一般に、車輌は走行中に横風の如き様々な外乱を受けるため、車輌の目標走行経路に対する実際の走行経路のずれは様々な外乱によっても発生する。また操舵補助力を制御することによって操舵輪を修正転舵しようとすると、ステアリングホイールも回転駆動されてしまう。そのため車輌を目標走行経路に沿って走行させると共に様々な外乱に起因する車輌の目標走行経路に対する実際の走行経路のずれを是正するよう操舵補助力が制御されると、ステアリングホイールが頻繁に不自然に回転駆動され、乗員は煩わしさを感じ操舵フィーリングが悪化する。
しかるに上述の如き従来の操舵補助力制御式の操舵制御装置に於いては、車輌の目標走行経路に対する実際の走行経路のずれとして車輌の走行に伴い車輌の走行経路が変化することによる比較的大きいずれと様々な外乱等に起因する比較的小さいずれとがあること、及びこれらを区別して操舵補助力を制御する必要があることが考慮されておらず、この点で改善の余地がある。
また操舵輪を修正転舵する転舵駆動手段を有する車輌に於いて、車輌が目標走行経路に沿って走行するよう操舵輪を修正転舵する操舵輪の舵角制御式の操舵制御装置も従来より知られている。この種の操舵制御装置に於いては、操舵輪がステアリングホイールの如き操舵入力手段に対し相対的に転舵され、操舵輪が修正転舵されても操舵入力手段は駆動されないので、乗員が煩わしさを感じることはないが、操舵輪の修正転舵により操舵入力手段の中立位置と操舵輪の車輌直進位置とのずれ(中立位置オフセットという)が大きくなることが避けられない。
本発明は、車輌が目標走行経路に沿って走行するよう操舵補助力又は操舵輪の舵角を制御する従来の操舵制御装置に於ける上述の如き問題に鑑みてなされたものであり、本発明の主要な課題は、車輌の走行に伴い車輌の走行経路が変化することによる走行経路のずれと様々な外乱に起因する走行経路のずれとを区別して操舵補助力及び操舵輪の舵角を制御することにより、操舵入力手段の不自然な位置変動を低減して操舵フィーリングを向上させると共に中立位置オフセットが過大になることを防止しつつ、車輌を目標走行経路に沿って良好に走行させることである。
上述の主要な課題は、本発明によれば、請求項1の構成、即ち操舵補助力を発生する操舵補助力発生手段と、操舵輪を修正転舵する転舵駆動手段とを有する車輌の操舵制御装置であって、目標走行経路の曲率及び車速に基づいて車輌を目標走行経路に沿って走行させるための走行経路制御目標操舵補助力を演算し、少なくとも前記走行経路制御目標操舵補助力に基づいて操舵補助力を制御する操舵補助力制御手段と、前記目標走行経路に対する車輌の実際の走行経路の偏差を低減するための操舵輪の目標修正転舵量を演算し、前記目標修正転舵量に基づいて前記転舵駆動手段による操舵輪の修正転舵量を制御する転舵制御手段とを有することを特徴とする車輌の操舵制御装置によって達成される。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1の構成に於いて、前記目標走行経路に対する車輌の実際の走行経路の偏差は前記目標走行経路に対する車輌の横方向偏差若しくは前記目標走行経路に対する車輌のヨー方向偏差であり、前記転舵制御手段は前記横方向偏差を低減するための操舵輪の第一の目標修正転舵量若しくは前記ヨー方向偏差を低減するための操舵輪の第二の目標修正転舵量を演算し、前記第一若しくは第二の目標修正転舵量に基づいて操舵輪の目標修正転舵量を演算するよう構成される(請求項2の構成)。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1又は2の構成に於いて、前記操舵補助力制御手段は前記目標走行経路の曲率を推定する手段と、前記曲率及び車速に基づいて前記走行経路制御目標操舵補助力を演算する手段と、操舵輪の修正転舵量の制御に起因して車輌の乗員が感じる操舵力の変動を低減するための操舵力変動低減目標操舵補助力を演算する手段とを有し、少なくとも前記走行経路制御目標操舵補助力及び前記操舵力変動低減目標操舵補助力に基づいて操舵補助力を制御するよう構成される(請求項3の構成)。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至3の構成に於いて、車輌の乗員により操作され操舵補助力の制御による走行経路の制御を行うか否かを選択する選択手段を有し、前記選択手段の操作により操舵補助力の制御による走行経路の制御を行わないことが選択されているときには、前記操舵補助力制御手段は前記走行経路制御目標操舵補助力に基づく操舵補助力の制御を行わないよう構成される(請求項4の構成)。
