上述のように、従来の液晶表示装置用の背面照明装置(バックライトユニット)では、導光板から出射される光を集光して効果的に液晶表示板に照射するために、図15に示すようなプリズム形状(三角柱状)の光学構造体を複数有するプリズムシート(光学調整部材)が用いられてきた。この従来のプリズムシートは、すぐれた集光性能を有するものの、1枚のプリズムシートでは、プリズムシートから出射される光の色が分離してしまうという問題があった。その結果、該プリズムシートを用いた照明装置で物体を照明すると、物体の影のエッジ部に色がついて滲んだり、あるいは、該プリズムシートを液晶表示装置のバックライトユニットに用いた場合には、ある角度で見た場合と正面で見た場合とで色が異なって見えるといった問題が生じた。
上述した色分離の課題を図17を用いてより具体的に説明する。図17は、図15に示したプリズムシート507aのプリズム状構造体507dの拡大断面図であり、プリズムシート507aに所定の入射角度で光511が入射された際のプリズム状構造体507dによる光の屈折の様子を示した図である。なお、図17では、上記色分離の課題をより分かり易くするために、導光板の出射面上に従来のプリズムシートを直接配置した場合、すなわち、図16に示すような構成のエッジライト型のバックライトユニットにおける光の屈折の様子を示した。なお、図17中の光線512は、プリズムシート507aに入射された光線のうち、該光線の輝度が最大となる方向に進行する光線成分、すなわち、輝度ピーク光線を示している。
プリズム状構造体507dに入射された輝度ピーク光線512は、図17に示すように、プリズム状構造体507dの光進行方向側の面507eで屈折し、プリズムシート507aの厚さ方向に出射される。その際、プリズム状構造体507d(プリズムシート507a)の形成材料の屈折率が光の波長により異なるので、輝度ピーク光線512に含まれる波長成分に応じてプリズム状構造体507dの面507eにおける屈折量が異なる。その結果、図17に示すように、波長に応じてプリズム状構造体507dの面507eにおける屈折光の屈折方向が変わり、プリズムシート507aからの出射光513には所定のパターンで色分離が生じる。なお、図17中では、説明を簡略化するために、2つの波長成分のみの分離を示した。
また、1枚のプリズムシートを用いただけでは、上述した色分離の問題以外に、輝度も不足するという問題もあった。従来の液晶表示装置等に用いられるバックライトユニット、特に、エッジライト方式のバックライトユニットでは、上述した色分離及び輝度不足の課題を解決するために、図14に示すように通常、プリズムシートを2枚重ねて用いている。
しかしながら、上述のように、図14に示すような構成の液晶表示装置では、上記課題を解決するために、多数の光学シート群(図14の例では、プリズムシート2枚、拡散シート2枚)を必要とし、液晶表示装置の薄型化及び低コスト化に限度があった。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、1つの光学調整部材で上述した色分離及び輝度不足の課題を解決することができる光学調整部材を用いて液晶表示装置の薄型化及び低コスト化を可能とすることである。
本発明の第1の態様に従えば、液晶表示装置であって、
光源と、
前記光源と光学的に接続された光学調整部材であって、上記光源からの光が入射される光入射面を有し、且つ、光透過性を有する基材、及び、上記基材の、上記光入射面と反対側の面の上に設けられた光透過性を有する複数の線状体を有し、
上記線状体の延在方向に直交する断面が、第1〜第3辺で画成された三角形状の第1断面部と、第1断面部より面積が小さく且つ第4〜第6辺で画成された略三角形状の第2断面部とを有し、第1断面部の第1辺が上記基材の上記光入射面と反対側の面と平行に接しており、第2断面部が第1断面部の第2辺上に設けられており、且つ、第2断面部の第4辺が第1断面部の第2辺と平行に接しており、
第1断面部の第1辺と第2辺のなす角は、第1辺と第3辺のなす角よりも小さい光学調整部材と、
前記光学調整部材の前記複数の線状体に対向して配置された第1の偏光素子、液晶層、及び第2の偏光素子を有し、これらがこの順に積層された液晶表示素子とを備え、
