I型、II型、III型、U型、及びV型)が特定されている。
CRISPR座位は、「リピート」と呼ばれる複数の短い反復配列を含む。リピートは発現すると2次構造(例えば、ヘアピン)を形成し、及び/または非構造的1本鎖配列を含み得る。通常、リピートはクラスター内に生じ、種間で異なることが多い。リピートは、「スペーサー」と呼ばれる一意の介在配列によって規則的に間隔が置かれており、その結果、リピート−スペーサー−リピートの座位アーキテクチャーがもたらされる。スペーサーは、既知の外部侵入者配列と同一であるか、高い相同性を有する。スペーサー−リピート単位はcrisprRNA(crRNA)をコードし、このcrRNAは処理されて成熟形態のスペーサー−リピート単位になる。crRNAは、標的核酸の標的化に関与する「シード」またはスペーサー配列を含む(原核生物における天然の形態では、スペーサー配列は外部侵入者核酸を標的化する)。スペーサー配列は、crRNAの5’または3’末端に位置する。
また、CRISPR座位は、CRISPR関連(Cas)遺伝子をコードするポリヌクレオチド配列も含む。Cas遺伝子は、原核生物におけるバイオジェネシス及びcrRNA機能の干渉段階に関与するエンドヌクレアーゼをコードする。一部のCas遺伝子は、相同の2次及び/または3次構造を含む。
II型CRISPRシステム
II型CRISPRシステムにおけるcrRNAバイオジェネシスは、本質的にトランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)を必要とする。tracrRNAは、内因性のRNアーゼIIIによって改変し、次にpre−crRNAアレイにおけるcrRNAリピートとハイブリダイズさせることができる。内因性のRNアーゼIIIは、pre−crRNAの切断に動員することができる。切断されたcrRNAは、エキソリボヌクレアーゼのトリミングに供して成熟crRNA形態を生成することができる(例えば、5’トリミング)。tracrRNAはcrRNAとハイブリダイズしたままでいることができ、tracrRNA及びcrRNAは部位特異的ポリペプチド(例えば、Cas9)と会合する。crRNA−tracrRNA−Cas9複合体のcrRNAは、crRNAとハイブリダイズし得る標的核酸まで複合体を誘導することができる。crRNAと標的核酸とのハイブリダイズは、標的核酸の切断のためにCas9を活性化させ得る。II型CRISPRシステムにおける標的核酸は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と呼ばれる。本質的に、PAMは部位特異的ポリペプチド(例えば、Cas9)と標的核酸との結合を容易にするために不可欠である。II型システム(NmeniまたはCASS4とも呼ばれる)は、さらにII型A(CASS4)及びII型B(CASS4a)に細分される。Jinek et al.,Science,337(6096):816−821(2012)では、CRISPR/Cas9システムがRNAプログラム可能なゲノム編集に有用であることが示され、国際特許出願公開第WO2013/176772号では、部位特異的遺伝子編集のためのCRISPR/Casエンドヌクレアーゼシステムにおける多数の例及び応用が提供されている。
V型CRISPRシステム
V型CRISPRシステムは、II型システムに対するいくつかの重要な相違点を有する。例えば、Cpf1は単一のRNA誘導型エンドヌクレアーゼであり、II型システムと対照的にtracrRNAが欠如している。実際には、Cpf1関連CRISPRアレイは、追加のトランス活性化tracrRNAを必要とすることなく成熟crRNAに処理され得る。V型CRISPRアレイは、42〜44ヌクレオチド長の短い成熟crRNAに処理することができ、各成熟crRNAは19ヌクレオチドのダイレクトリピートで開始し、次に23〜25ヌクレオチドのスペーサー配列が続く。これに対し、II型システムにおける成熟crRNAは、20〜24ヌクレオチドのスペーサー配列で開始し、次に約22ヌクレオチドのダイレクトリピートが続き得る。また、Cpf1はTリッチプロトスペーサー隣接モチーフを利用して、Cpf1−crRNA複合体が、短いTリッチPAMが先行する標的DNA(これに対し、II型システムではGリッチPAMは標的DNAの次に来る)を効率的に切断するようにできる。したがって、II型システムがPAMに隣接するポイントで切断するのに対し、V型システムはPAMから離れたポイントで切断する。加えて、II型システムと対照的に、Cpf1のDNA切断は、4または5ヌクレオチドの5’オーバーハングを有するねじれ形のDNA2本鎖切断によって行う。II型システムは、平滑な2本鎖切断によって切断する。Cpf1は、II型システムと同様に、予測されたRuvC様エンドヌクレアーゼドメインを含有するが、第2のHNHエンドヌクレアーゼドメインが欠如している点はII型システムと対照的である。
Cas遺伝子/ポリペプチド及びプロトスペーサー隣接モチーフ
例示的なCRISPR/Casポリペプチドとしては、Fonfara et al.,Nucleic Acids Research,42:2577−2590(2014)の図1にあるCas9ポリペプチドが挙げられる。CRISPR/Cas遺伝子命名システムは、Cas遺伝子が発見されて以来、多くの書き換えを経てきた。Fonfara(上記)の図5に、様々な種からのCas9ポリペプチドのPAM配列が示されている。
部位特異的ポリペプチド
部位特異的ポリペプチドとは、DNA切断のためにゲノム編集で使用されるヌクレアーゼのことである。部位特異的ヌクレアーゼまたはポリペプチドは、1つ以上のポリペプチドとして、またはポリペプチドをコードする1つ以上のmRNAとして、細胞または患者に投与することができる。
CRISPR/CasまたはCRISPR/Cpf1システムの文脈において、部位特異的ポリペプチドはガイドRNAに結合することができ、次にガイドRNAは当該ポリペプチドが導かれる標的DNA内の部位を特定する。本明細書で開示するCRISPR/CasまたはCRISPR/Cpf1システムにおいて、部位特異的ポリペプチドは、エンドヌクレアーゼ、例えばDNAエンドヌクレアーゼであり得る。
部位特異的ポリペプチドは、複数の核酸切断(すなわち、ヌクレアーゼ)ドメインを含むことができる。2つ以上の核酸切断ドメインは、リンカーを介して一緒に結合することができる。例えば、リンカーは可動性リンカーを含むことができる。リンカーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40またはそれ以上の長さのアミノ酸を含む。
天然に存在する野生型Cas9酵素は、2つのヌクレアーゼドメイン、1つのHNHヌクレアーゼドメイン、及び1つのRuvCドメインを含む。本明細書において「Cas9」とは、天然に存在するCas9及び組換えCas9の両方を指す。本明細書で企図されているCas9酵素は、HNHもしくはHNH様ヌクレアーゼドメイン、及び/またはRuvCもしくはRuvC様ヌクレアーゼドメインを含むことができる。
HNHまたはHNH様ドメインは、McrA様の折りたたみを含む。HNHまたはHNH様ドメインは、2つの逆平行のβ鎖及び1つのαヘリックスを含む。HNHまたはHNH様ドメインは、金属結合部位(例えば、2価のカチオン結合部位)を含む。HNHまたはHNH様ドメインは、標的核酸の1つの鎖(例えば、crRNA標的鎖の相補鎖)を切断することができる。
RuvCまたはRuvC様ドメインは、RNアーゼHまたはRnアーゼH様折りたたみを含む。RuvC/RnアーゼHドメインは、RNA及びDNAの両方への作用を含めた多様なセットの核酸ベースの機能に関与する。RnアーゼHドメインは、複数のαヘリックスに囲まれた5つのβ鎖を含む。RuvC/RnアーゼHまたはRuvC/RnアーゼH様ドメインは、金属結合部位(例えば、2価のカチオン結合部位)を含む。RuvC/RnアーゼHまたはRuvC/RnアーゼH様ドメインは、標的核酸の1つの鎖(例えば、2本鎖標的DNAの非相補鎖)を切断することができる。
部位特異的ポリペプチドは、核酸(例えば、ゲノムDNA)内に2本鎖切断または1本鎖切断を導入することができる。2本鎖切断は、細胞の内因性DNA修復経路(例えば、相同性依存修復(HDR)、またはNHEJ、または代替的非相同末端結合(A−NHEJ)、すなわちマイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ))を刺激し得る。NHEJは、相同テンプレートの必要なしに、切断された標的核酸を修復することができる。このことにより、時として切断部位における標的核酸内で少数の欠失または挿入(インデル)がもたらされ、遺伝子発現の分断または変更につながり得る。HDRは、相同修復テンプレート、すなわちドナーが利用可能であるときに生じ得る。相同ドナーテンプレートは、標的核酸切断部位に隣接する配列に相同である配列を含むことができる。姉妹染色分体が修復テンプレートとして細胞に使用されてもよい。ただしゲノム編集の目的においては、修復テンプレートは、外因性核酸(例えば、プラスミド、デュプレックスオリゴヌクレオチド、1本鎖オリゴヌクレオチド、またはウイルス核酸)として供給され得る。外因性ドナーテンプレートを用いて、追加の核酸配列(例えば、導入遺伝子)または改変(例えば、単一または複数の塩基変化または欠失)を相同する隣接領域間に導入して、追加のまたは変更された核酸配列も標的座位に組み込まれるようにしてもよい。MMEJは、少数の欠失及び挿入が切断部位で生じ得るという点において、NHEJと同様の遺伝子的結果をもたらし得る。MMEJは、切断部位に隣接する少数の塩基対の相同配列を利用して、好ましい末端結合DNA修復結果を促進することができる。場合によっては、ヌクレアーゼ標的領域内の潜在的マイクロホモロジーの解析に基づいて、あり得る修復結果を予測することが可能であると考えられる。
したがって一部の場合において、相同組換えは、標的核酸切断部位に外因性ポリヌクレオチド配列を挿入するのに使用することができる。外因性ポリヌクレオチド配列は、本明細書ではドナーポリヌクレオチド(またはドナーもしくはドナー配列)と称される。ドナーポリヌクレオチド、ドナーポリヌクレオチドの一部、ドナーポリヌクレオチドのコピー、またはドナーポリヌクレオチドのコピーの一部は、標的核酸切断部位に挿入することができる。ドナーポリヌクレオチドは、外因性ポリヌクレオチド配列、すなわち、標的核酸切断部位に天然には存在しない配列であってもよい。
NHEJ及び/またはHDRによる標的DNAの改変は、例えば、変異、欠失、変更、統合、遺伝子修正、遺伝子置き換え、遺伝子タグ付け、導入遺伝子挿入、ヌクレオチド欠失、遺伝子分断、転座、及び/または遺伝子変異をもたらし得る。ゲノムDNAを欠失させ、非ネイティブ核酸をゲノムDNAに組み込むプロセスは、ゲノム編集の例である。
部位特異的ポリペプチドは、野生型の例示的な部位特異的ポリペプチド[例えば、US2014/0068797の配列番号8またはSapranauskas et al.,Nucleic Acids Res,39(21):9275−9282(2011)のS.pyogenesからのCas9]に対し、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列、及び他の様々な部位特異的ポリペプチドを含むことができる。部位特異的ポリペプチドは、野生型の部位特異的ポリペプチド(上記にあるS.pyogenesからのCas9)に対し、少なくとも70、75、80、85、90、95、97、99、または100%の同一性を10個の連続したアミノ酸にわたって備えることができる。部位特異的ポリペプチドは、野生型の部位特異的ポリペプチド(上記にあるS.pyogenesからのCas9)に対し、最大で70、75、80、85、90、95、97、99、または100%の同一性を10個の連続したアミノ酸にわたって備えることができる。部位特異的ポリペプチドは、野生型の部位特異的ポリペプチド(上記にあるS.pyogenesからのCas9)に対し、少なくとも70、75、80、85、90、95、97、99、または100%の同一性を、部位特異的ポリペプチドのHNHヌクレアーゼドメイン内の10個の連続したアミノ酸にわたって備えることができる。部位特異的ポリペプチドは、野生型の部位特異的ポリペプチド(上記にあるS.pyogenesからのCas9)に対し、最大で70、75、80、85、90、95、97、99、または100%の同一性を、部位特異的ポリペプチドのHNHヌクレアーゼドメイン内の10個の連続したアミノ酸にわたって備えることができる。部位特異的ポリペプチドは、野生型の部位特異的ポリペプチド(上記にあるS.pyogenesからのCas9)に対し、少なくとも70、75、80、85、90、95、97、99、または100%の同一性を、部位特異的ポリペプチドのRuvCヌクレアーゼドメイン内の10個の連続したアミノ酸にわたって備えることができる。部位特異的ポリペプチドは、野生型の部位特異的ポリペプチド(上記にあるS.pyogenesからのCas9)に対し、最大で70、75、80、85、90、95、97、99、または100%の同一性を、部位特異的ポリペプチドのRuvCヌクレアーゼドメイン内の10個の連続したアミノ酸にわたって備えることができる。
部位特異的ポリペプチドは、改変形態の野生型の例示的な部位特異的ポリペプチドを含むことができる。改変形態の野生型の例示的な部位特異的ポリペプチドは、部位特異的ポリペプチドの核酸切断活性を低減する変異を含むことができる。改変形態の野生型の例示的な部位特異的ポリペプチドは、野生型の例示的な部位特異的ポリペプチド(上記にあるS.pyogenesからのCas9)の核酸切断活性の90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、または1%未満の核酸切断活性を有することができる。改変形態の部位特異的ポリペプチドは、実質的に核酸切断活性を有しない可能性がある。部位特異的ポリペプチドが実質的に核酸切断活性を有しない改変形態であるとき、この部位特異的ポリペプチドは本明細書では「酵素的に不活性」と呼ばれる。
改変形態の部位特異的ポリペプチドは、(例えば、2本鎖標的核酸の糖−リン酸骨格のうちの1つのみを切断することによって)標的核酸上に1本鎖切断(SSB)を誘導できるような変異を含むことができる。当該変異は、野生型の部位特異的ポリペプチド(例えば、上記にあるS.pyogenesからのCas9)の複数の核酸切断ドメインのうちの1つ以上における核酸切断活性の90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、または1%未満の核酸切断活性をもたらし得る。当該変異は、標的核酸の相補鎖の切断能力を保持し、標的核酸の非相補鎖の切断能力を低減する複数の核酸切断ドメインのうちの1つ以上をもたらし得る。当該変異は、標的核酸の非相補鎖の切断能力を保持し、標的核酸の相補鎖の切断能力を低減する複数の核酸切断ドメインのうちの1つ以上をもたらし得る。例えば、野生型の例示的なS.pyogenes Cas9ポリペプチドにおける残基(例えば、Asp10、His840、Asn854、及びAsn856)は、複数の核酸切断ドメイン(例えば、ヌクレアーゼドメイン)のうちの1つ以上を不活性化するように変異させる。変異対象の残基は、野生型の例示的なS.pyogenes Cas9ポリペプチドにおける残基Asp10、His840、Asn854、及びAsn856に対応し得る(例えば、配列及び/または構造アラインメントによって決定される)。変異の非限定的な例としては、D10A、H840A、N854A、またはN856Aが挙げられる。当業者であれば、アラニン置換以外の変異が好適であり得ると認識することになる。
D10A変異を、H840A、N854A、またはN856A変異のうちの1つ以上と合わせて、実質的にDNA切断活性が欠如した部位特異的ポリペプチドを生成することができる。H840A変異を、D10A、N854A、またはN856A変異のうちの1つ以上と合わせて、実質的にDNA切断活性が欠如した部位特異的ポリペプチドを生成することができる。N854A変異を、H840A、D10A、またはN856A変異のうちの1つ以上と合わせて、実質的にDNA切断活性が欠如した部位特異的ポリペプチドを生成することができる。N856A変異を、H840A、N854A、またはD10A変異のうちの1つ以上と合わせて、実質的にDNA切断活性が欠如した部位特異的ポリペプチドを生成することができる。1つの実質的に不活性のヌクレアーゼドメインを含む部位特異的ポリペプチドは、「ニッカーゼ」と呼ばれる。
RNA誘導型エンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9)のニッカーゼバリアントは、CRISPRが媒介するゲノム編集の特異性を増加させるのに使用することができる。典型的には、野生型のCas9は、標的配列内の指定された約20ヌクレオチドの配列(例えば、内在的ゲノム座位)とハイブリダイズするように設計された単一のガイドRNAによって誘導される。しかし、ガイドRNAと標的座位との間にいくつかのミスマッチが許容される可能性があり、標的部位内で必要な相同性の長さが、例えばわずか13ntの相同性に効果的に低減されることにより、結果的に、標的ゲノム内の別の場所でCRISPR/Cas9複合体による結合及び2本鎖核酸切断(オフターゲット切断としても知られる)が生じる可能性が高まる。Cas9のニッカーゼバリアントはそれぞれ1本の鎖しか切断しないため、2本鎖切断を創出するには、1対のニッカーゼが近接して標的核酸の対向鎖上で結合することにより、2本鎖切断の等価物である1対のニックを創出する必要がある。このために求められるのは、2つの別々のガイドRNA(各ニッカーゼに対し1つ)が、近接して標的核酸の対向鎖上で結合しなければならないということである。この要件は、本質的に、2本鎖切断が生じるのに必要な相同性の最短の長さを倍増するものであり、これによってゲノム内の別の場所で2本鎖切断の事象が生じる可能性は低減され、もし2つのガイドRNA部位が存在しても、これらが2本鎖切断形成を可能にするほど十分に近接して存在する可能性は低い。当技術分野で説明されているように、ニッカーゼは、NHEJに対しHDRを促進するために使用することもできる。HDRは、所望の変化を効果的に媒介する特定のドナー配列の使用を通じて、選択された変化をゲノム内の標的部位に導入するのに使用することができる。
企図されている変異としては、置換、付加、及び欠失、またはこれらの任意の組合せが挙げられ得る。当該変異は、変異対象のアミノ酸をアラニンに変換する。当該変異は、変異対象のアミノ酸を別のアミノ酸(例えば、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、リジン、またはアルギニン)に変換する。当該変異は、変異対象のアミノ酸を非天然のアミノ酸(例えば、セレノメチオニン)に変換する。当該変異は、変異対象のアミノ酸をアミノ酸ミミック(例えば、ホスホミミック)に変換する。当該変異は、保存的変異であってもよい。例えば、当該変異は、変異対象のアミノ酸を、変異対象のアミノ酸のサイズ、形状、電荷、極性、立体構造、及び/または回転異性体に類似するアミノ酸に変換する(例えば、システイン/セリン変異、リジン/アスパラギン変異、ヒスチジン/フェニルアラニン変異)。当該変異は、リーディングフレームのシフト、及び/または未成熟終止コドンの創出を引き起こし得る。変異は、遺伝子の調節領域または1つ以上の遺伝子の発現に作用する座位に対し、変化を引き起こし得る。
部位特異的ポリペプチド(例えば、バリアントの、変異した、酵素的に不活性の、及び/または条件的に酵素的に不活性の部位特異的ポリペプチド)は、核酸を標的化することができる。部位特異的ポリペプチド(例えば、バリアントの、変異した、酵素的に不活性の、及び/または条件的に酵素的に不活性のエンドリボヌクレアーゼ)は、DNAを標的化することができる。部位特異的ポリペプチド(例えば、バリアントの、変異した、酵素的に不活性の、及び/または条件的に酵素的に不活性のエンドリボヌクレアーゼ)は、RNAを標的化することができる。
部位特異的ポリペプチドは、1つ以上の非ネイティブ配列を含むことができる(例えば、部位特異的ポリペプチドは融合タンパク質である)。
部位特異的ポリペプチドは、細菌(例えば、S.pyogenes)からのCas9に対し少なくとも15%のアミノ酸同一性を備えるアミノ酸配列と、核酸結合ドメインと、2つの核酸切断ドメイン(すなわち、HNHドメイン及びRuvCドメイン)とを含むことができる。
部位特異的ポリペプチドは、細菌(例えば、S.pyogenes)からのCas9に対し少なくとも15%のアミノ酸同一性を備えるアミノ酸配列と、2つの核酸切断ドメイン(すなわち、HNHドメイン及びRuvCドメイン)とを含むことができる。
部位特異的ポリペプチドは、細菌(例えば、S.pyogenes)からのCas9に対し少なくとも15%のアミノ酸同一性を備えるアミノ酸配列と、2つの核酸切断ドメインとを含むことができ、核酸切断ドメインの一方または両方は、細菌(例えば、S.pyogenes)からのCas9からのヌクレアーゼドメインに対し少なくとも50%のアミノ酸同一性を備える。
部位特異的ポリペプチドは、細菌(例えば、S.pyogenes)からのCas9に対し少なくとも15%のアミノ酸同一性を備えるアミノ酸配列と、2つの核酸切断ドメイン(すなわち、HNHドメイン及びRuvCドメイン)と、非ネイティブ配列(例えば、核局在化シグナル)または部位特異的ポリペプチドを非ネイティブ配列に結合させるリンカーとを含むことができる。
部位特異的ポリペプチドは、細菌(例えば、S.pyogenes)からのCas9に対し少なくとも15%のアミノ酸同一性を備えるアミノ酸配列と、2つの核酸切断ドメイン(すなわち、HNHドメイン及びRuvCドメイン)とを含むことができ、部位特異的ポリペプチドは、核酸切断ドメインの一方または両方に、ヌクレアーゼドメインの切断活性を少なくとも50%低減する変異を含む。
部位特異的ポリペプチドは、細菌(例えば、S.pyogenes)からのCas9に対し少なくとも15%のアミノ酸同一性を備えるアミノ酸配列と、2つの核酸切断ドメイン(すなわち、HNHドメイン及びRuvCドメイン)とを含むことができ、ヌクレアーゼドメインの一方はアスパラギン酸10の変異を含み、及び/またはヌクレアーゼドメインの一方はヒスチジン840の変異を含むことができ、当該変異はヌクレアーゼドメイン(複数可)の切断活性を少なくとも50%低減する。
1つ以上の部位特異的ポリペプチド(例えば、DNAエンドヌクレアーゼ)は、ゲノム内の特定の座位に1つの2本鎖切断を共にもたらす2つのニッカーゼ、またはゲノム内の特定の座位に2つの2本鎖切断を共にもたらすまたは起こす4つのニッカーゼを含むことができる。代替的に、1つの部位特異的ポリペプチド(例えば、DNAエンドヌクレアーゼ)は、ゲノム内の特定の座位に1つの2本鎖切断をもたらすまたは起こすことができる。
部位特異的ポリペプチドは、N末端、C末端、またはN末端及びC末端の両方で1つ以上の核局在化シグナル(NLS)に隣接していてもよい。例えば、Cas9エンドヌクレアーゼは、2つのNLS(一方のNLSはN末端に位置し、第2のNLSはC末端に位置する)に隣接していてもよい。NLSは、当技術分野で知られている任意のNLS(例えば、SV40 NLS)とすることができる。
ゲノム標的化核酸
本開示は、関連ポリペプチド(例えば、部位特異的ポリペプチド)の活性を標的核酸中の特定の標的配列に向けることができるゲノム標的化核酸を提供する。ゲノム標的化核酸は、RNAであり得る。ゲノム標的化RNAは、本明細書では「ガイドRNA」または「gRNA」と呼ばれる。ガイドRNAは、目的の標的核酸配列とハイブリダイズする少なくとも1つのスペーサー配列及びCRISPRリピート配列を含むことができる。II型システムにおいては、gRNAはtracrRNA配列と呼ばれる第2のRNAも含む。II型ガイドRNA(gRNA)においては、CRISPRリピート配列及びtracrRNA配列は、互いにハイブリダイズしてデュプレックスを形成する。V型ガイドRNA(gRNA)においては、crRNAがデュプレックスを形成する。両方のシステムにおいて、このデュプレックスは部位特異的ポリペプチドに結合し、それによってガイドRNA及び部位特異的ポリペプチドは複合体を形成することができる。ゲノム標的化核酸は、部位特異的ポリペプチドとの会合によって、複合体に標的特異性を提供することができる。したがって、ゲノム標的化核酸は部位特異的ポリペプチドの活性を向けることができる。
例示的なガイドRNAとしては、配列表における配列番号1〜71,947のスペーサー配列及び配列番号71,950〜71,959のsgRNA配列が挙げられる。当業者が理解するように、各ガイドRNAは、自らのゲノム標的配列に対し相補的なスペーサー配列を含めるように設計することができる。例えば、配列表における配列番号1〜71,947の各スペーサー配列を、(対応するtracrRNAと共に)単一のRNAキメラまたはcrRNAに入れてもよい。Jinek et al.,Science,337,816−821(2012)及びDeltcheva et al.,Nature,471,602−607(2011)または表1を参照。
ゲノム標的化核酸は、二重分子ガイドRNAであり得る。ゲノム標的化核酸は、単一分子ガイドRNAであり得る。
二重分子ガイドRNAは、RNAの2本鎖を含むことができる。第1の鎖は、5’から3’の方向に、任意選択のスペーサー延長配列、スペーサー配列、及び最小CRISPRリピート配列を含む。第2の鎖は、最小tracrRNA配列(最小CRISPRリピート配列に対し相補的)、3’tracrRNA配列、及び任意選択のtracrRNA延長配列を含むことができる。
II型システムにおける単一分子ガイドRNA(sgRNA)は、5’から3’の方向に、任意選択のスペーサー延長配列、スペーサー配列、最小CRISPRリピート配列、単一分子ガイドリンカー、最小tracrRNA配列、3’tracrRNA配列、及び任意選択のtracrRNA延長配列を含むことができる。任意選択のtracrRNA延長は、ガイドRNAに追加の機能性(例えば、安定性)をもたらすエレメントを含むことができる。単一分子ガイドリンカーは、最小CRISPRリピート配列及び最小tracrRNA配列を結合して、ヘアピン構造を形成することができる。任意選択のtracrRNA延長は、1つ以上のヘアピンを含むことができる。
V型システムにおける単一分子ガイドRNA(sgRNA)は、5’から3’の方向に、最小CRISPRリピート配列及びスペーサー配列を含むことができる。
sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に20ヌクレオチドのスペーサー配列を含むことができる。sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に20ヌクレオチド未満のスペーサー配列を含むことができる。sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に20ヌクレオチドを超えるスペーサー配列を含むことができる。sgRNAは、sgRNA配列の5’末端に17〜30ヌクレオチドの可変長のスペーサー配列を含むことができる(表1参照)。
sgRNAは、例えば表1の配列番号71,961のように、sgRNA配列の3’末端にウラシルを含まなくてもよい。sgRNAは、例えば表1の配列番号71,962のように、sgRNA配列の3’末端に1つ以上のウラシルを含むことができる。例えば、sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に1つのウラシル(U)を含むことができる。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に2つのウラシル(UU)を含むことができる。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に3つのウラシル(UUU)を含むことができる。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に4つのウラシル(UUUU)を含むことができる。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に5つのウラシル(UUUUU)を含むことができる。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に6つのウラシル(UUUUUU)を含むことができる。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に7つのウラシル(UUUUUUU)を含むことができる。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に8つのウラシル(UUUUUUUU)を含むことができる。
sgRNAは、非改変であっても改変されていてもよい。例えば、改変sgRNAは、1つ以上の2’−O−メチル ホスホロチオアートヌクレオチドを含むことができる。
例示として、CRISPR/Cas/Cpf1システムで使用するガイドRNA、または他のより低分子のRNAは、以下に例示し当技術分野で説明されているように、化学的手段によって容易に合成することができる。化学合成手順が継続的に拡大している一方で、高速液体クロマトグラフィー(HPLC、PAGEなどのゲルの使用を回避)などの手順によるこのようなRNAの精製は、ポリヌクレオチド長が100ヌクレオチド程度を顕著に上回って増加するにつれて、難易度が高くなる傾向がある。より長いRNAを産生するために用いる1つのアプローチは、共にライゲーションした2つ以上の分子を生成することである。さらに長いRNA(例えば、Cas9またはCpf1エンドヌクレアーゼをコードするRNA)は、より容易に酵素的に産生される。様々なタイプのRNA改変、例えば、安定性の向上、自然免疫応答の可能性または程度の低減、及び/または当技術分野で説明されているような他の特質を向上させる改変を、RNAの化学合成及び/または酵素的産生の最中または後に導入することができる。
スペーサー延長配列
ゲノム標的化核酸の一部の例において、スペーサー延長配列は、活性を改変し、安定性を提供し、及び/またはゲノム標的化核酸が改変を行う位置を提供することができる。スペーサー延長配列は、オンもしくはオフターゲット活性または特異性を改変することができる。一部の例において、スペーサー延長配列が提供され得る。スペーサー延長配列は、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400、1000、2000、3000、4000、5000、6000、または7000、またはそれ以上のヌクレオチドを超える長さを有することができる。スペーサー延長配列は、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000またはそれ以上のヌクレオチド未満の長さを有することができる。スペーサー延長配列は、10ヌクレオチド長未満であってもよい。スペーサー延長配列は、10〜30ヌクレオチド長であってもよい。スペーサー延長配列は、30〜70ヌクレオチド長であってもよい。
スペーサー延長配列は、別の部分(例えば、安定性制御配列、エンドリボヌクレアーゼ結合配列、リボザイム)を含むことができる。当該部分は、核酸標的核酸の安定性を減少または増加させることができる。当該部分は、転写終結セグメント(すなわち、転写終結配列)であり得る。当該部分は、真核生物内で機能することができる。当該部分は、原核生物内で機能することができる。当該部分は、真核生物内及び原核生物内の両方で機能することができる。好適な部分の非限定的な例としては、5’キャップ(例えば、7−メチルグアニル酸キャップ(m7 G))、リボスイッチ配列(例えば、タンパク質及びタンパク質複合体による安定性調節及び/または接近可能性調節を可能にする)、dsRNAデュプレックス(例えば、ヘアピン)を形成する配列、RNAを細胞内の位置(例えば、核、ミトコンドリア、葉緑体など)に標的化する配列、トラッキングをもたらす改変または配列(例えば、蛍光分子への直接結合、蛍光検出を容易にする部分への結合、蛍光検出を可能にする配列など)、及び/またはタンパク質に結合部位をもたらす改変または配列(例えば、転写活性化因子、転写制御、DNAメチルトランスフェラーゼ、DNAデメチラーゼ、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼなどを含めた、DNAに対して作用するタンパク質)が挙げられる。
スペーサー配列
スペーサー配列は、目的の標的核酸の配列とハイブリダイズする。ゲノム標的化核酸のスペーサーは、ハイブリダイズによる配列特異的な方法(すなわち、塩基対合)で、標的核酸と相互作用することができる。スペーサーのヌクレオチド配列は、目的の標的核酸の配列に応じて変動し得る。
