先ず、この発明で対象とする車両について説明すると、図10に示す例は、内燃機関1を駆動力源とした車両であり、その内燃機関1が出力する駆動力を自動変速機2を介して駆動輪に伝達するように構成されている。内燃機関1の出力側に自動変速機2が連結され、その出力軸3がデファレンシャル4を介して駆動輪5に連結されている。その内燃機関1は、ガソリンや軽油あるいはLPG(液化天然ガス)などの燃料を燃焼して動力を発生する熱機関である。この種の内燃機関としてガソリンエンジンやディーゼルエンジン、ガスエンジンなどを挙げることができる。そして、内燃機関1は、燃料の供給およびその停止を電気的に制御できるように構成されている。例えば電気的に制御される燃料噴射装置を備えている。なお、以下の説明では、内燃機関1をエンジン1と記す。また、図には内燃機関1をE/Gと記す。
このエンジン1の出力側に連結された自動変速機2は、外部から指令信号により、あるいは手動操作されて変速比を大小に変化させる伝動機構であり、従来の一般的な車両に搭載されている有段式の自動変速機である。また、この自動変速機2は、ロックアップクラッチ付のトルクコンバータなどの伝動機構6を備えていてもよい。この種の自動変速機2の最も一般的な例は、複数の遊星歯車機構を備え、それらのサンギヤやキャリヤあるいはリングギヤなどの回転要素をクラッチによって選択的に連結し、あるいはその連結を解き、またブレーキによって選択的に固定することによりトルクの伝達経路を変更して変速比(変速段)を切り替えるように構成された自動変速機である。その変速制御は、動力性能および燃費効率が可及的に良好になるように実行され、より具体的には、アクセル開度やエンジン出力あるいはスロットル開度などの駆動状態と、車速やタービン回転数などの走行状態とに基づいて変速比もしくは変速段を定めたマップ(変速線図)に基づいて行うように構成されている。
その変速線図には、アップシフトを生じさせるアップシフト線と、ダウンシフトを生じさせるダウンシフト線とが設定されており、駆動状態あるいは走行状態がアップシフト線を横切るように変化することによりアップシフトの判断が成立してアップシフト制御が実行され、また駆動状態もしくは走行状態がアップシフト線を横切るように変化することによりダウンシフトの判断が成立してダウンシフト制御が実行される。図11にはそのアップシフト線とダウンシフト線とを模式的に示してあり、n段から(n+1)段へのアップシフト線は所定の車速V以上で(n+1)段となるように設定され、かつその境界となる車速はアクセル開度θが所定値以上であれば、アクセル開度θが大きいほど高車速側とになるように設定されている。これに対して(n+1)段からn段へのダウンシフト線は、アップシフト線より低車速側に設定されている。このアップシフト線とダウンシフト線との間のこのような相違がヒステリシスであり、車速などの走行状態およびアクセル開度などの駆動状態の僅かな変化によって変速が生じないようになっている。したがって、駆動状態や走行状態がアップシフト線とダウンシフト線との間のいわゆるヒステリシス領域内で変化しても変速が生じない。これに対してアップシフト線は、燃費効率が良好になる車速あるいはアクセル開度に設定してある。したがって、車両の駆動状態あるいは走行状態がヒステリシス領域内にあるとき、特にヒステリシス領域の中央部分にするときには、アップシフト線に近い箇所にあるときよりも燃費が低下する。
上記のエンジン1や自動変速機2は電気的に制御できるように構成されており、その制御のためのエンジン用電子制御装置(E−ECU)7および自動変速機用電子制御装置(T−ECU)8が設けられている。これらの電子制御装置7,8はマイクロコンピュータを主体として構成されており、各種のセンサから入力されたデータおよび予め記憶しているデータならびに演算プログラムによって演算を行い、その演算の結果を指令信号としてエンジン1や自動変速機2に出力し、所定の制御を実行するように構成されている。それらのデータを例示すると、エンジン回転数、アクセル開度、エンジン油温、排気浄化触媒温度、補機類のオン・オフなどのデータがエンジン用電子制御装置7に入力されている。また、車速、出力軸3の回転数、自動変速機2の油温、アクセル開度、シフトレンジなどのデータが自動変速機用電子制御装置8に入力されている。なお、これらの電子制御装置7,8は相互にデータ通信できるように接続されている。
