以下、本発明の可変容量コンデンサについて図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1〜図7は、それぞれ本発明の可変容量コンデンサの実施の形態の例を示すものであり、図1は、本発明の可変容量コンデンサの実施の形態の一例における、電圧値が0Vで容量値が最大である非対称な容量−電圧曲線(C−V曲線)を有する場合の例を示す線図である。また、図2は、本発明の可変容量コンデンサの実施の形態の他の例における、容量値が−側の直流バイアス電圧値で最大となり、かつその直流バイアス電圧値における容量軸と平行な直線に対して非対称な容量−電圧曲線(C−V曲線)を有する場合の例を説明する線図である。また、図3は、本発明の可変容量コンデンサの実施の形態のさらに他の例における、容量値が直流バイアス電圧値−Vx/2で最大となり、かつその直流バイアス電圧値−Vx/2における容量軸と平行な直線に対して非対称な容量−電圧曲線(C−V曲線)を有する場合の例を説明する線図である。これら図1〜図3において、横軸は直流バイアス電圧の電圧値Vを、縦軸は容量値Cを表わし、特性曲線はC−V曲線を示している。
そして、図4は、5個の可変容量素子が直列に接続されている可変容量コンデンサの等価回路図である。また、図5〜図7は、5つの可変容量素子を有する可変容量コンデンサの例を示すものであり、図5は透視状態の平面図、図6は作製途中の状態を示す平面図、図7は図5のA−A’線断面図である。
図1に示す例の容量−電圧曲線において、C0Vは直流バイアス電圧が0Vのときの容量値であり、C+V1は直流バイアス電圧が+V1のときの容量値であり、C−V1は直流バイアス電圧が−V1のときの容量値である。ここで、+V1と−V1とは、大きさが等しく極性が逆である。この例の本発明の可変容量コンデンサによれば、C−V曲線が容量軸と重なる直線に対して非対称であることから、直流バイアス電圧をOFF(0V)とするのと、同じ大きさの電圧値で極性を例えばスイッチ等で切り替えて+Vまたは−Vとするのとだけで、C0VとC+V1とC−V1との3つの容量値を得ることができる。すなわち、本発明の可変容量コンデンサによれば、容量を可変とするために印加電圧を変化させるための積分回路等の電圧可変回路や、印加電圧の制御等を簡略化できるため、設計・調整等の手間も簡略化でき制御も簡単になり、印加電圧の制御が容易となる。
次に、図2に示す例の容量−電圧曲線において、C0Vは直流バイアス電圧が0Vの場合の容量値であり、CV1は直流バイアス電圧がV1の場合の容量値であり、CV2は直流バイアス電圧がV2の場合の容量値である。また、破線の特性曲線は図1に示す例と同じくC−V曲線が容量軸と重なる直線に対して非対称である場合を示しており、実線の特性曲線はC−V曲線が電圧値の−側で容量軸と平行な直線に対して非対称であるこの例のものを示している。図2に示すように、容量値が0Vで最大となるものに比べて容量値が−側の電圧値で最大となる場合には、直流バイアス電圧がV1のときの容量値CV1をより低い電圧値のV1’において得ることができ、直流バイアス電圧がV2のときの容量値CV2もより低い電圧値のV2’において得ることができる。すなわち、この例によれば、図1に示す例と同様に直流バイアス電圧の電圧値をスイッチ等で切り替えるだけでそれに応じた異なる容量値を得ることができるものであるとともに、同じ容量値の変化をより低い直流バイアス電圧で得ることができるものとなる。すなわち、印加電圧のための電源の電圧が低い場合に印加電圧を増加するための昇圧回路および変化させるための積分回路等の電圧可変回路が不要となり、印加電圧の制御等を簡略化できるため、設計・調整等の手間も簡略化でき制御も簡単になり、印加電圧の制御が容易となる。
