JP6781171B2 - 黒鉛膜及び黒鉛テープ - Google Patents
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Description
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、黒鉛膜の一部を宙に浮かせた状態で使用したときの耐熱性、特に熱サイクルに対する耐久性、部分加熱時の耐熱性、部分熱サイクルに対する耐久性を高めた黒鉛膜を提供することである。また本発明の他の目的は、部分加熱する加工方法で黒鉛膜の一部を宙に浮かせた状態で加工したときの耐久性を高めることである。
また従来は厚さ10μm以下の黒鉛膜のシワの大きさを、図1(b)や図1(d)に示すような適度な範囲に制御する方法が知られておらず、特に大面積で、a−b面方向(すなわち膜面方向)の高い電気伝導度を有する黒鉛膜のシワを制御する方法が知られておらず、適度なシワによる耐久性の改善に至るには、そもそもシワの制御方法を開発する必要があった。特にポリイミドのような市場で入手しやすい高分子原料を用いて、10μm以下という広い厚み範囲で、1cm×1cm以上という大面積の全域に関して、膜厚に対して一定の割合の高さのシワを均一に形成して耐熱性・耐久性を向上させ、なおかつ400S/cm以上という高い電気伝導度である黒鉛膜を得る方法は開発されておらず、こうした黒鉛膜の開発自体が大きなチャレンジであった。そして本発明者らは、適切な大きさのスペーサーを高分子膜、炭素化膜、又は黒鉛膜の両面に適度に分布させ、これら高分子膜、炭素化膜、又は黒鉛膜を平滑な基板で挟んで両側から適切な圧力でプレスしつつ、炭素化温度、黒鉛化温度、又は再黒鉛化温度で処理すれば適度なシワを形成できることを見出し、その結果、上述した様に黒鉛膜の耐熱性・耐久性を向上できることを見出し、本発明を完成した。
(1)面積が1×1cm2以上であり、厚みが10nm〜10μmであり、膜面方向の電気伝導度が400S/cm以上であり、厚みに対する表面の算術平均粗さRaの比率が1.0〜600または0.3以下であることを特徴とする黒鉛膜。
(2)複数箇所の算術平均粗さRaを測定したときの各箇所の値が、全複数箇所での測定結果から求まるRaの平均値に対して、±25%以内である(1)に記載の黒鉛膜。
(3)密度が1.5g/cm3以上である(1)又は(2)に記載の黒鉛膜。
(4)膜の表面と裏面の両方が視野に入る、膜面に対して垂直方向の断面SEM画像にて、黒鉛膜の断面積の70%以上の面積で、膜面に平行な層が積層した空隙のない層構造が観察される(1)〜(3)のいずれか1つに記載の黒鉛膜。
(5)高分子膜を炭素化及び黒鉛化することにより黒鉛膜を得る工程を含み、
得られた黒鉛膜を、再度、黒鉛化温度で処理する再黒鉛化工程を必要により含み、
前記炭素化、黒鉛化、及び再黒鉛化の少なくとも1つの処理で、処理される高分子膜、炭素化膜、又は黒鉛膜の両面とプレス板の間に、前記高分子膜、炭素化膜、又は黒鉛膜の厚さをそれぞれ1としたときに厚さが0.4以下又は0.75〜350となるスペーサーを配置し、両側からプレス板を用いて前記高分子膜、炭素化膜、又は黒鉛膜を圧力0.3gf/cm2以上2500gf/cm2以下でプレスしつつ炭素化温度、黒鉛化温度、又は再黒鉛化温度で処理する(1)〜(4)のいずれか1つに記載の黒鉛膜の製造方法。
(6)幅が40mm以下、長さが幅の5倍以上である平行部を有し、材質が(1)〜(4)のいずれか1つに記載の黒鉛膜と同じである黒鉛テープ。
(7)(1)〜(4)のいずれか1つに記載の黒鉛膜をレーザー光線で切断し、幅40mm以下、長さが幅の5倍以上である平行部を切り出す黒鉛テープの製造方法。
(8)(1)〜(4)のいずれか1つに記載の黒鉛膜又は(6)に記載の黒鉛テープを、その最高温度が部分的に900℃以上になる熱環境下に配置する黒鉛膜又は黒鉛テープの使用方法。
(9)黒鉛膜又は黒鉛テープの一部が900℃以上の最高温度になるとき、黒鉛膜又は黒鉛テープの最低温を示す部分との温度差が300℃以上である(8)に記載の使用方法。
(10)複数の前記黒鉛テープを平行に並べる(8)又は(9)に記載の使用方法。
