(第1実施形態)
以下、本発明に係る無段変速機の一実施形態である第1実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る無段変速機100の全体構成の概略を模式的に示す断面図である。また、図2は、図1に示す2−2線から見た無段変速機100の内部構成の概略を模式的に示す断面図である。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。この無段変速機100は、二輪自動車両(所謂オートバイ)において原動機であるエンジン80で発生させた回転駆動力を二輪自動車両の後輪である駆動輪90に対して変速比を連続的に変化させながら伝達する機械装置であり、二輪自動車両におけるエンジン80の周辺(例えば、着座シートや燃料タンクの下方)に設けられる。
(無段変速機100の構成)
無段変速機100は、外側伝達体ホルダ101を備えている。外側伝達体ホルダ101は、エンジン80からの回転駆動力を受けて回転駆動するとともに外側サイクロイド伝達体104を保持する金属製の部品であり、円筒体における一方側が開口するとともに他方側が側壁によって閉塞した有底筒状に形成されている。この外側伝達体ホルダ101は、図示左側側壁の中央部から延びた軸体に入力ギア101aが設けられるとともにこの軸体の先端部がケーシング103の側壁に回転自在な状態で支持されている。
入力ギア101aは、プレ減速ギア102を介して伝達されるエンジン80の回転駆動力によって回転駆動する機械要素であり、外側伝達体ホルダ101と一体的に回転駆動する。プレ減速ギア102は、エンジン80の回転駆動力を減速して入力ギア101aに伝達する機械要素であり、エンジン80から延びてケーシング103を回転自在な状態で貫通するクランク軸の先端部に設けられている。
ケーシング103は、外側伝達体ホルダ101などの無段変速機100を構成する主要部品を覆って無段変速機100の外筐を構成する金属製の部品である。一方、外側伝達体ホルダ101の内周面には、外側サイクロイド伝達体104が外側伝達体ホルダ101の軸線方向に沿って変位可能、かつ同外側伝達体ホルダ101と一体回転可能な状態でスプライン嵌合によってそれぞれ保持されている。
外側サイクロイド伝達体104は、この無段変速機100における変速比を変化させるための部品であり、金属材をリング状に形成して構成されている。この外側サイクロイド伝達体104は、後述する内側サイクロイド伝達体107およびカージオイド中間伝達体120の各外側を包囲する内径のリング体で構成されている。本実施形態においては、4つのカージオイド中間伝達体120が内接する内径のリング体で構成されている。
外側サイクロイド伝達体104の内周面には、外側サイクロイド曲面105が形成されている。外側サイクロイド曲面105は、後述するカージオイド曲面122が転がり接触する部分であり、カージオイド中間伝達体120側(図示右側)から外側サイクロイド伝達体104の奥側(図示左側)に向かって内径が縮小する曲面で構成されている。より具体的には、外側サイクロイド曲面105は、断面形状がカージオイド曲面122を構成するカージオイド曲線Caにおける動円MCaの動円半径aの2倍の動円半径bの動円Mcbによるサイクロイド曲線Cyとなる凹状の曲面で形成されている。この場合、外側サイクロイド曲面105における外側サイクロイド伝達体104の軸方向の長さは、カージオイド曲面122が転がる範囲、すなわち、カージオイド中間伝達体120が傾倒する範囲の長さで形成されている。
ここで、カージオイド曲線Caとは、図3に示すように、定円BC上を外接しながらこの定円BCと同一半径である動円半径aの動円MCaが滑らずに回転する動円MCaの円周上の動点Paの軌跡をとして得られるハート形の平面曲線であり、外サイクロイド曲線ともいう。また、サイクロイド曲線Cyとは、図4に示すように、定直線BL上を滑らずに回転する動円半径bの動円MCb上の動点Pbが描く軌跡として得られる円弧状の平面曲線である。
この外側サイクロイド伝達体104は、外側伝達体ホルダ101の内側底部に設けられた外側押圧体106によって押圧された状態で前記したように外側伝達体ホルダ101の内周面にスプライン嵌合しており、外側伝達体ホルダ101と同心で回転駆動する。すなわち、外側サイクロイド伝達体104は、無段変速機100がエンジン80からの回転駆動力を受け入れて回転駆動する本発明に係る入力側部材に相当する。
外側押圧体106は、外側サイクロイド伝達体104をカージオイド中間伝達体120に常時押し付けるための弾性体であり、リング状に形成された複数枚の皿バネで構成されている。この外側押圧体106は、後述する内側押圧体110よりも強い力で外側サイクロイド伝達体104をカージオイド中間伝達体120に常時押し付ける。
外側サイクロイド伝達体104の内側には、内側サイクロイド伝達体107が設けられている。内側サイクロイド伝達体107は、外側サイクロイド伝達体104と協働して無段変速機100における変速比を変化させるための部品であり、金属材を円筒状に形成して構成されている。この内側サイクロイド伝達体107は、一方(図示左側)の端部の外周面に内側サイクロイド曲面108が形成されている。
内側サイクロイド曲面108は、前記外側サイクロイド曲面105と同様に、カージオイド曲面122が転がり接触する部分であり、カージオイド中間伝達体120側(図示右側)から内側サイクロイド伝達体107の端部側に向かって外径が拡大する曲面で構成されている。より具体的には、内側サイクロイド曲面108は、断面形状が外側サイクロイド曲面105を構成するサイクロイド曲線Cyと線対称な曲線、すなわち、カージオイド曲面122を構成するカージオイド曲線Caにおける動円半径aの2倍の動円半径bのサイクロイド曲線となる凹状の曲面で形成されている。この場合、内側サイクロイド曲面108における内側サイクロイド伝達体107の軸方向の長さは、カージオイド曲面122が転がる範囲、すなわち、カージオイド中間伝達体120が傾倒する範囲の長さで形成されている。
この内側サイクロイド伝達体107は、内側サイクロイド曲面108が外側サイクロイド伝達体104の外側サイクロイド曲面105と対向する位置で外側伝達体ホルダ101の内側底部に設けられた内側押圧体110に押圧された状態で出力軸111上に支持されている。内側押圧体110は、内側サイクロイド伝達体107をカージオイド中間伝達体120に常時押し付けるための弾性体であり、リング状に形成された複数枚の皿バネで構成されている。この内側押圧体110は、前記外側押圧体106よりも弱い力で内側サイクロイド伝達体107をカージオイド中間伝達体120に常時押し付ける。
出力軸111は、この無段変速機100において変速された回転駆動力を外部に対して出力するための部品であり、軸状に延びる鋼材によって構成されている。この出力軸111の外周面には、軸方向に沿ってスプラインが形成されており、前記内側サイクロイド伝達体107の内周部とスプライン嵌合している。これにより、内側サイクロイド伝達体107は、出力軸111に対して出力軸111の軸線方向に沿って変位可能、かつ同出力軸111と一体回転可能な状態で支持されている。すなわち、内側サイクロイド伝達体107は、無段変速機100がエンジン80からの回転駆動力を変速した後に外部に出力する本発明に係る出力側部材に相当する。
そして、この出力軸111は、一方(図示左側)の端部が外側伝達体ホルダ101の側壁中心部に回転自在に支持されるとともに、他方(図示右側)の端部側がケーシング103を貫通した状態で同ケーシング103に回転自在に支持されている。また、出力軸111における他方(図示右側)の端部には、出力ギア111aが設けられている。出力ギア111aは、ポスト減速ギア112を介してクラッチ81に回転駆動力を伝達する機械要素であり、出力軸111と一体的に回転駆動する。ポスト減速ギア112は、出力軸111の回転駆動力を減速してクラッチ81に伝達する機械要素であるケーシング103に回転自在に支持された伝達軸上に設けられている。
外側サイクロイド伝達体104と内側サイクロイド伝達体107との間には、カージオイド中間伝達体120が設けられている。カージオイド中間伝達体120は、外側サイクロイド伝達体104および内側サイクロイド伝達体107とそれぞれ協働して無段変速機100における変速比を変化させるための部品であり、主として、カージオイド回転子121、傾倒スリーブ126、回転子支持柱127および摺動ピン128をそれぞれ備えて構成されている。
カージオイド回転子121は、詳しくは、図5、図6、図7(A),(B)にそれぞれ示すように、外側サイクロイド曲面105上および内側サイクロイド曲面108上をそれぞれ転がり接触しながら外側サイクロイド曲面105側または内側サイクロイド曲面108側に傾倒(「傾転」ともいう)することにより、外側サイクロイド伝達体104および内側サイクロイド伝達体107の相互間で回転駆動力を変速しながら伝達する部品であり、鋼材を円筒状に形成して構成されている。このカージオイド回転子121における一方(図示左側)の端部側の外周面には、カージオイド曲面122が形成されている。
カージオイド曲面122は、実際に外側サイクロイド曲面105および内側サイクロイド曲面108にそれぞれ転がり接触する曲面部分であり、カージオイド回転子121の外周面に周方向の全周に亘って形成されている。このカージオイド曲面122は、断面形状がカージオイド曲線Caとなる凸状の曲面で形成されており、カージオイド回転子121の先端部に向かって外径が縮小する形状に形成されている。この場合、カージオイド曲面122は、カージオイド回転子121の縦断面形状(図7(B)参照)がカージオイド曲線Caの起点(図3において0(2π))と定円BCの中心とを通る中心線(図3においてx軸)を対称軸とした両側で対称(図7(B)において上下対称)、すなわち、軸対称な形状に形成されている。この場合、カージオイド回転子121の外径およびカージオイド曲面122におけるカージオイド回転子121の軸方向の長さは、出力軸111の軸線からの距離Hおよび無段変速機100が必要とする変速比(レシオ)の範囲に応じて適宜選定される。これにより、カージオイド回転子121は、全体として砲弾状に形成されている。