また、逆に容量値が+側の電圧値で最大となる場合には、印加電圧のための電源の電圧が高い場合に印加電圧を減少させるための降圧回路や制御回路等を不要とし、あるいは簡略化することもできる。
次に、図3に示す例においては、図2に示した例と同様の容量−電圧曲線において、所定の直流バイアス電圧値、例えば−側の−Vx/2で容量値が最大となる場合にその容量値をC−Vx/2としており、容量−電圧曲線がこの直流バイアス電圧値−Vx/2で容量軸と平行な直線に対して非対称であるので、電圧値が0Vのときの容量値をC0とし、電圧値がVxのときの容量値をCVxとし、それに対して電圧極性を変えた電圧値−Vxのときの容量値をC−Vxとすると、それら4点の電圧値に切り替えて得られる容量値は電圧値が0Vのときも可変容量の容量値として利用してC−Vx,C−Vx/2,C0およびCVxとなり、4点でそれぞれ異なる容量値を得ることができるため、図1に示す例と同様にスイッチ等により電圧値を切り替えることによって、異なる所望の容量値を得ることができる。したがって、この例の本発明の可変容量コンデンサによっても、印加電圧を変化させるための積分回路等の電圧可変回路や、印加電圧の制御等を簡略化できるため、設計・調整等の手間も簡略化でき制御も簡単になり、印加電圧の制御が容易となる。
なお、この例において電圧値として、容量値が最大となる直流バイアス電圧値を−Vx/2として、この値およびVx,0および−Vxを選んだのは、容量値が最大となる直流バイアス電圧値を−Vx/2とおくことにより、容量−電圧曲線がその電圧値における容量軸と平行な直線に対して非対称であることから、以上の4点の電圧値における容量値として異なる容量値を確実かつ容易に得ることができるためであり、このように設定することで、設定のための制御が容易な4点の直流バイアス電圧値に切り替えることによって異なる4値の容量値が確実かつ容易に得ることができるものとなる。
図4に示す等価回路図において、C1,C2,C3,C4,C5は可変容量素子(第1の可変容量素子C1,第2の可変容量素子C2,第3の可変容量素子C3,第4の可変容量素子C4,第5の可変容量素子C5)であり、各々の絶縁抵抗はRc1,Rc2,Rc3,Rc4,Rc5となっている。また、B11,B12は少なくとも抵抗成分を含む第1バイアスライン(図では、抵抗成分R11,R12を含むものを示す。)であり、B21,B22は少なくとも抵抗成分を含む第2バイアスライン(図では、抵抗成分R21,R22を含むものを示す。)である。また、図4では、高周波信号および直流バイアスは共通端子となっており、符号Iは入力端子、符号Oは出力端子を表わす。
そして、第1の可変容量素子C1の入力側端子部と、第2の可変容量素子C2−第3の可変容量素子C3の直列接続点、第4の可変容量素子C4−第5の可変容量素子C5の直列接続点との間に、抵抗成分R11,R12を有する第1バイアスラインB11,B12をそれぞれ設けている。
また、第5の可変容量素子C5の出力側端子部と、第3の可変容量素子C3−第4の可変容量素子C4の直列接続点、第1の可変容量素子C1−第2の可変容量素子C2の直列接続点との間に、抵抗成分R21,R22を有する第2バイアスラインB21,B22をそれぞれ設けている。
このような構成の可変容量コンデンサCtにおいては、可変容量コンデンサCtの入力端子Iと出力端子Oとの間には、高周波信号が、直列接続された可変容量素子C1,C2,C3,C4,C5を介して流れることになる。このとき、第1バイアスラインB11,B12および第2バイアスラインB21,B22の抵抗成分R11,R12およびR21,R22は、可変容量素子C1,C2,C3,C4,C5の高周波信号の周波数領域でのインピーダンスに対して大きなインピーダンス成分となっており、高周波帯のインピーダンスに悪影響を与えない。
