JP5783061B2 - 高速重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具 - Google Patents
高速重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具 Download PDFInfo
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Description
(a)下部層が、いずれも化学蒸着形成された、Tiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層が、化学蒸着形成された、1〜15μmの平均層厚を有するα型酸化アルミニウム(以下、Al2O3で示す)層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を形成してなる被覆工具が知られており、この被覆工具が、例えば各種の鋼や鋳鉄などの切削加工に用いられていることも知られている。
しかし、この被覆工具においては、被膜の耐摩耗性は高まるものの、耐チッピング性、耐欠損性が劣るという問題点があった。
上記の従来被覆工具においては、これを鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削や断続切削に用いた場合には問題はないが、例えば、これを、風力発電部品のフランジ荒加工に代表される大型の黒皮偏肉部品の高速重切削加工に用いた場合には、切刃部には大きな熱的・機械的負荷がかかるためチッピング、欠損等が発生しやすく、また、被削材の切削箇所によって切削時の切削応力も大きく変化するため、切削応力が急激に高まったような場合には、硬質被覆層であるAl2O3層が塑性変形をおこし、そのため、早期に逃げ面摩耗が進行し、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
図1(a)には、格子点にTi、炭素、および窒素からなる構成原子がそれぞれ存在するNaCl型面心立方晶の結晶構造(なお、図1(b)は(011)面で切断した状態を示す)を有する縦長成長結晶組織をもつTiCN層(以下、l−TiCN層という)を模式図として示しているが、
従来被覆工具の硬質被覆層を構成する下部層としてのl−TiCN層は、例えば、通常の化学蒸着装置にて、
反応ガス組成:容量%で、TiCl4:2〜10%、CH3CN:0.5〜3%、N2:10〜30%、H2:残り、
反応雰囲気温度:800〜900℃、
反応雰囲気圧力:6〜20kPa、
の条件(通常条件という)で蒸着形成されている。
ところで、本発明者らは、この蒸着条件を変更し、
まず、第1段階として、
反応ガス組成:容量%で、TiCl4:5〜20%、C3H3N:0.5〜3.0%、N2:7〜20%、H2:残り、
反応雰囲気温度:700〜850℃、
反応雰囲気圧力:6〜20kPa、
の条件で、蒸着層の層厚が目標層厚の約20%の層厚となるまで蒸着し、
その後、第2段階として、
反応ガス組成:容量%で、TiCl4:3〜12%、CH3CN:0.2〜2%、C3H3N:0.1〜0.5%、Ar:10〜30%、H2:残り、
反応雰囲気温度:700〜850℃、
反応雰囲気圧力:6〜20kPa、
の条件で、目標層厚になるまで蒸着形成したところ、このような第1段階及び第2段階の条件で順次形成されたl−TiCN層(以下、このl−TiCN層を「改質TiCN層」という)は、切削加工時に層に発生する応力を緩和・吸収する作用を有し、高温強度が一段と向上することから、硬質被覆層の上部層が前記Al2O3層で構成され、また、下部層が、TiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層、およびTiCNO層のうちの1層または2層以上のTi化合物層と、前記改質TiCN層で構成された被覆工具は、特に大きな熱的・機械的負荷がかかり、さらに切削応力が大きく変動するような高速重切削加工でも、前記改質TiCN層がすぐれた耐チッピング性、耐欠損性を発揮することを見出したのである。
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:1〜5%、CO2:3〜7%、HCl:0.3〜3%、H2S:0.02〜0.4%、H2:残り、
反応雰囲気温度:950〜1100℃、
反応雰囲気圧力:6〜13kPa、
の条件(以下、通常条件という)で形成されている。
しかし、本発明者らは、この蒸着条件を変更し、