上記請求項1の構成によれば、目標走行経路の曲率及び車速に基づいて車輌を目標走行経路に沿って走行させるための走行経路制御目標操舵補助力が演算され、少なくとも走行経路制御目標操舵補助力に基づいて操舵補助力が制御されると共に、目標走行経路に対する車輌の実際の走行経路の偏差を低減するための操舵輪の目標修正転舵量が演算され、目標修正転舵量に基づいて転舵駆動手段による操舵輪の修正転舵量が制御されるので、走行経路制御目標操舵補助力に基づいて操舵補助力を制御して操舵輪の舵角をフィードフォワード的に制御すると共に、目標走行経路に対する車輌の実際の走行経路の偏差に基づいて操舵輪の修正転舵量を制御して制御操舵輪の舵角をフィードバック的に制御することができる。
従って走行経路制御目標操舵補助力及び目標走行経路に対する車輌の実際の走行経路の偏差の両者に基づいて操舵補助力が制御される場合に比して、操舵補助力の変動に起因する操舵入力手段の不自然な位置変動を低減して乗員が煩わしさを感じる虞れを低減し操舵フィーリングを向上させることができ、また走行経路制御目標操舵補助力及び目標走行経路に対する車輌の実際の走行経路の偏差の両者に基づいて操舵輪の修正転舵量が制御される場合に比して、中立位置オフセットを低減することができ、これにより従来に比して操舵入力手段の不自然な位置変動及び中立位置オフセットを低減しつつ車輌を目標走行経路に沿って良好に走行させることができる。
また上記請求項2の構成によれば、目標走行経路に対する車輌の実際の走行経路の偏差は目標走行経路に対する車輌の横方向偏差若しくは目標走行経路に対する車輌のヨー方向偏差であり、横方向偏差を低減するための操舵輪の第一の目標修正転舵量若しくはヨー方向偏差を低減するための操舵輪の第二の目標修正転舵量が演算され、第一若しくは第二の目標修正転舵量に基づいて操舵輪の目標修正転舵量が演算されるので、目標走行経路に対する車輌の横方向偏差若しくは目標走行経路に対する車輌のヨー方向偏差が確実に低減されるよう操舵輪を修正転舵することができる。
また上記請求項3の構成によれば、目標走行経路の曲率が推定され、曲率及び車速に基づいて走行経路制御目標操舵補助力が演算され、操舵輪の修正転舵量の制御に起因して車輌の乗員が感じる操舵力の変動を低減するための操舵力変動低減目標操舵補助力が演算され、少なくとも走行経路制御目標操舵補助力及び操舵力変動低減目標操舵補助力に基づいて操舵補助力が制御されるので、車輌の乗員が感じる操舵力の変動を低減しつつ車輌が目標走行経路の曲率に従って走行するよう操舵補助力を制御することができる。
また上記請求項4の構成によれば、車輌の乗員により操作され操舵補助力の制御による走行経路の制御を行うか否かを選択する選択手段が設けられ、選択手段の操作により操舵補助力の制御による走行経路の制御を行わないことが選択されているときには、操舵補助力制御手段は走行経路制御目標操舵補助力に基づく操舵補助力の制御を行わないので、車輌の乗員は自らの意思に基づいて車輌を運転する感覚を確保することができ、また操舵輪の修正転舵量の制御及び操舵力変動低減目標操舵補助力に基づく操舵補助力の制御は行われるので、車輌に対する外乱等に起因する走行経路のずれを効果的に低減して車輌をできるだけ目標走行経路に沿って走行させることができると共に、操舵輪の修正転舵に起因する操舵入力手段の不自然な位置変動を確実に低減し操舵フィーリングを効果的に向上させることができる。
〔課題解決手段の好ましい態様〕