このカージオイド回転子121は、カージオイド回転子121の内部にベアリング123を介して設けられた傾倒スリーブ126によって保持されている。ベアリング123は、傾倒スリーブ126の外周面上でカージオイド回転子121を回転自在な状態で保持するリング状の機械要素であり、傾倒スリーブ126の外周面上に軸方向に2列並んで設けられている。この場合、ベアリング123は、リング状のベアリング受け124およびこのベアリング受け124をカージオイド回転子121内に固定するリング状の押さえネジ125によってカージオイド回転子121内にそれぞれ収容されている。
傾倒スリーブ126は、カージオイド回転子121をベアリング123を介して回転自在に保持する部品であり、金属材を円筒状に形成して構成されている。この傾倒スリーブ126の内側は、両端部の内部形状が中央部に向かってそれぞれ縮小して絞られた筒型形状に形成されており(図7(B)において破線で示す)、この部分に回転子支持柱127が貫通した状態で設けられている。回転子支持柱127は、出力軸111と平行な状態で傾倒スリーブ126を外側サイクロイド伝達体104または内側サイクロイド伝達体107側にそれぞれ傾倒可能に支持するための部品である。
より具体的には、回転子支持柱127は、後述する回転子支持ベース130と支持サブベース133との間に架設される棒状に形成されており、回転子支持ベース130側で棒状に延びる柱部127aと支持サブベース133側で棒状に延びるとともに先端部が傾倒スリーブ126内にて回転摺動するように円筒状に形成された摺動部127bとで構成されている。そして、この回転子支持柱127は、摺動部127bと傾倒スリーブ126とに摺動ピン128が貫通することによって傾倒スリーブ126を外側サイクロイド伝達体104または内側サイクロイド伝達体107側にそれぞれ傾倒可能に支持している。また、柱部127aは、回転子支持ベース130の盤面上に固定されている。摺動ピン128は、カージオイド回転子121の傾倒中心となる部品であり、鋼材を丸棒状に形成して構成されている。この摺動ピン128の中心軸は、カージオイド曲面122を形成するカージオイド曲線Caの起点(図3における0(2π))と一致する。
このカージオイド中間伝達体120は、回転子支持ベース130に支持されている。回転子支持ベース130は、カージオイド曲面122を外側サイクロイド伝達体104および内側サイクロイド伝達体107にそれぞれ向けてカージオイド中間伝達体120を支持するための部品であり、金属材を円盤状に形成して構成されている。この回転子支持ベース130は、外側伝達体ホルダ101の内部において盤面が出力軸111に直交する向きで出力軸111の外周面上にベアリングを介して回転摺動自在な状態で支持されている。この場合、外側伝達体ホルダ101の内部における開口部側には、ベアリングを介してストッパ131が設けられており、回転子支持ベース130の開口部側への変位が規制されている。
この回転子支持ベース130における外側サイクロイド伝達体104側および内側サイクロイド伝達体107側の盤面には、周方向に均等配置された状態で4つのカージオイド中間伝達体120が外側サイクロイド伝達体104および内側サイクロイド伝達体107にそれぞれ延びる姿勢でそれぞれ支持されている。また、回転子支持ベース130の盤面における4つのカージオイド中間伝達体120の各間には、サブベース支持柱132が設けられている。
サブベース支持柱132は、支持サブベース133を支持するための部品であり、金属製の板状体で構成されている。このサブベース支持柱132は、4つのカージオイド中間伝達体120の各間からカージオイド中間伝達体120と平行に延びて設けられている。支持サブベース133は、4つのカージオイド中間伝達体120を回転子支持柱127の摺動部127b側から支持するための部品であり、金属材を平板リング状に形成して構成されている。これにより、4つのカージオイド中間伝達体120は、回転子支持ベース130と支持サブベース133とで挟まれた両端支持梁の状態で支持されている。なお、サブベース支持柱132は、図1において二点鎖線で示し、図5および図6においては図示を省略している。
一方、回転子支持ベース130におけるカージオイド中間伝達体120および支持サブベース133が設けられた反対側の盤面には、カム体134が設けられている。カム体134は、図8に示すように、内側押圧体110の押圧力に引張力を加えて外側押圧体106の押圧力よりも強い力で内側サイクロイド伝達体107をカージオイド中間伝達体120に押し付けるための部品であり、回転子支持ベース130の盤面から徐々に直線状に張り出す傾斜面が円弧状に延びて形成(換言すれば、螺旋状に延びて形成)されている。このカム体134は、回転子支持ベース130の盤面における中心部を中心として2つのカム体134が点対称に形成されている。また、これら2つのカム体134は、回転子支持ベース130の盤面に固着されており、回転子支持ベース130とともに一体的に周方向に揺動する。なお、カム体134の傾斜面は、直線状のほかに曲面状に延びて形成することもできる。
2つのカム体134の内側には、押圧スリーブ135が設けられている。押圧スリーブ135は、前記カム体134と協働して内側サイクロイド伝達体107を出力ギア111a側に変位させるための部品であり、金属製の筒体で構成されている。この押圧スリーブ135には、一方(図示左側)の端部側の外周面上に従動ピン135aが設けられるとともに、他方(図示右側)の端部側の外周面上に回り止めピン135bが設けられている。
従動ピン135aは、カム体134の斜面上を摺動する丸棒状の部品であり、押圧スリーブ135の外周面上における互いに反対側となる2つの位置、すなわち、前記カム体134の2つの斜面に対応する位置に互いに反対側に突出して形成されている。また、回り止めピン135bは、押圧スリーブ135が周方向に回転することを阻止するための丸棒状の部品であり、押圧スリーブ135の外周面上における互いに反対側となる2つの位置に互いに反対側に延びて形成されている。
この押圧スリーブ135は、内側サイクロイド伝達体107における他方(図示右側)の端部側が摺動可能な状態で貫通して支持されている。この場合、内側サイクロイド伝達体107における図示右側端部には、押圧スリーブ135に対してベアリングを介してスリーブ受け136が内側サイクロイド伝達体107の径方向外側に張り出した状態で設けられており、スリーブ受け136側に変位する押圧スリーブ135を相対回転可能な状態で受け止めることができるように構成されている。また、押圧スリーブ135における回り止めピン135b側の端部は、ハブフランジ137内に嵌合している。
ハブフランジ137は、主として、押圧スリーブ135の軸線回りの回転を規制するための金属製の部品であり、押圧スリーブ135のスリーブ受け136側の端部の周辺部分を覆う有底筒状に形成されている。この場合、ハブフランジ137の内周面は、押圧スリーブ135の外周面が摺動可能に接触しており、押圧スリーブ135の軸線方向の往復変位を案内している。そして、ハブフランジ137の筒状に形成された部分の一部、より具体的には、2つの回り止めピン135bにそれぞれ対応する位置に軸線方向に沿って溝状の切欠き137aがそれぞれ形成されている。
切欠き137aは、押圧スリーブ135の回転を阻止するための部分であり、回り止めピン135bがそれぞれ摺動可能なすきま嵌めの嵌め合いとなる溝幅に形成されている。なお、図においては、切欠き137aを示すため切欠き137aを含む押圧スリーブ135の一部を二点鎖線で示している。また、ハブフランジ137は、出力軸111をベアリングを介して回転自在な状態で支持している。このハブフランジ137は、ケーシング103に固定的に取り付けられている。
このように構成された無段変速機100は、図9に示すように、エンジン80とクラッチ81との間に配置されてエンジン80からの回転駆動力を変速しつつクラッチ81に伝達する。この場合、クラッチ81は、エンジン80の回転駆動軸に対して接続および切断しながら同クランクシャフトの回転駆動力を駆動輪90側に伝達する機械装置であり、遠心クラッチや多板クラッチなどを用いることができる。また、一般的な自動二輪車においては、クラッチ81と駆動輪90との間には、通常、一次減速機82および二次減速機83が設けられる。
(無段変速機100の作動)
次に、上記のように構成した無段変速機100の作動について説明する。この無段変速機100は、前記したように二輪自動車両(単に「車両」ということもある)における着座シートや燃料タンクの下方に配置されて、車両が走行中または走行可能な状態で一時的に停車している場合(アイドリング状態)において変速比を自動的に変化させる。
まず、車両が停止している場合においては、無段変速機100は、図5に示すように、TOP状態となる。ここで、無段変速機100のTOP状態とは、無段変速機100の変速比が最も高い(変速比の値が最も小さい)状態(トップギア状態)であり、入力側部材である外側サイクロイド伝達体104と出力側部材である内側サイクロイド伝達体107との間にトルク差がない場合(トルク差が極めて小さい場合も含む)、具体的には、クラッチ81が回転駆動力の伝達を遮断したクラッチOFFの場合や車両が高速で走行している場合に形成される状態である。
