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JP4561021B2 - 5置換ヒダントインラセマーゼ、これをコードするdna、組み換えdna、形質転換された細胞および光学活性アミノ酸の製造方法 - Google Patents

5置換ヒダントインラセマーゼ、これをコードするdna、組み換えdna、形質転換された細胞および光学活性アミノ酸の製造方法 Download PDF

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JP4561021B2 JP2001278739A JP2001278739A JP4561021B2 JP 4561021 B2 JP4561021 B2 JP 4561021B2 JP 2001278739 A JP2001278739 A JP 2001278739A JP 2001278739 A JP2001278739 A JP 2001278739A JP 4561021 B2 JP4561021 B2 JP 4561021B2
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  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規5置換ヒダントインラセマーゼ、これをコードするDNA、組み換えDNA、形質転換された細胞および光学活性アミノ酸の製造方法に関し、特に、ラセミ化反応の作用至適温度が高く、ラセミ化反応を効率的に触媒する新規5置換ヒダントインラセマーゼ、これをコードするDNA、組み換えDNA、形質転換された細胞および光学活性アミノ酸の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
5置換ヒダントインラセマーゼ(以下HRaseと略す)は、光学活性な5置換ヒダントイン化合物、すなわちD−またはL−5置換ヒダントイン化合物に作用し、当該物質のラセミ化反応を触媒する酵素である。
【0003】
5置換ヒダントイン化合物は、下記反応式(I)に示すように、▲1▼、▲2▼の酵素による加水分解反応を経てアミノ酸となる。
▲1▼5置換ヒダントイン化合物に作用し、当該物質を加水分解することによりN−カルバミルアミノ酸を生成する反応を触媒する酵素(ヒダントイナーゼ)。
▲2▼生成したN−カルバミルアミノ酸に作用し、当該物質を加水分解することにより光学活性アミノ酸を生成する反応を触媒する酵素(N−カルバミルアミノ酸ハイドロラーゼ)。
【0004】
【化1】
Figure 0004561021
【0005】
5置換ヒダントイン化合物から光学活性アミノ酸を製造するためには、上記▲1▼ヒダントイナーゼおよび▲2▼N−カルバミルアミノ酸ハイドロラーゼのうち、少なくとも一方に光学選択性の酵素を用いればよく、従来から微生物酵素系を用いた方法および微生物酵素系と化学反応系とを組み合わせた方法が知られている。この5置換ヒダントイン化合物から、光学活性アミノ酸を製造する方法は、医薬品、化学工業品、食品添加物等の製造に重要である。
【0006】
微生物酵素系あるいは微生物酵素系と化学反応系との組み合わせにより、DL−5置換ヒダントイン化合物の全量を光学選択的に加水分解させ、光学活性アミノ酸に変換するには、基質とならないエナンチオマーを効率的にラセミ化し、基質となるエナンチオマーに変化させる必要がある。ところが、微生物酵素系の作用する中性条件下では、基質とならない光学活性5置換ヒダントイン化合物のラセミ化速度がきわめて遅く、ラセミ化が律速となって効率的に光学活性アミノ酸に変換することができないといった問題があった。
【0007】
そこで、中性条件下での光学活性5置換ヒダントイン化合物のラセミ化を目的として、HRaseの検索がなされ、アースロバクター(Arthrobacter)属細菌由来(特開昭62−122591号公報、Ann.N.Y.Acad.Sci 672巻478ページ、特開平6−343462号公報)、シュードモナス(Pseudomonas)属細菌由来(特開平4−271784号公報、J.Bacteriol.174巻、7989ページ、1992年)が報告されている。従来報告されている細菌由来のHRaseの至適反応温度は、アースロバクター エスピー(Arthrobacter sp.)DSM−3747株由来のものが37℃(Ann.N.Y.Acad.Sci 672巻 478ページ)、同じくアースロバクター エスピー(Arthrobacter sp.)DK200株由来のものが10℃〜50℃(特開昭62−122591号公報)、またシュードモナスエスピー(Pseudomonas sp.)NS671由来のものが45℃である。
【0008】
一般的に、酵素反応における作用至適温度が高いほど、酵素の産業的な利用価値が高くなる。すなわち反応温度を高くすることができれば、より反応速度を速くすることが可能となる結果、目的とする反応が効率的に進むようになるのはもちろんのこと、反応中、反応液の微生物汚染のリスクが軽減されることから、品質保持を含めた工程管理が容易になる利点がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、工業的応用の観点から、反応の至適温度が高いHRaseは有用である。しかしながら、今まで報告されているHRaseの作用至適温度の上限は50℃であり、ラセミ化反応を効率的に進行させるため、また反応液の微生物汚染のリスクを軽減するため、さらに作用至適温度の高いHRaseが求められている。
【0010】
従って、本発明の目的は、従来になく反応の至適温度が高い新規HRaseを単離し、当該酵素を用いた光学活性アミノ酸の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記問題に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、マイクロバクテリウム属細菌に目的とする反応の至適温度が高い新規HRaseが存在することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、以下のとおりである。
【0013】
(請求項1) 5置換ヒダントインのラセミ化反応を触媒する5置換ヒダントインラセマーゼにおいて、作用至適pHがpH7〜9の範囲内にあり、作用至適温度が50〜60℃の範囲内にあることを特徴とする5置換ヒダントインラセマーゼ。
【0014】
(請求項2) 下記(a)または(b)のアミノ酸配列を有し、5置換ヒダントインラセマーゼ活性を有するタンパク質。
(a)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列
(b)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加または逆位を含むアミノ酸配列
【0015】
(請求項3) マイクロバクテリウム属細菌を培養して得た菌体を破砕または溶菌後、精製処理を行うことにより取得されるマイクロバクテリウム属細菌由来の5置換ヒダントインラセマーゼ画分。
【0016】
(請求項4) 請求項1または2に記載の5置換ヒダントインラセマーゼまたは請求項3に記載の5置換ヒダントインラセマーゼ画分を、光学活性5置換ヒダントイン化合物に作用させることを特徴とする光学活性5置換ヒダントイン化合物のラセミ化方法。
【0017】
(請求項5) 請求項1または2に記載の5置換ヒダントインラセマーゼまたは請求項3に記載の5置換ヒダントインラセマーゼ画分、および、5置換ヒダントインを光学選択的に加水分解する酵素または当該酵素含有物を、5置換ヒダントインに作用させることを特徴とするN−カルバミルアミノ酸の製造方法。
【0018】
(請求項6) 請求項1または2に記載の5置換ヒダントインラセマーゼまたは請求項3に記載の5置換ヒダントインラセマーゼ画分、5置換ヒダントインを加水分解する酵素または当該酵素含有物、および、N−カルバミルアミノ酸を光学選択的に加水分解する酵素または当該酵素含有物を、5置換ヒダントインに作用させることを特徴とする光学活性アミノ酸の製造方法。
【0019】
(請求項7) 請求項1に記載の5置換ヒダントインラセマーゼをコードするDNA。
【0020】
(請求項8) 下記(a)または(b)の塩基配列を有し、5置換ヒダントインラセマーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(a)配列表配列番号1に記載の塩基配列
(b)配列表配列番号1に記載の塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列
【0021】
(請求項9) 下記(c)または(d)のアミノ酸配列を有し、5置換ヒダントインラセマーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列
(d)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加または逆位を含むアミノ酸配列
【0022】
(請求項10) 請求項7〜9のいずれかに記載のDNAとベクターDNAとが接続されて得られる組み換えDNA。
【0023】
(請求項11) 前記ベクターDNAは、pUC系プラスミド、pBR322系プラスミドまたはその誘導体に由来することを特徴とする請求項10に記載の組み換えDNA。
【0024】
(請求項12) 請求項10または11に記載の組み換えDNAによって形質転換された細胞。
【0025】
(請求項13) 前記細胞は、エシェリヒア コリに由来することを特徴とする請求項12に記載の細胞。
【0026】
(請求項14) 請求項12または13に記載の細胞を培地中で培養し、培地中および/または細胞中に5置換ヒダントインラセマーゼ活性を有するタンパク質を蓄積させることを特徴とする5置換ヒダントインラセマーゼ活性を有するタンパク質の製造方法。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、
[I] HRase
[II] HRaseを用いた光学活性アミノ酸の製造方法
の順に添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
[I] HRase
フラボバクテリウム属細菌に、DL−5−インドリルメチルヒダントインを光学選択的に加水分解し、対応するL−トリプトファンを生成する菌株が報告されている。このL−トリプトファンを生成する菌株であるフラボバクテリウム エスピー.(Flavobacterium sp.)AJ3912(FERM−P3133)を用い、DL−5−インドリルメチルヒダントインを基質としL−トリプトファン生成反応を行なわせた場合、L−トリプトファンの生成モル収率は80%以上に達する(Agric.Biol.Chem.51巻 363ページ、1987年)。
【0029】