本発明の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1又は2の構成に於いて、操舵補助力制御手段は操舵輪の修正転舵に起因する操舵力の変動を低減するよう操舵補助力を制御するよう構成される(好ましい態様1)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至4又は上記好ましい態様1の構成に於いて、転舵駆動手段は操舵入力手段に対し相対的に操舵輪を転舵することにより操舵輪を修正転舵するよう構成される(好ましい態様2)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至4又は上記好ましい態様1又は2の構成に於いて、操舵補助力制御手段は車輌前方の走行路を認識し、認識結果に基づき目標走行路を判定するよう構成される(好ましい態様3)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項2又は上記好ましい態様1乃至3の構成に於いて、転舵制御手段は第一の目標修正転舵量と第二の目標修正転舵量との和を操舵輪の目標修正転舵量として演算するよう構成される(好ましい態様4)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項3又は上記好ましい態様1乃至4の構成に於いて、操舵力変動低減目標操舵補助力は乗員の操舵負担を軽減するための操舵負担軽減操舵補助力と、操舵輪の修正転舵に起因する操舵力の変動を低減するための修正転舵起因操舵力変動低減操舵補助力とを含むよう構成される(好ましい態様5)。
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を好ましい実施例について詳細に説明する。
図1は自動操舵装置及び電動式パワーステアリング装置を備えた車輌に適用された本発明による車輌の操舵制御装置を示す概略構成図である。
図1に於いて、10FL及び10FRはそれぞれ車輌12の左右の前輪を示し、10RL及び10RRはそれぞれ車輌の左右の後輪を示している。操舵輪である左右の前輪10FL及び10FRは運転者によるステアリングホイール14の操作に応答して駆動されるラック・アンド・ピニオン型の電動式パワーステアリング装置16によりラックバー18及びタイロッド20L及び20Rを介して転舵される。
図示の実施例に於いては、電動式パワーステアリング装置16はラック同軸型の電動式パワーステアリング装置であり、電動機22と、電動機22の回転トルクをラックバー18の往復動方向の力に変換する例えばボールねじ式の変換機構24とを有し、ハウジング26に対し相対的にラックバー18を駆動する補助操舵力を発生することにより、運転者の操舵負担を軽減する補助操舵力発生装置として機能する。尚補助操舵力発生装置は当技術分野に於いて公知の任意の構成のものであってよい。
ステアリングホイール14は第一のステアリングシャフトとしてのアッパステアリングシャフト28A、転舵角可変装置30、第二のステアリングシャフトとしてのロアステアリングシャフト28B、ユニバーサルジョイント32を介して電動式パワーステアリング装置16のピニオンシャフト34に駆動接続されている。図示の実施例に於いては、転舵角可変装置30はハウジング36Aの側にてアッパステアリングシャフト28Aの下端に連結され、回転子36Bの側にてロアステアリングシャフト28Bの上端に連結された補助転舵駆動用の電動機36を含んでいる。
かくして転舵角可変装置30はアッパステアリングシャフト28Aに対し相対的にロアステアリングシャフト28Bを回転駆動することにより、操舵輪である左右の前輪10FL及び10FRをステアリングホイール14に対し相対的に補助転舵駆動する自動操舵装置として機能する。