上述したようにこの発明で対象とする自動変速機2の変速制御は、基本的には、車両の駆動状態あるいは走行状態が、アップシフト線やダウンシフト線などの変速線を横切るように変化することにより変速を実行するように構成されているが、燃費効率を向上させるために、変速線を横切る変化が生じない場合であってもいわゆる強制的な変速を実行するように構成され、またその強制的な変速を実行することがいわゆるビジーシフトの要因にならないように構成されている。その制御例を次に説明する。
図1はその制御例を説明するためのフローチャートであって、先ず情報が収得される(ステップS1)。ここで、収得される情報(すなわち読み込まれる情報)は、例えば、車速、加速度、ブレーキペダルやアクセルペダルの踏み込み量などを含み、要は、運転者による加減速操作量や車両の駆動状態もしくは走行状態を示す状態量などである。また、自動変速機2で変速が実行された場合には、その変速を実行した時点からの経過時間がカウントされる(ステップS2)。さらに、アクセル開度がしきい値θ0 より低開度か否かが判断される(ステップS3)。このしきい値θ0 は、変速線で燃費が決まる領域のパーシャル開度以下の値であり、例えば40%程度の開度であり、その一例を図2に模式的に示してある。すなわち、アクセル開度がしきい値θ0 以上であれば、大きい駆動力が要求されていて燃費を優先した強制的な変速を実行する必要性が少ない上に、強制的な変速を実行した場合のショックが大きくなる可能性が高く、したがってアクセル開度がしきい値以上の場合には、変速線に基づいたいわゆる強制的な変速を実行しないこととしたのである。すなわち、ステップS3で否定的に判断された場合には、特に制御を行うことなくリターンする。
なお、図2には、アップシフト線とダウンシフト線との間のいわゆるヒステリシス領域において、車両の駆動状態あるいは走行状態が所定時間以上とどまることにより強制的な変速を実行する領域をハッチングを付して示してある。この領域は、アップシフト線およびダウンシフト線から予め定めた所定量、離れた領域として設定してある。アップシフト線もしくはダウンシフト線に近い駆動状態あるいは走行状態であれば、たとえヒステリシス領域であっても、その状態から強制的に変速したとしても燃費の向上効果が少ないからである。
アクセル開度がしきい値θ0 より小さいことによりステップS3で肯定的に判断された場合には、車両が走行している走行環境の一つである路面の勾配についてのしきい値が求められる(ステップS4)。これは、道路勾配の大小を判定するためであり、また道路勾配を判定するのは、道路勾配が変速を誘引する大きな要素となる場合があるからである。そのしきい値a,bは、運転者による急な加減速操作(例えばペダル操作)を必要としない緩い勾配の上限値であってその一例を図3に示してあり、これらの値は経験もしくは実験に基づいて適宜に設定してよく、例えば下り勾配(downhill)についてのしきい値aが、登り勾配(uphill)についてのしきい値より大きく採ってある。登り勾配の場合にはアクセルペダルを大きく踏み込んでダウンシフトが生じる可能性が高いからである。
こうして算出されたしきい値a,bと車両が現在走行している路面の現勾配とが比較される(ステップS5)。すなわち、現勾配がしきい値a,bの間に入っているか否かが判断される。ここで、現勾配は、ナビゲーションシステムによって得られる道路情報によって求めてもよく、あるいはアクセル開度もしくはスロットル開度と加速度(車速の変化率)とに基づいて演算して求めてもよい。こうして求められた現勾配が、下り勾配しきい値a以下の場合、すなわち下り勾配しきい値aより急勾配の降坂路の場合、および現勾配が上り勾配しきい値b以上の場合、すなわち登り勾配しきい値bより急勾配の登坂路の場合、エンジンブレーキ力やと登坂力を確保することが優先するので、変速線に基づいたいわゆる強制的な変速を実行しないこととしたのである。すなわち、ステップS5で否定的に判断された場合には、特に制御を行うことなくリターンする。
