以下、本発明の一実施について、図面を用いて説明する。
図1は本発明の一実施の形態例に係るドラム式洗濯乾燥機の外観図である。図2は内部の構造を示すために筐体の一部を切断して斜め前方から見た斜視図、図3は内部の構造を示すために筐体の一部を切断し斜め後方から見た斜視図、図4は内部の構造を示すために背面カバーを取り外した背面図、図5は内部の構造を示す側面図である。
1は、外郭を構成する筐体である。筐体1は、ベース1hの上に取り付けられており、左右の側板1a,1b,前面カバー1c,背面カバー1d,上面カバー1e,下部前面カバー1fで構成されている。左右の側板1a,1bは、コの字型の上補強材1j,前補強材1k,後補強材(図示せず)で結合されており、ベース1を含めて箱状の筐体1を形成し、筐体として十分な強度を有している。
9は、前面カバー1cの略中央に設けた衣類を出し入れするための投入口を塞ぐドアで、前補強材に設けたヒンジで開閉可能に支持されている。ドア開放ボタン9dを押すことでロック機構(図示せず)が外れてドアが開き、ドアを前面カバー1cに押し付けることでロックされて閉じる。前補強材は、後述する外槽の開口部と同心に、衣類を出し入れするための円形の開口部を有している。
6は、筐体1の上部中央に設けた操作パネルで、電源スイッチ39,操作スイッチ12,13,表示器14を備える。操作パネル6は、筐体1下部に設けた制御装置38に電気的に接続している。
3は、回転可能に支持された円筒状の洗濯兼脱水槽(回転ドラム)であり、その外周壁および底壁に通水および通風のための多数の貫通孔を有し、前側端面に衣類を出し入れするための開口部3aを設けてある。開口部3aの外側には洗濯兼脱水槽3と一体の流体バランサ3cを備えている。外周壁の内側には軸方向に延びるリフタ3bが複数個設けてあり、洗濯,乾燥時に洗濯兼脱水槽3を回転すると、衣類はリフタ3bと遠心力で外周壁に沿って持ち上がり、重力で落下するように動きを繰り返す。洗濯兼脱水槽3の回転中心軸は、水平または開口部3a側が高くなるように傾斜している。
2は、円筒状の外槽であり、洗濯兼脱水槽3を同軸上に内包し、前面は開口し、後側端面の外側中央にモータ4を取り付ける。モータ4の回転軸は、外槽2を貫通し、洗濯兼脱水槽3と結合している。前面の開口部には外槽カバー2dを設け、外槽内への貯水を可能としている。外槽カバー2dの前側中央には、衣類を出し入れするための開口部2cを有している。本開口部2cと前補強材37に設けた開口部は、ゴム製のベローズ10で接続しており、ドア9を閉じることで外槽2を水封する。外槽2底面最下部には、排水口2bが設けてあり、排水ホース26が接続している。排水ホース26の途中には排水弁25が設けてあり、排水弁を閉じて給水することで外槽2に水を溜め、排水弁を開いて外槽2内の水を機外へ排出する。外槽カバー2dの前側外周部にはオーバーフロー口2eを有しており、オーバーフローホース2fで排水弁25の下流側で排水ホース26に接続している。
外槽2は、下側をベース1hに固定されたサスペンション5(コイルばねとダンパで構成)で防振支持されている。また、外槽2の上側は上部補強部材に取り付けた補助ばね(図示せず)で支持されており、外槽2の前後方向へ倒れを防ぐ。
19は、筐体1内の上部左側に設けた洗剤容器で、前部開口から引き出し式の洗剤トレイ7を装着する。洗剤類を入れる場合は、洗剤トレイ7を図1の二点鎖線で示すように引き出す。洗剤容器19は、筐体1の上補強材1jに固定されている。
洗剤容器19の後ろ側には、給水電磁弁16や風呂水給水ポンプ17,水位センサ(図示せず)など給水に関連する部品を設けてある。上面カバー1eには、水道栓からの給水ホース接続口16a,風呂の残り湯の吸水ホース接続口17aが設けてある。洗剤容器19は、外槽2に接続されており、給水電磁弁16を開く、あるいは風呂水給水ポンプ17を運転することで、外槽2に洗濯水を供給する。
29は筐体1の背面内側に縦方向に設置した乾燥ダクトで、ダクト下部は外槽2の背面下方に設けた吸気口2aにゴム製の蛇腹管B(29a)で接続される。乾燥ダクト29内には、水冷除湿機構(図示せず)を内蔵しており、冷却水ホース24で給水電磁弁16と水冷除湿機構を接続し、給水電磁弁を開くことで水冷除湿機構へ冷却水を供給する。冷却水は乾燥ダクト29の壁面を伝わって流下し吸気口2aから外槽2に入り排水口2bから排出される。