特に転舵角可変装置30は、通常時にはハウジング36A及び回転子36Bの相対回転を阻止する保持電流が電動機36に通電されることにより、アッパステアリングシャフト28Aに対するロアステアリングシャフト28Bの相対回転角度(単に相対回転角度という)を0に維持するが、自動操舵時には電動機36によりアッパステアリングシャフト28Aに対し相対的にロアステアリングシャフト28Bを積極的に回転させ、これにより必要に応じて左右の前輪10FL及び10FRを自動操舵する。
図示の実施例に於いては、アッパステアリングシャフト28Aには該アッパステアリングシャフトの回転角度を操舵角θsとして検出する操舵角センサ40及び操舵トルクTsを検出するトルクセンサ42が設けられており、ロアステアリングシャフト28Bには該ロアステアリングシャフトの回転角度を左右前輪の実操舵角θaとして検出する操舵角センサ44が設けられており、これらのセンサの出力は操舵制御装置46へ供給される。操舵制御装置46には車速センサ48により検出された車速Vを示す信号、CCDカメラ50により撮像された車輌前方の画像情報を示す信号、車輌の乗員により操作される選択スイッチ52より制御モード(電動式パワーステアリング装置16による運転支援ありモード又は運転支援なしモード)を示す信号も入力される。尚操舵角センサ44は転舵角可変装置30の転舵駆動角度、即ちアッパステアリングシャフト28Aに対するロアステアリングシャフト28Bの相対回転角度を検出するセンサに置き換えられてもよい。
尚操舵角θaを示す信号及び車速Vを示す信号は操舵制御装置46より転舵角可変装置30を制御する転舵角可変制御装置54にも入力され、操舵トルクTsを示す信号及び車速Vを示す信号は操舵制御装置46より電動式パワーステアリング装置16を制御する電動式パワーステアリング(EPS)制御装置56にも入力される。また操舵角センサ44により検出される操舵角θaを示す信号は左右の前輪10FL及び10FRの直進位置をステアリングホイール14の中立位置に合せるために使用される。
後述の如く、操舵制御装置46はCCDカメラ50により撮像された車輌前方の画像情報に基づき、図3に示されている如く車輌12が走行する走行路100の湾曲度合として曲率半径Rを演算し、走行路100の車線102の横方向中心線(目標走行経路)104に対する車輌12の道路幅方向のずれ量として横方向偏差Yを演算し、走行路100の車線102の横方向中心線104に対する車輌12のヨー角偏差φを演算する。
そして操舵制御装置46は、選択スイッチ52が運転支援ありモードに設定されているときには、曲率半径R及び車速Vに基づき車輌を曲率半径Rにて旋回させることにより車輌を目標走行経路104に沿って走行させるための左右前輪10FL及び10FRの目標舵角δptを演算し、左右前輪10FL及び10FRの目標舵角δptを達成するための目標転舵トルクTcを演算し、目標転舵トルクTcを示す信号を電動式パワーステアリング制御装置56へ出力する。
電動式パワーステアリング制御装置56は、選択スイッチ52が運転支援なしモードに設定されているときには、操舵トルクTs及び車速Vに応じて運転者の操舵負荷を軽減するための補助操舵トルクTabを演算し、補助操舵トルクTabを目標補助操舵トルクTaとし、目標補助操舵トルクTaに基づき電動式パワーステアリング装置16の電動機22を制御することにより、運転者の操舵負担を軽減する操舵アシストを行う。
また電動式パワーステアリング制御装置54は、選択スイッチ52が運転支援ありモードに設定され、操舵制御装置46より目標転舵トルクTcを示す信号が入力されているときには、補助操舵トルクTabと操舵制御装置46より入力される目標転舵トルクTcとの和を目標補助操舵トルクTaとして演算し、目標補助操舵トルクTaに基づき電動式パワーステアリング装置16の電動機22を制御することにより、左右前輪10FL及び10FRの舵角が目標舵角δptになるよう左右前輪を修正転舵する。
