図1に、本発明の非水二次電池に係る巻回電極体の横断面の一例を表す模式図を示す。なお、図1では、巻回電極体の構造の理解を容易にする目的で、正極および負極について、集電体と電極合剤層(正極合剤層および負極合剤層)とを区別して示しておらず、また、巻回周毎にある程度の隙間を持たせて示しているが、通常の電池においては、例えば図中上下方向に各構成要素が圧縮されて、構成要素間の隙間をできるだけ無くすように巻回電極体が構成される。
図1に示す巻回電極体10は、正極20、負極30および正極20と負極30との間に介在させる2枚のセパレータ40、50を重ねて巻回し、横断面を扁平状にしたものである。なお、21は正極20と電池の外部端子とを接続するための正極タブであり、31は負極30と電池の外部端子とを接続するための負極タブである。
2枚のセパレータ40、50は、融点が80〜170℃の熱可塑性樹脂を主体とする多孔質層(A)41、51と、多孔質層(A)よりも耐熱性が高い多孔質層(B)42、52とを有する多層構造である。
図1に示す巻回電極体10では、正極および負極のうちの一方の電極(図1では、正極20)の両面に、2枚のセパレータ40、50が配置されており、かつ内端およびその近傍、更には外端およびその近傍では、2枚のセパレータ40、50が直接対向している。そして、他方の電極(図1では負極30)は、その内端近傍において、両面に前記2枚のセパレータのうちの一方のセパレータ50が配置されている。
図1に示すように、本発明に係る巻回電極体は、前記2枚のセパレータが、少なくともその内端において、多孔質層(A)の構成成分と多孔質層(B)の構成成分とが混在した層を有する接合部60により接合されている。
なお、巻回電極体の製法によっては、図1に示すように、2枚のセパレータ40、50が、その外端においても、多孔質層(A)の構成成分と多孔質層(B)の構成成分とが混在した層を有する接合部61により接合される。本発明においては、2枚のセパレータが、その外端においても接合部により接合されていることが好ましく、これにより、外端側でのセパレータの反りを抑えて、巻回電極体の厚みをより均一にすることができる。
また、図1では明確に示していないが、接合部60、61は、多孔質層(A)の構成成分と多孔質層(B)の構成成分とが混在した層のみで構成されていてもよく、多孔質層(A)の構成成分と多孔質層(B)の構成成分とが混在した層とともに、多孔質層(A)や多孔質層(B)の一部が残存して構成された多層構造となっていてもよい。
セパレータにおける多孔質層(A)は、本発明の電池において、正極と負極の短絡を防止しつつ、イオンを透過するセパレータ本来の機能を有する層である。また、多孔質層(A)は、融点が80℃以上170℃以下、すなわち、JIS K 7121の規定に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される融解温度が、80℃以上(好ましくは100℃以上)170℃以下の熱可塑性樹脂を主体としており、このような多孔質層(A)を有するセパレータとすることで、本発明の電池が高温となった場合に、前記熱可塑性樹脂が溶融してセパレータの孔を塞ぐ、所謂シャットダウン機能を確保することができる。
多孔質層(A)を構成する熱可塑性樹脂は、融点が80℃以上170℃以下で、電気絶縁性を有しており、電気化学的に安定で、更に後で詳述する電池の有する非水電解液や、多孔質層(B)形成用の組成物に使用する媒体に安定な熱可塑性樹脂であれば特に制限は無いが、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィンなどが好ましい。
多孔質層(A)には、例えば、公知の非水二次電池などでセパレータに使用されている前記例示の熱可塑性樹脂で構成された微多孔膜、すなわち、溶剤抽出法、乾式または湿式延伸法などにより作製されたイオン透過性の微多孔膜を用いることができる。
多孔質層(A)を構成する微多孔膜の好適な具体例としては、例えば、PEを主成分とする単層の微多孔膜や、PEとPPとを2〜5層積層した積層微多孔膜などが挙げられる。
また、多孔質層(A)には、シャットダウン機能を損なわない範囲で、その強度などを向上するためにフィラーなどを含有させることもできる。多孔質層(A)に使用可能なフィラーとしては、例えば、多孔質層(B)に使用可能な耐熱性微粒子として後に例示する各種微粒子が挙げられる。
多孔質層(A)は、融点が80℃以上170℃以下の熱可塑性樹脂を主体とするが、ここでいう「主体とする」とは、融点が80℃以上170℃以下の熱可塑性樹脂を、多孔質層(A)の構成成分の全体積中、50体積%以上含むことを意味している。また、多孔質層(A)における融点が80℃以上170℃以下の熱可塑性樹脂の含有量は、シャットダウンの効果をより得やすくするために、例えば、下記のようであることが好ましい。セパレータの全構成成分中における融点が80℃以上170℃以下の可塑性樹脂の体積は、10体積%以上であることが好ましく、20体積%以上であることがより好ましい。また、融点が80℃以上170℃以下の熱可塑性樹脂の体積が、多孔質層(A)の全構成成分中、70体積%以上であることが好ましく、80体積%以上であることがより好ましい(融点が80℃以上170℃以下の熱可塑性樹脂が100体積%であってもよい。)。更に、後記の方法により求められる多孔質層(B)の空孔率が20〜60%であり、かつ融点が80℃以上170℃以下の熱可塑性樹脂の体積が、多孔質層(B)の空孔体積の50%以上であることが好ましい。
多孔質層(A)の厚み[セパレータが多孔質層(A)を複数有している場合には、それらの合計厚み。多孔質層(A)の厚みに関して、以下同じ。]は、シャットダウン機能をより良好に確保する観点から、10μm以上であることが好ましく、12μm以上であることがより好ましい。ただし、多孔質層(A)が厚すぎると、電池の負荷特性やエネルギー密度の低下を引き起こす虞があることなどから、30μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがより好ましい。
セパレータに係る多孔質層(B)は、セパレータに特定の機能を付与するための機能層である。
なお、多孔質層(B)は、多孔質層(A)よりも耐熱性が高い必要がある。本発明法では、巻回電極体の形成時において、正極および負極のいずれか一方の電極の両面に配置された2枚のセパレータを加熱しつつ切断し、これら2枚のセパレータの切断端同士を溶着する際に、加熱温度を、多孔質層(A)の主体である熱可塑性樹脂の融点よりも高く、かつ多孔質層(B)の耐熱温度よりも低い温度とするが、これにより、前記2枚のセパレータの溶着部(前記電極の端部を覆う部分)において、多孔質層(A)の構成成分と多孔質層(B)の構成成分とが混在した層が形成され、溶融したセパレータの構成成分によるダマの発生が抑えられる。これは、前記切断時に、耐熱性の高い多孔質層(B)の空孔に溶融した多孔質層(A)に係る熱可塑性樹脂が浸透しつつ、前記2枚のセパレータの切断端同士が溶着するために、ダマの原因となる溶融した熱可塑性樹脂の溜まりが生じないためであると考えられる。