本明細書におけるCRISPR/Casシステムでは、スペーサー配列は、当該システムで使用するCas9酵素のPAMの5’に位置する標的核酸とハイブリダイズするように設計することができる。スペーサーは、標的配列に完全にマッチすることもあればミスマッチを有することもある。各Cas9酵素は、標的DNA内で認識する特定のPAM配列を有する。例えば、S.pyogenesは標的核酸内で配列5’−NRG−3’(式中、RはAまたはGのいずれかを含み、Nは任意のヌクレオチドであり、Nはスペーサー配列に標的化された標的核酸配列の3’のすぐ近くにある)を含むPAMを認識する。
標的核酸配列は、20ヌクレオチドを含むことができる。標的核酸は、20ヌクレオチド未満を含むことができる。標的核酸は、20ヌクレオチド超を含むことができる。標的核酸は、少なくとも5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、またはそれ以上のヌクレオチドを含むことができる。標的核酸は、最大で5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、またはそれ以上のヌクレオチドを含むことができる。標的核酸配列は、PAMにおける第1のヌクレオチドの5’のすぐ近くに20塩基を含むことができる。例えば、
(配列番号71,948)を含む配列において、標的核酸はNに対応する配列を含むことができる(式中、Nは任意のヌクレオチドであり、下線付きのNRG配列は、S.pyogenesのPAMである)。
標的核酸とハイブリダイズするスペーサー配列は、少なくとも約6ヌクレオチド(nt)の長さを有することができる。スペーサー配列は、少なくとも約6nt、少なくとも約10nt、少なくとも約15nt、少なくとも約18nt、少なくとも約19nt、少なくとも約20nt、少なくとも約25nt、少なくとも約30nt、少なくとも約35nt、または少なくとも約40nt、約6nt〜約80nt、約6nt〜約50nt、約6nt〜約45nt、約6nt〜約40nt、約6nt〜約35nt、約6nt〜約30nt、約6nt〜約25nt、約6nt〜約20nt、約6nt〜約19nt、約10nt〜約50nt、約10nt〜約45nt、約10nt〜約40nt、約10nt〜約35nt、約10nt〜約30nt、約10nt〜約25nt、約10nt〜約20nt、約10nt〜約19nt、約19nt〜約25nt、約19nt〜約30nt、約19nt〜約35nt、約19nt〜約40nt、約19nt〜約45nt、約19nt〜約50nt、約19nt〜約60nt、約20nt〜約25nt、約20nt〜約30nt、約20nt〜約35nt、約20nt〜約40nt、約20nt〜約45nt、約20nt〜約50nt、または約20nt〜約60ntとすることができる。一部の例において、スペーサー配列は20ヌクレオチドを含むことができる。一部の例において、スペーサーは19ヌクレオチドを含むことができる。
一部の例において、スペーサー配列と標的核酸との間の相補性パーセントは、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%である。一部の例において、スペーサー配列と標的核酸との間の相補性パーセントは、最大約30%、最大約40%、最大約50%、最大約60%、最大約65%、最大約70%、最大約75%、最大約80%、最大約85%、最大約90%、最大約95%、最大約97%、最大約98%、最大約99%、または100%である。一部の例において、スペーサー配列と標的核酸との間の相補性パーセントは、標的核酸の相補鎖の標的配列の最も5’側にある連続した6ヌクレオチドについて100%である。スペーサー配列と標的核酸との間の相補性パーセントは、連続した約20ヌクレオチドについて少なくとも60%であり得る。スペーサー配列及び標的核酸の長さは、1〜6ヌクレオチドだけ相違することがあり、これはバルジ(単数または複数)として考えられ得る。
スペーサー配列は、コンピュータープログラムを用いて設計または選択することができる。コンピュータープログラムは、予測融解温度、2次構造形成、予測アニーリング温度、配列同一性、ゲノム文脈、クロマチン接近可能性、GC%、ゲノム出現頻度(例えば、同一の配列、または類似するがミスマッチ、挿入、もしくは欠失の結果1つ以上のスポットで異なる配列について)、メチル化状態、SNPの存在などの変数を使用することができる。
最小CRISPRリピート配列
最小CRISPRリピート配列は、参照CRISPRリピート配列(例えば、S.pyogenesからのcrRNA)に対し、少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または100%の配列同一性を有する配列であり得る。
最小CRISPRリピート配列は、細胞内で最小tracrRNA配列とハイブリダイズすることができるヌクレオチドを含むことができる。最小CRISPRリピート配列及び最小tracrRNA配列は、デュプレックス、すなわち塩基が対合した二本鎖構造を形成することができる。共に、最小CRISPRリピート配列及び最小tracrRNA配列は、部位特異的ポリペプチドに結合することができる。最小CRISPRリピート配列の少なくとも一部は、最小tracrRNA配列とハイブリダイズすることができる。最小CRISPRリピート配列の少なくとも一部は、最小tracrRNA配列に対し、少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または100%の相補性を備えることができる。最小CRISPRリピート配列の少なくとも一部は、最小tracrRNA配列に対し、最大で約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または100%の相補性を備えることができる。
最小CRISPRリピート配列は、約7ヌクレオチド〜約100ヌクレオチドの長さを有することができる。例えば、最小CRISPRリピート配列の長さは、約7ヌクレオチド(nt)〜約50nt、約7nt〜約40nt、約7nt〜約30nt、約7nt〜約25nt、約7nt〜約20nt、約7nt〜約15nt、約8nt〜約40nt、約8nt〜約30nt、約8nt〜約25nt、約8nt〜約20nt、約8nt〜約15nt、約15nt〜約100nt、約15nt〜約80nt、約15nt〜約50nt、約15nt〜約40nt、約15nt〜約30nt、または約15nt〜約25ntである。一部の例において、最小CRISPRリピート配列は、およそ9ヌクレオチド長であってもよい。最小CRISPRリピート配列は、およそ12ヌクレオチド長であってもよい。
最小CRISPRリピート配列は、ひと続きの連続した少なくとも6、7、または8ヌクレオチドについて、参照の最小CRISPRリピート配列(例えば、S.pyogenesからの野生型crRNA)に対し、少なくとも約60%同一であってもよい。例えば、最小CRISPRリピート配列は、ひと続きの連続した少なくとも6、7、または8ヌクレオチドについて、参照の最小CRISPRリピート配列に対し、少なくとも約65%同一、少なくとも約70%同一、少なくとも約75%同一、少なくとも約80%同一、少なくとも約85%同一、少なくとも約90%同一、少なくとも約95%同一、少なくとも約98%同一、少なくとも約99%同一、または100%同一であってもよい。
最小tracrRNA配列
最小tracrRNA配列は、参照tracrRNA配列(例えば、S.pyogenesからの野生型tracrRNA)に対し、少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または100%の配列同一性を有する配列であり得る。
最小tracrRNA配列は、細胞内で最小CRISPRリピート配列とハイブリダイズすることができるヌクレオチドを含むことができる。最小tracrRNA配列及び最小CRISPRリピート配列は、デュプレックス、すなわち塩基が対合した二本鎖構造を形成することができる。共に、最小tracrRNA配列及び最小CRISPRリピートは、部位特異的ポリペプチドに結合することができる。最小tracrRNA配列の少なくとも一部は、最小CRISPRリピート配列とハイブリダイズすることができる。最小tracrRNA配列は、最小CRISPRリピート配列に対し、少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または100%相補的であることができる。
最小tracrRNA配列は、約7ヌクレオチド〜約100ヌクレオチドの長さを有することができる。例えば、最小tracrRNA配列は、約7ヌクレオチド(nt)〜約50nt、約7nt〜約40nt、約7nt〜約30nt、約7nt〜約25nt、約7nt〜約20nt、約7nt〜約15nt、約8nt〜約40nt、約8nt〜約30nt、約8nt〜約25nt、約8nt〜約20nt、約8nt〜約15nt、約15nt〜約100nt、約15nt〜約80nt、約15nt〜約50nt、約15nt〜約40nt、約15nt〜約30nt、または約15nt〜約25ntの長さであってもよい。最小tracrRNA配列は、およそ9ヌクレオチド長であってもよい。最小tracrRNA配列は、およそ12ヌクレオチドであってもよい。最小tracrRNAは、Jinek et al.(上記)に記載のtracrRNA nt23〜48からなっていてもよい。
最小tracrRNA配列は、ひと続きの連続した少なくとも6、7、または8ヌクレオチドにわたって、参照の最小tracrRNA(例えば、S.pyogenesからの野生型tracrRNA)配列に対し、少なくとも約60%同一であってもよい。例えば、最小tracrRNA配列は、ひと続きの連続した少なくとも6、7、または8ヌクレオチドにわたって、参照の最小tracrRNA配列に対し、少なくとも約65%同一、約70%同一、約75%同一、約80%同一、約85%同一、約90%同一、約95%同一、約98%同一、約99%同一、または100%同一であってもよい。
最小CRISPR RNAと最小tracrRNAとの間のデュプレックスは、二重らせんを含むことができる。最小CRISPR RNAと最小tracrRNAとの間のデュプレックスは、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10、またはそれ以上のヌクレオチドを含むことができる。最小CRISPR RNAと最小tracrRNAとの間のデュプレックスは、最大で約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10、またはそれ以上のヌクレオチドを含むことができる。
デュプレックスは、ミスマッチを含み得る(すなわち、デュプレックスの2本鎖は100%相補的ではない)。デュプレックスは、少なくとも約1、2、3、4、または5つのミスマッチを含み得る。デュプレックスは、最大で約1、2、3、4、または5つのミスマッチを含み得る。デュプレックスは、2つ以下のミスマッチを含み得る。
バルジ
一部の場合において、最小CRISPR RNAと最小tracrRNAとの間のデュプレックスに「バルジ」が存在することがある。バルジとは、デュプレックス中のヌクレオチドにおける対合していない領域のことである。バルジは、デュプレックスが部位特異的ポリペプチドと結合する一助となり得る。バルジは、デュプレックスの一方の側に対合していない5’−XXXY−3’(式中、Xは任意のプリンであり、Yは対向鎖上のヌクレオチドとゆらぎ対合を形成することができるヌクレオチドを含む)と、デュプレックスの他方の側に対合していないヌクレオチド領域とを含むことができる。デュプレックスの2つの側における対合していないヌクレオチドの数は異なり得る。
一例において、バルジは、対合していないプリン(例えば、アデニン)をバルジの最小CRISPRリピート鎖上に含むことができる。一部の例において、バルジは、バルジの最小tracrRNA配列鎖の対合していない5’−AAGY−3’を含むことができ、式中、Yは最小CRISPRリピート鎖のヌクレオチドとゆらぎ対合を形成することができるヌクレオチドを含む。
デュプレックスのうち、最小CRISPRリピート側のバルジは、少なくとも1、2、3、4、または5、またはそれ以上の対合していないヌクレオチドを含むことができる。デュプレックスのうち、最小CRISPRリピート側のバルジは、最大で1、2、3、4、または5、またはそれ以上の対合していないヌクレオチドを含むことができる。デュプレックスのうち、最小CRISPRリピート側のバルジは、1つの対合していないヌクレオチドを含むことができる。
デュプレックスのうち、最小tracrRNA配列側のバルジは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10、またはそれ以上の対合していないヌクレオチドを含むことができる。デュプレックスのうち、最小tracrRNA配列側のバルジは、最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10、またはそれ以上の対合していないヌクレオチドを含むことができる。デュプレックスのうち、第2の側(例えば、デュプレックスのうち、最小tracrRNA配列側)のバルジは、4つの対合していないヌクレオチドを含むことができる。
バルジは、少なくとも1つのゆらぎ対合を含むことができる。一部の例において、バルジは、最大で1つのゆらぎ対合を含むことができる。バルジは、少なくとも1つのプリンヌクレオチドを含むことができる。バルジは、少なくとも3つのプリンヌクレオチドを含むことができる。バルジ配列は、少なくとも5つのプリンヌクレオチドを含むことができる。バルジ配列は、少なくとも1つのグアニンヌクレオチドを含むことができる。一部の例において、バルジ配列は、少なくとも1つのアデニンヌクレオチドを含むことができる。
ヘアピン
様々な例において、1つ以上のヘアピンは、3’tracrRNA配列内で最小tracrRNAに対し3’側に位置することができる。
ヘアピンは、最小CRISPRリピート及びtracrRNA配列のデュプレックスにおける最後の対合ヌクレオチドから3’側の少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、または20、またはそれ以上のヌクレオチドで開始することができる。ヘアピンは、最小CRISPRリピート及びtracrRNA配列のデュプレックスにおける最後の対合ヌクレオチドの3’側の最大で約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10、またはそれ以上のヌクレオチドで開始することができる。
ヘアピンは、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、または20、またはそれ以上の連続したヌクレオチドを含むことができる。ヘアピンは、最大で約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、またはそれ以上の連続したヌクレオチドを含むことができる。
ヘアピンは、CCジヌクレオチド(すなわち、2つの連続したシトシンヌクレオチド)を含むことができる。
ヘアピンは、デュプレックスヌクレオチド(すなわち、ヘアピン内の共にハイブリダイズしたヌクレオチド)を含むことができる。例えば、ヘアピンは、3’tracrRNA配列のヘアピンデュプレックス内に、GGジヌクレオチドとハイブリダイズしたCCジヌクレオチドを含むことができる。
ヘアピンのうちの1つ以上は、部位特異的ポリペプチドのガイドRNA相互作用領域と相互作用することができる。
一部の例では2つ以上のヘアピンが存在し、他の例では3つ以上のヘアピンが存在する。
3’tracrRNA配列
3’tracrRNA配列は、参照tracrRNA配列(例えば、S.pyogenesからのtracrRNA)に対し、少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または100%の配列同一性を有する配列を含むことができる。
3’tracrRNA配列は、約6ヌクレオチド〜約100ヌクレオチドの長さを有することができる。例えば、3’tracrRNA配列は、約6ヌクレオチド(nt)〜約50nt、約6nt〜約40nt、約6nt〜約30nt、約6nt〜約25nt、約6nt〜約20nt、約6nt〜約15nt、約8nt〜約40nt、約8nt〜約30nt、約8nt〜約25nt、約8nt〜約20nt、約8nt〜約15nt、約15nt〜約100nt、約15nt〜約80nt、約15nt〜約50nt、約15nt〜約40nt、約15nt〜約30nt、または約15nt〜約25ntの長さを有することができる。3’tracrRNA配列は、およそ14ヌクレオチドの長さを有することができる。
3’tracrRNA配列は、ひと続きの連続した少なくとも6、7、または8ヌクレオチドにわたって、参照の3’tracrRNA配列(例えば、S.pyogenesからの野生型3’tracrRNA配列)に対し、少なくとも約60%同一であってもよい。例えば、3’tracrRNA配列は、ひと続きの連続した少なくとも6、7、または8ヌクレオチドにわたって、参照の3’tracrRNA配列(例えば、S.pyogenesからの野生型3’tracrRNA配列)に対し、少なくとも約60%同一、約65%同一、約70%同一、約75%同一、約80%同一、約85%同一、約90%同一、約95%同一、約98%同一、約99%同一、または100%同一であってもよい。
3’tracrRNA配列は、2つ以上のデュプレックス領域(例えば、ヘアピン、ハイブリダイズ領域)を含むことができる。3’tracrRNA配列は、2つのデュプレックス領域を含むことができる。
3’tracrRNA配列は、ステムループ構造を含むことができる。3’tracrRNA内のステムループ構造は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15または20、またはそれ以上のヌクレオチドを含むことができる。3’tracrRNA内のステムループ構造は、最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9または10、またはそれ以上のヌクレオチドを含むことができる。ステムループ構造は、機能的部分を含むことができる。例えば、ステムループ構造は、アプタマー、リボザイム、タンパク質相互作用ヘアピン、CRISPRアレイ、イントロン、及びエキソンを含むことができる。ステムループ構造は、少なくとも約1、2、3、4、または5、またはそれ以上の機能的部分を含むことができる。ステムループ構造は、最大で約1、2、3、4、または5、またはそれ以上の機能的部分を含むことができる。
3’tracrRNA配列内のヘアピンは、Pドメインを含むことができる。一部の例において、Pドメインはヘアピン内の2本鎖領域を含むことができる。
tracrRNA延長配列
tracrRNA延長配列は、tracrRNAが単一分子ガイドの文脈にあるか二重分子ガイドの文脈にあるかにかかわらず提供することができる。tracrRNA延長配列は、約1ヌクレオチド〜約400ヌクレオチドの長さを有することができる。tracrRNA延長配列は、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、または400ヌクレオチドを超える長さを有することができる。tracrRNA延長配列は、約20〜約5000またはそれ以上のヌクレオチドの長さを有することができる。tracrRNA延長配列は、1000ヌクレオチドを超える長さを有することができる。tracrRNA延長配列は、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400、またはそれ以上のヌクレオチド未満の長さを有することができる。tracrRNA延長配列は、1000ヌクレオチド未満の長さを有することができる。tracrRNA延長配列は、10ヌクレオチド長未満を含むことができる。tracrRNA延長配列は、10〜30ヌクレオチド長であってもよい。tracrRNA延長配列は、30〜70ヌクレオチド長であってもよい。
tracrRNA延長配列は、機能的部分(例えば、安定性制御配列、リボザイム、エンドリボヌクレアーゼ結合配列)を含むことができる。この機能的部分は、転写終結セグメント(すなわち、転写終結配列)を含むことができる。機能的部分は、約10ヌクレオチド(nt)〜約100ヌクレオチド、約10nt〜約20nt、約20nt〜約30nt、約30nt〜約40nt、約40nt〜約50nt、約50nt〜約60nt、約60nt〜約70nt、約70nt〜約80nt、約80nt〜約90nt、約90nt〜約100nt、約15nt〜約80nt、約15nt〜約50nt、約15nt〜約40nt、約15nt〜約30nt、または約15nt〜約25ntの全長を有することができる。機能的部分は、真核細胞内で機能することができる。機能的部分は、原核細胞内で機能することができる。機能的部分は、真核細胞内及び原核細胞内の両方で機能することができる。
好適なtracrRNA延長機能的部分の非限定的な例としては、ポリアデニル化テール、リボスイッチ配列(例えば、タンパク質及びタンパク質複合体による安定性調節及び/または接近可能性調節を可能にする)、dsRNAデュプレックス(すなわち、ヘアピン)を形成する配列、RNAを細胞内の位置(例えば、核、ミトコンドリア、葉緑体など)に標的化する配列、トラッキングをもたらす改変または配列(例えば、蛍光分子への直接結合、蛍光検出を容易にする部分への結合、蛍光検出を可能にする配列など)、及び/またはタンパク質に結合部位をもたらす改変または配列(例えば、転写活性化因子、転写制御、DNAメチルトランスフェラーゼ、DNAデメチラーゼ、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼなどを含めた、DNAに対して作用するタンパク質)が挙げられる。tracrRNA延長配列は、プライマー結合部位または分子指標(例えば、バーコード配列)を含むことができる。tracrRNA延長配列は、1つ以上のアフィニティータグを含むことができる。
単一分子ガイドリンカー配列
単一分子ガイド核酸のリンカー配列は、約3ヌクレオチド〜約100ヌクレオチドの長さを有することができる。例えば、Jinek et al.(上記)では、シンプルな4ヌクレオチドの「テトラループ」(−GAAA−)が使用された(Science,337(6096):816−821(2012))。例示的なリンカーは、約3ヌクレオチド(nt)〜約90nt、約3nt〜約80nt、約3nt〜約70nt、約3nt〜約60nt、約3nt〜約50nt、約3nt〜約40nt、約3nt〜約30nt、約3nt〜約20nt、約3nt〜約10ntの長さを有する。例えば、リンカーは、約3nt〜約5nt、約5nt〜約10nt、約10nt〜約15nt、約15nt〜約20nt、約20nt〜約25nt、約25nt〜約30nt、約30nt〜約35nt、約35nt〜約40nt、約40nt〜約50nt、約50nt〜約60nt、約60nt〜約70nt、約70nt〜約80nt、約80nt〜約90nt、または約90nt〜約100ntの長さを有することができる。単一分子ガイド核酸のリンカーは、4〜40ヌクレオチドであってもよい。リンカーは、少なくとも約100、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、または7000、またはそれ以上のヌクレオチドであってもよい。リンカーは、最大で約100、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、または7000、またはそれ以上のヌクレオチドであってもよい。
リンカーは様々な配列のいずれも含むことができるが、一部の例において、ガイドRNAの他の部分と相同的な広範な領域を有する配列は、ガイドの他の機能的領域を妨害し得る分子内結合を引き起こす可能性があり、リンカーはこのような配列を含まないことになる。Jinek et al.(上記)では、シンプルな4ヌクレオチドの配列−GAAA−が使用された(Science,337(6096):816−821(2012))が、より長い配列を含めた他の多く配列も同様に使用することができる。
リンカー配列は、機能的部分を含むことができる。例えば、リンカー配列は、アプタマー、リボザイム、タンパク質相互作用ヘアピン、タンパク質結合部位、CRISPRアレイ、イントロン、またはエキソンを含めた1つ以上の特徴を含むことができる。リンカー配列は、少なくとも約1、2、3、4、または5、またはそれ以上の機能的部分を含むことができる。一部の例において、リンカー配列は、最大で約1、2、3、4、または5、またはそれ以上の機能的部分を含むことができる。
本開示におけるex vivoの方法のステップは、ゲノム操作を用いて患者特異的iPSC細胞を編集することを含むことができる。代替的に、本開示におけるex vivoの方法のステップは、間葉系幹細胞または造血前駆細胞を編集することを含むことができる。同様に、本開示におけるin vivoの方法のステップは、ゲノム操作を用いて、ヘモグロビン異常症を有する患者における細胞を編集することを含むことができる。同様に、本開示の細胞の方法におけるステップは、ヒト細胞内のBCL11A遺伝子またはBCL11A遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の中またはその付近で、ゲノム操作によって編集することを含むことができる。
ヘモグロビン異常症を有する異なる患者には、概して、異なる欠失、修飾、または不活性化の戦略が必要となる。任意のCRISPRエンドヌクレアーゼを本開示の方法で使用することができるが、それぞれのCRISPRエンドヌクレアーゼは各自の関連PAMを有し、当該PAMは疾患特異的であることも疾患特異的でないこともある。例えば、BCL11A遺伝子またはBCL11A遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の中またはその付近で、S.pyogenesからのCRISPR/Cas9エンドヌクレアーゼを用いて標的化するgRNAスペーサー配列は、配列表の配列番号1〜29,482で特定されている。BCL11A遺伝子またはBCL11A遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の中またはその付近で、S.aureusからのCRISPR/Cas9エンドヌクレアーゼを用いて標的化するgRNAスペーサー配列は、配列表の配列番号29,483〜32,387で特定されている。BCL11A遺伝子またはBCL11A遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の中またはその付近で、S.thermophilusからのCRISPR/Cas9エンドヌクレアーゼを用いて標的化するgRNAスペーサー配列は、配列表の配列番号32,388〜33,420で特定されている。BCL11A遺伝子またはBCL11A遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の中またはその付近で、T.denticolaからのCRISPR/Cas9エンドヌクレアーゼを用いて標的化するgRNAスペーサー配列は、配列表の配列番号33,421〜33,851で特定されている。BCL11A遺伝子またはBCL11A遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の中またはその付近で、N.meningitidesからのCRISPR/Cas9エンドヌクレアーゼを用いて標的化するgRNAスペーサー配列は、配列番号33,852〜36,731で特定されている。BCL11A遺伝子またはBCL11A遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の中またはその付近で、Acidominococcus、Lachnospiraceae、及びFranciscella NovicidaからのCRISPR/Cpf1エンドヌクレアーゼを用いて標的化するgRNAスペーサー配列は、配列番号36,732〜71,947で特定されている。
例えば、BCL11A遺伝子の転写制御配列は、NHEJ経路に起因して生じる欠失によって修飾または不活性化を行うことができる。NHEJは遺伝子、BCL11A遺伝子の転写制御配列のセグメントを欠失させるのに使用することができ、これは直接、または複数の位置をターゲットとする1つのgRNAもしくは複数のgRNAによる切断を通じて1つのgRNAスプライスドナー部位もしくはアクセプター部位を変化させることによって行う。
また、BCL11A遺伝子の転写制御配列は、修飾または不活性化を行うこともでき、これは改変転写制御配列を含む野生型BCL11A遺伝子またはcDNAを挿入することによって行う。例えば、HDRによる修飾または活性化に用いるドナーは、アニーリングを可能にするための小型または大型の相同アームが隣接するBCL11A遺伝子の改変転写制御配列を含有する。本質的にはHDRは、DSB修復の間、供給される相同のDNA配列をテンプレートとして使用するエラーフリー機構である。相同組換え修復(HDR)の比率は、転写制御配列と切断部位との間の距離の関数であるため、重複する標的部位または最も近くにある標的部位を選ぶことは重要である。テンプレートは相同領域に隣接する余分な配列を含むことができ、またはゲノム配列とは異なる配列を含有してもよく、このようにして配列編集が可能になる。
NHEJまたはHDRにより、BCL11A遺伝子の転写制御配列に対する修飾、または不活性化を行うことに加えて、他にも様々な選択肢が考えられる。小さなまたは大きな欠失が存在する場合、改変転写制御配列を含有するcDNAをノックインすることができる。全長cDNAを任意の「セーフハーバー」内にノックインすることもできるが、供給されたプロモーターまたは他のプロモーターを使用しなければならない。このコンストラクトを正しい位置内にノックインする場合、当該コンストラクトは正常な遺伝子と同様の生理的制御を有することになる。ヌクレアーゼの対を使用して遺伝子領域の欠失を行ってもよいが、機能の修飾または不活性化を行うには通常はドナーが提供されなければならない。この場合には、2つのgRNA及び1つのドナー配列が供給されることになる。
一部のゲノム操作戦略は、BCL11A遺伝子の転写制御配列の少なくとも一部の欠失を行うことにより、及び/または改変転写制御配列を含む野生型BCL11A遺伝子またはcDNAを、相同組換え修復(HDR)(相同組換え(HR)としても知られる)によって対応遺伝子の座位またはセーフハーバー座位にノックインすることにより、BCL11A遺伝子の転写制御配列の修飾または不活性化を行うことを伴う。この戦略は、BCL11A遺伝子の転写制御配列に対する修飾または不活性化を行い、疾患状態を反転、処置、及び/または軽減することができる。転写制御配列に対する修飾/不活性化を行うためのドナーヌクレオチドは小さい(<300bp)ことが多い。HDR効率はドナー分子のサイズと反比例し得るため、このことは有利である。また、ドナーテンプレートが、サイズ制約があるがドナーテンプレート送達に有効な手段であることが示されているアデノ随伴ウイルス(AAV)分子に適合し得ることも予想される。
相同組換え修復は、2本鎖切断(DSB)を修復するための細胞機構である。最も一般的な形態は相同組換えである。HDRには、1本鎖アニーリング及び代替HDRを含めた追加の経路が存在する。ゲノム操作ツールによって、研究者が細胞の相同組換え経路を操作して、ゲノムに対し部位特異的改変を創出することが可能になる。細胞がトランスで提供される合成ドナー分子を用いて2本鎖切断を修復できることが分かっている。そのため、特定の変異付近で2本鎖切断を導入し、好適なドナーを提供することにより、ゲノム内で標的変化を施すことができる。特異的切断は、HDRの比率を、相同ドナーのみを受け取った場合の106細胞中1という比率よりも1,000倍超増加させる。特定のヌクレオチドにおける相同組換え修復(HDR)の比率は、切断部位への距離の関数であるため、重複する標的部位または最も近くにある標的部位を選ぶことが重要である。in situでの修正は残りのゲノムを安定した状態にしておけるため、遺伝子編集は遺伝子付加に対する優位性をもたらす。
HDRによる編集向けに供給されるドナーは著しく多様であるが、ゲノムDNAへのアニーリングを可能にするための小型または大型の隣接する相同アームを有する意図された配列を含有することができる。導入される遺伝子変化に隣接する相同領域は、30bp以下であっても、プロモーター、cDNAなどを含有することができる数キロベースという大きなカセットであってもよい。1本鎖及び2本鎖両方のオリゴヌクレオチドドナーが使用されている。これらのオリゴヌクレオチドのサイズは100nt未満から何kb超にも及ぶが、それよりも長いssDNAも産生及び使用され得る。PCRアンプリコン、プラスミド、及びミニサークルを含めた2本鎖ドナーを使用することができる。概して、AAVベクターがドナーテンプレートの送達に非常に有効な手段であり得ることが分かっているが、個々のドナーに対するパッケージングの限界は<5kbとなっている。ドナーの活性転写はHDRを3倍増加させたが、これはプロモーターを含めることで変換が増加し得ることを示している。逆に、ドナーのCpGメチル化は遺伝子発現及びHDRを減少させた。