外側サイクロイド伝達体104と内側サイクロイド伝達体107との間にトルク差がない場合、無段変速機100は、エンジン80からの回転駆動力によって外側伝達体ホルダ101の回転駆動を介して外側サイクロイド伝達体104が回転駆動する。これにより、無段変速機100は、外側サイクロイド伝達体104における外側サイクロイド曲面105を介して接触するカージオイド中間伝達体120のカージオイド回転子121が回転駆動するとともに、このカージオイド回転子121におけるカージオイド曲面122を介して接触する内側サイクロイド伝達体107が回転駆動する。この場合、内側サイクロイド伝達体107には出力軸111がスプライン嵌合しているため、出力軸111は内側サイクロイド伝達体107とともに一体的に回転駆動する。
一方、回転子支持ベース130および押圧スリーブ135は、内側サイクロイド伝達体107に対して回転摺動自在な状態で支持されているため回転駆動はしない。また、この場合、カージオイド中間伝達体120におけるカージオイド回転子121は、外側サイクロイド伝達体104および内側サイクロイド伝達体107からそれぞれ外側押圧体106および内側押圧体110にそれぞれ対応する押圧力を同時に受けている。この場合、外側押圧体106の押圧力は内側押圧体110の押圧力よりも大きい。このため、無段変速機100は、カージオイド回転子121が摺動ピン128を中心として外側サイクロイド伝達体104側に傾倒して内側サイクロイド伝達体107を内側押圧体110の押圧力に抗して押し返すことによってTOP状態となる。すなわち、カージオイド回転子121は、カージオイド曲面122を形成するカージオイド曲線Caの起点を中心として傾倒する。
このTOP状態において無段変速機100は、カージオイド回転子121のカージオイド曲面122に対する外側サイクロイド伝達体104の外側サイクロイド曲面105および内側サイクロイド伝達体107の内側サイクロイド曲面108の各接触位置に応じた変速比で回転駆動力を変速する。
すなわち、無段変速機100における変速比は、図10および図11にそれぞれ示すように、出力軸111の回転中心軸OLとカージオイド回転子121の傾倒中心点OPとの距離H、カージオイド曲面122と外側サイクロイド曲面105との接触点A(A’)と出力軸111の回転中心軸OLとの距離r1、カージオイド曲面122と内側サイクロイド曲面108との接触点B(B’)と出力軸111の回転中心軸OLとの距離r2、接触点A(A’)と傾倒中心点OPとの距離r3および接触点B(B’)と傾倒中心点OPとの距離r4とすれば、無段変速機100の変速比η(r3r1),変速比η(r2r4)が下記数1,2となることから下記数3として導くことができる。
(数1)
η(r3r1)=r3/r1
(数2)
η(r2r4)=r2/r4
(数3)
総合変速比=(r3/r4)×(r2/r1)
この場合、距離r1〜r4は、カージオイド曲面122を構成するカージオイド曲線Caの定円BCと同一径の円である動円MCaの動円半径a、傾倒中心点OPが通る回転中心軸OLと平行な回転子平行軸RLに対するカージオイド回転子121の傾倒角度φ(時計回りを−、反時計回りを+とする)とすれば、下記数4〜7で表すことができる。
(数4)
r1=H+r3
(数5)
r2=H−r4
(数6)
r3=2×a×(sinφ+1)
(数7)
r4=−2×a×(sinφ−1)
前記数3にエンジン80の回転数Neを乗算すれば、TOP状態における変速比が後述するLOW状態における変速比より高く(変速比の値が小さく)なることを確認することができる。すなわち、無段変速機100は、エンジン80からの回転駆動力を高回転かつ低トルクで出力軸111を回転駆動させる。
このようなTOP状態から車両を発進させた場合には、無段変速機100は瞬間的にLOW状態(図6参照)に移行する。具体的には、無段変速機100は、クラッチ81が回転駆動力を伝達するクラッチONの状態となると出力軸111を介して内側サイクロイド伝達体107に駆動輪90からの負荷が掛かり外側サイクロイド伝達体104との間でトルク差が生じる。これにより、無段変速機100は、カージオイド回転子121に内側サイクロイド伝達体107から回転駆動に抗する負荷が生じるため、この負荷に対応する力が回転子支持ベース130に作用してこの回転子支持ベース130が内側サイクロイド伝達体107を回転中心として回転し始める。この場合におけるトルク差とは、入力側部材である外側サイクロイド伝達体104側の回転駆動を妨げようとする出力側部材である内側サイクロイド伝達体107側の負荷により生じるものである。
そして、この場合、回転子支持ベース130に設けられたカム体134が押圧スリーブ135の従動ピン135aをハブフランジ137側(図示右側)に押すことによって押圧スリーブ135が内側サイクロイド伝達体107を押してハブフランジ137側に変位させる。これにより、内側サイクロイド伝達体107は、内側押圧体110からの押圧力に加えられたカム体134による引張力によって外側押圧体106の押付け力に抗しながらハブフランジ137側に変位してカージオイド回転子121を内側サイクロイド伝達体107側に傾倒させる。
すなわち、無段変速機100は、入力側部材となる外側サイクロイド伝達体104のトルクが出力側部材となる内側サイクロイド伝達体107のトルクを上回ったとき、内側サイクロイド伝達体107がハブフランジ137側に変位することでカージオイド回転子121を内側サイクロイド伝達体107側に傾倒させるとともに、傾倒したカージオイド回転子121に押されて外側サイクロイド伝達体104が外側押圧体106側に押し返す。これにより、無段変速機100は、図1に示すMID状態を経てカージオイド回転子121が内側サイクロイド伝達体107側に傾倒したLOW状態(図6参照)となる。この場合、無段変速機100は、カージオイド回転子121のカージオイド曲面122に対する外側サイクロイド伝達体104の外側サイクロイド曲面105および内側サイクロイド伝達体107の内側サイクロイド曲面108の各接触位置に応じた変速比で回転駆動力を変速する。
具体的には、無段変速機100は、内側サイクロイド伝達体107および外側サイクロイド伝達体104の変位の過程において前記数3に示す変速比となる。この場合、前記数3にエンジン80の回転数Neを乗算すれば、LOW状態における変速比が前記TOP状態における変速比より低く(変速比の値が大きく)なることを確認することができる。すなわち、無段変速機100は、エンジン80からの回転駆動力を低回転かつ高トルクで出力軸111を回転駆動させる。
このカージオイド回転子121の傾倒過程においては、カージオイド回転子121が外側サイクロイド曲面105上および内側サイクロイド曲面108上をそれぞれ転がってカージオイド回転子121のカージオイド曲面122と外側サイクロイド伝達体104の外側サイクロイド曲面105との間、およびカージオイド曲面122と内側サイクロイド伝達体107の内側サイクロイド曲面108との間では傾倒方向における摩擦摺動やスリップは生じない。これは、外側サイクロイド曲面105および内側サイクロイド曲面108がカージオイド曲面122を構成するカージオイド曲線Caにおける動円半径aの2倍の動円半径bのサイクロイド曲線Cyで構成されていることによる。
ここで、カージオイド曲面122と外側サイクロイド曲面105および内側サイクロイド曲面108との間で滑りのない転がり接触となるためには、カージオイド曲面122に対して外側サイクロイド曲面105および内側サイクロイド曲面108においてそれぞれ互いに転がり長さが同じであるとともに転がる過程において互いに共通の接触点が存在していることの2つの条件1,2が必要である。
まず、条件1について説明すると、カージオイド曲線Caの動円MCaが0°〜θ°までの回転角度で動円半径aと同一半径の定円BC上を回転した場合におけるカージオイド曲線Caの長さLCaは下記数8の通りである。また、サイクロイド曲線Cyの動円MCbが0°〜t°までの回転角度で回転した場合におけるサイクロイド曲線Cyの長さLCyは下記数9の通りである。
(数8)
LCa=8×a×(1−cos(θ/2))
(数9)
LCy=4×b×(1−cos(t/2))
したがって、カージオイド曲線Caにおける動円半径aの2倍の動円半径bのサイクロイド曲線Cyで構成することで、カージオイド回転子121に対する外側サイクロイド伝達体104および内側サイクロイド伝達体107の各転がり長さが同じ(LCa=LCy)になる。これは、換言すれば、ハート形のカージオイド曲線Caがカージオイド曲線Caの起点(尖点(OP))がサイクロイド曲線Cyの定直線BL上を移動しながら転がってもカージオイド曲線Caがサイクロイド曲線Cyに接し続けることができることを意味する。
次に、条件2については説明すると、図10に示すように、カージオイド曲面122を構成するカージオイド曲線Caが外側サイクロイド曲面105および内側サイクロイド曲面108を構成する各サイクロイド曲線Cyに対して転動する前の初期状態(φ=0)において外側サイクロイド曲面105を構成するサイクロイド曲線Cy1の曲線方程式および微分式は下記数10,11に示す通りである。
(数10)
x=2×a×(t−sint)−a×(π−2)
y=2×a×(1−cost)
0°≦t≦360°
(数11)
dy/dx=cot(t/2)
そして、前記数10,11においてt=π/2をそれぞれ代入すれば、外側サイクロイド曲面105上におけるカージオイド曲面122の接触点Aの座標は(0,2a)であり、同接触点Aの微分値dy/dx=1となる。
また、前記初期状態においてカージオイド曲線Caの曲線方程式および微分式は下記数12,13に示す通りである。
(数12)
x=a×(1+cos2θ−2cosθ)
y=a×(2sinθ−sin2θ)
−360°≦θ≦360°
(数13)
dy/dx=(cosθ−cos2θ)/(sinθ−sin2θ)
そして、前記数12,13においてθ=π/2をそれぞれ代入すれば、カージオイド曲面122における外側サイクロイド曲面105の接触点A’の座標は(0,2a)であり同接触点A’の微分値dy/dx=1となり、カージオイド曲面122と外側サイクロイド曲面105とが同一の接触点で接触することになる。