これとは反対に現勾配が勾配についてのしきい値a,bの範囲内にあることによりステップS5で肯定的に判断された場合には、アクセル開度の変動量が算出される(ステップS6)。この算出は、アクセル開度センサ(図示せず)による検出値の変化を求めることにより行うことができる。ついで、アクセル開度変動量についてのしきい値が算出される(ステップS7)。このしきい値は、運転者が急加速あるいは急減速(エンジンブレーキ)の意志によらずに行う緩やかなアクセルペダル操作の上限値として設定されるものであって、アクセルペダルの戻し側と踏み込み側とに両方に設定することができる。以下に述べるように、アクセル開度についての判断を行うのは、運転者が加速もしくは減速を要求してアクセル操作を行っているのか、あるいは加減速を特には求めないアクセル開度の変化(あるいはふらつき)か否かを判断するためであるから、アクセル開度についてのしきい値e,fはその判断を正確に行えるように、実験的にもしくは経験的に定めることができ、あるいはシミュレーションを行って適宜に定めることができる。そのしきい値e,fの一例を図4に示してある。ここに示す例は、アクセル開度の大小に拘わらず、しきい値e,fを一定にした例である。
アクセル開度の変動量についてのしきい値e,fを上記のように算出した後、上記のステップS6で算出されたアクセル開度の変動量がしきい値e,fの範囲内か否かが判断される(ステップS8)。アクセルペダルを戻し側しきい値e以上に戻した場合、およびアクセルペダルを踏み込み側しきい値f以上に踏み込んだ場合には、ステップS8で否定的に判断される。このようにステップS8で否定的に判断された場合には、運転者が大きいエンジンブレーキ力あるいは大きい駆動力を求めており、したがってダウンシフトもしくはアップシフトが生じる可能性が高いので、燃費を考慮した前述の強制的な変速を行わないように構成されている。すなわち、ステップS8で否定的に判断された場合には、特に制御を行うことなくリターンする。
これとは反対にステップS8で肯定的に判断された場合、すなわちアクセル開度の変動量がしきい値e,fの範囲内に入っている場合には、加速度についてのしきい値c,dが算出される(ステップS9)。これは、現在生じている加速度、もしくは現在要求される加速度の大小を判断するためであり、また加速度の大小を判断するのは、変速の要否あるいは変速が生じることの可能性を判断するためである。この加速度(加減速度)のしきい値c,dの例を図5に示してあり、ここに示す例は、加減速度Gの大小に拘わらず、しきい値c,dを一定にした例である。
したがって、ステップS9に続くステップS10では、現加速度がそれらのしきい値c,dの範囲内に入っているか否か、すなわち車両の状態が急加速(急な下りやアクセルペダルの急な踏みまし)や急減速(急な登りやブレーキング)しない緩やかな加減速状態か否かが判断される。なお、現加速度は現在の実際の加速度(負の加速度である減速度を含む)や現時点に要求されている加速度であって、車速の変化率として求めてもよく、あるいはアクセル開度や道路勾配もしくはロード・ロードなどから求めてもよい。現加速度が減速側のしきい値c以上に小さい場合、すなわち減速度がしきい値c以上である場合、および現加速度が加速側のしきい値d以上に大きい場合には、運転者が大きいエンジンブレーキ力あるいは大きい駆動力を求めており、したがってダウンシフトもしくはアップシフトが生じる可能性が高いので、燃費を考慮した前述の強制的な変速を行わないように構成されている。すなわち、ステップS10で否定的に判断された場合には、特に制御を行うことなくリターンする。