Cas9などの野生型エンドヌクレアーゼに加えて、いずれか一方のヌクレアーゼドメインが不活性化されていることにより1本のDNA鎖のみを切断するニッカーゼバリアントが存在する。HDRは、個々のCasニッカーゼから向けられることもあれば、標的エリアに隣接するニッカーゼの対を用いて向けられることもある。ドナーは、1本鎖であっても、ニックであっても、dsDNAであってもよい。
ドナーDNAは、ヌクレアーゼを用いて供給されることもあれば、独立して様々な異なる方法によって、例えばトランスフェクション、ナノ粒子、マイクロ注入、またはウイルス形質導入によって供給されることもある。HDR向けドナーの可用性を向上させるために、様々な繋留の選択肢が提案されている。例としては、ドナーをヌクレアーゼに付着させること、付近に結合するDNA結合タンパク質に付着させること、またはDNA末端結合または修復に関与するタンパク質に付着させることが挙げられる。
修復経路の選択は、複数の培養条件(例えば、細胞周期に影響を及ぼす条件)によって、またはDNA修復及び関連タンパク質の標的化によって、誘導することができる。例えば、HDRを増加させるために、主要なNHEJ分子、例えばKU70、KU80、またはDNAリガーゼIVが抑制されてもよい。
ドナーが存在しない場合、1つのDNA切断における両端または異なる切断からの複数の端部は、いくつかの非相同の修復経路を用いて連結することができ、このときDNA末端は、接合部に少数の塩基対合を伴うか塩基対合なしで連結する。古典的NHEJに加えて、同様の修復機構(例えば、代替的NHEJ)が存在する。2つの切断が存在する場合、介在セグメントは欠失または逆転され得る。NHEJ修復経路は、接合部に挿入、欠失、または変異をもたらすことができる。
NHEJを使用して、15kbの誘導性遺伝子発現カセットをヌクレアーゼ切断後のヒト細胞株内の定義された部位に挿入した。Maresca,M.,Lin,V.G.,Guo,N.& Yang,Y.,Genome Res 23,539−546(2013)。
NHEJまたはHDRによるゲノム編集に加えて、NHEJ経路及びHRの両方を使用する部位特異的な遺伝子挿入が行われている。ある特定の状況(場合によってはイントロン/エキソン境界を含む)では、組合せアプローチが適用可能であり得る。イントロン内のライゲーションにはNHEJが有効であると判明する可能性がある一方、コード領域内ではエラーフリーHDRの方がより適している可能性がある。
さらなる代替として、改変転写制御配列を含む野生型BCL11A遺伝子またはcDNAは、対応する遺伝子の座位にノックインするか、またはAAVS1などのセーフハーバー部位にノックインすることができる。一部の例において、当該方法は、1つのgRNAまたは1対のgRNAであって、改変転写制御配列を含む野生型BCL11A遺伝子またはcDNAの一部または全体をノックインするためのポリヌクレオチドドナーテンプレートからの新規配列の組み込みを容易にするために使用することができる、1つのgRNAまたは1対のgRNAを提供することができる。
当該方法は、gRNAの対であって、一方のgRNAが1つ以上の変異の5’末端で切断し、他方のgRNAが1つ以上の変異の3’末端で切断し、遺伝子を2回切断することによって欠失をもたらし、この欠失がBCL11A遺伝子の転写制御配列を置き換えるためのポリヌクレオチドドナーテンプレートからの新規配列の挿入を容易にする、gRNAの対を提供することができる。切断は、各々がゲノム内でDSBを行う1対のDNAエンドヌクレアーゼによって、または共にゲノム内でDSBを行う複数のニッカーゼによって、達成することができる。
代替的に、当該方法は、BCL11A遺伝子の転写制御配列の周囲で1つの2本鎖切断を行う1つのgRNAであって、BCL11A遺伝子の転写制御配列を改変転写制御配列を含む野生型BCL11A遺伝子またはcDNAで置き換えるための、ポリヌクレオチドドナーテンプレートからの新規配列の挿入を容易にする、1つのgRNAを提供することができる。2本鎖切断は、単一のDNAエンドヌクレアーゼによって、または共にゲノム内でDSBを行う複数のニッカーゼによって行うことができる。
BCL11A遺伝子またはBCL11A遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の中または付近における例示的な改変としては、上記で言及したBCL11A遺伝子の転写制御配列の中または付近で(近接して)の置き換え、例えば、転写制御配列の3kb未満、2kb未満、1kb未満、0.5kb未満上流または下流の領域内での置き換えが挙げられる。
このようなバリアントとしては、問題となる特定の置き換えよりも5’及び/もしくは3’方向に大きな置き換え、またはいずれかの方向での小さな置き換えが挙げられ得る。したがって、特定の置き換えに関する「付近」または「近接」とは、所望の置き換え境界(本明細書ではエンドポイントとも呼ばれる)に関連するSSBまたはDSB座位が、記載の参照座位から約3kb未満の領域内であり得ることが意図されている。SSBまたはDSB座位はさらに近接して、2kb以内、1kb以内、0.5kb以内、または0.1kb以内であってもよい。小さな置き換えの場合、所望のエンドポイントは参照座位にあってもそれに「隣接」していてもよく、このことにより、エンドポイントが参照座位から100bp以内、50bp以内、25bp以内、または約10bp〜5bp未満であり得ることが意図される。
より大きなまたはより小さな置き換えを含む例は、転写制御活性が修飾または不活性化されている限り、同じ利点をもたらすことが予想され得る。したがって、本明細書で説明し例示する置き換えの多くのバリエーションは、ヘモグロビン異常症の緩和に有効であり得ることが予想される。
別のゲノム操作戦略は、エキソンまたはイントロンの欠失を伴う。特定のエキソンまたはイントロンの欠失標的化は、単一の治療カクテルを用いて大きなサブセットの患者を処置するための魅力的な戦略であり得る。欠失は、単一のエキソンまたはイントロンの欠失であることも、複数のエキソンまたはイントロンの欠失であることもある。複数のエキソン欠失は多数の患者に到達し得る一方で、欠失が多い場合については、欠失の効率はサイズ増加に伴って大きく減少する。そのため、欠失の範囲は、40〜10,000塩基対(bp)のサイズとすることができる。例えば、欠失は、40〜100、100〜300、300〜500、500〜1,000、1,000〜2,000、2,000〜3,000、3,000〜5,000、または5,000〜10,000塩基対のサイズを範囲とすることができる。イントロンが、転写制御エレメント(例えば、転写因子結合部位)などの調節エレメントを含有する場合、イントロンを欠失させることが望ましいことがある。
欠失後にpre−mRNAが適切に処理されることを保証するために、周囲のスプライシングシグナルを除去することができる。スプライシングドナー及びアクセプターは、概して、近隣イントロンの100塩基対以内である。そのため、一部の例において、方法は、目的の各エキソン/イントロン接合部についておよそ+/−100〜3100bpを切断する全てのgRNAを提供することができる。
ゲノム編集戦略のいずれについても、ゲノム編集はシークエンシングまたはPCR解析によって確認することができる。
標的配列の選択
特定の参照座位に対する5’境界及び/または3’境界の位置のシフトを使用して、特定のゲノム編集応用を容易にするまたは向上させることができ、このシフトは部分的には当該編集向けに選択されるエンドヌクレアーゼシステムに依存し、これについて本明細書でさらに説明し例示する。
このような標的配列の選択における第1の非限定的な例において、多くのエンドヌクレアーゼシステムは、切断における潜在的標的部位の初期選択を誘導することができる規則または基準(例えば、CRISPR II型またはV型のエンドヌクレアーゼの場合、DNA切断部位に隣接する特定の位置におけるPAM配列モチーフの要件)を有する。
標的配列の選択または最適化についての別の非限定的な例において、標的配列と遺伝子編集エンドヌクレアーゼとの特定の組合せに関するオフターゲット活性の出現頻度(すなわち、選択された標的配列以外の部位に生じるDSBの出現頻度)は、オンターゲット活性との比較で評価することができる。一部の場合において、所望の座位で正しく編集された細胞は、他の細胞に対し選択優位性を有することができる。選択優位性における例示的、ただし非限定的な例としては、複製率、持続率、ある特定の条件に対する抵抗率の向上、移植の成功率または患者への導入後のin vivo持続率の向上などの特質の獲得、及びこのような細胞の数または生存率の維持または増加に関連する他の特質の獲得が挙げられる。他の場合において、所望の座位で正しく編集された細胞は、正しく編集された細胞を特定、ソート、または他の方法で選択するために使用される1つ以上のスクリーニング法によってポジティブに選択され得る。選択優位性及び定方向選択のいずれの方法も、修正に関連する表現型を活用することができる。一部の場合において、細胞は、意図された細胞集団を選択または精製するために使用される新規の表現型を創出する第2の改変を創出するために、2回以上編集することができる。このような第2の改変は、選択可能なまたはスクリーニング可能なマーカーのための第2のgRNAを追加することによって創出することができると考えられる。一部の場合において、細胞は、cDNAとさらに選択可能なマーカーとを含有するDNA断片を用いて、所望の座位で正しく編集することができる。
特定の場合においていずれの選択優位性が適用可能であるかいずれの定方向選択が適用されるべきかにかかわらず、標的配列の選択は、適用の有効性を向上させるために、及び/または所望の標的以外の部位における望ましくない変更の可能性を低減するために、オフターゲットの出現頻度の考慮によっても誘導され得る。本明細書及び当技術分野においてさらに説明及び例示するように、オフターゲット活性の発生は、標的部位と様々なオフターゲット部位との間の類似点及び相違点ならびに使用する特定のエンドヌクレアーゼを含めた複数の因子による影響を受ける可能性がある。オフターゲット活性の予測を支援するバイオインフォマティクスツールが利用可能であり、しばしばこのようなツールは、オフターゲット活性の可能性が最も高い部位の特定に使用することもでき、次にこれをオフターゲット対オンターゲット活性の相対的出現頻度を評価するための実験設定で評価することができ、それによって相対的オンターゲット活性がより高い配列を選択することが可能になる。このような技法の例示的な例が本明細書に示され、他の例は当技術分野において公知である。
標的配列の選択における別の態様は、相同的組換え事象に関する。相同的領域を共有する配列は、介在配列の欠失をもたらす相同的組換え事象の焦点として働き得る。このような組換え事象は、染色体及び他のDNA配列の正常な複製の途中で、また他の時、例えば2本鎖切断(DSB)が修復される場合のようにDNA配列が合成されている際にも生じ、これは正常な細胞複製の周期中に定期的に生じるが、様々な事象(例えば、UV光及び他のDNA切断誘導物質)の発生またはある特定の薬剤(例えば、様々な化学的誘導物質)の存在によっても向上し得る。多くのこのような誘導物質がゲノム内でDSBを無差別に引き起こし、DSBが正常な細胞内で規則的に誘導され修復され得る。修復の間に、元の配列が完全な忠実さで再構築されることもあるが、一部の場合には小さな挿入または欠失(「インデル」と呼ばれる)がDSB部位に導入される。
また、DSBは、本明細書で説明する、選択された染色体位置で定方向または優先的遺伝子改変事象を引き起こすために使用され得るエンドヌクレアーゼシステムの場合のように、特定の位置で特異的に誘導することもできる。相同配列がDNA修復(及び複製)の文脈で組換えに供される傾向は、複数の状況で活用することができ、この傾向は、遺伝子編集システムの1つの応用、例えばCRISPRにとっての基礎となる(CRISPRでは、相同組換え修復を使用して、「ドナー」ポリヌクレオチドの使用を通じて提供される対象の配列を、所望の染色体位置に挿入する)。
特定の配列間の相同領域(わずか10以下の塩基対を含み得る小さな「マイクロホモロジー」領域であり得る)を、所望の欠失をもたらすために使用することもできる。例えば、単一のDSBを、付近の配列に対しマイクロホモロジーを呈する部位に導入することができる。このようなDSBの正常な修復過程の間に高い出現頻度で生じる結果は、DSBが容易にする組換え及び同時発生的な細胞修復プロセスの結果としての、介在配列の欠失である。
しかし、一部の状況において、相同領域内での標的配列の選択は、遺伝子融合(欠失がコード領域内の場合)を含めたはるかに大きな欠失をもたらすことがあり、これは特定の状況を仮定すれば望ましいことも望ましくないこともある。
本明細書に示す例は、転写制御タンパク質活性の修飾または不活性化をもたらす置き換えを誘導するように設計されたDSBの創出のための様々な標的領域の選択、そしてオンターゲット事象に対しオフターゲット事象を最小化するように設計されたこのような領域内での特定の標的配列の選択を、さらに例示する。
核酸の改変
一部の場合において、細胞に導入するポリヌクレオチドは、例えば、宿主細胞における活性、安定性、もしくは特異性を向上させ、送達を変更し、自然免疫応答を低減するために、または本明細書でさらに説明する当技術分野で公知の他の向上のために、個々にまたは組み合わせて使用され得る1つ以上の改変を含むことができる。
ある特定の例において、改変ポリヌクレオチドはCRISPR/Cas9/Cpf1システムで使用することができ、この場合、ガイドRNA(単一分子ガイドまたは二重分子ガイド)及び/または細胞に導入するDNAまたはCasもしくはCpf1エンドヌクレアーゼをコードするRNAは、以下で説明及び例示するように改変することができる。このような改変ポリヌクレオチドは、任意の1つ以上のゲノム座位を編集するために、CRISPR/Cas9/Cpf1システムで使用することができる。
このような用法の非限定的な例示の目的でCRISPR/Cas9/Cpf1システムを使用すると、ガイドRNAの改変は、ガイドRNA(単一分子ガイドであっても二重分子ガイドであってもよい)及びCasまたはCpf1エンドヌクレアーゼを含むCRISPR/Cas9/Cpf1ゲノム編集複合体の形成または安定性を向上させるために使用することができる。ガイドRNAの改変は、さらにまたは代替的に、ゲノム編集複合体とゲノム内の標的配列との相互作用の開始、安定性、または動態を向上させるために使用することができ、これは例えばオンターゲット活性を向上させるために使用することができる。ガイドRNAの改変は、さらにまたは代替的に、特異性を向上させるために、例えばオンターゲット部位におけるゲノム編集の相対的比率を他の(オフターゲット)部位における影響と比較して向上させるために使用することができる。
改変は、さらにまたは代替的に、ガイドRNAの安定性を増加させるために使用することができ、例えば、細胞内に存在するリボヌクレアーゼ(RNアーゼ)による分解に対するガイドRNAの耐性を増加させて細胞内の半減期を増加させることによって行われる。ガイドRNAの半減期を向上させる改変は、CasまたはCpf1エンドヌクレアーゼが細胞に導入されてエンドヌクレアーゼの産生に翻訳が必要なRNAによって編集される態様においては、RNAがエンドヌクレアーゼをコードするのと同時に導入ガイドRNAの半減期を増加させることがガイドRNA及びコードされるCasまたはCpf1エンドヌクレアーゼの細胞内の共存時間を増加させるために使用され得るため、特に有用であり得る。
改変は、さらにまたは代替的に、細胞に導入されるRNAによる自然免疫応答の誘発の可能性または程度を低下させるために使用することができる。このような応答は、RNA干渉(RNAi)(以下で、そして当技術分野で説明されているように、低分子干渉RNA(siRNA)を含む)の文脈において十分に特性が明らかになっており、RNAの半減期低減に及び/またはサイトカインもしくは免疫応答に関連する他の因子の誘発に関連する傾向がある。
1つ以上のタイプの改変は、エンドヌクレアーゼをコードし細胞に導入されるRNAに対しても行うことができ、この改変には、以下に限定されないが、RNAの安定性を向上させる改変(例えば、細胞内に存在するRNアーゼによるRNA分解を増加することにより行う)、得られた産物(すなわち、エンドヌクレアーゼ)の翻訳を向上させる改変、及び/または細胞に導入されるRNAによる自然免疫応答の誘発の可能性もしくは程度を低下させる改変が含まれる。
改変(例えば上記及びその他)の組合せも同様に使用することができる。例えば、CRISPR/Cas9/Cpf1の場合、1つ以上のタイプの改変を(上記で例示したものを含めて)ガイドRNAに対し行うことができ、及び/または1つ以上のタイプの改変を(上記で例示したものを含めて)CasエンドヌクレアーゼをコードするRNAに対し行うことができる。
例示として、CRISPR/Cas9/Cpf1システムで使用するガイドRNA、または他のより低分子のRNAは、以下に例示し当技術分野で説明されているように、複数の改変を容易に組み込むことが可能な化学的手段によって容易に合成することができる。化学合成手順が継続的に拡大している一方で、高速液体クロマトグラフィー(HPLC、PAGEなどのゲルの使用を回避)などの手順によるこのようなRNAの精製は、ポリヌクレオチド長が100ヌクレオチド程度を顕著に上回って増加するにつれて、難易度が高くなる傾向がある。より長い化学的改変RNAを産生するために用いられ得る1つのアプローチは、共にライゲーションした2つ以上の分子を生成することである。さらに長いRNA(例えば、Cas9エンドヌクレアーゼをコードするRNA)は、より容易に酵素的に産生される。酵素的に産生されたRNAでの使用において利用可能な改変タイプはより少ない一方で、それでもなお、例えば、安定性の向上、自然免疫応答の可能性もしくは程度の低減、及び/または以下で、そして当技術分野でさらに説明される他の特質の向上に使用され得る改変が存在し、新たなタイプの改変が定常的に開発されている。
様々なタイプの改変、特により低分子の化学合成RNAと共にしばしば使用される改変の例示として、改変は、糖の2’位で改変された1つ以上のヌクレオチド、一部の態様では2’−O−アルキル、2’−O−アルキル−O−アルキル、または2’−フルオロ改変ヌクレオチドを含むことができる。一部の例において、RNA改変は、ピリミジン、脱塩基残基、またはRNAの3’末端にある逆位塩基のリボースに、2’−フルオロ、2’−アミノ、または2’O−メチル改変を含むことができる。このような改変は通例的にオリゴヌクレオチドに組み込むことができ、当該オリゴヌクレオチドは、所与の標的に対し2’−デオキシオリゴヌクレオチドよりも高いTm(すなわち、高い標的結合親和性)を有することが示されている。
複数のヌクレオチド及びヌクレオシドの改変において、組み込んだオリゴヌクレオチドのヌクレアーゼ消化に対する耐性がネイティブなオリゴヌクレオチドよりも高まり、この改変オリゴが非改変オリゴヌクレオチドよりも長期間インタクトのまま残存することが示されている。改変オリゴヌクレオチドの具体的な例としては、改変骨格、例えば、ホスホロチオアート、ホスホトリエステル、メチルホスホナート、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルの糖間結合、または短鎖ヘテロ原子もしくはヘテロ環の糖間結合を含むものが挙げられる。一部のオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオアート骨格を有するオリゴヌクレオチド及びヘテロ原子骨格を有するオリゴヌクレオチドであり、特に、CH2−NH−O−CH2、CH,〜N(CH3)〜O〜CH2(メチレン(メチルイミノ)またはMMI骨格として知られている)、CH2−−O−−N(CH3)−CH2、CH2−N(CH3)−N(CH3)−CH2、及びO−N(CH3)−CH2−CH2骨格(ネイティブなホスホジエステル骨格はO−P−−O−CH,として表される);アミド骨格[De Mesmaeker et al.,Ace.Chem.Res.,28:366−374(1995)を参照];モルホリノ骨格構造(Summerton and Weller,米国特許第5,034,506号を参照);ペプチド核酸(PNA)骨格(オリゴヌクレオチドのホスホジエステル骨格がポリアミド骨格で置き換えられ、ヌクレオチドはポリアミド骨格のアザ窒素原子に直接的または間接的に結合する。Nielsen et al.,Science 1991,254,1497を参照)を有する。リン含有結合としては、以下に限定されないが、ホスホロチオアート、キラルホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’アルキレンホスホナート及びキラルホスホナートを含むメチル及び他のアルキルホスホナート、ホスフィナート、3’−アミノホスホロアミダート及びアミノアルキルホスホロアミダートを含むホスホロアミダート、チオノホスホロアミダート、チオノアルキルホスホナート、チオノアルキルホスホトリエステル、ならびに通常の3’−5’結合を有するボラノホスファート、これらの2’−5’結合アナログ、ならびにヌクレオシド単位の隣接対が3’−5’から5’−3’、または2’−5’から5’−2’に結合している逆極性を有するものが挙げられる;米国特許第3,687,808号;同第4,469,863号;同第4,476,301号;同第5,023,243号;同第5,177,196号;同第5,188,897号;同第5,264,423号;同第5,276,019号;同第5,278,302号;同第5,286,717号;同第5,321,131号;同第5,399,676号;同第5,405,939号;同第5,453,496号;同第5,455,233号;同第5,466,677号;同第5,476,925号;同第5,519,126号;同第5,536,821号;同第5,541,306号;同第5,550,111号;同第5,563,253号;同第5,571,799号;同第5,587,361号;同第5,625,050号を参照。
モルホリノベースのオリゴマー化合物は、Braasch and David Corey,Biochemistry,41(14):4503−4510(2002);Genesis,Volume 30,Issue 3,(2001);Heasman,Dev.Biol.,243:209−214(2002);Nasevicius et al.,Nat.Genet.,26:216−220(2000);Lacerra et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,97:9591−9596(2000);及び1991年7月23日に発行された米国特許第5,034,506号で説明されている。
シクロヘキセニル核酸オリゴヌクレオチドミメティックは、Wang et al.,J.Am.Chem.Soc.,122:8595−8602(2000)に記載されている。
リン原子を含まない改変ポリヌクレオチド骨格は、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルヌクレオシド間結合、混合ヘテロ原子及びアルキルもしくはシクロアルキルヌクレオシド間結合、または1つ以上の短鎖ヘテロ原子もしくは複素環式ヌクレオシド間結合によって形成される骨格を有する。これらは、モルホリノ結合(部分的にはヌクレオシドの糖部分から形成されている)を有する骨格;シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシド、及びスルホン骨格;ホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファマート骨格;メチレンイミノ及びメチレンヒドラジノ骨格;スルホナート及びスルホンアミド骨格;アミド骨格;ならびにN、O、S、及びCH2が混合した構成要素部分を有する他の骨格を含む;米国特許第5,034,506号;同第5,166,315号;同第5,185,444号;同第5,214,134号;同第5,216,141号;同第5,235,033号;同第5,264,562号;同第5,264,564号;同第5,405,938号;同第5,434,257号;同第5,466,677号;同第5,470,967号;同第5,489,677号;同第5,541,307号;同第5,561,225号;同第5,596,086号;同第5,602,240号;同第5,610,289号;同第5,602,240号;同第5,608,046号;同第5,610,289号;同第5,618,704号;同第5,623,070号;同第5,663,312号;同第5,633,360号;同第5,677,437号;同第5,677,439号を参照。
1つ以上の置換された糖部分、例えば以下のうちの1つも2’位に含まれ得る:OH、SH、SCH3、F、OCN、OCH3OCH3、OCH3O(CH2)nCH3、O(CH2)nNH2、またはO(CH2)nCH3(式中、nは1〜約10である);C1〜C10の低級アルキル、アルコキシアルコキシ、置換された低級アルキル、アルカリル、またはアラルキル;Cl;Br;CN;CF3;OCF3;O−、S−、またはN−アルキル;O−、S−、またはN−アルケニル;SOCH3;SO2CH3;ONO2;NO2;N3;NH2;ヘテロシクロアルキル;ヘテロシクロアルカリル;アミノアルキルアミノ;ポリアルキルアミノ;置換されたシリル;RNA切断基;レポーター基;インターカレーター;オリゴヌクレオチドの薬物動態特性を改善する基;またはオリゴヌクレオチド及び同様の特性を有する他の置換基の薬物動態特性を改善する基。一部の態様において、改変は、2’−メトキシエトキシ(2’−O−CH2CH2OCH3(2’−O−(2−メトキシエチル)としても知られている))(Martin et al.,HeIv.Chim.Acta,1995,78,486)を含む。他の改変は、2’−メトキシ(2’−O−CH3)、2’−プロポキシ(2’−OCH2CH2CH3)、及び2’−フルオロ(2’−F)を含む。また、同様の改変をオリゴヌクレオチド上の他の位置、特に3’末端ヌクレオチド上の糖の3’位、及び5’末端ヌクレオチドの5’位で行うこともできる。また、オリゴヌクレオチドは、ペントフラノシル基の代わりにシクロブチルなどの糖ミメティックを有することもできる。
いくつかの例において、ヌクレオチド単位の糖及びヌクレオシド間結合(すなわち、骨格)の両方が新規の基で置き換えることができる。塩基単位は、適切な核酸標的化合物とのハイブリダイズのために維持することができる。1つのこのようなオリゴマー化合物、優れたハイブリダイズ特性を有することが示されたオリゴヌクレオチドミメティックは、ペプチド核酸(PNA)と呼ばれている。PNA化合物において、オリゴヌクレオチドの糖骨格は、アミド含有骨格(例えば、アミノエチルグリシン骨格)で置き換えることができる。核酸塩基は保持し、骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接的または間接的に結合させることができる。PNA化合物の調製を教示する代表的な米国特許としては、以下に限定されないが、米国特許第5,539,082号;同第5,714,331号;及び同第5,719,262号が挙げられる。PNA化合物についてのさらなる教示は、Nielsen et al,Science,254:1497−1500(1991)で見いだすことができる。
またガイドRNAは、追加的または代替的に、核酸塩基(当技術分野では単に「塩基」と呼ばれることが多い)の改変または置換も含む。本明細書において、「非改変」または「天然」の核酸塩基には、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)、及びウラシル(U)が含まれる。改変核酸塩基には、天然の核酸では低頻度または過渡的にしか見いだされない核酸塩基が含まれ、例えば、ヒポキサンチン、6−メチルアデニン、5−Meピリミジン、特に5−メチルシトシン(5−メチル−2’デオキシシトシンとも呼ばれ、当技術分野ではしばしば5−Me−Cと呼ばれる)、5−ヒドロキシメチルシトシン(HMC)、グリコシルHMC及びゲントビオシルHMC、ならびに合成核酸塩基、例えば、2−アミノアデニン、2−(メチルアミノ)アデニン、2−(イミダゾリルアルキル)アデニン、2−(アミノアルキルアミノ)アデニン、または他のヘテロ置換されたアルキルアデニン、2−チオウラシル、2−チオチミン、5−ブロモウラシル、5−ヒドロキシメチルウラシル、8−アザグアニン、7−デアザグアニン、N6(6−アミノヘキシル)アデニン、及び2,6−ジアミノプリンが挙げられる。Kornberg,A.,DNA Replication,W.H.Freeman & Co.,San Francisco,pp75−77(1980);Gebeyehu et al.,Nucl.Acids Res.15:4513(1997)。当技術分野で知られている「普遍的な」塩基(例えば、イノシン)も含まれ得る。5−Me−C置換は、核酸デュプレックスの安定性を0.6〜1.2℃だけ増加させることが示されており(Sanghvi,Y.S.,Crooke,S.T.and Lebleu,B.,eds.,Antisense Research and Applications,CRC Press,Boca Raton,1993,pp.276−278)、塩基置換の諸態様である。
改変核酸塩基は、他の合成及び天然の核酸塩基、例えば、5−メチルシトシン(5−me−C)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、アデニン及びグアニンの6−メチル及び他のアルキル誘導体、アデニン及びグアニンの2−プロピル及び他のアルキル誘導体、2−チオウラシル、2−チオチミン及び2−チオシトシン、5−ハロウラシル及びシトシン、5−プロピニルウラシル及びシトシン、6−アゾウラシル、シトシン及びチミン、5−ウラシル(シュードウラシル)、4−チオウラシル、8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシル、ならびに他の8−置換アデニン及びグアニン、5−ハロ、特に5−ブロモ、5−トリフルオロメチル、ならびに他の5−置換ウラシル及びシトシン、7−メチルグアニン及び7−メチルアデニン、8−アザグアニン及び8−アザアデニン、7−デアザグアニン及び7−デアザアデニン、ならびに3−デアザグアニン及び3−デアザアデニンを含むことができる。
さらに、核酸塩基は、米国特許第3,687,808号で開示されるもの、‘The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering’,858〜859頁,Kroschwitz,J.I.,ed.John Wiley&Sons,1990で開示されるもの、Englischらによる、Angewandte Chemie,International Edition’,1991,30:613頁で開示されるもの、及びSanghvi,Y.S.Chapter 15,Antisense Research and Applications’,289−302頁,Crooke,S.T.and Lebleu,B.ea.,CRC Press,1993で開示されるものを含むことができる。これらの核酸塩基の一部は、本発明のオリゴマー化合物の結合親和性を増加させるのに特に有用である。これには、5−置換ピリミジン、6−アザピリミジン、ならびにN−2、N−6、及び0−6置換プリンが含まれ、2−アミノプロピルアデニン、5−プロピニルウラシル、及び5−プロピニルシトシンを構成する。5−メチルシトシン置換は、核酸デュプレックス安定性を0.6〜1.2℃増加させることが示されており(Sanghvi,Y.S.,Crooke,S.T.and Lebleu,B.,eds.,‘Antisense Research and Applications’,CRC Press,Boca Raton,1993,pp.276−278)、とりわけ2’−O−メトキシエチル糖改変と組み合わせた場合には塩基置換の態様となる。改変核酸塩基は、米国特許第3,687,808号、ならびに同第4,845,205号;同第5,130,302号;同第5,134,066号;同第5,175,273号;同第5,367,066号;同第5,432,272号;同第5,457,187号;同第5,459,255号;同第5,484,908号;同第5,502,177号;同第5,525,711号;同第5,552,540号;同第5,587,469号;同第5,596,091号;同第5,614,617号;同第5,681,941号;同第5,750,692号;同第5,763,588号;同第5,830,653号;同第6,005,096号;及び米国特許出願公開第2003/0158403号に記載されている。