なお、多孔質層(A)および多孔質層(B)の「耐熱性」は、軟化などの変形が見られる温度によって判断する。すなわち、本発明に係るセパレータでは、多孔質層(B)の耐熱温度(軟化などの変形が生じない温度。後述する「耐熱温度が150℃以上のフィラーに係る「耐熱温度」についても、同じ。)が、多孔質層(A)の耐熱温度よりも高い必要がある。なお、多孔質層(B)の耐熱温度は、150℃以上であることが好ましく、180℃以上であることがより好ましい。
多孔質層(B)としては、例えば、耐熱温度が150℃以上のフィラーを主体として含む層が好ましい。このような多孔質層(B)は、耐熱温度が150℃以上のフィラーによって、電池の内部温度が上昇した際にも正極と負極との直接の接触による短絡を防止する機能を確保することができる。すなわち、電池が高温となった場合には、喩え多孔質層(A)が収縮しても、収縮し難い多孔質層(B)によって、セパレータが熱収縮した場合に発生し得る正負極の直接の接触による短絡を防止することができる。また、耐熱温度が150℃以上のフィラーを含有する多孔質層(B)が、セパレータの骨格として作用するため、多孔質層(A)の熱収縮、すなわちセパレータ全体の熱収縮を抑制することができる。
多孔質層(B)に使用する耐熱温度が150℃以上のフィラーとしては、電池の有する非水電解液に対して安定であり、更に電池の作動電圧範囲において酸化還元されにくい電気化学的に安定なものであれば、有機粒子でも無機粒子でもよいが、分散などの点から微粒子であることが好ましく、安定性(特に耐酸化性)などの点から無機微粒子がより好ましく用いられる。
無機粒子の構成材料の具体例としては、例えば、酸化鉄、Al2O3(アルミナ)、SiO2(シリカ)、TiO2、BaTiO3、ZrO2などの無機酸化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの無機窒化物;フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウムなどの難溶性のイオン結晶;シリコン、ダイヤモンドなどの共有結合性結晶;モンモリロナイトなどの粘土;などが挙げられる。ここで、前記無機酸化物は、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、マイカなどの鉱物資源由来物質またはこれらの人造物などであってもよい。また、金属、SnO2、スズ−インジウム酸化物(ITO)などの導電性酸化物、カーボンブラック、グラファイトなどの炭素質材料などで例示される導電性材料の表面を、電気絶縁性を有する材料(例えば、前記の無機酸化物など)で被覆することにより電気絶縁性を持たせた粒子であってもよい。無機粒子としては、多孔質層(B)の耐酸化性をより高める観点から、前記の無機酸化物の粒子(微粒子)が好ましく、中でも、アルミナ、シリカおよびベーマイトなどがより好ましい。
また、有機粒子(有機粉末)としては、架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリスチレン、架橋ポリジビニルベンゼン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体架橋物、ポリイミド、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド縮合物などの各種架橋高分子粒子や、ポリスルフォン、ポリアクリロニトリル(PAN)、アラミド、ポリアセタール、熱可塑性ポリイミドなどの耐熱性高分子粒子などが例示できる。また、これらの有機粒子を構成する有機樹脂(高分子)は、前記例示の材料の混合物、変性体、誘導体、共重合体(ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体)、架橋体(前記の耐熱性高分子の場合)であってもよい。
耐熱温度が150℃以上のフィラーは、前記例示のもののうち1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
耐熱温度が150℃以上のフィラーの形態としては、例えば、球状に近い形状を有していてもよく、板状の形状を有していてもよいが、多孔質層(B)に含まれる前記フィラーの少なくとも一部が板状粒子であることが好ましい。前記フィラーの全てが板状粒子でもよい。多孔質層(B)が板状粒子を含有することで、板状粒子同士の衝突によって多孔質膜(A)が収縮する力を抑制することが可能となる。また、板状粒子を用いることでセパレータにおける正極負極間の経路、すなわち所謂曲路率が大きくなる。そのため、デンドライトが生成した場合でも、該デンドライトが負極から正極に到達し難くなり、デンドライトショートに対する信頼性を高めることができる。
板状の前記フィラーとしては、各種市販品が挙げられ、例えば、旭硝子エスアイテック社製「サンラブリー(商品名)」(SiO2)、石原産業社製「NST−B1(商品名)」の粉砕品(TiO2)、堺化学工業社製の板状硫酸バリウム「Hシリーズ(商品名)」、「HLシリーズ(商品名)」、林化成社製「ミクロンホワイト(商品名)」(タルク)、林化成社製「ベンゲル(商品名)」(ベントナイト)、河合石灰社製「BMM(商品名)」や「BMT(商品名)」(ベーマイト)、河合石灰社製「セラシュールBMT−B(商品名)」[アルミナ(Al2O3)]、キンセイマテック社製「セラフ(商品名)」(アルミナ)、斐川鉱業社製「斐川マイカ Z−20(商品名)」(セリサイト)などが入手可能である。この他、SiO2、Al2O3、ZrO2、CeO2については、特開2003−206475号公報に開示の方法により作製することができる。
前記フィラーが板状粒子の場合の形態としては、アスペクト比(板状粒子中の最大長さと板状粒子の厚みとの比)が、好ましくは5以上、より好ましくは10以上であって、好ましくは100以下、より好ましくは50以下である。本明細書でいう板状粒子におけるアスペクト比は、走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影した画像を画像解析することにより求められる値である。
また、板状の前記フィラーは、薄いと衝撃によって割れやすいという問題があることから、その平均厚みが、0.02μm以上であることが好ましく、0.05μm以上であることがより好ましい。ただし、板状の前記フィラーの厚みが大きすぎると、セパレータが厚くなって、放電容量が低下したり、電池の作製時に多孔質層(B)が割れやすくなることから、その平均厚みは、0.7μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましい。