光学活性インドリルメチルヒダントインは、酵素反応が行われるような中性条件下では、自発的ラセミ化がほとんど起こらないことから、本発明者らは、当該菌株に新規HRaseが存在すると考えた。この考えに基づき、本発明者らは、新規HRaseの存在を明らかにすべく、当該菌株の培養菌体からHRaseを精製単離するとともに、この酵素が目的とする反応の至適温度が高い新規HRaseであることを見いだした。
【0030】
なお、フラボバクテリウム エスピー.(Flavobacterium sp.)AJ3912(FERM−P3133)は、当初フラボバクテリウム エスピー.(Flavobacterium sp.)AJ3912(FERM−P3133)として1975年6月27日に通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されたが、再同定の結果オーレオバクテリウム リクエファシエンス(Aureobacterium liquefaciens )に分類されることが判明した。現在では、種名変更により、オーレオバクテリウム リクエファシエンス(Aureobacterium liquefaciens )はマイクロバクテリウム リクエファシエンス(Microbacterium liquefaciens )に分類され、マイクロバクテリウム リクエファシエンス(Microbacterium liquefaciens )AJ3912(国内寄託番号FERM−P3133、国際寄託番号FERM−BP7643)として独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託されている。
【0031】
マイクロバクテリウム リクエファシエンス(Microbacterium liquefaciens )AJ3912(FERM−P3133)について、細菌の分類学書であるバージェーズ マニュアル オブ デターミネイティブ バクテリオロジー 第1巻(第9版 1994年、ウイリアム アンド ウイルキンス社出版)に照らしあわせて生理性状試験を実施した試験結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
Figure 0004561021
【0033】
また、本発明者らは、マイクロバクテリウム リクエファシエンス(Microbacterium liquefaciens )AJ3912由来のHRaseを精製し、HRaseのアミノ酸配列を決定した。さらに、HRaseのアミノ酸配列から演繹した30塩基対程度のDNA分子を合成し、これをプローブとして利用しマイクロバクテリウム属細菌由来HRaseをコードするDNA全長を、マイクロバクテリウム属細菌染色体遺伝子ライブラリーから単離することに成功した。
【0034】
さらに、本発明者らは、マイクロバクテリウム属細菌由来HRase遺伝子の単離の際、同時に得られたHRase遺伝子下流の塩基配列がヒダントイナーゼ(以下HHase)遺伝子の一部であると予想し、該DNA断片をPCR法により増幅し、プローブとして利用することにより、当該菌株の遺伝子ライブラリーからHHase遺伝子の全長の単離・取得に成功した。同様に、HHase遺伝子の単離の際、HHase遺伝子下流の塩基配列がN−カルバミルアミノ酸ハイドロラーゼ(以下CHase)遺伝子の一部であると予想し、該DNA断片をPCR法により増幅し、プローブとして利用することにより、CHase遺伝子の全長の単離・取得に成功した。
【0035】
すなわち、図1に示すように、本発明のHRaseは、HHase遺伝子およびCHase遺伝子とともにオペロンを形成していると考えられる。図1中、▲1▼はEcoR I/PstI断片であり、▲2▼はKpn I/Sac I断片であり、▲3▼はBgl II断片である。
【0036】
なお、添付した本発明の配列表において、上記方法によって特定された本発明のHRaseをコードするDNAを配列番号1に示し、HHaseをコードするDNAを配列番号3に示し、CHaseをコードするDNAを配列番号5に示す。また、HRase遺伝子、HHase遺伝子およびCHase遺伝子を含む構造遺伝子群をコードするDNAを配列番号7に示す。配列番号7に記載の塩基配列のうち、塩基番号1〜708が本発明のHRaseをコードし、塩基番号729〜2105がHHaseをコードし、塩基番号2105〜3340がCHaseをコードしている。
【0037】
これらのDNAは、マイクロバクテリウム リクエファシエンス(Microbacterium liquefaciens)AJ3912株の染色体DNAから単離されたものであり、いずれもL−アミノ酸の製造に係わるタンパク質をコードするものである。
【0038】
また、配列表の配列番号2に、配列表の配列番号1の塩基配列がコードするHRaseのアミノ酸配列を示し、配列表の配列番号4に、配列表の配列番号3の塩基配列がコードするHHaseのアミノ酸配列を示し、配列表の配列番号6に、配列表の配列番号5の塩基配列がコードするCHaseのアミノ酸配列を示す。
【0039】
配列表の配列番号2に記載のHRase、配列表の配列番号4に記載のHHaseおよび配列表の配列番号6に記載のCHaseは、下記反応式(II)に示すように、5−(4−ヒドロキシベンジル)ヒダントインに代表される5置換ヒダントインから、L−チロシンに代表される光学活性アミノ酸を生成する反応を触媒する。
【0040】
【化2】
Figure 0004561021
【0041】
次に、本発明の新規HRaseについて、(1)HRaseをコードするDNA、(2)HRaseの性質、(3)HRaseの製造方法の順に詳細に説明する。
【0042】
(1)HRaseをコードするDNA
配列表の配列番号1の塩基配列を有する本発明のHRase遺伝子は、前述したようにマイクロバクテリウム リクエファシエンス(Microbacterium liquefaciens)AJ3912株の染色体DNAから単離されたものである。配列表の配列番号1の塩基配列は、既知のシュードモナス属細菌由来のHRase(J.Bacteriol.174巻、962ページ、1992年)とアミノ酸配列において48%の相同性を示し、塩基配列において49%の相同性を示す。
【0043】
マイクロバクテリウム属細菌からHRaseをコードするDNAを取得する方法について説明する。
【0044】
はじめに、精製されたHRaseのアミノ酸配列を決定する。エドマン法(Edman,P., Acta Chem. Scand. 4, 227 (1950))を用いてアミノ酸配列を決定することができる。またApplied Biosystems社製のシークエンサーを用いてアミノ酸配列を決定することができる。本発明のマイクロバクテリウム属細菌由来HRaseについて、N末端から30残基のアミノ酸配列を決定したところ、配列表配列番号8に示される配列が明らかとなった。
【0045】
明らかとなったアミノ酸配列に基づいて、これをコードするDNAの塩基配列を演繹できる。DNAの塩基配列を演繹するには、ユニバーサルコドンを採用する。
【0046】
演繹された塩基配列に基づいて、30塩基対程度のDNA分子を合成する。該DNA分子を合成する方法はTetrahedron Letters, 22, 1859 (1981)に開示されている。また、Applied Biosystems社製のシンセサイザーを用いて該DNA分子を合成できる。該DNA分子は、マイクロバクテリウム属細菌由来HRaseをコードするDNA全長を、マイクロバクテリウム属細菌染色体遺伝子ライブラリーから単離する際に、プローブとして利用できる。あるいは、マイクロバクテリウム属細菌由来HRaseをコードするDNAをPCR法で増幅する際に、プライマーとして利用できる。ただし、PCR法を用いて増幅されるDNAはマイクロバクテリウム属細菌由来HRaseをコードするDNA全長を含んでいないので、PCR法を用いて増幅されるDNAをプローブとして用いて、マイクロバクテリウム属細菌由来HRaseをコードするDNA全長をマイクロバクテリウム属細菌染色体遺伝子ライブラリーから単離する。
【0047】
PCR法の操作については、White, T.J. et al., Trends Genet. 5, 185 (1989)等に記載されている。染色体DNAを調製する方法、さらにDNA分子をプローブとして用いて、遺伝子ライブラリーから目的とするDNA分子を単離する方法については、Molecular Cloning, 2nd edition, Cold Spring Harbor press(1989)等に記載されている。
【0048】
単離されたマイクロバクテリウム属細菌由来HRaseをコードするDNAの塩基配列を決定する方法は、A Practical Guide to Molecular Cloning, John Wiley & Sons, Inc. (1985)に記載されている。また、Applied Biosystems社製のDNAシークエンサーを用いて、塩基配列を決定することができる。マイクロバクテリウム属細菌由来HRaseをコードするDNAを配列表配列番号1に示す。
【0049】
なお、マイクロバクテリウム属細菌由来HRaseをコードするDNAは、配列表配列番号1に示されるDNAだけではない。すなわち、マイクロバクテリウム属に属する細菌の種および株ごとに、塩基配列の違いが観察されるはずだからである。
【0050】
また、本発明のDNAは単離されたHRaseをコードするDNAのみではなく、当然ながら、マイクロバクテリウム属細菌の染色体DNAから単離されたHRaseをコードするDNAに人工的に変異を加えたDNAであっても、HRaseをコードする場合には、本発明のDNAである。人工的に変異を加える方法として頻繁に用いられるものとして、Method. in Enzymol.,154 (1987)に記載されている部位特異的変異導入法がある。
【0051】
また、配列表配列番号1に記載の塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列を有し、5置換ヒダントインラセマーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAも本発明のDNAである。ここで「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。この条件を明確に数値化することは困難であるが、一例を示せば、相同性が高いDNA同士、例えば50%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC、0.1%SDS、このましくは、60℃、0.1×SSC、0.1%SDS、さらに好ましくは65℃、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度でハイブリダイズする条件があげられる。また、「5置換ヒダントインラセマーゼ活性」とは、5置換ヒダントイン化合物をラセミ化する活性であればよい。ただし、配列表の配列番号1に記載の塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列の場合には、50℃、pH8の条件下で配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質の半分程度以上の酵素活性を保持していることが望ましい。