まず、第1段階として、
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:1〜5%、CO2:10〜15%、HCl:0.3〜3%、SF6:0.1〜1%、H2:残り、
反応雰囲気温度:950〜1100℃、
反応雰囲気圧力:20〜40kPa、
の条件(通常条件に比して、CO2ガス含有割合が相対的に高く、反応雰囲気圧が相対的に高く、反応ガス成分として、H2Sに代えてSF6を添加している)で、蒸着層の層厚が目標層厚の約5〜20%の層厚となるまで蒸着し、
その後、第2段階として、
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:6〜10%、CO2:3〜7%、HCl:0.3〜3%、H2S:0.5〜1%、H2:残り、
反応雰囲気温度:950〜1100℃、
反応雰囲気圧力:10〜20kPa、
の条件(通常条件に比して、AlCl3とH2Sガスの含有割合が相対的に高く、また、反応雰囲気も相対的に高圧である)で、目標層厚になるまで蒸着形成すると、このような第1段階及び第2段階の条件で順次形成された柱状組織のAl2O3層(以下、このAl2O3層を「改質Al2O3層」という)は、粒界すべりに起因する耐塑性変形性に優れるため、切削応力に大きな変動が生じるような高速重切削加工でも、偏摩耗等の発生もなくすぐれた耐摩耗性を発揮することを見出したのである。
「 炭化タングステン基超硬合金で構成された工具基体の表面に、
(a)3〜15μmの合計平均層厚を有するTiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなるTi化合物層において、前記Ti化合物層のうち少なくとも1層以上が2.5〜14μmの平均層厚を有する縦長成長結晶組織の改質Ti炭窒化物層(以下、「改質TiCN層」で示す)で構成される下部層、
(b)(006)面の配向性指数TC(006)の値が1.5以上の5〜20μmの平均層厚を有する柱状組織のAl2O3層で構成される上部層、
以上(a)および(b)からなる硬質被覆層が、8〜30μmの全体平均層厚で被覆形成されてなる表面被覆切削工具において、
(c)上記(a)の改質TiCN層には、電界放出型走査電子顕微鏡と電子後方散乱回折像装置を用い、該層の縦断面研磨面の幅30μmの測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記縦断面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(001)面および(011)面の法線がなす傾斜角を測定し、この測定傾斜角から、それぞれ隣接する結晶粒相互間の界面における(001)面の法線同士、および(011)面の法線同士の交わる角度を求め、また、前記(001)面の法線同士、および(011)面の法線同士の交わる角度が5度以上の場合を粒界であると識別した上で、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、層の縦断面研磨面における測定領域について、粒界として識別される部分のうち前記(001)面の法線同士、および(011)面の法線同士の交わる角度が15度以上の粒界の長さGBLa(μm)を求めた場合、この粒界の長さGBLa(μm)と測定した改質Ti化合物層の層厚Ta(μm)との比の値GBLa/Taは275〜520の範囲内にある縦長成長結晶組織を有する改質TiCN層であり、
(d)上記(b)の(006)面の配向性指数TC(006)の値が1.5以上であるAl2O3層は、電界放出型走査電子顕微鏡と電子後方散乱回折像装置を用い、縦断面研磨面の幅30μmの測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面および(10−10)面の法線がなす傾斜角を測定し、この測定傾斜角から、それぞれ隣接する結晶粒相互間の界面における(0001)面の法線同士、および(10−10)面の法線同士の交わる角度を求め、また、前記(0001)面の法線同士、および(10−10)面の法線同士の交わる角度が5度以上である隣接する結晶格子相互の界面を粒界であると識別し、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、層の縦断面研磨面における測定領域について、粒界として識別される部分の結晶粒界の長さGBLb(μm)を求めた場合、測定した上記Al2O3層の層厚Tb(μm)との比の値GBLb/Tbは40〜165の範囲内にある柱状組織のAl2O3層であり、
