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JP4744011B2 - 摺動部材用Fe−Cr−Ni−Cu合金 - Google Patents

摺動部材用Fe−Cr−Ni−Cu合金 Download PDF

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JP4744011B2 JP2001194592A JP2001194592A JP4744011B2 JP 4744011 B2 JP4744011 B2 JP 4744011B2 JP 2001194592 A JP2001194592 A JP 2001194592A JP 2001194592 A JP2001194592 A JP 2001194592A JP 4744011 B2 JP4744011 B2 JP 4744011B2
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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ディスクブレーキのロータ材,ディスク材等の摺動部材として好適なFe−Cr−Ni−Cu合金に関する。
【0002】
【従来の技術】
産業の発展に伴って高速化,高効率化の要求はあらゆる分野で強くなっており、高速化に対応した設備改善や材料開発が進められている。設備の高速化によって高速運転が可能となるが、運転時や停止時の速度制御で必要とされる制動システムの負荷が大きくなる。その結果、ディスクブレーキのロータ材ではより高い品質が要求され,摺動部材と接触する部位においても高品質が要求される。各部位における要求特性には、安定した摩擦係数,耐食性が挙げられる。しかも、高速化に対応する材料に関する要求に応えるため、抜本的な新材料の開発が急務とされている。
【0003】
たとえば、車両運搬設備,電動輸送設備等のディスクブレーキは大半が鋳鉄製ディスクを使用しているが、鋳鉄製ディスクでは重量が嵩み、設備全体の大型化が避けられない。鋳鉄製ディスクは、消費エネルギーを節減する上でもネックとなる。そのため、ディスクの軽量化が種々検討されているが、制動部品としての要求特性やコスト面から鋳鉄製ディスクを凌駕する材料が実用化されていない。
自動車用ディスクブレーキにも、ねずみ鋳鉄等の高炭素鋳鉄が使用されている。この種の鋳鉄は、多量に含有する炭素を黒鉛としてマトリックスに分散させた組織をもち、温度,湿度等の環境変化に拘らず比較的安定した摩擦特性を呈する。また、熱伝導性も良好で摩擦熱が分散されるため、局部的な温度上昇に起因する歪変形を緩和させる作用があり、他の材料系にみられない特性を示す。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ねずみ鋳鉄等は、衝撃値や延性が低いため塑性加工が極めて困難な材料である。そのため、ブレーキディスクの製造に際しては、プレス加工を採用できず、個々の製品ごとに鋳型を製作し鋳造する鋳造法に拠らざるを得ない。しかも、湿潤環境では短期間に腐食して赤錆が発生する致命的な欠陥がある。更には、高強度化が困難な材料であることから、軽量化を犠牲にしながら、厚肉化によって部材の強度を向上させている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、Cuを主体とする第二相が微細分散したFe−Cr−Ni−Cu合金をねずみ鋳鉄に代えて使用することにより、ねずみ鋳鉄に比較して耐食性や靭性が格段に優れ、高強度化が可能なために薄肉化による軽量化で高速,高効率化に適し、摩擦特性が安定した摺動部材用Fe−Cr−Ni−Cu合金を提供することを目的とする。
【0006】