さらに、前記初期状態において内側サイクロイド曲面108を構成するサイクロイド曲線Cy2の曲線方程式および微分式は下記数14,15に示す通りである。
(数14)
x=2×a×(t−sint)−a×(π−2)
y=−2×a×(1−cost)
0°≦t≦360°
(数15)
dy/dx=−cot(t/2)
そして、前記数12,13においてθ=−π/2をそれぞれ代入すれば、カージオイド曲面122における内側サイクロイド曲面108の接触点B’の座標は(0,−2a)であり同接触点B’の微分値dy/dx=−1となる。また、前記数14,15においてt=π/2をそれぞれ代入すれば、内側サイクロイド曲面108上におけるカージオイド曲面122の接触点Bの座標は(0,−2a)であり同接触点Bの微分値dy/dx=−1となり、カージオイド曲面122と内側サイクロイド曲面108とが同一の接触点で接触することになる。
次に、図11に示すように、カージオイド曲面122を構成するカージオイド曲線Caが外側サイクロイド曲面105および内側サイクロイド曲面108を構成する各サイクロイド曲線Cyに対して転動した際の作動状態(φ≠0)において外側サイクロイド曲面105を構成するサイクロイド曲線Cy1の曲線方程式は下記数16に示す通りである。
(数16)
x=2×a×(t−sint)−2×a×(π/2+φ−cosφ)
y=2×a×(1−cost)
そして、前記数16,11においてt=π/2+φをそれぞれ代入すれば、外側サイクロイド曲面105上におけるカージオイド曲面122の接触点Aの座標は(0,2a×(1+sinφ))であり、同接触点Aの微分値dy/dx=cot(π/4+φ/2)となる。
また、前記作動状態においてカージオイド曲線Caの曲線方程式は下記数17に示す通りである。
(数17)
x=cosφ×a×(1+cos2θ−2cosθ)−sinφ×a×(2sinθ−sin2θ)
y=sinφ×a×(1+cos2θ−2cosθ)+cosφ×a×(2sinθ‐sin2θ)
そして、前記数17,13においてθ=t=π/2+φをそれぞれ代入すれば、カージオイド曲面122における外側サイクロイド曲面105の接触点A’の座標は(0,2a×(1+sinφ))であり同接触点A’の微分値dy/dx=cosφ/(1+sinφ)=cot(π/4+φ/2)となり、カージオイド曲面122と外側サイクロイド曲面105とが同一の接触点で接触することになる。
さらに、前記作動状態において内側サイクロイド曲面108を構成するサイクロイド曲線Cy2の曲線方程式および微分式は下記数18に示す通りである。
(数18)
x=2×a×(t−sint)−2×a×(π/2−φ−cosφ)
y=−2×a×(1−cost)
そして、前記数17,13においてθ=φ−π/2をそれぞれ代入すれば、カージオイド曲面122における内側サイクロイド曲面108の接触点B’の座標は(0,2a×(sinφ−1))であり同接触点B’の微分値dy/dx=cosφ/(sinφ−1)となる。また、前記数18,15においてt=π/2−φをそれぞれ代入すれば、内側サイクロイド曲面108上におけるカージオイド曲面122の接触点Bの座標は(0,2a×(sinφ−1))であり同接触点Bの微分値dy/dx=−cot(π/4−φ/2)=cosφ/(sinφ−1)となり、カージオイド曲面122と内側サイクロイド曲面108とが同一の接触点で接触することになる。すなわち、カージオイド曲面122に対する外側サイクロイド曲面105および内側サイクロイド曲面108の各接触点が共通する。
車両を発進させることによってTOP状態から瞬間的にLOW状態に移行した無段変速機100は、車両の速度が上昇に伴って内側サイクロイド伝達体107と外側サイクロイド伝達体104との間でのトルク差が小さくなるに従ってTOP状態に移行する。具体的には、無段変速機100は、駆動輪90の回転数が上昇すると内側サイクロイド伝達体107と外側サイクロイド伝達体104との間におけるトルク差が減少するため、カージオイド回転子121の回転駆動に対する内側サイクロイド伝達体107からの抵抗力が減少して回転子支持ベース130を従動ピン135a側に回転させる力が減少する。
これにより、無段変速機100は、外側押圧体106の押付け力に対する内側サイクロイド伝達体107をハブフランジ137側に押す押圧力が減少するため、外側サイクロイド伝達体104がカージオイド回転子121側に押し出してくるとともに内側サイクロイド伝達体107が内側押圧体110側に押し返される。すなわち、無段変速機100は、カージオイド回転子121が摺動ピン128を中心として外側サイクロイド伝達体104側に傾倒して内側サイクロイド伝達体107を内側押圧体110の押圧力に抗して押し返すことによってMID状態(図1参照)を経てTOP状態(図5参照)となる。
このLOW状態からTOP状態に移行する過程における無段変速機100の変速比は、カージオイド回転子121のカージオイド曲面122に対する外側サイクロイド伝達体104の外側サイクロイド曲面105および内側サイクロイド伝達体107の内側サイクロイド曲面108の各接触位置に応じた変速比、すなわち、前記式3に示す変速比となる。
一方、走行中の車両が減速する場合においては、無段変速機100は、外側サイクロイド伝達体104に対して内側サイクロイド伝達体107から外側サイクロイド伝達体104を回転駆動させようとする力である所謂バックトルクが生じる。この場合、無段変速機100は、内側サイクロイド伝達体107がハブフランジ137側に変位することはないため、TOP状態は維持される。
そして、車両が減速後再び加速した場合には、無段変速機100は、前記したように、瞬間的に変速比がLOW状態側に移行する。具体的には、無段変速機100は、前記と同じように、内側サイクロイド伝達体107と外側サイクロイド伝達体104との間のトルク差に応じて内側サイクロイド伝達体107がハブフランジ137側に変位するとともに外側サイクロイド伝達体104が外側押圧体106側に後退してカージオイド回転子121が傾倒することにより変速比が低く(変速比の値が大きく)なる。すなわち、無段変速機100は、MID状態(図1参照)またはMID状態に近い状態となる。そして、無段変速機100は、車両の加速に応じて前記したように、再びTOP状態側に移行する。
一方、無段変速機100は、車両が停止した場合においては、TOP状態を維持する。そして、車両が発進した場合においては前記したように瞬間的にLOW状態に移行した後、車速の上昇に応じてTOP状態に移行する。
上記作動説明からも理解できるように、上記第1実施形態によれば、無段変速機100は、サイクロイド曲線Cyによって構成された外側サイクロイド曲面105と内側サイクロイド曲面108との間にカージオイド曲線Caによって構成されたカージオイド曲面122を有したカージオイド中間伝達体120を配置してこのカージオイド中間伝達体120を外側サイクロイド伝達体104側または内側サイクロイド伝達体107側に傾倒させて転がり接触点を変化させることで入力側部材である外側サイクロイド伝達体104の回転駆動力を出力側部材である内側サイクロイド伝達体107に回転速度比を連続的に変化させながら伝達する。この場合、無段変速機100、外側サイクロイド曲面105および内側サイクロイド曲面108をカージオイド曲面122を構成するカージオイド曲線Caにおける動円半径aの2倍の動円半径bのサイクロイド曲線Cyで構成することで、カージオイド曲面122を外側サイクロイド曲面105および内側サイクロイド曲面108に対して摩擦抵抗やスリップのない転がり接触させることができる。これにより、本発明に係る無段変速機100においては、カージオイド中間伝達体120を外側サイクロイド伝達体104側または内側サイクロイド伝達体107側に傾倒させて変速する際における摩擦抵抗やスリップによる駆動力の伝達ロスが生じないため駆動力の伝達効率が向上させることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明に係る無段変速機の一実施形態である第2実施形態について図面を参照しながら説明する。この第2実施形態における無段変速機200が上記第1実施形態における無段変速機100と最も異なる特徴的部分は、図12に示すように、2つのカージオイド中間伝達体220にそれぞれ突き当て曲面部225bが形成されるとともに、これらの突き当て曲面部225bが互いに突き合わされた状態で2つのカージオイド中間伝達体220が設けられていることにある。したがって、この第2実施形態における無段変速機200においては、上記第1実施形態における無段変速機100と異なる部分を中心に説明して、両実施形態において共通する部分や対応する部分については適宜説明を省略する。
図12は、本発明に係る無段変速機200の全体構成の概略を模式的に示す断面図である。この無段変速機200は、前記無段変速機100と同様に、二輪自動車両(所謂オートバイ)において原動機であるエンジン80で発生させた回転駆動力を二輪自動車両の後輪である駆動輪90に対して変速比を連続的に変化させながら伝達する機械装置であり、二輪自動車両におけるエンジン80の周辺(例えば、着座シートや燃料タンクの下方)に設けられる。
(無段変速機200の構成)
無段変速機200は、外側伝達体ホルダ101と同様の外側伝達体ホルダ201を2つ備えている。これら2つの外側伝達体ホルダ201は、互いに開口部を対向させた向きで出力軸211上に回転自在な状態で支持されている。この場合、各外側伝達体ホルダ201は、出力軸211上にベアリングを介して設けられたストッパ201bによって軸方向の変位が規制されている。