乾燥ダクト29の上部は、筐体1内の上部右側に前後方向に設置したフィルタダクト27に接続している。乾燥ダクト29上部のフィルタダクト27との接続部に、吸排気弁55を有する。フィルタダクト27の前面には開口部を有しており、この開口部に引き出し式の乾燥フィルタ8を挿入してある。乾燥ダクト29からフィルタダクト27へ入った空気は、乾燥フィルタ8のメッシュフィルタ8aに流入し糸くずが除去される。乾燥フィルタ8の掃除は、乾燥フィルタ8を引き出してメッシュ式のフィルタ8aを取り出して行う。また、フィルタダクト27の乾燥フィルタ8挿入部の下面には開口部が設けてあり、この開口部は吸気ダクト33が接続しており、吸気ダクト33の他端は送風ユニット28の吸気口と接続している。
送風ユニット28は、駆動用のモータ28a,ファン羽根車(図示せず),ファンケース28bで構成されている。ファンケース28bにはヒータ31が内蔵されており、ファン羽根車から送られる空気を加熱する。ヒータ31は、入力切り換えが可能で、本実施例のヒータでは強モードと弱モードを有している。送風ユニット28の吐出口は温風ダクト30に接続する。温風ダクト30は、ゴム製の蛇腹管A(30a),蛇腹管継ぎ手30bを介して外槽カバー2dに設けた前部吹き出し口32に接続している。
51は後部ダクトで、図6の外槽斜視図に示すように、外槽2の外周面上部から外槽2の背面に沿って配置してある。後部ダクト前部は蛇腹管継ぎ手30bの背面開口30cに接続され、後部は外槽2の背面に設けた後部吹き出し口52に接続される。蛇腹管継ぎ手30b内には切り換え弁54を設けてあり、前部吹き出し口32と後部吹き出し口52とを切り換える。
本実施例では、送風ユニット28が筐体1内の上部右側に設けてあるので、前部吹き出し口32は外槽カバー2dの右斜め上の位置に設け、前部吹き出し口32までの距離を極力短くするようにし、圧力損失や熱の逃げを最小限にしてある。しかし、後部吹き出し口52は外槽2背面上部の乾燥ダクト29の吸気口2aとほぼ点対称の位置に設けてあるため、後部ダクト51の長さが長く、後部ダクト51から熱が逃げやすい。そこで、後部ダクト51と外槽2とは密着して設けてある。こうすることで、ヒータ31で暖められた温風の熱が後部ダクト51通過中に筐体内へ放散することを低減できる。さらに、後部ダクト51の断面形状をコの字形として、開口側を外槽2の外周面に密着させるようにして、外槽2の外周面を使用し後部ダクト51を構成した方が、ダクト放熱面積が少なくなるため、より放熱防止効果を大きくできる。
排水口2b,送風ユニット28の吸気口及び吐出口には温度センサ(図示せず)が設けてある。
本発明の特徴は、高速の風を衣類に直接当て、衣類のしわを伸ばしながら衣類からの水分の蒸発を促進するとともに、乾燥の進行度合いに応じて温風の吹き出し口を切り換え、乾きむらを低減し、消費電力を低減することにある。このためには、高速の風を発生する送風ユニット28とこの風を直接衣類に当てる前部吹き出し口32,後部吹き出し口52が必要となる。送風ユニットに必要な性能に関しては、後述する。
前部吹き出し口32の詳細を図7,図8を用いて説明する。図7は前部吹き出し口32設置部の外槽カバー2dの正面図、図8は図7の二点鎖線A−Aで切断して示した前部吹き出し口32の断面図である。
前部吹き出し口32は、外槽カバー2dの前側から開口部2cに沿って設けてあり、内部に流路32b,32cが形成されている。前部吹き出し口32の入口には蛇腹管継ぎ手30bが取り付けてあり、流路32cの出口にはノズル32dが形成されている。洗濯兼脱水槽3と外槽カバー2dとのすき間に衣類が入り込まないよう、外槽カバー2dの開口部2cの内径と洗濯兼脱水槽3の開口部3aの内径は、ほぼ同一に設定されている。このため、前部吹き出し口32の出口部32aを開口部2cの内周面より内側に飛び出すように形成し、ノズル32dが洗濯兼脱水槽3内に向かって開口するようにしてある。このようにすることでノズル32dから出た温風は直接洗濯兼脱水槽3内の衣類に当たる。