【0052】
さらに、配列表の配列番号1に記載のDNAがコードするHRaseと実質的に同一のタンパク質をコードするDNAも本発明のDNAである。すなわち、
(a)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列、
(b)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加または逆位を含むアミノ酸配列を有し、5置換ヒダントインラセマーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
も本発明のDNAである。ここで、「数個」とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造や、5置換ヒダントインラセマーゼ活性を大きく損なわない範囲のものであり、具体的には、2〜50個、好ましくは2〜30個、さらに好ましくは2〜10個である。また、「5置換ヒダントインラセマーゼ活性」とは、前述のとおり、5置換ヒダントイン化合物をラセミ化する活性を意味する。ただし、(b)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加または逆位を含むアミノ酸配列の場合には、50℃、pH8の条件下で配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質の半分程度以上の酵素活性を保持していることが望ましい。
【0053】
(2)HRaseの性質
つぎに、精製されたマイクロバクテリウム属細菌由来HRaseの性質について説明する。
【0054】
本発明のHRaseは前述した遺伝子の単離と解析より明らかにされるように、配列表配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する。しかし、本発明は、配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加または逆位を含むアミノ酸配列を有し、5置換ヒダントインラセマーゼ活性を有するタンパク質をも含むものである。
【0055】
すなわち、本発明のHRaseは、下記(a)または(b)のアミノ酸配列を有し、5置換ヒダントインラセマーゼ活性を有するタンパク質である。
(a)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列
(b)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加または逆位を含むアミノ酸配列
ここで、「数個」および「5置換ヒダントインラセマーゼ活性」の定義は(1)HRaseをコードするDNAの項の説明と同義である。
【0056】
本発明のHRaseは、5置換ヒダントイン化合物のラセミ化反応を触媒する。
【0057】
本発明のHRaseのHRase活性の測定は、光学活性なD−、またはL−5置換ヒダントイン化合物を基質とし、ラセミ化度をこれらの旋光度の変化を測定する、または、光学分割カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定することにより行うことが可能である。
【0058】
具体的には、120 mg/dl L−またはD−ベンジルヒダントイン(BH)、50 mM リン酸−カリウム緩衝液(KPB) (pH 8.0)、5 mM ジチオスレイトール(DTT)およびHRase酵素溶液を含む反応液を37℃で30分間インキュベートした後、9倍容の1.1 mM CuSO4、11.1 mM H3PO4溶液を添加することにより反応を停止させた。20,000g×10分の遠心により沈澱を取り除いた後、HPLCにてラセミ化したBH量を定量し、ラセミ化活性を見積もった。なお、酵素活性の単位として、この条件にて1分に1μmolのBHをラセミ化する酵素活性をもって1Uと定義した。
【0059】
HPLCを用いた分析光学活性BHの定量分析はダイセル化学CHIRALPAK WH 0.46cmφ×25cmを用いて行った。分析条件は以下の通り。
移動相:5% (v/v) methanol, 1 mM CuSO4
カラム温度:50℃
流速:1.5 ml/分
検出:UV210
この条件において、D−BH (リテンションタイム4.2分)、L−BH (同5.3 分)に溶出した。
【0060】
次に、本発明のHRaseについて、上記分析方法にて測定した酵素化学的性質を以下に述べる。
【0061】
本発明のHRaseは、今まで報告されているHRaseと比較して作用至適温度が高温領域にあるため、ラセミ化反応を効率的に触媒できることを特徴とする。すなわち、上記(a)または(b)のアミノ酸配列を有する本発明のHRaseは、そのアミノ酸配列の違いにより、多少の差はあるものの、作用至適温度が50℃超であることを特徴とする。より好ましい作用至適温度は52℃以上であり、より好ましくは55℃超である。作用至適温度の上限は特にないが、HRaseの温度安定性を考慮すると60℃以下であることが好ましい。なお、本願明細書における「作用至適温度」とは、pH8の条件下において、最大活性を示す温度を意味する。
【0062】
至適pH:約7〜約9付近にある。
作用至適pHの範囲を求めるために、40℃の条件下で30分間反応を行った。
【0063】
pH安定性:約6〜約9付近にある。
0℃の条件下で、30分間各pH処理した場合のpH安定性を調べた。
【0064】
温度安定性:約40℃以下で安定である。
pH8.0の条件下で30分間加温処理した場合の温度安定性を調べた。
【0065】
阻害剤の影響:NEM(N−エチルマレイミド)、銅イオン、IAA(モノヨード酢酸)によって強く阻害される。EDTA(エチレンジアミン四酢酸)ではほとんど阻害されない。なお、本発明のHRaseはDTT(ジチオトレイトール)を添加することにより活性化される。
【0066】
分子量:a)約107,000(ゲル濾過法)、b)約27,000(SDS−PAGE法)
本発明のHRaseは、分子量は27,000のサブユニット4量体構造をとると想定される。
【0067】
(3)HRaseおよび5置換ヒダントインラセマーゼ活性を有するタンパク質の製造方法
次に本発明のHRaseおよび5置換ヒダントインラセマーゼ活性を有するタンパク質の製造方法について説明する。本発明のHRaseおよび5置換ヒダントインラセマーゼ活性を有するタンパク質の製造方法としては、(i) 微生物培養によりHRaseを生成蓄積させる方法と、(ii)組み換えDNA技術によりHRaseまたは5置換ヒダントインラセマーゼ活性を有するタンパク質を生成する形質転換体を作成し、当該形質転換体を培養することにより当該タンパク質を生成蓄積させる方法の2つがある。
【0068】
(i) 微生物培養により生成蓄積する方法
微生物培養により生成蓄積する方法において、HRaseの取得源となる微生物としてはマイクロバクテリウム(Microbacterium)属に属する微生物があげられる。好適なものとしては、マイクロバクテリウム リクエファシエンス(Microbacterium liquefaciens )AJ3912(FERM−P3133)があげられる。
【0069】
マイクロバクテリウム属に属する微生物の培養形態は液体培養、固体培養いずれも可能であるが、工業的に有利な方法は、深部通気撹拌培養法である。栄養培地の栄養源としては、微生物培養に通常用いられる炭素源、窒素源、無機塩およびその他の微量栄養源を使用できる。使用菌株が利用できる栄養源であればすべてを使用できる。
【0070】
通気条件としては、好気条件を採用する。培養温度としては、菌が発育し、HRaseが生産される範囲であれば良い。従って、厳密な条件は無いが、通常10〜50℃、好ましくは30〜40℃である。培養時間は、その他の培養条件に応じて変化する。例えば、HRaseが最も生産される時間まで培養すれば良く、通常5時間〜7日間、好ましくは10時間〜3日間程度である。
【0071】
培養後菌体を遠心分離(たとえば、10,000xg、10分)により集菌する。当該酵素は菌体中に存在するので、この菌体を破砕、または溶菌させることにより、酵素の可溶化を行う。菌体破砕には、超音波破砕、フレンチプレス破砕、ガラスビーズ破砕等の方法を用いることができ、また溶菌させる場合には、卵白リゾチームや、ペプチダーゼ処理またはこれらを適宜組み合わせた方法が用いられる。
【0072】
マイクロバクテリウム属細菌由来HRaseを精製する場合、酵素可溶化液を出発材料として精製することになるが、未破砕あるいは未溶菌残査が存在するようであれば、可溶化液を再度遠心分離操作に供し、沈殿する残査を除いた方が、精製に有利である。
【0073】
酵素の精製には、通常酵素の精製を行うために用いられる全ての常法、例えば硫安塩析法、ゲル濾過法、イオン交換クロマトグラフィー法、疎水クロマトグラフィー法等を採用することができる。その結果、より比活性が高いHRase含有画分を得ることができる。
【0074】
(ii)組み換えDNA技術による製法
次に、組み換えDNA技術によってHRaseまたは5置換ヒダントインラセマーゼ活性を有するタンパク質(以下、(ii)組み換えDNA技術による製法において、HRaseと省略する。)を製造する方法について説明する。組み換えDNA技術を利用して酵素、生理活性物質等の有用タンパク質を製造する例は数多く知られており、組み換えDNA技術を用いることで、天然に微量に存在する有用タンパク質を大量生産できる。
【0075】
図2は、本発明のHRaseの製造工程のフローチャートである。
先ず、本発明のHRaseをコードするDNAを調製する(ステップS1)。
次に、調製したDNAをベクターDNAと接続して組み換えDNAを作製し(ステップS2)、該組み換えDNAによって細胞を形質転換して形質転換体を作製する(ステップS3)。続いて、該形質転換体を培地中で培養し、培地中および/または細胞中にHRaseを生成蓄積させる(ステップS4)。
その後、ステップS5に進み、該酵素を回収・精製することによって精製HRaseを製造する。
また、ステップS5で生産した精製HRaseまたはステップS4のHRaseが蓄積された培地をアミノ酸を合成に用いることで、目的とする光学活性アミノ酸を大量に製造することができる(ステップS6)。
【0076】
なお、ベクターDNAと接続されるDNAは、本発明のHRaseが発現可能であればよい。
【0077】
ここで、ベクターDNAに接続されるHRaseゼ遺伝子としては、上述の
(a)配列表の配列番号1に記載の塩基配列を有するDNA、
(b)配列表の配列番号1に記載の塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列を有するDNA、
(c)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列をコードするDNA、