(e)さらに、前記(c)で求めたGBLa/Taの値と、前記(d)で求めたGBLb/Tbの値の比(GBLb/Tb)/(GBLa/Ta)が、0.1〜0.6の範囲内にあることを特徴とする表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
(a)下部層
TiC層、TiN層、TiCN層(改質TiCN層を含む)、TiCO層、TiCNO層のうちの1層または2層以上からなるTi化合物層は、自体が高温強度を有し、これの存在によって硬質被覆層が高温強度を具備するようになるほか、工具基体と上部層であるAl2O3層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する密着性向上に寄与する作用をもつが、その合計平均層厚が3μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その合計平均層厚が15μmを越えると、特に高熱発生を伴うとともに熱的・機械的負荷が大きく、さらに、急激な切削応力の変動を伴う高速重切削でチッピングを起し易くなることから、その合計平均層厚を3〜15μmと定めた。
下部層の改質TiCN層は、既に述べたように、例えば、以下の方法によって成膜することができる。
まず、通常の化学蒸着装置にて、
≪第1段階≫
反応ガス組成:容量%で、TiCl4:5〜20%、C3H3N:0.5〜3.0%、N2:7〜20%、H2:残り、
反応雰囲気温度:700〜850℃、
反応雰囲気圧力:6〜20kPa、
の条件で、蒸着層の層厚が目標層厚の約20%の層厚となるまで蒸着する。
その後、
≪第2段階≫
反応ガス組成:容量%で、TiCl4:3〜12%、CH3CN:0.2〜2%、C3H3N:0.1〜0.5%、Ar:10〜30%、H2:残り、
反応雰囲気温度:700〜850℃、
反応雰囲気圧力:6〜20kPa、
の条件で、目標層厚になるまで蒸着する。
上記第1段階及び第2段階の条件で順次成膜することによって、改質TiCN層を成膜することができる。
なお、このGBLa/Taの値は、成膜時の反応ガス組成、反応雰囲気温度、反応雰囲気圧力の組み合わせによって変化する。
しかし、GBLa/Ta値が275未満の小さな値では、上記応力の緩和・吸収作用を期待することはできず、耐チッピング性も不十分であり、一方、GBLa/Ta値が520を超えるものについては、改質TiCN層自体に脆化傾向がみられるようになるため、GBLa/Taの値を275〜520と定めた。
なお、従来TiCN層におけるGBLa/Taの値は、100〜200程度の小さな値(表8参照)であって、応力の緩和・吸収作用を有さないTiCN層であるため、高速重切削加工においては硬質被覆層にチッピングの発生が見られた。
また、前記改質TiCN層は、通常のTiCN層自体のもつ高温硬さと高温強度に加えて、さらに一段とすぐれた高温強度を有するようになるが、その平均層厚が2.5μm未満では所望のすぐれた応力の緩和・吸収作用、高温強度向上効果を硬質被覆層に十分に具備せしめることができず、一方その平均層厚が14μmを越えると、チッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を2.5〜14μmと定めた。
なお、上記改質TiCN層は、1層である必要はなく、これを複数層設けることも可能である。
改質Al2O3層からなる上部層は、すぐれた高温硬さと耐熱性を有し、さらに、すぐれた耐塑性変形性を有することによって、硬質被覆層の耐摩耗性向上に寄与する。
改質Al2O3層は、既に述べたように、例えば、以下の方法によって成膜することができる。
例えば、通常の化学蒸着装置にて、
≪第1段階≫
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:1〜5%、CO2:10〜15%、HCl:0.3〜3%、SF6:0.1〜1%、H2:残り、
反応雰囲気温度:950〜1100℃、
反応雰囲気圧力:20〜40kPa、
の条件(通常条件に比して、CO2ガス含有割合が相対的に高く、反応雰囲気圧が相対的に高く、反応ガス成分として、H2Sに代えてSF6を添加し、蒸着層の層厚が目標層厚の約5〜20%の層厚となるまで蒸着し、
≪第2段階≫
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:6〜10%、CO2:3〜7%、HCl:0.3〜3%、H2S:0.5〜1%、H2:残り、