(11)前記黒鉛膜又は黒鉛テープの一部を支持部材に固定して残部を宙に浮かせ、この宙に浮いた部分が最高温度になる(8)〜(10)のいずれか1つに記載の使用方法。
(12)前記最高温度到達時の雰囲気が、圧力0.1MPa以上の不活性ガス又は圧力1000Pa以下の真空である(8)〜(11)のいずれか1つに記載の使用方法。
(13)黒鉛膜又は黒鉛テープが、通電、赤外線照射、レーザー光線照射、イオンビーム照射のいずれかによって加熱されて最高温度になる(8)〜(12)のいずれか1つに記載の使用方法。
(1.1)基本特性(面積、厚み、電気伝導度)
本発明は、面積が大きく、厚みが薄く、高品質(高電気伝導度)の黒鉛膜の改良技術に関する。こうした黒鉛膜は、その優れた品質のために種々の用途での利用が期待されつつも、面積が大きくて厚みが薄いために破れ等に対する耐久性や耐熱性の向上が求められるためである。
本発明の黒鉛膜は、図1(a)又は(c)に示すような状態を避け、図1(b)又は(d)に示す様に、表面のシワが適切な範囲に制御されている。そのため面積が大きくて厚みが薄いにも拘わらず、耐熱性・耐久性に優れている。
図1(a)は従来の黒鉛膜の一形態を示す概略断面図であり、シワの無い領域や細かいシワがある領域、大きなシワが集中している領域が混在しており、形成されているシワの不均一さが目立っている。このような黒鉛膜では、相対的に大きく鋭い凹凸部分と比較的平坦な部分の境界等において、高温加熱や冷却による局所的な歪みの影響が出やすく、加熱や、熱サイクルによって穴が開いたり、ヒビ割れが生じたり、破断したりしやすい。またシワが比較的均一に形成されていても、そのシワの凹凸高さが黒鉛膜の厚みに対して大きすぎる場合には、やはりシワの凹凸部分が高温加熱や冷却による局所的な歪みの影響で、穴が開いたり、ヒビ割れが生じたり、破断したりしやすい。さらにシワを均一にしても、図1(c)の様に、シワの凹凸の高さが適切でないと、高温加熱や冷却による局所的な歪みを、シワの伸縮や変形による緩衝効果によって緩和する能力が不足する。そのため加熱や冷却によって穴が開いたり、ヒビ割れが生じたり、破断したりしやすい。
前記黒鉛膜では、密度や膜内の空隙の制限は特にないが、密度は1.5g/cm3以上であることが好ましい。さらに1.6g/cm3以上、1.7g/cm3以上、1.8g/cm3以上、1.9g/cm3以上、1.95g/cm3以上、2.0g/cm3以上、2.05g/cm3以上、2.1g/cm3以上、2.15g/cm3以上であることは一層好ましい。なお密度が高いほど、破断や穴あきが発生する起点となる空隙部分が減り、また加熱された際に熱がこもりにくくなる。なお密度の上限は、例えば2.26g/cm3以下であり、2.20g/cm3以下であってもよい。
本発明の適度な高さのシワのある(適度な大きさのRaを持つ)黒鉛膜であっても、見かけ上のシワの高さを変更する様な各種表面処理を施すことが可能である。例えば、表面にカーボンや金属等を蒸着したり、カーボン等のペーストを塗布したり、カーボンや金属等の粒子を塗布したり、型押しにより凹凸を与えたり、切り目を入れたり、折り目を付けたり、プレスによりシワを押しつぶして平坦にしたりすることが可能である。特に黒鉛膜の一部分に関しては、このような表面処理をすることは有効である場合がある。表面処理によって見かけ上のシワの高さを変更することで、例えば枠などの他の部材に固定するときに表面の滑りと摩擦を適度に調節でき、他の部材との接着性を向上できる。このような表面処理をして凹凸の程度を変更した黒鉛膜も、処理前の表面凹凸が本発明の範囲内である限り、その段階で本発明に含まれることとなる。
前記黒鉛膜は、高分子膜や炭素化膜から黒鉛膜を製造する方法を基本とし、その適切な段階でスペーサーを用いたプレス処理を施すことによって製造できる。まず始めに、高分子膜から炭素化膜を経て黒鉛膜を製造する基本部分について詳述する。