また、これら2つの外側伝達体ホルダ201の外周面上には、周方向に張り出した状態で入力ギア201aがそれぞれ設けられている。入力ギア201aは、中継入力ギア201cから延びる中継シャフト201d上に設けられた中継ギア201eに噛み合っており、エンジン80の回転駆動力によって一体的に回転駆動する。中継入力ギア201cは、エンジン80の回転駆動力を減速して伝達するプレ減速ギア202に噛み合って回転駆動する。また、中継シャフト201dは、ケーシング103と同様に箱状に形成されたケーシング203に中継入力ギア201cを外部に露出させた状態で回転駆動自在な状態で支持されている。
2つの外側伝達体ホルダ201の各内周面には、外側サイクロイド伝達体104と同様の外側サイクロイド伝達体204が外側伝達体ホルダ201の軸線方向に沿って変位可能、かつ同外側伝達体ホルダ201と一体回転可能な状態でスプライン嵌合によってそれぞれ保持されている。2つの外側サイクロイド伝達体204の各内周面には、外側サイクロイド曲面105と同様の外側サイクロイド曲面205がそれぞれ形成されている。
これら2つの外側サイクロイド伝達体204は、各外側伝達体ホルダ201の内側底部にそれぞれ設けられた外側押圧体206によって押圧された状態で各外側伝達体ホルダ201の内周面にそれぞれスプライン嵌合しており、各外側伝達体ホルダ201と同心で回転駆動する。すなわち、これら2つの外側サイクロイド伝達体204は、無段変速機200がエンジン80からの回転駆動力を受け入れて回転駆動する本発明に係る入力側部材に相当する。各外側押圧体206は、外側押圧体106同様のリング状に形成された複数枚の皿バネで構成されており、内側押圧体210よりも強い力で各外側サイクロイド伝達体204をカージオイド中間伝達体220にそれぞれ常時押し付ける。
また、これら2つの外側サイクロイド伝達体204の内側には、内側サイクロイド伝達体207がそれぞれ設けられている。各内側サイクロイド伝達体207は、内側サイクロイド伝達体107と同様に、外側サイクロイド伝達体204と協働して無段変速機200における変速比を変化させるための部品であり、金属材を平板リング状に形成して構成されている。これら2つの内側サイクロイド伝達体207の外周面には、内側サイクロイド曲面108と同様の内側サイクロイド曲面208がそれぞれ形成されている。
これら2つの内側サイクロイド伝達体207は、各内側サイクロイド曲面208が外側サイクロイド伝達体204の外側サイクロイド曲面205にそれぞれ対向する位置で各外側伝達体ホルダ201の内側底部にそれぞれ設けられた内側押圧体210にそれぞれ押圧された状態で出力軸211上にそれぞれ支持されている。各内側押圧体210は、内側押圧体110と同様にリング状に形成された複数枚の皿バネで構成されており、前記外側押圧体206よりも弱い力で各内側サイクロイド伝達体207をカージオイド中間伝達体220にそれぞれ常時押し付ける。
出力軸211は、出力軸111と同様に、この無段変速機200において変速された回転駆動力を外部に対して出力するための部品であり、軸状に延びる鋼材によって構成されている。この出力軸211の外周面には、軸方向に沿ってスプラインが形成されており、前記2つの内側サイクロイド伝達体207の内周部とそれぞれスプライン嵌合している。これにより、各内側サイクロイド伝達体207は、出力軸211に対して出力軸211の軸線方向に沿って変位可能、かつ同出力軸211と一体回転可能な状態で支持されている。すなわち、これら2つの内側サイクロイド伝達体207は、無段変速機200がエンジン80からの回転駆動力を変速して外部に出力する本発明に係る出力側部材に相当する。
そして、この出力軸211は、一方(図示左側)の端部がケーシング203の側壁中心部に回転自在に支持されるとともに、他方(図示右側)の端部側がケーシング203を貫通した状態で同ケーシング203に回転自在に支持されている。また、出力軸211における他方(図示右側)の端部には、出力ギア111aと同様の出力ギア211aが設けられている。出力ギア211aには、ポスト減速ギア112と同様のポスト減速ギア212が噛み合っている。
各外側サイクロイド伝達体204と各内側サイクロイド伝達体207との間には、カージオイド中間伝達体220がそれぞれ設けられている。カージオイド中間伝達体220は、図13に示すように、外側サイクロイド伝達体204および内側サイクロイド伝達体207とそれぞれ協働して無段変速機200における変速比を変化させるための部品であり、主として、カージオイド回転子221、傾倒スリーブ226、回転子支持柱227および摺動ピン228をそれぞれ備えて構成されている。
カージオイド回転子221は、図14および図15にそれぞれ示すように、カージオイド回転子121と同様に、外側サイクロイド曲面205上および内側サイクロイド曲面208上をそれぞれ転がり接触しながら外側サイクロイド曲面205側または内側サイクロイド曲面208側に傾倒(「傾転」ともいう)することにより、外側サイクロイド伝達体204および内側サイクロイド伝達体207の相互間で回転駆動力を変速しながら伝達する部品であり、鋼材を円筒状に形成して構成されている。このカージオイド回転子221における外側サイクロイド曲面205側および内側サイクロイド曲面208側の端部側の外周面には、カージオイド曲面122と同様のカージオイド曲面222が形成されている。
また、カージオイド回転子221におけるカージオイド曲面222とは反対側のカム体240側の端部側には、軸状に延びた支持部225aが形成されている。この支持部225aには、先端面に突き当て曲面部225bが形成されるとともに外周面上に転動曲面部225cがそれぞれ形成されている。
突き当て曲面部225bは、このカージオイド中間伝達体220に対して同軸上に隣接配置されるカージオイド回転子221における突き当て曲面部225bが突き当てられて互いに転がり接触する部分であり、凸状に張り出す球面状の曲面で構成されている。この場合、突き当て曲面部225bは、カージオイド中間伝達体220の傾転中心、すなわち、摺動ピン228の回転中心を中心とする球面によって形成されている。転動曲面部225cは、カージオイド中間伝達体220が傾倒する際に保持ベアリング242aの内周面上を転がり接触する部分であり、凸状に張り出す曲面で構成されている。この場合、転動曲面部225cは、傾倒スリーブ226の外側で回転(自転)するカージオイド回転子221の回転中心軸上に中心を有する円弧を断面とする曲面で形成されている。このカージオイド回転子221は、カージオイド曲面222が形成された前側半分と、支持部225aが形成された後側半分とが別体で構成されており、両者がボルトによって互いに連結されて一体的に構成されている。
そして、このカージオイド回転子221は、カージオイド回転子221の内部にベアリング223を介して設けられた傾倒スリーブ226によって保持されている。ベアリング223は、ベアリング123と同様に、傾倒スリーブ226の外周面上に軸方向に2列並んで設けられておりリング状のベアリング受け224によって押さえられてカージオイド回転子221内に収容されている。この場合、ベアリング受け224は、カージオイド回転子221における前記後半部分によってベアリング223側に押さえられている。
傾倒スリーブ226は、傾倒スリーブ126と同様に、カージオイド回転子221をベアリング223を介して回転自在に保持する部品であり、金属材を有底円筒状に形成して構成されている。この傾倒スリーブ226の内側部分は、回転子支持柱227における摺動部227bが摺動自在に嵌合している。回転子支持柱227は、傾倒スリーブ226を外側サイクロイド伝達体204側または内側サイクロイド伝達体207側にそれぞれ傾倒可能に支持するための部品であり、支持サブベース233から張り出す棒状に形成されている。
より具体的には、回転子支持柱227は、前記回転子支持柱127における柱部127aを省略した摺動部127bと同様な摺動部227bのみで構成されている。そして、この回転子支持柱227は、摺動部227bと傾倒スリーブ226とに摺動ピン228が貫通することによって傾倒スリーブ226を外側サイクロイド伝達体204側または内側サイクロイド伝達体207側にそれぞれ傾倒可能に支持している。
このカージオイド中間伝達体220は、2つのカージオイド中間伝達体220の各突き当て曲面部225bが互いに突き合わされた状態で各カージオイド中間伝達体220における回転子支持柱227がそれぞれ支持サブベース233に支持されている。換言すれば、カージオイド中間伝達体220は、互いに対向配置された外側伝達体ホルダ201の各内側に配置された2つの支持サブベース233に2つのカージオイド中間伝達体220が挟まれた状態で支持されている。この場合、互いに突き合わせられた2つのカージオイド中間伝達体220における各転動曲面部225cは、保持ベアリング242aを介してカム体240によって保持されている。
2つの支持サブベース233は、支持サブベース133と同様に、カージオイド曲面222を外側サイクロイド伝達体204および内側サイクロイド伝達体207にそれぞれ向けてカージオイド中間伝達体220を支持するための部品であり、金属材を平板リング状にそれぞれ形成して構成されている。本第2実施形態においては、上記第1実施形態と同様に、各支持サブベース233はそれぞれ4つずつのカージオイド中間伝達体220を支持している。これら2つの支持サブベース233は、サブベース支持柱132と同様な4つのサブベース支持柱232を介して揺動板244にそれぞれ支持されている。なお、サブベース支持柱232は、図12では二点鎖線で示して図14および図15においては図示を省略している。
カム体240は、図16に示すように、カージオイド中間伝達体220を内側サイクロイド伝達体207側に傾倒させて外側押圧体206の押圧力に抗する押圧力を生じさせるための部品であり、金属材を平板状に形成して構成されている。このカム体240には、出力軸211がベアリングを介して回転摺動自在に貫通するボス部241が形成されるとともに、このボス部241の外側の周囲に4つのカム孔242が形成されている。ボス部241は、揺動板244を保持する部分であり、カム体240の両面からそれぞれ突出する円筒状に形成されている。