また操舵制御装置46は、横方向偏差Yに基づき横方向偏差Yを低減して車輌12を車線102の横方向中心線104に沿って走行させるための左右前輪の第一の目標修正転舵角Δδt1を演算し、ヨー角偏差φに基づきヨー角偏差φを低減して車輌12を車線102の横方向中心線104に沿って走行させるための左右前輪の第二の目標修正転舵角Δδt2を演算し、第一の目標修正転舵角Δδt1と第二の目標修正転舵角Δδt2との和を左右前輪10FL及び10FRの目標修正転舵角Δδtsとして演算し、目標修正転舵角Δδtsを示す信号を転舵角可変制御装置52へ出力する。
転舵角可変制御装置54は運転者による通常操舵時には転舵角可変装置30の相対回転角度を0に維持し、操舵制御装置46より目標修正転舵角Δδtsを示す信号が入力されたときには、目標修正転舵角Δδtsに基づいて転舵角可変装置30の電動機36を制御し、アッパステアリングシャフト28Aに対し相対的にロアステアリングシャフト28Bを回転させることにより左右の前輪10FL及び10FRを自動的に目標修正転舵角Δδts修正転舵し、これにより走行路に対する車輌の横方向位置のずれや走行路に対する車輌のヨー角のずれを低減する。
尚図1には詳細に示されていないが、操舵制御装置46、転舵角可変制御装置54、電動パワーステアリング制御装置56はそれぞれCPUとROMとRAMと入出力ポート装置とを有し、これらが双方向性のコモンバスにより互いに接続されたマイクロコンピュータ及び駆動回路よりなっていてよい。また操舵角センサ40及び44、トルクセンサ42、ヨーレートセンサ50はそれぞれ車輌の左旋回方向への操舵の場合を正として操舵角θs及びθa、操舵トルクTs、ヨーレートγを検出する。また曲率半径Rは車輌の左旋回方向を正として演算され、横方向偏差Yは目標走行経路に対し車輌が右側にある場合を正として演算され、ヨー角偏差φは車輌の移動方向が目標走行経路に対し右側にある場合を正として演算される。更に目標舵角δpt、第一の目標修正転舵角Δδt1、第二の目標修正転舵角Δδt2、目標修正転舵角Δδtsはそれぞれ車輌の左旋回方向への転舵の場合を正として演算される。
次に図2に示されたフローチャートを参照して実施例に於ける操舵制御ルーチンについて説明する。尚図2に示されたフローチャートによる制御は図には示されていないイグニッションスイッチの閉成により開始され、所定の時間毎に繰返し実行される。
まずステップ10に於いては操舵角θsを示す信号等の読み込みが行われ、ステップ20に於いてはCCDカメラ50により撮像された車輌前方の画像に対し当技術分野に於いて公知の画像解析処理が行われることにより、図3に示されている如く車輌12が走行する走行路100の白線106を検出できているか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ50へ進み、否定判別が行われたときにはステップ30へ進む。
ステップ30に於いては中立位置オフセット、即ちステアリングホイール14の中立位置と左右の前輪10FL及び10FRの車輌直進位置との間のずれがあるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ10へ戻り、肯定判別が行われたときにはステップ40に於いて中立位置のずれΔθを0にする値を転舵角可変装置30の目標相対回転角度θrt(=−Δθ)として転舵角可変装置30が制御され、ロアステアリングシャフト28Bがアッパステアリングシャフト28Aに対し相対的に所定の速度にて回転駆動されることにより中立位置のずれΔθを0にするための戻し制御が実行され、しかる後ステップ110へ戻る。
ステップ50に於いては上記画像解析処理により得られた走行路100の情報に基づき、図3に示されている如く現在の地点108より基準時間Te後に車輌12が到達する地点110までの走行路100の形状が推定されると共に、推定された走行路100の形状に基づき走行路100の地点108と地点110との間の走行路100の車線102の横方向中心線104の湾曲度合として曲率半径Rが演算される。
ステップ60に於いては走行路100の車線102の横方向中心線104に対する車輌12の走行路幅方向のずれ量として横方向偏差Yが演算され、ステップ70に於いては例えば車輌のヨーレートの積分値等に基づき走行路100の車線102の横方向中心線104に対する車輌12のヨー角偏差φが演算される。