高分子膜に使用される原料高分子は、成膜性を有し、焼成により良質の黒鉛になるものであれば特に限定はされないが、芳香族系高分子が好ましい。この芳香族系高分子としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリパラフェニレンビニレン、ポリキノキサリン、ポリオキサジアゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリキナゾリンジオン、ポリベンゾオキサジノン、ポリキナゾロン、ベンズイミダゾベンゾフェナントロリンラダーポリマー、およびこれらの誘導体から選択される少なくとも一種であることが好ましい。これらの高分子原料からなる膜は公知の製造方法で製造すればよい。特に好ましい原料高分子として芳香族ポリイミド、ポリパラフェニレンビニレン、ポリオキサジアゾールを例示する事ができ、特に芳香族ポリイミドが好ましい。
(2.1.1.1)ポリアミド酸
芳香族ポリイミドとしては、以下に記載する酸二無水物(特に芳香族酸二無水物)とジアミン(特に芳香族ジアミン)からポリアミド酸を経て作製される芳香族ポリイミドが特に好ましい。
前記酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、およびそれらの類似物を含み、それらを単独または任意の割合の混合物で用いることができる。 特に剛直な高分子構造を持つほどポリイミド膜の配向性が高くなり結晶性に優れた黒鉛が得られやすいことと、さらには入手性の観点から、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が特に好ましい。
1)芳香族ジアミンを極性有機溶媒中に溶解し、これと実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させて重合する方法、
2)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過小モル量の芳香族ジアミン化合物とを極性有機溶媒中で反応させ、両末端に酸無水物基を有するプレポリマーを得る。続いて、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法、
3)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過剰モル量の芳香族ジアミン化合物とを極性有機溶媒中で反応させ、両末端にアミノ基を有するプレポリマーを得る。続いてここに芳香族ジアミン化合物を追加添加後、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いて重合する方法、
4)芳香族テトラカルボン酸二無水物を極性有機溶媒中に溶解及び/または分散させた後、実質的に等モルとなるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法、
5)実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンの混合物を極性有機溶媒中で反応させて重合する方法、
などのような方法である。
ポリイミドの製造方法には、前駆体である上記ポリアミド酸のイミド化を加熱により行う熱キュア法や、ポリアミド酸に無水酢酸等の酸無水物に代表される脱水剤、ピコリン、キノリン、イソキノリン、ピリジン等の第3級アミン類をイミド化促進剤として用い、イミド化を行うケミカルキュア法がある。本発明ではいずれを用いても良い。得られるポリイミド膜が焼成中にプレスしても破損しにくく、また、高電気伝導度など品質の良い黒鉛膜を得やすいという観点からは、ケミカルキュア法が好ましい。一方で熱キュア法は、ポリアミド酸を加熱しなければイミド化が起こりにくいので、時間をかけてポリイミド製膜したい場合にも比較的容易に使用でき、例えばスピンコート法など様々なポリイミド製膜方法に適用しやすく、製造プロセス上の自由度が高いという利点がある。
上記のようにイミド化促進剤を加えず、単純に加熱によりイミド化を行い、ポリイミド膜を得ても良い(熱キュア法)。この場合の加熱温度も150℃から550℃の範囲が好ましい。
本発明の厚み範囲の黒鉛膜を得るためには、原料高分子膜の厚さは35μm〜20nmの範囲である事が好ましい。これは、最終的に得られる黒鉛膜の厚さは、一般に原料高分子膜の厚みが1μm以上では、原料高分子膜の厚さの60〜30%程度となり、1μm以下では50%〜20%程度となる場合が多いためである。従って、最終的に本発明の10nmから10μmの厚さの黒鉛膜を得るためには、原料高分子膜の厚さは35μm以下、20nm以上の範囲である事になるが、大抵の場合には30μm以下、30nm以上である。