反応雰囲気温度:950〜1100℃、
反応雰囲気圧力:10〜20kPa、
の条件(通常条件に比して、AlCl3とH2Sガスの含有割合が相対的に高く、また、反応雰囲気も相対的に高圧である)で、目標層厚になるまで蒸着形成すると、このような第1段階及び第2段階の条件で順次形成された柱状組織の改質Al2O3層は、すぐれた高温硬さと耐熱性を示すばかりでなく、粒界すべりに起因する耐塑性変形性に優れるため、切削応力に大きな変動が生じるような高速重切削加工でも、偏摩耗等の発生もなくすぐれた耐摩耗性を発揮する。
なお、従来Al2O3層では、TC(006)は1.0以上であった(表9参照)。
なお、本発明でいう(006)面配指数TC(006)は、上部層を構成するAl2O3層についてX線回折を行った際の(hkl)面から得られるX線回折のピーク強度値をI(hkl)、JCPDSカードNo.46−1212記載の(hkl)面の標準回折強度をI0(hkl)とした場合、
であるとして定義される。ここで、(hkl)は(012)、(104)、(110)、(006)、(113)、(202)、(024)、(116)の8面である。
なお、このGBLb/Tbの値は、成膜時の反応ガス組成、反応雰囲気温度、反応雰囲気圧力の組み合わせによって変化する。
しかし、GBLb/Tb値が40未満の小さな値では、耐チッピング性が不十分となり、一方、GBLb/Tb値が165を超えるものについては、改質Al2O3層自体の耐塑性変形性の低下により、十分な耐摩耗性が発揮できなくなることから、GBLb/Tbの値を40〜165と定めた。
なお、従来Al2O3層におけるGBLb/Tbの値は、200〜300程度(表7参照)であって、十分な耐塑性変形性を示さない層であるため、高速重切削加工、特に、切削応力変動の大きな高速重切削加工においては、偏摩耗の発生がみられ耐摩耗性が劣るものであった。
なお、上部層としての改質Al2O3層の層厚は、5μm未満では長期の使用に亘って十分な耐摩耗性を発揮することはできず、一方、20μmを超えると耐チッピング性が低下するため、改質Al2O3層の層厚は5〜20μmと定めた。
これは、(GBLb/Tb)/(GBLa/Ta)の比の値が0.1未満であると、長期の使用に亘って十分な耐摩耗性を発揮することはできず、一方、この比の値が0.6を超えると耐チッピング性が低下するという理由による。
また、本発明は、下部層と上部層の全体平均層厚を8〜30μmと定めているが、これは、8μm未満では長期の使用に亘って十分な耐摩耗性を発揮することはできず、一方、30μmを超えると耐チッピング性が低下するという理由による。
さらに、本発明は、改質Al2O3層の表面に、表面の平滑化等の目的で、機械的処理(例えば、ウエットブラスト処理、ブラシ処理、弾性砥石処理)等を施すことを何ら制限するものではない。
(b)ついで、前記改質TiCN層を、表3に示す条件、即ち、
まず、第1段階として、
反応ガス組成:容量%で、TiCl4:5〜20%の範囲内の所定量、C3H3N:0.5〜3.0%の範囲内の所定量、N2:7〜20%の範囲内の所定量、H2:残り、
反応雰囲気温度:700〜850℃の範囲内の所定温度、
反応雰囲気圧力:6〜20kPaの範囲内の所定圧力、
の条件で、目標層厚の約20%の層厚となるまで蒸着成膜し、
その後、第2段階として、
反応ガス組成:容量%で、TiCl4:3〜12%の範囲内の所定量、CH3CN:0.2〜2%の範囲内の所定量、C3H3N:0.1〜0.5%の範囲内の所定量、Ar:10〜30%の範囲内の所定量、H2:残り、
反応雰囲気温度:700〜850℃の範囲内の所定温度、
反応雰囲気圧力:6〜20kPaの範囲内の所定圧力、
の条件で、表6に示される組み合わせで、かつ同じく表6に示される目標層厚で蒸着形成し、
(c)ついで、改質Al2O3層を、表4に示す条件、即ち、
まず、第1段階として、
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:1〜5%の範囲内の所定量、CO2:10〜15%の範囲内の所定量、HCl:0.3〜3%の範囲内の所定量、SF6:0.1〜1%の範囲内の所定量、H2:残り、
反応雰囲気温度:950〜1100℃の範囲内の所定温度、
反応雰囲気圧力:20〜40kPaの範囲内の所定圧力、
の条件で、目標層厚の約5〜20%の層厚となるまで蒸着し、
その後、第2段階として、