本発明の摺動部材用Fe−Cr−Ni−Cu合金は、その目的を達成するため、C:0.20質量%以下,Cr:4〜20質量%,Ni:0.1〜5.0質量%,Cu:2.91〜7.5質量%を含み、残部Feおよび不可避的不純物の組成をもち、マルテンサイトを含むフェライト相のマトリックスにCuを主体とする第二相が微細分散していることを特徴とする。Cuを主体とする第二相は、0.2体積%以上の析出量で微細分散していることが好ましい。マトリックスのマルテンサイト量を焼入れ等の熱処理によって調整するとき、要求特性に応じた強度をFe−Cr−Ni−Cu合金に付与できる。
【0007】
【作用】
本発明者等は、高強度で安定した摩擦係数を得るため、マルテンサイト系ステンレス鋼SUS420J2を用い、摩擦係数の経時変化をねずみ鋳鉄と比較調査した。図1の調査結果にみられるように、マルテンサイト系ステンレス鋼SUS420J2は、試験初期段階でねずみ鋳鉄と同等の摩擦係数を示したものの、時間の経過と共に摩擦係数が上昇して異常音を発生した。また、摩擦試験がある時間経過した時点で摩擦係数が急激に上昇し、焼付き現象が発生した。他方、ねずみ鋳鉄では、摩擦係数が実質的に上昇しなかった。
【0008】
ねずみ鋳鉄の摩擦係数が安定している原因を解明するため、ねずみ鋳鉄の摩擦面における挙動を検討した。ねずみ鋳鉄は、マトリックスに分散析出した多量の球状黒鉛が摩擦面の潤滑性や熱拡散性に有効に作用するため、安定した摩擦係数を維持する。しかし、必要量の黒鉛晶出には少なくとも3質量%以上のC含有量を必要とし、靭性を著しく低下させる原因となる。多量のC含有は、耐食性改善元素として添加したCrをCr炭化物として消費し、Cr添加による耐食性向上効果を損なうことにもなる。
【0009】
そこで、本発明者等は、球状黒鉛に代わる元素又は析出物を調査検討した。その結果、製鋼段階でCuを溶鋼に添加し、マトリックス及び鋼表面にCuを主体とする第二相を析出させるとき、耐食性や靭性を劣化させることなく、球状黒鉛と同様に摩擦係数を安定化させた鋼材が得られることを見出した。実際、Cuを主体とする第二相を分散析出させた鋼材では、図2に示すようにねずみ鋳鉄とほぼ同様に摩擦係数が安定しており、マルテンサイト系ステンレス鋼SUS420J2でみられる焼付きは皆無であった。
Cuを主体とする第二相の分散析出により摩擦係数の安定化及び焼付き防止が図られる理由は定かでないが、析出した第二相を介した熱流路が形成されることから熱拡散率が上昇し、第二相自体が自己潤滑性を発現したこと等に拠るものと考えられる。何れにしても、Cuを主体とする第二相の析出によって安定した摩擦係数が維持され、異常な温度上昇がないことは、本発明者等が見出した知見である。
【0010】
Fe−Cr−Ni−Cu合金は、焼入れ等の熱処理でマルテンサイト化することにより高強度化される。Fe−Cr−Ni−Cu合金は、図3に示すようにマルテンサイト量が多くなるほど硬質化し強度が向上する。そのため、マルテンサイト量を調節することにより、要求特性に応じた強度が付与される。たとえば、マトリックスに20%以上のマルテンサイト量を生成させると、マルテンサイトが生じていないFe−Cr−Ni−Cu合金やねずみ鋳鉄に比較して1.3倍以上の強度を示す。したがって、ねずみ鋳鉄製部材に比較して板厚を強度向上分だけ減少でき、軽量化が可能となる。
【0011】
本発明のFe−Cr−Ni−Cu合金は、ねずみ鋳鉄以上の耐食性を確保するため4〜20質量%のCrを含んでいる。一般のマイルドな大気環境での耐食性は4質量%以上のCr含有で顕著になるが、海塩粒子や酸性雨等に曝される環境下では10質量%以上のCr含有量が好ましい。しかし、20質量%を超える過剰量のCrが含まれると、焼入れ等の熱処理によっても十分なマルテンサイト量が得られず、延性低下等に起因して製造コストも上昇する。
耐食性改善元素であるCrは焼入れ・焼戻しで生成するクロム炭化物として消費され、必要とする耐食性が得られない場合がある。クロム炭化物生成による耐食性の低下は、C含有量を0.20重量%以下に規制することによって抑制される。0.20重量%以下のC含有量は、Fe−Cr−Ni−Cu合金の加工性を確保する上でも有効である。
【0012】