これとは反対に現加速度が加減速度のしきい値c,dの範囲内であることによりステップS10で肯定的に判断された場合には、運転者は加減速を特には求めていないと考えられ、この場合は直前の変速からの経過時間についてのしきい値gが算出される(ステップS11)。このしきい値gは、燃費を考慮した前述の強制的な変速自体がビジーシフトにならないようにするためのものであり、車両の駆動状態や走行状態に応じた値が設定される。その値は、実験により、あるいはシミュレーションならびに経験などに基づいて決めることができ、その一例を図6に示してある。ここに示す例では、車速が高車速ほど、またアクセル開度が大きいほど、しきい値gが大きい値に設定された例である。そして、そのしきい値gと変速後の経過時間とが比較される(ステップS12)。変速後の経過時間がしきい値g以下であることによりステップS12で否定的に判断された場合には、特に制御を行うことなくリターンする。燃費を考慮した前述の強制的な変速自体がビジーシフトになることを回避するため、その強制的な変速を禁止したのである。これに対して、変速後の経過時間がしきい値gを超えていることによりステップS12で肯定的に判断された場合には、燃費が最適になる(もしくは燃費が現状より向上する)変速段が選択される(ステップS13)。すなわち、燃費を考慮した前述の強制的な変速が実行される。
なお、車速を設定した車速に維持する定速走行制御(オートクルーズ制御)を行うことがスイッチ(SW)操作によって選択されているか否かを判断する制御を加えることができる。その例を図7に示してあり、オートクルーズスイッチがOFFか否かが、前述したステップS12に続けて判断される(ステップS12a)。その判断結果が肯定的な場合、すなわちオートクルーズ制御が実行されていない場合に、ステップS13に進んで、燃費が向上する変速段が選択され、またその変速段への変速に続く他の変速がビジーシフトにならないように抑制制御が実行される。
したがって、燃費を考慮した前述の強制的な変速すなわち最適燃費の変速段(ギヤ段)への変速は、前述したステップS3およびステップS5ならびにステップS8、ステップS10、ステップS12、ステップS12aの判断が行われた後に実行可能になる。そして、これらの判断ステップS3,S5,S8,S10,S12,S12aはいずれも、最適燃費変速段への変速自体が、駆動力や加減速度の要求などに伴う変速に新たに介在してビジーシフトになる否かを判断するものであり、ビジーシフトにならないことの判断が成立した場合に、最適燃費変速段への変速が実行され、あるいは可能になる。なお、このような判断を行うことは、駆動力の滑らかな変化が阻害される可能性のある変速を禁止することにもなる。
この発明の制御装置は、上述したビジーシフトの判断あるいはその判断に基づく禁止に加えて、最適燃費変速段への変速に続く変速との関係を判断して、最適燃費変速段への変速の許可および禁止を行うように構成されている。その制御例を図8にフローチャートで示してある。ここに示す例は、前述したステップS13のサブルーチンであり、先ず、次回の変速を許可する時間が読み込まれる(ステップS101)。ここで、「次回の変速」とは、現時点に最適燃費変速段への強制的な変速を実行したと仮定し、その強制的な変速の次に生じる変速であり、また「許可する時間」とは、その強制的な変速の後の次回の変速がビジーシフトとして体感されないようにインターバルをおく時間である。したがってこの時間は、前述した図6に示すマップもしくはこれと同様のマップに基づいて求めることができる。
ついで、近い将来の走行負荷の変動が推定される(ステップS102)。この負荷は、エンジン負荷であり、その変動要因は種々存在する。例えば、比較的近い前方の登坂路による負荷の増大、前方に交通渋滞があることによる制動による負荷の変動、前方のコーナーに侵入する際に車速を低下させるようアクセルペダルが戻されて負荷が減少する変動、コーナーを抜ける際の加速操作による負荷の増大、交差点や信号機あるいは停車指示などによる車速の低下のための負荷変動などがある。これらの負荷変動の一例として前方の登坂路による負荷の変動を説明すると、図9は前述したステップS102のサブルーチンを示しており、先ず、各種の情報(データ)が取得される(ステップS201)。その情報を例示すると、ナビゲーションシステムによる走行環境に関する情報(NAVI情報)、加速度センサ(Gセンサ)による加減速度情報、ハンドル角、方向指示器(ウィンカー)の指示信号、オートクルーズスイッチのON・OFF情報、レーダークルーズコントロールシステムにおける車間距離センサの情報などである。