また、第1の可変容量素子C1の容量成分を制御するバイアス電圧は、バイアス端子V1からインダクタンスLを介して供給され、第1の可変容量素子C1を介してバイアス端子V2(図ではグランド)に流れる。この第1の可変容量素子C1に印加される直流バイアス電圧に応じて、第1の可変容量素子C1は所定の誘電率となり、その結果、所望の容量成分が得られることになる。第2〜第5の可変容量素子C2,C3,C4,C5についても、これらは第1バイアスラインB11,B12および第2バイアスラインB21,B22を介して直流的に並列接続されているので、同様に直流的に同じ大きさのバイアス電圧が印加され、所定の容量成分を得ることができる。
その結果、第1〜第5の可変容量素子C1〜C5の容量を所望の値に制御するための直流バイアス信号を、安定してそれぞれ別々に第1〜第5の可変容量素子C1〜C5に供給することができ、バイアス信号の印加による第1〜第5の可変容量素子C1〜C5の薄膜誘電体層における誘電率を所望通りに変化させることができ、よって容量成分の制御が容易な可変容量コンデンサCtとなっている。
また、第1〜第5の可変容量素子C1〜C5に入力される高周波信号は、抵抗成分R11,R12,R21,R22が第1〜第5の可変容量素子C1〜C5の高周波信号の周波数領域でのインピーダンスに対して大きなインピーダンス成分となっていることから、第1バイアスラインB11,B12および第2バイアスラインB21,B22を介して漏れることがない。これによっても、バイアス電圧が安定して第1〜第5の可変容量素子C1〜C5に独立に印加されるようになっており、その結果、直流バイアス電圧による各々の可変容量素子C1,C2,C3,C4,C5の容量変化率を最大限に利用することができるものとなっている。
つまり、可変容量コンデンサCtにおいては、N個(Nは2以上の整数)、ここでは5個の可変容量素子C1,C2,C3,C4,C5は、高周波的には直列接続された可変容量素子と見ることができる。
従って、これら直列接続された第1〜第5の可変容量素子C1〜C5に印加される高周波電圧は各々の可変容量素子C1,C2,C3,C4,C5に分圧されるので、個々の可変容量素子C1,C2,C3,C4,C5に印加される高周波電圧は減少することとなる。このことから、高周波信号に対する容量変動は小さく抑えることができ、波形歪みや相互変調歪み等を抑制することができる。
また、第1〜第5の可変容量素子C1〜C5を直列接続したことにより、高周波的には可変容量素子の薄膜誘電体層の層厚を厚くしたのと同じ効果があり、可変容量コンデンサCtの損失抵抗による単位体積当りの発熱量を小さくすることができ、耐電力を向上することができる。
なお、図4に示す可変容量コンデンサCtのように奇数個の可変容量素子を用いるときには、可変容量コンデンサCtの信号端子とバイアス端子とを共通にすることができ、一般のコンデンサと同等に扱うことができるものとなる。
次に、本発明の可変容量コンデンサCtの作製方法の例について説明する。
図5は本発明の可変容量コンデンサCtについて、5つの可変容量素子C1〜C5を有する可変容量コンデンサCtの例を示す透視状態の平面図であり、図6は図5に示す可変容量コンデンサCtの作製途中の状態を示す平面図であり、図7は図5に示す可変容量コンデンサCtのA−A’線断面図である。
図5〜図7において、1は支持基板、2は下部電極層、31,32,33,34は導体ライン、4は薄膜誘電体層、5は上部電極層、61,62,63,64は薄膜抵抗、7は絶縁層、8は引き出し電極層、9は保護層、10は半田拡散防止層である。なお、この半田拡散防止層10と半田端子部111および112とで、それぞれ第1信号端子(入力端子)および第2信号端子(出力端子)を構成している。
支持基板1は、アルミナセラミックス等のセラミック基板や、サファイア等の単結晶基板等である。この支持基板1の上に下部電極層2,薄膜誘電体層4および上部電極層5を順次、支持基板1のほぼ全面に成膜する。これら各層の成膜終了後、上部電極層5,薄膜誘電体層4および下部電極層2を順次、所定の形状にエッチングする。