第1の偏光素子が、前記線状体の前記延在方向にほぼ垂直な方向に偏光した直線偏光を優勢に透過させる方向に配置されている液晶表示装置が提供される。
本発明者らが、入射光線の進行方向を制御する光学調整部材について鋭意検討を重ねたところ、上述した構造の光学調整部材を用いることにより、光学調整部材からの出射光の色分離を抑制できることが分かった。これは、光学調整部材を上述した構造にすることにより、第2断面部の三角形状体の第5辺を含む線状体の面で屈折した光の色分離パターンと、第2断面部の三角形状体の第6辺を含む線状体の面で屈折した光の色分離パターンとが、光学調整部材に入射された光の進行方向に対して互いに逆パターンとなり、第2断面部の三角形状体の第5辺を含む線状体の面で屈折した光と第2断面部の三角形状体の第6辺を含む線状体の面で屈折した光との間で互いに色分離を打ち消しあうためである(色分離抑制の原理は後で詳述する)。
さらに、上述の光学調整部材では、上述した構造にすることにより、導光板から出射されたある程度指向性の揃った光線の進行方向を光学調整部材の厚さ方向に直接変更することができるので、従来のように、プリズムシート群と導光板との間に下部拡散シートを設ける必要がなくなる。すなわち、上述の光学調整部材では、従来のように、下部拡散シートを用いて導光板から出射されたある程度指向性の揃った光を一旦ブロードな光に変換する必要がない。それゆえ、例えば導光板等から出射された光の利用効率を向上させ、輝度特性を向上させることができる。すなわち、上述の光学調整部材では、一つの光学調整部材で、上述した出射光の色分離及び輝度不足の課題を解消することができる。さらに、本発明においては、液晶表示素子の、複数の線状体に対向して配置された第1の偏光素子がP偏光成分を優勢に透過させる方向に配置されている。後述のように、光学調整部材から出射される光は、P偏光成分が優勢であるので、第1の偏光素子を、P偏光成分を優勢に透過させる方向に配置することにより、光学調整部材から出射される光を有効に液晶表示素子に入射させることができる。第1の偏光素子を、P偏光成分を優勢に透過させる方向に配置することで、液晶表示素子を透過して液晶表示装置から出射される光の輝度を高めることができるとともに、液晶表示装置から出射される光の色分離抑制の効果を高めることができる。
本発明の液晶表示装置において、前記複数の線状体は、それぞれ、第2断面部を画成する複数の三角形状体を含み、前記複数の三角形状体は、第1断面部の第2辺上に隙間なく配置されており、且つ、前記三角形状体の数が2個以上9個以下であることが好ましい。
この場合には、前記三角形状体の数が2個以上9個以下であるので、色分離を充分に抑制することができるとともに、輝度特性を向上させることができ、一つの光学調整部材で、上述した出射光の色分離及び輝度不足の課題を解消することができる。なお、複数の三角形状体が第1断面部の第2辺上に隙間なく配置されるとは、複数の三角形状体が互いに接した状態で配置されており、複数の三角形状体が第2辺全体を覆っていることを意味する。
本発明の液晶表示装置では、複数の三角形状体の第5及び第6辺のうち、第1断面部の第1辺に対向する頂角に近い方の辺が、他方の辺より短いことが好ましい。このような構成にすると、例えば、図1及び2に示すように、第2断面部12aの第4辺12bに対向する頂角(例えば、図1中の角部12e)を画成する2つの面のうち、輝度ピーク光線52を光学調整部材1の厚さ方向に屈折させる線状体13の集光面12f(第1断面部11aの頂角11eに遠い方の辺12cを含む面)をより広くすることができる。それゆえ、この場合、線状体の集光面に入射される光が増大するので(集光させる光線が増大するので)、入射光の利用効率をさらに向上させ、輝度特性をさらに向上させることができる。
本発明に関連する液晶表示装置では、上記光学調整部材に入射された光線の輝度特性において輝度が最大となる方向に進行する輝度ピーク光線が上記光学調整部材で屈折した際に、前記三角形状体の第5辺を含む上記線状体の面で屈折した後の輝度ピーク光線の進行方向と、前記三角形状体の第6辺を含む上記線状体の面で屈折した後の該輝度ピーク光線の進行方向とが、屈折前の輝度ピーク光線の進行方向に対して互いに逆となるように、前記三角形状体の第5辺及び第6辺が第4辺に対して傾斜していることが好ましい。