前記高分子膜を不活性ガス中あるいは真空中で加熱することで炭素化膜を製造できる。不活性ガスは、窒素、アルゴンあるいはアルゴンと窒素の混合ガスが好ましく用いられる。炭素化は通常800℃〜1800℃程度の温度で行う。例えば、10℃/分の昇温速度で昇温して800℃〜1800℃程度に加熱し、そのまま10分間程度の温度保持を行う方法などが好ましく用いられる。昇温速度に特に制限は無いが、生産性向上の観点からは0.5℃/分以上が好ましく、また、十分な炭素化を行うためには100℃/分以下が好ましい。一般的には1℃/分〜50℃/分の間が好ましい。炭素化の際の加熱方式としては特に制限はないが、黒鉛ヒーター等の抵抗加熱式のヒーターによる方式や、赤外線照射による方式を好ましく用いることができる。
以上のようにして高分子膜から黒鉛膜を製造するだけでは、適切なシワ(凹凸)を形成することは困難である。高分子膜として芳香族ポリイミドを用いて炭素化する場合、炭素化時に元の高分子膜の75〜85%程度にまで炭素化膜が自然収縮することが多い。また、炭素化時及び黒鉛化時の膜の収縮・膨張を自然に任せた場合には、最終的に得られる黒鉛膜の膜面方向の寸法は、元の高分子膜の寸法の85〜95%程度となることが多い。こうした自然の収縮・膨張のために、黒鉛膜には大きなシワが偏っている領域とシワがあまり無い領域が混在したりして、適切なシワになることがない。
高分子膜、炭素化膜、又は黒鉛膜(以下、これらをまとめて被処理膜と称する)を挟むのに用いる前記プレス板は、曲面基板であってもよく、平面(平坦)基板であってもよい。また曲面基板と平面基板とで被処理膜を挟んでプレスしてもよい。
図7は、プレス板としての平面基板で被処理膜を挟んでプレスする方法の一例を示す概略断面図である。図7の例では、単純に2枚の平行な平面基板7bの間に挟んで被処理膜7aをプレスしている。このような方法であっても、スペーサーの選択やプレス条件を適切に選択することで、適切なシワを形成できる。
シワの制御は、前記プレス板の形状(曲面基板、平面基板)、プレスの方向性、被処理物の種類(高分子膜、炭化膜、黒鉛膜)、スペーサーの種類、粒径などの様々な要因が複雑にからみあうため、プレス条件を一義的に決定することは困難であるが、実施例における具体的な組み合わせを参考にしつつ、下記条件の範囲内で設定すればよい。
すなわちプレスの圧力は、例えば、0.3gf/cm2以上、3000gf/cm2以下の範囲から適宜設定できる。プレス圧力は、0.4gf/cm2以上、0.6gf/cm2以上、0.8gf/cm2以上、1.0gf/cm2以上、又は1.5gf/cm2以上とすることが好ましい。また2500gf/cm2以下、2000gf/cm2以下、1500gf/cm2以下、1000gf/cm2以下又は500gf/cm2以下とすることが好ましい。プレス圧力が弱すぎると意図に反して大きすぎる高さのシワが発生しやすく、プレス圧力が強すぎると膜の破れや、穴、ひび割れの原因となる。また、プレスに使用したプレス板に膜が密着して剥がれなくなる等の問題が生じる可能性が高くなる。さらには、強力なプレス機構が必要になると炉のプレス装置自体も大掛かりになる。
スペーサーとしては、被処理膜の処理温度に対する耐久性と、プレス圧に対する耐久性とを兼ね備えたものが望ましく、例えば、粒子状物や繊維状物が含まれる。このような特性を有するスペーサーとしては、例えば、グラッシーカーボン粒子、黒鉛粒子、黒鉛鱗片、フラーレン、炭素繊維、カーボンナノチューブのような炭素系・黒鉛系の粒子、繊維又は鱗片;シリカ、アルミナ、球状アルミナ、鱗片状窒化ホウ素のような無機粒子又は無機鱗片;ポリイミド粒子、ポリパラフェニレンビニレン粒子、ポリオキサジアゾール粒子のような加熱により炭素化又は黒鉛化する粒子等を適宜用いることができる。前記スペーサーには、シリカのように黒鉛化の最終段階である2800℃等の高温にまで耐えられない物質も含まれる。このような物質であっても、ある程度の高温までスペーサーとして働くことができれば、あとは形成された炭素化膜、あるいは黒鉛膜のシワ自体が、ある程度はスペーサーとしての機能も果たす。そのためプレス加重が800gf/cm2以下などのように比較的小さい場合には、問題なく使用可能である。
