JP6552385B2 - 耐熱性と加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板とその製造方法、および当該ステンレス鋼製排気部品 - Google Patents
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加工性の点では、特許文献2記載の様な鋼成分だけでは満足されないことから、結晶粒度や断面硬度の調整によって精密加工性を格段に向上させることに成功した。加えて、排気効率や熱効率を向上させるために、表面粗さを制御する方法を知見し、耐熱性と加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板の提供を可能とした。
表面平滑性を得るためには、鋳造品の切削処理や研削処理、あるいは冷延焼鈍後に研磨処理することが考えられるが、本発明では冷延焼鈍後の酸洗処理によって表面平滑性を確保できるので、切削や研削工程の省略あるいは負荷低減に寄与することが可能である。
(1)
質量%で、C:0.005〜0.2%、Si:0.1〜4%、Mn:0.1〜5%、P:0.01〜0.05%、S:0.0001〜0.01%、Ni:5〜20%、Cr:15〜30%、N:0.01〜0.4%、Al:0.005〜1%、Cu:0.05〜3%、Mo:0.01〜3%、V:0.05〜1%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、断面硬度Hvが190以下、結晶粒度番号が8.5以下であることを特徴とする耐熱性と加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板。
以下、更に追加含有する元素は、Feの一部を代替して追加含有される。
(2)
前記ステンレス鋼板の表面粗度がRzで30μm以下であることを特徴とする(1)に記載の耐熱性と加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板。
(3)
前記ステンレス鋼板が、更に、質量%でTi:0.005〜0.3%、Nb:0.005〜0.3%、B:0.0002〜0.0050%、Ca:0.0005〜0.01%の1種又は2種以上を含有することを特徴とする(1)又は(2)に記載の耐熱性と加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板。
(4)
前記ステンレス鋼板が、更に、質量%で、W:0.1〜3%、Zr:0.05〜0.3%、Sn:0.01〜0.5%、Co:0.03〜0.3%、Mg:0.0002〜0.01%、Sb:0.005〜0.5%、REM:0.001〜0.2%、Ga:0.0002〜0.3%、Ta:0.001〜1.0%の1種又は2種以上を含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の耐熱性と加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板。
(5)
請求項1〜4のいずれか1項に記載のステンレス鋼板の製造方法であって、請求項1、3および4のいずれか1項に記載の成分を有する鋼を熱間圧延し、得られた熱延鋼板を1100℃〜1200℃まで加熱した後、400℃まで20℃/sec以上で冷却し、その後酸洗処理を施すことを特徴とする耐熱性と加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。
(6)
さらに、前記ステンレス鋼板を圧下率50%以下で冷間圧延し、得られた冷延鋼板を1100℃〜1200℃まで加熱した後、400℃まで20℃/sec以上で冷却し、その後酸洗処理を施すことを特徴とする(5)に記載の耐熱性と加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。
(7)
(1)〜(4)のいずれか1項に記載のステンレス鋼板を排気部品に用いたことを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼製排気部品。
先ず、断面硬度Hvについて説明する。排気部品は鋼板を成形加工して部品化されることが多いが、特にターボチャージャーのような精密部品では、加工品の加工精度の厳格化が要求される。例えば、前述したノズルプレートやノズルマウントと呼ばれる部品の場合、穴あけや穴拡げといった加工が施されるため、穴あけ時の穴寸法、穴内面性状、割れ有無、穴拡げ時の端部割れ、立ち上げ角度等がこれに該当する。また、ハウジングの場合にはスプリングバック等や減肉率が関連する。これらは、素材となるオーステナイト系ステンレス鋼板の硬度や介在物が影響し、本願発明では素材の断面硬度がビッカース硬度(Hv)で190以下とすることで、ターボチャージャーの穴拡げ加工において加工不良が生じないことを知見した。具体的には、ノズルプレートやマウントを穴拡げ加工した際に、端部の亀裂深さが0.1mm以下に抑制され、十分な加工精度が得られることである。これにより穴拡げ加工後に端部に過度な切削処理を施す必要が無くなり、コスト面も有益となる。この他、穴開け加工時の穴寸法精度についても、上記硬さを満足することにより、優れた穴寸法精度が得られる。さらに、加工性を確保するために断面硬度の上限はHv160にすることが好ましい。ここで断面硬度は、例えば鋼板断面(圧延方向と平行方向の断面)を研磨したサンプルを用いてJIS Z 2244によって測定されるもので、板厚中心部近傍について5か所以上測定して平均値を用いれば良い。尚、過度な軟質化は耐熱性に影響を与えるため、断面硬度の下限はHv110にすることが望ましい。
前記の様に本願発明では各種耐熱部品の加工性を考慮して軟質な素材を提供するが、Hv190以下を満足するために結晶粒度番号を8.5番以下とする。但し、過度な粗粒化により加工時の肌荒れ(オレンジピール)が顕著に生じるため、4番以上が望ましい。結晶粒度番号については、例えば鋼板断面(圧延方向と平行方向の断面)を研磨したサンプルを用いて、JIS G 0551によって結晶粒度番号が測定される。更に、製造性や耐熱性を考慮すると、結晶粒度の下限は4.5、上限は7.5にすることが望ましい。
