以下、本発明を実施するための最良の実施の形態1,2について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明では、全ての図面において、同一又は相当部分には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る高分子電解質形燃料電池積層体(以下、「PEFC」という)が備える単電池(以下、「セル」という)の概略的な構成を模式的に示す断面図である。尚、図1においては、セルの一部の構成を省略している。
図1に示すように、本実施の形態に係るPEFCのセル100aは、膜−電極接合体(以下、「MEA」という)5と、このMEA5の内部に配設された第一膜補強部材10a及び第二膜補強部材10bと、ガスケット11,11と、アノードセパレータ6a及びカソードセパレータ6bと、を備えている。
MEA5は、水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質膜1と、アノード触媒層(第一触媒層)2a及びアノードガス拡散層(第一ガス拡散層)3aから構成されるアノード4aと、カソード触媒層(第二触媒層)2b及びカソードガス拡散層(第二ガス拡散層)3bから構成されるカソード4bと、を備えている。尚、本明細書では、高分子電解質膜1と第一膜補強部材10a及び第二膜補強部材10bとからなる接合体を、「膜−膜補強部材接合体20」という。又、本明細書では、膜−膜補強部材接合体20とアノード触媒層2a及びカソード触媒層2bとからなる接合体を、「膜−触媒層接合体30」という。
先ず、高分子電解質膜1及び膜−膜補強部材接合体20の構成について説明する。
図2は、図1に示すPEFCのセル100aにおける高分子電解質膜1の概略的な構成を模式的に示す斜視図である。又、図3は、図2に示す高分子電解質膜1に第一膜補強部材10a及び第二膜補強部材10bが配置された状態(膜−膜補強部材接合体20)の概略的な構成を模式的に示す斜視図である。
図2に示すように、高分子電解質膜1は、主面F1側から見て略四角形(ここでは、矩形)の形状を有している。そして、この高分子電解質膜1の縁部には、一対の第一凹部1a,1aと、一対の第二凹部1b,1bとが形成されている。具体的に説明すると、高分子電解質膜1の主面F1における対向する一組の辺E1,E1の全長に沿って、主面F1から高分子電解質膜1の厚み方向において所定の距離を隔てるようにして、各々短冊状の形状を有する一対の第一凹部1a,1aが形成されている。又、高分子電解質膜1の主面F2における対向する一組の辺E2,E2の全長に沿って、主面F2から高分子電解質膜1の厚み方向において所定の距離を隔てるようにして、各々短冊状の形状を有する一対の第二凹部1b,1bが形成されている。ここで、図2に示すように、本実施の形態では、一対の第一凹部1a,1aが一対の第二凹部1b,1bよりも主面F1に近く位置している。
そして、図3に示すように、高分子電解質膜1に形成された第一凹部1a,1aの各々には、短冊状の形状を有しかつ第一凹部1a,1aと同一の形状を有する膜状の第一膜補強部材10a,10aが、過不足なく一致するように埋設されている。換言すれば、第一膜補強部材10a,10aが、その主面を露出しないようにして、高分子電解質膜1に埋め込まれている。又、高分子電解質膜1に形成された第二凹部1b,1bの各々には、短冊状の形状を有しかつ第二凹部1b,1bと同一の形状を有する膜状の第二膜補強部材10b,10bが、過不足なく一致するように埋設されている。つまり、第一膜補強部材10a,10aの場合と同様にして、第二膜補強部材10b,10bが、その主面を露出しないようにして、高分子電解質膜1に埋め込まれている。
ここで、図3に示すように、一対の第一膜補強部材10a,10aと一対の第二膜補強部材10b,10bとは、全体として高分子電解質膜1の四辺に沿って延在し、かつ高分子電解質膜1の四隅の部分において重なる状態(以下、この状態を必要に応じて「井桁組状」という)で配置されている。より具体的には、一対の第一膜補強部材10a,10aと一対の第二膜補強部材10b,10bとは、高分子電解質膜1の四隅の部分において各々の主面同士が接触する状態で配置されている。又、これらの一対の第一膜補強部材10a,10aは、主面F1における一対の第一膜補強部材10a,10aと対向する第一部分と、主面F1における一対の第一膜補強部材10a,10aの間に位置する部分に対応する第二部分とが実質的に同一平面上に位置するようにして、高分子電解質膜1に埋められている。又、一対の第二膜補強部材10b,10bは、主面F2における一対の第二膜補強部材10b,10bと対向する第一部分と、主面F1における一対の第二膜補強部材10b,10bの間に位置する部分に対応する第二部分とが実質的に同一平面上に位置するようにして、高分子電解質膜1に埋められている。つまり、膜−膜補強部材接合体20において、主面F1及び主面F2は各々平坦状に構成されている。
尚、第一凹部1a,1a及び第二凹部1b,1bに配置される第一膜補強部材10a,10a及び第二膜補強部材10b,10bの厚み及び幅方向の寸法は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に限定はされないが、本発明の効果をより確実に得る観点から、第一膜補強部材10a,10aの厚み及び幅方向の寸法と第二膜補強部材10b,10bの厚み及び幅方向の寸法とは、互いに等しいことが好ましい。
次に、膜−膜補強部材接合体20の各構成要素について説明する。
高分子電解質膜1は、プロトン伝導性を有している。この高分子電解質膜1としては、例えば、陽イオン交換基としてのスルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、又はスルホンイミド基を有するものが好ましい。ここで、好適なプロトン伝導性を確保する観点から、高分子電解質膜1は、スルホン酸基を有するものが特に好ましい。
又、高分子電解質膜1を構成するスルホン酸基を有する樹脂としては、イオン交換容量が0.5〜1.5meq/gの乾燥樹脂であることが好ましい。その理由は、高分子電解質膜1を構成する乾燥樹脂のイオン交換容量が0.5meq/g以上であれば、発電時における高分子電解質膜1の抵抗値の上昇を十分に低減することができるからである。又、高分子電解質膜1を構成する乾燥樹脂のイオン交換容量が1.5meq/g以下である場合には、高分子電解質膜1の含水率が増大せず、膨潤し難くなり、後述する触媒層2の細孔が閉塞する恐れを回避することができるからである。又、以上と同様の観点から、より望ましくは、高分子電解質膜1を構成する乾燥樹脂のイオン交換容量は、0.8〜1.2meq/gであることが好ましい。
高分子電解質膜1としては、化学式(1)で表されるパーフルオロビニル化合物(mは0〜3の整数を示し、nは1〜12の整数を示し、pは0又は1を示し、Xはフッ素原子又はトリフルオロメチル基を示す)に基づく重合単位と、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位との各々を含む共重合体であることが好ましい。
CF2=CF−(OCF2CFX)m−Op−(CF2)n−SO3H ・・・(1)
上記フルオロビニル化合物の好ましい例としては、化学式(2)〜(4)で表される化合物が挙げられる。但し、下記の化学式中、qは1〜8の整数、rは1〜8の整数、tは1〜3の整数を示す。
CF2=CFO(CF2)q−SO3H ・・・(2)
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)r−SO3H ・・・(3)
CF2=CF(OCF2CF(CF3))tO(CF2)2−SO3H ・・・(4)
又、第1膜補強部材10a及び第2膜補強部材10bの構成材料は、製造時にロールに巻回できかつその巻回を解いたときに元の形状に戻ることのできる柔軟性と可とう性とを有する合成樹脂であることが好ましい。
更に、上記の合成樹脂としては、第一膜補強部材10a,10a及び第二膜補強部材10b,10bの各々を構成する材料としては、耐久性の観点から、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、フルオロエチレン−プロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテルアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリスルフィド、ポリイミド、及び、ポリイミドアミドからなる群より選択される少なくとも一以上の樹脂から構成される合成樹脂であることがより好ましい。
次に、膜−触媒層接合体30の構成について説明する。
図4(a)は、図1に示すPEFCのセル100aにおける膜−触媒層接合体30の概略的な構成を模式的に示す斜視図である。又、図4(b)は、図4(a)に示す矢印IVbの方向から見た場合の模式図である。
図4(a)に示すように、膜−触媒層接合体30は、膜−膜補強部材接合体20と触媒層2(アノード触媒層2a及びカソード触媒層2b)とを備えている。アノード触媒層2aは、高分子電解質膜1の主面F1側において、一方の第一膜補強部材10aの一部から他方の第一膜補強部材10aの一部に渡るように配置されている。又、図4(a)では隠れているが、カソード触媒層2bは、高分子電解質膜1の主面F2側において、一方の第二膜補強部材10bの一部から他方の第二膜補強部材10bの一部に渡るように配置されている。そして、図4(b)に示すように、アノード触媒層2a及びカソード触媒層2bは、本実施の形態では、高分子電解質膜1と相似の矩形に形成され、高分子電解質膜1の厚み方向(つまり、図4(a)の矢印IVbの方向)から見て、各々の周縁部が全周に亘って第一膜補強部材10a,10a及び第二膜補強部材10b,10bと重なりを有するように配置されている。
これにより、アノード触媒層2aにおける主面の四辺のうち、互いに対向する一組の辺E3,E3は、高分子電解質膜1の主面F1における第一膜補強部材10a,10aにより補強された部分に当接するため、高分子電解質膜1は破損されない。同様にして、カソード触媒層2bにおける主面の四辺のうち、互いに対向する一組の辺E4,E4は、高分子電解質膜1の主面F2における第二膜補強部材10b,10bにより補強された部分と当接するため、高分子電解質膜1は破損されない。
一方、アノード触媒層2aにおける主面の四辺のうち互いに対向する辺E4,E4は、高分子電解質膜1の主面F1と直接当接するため、高分子電解質膜1が当該部分で破損する場合もある。しかしながら、このような場合であっても、高分子電解質膜1の主面F2側には、当該部分に第二膜補強部材10b,10bが配置されているので、反応ガスがクロスリークすることはない。又、同様にして、カソード触媒層2bにおける主面の四辺のうち互いに対向する辺E3,E3は、高分子電解質膜1の主面F2と直接当接するため、高分子電解質膜1が当該部分で破損する場合もある。しかしながら、このような場合であっても、高分子電解質膜1の主面F1側には、当該部分に第一膜補強部材10a,10aが配置されているので、反応ガスがクロスリークすることはない。