板状の前記フィラーの平均厚みは、セパレータの断面をSEMにより観察し、フィラー100個の厚みの平均値(数平均値)として求められる。
また、多孔質層(B)に含まれる前記フィラーの少なくとも一部が、一次粒子が凝集した二次粒子構造を有する微粒子であることが好ましい。前記フィラーの全部が、前記二次粒子構造を有する微粒子であってもよい。多孔質層(B)が前記二次粒子構造のフィラーを含有することで、前述した板状粒子を用いた場合と同様の熱収縮抑制効果や、デンドライトショートの抑制効果を得ることができる。前記二次粒子構造のフィラーの例としては、大明化学社製「ベーマイト C06(商品名)」、「ベーマイト C20(商品名)」(ベーマイト)、米庄石灰工業社製「ED−1(商品名)」(CaCO3)、J.M.Huber社製「Zeolex 94HP(商品名)」(クレイ)などが挙げられる。
多孔質層(B)に係る前記フィラーの平均粒径は、例えば、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上であって、好ましくは15μm以下、より好ましくは5μm以下である。なお、本明細書でいう平均粒径は、例えば、レーザー散乱粒度分布計(例えば、HORIBA社製「LA−920」)を用い、フィラーを溶解しない媒体に、これら微粒子を分散させて測定した数平均粒子径である。
多孔質層(B)において、耐熱温度が150℃以上のフィラーの量は、前記フィラーを主体とする場合、多孔質層(B)の構成成分の全体積中[多孔質層(B)の各構成成分の含有量について、以下同じ。]、50体積%以上であり、70体積%以上であることが好ましく、80体積%以上であることがより好ましく、90体積%以上であることが更に好ましい。多孔質層(B)中のフィラーを前記のように高含有量とすることで、電池が高温となった際の正極と負極との直接の接触による短絡の発生をより良好に抑制することができ、また、セパレータ全体の熱収縮を良好に抑制することができる。
また、多孔質層(B)には、耐熱温度が150℃以上のフィラー同士を結着したり、必要に応じて多孔質層(A)と多孔質層(B)とを結着したりするために有機バインダを含有させることが好ましく、このような観点から、多孔質層(B)における耐熱温度が150℃以上のフィラー量の好適上限値は、例えば、多孔質層(B)の構成成分の全体積中、99.5体積%である。なお、多孔質層(B)における耐熱温度が150℃以上のフィラーの量を70体積%未満とすると、例えば、多孔質層(B)中の有機バインダ量を多くする必要が生じるが、その場合には多孔質層(B)の空孔が有機バインダによって埋められやすく、セパレータとしての機能が低下する虞があり、また、開孔剤などを用いて多孔質化した場合には、前記フィラー同士の間隔が大きくなりすぎて、熱収縮を抑制する効果が低下する虞がある。
耐熱温度が150℃以上のフィラーとして板状粒子を用いる場合、多孔質層(B)中での板状粒子の存在形態は、平板面がセパレータの面に対して略平行であることが好ましく、より具体的には、セパレータの表面近傍における板状粒子について、その平板面とセパレータ面との平均角度が30°以下であることが好ましい[最も好ましくは、当該平均角度が0°、すなわち、セパレータの表面近傍における板状の平板面が、セパレータの面に対して平行である]。ここでいう「表面近傍」とは、セパレータの表面から全体厚みに対しておよそ10%の範囲を指す。板状粒子の存在形態が前記のような状態となるように板状粒子の配向性を高めることで、前記の多孔質層(B)の熱収縮抑制作用をより強く発揮させることが可能になり、また、電極表面に析出するリチウムデンドライトや電極表面の活物質の突起により生じ得る内部短絡をより効果的に防ぐことができる。なお、多孔質層(B)中における板状粒子の存在形態は、セパレータの断面をSEMで観察することにより把握することができる。
また、耐熱温度が150℃以上のフィラーとして板状粒子を用いる場合、多孔質層(B)中において、それらの板状面で積層(平板を形成する広い面で厚み方向に積層されていれば、上下のフィラーの水平位置が互いにずれていてもよい)しており、かつ、フィラーの積層数が5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。セパレータに係る多孔質層(B)において、板状の前記フィラーがこのように存在していることで、セパレータの強度(例えば、後述する測定方法により測定される貫通強度)を高めることができる。ただし、板状の前記フィラーの多孔質層(B)中における積層数が多すぎると、多孔質層(B)の厚み、ひいてはセパレータの厚みの増大を引き起こし、電池のエネルギー密度低下を引き起こす虞がある。そのため、多孔質層(B)における板状の前記フィラーの積層数は、50以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましい。なお、多孔質層(B)中における板状の前記フィラーの積層数は、後記の実施例で採用した方法により測定できる。
多孔質層(B)には、セパレータの形状安定性の確保や、多孔質層(B)と多孔質層(A)との一体化などのために、有機バインダを含有させることが好ましい。有機バインダとしては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA、酢酸ビニル由来の構造単位が20〜35モル%のもの)、エチレン−エチルアクリレート共重合体などのエチレン−アクリル酸共重合体、フッ素系ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、架橋アクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが挙げられるが、特に、150℃以上の耐熱温度を有する耐熱性のバインダが好ましく用いられる。有機バインダは、前記例示のものを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記例示の有機バインダの中でも、EVA、エチレン−アクリル酸共重合体、フッ素系ゴム、SBRなどの柔軟性の高いバインダが好ましい。このような柔軟性の高い有機バインダの具体例としては、三井デュポンポリケミカル社の「エバフレックスシリーズ(EVA)」、日本ユニカー社のEVA、三井デュポンポリケミカル社の「エバフレックス−EEAシリーズ(エチレン−アクリル酸共重合体)」、日本ユニカー社のEEA、ダイキン工業社の「ダイエルラテックスシリーズ(フッ素ゴム)」、JSR社の「TRD−2001(SBR)」、日本ゼオン社の「EM−400B(SBR)」などがある。