なお、出口部32aの飛び出し量が多すぎると、洗濯や乾燥時に衣類の動きを阻害するため、図7に示すようにノズルを扁平のスリット形状として飛び出し量を小さくし、かつ開口部2cと出口部32aの表面形状がスムーズに変化するようにしてある。また、流路32bと流路32cは無駄な突起や、急激な流れ方向の変化が無いようにし、かつノズル32dに向かい流路面積が徐々に小さくなるようにしてある。こうすることで、高速の風が流路32b,32cを流れるときに発生する圧力損失や流体音を小さくすることが出来る。
蛇腹管継ぎ手30b内に設けた切り換え弁54は、駆動モータ54aと弁体54bとで構成される。駆動モータ54aは固定金具54cで蛇腹管継ぎ手30bに取り付けてある。弁体54bの端部に設けた回転軸54dを駆動モータ54aで回転させることで、弁体54bが回転するようになっている。弁体54bが図8に示す位置にあるときを切り換え弁閉、二点鎖線の位置にあるときを切り換え弁開と定義する。切り換え弁54が閉の場合、背面開口30cが閉じるため、温風は前部吹き出し口32から吹き出し、切り換え弁54を開くと、前部吹き出し口32への風路が閉じるため、温風は背面開口30cから後部ダクト51を通り後部吹き出し口52から吹き出す。
後部吹き出し口52部の詳細を図9,図10を用いて説明する。図9は図4の二点鎖線B−Bで切断した外槽及び洗濯兼脱水槽3後部の断面図である。図10は図9の二点鎖線C−Cで外槽2及び洗濯兼脱水槽3を切断し、洗濯兼脱水槽3底面を示した断面図である。
外槽2の底面には後部吹き出し口52と吸気口2aが設けてある。吸気口2aは外槽下部にあり、後部吹き出し口52は外槽上部に設けてあり、両者はモータ4の回転軸4aに対して略点対称の位置にある。また、吸気口2aの径方向位置は最外周部に近い位置で、後部吹き出し口52はそれより内側に位置している。吸気口2aの位置より内周側で後部吹き出し口52より外周側の外槽底面には複数の環状の凸部B53bが形成されている。また、洗濯兼脱水槽3の底面外槽側には、凸部B53bと同芯に複数の環状の凸部A53aが形成されている。凸部B53bと凸部A53aは互い違いに配置してあり、ラビリンスシール53を構成している。後部吹き出し口52と対向した洗濯兼脱水槽3の底面には、複数個の通気口3dが設けてあり、通気口3dは衣類が飛び出さないよう、また通気抵抗が少なくなるようメッシュ状にもしくは多数の小孔で構成してある。また、洗濯兼脱水槽3底面のラビリンスシール53より外側には、多数の小孔3eを設けてある。
このように、後部吹き出し口52と吸気口32の位置を離して配置し、かつ両者の間にラビリンスシールを設けることで、後部吹き出し口52から吹き出した温風が、直接吸気口2aに入ってしまうことを防止でき、効率よく洗濯兼脱水槽3内の衣類へ風を当てることができる。また、後部吹き出し口から吹き出す温風の風速は衣類のしわを伸ばすことができる程度に高速なので、洗濯兼脱水槽3内に衣類が多く入っていて通気口3dを衣類が塞いだようになっている場合でも、風の力で衣類が押され、衣類間にすき間が形成されるため、温風が洗濯兼脱水槽3内に入りやすいため、効率よく衣類に風を当てることができる。
本実施の形態例では、後部吹き出し口52から吹き出す風の風速を衣類のしわを伸ばす効果(衣類を押し広げる効果)を阻害しない程度に、前部吹き出し口32より遅くしている。一般に、洗濯兼脱水槽3に複数本の放射状のリブを有するフランジ23を取り付け、このフランジ23の中心部にモータ4の回転軸4aを接続する構造となっている。洗濯兼脱水槽3が回転すると放射状のリブが後部吹き出し口52を周期的に横切る。このため、後部吹き出し口52での風速が速すぎると、風きり音が発生し、騒音が増大してしまうため、風速を遅くし、風きり音の増大を抑えている。
実際には、後部吹き出し口52のノズル面積を前部吹き出し口32のノズル32dよりも大きくしてある。送風ユニット28の回転数を一定にした場合、後部吹き出し口52から吹き出す風は、前部吹き出し口32よりも風速が遅くなるが風量は多くなる。風速による衣類からの水分蒸発効果は低減するが風量が多くなることによる水分蒸発効果の向上と相殺するため、乾燥効率が低減することはない。
フランジ23の後部吹き出し口52と対面する位置には、通気口23aを設け、更にフランジを覆う外槽底面にも複数個の小孔3fを設け、後部吹き出し口52の位置にフランジ23が来た場合でも、温風が洗濯兼脱水槽3内に入るようになっている。また、後部吹き出し口52の形状はフランジ23の放射状リブの幅よりも円周方向に長いスリット状にしたほうが良い。こうすることで、後部吹き出し口52がフランジ23のリブで完全に塞がれることがないため、温風を効率よく洗濯兼脱水槽3内に導入できる。