4つのカム孔242は、4つのカージオイド中間伝達体220における支持部225aが保持ベアリング242aを介して摺動することにより、カージオイド中間伝達体220の外側サイクロイド伝達体204側および内側サイクロイド伝達体207側への傾倒角度を規定する部分であり、ボス部241側から外側に向かって螺旋状に延びる長孔でそれぞれ構成されている。すなわち、各カム孔242は、出力軸211を回転中心として揺動するとともに摺動ピン228を傾倒中心として傾倒するカージオイド回転子221に対して摺動ピン228を傾倒中心として傾倒する支持部225aの傾倒方向および量を規定する長孔である。
したがって、各カム孔242は、カージオイド回転子221の傾倒中心である摺動ピン228よりも出力軸211側の内側部分から同摺動ピン228よりも外側部分に延びて形成されている。本実施形態においては、4つのカム孔242は、カージオイド中間伝達体220を外側サイクロイド伝達体204側および内側サイクロイド伝達体207側にそれぞれ15°ずつ(つまり、−15°〜+15°)の傾倒をさせる長さに形成されている。
保持ベアリング242aは、互いに背中合わせに配置される2つのカージオイド中間伝達体220における各支持部225aの各転動曲面部225cが曲面に沿って転動可能にそれぞれ嵌合した状態で保持しつつ、カム孔242内および後述する揺動長孔244a内を摺動する機械要素である。また、カム体240における4つのカム孔242の各外側には、4つのガイド孔243がそれぞれ形成されている。これら4つのガイド孔243は、揺動板244を出力軸211の周方向に揺動させるためにボルトスリーブ243aを案内する円弧状に延びる長孔である。ボルトスリーブ243aは、カム体240の両側に配置される2つの揺動板244を互いに連結する図示しないボルトにおける雄ネジ部を覆ってガイド孔243内を摺動する金属製の筒状の部品である。
このカム体240は、ボス部241内に出力軸211がベアリングを介して貫通した状態で図示下端部がケーシング203の内壁部に固定されている。これにより、カム体240は、出力軸211をケーシング203とともに回転自在に支持している。
カム体240における2つのボス部241の外周部には、ベアリングを介して2つの揺動板244がカム体240に対して相対回転可能な状態でそれぞれ取り付けられている。2つの揺動板244は、図17に示すように、前記サブベース支持柱232を介して2つの支持サブベース233をそれぞれ支持するための部品であり、金属材を円盤状に形成して構成されている。これら2つの揺動板244は、中心部から放射状に4つの揺動長孔244aがそれぞれ形成されるとともに、これら4つの揺動長孔244aの各間にサブベース支持柱232がそれぞれ起立した状態で取り付けられている。
各揺動長孔244aは、カージオイド中間伝達体220が傾倒する際に揺動板244をカム体240に対して揺動板244の周方向の両方向にそれぞれ回転させるための貫通孔であり、外側伝達体ホルダ201側に小さく開口する小開口孔とカム体240側に大きく開口して保持ベアリング242aの両端部がそれぞれ摺動自在に嵌合する大開口穴とで構成されている。これらの各揺動長孔244aは、カージオイド回転子221の傾倒中心である摺動ピン228よりも内側部分から同摺動ピン228よりも外側部分に延びて形成されている。また、これらの各揺動長孔244aは、大開口穴側が保持ベアリング242aの大きさを考慮して保持ベアリング242aが嵌合する大きさに形成されるとともに、小開口孔側が傾倒するカージオイド中間伝達体220の転動曲面部225cに干渉しない程度の大きさに形成されている。
このように本第2実施形態における無段変速機200は、1つの外側伝達体ホルダ201、1つの外側サイクロイド伝達体204、1つの内側サイクロイド伝達体207および4つのカージオイド中間伝達体220がカム体240を境に図示左右方向にそれぞれ配置された左右対称に構成されている。そして、この無段変速機200は、前記無段変速機100と同様に、エンジン80とクラッチ81との間に配置されてエンジン80からの回転駆動力を変速しつつクラッチ81に伝達する。
(無段変速機200の作動)
次に、上記のように構成した無段変速機200の作動について説明する。この無段変速機200は、無段変速機100と同様に、車両が走行中または走行可能な状態で一時的に停車している場合(アイドリング状態)において変速比を自動的に変化させる。
まず、車両が停止している場合(クラッチOFF状態)においては、無段変速機200は、図14に示すように、TOP状態となる。具体的には、無段変速機200は、エンジン80からの回転駆動力がプレ減速ギア202、中継入力ギア201c、中継シャフト201d、中継ギア201eおよび入力ギア201aをそれぞれ介して2つの外側伝達体ホルダ201に伝達されることによって各外側サイクロイド伝達体204がそれぞれ回転駆動する。これにより、無段変速機200は、2つの外側サイクロイド伝達体204における各外側サイクロイド曲面205を介して接触する各カージオイド中間伝達体220のカージオイド回転子221がそれぞれ回転駆動するとともに、これらのカージオイド回転子221における各カージオイド曲面222を介して接触する各内側サイクロイド伝達体207がそれぞれ回転駆動する。この結果、無段変速機200は、2つの内側サイクロイド伝達体207にスプライン嵌合した出力軸211がこれらの内側サイクロイド伝達体207とともに一体的に回転駆動する。
この場合、各カージオイド中間伝達体220におけるカージオイド回転子221は、内側押圧体210からの押圧力を内側サイクロイド伝達体207を介して受けているとともに、外側押圧体206から内側押圧体210の押圧力よりも大きな押圧力を外側サイクロイド伝達体204を介して受けている。このため、各カージオイド回転子221は、外側サイクロイド伝達体204側からの押圧力によって支持部225aが摺動ピン228を回転中心としてカム孔242内を出力軸211側(図16において内側)に変位しようとする。
この場合、各カージオイド回転子221は、支持サブベース233およびサブベース支持柱232を介して各揺動板244に支持されている。そして、各揺動板244は、各揺動長孔244aにカージオイド回転子221の支持部225aが摺動自在にそれぞれ嵌合しているとともにカム体240に対して回転摺動可能にそれぞれ支持されている。これにより、各カージオイド回転子221は、揺動板244の回転駆動を伴いながら支持部225aがカム孔242内を内側に変位、すなわち、摺動ピン228を傾倒中心として傾倒して出力軸211側に変位する。この場合、支持部225aにおける転動曲面部225cは、保持ベアリング242aの内周面を転動する。
この結果、無段変速機200は、各カージオイド回転子221が摺動ピン228を中心として各外側サイクロイド伝達体204側に傾倒して各内側サイクロイド伝達体207を内側押圧体210の押圧力に抗して押し返すことによってTOP状態となる。この場合、互いに背中合わせに配置された2つのカージオイド中間伝達体220は、互いの突き当て曲面部225b同士が突き合わされた状態で同じ回転方向に同じ速度で回転駆動しながら、互いの突き当て曲面部225b上を転がって傾倒する。
また、この場合、互いに背中合わせの状態で突き合わされる2つのカージオイド回転子221は、各外側押圧体206および内側押圧体210からの押圧力を各突き当て曲面部225bで受け止め合う。これにより、各カージオイド中間伝達体220は、カージオイド回転子221の内側に配置されたベアリングや傾倒スリーブ226に外側押圧体206および内側押圧体210からの押圧力が作用しないため、カージオイド回転子221を円滑に回転駆動させることができるとともにカージオイド中間伝達体220の耐久性を向上させることができる。
このTOP状態において無段変速機200は、前記無段変速機100と同様に、カージオイド回転子221のカージオイド曲面222に対する外側サイクロイド伝達体204の外側サイクロイド曲面205および内側サイクロイド伝達体207の内側サイクロイド曲面208の各接触位置に応じた変速比で回転駆動力を変速する((数3)参照)。
このようなTOP状態から車両を発進させた場合には、無段変速機200は瞬間的にLOW状態(図15参照)に移行する。具体的には、無段変速機200は、クラッチ81が回転駆動力を伝達するクラッチONの状態となると出力軸211を介して各内側サイクロイド伝達体207に駆動輪90からの負荷が掛かり各外側サイクロイド伝達体204との間でトルク差が生じる。この場合、トルク差は、入力側部材である各外側サイクロイド伝達体204側の回転駆動を妨げようとする出力側部材である各内側サイクロイド伝達体207側の負荷により生じるものである。
これにより、各カージオイド回転子221は、前記負荷に対応する方向、すなわち、各カージオイド回転子221が自転する方向と同じ方向に各カージオイド回転子221を出力軸211を回転中心として公転させる。この場合、各カージオイド回転子221は、長孔状の各カム孔242が各カージオイド回転子221の前記公転方向に沿って外側に向かって延びて形成されているため、揺動板244の回転変位を伴った各カージオイド回転子221の回転変位とともに各支持部225aが外側に案内される。
この結果、無段変速機200は、各カージオイド回転子221が摺動ピン228を中心として各内側サイクロイド伝達体207側にそれぞれ傾倒して各外側サイクロイド伝達体204を外側押圧体206の押圧力に抗して押し返すことによってLOW状態となる。この場合、支持部225aにおける転動曲面部225cは、保持ベアリング242aの内周面を転動する。また、互いに背中合わせに配置された2つのカージオイド中間伝達体220は、互いの突き当て曲面部225b同士が突き合わされた状態で同じ回転方向に同じ速度で回転駆動しながら、互いの突き当て曲面部225b上を転がって傾倒する。