また一つの黒鉛膜においてRaの平均値を求め、これを複数の黒鉛膜間で平均したとき、各黒鉛膜のRa平均値を、この膜間平均値に対して、例えば、±40%以内、好ましくは±30%以内にすることが可能である。
一つの黒鉛膜において電気伝導度の平均値を求め、これを複数の黒鉛膜間で平均したとき、各黒鉛膜の電気伝導度の平均値もまた、膜間平均値に対して、例えば、±35%以内、好ましくは±25%以内にすることが可能である。
一つの黒鉛膜において厚さの平均値を求め、これを複数の黒鉛膜間で平均したとき、各黒鉛膜の厚さの平均値を、膜間平均値に対して、例えば、±25%以内、好ましくは±15%以内にすることもまた可能である。
一つの黒鉛膜において密度の平均値を求め、これを複数の黒鉛膜間で平均したとき、各黒鉛膜の密度の平均値を、膜間平均値に対して、例えば、±10%以内、好ましくは±5%以内にすることもまた可能である。
黒鉛膜を使用する際の形状としては特に制限は無く、正方形、長方形(テープ状)、円形、扇形、ドーナツ型、L字形、U字形、パンチングメタルのように多数の穴を開けた形状等を好ましく用いることができる。ただ本発明の特徴である耐久性の高さの効果が顕著に現れやすいのは、高い耐久性が求められる形態、例えば、薄く細長い形状であり、例えば、黒鉛テープが挙げられる。この黒鉛テープは、例えば、幅が40mm以下、好ましくは20mm以下、10mm以下、8mm以下、5mm以下、3mm以下、2mm以下又は1mm以下であり、通常、0.2mm以上である。幅が狭いほど、本発明の黒鉛膜を利用するメリットが生じる。また黒鉛テープの長さは、前記幅の5倍以上、好ましくは8倍以上、10倍以上、15倍以上、20倍以上、50倍以上又は100倍以上であり、通常、1000倍以下である。黒鉛テープは、前記幅と長さの平行部を有する限り、他の部分(例えば平行部の両端部)の形状は特に限定されない。例えば、枠体に黒鉛膜を張り、宙に浮いた部分を切断加工して前記平行部を残し、その両端は未加工のまま枠体に接着された状態のものもまた本発明の黒鉛テープに含まれる。
(4.1)温度、雰囲気
本発明の黒鉛膜は、シワが厚みに対して適切に制御されているため、黒鉛膜を宙に浮かせた状態で使用したときの耐熱性、特に熱サイクル時の耐久性、部分加熱時の耐熱性、部分熱サイクルに対する耐久性に優れており、またこの黒鉛膜から得られるテープも同様の耐久性に優れる。こうした耐熱性、耐久性に優れているため、黒鉛膜(黒鉛テープを含む)は、例えば、最高温度となる部分の温度が900℃以上となる使い方をしたときに、その優れた性能が発揮される。最高温度が1100℃以上、又は1300℃以上の場合はさらに顕著に優れた効果が示され、1400℃以上、1500℃以上、1700℃以上、1900℃以上、2100℃以上、2300℃以上、2500℃、2700℃、2900℃以上、3100℃以上である場合には、より顕著である。最高温度の上限は、黒鉛膜自体の耐熱温度であればよく、例えば、3400℃以下である。
本発明の黒鉛膜は、基板と積層して使用してもよいが、宙に浮いた部分を有する状態で(例えば、一部を支持部材に固定し残部を宙に浮かせた状態で)使用するのが好ましい。本発明の黒鉛膜は、このような支持体のサポートを受けない部分での耐久性に優れており、宙に浮いた状態でも安定して使用できる。単独の高電気伝導度かつ薄く大面積の黒鉛膜でこのような耐久性を備えることは、従来、不可能であった。
前記黒鉛膜の具体的な用途としては、発光デバイスの発光体;フィラメント;高電流容量の高耐熱導線;電気抵抗式の発熱体;強い赤外線や紫外線、X線、レーザー光線、イオンビーム、陽子ビーム、負極性水素イオンビーム、中性子ビーム、電子線ビームなどが照射される装置や分析方法、加工方法における防護膜や反射部材、支持基板、吸収部材、透過部材、回折部材、センサ、熱拡散部材、被検体、被加工物などが挙げられる。これらの用途では、黒鉛膜の少なくとも一部が900℃以上などの非常に高温になる。また多くの用途では1枚の黒鉛膜内で非常に高温の部分と、そうでない部分が同時に存在することになる。さらに多くの用途では加熱・冷却が繰り返される。このような用途に使用される場合でも、本発明の黒鉛膜であれば、耐熱性、耐久性に優れ、使用寿命を延ばすことができる。