触媒層2の構成としては、本発明の効果を得られるものであれば特に限定されず、公知の高分子電解質形燃料電池におけるガス拡散電極の触媒層と同様の構成を有していてもよい。例えば、電極触媒が担持された導電性炭素粒子(粉末)と、陽イオン(水素イオン)伝導性を有する高分子電解質とを含むような構成であってもよく、又、ポリテトラフルオロエチレン等の撥水材料を更に含むような構成であってもよい。又、アノード触媒層2a及びカソード触媒層2bの構成は、相互に同一であってもよく、異なっていてもよい。
又、触媒層2は、公知の高分子電解質形燃料電池におけるガス拡散電極の触媒層の製造方法を用いて形成してもよい。例えば、触媒層2の構成材料(例えば、上述した電極触媒が担持された導電性炭素粒子と高分子電解質)と、分散媒とを少なくとも含む液(触媒層形成用インク)を調整し、これを用いて作成してもよい。
尚、高分子電解質としては、上述した高分子電解質膜1を構成する材料と同種のものを使用してもよく、又、異なる種類のものを使用してもよい。又、電極触媒としては、金属粒子を用いることができる。当該金属粒子としては、特に限定されず種々の金属を使用することができるが、電極反応活性の観点から、白金、金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、クロム、鉄、チタン、マンガン、コバルト、ニッケル、モリブデン、タングステン、アルミニウム、ケイ素、亜鉛及びスズからなる金属群より選択される少なくとも一以上の金属であることが好ましい。中でも、白金、又は白金と上記金属群より選択される少なくとも一以上の金属との合金が好ましい。例えば、白金とルテニウムとの合金が、アノード触媒層2aにおいて触媒の活性が安定することから、特に好ましい。
又、電極触媒に用いる上記金属粒子は、平均粒径が1〜5nmであることが好ましい。その理由は、平均粒径が1nm以上である電極触媒は、工業的に調製が容易であるため好ましい。又、平均粒径が5nm以下であると、電極触媒質量当たりの活性をより十分に確保し易くなるため、高分子電解質形燃料電池のコストダウンに貢献するため好ましい。
又、上記導電性炭素粒子は、その比表面積が50〜1500m2/gであることが好ましい。その理由は、導電性炭素粒子の比表面積が50m2/g以上であると、電極触媒の担持率を上げることが容易となり、その結果、得られた触媒層2の出力特性をより十分に確保することができるためである。又、導電性炭素粒子の比表面積が1500m2/g以下であると、十分な大きさの細孔をより容易に確保できるようになり、かつ高分子電解質による被覆がより容易となり、その結果、触媒層2の出力特性をより十分に確保することができるためである。上記と同様の観点から、より望ましくは、導電性炭素粒子の比表面積は200〜900m2/gであることが好ましい。
又、上述した導電性炭素粒子は、その平均粒径が0.1〜1.0μmであることが好ましい。その理由は、導電性炭素粒子の平均粒径が0.1μm以上であると、触媒層2におけるガスの拡散性をより十分に確保し易くなり、その結果、フラッディングをより確実に防止することができるためである。又、導電性炭素粒子の平均粒径が1.0μm以下であると、高分子電解質による電極触媒の被覆状態をより容易に良好な状態とし易くなり、高分子電解質による電極触媒の被覆面積をより十分に確保し易くなるので、十分な電極性能をより確保し易くなるためである。
次に、MEA(膜−電極接合体)5の構成について説明する。
図5(a)は、図1に示すPEFCのセル100aにおけるMEA5の概略的な構成を模式的に示す斜視図である。又、図5(b)は、図5(a)に示す矢印Vbの方向から見た場合の模式図である。
図5(a)及び(b)に示すように、MEA5では、膜−触媒層接合体30のアノード触媒層2aの主面を覆うようにして、アノードガス拡散層3aが設けられている。又、同様にして、このMEA5では、カソード触媒層2bの主面を覆うようにして、カソードガス拡散層3bが設けられている。ここで、アノード触媒層2aとアノードガス拡散層3aとから、アノード4aが構成されている。又、カソード触媒層2bとカソードガス拡散層3bとから、カソード4bが構成されている。アノード4a及びカソード4bを併せて電極4という。尚、本実施の形態では、アノードガス拡散層3a及びカソードガス拡散層3bの主面は、それぞれ、アノード触媒層2a及びカソード触媒層2bの主面と相似の矩形に形成され、かつ、それらよりも幾分大きくなるように構成されているが、このような構成に限定されることはなく、それぞれの主面が同一の形状を有していてもよい。
アノードガス拡散層3a及びカソードガス拡散層3b(以下、ガス拡散層3という)の構成は、本発明の効果を得られるものであれば特に限定されず、公知の高分子電解質形燃料電池におけるガス拡散電極のガス拡散層と同様の構成を有していてもよい。又、ガス拡散層3の構成は、互いに同一であってもよく、或いは互いに異なっていてもよい。
ガス拡散層3としては、例えば、ガスの透過性を具備させるために、高表面積のカーボン微粉末、造孔材、カーボンペーパー又はカーボンクロス等を用いて作製された、多孔質構造を有する導電性基材を用いてもよい。又、十分な排水性を得る観点から、フッ素樹脂を代表とする撥水性高分子化合物等をガス拡散層3の中に分散させてもよい。更に、十分な電子伝導性を得る観点から、カーボン繊維、金属繊維又はカーボン微粉末等の電子伝導性材料でガス拡散層3を構成してもよい。
又、アノードガス拡散層3aとアノード触媒層2aとの間、及び、カソードガス拡散層3bとカソード触媒層2bとの間には、撥水性高分子化合物とカーボン粉末とで構成される撥水カーボン層を設けてもよい。これにより、MEA5における水の管理(即ち、MEA5の良好な特性維持に必要となる水の保持、及び、不必要な水の迅速な排水)を、より容易にかつより確実に行うことができる。
次に、セル100aの構成に関して、説明を省略した部分の構成について説明する。
図1に示すように、MEA5のアノード4a及びカソード4bの周囲には、高分子電解質膜1を挟んで、一対のフッ素ゴム製のガスケット11,11が配設されている。これにより、燃料ガス、空気や酸化剤ガスがセル100aの外部にリークされることが防止されると共に、セル100aの内部でこれらのガスが互いに混合されることが防止される。尚、図1では図示しないが、高分子電解質膜1、第一及び第二膜補強部材10a,10b、及びガスケット11の周縁部には、厚み方向の貫通孔からなる燃料ガス供給マニホールド孔等のマニホールド孔が適宜設けられている。
又、MEA5とガスケット11とを挟むようにして、導電性のアノードセパレータ6aとカソードセパレータ6bとが配設されている。これらのアノードセパレータ6a及びカソードセパレータ6bは、黒鉛板にフェノール樹脂が含浸され硬化された樹脂含浸黒鉛板が用いられている。尚、アノードセパレータ6a及びカソードセパレータ6bとしては、SUS等の金属材料からなるものを用いてもよい。アノードセパレータ6aとカソードセパレータ6bとにより、MEA5が機械的に固定されると共に、隣接するMEA5同士が互いに電気的に直列に接続される。
アノードセパレータ6aの内面(MEA5に当接する面)には、燃料ガスを流すための溝状の燃料ガス流路7が例えばサーペンタイン状に形成されている。一方、アノードセパレータ6aの外面(MEA5に当接しない面)には、熱媒体を流すための溝状の熱媒体流路9が例えばサーペンタイン状に形成されている。又、図1では図示しないが、アノードセパレータ6aの周縁部には、厚み方向の貫通孔からなる燃料ガス供給マニホールド孔等のマニホールド孔が設けられている。
一方、カソードセパレータ6bの内面(MEA5に当接する面)には、酸化剤ガスを流すための溝状の酸化剤ガス流路8が例えばサーペンタイン状に形成されている。一方、カソードセパレータ6bの外面(MEA5に当接しない面)には、アノードセパレータ6aの場合と同様、熱媒体を流すための溝状の熱媒体流路9が例えばサーペンタイン状に形成されている。又、図1では図示しないが、カソードセパレータ6bの周縁部には、アノードセパレータ6aの場合と同様、厚み方向の貫通孔からなる燃料ガス供給マニホールド孔等のマニホールド孔が設けられている。
尚、本実施の形態では、燃料ガス流路7、酸化剤ガス流路8、及び、熱媒体流路9の各々はサーペンタイン状に形成されているが、これに限定されることはない。例えば、アノード及びカソードセパレータ6a,6bの主面の概ね全領域を反応ガス又は熱媒体が通流するような構成であれば、如何なる形状であってもよい。
このように形成したセル100aをその厚み方向に積層することにより、セル100aの積層体が形成される。この際、アノードセパレータ6a、カソードセパレータ6b及びガスケット11に設けられた燃料ガス供給マニホールド孔等のマニホールド孔は、セル100aを積層することにより厚み方向にそれぞれ連結され、これにより、燃料ガス供給マニホールド等のマニホールドがそれぞれ形成される。そして、セル100aの積層体の両端に集電板及び絶縁板がそれぞれ配設されている端板を配置し、所定の締結具により締結することで、スタック(PEFC)が形成される。
次に、本実施の形態に係るPEFCにおけるMEAの製造方法について説明する。尚、以下に説明するようにして製造されたMEAを用いて、セル及びスタック(PEFC)を製造する方法は、特に限定されず、公知のPEFCの製造技術を採用することができるため、ここでは詳細な説明を省略する。
先ず、膜−触媒層接合体30の製造方法について説明する。
図6は、膜−触媒層接合体を製造するための一連の工程(処理エリア)及び製造ラインの一部を概略的に示す模式図である。
図6に示すように、図4(a)に示した膜−触媒層接合体30は、高分子電解質膜テープと膜補強部材テープとを接合して膜−膜補強部材接合体テープを形成する接合工程P1と、膜−膜補強部材接合体テープを乾燥する熱処理工程P2と、膜−膜補強部材接合体テープを熱圧着する熱圧着工程P3と、膜−膜補強部材接合体テープに触媒層を塗工する塗工工程P4と、膜−触媒層接合体テープを所定の長さに切断する裁断工程P5との各々の工程を経て製造される。これにより、図1に示すMEA5を、低コストで、かつ、容易に大量生産することが可能となる。
先ず、接合工程P1について具体的に説明する。
図7及び図8は、膜−触媒層接合体の製造工程における接合工程P1を説明するための模式図である。
先ず、公知の薄膜製造技術を用い、長尺状の高分子電解質膜テープ41a(切断後、図1に示す高分子電解質膜1となる部材)を巻回した高分子電解質膜ロール40と、膜補強部材テープ61(切断後、図1に示す膜補強部材10a,10bとなる部材)を巻回した膜補強部材ロール60とを製造する。
次に、図7に示すように、高分子電解質膜ロール40から高分子電解質膜テープ41aを引き出すと共に、一対の膜補強部材ロール60,60の各々から一対の膜補強部材テープ61,61を各々引き出し、これらを一対のローラ80,81を有する熱圧着機(図7では図示せず)の内部に誘導する。この際、一対の膜補強部材テープ61,61が高分子電解質膜テープ41aの両側端部に配置されるよう、高分子電解質膜テープ41a及び一対の膜補強部材テープ61,61の相対的な位置決めを行う。そして、熱圧着機内で高分子電解質膜テープ41a及び一対の膜補強部材テープ61,61は、予熱されたローラ80とローラ81との間を進行方向D1側に進む過程において接合される。これにより、長尺状の膜−膜補強部材接合体テープ42が形成される。