したがって、「改変」という用語は、ガイドRNA、エンドヌクレアーゼ、もしくはBCL11Aの転写制御配列に、またはガイドRNA及びエンドヌクレアーゼの両方に組み込まれる非天然の糖、リン酸塩、または塩基を指す。所与のオリゴヌクレオチドにおける全ての位置が一様に改変される必要はなく、実際には前述の改変のうちの2つ以上を単一のオリゴヌクレオチド内に、またはオリゴヌクレオチド中の単一のヌクレオシド内であっても、組み込むことができる。
ガイドRNA及び/またはエンドヌクレアーゼをコードするmRNA(もしくはDNA)は、活性、細胞分布、またはオリゴヌクレオチドの細胞取込みを向上させる1つ以上の部分または結合体に化学的に結合することができる。このような部分は、以下に限定されないが、コレステロール部分などの脂質部分[Letsinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:6553−6556(1989)];コール酸[Manoharan et al.,Bioorg.Med.Chem.Let.,4:1053−1060(1994)];チオエーテル、例えば、ヘキシル−S−トリチルチオール[Manoharan et al,Ann.N.Y.Acad.Sci.,660:306−309(1992)及びManoharan et al.,Bioorg.Med.Chem.Let.,3:2765−2770(1993)];チオコレステロール[Oberhauser et al.,Nucl.Acids Res.,20:533−538(1992)];脂肪族鎖、例えばドデカンジオールもしくはウンデシル残基[Kabanov et al.,FEBS Lett.,259:327−330(1990)及びSvinarchuk et al.,Biochimie,75:49−54(1993)];リン脂質、例えば、ジ−ヘキサデシル−rac−グリセロールもしくはトリエチルアンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホナート[Manoharan et al.,Tetrahedron Lett.,36:3651−3654(1995)及びShea et al.,Nucl.Acids Res.,18:3777−3783(1990)];ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖[Mancharan et al.,Nucleosides & Nucleotides,14:969−973(1995)];アダマンタン酢酸[Manoharan et al.,Tetrahedron Lett.,36:3651−3654(1995)];パルミチル部分[(Mishra et al.,Biochim.Biophys.Acta,1264:229−237(1995)];またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ−カルボニル−tオキシコレステロール部分[Crooke et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.,277:923−937(1996)]を含む。また、米国特許第4,828,979号;同第4,948,882号;同第5,218,105号;同第5,525,465号;同第5,541,313号;同第5,545,730号;同第5,552,538号;同第5,578,717号、同第5,580,731号;同第5,580,731号;同第5,591,584号;同第5,109,124号;同第5,118,802号;同第5,138,045号;同第5,414,077号;同第5,486,603号;同第5,512,439号;同第5,578,718号;同第5,608,046号;同第4,587,044号;同第4,605,735号;同第4,667,025号;同第4,762,779号;同第4,789,737号;同第4,824,941号;同第4,835,263号;同第4,876,335号;同第4,904,582号;同第4,958,013号;同第5,082,830号;同第5,112,963号;同第5,214,136号;同第5,082,830号;同第5,112,963号;同第5,214,136号;同第5,245,022号;同第5,254,469号;同第5,258,506号;同第5,262,536号;同第5,272,250号;同第5,292,873号;同第5,317,098号;同第5,371,241号、同第5,391,723号;同第5,416,203号、同第5,451,463号;同第5,510,475号;同第5,512,667号;同第5,514,785号;同第5,565,552号;同第5,567,810号;同第5,574,142号;同第5,585,481号;同第5,587,371号;同第5,595,726号;同第5,597,696号;同第5,599,923号;同第5,599,928号、及び同第5,688,941号も参照。
糖及び他の部分は、ヌクレオチド(例えば、カチオン性ポリソーム及びリポソーム)を含むタンパク質及び複合体を特定の部位に対し標的化するために使用することができる。例えば、肝細胞に向けた移行は、アシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)によって媒介され得る。例えば、Hu,et al.,Protein Pept Lett.21(10):1025−30(2014)を参照。当技術分野において公知であり定常的に開発されている他のシステムを使用して、本発明において使用する生体分子及び/またはその複合体を特定の目的の標的細胞に対し標的化することができる。
このような標的化部分または結合体は、官能基(例えば、1級または2級ヒドロキシル基)と共有結合した結合体基を含むことができる。本発明の結合体基としては、インターカレーター、レポーター分子、ポリアミン、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、オリゴマーの薬物力学特性を向上させる基、及びオリゴマーの薬物動態特性を向上させる基が挙げられる。典型的な結合体基としては、コレステロール、脂質、リン脂質、ビオチン、フェナジン、葉酸塩、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、及び色素が挙げられる。本開示の文脈において薬物力学特性を向上させる基としては、取込みを改善する、分解に対する耐性を向上させる、及び/または標的核酸との配列特異的ハイブリダイズを強化する基が挙げられる。本発明の文脈において薬物動態特性を向上させる基としては、本発明の化合物の取込み、分布、代謝、または排泄を改善する基が挙げられる。代表的な結合体基は、1992年10月23日に出願された国際特許出願第PCT/US92/09196号、及び米国特許第6,287,860号に開示されている。結合体部分としては、以下に限定されないが、脂質部分、例えばコレステロール部分、コール酸、チオエーテル、例えばヘキシル−5−トリチルチオール、チオコレステロール、脂肪族鎖、例えばドデカンジオールもしくはウンデシル残基、リン脂質、例えばジ−ヘキサデシル−rac−グリセロールもしくはトリエチルアンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホナート、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖、もしくはアダマンタン酢酸、パルミチル部分、またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール部分が挙げられる。例えば、米国特許第4,828,979号;同第4,948,882号;同第5,218,105号;同第5,525,465号;同第5,541,313号;同第5,545,730号;同第5,552,538号;同第5,578,717号、同第5,580,731号;同第5,580,731号;同第5,591,584号;同第5,109,124号;同第5,118,802号;同第5,138,045号;同第5,414,077号;同第5,486,603号;同第5,512,439号;同第5,578,718号;同第5,608,046号;同第4,587,044号;同第4,605,735号;同第4,667,025号;同第4,762,779号;同第4,789,737号;同第4,824,941号;同第4,835,263号;同第4,876,335号;同第4,904,582号;同第4,958,013号;同第5,082,830号;同第5,112,963号;同第5,214,136号;同第5,082,830号;同第5,112,963号;同第5,214,136号;同第5,245,022号;同第5,254,469号;同第5,258,506号;同第5,262,536号;同第5,272,250号;同第5,292,873号;同第5,317,098号;同第5,371,241号、同第5,391,723号;同第5,416,203号、同第5,451,463号;同第5,510,475号;同第5,512,667号;同第5,514,785号;同第5,565,552号;同第5,567,810号;同第5,574,142号;同第5,585,481号;同第5,587,371号;同第5,595,726号;同第5,597,696号;同第5,599,923号;同第5,599,928号、及び同第5,688,941号を参照。
化学合成の適用が難しく典型的には酵素的合成によって生成されるより長いポリヌクレオチドも、様々な方法によって改変することができる。このような改変としては、例えば、ある特定のヌクレオチドアナログの導入、分子の5’または3’末端における特定の配列または他の部分の組み込み、及び他の改変が挙げられる。例示として、Cas9をコードするmRNAはおよそ4kbの長さであり、in vitroの転写によって合成することができる。mRNAに対する改変は、例えば、その翻訳または安定性を増加させるために(例えば、細胞による分解に対する耐性を増加させることによって)適用することもあれば、RNAが自然免疫応答(外因的RNA、特にCas9をコードするRNAのようなより長いRNAの導入後に、細胞内でしばしば観察される)を誘発する傾向を低減するために適用することもある。
当技術分野では、このような改変が多数説明されており、例えば、polyAテール、5’キャップアナログ(例えば、アンチリバースキャップアナログ(Anti Reverse Cap Analog)(ARCA)もしくはm7G(5’)ppp(5’)G (mCAP))、改変5’もしくは3’非翻訳領域(UTR)、改変塩基の使用(例えば、シュード−UTP、2−チオ−UTP、5−メチルシチジン−5’−トリホスファート(5−メチル−CTP)、もしくはN6−メチル−ATP)、または5’末端ホスファートを除去するためのホスファターゼによる処理がある。これら及び他の改変は当技術分野において公知であり、新たなRNA改変が定常的に開発されている。
改変RNAの供給業者は多数存在し、これにはTriLink Biotech、AxoLabs、Bio−Synthesis Inc.、Dharmacon、その他多数が含まれる。例えば、TriLinkが説明しているように、5−メチル−CTPは、ヌクレアーゼの安定性の増加、翻訳の増加、または自然免疫受容体とin vitro転写RNAとの相互作用の低減などの、所望の特徴を付与するために使用することができる。5−メチルシチジン−5’−トリホスファート(5−メチル−CTP)、N6−メチル−ATP、ならびにシュード−UTP及び2−チオ−UTPは、以下で参照されるKormann et al.及びWarren et al.による刊行物に例示されているように、培養液中及びin vivoで自然免疫応答を低減する一方で翻訳を向上させることが示されている。
in vivoで送達される化学的改変mRNAは、治療効果の改善を達成するために使用され得ることが示されている。例えば、Kormann et al.,Nature Biotechnology 29,15−157(2011)を参照。このような改変は、例えば、RNA分子の安定性を増加させるために、及び/またはその免疫原性を低減するために使用することができる。シュード−U、N6−メチル−A、2−チオ−U、及び5−メチル−Cなどの化学的改変を使用して、ウリジン及びシチジン残基のちょうど4分の1をそれぞれ2−チオ−U及び5−メチル−Cで置換すると、トール様受容体(TLR)媒介のmRNA認識が顕著に低下することがマウスで見いだされている。これらの改変は、自然免疫システムの活性化を低減することにより、in vivoでのmRNAの安定性及び寿命を効果的に増加させるために使用することができる。例えば、Kormann et al.(上記)を参照。
また、生得的な抗ウイルス応答を迂回するように設計された改変を組み込む合成メッセンジャーRNAを繰り返し投与することで、分化したヒト細胞が多分化能に初期化されることも示されている。例えば、Warren,et al.,Cell Stem Cell,7(5):618−30(2010)を参照。このような一次的初期化タンパク質として作用する改変mRNAは、複数のヒト細胞タイプを初期化する効率的な手段であり得る。このような細胞は人工多能性幹細胞(iPSC)と呼ばれ、5−メチル−CTP、シュード−UTP及びアンチリバースキャップアナログ(ARCA)を組み込む酵素的合成RNAは、細胞の抗ウイルス応答を効果的に避けるために使用することができると思われることが明らかになった。例えば、Warren et al.(上記)を参照。
当技術分野で説明されている他のポリヌクレオチド改変としては、例えば、polyAテールの使用、5’キャップアナログ(例えば、m7G(5’)ppp(5’)G(mCAP))の付加、5’または3’非翻訳領域(UTR)の改変、または5’末端ホスファートを除去するためのホスファターゼによる処理が挙げられ、新たなアプローチが定常的に開発されている。
本明細書で使用するための改変RNAの産生に適用可能な複数の組成物及び技法は、低分子干渉RNA(siRNA)を含めたRNA干渉(RNAi)の改変との関連で開発されている。siRNAは、mRNA干渉によって遺伝子サイレンシングに及ぼす影響が概して一過性であることから反復投与を必要とし得るため、in vivoにおける特定の課題が提示される。加えて、siRNAは2本鎖RNA(dsRNA)であるが、哺乳類細胞の免疫反応は、ウイルス感染の副産物であることが多いdsRNAを検出し無効化するように進化してきた。このように、dsRNAに対する細胞応答を媒介し得るPKR(dsRNA応答性キナーゼ)などの哺乳類酵素及び潜在的レチノイン酸誘導性遺伝子I(RIG−I)、ならびにこのような分子に応答してサイトカインの誘導を作動させ得るトール様受容体(例えば、TLR3、TLR7、及びTLR8)が存在する。例えば、Angart et al.,Pharmaceuticals(Basel)6(4):440−468(2013);Kanasty et al.,Molecular Therapy 20(3):513−524(2012);Burnett et al.,Biotechnol J.6(9):1130−46(2011);Judge and MacLachlan,Hum Gene Ther 19(2):111−24(2008)による概説、及びこれらにおける引用文献を参照。
本明細書に記載のように、RNA安定性を向上させるため、自然免疫応答を低減するため、及び/またはヒト細胞へのポリヌクレオチド導入との関連で有用であり得る他の利益を達成するために、多種多様な改変が開発され適用されている。例えば、Whitehead KA et al.,Annual Review of Chemical and Biomolecular Engineering,2:77−96(2011);Gaglione and Messere,Mini Rev Med Chem,10(7):578−95(2010);Chernolovskaya et al,Curr Opin Mol Ther.,12(2):158−67(2010);Deleavey et al.,Curr Protoc Nucleic Acid Chem Chapter 16:Unit 16.3(2009);Behlke,Oligonucleotides 18(4):305−19(2008);Fucini et al.,Nucleic Acid Ther 22(3):205−210(2012);Bremsen et al.,Front Genet 3:154(2012)による概説を参照。
上述のように改変RNAの供給業者は複数存在し、その多くが、siRNAの有効性を改善するように設計された改変に特化している。文献で報告された様々な知見に基づく様々なアプローチが提供されている。例えば、Dharmaconは、Kole,Nature Reviews Drug Discovery 11:125−140(2012)による報告のように、siRNAのヌクレアーゼ耐性を改善するために、硫黄(ホスホロチオアート、PS)による非架橋酸素の置き換えを広範に使用したと言及している。リボースの2’位置の改変は、ヌクレオチド間リン酸結合のヌクレアーゼ耐性を改善する一方でデュプレックス安定性(Tm)を増加させることが報告されており、また免疫活性化からの保護をもたらすことも示されている。低分子で認容性の高い2’置換(2’−O−メチル、2’−フルオロ、2’−ヒドロ)を用いた適度なPS骨格改変の組合せは、Soutschek et al.Nature 432:173−178(2004)による報告のように、in vivoでの適用向けに安定性の高いsiRNAと関連付けられており、また2’−O−メチル改変は、Volkov,Oligonucleotides 19:191−202(2009)による報告のように、安定性の改善に有効であることが報告されている。自然免疫応答の誘導を低下させることに関しては、特定の配列を2’−O−メチル、2’−フルオロ、2’−ヒドロで改変すると、TLR7/TLR8の相互作用を低減する一方で、サイレンシング活性を概ね保つことが報告されている。例えば、Judge et al.,Mol.Ther.13:494−505(2006)及びCekaite et al.,J.Mol.Biol.365:90−108(2007)を参照。追加的な改変、例えば、2−チオウラシル、シュードウラシル、5−メチルシトシン、5−メチルウラシル、及びN6−メチルアデノシンが、TLR3、TLR7、及びTLR8によって媒介される免疫作用を最小化することも示されている。例えば、Kariko,K.et al.,Immunity 23:165−175(2005)を参照。
当技術分野でも公知であるように、また市販されているように、細胞による送達及び/または取込みを向上させることができる複数の結合体を、本明細書で使用するポリヌクレオチド(例えば、RNA)に適用することができ、このような結合体としては、例えば、コレステロール、トコフェロール及び葉酸、脂質、ペプチド、ポリマー、リンカー、及びアプタマーが挙げられる。例えば、Winkler,Ther.Deliv.4:791−809(2013)による概説、及びその引用文献を参照。
コドン最適化
部位特異的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、目的の標的DNAを含有する細胞内での発現のために、当技術分野で標準の方法に従ってコドン最適化することができる。例えば、意図された標的核酸がヒト細胞内にある場合、Cas9ポリペプチド生成用にCas9をコードするヒトのコドン最適化ポリヌクレオチドを使用することが企図される。
ゲノム標的化核酸と部位特異的ポリペプチドとの複合体
ゲノム標的化核酸は、部位特異的ポリペプチド(例えば、Cas9などの核酸誘導ヌクレアーゼ)と相互作用して、複合体を形成する。ゲノム標的化核酸は、部位特異的ポリペプチドを標的核酸に誘導する。
RNP
部位特異的ポリペプチド及びゲノム標的化核酸は、細胞または患者にそれぞれ別々に投与することができる。その一方で、部位特異的ポリペプチドは、1つ以上のゲノム標的化核酸(ガイドRNA、sgRNA、またはtracrRNAと一緒にしたcrRNA)と予め複合体化されてもよい。次に予め複合体化された材料を細胞または患者に投与することができる。このような予め複合体化された材料は、リボ核タンパク質粒子(RNP)として知られている。RNP内の部位特異的ポリペプチドは、例えば、Cas9エンドヌクレアーゼまたはCpf1エンドヌクレアーゼとすることができる。部位特異的ポリペプチドは、N末端、C末端、またはN末端及びC末端の両方で1つ以上の核局在化シグナル(NLS)に隣接していてもよい。例えば、Cas9エンドヌクレアーゼは、2つのNLS(一方のNLSはN末端に位置し、第2のNLSはC末端に位置する)に隣接していてもよい。NLSは、当技術分野で知られている任意のNLS(例えば、SV40 NLS)とすることができる。RNP内のゲノム標的化核酸:部位特異的ポリペプチドの重量比は1:1とすることができる。例えば、RNP内のsgRNA:Cas9エンドヌクレアーゼの重量比は1:1とすることができる。例えば、sgRNAは、配列番号71,959の核酸配列を含むことができ、Cas9エンドヌクレアーゼがN末端SV40 NLS及びC末端SV40 NLSを含むS.pyogenes Cas9であってもよく、sgRNA:Cas9エンドヌクレアーゼの重量比は1:1とすることができる。
核酸コードシステムの構成要素
本開示は、本開示のゲノム標的化核酸をコードするヌクレオチド配列を含む核酸、本開示の部位特異的ポリペプチド、及び/または本開示の方法の態様を実施するために必要な任意の核酸またはタンパク質性分子を提供する。
本開示のゲノム標的化核酸をコードする核酸、本開示の部位特異的ポリペプチド、及び/または本開示の方法の態様を実施するために必要な任意の核酸またはタンパク質性分子は、ベクター(例えば、組換え発現ベクター)を含むことができる。
「ベクター」という用語は、結合している別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。あるタイプのベクターは「プラスミド」であり、これは、追加の核酸セグメントをライゲーションすることができる環状の2本鎖DNAループを指す。別のタイプのベクターはウイルスベクターであり、ウイルスベクターの場合、追加の核酸セグメントをウイルスゲノムにライゲーションすることができる。ある特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞における自己複製が可能である(例えば、細菌起源の複製を有する細菌ベクター及びエピソーム性哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム性哺乳類ベクター)は、宿主細胞に導入されると宿主細胞のゲノムに統合されて、宿主ゲノムに連動して複製される。
一部の例において、ベクターは、自らが作用可能に結合した核酸の発現を指示することが可能であり得る。このようなベクターは、本明細書では「組換え発現ベクター」またはより簡略に「発現ベクター」と呼ばれ、同等の機能を果たす。
「作用可能に連結」という用語は、目的のヌクレオチド配列が、当該ヌクレオチド配列の発現を可能にするようにして調節配列(複数可)に結合していることを意味する。「調節配列」という用語は、例えば、プロモーター、エンハンサー、及び他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むように意図されている。このような調節配列は当技術分野において周知であり、例えば、Goeddel;Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,CA(1990)で説明されている。調節配列としては、多くのタイプの宿主細胞内でヌクレオチド配列の構成的発現を指示するもの、及びある特定の宿主細胞内でのみヌクレオチド配列の発現を指示するもの(例えば、組織特異的調節配列)が挙げられる。当業者であれば、発現ベクターの設計が標的細胞の選択、所望の発現レベルなどの因子に依存し得ることを理解することになる。
企図される発現ベクターとしては、以下に限定されないが、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、SV40、単純ヘルペス、ヒト免疫不全ウイルス、レトロウイルス(例えば、マウス白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、ならびにラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、レンチウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス、及び乳房腫瘍ウイルスなどのレトロウイルスに由来するベクター)に基づいたウイルスベクター、ならびに他の組換えベクターが挙げられる。真核生物の標的細胞向けに企図される他のベクターとしては、以下に限定されないが、pXT1、pSG5、pSVK3、pBPV、pMSG、及びpSVLSV40(Pharmacia)のベクターが挙げられる。真核生物の標的細胞向けに企図されるさらなるベクターとしては、以下に限定されないが、pCTx−1、pCTx−2、及びpCTx−3のベクターが挙げられ、これらは図1A〜1Cに記載されている。他のベクターも、宿主細胞に適合性である限り使用することができる。
一部の例において、ベクターは1つ以上の転写及び/または翻訳制御エレメントを含むことができる。利用する宿主/ベクターシステムに応じて、複数の好適な転写及び翻訳制御エレメントのいずれか(構成的及び誘導的プロモーター、転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを含む)が発現ベクター内で使用され得る。ベクターは、ウイルス配列またはCRISPR機構もしくは他のエレメントの構成要素を不活性化する自己不活性化ベクターであり得る。
好適な真核生物プロモーター(すなわち、真核細胞内で機能するプロモーター)の非限定的な例としては、サイトメガロウイルス(CMV)最初期からのもの、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ、初期及び後期のSV40、レトロウイルスからの長末端反復配列(LTR)、ヒト伸長因子1プロモーター(EF1)、トリβアクチンプロモーター(CAG)に融合したサイトメガロウイルス(CMV)エンハンサーを含むハイブリッドコンストラクト、マウス幹細胞ウイルスプロモーター(MSCV)、ホスホグリセリン酸キナーゼ−1座位プロモーター(PGK)、及びマウスメタロチオネイン−Iが挙げられる。
Casエンドヌクレアーゼとの関連で使用されるガイドRNAを含めた低分子RNAの発現に関しては、RNAポリメラーゼIIIプロモーター(例えば、U6及びH1を含む)のような様々なプロモーターが有利であり得る。このようなプロモーターについての説明及びその用法を向上するパラメーターは当技術分野において公知であり、追加の情報及びアプローチが定常的に記載されている。例えば、Ma,H.et al.,Molecular Therapy − Nucleic Acids 3,e161(2014)doi:10.1038/mtna.2014.12を参照。
発現ベクターは、翻訳開始のためのリボソーム結合部位及び転写ターミネーターも含有することができる。また発現ベクターは、発現を増幅するための適切な配列も含むことができる。また発現ベクターは、非ネイティブなタグ(例えば、ヒスチジンタグ、ヘマグルチニンタグ、緑色蛍光タンパク質など)をコードし、部位特異的ポリペプチドと融合することで融合タンパク質をもたらすヌクレオチド配列も含むことができる。
プロモーターは、誘導的プロモーター(例えば、ヒートショックプロモーター、テトラサイクリン調節プロモーター、ステロイド調節プロモーター、金属調節プロモーター、エストロゲン受容体調節プロモーターなど)であってもよい。プロモーターは、構成的プロモーター(例えば、CMVプロモーター、UBCプロモーター)であってもよい。一部の場合において、プロモーターは、空間的制約のある、及び/または時間的制約のあるプロモーター(例えば、組織特異的プロモーター、細胞タイプ特異的プロモーターなど)であってもよい。
本開示のゲノム標的化核酸をコードする核酸及び/または部位特異的ポリペプチドは、細胞への送達に用いる送達ビヒクル内に、またはその表面上にパッケージ化することができる。企図される送達ビヒクルとしては、以下に限定されないが、ナノ球体、リポソーム、量子ドット、ナノ粒子、ポリエチレングリコール粒子、ヒドロゲル、及びミセルが挙げられる。当技術分野で説明されているように、このようなビヒクルと所望の細胞タイプまたは位置との優先的相互作用を向上させるために、様々な標的化部分を使用することができる。
本開示の複合体、ポリペプチド、及び核酸の細胞への導入は、ウイルスまたはバクテリオファージ感染、トランスフェクション、結合体化、プロトプラスト融合、リポフェクション、エレクトロポレーション、ヌクレオフェクション、リン酸カルシウム沈殿法、ポリエチレンイミン(PEI)媒介トランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、リポソーム媒介トランスフェクション、粒子銃技術、リン酸カルシウム沈殿法、直接的マイクロインジェクション、ナノ粒子媒介核酸送達などによって生じ得る。
送達
ガイドRNAポリヌクレオチド(RNAもしくはDNA)及び/またはエンドヌクレアーゼポリヌクレオチド(複数可)(RNAもしくはDNA)は、当技術分野で公知のウイルスまたは非ウイルス送達ビヒクル、例えばエレクトロポレーション、機械力、細胞変形(SQZ Biotech)、及び細胞膜透過性ペプチドによって送達することができる。代替的に、エンドヌクレアーゼポリペプチド(複数可)は、当技術分野で公知のウイルスまたは非ウイルス送達ビヒクル、例えばエレクトロポレーションまたは脂質ナノ粒子によって送達することができる。さらに代替的な態様において、DNAエンドヌクレアーゼは、単体で、または1つ以上のガイドRNAと共に、もしくはtracrRNAと一緒の1つ以上のcrRNAと共に予め複合体化させて、1つ以上のポリペプチドとして送達することができる。
エレクトロポレーションは、細胞膜の浸透性を増加させて、薬物、核酸(ゲノム標的化核酸)、タンパク質(部位特異的ポリペプチド)、またはRNPなどの物質を細胞に導入できるようにするために、1つ以上の細胞に電場を適用する送達技法である。概して、エレクトロポレーションは、エレクトロポレーションキュベット内の懸濁細胞の1〜2ミリメートルの距離にわたり数千ボルトを通すことによって機能する(1.0〜1.5kV、250〜750V/cm)。
ポリヌクレオチドは、以下に限定されないが、ナノ粒子、リポソーム、リボ核タンパク質、正に荷電したペプチド、低分子RNA結合体、アプタマー−RNAキメラ、及びRNA融合タンパク質複合体を含めた非ウイルス送達ビヒクルによって送達することができる。一部の例示的な非ウイルス送達ビヒクルは、Peer and Lieberman,Gene Therapy,18:1127−1133(2011)(他のポリヌクレオチドの送達にも有用であるsiRNA向けの非ウイルス送達ビヒクルに焦点が当てられている)に記載されている。
ガイドRNA、sgRNA、及びエンドヌクレアーゼをコードするmRNAなどのポリヌクレオチドは、脂質ナノ粒子(LNP)によって細胞または患者に送達させることができる。
LNPとは、直径が1000nm、500nm、250nm、200nm、150nm、100nm、75nm、50nm、または25nm未満の任意の粒子を指す。代替的に、ナノ粒子のサイズは、1〜1000nm、1〜500nm、1〜250nm、25〜200nm、25〜100nm、35〜75nm、または25〜60nmを範囲とすることができる。
LNPは、カチオン性、アニオン性、または中性の脂質から作製することができる。膜融合リン脂質DOPEまたは膜構成要素コレステロールなどの中性脂質は、トランスフェクション活性及びナノ粒子安定性を向上させるための「ヘルパー脂質」としてLNPに含めることができる。カチオン性脂質の制約としては、安定性が低いこと及び迅速なクリアランスによる有効性の低さ、ならびに炎症応答または抗炎症応答の産生が挙げられる。
また、LNPは疎水性脂質、親水性脂質、または疎水性脂質及び親水性脂質の両方から構成されてもよい。
当技術分野で公知の任意の脂質または脂質の組合せをLNPの生成に使用することができる。LNPの生成に使用する脂質の例としては、以下のものがある:DOTMA、DOSPA、DOTAP、DMRIE、DC−コレステロール、DOTAP−コレステロール、GAP−DMORIE−DPyPE、及びGL67A−DOPE−DMPE−ポリエチレングリコール(PEG)。カチオン性脂質の例としては、以下のものがある:98N12−5、C12−200、DLin−KC2−DMA(KC2)、DLin−MC3−DMA(MC3)、XTC、MD1、及び7C1。中性脂質の例としては、以下のものがある:DPSC、DPPC、POPC、DOPE、及びSM。PEG改変脂質の例としては、以下のものがある:PEG−DMG、PEG−CerC14、及びPEG−CerC20。