(d)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加または逆位を含むアミノ酸配列をコードするDNA
などを使用できる。
【0078】
タンパクを組み換えDNA技術を用いて大量生産する場合、該タンパクを生産する形質転換体内で該タンパクが会合し、タンパクの封入体(inclusion body)を形成させることが好ましい。この発現生産方法の利点は、目的のタンパク質を菌体内に存在するプロテアーゼによる消化から保護する点および目的のタンパク質を菌体破砕に続く遠心分離操作によって簡単に精製できる点等である。
【0079】
このようにして得られるタンパク封入体は、タンパク変性剤により可溶化され、主にその変性剤を除去することによる活性再生操作を経た後、正しく折り畳まれた生理的に活性なタンパクに変換される。例えば、ヒトインターロイキン−2の活性再生(特開昭61−257931号公報)等多くの例がある。
【0080】
タンパク封入体から活性型タンパクを得るためには、可溶化・活性再生等の一連の操作が必要であり、直接活性型タンパクを生産する場合よりも操作が複雑になる。しかし、菌体の生育に影響を及ぼすようなタンパクを菌体内で大量に生産させる場合は、不活性なタンパク封入体として菌体内に蓄積させることにより、その影響を抑えることができる。
【0081】
目的タンパクを封入体として大量生産させる方法として、強力なプロモータの制御下、目的のタンパクを単独で発現させる方法の他、大量発現することが知られているタンパクとの融合タンパクとして発現させる方法がある。
【0082】
さらに、融合タンパクとして発現させた後に、目的のタンパクを切り出すため、制限プロテアーゼの認識配列を適当な位置に配しておくことも有効である。
【0083】
タンパクを組み換えDNA技術を用いて大量生産する場合、形質転換される宿主細胞としては、細菌細胞、放線菌細胞、酵母細胞、カビ細胞、植物細胞、動物細胞等を用いることができるが、一般に大腸菌、好ましくはエシェリヒア コリが用いられる。大腸菌を用いてタンパクを大量生産する技術について数多くの知見があるためである。以下、形質転換された大腸菌を用いてHRaseを製造する方法を説明する。
【0084】
HRaseをコードするDNAを発現させるプロモータとしては、通常大腸菌における異種タンパク生産に用いられるプロモータを使用することができ、例えば、T7プロモータ、trpプロモータ、lacプロモータ、tacプロモータ、PLプロモータ等の強力なプロモータが挙げられる。
【0085】
HRaseを融合タンパク封入体として生産させるためには、HRase遺伝子の上流あるいは下流に、他のタンパク、好ましくは親水性であるペプチドをコードする遺伝子を連結して、融合タンパク遺伝子とする。このような他のタンパクをコードする遺伝子としては、融合タンパクの蓄積量を増加させ、変性・再生工程後に融合タンパクの溶解性を高めるものであればよく、例えば、T7gene 10、β−ガラクトシダーゼ遺伝子、デヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、インターフェロンγ遺伝子、インターロイキン−2遺伝子、プロキモシン遺伝子等が候補として挙げられる。
【0086】
これらの遺伝子とHRaseをコードする遺伝子とを連結する際には、コドンの読み取りフレームが一致するようにする。適当な制限酵素部位で連結するか、あるいは適当な配列の合成DNAを利用すればよい。
【0087】
また、生産量を増大させるためには、融合タンパク遺伝子の下流に転写終結配列であるターミネーターを連結することが好ましい。このターミネータとしては、T7ターミネータ、fdファージターミネータ、T4ターミネータ、テトラサイクリン耐性遺伝子のターミネータ、大腸菌trpA遺伝子のターミネータ等が挙げられる。
【0088】
HRaseまたはHRaseと他のタンパクとの融合タンパクをコードする遺伝子を大腸菌に導入するためのベクターとしては、いわゆるマルチコピー型のものが好ましく、ColE1由来の複製開始点を有するプラスミド、例えばpUC系のプラスミドやpBR322系のプラスミドあるいはその誘導体が挙げられる。ここで、「誘導体」とは、塩基の置換、欠失、挿入、付加または逆位などによってプラスミドに改変を施したものを意味する。なお、ここでいう改変とは、変異剤やUV照射などによる変異処理、あるいは自然変異などによる改変をも含む。
【0089】
また、形質転換体を選別するために、該ベクターがアンピシリン耐性遺伝子等のマーカーを有することが好ましい。このようなプラスミドとして、強力なプロモーターを持つ発現ベクターが市販されている(pUC系(宝酒造(株)製)、pPROK系(クローンテック製)、pKK233−2(クローンテック製)ほか)。
【0090】
プロモータ、HRaseまたはHRaseと他のタンパクとの融合タンパクをコードする遺伝子、ターミネータの順に連結したDNA断片と、ベクターDNAとを連結して組み換えDNAを得る。
【0091】
該組み換えDNAを用いて大腸菌を形質転換し、この大腸菌を培養すると、HRaseまたはHRaseと他のタンパクとの融合タンパクが発現生産される。
形質転換される宿主は、異種遺伝子の発現に通常用いられる株を使用することができるが、エシェリヒア コリ JM109株,特にJM109(DE3)株が好ましい。形質転換を行う方法、および形質転換体を選別する方法はMolecular Cloning, 2nd edition, Cold Spring Harbor press (1989)等に記載されている。
【0092】
融合タンパクとして発現させた場合、血液凝固因子Xa、カリクレインなどの、HRase内に存在しない配列を認識配列とする制限プロテアーゼを用いてHRaseを切り出せるようにしてもよい。
【0093】
生産培地としては、M9−カザミノ酸培地、LB培地など、大腸菌を培養するために通常用いる培地を用いてもよい。また、培養条件、生産誘導条件は、用いたベクターのマーカー、プロモータ、宿主菌等の種類に応じて適宜選択する。
【0094】
HRaseまたはHRaseと他のタンパクとの融合タンパクを回収するには、以下の方法などがある。HRaseあるいはその融合タンパク質が菌体内に可溶化されていれば、菌体を回収した後、菌体を破砕あるいは溶菌させ、粗酵素液として使用できる。さらに、必要に応じて、通常の沈澱、濾過、カラムクロマトグラフィー等の手法によりHRaseあるいはその融合タンパク質を精製して用いることも可能である。この場合、HRaseあるいは融合タンパク質の抗体を利用した精製法も利用できる。
【0095】
タンパク封入体が形成される場合には、変性剤でこれを可溶化する。菌体タンパクとともに可溶化してもよいが、以降の精製操作を考慮すると、封入体を取り出して、これを可溶化するのが好ましい。封入体を菌体から回収するには、従来公知の方法で行えばよい。例えば、菌体を破壊し、遠心分離操作等によって封入体を回収する。タンパク封入体を可溶化させる変性剤としては、グアニジン塩酸(例えば、6M、pH5〜8)や尿素(例えば8M)などが挙げられる。
【0096】
これらの変性剤を透析等により除くと、活性を有するタンパクとして再生される。透析に用いる透析溶液としては、トリス塩酸緩衝液やリン酸緩衝液などを用いればよく、濃度としては20mM〜0.5M、pHとしては5〜8が挙げられる。
【0097】
再生工程時のタンパク濃度は、500μg/ml程度以下に抑えるのが好ましい。再生したHRaseが自己架橋を行うのを抑えるために、透析温度は5℃以下であることが好ましい。また、変性剤除去の方法として、この透析法のほか、希釈法、限外濾過法などがあり、いずれを用いても活性の再生が期待できる。
【0098】
HRaseをコードするDNAとして、配列表配列番号1に示されるDNAを用いた場合には配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するHRaseが生産される。
【0099】
[II] HRaseを用いた光学活性アミノ酸の製法
次に、本発明のHRaseを用いて、5置換ヒダントイン化合物から光学活性アミノ酸を製造する方法について述べる。
【0100】
光学活性アミノ酸製造反応に用いる本発明のHRaseとしては、下記(a)または(b)のアミノ酸配列を有し、ヒダントインラセマーゼ活性を有するタンパク質が挙げられる。
(a)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列
(b)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加または逆位を含むアミノ酸配列
【0101】
上記HRaseとしては、(1)マイクロバクテリウム属細菌を培養して得たHRaseを用いても良いし、(2)組み換えDNA技術によりマイクロバクテリウム属細菌由来のHRaseを生成する形質転換体を作成し、当該形質転換体を培養して得たHRaseを用いても良い。
【0102】
マイクロバクテリウム属細菌または組み換えDNAによって形質転換された細胞を用いて、HRaseを製造する場合、培養しながら、培養液中に直接基質を添加してもよいし、培養液より分離された菌体、洗浄菌体などいずれも使用可能である。また、菌体を破砕あるいは溶菌させた菌体処理物をそのまま用いてもよいし、当該菌体処理物からHRaseを回収し、粗酵素液として使用してもよいし、さらに、酵素を精製して用いてもよい。すなわち、HRase活性を有する画分であれば、酵素と当該酵素含有物全てを使用することが可能である。ここで「酵素含有物」とは、当該酵素を含むものであればよく、具体的には培養物、培養菌体、洗浄菌体、菌体を破砕あるいは溶菌させた菌体処理物、粗酵素液、精製酵素などを含む。
【0103】
本発明の光学活性アミノ酸の製造方法においては、本発明のHRaseの他、▲1▼5置換ヒダントイン化合物に作用し、当該物質を加水分解することによりN−カルバミルアミノ酸を生成する反応を触媒するヒダントイナーゼ(HHase)、
▲2▼生成したN−カルバミルアミノ酸に作用し、当該物質を加水分解することにより光学活性アミノ酸を生成する反応を触媒するN−カルバミルアミノ酸ハイドロラーゼ(CHase)
の2つの酵素が必要である。
【0104】
ここで、5置換ヒダントイン化合物を加水分解するHHaseの光学選択性が高い場合には、光学選択性の高いHHaseと本発明のHRaseとを5置換ヒダントイン化合物に作用させることにより、高収率(HRaseの作用によりモル収率50%以上)で光学活性のN−カルバミル−L−アミノ酸またはN−カルバミル−D−アミノ酸の一方のみを生成させることができる。この場合は、引き続きCHaseまたは当該酵素含有物を用いて光学活性アミノ酸を製造しても良いし、亜硝酸による化学的な加水分解処理を施すことにより、光学活性を維持したまま、高収率で光学活性アミノ酸を製造できる(微生物酵素系と化学反応系との組み合わせによる方法)。
【0105】