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:6〜10%の範囲内の所定量、CO2:3〜7%の範囲内の所定量、HCl:0.3〜3%の範囲内の所定量、H2S:0.5〜1%の範囲内の所定量、H2:残り、
反応雰囲気温度:950〜1100℃の範囲内の所定温度、
反応雰囲気圧力:10〜20kPaの範囲内の所定圧力、
の条件で、表7に示される目標層厚で蒸着形成することにより、本発明被覆工具1〜10をそれぞれ製造した。
すなわち、上記の改質TiCN層および従来TiCN層の縦断面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記縦断面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に照射して、電子後方散乱回折像装置を用い、所定測定領域を0.1μm/stepの間隔で、前記縦断面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(001)面および(011)面の法線がなす傾斜角を測定し、この結果得られた測定傾斜角に基づいて、それぞれ隣接する結晶粒相互間の界面における(001)面の法線同士、および(011)面の法線同士の交わる角度を求め、さらに、前記(001)面の法線同士、および(011)面の法線同士の交わる角度が5度以上の場合を粒界であるとして設定した上で、電界放出型走査電子顕微鏡により、改質TiCN層、従来TiCN層の縦断面研磨面の測定領域(TiCN層厚(μm)×幅30(μm)の範囲の領域)を走査し、該測定領域内で、粒界として識別される部分のうちで前記(001)面の法線同士、および(011)面の法線同士の交わる角度が15度以上の粒界についてその粒界の長さGBLa(μm)を求めた。そして、GBLa(μm)と、改質TiCN層、従来TiCN層の層厚Ta(μm)との比の値(TiCN層の単位層厚当たりの粒界の長さに相当)を求めた。
すなわち、上記の改質Al2O3層および従来Al2O3層の縦断面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記縦断面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に照射して、電子後方散乱回折像装置を用い、所定測定領域を0.1μm/stepの間隔で、前記縦断面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面および(10−10)面の法線がなす傾斜角を測定し、この結果得られた測定傾斜角に基づいて、それぞれ隣接する結晶粒相互間の界面における(0001)面の法線同士、および(10−10)面の法線同士の交わる角度を求め、さらに、前記(0001)面の法線同士、および(10−10)面の法線同士の交わる角度が5度以上の場合を粒界であるとして設定した上で、電界放出型走査電子顕微鏡により、改質Al2O3層、従来Al2O3層の縦断面研磨面の測定領域(Al2O3層厚(μm)×幅30μmの範囲の領域)を走査し、該測定領域内で、粒界として識別される部分の粒界の長さGBLb(μm)を求めた。そして、GBLb(μm)と、改質Al2O3層、従来Al2O3層の層厚Tb(μm)との比の値(Al2O3層の単位層厚当たりの粒界の長さに相当)を求めた。
また、これらの被覆工具の硬質被覆層の構成層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて測定(同じく縦断面測定)したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
被削材と加工部位:外径4,300mm、内径3,900mm、厚み110mmの低炭
素鋼製大型黒皮偏肉部品の厚み110mmの面、
切削速度:220m/min、
切り込み:10mm、
送り:1mm/rev、
の条件(切削条件A)での外径湿式高速重切削試験、(通常の切削速度は、120m/min)
被削材と加工部位:外径3,800mm、内径3,500mm、厚み300mmの低炭
素鋼製大型黒皮偏肉部品の外径−内径の幅300mmの面、
切削速度:150m/min、
切り込み:13mm、
送り:1mm/rev、
の条件(切削条件B)での端面湿式高速重切削試験、(通常の切削速度は、80m/min)
を行い、いずれの切削試験でも加工パス数をカウントした。(加工する面を1回切削することを1パスとしている)