下部電極層2は、薄膜誘電体層4の形成に高温スパッタリングが必要となるため、その高温に耐えられるように高融点であることが必要である。具体的には、Pt,Pd等の金属材料から成るものである。この下部電極層2も、高温スパッタリングで形成される。さらに、下部電極層2は、高温スパッタリングによる形成後に、薄膜誘電体層4のスパッタリング温度である600〜900℃へ加熱され、薄膜誘電体層4のスパッタリング開始まで一定時間保持することにより、平坦な層となる。
下部電極層2の厚みは、第2信号端子から第5の可変容量素子C5までの抵抗成分や、第1の可変容量素子C1から第2の可変容量素子C2、第3の可変容量素子C3から第4の可変容量素子C4までの抵抗成分および下部電極層2との連続性を考慮した場合には厚い方が望ましいが、支持基板1との密着性を考慮した場合には相対的に薄い方が望ましく、両方を考慮して決定される。具体的には、0.1μm〜10μmである。下部電極層2の厚みが0.1μmよりも薄くなると、下部電極層2自身の抵抗が大きくなるほか、下部電極層2の連続性が確保できなくなる可能性がある。一方、10μmより厚くすると、内部応力が大きくなって、支持基板1との密着性が低下したり、支持基板1の反りを生じたりするおそれがある。
薄膜誘電体層4は、少なくともBa,Sr,Tiを含有するペロブスカイト型酸化物結晶から成る高誘電率の誘電体層であることが好ましい。この薄膜誘電体層4は、下部電極層2の表面(上面)に形成されている。例えば、ペロブスカイト型酸化物結晶が得られる誘電体材料をターゲットとして、スパッタリング法による成膜を所望の厚みになるまで行なう。このとき、基板温度を高く、例えば600℃以上の高温スパッタリングを行なうことにより、スパッタリング後の熱処理を行なうことなく、高誘電率で容量変化率の大きい、低損失の薄膜誘電体層4を得ることができる。
上部電極層5の材料としては、この層の抵抗を下げるため、抵抗率の小さなAuが望ましい。薄膜誘電体層4との密着性向上のためには、Pt等を密着層として用いてもよい。この上部電極層5の厚みは0.1μm〜10μmとなっている。この厚みの下限については、下部電極層2と同様に、上部電極層5自身の抵抗を考慮して設定される。また、厚みの上限については、薄膜誘電体層4との密着性を考慮して設定される。
バイアスラインB11は、導体ライン32,33および薄膜抵抗61から構成されており、第1の可変容量素子C1の入力端部である第1バイアス端子(第1信号端子と共用)から第2の可変容量素子C2と第3の可変容量素子C3との接続点、すなわち、第2の可変容量素子C2の上部電極層5と第3の可変容量素子C3の上部電極層5とを接続する引き出し電極層8との間に設けられている。同様に、バイアスラインB12は、導体ライン32,34および薄膜抵抗62から構成され、第1バイアス端子から第4の可変容量素子C4と第5の可変容量素子C5との接続点との間に設けられている。
バイアスラインB21は、導体ライン31と薄膜抵抗63とから構成されており、第3の可変容量素子C3と第4の可変容量素子C4との接続点、すなわち、第3の可変容量素子C3および第4の可変容量素子C4の共通的な下部電極層2と、第5の可変容量素子C5の出力端部である第2バイアス端子(第2信号端子と共用)との間に設けられている。同様に、バイアスラインB22は、導体ライン31と薄膜抵抗64とから構成され、第1の可変容量素子C1と第2の可変容量素子C2との接続点と、第2バイアス端子との間に設けられている。