5置換ヒダントイン化合物を光学選択的に加水分解するHHaseは次のようにして入手できる。たとえば、N−カルバミル−D−アミノ酸を生成するD−HHaseを有する菌としては、バチルス属細菌に耐熱性の酵素の存在が知られており、例としてバチルス ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)ATCC31195等からHHaseまたは、HHase含有画分を調製すれば良い(Appl.Microbiol. Biotechnol.43巻 270ページ、1995年)。
ATCC31195株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection、住所12301 Parklawn Drive, Rockville, Maryland 20852, United States of America)から入手することができる。また、L体ヒダントイン化合物に特異的に作用するL−HHaseは、例えばバチルスエスピー(Bacillus sp.)AJ12299株にその存在が知られている(特開昭63−24894号公報)。バチルス エスピー AJ12299株は、1986年7月5日に通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託され、受託番号FERM−P8837が付与され、2001年6月27日に独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにブタペスト条約に基づき移管され、受託番号FERM BP-7646が付与された微生物である。
【0106】
HHaseに光学選択的加水分解活性がなくとも、CHaseに光学選択性があれば、生成アミノ酸はD−もしくはL−の光学活性体となる。この場合、反応液中には未反応のエナンチオマーであるN−カルバミルアミノ酸、すなわちCHaseがN−カルバミル−L−アミノ酸を選択的に分解し、L−アミノ酸を生成させる場合には、N−カルバミル−D−アミノ酸が、また逆にD−アミノ酸を生成させる場合には、N−カルバミル−L−アミノ酸が残存することが想定される。しかしながら、このような場合においてHHaseは、残存することになる未反応エナンチオマーのN−カルバミルアミノ酸を脱水縮合させ、再度5置換ヒダントイン化合物を生成させる逆反応をもわずかながら触媒するので、HRase、HHase、光学選択性の高いCHaseの3種の酵素、もしくは3種の酵素含有物により、高収率(HRaseの作用によりモル収率50%以上)で光学活性アミノ酸を製造することが可能となる。
【0107】
光学選択性のないHHaseは、本発明に示したマイクロバクテリウム リクエファシエンス(Microbacterium liquefaciens)AJ3912株のほか、例えばアースロバクター オーレセンス(Arthrobacter aurescens)にその存在が知られている(J.Biotechnol.61巻、1ページ、1998年)。
【0108】
N−カルバミルアミノ酸をD体選択的に加水分解するCHaseは、たとえばシュードモナス(Pseudomonas sp. )AJ 11220株にその存在が知られている(特公昭56−003034号公報)。再同定の結果、シュードモナス(Pseudomonas sp. )AJ 11220株は、アグロバクテリウム エスピー(Agrobacterium sp. )に属することが判明している。アグロバクテリウム エスピー AJ 11220株は1977年12月20日に通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託され、受託番号FERM−P4347が付与され、2001年6月27日に独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにブタペスト条約に基づき移管され、受託番号FERM BP-7645が付与された微生物である。またN−カルバミルアミノ酸をL体選択的に加水分解するCHaseは、たとえばフラボバクテリウム エスピー.(Flavobacterium sp.)AJ3912 (特公昭56−008749号公報)、バチルス エスピー.(Bacillus sp.)AJ12299にその存在が知られている。フラボバクテリウム エスピー. AJ3912株は、上述の通り現在ではマイクロバクテリウム リクエファシエンス(Microbacterium liquefaciens )AJ3912(FERM−P3133)に分類されているが、1975年6月27日に通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託され、受託番号FERM−P3133が付与され、2001年6月27日に独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにブタペスト条約に基づき移管され、受託番号FERM BP-7643が付与された微生物である。またバチルス エスピーAJ12299株は、1986年7月5日に、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託され、受託番号FERM−P8837が付与され、2001年6月27日に独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにブタペスト条約に基づき移管され、受託番号FERM BP-7646が付与された微生物である。
【0109】
HRaseまたはHRase含有画分の基質としては、当該酵素の基質特異性においてラセミ化できる5置換ヒダントイン化合物であれば、いかなるものも使用できる。5置換ヒダントイン化合物の例としては、5−インドリルメチルヒダントイン、5−(p−ハイドロキシベンジル)ヒダントイン、5−イソブチルヒダントイン、5−(3’−ピリジル)−メチルヒダントイン等が挙げられる。
【0110】
なお、好ましいHRase、HHaseおよびCHaseの組み合わせとして、
配列表配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するHRase、
配列表配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するHHase、
配列表配列番号6に記載のアミノ酸配列を有するCHase
の組み合わせが挙げられる。これらの酵素いずれも、マイクロバクテリウム リクエファシエンス(Microbacterium liquefaciens)AJ3912株由来の酵素である。
【0111】
配列表配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するHRase、配列表配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するHHaseおよび配列表配列番号6に記載のアミノ酸配列を有するCHaseを組み合わせて用いる場合、これらのL−アミノ酸の製造に係わるタンパク質のすべてをコードする配列表の配列番号7に記載の構造遺伝子群とベクターとが接続されて得られる組み換えDNAを用いて形質転換された細胞を培養することによって得られたHRase、HHaseおよびCHaseからなる混成タンパク質を用いることもできる。当該混成タンパク質を用いた場合、下記反応式(II)に示すように、混成タンパク質に含まれるヒダントンラセマーゼが5置換ヒダントイン化合物のラセミ化を触媒するので、DL体の5置換ヒダントイン化合物から理論的にはモル収率100%でL−アミノ酸を製造することが可能となる。
【0112】
【化3】
Figure 0004561021
【0113】
なお、上記混成タンパク質を用いてN−カルバミルアミノ酸を製造することも可能である。例えば、上記混成タンパク質にN−カルバミル−L−アミノ酸ハイドロラーゼの阻害剤等を添加して加水分解反応をN−カルバミルアミノ酸で止めることにより、N−カルバミルアミノ酸を製造できる。
【0114】
マイクロバクテリウム属細菌または組み換えDNAによって形質転換された細胞の培養液、分離菌体、洗浄菌体、菌体処理物、当該菌体処理物から得られる粗酵素液または精製酵素を用いてアミノ酸生成反応を進行させる場合には、5置換ヒダントイン化合物と培養液、分離菌体、洗浄菌体、菌体処理物、粗酵素液、または精製酵素を含む反応液を25〜40℃の適当な温度に調整し、pH5〜9に保ちつつ、8時間〜5日静置または攪拌すればよい。
【0115】
また、マイクロバクテリウム属細菌または組み換えDNAによって形質転換された細胞を水溶性媒体中で培養しながら、アミノ酸生成反応を進行させる場合には、5置換ヒダントイン化合物を含み、かつ形質転換された細胞の生育に必要な炭素源、窒素源、無機イオンなどの栄養素を含む水溶性媒体が用いられる。さらにビタミン、アミノ酸等の有機微量栄養素を添加すると望ましい結果が得られる場合が多い。5置換ヒダントイン化合物は分割添加してもよい。好気的条件下でpH5〜9、温度25〜40℃の適当な範囲に制御しつつ、8時間〜5日培養することが好ましい。
【0116】
生成したアミノ酸は、公知の手法により分離精製することができる。例えば、イオン交換樹脂に接触させて塩基性アミノ酸を吸着させ、これを溶離後晶析する方法または溶離後、活性炭等による脱色濾過し晶析する方法等が挙げられる。
【0117】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに説明する。尚、本発明は実施例の記載に限定されない。
【0118】
(実施例1)HRaseの生産および精製
マイクロバクテリウム リクエファシエンス(Microbacterium liquefaciens )AJ3912(FERM−P3133)を培養し、充分にHRase活性を有する菌体を得た。
まずCM2G寒天培地(0.5g/dl D−glucose, 1g/dl yeast extract, 1g/dl peptone, 0.5g/dl NaCl, 2g/dl agar, pH7.0)にて、30℃、24時間リフレッシュ後、CM2G液体培地で30℃、24時間シード培養を行った。
【0119】
その後、1mlのシード培養液をメイン培養培地50mlを張り込んだ500ml容の坂口フラスコに接種後、30℃、18時間振盪培養した。メイン培養の培地は0.5g/dlD−glucose, 0.5g/dl (NH4)2SO4, 1g/dl yeast extract, 1g/dl peptone, 0.1g/dl KH2PO4, 0.3g/dl K2HPO4, 0.01g/dl MgSO4・7H2O, 0.35g/dl DL−5−インドリルメチルヒダントイン(IMH), pH7.0を120℃、20分オートクレーブ後、各1mg/dlのFeSO4・7H2O、MnSO4・4〜5H2O、CaCl2・2H2Oを添加し、更に4℃で静置することによりIMHを十分に析出させた後に使用した。
培養終了後は、遠心分離により集菌し、0.1M KPB (pH7.0)で洗浄し、洗浄菌体を得た。
こうして得られた菌体をHRaseを精製するための材料として用いた。
【0120】
1.菌体破砕