尚、高分子電解質膜テープ41aに接触させる前に、一対の膜補強部材テープ61,61の表面(接触面となる部分)に、接着剤を塗工する前処理を行ってもよい。この場合、上記のようにローラ80,81を予熱して加圧処理を行ってもよく、或いは、予熱を行わずに加圧処理のみ行ってもよい。又、この場合、接着剤としては、セル100aの放電特性を低下させないものを用いることが好ましい。例えば、接着剤としては、高分子電解質膜テープ41aと同種又は異種(但し、高分子電解質膜テープ41aと十分に一体化可能な親和性を有するもの)の高分子電解質材料(例えば、先に高分子電解質膜1の構成材料として例示したもの)を分散媒又は溶媒に含有させた液を用いてもよい。
次に、図8に示すように、膜−膜補強部材接合体テープ42の高分子電解質膜テープ41a及び膜補強部材テープ61,61によって形成される溝状の凹部43に、ブレード45を用いて高分子電解質のキャスト膜41bを形成する。具体的には、高分子電解質を水置換やアルコール分散等により液状にして、適宜な粘度に調整した高分子電解質溶液44を凹部43に適量載置した後、ブレード45の下端を膜−膜補強部材接合体テープ42における膜補強部材テープ61,61の上面(主面)に当接させる。そして、膜−膜補強部材接合体テープ42を進行方向D1側に動かすことで、ブレード45の下端と凹部43との間に高分子電解質のキャスト膜41bが形成される。
次に、熱処理工程P2について具体的に説明する。
熱処理工程P2では、接合工程P1で形成した高分子電解質膜のキャスト膜41bに含まれる液体を適切な手段で熱処理(例えば、高分子電解質を分散した分散剤が気化する温度に調整された乾燥炉中に膜−膜補強部材接合体テープ42を通過させることにより乾燥する)を行って除去することにより、高分子電解質膜テープ41cが、高分子電解質膜テープ41aの主面の上(凹部43)に形成される。ここで、高分子電解質膜テープ41cの表面は、膜−膜補強部材接合体テープ42における一対の膜補強部材テープ61,61の表面と面一となるように形成される。
次に、熱圧着工程P3について具体的に説明する。
熱圧着工程P3では、熱処理工程P2で形成した高分子電解質膜テープ41cと高分子電解質膜テープ41aとを完全に一体化するために熱圧着する。具体的には、膜−膜補強部材接合体テープ42と高分子電解質膜テープ41cとを一対のローラ82,83を有する熱圧着機(図6では図示せず)を通過させる。ここで、ローラ82及びローラ83は、高分子電解質膜テープ41a及び高分子電解質膜テープ41cを構成する高分子電解質のガラス転移点(Tg)以上の温度となるように予熱されている。従って、熱圧着機内のローラ82とローラ83との間を進行方向D1側に進む過程において、膜−膜補強部材接合体テープ42と高分子電解質膜テープ41cとが、高分子電解質膜テープ41aと高分子電解質膜テープ41cとが接合されて完全に一体化され、これにより、長尺状の膜−膜補強部材接合体テープ46が形成される。
ところで、膜−膜補強部材接合体テープ46は、以下のように形成してもよい。
図9は、膜−膜補強部材接合体テープを形成する他の製造方法を示した模式図である。
先ず、図9に示すように、公知の薄膜製造技術を用いて、長尺状の高分子電解質膜テープ41cを巻回した高分子電解質膜ロール40cを製造する。この際、高分子電解質膜テープ41cの幅寸法を、膜−膜補強部材接合体テープ42の凹部43の幅寸法と同じになるように形成する。
次に、図9に示すように、高分子電解質膜ロール40cから高分子電解質膜テープ41cを引き出し、膜−膜補強部材接合体テープ42の凹部43に、その高分子電解質膜テープ41cが嵌合するようにして、図9では図示されない熱圧着機内に膜−膜補強部材接合体テープ42と高分子電解質膜テープ41cとを誘導する。そして、熱圧着機内で膜−膜補強部材接合体テープ42の高分子電解質膜テープ41aと高分子電解質膜テープ41cとが接合され完全に一体化されて、長尺状の膜−膜補強部材接合体テープ46が形成される。
又、膜−膜補強部材接合体テープ46は、以下のようにして形成してもよい。
図10は、膜−膜補強部材接合体テープ46を形成する他の製造方法(ロールナイフコーター(コンマコーター)を用いた製造方法)を示した模式図である。又、図11は、図10に示すロールナイフコーターの要部を拡大した模式図である。
先ず、公知の薄膜製造技術を用いて、長尺の基材シート84の両側端部に一対の膜補強部材テープ61,61が貼付された基材−膜補強部材接合体テープ86を作製し、該基材−膜補強部材接合体テープ86を巻回した基材−膜補強部材ロール85を用意する。そして、基材−膜補強部材接合体テープ86の一方の主面(以下、表面)に、図10及び図11に示す公知のロールナイフコーター95を用いて、断面が凸状の高分子電解質膜のキャスト膜41bを作製する。
ここで、ロールナイフコーター95について、簡単に説明する。
図10に示すように、キャスト膜41bの製造ラインには、所定の回転方向に回転する回転ロール92が配置されている。この回転ロール92に、基材−膜補強部材ロール85から引き出された基材−膜補強部材接合体テープ86が巻き付けられている。回転ロール92の下方には、回転ロール92に巻かれた基材−膜補強部材接合体テープ86との間に所定の間隙を有し、かつ、回転ロール92に平行にアプリケータロール93が配置されている。アプリケータロール93は、回転ロール92と反対方向に回転される。そして、アプリケータロール93を囲むように液ダム部94が形成されていて、アプリケータロール93の下部がこの液ダム部94に溜められた塗工液(ここでは、高分子電解質溶液44)に浸漬されている。又、基材−膜補強部材接合体テープ86の進行方向におけるアプリケータロール93の後方斜め上方には、ロールナイフ96が配置されている。
図10及び図11に示すように、ロールナイフ96は、円柱体の周面にその軸方向の全長に渡って一対のV字状の切欠部97が形成された形状に形成されている。一対の切欠部97は、円柱体の中心軸に対称に形成されている。各切欠部97の、基材−膜補強部材接合体テープ86の進行方向前側の側面97aと円柱体の周面とにより形成される稜部が振れ刃部96aを構成している。このロールナイフ96が、一方の振れ刃部96aが回転ロール92に巻かれた基材−膜補強部材接合体テープ86との間に所定の間隙を有するようにして、回転ロール92に平行に固定されている。
このように構成されたロールナイフコーター95では、回転ロール92とアプリケータロール93の間を基材−膜補強部材接合体テープ86が通過し、これらのロール92,93の間を通過するときに基材−膜補強部材接合体テープ86の表面に高分子電解質溶液44が塗布される。そして、高分子電解質溶液44が塗布された基材−膜補強部材接合体テープ86は、回転ロール92の周面に沿って移動する。このとき、基材−膜補強部材接合体テープ86には、基材シート84と一対の膜補強部材テープ61,61の間に凹部が形成されているため、高分子電解質膜のキャスト膜41bは、その厚み方向の断面が、凸状に形成される。これにより、基材−高分子電解質膜テープ87が形成される。尚、回転ロール92の周面(正確には、基材−膜補強部材接合体テープ86の表面)とロールナイフ96の振れ刃部96aとの間の間隔によって、基材−膜補強部材接合体テープ86の表面に形成される高分子電解質膜テープ41aの膜厚が決定される。
次に、上述のようにして形成された基材−高分子電解質膜テープ87のキャスト膜41bに含まれる液体を、熱処理工程P2と同様に、適宜な手段で熱処理を行って除去する。次いで、基材−高分子電解質膜テープ87から基材シート84を適宜な手段により剥がして、膜−膜補強部材接合体テープ46が形成される。
尚、ここでは、ロールナイフコーターを用いて、基材−高分子電解質膜テープ87を形成したが、これに限定されず、スロットダイコーター、リップコーター、及びグラビアコーター等の公知のコーティング装置を用いて、基材−高分子電解質膜テープ87を形成してもよい。
次に、塗工工程P4について具体的に説明する。
図12は、膜−触媒層接合体の製造工程における塗工工程P4を説明するための模式図である。
先ず、塗工工程P4が行われるエリアの構成について説明する。
図12に示すように、塗工工程P4が設けられるエリアには、開口部48を有するマスク47と、膜−膜補強部材接合体テープ46における一対の膜補強部材テープ61,61が配置されている側の主面(以下、「裏面」という)から膜−膜補強部材接合体テープ46を支える図12では図示されない所定の支持手段(例えば、支持台)と、触媒層形成装置49(図6参照)とが配置されている。ここで、開口部48の形状は、図4(a)及び図4(b)に示した触媒層2の主面の形状に対応するように設計されている。又、触媒層形成装置49には、触媒層形成用インクを塗工又はスプレーする等して膜−膜補強部材接合体テープ46の表面に触媒層2を形成するための機構が備えられている。尚、この機構としては、公知である高分子電解質形燃料電池のガス拡散層の触媒層を形成するために採用されている機構、例えば、スプレー法、スピンコート法、ドクターブレード法、ダイコート法、スクリーン印刷法等に基づいて設計された機構を採用することができる。
次に、塗工工程P4における処理内容について説明する。
先ず、熱圧着工程P3で形成された膜−膜補強部材接合体テープ46が塗工工程P4エリアの手前にまで進むと、例えば所定の反転機構により180°反転された後、一旦停止される。そして、膜−膜補強部材接合体テープ46が、マスク47と図12では図示されない支持台との間に挟持されるようにして固定される。
次に、触媒層形成装置49が作動され、マスク47における開口部48の上方から触媒層形成用インクが塗工されることにより、膜−膜補強部材接合体テープ46における高分子電解質膜テープ41aの主面に、一対の膜補強部材テープ61,61の主面における少なくとも一部と重なりを有するようにして、触媒層2が形成される。触媒層2が形成されると、膜−膜補強部材接合体テープ46からマスク47及び支持台が離間する。このようにして形成された膜−触媒層接合体テープ50は、進行方向D1に沿って移動する。これにより、膜−触媒層接合体テープ50には、触媒層2が、その長手方向に所定のピッチで形成される。
尚、触媒層2は、適度な柔軟性を有するように、その成分組成、及び乾燥の度合い等が適切に調節されている。又、触媒層2を形成する際には、膜−触媒層接合体テープ50の裏表が反対になった場合でも高分子電解質膜テープ41aから触媒層2が剥がれ落ちないようにするための処置(例えば、予め支持台を加熱して、触媒層形成用のインクの分散剤を乾燥処理する)が施される。尚、触媒層2を形成する度に、例えば加熱処理、送風処理及び脱気処理のうちの少なくとも一つの処理に代表される所定の乾燥処理を適宜行ってもよい。
次に、裁断工程P5について具体的に説明する。
先ず、一方の膜−触媒層接合体テープ50と、他方の膜−触媒層接合体テープ50とを準備する。その後、それぞれの長手方向が実質的に垂直となるように、かつ、互いに裏面が対向するように(一方の膜補強部材テープ61,61と他方の膜補強部材テープ61,61とが向かい合うように)配置する。そして、一組の膜−触媒層接合体テープ50,50の裏面が互いに重なるようにして、熱圧着機構と裁断機構とを有する裁断機51の内部に誘導する。すると、裁断機51の内部に誘導された一方の膜−触媒層接合体テープ50の裏面と、他方の膜−触媒層接合体テープ50の裏面とが、熱圧着機構により熱圧着される。次いで、裁断機51の裁断機構により、予め設定された所定の大きさに裁断されて、図4(a)及び図4(b)に示す膜−触媒層接合体30が得られる。尚、膜−触媒層接合体テープ50を予め設定された大きさに裁断し、裁断した一組の膜−触媒層接合体テープ50を接合することにより、膜−触媒層接合体30を形成してもよい。