吸排気弁55の詳細を図11に示す。図11は図4の二点鎖線D−Dで切断した断面図である。吸排気弁55は駆動用モータ55aと弁体55bと弁座55cとで構成される。弁体55bの中心部に設けた回転軸55dを駆動モータ55aで回転することにより弁体55bが回転するようになっている。図11に示すように弁体55bで弁座55cを塞いだ状態を吸排気弁閉、二点鎖線で示したように乾燥ダクト29とフィルタダクト27を遮断した状態を吸排気弁開と呼ぶ。吸排気弁55を開にすると、吸気口56と排気口57が形成される。吸気口56は筐体1上部の上面カバー1eの内側空間に開口している。排気口57には排気ダクト58が接続しており、室内に通じている。排気ダクト58の出口にはフィルタ59を設けてあり、排気に含まれる糸くずを除去する。
乾燥運転時の風の流れは、切り換え弁54の開閉状態及び吸排気弁55の開閉状態により4種類の流れ方を実現できるが、本発明では、切り換え弁54と吸排気弁55が両方閉もしくは、両方開の二通りの運転を行う。なお、風の流れは、図1乃至図5及び図8乃至図11に実線矢印及び破線矢印で示してあるが、分かりやすくするために図12の構造模式図に示してある。まず、両方が閉の場合について述べる(図12実線矢印)。送風ユニット28を運転し、ヒータ31に通電すると、ノズル32dから洗濯兼脱水槽3内に高速の温風が吹き込み(矢印41)、湿った衣類に当たり、衣類を温め衣類から水分を蒸発させる。高温多湿となった空気は、洗濯兼脱水槽3に設けた貫通孔から外槽2に流れ、吸気口2aから乾燥ダクト29に吸い込まれ、乾燥ダクト29を下から上へ流れる(矢印42)。乾燥ダクト29の壁面には、水冷除湿機構からの冷却水が流れ落ちており、高温多湿の空気は冷却水と接触することで冷却除湿され、乾いた低温空気となりフィルタダクト27へ入る(矢印43)。フィルタダクト27に設けたメッシュフィルタ8aを通り糸屑が取り除かれ、吸気ダクト33に入り、送風ユニット28に吸い込まれる(矢印44)。そして、ヒータ31で再度加熱され、洗濯兼脱水槽3内に吹き込むように循環する。この循環により除湿方式となる第1の循環経路が形成される。この間、洗濯兼脱水槽3を低速で正逆回転させ、衣類をノズル32dの近くまで持ち上げ、高速の温風が衣類に直接当たるようにする。
次に、両方が開の場合(図12破線矢印)は、送風ユニット28を運転すると、筐体1内の空気は吸気口56からフィルタダクト27に吸込まれる(破線矢印46)。そして、吸気ダクト33に入り送風ユニットに吸込まれ(破線矢印63)、蛇腹管継ぎ手30bから後部ダクト51に入り(破線矢印47)、後部ダクトで外槽2の背面に導かれ、後部吹き出し口52から洗濯兼脱水槽3の後側から洗濯兼脱水槽3内に吹き込み(破線矢印48)、洗濯兼脱水槽3内の奥側の衣類に当たり、衣類から水分を蒸発させる。そして、洗濯兼脱水槽3に設けた貫通孔から外槽2に流れ、吸気口2aから乾燥ダクト29に押し込まれる(破線矢印62)。乾燥ダクト29を下から上へ流れ排気口57から排気ダクト58に入りフィルタ59で糸屑を取り除かれ、機外へ排気される(破線矢印45)。これにより、排気方式となる第2の循環経路が形成される。この間、洗濯兼脱水槽3を低速で正逆回転させ、衣類を後部吹き出し口52の近くまで持ち上げ、風が衣類に直接当たるようにする。
乾燥は、次のように進行する。乾燥の初期は、衣類の温度を上昇させる予熱期間で、衣類の温度を速く上昇させるために、極力多くの熱量を衣類に与えることが重要である。予熱期間中は、衣類からの水分の蒸発は少ない。
衣類の温度が上昇するに従い、衣類からの水分の蒸発が多くなるため、気化熱により衣類の温度上昇は鈍くなり、やがて加熱と気化熱がバランスし、衣類の温度はほとんど一定となる(恒率乾燥)。衣類からの水分の蒸発量が増加し始めたら、給水電磁弁16を開き、乾燥ダクト29内の水冷除湿機構へ冷却水を供給し、蒸発した水分を含む多湿な空気を冷却し結露させて、空気中の水分を除去する。