洗浄菌体66g(培養液3.7L相当)を出発原料とし、この菌体を130mlの0.1M KPB (pH7.0)に懸濁後、0.1mmφ glass beadsとともに3分(30秒×6回、90秒インターバル)ビーズビーターにて破砕した。溶液を回収し、終濃度5μg/mlのDNaseIによって室温で20分間処理した。その後、13,000g×10分の遠心分離操作により未破砕細胞を除去し、更に100,000g×60分の超遠心分離操作によって膜画分を取り除き、上清を無細胞抽出液とした。
【0121】
2.硫安分画
上記無細胞抽出液125mlに終濃度70%飽和となるよう、59gの硫安を添加し、KOHでpHを7.0に調整した後、5℃で60分攪拌した。13,000g×15分の遠心分離操作により沈澱を回収し、少量の20mMKPB (pH 7.0)で溶解した後、1.2M (NH4)2SO4, 20mM KPB, 0.5mMCoCl2, pH 7.0(; Buffer A)に対して透析した。透析後、13,000 g×30 分の遠心分離操作を行い、得られた上清40 mlを以下の精製に用いた。
【0122】
3.疎水性クロマトグラフィー
得られた酵素溶液を、予めBuffer Aで平衡化した疎水性クロマトグラフィーカラムPhenyl Sepharose HP 26/10 (Pharmacia)に供した。Buffer Aで非吸着タンパク質を溶出した後、1.2〜0Mの直線的硫安濃度勾配(−1.2M /12CV)により吸着タンパク質を溶出した。溶出フラクションのHRase活性を測定したところ、硫安濃度がおよそ500mMから100mMの溶出位置に活性が認められた。HRase活性を含むフラクションを回収、膜濃縮後、20mMKPB (pH7.0)に対して透析した。
【0123】
4.陰イオン交換クロマトグラフィー
得られた酵素溶液を、予め20mM KPB (pH7.0)で平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィーカラムQ-Sepharose HP 16/10 (Pharmacia)に供した。
20mM KPB (pH7.0)で非吸着タンパク質を溶出した後、0〜0.5Mの直線的NaCl濃度勾配(0.5M /12CV)により吸着タンパク質を溶出した。溶出フラクションのHRase活性を測定しところ、NaCl濃度がおよそ300mMから400mMの溶出位置に活性が認められた。HRase活性を含むフラクションを回収、膜濃縮した。
【0124】
5.ゲル濾過
得られた酵素溶液を、予め20mM KPB (pH7.0)で平衡化したSuperdex 200 pg 16/60 (Pharmacia)に供し、同bufferにて展開した。溶出フラクションのHRase活性を測定したところ、分子量が約107,0000程度と見積もられる位置に活性が認められた。HRase活性を含むフラクションを回収、膜濃縮後、1.0M (NH4)2SO4, 20 mM KPB, 1mM L−ベンジルヒダントイン(BH), pH7.0 (; Buffer B)に対して透析した。
【0125】
6.疎水性クロマトグラフィー
得られた酵素溶液を、Buffer Bで平衡化したPhenyl Superose 5/5 (Pharmacia)に供した。非吸着タンパク質をBuffer Bで溶出した後、1.2〜0Mの直線的硫安濃度勾配(−1.2M/17CV)により吸着タンパク質を溶出した。溶出フラクションのHRase活性を測定し、HRase活性を含むフラクションを回収、膜濃縮した。
この後、このPhenyl Superoseによる精製行程を、L−BHを含まないbuffer系で一度行った後、L−BHを加えたbuffer系で更にもう一度行った。
以上の操作で得られた酵素溶液を、精製HRase溶液として使用した。
【0126】
上記精製を行った結果の比活性の上昇を測定した。前出の菌体破砕後の無細胞抽出液、および精製により得られた活性画分のHRase活性を測定した結果、この一連の精製操作により、単位タンパク質重量あたりの比活性は658倍に上昇したことがわかった。なお、後述する活性測定法においては、精製したHRaseの比活性は、79U/mgと見積もられた。
【0127】
得られた活性画分を定法に従い、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動に付し、クマジーブリリアントブルー染色したところ、HRaseは、1本のバンドになるまでに精製されていることが確認され、その分子量は27,000と見積もられた。ゲル濾過の結果とあわせ、本HRaseは、分子量は27,000のサブユニット4量体構造をとることが想定された。
【0128】
7.N末端付近のアミノ酸配列の決定
上記のように精製されたHRaseのN末端付近の配列を以下のようにして決定した。
即ち、精製されたHRase画分のうち、タンパク質量約10μg分をSDS存在下ポリアクリルアミドゲル電気泳動した後、ミリポア社ミリブロットを用い、セミドライ方式(タンパク質構造解析、平野久著、東京化学同人)によって電気泳動後のゲルからポリビニリデンフルオリド(PVDF(Bio-Rad、Trans-Blot))膜に目的酵素を転写した。続いて、PVDF膜上の目的酵素をプロテインシーケンサー(ABI社製、モデル476A)に供し、N末端アミノ酸配列解析を行った。
【0129】
N末端から30残基のアミノ酸配列を決定した。決定されたHRaseのN末端付近のアミノ酸配列を配列表の配列番号8に示した。
【0130】
(実施例2):pHのHRaseへの効果
反応pHによる酵素活性の変化(至適pH)を以下の方法で測定した。
0.3μg/mlの精製HRaseを用い、0.1Mのsodium acetate buffer (pH 3.1, 3.9, 4.9, 6.1)、KPB (pH6.4, 7.2, 8.0)、あるいはsodium carbonate buffer (pH 8.2, 9.1, 10.2, 10.9)の存在下で37℃、30分間反応を行い、HRaseの反応至適pHを測定した。
【0131】
測定結果は、それぞれの反応溶液の実測のpHに対する酵素活性の相対値の形で示した。便宜上、最も高い活性を100とした。測定結果は図3に示した。
【0132】
本発明のHRaseの至適pHは約7〜約9、厳密には約pH8.0〜9.0の範囲であることが分かった(図3参照)。
【0133】
(実施例3):HRaseのpH安定性
3.0μg/mlの精製HRaseを上述の0.1 Mの各pH Buffer存在下で0℃、30分静置した後、pHを8.0に調整し、pH8.0、37℃で30分反応を行い、残存する活性を測定することによりHRaseのpH安定性を測定した。
【0134】
測定結果は、各pHでの前処理に対する酵素活性の相対値の形で示した。便宜上、最も高い活性を100とした。測定結果を図4に示した。
【0135】
本発明のHRaseは、約pH6〜9の範囲において安定であることがわかった(図4参照)。
【0136】
(実施例4):温度のHRaseへの効果
0.3μg/mlの精製HRaseを用い、0,21,30,40,50,60,70および80℃においてpH8.0で30分間反応を行い、HRaseの作用至適温度を測定した。
【0137】
測定結果は、それぞれの反応溶液の実測の温度に対する酵素活性の相対値の形で示した。便宜上、最も高い活性を100とした。測定結果は図5に示した。
【0138】
本発明のHRaseの至適温度は、50〜60℃の範囲内であることが分かった(図5参照)。この反応の至適温度は、従来知られているHRaseの中で、最も高いものである。
【0139】
(実施例5):HRaseの温度安定性
3.0μg/mlの精製HRaseをpH8.0で0, 21, 30, 40, 50, 60, 70および80℃において30分静置した後、pH8.0、37℃で30分間反応を行い、残存する活性を測定することによりHRaseの温度安定性を測定した。
【0140】
測定結果は、各温度での前処理に対する酵素活性の相対値の形で示した。便宜上、最も高い活性を100とした。測定結果を図6に示した。
【0141】
本発明のHRaseは、40℃以下の範囲において安定であることがわかった(図6参照)。
【0142】
(実施例6):HRase活性に対する酵素阻害剤等各種試薬の効果
1.5μg/mlの精製HRaseを、25mM DTT、25mM N−ethylmaleimide (NEM)、12.5mM CuSO4、50mMモノヨード酢酸(IAA)、50mM EDTA、あるいは50% (v/v) methanolと共にpH8.0、0℃で30分間プレインキュベートした。これらを酵素源としてpH8.0、30℃で30分間反応を行って残存活性を測定し、HRaseの各阻害剤に対する感受性を測定した。なお、反応時の酵素濃度および阻害剤濃度は、プレインキュベート時のそれぞれ5分の1となる。
【0143】
残存活性を、試薬無添加時の活性を100%とした場合の相対活性で示した(表2参照)。本発明のHRaseはDTTの添加により活性化され(結果未表示)、また、NEM、ヨード酢酸、あるいはCu2+といったシステイン残基修飾試薬によって著しく阻害され、活性発現に対するシステイン残基の寄与が考えられた。EDTAの添加によっては有意な阻害効果は見られなかったため、HRaseの活性発現に2価イオンは必要でないと考えられた。また、50% (v/v)のメタノールのプレインキュベートもHRase活性には影響を与えなかった(表2)。
【0144】
【表2】
Figure 0004561021
【0145】
(実施例7):精製HRaseによるBHのラセミ化
0.3mg/ml 精製HRase、 0.12g/dl D− or L−BH、50mM KPB (pH 8.0)、 5mM DTTを含む反応液を37℃でインキュベートし、経時的にサンプリングを行いBH量をHPLCにて定量した。対照として、酵素を含まない実験区でも同様の実験を行い、BHの自発的ラセミ化を定量した。その結果を図7に示した。
【0146】
本発明のHRaseはD−BH、L−BHのいずれをも基質認識し、どちらからスタートした場合でも、D、L体比1:1になるまで反応が進行した。しかしラセミ化反応の反応初速度はL−BHをスタート基質とした場合の方が早く、反応初速度から計算される精製HRaseの比活性は、L−BHからD−BHを生成する場合で100U/mg、D−BHからL−BHを生成する場合で79U/mgとそれぞれ見積もられた(図7参照)。
【0147】
一方、HRaseを添加しない対照区でも自発的なBHのラセミ化が観察されたが、HRaseによって触媒されるラセミ化に比べ、著しく遅いものであった(図7参照)。
【0148】
(実施例8):アグロバクテリウム エスピー(Agrobacterim sp. )AJ11220株とHRaseの組合わせによるDL−BH、またはL−BHからのD−Phe生産