本発明の液晶表示装置では、第1断面部の第3辺の第1辺に対する傾斜方向が、上記光学調整部材に入射された光線の輝度特性において輝度が最大となる方向と略平行であることが好ましい。より好ましくは、第1断面部の第3辺と第1辺との間の角度(例えば、図2中のβ1)が、光学調整部材に入射された輝度ピーク光線(例えば、図2中の光線52)の基材表面に対する角度(例えば、図2中の90度−θ)と同じまたは大きいことが好ましい。このような構成にすると、第1断面部の第3辺を含む線状体の面(例えば、図1中の面13c)における入射光の反射及び屈折が非常に小さくなるので、入射光の利用効率がさらに向上する。
本発明の液晶表示装置では、上記複数の線状体が、その延在方向に直交する方向に周期的に配置されていることが好ましい。
本発明の液晶表示装置では、前記線状体の屈折率がn1であって、前記基材及び前記線状体を取り囲む空気の屈折率n0が1.0であって、前記空気と前記基材との界面の法線方向と前記空気中における前記光線の方向とのなす角度がI1であって、前記法線方向と前記線状体の内部における前記光線の方向とのなす角度がI2であって、第1辺と第2辺、第4辺と第5辺、及び、第4辺と第6辺のなす角度がそれぞれα1、α2及びβ2であるとき、
n0 sin I1 = n1 sin I2
0 ≦ sin (α1+α2−I2) ≦ 1/n1
I2 ≦ α1+α2 ≦ I2+90
−I2 ≦ β2−α1 ≦ 90−I2
を満たしていることが好ましい。
この場合には、線状体の、第1辺と第2辺のなす角度α1、第4辺と第5辺のなす角度α2、及び、第4辺と第6辺のなす角度β2が、前記空気と前記基材との界面の法線方向と前記空気中における前記光線の方向とのなす角度がI1であって、前記法線方向と前記線状体の内部における前記光線の方向とのなす角度がI2であるとき、
n0 sin I1 = n1 sin I2
0 ≦ sin (α1+α2−I2) ≦ 1/n1
I2 ≦ α1+α2 ≦ I2+90
−I2 ≦ β2−α1 ≦ 90−I2
の条件を満たしているので、基板及び線状体に入射した光線を、集光面において全反射させてロスすることなく、外部に取り出すことができる。
本発明の液晶表示装置では、前記線状体の屈折率がn1であって、前記光線の、前記基材及び前記線状体を取り囲む空気と前記線状体との界面における全反射の臨界角がI2maxであって、sin I2max = 1/n1を満たし、第1辺と第2辺、及び、第4辺と第5辺のなす角度がそれぞれα1及びα2であるとき、
α1+α2 ≦ 2・I2max
を満たしていることが好ましい。
この場合には、光線の、前記空気と前記線状体との界面における全反射の臨界角がI2maxであって、第1辺と第2辺、及び、第4辺と第5辺のなす角度がそれぞれα1及びα2であるとき、角度の和(α1+α2)が2・I2max以下である場合には、入射した光線の入射角度によらず、入射した光線は光学調整部材の集光面で全反射することなく、光学調整部材の外部に向かって出射できる。
本発明の第2の態様に従えば、液晶表示装置であって、
光源と、
前記光源と光学的に接続された光学調整部材であって、上記光が入射される光入射面を有し、且つ、光透過性を有する基材、及び、複数の線状体であって、上記基材の、上記光入射面と反対側の面の上に設けられ、光透過性を有し、且つ、それぞれが集光面及び補正面を有する複数の線状体を有し、
上記線状体の延在方向に直交する断面が略三角形であり、該断面を画成する3つの辺のうち、一つの辺が上記基材の上記光入射面と反対側の面と平行に接しており且つ他の2辺のうちの一方の辺が階段状であって、前記階段状の辺は、前記断面と、前記集光面及び前記補正面との交線であって、上記断面の、上記基材に平行な辺と上記階段状の辺とのなす角度は、上記基材に平行な辺と残りの辺とのなす角度よりも小さい光学調整部材と、
前記光学調整部材の前記複数の線状体に対向して配置された第1の偏光素子、液晶層、及び第2の偏光素子を有し、これらがこの順に積層された液晶表示素子とを備え、
第1の偏光素子が、前記線状体の前記延在方向に垂直な方向に偏光した直線偏光を優勢に透過させる方向に配置されている液晶表示装置が提供される。