脂質は、任意の数字のモル比で組み合わせてLNPを生成することができる。加えてポリヌクレオチド(複数可)は、広範囲のモル比で脂質(複数可)と組み合わせてLNPを生成することができる。
先述のように、部位特異的ポリペプチド及びゲノム標的化核酸は、細胞または患者にそれぞれ別々に投与することができる。その一方で、部位特異的ポリペプチドは、1つ以上のガイドRNA、またはtracrRNAと一緒にした1つ以上のcrRNAと予め複合体化されてもよい。次に予め複合体化された材料を細胞または患者に投与することができる。このような予め複合体化された材料は、リボ核タンパク質粒子(RNP)として知られている。
RNAは、RNAまたはDNAとの特異的な相互作用を形成することができる。この特性は、多くの生物学的プロセスで活用されている一方で、核酸リッチな細胞環境では無差別な相互作用のリスクも伴う。この問題への1つの解決法は、RNAがエンドヌクレアーゼと予め複合体化されたリボ核タンパク質粒子(RNP)の形成である。RNPのもう1つの利点は、RNAを分解から保護することである。
RNP内のエンドヌクレアーゼは改変されても改変されなくてもよい。同様に、gRNA、crRNA、tracrRNA、またはsgRNAは改変されても改変されなくてもよい。多数の改変が当技術分野において公知であり、それらを使用することができる。
エンドヌクレアーゼ及びsgRNAは、概して1:1のモル比で組み合わせることができる。代替的に、エンドヌクレアーゼ、crRNA、及びtracrRNAは、概して1:1:1のモル比で組み合わせることができる。ただし、RNPの生成には広範囲のモル比を使用することができる。
組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを送達に使用することができる。送達するポリヌクレオチド、rep及びcap遺伝子、ならびにヘルパーウイルス機能を含むパッケージ化AAVゲノムが細胞に提供されるrAAVを生成する技法は、当技術分野では標準的である。AAVの生成は、典型的には、単一の細胞(本明細書ではパッケージ化細胞を意味する)中に以下の構成要素が存在することが要件となる:rAAVゲノム、rAAVゲノムとは別の(すなわち、rAAV内ではない)AAV rep及びcap遺伝子、ならびにヘルパーウイルス機能。AAV rep及びcap遺伝子は、組換えウイルスが由来し得る任意のAAV血清型からのものであってもよく、また、rAAVゲノムITRとは異なるAAV血清型からのものであってもよく、これには以下に限定されないが、AAV血清型AAV−1、AAV−2、AAV−3、AAV−4、AAV−5、AAV−6、AAV−7、AAV−8、AAV−9、AAV−10、AAV−11、AAV−12、AAV−13、及びAAV rh.74が含まれる。シュードタイプrAAVの生成は、例えば、国際特許出願公開第WO01/83692号に開示されている。表2を参照されたい。
パッケージ化細胞を産生する方法は、AAV粒子生成に必要な構成要素の全てを安定的に発現する細胞株を創出することを伴う。例えば、AAV rep及びcap遺伝子が欠如したrAAVゲノムを含む1つのプラスミド(または複数のプラスミド)、rAAVゲノムとは別のAAV rep及びcap遺伝子、及びネオマイシン耐性遺伝子などの選択マーカーが、細胞のゲノムに統合される。AAVゲノムの細菌プラスミドへの導入は、例えば、GCテーリング(Samulski et al.,1982,Proc.Natl.Acad.S6.USA,79:2077−2081)、制限エンドヌクレアーゼ切断部位を含有する合成リンカーの付加(Laughlin et al.,1983,Gene,23:65−73)または直接的な平滑末端ライゲーション(Senapathy & Carter,1984,J.Biol.Chem.,259:4661−4666)などの手順によって行われてきた。次に、パッケージ化細胞株をアデノウイルスなどのヘルパーウイルスに感染させることができる。この方法の利点は、細胞が選択可能であることや、rAAVの大規模生産に適していることである。好適な方法の他の例は、プラスミドではなくアデノウイルスまたはバキュロウイルスを用いて、rAAVゲノム及び/またはrep及びcap遺伝子をパッケージ化細胞に導入する。
rAAV生成の全般的な原理は、例えば、Carter,1992,Current Opinions in Biotechnology,1533−539及びMuzyczka,1992,Curr.Topics in Microbial.and Immunol.,158:97−129)で概説されている。様々なアプローチが以下の文献に記載されている:Ratschin et al.,Mol.Cell.Biol.4:2072(1984);Hermonat et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6466(1984);Tratschin et al.,Mo1.Cell.Biol.5:3251(1985);McLaughlin et al.,J.Virol.,62:1963(1988);及びLebkowski et al.,1988 Mol.Cell.Biol.,7:349(1988).Samulski et al.(1989,J.Virol.,63:3822−3828);米国特許第5,173,414号;WO95/13365及び対応する米国特許第5,658.776号;WO95/13392;WO96/17947;PCT/US98/18600;WO97/09441(PCT/US96/14423);WO97/08298(PCT/US96/13872);WO97/21825(PCT/US96/20777);WO97/06243(PCT/FR96/01064);WO99/11764;Perrin et al.(1995)Vaccine 13:1244−1250;Paul et al.(1993)Human Gene Therapy 4:609−615;Clark et al.(1996)Gene Therapy 3:1124−1132;米国特許第5,786,211号;米国特許第5,871,982号;及び米国特許第6,258,595号。
AAVベクター血清型は、標的細胞タイプにマッチさせることができる。例えば、以下の例示的な細胞タイプは、特に示されるAAV血清型によって形質導入することができる。表3を参照。
アデノ随伴ウイルスベクターに加えて、他のウイルスベクターも使用することができる。このようなウイルスベクターとしては、以下に限定されないが、レンチウイルス、アルファウイルス、エンテロウイルス、ペスチウイルス、バキュロウイルス、ヘルペスウイルス、エプスタイン・バーウイルス、パポバウイルス、ポックスウイルス、ワクシニアウイルス、及び単純ヘルペスウイルスが挙げられる。
一部の例において、Cas9 mRNA、BCL11A遺伝子またはBCL11A遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の中またはその付近で1つまたは2つの座位を標的化するsgRNA、及びドナーDNAは、それぞれ別々に脂質ナノ粒子に製剤化することができ、あるいは1つの脂質ナノ粒子に同時に製剤化される。
一部の例において、Cas9 mRNAは脂質ナノ粒子に製剤化することができ、一方sgRNA及びドナーDNAはAAVベクターにおいて送達することができる。
Casヌクレアーゼは、DNAプラスミドとして、mRNAとして、またはタンパク質として送達する選択肢が利用可能である。ガイドRNAは、同じDNAから発現させることができ、またはRNAとして送達することもできる。RNAは、その半減期を変更もしくは改善するように、または免疫応答の可能性もしくは程度を低下させるように、化学的に改変することができる。エンドヌクレアーゼタンパク質は、gRNAと複合体化させてから送達することができる。ウイルスベクターは効率的な送達を可能にし、Cas9及びCas9のより小さなオルソログの分割バージョンは、HDRドナーと同様、AAVにパッケージ化することができる。これらの構成要素の各々を送達することができる一連の非ウイルス送達方法も存在し、または非ウイルス及びウイルスの方法を同時並行的に用いることができる。例えば、ナノ粒子をタンパク質及びガイドRNAの送達に使用し、一方AAVをドナーDNAの送達に使用することができる。
遺伝子改変細胞
「遺伝子改変細胞」という用語は、(例えば、CRISPR/Cas9/Cpf1システムを用いて)ゲノム編集によって導入された少なくとも1つの遺伝子改変を含む細胞を指す。本明細書の一部のex vivoの例において、遺伝子改変細胞は遺伝子改変前駆細胞であり得る。本明細書の一部のin vivoの例において、遺伝子改変細胞は遺伝子改変造血前駆細胞であり得る。本明細書では、外因的ゲノム標的化核酸及び/またはゲノム標的化核酸をコードする外因的核酸を含む遺伝子改変細胞が企図されている。
「対照処置集団」という用語は、ゲノム編集構成要素の追加以外では、同一の培地、ウイルス誘導、核酸配列、温度、培養密度、フラスコサイズ、pHなどを用いて処置された細胞集団を説明する。当技術分野で公知の任意の方法を使用して、BCL11A遺伝子の転写制御配列またはタンパク質発現または活性の修飾または不活性化を測定することができ、例えば、BCL11A遺伝子タンパク質の転写制御配列に対するウェスタンブロット解析、またはBCL11A遺伝子mRNAの転写制御配列の定量化がある。
「単離細胞」という用語は、その細胞が最初に発見された生物から取り出された細胞、またはこのような細胞の子孫を指す。任意選択で、細胞をin vitroで、例えば定義された条件下でまたは他の細胞の存在下で培養することができる。任意選択で、細胞は、のちに第2の生物に導入するか、または単離元の生物(または由来細胞)に再導入することができる。
細胞における単離集団に関しての「単離集団」という用語は、混合または不均質の細胞集団から取り出し分離された細胞集団を指す。一部の場合において、単離集団は、当該細胞の単離または豊富化を行った不均質の集団と比較して、実質的に純粋な細胞集団であり得る。一部の場合において、単離集団は、ヒトの前駆細胞の単離集団、例えば、ヒト前駆細胞及びヒト前駆細胞が由来する細胞を含む不均質な細胞集団と比較して、ヒト前駆細胞の実質的に純粋な集団であり得る。
特定の細胞集団に対する「実質的に向上した」という用語は、特定のタイプの細胞の出現率が、例えば、ヘモグロビン異常症改善向けにこのような細胞に所望されるレベルに応じて、既存または基準レベルに対し少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも400倍、少なくとも1000倍、少なくとも5000倍、少なくとも20000倍、少なくとも100000倍、またはそれ以上の倍数だけ増加した細胞集団を指す。
特定の細胞集団に対する「実質的に豊富化された」という用語は、総細胞集団を構成する細胞に対し少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、またはそれ以上である細胞集団を指す。
特定の細胞集団に対する「実質的に純粋な」という用語は、総細胞集団を構成する細胞に対し少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%純粋である細胞集団を指す。すなわち、前駆細胞集団に対する「実質的に純粋な」または「本質的に精製された」という用語は、約20%、約15%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%、約1%、または1%未満の、本明細書における用語によって定義される前駆細胞ではない細胞を含有する細胞集団を指す。
ゲノム編集されたiPSCの造血前駆細胞への分化
本開示におけるex vivoの方法の別のステップは、ゲノム編集されたiPSCを造血前駆細胞に分化させることを含むことができる。分化させるステップは、当技術分野において公知の任意の方法に従って実施することができる。
ゲノム編集された間葉系幹細胞の造血前駆細胞への分化
本開示におけるex vivoの方法の別のステップは、ゲノム編集された間葉系幹細胞を造血前駆細胞に分化させることを含むことができる。分化させるステップは、当技術分野において公知の任意の方法に従って実施することができる。
患者への細胞植え込み
本開示におけるex vivoの方法の別のステップは、細胞を患者に植え込むことを含むことができる。この植え込みステップは、当技術分野で公知の任意の植え込み方法を用いて達成することができる。例えば、遺伝子改変細胞は、患者の血液に直接注射するか、または別の方法で患者に投与することができる。遺伝子改変細胞は、選択マーカーを用いてex vivoで精製することができる。
薬学的に許容される担体
本明細書で企図されている前駆細胞を対象に投与するex vivoの方法は、前駆細胞を含む治療組成物の使用を伴い得る。
治療組成物は、細胞組成物と一緒に生理的に認容性の担体と、任意選択で、本明細書に記載の少なくとも1つの追加の生物活性剤とを、活性成分として組成物中に溶解または分散した状態で含有することができる。一部の場合において、治療組成物は、所望されていない限り、治療目的で哺乳類またはヒト患者に投与された際に実質的に免疫原性ではない。
概して、本明細書に記載の前駆細胞は、医薬的に許容される担体を有する懸濁液として投与することができる。当業者であれば、細胞組成物で使用される医薬的に許容される担体は、対象に送達される細胞の生存率に実質的に干渉する量の緩衝液、化合物、凍結保存剤、保存料、または他の薬剤を含まないことを認識することになる。細胞を含む製剤は、例えば、細胞膜の統合性を維持できるようにする浸透圧緩衝液と、任意選択で、細胞生存率を維持するまたは投与時に移植を向上させる栄養素とを含むことができる。このような製剤及び懸濁液は、当業者に公知であり、及び/または、本明細書に記載のように、通常の実験を用いて前駆細胞との使用に適応させることができる。
また、細胞組成物は、乳化手順が細胞生存率に悪影響を及ぼさないことを条件に、乳化させることもリポソーム組成物として提示することもできる。細胞及び他の任意の活性成分は、医薬的に許容され活性成分に適合性である賦形剤と、本明細書に記載の治療方法での使用に適した量で、混合することができる。
細胞組成物に含まれる追加の薬剤は、中の構成要素の医薬的に許容される塩を含むことができる。薬学的に許容される塩としては、例えば塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸で形成された(ポリペプチドの遊離アミノ基で形成された)酸付加塩が挙げられる。また、遊離カルボキシル基で形成された塩は、無機塩基(例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化第二鉄など)、及び有機塩基(例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなど)に由来してもよい。
生理的に認容性の担体は当技術分野において周知である。例示的な液体担体は、活性成分及び水の他に材料を含有しない無菌水性溶液、または生理的pH値のリン酸ナトリウムなどの緩衝液、生理食塩水、またはその両方(例えば、リン酸緩衝食塩水)を含有する無菌水性溶液である。またさらに、水性担体は2つ以上の緩衝塩、さらに塩化ナトリウム及び塩化カリウムなどの塩、ブドウ糖、ポリエチレングリコール、ならびに他の溶質を含有することができる。また液体組成物は、水に加えて及び水以外に、液相も含有することができる。このような追加の液相の例示としては、グリセリン、綿実油などの植物油、及び水−油エマルジョンがある。特定の障害または状態の処置において有効な細胞組成物で使用する活性化合物の量は、その障害または状態の性質に依存する可能性があり、標準的な臨床技法によって決定され得る。
投与及び有効性
「投与する」「導入する」及び「移植する」という用語は、細胞(例えば、前駆細胞)を対象に配置する文脈で互換的に使用され、所望の効果(複数可)を生じさせるために、所望部位(例えば、損傷または修復の部位)で導入細胞の少なくとも部分的な局在化がもたらされるような方法または経路が用いられる。細胞(例えば、前駆細胞またはその分化した後代)は、植え込まれる細胞または細胞の構成要素の少なくとも一部が生存できる対象内の所望の位置への送達をもたらす任意の適切な経路によって投与することができる。対象への投与後における細胞の生存期間は、数時間という短期間であることもあれば、例えば、24時間から数日、さらに数年という長期間であることもあれば、さらに患者の生涯にわたる、すなわち長期移植であることもある。例えば、本明細書に記載の一部の態様において、有効量の筋原性前駆細胞は、全身の投与経路、例えば腹腔内または静脈内経路を介して投与される。
「個体」「対象」「宿主」及び「患者」という用語は、本明細書において互換的に使用され、診断、処置または治療が所望される任意の対象を指す。一部の態様では、対象は哺乳類である。一部の態様では、対象はヒトである。
予防的に提供される場合、本明細書に記載の前駆細胞は、ヘモグロビン異常症のいずれかの症状の前に、例えば、疲労、息切れ、黄疸、成長の遅れ、思春期の遅発、関節、骨、及び胸部の痛み、脾臓及び肝臓の肥大が発生する前に、対象に投与することができる。したがって、造血前駆細胞集団の予防的投与は、B−サラセミアまたは鎌状赤血球症などのヘモグロビン異常症の予防に役立つ。
治療的に提供される場合、造血前駆細胞は、ヘモグロビン異常症の症状または徴候の発生時(またはその後)に、例えば、疾患の発症後すぐに提供される。
本明細書に記載の方法に従って投与される造血前駆細胞集団は、1名以上のドナーから得られた同種の造血前駆細胞を含むことができる。「同種」とは、1名以上の同じ種の異なるドナーから得られ、1つ以上の座位における遺伝子が同一ではない造血前駆細胞または造血前駆細胞を含む生物学的試料を指す。例えば、対象に投与される造血前駆細胞集団は、1名以上の非血縁のドナー対象、または1名以上の同一でない同胞に由来してもよい。一部の場合において、同系の造血前駆細胞集団、例えば遺伝子的に同一の動物または同一の双生子から得られた造血前駆細胞集団を使用することができる。造血前駆細胞は自己細胞とすることができる。すなわち、造血前駆細胞は、対象から得られまたは単離されて同じ対象に投与され、すなわち、ドナーとレシピエントが同じである。
「有効量」という用語は、ヘモグロビン異常症における少なくとも1つ以上の徴候または症状の予防または軽減に必要な前駆細胞またはその後代の集団の量を指し、例えばヘモグロビン異常症を有する対象を処置するために、所望の効果の提供に十分な量の組成物に関連する。そのため、「治療有効量」という用語は、典型的な対象、例えばヘモグロビン異常症を有するまたはその危険性がある対象に投与した際に特定の効果を促進するのに十分である、前駆細胞または前駆細胞を含む組成物の量を指す。また、有効量は、疾患の症状発生の予防または遅延、疾患の症状の経過の変更(例えば、以下に限定されないが、疾患の症状の進行を遅らせること)、または疾患の症状の反転に十分な量も含むと考えられる。任意の所与の場合について、適切な「有効量」は、当業者により、通常の実験を用いて決定され得ると理解されている。
本明細書に記載の様々な態様での使用において、有効量の前駆細胞は、少なくとも102個の前駆細胞、少なくとも5×102個の前駆細胞、少なくとも103個の前駆細胞、少なくとも5×103個の前駆細胞、少なくとも104個の前駆細胞、少なくとも5×104個の前駆細胞、少なくとも105個の前駆細胞、少なくとも2×105個の前駆細胞、少なくとも3×105個の前駆細胞、少なくとも4×105個の前駆細胞、少なくとも5×105個の前駆細胞、少なくとも6×105個の前駆細胞、少なくとも7×105個の前駆細胞、少なくとも8×105個の前駆細胞、少なくとも9×105個の前駆細胞、少なくとも1×106個の前駆細胞、少なくとも2×106個の前駆細胞、少なくとも3×106個の前駆細胞、少なくとも4×106個の前駆細胞、少なくとも5×106個の前駆細胞、少なくとも6×106個の前駆細胞、少なくとも7×106個の前駆細胞、少なくとも8×106個の前駆細胞、少なくとも9×106個の前駆細胞、またはその倍数を含む。前駆細胞は、1名以上のドナーに由来してもよく、自己供給源から得てもよい。本明細書に記載の一部の例において、前駆細胞は、培養液中で増やしてからそれを必要とする対象に投与することができる。
「投与される」とは、前駆細胞組成物が、所望の部位で少なくとも部分的な当該細胞組成物の局在化をもたらす方法または経路によって、対象に送達されることを指す。細胞組成物は、対象において有効な処置をもたらす、すなわち、投与によって対象内の所望の位置に送達され、送達された組成物の少なくとも一部、すなわち少なくとも1×104細胞が、ある期間の間所望の部位に送達される、任意の適切な経路によって送達され得る。投与様式には、注射、注入、点滴、または摂取が含まれる。「注射」には、以下に限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、心室内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、脳脊髄内、及び胸骨内の注射及び注入が含まれる。一部の例において、経路は静脈内である。細胞の送達に関しては、注射または注入による投与を行うことができる。
細胞は全身的に投与することができる。「全身投与」「全身的に投与される」「末梢投与」及び「末梢的に投与される」という表現は、標的部位、組織、臓器に直接ではない形で前駆細胞集団を投与することを指し、当該投与の結果、前駆細胞集団は、対象の循環系に侵入することにより、代謝及び他の類似プロセスに供される。
ヘモグロビン異常症の処置用の組成物を含む処置の有効性は、熟練した臨床医によって決定され得る。ただし、一例として、機能的BCL11A及び機能的HbFのレベルのいずれか1つまたは全ての徴候または症状が有益な方法で変更された場合(例えば、BCL11Aが少なくとも10%低下し、及び/またはHbFが少なくとも10%増加した場合)、または疾患における他の臨床的に容認された症状またはマーカーが改善または緩和した場合、処置は「有効な処置」とみなされる。また、有効性は、個体が入院施設で評価された通りに悪化しないことや医療介入を必要としない(例えば、疾患の進行が停止している、または少なくとも遅くなっている)ことによっても測定され得る。これらの指標の測定方法は当業者に公知であり、及び/または本明細書に記載されている。処置には、個体または動物(一部の非限定的な例としては、ヒトまたは哺乳類が挙げられる)における任意の疾患処置が含まれ、以下のものが挙げられる:(1)疾患の抑制、例えば、疾患の進行の抑止もしくは緩徐化、または(2)疾患の軽減、例えば、疾患の後退をもたらすこと、及び(3)症状が発生する可能性の予防または低減。
本開示による処置は、個体における機能的BCL11Aの量を低下させ、及び/または機能的HbFの量を増加させることによって、ヘモグロビン異常症に関連する1つ以上の症状を緩和することができる。典型的にヘモグロビン異常症に関連する早期の徴候としては、例えば、疲労、息切れ、黄疸、成長の遅れ、思春期の遅発、関節、骨、及び胸部の痛み、脾臓及び肝臓の肥大が挙げられる。
キット
本開示は、本明細書に記載の方法を実施するためのキットを提供する。キットは、ゲノム標的化核酸、ゲノム標的化核酸をコードするポリヌクレオチド、部位特異的ポリペプチド、部位特異的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、及び/または本明細書に記載の方法の諸態様を実施するために必要な任意の核酸もしくはタンパク質性分子、またはこれらの任意の組合せのうちの1つ以上を含むことができる。
キットは、(1)ゲノム標的化核酸をコードするヌクレオチド配列を含むベクターと、(2)部位特異的ポリペプチドまたは部位特異的ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むベクターと、(3)ベクター(複数可)及びまたはポリペプチドを再構成及び/または希釈するための試薬と、を含むことができる。
キットは、(1)(i)ゲノム標的化核酸をコードするヌクレオチド配列及び(ii)部位特異的ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むベクターと、(2)ベクターを再構成及び/または希釈するための試薬と、を含むことができる。
上記キットのいずれかにおいて、キットは単一分子ガイドゲノム標的化核酸を含むことができる。上記キットのいずれかにおいて、キットは二重分子ゲノム標的化核酸を含むことができる。上記キットのいずれかにおいて、キットは2つ以上の二重分子ガイドまたは単一分子ガイドを含むことができる。キットは、核酸標的化核酸をコードするベクターを含むことができる。
上記キットのいずれかにおいて、キットは、所望の遺伝子改変をもたらすために挿入されるポリヌクレオチドをさらに含むことができる。
キットの構成要素は、別々の容器に入っていても単一の容器に一緒に入っていてもよい。
上述の任意のキットは、1つ以上の追加の試薬をさらに含むことができ、このような追加の試薬は、緩衝液、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを細胞に導入するための緩衝液、洗浄緩衝液、対照試薬、対照ベクター、対照RNAポリヌクレオチド、DNAからポリペプチドをin vitro生成するための試薬、シークエンシング用のDNAアダプターなどから選択される。緩衝液は、安定化緩衝液、再構成緩衝液、希釈緩衝液などであり得る。また、キットは、オンターゲット結合もしくはエンドヌクレアーゼによるDNAの切断を容易にするもしくは向上させるために、または標的化の特異性を改善するために使用され得る、1つ以上の構成要素も含むことができる。
上述の構成要素に加えて、キットは、当該方法の実施のためにキットの構成要素を使用するための説明書をさらに含むことができる。当該方法を実施する説明書は、好適な記録媒体に記録することができる。例えば、説明書は、紙またはプラスチックなどの基材に印刷することができる。説明書は、添付文書としてキット内、キットまたはその構成要素の容器のラベル内(すなわち、パッケージまたはサブパッケージに関連して)などに存在してもよい。説明書は、好適なコンピューター可読記憶媒体(例えば、CD−ROM、ディスケット、フラッシュドライブなど)上に存在する電子記憶データファイルとして存在してもよい。一部の場合において、実際の説明書はキット内に存在するのではなく、(例えば、インターネット経由で)リモートソースから説明書を得る手段が提供されてもよい。この場合の一例としては、説明書を見ることができる、及び/またはダウンロードすることができるウェブアドレスを含むキットがある。説明書と同様に、説明書を得るこの手段が好適な基材に記録されていてもよい。
ガイドRNAの製剤化
本開示のガイドRNAは、医薬的に許容される賦形剤(例えば、担体、溶媒、安定化剤、アジュバント、希釈剤など)を用いて、特定の投与様式及び剤形に応じて製剤化することができる。ガイドRNA組成物は、生理的適合性のpHを達成するように製剤化することができ、製剤及び投与経路に応じて、約3のpH〜約11のpH、約pH3〜約pH7を範囲とすることができる。一部の場合において、pHは約pH5.0〜約pH8の範囲に調整することができる。一部の場合において、当該組成物は、治療有効量の本明細書に記載の少なくとも1つの化合物を、1つ以上の医薬的に許容される賦形剤と共に含むことができる。任意選択で、当該組成物は、本明細書に記載の化合物の組合せを含むことができ、または細菌成長の処置または予防に有用な第2の活性成分(例えば、以下に限定されないが、抗菌剤または抗微生物剤)を含むことができ、または本開示の試薬の組合せを含むことができる。
好適な賦形剤としては、例えば、大型でゆっくりと代謝される巨大分子、例えばタンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、及び不活性ウイルス粒子を含む担体分子が挙げられる。他の例示的な賦形剤としては、抗酸化剤(例えば、以下に限定されないが、アスコルビン酸)、キレート剤(例えば、以下に限定されないが、EDTA)、炭水化物(例えば、以下に限定されないが、デキストリン、ヒドロキシアルキルセルロース、及びヒドロキシアルキルメチルセルロース)、ステアリン酸、液体(例えば、以下に限定されないが、油、水、食塩水、グリセロール及びエタノール)、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質などが挙げられ得る。
考えられる他の治療アプローチ
遺伝子編集は、特定の配列を標的化するように操作されたヌクレアーゼを用いて行うことができる。現時点では、4つの主要なタイプのヌクレアーゼが存在する:メガヌクレアーゼ及びその誘導体、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、及びCRISPR−Cas9ヌクレアーゼシステム。ヌクレアーゼプラットフォームは、とりわけZFN及びTALENの特異性がタンパク質−DNA相互作用を通じたものである一方で、Cas9を主に誘導するのはRNA−DNA相互作用であることから、設計の難しさ、標的化密度、及び作用様式が様々である。また、Cas9切断は隣接モチーフであるPAMも必要とし、PAMは異なるCRISPRシステム間で異なる。Streptococcus pyogenesからのCas9はNGG PAMを用いて切断し、Neisseria meningitidisからのCRISPRは、NNNNGATT、NNNNNGTTT、及びNNNNGCTTを含むPAMをもつ部位で切断し得る。他の複数のCas9オルソログは、代替PAMに隣接するプロトスペーサーを標的化する。
Cas9などのCRISPRエンドヌクレアーゼは、本開示の方法で使用することができる。ただし、本明細書に記載の教示内容(例えば、治療標的部位)は、他の形態のエンドヌクレアーゼ、例えば、ZFN、TALEN、HE、もしくはMegaTALへの適用、またはヌクレアーゼの組合せを用いた適用がされ得ると考えられる。しかし、本開示の教示内容をこのようなエンドヌクレアーゼに適用するには、特定の部位に向けられたタンパク質の操作がとりわけ必要になると考えられる。
追加の結合ドメインをCas9タンパク質と融合させて特異性を増加させることができる。このようなコンストラクトの標的部位は、特定されたgRNA指定部位にマッピングするが、例えばジンクフィンガードメインについては、追加の結合モチーフが必要となると考えられる。Mega−TALの場合において、メガヌクレアーゼはTALE DNA結合ドメインと融合させることができる。メガヌクレアーゼドメインは特異性を増加させ、切断をもたらすことができる。同様に、不活性または死状態のCas9(dCas9)は切断ドメインと融合させることができ、この融合DNA結合ドメインのためのsgRNA/Cas9標的部位及び隣接する結合部位が必要となり得る。これは、追加の結合部位なしで結合を減少させるには、おそらくは触媒不活性化に加えてdCas9のいくらかのタンパク質操作が必要になると考えられる。
ジンクフィンガーヌクレアーゼ
ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、II型エンドヌクレアーゼFokIの触媒ドメインに結合している遺伝子操作ジンクフィンガーDNA結合ドメインから構成されたモジュラータンパク質である。FokIは二量体としてのみ機能することから、ZFNの対は、対向DNA鎖上の同族の標的「半部位(half−site)」配列に対し、触媒活性のFokI二量体が形成できるようにするための正確な間隔を開けて結合するように操作されなければならない。それ自体は配列特異性を有しないFokIドメインが二量体化すると、ZFN半部位間でゲノム編集の開始ステップとしてのDNA2本鎖切断がもたらされる。