衣類の水分量が少なくなると気化熱が減少し、衣類の温度が再び上昇を始め、衣類の水分がなくなると温風とほぼ同一の温度となり乾燥が終了する(減率乾燥)。減率乾燥に入り衣類の温度が上昇し始めるのは乾燥度が0.9付近になった時である。なお、乾燥度は乾燥衣類の重量/乾燥後の衣類の重量で定義される。乾燥衣類の重量は、温度20℃,相対湿度65%の環境に衣類を一昼夜放置した時の重量である。
材料(衣類)表面から水分が蒸発する場合の乾燥速度の基本式は数1で表される。
(数1)
Qs=α(Ta−Ts)/γ
ここで、Qs:乾燥速度(kg/m2h)
α:熱伝達率(kJ/m2h℃)
γ:蒸発潜熱(kJ/kg)
Ta:温風温度(℃)
Ts:蒸発面温度(℃)
なお、衣類表面の表面積をA(m2)とすると、乾燥速度QA(kg/h)は数2となる。
(数2)
QA=Qs・A=α・A(Ta−Ts)/γ
また、衣類内部から水分が蒸発する場合の乾燥速度は数3となる。
(数3)
Qi=K(Ta−Ts)/γ
ここで、Qi:乾燥速度(kg/m2h)
K:熱通過率(kJ/m2h℃)
なお、熱通過率Kは数4で表される。
(数4)
K=1/(1/α+L/λ)
L:布の厚み(m)
λ:熱伝導率(kJ/m・h・K)
数1,数2,数3,数4から、乾燥(蒸発)速度を早くするためには、
(1)温風温度Taを上げる。
(2)熱伝達率αを上げる。
(3)表面積Aを多くする。
(4)熱伝導率λを上げる。
(5)布の厚みを薄くする。
温風温度が高すぎると衣類へのダメージにつながるため、最大でも90℃程度に抑えた方がよい。このため、温度を上げることで乾燥速度を速くするのは困難である。また、布の熱伝導率や布の厚みは衣類で決まるため、制御することはできない。熱伝達率は通常風速の0.8乗に比例するので、風速を速くすることにより熱伝達率を上げることができる。衣類の表面積は衣類が団子状になってしまうと、見かけの表面積が減少する。また、団子状になると見かけの布の厚みが厚くなり、乾燥速度が低下してしまう。このため、衣類を極力広げるようにした方がよい。
これらのことは、風速を100m/s程度まで高速化することで実現できる。図13は、乾燥後の衣類の状態を、従来の洗濯乾燥機と本実施例の洗濯乾燥機とを比較したものである。比較した洗濯乾燥機の乾燥定格容量は7kgである。従来洗濯乾燥機は、風量1.4m3/min,風速20m/s、本実施例の洗濯乾燥機は切り換え弁54及び吸排気弁55を閉じた状態で、風量1.65m3/min,風速100m/sで運転した。布量は3kgで、比較した衣類は非常にしわになりやすい綿パジャマのズボンである。従来品は捩れて紐のようになっていて、表面積が減少し、かつ布の見掛け上の厚さが増加したようになり、水分の蒸発が阻害され乾燥速度が低下してしまう。これに対して、本実施例は衣類が広がっており、しわが少ない仕上がりである。しわが少ないのは、風速が速い風を衣類に吹き付けると、衣類が風圧で押し広げられるからである。このように衣類が広がっていると、表面積が大きくなるとともに、衣の重なりによる見掛けの厚さの増加がなく、熱伝達率も高くできるため、水分が蒸発しやすく乾燥速度が上昇し、乾燥消費電力量を低減できる。
しかし、布量が多くなると、洗濯兼脱水槽3内で衣類が動きにくくなるため、風が衣類に満遍なく当たらなくなるため、衣類の位置により乾き具合に差が生じる。図14は、ヒータを強モードで乾燥したときの衣類含水量と衣類温度変化を示したものである。乾燥前半は衣類が水分を多く含んでおり、衣類の嵩が小さく、洗濯兼脱水槽3内で衣類が動きやすいため、衣類に満遍なく温風が当たり、衣類の温度はほぼ一緒である。乾燥が進行していくと含水量が減少し衣類が膨らみ出す。そうすると、洗濯兼脱水槽3内での衣類の前後方向の動きが少なくなり、洗濯兼脱水槽3内で前側に位置する衣類と奥側に位置する衣類との乾燥速度に差が生じだす。前側の衣類は温風が良く当たるため速く乾き早い時間から減率乾燥期間に入り、衣類の温度上昇が始まる。これに対して、奥側の衣類は温風が当たりにくくなるため、乾きが遅く減率乾燥期間に入る時間が遅れ、衣類が温度上昇を始める時間も遅くなる。このように、乾きむらが生じ、奥側にある衣類を適正な乾燥度(乾燥度1.02から1.04程度)まで乾燥させ運転を終了したとき、奥側の衣類温度はT2(80〜90℃程度)であるが、前側の衣類は過乾燥状態になり温度がT1(100℃程度)と温風とほぼ同程度まで上昇してしまう。