本願において用語「集光面」は、線状体の光出射面であって、基材の側から入射された光線を光学調整部材の厚さ方向(基材の厚さ方向)に屈折させる面をいい、用語「補正面」は、線状体の光出射面であって、基材の側から入射された光線を光学調整部材の面方向(基材の面方向)に屈折させる面をいう。また、本願において、「線状体の断面の、基材に平行な辺と階段状の辺とのなす角度」は、基材に平行な辺と階段状の辺との交点と、線状体の集光面と補正面とで形成される凹条部の先端とを通る直線と、基材に平行な辺とのなす角度で定義される。換言すれば、「線状体の断面の、基材に平行な辺と階段状の辺とのなす角度」は、基材に平行な辺と階段状の辺との交点を通り階段状の辺と交差する直線と、基材に平行な辺とのなす角度のうち、最も小さい角度として定義される。例えば、図4に示されているような、断面が階段状の辺を有する線状光学構造体24において、「線状体の断面の、基材に平行な辺と階段状の辺とのなす角度」はα1であり、「基材に平行な辺と残りの辺とのなす角度」はβ1である。
本発明の液晶表示装置は、さらに、前記光源からの光を前記光学調整部材に導く導光板を備え、前記光源が前記導光板の端部に配置されていることが好ましい。
この場合には、本発明の液晶表示装置にエッジライト方式の照明を適用した場合であっても、一つの光学調整部材により出射光の色分離を抑制し、且つ輝度を向上させることができるので、従来のように、2枚のプリズムシートを用いる必要が無くなる。また、上述のように、本発明の液晶表示装置に用いられる光学調整部材を用いた場合には、従来のように、プリズムシート群と導光板との間に下部拡散シートを設ける必要がなくなる。それゆえ、本発明の液晶表示装置にエッジライト方式の照明に適用する際に、光学部材の数を減らすことができ、装置の薄型化及び低コスト化を図ることができる。
本発明の液晶表示装置において、前記基材の屈折率が前記線状体の屈折率と同じであることが好ましい。この場合には、基材と線状体の屈折率が同じであるので、基材と線状体の接合面(界面)において光は直進する。そのため、基材と線状体との接合面の形状を任意にすることができ、設計の自由度を増すことができる。また、基材と線状体とを同一の材質で一体に形成することも可能である。
本発明の液晶表示装置において、前記基材が、前記線状体の屈折率とは異なる屈折率を有してもよく、平行平板状に形成されていてもよい。この場合には、基材が平行平板状に形成されているので、基材が線状体の屈折率と異なる屈折率を持っている場合であっても、基材と線状体との界面における光の屈折角は、基材が線状体の屈折率と同じ屈折率を有する場合における、基材と空気との界面での光の屈折角と同じになる。そのため、本発明をそのまま適用することができる。
本発明の液晶表示装置では、さらに、上記導光板の上記光学調整部材側とは反対側に配置された反射部材を備えることが好ましい。
本発明の液晶表示装置に用いられる光学調整部材では、延在方向に直交する断面が略三角形であり且つ該断面の一つの辺に2段以上9段以下の段を有する階段部が形成された線状体を基材上に複数設けることにより、一つの光学調整部材により出射光の色分離を抑制することができる。また、本発明の液晶表示装置に用いられる光学調整部材では、導光板から出射されたある程度指向性の揃った光の進行方向を光学調整部材の厚さ方向に直接変更することができるので、導光板から出射された光の利用効率を向上させ、輝度特性を向上させることもできる。すなわち、上述の光学調整部材によれば、一つの光学調整部材により出射光の色分離を抑制することができ且つ輝度特性を向上させることができる。さらに、液晶表示素子の第1の偏光素子を、P偏光成分を優勢に透過させる方向に配置することで、液晶表示素子を透過して液晶表示装置から出射される光の輝度を高めることができるとともに、液晶表示装置から出射される光の色分離抑制の効果を高めることができる。
本発明の液晶表示装置によれば、上述の光学調整部材を備えているので、光の色分離及び輝度不足の課題を解決しつつ、液晶表示装置の薄型化及び低コスト化を図ることができる。
以下に、本発明に係る液晶表示装置及びそれに用いる光学調整部材、照明装置の例を図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。