ステップ80に於いてはK1を正の係数として横方向偏差Y及び車速Vに基づき下記の式1に従って横方向偏差Yを低減して車輌12を車線102の横方向中心線104に沿って走行させるための左右前輪の第一の目標修正転舵角Δδt1が演算される。
Δδt1=K1・Y・V ……(1)
ステップ90に於いてはK2を正の係数としてヨー角偏差φ及び車速Vに基づき下記の式2に従ってヨー角偏差φを低減して車輌12を車線102の横方向中心線104に沿って走行させるための左右前輪の第二の目標修正転舵角Δδt2が演算される。
Δδt2=K2・φ・V ……(2)
ステップ100に於いては第一の目標修正転舵角Δδt1と第二の目標修正転舵角Δδt2との和として左右前輪10FL及び10FRの目標修正転舵角Δδtが演算され、ステップ110に於いては目標修正転舵角Δδtと左右前輪の現在の舵角δaとの和の絶対値が左右前輪の転舵可能な範囲により決定される基準値を越えるときには和の絶対値が基準値を越えないよう目標修正転舵角Δδtの大きさが必要に応じて制限され、制限後の目標修正転舵角Δδtを示す信号が転舵角可変制御装置54へ出力される。
ステップ120に於いては選択スイッチ52の制御モードが電動式パワーステアリング装置16による運転支援ありモードであるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ10へ戻り、肯定判別が行われたときにはステップ130へ進む。
ステップ130に於いてはKsを正の係数とし、Khをスタビリティファクタとし、Lを車輌のホイールベースとして、曲率半径R及び車速Vに基づき下記の式3に従って車輌を曲率半径Rにて旋回させることにより車輌を目標走行経路104に沿って走行させるための左右前輪10FL及び10FRの目標舵角δptが演算される。
δpt=Ks(1+Kh・V2)L/R ……(3)
ステップ140に於いては電動式パワーステアリング装置16の補助操舵力により左右前輪10FL及び10FRを転舵しその舵角を目標舵角δptにするための目標転舵トルクTcが図には示されていないマップより演算されると共に、目標転舵トルクTcを示す信号が電動式パワーステアリング制御装置56へ出力され、しかる後ステップ10へ戻る。
かくして図示の実施例によれば、走行路100の白線106を検出できており、ステップ20に於いて肯定判別が行われたときには、ステップ50に於いて現在の地点108より基準時間Te後に車輌12が到達する地点110までの走行路100の曲率半径Rが演算され、ステップ60に於いて走行路100の車線102の横方向中心線104に対する車輌12の走行路幅方向のずれ量として横方向偏差Yが演算され、ステップ70に於いて走行路100の車線102の横方向中心線104に対する車輌12のヨー角偏差φが演算される。
そしてステップ80に於いて横方向偏差Yを低減して車輌12を車線102の横方向中心線104に沿って走行させるための左右前輪の第一の目標修正転舵角Δδt1が演算され、ステップ90に於いてヨー角偏差φを低減して車輌12を車線102の横方向中心線104に沿って走行させるための左右前輪の第二の目標修正転舵角Δδt2が演算され、ステップ100に於いて第一の目標修正転舵角Δδt1と第二の目標修正転舵角Δδt2との和として目標修正転舵角Δδtが演算され、ステップ110に於いて目標修正転舵角Δδtが制限補正されると共に、目標修正転舵角Δδtを示す信号が転舵角可変制御装置54へ出力される。
従って選択スイッチ52が運転支援ありモードに設定されているか否かに関係なく、左右前輪の修正転舵により車輌に対する外乱等に起因する横方向偏差Y及びヨー角偏差φを低減して車輌12を車線102の横方向中心線104に沿って走行させることができ、左右前輪の修正転舵は電動式パワーステアリング装置16の補助操舵トルクにより達成されるのではなく、転舵角可変装置30によるアッパステアリングシャフト28Aに対するロアステアリングシャフト28Bの相対回転により達成されるので、ステアリングホイール14が頻繁に不自然に回転すること及びこれに起因して車輌の乗員が煩わしさを感じる虞れを確実に低減することができる。