この導体ライン31,32,33,34は、上述の下部電極層2,薄膜誘電体層4および上部電極層5を形成した後、新たに成膜することによって形成することができる。その際には、既に形成した下部電極層2,薄膜誘電体層4および上部電極層5を保護するために、リフトオフ法を用いることが望ましい。また、これら導体ライン31〜34は、下部電極層2のパターニングの際に、同時にこれら導体ライン31〜34も形成するようにパターニングを行なうことによっても形成することができる。
この導体ライン31〜34の材料としては、バイアスラインB11,B12,B21,B22の抵抗値のばらつきを抑制するために、低抵抗であるAuが望ましいが、薄膜抵抗61,62,63,64,65,66の抵抗が十分に高いので、Pt等を用いて、下部電極層2と同じ材料および同じ工程で形成してもよい。
次に、第1および第2バイアスラインB11,B12,B21,B22を構成する薄膜抵抗61〜66の材料としては、タンタル(Ta)を含有し、かつその比抵抗が1mΩ・cm以上であるものが望ましい。具体的な材料としては、窒化タンタル(TaN)やTaSiN,Ta−Si−Oを例示することができる。例えば、窒化タンタルの場合であれば、Taをターゲットとして、窒素を加えてスパッタリングを行なうリアクティブスパッタリング法により、所望の組成比および抵抗率の薄膜抵抗61〜64を成膜することができる。
このスパッタリングの条件を適宜選択することにより、膜厚が40nm以上で、比抵抗が1mΩ・cm以上の薄膜抵抗61〜64を形成することができる。さらに、スパッタリングの終了後、レジストを塗布して所定の形状に加工した後、反応性イオンエッチング(RIE)等のエッチングプロセスを行なうことにより、簡便にパターニングすることができる。
可変容量コンデンサCtを周波数1GHzで使用し、第1〜第5の可変容量素子C1〜C5の容量を5pFとした場合には、この周波数の1/10(100MHz)からインピーダンスに悪影響を与えないように薄膜抵抗61〜64を第1〜第5の可変容量素子C1〜C5の100MHzでのインピーダンスの10倍以上の抵抗値に設定するものとすると、必要な第1および第2バイアスラインB11,B12,B21,B22の抵抗値は、約3.2kΩ以上であればよい。可変容量コンデンサCtにおける薄膜抵抗61〜66の比抵抗率は1mΩ・cm以上として、第1および第2バイアスラインB11,B12,B21,B22の抵抗値として10kΩを得る場合であれば、薄膜抵抗61〜64のアスペクト比(長さ/幅)は、膜厚を50nmとしたとき、50以下とできるため、素子形状を大きくすることなく実現可能なアスペクト比を有する薄膜抵抗61〜64となる。
これら薄膜抵抗61〜64を含む第1および第2バイアスラインB11,B12,B21,B22は、支持基板1上に直接形成されている。これにより、第1〜第5の可変容量素子C1〜C5上に形成する際に必要となる、下部電極層2,上部電極層4および引き出し電極層8との絶縁を確保するための絶縁層が不要となり、第1〜第5の可変容量素子C1〜C5を構成する層の数を低減することが可能となる。さらに、高抵抗の薄膜抵抗61〜64を用いることにより、形状を大きくすることなく、可変容量コンデンサCtを作製することができる。
次に、絶縁層7は、この上に形成する引き出し電極層8と下部電極層2との絶縁を確保するために必要である。さらに、この絶縁層7は、第1および第2バイアスラインB11,B12,B21,B22を被覆しており、薄膜抵抗61〜64が酸化されるのを防止できるため、第1および第2バイアスラインB11,B12,B21,B22の抵抗値を経時的に一定とすることができ、これにより信頼性を向上させることができる。絶縁層7の材料は、耐湿性を向上させるために、窒化ケイ素および酸化ケイ素の少なくとも1種類より成るものとするとよい。これらは、被覆性を考慮して、化学気相堆積(CVD)法等により成膜することが望ましい。