尚、図6に示す本実施の形態に係る膜−触媒層接合体の製造ラインでは、高分子電解質膜テープ41aが、膜−触媒層接合体テープ50が形成されるまで、連続するテープ状の形態で移動される。このように、高分子電解質膜テープ41aを進行方向D1に適切に移動させるために、本実施の形態では、当該テープを牽引するキャプスタンやローラ対等の牽引機構、当該テープに適度な張力を付与するテンショナー等の張力付与機構、及び、当該テープを所定エリア(例えば、塗工工程P4)に一時停止させ、かつ、その後早送りするためのダンサーローラ等のシート一時蓄積機構及びシート送り機構等が、この膜−触媒層接合体の製造ラインの適所に設けられている。しかしながら、これらの各々の機構は周知であるので、ここでは、それらの記載を省略する。
又、裁断工程(エリア)P5においては、一方の膜−触媒層接合体の製造ラインと他方の膜−触媒層接合体の製造ラインとが交差している。そして、裁断工程P5において、この他方の膜−触媒層接合体の製造ラインで製造された他方の膜−触媒層接合体テープ50が反転されて図6に示す一方の膜−触媒層接合体の製造ラインで製造された一方の膜−触媒層接合体シート50と直交するように配置されて、上述の如く加工される。この他方の膜−触媒層接合体の製造ラインは、図6〜図12に示す膜−触媒層接合体の製造ラインと全く同じである。そのため、ここではその説明を省略する。
次に、MEA5の製造方法について具体的に説明する。
上述のようにして得られた膜−触媒層接合体30における触媒層2の主面に、予め適切な大きさに裁断したガス拡散層3(例えば、カーボンクロス等)を接合することにより、MEA5が得られる。尚、撥水カーボン層形成インクを予め触媒層2又はガス拡散層3の主面に塗工等して、撥水カーボン層を形成することにより、MEA5を形成してもよい。
又、裁断工程P5の前に、膜−触媒層接合体テープ50の触媒層2の主面にガス拡散層3を接合して、MEA5を形成してもよい。この場合、予め裁断されたガス拡散層3を触媒層2の主面に接合して膜−電極接合体テープを形成してもよく、又、テープ状のガス拡散層を触媒層2の主面に接合し、裁断して膜−電極接合体テープを形成してもよい。そして、得られた一組の膜−電極接合体テープを上述した裁断工程P5の場合と同様の方法で接合及び裁断することで、MEA5が形成される。尚、撥水カーボン層形成インクを予め触媒層2又はガス拡散層3の主面に塗工等することにより、撥水カーボン層を形成してから、MEA5を形成してもよい。
ここで、比較例として、特許文献2に開示された膜−膜補強部材接合体を公知の薄膜積層体の製造技術を用いて大量生産しようと意図する場合に一般的に想定される製造方法について説明する。
図13は、公知の薄膜積層体の製造技術を用いて膜−膜補強部材接合体を大量生産しようと意図する場合に一般的に想定される製造方法の一例を示す説明図である。
先ず、図13に示すように、予め製造されたテープ状の固体高分子電解質膜260を巻回して固体高分子電解質膜ロール262とし、その一方で、予め製造されたテープ状の保護膜250(図32に示した保護膜220を連続的に形成したテープ状のもの)を巻回して保護膜ロール252とする。
次に、上述した本実施の形態に係る接合工程P1と同様にして、テープ状の固体高分子電解質膜260における主面の少なくとも一方にテープ状の保護膜250を積層した積層体を製造する。具体的には、固体高分子電解質膜ロール262及び保護膜ロール252からテープ状の保護膜250及びテープ状の固体高分子電解質膜260を引っ張り出し、一対のローラ290,290の間に挟んで一体化して積層体とする。そして、この一体化された積層体を巻回して、膜−保護膜接合体ロール280とする。
この膜−保護膜接合体ロール280を製造する際、保護膜250には、当該保護膜250が進行する方向(テープ状の保護膜250の長手方向)D10に張力がかかる。この場合、保護膜250は非常に薄い膜(例えば、50μm以下)であり、かつ、主面の内部に開口部222が形成されているため、張力がかかると、保護膜250において張力のかかる方向と略垂直となる部分R200が浮き上がるようになる。これにより、ローラ290と保護膜ロール252との間では、ローラ290により保護膜250を押えるときに上記R200の部分にシワが発生する可能性が高くなる。又、ローラ290と膜−保護膜接合体ロール280との間では、張力により、固体高分子電解質膜260から保護膜250のR200の部分が剥がれる可能性が高くなる。
このため、特許文献2に開示された固体高分子電解質型燃料電池の製造方法としては、不良品を発生させることなく良品を確実に製造する観点から、バッチ式の製造方法により固体高分子電解質膜に保護膜を一つ一つ位置決めして貼り付けるという、非常に手間のかかる複雑かつ高コストな製造方法を採用せざるを得ない。
一方、本実施の形態では、図13に示す保護膜250におけるR200の部分、即ち、張力がかかる方向と略垂直となる部分であって、張力がかかると浮き上がり易い部分が存在しない。そのため、本実施の形態によれば、高分子電解質膜テープ41aに膜補強部材テープ61,61を接合する際に、膜補強部材テープ61,61の位置ずれや剥がれを確実に防止することができる。
このように、本発明の実施の形態1に係るPEFCの構成によれば、高分子電解質膜の破損及び反応ガスのクロスリークの発生等を確実に防止することが可能となり、かつ、安価に大量生産することが可能となる。
又、本発明の実施の形態1に係るPEFCの構成によれば、一対の膜補強部材テープ61,61にシワが発生する可能性は極めて低く、よって、バッチ式の製造方法に代えてロール式の製造方法を適用することができるため、補強された破損し難い高分子電解質膜を容易に製造することが可能になる。これにより、反応ガスのクロスリークの発生等が確実に抑制された好適なPEFCを容易に製造することが可能になる。
又、一般的に、PEFCを薄型化するためには、アノードセパレータ及びカソードセパレータを薄型化すると共に、MEAを薄型化する必要がある。ここで、MEAを薄型化するためには、高分子電解質膜を薄型化すると共に、アノード触媒層及びカソード触媒層を薄型化する必要がある。ところで、高分子電解質膜を薄型化する場合、アノード触媒層及びカソード触媒層の特に四隅の角部によるMEAの損傷の程度は、高分子電解質膜の強度が低下するため、高分子電解質膜を薄型化しない場合よりも大きくなる。そのため、従来のMEAの構成では、かかるMEAの損傷を抑制するために、アノード触媒層及びカソード触媒層の四隅を湾曲状に加工する場合があった。ここで、このような、アノード触媒層及びカソード触媒層の加工作業は、MEAのコストアップの原因となる場合があった。しかしながら、本発明によれば、高分子電解質膜を薄型化する場合であっても、その高分子電解質膜の四隅の部分には膜補強部材が二重に埋設されているので、アノード触媒層及びカソード触媒層の四隅を湾曲状に加工することなく、アノード触媒層及びカソード触媒層によるMEAの損傷を効果的に抑えることができる。これにより、PEFCを薄型化する場合であっても、高分子電解質膜の破損及び反応ガスのクロスリークの発生等を確実に防止することが可能となり、かつ、安価に大量生産することが可能となる。
(実施の形態2)
図14は、本発明の実施の形態2に係るPEFCが備えるセルの概略的な構成を示す断面図である。又、図15は、図14に示すPEFCのセルにおける高分子電解質膜−内部補強膜複合体の概略的な構成を模式的に示す斜視図である。
本発明の実施の形態2に係るPEFCのセルは、実施の形態1に係るPEFCのセルと比べて基本的な構成は同じであるが、以下の点で異なる。
図14に示すように、本実施の形態に係るPEFCのセルは、高分子電解質膜1に代えて、高分子電解質膜−内部補強膜複合体15を備えている。尚、特許請求の範囲における「高分子電解質膜」には、この高分子電解質膜−内部補強膜複合体15も含まれる。そして、この高分子電解質膜−内部補強膜複合体15は、一対の小片状の高分子電解質膜15a,15bと、小片状の内部補強膜15cとを有している。ここで、高分子電解質膜15a,15b及び内部補強膜15cは、互いに主面が対向するように配置されている。又、図14に示すように、高分子電解質膜15a,15bには、互いに対向する一組の辺に沿って延びるように凹部が形成されており、これらの凹部は、厚み方向(法線方向)から見た場合に井桁組状が観察されるように形成されている。この凹部の各々に、第一膜補強部材10a,10a及び第二膜補強部材10b,10bが配置される。又、本実施の形態では、高分子電解質膜15a,15bの間に内部補強膜15cが挟み込まれている。
次に、内部補強膜15cの構成について、図16を用いて更に詳細に説明する。
図16は、図15に示す高分子電解質膜−内部補強膜複合体における内部補強膜の概略的な構成を示す模式図である。尚、図16では、内部補強膜の一部のみを図示している。
図16に示すように、内部補強膜15cは、その厚み方向に貫通する複数の開口(貫通孔)16を有している。この開口16には、高分子電解質膜15a,15bと同じ成分又は異なる成分の高分子電解質が充填されている。ここで、内部補強膜15cの主面の面積に対する開口16の面積の割合(開口度)は、50%〜90%であることが好ましい。このように、開口度を50%以上とすることにより、十分なイオン導電性を容易に得ることができるようになる。一方、開口度を90%以下とすることにより、内部補強膜15cの十分な機械的強度を容易に得ることができる。尚、内部補強膜15cが備える開口16としては、非常に微細な細孔(例えば、細孔径が数十μm)であってもよい。この場合であっても、上述と同様の理由により、開口度(多孔度)は50%〜90%であることが好ましい。
内部補強膜15cとしては、樹脂性のフィルムであってもよく、又、延伸加工された多孔質フィルム(例えば、ジャパンゴアテックス社製「ゴアセレクト(R)」)であってもよい。
上述の内部補強膜15cを構成する樹脂としては、化学的安定性及び機械的安定性の観点から、ポリテトラフルオロエチレン、フルオロエチレン−プロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテルアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリスルフィド、ポリイミド、及び、ポリイミドアミドからなる樹脂群より選択される少なくとも一以上の合成樹脂であることが好ましい。
又、内部補強膜15cの構成としては、板状の高分子電解質膜の内部に、繊維状の補強体粒子及び球状の補強体粒子の少なくとも一方を含有させることにより、高分子電解質膜の強度を補強する構成としてもよい。尚、補強体粒子の構成材料としては、例えば、内部補強膜15cを構成する樹脂が挙げられる。
又、高分子電解質膜−内部補強膜複合体15の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の薄膜製造技術を用いて製造することができる。そして、PEFCのセルは、この高分子電解質膜−内部補強膜複合体15を用いること以外は、上述したセルと同様の方法により製造することができる。