そこで、乾燥前半はヒータ31を強モードとし、切り換え弁54と吸排気弁55を閉とし、前部吹き出し口32から高速の風を吹き出す。そして、乾燥後半は切り換え弁54と吸排気弁55を開とし、ヒータ31を弱モードとし、後部吹き出し口52から温風を吹き出すようにする。乾燥前半は、上述した高速風の効果により高い乾燥速度で乾燥が進行する。乾燥が進行し減率乾燥期間に入り前側の衣類がほぼ乾燥したら、後部吹き出し口52から温風を吹き出す。前部吹き出し口32からの温風だけでは乾き難かった奥側の衣類に温風が当たるため、奥側衣類の乾燥が急激に進む。乾燥後半でヒータ31を弱としたのは、この時点で奥側の衣類の乾燥が減率乾燥期間に入る程度までは進んでおり、機体も十分に温まっているため、ヒータ弱でも奥側衣類を乾燥させるのに十分であるからである。また、後部吹き出し口52の面積は前部吹き出し口32より大きくしてあるため、送風ユニット28の回転数を変えずに乾燥後半の運転をすると、乾燥前半に比べ大風量の風で乾燥するため、乾燥スピードをより一層速くすることができる。さらに、乾燥前半と乾燥後半の風量を同じにするよう、乾燥後半の送風ユニット28の回転数を下げても良い。こうすることで、送風ユニット28の入力を低減できるため、消費電力を低減できる。
以上のように、乾き難かった奥側衣類の乾燥を効率よく行えるため、無駄な電力消費を抑えることができるとともに、衣類の乾きむらを防止し、衣類の温度が上昇し過ぎるのを防止できる。
図15は、本実施例による乾燥中の衣類温度変化と含水量の変化を示したものである。乾燥前半は、従来機の温度変化と同様であるが、吹き出し口を後部に切り換えた乾燥後半は、奥側衣類の温度が急激に上昇し乾燥していくのが分かる。一方、温風が当たらなくなる前側衣類の温度は若干低下していくが、すでに乾いているためになんら問題はない。このように、乾燥後半に奥側衣類を効果的に乾燥できるため、乾燥時間も前部吹き出し口のみの場合のt1より短いt2とすることができ、時間と消費電力を低減できる。
また、更に消費電力量を低減するために、乾燥後半ではヒータ31をOFFとしてもよい。乾燥前半で衣類や外槽2,洗濯兼脱水槽3の温度が十分に高くなっており、かつ筐体1内の空気の温度も上昇している。乾燥後半で吸排気弁55を開くと筐体1内の暖められた空気が吸込まれ、送風ユニット28で断熱圧縮され温度が更に上昇する。本実施例の場合、送風ユニット28の回転数が毎分14000回転であり、送風ファンでの温度上昇は8℃程度である。そして、外槽2の外周面に密着して設けた後部ダクト51を通る間に外槽2から熱をもらい更に温度上昇するため、ヒータなしでも、温風を後部吹き出し口52から吹き出すことができるからである。周囲温度が20℃の場合で、後部吹き出し口からの吹き出し温度は乾燥後半直後で50℃程度、時間の経過とともに温度は低下するが、乾燥終了時で35℃程度である。
以上、消費電力量の観点から説明してきたが、本実施の形態例は乾燥時のしわ防止の点からも有利である。すなわち、乾燥前半は前部吹き出し口32から風速約100m/s,風量約1.6m3/minの温風を吹き出し、風圧で衣類を押し広げることで衣類のしわを防ぎながら乾燥を行っている。しかしながら、衣類の量が多いと洗濯兼脱水槽3の奥側にある衣類には高速の風が当たりにくいため、奥側衣類のしわ付きを防ぐことはできない。乾燥後半に切り替わる時点で、奥側衣類は減率乾燥期間に入る程度まで乾いており、乾燥度は0.9程度である。乾燥度が0.9を越すと、その時衣類に付いていたしわを取るのが困難になっていく。本実施例では、奥側衣類の乾燥度が0.9程度の時点で後部吹き出し口52から温風を吹き出すため、後側衣類のしわを伸ばす効果がある。しわを伸ばす効果で考えると、後部吹き出し口52からの風速,風量は前部吹き出し口32と同程度であることが望ましい。ただし、洗濯兼脱水槽3が回転することで、フランジ23の放射状リブに高速の風が当たり、風きり音が発生する。このため、本実施例では、後部吹き出し口52の面積を前部吹き出し口の面積より大きくし、風速70m/s,風量1.7m3/minに設定し、風きり音を低減している。このように風速を落としても、従来の一般的な洗濯乾燥機の風速(10〜20m/s)に較べ十分に速く、前部吹き出し口のしわ伸ばし効果よりもやや低下するが、十分なしわ伸ばし効果を有する。なお、乾燥後半には前側衣類には温風が吹付けられないが、しわが少ない状態で乾燥しているため、乾燥後半の運転中にしわが増加することはほとんどない。