また、絶縁層7は、通常のレジストを用いるドライエッチング法等により、所望の形状に加工することができる。そして、絶縁層7には、薄膜抵抗61,62と引き出し電極層8との接続を確保するために導体ライン33,34に到達する貫通孔を設けている。その他でこの絶縁層7から露出させる部位としては、上部電極層4および半田端子部111,112のみとしておくことが、耐湿性向上の観点から好ましい。
次に、引き出し電極層8は、第1の可変容量素子C1の上部電極層5と一方の端子形成部111とを接続するとともに、または上部電極層5同士を連結させて、第2の可変容量素子C2と第3の可変容量素子C3と、第4の可変容量素子C4と第5の可変容量素子C5との各々を直列接続するものである。さらに、可変容量素子C2とC3と、C4とC5との各々にまたがる引き出し電極層8は、絶縁層7の貫通孔を通ってそれぞれ導体ライン33,34と接続している。この引き出し電極層8の材料としては、Au,Cu等の低抵抗な金属を用いることが望ましい。また、引き出し電極層8に対する絶縁層7との密着性を考慮して、Ti,Ni等の密着層を使用してもよい。
次に、半田端子部111,112を露出させて全体を被覆するように、保護層9を形成する。保護層9は、第1の可変容量素子C1を始めとする可変容量コンデンサCtの構成部材を機械的に保護するほか、薬品等による汚染から保護するためのものである。ただし、この保護層9の形成時には、半田端子部111,112を露出するようにする。保護層9の材料としては、耐熱性が高く、段差に対する被覆性が優れたものが良く、具体的には、ポリイミド樹脂やBCB(ベンゾシクロブテン)樹脂等を用いる。これらは、樹脂原料を塗布した後、所定の温度で硬化させることにより形成される。
半田拡散防止層10は、半田端子部111,112形成の際のリフローや実装の際に、半田端子部111,112の半田の下部電極層2への拡散を防止するために形成する。この半田拡散防止層10の材料としては、Niが好適である。また、半田拡散防止層10の表面には、半田濡れ性を向上させるために、半田濡れ性の高いAu,Cu等を0.1μm程度形成する場合もある。
最後に、半田端子部111,112を形成する。これは、可変容量コンデンサCtの外部の配線基板への実装を容易にするために形成する。これら半田端子部111,112は、半田端子部111,112に所定のマスクを用いて半田ペーストを印刷後、リフローを行なうことにより形成するのが一般的である。
以上述べた可変容量コンデンサCtによれば、下部電極層2とその上に形成された薄膜誘電体層4との界面の状態および薄膜誘電体層4の上に形成された上部電極層5との間の界面の状態は微視的には異なるため仕事関数が異なり、直流バイアス電圧を印加した場合には、その極性に依存してリーク電流特性が異なる。さらに、下部電極層2と上部電極層5とが異なる材料により形成した場合には、下部電極層2の薄膜誘電体層4に対する仕事関数と、上部電極層5の薄膜誘電体層4に対する仕事関数とが異なるため、下部電極層2または上部電極層5のどちらから電子を放出してリーク電流が発生しているかによってリーク電流の大きさが異なる。すなわち、直流バイアス電圧の極性によりリーク電流が異なることとなる。
また、以上述べた可変容量コンデンサCtにおいては、下部電極層2と上部電極層5には、常に逆極性の直流バイアス電圧が印加される。つまり、下部電極層2には常に正(負)の直流バイアス電圧が、上部電極層5には常に負(正)の直流バイアス電圧が印加されるため、直流バイアス電圧の極性によりリーク電流特性が異なる。また、各可変容量素子C1〜C5の直流バイアス電圧の極性によるリーク電流特性も異なる。