以上、本発明の実施の形態1,2について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
例えば、本発明の実施の形態1,2では、第一膜補強部材10a,10a及び第二膜補強部材10b,10bの外側の周縁部(エッジ部)が、高分子電解質膜の周縁部(エッジ部)と一致している態様(即ち、高分子電解質膜1の主面の略法線方向から見た場合、第一膜補強部材10a,10a及び第二膜補強部材10b,10bの外側のエッジと高分子電解質膜1のエッジが重なり、高分子電解質膜1のエッジがはみ出て見えない状態となっている態様)について説明したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、本発明の効果を得られる範囲において、第一膜補強部材10a,10a及び第二膜補強部材10b,10bのエッジが高分子電解質膜1のエッジよりも全体的に又は部分的にはみ出ている構成を有していてもよく、それとは反対に、高分子電解質膜1のエッジが第一膜補強部材10a,10a及び第二膜補強部材10b,10bのエッジよりも全体的に又は部分的にはみ出ている構成を有していてもよい。
又、本発明の実施の形態1,2では、高分子電解質膜1,15a,15b、内部補強膜15cは、各々略四角形であればよい。即ち、本発明の実施の形態1,2では、高分子電解質膜1及び内部補強膜15cの各々における四つの内角が90度でなくてもよく、又、四つの辺が多少湾曲していてもよく、或いは、四つの角が面取りされていてもよい。
(実施の形態3)
以下、本発明を実施するための最良の実施の形態3,4について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明でも、全ての図面において、同一又は相当部分には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。
図17は、本発明の実施の形態3に係る高分子電解質形燃料電池積層体(以下、「PEFC」という)が備える単電池(以下、「セル」という)の概略的な構成を模式的に示す断面図である。尚、図17においては、セルの一部の構成を省略している。
図17に示すように、本実施の形態に係るPEFCのセル100bは、膜−電極接合体(以下、「MEA」という)5と、このMEA5の内部に配設された第一膜補強部材10a及び第二膜補強部材10bと、ガスケット11,11と、アノードセパレータ6a及びカソードセパレータ6bと、を備えている。
MEA5は、水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質膜1と、アノード触媒層(第一触媒層)2a及びアノードガス拡散層(第一ガス拡散層)3aから構成されるアノード4aと、カソード触媒層(第二触媒層)2b及びカソードガス拡散層(第二ガス拡散層)3bから構成されるカソード4bと、を備えている。尚、本明細書では、高分子電解質膜1と第一膜補強部材10a及び第二膜補強部材10bとからなる接合体を、「膜−膜補強部材接合体20」という。又、本明細書では、膜−膜補強部材接合体20とアノード触媒層2a及びカソード触媒層2bとからなる接合体を、「膜−触媒層接合体30」という。
先ず、高分子電解質膜1及び膜−膜補強部材接合体20の構成について説明する。
図18は、図17に示すPEFCのセル100bにおける高分子電解質膜1の概略的な構成を模式的に示す斜視図である。又、図19は、図18に示す高分子電解質膜1に第一膜補強部材10a及び第二膜補強部材10bが配置された状態(膜−膜補強部材接合体20)の概略的な構成を模式的に示す斜視図である。
図18に示すように、高分子電解質膜1は、主面F1側から見て略四角形(ここでは、矩形)の形状を有している。そして、その高分子電解質膜1の縁部には、一対の第一凹部1a,1aと、一対の第二凹部1b,1bとが形成されている。具体的に説明すると、高分子電解質膜1の主面F1における対向する一組の辺E1,E1の全長に沿って、主面F1から高分子電解質膜1の厚み方向において所定の距離を隔てるようにして、各々短冊状の形状を有する一対の第一凹部1a,1aが形成されている。又、高分子電解質膜1の主面F2における対向する一組の辺E2,E2の全長に沿って、主面F2から高分子電解質膜1の厚み方向において前記所定の距離よりも更に大きく隔てるようにして、各々短冊状の形状を有する一対の第二凹部1b,1bが形成されている。一対の第一凹部1a,1aと一対の第二凹部1b,1bとは、高分子電解質膜1の厚み方向において互いに所定の距離dを隔てるようにして、高分子電解質膜1の縁部に各々形成されている。ここで、図2に示すように、本実施の形態では、一対の第一凹部1a,1aが一対の第二凹部1b,1bよりも主面F1に近く位置している。
そして、図19に示すように、高分子電解質膜1に形成された第一凹部1a,1aの各々には、短冊状の形状を有しかつ第一凹部1a,1aと同一の形状を有する膜状の第一膜補強部材10a,10aが、過不足なく一致するように埋設されている。換言すれば、第一膜補強部材10a,10aが、その主面を露出しないようにして、高分子電解質膜1に埋め込まれている。又、高分子電解質膜1に形成された第二凹部1b,1bの各々には、短冊状の形状を有しかつ第二凹部1b,1bと同一の形状を有する膜状の第二膜補強部材10b,10bが、過不足なく一致するように埋設されている。つまり、第一膜補強部材10a,10aの場合と同様、第二膜補強部材10b,10bが、その主面を露出しないようにして、高分子電解質膜1に埋め込まれている。
ここで、図19に示すように、一対の第一膜補強部材10a,10aと一対の第二膜補強部材10b,10bとは、全体として高分子電解質膜1の四辺に沿って延在し、かつ高分子電解質膜1の四隅の部分において各々の主面同士が接触しない状態(以下、このような状態を必要に応じて「井桁組状」という)で配置されている。より具体的には、一対の第一膜補強部材10a,10aと一対の第二膜補強部材10b,10bとは、高分子電解質膜1の四隅の部分において各々の主面同士が所定の距離dを隔てた状態となるようにして、各々配置されている。又、一対の第一膜補強部材10a,10aは、主面F1における一対の第一膜補強部材10a,10aと対応する第一部分と、主面F1における一対の第一膜補強部材10a,10aの間に位置する部分と対応する第二部分とが実質的に同一平面上に位置するようにして、高分子電解質膜1に埋められている。同様にして、一対の第二膜補強部材10b,10bは、主面F2における一対の第二膜補強部材10b,10bと対応する第一部分と、主面F1における一対の第二膜補強部材10b,10bの間に位置する部分と対応する第二部分とが実質的に同一平面上に位置するようにして、高分子電解質膜1に埋められている。
尚、第一凹部1a,1a及び第二凹部1b,1bに配置される第一膜補強部材10a,10a及び第二膜補強部材10b,10bの厚み及び幅方向の寸法は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に限定はされないが、本発明の効果をより確実に得る観点から、第一膜補強部材10a,10a及び第二膜補強部材10b,10bの厚み及び幅方向の寸法は、互いに等しいことが好ましい。
次に、膜−膜補強部材接合体20の各構成要素について説明する。
高分子電解質膜1は、プロトン伝導性を有している。この高分子電解質膜1としては、例えば、陽イオン交換基としてのスルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、又はスルホンイミド基を有するものが好ましい。ここで、好適なプロトン伝導性を確保する観点から、高分子電解質膜1は、スルホン酸基を有するものが特に好ましい。
又、高分子電解質膜1を構成するスルホン酸基を有する樹脂としては、イオン交換容量が0.5〜1.5meq/gの乾燥樹脂であることが好ましい。その理由は、高分子電解質膜1を構成する乾燥樹脂のイオン交換容量が0.5meq/g以上であれば、発電時における高分子電解質膜1の抵抗値の上昇を十分に低減することができるからである。又、高分子電解質膜1を構成する乾燥樹脂のイオン交換容量が1.5meq/g以下である場合には、高分子電解質膜1の含水率が増大せず、膨潤し難くなり、後述する触媒層2の細孔が閉塞する恐れを回避することができるからである。又、以上と同様の観点から、より望ましくは、高分子電解質膜1を構成する乾燥樹脂のイオン交換容量は、0.8〜1.2meq/gであることが好ましい。
高分子電解質としては、化学式(5)で表されるパーフルオロビニル化合物(mは0〜3の整数を示し、nは1〜12の整数を示し、pは0又は1を示し、Xはフッ素原子又はトリフルオロメチル基を示す)に基づく重合単位と、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位との各々を含む共重合体であることが好ましい。
CF2=CF−(OCF2CFX)m−Op−(CF2)n−SO3H ・・・(5)
上記フルオロビニル化合物の好ましい例としては、化学式(6)〜(8)で表される化合物が挙げられる。但し、下記の化学式中、qは1〜8の整数、rは1〜8の整数、tは1〜3の整数を示す。
CF2=CFO(CF2)q−SO3H ・・・(6)
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)r−SO3H ・・・(7)
CF2=CF(OCF2CF(CF3))tO(CF2)2−SO3H ・・・(8)
又、第一膜補強部材10a及び第二膜補強部材10bの構成材料は、製造時にロールに巻回できかつその巻回を解いたときに元の形状に戻ることのできる柔軟性と可とう性とを有する合成樹脂であることが好ましい。
更に、上記の合成樹脂としての、第一膜補強部材10a,10a及び第二膜補強部材10b,10bの各々を構成する材料としては、耐久性の観点から、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、フルオロエチレン−プロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテルアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリスルフィド、ポリイミド、及び、ポリイミドアミドからなる群より選択される少なくとも一以上の樹脂から構成される合成樹脂であることがより好ましい。
次に、膜−触媒層接合体30の構成について説明する。
図20(a)は、図1に示すPEFCのセル100bにおける膜−触媒層接合体30の概略的な構成を模式的に示す斜視図である。又、図20(b)は、図20(a)に示す矢印XXbの方向から見た場合の模式図である。