各ZFNのDNA結合ドメインは、典型的にはCys2−His2豊富アーキテクチャーの3〜6つのジンクフィンガーから構成され、各フィンガーは主として標的DNA配列の1本鎖上にあるヌクレオチドのトリプレットを認識するが、第4のヌクレオチドとの交差鎖相互作用も重要であり得る。フィンガーのアミノ酸のDNAとの主要な接触を行う位置が変更されると、所与のフィンガーの配列特異性が変更される。このようにして、4フィンガーZnフィンガータンパク質は、12bpの標的配列を選択的に認識し、このとき標的配列は各フィンガーがもたらすトリプレット選好性が合成されたものであるが、トリプレット選好性は様々な程度で近隣のフィンガーによる影響を受ける可能性がある。ZFNの重要な態様は、単に個々のフィンガーを改変することにより、ほとんどあらゆるゲノムアドレスに対し容易に再標的化できることである。ただし、これを良好に行うためにはかなりの専門的技術が必要となる。ZFNのほとんどの用途において、4〜6フィンガーのタンパク質が使用され、これらはそれぞれ12〜18bpを認識する。そのため、典型的には、ZFNの対は半部位間の典型的な5〜7bpのスペーサーを含めない24〜36bpの組み合わされた標的配列を認識することになる。結合部位は、15〜17bpを含めたより大きなスペーサーでさらに分離することができる。設計プロセス中に反復配列または遺伝子相同体が除外されるとすれば、この長さの標的配列はヒトゲノム内において一意である可能性がある。それでも、ZFNタンパク質−DNA相互作用は特異性において絶対的ではないため、2つのZFN間のヘテロ二量体としての、またはZFNのいずれか一方のホモ二量体としてのオフターゲット結合及び切断事象は生じる。後者の可能性は、FokIドメインの二量体化界面を操作して「プラス」及び「マイナス」バリアントを創出することによって効果的に取り除くことができる。このバリアントは偏性ヘテロ二量体バリアントとしても知られ、相互にのみ二量体化し、自ら同士では二量体化しない。強制的に偏性ヘテロ二量体にすることで、ホモ二量体の形成が防止される。これはZFNの特異性だけでなく、このFokIバリアントを採用する他の任意のヌクレアーゼの特異性も大きく向上させた。
様々なZFNベースシステムが当技術分野で説明されており、その改変が定常的に報告されており、多数の文献がZFNの設計の指針に使用される規則及びパラメーターを記載している。例えば、Segal et al.,Proc Natl Acad Sci USA 96(6):2758−63(1999);Dreier B et al.,J Mol Biol.303(4):489−502(2000);Liu Q et al.,J Biol Chem.277(6):3850−6(2002);Dreier et al.,J Biol Chem 280(42):35588−97(2005);及びDreier et al.,J Biol Chem.276(31):29466−78(2001)を参照。
転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)
TALENはもう1つのフォーマットのモジュラーヌクレアーゼに相当し、これを用いると、ZFNと同様に、操作されたDNA結合ドメインはFokIヌクレアーゼドメインに結合し、TALENの対が同時並行的に作動して標的化されたDNA切断を達成する。ZFNとの主な違いは、DNA結合ドメインの性質や、関連する標的DNA配列認識特性である。TALEN DNA結合ドメインはTALEタンパク質に由来するが、TALEタンパク質は元々は植物の細菌病原体Xanthomonas種において説明されていた。TALEは、33〜35アミノ酸リピートの直列アレイから構成され、各リピートは、典型的には長さ最大20bpの標的DNA配列(標的配列の全長は最大40bpとなる)内で単一の塩基対を認識する。各リピートのヌクレオチド特異性は、位置12及び13にちょうど2つのアミノ酸を含む反復可変2残基(RVD)によって決定される。塩基グアニン、アデニン、シトシン、及びチミンは、それぞれ4つのRVD:Asn−Asn、Asn−Ile、His−Asp、及びAsn−Glyによって主に認識される。これは、ジンクフィンガーの場合よりもはるかに簡略な認識コードを構成するため、ヌクレアーゼ設計に関してはジンクフィンガーをしのぐ優位性に相当する。それでもZFNと同様、TALENのタンパク質−DNA相互作用は特異性において絶対的ではないため、TALENも、FokIドメインの偏性ヘテロ二量体バリアントの使用による恩恵を受けてオフターゲット活性を低減している。
触媒機能が不活性化されている、FokIドメインの追加のバリアントが創出されている。TALENまたはZFNいずれかの対の半分が不活性のFokIドメインを含有する場合、DSBではなく1本鎖DNA切断(ニッキング)のみが標的部位で生じることになる。この結果は、CRISPR/Cas9/Cpf1の「ニッカーゼ」変異体(Cas9切断ドメインのうちの1つが不活性化されている)の使用に匹敵するものである。DNAニックはHDRによるゲノム編集の推進に使用することができるが、DSBを用いた場合よりも効率は低い。主な利点は、オフターゲットニックは、NHEJ媒介の誤修復を被りやすいDSBとは異なり、迅速かつ正確に修復される点である。
様々なTALENベースシステムが当技術分野で説明されており、その改変が定常的に報告されている。例えば、Boch,Science 326(5959):1509−12(2009);Mak et al.,Science 335(6069):716−9(2012);及びMoscou et al.,Science 326(5959):1501(2009)を参照。「ゴールデンゲート」プラットフォームまたはクローニングスキームに基づいたTALENの使用は、複数のグループによって説明されている。例えば、Cermak et al.,Nucleic Acids Res.39(12):e82(2011);Li et al.,Nucleic Acids Res.39(14):6315−25(2011);Weber et al.,PLoS One.6(2):e16765(2011);Wang et al.,J Genet Genomics 41(6):339−47,Epub 2014 May 17(2014);及びCermak T et al.,Methods Mol Biol.1239:133−59(2015)を参照。
ホーミングエンドヌクレアーゼ
ホーミングエンドヌクレアーゼ(HE)は、長い認識配列(14〜44塩基対)を有し、高い特異性で(しばしばゲノム内で一意の部位で)DNAを切断する配列特異的エンドヌクレアーゼである。HEは、構造によって分類される少なくとも6つの既知のファミリーが存在し、これにはLAGLIDADG(配列番号71,949)、GIY−YIG、His−Cisボックス、H−N−H、PD−(D/E)xK、及びVsr様が含まれ、これらは真核生物、原生生物、細菌、古細菌、シアノバクテリア、及びファージを含めた広範囲の宿主に由来する。ZFN及びTALENと同様、HEは、ゲノム編集の最初のステップとして標的部位でDSBを創出するのに使用することができる。加えて、一部の天然及び操作されたHEは、DNAの1本鎖のみを切断することにより部位特異的ニッカーゼとして機能する。HEは、大きな標的配列やHEがもたらす特異性により、部位特異的DSBの創出において魅力的な候補となっている。
様々なHEベースシステムが当技術分野で説明されており、その改変が定常的に報告されている。例えば、Steentoft et al.,Glycobiology 24(8):663−80(2014);Belfort and Bonocora,Methods Mol Biol.1123:1−26(2014);Hafez and Hausner,Genome 55(8):553−69(2012)による概説、及びこれらの文献内で引用されている文献を参照。
MegaTAL/Tev−mTALEN/MegaTev
ハイブリッドヌクレアーゼのさらなる例として、MegaTALプラットフォーム及びTev−mTALENプラットフォームは、TALE DNA結合ドメイン及び触媒活性HEの融合物を使用し、TALEの調節可能なDNA結合及び特異性と、HEの切断配列特異性との両方を利用している。例えば、Boissel et al.,NAR 42:2591−2601(2014);Kleinstiver et al.,G3 4:1155−65(2014);及びBoissel and Scharenberg,Methods Mol.Biol.1239:171−96(2015)を参照。
さらなるバリエーションにおいて、MegaTevアーキテクチャーは、メガヌクレアーゼ(Mega)とGIY−YIGホーミングエンドヌクレアーゼI−TevI(Tev)に由来するヌクレアーゼドメインとの融合物である。2つの活性部位はDNA基質上で約30bp離れて位置し、非適合性の付着末端を有する2つのDSBを産生する。例えば、Wolfs et al.,NAR 42,8816−29(2014)を参照。本明細書に記載の標的化されたゲノム改変の達成には、他の組合せの既存ヌクレアーゼベースのアプローチが進化し、有用となることが予測される。
dCas9−FokIまたはdCpf1−Fok1及び他のヌクレアーゼ
上述のヌクレアーゼプラットフォームの構造的特性及び機能的特性を組み合わせることで、固有の欠点のいくつかを潜在的に克服し得るゲノム編集へのさらなるアプローチがもたらされる。1つの例として、典型的には、CRISPRゲノム編集システムは単一のCas9エンドヌクレアーゼを使用してDSBを創出する。標的化の特異性は、標的DNA(加えて、S.pyogenesからのCas9の場合には隣接するNAGまたはNGG PAM配列における追加の2塩基)とのワトソン・クリック塩基対合を経る、ガイドRNA内の20または24のヌクレオチド配列によって推進される。このような配列はヒトゲノム内で一意となる程度に十分長いが、RNA/DNA相互作用の特異性は絶対的ではなく、特に標的配列の5’半分において顕著な混乱状態が認容され、特異性を推進する塩基の数が事実上低減される。これに対する1つの解決法は、Cas9またはCpf1の触媒機能を完全に不活性化し(RNAに誘導されるDNA結合機能のみ保持し)、代わりにFokIドメインを不活性化Cas9に融合させることである。例えば、Tsai et al.,Nature Biotech 32:569−76(2014);及びGuilinger et al.,Nature Biotech.32:577−82(2014)を参照。FokIが触媒活性になるには二量化しなければならないため、2つのFokI融合物を接近状態で繋留して二量体を形成しDNAを切断させるには、2つのガイドRNAが必要となる。これにより、組み合わされた標的部位における塩基の数が本質的に倍増し、よってCRISPRベースシステムによる標的化の厳密性が上昇する。
さらなる例として、TALE DNA結合ドメインと触媒活性HE(例えば、I−TevI)との融合は、オフターゲット切断がさらに低減され得ることを期待して、TALEの調節可能なDNA結合及び特異性と、HEの切断配列特異性との両方を利用している。
シークエンシングによるオンターゲット及びオフターゲットの変異検出
オンターゲット部位及び推定上のオフターゲット部位をシークエンシングするため、適切な増幅プライマーが特定され、このプライマーによって反応を設定し、ゲノムDNAは、トランスフェクションから3日後の処理された細胞からQuickExtract DNA抽出溶液(Epicentre)を用いて回収したものを用いた。増幅プライマーは、アダプターが隣接する遺伝子特異的部分を含有する。フォワードプライマーの5’末端は、改変フォワード(リード1)プライマー結合部位を含む。リバースプライマーの5’末端は、組み合わせられた改変リバース(リード2)及びバーコードプライマー結合部位を逆向きで含有する。個々のPCR反応は、アガロースゲル上で分離することによって検証され、次に精製し再増幅する。第2ラウンドのフォワードプライマーは、Illumina P5配列の次に改変フォワード(リード1)プライマー結合部位の一部を含有する。第2ラウンドのリバースプライマーは、Illumina P7配列(5’末端)の次に6塩基バーコードならびに組み合わされた改変リバース(リード2)及びバーコードプライマー結合部位を含有する。第2ラウンドの増幅もアガロースゲル上でチェックし、次に精製し、NanoDrop分光光度計を用いて定量化した。増幅産物をプールして濃度をマッチさせ、次にライブラリー調製及びIllumina Miseq機器によるシークエンシングのためにEmory Integrated Genomic coreに提出した。
シークエンシングリードをバーコードによって並び替え、次にバイオインフォマティクスにより各産物に与えられた参照配列に対し整列させた。整列させたシークエンシングリードにおける挿入及び欠失の比率を、先述のソフトウェアを用いて推定切断部位の領域内で検出した。例えば、Lin et al.,Nucleic Acids Res.,42:7473−7485(2014)を参照。次に、このウィンドウ内で検出した挿入及び欠失のレベルを、模擬トランスフェクション細胞から単離したゲノムDNAの同じ位置で見られたレベルと比較して、シークエンシングアーティファクトの影響を最小化した。
変異検出アッセイ
Cas9及びガイドRNAの組合せにおけるオンターゲット及びオフターゲット切断活性を、NHEJによる2本鎖切断の不完全修復から得られる変異率を用いて測定した。
オンターゲット座位の増幅にはAccuPrime Taq DNA Polymerase High Fidelty(Life Technologies,Carlsbad,CA)を用いて、製造業者の指示に従って40サイクル(94℃を30秒;52〜60℃を30秒;68℃を60秒)、1μlの細胞可溶化物と1μlのそれぞれ10μMの増幅プライマーとを含有する50μl反応液中で行った。製造業者のプロトコルに従ってT7EI変異検出アッセイを実施し[Reyon et al.,Nat.Biotechnol.,30:460−465(2012)]、2%アガロースゲル上で消化物を分離し、ImageJを用いて定量化した[Guschin et al.,Methods Mol.Biol.,649:247−256(2010)]。当該アッセイは、細胞のバルク集団における挿入/欠失(「インデル」)のパーセンテージを測定する。
本発明の方法及び組成物
したがって、本開示は、特に以下の非限定的な発明に関する。第1の方法、方法1において、本開示では、ヒト細胞内のBCL11A遺伝子をゲノム編集によって編集する方法であって、ヒト細胞に1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを導入して、BCL11A遺伝子またはBCL11A遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の中またはその付近で1つ以上の1本鎖切断(SSB)または2本鎖切断(DSB)を起こし、その結果BCL11A遺伝子の転写制御配列の永続的な欠失、修飾、または不活性化をもたらすステップを含む方法が提供される。
別の方法、方法2において、本開示では、方法1で提供される、ヒト細胞内のBCL11A遺伝子をゲノム編集によって編集する方法であって、転写制御配列がBCL11A遺伝子の2番目のイントロン中に位置する方法が提供される。
別の方法、方法3において、本開示では、方法1または2で提供される、ヒト細胞内のBCL11A遺伝子をゲノム編集によって編集する方法であって、転写制御配列がBCL11A遺伝子の+58 DNA高感受性部位(DHS)中に位置する方法が提供される。
別の方法、方法4において、本開示では、ヘモグロビン異常症を有する患者を処置するためのex vivoの方法であって、患者特異的人工多能性幹細胞(iPSC)を創出するステップと、BCL11A遺伝子またはiPSCのBCL11A遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の中またはその付近で編集するステップと、ゲノム編集されたiPSCを造血前駆細胞に分化させるステップと、造血前駆細胞を患者に植え込むステップと、を含む方法が提供される。
別の方法、方法5において、本開示では、方法4で提供される、ヘモグロビン異常症を有する患者を処置するためのex vivoの方法であって、創出するステップが、患者から体細胞を単離することと、体細胞に多能性関連遺伝子のセットを導入して、体細胞が多能性幹細胞になるように誘導することと、を含む方法が提供される。
別の方法、方法6において、本開示では、方法5で提供される、ヘモグロビン異常症を有する患者を処置するためのex vivoの方法であって、体細胞が線維芽細胞である方法が提供される。
別の方法、方法7において、本開示では、方法5または6で提供される、ヘモグロビン異常症を有する患者を処置するためのex vivoの方法であって、多能性関連遺伝子のセットがOCT4、SOX2、KLF4、Lin28、NANOG、及びcMYCからなる群から選択される遺伝子のうちの1つ以上である方法が提供される。
別の方法、方法8において、本開示では、方法4〜7のいずれか1つで提供される、ヘモグロビン異常症を有する患者を処置するためのex vivoの方法であって、編集するステップが、iPSCに1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを導入して、BCL11A遺伝子またはBCL11A遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の中またはその付近で1つ以上の1本鎖切断(SSB)または2本鎖切断(DSB)を起こし、その結果BCL11A遺伝子の転写制御配列の永続的な欠失、修飾、または不活性化をもたらすことを含む方法が提供される。
別の方法、方法9において、本開示では、方法4〜8のいずれか1つで提供される、ヘモグロビン異常症を有する患者を処置するためのex vivoの方法であって、分化させるステップが、ゲノム編集されたiPSCを造血前駆細胞に分化させるために以下:低分子の組合せを用いた処置、主要転写因子の送達、主要転写因子をコードするmRNAの送達、または転写因子をコードするmRNAの送達のうちの1つ以上を含む方法が提供される。
別の方法、方法10において、本開示では、方法4〜9のいずれか1つで提供される、ヘモグロビン異常症を有する患者を処置するためのex vivoの方法であって、植え込むステップが、移植、局所注射、全身注入、またはこれらの組合せによって造血前駆細胞を患者に植え込むことを含む方法が提供される。
別の方法、方法11において、本開示では、ヘモグロビン異常症を有する患者を処置するためのex vivoの方法であって、患者から間葉系幹細胞を単離するステップと、BCL11A遺伝子または間葉系幹細胞のBCL11A遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の中またはその付近で編集するステップと、ゲノム編集された間葉系幹細胞を造血前駆細胞に分化させるステップと、造血前駆細胞を患者に植え込むステップと、を含む方法が提供される。
別の方法、方法12において、本開示では、方法11で提供される、ヘモグロビン異常症を有する患者を処置するためのex vivoの方法であって、間葉系幹細胞が患者の骨髄または末梢血から単離される方法が提供される。
別の方法、方法13において、本開示では、方法11または12で提供される、ヘモグロビン異常症を有する患者を処置するためのex vivoの方法であって、単離するステップが、骨髄の吸引及び密度勾配遠心分離媒体を用いた間葉系細胞の単離を含む方法が提供される。
別の方法、方法14において、本開示では、方法11〜13のいずれか1つで提供される、ヘモグロビン異常症を有する患者を処置するためのex vivoの方法であって、編集するステップが、間葉系幹細胞に1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを導入して、BCL11A遺伝子またはBCL11A遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の中またはその付近で1つ以上の1本鎖切断(SSB)または2本鎖切断(DSB)を起こし、その結果BCL11A遺伝子の転写制御配列の永続的な欠失、修飾、または不活性化をもたらすことを含む方法が提供される。
別の方法、方法15において、本開示では、方法11〜14のいずれか1つで提供される、ヘモグロビン異常症を有する患者を処置するためのex vivoの方法であって、分化させるステップが、ゲノム編集された間葉系幹細胞を造血前駆細胞に分化させるために以下:低分子の組合せを用いた処置、主要転写因子の送達、主要転写因子をコードするmRNAの送達、または転写因子をコードするmRNAの送達のうちの1つ以上を含む方法が提供される。
別の方法、方法16において、本開示では、方法11〜15のいずれか1つで提供される、ヘモグロビン異常症を有する患者を処置するためのex vivoの方法であって、植え込むステップが、移植、局所注射、全身注入、またはこれらの組合せによって造血前駆細胞を患者に植え込むことを含む方法が提供される。
別の方法、方法17において、本開示では、ヘモグロビン異常症を有する患者を処置するためのex vivoの方法であって、患者から造血前駆細胞を単離するステップと、BCL11A遺伝子または造血前駆細胞のBCL11A遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の中またはその付近で編集するステップと、ゲノム編集された造血前駆細胞を患者に植え込むステップと、を含む方法が提供される。
別の方法、方法18において、本開示では、方法17で提供される、ヘモグロビン異常症を有する患者を処置するためのex vivoの方法であって、単離するステップの前に、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)を用いて患者を処置することをさらに含む方法が提供される。
別の方法、方法19において、本開示では、方法18で提供される、ヘモグロビン異常症を有する患者を処置するためのex vivoの方法であって、処置するステップがプレリキサフォルと組み合わせて実施される方法が提供される。
別の方法、方法20において、本開示では、方法17〜19のいずれか1つで提供される、ヘモグロビン異常症を有する患者を処置するためのex vivoの方法であって、単離するステップがCD34+細胞を単離することを含む方法が提供される。
別の方法、方法21において、本開示では、方法17〜20のいずれか1つで提供される、ヘモグロビン異常症を有する患者を処置するためのex vivoの方法であって、編集するステップが、造血前駆細胞に1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを導入して、BCL11A遺伝子またはBCL11A遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の中またはその付近で1つ以上の1本鎖切断(SSB)または2本鎖切断(DSB)を起こし、その結果BCL11A遺伝子の転写制御配列の永続的な欠失、修飾、または不活性化をもたらすことを含む方法が提供される。
別の方法、方法22において、本開示では、方法17〜21のいずれか1つで提供される、ヘモグロビン異常症を有する患者を処置するためのex vivoの方法であって、植え込むステップが、移植、局所注射、全身注入、またはこれらの組合せによってゲノム編集された造血前駆細胞を患者に植え込むことを含む方法が提供される。
別の方法、方法23において、本開示では、ヘモグロビン異常症を有する患者を処置するためのin vivoの方法であって、患者の細胞内のBCL11A遺伝子を編集するステップを含む方法が提供される。
別の方法、方法24において、本開示では、方法23で提供される、ヘモグロビン異常症を有する患者を処置するためのin vivoの方法であって、編集するステップが、細胞に1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを導入して、BCL11A遺伝子またはBCL11A遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の中またはその付近で1つ以上の1本鎖切断(SSB)または2本鎖切断(DSB)を起こし、その結果BCL11A遺伝子の転写制御の永続的な欠失、修飾、または不活性化をもたらすことを含む方法が提供される。
別の方法、方法25において、本開示では、方法23または24で提供される、ヘモグロビン異常症を有する患者を処置するためのin vivoの方法であって、細胞が骨髄細胞、造血前駆細胞、またはCD34+細胞である方法が提供される。
別の方法、方法26において、本開示では、1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼがCas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1及びCsx12としても知られる)、Cas100、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、またはCpf1エンドヌクレアーゼ、これらの相同体、これらの天然分子の組換え、これらのコドン最適化、またはこれらの改変バージョン、及びこれらの組合せである、方法1、8、14、21、及び24のいずれか1つに記載の方法が提供される。
別の方法、方法27において、本開示では、方法26で提供される方法であって、細胞に、1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを導入することを含む方法が提供される。
別の方法、方法28において、本開示では、方法26または27で提供される方法であって、細胞に、1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼをコードする1つ以上のリボ核酸(RNA)を導入することを含む方法が提供される。
別の方法、方法29において、本開示では、方法27または28で提供される方法であって、1つ以上のポリヌクレオチドまたは1つ以上のRNAが、1つ以上の改変ポリヌクレオチドまたは1つ以上の改変RNAである方法が提供される。
別の方法、方法30において、本開示では、方法26で提供される方法であって、1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼが1つ以上のタンパク質またはポリペプチドである方法が提供される。
別の方法、方法31において、本開示では、方法30で提供される方法であって、1つ以上のタンパク質またはポリペプチドが、N末端、C末端、またはN末端及びC末端の両方で1つ以上の核局在化シグナル(NLS)に隣接している方法が提供される。
別の方法、方法32において、本開示では、方法31で提供される方法であって、1つ以上のタンパク質またはポリペプチドが、2つのNLS(一方のNLSはN末端に位置し、第2のNLSはC末端に位置する)に隣接している方法が提供される。
別の方法、方法33において、本開示では、方法31〜32のいずれか1つで提供される方法であって、1つ以上のNLSがSV40 NLSである方法が提供される。
別の方法、方法34において、本開示では、方法1〜33のいずれか1つで提供される方法であって、細胞に、1つ以上のガイドリボ核酸(gRNA)を導入することをさらに含む方法が提供される。
別の方法、方法35において、本開示では、方法34で提供される方法であって、1つ以上のgRNAが単一分子ガイドRNA(sgRNA)である方法が提供される。
別の方法、方法36において、本開示では、方法34または35で提供される方法であって、1つ以上のgRNAまたは1つ以上のsgRNAが、1つ以上の改変gRNAまたは1つ以上の改変sgRNAである方法が提供される。
別の方法、方法37において、本開示では、方法36で提供される方法であって、1つ以上の改変sgRNAが、3つの2’−O−メチル−ホスホロチオアート残基を、それぞれの5’及び3’末端に、またはその付近に含む方法が提供される。
別の方法、方法38において、本開示では、方法37で提供される方法であって、改変sgRNAが配列番号71,959の核酸配列である方法が提供される。
別の方法、方法39において、本開示では、方法34〜38で提供される方法であって、1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼが、1つ以上のgRNAまたは1つ以上のsgRNAと予め複合体化されて1つ以上のリボ核タンパク質(RNP)を形成する方法が提供される。
別の方法、方法40において、本開示では、方法39で提供される方法であって、RNP内のsgRNA:DNAエンドヌクレアーゼの重量比が1:1である方法が提供される。
別の方法、方法41において、本開示では、方法40で提供される方法であって、sgRNAが配列番号71,959の核酸配列を含み、DNAエンドヌクレアーゼがN末端SV40 NLS及びC末端SV40 NLSを含むS.pyogenes Cas9であり、sgRNA:DNAエンドヌクレアーゼの重量比が1:1である方法が提供される。
別の方法、方法42において、本開示では、方法1〜41のいずれか1つで提供される方法であって、細胞に、改変転写制御配列を含む野生型BCL11A遺伝子またはcDNAを含むポリヌクレオチドドナーテンプレートを導入することをさらに含む方法が提供される。
別の方法、方法43において、本開示では、方法1、8、14、21、または24のいずれか1つで提供される方法であって、当該方法が、細胞に、1つのガイドリボ核酸(gRNA)と、改変転写制御配列を含む野生型BCL11A遺伝子またはcDNAを含むポリヌクレオチドドナーテンプレートとを導入することをさらに含み、1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼが、1つ以上のCas9またはCpf1エンドヌクレアーゼであって、BCL11A遺伝子またはBCL11A遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の中またはその付近の座位に1本鎖切断(SSB)または2本鎖切断(DSB)を起こし、当該座位でポリヌクレオチドドナーテンプレートからの新たな配列を染色体DNAに挿入することを容易にして、その結果、当該座位に近接する染色体DNAの転写制御配列の永続的な挿入、修飾、または不活性化をもたらす、1つ以上のCas9またはCpf1エンドヌクレアーゼであり、gRNAが当該座位のセグメントに対し相補的であるスペーサー配列を含む方法が提供される。
別の方法、方法44において、本開示では、方法43で提供される方法であって、近接とは、座位の上流及び下流両方のヌクレオチドを意味する方法が提供される。
別の方法、方法45において、本開示では、方法1、8、14、21、または24のいずれか1つで提供される方法であって、当該方法が、細胞に、1つ以上のガイドリボ核酸(gRNA)と、改変転写制御配列を含む野生型BCL11A遺伝子またはcDNAを含むポリヌクレオチドドナーテンプレートとを導入することをさらに含み、1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼが、1つ以上のCas9またはCpf1エンドヌクレアーゼであって、BCL11A遺伝子またはBCL11A遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の中またはその付近で、一対の1本鎖切断(SSB)または2本鎖切断(DSB)を、第1の切断を5’座位で、第2の切断を3’座位で起こしまたは創出し、5’座位と3’座位との間でポリヌクレオチドドナーテンプレートからの新たな配列を染色体DNAに挿入することを容易にして、その結果、5’座位と3’座位との間で染色体DNAの転写制御配列における永続的な挿入、修飾、または不活性化をもたらす、1つ以上のCas9またはCpf1エンドヌクレアーゼである方法が提供される。
別の方法、方法46において、本開示では、方法45で提供される方法であって、1つのgRNAが一対のSSBまたはDSBを創出する方法が提供される。
別の方法、方法47において、本開示では、方法45で提供される方法であって、1つのgRNAが、5’座位または3’座位のいずれかに対し相補的であるスペーサー配列を含む方法が提供される。
別の方法、方法48において、本開示では、方法45で提供される方法であって、当該方法が第1のガイドRNA及び第2のガイドRNAを含み、第1のガイドRNAが5’座位のセグメントに対し相補的であるスペーサー配列を含み、第2のガイドRNAが3’座位のセグメントに対し相補的であるスペーサー配列を含む方法が提供される。
別の方法、方法49において、本開示では、方法43〜48のいずれか1つで提供される方法であって、1つまたは2つのgRNAが1つまたは2つの単一分子ガイドRNA(sgRNA)である方法が提供される。
別の方法、方法50において、本開示では、方法43〜49のいずれか1つで提供される方法であって、1つもしくは2つのgRNAまたは1つもしくは2つのsgRNAが、1つもしくは2つの改変gRNAまたは1つもしくは2つの改変sgRNAである方法が提供される。
別の方法、方法51において、本開示では、方法50で提供される方法であって、1つの改変sgRNAが、3つの2’−O−メチル−ホスホロチオアート残基を、それぞれの5’及び3’末端に、またはその付近に含む方法が提供される。
別の方法、方法52において、本開示では、方法51で提供される方法であって、1つの改変sgRNAが配列番号71,959の核酸配列である方法が提供される。
別の方法、方法53において、本開示では、方法43〜52のいずれか1つで提供される方法であって、1つ以上のCas9エンドヌクレアーゼが、1つもしくは2つのgRNAまたは1つもしくは2つのsgRNAと予め複合体化されて1つ以上のリボ核タンパク質(RNP)を形成する方法が提供される。