加工パス数のカウントは、切れ刃逃げ面の摩耗量が基準摩耗量である1mmに達した時点における、加工パス数を基本とするが、加工の途中で切れ刃の欠損が生じた場合、切り屑を分断できなくなる切り屑処理不良状態となった場合には、その時点で、終了している加工パス数をカウントすることとする。なお、加工途中については、加工パス数としてカウントしない。
この結果を表10に示した。
これに対して、硬質被覆層の下部層のうちのTiCN層が、GBLa/Ta値が275未満である従来TiCN層、あるいは、上部層のAl2O3層のGBLb/Tb値が200を超える値である従来Al2O3層、あるいはさらに、(GBLb/Tb)/(GBLa/Ta)の値が0.1〜0.6の範囲外である硬質被覆層で構成された従来被覆工具1〜10においては、硬質被覆層の熱的・機械的負荷に対する耐性および切削応力の大きな変動に対する耐性がいずれも不十分であるために、大型の黒皮偏肉部品等の高速重切削加工では硬質被覆層にチッピングが発生し、また、耐摩耗性も劣り、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
Claims (1)
- 炭化タングステン基超硬合金で構成された工具基体の表面に、
(a)3〜15μmの合計平均層厚を有するTiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなるTi化合物層において、前記Ti化合物層のうち少なくとも1層以上が2.5〜14μmの平均層厚を有する縦長成長結晶組織の改質Ti炭窒化物層(以下、「改質TiCN層」で示す)で構成される下部層、
(b)(006)面の配向性指数TC(006)の値が1.5以上の5〜20μmの平均層厚を有する柱状組織の改質Al2O3層で構成される上部層、
以上(a)および(b)からなる硬質被覆層が、8〜30μmの全体平均層厚で被覆形成されてなる表面被覆切削工具において、
(c)上記(a)の改質TiCN層には、電界放出型走査電子顕微鏡と電子後方散乱回折像装置を用い、該層の縦断面研磨面の幅30μmの測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記縦断面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(001)面および(011)面の法線がなす傾斜角を測定し、この測定傾斜角から、それぞれ隣接する結晶粒相互間の界面における(001)面の法線同士、および(011)面の法線同士の交わる角度を求め、また、前記(001)面の法線同士、および(011)面の法線同士の交わる角度が5度以上の場合を粒界であると識別した上で、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、層の縦断面研磨面における測定領域について、粒界として識別される部分のうち前記(001)面の法線同士、および(011)面の法線同士の交わる角度が15度以上の粒界の長さGBLa(μm)を求めた場合、この粒界の長さGBLa(μm)と測定した改質TiCN層の層厚Ta(μm)との比の値GBLa/Taは275〜520の範囲内にある縦長成長結晶組織を有する改質TiCN層であり、
(d)上記(b)の(006)面の配向性指数TC(006)の値が1.5以上である改質Al2O3層は、電界放出型走査電子顕微鏡と電子後方散乱回折像装置を用い、縦断面研磨面の幅30μmの測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面および(10−10)面の法線がなす傾斜角を測定し、この測定傾斜角から、それぞれ隣接する結晶粒相互間の界面における(0001)面の法線同士、および(10−10)面の法線同士の交わる角度を求め、また、前記(0001)面の法線同士、および(10−10)面の法線同士の交わる角度が5度以上である隣接する結晶格子相互の界面を粒界であると識別し、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、層の縦断面研磨面における測定領域について、粒界として識別される部分の結晶粒界の長さGBLb(μm)を求めた場合、測定した上記改質Al2O3層の層厚Tb(μm)との比の値GBLb/Tbは40〜165の範囲内にある柱状組織の改質Al2O3層であり、
(e)さらに、前記(c)で求めたGBLa/Taの値と、前記(d)で求めたGBLb/Tbの値の比(GBLb/Tb)/(GBLa/Ta)が、0.1〜0.6の範囲内にあることを特徴とする表面被覆切削工具。
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