図20(a)に示すように、膜−触媒層接合体30は、膜−膜補強部材接合体20と触媒層2(アノード触媒層2a及びカソード触媒層2b)とを備えている。アノード触媒層2aは、高分子電解質膜1の主面F1側において、一方の第一膜補強部材10aの一部から他方の第一膜補強部材10aの一部に渡るように配置されている。又、図20(a)では隠れているが、カソード触媒層2bは、高分子電解質膜1の主面F2側において、一方の第二膜補強部材10bの一部から他方の第二膜補強部材10bの一部に渡るように配置されている。そして、図20(b)に示すように、アノード触媒層2a及びカソード触媒層2bは、本実施の形態では、高分子電解質膜1と相似の矩形に形成され、高分子電解質膜1の厚み方向(つまり、図20(a)の矢印IVbの方向)から見て、各々の周縁部が全周に亘って第一膜補強部材10a,10a及び第二膜補強部材10b,10bと重なりを有するように配置されている。
これにより、アノード触媒層2aにおける主面の四辺の内、互いに対向する一組の辺E3,E3は、高分子電解質膜1の主面F1における第一膜補強部材10a,10aにより補強された部分に当接するため、高分子電解質膜1は破損されない。同様にして、カソード触媒層2bにおける主面の四辺の内、互いに対向する一組の辺E4,E4は、高分子電解質膜1の主面F2における第二膜補強部材10b,10bにより補強された部分と当接するため、高分子電解質膜1は破損されない。
一方、アノード触媒層2aにおける主面の四辺の内の互いに対向する辺E4,E4は、高分子電解質膜1の主面F1と直接当接するため、高分子電解質膜1が当該部分で破損する場合もある。しかしながら、このような場合であっても、高分子電解質膜1の主面F2側には、当該部分に第二膜補強部材10b,10bが配置されているので、反応ガスがクロスリークすることはない。又、同様にして、カソード触媒層2bにおける主面の四辺の内の互いに対向する辺E3,E3は、高分子電解質膜1の主面F2と直接当接するため、高分子電解質膜1が当該部分で破損する場合もある。しかしながら、このような場合であっても、高分子電解質膜1の主面F1側には、当該部分に第一膜補強部材10a,10aが配置されているので、反応ガスがクロスリークすることはない。
触媒層2の構成としては、本発明の効果を得られるものであれば特に限定されず、公知の高分子電解質形燃料電池におけるガス拡散電極の触媒層と同様の構成を有していてもよい。例えば、電極触媒が担持された導電性炭素粒子(粉末)と、陽イオン(水素イオン)伝導性を有する高分子電解質とを含むような構成であってもよく、又、ポリテトラフルオロエチレン等の撥水材料を更に含むような構成であってもよい。又、アノード触媒層2a及びカソード触媒層2bの構成は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
又、触媒層2は、公知の高分子電解質形燃料電池におけるガス拡散電極の触媒層の製造方法を用いて形成してもよい。例えば、触媒層2の構成材料(例えば、上述した電極触媒が担持された導電性炭素粒子と高分子電解質)と、分散媒とを少なくとも含む液(触媒層形成用インク)を調整し、これを用いて作成してもよい。
尚、高分子電解質としては、上述した高分子電解質膜1を構成する材料と同種のものを使用してもよく、又、異なる種類のものを使用してもよい。又、電極触媒としては、金属粒子を用いることができる。当該金属粒子としては、特に限定されず種々の金属を使用することができるが、電極反応活性の観点から、白金、金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、クロム、鉄、チタン、マンガン、コバルト、ニッケル、モリブデン、タングステン、アルミニウム、ケイ素、亜鉛及びスズからなる金属群より選択される少なくとも一以上の金属であることが好ましい。中でも、白金、又は白金と上記金属群より選択される少なくとも一以上の金属との合金が好ましい。例えば、白金とルテニウムとの合金が、アノード触媒層2aにおいて触媒の活性が安定することから、特に好ましい。
又、電極触媒に用いる上記金属粒子は、平均粒径が1〜5nmであることが好ましい。その理由は、平均粒径が1nm以上である電極触媒は、工業的に調製が容易であるため好ましい。又、平均粒径が5nm以下であると、電極触媒質量当たりの活性をより十分に確保し易くなるため、高分子電解質形燃料電池のコストダウンに貢献するため好ましい。
又、上記導電性炭素粒子は、その比表面積が50〜1500m2/gであることが好ましい。その理由は、導電性炭素粒子の比表面積が50m2/g以上であると、電極触媒の担持率を上げることが容易となり、その結果、得られた触媒層2の出力特性をより十分に確保することができるためである。又、導電性炭素粒子の比表面積が1500m2/g以下であると、十分な大きさの細孔をより容易に確保できるようになり、かつ高分子電解質による被覆がより容易となり、その結果、触媒層2の出力特性をより十分に確保することができるためである。上記と同様の観点から、より望ましくは、導電性炭素粒子の比表面積は200〜900m2/gであることが好ましい。
又、上述した導電性炭素粒子は、その平均粒径が0.1〜1.0μmであることが好ましい。その理由は、導電性炭素粒子の平均粒径が0.1μm以上であると、触媒層2におけるガスの拡散性をより十分に確保し易くなり、その結果、フラッディングをより確実に防止することができるためである。又、導電性炭素粒子の平均粒径が1.0μm以下であると、高分子電解質による電極触媒の被覆状態をより容易に良好な状態とし易くなり、高分子電解質による電極触媒の被覆面積をより十分に確保し易くなるので、十分な電極性能をより確保し易くなるためである。
次に、MEA(膜−電極接合体)5の構成について説明する。
図21(a)は、図1に示すPEFCのセル100bにおけるMEA5の概略的な構成を模式的に示す斜視図である。又、図21(b)は、図21(a)に示す矢印XXIbの方向から見た場合の模式図である。
図21(a)及び(b)に示すように、MEA5では、膜−触媒層接合体30のアノード触媒層2aの主面を覆うようにして、アノードガス拡散層3aが設けられている。又、同様にして、このMEA5では、カソード触媒層2bの主面を覆うようにして、カソードガス拡散層3bが設けられている。ここで、アノード触媒層2aとアノードガス拡散層3aとから、アノード4aが構成されている。又、カソード触媒層2bとカソードガス拡散層3bとから、カソード4bが構成されている。アノード4a及びカソード4bを併せて電極4という。尚、本実施の形態では、アノードガス拡散層3a及びカソードガス拡散層3bの主面は、それぞれ、アノード触媒層2a及びカソード触媒層2bの主面と相似の矩形に形成され、かつ、それらよりも大きくなるように構成されているが、このような構成に限定されることはなく、それぞれの主面が同一の形状を有していてもよい。
アノードガス拡散層3a及びカソードガス拡散層3b(以下、ガス拡散層3という)の構成は、本発明の効果を得られるものであれば特に限定されず、公知の高分子電解質形燃料電池におけるガス拡散電極のガス拡散層と同様の構成を有していてもよい。又、ガス拡散層3の構成は、互いに同一であってもよく、或いは互いに異なっていてもよい。
ガス拡散層3としては、例えば、ガスの透過性を具備させるために、高表面積のカーボン微粉末、造孔材、カーボンペーパー又はカーボンクロス等を用いて作製された、多孔質構造を有する導電性基材を用いてもよい。又、十分な排水性を得る観点から、フッ素樹脂を代表とする撥水性高分子化合物等をガス拡散層3の中に分散させてもよい。更に、十分な電子伝導性を得る観点から、カーボン繊維、金属繊維又はカーボン微粉末等の電子伝導性材料でガス拡散層3を構成してもよい。
又、アノードガス拡散層3aとアノード触媒層2aとの間、及び、カソードガス拡散層3bとカソード触媒層2bとの間には、撥水性高分子化合物とカーボン粉末とで構成される撥水カーボン層を設けてもよい。これにより、MEA5における水の管理(即ち、MEA5の良好な特性維持に必要となる水の保持、及び、不必要な水の迅速な排水)を、より容易にかつより確実に行うことができる。
次に、セル100bの構成に関して、説明を省略した部分の構成について説明する。
図17に示すように、MEA5のアノード4a及びカソード4bの周囲には、高分子電解質膜1を挟んで、一対のフッ素ゴム製のガスケット11,11が配設されている。これにより、燃料ガス、空気や酸化剤ガスがセル100bの外部にリークされることが防止されると共に、セル100bの内部でこれらのガスが互いに混合されることが防止される。尚、図17では図示しないが、高分子電解質膜1、第一及び第二膜補強部材10a,10b、及びガスケット11の周縁部には、厚み方向の貫通孔からなる燃料ガス供給マニホールド孔等のマニホールド孔が適宜設けられている。
又、MEA5とガスケット11とを挟むようにして、導電性のアノードセパレータ6aとカソードセパレータ6bとが配設されている。これらのアノードセパレータ6a及びカソードセパレータ6bは、黒鉛板にフェノール樹脂が含浸され硬化された樹脂含浸黒鉛板が用いられている。尚、アノードセパレータ6a及びカソードセパレータ6bとしては、SUS等の金属材料からなるものを用いてもよい。アノードセパレータ6aとカソードセパレータ6bとにより、MEA5が機械的に固定されると共に、隣接するMEA5同士が互いに電気的に直列に接続される。
アノードセパレータ6aの内面(MEA5に当接する面)には、燃料ガスを流すための溝状の燃料ガス流路7が例えばサーペンタイン状に形成されている。一方、アノードセパレータ6aの外面(MEA5に当接しない面)には、熱媒体を流すための溝状の熱媒体流路9が例えばサーペンタイン状に形成されている。又、図17では図示しないが、アノードセパレータ6aの周縁部には、厚み方向の貫通孔からなる燃料ガス供給マニホールド孔等のマニホールド孔が設けられている。
一方、カソードセパレータ6bの内面(MEA5に当接する面)には、酸化剤ガスを流すための溝状の酸化剤ガス流路8が例えばサーペンタイン状に形成されている。一方、カソードセパレータ6bの外面(MEA5に当接しない面)には、アノードセパレータ6aの場合と同様、熱媒体を流すための溝状の熱媒体流路9が例えばサーペンタイン状に形成されている。又、図17では図示しないが、カソードセパレータ6bの周縁部には、アノードセパレータ6aの場合と同様、厚み方向の貫通孔からなる燃料ガス供給マニホールド孔等のマニホールド孔が設けられている。
尚、本実施の形態では、燃料ガス流路7、酸化剤ガス流路8、及び、熱媒体流路9の各々はサーペンタイン状に形成されているが、これに限定されることはない。例えば、セパレータ6a,6bの主面の概ね全領域を反応ガス又は熱媒体が通流するような構成であれば、如何なる形状であってもよい。
このように形成したセル100bをその厚み方向に積層することにより、セル100bの積層体が形成される。この際、アノードセパレータ6a、カソードセパレータ6b及びガスケット11に設けられた燃料ガス供給マニホールド孔等のマニホールド孔は、セル100bを積層することにより厚み方向にそれぞれ連結され、これにより、燃料ガス供給マニホールド等のマニホールドがそれぞれ形成される。そして、セル100bの積層体の両端に集電板及び絶縁板がそれぞれ配設されている端板を配置し、所定の締結具により締結することで、スタック(PEFC)が形成される。
次に、本実施の形態に係るPEFCにおけるMEAの製造方法について説明する。尚、以下に説明するようにして製造されたMEAを用いて、セル及びスタック(PEFC)を製造する方法は、特に限定されず、公知のPEFCの製造技術を採用することができるため、ここでは詳細な説明を省略する。
先ず、膜−触媒層接合体30の製造方法について説明する。