また転舵角可変装置30による左右前輪の修正転舵により操舵トルクが変動するが、選択スイッチ52が運転支援ありモードに設定されているか否かに関係なく、運転者の操舵負荷を軽減するための補助操舵トルクTabは操舵トルクTs及び車速Vに応じて演算され、電動式パワーステアリング装置16は補助操舵トルクTabを含む目標補助操舵トルクTaに基づいて制御されるので、左右前輪の修正転舵に起因する操舵トルクの変動が確実に低減され、従って左右前輪の修正転舵に起因する操舵トルクの変動により運転者が異和感を感じる虞れを確実に低減することができる。
特に選択スイッチ52が運転支援ありモードに設定され、操舵制御装置46より目標転舵トルクTcを示す信号が入力されているときには、ステップ120に於いて肯定判別が行われ、ステップ130に於いて車輌を曲率半径Rにて旋回させることにより車輌を目標走行経路104に沿って走行させるための左右前輪の目標舵角δptが演算され、ステップ140に於いて左右前輪10FL及び10FRの舵角を目標舵角δptするための目標転舵トルクTcが演算されると共に、目標転舵トルクTcを示す信号が電動式パワーステアリング制御装置56へ出力される。
従って選択スイッチ52が運転支援ありモードに設定されているときには、電動式パワーステアリング制御装置56により運転者の操舵負荷を軽減するための補助操舵トルクTabと操舵制御装置46より入力される目標転舵トルクTcとの和が目標補助操舵トルクTaとして演算され、目標補助操舵トルクTaに基づき電動式パワーステアリング装置16の電動機22が制御されることにより、左右前輪10FL及び10FRの舵角が目標舵角δptになるよう左右前輪が転舵されるので、車輌の走行に伴い車輌の走行経路が変化しても、車輌を走行経路により決定される目標走行経路に沿って走行させることができる。
また選択スイッチ52が運転支援ありモードに設定されているときには、車輌を曲率半径Rにて旋回させるための電動式パワーステアリング装置16による補助操舵力による左右前輪の舵角の制御と、横方向偏差Y及びヨー角偏差φを低減して車輌を目標走行経路に沿って走行させるための転舵角可変装置30による修正転舵による左右前輪の舵角の制御とが行われるので、車輌を曲率半径Rにて旋回させるための左右前輪の舵角の制御及び横方向偏差Y及びヨー角偏差φを低減して車輌を目標走行経路に沿って走行させるための左右前輪の舵角の制御の両者が電動式パワーステアリング装置16による補助操舵力の制御により達成される場合に比して、補助操舵力の増減に起因してステアリングホイール14が頻繁に不自然に回転すること及びこれに起因して車輌の乗員が煩わしさを感じる虞れを一層確実に低減することができる。
また車輌を曲率半径Rにて旋回させるための左右前輪の舵角の制御及び横方向偏差Y及びヨー角偏差φを低減して車輌を目標走行経路に沿って走行させるための左右前輪の舵角の制御の両者が転舵角可変装置30による修正転舵の制御により達成される場合に比して、転舵角可変装置30による修正転舵量を低減して中立位置オフセットを確実に低減することができる。
また図示の実施例によれば、車輌の目標走行経路に対する実際の走行経路のずれを是正するための目標修正転舵角Δδtsは、横方向偏差Yを低減するための第一の目標修正転舵角Δδt1とヨー角偏差φを低減するための第二の目標修正転舵角Δδt2との和として演算されるので、目標修正転舵角Δδtsが目標修正転舵角Δδts又はΔδt2である場合に比して、車輌に対する様々な外乱等に起因する車輌の目標走行経路に対する実際の走行経路のずれを確実に且つ効果的に是正することができる。