なお、前記の有機バインダを多孔質層(B)に使用する場合には、後述する多孔質層(B)形成用の組成物の溶媒に溶解させるか、または分散させたエマルジョンの形態で用いればよい。
また、多孔質層(B)としては、多孔質層(A)よりも耐熱性が高ければよく、前記の耐熱温度が150℃以上のフィラーを主体とする多孔質層以外にも、各種の機能を有する層が挙げられる。このような多孔質層(B)としては、例えば、前記フィラーとともに繊維状物などが混在する層などが挙げられる。ここで、繊維状物としては、耐熱温度が150℃以上であって、電気絶縁性を有しており、電気化学的に安定で、更に下記に詳述する非水電解液や、セパレータ製造の際に使用する溶媒に安定であれば、特に材質に制限はない。なお、本明細書でいう「繊維状物」とは、アスペクト比[長尺方向の長さ/長尺方向に直交する方向の幅(直径)]が4以上のものを意味しており、アスペクト比は10以上であることが好ましい。
繊維状物の具体的な構成材料としては、例えば、セルロースおよびその変成体[カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)など]、ポリオレフィン[ポリプロピレン(PP)、プロピレンの共重合体など]、ポリエステル[ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)など]、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアラミド、ポリアミドイミド、ポリイミドなどの樹脂;ガラス、アルミナ、ジルコニア、シリカなどの無機酸化物;などを挙げることができ、これらの構成材料を2種以上併用して繊維状物を構成してもよい。また、繊維状物は、必要に応じて、公知の各種添加剤(例えば、樹脂である場合には酸化防止剤など)を含有していても構わない。
本発明に係るセパレータの厚みは、正極と負極とをより確実に隔離する観点から、6μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。他方、セパレータの厚みが大きすぎると、電池のエネルギー密度が低下してしまうことがあるため、その厚みは、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。
また、セパレータを構成する多孔質層(A)の厚みをa(μm)、多孔質層(B)の厚みをb(μm)としたとき、aとbとの比率a/bは、10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、また、1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましい。本発明に係るセパレータでは、例えば、多孔質層(B)が、耐熱温度が150℃以上のフィラーを主体として含む層である場合、多孔質層(A)の厚み比率を大きくし多孔質層(B)を薄くしても、良好なシャットダウン機能を確保しつつ、セパレータの熱収縮による短絡の発生を高度に抑制することができる。なお、セパレータにおいて、多孔質層(A)が複数存在する場合には、厚みaはその総厚みであり、多孔質層(B)が複数存在する場合には、厚みbはその総厚みである。
なお、具体的な値で表現すると、多孔質層(A)の厚み[セパレータが多孔質層(A)を複数有する場合には、その総厚み]は、5μm以上であることが好ましく、また、30μm以下であることが好ましい。そして、多孔質層(B)の厚み[セパレータが多孔質層(B)を複数有する場合には、その総厚み]は、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、4μm以上であることが更に好ましく、また、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、6μm以下であることがより好ましい。多孔質層(A)が薄すぎると、シャットダウン機能が弱くなる虞があり、厚すぎると、電池のエネルギー密度の低下を引き起こす虞があることに加えて、熱収縮しようとする力が大きくなり、セパレータ全体の熱収縮を抑える作用が小さくなる虞がある。また、多孔質層(B)が薄すぎると、多孔質層(B)の形成により確保され得る効果が小さくなる虞があり、厚すぎると、セパレータ全体の厚みの増大を引き起こしてしまう。
セパレータ全体の空孔率としては、電解液の保液量を確保してイオン透過性を良好にするために、乾燥した状態で、30%以上であることが好ましい。一方、セパレータ強度の確保と内部短絡の更なる抑制の観点から、セパレータの空孔率は、乾燥した状態で、70%以下であることが好ましい。なお、セパレータの空孔率:P(%)は、セパレータの厚み、面積あたりの質量、構成成分の密度から、下記(1)式を用いて各成分iについての総和を求めることにより計算できる。
P = 100−(Σai/ρi)×(m/t) (1)
ここで、前記式中、ai:質量%で表した成分iの比率、ρi:成分iの密度(g/cm3)、m:セパレータの単位面積あたりの質量(g/cm2)、t:セパレータの厚み(cm)である。
また、前記(1)式において、mを多孔質層(A)の単位面積あたりの質量(g/cm2)とし、tを多孔質層(A)の厚み(cm)とすることで、前記(1)式を用いて多孔質層(A)の空孔率:P(%)を求めることもできる。この方法により求められる多孔質層(A)の空孔率は、30〜70%であることが好ましい。
更に、前記(1)式において、mを多孔質層(B)の単位面積あたりの質量(g/cm2)とし、tを多孔質層(B)の厚み(cm)とすることで、前記(1)式を用いて多孔質層(B)の空孔率:P(%)を求めることもできる。この方法により求められる多孔質層(B)の空孔率は、20〜60%であることが好ましい。
また、本発明に係るセパレータは、JIS P 8117に準拠した方法で測定され、0.879g/mm2の圧力下で100mlの空気が膜を透過する秒数で示されるガーレー値が、50〜600secであることが望ましい。透気度が大きすぎると、イオン透過性が小さくなり、他方、小さすぎると、セパレータの強度が小さくなることがある。前記の構成を採用することで、このような透気度を有するセパレータとすることができる。
さらに、セパレータの強度としては、直径1mmのニードルを用いた突き刺し強度で200g以上であることが望ましい。かかる突き刺し強度が小さすぎると、電池の製造工程での不良、例えば、電極の凹凸に起因する短絡が生じやすくなる他、巻回電極体を外装体に挿入する際の傷などの不良の発生を抑制する効果が小さくなることがある。また、リチウムのデンドライト結晶が発生した場合に、セパレータの突き破れによる短絡が発生する場合がある。例えば、耐熱温度が150℃以上のフィラーを主体として含む多孔質層(B)を形成することで、前記の突き刺し強度を有するセパレータとすることができる。