アグロバクテリウム エスピーAJ11220株は1977年12月20日に通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託され、受託番号FERM−P4347が付与された微生物である。当該株は、D体の5置換ヒダントイン化合物を加水分解し、対応するD−アミノ酸を生成することが知られている(Agric.Biol.Chem.51巻、721ページ、1987年)。ところがAJ11220株は、ヒダントインラセマーゼを有しないことから、ヒダントイン化合物が自発的にラセミ化しない場合、L体の5置換ヒダントイン化合物からはD体アミノ酸は生成しないことから、化学合成により安価に調製できるDL−5置換ヒダントイン化合物からの対応するD−アミノ酸の生成モル収率は最大でも50%となる。
そこで、自発的にラセミ化しにくいBHを基質に、AJ11220菌体と精製HRaseの組合わせによるD−Phe生産の検討を行った。
【0149】
1.AJ 11220株の培養
CM2G寒天培地(0.5g/dl D−glucose, 1g/dl yeast extract,
1g/dl peptone, 0.5g/dl NaCl, 2g/dl agar, pH7.0)にて、30℃、24時間リフレッシュ後、CM2G液体培地で30℃、24時間シード培養を行った。
メイン培養の培地は0.5g/dl D−glucose, 0.5g/dl (NH4)2SO4, 1g/dl yeast extract, 0.1g/dl KH2PO4, 0.3g/dl K2HPO4, 0.01g/dl MgSO4・7H2O, pH7.0を120℃、20 分オートクレーブ後、各1mg/dlのFeSO4・7H2O、MnSO4・4〜5H2Oおよび2g/dlのCaCO3を添加し使用した。このメイン培養培地50mlを500ml容の坂口フラスコに張り込み、1mlのシード培養液を接種後、30℃、22時間振盪培養した。酵素の誘導のため、メイン培養開始後14時間後に終濃度2g/dlD−glucose, 0.2g/dl DL−BHを、同16、18 時間後に終濃度0.2g/dl DL−BHを添加した。
培養終了後は、遠心分離操作(10,000×g、4℃、10分間)により集菌し、0.1M KPB (pH7.0)で洗浄し、洗浄菌体を得た。
【0150】
2.AJ 11220株とHRaseの組合わせによるDL−BHまたはL−BHからのD−Phe生産
0.5g/dl (26mM) DL−BHまたはL−BHを、0.84μg/ml精製HRase、0.1M KPB (pH8.0)、0.5mM CoCl2および2g/dlのAJ11220株湿菌体とともに30℃で静置反応させた。反応液は、窒素置換により反応液中の酸素をあらかじめ除去した。反応液を経時的にサンプリングし、HPLCで解析することにより生成D−Pheを定量した。
【0151】
D−Phe生成のタイムコースを図8に示した。HRaseを添加しない場合、対照となるD−BHを同様に基質とした場合、30時間反応で、ほぼ基質のすべてがD−Pheに変換された(生成量25.4mM、モル収率98%、図8の□)。ところがDL−BHからのD−Pheの生成量は、最大で12.9mM(反応22時間、モル収率49%、図8の○)となり、L−BHからでは1.5mMの生成に留まった(反応30時間、モル収率6%、図8の△)。DL−BHを基質とした場合のD−Phe生成量がD−BHを基質とした場合のおよそ半分であること、L−BHを基質とした場合にはほとんどD−Pheが生成しなかったことから、本反応系ではBHからのD−Phe生成の律速反応は、L−BHからD−BHへのラセミ化反応であると考えられた。
【0152】
一方、HRaseを添加した場合には、反応30時間後に、DL−BHからは24.6mM(モル収率94%)のD−Phe(図8の黒□)が、またL−BHからでも同様に24.6mM(モル収率94%)のD−Phe(図8の黒△)が生成することが観察された。これらの値はD−BHを基質とした場合とほぼ同量であり、HRaseの添加によりL−BHからD−BHへのラセミ化反応の律速がほぼ完全に解除されていると考えられた。
【0153】
上述のことから、DL−またはL−5置換ヒダントイン化合物をD体選択的加水分解反応系に作用させ、対応するD−アミノ酸を生成させる際、基質として用いる5置換ヒダントイン化合物に自発的ラセミ化能がない、もしくは弱い場合には、L−5置換ヒダントイン化合物は、加水分解を受けないことから未反応のまま反応液に残存することになるが、これにHRaseを組み合わせるにより、基質全量が効率的に加水分解され高収率でD−アミノ酸を生成させることができる。
【0154】
当然のことながら、同様に5置換ヒダントイン化合物をL体選択的加水分解反応系に作用させ、対応するL−アミノ酸を生成させる際にも、HRaseを組み合わせることにより、基質全量が効率的に加水分解され高収率でL−アミノ酸を生成させることができる。
【0155】
(実施例9):BH以外の各種光学活性5置換ヒダントイン化合物のラセミ化
本HRaseのBH以外の光学活性5置換ヒダントイン化合物に対するラセミ化触媒能を検討した。実施例8と同様にアグロバクテリウム エスピーAJ 11220株とHRaseの組合わせによるL−5置換ヒダントインからのD−アミノ酸の生成を確認する方法によった。
【0156】
1g/dlの各種5置換ヒダントインを1.3μg/ml 精製HRase、0.1M KPB (pH 8.0)、0.5mM CoCl2および2g/dlのAJ11220株湿菌体とともに37℃で22時間静置反応させた。基質はD体、L体でそれぞれ反応を行い、HRase非存在下でD体基質から対応するD−アミノ酸が生成すること、L体基質からは対応するD−アミノ酸が生成しないことを確認した上で、HRase存在下でL体基質からD−アミノ酸の生成が見られた場合に基質認識されたと判断した。D−アミノ酸の生成は、光学分割TLC(MERCK、HPTLC CHIR)をメタノール:H2O:アセトニトリル=1:1:4で展開することにより、定性的に見積もった。
【0157】
その結果、HRaseがL−5−インドリルメチルヒダントイン、L−5−(p−ハイドロキシベンジル)ヒダントイン、L−5−イソブチルヒダントインをラセミ化し、各々対応するD−トリプトファン、D−チロシン、D−ロイシンの生成を認めた。
【0158】
(実施例10):HRase遺伝子の単離
以下、HRase遺伝子の単離とE.ColiでのHRaseの発現について述べるが、使用菌株は、マイクロバクテリウム リクエファシエンス(Microbacterium liquefaciens )AJ3912(FERM−P3133)株を用いた。遺伝子の単離、HRaseの発現とも、E.Coli JM109を宿主に用い、ベクターはpUC18を用いた。
【0159】
1.決定アミノ酸配列に基づいたPCR プライマーの作成
前述のマイクロバクテリウム リクエファシエンス(Microbacterium liquefaciens )AJ3912(FERM−P3133)株由来のHRaseのN末端アミノ酸配列(配列表配列番号8)をもとに、配列表配列番号9、10にそれぞれ示すミックスプライマーを作成した。
【0160】
2.菌体の取得
マイクロバクテリウム リクエファシエンス(Microbacterium liquefaciens )AJ3912(FERM−P3133)株をCM2G寒天培地(0.5g/dl グルコース、 1.0g/dl yeast extract、1.0g/dl Peptone、0.5g/dl NaCl、2g/dl 寒天、pH7.0)上で30℃、24 時間培養し菌をリフレッシュした。これを50mlのCM2G液体培地を張り込んだ500mlの坂口フラスコに1白金耳植菌し、30℃、16時間好気的に振とう培養した。
【0161】
3.菌体からの染色体DNAの取得
培養液50mlを遠心分離操作(12,000xg、4℃、15分間)に供し、集菌した。この菌体を10mlの50:20TE(50mM Tris-HCl,pH 8.0,20mMEDTA)に懸濁し、洗浄し、遠心分離操作により、菌体を回収した。再び、この菌体を10ml 50:20 TEに懸濁した。さらに、この懸濁液に、0.5mlの20mg/mlリゾチーム溶液、1mlの10%SDS溶液を加えた後、55℃で20分間インキュベートした。インキュベート後、1倍容の10:1TE飽和のフェノールを加えて除タンパクを行った。分離した水層に対して、1倍容の2−プロパノールを加えて、DNAを沈澱させ、回収した。沈澱したDNAを0.5ml50:20 TEに溶解した後、5μlの10mg/ml RNase、5μlの10mg/ml ProteinaseKを加えて、55℃で2時間反応させた。反応後、1倍容の10:1TE飽和のフェノールで除タンパクを行った。さらに、分離した水層に対して、1倍容の24:1 クロロホルム/イソアミルアルコールを加えて攪拌し、水層を回収した。この操作をさらに2回行った後に得られた水層に、終濃度0.4Mとなるように3M酢酸ナトリウム溶液(pH5.2)を加え、さらに2倍容のエタノールを加えた。沈澱となって生じたDNAを回収し、70%エタノールで洗浄した後、乾燥させ、1mlの10:1 TEに溶解させた。
【0162】
4.カセットPCR法によるHRase遺伝子の一部を含むDNA断片の取得
カセットPCR法によるHRaseをコードする遺伝子(fhr)を含むDNA分子の単離・増幅には、TaKaRa LA PCR in vitro Cloning Kit(宝酒造社製)を用いた。以下断わりの無い限り、説明書の方法に基づき実験を行った。カセットPCR法において、プライマー 1 (1st PCR)とプライマー2(2ndPCR)をプライマーとした場合に、Hind IIIカセットとの間で約0.4kbのバンド(フラグメント 1)が増幅した。この断片の塩基配列を決定することにより、フラグメント 1がfhrの一部分であることを確認した。
【0163】
5.遺伝子ライブラリーからのHRase遺伝子のクローニング
次ぎに、fhrの全長取得のために、フラグメント1をプローブとしてまず、サザンハイブリダイゼーションを行った。
【0164】
プローブとなるDNA断片を約50ng/μlに調整し、このDNA溶液16μlをDIG High Prime(Boehringer Mannheim)を使用して、プロトコールに準じて37℃で24時間インキュベートしてプローブの標識を行った。
染色体DNA 1μgを各種制限酵素の組合わせで完全消化し、0.8%アガロースゲルで電気泳動した後に、ナイロンメンブレン(Boehringer Mannheim, Nylone membranes positively charged)にブロッティングした。以下定法に従ってサザンハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーションはDIG EasyHyb(Boehringer Mannheim)を用いて行い、50℃、30分間プレハイブリダイゼーションを行った後にプローブを添加して、50℃、18時間ハイブリダイゼーションさせた。検出はDIG Nucleotide Detection Kit(Boehringer Mannheim)を用いて行った。
【0165】
その結果、EcoRI/PstIの切断物においては、約2.9kbの位置にバンドが検出された。