本願は、平成28年1月29日に出願された日本国特許出願第2016−015082号に基づく優先権の利益を主張するものである。平成28年1月29日に出願された日本国特許出願第2016−015082号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
なお下記例における物性の測定法について、まとめて以下に示す。
(1)ポリイミド膜の厚さとその膜間ばらつき
図9はポリイミド膜の厚さ測定箇所を示す概略平面図である。正方形状のポリイミド膜9aの4隅において各辺から20mmずつになる箇所9bを厚さ測定箇所(合計4箇所)とし、これと中央(重心)9cとを合わせた5箇所を厚さ測定箇所とした。各箇所に対して接触式厚み計により厚み測定し、平均値をポリイミド膜の厚さとした。
図10に示す膜の4隅の4箇所10b(図中、□で示す)から5mm×5mmの大きさの4つのサンプルを切り出し、それぞれの厚みを接触式厚み計にて測定し、4箇所での平均値を黒鉛膜の厚さとした。
黒鉛膜の電気伝導度(シート抵抗)の測定はvan der Pauw法によって行った。この方法は薄膜状の試料のシート抵抗を測定するのに最も適した方法である。この測定法の詳細は(第四版)実験化学講座9 電気・磁気(社団法人日本化学会編、丸善株式会社発行(平成3年6月5日発行))(P170)に記載されている。この手法の特徴は、任意の形状の薄膜試料端部の任意の4点に電極を取り付け、測定を行うことが出来る事であり、試料の厚さが均一であれば正確なシート抵抗の測定が行える。これと黒鉛膜の厚みの測定値から、黒鉛膜の正確な電気伝導度を得ることができる。本発明においては図10に示す膜の4隅の4箇所10b(図中、□で示す)から5mm×5mmの大きさの4つのサンプルを切り出した。それぞれのサンプルで4つの角(稜)に銀ペースト電極を取り付け、(株)東洋テクニカ製、比抵抗/DC&ACホール測定システム、ResiTest 8300を用いてシート抵抗を測定し、電気伝導度を求めた。4箇所の平均値を黒鉛膜の電気伝導度とした。
(4.1)算術平均粗さRa
黒鉛膜の表面粗さ(算術平均粗さ)Raについては、JIS B 0601に基づき、表面粗さ測定機Surfcom DX((株)東京精密製)を使用し、室温雰囲気下での値を測定した。図10は約18cm角の正方形の黒鉛膜の平面図であり、表面粗さRaの測定箇所は、図10の5本の線分10aの中央部分(β)である。図中、αは黒鉛膜の一つの辺の中点であり、βは線分10aの中点であり、γはの黒鉛膜の重心である。例えばRaが80μmより大きい場合は、評価長さ125mm、基準長さL(カットオフ値)25mmとし、Raが10μmより大きく80μm以下の場合は、評価長さ40mm、基準長さL(カットオフ値)8mmとした(他のRaの場合の基準長さの決定は、JIS B 0633に従う)。送り速度0.05mm/秒で描いたチャートから基準長さLの部分を切り取り、その切り取り部分の中心線をX軸、縦方向をY軸として、粗さ曲線Y=f(X)で表したとき、次の式(1)で得られる値をμmで表したものが算術平均粗さRaである。黒鉛膜の5箇所(5つの線分10aの中央部分β)にてそれぞれRaの値を求め、さらに5箇所のRaの平均値を求め、これを黒鉛膜の算術平均粗さRaとした。
算術平均粗さRa(黒鉛膜1枚につき5箇所測定)決定時に選択された3枚の黒鉛膜に対して、それぞれ上述の様にして厚み(黒鉛膜1枚につき4箇所測定)を求めた。該黒鉛膜ごとに、算術平均粗さRa(μm)/厚み(μm)の比を求め、その平均値を下記例のRa(μm)/厚み(μm)比とした。また各黒鉛膜でのRa(μm)/厚み(μm)の比の、3枚の平均値に対する割合(ばらつき。%)を膜間ばらつきとした。
前記厚み測定で選ばれた5枚の黒鉛膜について厚みの平均値をもとめ、この平均値に最も近いもの1枚を選択した。この1枚の黒鉛膜について、各測定箇所(5箇所)の算術平均粗さRaを求め、各箇所の測定結果の、5箇所平均に対する割合(ばらつき。%)を膜内ばらつきとした。
黒鉛膜の密度は乾式自動密度計アキュピックII 1340(株式会社 島津製作所製)を用いて測定した。前記厚み測定で選ばれた5枚の黒鉛膜について、1枚ずつ密度を測定した。5枚の黒鉛膜それぞれの密度の、この5枚での平均値に対する割合(ばらつき。%)を膜間ばらつきとした。