そして、無段変速機200は、各カージオイド回転子221の各カージオイド曲面222に対する各外側サイクロイド伝達体204の各外側サイクロイド曲面205および各内側サイクロイド伝達体207の各内側サイクロイド曲面208の各接触位置に応じた変速比で回転駆動力を変速する。具体的には、無段変速機200は、各内側サイクロイド伝達体207および各外側サイクロイド伝達体204の変位の過程において前記数3に示す変速比となる。すなわち、無段変速機200は、エンジン80からの回転駆動力を低回転かつ高トルクで出力軸211を回転駆動させる。
この各カージオイド回転子221の傾倒過程においては、各カージオイド回転子221が各外側サイクロイド曲面205上および各内側サイクロイド曲面208上をそれぞれ転がって各カージオイド回転子221のカージオイド曲面222と各外側サイクロイド伝達体204の外側サイクロイド曲面205との間、および各カージオイド曲面222と各内側サイクロイド伝達体207の内側サイクロイド曲面208との間では傾倒方向には摩擦摺動やスリップは生じない。これは、上記第1実施形態と同様に、各外側サイクロイド曲面205および各内側サイクロイド曲面208がカージオイド曲面222を構成するカージオイド曲線Caにおける動円半径aの2倍の動円半径bのサイクロイド曲線Cyで構成されていることによる。
次に、車両を発進させることによってTOP状態から瞬間的にLOW状態に移行した無段変速機200は、車両の速度が上昇に伴って各内側サイクロイド伝達体207と各外側サイクロイド伝達体204との間でのトルク差が小さくなるに従ってTOP状態に移行する。具体的には、無段変速機200は、駆動輪90の回転数が上昇すると各内側サイクロイド伝達体207と各外側サイクロイド伝達体204との間におけるトルク差が減少するため、各カージオイド回転子221の回転駆動に対する各内側サイクロイド伝達体207からの抵抗力が減少して各カージオイド回転子221をカム体240に対して公転させる力が減少する。
これにより、各カージオイド回転子221は、各カージオイド回転子221が自転する方向とは反対方向に公転を開始する。この場合、各カージオイド回転子221は、各カム孔242が各カージオイド回転子221の前記反対の公転方向に沿って内側に向かって延びて形成されているため、揺動板244の回転変位を伴った各カージオイド回転子221の回転変位とともに各支持部225aが内側に案内される。
この結果、無段変速機200は、再び外側押圧体206からの押圧力によって各カージオイド回転子221が摺動ピン228を中心として各外側サイクロイド伝達体204側にそれぞれ傾倒して各内側サイクロイド伝達体207を内側押圧体210の押圧力に抗して押し返すことによってTOP状態となる。この場合、支持部225aにおける転動曲面部225cは、保持ベアリング242aの内周面を転動する。また、互いに背中合わせに配置された2つのカージオイド中間伝達体220は、互いの突き当て曲面部225b同士が突き合わされた状態で同じ回転方向に同じ速度で回転駆動しながら、互いの突き当て曲面部225b上を転がって傾倒する。なお、無段変速機200がLOW状態からTOP状態に移行する過程においては、図12に示すMID状態を経ることは当然である。
このLOW状態からTOP状態に移行する過程における無段変速機200の変速比は、各カージオイド回転子221のカージオイド曲面222に対する各外側サイクロイド伝達体204の外側サイクロイド曲面205および各内側サイクロイド伝達体207の内側サイクロイド曲面208の各接触位置に応じた変速比、すなわち、前記式3に示す変速比となる。
一方、走行中の車両が減速する場合においては、無段変速機200は、各外側サイクロイド伝達体204に対して各内側サイクロイド伝達体207から各外側サイクロイド伝達体204を回転駆動させようとする力である所謂バックトルクが生じる。この場合、無段変速機200は、カージオイド回転子221がカム体240に対して回転変位することはないため、TOP状態は維持される。
そして、車両が減速後再び加速した場合には、無段変速機200は、前記したように、瞬間的に変速比がLOW状態側に移行する。この場合、無段変速機200は、各内側サイクロイド伝達体207と各外側サイクロイド伝達体204との間のトルク差に応じてLOW状態側に移行する。すなわち、無段変速機200は、MID状態(図1参照)またはMID状態に近い状態となる。そして、無段変速機200は、車両の加速に応じて前記したように、再びTOP状態側に移行する。
一方、無段変速機200は、車両が停止した場合においては、TOP状態を維持する。そして、車両が発進した場合においては前記したように瞬間的にLOW状態に移行した後、車速の上昇に応じてTOP状態に移行する。
上記作動説明からも理解できるように、上記第2実施形態によれば、無段変速機200は、2つのカージオイド中間伝達体220がカージオイド曲面222とは反対側に形成された各突き当て曲面部225bを互いに突き合わせた状態で配置されているため、各カージオイド曲面222に加わった押圧力を互いに背中合わせに配置したカージオイド中間伝達体220同士で受け止めることができる。これにより、本発明に係る無段変速機200は、カージオイド曲面222および突き当て曲面部225bが形成された部品以外の部品が外側押圧体206および内側押圧体210からの各押圧力を受けることがなくなり、無段変速機200の耐久性を向上させることができる。
さらに、本発明の実施にあたっては、上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、以下に示す変形例は、変形例相互間でも適用可能である。また、各変形例の説明においては、上記各実施形態と同様の部分については同じ符号を付している。
例えば、上記各実施形態においては、無段変速機100,200は、1つの外側サイクロイド伝達体104,204および1つの内側サイクロイド伝達体107,207に対して4つのカージオイド中間伝達体120,220を設けて構成した。しかし、カージオイド中間伝達体120,220は、1つの外側サイクロイド伝達体104,204および1つの内側サイクロイド伝達体107,207に対して少なくとも1つ設ければよく、必ずしも上記各実施形態に限定されるものではない。
また、上記各実施形態においては、無段変速機100,200は、外側押圧体106,206および内側押圧体110,210をそれぞれ皿バネで構成した。すなわち、外側押圧体106,206および内側押圧体110,210がそれぞれ本発明に係る外側押圧手段および内側押圧手段にそれぞれ相当する。しかし、外側押圧手段および内側押圧手段は、外側サイクロイド伝達体104,204および内側サイクロイド伝達体107,207をそれぞれ弾性的に押圧することができればよく、皿バネ以外のバネ、例えばコイルスプリングやゴムなどの各種弾性体で構成することができとともに、バネ以外で構成することもできる。したがって、例えば、外側押圧体106,206および内側押圧体110,210は、油圧または空圧のピストン、電動モータなどの各種アクチュエータで構成することができる。
この場合、無段変速機100,200は、外側押圧体106,206および内側押圧体110,210を各種アクチュエータで構成した場合、これらのアクチュエータをコンピュータ制御することによって車両の速度、エンジン80の回転数または運転者の意思によって変速比を任意のタイミングで自由に変化させることができる。すなわち、外側押圧体106,206および内側押圧体110,210をそれぞれ構成する各種アクチュエータをコンピュータ制御する制御装置は、本発明に係るカージオイド中間伝達体傾倒手段に相当する。
また、上記各実施形態においては、無段変速機100,200は、カージオイド曲面122を外側サイクロイド曲面105側または内側サイクロイド曲面108側に傾倒させるために外側押圧体106,206、カム体134およびカム体240をそれぞれ用いた。すなわち、外側押圧体106,206、カム体134およびカム体240が本発明に係るカージオイド中間伝達体傾倒手段に相当する。しかし、カージオイド中間伝達体傾倒手段は、カージオイド曲面122を外側サイクロイド曲面105側または内側サイクロイド曲面108側に傾倒させるできるものであれば、上記各実施形態に限定されるものではなく、皿バネ以外の前記弾性体や前記コンピュータ制御装置を用いることができる。
なお、外側押圧体106,206は、内側押圧体110,210よりも強い押圧力を発揮することによってカージオイド中間伝達体傾倒手段の一部も構成している。したがって、外側押圧体106,206と内側押圧体110,210とを同じ強さの押圧力とした場合には、カージオイド曲面122を外側サイクロイド曲面105側に傾倒させるカージオイド中間伝達体傾倒手段が別途必要になる。
また、上記実施形態においては、無段変速機100,200は、変速比を表す前記数3によれば無段変速機100,200の各出力の回転数が各入力の回転数より上昇する増速機として機能する。このため、無段変速機100,200においては、無段変速機100,200の各入力側および各出力側にそれぞれプレ減速ギア102,202およびポスト減速ギア112,212をそれぞれ設けて減速するように構成している。しかしながら、本発明に係る無段変速機は、減速機として機能させることもできる。
例えば、図18には、減速機として機能する無段変速機300を示している。この無段変速機300は、前記無段変速機100における回転駆動力の入力側と出力側とを入れ替えるとともに、外側押圧体106と内側押圧体110との間の押圧力の大小関係およびカム体134の傾斜面の向きを変更したものである。より具体的には、無段変速機300は、入力側部材となる内側サイクロイド伝達体107を押圧する内側押圧体110の押圧力を出力側部材となる外側サイクロイド伝達体104を押圧する外側押圧体106の押圧力よりも強くしている。また、無段変速機300は、カム体134の傾斜面について、入力側部材となる内側サイクロイド伝達体107のトルクが出力側部材となる外側サイクロイド伝達体104のトルクを上回ったとき、内側サイクロイド伝達体107を内側押圧体110側に押し出してカージオイド中間伝達体120を外側サイクロイド伝達体104側に傾倒させる向きに形成している。このため、押圧スリーブ135を相対回転可能な状態で受け止めるスリーブ受け136は、無段変速機300のLOW状態への変速時における押圧スリーブ135の変位方向である押圧スリーブ135の図示右側の端部にベアリングを介して配置されている。