上記の他、特にターボチャージャーやエキゾーストマニホールドの場合、素材の表面粗さが重要になることを本願では知見した。表面粗さは部品を切削加工する際に切削工程の負荷の点からも平滑表面が良い。また、精密部品の場合、ガスシール性の点からも平滑な方が良い。本願ではこれらに加えて、ガス流れを良好にして熱効率やターボチャージャーの効率を上げる効果があることを知見し、これらの効果が最大粗さ(Rz)を30μmにすることで得られることを見出した。従来の鋳鋼部品では表面粗さが大きいため、研磨あるいは切削処理によってこの効果を得ることが出来るが、本願では素材表面粗さを制御することで、研磨あるいは切削処理を省略するメリットが得られる。表面粗さ測定については、JIS B 0601に従い、鋼板表面に対して圧延方向と平行方向および直角方向に表面粗さが測定され、各々のRzの平均値を求める。素材の表面粗さと他部品との接触性ならびに排気効率、熱効率を種々検討した結果、圧延方向および圧延方向と直角方向の粗さ(Rz)の平均値が30μm以下であれば、シール性を保ちガス流動が局所的に乱れることなくスムーズに流動することを知見した。ガス流動が均一であることはターボチャージャーの排気効率向上ならびに排気管システム全体の熱効率の向上につながり、車の燃費向上にも直結する。更に、鋼板製造時の生産性やプレス加工による粗さの増加を考慮すると、Rzは5μm以下が望ましい。
次に鋼の成分範囲について説明する。成分含有量に関する%は、特に断りのない限り質量%を示す。
以上が、主要元素であるが、その他Feの一部の代替として以下の元素の1種または2種以上を含有することができる。
REM(希土類元素)は、一般的な定義に従う。スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)の2元素と、ランタン(La)からルテチウム(Lu)までの15元素(ランタノイド)の総称を指す。単独で添加しても良いし、混合物であっても良い。
次に製造方法について説明する。本発明の鋼板の製造方法は、製鋼−熱間圧延−焼鈍・酸洗あるいは製鋼−熱間圧延−焼鈍・酸洗−冷間圧延−焼鈍・酸洗よりなる。製鋼においては、前記必須成分および必要に応じて添加される成分を含有する鋼を、電気炉溶製あるいは転炉溶製し、続いて2次精錬を行う方法が好適である。溶製した溶鋼は、公知の鋳造方法(連続鋳造など)に従ってスラブとする。スラブは、所定の温度に加熱され、所定の板厚に連続圧延で熱間圧延される。上記の様に本願発明が対象となる部品には熱間圧延以降の工程において所定の結晶粒度、断面硬度、表面粗さを確保した製造条件が設定される。
熱間圧延後の鋼板は、熱延板焼鈍と酸洗処理が施される。通常、熱延板焼鈍温度は1000〜1100℃未満で成されて再結晶組織を得るが、本願では1100〜1200℃と高い温度で熱処理し、断面硬度Hvが190以下、結晶粒度番号が8.5以下を確保し、軟質で穴開け性、穴拡げ性および各種加工精度を確保する。
穴拡げ試験では、φ25mmの打ち抜き穴を内径32mmまで穴拡げした後、6mm高さの立ち上げ部端部の割れ状況を確認した。割れ深さが0.4mm以下であればターボ部品性能に支障をきたさないため、0.4mm以下の場合を合格(○)、0.4mm超の亀裂が生じた場合を不合格(×)とした。高温引張については、900℃において20MPa以上の耐力を有する鋼について合格(○)、20MPa未満の場合を不合格(×)とした。
表3と表4に示す製造条件で製造した結果、本発明例の鋼は加工性、耐熱性、表面性状に優れ、ターボチャージャー部品としての性能を満足することが確認される。断面硬度、結晶粒度、表面粗さの内1つ以上が本発明範囲外では、加工精度やターボチャージャー性能が不良となり不具合が生じる。また、高温強度が不良の場合もクリープ変形によってターボチャージャー性能に不良が生じてしまう。
Claims (7)
- 質量%で、C:0.005〜0.2%、Si:0.1〜4%、Mn:0.1〜5%、P:0.01〜0.05%、S:0.0001〜0.01%、Ni:5〜20%、Cr:15〜30%、N:0.01〜0.4%、Al:0.005〜1%、Cu:0.05〜3%、Mo:0.01〜3%、V:0.05〜1%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、断面硬度Hvが190以下、結晶粒度番号が8.5以下であることを特徴とする耐熱性と加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板。
- 前記ステンレス鋼板の表面粗度がRzで30μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の耐熱性と加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板。
- 前記ステンレス鋼板が、更に、質量%でTi:0.005〜0.3%、Nb:0.005〜0.3%、B:0.0002〜0.0050%、Ca:0.0005〜0.01%の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の耐熱性と加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板。
- 前記ステンレス鋼板が、更に、質量%で、W:0.1〜3%、Zr:0.05〜0.3%、Sn:0.01〜0.5%、Co:0.03〜0.3%、Mg:0.0002〜0.01%、Sb:0.005〜0.5%、REM:0.001〜0.2%、Ga:0.0002〜0.3%、Ta:0.001〜1.0%の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐熱性と加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のステンレス鋼板の製造方法であって、請求項1、3および4のいずれか1項に記載の成分を有する鋼を熱間圧延し、得られた熱延鋼板を1100℃〜1200℃まで加熱した後、400℃まで20℃/sec以上で冷却し、その後酸洗処理を施すことを特徴とする耐熱性と加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。
- さらに、前記ステンレス鋼板を圧下率50%以下で冷間圧延し、得られた冷延鋼板を1100℃〜1200℃まで加熱した後、400℃まで20℃/sec以上で冷却し、その後酸洗処理を施すことを特徴とする請求項5に記載の耐熱性と加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のステンレス鋼板を排気部品に用いたことを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼製排気部品。
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