Niは、焼入れ・焼戻し等で生成するマルテンサイト量を調整する上で有効な合金成分であり、靭性を改善する作用も呈する。このような作用・効果は0.1質量%以上のNiで顕著になり、Niの増量に応じて焼入れマルテンサイトの靭性も向上する。しかし、5.0質量%を超える過剰量のNiが含まれると、熱処理法によってはオーステナイトが生成・残存し、強度が低下する。過剰量のNi添加は、材料コストの上昇にもつながるので好ましくない。Cuは、安定した摩擦特性の発現に有効な第二相を析出させるために必要な合金成分である。第二相の安定析出には、少なくとも2.91質量%以上のCu添加が必要とされる。しかし、過剰量のCu添加は高温脆化を引き起こすので、Cu含有量の上限を7.5質量%に設定した。
【0013】
以上の基本成分系をもつFe−Cr−Ni−Cu合金に、高耐食性に有効な3質量%以下のMo,高温靭性の改善に有効な0.01質量%以下のB,耐高温酸化性に有効な3質量%以下のAlを必要に応じて添加することもできる。また、製造上から混入する不純物に関しては、Pを0.05質量%以下,Sを0.01質量%以下,Siを3質量%以下,Mnを3質量%以下に規制することが好ましいが、これら成分は切削性,高温強度を得るために個々の上限を超えて添加することも可能である。
【0014】
【実施例】
表1の組成をもつFe−Cr−Ni−Cu合金を常法に従って溶製し、インゴットに鋳造した。各インゴットを熱間鍛造した後、熱間圧延でホットバーに仕上げ、更に熱処理を経てディスクブレーキ用のロータ材に切削加工した。作製されたロータ材から試験片を切り出し、成分分析すると共に、Cuを主体とする第二相の析出量を測定し、熱処理後の組織を観察した。
第二相の析出量は、試験片をイオンミーリングして作製された薄膜を透過型電子顕微鏡で観察し、析出物がCuを主体とする第二相であることをEDX分析で確認した後、透過型電子顕微鏡の観察写真から析出物の面積を算出し、更に薄膜の厚みを乗じることによって体積割合として求めた。
熱処理後の組織については、試験片の鏡面研磨仕上げした面を化学エッチングし、顕微鏡観察によってフェライト,マルテンサイトを相別判定した。
調査結果を、Fe−Cr−Ni−Cu合金の組成と併せて表1に示す。
【0015】
Figure 0004744011
【0016】
次いで、各ロータ材の摩擦特性,耐食性,機械特性を以下の試験条件で調査した。
〔摩擦試験〕
ピンオンディスク型摩擦磨耗試験機を用い、市販の自動車用ディスクパットを10mm角に切り出してピン側にセットし、表1に掲げたロータ材をディスク側にセットした。試験荷重400Nを加え、摩擦面における摩擦速度を2m/秒に設定し、ディスクパットにロータ材を長時間摺動させた。この試験条件下で、マルテンサイト系ステンレス鋼SUS420J2にみられたような摩擦係数が急激に変化するまでの時間を求めた。そして、マルテンサイト系ステンレス鋼SUS420J2の変化点(2000秒)までの時間と比較し、摩擦係数の変化点がマルテンサイト系ステンレス鋼SUS420J2より長いものを○,短いものを×として摩擦特性を評価した。
【0017】
〔腐食試験〕
雨水による腐食を想定し、試験片に水道水を72時間噴霧した後、試験片表面を観察し、錆が検出されなかったものを○,錆がわずかに検出されたものを△,多量の錆が発生したものを×として耐食性を評価した。
〔機械特性〕
各ロータ材のビッカース硬さを測定すると共に、シャルピー衝撃試験によって衝撃値を測定した。ビッカース硬さがねずみ鋳鉄の硬さ170HVを超えるものを○,170HV以下を×として強度を評価した。また、衝撃値がねずみ鋳鉄の衝撃値5J/cm2を超えるものを○,5J/cm2以下を×として靭性を評価した。
【0018】
調査結果を表2に示す。