図22は、膜−触媒層接合体を製造するための一連の工程(処理エリア)及び製造ラインの一部を概略的に示す模式図である。
図22に示すように、図20(a)に示した膜−触媒層接合体30は、高分子電解質膜テープと膜補強部材テープとを接合して膜−膜補強部材接合体テープを形成する接合工程P1と、膜−膜補強部材接合体テープを乾燥する熱処理工程P2と、膜−膜補強部材接合体テープを熱圧着する熱圧着工程P3と、膜−膜補強部材接合体テープに触媒層を塗工する塗工工程P4と、膜−触媒層接合体テープを所定の長さに切断する裁断工程P5との各々の工程を経て製造される。これにより、図17に示すMEA5を、低コストで、かつ、容易に大量生産することが可能となる。
先ず、接合工程P1について具体的に説明する。
図23及び図24は、膜−触媒層接合体30の製造工程における接合工程P1を説明するための模式図である。
先ず、公知の薄膜製造技術を用い、長尺状の高分子電解質膜テープ41a(切断後、図17に示す高分子電解質膜1となる部材)を巻回した高分子電解質膜ロール40と、膜補強部材テープ61(切断後、図1に示す第一及び第二膜補強部材10a及び10bとなる部材)を巻回した膜補強部材ロール60とを製造する。
次に、図23に示すように、高分子電解質膜ロール40から高分子電解質膜テープ41aを引き出すと共に、一対の膜補強部材ロール60,60の各々から一対の膜補強部材テープ61,61を各々引き出し、これらを一対のローラ80,81を有する熱圧着機(図23では図示せず)の内部に誘導する。この際、一対の膜補強部材テープ61,61が高分子電解質膜テープ41aの両側端部に配置されるよう、高分子電解質膜テープ41a及び一対の膜補強部材テープ61,61の相対的な位置決めを行う。そして、熱圧着機内で、高分子電解質膜テープ41a及び一対の膜補強部材テープ61,61は、予熱されたローラ80とローラ81との間を進行方向D1側に進む過程において接合される。これにより、長尺状の膜−膜補強部材接合体テープ42が形成される。
尚、高分子電解質膜テープ41aに接触させる前に、一対の膜補強部材テープ61,61の表面(接触面となる部分)に、接着剤を塗工する前処理を行ってもよい。この場合、上記のようにローラ80,81を予熱して加圧処理を行ってもよく、或いは、予熱を行わずに加圧処理のみ行ってもよい。又、この場合、接着剤としては、セル100bの放電特性を低下させないものを用いることが好ましい。例えば、接着剤としては、高分子電解質膜テープ41aと同種又は異種(但し、高分子電解質膜テープ41aと十分に一体化可能な親和性を有するもの)の高分子電解質材料(例えば、先に高分子電解質膜1の構成材料として例示したもの)を分散媒又は溶媒に含有させた液を用いてもよい。
次に、図24に示すように、膜−膜補強部材接合体テープ42における、高分子電解質膜テープ41a及び膜補強部材テープ61,61によって形成される溝状の凹部43の上部と、一対の膜補強部材テープ61,61の上部とに、その幅寸法と高分子電解質膜テープ41aの幅寸法とが実質的に等しくかつその上面が同一平面を形成するようにして、ブレード45を用いて、高分子電解質のキャスト膜41bを形成する。具体的には、高分子電解質を水置換やアルコール分散等により液状にして、適宜な粘度に調整した高分子電解質溶液44を凹部43及び一対の膜補強部材テープ61,61に適量載置した後、ブレード45の下端を膜−膜補強部材接合体テープ42における膜補強部材テープ61,61の上方(膜補強部材テープ61,61から所定の距離を隔てた位置)に固定させる。そして、膜−膜補強部材接合体テープ42を進行方向D1側に動かすことで、ブレード45の下端と膜−膜補強部材接合体テープ42との間に高分子電解質のキャスト膜41bが所定の膜厚で形成される。
次に、熱処理工程P2について具体的に説明する。
熱処理工程P2では、接合工程P1で形成した高分子電解質膜のキャスト膜41bに含まれる液体を適切な手段で熱処理(例えば、高分子電解質を分散した分散剤が気化する温度に調整された乾燥炉中に膜−膜補強部材接合体テープ42を通過させることにより乾燥する)を行って除去することにより、高分子電解質膜テープ41cが、膜−膜補強部材接合体テープ42の凹部43及び一対の膜補強部材テープ61,61の上部に形成される。ここで、上述したように、高分子電解質膜テープ41cの表面は、膜−膜補強部材接合体テープ42における一対の膜補強部材テープ61,61に対応する部分と凹部43に対応する部分とが面一となるように形成される。
次に、熱圧着工程P3について具体的に説明する。
熱圧着工程P3では、熱処理工程P2で形成した高分子電解質膜テープ41cと膜−膜補強部材接合体テープ42とを完全に一体化するために熱圧着する。具体的には、膜−膜補強部材接合体テープ42と高分子電解質膜テープ41cとを一対のローラ82,83を有する熱圧着機(図6では図示せず)を通過させる。ここで、ローラ82及びローラ83は、高分子電解質膜テープ41a及び高分子電解質膜テープ41cを構成する高分子電解質のガラス転移点(Tg)以上の温度となるように予熱されている。従って、熱圧着機内のローラ82とローラ83との間を進行方向D1側に進む過程において、膜−膜補強部材接合体テープ42と高分子電解質膜テープ41cとが、即ち、高分子電解質膜テープ41a及び一対の膜補強部材テープ61,61と高分子電解質膜テープ41cとが接合されて完全に一体化される。これにより、長尺状の膜−膜補強部材接合体テープ46が形成される。
ところで、膜−膜補強部材接合体テープ46は、以下のように形成してもよい。
図25は、膜−膜補強部材接合体テープを形成する他の製造方法を示した模式図である。
先ず、図25に示すように、公知の薄膜製造技術を用いて、長尺状の高分子電解質膜テープ41d及び41eを巻回した高分子電解質膜ロール40c及び40bを製造する。この際、高分子電解質膜テープ41dの幅寸法を、膜−膜補強部材接合体テープ42の凹部43の幅寸法と同じになるように形成する。又、高分子電解質膜テープ41eの幅寸法を、膜−膜補強部材接合体テープ42の幅寸法と同じになるように形成する。
次に、図25に示すように、高分子電解質膜ロール40cから高分子電解質膜テープ41dを引き出し、膜−膜補強部材接合体テープ42の凹部43に、その高分子電解質膜テープ41dを嵌合させる。又、その後、高分子電解質膜ロール40dから高分子電解質膜テープ41eを引き出し、膜−膜補強部材接合体テープ42の膜補強部材テープ61,61及び高分子電解質膜テープ41dの上部に、その引き出した高分子電解質膜テープ41eを配置する。そして、図25では図示されない熱圧着機内に膜−膜補強部材接合体テープ42と高分子電解質膜テープ41e,41dとを誘導する。これにより、熱圧着機内で、膜−膜補強部材接合体テープ42の高分子電解質膜テープ41aと高分子電解質膜テープ41dとが接合され完全に一体化される。又、熱圧着機内で、膜−膜補強部材接合体テープ42の膜補強部材テープ61,61及び高分子電解質膜テープ41dと高分子電解質膜テープ41eとが接合され完全に一体化される。従って、長尺状の膜−膜補強部材接合体テープ46が形成される。
尚、本実施の形態において、膜−膜補強部材接合体テープ46は、実施の形態1で示したように、ロールナイフコーター(コンマコーター)を利用して形成してもよい(図10及び図11参照)。この場合、先ず、基材シート84の表面に高分子電解質溶液44を塗布し、これを所定の乾燥方法により硬化させて、その基材シート84の表面に高分子電解質テープ41eを形成する。そして、この基材シート84上に形成された高分子電解質テープ41e上の両側端部に一対の膜補強部材テープ61,61が貼付された基材−膜補強部材接合体テープ86を作製することにより、実施の形態1の場合と同様にして、基材−高分子電解質膜テープ87を作成する。その後、この基材−高分子電解質膜テープ87から基材シート84を適宜な手段により剥がして、膜−膜補強部材接合体テープ46が形成される。
次に、塗工工程P4について具体的に説明する。
図26は、膜−触媒層接合体の製造工程における塗工工程P4を説明するための模式図である。
先ず、塗工工程P4が行われるエリアの構成について説明する。
図26に示すように、塗工工程P4が行われるエリアには、開口部48を有するマスク47と、膜−膜補強部材接合体テープ46の一対の膜補強部材テープ61,61が配置されている側の主面(以下、「裏面」という)から膜−膜補強部材接合体テープ46を支える図26では図示されない所定の支持手段(例えば、支持台)と、触媒層形成装置49(図22参照)とが配置されている。ここで、開口部48の形状は、図20(a)及び(b)に示した触媒層2の主面の形状に対応するように設計されている。又、触媒層形成装置49には、触媒層形成用インクを塗工又はスプレーする等して膜−膜補強部材接合体テープ46の表面に触媒層2を形成するための機構が備えられている。尚、この機構としては、公知である高分子電解質形燃料電池のガス拡散電極の触媒層を形成するために採用されている機構、例えば、スプレー法、スピンコート法、ドクターブレード法、ダイコート法、スクリーン印刷法当に基づいて設計された機構を採用することができる。
次に、塗工工程P4における処理内容について説明する。
先ず、熱圧着工程P3で形成された膜−膜補強部材接合体テープ46が塗工工程P4エリアにまで進むと、例えば反転機構により反転された後、一旦停止される。そして、膜−膜補強部材接合体テープ46が、マスク47と図26では図示されない支持台との間に挟持されるようにして固定される。
次に、触媒層形成装置49が作動され、マスク47の開口部48の上方から触媒層形成用インクが塗工されることにより、膜−膜補強部材接合体テープ46における高分子電解質膜テープ41aの主面に、一対の膜補強部材テープ61,61の主面における少なくとも一部と重なりを有するようにして、触媒層2が形成される。触媒層2が形成されると、膜−膜補強部材接合体テープ46からマスク47及び支持台が離間する。このようにして形成された膜−触媒層接合体テープ50は、進行方向D1に沿って順次移動する。これにより、膜−触媒層接合体テープ50には、触媒層2が、その長手方向に所定のピッチで形成される。
尚、触媒層2は、適度な柔軟性を有するように、その成分組成、及び乾燥の度合い等が適切に調節されている。又、触媒層2を形成する際には、膜−触媒層接合体テープ50の裏表が反対になった場合でも高分子電解質膜テープ41aから触媒層2が剥がれ落ちないようにするための処置(例えば、予め支持台を加熱して、触媒層形成用のインクの分散剤を乾燥処理する)が施される。尚、触媒層2を形成する度に、例えば加熱処理、送風処理及び脱気処理の内の少なくとも一つの処理に代表される所定の乾燥処理を適宜行ってもよい。
次に、裁断工程P5について具体的に説明する。
先ず、一方の膜−触媒層接合体テープ50と、他方の膜−触媒層接合体テープ50とを準備する。その後、それぞれの長手方向が実質的に垂直となるように、かつ、互いに裏面が対向するように(一方の膜補強部材テープ61,61と他方の膜補強部材テープ61,61とが向かい合うように)配置する。そして、一組の膜−触媒層接合体テープ50,50の裏面が互いに重なるようにして、熱圧着機構と裁断機構とを有する裁断機51の内部に誘導する。すると、裁断機51の内部に誘導された一方の膜−触媒層接合体テープ50の裏面と、他方の膜−触媒層接合体テープ50の裏面とが、対向する高分子電解質膜テープ41cを介して、熱圧着機構により熱圧着される。次いで、裁断機51の裁断機構により、予め設定された所定の大きさに裁断されて、図20(a)及び(b)に示す膜−触媒層接合体30が得られる。尚、膜−触媒層接合体テープ50を予め設定された大きさに裁断し、裁断した一組の膜−触媒層接合体テープ50を接合することにより、膜−触媒層接合体30を形成してもよい。