前方の登坂路は、走行予定路に関する道路情報としてナビゲーションシステムによって取得することができ、そこで、先ず、h秒後の通過地点が算出される(ステップS202)。具体的には、現時点からh秒後の地点までの水平距離Aが求められる。これは、車速にh秒を掛けることにより得られる。さらに、h秒後の高度から現時点での高度を減じることにより高度差が算出される(ステップS203)。そして、その高度差Bを上記の水平距離Aによって割り算し、その値(商)に車重を掛けることにより走行負荷変動分が算出される(ステップS204)。
なお、交通渋滞やコーナーへの接近もしくは進入などのためにブレーキ操作して減速する場合には、制動負荷を算出し、またコーナーから抜ける場合の加速の際にはアクセル開度や車速から負荷の増大分を算出すればよい。
図8に示す制御例では、上述のようにして求められた走行負荷(より正確には走行負荷の変動分)が加減速度αに変化される(ステップS103)。その加減速度αに基づいて先読み加減速度の平均値iが算出される(ステップS104)。これは、
i=現在加速度−α/2
によって算出できる。その平均加減速度iを使用してh秒後の車速jが算出される(ステップS105)。ついで、加減速度の平均値iの値に基づいて、アップシフトをすべき状態か、あるいはダウンシフトをすべき状態かが判断される。すなわち、加減速度の平均値iが「0」以上か否かが判断される(ステップS106)。このステップS106で肯定的に判断されれば、車両は加速していることになり、また反対にステップS106で否定的に判断されれば、車両は減速していることになる。
ステップS106で肯定的に判断されて車両が加速している場合、h秒後の車速として推定された車速jが変速線図におけるアップシフト線で規定される車速(アップ線車速)以上か否かが判断される(ステップS107)。また、ステップS106で否定的に判断された場合、すなわち前記平均加速度iが負であって車両が減速することが推定されている場合、h秒後の車速として推定された車速jが変速線図におけるダウンシフト線で規定される車速(ダウン線車速)以下か否かが判断される(ステップS108)。h秒後の車速として推定された車速jがアップ線車速を超えることによりステップS107で否定的に判断された場合には、図8のルーチンを一旦終了する。また同様に、h秒後の車速として推定された車速jがダウン線車速を下回ることによりステップS108で否定的に判断された場合には、図8のルーチンを一旦終了する。車両の駆動状態あるいは走行状態が前述したいわゆるヒステリシス領域にとどまらずに、変速線を横切って変化することが推定されるからである。
なお、前述した図2に示すように、いわゆる強制的な変速を実行する実質的なヒステリシス領域は、アップシフト線およびダウンシフト線からある程度の離れた領域であるから、上記のステップS107におけるアップ線車速は、アップシフト線が設定されている車速よりも予め定めた車速だけ低車速であってもよい。これと同様に、ステップS108におけるダウン線車速は、ダウンシフト線が設定されている車速よりも予め定めた車速だけ高車速であってもよい。
h秒後の車速として推定された車速jがアップ線車速以下であることによりステップS107で肯定的に判断された場合、およびh秒後の車速として推定された車速jがダウンシフト線車速以上であることによりステップS108で肯定的に判断された場合には、予め用意されている通常の変速線に基づいて変速を行った場合の変速段(ギヤ段)kが算出される(ステップS109)。前述した図2あるいは図11に示すように、ダウンシフト線はアップシフト線に対して低車速側にずらして設定されているから、車両の駆動状態あるいは走行状態がこれらの変速線の間のいわゆるヒステリシス領域にある場合、変速線図上で設定可能な変速段は現在時点の変速段とそれより1段高車速側の変速段である。したがって、ステップS109で算出される変速段kは、現在時点の変速段とそれより1段高車速側の変速段とのいずれかである。