ところで、乾燥効率を更に向上するために、切り換え弁54を中立の位置にして、前部吹き出し口32と後部吹き出し口52の両方から同時に温風を吹き出すようにすることも考えられる。しかし、本実施例の送風ユニット28の能力では、100m/sの風速を確保しようとすると、吹き出し口1つ当たりの風量が0.8m3/min程度になり、この風量では、しわを伸ばす効果が少なく、本実施例と同等の乾燥仕上がりを得ることができない。送風ユニットの能力を2倍化すると、前後同時吹き出しで仕上がりを良くすることができるが、送風ユニットを運転するための電力も2倍化するため、商用電源(100V,15A)ではヒータの入力を小さくする必要があり、温風の温度が低下してしまうため、得策ではない。また、送風ユニットが大型化するため、洗濯乾燥機の筐体サイズを大型化せざるを得ず、設置性(省スペース化)の観点からも課題となる。ただし、温風の熱源として、ヒートポンプ方式を使用する場合は、熱源の入力が小さくても十分な熱量を得られるため、前後同時吹き出しによる、高効率乾燥と高仕上げ乾燥を実現可能である。
本実施の形態例では、洗濯兼脱水槽3の前後に吹き出し口1つずつ設け、吸気口は1つの構成としている。これは、前後の吹き出し口を切り換え弁で切り換えることで、単一の送風ユニットで実現することができ、コンパクトで低コストな洗濯乾燥機とすることができる。
また、前部吹き出し用の温風循環経路は閉ループで構成し、後部吹き出し用の温風循環経路は開ループで形成し、吸排気弁で閉ループと開ループを切り換える構成としている。
乾燥前半から乾燥後半に切り替わる時点で、後側衣類は減率乾燥期間に入る程度まで乾いており、衣類の含水量は少なくなっている。このため、乾燥後半では衣類に当たった後に空気に含まれる水分はそれほど多くない。このため、乾燥後半も閉ループのまま乾燥ダクト内で水冷除湿しても良いが、乾燥後半はヒータ弱あるいはヒータOFFの運転をするので、温風温度が低目となるため除湿の効率はあまり高くない。そこで、温風循環経路を開ループとし、筐体内から乾いた空気を吸込み、衣類から蒸発した水分を含む空気を排気する構成としたほうが、短時間で乾燥を終了できる。この時室内に放出する湿気は洗濯物を部屋干しした場合に較べはるかに少なく、室内が湿気ることはほとんどない。
次に、排気を室内に放出しない実施例について、図16及び図17を用いて説明する。乾燥ダクト29上部のフィルタダクト27との接続部近傍に、吸気弁60を有する。図16は図4の二点鎖線D−Dで切断した断面図で吸気弁60の詳細を示す。吸気弁60は駆動用モータ60aと弁体60bと弁座60cとで構成される。弁体60bの端部に設けた回転軸60dを駆動モータで回転することにより弁体60bが回転するようになっている。図16に示すように弁体60bで弁座60cを塞いだ状態を吸気弁閉、二点鎖線で示すように乾燥ダクト29とフィルタダクト27を遮断した状態を吸気弁開と呼ぶ。吸気弁60を開にすると、吸気口61が形成される。
乾燥運転時の風の流れを、図17の構造模式図に示す。本実施例においても、切り換え弁54と吸気弁が両方閉もしくは、両方開の二通りの運転を行う。両方開の場合(図17実線矢印)については、上述した実施の形態例と同様であるので説明を省略し、両方が開の場合(図17破線矢印)について述べる。送風ユニット28を運転すると、筐体1内の空気は吸気口56からフィルタダクト27に吸込まれる(破線矢印46)。そして、吸気ダクト33に入り送風ユニットに吸込まれ(矢印44)、蛇腹管継ぎ手30bから後部ダクト51に入り(破線矢印47)、後部ダクトで外槽2の背面に導かれ、後部吹き出し口52から洗濯兼脱水槽3の後側から洗濯兼脱水槽3内に吹き込み(破線矢印48)、洗濯兼脱水槽3内の奥側の衣類に当たり、衣類から水分を蒸発させる。そして、洗濯兼脱水槽3に設けた貫通孔から外槽2に流れ、一部はオーバーフロー口2eからオーバーフローホース2fを通り(破線矢印49)排水ホース26から機外へ排気される。残りは、排水口2bから排水弁25を通り(破線矢印50)、オーバーフローホース2fからの流れと合流し排水ホース26から機外へ排出される。通常、排水ホースは、配水管に接続されているため、配水管内に排気され、室内に排気されないため、室内の湿気が増加することを防止できる。