前記の構成を有するセパレータを有する本発明の電池のシャットダウン特性は、例えば、電池の内部抵抗の温度変化により求めることができる。具体的には、電池を恒温槽中に設置し、温度を室温から毎分1℃の割合で上昇させ、電池の内部抵抗が上昇する温度を求めることで測定することが可能である。この場合、150℃における電池の内部抵抗は、室温の5倍以上であることが好ましく、10倍以上であることがより好ましく、前記構成のセパレータを使用することで、このような特性を確保することができる。
また、本発明の電池に係るセパレータは、150℃での熱収縮率を5%以下とすることが好ましい。このような特性のセパレータであれば、電池内部が150℃程度になっても、セパレータの収縮が殆ど生じないため、正負極の接触による短絡をより確実に防止することができ、高温での電池の安全性をより高めることができる。例えば、耐熱温度が150℃以上のフィラーを主体として含む多孔質層(B)を形成することで、前記のような熱収縮率を有するセパレータとすることができる。
なお、前記の「150℃の熱収縮率」とは、セパレータを恒温槽に入れ、温度を150℃まで上昇させて3時間放置した後に取り出して、恒温槽に入れる前のセパレータの寸法と比較することで求められる寸法の減少割合を百分率で表したものである。
本発明の電池に係るセパレータは、通常、多孔質層(B)を構成するための成分や溶媒を含む多孔質層(B)形成用組成物(ペースト、スラリー)を、多孔質層(A)を構成する微多孔膜などの表面に塗布し、乾燥する工程を経て製造される。このような方法でセパレータを製造する場合、通常、微多孔膜を引き取って応力をかけつつ、その表面に多孔質層(B)形成用組成物を塗布し、乾燥して多孔質層(B)を形成するため、セパレータ製造後に多孔質層(A)が縮む一方で多孔質層(B)は縮まないことから、セパレータを静置すると、いずれか一方の面方向に[主に多孔質層(B)の形成面を外側として]反りが生じる。
例えば、耐熱温度が150℃以上のフィラーを主体として含む多孔質層(B)を有するセパレータの場合、多孔質層(B)形成用組成物としては、前記フィラーの他に、必要に応じて有機バインダなどを含有し、これらを溶媒(分散媒を含む。以下同じ。)に分散させたものが使用される。なお、有機バインダについては溶媒に溶解させることもできる。この場合、多孔質層(B)形成用組成物に用いられる溶媒は、前記フィラーなどを均一に分散でき、また、有機バインダを均一に溶解または分散できるものであればよいが、例えば、トルエンなどの芳香族炭化水素、テトラヒドロフランなどのフラン類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類など、一般的な有機溶媒が好適に用いられる。なお、これらの溶媒に、界面張力を制御する目的で、アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコールなど)、または、モノメチルアセテートなどの各種プロピレンオキサイド系グリコールエーテルなどを適宜添加してもよい。また、有機バインダが水溶性である場合、エマルジョンとして使用する場合などでは、水を溶媒としてもよく、この際にもアルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなど)を適宜加えて界面張力を制御することもできる。
耐熱温度が150℃以上のフィラーを主体として含む多孔質層(B)を形成するための多孔質層(B)形成用組成物は、耐熱温度が150℃以上のフィラー、および有機バインダを含む固形分含量を、例えば10〜80質量%とすることが好ましい。
また、多孔質層(B)において、前記のように、板状の前記フィラーの配向性を高めるには、板状の前記フィラーを含有する多孔質層(B)形成用組成物を、多孔質層(A)を構成する微多孔膜に塗布し含浸させた後、前記組成物にシェアや磁場をかけるといった方法を用いればよい。例えば、前記のように、板状の前記フィラーを含有する多孔質層(B)形成用組成物を微多孔膜に塗布した後、一定のギャップを通すことで、前記組成物にシェアをかけることができる。
また、前記フィラーや多孔質層(B)を構成するその他の成分の持つ作用をより有効に発揮させるために、これらの成分を偏在させて、セパレータの面と平行または略平行に、前記成分が層状に集まった形態としてもよい。
前記のような製造方法で製造したセパレータは、いずれか一方の面方向[通常は多孔質層(B)方向]に反りが生じやすく、例えば、セパレータを、その製造方向(長尺のセパレータを製造する際におけるセパレータの巻き取り方向)に15cm、幅方向に3cm切り出して24時間静置した際に、反りによってセパレータの一端が他の部分に重なるような大きな反りが生じることがあり、このような場合に、特に電池の生産性の点で前記の問題が顕著となるが、本発明の電池では、こうした極めて反りが大きなセパレータを使用しても、良好に生産することができる。
なお、多孔質層(A)と多孔質層(B)とは、それぞれ1層ずつである必要はなく、複数の層がセパレータ中にあってもよい。ただし、層数を増やすことで、セパレータの厚みを増やして電池の内部抵抗の増加やエネルギー密度の低下を招く虞があるので、層数を多くしすぎるのは好ましくなく、セパレータ中の多孔質層(A)と多孔質層(B)との合計層数は5層以下であることが好ましい。
本発明の電池に係る正極には、従来から知られている非水二次電池に用いられている正極、例えば、Liイオンを吸蔵放出可能な活物質を含有する正極を使用することができる。例えば、活物質として、Li1+xMO2(−0.1<x<0.1、M:Co、Ni、Mnなど)で表されるリチウム含有遷移金属酸化物;LiMn2O4などのリチウムマンガン酸化物;LiMn2O4のMnの一部を他元素で置換したLiMnxM(1−x)O2;オリビン型LiMPO4(M:Co、Ni、Mn、Fe);LiMn0.5Ni0.5O2;Li(1+a)MnxNiyCo(1−x−y)O2(−0.1<a<0.1、0<x<0.5、0<y<0.5);などを適用することが可能であり、これらの正極活物質に公知の導電助剤(カーボンブラックなどの炭素材料など)やポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの結着剤などを適宜添加した正極合剤を、集電体を芯材として成形体(すなわち、正極合剤層)に仕上げたものなどを用いることができる。
正極の集電体としては、アルミニウムなどの金属の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、厚みが10〜30μmのアルミニウム箔が好適に用いられる。
正極側のリード部は、通常、正極作製時に、集電体の一部に正極合剤層を形成せずに集電体の露出部を残し、そこをリード部とすることによって設けられる。ただし、リード部は必ずしも当初から集電体と一体化されたものであることは要求されず、集電体にアルミニウム製の箔などを後から接続することによって設けてもよい。