(5.1)概要
黒鉛膜の熱サイクル耐久性については、黒鉛膜に電流を流して黒鉛膜自体を発熱させる通電加熱方式と、黒鉛膜に赤外線を照射して加熱する赤外線加熱方式の2通りの加熱方式で評価した。通電加熱方式の試験は、アルゴンガス雰囲気中(0.105MPa〜0.11MPa)、および真空中(10Pa以下)の両方で行った。また赤外線加熱方式の試験は、真空中で行った。
図12に示す様に固定された試験片の長辺方向に電流を流した。この通電により、黒鉛膜の宙に浮いた部分13a(1cm×4cm)が加熱され、特に中央の短辺方向約1cm、長辺方向約3mmの部分13bが選択的に非常に高温になる(図13参照。黒鉛膜の宙に浮いた部分13aの両端部分は、銅製冷却水ジャケット12cによる冷却の影響で、あまり高温にはならない)。黒鉛製ホルダー12bの温度は熱電対により測定され、その値は使用条件で異なるが、高くても500℃以下であり、400℃以下、300℃以下、200℃以下である場合が多い。このため最高温度まで通電加熱された際の黒鉛膜13aは、中央付近13bと両端部分とで大きな温度差を生じることになる。
図12に示す様に固定された試験片に赤外線を照射し、黒鉛膜の宙に浮いた部分14a(1cm×4cm)の中央の短辺方向約1cm、長辺方向約1cmの部分14bを選択的に非常に高温に加熱した(図14参照)。黒鉛製ホルダー12bの温度は熱電対により測定され、その値は使用条件で異なるが、高くても500℃以下であり、400℃以下、300℃以下、200℃以下である場合が多い。このため最高温度まで赤外線加熱された黒鉛膜14aは、中央付近14bと両端部分とで大きな温度差を生じることになる。
図15は、レーザーカット試験の概要を説明するための概念図である。図15に示すように、約18cm角の黒鉛膜15aの対向する2つの辺を銅製の枠15cに接着剤で貼り付けて、黒鉛膜15aを宙に水平に張った。この張られた黒鉛膜の中央付近に、所定長さ(5cm又は10cm)の切り込み15bを所定間隔(長さ5cmのときは、間隔1.2mm。長さ10cmのときは、間隔1.0mm)でレーザー照射によって形成した。切り込み15bの本数は101本(図には本数を省略して示した)とし、間に挟まれた100本のテープ状部分15dのうち破断したものの本数を数えた。なお計数するのは、両端を含めて、完全に切断された状態になったテープ状部分15dの本数であり、破断の有無は、目視およびテープを単独で取り出した上での2端子のテスターによる電気抵抗測定(1MΩ以上(破断)か否か(破断せず))にて決定した。
<ポリイミドの製膜>
ピロメリット酸二無水物(PMDA)及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)をモル比で1/1(すなわち4/4)の割合で合成したポリアミド酸の18重量%のDMF溶液100gに無水酢酸20gとイソキノリン10gからなるイミド化促進剤を混合、攪拌し、遠心分離による脱泡の後、アルミ箔上に流延塗布した。攪拌から脱泡までは0℃に冷却しながら行った。このアルミ箔とポリアミド酸溶液の積層体を100℃、250℃、450℃で各60秒間加熱した後、アルミ箔をエッチングにより除去し、20cm×20cmの正方形のポリイミド膜を10枚作製し、前記ポリイミド膜の厚さの測定に記載した基準に基づき、7枚を選択した。選ばれた7枚の平均厚みは22.1μmであり、膜間ばらつき±15%以内である。
選ばれた7枚のポリイミド膜をそれぞれ黒鉛製ガスケットに挟み込み、電気炉を用いて窒素ガス雰囲気中、2℃/分の速度で950℃まで昇温し、950℃で10分間保ったのち自然冷却させることで炭素化膜を得た。
得られた7枚の炭素化膜のそれぞれの両面に、スペーサーとしての平均粒径(d50)が7.4μmの鱗片状の窒化ホウ素を、刷毛を用いて塗布し、次に炭素化膜の縁の1辺を持って炭素化膜を鉛直方向に垂らし、軽く揺らして余分な鱗片状窒化ホウ素を落とした。
表面が鏡面であって、向きをそろえたドーム型グラッシーカーボン(GC)板8枚の間に、鱗片状の窒化ホウ素を両面に付着させた前記炭素化膜7枚を、GCと炭素化膜とが交互になる様に挟み込んだ(図6)。なお前記ドーム型GC板は、直径が32cmであり、片面(ドームの内面)の曲率半径が300cmで、もう片方の面(ドームの外面)の曲率半径が280cmである。