これにより、無段変速機300は、入力軸113を介して伝達されるエンジン80からの回転駆動力によって内側サイクロイド伝達体107が回転駆動するとともに、カージオイド中間伝達体120を介して外側サイクロイド伝達体104が回転駆動して出力軸111を介して変速された回転駆動力が外部に出力される。この無段変速機300は、変速比を表す前記数3によれば無段変速機300の出力の回転数が入力の回転数より減少する減速機として機能する。このため、無段変速機300は、プレ減速ギア102,202およびポスト減速ギア112,212を省略して構成を軽量化および簡単化することできる。なお、無段変速機200についても無段変速機100と同様な変更を加えることにより減速機として機能させることができることは当然である。なお、図18においては、入力軸113に伝達されるエンジン80からの回転駆動力の回転方向と大きさ、および出力軸111から外部に出力される回転駆動力の回転方向と大きさをそれぞれ矢印の向きおよび大きさで表している。
また、上記各実施形態においては、無段変速機100,200は、外側サイクロイド伝達体104,204を入力側部材として回転駆動かつカージオイド中間伝達体120,220側に往復変位可能に設けるとともに、内側サイクロイド伝達体107,207を出力部材として回転駆動かつカージオイド中間伝達体120,220側に往復変位可能に設けて構成した。この場合、カージオイド中間伝達体120,220は、いずれの上記各実施形態においても出力軸111,211を回転中心として揺動するように構成されており、回転駆動はしない。
しかしながら、本発明に係る無段変速機においては、外側サイクロイド伝達体、内側サイクロイド伝達体、およびカージオイド中間伝達体のうちの1つが外部に対する回転駆動力の入力側部材として回転駆動可能に支持されるとともに、残余の2つのうちの1つが外部に対する回転駆動力の出力側部材として回転駆動可能に支持されていればよく、必ずしも上記各実施形態に限定されるものではない。この場合、カージオイド中間伝達体を入力側部材または出力部材として用いる場合には外側サイクロイド伝達体の内側(換言すれば内側サイクロイド伝達体の外側)を公転する。すなわち、本発明に係る無段変速機は、外側サイクロイド伝達体、内側サイクロイド伝達体、およびカージオイド中間伝達体のうちの1つが回転駆動不能な状態で設けられるとともに、残余の2つのうちの1つが軸方向の変位が不能な状態で設けられていればよく、例えば、図19に示すように、少なくとも9通りの構成態様が考えられる。
なお、この場合、図19に示す無段変速機の9つの構成態様は、理解を容易にするために無段変速機100の構成をベースに模式化しているため、主として、外側伝達体ホルダ101、外側サイクロイド伝達体104、内側サイクロイド伝達体107およびカージオイド中間伝達体120をそれぞれ示して、外側押圧体106、内側押圧体110およびカム体134などの他の構成は図示を省略している。また、図19に示す無段変速機の9つの構成態様においては、カージオイド中間伝達体120のカージオイド回転子121は、それぞれ傾倒スリーブ126に対して回転駆動(つまり自転)するとともに外側サイクロイド伝達体104側および内側サイクロイド伝達体107側にそれぞれ傾倒することを前提としている。また、図19に示す無段変速機の9つの構成態様においては、入力側部材および出力側部材として回転駆動する際の回転中心軸回りに回転駆動しない回転固定状態を水平線のハッチングで示し、同回転中心軸の軸方向に往復変位しないスライド固定状態を垂直線のハッチングで示し、回転固定状態でかつスライド固定状態を格子状のハッチングで示している。また、図19に示す無段変速機の9つの構成態様においては、各構成要素の可動方向を矢印線で示している。
まず、R−R型は、カージオイド中間伝達体120を回転固定状態(回転中心軸回りの公転不能状態)でかつスライド固定状態とした構成である。このR−R型の無段変速機は、外側サイクロイド伝達体104および内側サイクロイド伝達体107のうちの一方が入力側部材となるとともに他方が出力側部材となる構成であり、上記第1実施形態における無段変速機100および上記第2実施形態における無段変速機200と同じ構成である。
次に、R−O型は、カージオイド中間伝達体120を回転固定状態(回転中心軸回りの公転不能状態)とするとともに外側サイクロイド伝達体104をスライド固定状態とした構成である。このR−O型の無段変速機は、カージオイド中間伝達体120が外側サイクロイド伝達体104に代わってスライド変位するものであり、外側サイクロイド伝達体104および内側サイクロイド伝達体107のうちの一方が入力側部材となるとともに他方が出力側部材となる構成である。
次に、R−I型は、カージオイド中間伝達体120を回転固定状態(回転中心軸回りの公転不能状態)とするとともに内側サイクロイド伝達体107をスライド固定状態とした構成である。このR−I型の無段変速機は、カージオイド中間伝達体120が内側サイクロイド伝達体107に代わってスライド変位するものであり、外側サイクロイド伝達体104および内側サイクロイド伝達体107のうちの一方が入力側部材となるとともに他方が出力側部材となる構成である。
次に、O−R型は、外側サイクロイド伝達体104を回転固定状態とするとともにカージオイド中間伝達体120をスライド固定状態とした構成である。このO−R型の無段変速機は、カージオイド中間伝達体120が外側サイクロイド伝達体104に代わって回転駆動(公転駆動)するものであり、カージオイド中間伝達体120および内側サイクロイド伝達体107のうちの一方が入力側部材となるとともに他方が出力側部材となる構成である。
次に、O−O型は、外側サイクロイド伝達体104を回転固定状態でかつスライド固定状態とした構成である。このO−O型の無段変速機は、カージオイド中間伝達体120が外側サイクロイド伝達体104に代わって回転駆動(公転駆動)かつスライドするものであり、カージオイド中間伝達体120および内側サイクロイド伝達体107のうちの一方が入力側部材となるとともに他方が出力側部材となる構成である。
次に、O−I型は、外側サイクロイド伝達体104を回転固定状態とするとともに内側サイクロイド伝達体107をスライド固定状態とした構成である。このO−I型の無段変速機は、カージオイド中間伝達体120が内側サイクロイド伝達体107に代わって回転駆動(公転駆動)するものであり、カージオイド中間伝達体120および内側サイクロイド伝達体107のうちの一方が入力側部材となるとともに他方が出力側部材となる構成である。
次に、I−R型は、内側サイクロイド伝達体107を回転固定状態とするとともにカージオイド中間伝達体120をスライド固定状態とした構成である。このI−R型の無段変速機は、カージオイド中間伝達体120が内側サイクロイド伝達体107に代わって回転駆動(公転駆動)するものであり、外側サイクロイド伝達体104およびカージオイド中間伝達体120のうちの一方が入力側部材となるとともに他方が出力側部材となる構成である。
次に、I−O型は、内側サイクロイド伝達体107を回転固定状態とするとともに外側サイクロイド伝達体104をスライド固定状態とした構成である。このI−O型の無段変速機は、カージオイド中間伝達体120が外側サイクロイド伝達体104に代わってスライド変位するものであり、外側サイクロイド伝達体104およびカージオイド中間伝達体120のうちの一方が入力側部材となるとともに他方が出力側部材となる構成である。
次に、I−I型は、内側サイクロイド伝達体107を回転固定状態でかつスライド固定状態とした構成である。このI−I型の無段変速機は、カージオイド中間伝達体120が内側サイクロイド伝達体107に代わってスライド変位するものであり、外側サイクロイド伝達体104およびカージオイド中間伝達体120のうちの一方が入力側部材となるとともに他方が出力側部材となる構成である。
また、上記各実施形態においては、無段変速機100,200は、二輪自動車両に適用した例について説明した。しかし、本発明に係る無段変速機は、二輪自動車両以外の自動車車両、例えば、三輪自動車両や四輪自動車車両などの各種自動車両のほか、原動機を有さない人力の車両、例えば、二輪自転車、三輪自転車または四輪自転車における無段変速機として用いることができる。また、本発明に係る無段変速機100は、原動側の回転駆動力を従動側に変速して伝達する各種機器、例えば、発電機、マシニングセンタなどの工作機械またはエレベータや荷揚げ機などの昇降機に広く用いることができる。
また、上記各実施形態においては、カージオイド回転子121,221は、カージオイド曲面122,222を形成するカージオイド曲線Caの起点(尖点OP)を中心として傾倒する。しかし、このカージオイド回転子121,221の傾倒中心は、厳密にカージオイド曲線Caの起点(尖点OP)と一致していることを意味するものではなく、製造精度上の公差や累積誤差、または油膜の存在による位置ずれなど実質的に一致していると見做すことができる範囲(例えば、起点に対して半径0.5mmの円内の領域)を含むものである。また、カージオイド回転子121,221の傾倒中心は、外側サイクロイド曲面105,205を形成するサイクロイド曲線Cy1と内側サイクロイド曲面108,208を形成するサイクロイド曲線Cy2の起点と終点を結んだ同一直線状にあることが望ましい(図10,図11参照)。