つぎに、ステップS109で算出された変速段kでの駆動力Iが計算される(ステップS110)。エンジン1が出力したトルクは、前述した図10に示す駆動系統を経て車輪5に伝達されて駆動力を発生するのであるから、エンジン1の出力トルク、エンジン1から車輪5に到る間の変速比、車輪5の径、伝達効率などに基づいて、従来知られている手法もしくは演算式によって駆動力Iを計算することができる。
この発明で対象としている自動変速機2は、複数の前進段を設定できるように構成されており、したがって上記のステップS110で計算された駆動力Iを得ることのできる変速段は、複数存在する。そこで、ステップS110に続くステップS111では、上記の駆動力Iを満たすエンジントルクと変速段とが算出される。その演算を行うにあたっては、エンジントルクと変速段との二つの変数を求めることになるが、変速段は自動変速機2で設定可能な変速段に限られ、かつそれぞれの変速比は知られているから、その変速比毎にエンジントルクを求めればよい。また、エンジン1の回転数やトルクには、機構上定められた制限や、車両の乗り心地を損なう振動や騒音が生じないように定めた制限があるから、ステップS111で算出されたエンジントルクおよび変速段のうち、実際に採用できるエンジントルクおよび変速段は、これらの制限を受けないものに限られる。
そして、ステップS111で算出された実際に採用可能な変速段のうち、燃費効率が最も良い変速段、すなわち燃料消費最小変速段が選択される(ステップS112)。変速段および車速に基づいてエンジン1の回転数を求めることができ、またエンジントルクが演算されているので、これらの値とマップとに基づいて燃費効率化が最も良好になるエンジン回転数およびそれに対応する変速段を求めればよい。
したがって、この発明に係る制御装置によって実行される図8に示す制御のうち、上記のステップS101からステップS108において、ビジーシフトになる可能性があるために変速を禁止する将来に向けた所定の時間幅hの中での走行負荷や車速の変化を推定し、その時間幅hの中で、通常の変速線図に基づく変速が生じないことの判断が成立した場合に、変速線図に基づかずに、燃料消費最小変速段への強制的な変速を実行する。そのため、図1ないし図9を参照して説明したように制御することにより、そのいわゆる強制的な変速自体がビジーシフトにならないのみならず、いわゆる強制的な変速を実行することにより、次の変速がビジーシフトになる事態を未然に回避することができる。また、いわゆる強制的な変速後であっても駆動力が特には変化しないので、ビジーシフトが回避されることと相まって、運転者に違和感を与えることを防止もしくは抑制することができる。
なお、前述した図7に示すステップS12aで否定的に判断された場合、すなわちオートクルーズ制御を実行するためのスイッチがONになっている場合、直ちに、図8に示すステップS109に進み、燃料消費最小変速段が選択される。その理由は、オートクルーズ制御を実行している状態は、基本的には運転者の積極的な加減速操作がなされない状態であるため、ビジーシフトとなる可能性が低く、燃料消費最小変速段へ移行した方が有利であるからである。
ここで上記の具体例とこの発明との関係を簡単に説明すると、図8に示すステップS101〜S108の制御を実行する機能的手段が、この発明における変速予測手段に相当し、またステップS112の制御を実行する機能的手段が、この発明における変速段選択手段に相当する。
なお、上述した具体例は、変速制御のために変速線にヒステリシスを設けた場合の強制的な変速の例であるが、ヒステリシスは車両における各種の制御に設定されており、例えば前述したロックアップクラッチの係合・解放の制御もしくは滑り制御(フレックスロックアップ制御)にも設定されており、このような制御におけるヒステリシス領域での強制的なロックアップもしくはその解放などの制御を行う場合にも、上述した制御を適用することができる。また、この発明は、動力源として内燃機関とモータとを設けたハイブリッド車両の自動変速機を対象とした制御装置にも適用することができる。さらに、この発明における自動変速機は、ベルト式無段変速機などの無段変速機の変速比をステップ的に変化させるように構成した変速機であってもよい。