この2.9kb領域の断片を回収してpUC18に連結し、E.coli JM109にてライブラリー(120株)を作製した。以下定法に従ってコロニーハイブリダイゼーションを行った。コロニーをナイロンメンブレンフィルター(Boehringer Mannheim、Nylon membranes for colony and plaque hybridization)に転写し、アルカリ変性、中和、固定化の処理を行った。ハイブリダイゼーションはDIG Easy Hybを用いて行った。フィルターをbuffer中に浸し、42℃、30分間プレハイブリダイゼーションを行った。その後、上述の標識プローブを添加し、42℃、18時間ハイブリダイゼーションを行った。SSC bufferでの洗浄後、DIG Nucleotide Detection Kitを用いてポジティブクローン1株を選抜した。
【0166】
6.マイクロバクテリウム リクエファシエンス(Microbacterium liquefaciens )AJ3912(FERM−P3133)由来HRase遺伝子の塩基配列
選抜した形質転換体が保有するプラスミドをMolecular Cloning, 2nd edition, Cold Spring Harbor press (1989)に記載される方法に従って調製し、プローブとハイブリダイズした近傍の塩基配列を決定した。HRaseの30残基のN末端アミノ酸配列を含むタンパク質をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)が存在し、HRaseをコードする遺伝子fhrであることを確認した。HRase遺伝子全長の塩基配列を配列表配列番号1に示した。得られたORFは既知のシュードモナス属細菌由来のHRase(J.Bacteriol.174巻、962ページ、1992年)と48%の相同性を示した。
【0167】
7.HRase遺伝子のE.Coliでの発現
fhrをE.Coliで発現させるために、pUC18のlacプロモーターの下流にfhrを連結したプラスミドpUCFHRを構築した。マイクロバクテリウム リクエファシエンス(Microbacterium liquefaciens )AJ3912(FERM−P3133)株染色体DNAを鋳型とし、表2に示すオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRにより増幅した断片をEcoRI、BamH Iで処理し、pUC18のEcoR I、BamH I切断物とライゲーションした後、E.Coli JM109 に形質転換した。アンピシリン耐性株の中から、目的のプラスミドを持った株を選択し、構築した発現プラスミドpUCFHRと命名した。
【0168】
【表3】
Figure 0004561021
【0169】
pUCFHRを持つHRaseのE. Coli での発現形質転換体を0.1mg/ml アンピシリンを含むLB培地で、37℃、16時間、シード培養した。LB培地50mlを張り込んだ500ml坂口フラスコに、この前培養液を1mlシードし、37℃にて本培養を行った。培養開始2.5時間後に、終濃度1mMとなるようにイソプロピル1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(IPTG)を添加し、さらに4時間培養を行った。
培養終了後、集菌、洗浄を行い、5 mlの50 mM KPB (pH 8.0)に懸濁し、0.1 mmφ glass beadsとともに3分間(30 秒×6 回、90秒のインターバル)ビーズビーターにて破砕した。溶液を回収し、20,000 g×10 分の遠心分離操作を行い、その上清を無細胞抽出液とした。
【0170】
8.HRase活性測定
培養終了後、無細胞抽出液を調製し、これを酵素源としてHRase活性の測定を行った。
HRase活性の測定は、120 mg/dl L−BH、50 mM KPB (pH 8.0)、5 mM DTT、5 mM EDTA、150 mM NaClおよび酵素溶液を含む反応液を37℃で30分インキュベートした後、9倍容の1.1mM CuSO4、11.1 mM H3PO4を添加することにより反応を停止させた。20,000 g×10 分の遠心により沈澱を取り除いた後、HPLCにてラセミ化したBH量を定量することによった。酵素活性の単位として、この条件にて1分に1μmolのBHをラセミ化する酵素活性をもって1Uと定義した。
【0171】
分析に用いたHPLCの条件は以下の通り。
カラム:ダイセル化学CHIRALPAK WH 0.46cmφ×25cm
移動相:5% (v/v) methanol, 1mM CuSO4
カラム温度:50℃
流速:1.5 ml/分
検出:UV210
【0172】
その結果、pUC18FHRを導入した場合のみHRase活性が検出され、クローニングしたfhr遺伝子がE. coliで発現したことを確認した(表4)。
【0173】
【表4】
Figure 0004561021
【0174】
【発明の効果】
本発明によれば、マイクロバクテリウム属細菌からこれまで知られていないHRaseを得ることができる。このHRaseは従来知られているHRaseに比較して、反応の至適温度が高いという特徴を有するので、反応温度を高くできる結果、より反応速度を速くすることが可能となり、目的とする反応を効率的に進めさせることができる。また反応中の反応液の微生物汚染のリスクが軽減されることから、品質保持を含めた工程管理が容易になる利点がある。さらに、本発明のヒダントインラセマーゼと、5置換ヒダントイン化合物を光学選択的に加水分解する系とを組み合わせて利用することにより、高収率にて医薬品、化学工業品、食品添加物等の製造に有用な光学活性アミノ酸を生成させることができる。
【0175】
【配列表】
Figure 0004561021
Figure 0004561021
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Figure 0004561021
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【図面の簡単な説明】
【図1】ヒダントインラセマーゼ、ヒダントイナーゼおよびN−カルバミル−L−アミノ酸ハイドロラーゼをコードする構造遺伝子群の構造を示す図である。
【図2】本発明のヒダントインラセマーゼの製造工程を示すフローチャートである。
【図3】本発明のヒダントインラセマーゼの至適pH曲線を示す図である。
【図4】本発明のヒダントインラセマーゼのpH安定曲線を示す図である。
【図5】本発明のヒダントインラセマーゼの至適温度曲線を示す図である。
【図6】本発明のヒダントインラセマーゼの温度安定曲線を示す図である。
【図7】本発明のヒダントインラセマーゼによるBHのラセミ化のタイムコースを示す図である。
○:基質D-BH(HRase添加)、 △:基質D-BH(HRase無添加)、
●:基質L-BH(HRase添加)、黒△:基質L-BH(HRase無添加)
【図8】 D-Phe生成のタイムコースを示す図である。
□:基質D-BH(HRase無添加)、 ○:基質DL-BH(HRase無添加)、
△:基質L-BH(HRase無添加)、黒□:基質DL-BH(HRase添加)、
黒△:基質L-BH(HRase添加)

Claims (14)

  1. 下記(a)または(b)のアミノ酸配列を有し、5置換ヒダントインラセマーゼ活性を有するタンパク質。
    (a)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列
    (b)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加または逆位を含むアミノ酸配列
  2. 5置換ヒダントインのラセミ化反応を触媒する5置換ヒダントインラセマーゼにおいて、作用至適温度が50〜60℃の範囲内にあることを特徴とする、請求項1に記載のタンパク質。
  3. 5置換ヒダントインのラセミ化反応を触媒する5置換ヒダントインラセマーゼにおいて、作用至適pHがpH7〜9の範囲内にあることを特徴とする、請求項1または2に記載のタンパク質。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のタンパク質を、光学活性5置換ヒダントイン化合物に作用させることを特徴とする光学活性5置換ヒダントイン化合物のラセミ化方法。
  5. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のタンパク質、および、5置換ヒダントインを光学選択的に加水分解する酵素または当該酵素含有物を、5置換ヒダントインに作用させることを特徴とするN−カルバミルアミノ酸の製造方法。
  6. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のタンパク質、5置換ヒダントインを加水分解する酵素または当該酵素含有物、および、N−カルバミルアミノ酸を光学選択的に加水分解する酵素または当該酵素含有物を、5置換ヒダントインに作用させることを特徴とする光学活性アミノ酸の製造方法。
  7. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のタンパク質をコードするDNA。
  8. 下記(a)または(b)の塩基配列を有し、5置換ヒダントインラセマーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
    (a)配列表配列番号1に記載の塩基配列
    (b)配列表配列番号1に記載の塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列
  9. 下記(c)または(d)のアミノ酸配列を有し、5置換ヒダントインラセマーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
    (c)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列
    (d)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加または逆位を含むアミノ酸配列
  10. 請求項7〜9のいずれかに記載のDNAとベクターDNAとが接続されて得られる組み換えDNA。
  11. 前記ベクターDNAは、pUC系プラスミド、pBR322系プラスミドまたはその誘導体に由来することを特徴とする請求項10に記載の組み換えDNA。
  12. 請求項10または11に記載の組み換えDNAによって形質転換された細胞。
  13. 前記細胞は、エシェリヒア コリに由来することを特徴とする請求項12に記載の細胞。
  14. 請求項12または13に記載の細胞を培地中で培養し、培地中および/または細胞中に5置換ヒダントインラセマーゼ活性を有するタンパク質を蓄積させることを特徴とする5置換ヒダントインラセマーゼ活性を有するタンパク質の製造方法。
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