本発明の電池に係る負極には、従来から知られている非水二次電池に用いられている負極、例えば、Liイオンを吸蔵放出可能な活物質を含有する負極を使用することができる。例えば、活物質として、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維などの、リチウムを吸蔵、放出可能な炭素系材料の1種または2種以上の混合物が用いられる。また、Si、Sn、Ge、Bi、Sb、Inなどの元素およびその合金、リチウム含有窒化物、または酸化物などのリチウム金属に近い低電圧で充放電できる化合物、もしくはリチウム金属やリチウム/アルミニウム合金も負極活物質として用いることができる。これらの負極活物質に導電助剤(カーボンブラックなどの炭素材料など)やPVDFなどの結着剤などを適宜添加した負極合剤を、集電体を芯材として成形体(負極合剤層)に仕上げたものや、前記の各種合金やリチウム金属の箔を単独で用いたり、前記合金やリチウム金属の層を集電体に形成したものなどの負極剤層を有するものが用いられる。
負極に集電体を用いる場合には、集電体としては、銅製やニッケル製の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、銅箔が用いられる。この負極集電体は、高エネルギー密度の電池を得るために負極全体の厚みを薄くする場合、厚みの上限は30μmであることが好ましく、また、下限は5μmであることが望ましい。
負極側のリード部も、正極側のリード部と同様に、通常、負極作製時に、集電体の一部に負極剤層(負極活物質を有する層、負極合剤層を含む)を形成せずに集電体の露出部を残し、そこをリード部とすることによって設けられる。ただし、この負極側のリード部は必ずしも当初から集電体と一体化されたものであることは要求されず、集電体に銅製の箔などを後から接続することによって設けてもよい。
電極は、前記の正極と前記の負極とを、前記セパレータを介して積層した後、更にこれを巻回した巻回電極体の形態で使用する。
巻回電極体においては、セパレータの多孔質層(B)が正極に対向していることが好ましい。セパレータをこのように配置することで、特に高温・高電圧状況下におけるセパレータの酸化劣化を抑制することができる。
また、巻回電極体においては、セパレータの多孔質層(A)が負極に対向していることが好ましい。この場合、詳細な理由は不明であるが、多孔質層(A)が少なくとも負極に面するようにセパレータを配置した場合には、正極側に配置した場合よりも、シャットダウンを生じた場合に、多孔質層(A)から溶融した熱可塑性樹脂のうち、電極合剤層に吸収される割合が少なくなり、溶融した熱可塑性樹脂がセパレータの孔を閉塞するのに、より有効に利用されるため、シャットダウンによる効果がより良好となる。
更に、例えば非水二次電池が、温度上昇により電池の内圧が上昇した際に、電池内部のガスを外部に排出して電池の内圧を下げる機構を有する場合には、この機構が作動した際に、内部の非水電解液が揮発して、電極が直接空気に曝される状態となる虞がある。電池が充電状態にある場合に、前記のような状態となり、負極と空気(酸素や水分)が接触すると、負極に吸蔵されたLiイオンや負極表面に析出したリチウムと空気とが反応して発熱し、時には発火することもある。また、この発熱により電池の温度が上昇して正極活物質の熱暴走反応を引き起こし、その結果、電池が発火に至ることもある。
しかしながら、融点が80〜170℃の熱可塑性樹脂を主体とする多孔質層(A)が負極に面するように構成した巻回電極体を用いた電池の場合には、高温時には多孔質層(A)の主体である熱可塑性樹脂が溶融して負極表面を覆うことから、前記の電池内部のガスを外部に排出する機構の作動に伴う負極と空気との反応を抑制することができる。そのため、前記の電池内部のガスを外部に排出する機構が作動することによる発熱の虞をなくし、電池をより安全に保つことができる。また、多孔質層(B)が正極に面することにより、多孔質層(A)と正極との反応を防ぐことができる。
なお、巻回電極体では、前記2枚のセパレータが両面に配置される電極を正極とする場合が通常であり、例えば、図1では、この態様を示している。一方、巻回電極体においては、前記2枚のセパレータが両面に配置される電極を負極とすることも可能である。
本発明の電池に係る非水電解液としては、リチウム塩を有機溶媒に溶解した溶液が用いられる。リチウム塩としては、溶媒中で解離してLi+イオンを形成し、電池として使用される電圧範囲で分解などの副反応を起こさないものであれば特に制限はない。例えば、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiAsF6 、LiSbF6 などの無機リチウム塩;LiCF3SO3、LiCF3CO2、Li2C2F4(SO3)2、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiCnF2n+1SO3(n≧2)、LiN(RfOSO2)2[ここでRfはフルオロアルキル基]などの有機リチウム塩;などを用いることができる。
非水電解液に用いる有機溶媒としては、前記のリチウム塩を溶解し、電池として使用される電圧範囲で分解などの副反応を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状カーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート;プロピオン酸メチルなどの鎖状エステル;γ−ブチロラクトンといった環状エステル;ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、1,3−ジオキソラン、ジグライム、トリグライム、テトラグライムなどの鎖状エーテル;ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどの環状エーテル;アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリルといったニトリル類;エチレングリコールサルファイトなどの亜硫酸エステル類;などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用しても構わない。なお、より良好な特性の電池とするためには、エチレンカーボネートと鎖状カーボネートの混合溶媒など、高い導電率を得ることができる組み合わせで用いることが望ましい。また、これらの電解液に安全性や充放電サイクル性、高温貯蔵性といった特性を向上させる目的で、ビニレンカーボネート類、1,3−プロパンサルトン、ジフェニルジスルフィド、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、フルオロベンゼン、t−ブチルベンゼン、無水酸、硫黄化エステル、ビニルエチレンカーボネート(VEC)などの添加剤を適宜加えることもできる。