さらに、可変容量素子のリーク電流特性に対してバイアスラインに流れる電流を小さくすることで、可変容量コンデンサCtに印加された直流バイアス電圧は、バイアスラインと可変容量素子とに分圧される。すなわち、各可変容量素子に印加される電圧は、バイアスラインの抵抗が一定の場合には、可変容量素子のリーク電流特性に依存する。本発明の可変容量コンデンサCtでは、可変容量素子のリーク電流特性は、直流バイアス電圧の極性より異なることから、可変容量コンデンサCtに印加された直流バイアス電圧のうち、可変容量素子に印加される電圧の割合が極性により異なるため、可変容量コンデンサCtの容量−電圧曲線が、容量値が最大となる電圧値における容量軸と平行な直線に対して、非対称となる。
以上述べた可変容量コンデンサCtによれば、第1および第2バイアスラインB11,B12,B21,B22もしくはその一部に、窒化タンタルを含有し、かつ比抵抗が1mΩ・cm以上の薄膜抵抗61〜64を用いることにより、薄膜抵抗61〜64のアスペクト比を低減して可変容量コンデンサCtの小型化を実現している。さらには、第1および第2バイアスラインB11,B12,B21,B22を支持基板1上に直接形成することにより、第1の可変容量素子C1等の各素子を構成する層の数が低減されている。また、各素子を構成する各導体層や誘電体層等の形成工程を共通化できるため、構造が比較的複雑であるにもかかわらず、非常に簡単に形成することができる。
なお、本発明は以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることは何ら差し支えない。例えば、可変容量コンデンサCtを可変容量素子1個とバイアスラインとで構成したり、インダクタンスLを抵抗に置換えバイアスラインと同機能とした構成にしたりしても構わない。
次に、本発明の可変コンデンサをより具体化した実施例について説明する。実施例として、図5〜図7に示す可変容量コンデンサを例にとり説明する。
第1〜第5の可変容量素子C1〜C5のそれぞれの容量値を5pFとし、可変容量コンデンサCtの容量値としては1pFとなるようにした。
支持基板1としてサファイアのR基板上に、下部電極層2としてPtを基板温度700℃でスパッタリング法にて成膜した。薄膜誘電体層4としては、(BaxSr1−x)TiyO3(0≦x≦1,0≦y≦1)からなるターゲットを用い、基板温度は600℃で、同一バッチでスパッタリング法にて成膜した。
次に、その上に上部電極層5としてPtを同一バッチでスパッタリング法にて成膜した。次に、フォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィの手法によりこのフォトレジストを所定の形状に加工した後、ECR装置により上部電極層5を所定の形状にエッチングした。その後、同様に薄膜誘電体層4および下部電極層2を所定の形状にエッチングした。下部電極層2の形状は、導体ライン31〜34を含むものとした。
次に、薄膜抵抗61〜64として、窒化タンタルをスパッタリング法にて100℃で成膜した。スパッタリング後、フォトレジストをフォトリソグラフィにより所定の形状に加工した後、RIE装置を用いてエッチングを行ない薄膜抵抗61〜64を所定の形状に加工して、フォトレジストの層を除去した。
また、窒化タンタルよりなる薄膜抵抗61〜64の抵抗値については、同条件で別途作製して測定した可変容量素子のリーク電流特性(絶縁抵抗値)を考慮して、2.5MΩになるようにシート抵抗値170kΩ/sq,アスペクト比15で設計した。
次に、絶縁層7として、SiO2膜をTEOSガスを原料とするCVD法により成膜した。次に、フォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィの手法によりこのフォトレジストを所定の形状に加工した後、絶縁層7に対してRIE装置により所定の形状にエッチングを行なった。
次に、引き出し電極層8として、PtおよびAuをスパッタリング法にて成膜し、同様にして所定の形状に加工した。
最後に、保護層9,半田拡散防止層10,半田端子部111,112を順次形成した。保護層9にはポリイミド樹脂を、半田拡散防止層10にはNiをそれぞれ用いた。