また図示の実施例によれば、電動式パワーステアリング装置16による運転支援ありモード又は運転支援なしモードを選択するための選択スイッチ52が設けられているので、運転者は電動式パワーステアリング装置16による補助操舵力の制御により車輌を曲率半径Rにて旋回させるための左右前輪の舵角の制御を行うか否かを選択することができる。
また選択スイッチ52が運転支援なしモードに設定されると、電動式パワーステアリング装置16による補助操舵力の制御によって車輌を曲率半径Rにて旋回させるための左右前輪の舵角の制御は行われないので、運転者は自らの意思に基づいて車輌を運転する感覚を確保することができ、また転舵角可変装置30による左右前輪の修正転舵量の制御及び補助操舵トルクTabに基づく操舵トルクの制御は行われるので、車輌に対する外乱等に起因する走行経路のずれを効果的に低減して車輌をできるだけ目標走行経路に沿って走行させることができると共に、左右前輪の修正転舵に起因するステアリングホイール14の不自然な回転変動を確実に低減し操舵フィーリングを効果的に向上させることができる。
以上に於いては本発明を特定の実施例について詳細に説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施例が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
例えば上述の実施例に於いては、車輌の目標走行経路に対する実際の走行経路のずれを是正するための目標修正転舵角Δδtsは、横方向偏差Yを低減するための第一の目標修正転舵角Δδt1とヨー角偏差φを低減するための第二の目標修正転舵角Δδt2との和として演算されるようになっているが、車輌を曲率半径Rにて旋回させるための左右前輪の目標舵角δptと第一の目標修正転舵角Δδt1との和が電動式パワーステアリング装置16による左右前輪の舵角制御の目標転舵角Δδtsに設定され、第二の目標修正転舵角Δδt2のみが転舵角可変装置30による左右前輪の舵角制御の目標修正転舵角に設定されるよう修正されてもよく、また車輌を曲率半径Rにて旋回させるための左右前輪の目標舵角δptと第二の目標修正転舵角Δδt2との和が電動式パワーステアリング装置16による左右前輪の舵角制御の目標舵角に設定され、第一の目標修正転舵角Δδt1のみが転舵角可変装置30による左右前輪の舵角制御の目標修正転転舵角に設定されるよう修正されてもよい。
また上述の実施例に於いては、電動式パワーステアリング装置16による運転支援ありモード又は運転支援なしモードを選択するための選択スイッチ52が設けられているが、選択スイッチ52は省略されてもよく、その場合には図2に示されたフローチャートのステップ120は省略される。
また上述の実施例に於いては、車輌12が走行する走行路100の曲率半径R、走行路100の車線102の横方向中心線104に対する車輌12の道路幅方向のずれ量としての横偏差Y、走行路100の車線102の横方向中心線104に対する車輌12のヨー角φはCCDカメラ50により撮像された車輌前方の画像に対し画像解析処理が行われることにより得られる情報に基づいて演算されるようになっているが、これらの情報は走行路に設置された無線式の道路情報提供装置やナビゲーション装置より供給される情報であってもよい。
また上述の実施例に於いては、転舵角可変制御装置52は目標転舵角Δδtsが0であるときには転舵角可変装置30の相対回転角度を0に維持するようになっているが、転舵角可変装置30は目標転舵角Δδtsが0であるときにはアッパステアリングシャフト28Aの回転角度に対するロアステアリングシャフト28Bの回転角度の比が例えば車速Vが高いほど小さくなるよう、車輌の走行状況に応じてステアリングギヤ比可変装置として使用されてもよい。
更に上述の実施例に於いては、転舵角可変装置30は転舵角可変制御装置54により制御され、電動式パワーステアリング装置16は電動パワーステアリング制御装置56により制御され、転舵角可変制御装置54及び電動パワーステアリング制御装置56は操舵制御装置46により制御されるようになっているが、これらの少なくとも二つの制御装置が一つの制御装置に統合されてもよい。