尚、図22に示す本実施の形態に係る膜−触媒層接合体の製造ラインでは、高分子電解質膜テープ41aが、膜−触媒層接合体テープ50が形成されるまで、連続するテープ状の形態で移動される。このように、高分子電解質膜テープ41aを進行方向D1に適切に移動させるために、本実施の形態では、当該テープを牽引するキャプスタンやローラ対等の牽引機構、当該テープに適度な張力を付与するテンショナー等の張力付与機構、及び、当該テープを所定エリア(例えば、塗工工程P4)に一時停止させ、かつ、その後早送りするためのダンサーローラ等のシート一時蓄積機構及びシート送り機構等が、この膜−触媒層接合体の製造ラインの適所に設けられている。しかしながら、これらの各々の機構は周知であるので、ここでは、それらの記載を省略する。
又、裁断工程(エリア)P5においては、一方の膜−触媒層接合体の製造ラインと他方の膜−触媒層接合体の製造ラインとが交差している。そして、裁断工程P5において、この他方の膜−触媒層接合体の製造ラインで製造された他方の膜−触媒層接合体テープ50が反転されて図22に示す一方の膜−触媒層接合体の製造ラインで製造された一方の膜−触媒層接合体シート50と直交するように配置されて、上述の如く加工される。この他方の膜−触媒層接合体の製造ラインは、図22〜図26に示す膜−触媒層接合体の製造ラインと全く同じである。そのため、ここではその説明を省略する。
次に、MEA5の製造方法について具体的に説明する。
上述のようにして得られた膜−触媒層接合体30における触媒層2の主面に、予め適切な大きさに裁断したガス拡散層3(例えば、カーボンクロス等)を接合することにより、MEA5が得られる。尚、撥水カーボン層形成インクを予め触媒層2又はガス拡散層3の主面に塗工等して、撥水カーボン層を形成することにより、MEA5を形成してもよい。
又、裁断工程P5の前に、膜−触媒層接合体テープ50の触媒層2の主面にガス拡散層3を接合して、MEA5を形成してもよい。この場合、予め裁断されたガス拡散層3を触媒層2の主面に接合して膜−電極接合体テープを形成してもよく、又、テープ状のガス拡散層を触媒層2の主面に接合し、裁断して膜−電極接合体テープを形成してもよい。そして、得られた一組の膜−電極接合体テープを上述した裁断工程P5の場合と同様の方法で接合及び裁断することで、MEA5が形成される。尚、撥水カーボン層形成インクを予め触媒層2又はガス拡散層3の主面に塗工等することにより、撥水カーボン層を形成してから、MEA5を形成してもよい。
ここで、比較例として、特許文献2に開示された膜−膜補強部材接合体を公知の薄膜積層体の製造技術を用いて大量生産しようと意図する場合に一般的に想定される製造方法について説明する。
図27は、公知の薄膜積層体の製造技術を用いて膜−膜補強部材接合体を大量生産しようと意図する場合に一般的に想定される製造方法の一例を示す説明図である。
先ず、図27に示すように、予め製造されたテープ状の固体高分子電解質膜260を巻回して固体高分子電解質膜ロール262とし、その一方で、予め製造されたテープ状の保護膜250(図32に示した保護膜220を連続的に形成したテープ状のもの)を巻回して保護膜ロール252とする。
次に、上述した本実施の形態に係る接合工程P1と同様にして、テープ状の固体高分子電解質膜260における主面の少なくとも一方にテープ状の保護膜250を積層した積層体を製造する。具体的には、固体高分子電解質膜ロール262及び保護膜ロール252からテープ状の保護膜250及びテープ状の固体高分子電解質膜260を引き出し、一対のローラ290,290の間に挟んで一体化して積層体とする。そして、この一体化された積層体を巻回して、膜−保護膜接合体ロール280とする。
この膜−保護膜接合体ロール280を製造する際、保護膜250には、当該保護膜250が進行する方向(テープ状の保護膜250の長手方向)D10に張力がかかる。この場合、保護膜250は非常に薄い膜(例えば、50μm以下)であり、かつ、主面の内部に開口部222が形成されているため、張力がかかると、保護膜250において張力のかかる方向と略垂直となる部分R200が浮き上がるようになる。これにより、ローラ290と保護膜ロール252との間では、ローラ290により保護膜250を押えるときに上記R200の部分にシワが発生する可能性が高くなる。又、ローラ290と膜−保護膜接合体ロール280との間では、張力により、固体高分子電解質膜260から保護膜250のR200の部分が剥がれる可能性が高くなる。
このため、特許文献2に開示された固体高分子電解質型燃料電池の製造方法としては、不良品を発生させることなく良品を確実に製造する観点から、バッチ式の製造方法により固体高分子電解質膜に保護膜を一つ一つ位置決めして貼り付けるという、非常に手間のかかる複雑かつ高コストな製造方法を採用せざるを得ない。
一方、本発明の実施の形態3では、図27に示した保護膜250におけるR200の部分、即ち、張力がかかる方向と略垂直となる部分であって、張力がかかると浮き上がり易い部分が存在しない。そのため、本実施の形態によれば、高分子電解質膜テープ41aに膜補強部材テープ61,61を接合する際に、膜補強部材テープ61,61の位置ずれや剥がれを確実に防止することができる。
このように、本発明の実施の形態3に係るPEFCの構成によれば、高分子電解質膜の破損及び反応ガスのクロスリークの発生等を確実に防止することが可能となり、かつ、安価に大量生産することが可能となる。又、実施の形態1,2の場合と同様にして、補強されたMEAを容易に製造することが可能になると共に、薄型のPEFCを安価に提供することが可能になる。
(実施の形態4)
図28は、本発明の実施の形態4に係るPEFCが備えるセルの概略的な構成を示す断面図である。又、図29は、図28に示すPEFCのセルにおける高分子電解質膜−内部補強膜複合体の概略的な構成を模式的に示す斜視図である。
本発明の実施の形態4に係るPEFCのセルは、実施の形態3に係るPEFCのセル100bと比べて基本的な構成は同じであるが、以下の点で異なる。
図28及び図29に示すように、本実施の形態に係るPEFCのセルは、高分子電解質膜1に代えて、高分子電解質膜−内部補強膜複合体15を備えている。尚、特許請求の範囲における「高分子電解質膜」には、この高分子電解質膜−内部補強膜複合体15も含まれる。そして、この高分子電解質膜−内部補強膜複合体15は、一対の小片状の高分子電解質膜15a,15bと、小片状の内部補強膜15cとを有している。ここで、高分子電解質膜15a,15b,15cは、互いに主面が対向するように配置されている。又、図29に示すように、高分子電解質膜15a,15bには、互いに対向する一組の辺に、その辺に沿って延びるように凹部が形成されており、これらの凹部は、その厚み方向(法線方向)から見た場合に井桁組状が観察されるように形成されている。そして、それらの凹部の各々に、第一膜補強部材10a,10a及び第二膜補強部材10b,10bが配置される。又、本実施の形態では、高分子電解質膜15a,15bの間に、内部補強膜15が挟み込まれている。
次に、内部補強膜15cの構成について、図30を用いて更に詳細に説明する。
図30は、図29に示す高分子電解質膜−内部補強膜複合体における内部補強膜の概略的な構成を示す模式図である。尚、図30では、内部補強膜の一部のみを図示している。
図30に示すように、内部補強膜15cは、その厚み方向に貫通する複数の開口(貫通孔)16を有している。そして、この開口16には、高分子電解質膜15a,15bと同じ成分又は異なる成分の高分子電解質が充填されている。ここで、内部補強膜15cの主面の面積に対する開口16の面積の割合(開口度)は、50%〜90%であることが好ましい。このように、開口度を50%以上とすることにより、十分なイオン導電性を容易に得ることができるようになる。一方、開口度を90%以下とすることにより、内部補強膜15cの十分な機械的強度を容易に得ることができる。尚、内部補強膜15cが備える開口16としては、非常に微細な細孔(例えば、細孔径が数十μm)であってもよい。この場合であっても、上述と同様の理由により、開口度(多孔度)は50%〜90%であることが好ましい。
内部補強膜15cとしては、樹脂性のフィルムであってもよく、又、延伸加工された多孔質フィルム(例えば、ジャパンゴアテックス社製「ゴアセレクト(R)」)であってもよい。
上述の内部補強膜15cを構成する樹脂としては、化学的安定性及び機械的安定性の観点から、ポリテトラフルオロエチレン、フルオロエチレン−プロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテルアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリスルフィド、ポリイミド、及び、ポリイミドアミドからなる樹脂群より選択される少なくとも一以上の合成樹脂であることが好ましい。
又、内部補強膜15cの構成としては、板状の高分子電解質膜の内部に、繊維状の補強体粒子及び球状の補強体粒子の少なくとも一方を含有させることにより、高分子電解質膜の強度を補強する構成としてもよい。尚、補強体粒子の構成材料としては、例えば、内部補強膜15cを構成する樹脂が挙げられる。
又、高分子電解質膜−内部補強膜複合体15の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の薄膜製造技術を用いて製造することができる。そして、PEFCのセルは、この高分子電解質膜−内部補強膜複合体15を用いること以外は、上述したセルと同様の方法により製造することができる。
以上、本発明の実施の形態3,4について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
例えば、本発明の実施の形態3,4では、第一膜補強部材又は第二膜補強部材の外側の周縁部(エッジ)が、高分子電解質膜の周縁部(エッジ)と一致している態様(つまり、高分子電解質膜の主面の略法線方向から見た場合に、第一膜補強部材又は第二膜補強部材の外側のエッジと高分子電解質膜のエッジが重なり、高分子電解質膜のエッジがはみ出て見えない状態となっている態様)について説明したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、本発明の効果を得られる範囲において、第一膜補強部材又は第二膜補強部材のエッジが高分子電解質膜のエッジよりも全体的に又は部分的にはみ出ている構成を有していてもよく、それとは反対に、高分子電解質膜のエッジが第一膜補強部材又は第二膜補強部材のエッジよりも全体的に又は部分的にはみ出ている構成を有していてもよい。
又、本発明の実施の形態3,4では、高分子電解質膜1,15a,15b、内部補強膜15cは、各々略四角形であればよい。即ち、本発明の実施の形態3,4では、高分子電解質膜及び内部補強膜の各々における四つの内角が90度でなくてもよく、又、四つの辺が多少湾曲していてもよく、或いは、四つの角が面取りされていてもよい。