Cu無添加のマルテンサイト系ステンレス鋼SUS420J2やCu添加量が不足する比較例No.2では、安定した摩擦特性が得られず、摩擦磨耗試験開始後1850秒経過した時点から異常な摩擦係数の変化が検出された。これに対し、Cu:1.49質量%(第二相の析出量:0.52体積%)の本発明例No.1では、摩擦係数の変化が2400秒経過した時点から摩擦係数が変化した。この対比から、Cuを主体とする第二相の析出により、摩擦係数の変化点が長時間側に改善されていることが確認される。また、多量のCuを添加した本発明例No.4では、3600秒の摩擦磨耗試験中に摩擦係数の異常な変化が検出されなかった。以上の結果から、Cuを1.0〜7.5質量%添加したFe−Cr−Ni−Cu合金は、マルテンサイト系ステンレス鋼SUS420J2に比較して摩擦係数が安定した値で推移し、マルテンサイト系ステンレス鋼SUS420J2や比較例No.2よりも優れた摩擦特性を呈することが判った。
【0019】
一般のマイルドな雨水環境では、比較例No.1やねずみ鋳鉄にみられるように、Cr含有量が4質量%を下回ると腐食が極端に激しく、防食処理や環境の改善が必要であった。この種の腐食は、本発明例No.1のように6.21質量%のCr含有量になると軽減し、耐食性が向上していた。更にCr含有量が10質量%を超える本発明例No.2〜5は、腐食の発生がなく、十分な耐食性をもっていた。
本発明例No.1〜5のビッカース硬さは、マルテンサイト量が最も少ないNo.3においても260HVであり、ねずみ鋳鉄の硬さ170HVに比較して約1.5倍の強度であった。また、マルテンサイト量100%の本発明例No.4は、ねずみ鋳鉄の約3倍に当る260HVの硬さをもち、板厚で半分以上の軽量化が可能といえる。
本発明例No.1〜5は、鍛造・熱延で作り込み焼入れしたままの状態で20J/cm2以上の高い衝撃値を示した。この衝撃値をねずみ鋳鉄の衝撃値5J/cm2と比較することから明らかなように、本発明例No.1〜5のロータ材は、ねずみ鋳鉄製ロータ材との対比で靭性が格段に優れたロータ材である。
【0020】
Figure 0004744011
【0021】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明のFe−Cr−Ni−Cu合金は、Fe,Cr,Niを主成分とするマトリックスにCuを主体とする第二相を微細分散させることにより熱伝導度を向上させ、第二相自体が自己潤滑作用を呈することと相俟って、相手材に長時間摺擦される条件下でも安定した摩擦係数を維持する。そのため、ディスクブレーキ等の制御差動時に安定した摩擦特性を示し、制動過程や制動操作をねずみ鋳鉄製摺動材と同様に安全且つ円滑に行うことができる。また、鍛造、熱延を施すことで靭性に優れ、Cr添加によって優れた耐食性が付与される。更には、熱処理で生成するマルテンサイト量を調整することにより、必要強度も付与されるため、ねずみ鋳鉄製に比較して摺動部材の軽量化も図られる。このような長所を活用し、自動車や自動二輪車のブレーキ用ロータ材を初めとし、各種産業機器の速度制御装置,制動装置等に組み込まれる軽量で耐食性に優れた摺動部材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 マルテンサイト系ステンレス鋼SUS420J2とねずみ鋳鉄の摩擦係数の経時変化を対比したグラフ
【図2】 Cuを主体とする第二相を析出させたFe−Cr−Ni−Cu合金とねずみ鋳鉄の摩擦係数の経時変化を対比したグラフ
【図3】 焼入れ・焼戻しによって生成したマルテンサイト量がFe−Cr−Ni−Cu合金の硬さに及ぼす影響を表したグラフ

Claims (2)

  1. C:0.20質量%以下,Cr:4〜20質量%,Ni:0.1〜5.0質量%,Cu:2.91〜7.5質量%を含み、残部Feおよび不可避的不純物の組成をもち、マルテンサイトを含むフェライト相のマトリックスにCuを主体とする第二相が微細分散していることを特徴とする摺動部材用Fe−Cr−Ni−Cu合金。
  2. Cuを主体とする第二相の析出量が0.2体積%以上に調整されている請求項1記載の摺動部材用Fe−Cr−Ni−Cu合金。
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