以上述べてきた実施の形態例は、前部吹き出し用の温風循環経路を閉ループで構成し、後部吹き出し用温風循環経路を開ループで構成したが、逆に構成しても全く同様の効果を得られる。この場合の空気の流れを図18の構造模式図に示す(構成は図12に示した場合と同じである)。この場合の運転は、乾燥前半は後部吹き出し口52から温風を吹き出し、乾燥後半は前部吹き出し口32から温風を吹き出すようにする。後部吹き出し口52から温風を吹き出す場合、切り換え弁54を開き、吸排気弁55を閉じると、空気は図中破線矢印で示すように流れる。送風ユニット28を運転し、ヒータ31に通電すると、蛇腹管継ぎ手30bから後部ダクト51に入り(破線矢印47)、後部ダクトで外槽2の背面に導かれ、後部吹き出し口52から洗濯兼脱水槽3の後側から洗濯兼脱水槽3内に吹き込み(破線矢印48)、洗濯兼脱水槽3内の奥側の衣類に当たり、衣類から水分を蒸発させる。高温多湿となった空気は、洗濯兼脱水槽3に設けた貫通孔から外槽2に流れ、吸気口2aから乾燥ダクト29に吸い込まれ、乾燥ダクト29を下から上へ流れる(破線矢印62)。乾燥ダクト29に設けてある水冷除湿機構で冷却除湿され、乾いた低温空気となりフィルタダクト27へ入る(破線矢印67)。フィルタダクト27に設けたメッシュフィルタ8aを通り糸屑が取り除かれ、吸気ダクト33に入り、送風ユニット28に吸い込まれ、ヒータ31で再度加熱され、洗濯兼脱水槽3内に吹き込むように循環する。
前部吹き出し口32から温風を吹き出す場合は切り換え弁54を閉じ、吸排気弁55を開く。送風ユニット28を運転すると、筐体1内の空気は吸気口56からフィルタダクト27に吸込まれる(矢印65)。そして、フィルタ8,送風ユニット28,ヒータ31を通り、前部吹き出し口32から洗濯兼脱水槽内3内に吹き込む(矢印41)。洗濯兼脱水槽3内の前側衣類に当たり、衣類から水分を蒸発させる。そして、洗濯兼脱水槽3に設けた貫通孔から外槽に流れ、吸気口2aから乾燥ダクト29に押し込まれる(矢印42)。乾燥ダクト29を下から上へ流れ排気口57から排気ダクト58に入りフィルタ59で糸屑を取り除かれ、機外へ排気される(矢印64)。
以上、本実施例によれば、前半の温風循環経路を閉ループで形成し、後半の温風循環経路を開ループ形成に切り換えることにより、湿気を帯びた空気の機外へ排出が抑えられかつ、消費電力を低減することができる。また、乾燥経路の切り換えと同時に、温風の吹き出し方向を変えられるので、乾燥前半とは異なる方向から温風を衣類に当てることができ、乾きむらを抑制することもできるのである。
また、乾燥運転中に衣類に高速の温風を直接吹き付けるので、衣類と風との熱伝達率が向上し、温風が効率よく衣類を温める。また、風速が高いため、回転ドラムの奥にある衣類への風が当たりやすい。
さらに、乾燥の後半で後吹き出し口から風を吹き込むようにしているため、乾きにくい回転ドラムの奥側にある衣類の乾燥が促進され、乾きむらが防止できるとともに乾燥時間が短く消費電力が少ない乾燥を実現できる。
また、乾燥後半は衣類の温度が十分に上昇しているため、後吹き出し口から風を吹き込む場合に加熱手段を弱運転にすることで消費電力を低減できる。あるいは、加熱手段の通電を止め、乾燥前半で温められた筐体内部の空気を吸気手段から吸い込み衣類に吹き付けるようにすることで加熱手段を使わなくても温風を供給できるため、更に消費電力を低減できる。
また、乾燥後半に後吹き出し口から風を吹き込む場合は、筐体内の乾いた空気を吸い込み、回転ドラム内の湿った空気を筐体外へ排気しているため、衣類から効率よく水分を除去でき消費電力を低減できる。このようにすることで、衣類の乾きすぎによる衣類の温度上昇を防止できるため、衣類へのダメージを抑えることもできる。
また、前吹き出し口の風速より後吹き出し口の風速を遅くしているので、後吹き出し口から吹き出した風が回転ドラム底板に当たるときに発生する風切り音を低減できる。
また、吸い込み口と後吹き出し口との位置関係を回転ドラムの回転軸を介在させて離れた位置に設けてあるので、後吹き出し口から吹き出した風が衣類に当たらずに吸い込み口から吸い込まれることを防止でき、効率よく回転ドラム奥側の衣類を乾燥できる。