各条件を下記表1〜2に示す様に変更した。表中、同じ内容が記載されている部分は、同じ作業を実施したことを示し、表に示されていない点については実施例1と同様に実施したことを示す。
なお実施例3の様に組成(PMDA/ODA/PDA)が4/3/1と記載されている例では、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、p−フェニレンジアミン(PDA)をモル比で4/3/1の割合で合成したポリアミド酸の18重量%のDMF溶液を用いる以外は実施例1と同様にして、ポリイミド膜を作製した。
6a、7a、8a 被処理膜(高分子膜、炭素化膜、黒鉛膜)
6b、6c、7b、8b プレス板
Claims (14)
- 面積が1×1cm2以上であり、厚みが10nm〜10μmであり、膜面方向の電気伝導度が400S/cm以上であり、厚みに対する表面の算術平均粗さRaの比率(μm/μm)が1.0〜600または0.3以下であることを特徴とする黒鉛膜。
- 複数箇所の算術平均粗さRaを測定したときの各箇所の値が、全複数箇所での測定結果から求まるRaの平均値に対して、±25%以内である請求項1に記載の黒鉛膜。
- 密度が1.5g/cm3以上である請求項1又は2に記載の黒鉛膜。
- 膜の表面と裏面の両方が視野に入る、膜面に対して垂直方向の断面SEM画像にて、前記黒鉛膜の断面積の70%以上の面積で、膜面に平行な層が積層した空隙のない層構造が観察される請求項1〜3のいずれか1項に記載の黒鉛膜。
- 一つの黒鉛膜においてRa(μm)の平均値と厚さ(μm)の平均値の比(Ra平均値/厚さ平均値)を求め、これを複数の黒鉛膜間で平均したとき、各黒鉛膜のRa平均値/厚さ平均値は、複数の黒鉛膜間の平均値に対して、±50%以内である請求項1〜4のいずれかに記載の黒鉛膜。
- 高分子膜を炭素化及び黒鉛化することにより黒鉛膜を得る工程を含み、
得られた黒鉛膜を、再度、黒鉛化温度で処理する再黒鉛化工程を必要により含み、
前記炭素化、黒鉛化、及び再黒鉛化の少なくとも1つの処理で、処理される高分子膜、炭素化膜、又は黒鉛膜の両面とプレス板の間に、前記高分子膜、炭素化膜、又は黒鉛膜の厚さをそれぞれ1としたときに厚さが0.4以下又は0.75〜350となるスペーサーを配置し、両側からプレス板を用いて前記高分子膜、炭素化膜、又は黒鉛膜を圧力0.3gf/cm2以上2500gf/cm2以下でプレスしつつ炭素化温度、黒鉛化温度、又は再黒鉛化温度で処理する請求項1〜5のいずれか1項に記載の黒鉛膜の製造方法。 - 幅が40mm以下、長さが幅の5倍以上である平行部を有し、材質が請求項1〜5のいずれか1項に記載の黒鉛膜と同じである黒鉛テープ。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の黒鉛膜をレーザー光線で切断し、幅40mm以下、長さが幅の5倍以上である平行部を切り出す黒鉛テープの製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の黒鉛膜又は請求項7に記載の黒鉛テープを、黒鉛膜又は黒鉛テープの最高温度となる部分が900℃以上になる熱環境下に配置する黒鉛膜又は黒鉛テープの使用方法。
- 黒鉛膜又は黒鉛テープの一部が900℃以上の最高温度になるとき、黒鉛膜又は黒鉛テープの最低温度を示す部分との温度差が300℃以上である請求項9に記載の使用方法。
- 複数の前記黒鉛テープを平行に並べる請求項9又は10に記載の使用方法。
- 前記黒鉛膜又は黒鉛テープの一部を支持部材に固定して残部を宙に浮かせ、この宙に浮いた部分が最高温度になる請求項9〜11のいずれか1項に記載の使用方法。
- 前記最高温度到達時の雰囲気が、圧力0.1MPa以上の不活性ガス又は圧力1000Pa以下の真空である請求項9〜12のいずれか1項に記載の使用方法。
- 黒鉛膜又は黒鉛テープが、通電、赤外線照射、レーザー光線照射、イオンビーム照射のいずれかによって加熱されて最高温度になる請求項9〜13のいずれか1項に記載の使用方法。
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