上記のようにして得られた本発明の可変容量コンデンサCtのリーク電流特性を図8に線図で示す。図8において、横軸は可変容量コンデンサCtへの印加電圧(単位:V)を、横軸はリーク電流の対数値(単位:A)を表している。なお、図中の1.0E-12とは、10−12すなわち1p(ピコ)を表す。
図8に示す結果より、この本発明の可変容量コンデンサCtのリーク電流特性は、印加電圧の極性に依存し、リーク電流軸に対し非対称となっていることが確認された。このことから、可変容量コンデンサCtに印加された電圧のうち、第1〜第5の可変容量素子C1〜C5に印加される電圧の割合が極性により異なっていると予想された。
次に、本発明の可変容量コンデンサCtをインピーダンスアナライザ(アジレント社製、型番E4991A)により測定した結果を図9に線図で示す。図9はこの本発明の可変容量コンデンサCtの実施例におけるC−V特性を示す線図であり、横軸は可変容量コンデンサCtへの印加電圧(単位:V)を、縦軸は容量値(単位:pF)を表し、特性曲線は容量値の電圧依存特性を示している。
図9に示す結果においては、本発明の可変容量コンデンサCtのC−V特性は、容量値が最大となる電圧値が0Vであり、その電圧値における容量軸と重なる直線に対して非対称となっており、図8の結果より予想したように、第1〜第5の可変容量素子C1〜C5に印加される電圧の割合が極性により異なっていることを反映している。
そして、図9に示す結果より、電圧値が0Vの場合に容量値が最大値1.0pFとなり、容量軸に重なる直線(すなわち容量軸)に対して非対称な特性となっており、電圧値(+V1)が+3Vの場合に容量値が0.6pFとなり、電圧値(−V1)が−3Vの場合に容量値が0.7pFとなっており、直流バイアス電圧をOFF(0V)および±3Vの極性を切り替えるだけの3点にすることで、C0V=1.0pF,C−V1=0.7pF,C+V1=0.6pFの3つの容量値を容易に得ることができることを確認した。
次に、上記と同様にして作製した本発明の可変容量コンデンサCtにおいて、窒化タンタルよりなる薄膜抵抗61〜66の膜厚を約0.05μmとし、シート抵抗値を別途測定した結果が約45kΩ/sqであるものとした。これにより、薄膜抵抗61〜66の比抵抗は約0.2Ω・cmとなった。さらに、アスペクト比は15としたので、薄膜抵抗61〜66の抵抗値は約620kΩであると予測された。
この本発明の可変容量コンデンサCtをインピーダンスアナライザ(アジレント社製、型番E4991A)により測定した結果を、図10に線図で示す。図10はこの本発明の可変容量コンデンサCtの実施例におけるC−V特性を示す線図であり、横軸は可変容量コンデンサCtへの印加電圧(applied voltage)(単位:V)を、縦軸は容量値(capacitance)(単位:pF)を表し、特性曲線は容量値の電圧依存特性を示している。
そして、図10に示す結果より、直流バイアス電圧が−0.4Vのときに容量値の最大値2.05pFが得られ、+2Vの場合に1.31pFとなり、−2Vの場合に1.40pFとなっており、0Vの場合は2.03pFが得られた。これより、これら4点の直流バイアス電圧に切り替えることによってC-0.4V=2.05pF,C−V1=1.40pF,C+V1=1.31pF,C0V=2.03pFの4点の容量値を得ることができ、容量値が所定の直流バイアス電圧値で最大となり、かつその直流バイアス電圧値で容量軸と平行な直線に対して、容量−電圧曲線が非対称な特性となっていることを確認した。
以上のような本発明の実施例により、本発明の可変容量コンデンサが、印加電圧の制御が容易で、かつ高周波信号による容量変化率は小さく、相互変調歪みが小さく、耐電力等に優れた可変容量コンデンサであることを確認できた。