別の方法、方法54において、本開示では、方法53で提供される方法であって、1つ以上のCas9エンドヌクレアーゼが、N末端、C末端、またはN末端及びC末端の両方で1つ以上の核局在化シグナル(NLS)に隣接している方法が提供される。
別の方法、方法55において、本開示では、方法54で提供される方法であって、1つ以上のCas9エンドヌクレアーゼが、2つのNLS(一方のNLSはN末端に位置し、第2のNLSはC末端に位置する)に隣接している方法が提供される。
別の方法、方法56において、本開示では、方法54〜55のいずれか1つで提供される方法であって、1つ以上のNLSがSV40 NLSである方法が提供される。
別の方法、方法57において、本開示では、方法53で提供される方法であって、RNP内のsgRNA:Cas9エンドヌクレアーゼの重量比が1:1である方法が提供される。
別の方法、方法58において、本開示では、方法53で提供される方法であって、1つのsgRNAが配列番号71,959の核酸配列を含み、Cas9エンドヌクレアーゼがN末端SV40 NLS及びC末端SV40 NLSを含むS.pyogenes Cas9であり、sgRNA:Cas9エンドヌクレアーゼの重量比が1:1である方法が提供される。
別の方法、方法59において、本開示では、方法43〜58のいずれか1つで提供される方法であって、ドナーテンプレートが1本鎖または2本鎖である方法が提供される。
別の方法、方法60において、本開示では、方法42〜59のいずれか1つで提供される方法であって、改変転写制御配列がBCL11A遺伝子の2番目のイントロン中に位置する方法が提供される。
別の方法、方法61において、本開示では、方法42〜59のいずれか1つで提供される方法であって、改変転写制御配列がBCL11A遺伝子の+58 DNA高感受性部位(DHS)中に位置する方法が提供される。
別の方法、方法62において、本開示では、方法42〜61のいずれか1つで提供される方法であって、挿入が相同組換え修復(HDR)によるものである方法が提供される。
別の方法、方法63において、本開示では、方法8、14、21、24、43、及び45のいずれか1つで提供される方法であって、SSB、DSB、または5’座位及び3’座位が、BCL11A遺伝子の2番目のイントロン中に位置する方法が提供される。
別の方法、方法64において、本開示では、方法8、14、21、24、43、及び45のいずれか1つで提供される方法であって、SSB、DSB、または5’DSB及び3’DSBが、BCL11A遺伝子の+58 DNA高感受性部位(DHS)中に位置する方法が提供される。
別の方法、方法65において、本開示では、方法1、8、14、21、または24のいずれか1つで提供される方法であって、当該方法が、細胞に、1つ以上のガイドリボ核酸(gRNA)を導入することをさらに含み、1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼが、1つ以上のCas9またはCpf1エンドヌクレアーゼであって、BCL11A遺伝子またはBCL11A遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の中またはその付近で、一対の1本鎖切断(SSB)または2本鎖切断(DSB)を、第1のSSBまたはDSBは5’座位で、第2のSSBまたはDSBは3’座位で起こしまたは創出し、5’座位と3’座位との間で染色体DNAの欠失を引き起こし、その結果、5’座位と3’座位との間で染色体DNAの転写制御配列における永続的な欠失、修飾、または不活性化をもたらす、1つ以上のCas9またはCpf1エンドヌクレアーゼである方法が提供される。
別の方法、方法66において、本開示では、方法65で提供される方法であって、1つのgRNAが一対のSSBまたはDSBを創出する方法が提供される。
別の方法、方法67において、本開示では、方法65で提供される方法であって、1つのgRNAが、5’座位または3’座位のいずれかに対し相補的であるスペーサー配列を含む方法が提供される。
別の方法、方法68において、本開示では、方法65で提供される方法であって、当該方法が第1のガイドRNA及び第2のガイドRNAを含み、第1のガイドRNAが5’座位のセグメントに対し相補的であるスペーサー配列を含み、第2のガイドRNAが3’座位のセグメントに対し相補的であるスペーサー配列を含む方法が提供される。
別の方法、方法69において、本開示では、方法65〜68で提供される方法であって、1つ以上のgRNAが1つ以上の単一分子ガイドRNA(sgRNA)である方法が提供される。
別の方法、方法70において、本開示では、方法65〜69で提供される方法であって、1つ以上のgRNAまたは1つ以上のsgRNAが、1つ以上の改変gRNAまたは1つ以上の改変sgRNAである方法が提供される。
別の方法、方法71において、本開示では、方法70で提供される方法であって、1つの改変sgRNAが、3つの2’−O−メチル−ホスホロチオアート残基を、それぞれの5’及び3’末端に、またはその付近に含む方法が提供される。
別の方法、方法72において、本開示では、方法71で提供される方法であって、1つの改変sgRNAが配列番号71,959の核酸配列である方法が提供される。
別の方法、方法73において、本開示では、方法65〜72のいずれか1つで提供される方法であって、1つ以上のCas9エンドヌクレアーゼが、1つ以上のgRNAまたは1つ以上のsgRNAと予め複合体化されて1つ以上のリボ核タンパク質(RNP)を形成する方法が提供される。
別の方法、方法74において、本開示では、方法73で提供される方法であって、1つ以上のCas9エンドヌクレアーゼが、N末端、C末端、またはN末端及びC末端の両方で1つ以上の核局在化シグナル(NLS)に隣接している方法が提供される。
別の方法、方法75において、本開示では、方法74で提供される方法であって、1つ以上のCas9エンドヌクレアーゼが、2つのNLS(一方のNLSはN末端に位置し、第2のNLSはC末端に位置する)に隣接している方法が提供される。
別の方法、方法76において、本開示では、方法74〜75のいずれか1つで提供される方法であって、1つ以上のNLSがSV40 NLSである方法が提供される。
別の方法、方法77において、本開示では、方法73で提供される方法であって、RNP内のsgRNA:Cas9エンドヌクレアーゼの重量比が1:1である方法が提供される。
別の方法、方法78において、本開示では、方法73で提供される方法であって、1つのsgRNAが配列番号71,959の核酸配列を含み、Cas9エンドヌクレアーゼがN末端SV40 NLS及びC末端SV40 NLSを含むS.pyogenes Cas9であり、sgRNA:Cas9エンドヌクレアーゼの重量比が1:1である方法が提供される。
別の方法、方法79において、本開示では、方法65〜78のいずれか1つで提供される方法であって、5’座位及び3’座位の両方が、BCL11A遺伝子の2番目のイントロン中に位置する方法が提供される。
別の方法、方法80において、本開示では、方法65〜78のいずれか1つで提供される方法であって、5’座位及び3’座位の両方が、BCL11A遺伝子の+58 DNA高感受性部位(DHS)中に位置する方法が提供される。
別の方法、方法81において、本開示では、方法1、8、14、21、または24〜80のいずれか1つで提供される方法であって、Cas9またはCpf1 mRNA、gRNA、及びドナーテンプレートが、それぞれが別々の脂質ナノ粒子に製剤化されるか、または全てが1つの脂質ナノ粒子に同時に製剤化される方法が提供される。
別の方法、方法82において、本開示では、方法1、8、14、21、または24〜80のいずれか1つで提供される方法であって、Cas9またはCpf1 mRNAが1つの脂質ナノ粒子に製剤化され、gRNA及びドナーテンプレートの両方がアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターによって細胞に送達される方法が提供される。
別の方法、方法83において、本開示では、方法1、8、14、21、または24〜80のいずれか1つで提供される方法であって、Cas9またはCpf1 mRNAが1つの脂質ナノ粒子に製剤化され、gRNAがエレクトロポレーションによって細胞に送達され、ドナーテンプレートがアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターによって細胞に送達される方法が提供される。
別の方法、方法84において、本開示では、方法1、8、14、21、または24〜80のいずれか1つで提供される方法であって、1つ以上のRNPがエレクトロポレーションによって細胞に送達される方法が提供される。
別の方法、方法85において、本開示では、方法1〜84のいずれか1つで提供される方法であって、BCL11A遺伝子が染色体2:60,451,167〜60,553,567(Genome Reference Consortium、GRCh38)に位置する方法が提供される。
別の方法、方法86において、本開示では、方法1〜85のいずれか1つで提供される方法であって、ヘモグロビン異常症が、鎌状赤血球貧血及びサラセミア(α、β、δ、γ、及びこれらの組合せ)からなる群から選択される方法が提供される。
別の方法、方法87において、本開示では、方法1〜86のいずれか1つで提供される方法であって、BCL11A遺伝子またはBCL11A遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の中またはその付近で編集することが、BCL11A遺伝子発現を低減することができる方法が提供される。
第1の組成物、組成物1において、本開示では、ヘモグロビン異常症を有する患者からの細胞内のBCL11A遺伝子を編集するための1つ以上のガイドリボ核酸(gRNA)であって、配列表の配列番号1〜71,947における核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む、1つ以上のガイドリボ核酸が提供される。
別の組成物、組成物2において、本開示では、1つ以上の単一分子ガイドRNA(sgRNA)である、組成物1に記載の1つ以上のgRNAが提供される。
別の組成物、組成物3において、本開示では、1つ以上の改変gRNAまたは1つ以上の改変sgRNAである、組成物1または2に記載の1つ以上のgRNAまたはsgRNAが提供される。
別の組成物、組成物4において、本開示では、前記1つ以上の改変sgRNAが、3つの2’−O−メチル−ホスホロチオアート残基を、それぞれの5’及び3’末端に、またはその付近に含む、組成物3に記載の1つ以上のsgRNAが提供される。
別の組成物、組成物5において、本開示では、前記1つ以上の改変sgRNAが、配列番号71,959の核酸配列を含む、組成物3に記載の1つ以上のsgRNAが提供される。
別の組成物、組成物6において、本開示では、配列番号71,959の核酸配列を含む単一分子ガイドRNA(sgRNA)が提供される。
定義
「含む(comprising)」または「含む(comprises)」という用語は、本発明に対し本質的である組成物、方法、及びこれらのそれぞれの構成要素(複数可)に関して使用され、ただし、本質的であるかそうでないかにかかわらず、指定されていないエレメントを含むことに対する制限はない。
「〜から本質的になる」という用語は、所与の態様に必要とされるエレメントを指す。この用語は、本発明の当該態様の基本的及び新規のまたは機能的な特徴(複数可)に実質的な影響を及ぼさない追加のエレメントの存在を許容する。
「〜からなる」という用語は、本明細書に記載の組成物、方法、及びこれらのそれぞれの構成要素を指し、態様の記載に挙げられていないエレメントはいずれも除外される。
文脈による明確な別段の定めがない限り、単数形「a」、「an」、及び「the」には複数の指示対象が含まれる。
本明細書で挙げられている任意の数値範囲は、挙げられた範囲内に含まれる同じ数値的精度(すなわち、指定の桁の同じ数字)の全てのサブ範囲を記述しているものとする。例えば、「1.0〜10.0」と挙げられた範囲は、挙げられた最小値の1.0から挙げられた最大値の10.0の間(両端の値を含む)の全てのサブ範囲を記述しているものとし、例えば、「2.4〜7.6」という範囲が明細書の本文に明示的に挙げられていない場合であっても「2.4〜7.6」を記述しているものとする。したがって、出願人は、本明細書内に明示的に挙げられた範囲内で含まれる同じ数値的精度の任意のサブ範囲を明示的に挙げる目的で、請求項を含めて本明細書を修正する権利を留保する。全てのこのような範囲は本質的に本明細書に記載されており、任意のこのようなサブ範囲を明示的に挙げるための修正は、米国特許法第112条(a)及び欧州特許条約第123(2)条の要件を含めて、書面の記載、記載の十分性、及び追加事項要件に従うことになる。また、明示的な記載がないまたは文脈により別段の要求がない限り、本明細書に記載の全ての数値パラメーター(例えば、値、範囲、量、パーセンテージなどを表現するもの)は、「約」という語が明示的に数字の前に出現しない場合であっても、「約」という語が手前に置かれているかのように読み取ってもよい。加えて、本明細書に記載の数値パラメーターは、報告された有効桁の数、数値精度に照らして、そして通常の丸め技法を適用することによって、解釈されるべきである。また、本明細書に記載の数値パラメーターは、パラメーターの数値の決定に使用された基礎的測定技法における固有の可変性の特徴を必然的に所持することも理解される。
本発明は、本発明の例示的かつ非限定的な態様を提供する以下の実施例を参照することによってさらに十分に理解されることになる。
本実施例は、BCL11A遺伝子の転写制御配列に永続的な欠失、修飾、または不活性化をもたらす定義されたゲノムの欠失、挿入、または置き換え(本明細書では「ゲノム改変」と称される)をBCL11A遺伝子またはBCL11A遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の中またはその付近で創出するための例示的なゲノム編集技法として、CRISPRシステムの用法を説明する。定義された治療的改変の導入は、本明細書で説明し例示するように、ヘモグロビン異常症の有望な緩和のための新規の治療戦略に相当する。
実施例1 BCL11A遺伝子の転写制御配列のためのCRISPR/SpCas9標的部位
BCL11A遺伝子における12.4kbの転写制御配列の領域を標的部位のためにスキャンした。各エリアについて、配列NRGを有するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)をスキャンした。配列表の配列番号1〜29,482に示すように、PAMに対応するgRNA 20bpスペーサー配列を特定した。
実施例2 BCL11A遺伝子の転写制御配列のためのCRISPR/SaCas9標的部位
BCL11A遺伝子における12.4kbの転写制御配列の領域を標的部位のためにスキャンした。各エリアについて、配列NNGRRTを有するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)をスキャンした。配列表の配列番号29,843〜32,387に示すように、PAMに対応するgRNA 20bpスペーサー配列を特定した。
実施例3 BCL11A遺伝子の転写制御配列のためのCRISPR/StCas9標的部位
BCL11A遺伝子における12.4kbの転写制御配列の領域を標的部位のためにスキャンした。各エリアについて、配列NNAGAAWを有するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)をスキャンした。配列表の配列番号32,388〜33,420に示すように、PAMに対応するgRNA 20bpスペーサー配列を特定した。
実施例4 BCL11A遺伝子の転写制御配列のためのCRISPR/TdCas9標的部位
BCL11A遺伝子における12.4kbの転写制御配列の領域を標的部位のためにスキャンした。各エリアについて、配列NAAAACを有するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)をスキャンした。配列表の配列番号33,421〜33,851に示すように、PAMに対応するgRNA 20bpスペーサー配列を特定した。
実施例5 BCL11A遺伝子の転写制御配列のためのCRISPR/NmCas9標的部位
BCL11A遺伝子における12.4kbの転写制御配列の領域を標的部位のためにスキャンした。各エリアについて、配列NNNNGHTTを有するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)をスキャンした。配列表の配列番号33,852〜36,731に示すように、PAMに対応するgRNA 20bpスペーサー配列を特定した。
実施例6 BCL11A遺伝子の転写制御配列のためのCRISPR/Cpf1標的部位
BCL11A遺伝子における12.4kbの転写制御配列の領域を標的部位のためにスキャンした。各エリアについて、配列YTNを有するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)をスキャンした。配列表の配列番号36,732〜71,947に示すように、PAMに対応するgRNA 22bpスペーサー配列を特定した。
実施例7 ガイド鎖のバイオインフォマティクス解析
理論上の結合及び実験で評価された活性の両方を伴うマルチステッププロセスにおいて、候補ガイドをスクリーニング及び選択する。例示として、PAMが隣接する特定のオンターゲット部位(例えば、BCL11A遺伝子の転写制御配列中の部位)にマッチする配列を有する候補ガイドに対し、同様の配列を有するオフターゲット部位を切断する可能性を評価することができ、これには、以下により詳細に記載し例示するようなオフターゲット結合の評価に利用できる様々なバイオインフォマティクスツールのうちの1つ以上を用いて、意図される位置以外の染色体位置における作用の可能性を評価する。オフターゲット活性が比較的低いと予測される候補は、次に実験的評価を受けてそのオンターゲット活性を測定し、次に様々な部位におけるオフターゲット活性を測定することができる。好ましいガイドは、選択された座位で所望レベルの遺伝子編集を達成するのに十分に高いオンターゲット活性と、他の染色体座位における変更の可能性を低減する比較的低いオフターゲット活性とを有する。オンターゲット活性:オフターゲット活性の比は、しばしばガイドの「特異性」と呼ばれる。
予測オフターゲット活性の最初のスクリーニングを行うには、最も可能性の高いオフターゲット部位の予測に使用することができる既知の公的に入手可能な複数のバイオインフォマティクスツールが存在し、CRISPR/Cas9/Cpf1ヌクレアーゼシステムにおける標的部位への結合は、相補的な配列間のワトソン・クリック塩基対合によって推進されるため、相違点の程度(及びそのためのオフターゲット結合の可能性低減)は、本質的には一次的な配列の相違:ミスマッチ及びバルジ(すなわち、非相補的な塩基に変化した塩基)、ならびに標的部位に対する潜在的オフターゲット部位内の塩基の挿入または欠失、に関連する。COSMID(ミスマッチ、挿入、及び欠失を有するCRISPRオフターゲット部位(CRISPR Off−target Sites with Mismatches,Insertions and Deletions))と呼ばれる例示的なバイオインフォマティクスツール(crispr.bme.gatech.eduのウェブで入手可能)は、このような類似性を収集する。他のバイオインフォマティクスツールとしては、以下に限定されないが、GUIDO、autoCOSMID、及びCCtopが挙げられる。
変異及び染色体再編の有害な作用を低減するため、バイオインフォマティクスを使用してオフターゲット切断を最小化した。CRISPR/Cas9システムの研究からは、特にPAM領域から離れた位置における、塩基対ミスマッチ及び/またはバルジを伴ったガイド鎖とDNA配列との非特異的なハイブリダイズに起因する高いオフターゲット活性の可能性が示唆された。そのため、塩基対ミスマッチに加え、RNAガイド鎖とゲノム配列との間の挿入及び/または欠失を有する、潜在的オフターゲット部位を特定することができるバイオインフォマティクスツールを有することは重要である。そのため、バイオインフォマティクスベースツールのCOSMID(ミスマッチ、挿入、及び欠失を有するCRISPRオフターゲット部位(CRISPR Off−target Sites with Mismatches,Insertions and Deletions))を使用して、潜在的CRISPRオフターゲット部位のゲノムを探索した(crispr.bme.gatech.eduのウェブで入手可能)。COSMID出力がミスマッチの数及び位置に基づいて潜在的オフターゲット部位のリストをランク付けしたことにより、詳しい情報に基づいた標的部位の選択が可能になり、可能性の高いオフターゲット切断を伴う部位の使用を回避した。
領域内のgRNA標的化部位における推定オン及び/またはオフターゲット活性を重み付けする追加のバイオインフォマティクスパイプラインを用いた。活性の予測に使用され得る他の特徴としては、対象の細胞タイプ、DNA接近可能性、クロマチン状態、転写因子結合部位、転写因子結合データ、及び他のCHIP−seqデータについての情報が挙げられる。編集効率を予測する追加の因子(例えば、gRNAの対の相対的位置及び方向、局所配列の特徴、及びマイクロホモロジー)を重み付けする。
実施例8 細胞内での好ましいガイドのオンターゲット活性試験
最も低いオフターゲット活性を有すると予測されたgRNAは、次にK562細胞におけるオンターゲット活性を試験し、TIDEを用いてインデルの出現頻度を評価することになる。
TIDEは、ガイドRNA(gRNAまたはsgRNA)によって決定される標的部位のCRISPR−Cas9によるゲノム編集を迅速に評価するウェブツールである。TIDEソフトウェアは、2つの標準的なキャピラリーシークエンシング反応からの定量的配列トレースデータに基づいて、編集効率を定量化し、標的化された細胞プールのDNAにおける主要なタイプの挿入及び欠失(インデル)を特定する。詳細な説明及び例については、Brinkman et al,Nucl.Acids Res.(2014)を参照。代替的な1つの方法は、次世代シークエンシング(NGS)(高スループットシークエンシングとしても知られている)であり、これは、Illumina(Solexa)シークエンシング、Roche 454シークエンシング、Ion torrent:Proton/PGMシークエンシング、及びSOLiDシークエンシングを含めた種々の複数の現代型シークエンシング技術の説明に使用される包括的な用語である。このような近年の技術によって、過去に使用されたSangerシークエンシングよりもはるかに迅速かつ低コストでDNA及びRNAのシークエンシングを行うことが可能になったため、ゲノミクス及び分子生物学の研究に革命がもたらされた。
組織培養細胞のトランスフェクションによって、異なるコンストラクトのスクリーニングや活性及び特異性を試験するためのロバストな手段が可能になる。K562またはHEK293Tなどの組織培養細胞株はトランスフェクションが容易であり、高い活性をもたらす。これらのまたは他の細胞株を評価してCD34+にマッチする細胞株を決定し最良のサロゲートを提供する。次にこれらの細胞を多くの早期段階試験に使用する。例えば、S.pyogenes Cas9向けの個々のgRNAは、例えば図1A〜1Cに記載のCTx−1、CTx−2、またはCTx−3のようなヒト細胞における発現に適したプラスミドを用いて細胞にトランスフェクションすることができる。代替的に、市販のベクターも使用することができる。本明細書に記載のBCL11A gRNAのインデル出現頻度評価については、市販のCas9発現プラスミド(GeneArt,Thermo Fisher)を用いた。数日後(本実験については48時間)、ゲノムDNAを回収し、標的部位をPCRによって増幅した。遊離DNA末端のNHEJ修復によって導入された挿入、欠失、及び変異の比率によって切断活性を測定した。この方法では、修復された配列を切断されていないDNAと正しく区別することができないが、切断のレベルは誤修復の量によって計測することができる。オフターゲット活性は、特定された推定オフターゲット部位を増幅し、同様の切断検出の方法を使用することによって観察することができる。また転座についても、特異的な切断及び転座が起こっているかを決定するために、切断部位に隣接するプライマーを使用してアッセイすることができる。guide−seqを含めたオフターゲット切断の補完的試験を可能にする非ガイドアッセイが開発されている。この場合、顕著な活性を有するgRNAまたは一対のgRNAを培養細胞に追加して、BCL11A遺伝子の転写制御配列中の+58 DNA高感受性部位(DHS)の修飾または不活性化を測定することができる。次にオフターゲット事象が再び起こり得る。同様に、CD34+細胞をトランスフェクションし、BCL11A遺伝子の転写制御配列中の+58 DNA高感受性部位(DHS)の修飾または不活性化のレベル及び可能性のあるオフターゲット事象を測定することができる。これらの実験は、ヌクレアーゼ及びドナーの設計及び送達の最適化を可能にする。
実施例9 細胞内での好ましいガイドのオフターゲット活性試験
上記実施例におけるTIDE及び次世代シークエンシング研究から得られた最良のオンターゲット活性を有するgRNAは、次に全ゲノムシークエンシングを用いてオフターゲット活性を試験することになる。候補gRNAをCD34+細胞またはiPSCでより徹底的に評価する。
実施例10 細胞内での好ましいgRNA組合せの試験
TIDE及び次世代シークエンシング研究から得られた最良のオンターゲット活性及び最も低いオフターゲット活性を有するgRNAは、組み合わせて試験を行って、各gRNAの組合せの使用から得られる欠失のサイズを評価することになる。有望なgRNAの組合せは、初代ヒトCD34+細胞で評価する。
例えば、gRNAの組合せに対し、BCL11A遺伝子の転写制御配列の全てまたは一部を欠失させる効率を試験する。また、gRNAの組合せに対し、BCL11A遺伝子の+58 DNA高感受性部位(DHS)の全てまたは一部を欠失させる効率を試験する。
実施例11 HDR遺伝子編集に対する種々のアプローチの試験
オンターゲット活性及びオフターゲット活性の両方におけるgRNAの試験をした後は、修飾/不活性化及びノックイン戦略をHDR遺伝子編集に対して試験することになる。
修飾/不活性化アプローチについては、短い1本鎖オリゴヌクレオチド、短い2本鎖オリゴヌクレオチド(インタクトPAM配列/変異PAM配列)、長い1本鎖DNA分子(インタクトPAM配列/変異PAM配列)、または長い2本鎖DNA分子(インタクトPAM配列/変異PAM配列)としてドナーDNAテンプレートが提供される。ドナーDNAテンプレートは、改変転写制御配列を含む野生型BCL11A遺伝子もしくはcDNA、または改変(例えば、変異した)+58 DNA高感受性部位(DHS)を含む野生型BCL11A遺伝子またはcDNAを含む。加えて、ドナーDNAテンプレートはAAVによって送達される。
cDNAノックインアプローチについては、1本鎖または2本鎖のDNAは、40ntを超えるBCL11A遺伝子の改変転写制御配列を含むことができる。1本鎖または2本鎖のDNAは、80ntを超えるBCL11A遺伝子の改変転写制御配列を含むことができる。1本鎖または2本鎖のDNAは、100ntを超えるBCL11A遺伝子の改変転写制御配列を含むことができる。1本鎖または2本鎖のDNAは、150ntを超えるBCL11A遺伝子の改変転写制御配列を含むことができる。1本鎖または2本鎖のDNAは、300ntを超えるBCL11A遺伝子の改変転写制御配列を含むことができる。1本鎖または2本鎖のDNAは、400ntを超えるBCL11A遺伝子の改変転写制御配列を含むことができる。代替的に、DNAテンプレートはAAVによって送達される。
cDNAノックインアプローチについては、1本鎖または2本鎖のDNAは、40ntを超えるBCL11A遺伝子の改変+58 DNA高感受性部位(DHS)を含むことができる。1本鎖または2本鎖のDNAは、80ntを超えるBCL11A遺伝子の+58 DNA高感受性部位(DHS)を含むことができる。1本鎖または2本鎖のDNAは、100ntを超えるBCL11A遺伝子の+58 DNA高感受性部位(DHS)を含むことができる。1本鎖または2本鎖のDNAは、150ntを超えるBCL11A遺伝子の改変+58 DNA高感受性部位(DHS)を含むことができる。1本鎖または2本鎖のDNAは、300ntを超えるBCL11A遺伝子の+58 DNA高感受性部位(DHS)を含むことができる。1本鎖または2本鎖のDNAは、400ntを超えるBCL11A遺伝子の+58 DNA高感受性部位(DHS)を含むことができる。代替的に、DNAテンプレートはAAVによって送達される。
実施例12 リードCRISPR−Cas9/DNAドナーの組合せの再評価
HDR遺伝子編集に対する異なる戦略を試験した後は、初代ヒト細胞においてリードCRISPR−Cas9/DNAドナーの組合せの欠失の効率、組換え、及びオフターゲット特異性を再評価することになる。Cas9 mRNAまたはRNPは送達のために脂質ナノ粒子に製剤化し、sgRNAはナノ粒子に製剤化するかまたはAAVとして送達させ、ドナーDNAはナノ粒子に製剤化するかAAVとして送達させる。
実施例13 適切な動物モデルにおけるin vivo試験
CRISPR−Cas9/DNAドナーの組合せを再評価した後は、リード製剤を動物モデルにおいてin vivoで試験することになる。
上述のように、ヒト細胞内で培養することでヒト標的及びバックグラウンドヒトゲノムにおける直接的試験が可能になる。
前臨床の有効性及び安全性の評価は、NSGまたは同様のマウスにおける改変マウスまたはヒトCD34+細胞の移植を通じて観察することができる。改変細胞は、移植から数ヶ月後に観察することができる。
実施例14 様々なgRNAを用いた細胞の編集
ヒトドナー1〜3からのヒト動員末梢血CD34+細胞を、CD34+増大サプリメントを含む無血清StemSpan培地中で2日間培養した。100,000細胞を洗浄し、Corfu Large(CLO)gRNA、Corfu Small(CSO)gRNA、HPFH5 gRNA、Kenya gRNA、SD2 sgRNA、またはSPY101 sgRNAと共にCas9 mRNAを用いてエレクトロポレーションした。細胞を2日間回復させてから赤血球系分化培地(IMDM+Glutamaxに5%のヒト血清、10μg/mlのインスリン、20ng/mlのSCF、5ng/mlのIL−3、3U/mlのEPO、1uMのデキサメタゾン、1uMのβ−エストラジオール、330ug/mlのホロ−トランスフェリン、及び2U/mlのヘパリンを追加したもの)に切り替えた。本明細書に記載の「シークエンシング(sequence)によるオンターゲット及びオフターゲットの変異検出」及び「変異検出アッセイ」のセクションで説明されているように、Corfu Large(CLO)gRNAでエレクトロポレーションした細胞、Corfu Small(CSO)gRNAでエレクトロポレーションした細胞、HPFH5 gRNAでエレクトロポレーションした細胞、Kenya gRNAでエレクトロポレーションした細胞、SD2 sgRNAでエレクトロポレーションした細胞、及びSPY101 sgRNAでエレクトロポレーションした細胞の各々について挿入/欠失(「インデル」)のパーセンテージを決定した(図3)。これらの細胞を赤血球系分化培地中で12日間分化させた後、RNAを収集して定量的リアルタイムPCRによりヘモグロビンレベルを評価した(図4A〜4C)。
1日後、フローサイトメトリーを用いて単一赤血球系前駆細胞を産生し、赤血球系分化培地中で培養してコロニーとして増大及び成長させた。各コロニーを分け、選別から12日後にDNA及びRNA解析用に収集した。姉妹コロニーを選別から15日後にヘモグロビンタンパク質の解析用に収集した。定量的リアルタイムPCRによってグロビン発現(γ/18sRNAの比またはγ/αの比)を決定し、編集された赤血球系コロニーの各々について比較した(図5A〜5B)。
実施例15 SPY101 sgRNAの試験
SPY101 sgRNAを使用した場合にBCL11A遺伝子のイントロン2中で生じ得る遺伝子編集結果は3つ考えられる。SPY101 sgRNAを使用した場合に生じ得る第1の遺伝子編集結果は、両方のアレルにおいてインデルのみをもたらす(インデル/インデル、図6)。SPY101 sgRNAを使用した場合に生じ得る第2の遺伝子編集結果は、2つのアレルにおいて両方のインデル及び野生型配列によるクローンをもたらす(インデル/WT、図6)。SPY101 sgRNAを使用した場合に生じ得る第3の遺伝子編集結果は、両方のアレルにおいて野生型配列によるコロニーをもたらす(WT/WT、図6)。