このリチウム塩の有機電解液中の濃度としては、0.5〜1.5mol/lとすることが好ましく、0.9〜1.25mol/lとすることがより好ましい。
また、前記の有機溶媒の代わりに、エチル−メチルイミダゾリウムトリフルオロメチルスルホニウムイミド、へプチル−トリメチルアンモニウムトリフルオロメチルスルホニウムイミド、ピリジニウムトリフルオロメチルスルホニウムイミド、グアジニウムトリフルオロメチルスルホニウムイミドといった常温溶融塩を用いることもできる。
更に、前記の非水電解液を含有してゲル化するような高分子材料を添加して、非水電解液をゲル状にして電池に用いてもよい。有機電解液をゲル状とするための高分子材料としては、PVDF、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF−HFP)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体、主鎖または側鎖にエチレンオキシド鎖を有する架橋ポリマー、架橋したポリ(メタ)アクリル酸エステルなど、公知のゲル状電解質形成可能なホストポリマーが挙げられる。
本発明の電池の形態としては、スチール缶やアルミニウム缶などを外装缶として使用した筒形(角筒形や円筒形など)などが挙げられる。また、金属を蒸着したラミネートフィルムを外装体としたソフトパッケージ電池とすることもできる。
本発明の電池は、正極、負極および2枚のセパレータを積層して積層体を形成する積層体形成工程と、前記積層体を巻回して巻回電極体を形成する巻回電極体形成工程とを有する本発明法により製造することができる。
本発明法に係る前記積層体形成工程では、前記2枚のセパレータを同時に加熱しつつ切断して、両セパレータの切断端同士を溶着する工程(a)と、正極および負極のいずれか一方の電極の両面に前記2枚のセパレータを配置する工程(b)と、前記2枚のセパレータのいずれか一方に対向させて他方の電極を配置する工程(c)とを経て積層体を形成する。なお、積層体形成工程では、工程(a)と工程(b)と工程(c)との順序は制限されず、いずれの工程を先に行ってもよい。すなわち、積層体の形成にあたって各工程の順序は、(a)工程→(b)工程→(c)工程の順、(a)工程→(c)工程→(b)工程の順、(b)工程→(a)工程→(c)工程の順、(b)工程→(c)工程→(a)工程の順、(c)工程→(a)工程→(b)工程の順、(c)工程→(b)工程→(a)工程の順のいずれでも構わない。
積層体形成工程では、セパレータを加熱しつつ切断する際の温度を、多孔質層(A)の主体である熱可塑性樹脂の融点よりも高い温度、好ましくは、前記熱可塑性樹脂の融点より20℃以上高い温度とし、これにより、切断時に前記熱可塑性樹脂を十分に溶融させて、前記2枚のセパレータの切断端同士を良好に溶着する。ただし、セパレータを加熱しつつ切断する際の温度を高くしすぎると、セパレータの劣化を引き起こすことから、前記温度を、多孔質層(B)の耐熱温度よりも低い温度とする。
巻回電極体形成工程では、前記工程により形成された積層体を、前記2枚のセパレータの切断端同士を溶着した側を少なくとも内周側として巻回して巻回電極体を形成する。
なお、巻回電極体の生産速度を高めるためには、例えば長尺のセパレータを巻き取った2本のロールから、2枚のセパレータを連続で繰り出しながら、そのセパレータの面に電極(正極および負極)を連続的に配置して積層しつつ巻回する自動機によって巻回電極体を製造することが好ましいが、その場合、セパレータを溶融しつつ切断した箇所のうち、一方が先に製造される巻回電極体で使用するセパレータの終端部[巻回電極体における外端(外側の端部。以下、同じ。)]となり、他方が次に製造される巻回電極体で使用するセパレータの始端部(巻回電極体における内端)となることがある。よって、2枚のセパレータを、内側の端部とともに外側の端部も接合部で接合した巻回電極体とする場合には、例えば、このような方法を採用するとよい。
前記工程により得られた巻回電極体を、例えば、外装体に収容し、常法に従い正極および負極のリード部を電池の外部端子と接続し、非水電解液を注入した後、常法に従い外装体を封止して、非水二次電池とする。なお、使用する外装体の形状によっては、前記の巻回電極体を外装体に挿入する前に、横断面が扁平状になるように成形することもできる。
本発明の非水二次電池は、携帯電話やノート型パーソナルコンピュータなどの携帯機器の電源用途を始めとして、従来から知られている非水二次電池が使用されている各種用途に適用することができる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
実施例1
<セパレータの作製>
有機バインダであるSBRのエマルジョン(固形分比率40質量%):150gと、水:6000gとを容器に入れ、均一に分散するまで室温で攪拌した。この分散液に耐熱温度が150℃以上のフィラーであるベーマイト粉末(板状、平均粒径1μm、アスペクト比10):2000gを4回に分けて加え、ディスパーにより2800rpmで5時間攪拌して均一なスラリー[多孔質層(B)形成用スラリー、固形分比率25.3質量%]を調製した。PE製微多孔膜[多孔質層(A):厚み12μm、空孔率40%、突き刺し強度400gf、PEの融点135℃]を引き取りつつ、その表面に、前記のスラリーをマイクログラビアコーターによって塗布し、乾燥して、厚みが4.0μmの多孔質層(B)を形成することでセパレータを作製した。
得られたセパレータにおける多孔質層(B)は、単位面積あたりの質量が5.2g/m2であった。また、このセパレータの多孔質層(B)における板状ベーマイトの体積含有率は88体積%であり、多孔質層(B)の空孔率は55%であった。また、このセパレータの多孔質層(B)は、250℃において変形が認められなかったため、その耐熱温度は250℃以上といえる。また、このセパレータを静置し、多孔質層(B)の形成面側を外側として反りが生じることを確認した。
<正極の作製>
正極活物質であるLiCoO2:85質量部、導電助剤であるアセチレンブラック:10質量部、およびバインダであるPVDF:5質量部を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶剤として均一になるように混合して、正極合剤含有ペーストを調製した。このペーストを、集電体となる厚み15μmのアルミニウム箔の両面に、塗布長が表面320mm、裏面250mmになるように間欠塗布し、乾燥した後、カレンダー処理を行って、全厚が150μmになるように正極合剤層の厚みを調整し、幅43mmになるように切断して、長さ340mm、幅43mmの正極を作製した。更にこの正極のアルミニウム箔の露出部にタブ付けを行った。