SPY101 sgRNAを使用した場合、赤血球コロニーの92%が編集された。例えば、赤血球コロニーの92%はインデルを伴うアレルを有した(図6)。
SPY101を用いて編集した単一赤血球系コロニーにおけるγ−グロビン発現(γ/α グロビンmRNA比またはγ/(γ+β)グロビンmRNA比)を測定した(図7A〜B)。単一赤血球系コロニーには、両アレルまたはホモ接合性のインデルを伴うコロニー(インデル/インデル)、単一アレルまたはヘテロ接合性のインデルを伴うコロニー(インデル/WT)、及び両方のアレルに野生型配列を伴うコロニー(WT/WT)が含まれた。インデルを有する赤血球系コロニーは、両方のアレルにおいて野生型配列を伴うクローンと比較して、より高いレベルのガンマグロビンを発現することができた(図7A〜B)。
実施例16 鎌状赤血球症(SCD)及びβ−サラセミアに対する治療戦略
以下の表(表4)は、実施例16〜17で使用したgRNAに関する情報を示している。
a、g、u:2’−O−メチル残基
s:ホスホロチオアート
A、C、G、U:RNA残基
以下の表(表5)は、実施例16〜17で言及した標的に関する情報を示している。
SCD及びβ−サラセミアに対する治療戦略では、CRISPR/Cas9を使用してHPFH患者に天然に存在する遺伝子変異と同じものを再創出した。患者の造血幹細胞を単離し、この細胞をCRISPR/Cas9を用いてex vivoで処置してHPFH遺伝子編集を創出し、次に編集された細胞を患者に再導入した。遺伝子改変幹細胞は、疾患症状の重症度の顕著な低減に十分なレベルのHBFを含有する赤血球をもたらした。複数の遺伝子編集物に対する優先順位付けを、本来見られるHBF上方調節の程度、これらの編集物をCRISPR/Cas9を用いて高い効率で再創出する能力、及びオフターゲット編集の不在に基づいて行った。
候補ガイドRNA(gRNA)配列を計算的に選択し、次にCD34+細胞におけるオンターゲット編集有効性をスクリーニングした。1つのこのようなスクリーニングの結果が図8に示されている。gRNAは、複数のドナー試料にわたる一貫した高い(>70%)オンターゲット編集によって特定した。各CD34+細胞ドナーを一意の印(▲、★、●)で表し、各ドナーにおけるオンターゲット編集効率を2回測定する。
意図されたオンターゲット部位に配列が最も類似しておりオフターゲット活性の可能性が最も高いことが計算的に特定された数百の部位を調べることにより、CD34+細胞における候補gRNAのオフターゲット活性をスクリーニングした。図9A〜Bは、図8で試験した各gRNAに対する実験アプローチ(図9A)及び結果(図9B)を示している。ほとんどのgRNAが、予測部位でさえも検出可能なオフターゲット活性を示さなかった。gRNA C及びgRNA Gのみがオフターゲット活性を示している。各予測部位に対し複数のプローブを使用してアッセイ感受性を高めた。
候補gRNAを使用して、SCD及びβ−サラセミア患者ならびに健康なドナーから得られた赤血球系細胞において特異的なHPFHまたは他の改変を再創出した。赤血球系分化後、グロビン転写レベルを測定して、α−またはβ−グロビンに対するγ−グロビンの増加を評価した。図10A〜Bに示されるように、gRNAを用いて編集してHPFH標的5及び6を再創出した患者細胞において30%を超えるγ−グロビンmRNAレベルが観察された。SCD及びβ−サラセミアの患者の試料は、健康なドナーのものよりもγ−グロビンの大きな絶対的増加を示し、HPFHのヘテロ接合体キャリアよりも高いHbFが患者で観察されたことと一致した。示された値から、各ドナーからの模擬処置された細胞のバックグラウンドレベルを引いた。データは単回の実験に相当するが、SCD患者データは例外で、3名の異なるドナーの試料の平均に相当する。編集効率は、全実験において同様のものであった。
バルクCD34+集団における編集効率が長期再増殖HSC(LT−HSC)を代表することを保証するため、図11A〜Cに示されるように、バルクCD34+細胞を特定のサブ集団に選別し、オンターゲット編集効率をアッセイした。LT−HSC集団における高い編集効率が観察された。実験は、4名のドナー全体にSPY101及びCas9タンパク質を用いて行った。バーは平均±SEMを示している。LT−HSC、長期造血幹細胞;MPP、多分化能前駆体;MLP、多リンパ系前駆体;CMP、骨髄系共通前駆体;MEP、巨核球赤血球前駆体;GMP、顆粒球マクロファージ前駆体。
遺伝子編集されたHSPCが造血系の長期再増殖への可能性を保持することを確認するために、免疫低下マウスにおいてin vivoの移植研究を実施した。未処置、未編集、またはSPY101 gRNAを用いた遺伝子編集のいずれかを行った健康なドナーからのヒトCD34+細胞をNSGマウスに導入した。図12に示されるように、同様のレベルのhCD45RA+細胞(移植後8週時)が未処置/未編集HSPCを注射したマウス及びSPY101遺伝子編集HSPCを注射したマウスに存在することで、SPY101編集細胞が移植可能性を保持することが確認された。データ点は、個々の動物を表し、ヒトCD45RA+であった生細胞のパーセンテージを図示している。平均±SD。「未処置」は、エレクトロポレーションせずに免疫低下マウスに注射したHSPCを表す。「未編集」は、エレクトロポレーションしたが遺伝子編集を行わずに免疫低下マウスに注射したHSPCを表す。「SPY101」は、Cas9及びSPY101 gRNAを用いてエレクトロポレーションして免疫低下マウスに注射したHSPCを表す。
臨床研究に備え、GMP対応施設でプロセス開発を開始した。図13に示されるように、GMP適合性プロセスにおいて、臨床スケールでは遺伝子編集有効性の顕著な損失は観察されなかった。データは、4以上の実験全体での平均±SDであった。
図14に示されるように、発明者らのリード候補に対するGLP/毒性学研究が開始されている。NSGマウスにおける2つの別々の研究により、編集されたCD34+細胞の体内分布及び毒性学における包括的な特性決定が可能になると考えられる。
実施例17 鎌状赤血球症(SCD)及びβ−サラセミアに対する治療戦略
ヒトmPB CD34+細胞における6つの異なるHPFHバリアントの再形成、すなわち「標的」の編集から得られた結果が図16A〜B及び図17に示されている。CRISPR/Cas9を用いてCD34+細胞を処置し、赤血球に分化させ、次に、図15に示されている実験プロセスを用いて、バルク(図16A〜B)及びコロニー(図17)におけるHBF mRNA及びタンパク質発現をアッセイした。
図16A〜Bに提示された結果は、標的1〜3については3名の異なるドナーから、標的4〜6については7名の異なるドナーからのものであった。模擬処置細胞のバックグラウンドレベルを引いておいた。データは平均±SEMである。バルク解析からはHBFの上方調節が確認され、また最も高いレベルのHBFを示す標的の優先順位付けが可能になった。
図17に提示されたクローン解析から、CRISPR/Cas9がもたらす遺伝子編集が、確かに個々の細胞レベルにおけるHBFの増加の理由であることを確認することができた。結果は、単一のドナーからのものであり、標的当たり50〜80コロニーであった。mRNA転写レベルをqRT−PCRによって測定した。データは平均±SEMである。
標的5及び6は最も高いHBFレベルを示し、図18A〜Bでさらに解析を行った。データは平均±SEMである。WTは遺伝子編集の証拠を示さないコロニーを示し、ヘテロ接合またはHetは1つのアレルが編集されたコロニーを示し、ホモ接合またはHomoは両方のアレルが編集されたコロニーを示す。図16A〜B、17、及び18A〜Bにおける証拠は、もたらされた遺伝子編集とHBFの所望の上方調節との間の因果関係を支持しており、提案された治療戦略に対するさらなる確証をもたらすものである。
実施例18 細胞内での好ましいガイドRNAのオンターゲット活性試験
4名の独立したドナーからのヒト動員末梢血(mPB)CD34+細胞を、100ng/mlの組換えヒト幹細胞因子(SCF)、100ng/mlの組換えヒトFit3−リガンド(FLT3L)、及び100ng/mlのトロンボポエチン(TPO)を含む無血清CellGro(登録商標)培地中で培養した。ドナー当たり200,000細胞を洗浄し、Lonzaエレクトロポレーション装置を用いて、いずれのCRISPR/Cas9編集構成要素もなし(模擬エレクトロポレーション試料)、陰性対照としてのGFP gRNA及びCas9タンパク質(GFP)、SPY101 gRNA及びCas9タンパク質(SPY)、SD2 gRNA及びCas9タンパク質(SD2)、または二重BCL11Aエキソン2 gRNA及びCas9タンパク質(Ex2)を伴ったものに対しエレクトロポレーションした。組換えCas9タンパク質は、2つのSV40核局在化配列(NLS)に隣接するS.pyogenes Cas9をコードする。これらの実験は、gRNA:Cas9の重量比が1:1のリボ核タンパク質(RNP)を用いて実施した。SPY101 gRNAは、BCL11a座位のイントロン2内でDHS+58 Gata1結合部位のインデル分断を創出する。SD2 gRNAは、ヒトベータグロビン座位内でインデル及び4.9kb欠失を創出する。4.9kb欠失はHBG1の上流に位置し、HBG2配列全体を含む。4.9kb欠失は、HBG2コード配列に対し5’側の168bpで開始し、HBG1コード配列に対し5’側の168bpで終了する。エキソン2 gRNAはBCL11A座位のエキソン2上に196bpの欠失を創出し、陽性対照としての役割を果たした。エレクトロポレーションしなかったヒトmPB CD34+細胞は陰性対照(EPなし)としての役割を果たした。
エレクトロポレーションの後、遺伝子編集されたmPB CD34+細胞を2日間回復させてから赤血球系分化培地(IMDM+L−グルタミンに5%のヒト血清、10μg/mLのインスリン、20ng/mLのSCF、5ng/mLのIL−3、3U/mLのEPO、1uMのデキサメタゾン、330ug/mlのホロ−トランスフェリン、及び2U/mLのヘパリンを追加したもの)に切り替えた。遺伝子編集されたmPB CD34+細胞を赤血球に分化させ、TIDE解析、ddPCR解析、定量的リアルタイムPCR解析、FACS、及びLC−MSによりさらに試験を行った(図20A〜B、21A〜D、22A〜B、及び23A〜D)。全体的な実験プロセスが図19に示されている。
TIDE解析/ddPCR解析
ゲノムDNAを単離し、分化培地中で成長した各々の遺伝子編集されたヒトmPB CD34+細胞試料を試験した。分化後1、11、13、及び15日目にゲノムDNAを細胞から単離した。ゲノムDNAをTIDE解析によって解析した。TIDEは、ガイドRNA(gRNAまたはsgRNA)によって決定される標的部位のCRISPR−Cas9によるゲノム編集を迅速に評価するウェブツールである。図20A〜Bに提示された結果は、4名の異なるドナーからのものであり、SD2 gRNAを用いて編集されたmPB CD34+細胞(図20B)及びSPY101 gRNAを用いて編集されたmPB CD34+細胞(図20A)におけるex vivo赤血球系分化全体を通じて遺伝子編集のパーセンテージが維持されていることを実証するものであった。データは平均±SDである。
ゲノムDNAは、SD2処置による4.9kb欠失出現頻度を検出するため、ddPCR解析による解析も行った。図20Bに提示された結果は、4名の異なるドナーからのものであり、SD2 gRNAを用いて編集されたmPB CD34+細胞(図20B)におけるex vivo赤血球系分化全体を通じて遺伝子編集のパーセンテージが維持されていることを実証するものであった。データは平均±SDである。
定量的リアルタイムPCR解析
mRNAを単離し、分化培地中で成長した各々の遺伝子編集されたヒトmPB CD34+細胞試料を試験した。分化後11日目及び15日目にmRNA単離を実施した。グロビン発現(γ/αの比及びγ/(γ+β))の比)を定量的リアルタイムPCRにより測定し、SD2 gRNAを用いて編集された各々のヒトmPB CD34+細胞及びSPY101 gRNAを用いて編集されたヒトmPB CD34+細胞について比較した(図21A〜D)。図21A〜Dに提示された結果は、4名の異なるドナーからのものであり、SD2 gRNAを用いて編集されたヒトmPB CD34+細胞及びSPY101 gRNAを用いて編集されたヒトmPB CD34+細胞のγ−グロビン転写物における陰性対照と比較しての増加を実証するものであった。データは平均±SDである。
FACS/LC−MS
SD2 gRNAを用いて編集されたヒトmPB CD34+細胞及びSPY101 gRNAを用いて編集されたヒトmPB CD34+細胞を分化培地中で15日間成長させた。ヒトmPB CD34+細胞を、さらに二重BCL11Aエキソン2 gRNA(Ex2)またはGFP gRNAも用いて編集し、分化培地中で15日間成長させた。一部のヒトmPB CD34+細胞には任意のCRISPR/Cas9編集構成要素を用いた編集を行わず(模擬エレクトロポレーション試料)、一部のヒトmPB CD34+細胞にはエレクトロポレーションしなかった(EPなし)。生細胞を、赤血球系成熟マーカーのグリコフォリンAで染色した。次に細胞を固定し、透過処理を行った。固定した細胞の各グロビンサブユニットをフルオロフォア結合抗体で染色した。次に、染色した細胞をFACSにより解析した。γ−グロビンの一例が図22Aに示されている。4名の異なるドナーからのγ−グロビンにおける平均の蛍光強度中央値は図22Bに示されており(平均±SEM)、これは、SD2 gRNAを用いて編集されたヒトmPB CD34+細胞及びSPY101 gRNAを用いて編集されたヒトmPB CD34+細胞におけるγ−グロビンの上方調節を実証するものであった。
SD2 gRNAを用いて編集されたヒトmPB CD34+細胞及びSPY101 gRNAを用いて編集されたmPB CD34+細胞を分化培地中で15日間成長させた。ヒトmPB CD34+細胞を、さらに二重BCL11Aエキソン2 gRNA(Ex2)またはGFP gRNAも用いて編集し、分化培地中で15日間成長させた。一部のヒトmPB CD34+細胞には任意のCRISPR/Cas9編集構成要素を用いた編集を行わず(模擬エレクトロポレーション試料)、一部のヒトmPB CD34+細胞にはエレクトロポレーションしなかった(EPなし)。液体クロマトグラフィー質量分析(LC−MS)を使用して、変性したグロビン単量体を検出した(図23A〜D)。図23A〜Dに提示された結果は、4名の異なるドナーからのものであり、また、SD2 gRNAを用いて編集されたmPB CD34+細胞及びSPY101 gRNAを用いて編集されたmPB CD34+細胞のγ−グロビンにおける上方調節を実証するものであった。データは平均±SDである。
実施例19 細胞内での好ましいガイドRNAのオフターゲット活性試験
ゲノムのオンターゲット編集が治療の成功に必須である一方で、任意のオフターゲット事象の検出は、製品安全性を保証する重要な構成要素である。オフターゲット部位における改変を検出する1つの方法は、オンターゲット部位に最も類似しているゲノムの領域をハイブリッドキャプチャーシークエンシングによって豊富化し、検出される任意のインデルを定量化することを伴う。
ハイブリッドキャプチャーシークエンシングは、CRISPR−Cas9編集細胞及びDNAにおけるオフターゲット編集を定量化する方法である。ハイブリッドキャプチャーシークエンシング法に関する詳細は、以下の通りである。
材料及び方法
材料及び供給源
1.1.1. ゲノムDNA
この方法の目的は、CRISPR−Cas9による編集がゲノム内のオフターゲット部位で生じるかを判定することであるため、典型的には少なくとも2つの入力試料、処置試料及び対照(未処置、模擬エレクトロポレーションなど)試料を使用する。各試料は適切な方法によって抽出されたゲノムDNA(gRNA)を有し、このgDNAを、ハイブリッドキャプチャーライブラリー(1.1.2)とハイブリダイズさせ、次に後述するプロトコルの残りを行う。
1.1.2. ハイブリッドキャプチャーライブラリー
(1.2.2)に記載のハイブリッドキャプチャーライブラリーは、最大57,000の120−merオリゴヌクレオチドベイト配列のリストを提供することによってもたらされ、次にカスタムSureSelect XTハイブリッドキャプチャーキットとして合成される。
1.2 方法
1.2.1. オフターゲット部位検出アルゴリズム
オフターゲット編集を有する可能性が最も高い部位を決定するため、発明者らは異なる特徴を有するいくつかのアルゴリズムを使用して、広範囲のオフターゲット部位の網羅を保証している。
1.1.1.1. CCTop
所与のガイド配列に対し、CCTopはBowtie1配列マッピングアルゴリズムを用いて、ゲノムにおいて、部位とガイドとの間に最大5つのミスマッチを有するオフターゲット部位を探索する。ゲノム内の潜在的オフターゲット部位の決定に配列の相同性のみが使用されているため、発明者らはこのような部位を(「予測オフターゲット部位」ではなく)「相同オフターゲット部位」と呼んでいる。この5つのミスマッチは、配列のPAM末端に最も近い5塩基アラインメントシード領域では2つ以下のミスマッチに制限されている。CRISPORアルゴリズム(1.2.1.2)はシード領域における制限を有しないため、CCTopを補完する。
1.2.1.1. COSMID
一部のオフターゲットCas9切断部位は、自らとガイドとの間に短いインデル(バルジとも呼ばれる)を有することがあるため、発明者らによる探索は、インデル(典型的には最大2つのインデルに制限)を伴うオフターゲット部位を検出し、そのためCCTopによる探索を補完するCOSMIDアルゴリズムも用いている。
1.2.1.2. CRISPOR
CRISPORは、様々な方法を比較する目的で、多くの異なる公表されたCRISPRのオン及びオフターゲットスコア付け機能を実装するツールである。CRISPORは、ゲノムに対するガイド配列の探索にBWAアルゴリズムを使用してオフターゲット部位を見いだす。このアルゴリズムは、CCTopで使用されているBowtie1アルゴリズムとは異なっており、CCTopのようにPAM領域付近のミスマッチが5塩基のうちの2塩基に制限されていない点においてわずかに許容性の高い探索が可能である。
1.2.1.3. PAM
初期設定では、スクリーニングは、いくらかの最大活性を有するNGGまたはNAG PAMを用いたガイドの探索によって行われる。後期のスクリーニングは、オフターゲット部位を(活性が非常に低いものであっても)見逃さないことを保証するために、さらに多くのPAMを含み得る。
1.2.1.4. アルゴリズムの組合せ
各アルゴリズムによるガイドの出力を一緒に合わせて、同一のオフターゲット部位を取り除き、ハイブリッドキャプチャーベイトの設計構成要素に加える。
1.2.2. ハイブリッドキャプチャーベイト
1.2.2.1 設計
オフターゲット部位検出アルゴリズム(1.2.1.)によってもたらされた部位のリストは、次に、入力gDNA試料におけるオフターゲット部位の各々を豊富化するハイブリッドキャプチャープローブを産生するのに使用する。標的DNA配列の豊富化を成功させるには1つのベイトで十分であり得るが、特異的結合が困難であり得る反復配列がベイトの側面に隣接する場合であってもベイトが標的領域を特異的にプルダウンする可能性を高めるために、一般的には複数のベイトを設計し、標的部位にまたがってベイトをタイル状に重ねる(図24)。ベイト(20−mer、*で示される淡色部分)にまたがってタイル状に重なったハイブリッドキャプチャーベイト(120−mer、濃色部分)(図24)。
1.2.3. シークエンシング
ハイブリッドキャプチャー豊富化の後に、Illumina HiSeqシークエンサー上でペアードエンド125bpリード及び175bp挿入サイズでシークエンシングが行われる。典型的には、シークエンシングは最小頻度事象から検出される5リードを有することを標的化するカバレッジ深度を標的化するように行われる。例えば0.5%のインデル事象を検出するには、0.5%の事象が5リードを有するように1000xカバレッジへのシークエンシングが実施される。
1.2.4. ベイトの有効性
典型的な実験において、発明者らは、ベイトが大多数の標的部位を高いレベルのシークエンシングカバレッジで網羅することを見いだしている。シークエンシングカバレッジには、次世代シークエンシング(NGS)法では達成され得るいくつかの制限が存在するが、それは、高いまたは低いGC%、複雑性の低い配列、低いベイト親和性、ベイト非特異性、及び他の理由に起因するものである。実験における実際のインデル検出パワーは、異なる真のインデル出現頻度を有する部位における異なるシークエンシングカバレッジのサンプリングパワーを計算することによって推定される。概して、シークエンスカバレッジの増加によって、低出現頻度のインデルを有する部位に対する検出パワーが増加する。例えば、ある部位が2500xシークエンシングカバレッジを有する場合、ハイブリッドキャプチャーはインデル出現頻度0.4%の部位の参照には99%のパワーを有し、インデル出現頻度0.3%の部位の参照には94%のパワーを有することになる(図25)。
1.2.5. 定量化
ヒトゲノムビルドhg38に対するデフォルトパラメーターを用いたBWAアルゴリズムを用いて、シークエンシングデータを整列させる。各潜在的オフターゲット部位において、潜在的Cas9切断部位の全ての3bp以内のインデルをカウントし、切断部位におけるカバレッジにより分類し、よって特定の切断部位におけるインデルの数がもたらされる。
1.2.6. 顕著な切断部位の統計評価
様々な事象がCRISPR−Cas9の結果ではないインデルをもたらす可能性があり、これはゲノム生殖系列インデルバリアントまたは多型、ゲノム切断を受けやすい領域、ホモポリマーランを有する領域、及び他の点でシークエンシングが困難な領域のように、ゲノム全体にわたる部位で検出される。
1.2.6.1. 解析から除外される部位
ドナーごとの「生殖系列」インデルを伴う任意の部位(あらゆる試料においてドナーは>30%のインデル出現頻度を有する)、女性の試料における任意の染色体Y部位、及び0カバレッジを伴う任意の部位は、解析から除外する。
1.2.6.2. 統計検定
潜在的オフターゲット部位で見られるインデルが本当にCRISPR−Cas9誘導事象であるかどうかを評価するため、マン・ホイットニーウィルコクソン検定及びスチューデントt検定の両方を使用して、Cas9及びガイドを用いて処置した試料が未処置試料よりも有意に高い出現頻度のインデルを有するかどうかについて試験を行う。これらの検定のいずれかが有意(p<0.05)である場合、その部位に、PCRで追跡し有意な編集が存在するかを判定するためのフラグが立ったものとみなす。可能な限り積極的に追跡部位にフラグを立てることを保証するため、有意であると見いだされる部位の数を減少させると考えられる多重仮説検定補正は実施しない。
また、陰性対照解析も確立させて解析を繰り返し、それ以外では処置試料よりも非処置試料において高い出現頻度のインデルを有する部位を探す。生物学的には、この解析で「真のヒット」を見いだすことを期待する根拠はないが、当該解析では、このデータセット内で発見を予測することができるバックグラウンドノイズに起因し得る偽陽性の数についての経験的な情報がもたらされる。さらに、Cas9またはガイドなしでエレクトロポレーションした細胞、及びCas9及びGFPガイドを用いてエレクトロポレーションした細胞を含めた追加の2つの陰性対照試料を投入することにより、これを経験的な帰無分布へと拡大することができる。「処置が少ない」試料のヒットを「処置が多い」試料と比較して検定することにより、偽陽性ヒットにおける保存的で経験的な帰無分布を決定し、これは、処置試料vs非処置試料についての独自解析におけるヒットの信用性を申告するのに使用することができる。
SD2 gRNAを用いて編集されたヒトmPB CD34+細胞及びSPY101 gRNAを用いて編集されたヒトmPB CD34+細胞を、本明細書に記載のハイブリッドキャプチャーシークエンシング法によって解析した。図26〜27に提示された結果は、3〜4名の異なるドナーからのものであり、遺伝子編集mPB CD34+細胞(これは、SD2 gRNAを用いて編集した細胞(図27)及びSPY101 gRNAを用いて編集された遺伝子編集mPB CD34+細胞(図26)である)において、切断の根拠を伴う0オフターゲット部位が実証された。ラウンド1のインデル出現頻度は0.5%より大きい(>)。ラウンド2のインデル出現頻度は0.2%より大きい(>)。
実施例20 移植実験
CliniMACS CD34マイクロビーズ及びCliniMACS Prodigy(Miltenyi Biotec)を用いて健康なドナーからヒト動員末梢血(mPB)CD34+細胞を単離し、100ng/mlの組換えヒト幹細胞因子(SCF)、100ng/mlの組換えヒトFit3−リガンド(FLT3L)、及び100ng/mlのトロンボポエチン(TPO)を含む無血清CellGro(登録商標)培地中で培養した。次に、Maxcyte(登録商標)デバイスを用いて、製造業者の指示に従って、以下のうちの1つを用いて細胞にエレクトロポレーションした:いずれのCRISPR/Cas9編集構成要素も含有しない空のベクター(模擬エレクトロポレーション試料)、陰性対照としてのGFP gRNA及びCas9タンパク質(GFP)、SPY101 gRNA及びCas9タンパク質(SPY101)、またはSD2 gRNA及びCas9タンパク質(SD2)。組換えCas9タンパク質は、2つのSV40核局在化配列(NLS)に隣接するS.pyogenes Cas9をコードする。これらの実験は、gRNA:Cas9の重量比が1:1のリボ核タンパク質(RNP)を用いて実施した。
各遺伝子編集されたmPB CD34+ヒト細胞を16匹の免疫低下マウス(「NSG」またはNOD scidガンマ(NOD))に尾静脈経由で注射して、ホーミング及び移植の能力を実証した。NSGは、近交系の実験用マウス系統であり、現時点において最も免疫不全性の高いものの1つとして説明される。例えば、Shultz et al.,Nat.Rev.Immunol.7(2):118−130(2007)を参照。移植実験に関する詳細は、図28に提示されている。注射後8週時にNSGマウスを出血させ、FACSにより、末梢血のヒトCD45RA+及びマウスCD45+生細胞について解析した。注射後16週時にNSGマウスを屠殺し、FACSにより、骨髄、脾臓、及び末梢血のヒトCD45RA+及びマウスCD45+生細胞について解析した。全ての処置群において照射NSGマウスへのmPB CD34+ヒト細胞移植を3名全ての健康なドナーから観察した。全てのドナーからの3つ全ての造血臓器において、FACSを用いてヒトCD45RA+細胞が検出された。トランスフェクションしていないCD34+対照細胞はわずかに良好な移植パーセンテージを示した。全てのトランスフェクション細胞群は、模擬トランスフェクション群を含め、3名全てのドナー全体において同様の移植パーセンテージを有した。概して、Cas9−gRNA RNPの付加は、模擬トランスフェクション対照と比較して移植に影響を及ぼさなかった(図29A〜E及び図30)。図29A〜Eにおけるデータ点は、個々のマウスを表し、ヒトCD45RA+生細胞であった生細胞のパーセンテージを図示している。データは平均±SEMである。
実施例21 Cas9 RNPを用いたSPY101の編集効率及び有効性の評価
SPY101を用いたSCD及びβ−サラセミアの処置に対しCRISPR−Cas9を用いて最も高い有効性を達成するため、発明者らは、2つの異なるCas9フォーマット、Cas9 mRNAまたはCas9タンパク質について、動員末梢血(mPB)からのヒトCD34+細胞における編集効率、有効性、及び毒性を評価した。Cas9タンパク質に対するCas9 mRNAについての様々なソースの比較を、Cas9 mRNA及びSPY101 gRNAまたはSPY101 gRNAと複合体化されたCas9タンパク質(リボ核タンパク質(RNP)複合体として)をヒトmPB CD34+細胞にエレクトロポレーションし、エレクトロポレーション後48時間時におけるこれらの編集効率及び細胞生存率を評価することによって行った。Cas9タンパク質に対するCas9 mRNAの様々なソースを比較し、一部のCas9 mRNAはCas9タンパク質に対し同様のレベルの編集効率を達成できる(図31)一方で、図32A〜Bに示されるように、ほとんどは対照試料(エレクトロポレーションなし(EPなし)または基質なしのエレクトロポレーション(模擬EP)の対照)と比較して有意に低い細胞生存率を有することを見いだした。このことは、Cas9 RNPが、ヒトmPB CD34+細胞へのCas9及びgRNAの効率的送達のために使用する上で最良のフォーマットであることを示している。
次に、Cas9タンパク質について種々のソースを比較し、さらにNまたはC末端に様々な数の核局在化シグナル(NLS)を有するCas9タンパク質についても、編集をもたらす核へのCas9の効率的な局在化に影響を及ぼし得るため比較した。図33A〜Cに示されるように、N及びC末端の両方に1つのNLSを有するAldevron Cas9タンパク質は細胞生存率の変化を伴わずに最良の編集効率をもたらすことが見いだされた。
次に、Cas9 mRNAまたはCas9タンパク質(先の実施例から選択されたFeldanまたはAldevron)を用いて様々なヒトmPB CD34+ドナーにわたって調べたSPY101編集効率を収集し、Aldevron Cas9タンパク質が最も高い編集効率をもたらすことが観察された(図34A)。さらに、Cas9タンパク質を用いた臨床スケールでのGMP適合性の製造において、同様の比率の編集効率を達成することができた(図34B)。
次に、mPB(図35A〜B)または骨髄(BM、図36A〜B)に由来するいくつかのCD34+ドナー全体におけるSPY101の有効性を調べた。発明者らの最適化プロセス全体にわたり、赤血球系分化CD34+細胞におけるα−グロビンまたはβ−グロビン様グロビン(β−グロビン+γ−グロビン)に対するγ−グロビン発現として定量的リアルタイムPCRによって測定された有効性が、より良好に達成されることが分かった。
次に、SPY101がSCDまたはβ−サラセミア患者から得られた細胞内で有効であるかどうかを調べた。健康なドナーまたは患者からの末梢血単核球に対し、SPY101 Cas9 RNP及び上記実施例と同様の赤血球系分化を用いてエレクトロポレーションし、それからRNAを抽出してγ−グロビン発現を測定した。SPY101が確かに患者試料内でのγ−グロビン増加において有効であることが分かった(図37A〜B)。
SPY101編集赤血球系細胞における表現型と遺伝子型との関係をより十分に理解するため、実施例15と同様の単一コロニー解析をCas9 RNPを用いて実施し、これにより、Cas9 mRNAに比べてCas9 RNPを用いた場合に、より大きな画分の両アレル編集コロニーが増加することが分かった(図38A〜B)。さらに、未編集コロニー、SPY101により標的化されたGATA1結合部位の単一アレル分断、及びGATA1結合部位の両アレル分断の詳細なブレイクダウンから、対照GFP gRNA処置細胞と比較してのγ−グロビン増加として測定された有効性の用量依存性がSPY101において明らかになった(図39A〜B)。
γ−グロビンを発現する細胞のパーセンテージを調べるため、ヒトmPBからのSPY101 Cas9 RNP編集CD34+細胞におけるFACS解析を実施した。対照GFP gRNA処置細胞と比較すると、SPY101編集細胞では、γ−グロビンを発現する赤血球系分化細胞のパーセンテージがより高く(図40A〜D)、細胞当たりのγ−グロビン発現が増加した(図40E)ことが分かる。
例示的な実施例に関する注記
本開示は、本発明の様々な態様及び/または潜在的用途を例示する目的で、様々な特定の態様における説明を提供しているが、バリエーション及び改変が生じ得ることが当業者には理解される。したがって、本明細書に記載の発明(単数または複数)は、少なくとも特許請求される内容と同じ範囲で理解されるべきであり、本明細書で提供される特定の例示的態様によって定義されるより狭い範囲で理解されるべきではない。
本明細書で特定された任意の特許、刊行物、または開示資料は、別段の指示がない限り、ただし、組み込まれる資料が既存の説明、定義、記載、または本明細書で明示的に記された他の開示資料と矛盾しない程度において、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。そのようなものとして、また必要な程度において、本明細書で記された明示的開示は、参照により組み込まれたいかなる矛盾する資料にも優先される。参照により本明細書に組み込まれると述べられ、ただし既存の定義、記載、または本明細書に記された他の開示資料と矛盾する任意の資料またはその一部は、この組み込まれた資料と既存の開示資料との間に矛盾が生じない範囲にとどまって組み込まれる。出願人らは、本明細書を修正して、参照により本明細書に組み込まれる任意の主題またはその一部を明示的に挙げる権利を留保する。