<負極の作製>
また、負極活物質である黒鉛:95質量部と、バインダであるPVDF:5質量部とを、NMPを溶剤として均一になるように混合して負極合剤含有ペーストを調製した。この負極合剤含有ペーストを、銅箔からなる厚み10μmの集電体の両面に間欠塗布し、乾燥した後、カレンダー処理を行って全厚が142μmになるように負極合剤層の厚みを調整し、幅45mmになるように切断して負極を作製した。更にこの負極の銅箔の露出部にタブ付けを行った。
<積層体および巻回電極体の形成>
前記2枚のセパレータを、互いの多孔質層(B)同士が対向するように重ね、それらの片端を、200℃に加熱しつつ切断して溶着し、前記2枚のセパレータの間に前記の正極を挟み、一方のセパレータの多孔質層(A)に前記の負極を重ねた後、前記2枚のセパレータの切断端同士を溶着した側の内周側として巻回して、巻回電極体を形成した。
なお、前記の積層体について、巻回電極体の形成前にセパレータの切断端同士を溶着した部分を観察したところ、PEのダマは形成されていなかった。また、前記と同様にして形成した積層体について、セパレータの切断端同士を溶着した部分を、透過型電子顕微鏡で観察したところ、多孔質層(B)の空孔内に多孔質層(A)に係るPEが侵入した層[多孔質層(A)の構成成分と多孔質層(B)の構成成分とが混在した層]が形成されていた。
<電池の組み立て>
前記の巻回電極体を押しつぶして扁平状とし、これを厚み6mm、高さ50mm、幅34mmのアルミニウム製外装缶に入れ、非水電解液(エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを1:2の体積比で混合した溶媒に、LiPF6を1.2mol/lの濃度で溶解させた溶液)を注入した後に封止を行って、図2に示す構造で図3に示す外観の非水二次電池を得た。
ここで図2および図3に示す電池について説明すると、図2の(a)は平面図、(b)はその部分断面図であって、図2(b)に示すように、正極101と負極102は前記のようにセパレータ103を介して渦巻状に巻回した後、扁平状になるように加圧して扁平状の巻回電極体106として、角筒形の外装缶104に電解液と共に収容されている。ただし、図2では、煩雑化を避けるため、正極101や負極102の作製にあたって使用した集電体としての金属箔や電解液などは図示していない。また、セパレータの各層も区別して示していない。
外装缶104はアルミニウム合金製で電池の外装体を構成するものであり、この外装缶104は正極端子を兼ねている。そして、外装缶104の底部にはポリエチレンシートからなる絶縁体5が配置され、正極101、負極102およびセパレータ103からなる扁平状巻回電極体106からは、正極101および負極102のそれぞれ一端に接続された正極リード体107と負極リード体108が引き出されている。また、外装缶104の開口部を封口するアルミニウム合金製の封口用蓋板109にはポリプロピレン製の絶縁パッキング110を介してステンレス鋼製の端子111が取り付けられ、この端子111には絶縁体112を介してステンレス鋼製のリード板113が取り付けられている。
そして、この蓋板109は外装缶104の開口部に挿入され、両者の接合部を溶接することによって、外装缶104の開口部が封口され、電池内部が密閉されている。また、図2の電池では、蓋板109に非水電解液注入口114が設けられており、この非水電解液注入口114には、封止部材が挿入された状態で、例えばレーザー溶接などにより溶接封止されて、電池の密閉性が確保されている(従って、図2および図3の電池では、実際には、非水電解液注入口114は、非水電解液注入口と封止部材であるが、説明を容易にするために、非水電解液注入口114として示している)。更に、蓋板109には、電池の温度が上昇した際に内部のガスを外部に排出する機構として、開裂ベント115が設けられている。
この実施例1の電池では、正極リード体107を蓋板109に直接溶接することによって外装缶104と蓋板109とが正極端子として機能し、負極リード体108をリード板113に溶接し、そのリード板113を介して負極リード体108と端子111とを導通させることによって端子111が負極端子として機能するようになっているが、外装缶4の材質などによっては、その正負が逆になる場合もある。
図3は前記図2に示す電池の外観を模式的に示す斜視図であり、この図3は前記電池が角形電池であることを示すことを目的として図示されたものであって、この図2では電池を概略的に示しており、電池の構成部材のうち特定のものしか図示していない。また、図2においても、電極群の内周側の部分は断面にしていない。
実施例2
多孔質層(A)に使用するPE製微多孔膜を、厚み12μm、空孔率46%、突き刺し強度300gfのものに変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製し、このセパレータを用いた以外は、実施例1と同様にして非水二次電池を作製した。
比較例1
巻回電極体の作製時に、2枚のセパレータを室温で切断した以外は、実施例1と同様にして非水二次電池を作製した。
比較例2
実施例1でセパレータの作製に使用したPE製微多孔膜を、多孔質層(B)を形成せずにセパレータに用いた以外は、実施例1と同様にして非水二次電池を作製した。
比較例3
PE製微多孔膜(厚み16μm、空孔率46%、突き刺し強度320gf、PEの融点135℃)を、多孔質層(B)を形成せずにセパレータに用いた以外は、実施例1と同様にして非水二次電池を作製した。
実施例1、2および比較例1〜3の非水二次電池各100個の製造時において、巻回電極体を外装缶に挿入する際の容易さ(挿入性)を評価した。評価は、全ての巻回電極体について、外装缶に挿入する際に引っ掛かりがなく挿入が容易であった場合を「○」、外装缶に挿入する際に引っ掛かりの生じた巻回電極体があった場合を「△」とした。これらの結果を表1に示す。
また、実施例1、2および比較例1〜3の非水二次電池各100個について、その最大厚み(厚み方向の最大長さ)を測定し、標準偏差値を求めた。これらの結果を表1に併記する。
表1から明らかなように、実施例1、2の電池では、外装缶への挿入時に引っ掛かりが生じた巻回電極体がなく、挿入性が良好であった。このように挿入性が良好な巻回電極体を有する電池の場合、前記の通り、外装缶への挿入時に傷つきなどが発生し難く、電池の生産性が良好であるといえる。なお、実施例1、2の電池では、最大厚みの標準偏差値が小さく、ばらつき(すなわち、厚みが非常に大きい巻回電極体によって外装缶が変形した電池)が含まれていない。このような点からも、実施例1、2の電池は、生産性が良好であるといえる。