本発明の液晶表示装置100は、図3に示すように、光学調整シート1と、液晶表示パネル7(液晶表示素子)と、バックライトユニット6(照明装置)とを主に備える。以下、まず光学調整シート1について説明し、その後、液晶表示パネル7及びバックライトユニット6について説明する。
[光学調整シートの構成]
実施例1の液晶表示装置に用いられる光学調整シート(光学調整部材)の概略構成図を図1に示した。この例の光学調整シート1は、図1に示すように、シート状の光透過性(透明)基材10と、基材10上に形成された複数の線状光学構造体13(線状体)とから構成される。
この例では、基材10として、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シートを用いた。なお、基材10の厚さは、光学調整シートの加工の容易性、ハンドリング性等を考慮すると、10〜500μmの範囲が好ましい。また、基材10の形成材料としては、PET以外では、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート(PC)、ポリオレフィン、ポリプロピレン、セルロースアセテート、ガラスなどの無機透明物質等、任意の光透過性材料を用いることができる。基材10の形状としては、典型的には、この例のようにシート状であるが、より肉厚の板状あるいは任意の形状の基材を用いてもよい。さらに、基材10の表面は平坦に限らず、立体面であってもよい。
線状光学構造体13は、図1に示すように、その延在方向に直交する断面が略三角形であり、その延在方向に沿った一つの面13a(以下、底面ともいう)が基材10の表面と平行に接している。すなわち、線状光学構造体13は、その底面13aが基材10の表面と対向するように、基材10上に設けられている。
また、この例では、図1に示すように、複数の線状光学構造体13の形状及び寸法は全て同じとし、複数の線状光学構造体13をその延在方向と直交する方向に周期的に配置し、隣り合う線状光学構造体13の底角部が互いに接するように配置した。なお、複数の線状光学構造体13の配置間隔(ピッチ)は7〜100μm程度であることが好ましい。複数の線状光学構造体13の配置間隔が7μmより小さくなると、線状光学構造体13を形成するために用いる金型に対して精度の高い金型加工が必要となりコストが高くなる。また、複数の線状光学構造体13の配置間隔が100μmより大きくなると、特にシート状の基材を用いた場合には、次のような問題が生じる。複数の線状光学構造体13の配置間隔が100μmより大きくなると、線状光学構造体13のサイズも相対的に大きくなり、線状光学構造体13を形成する樹脂の体積が増大する。この結果、樹脂を硬化させて線状光学構造体13を形成した際の樹脂の硬化収縮量も増大する。この場合、金型に対する樹脂のいわゆる「食いつき」が強くなり、樹脂が金型から剥離し難くなる。特に、ロール状の金型を用いてシート状基材上に線状光学構造体13を形成した場合には、剥離時に線状光学構造体13が破壊されたり、線状光学構造体13が金型表面に残留したりするという問題が生じる。また、複数の線状光学構造体13の配置間隔が100μmより大きくなると、線状光学構造体13の高さも高くなるので厚い光学調整部材となる。
この例では、線状光学構造体13を芳香族系アクリレートの紫外線硬化型樹脂(屈折率1.60)で形成した。なお、線状光学構造体13の形成材料としては、屈折率1.3〜1.9の任意の樹脂材料が利用可能である。また、この例のように、線状光学構造体13を基材10の形成材料とは異なる材料で形成する場合、その形成材料としては、アクリル樹脂やウレタン樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン系樹脂などの透明プラスチック樹脂を用いてもよい。なお、線状光学構造体13を基材10と同じ材料で形成してもよい。
また、線状光学構造体13は、図1に示すように、基材10上に形成され且つ線状光学構造体13の延在方向と同じ方向に延在した第1線状プリズム部11と、第1線状プリズム部11の頂角を画成する一つの面上に形成され且つ線状光学構造体13の延在方向と同じ方向に延在した複数の第2線状プリズム部12とから構成される。なお、この例では、後述するように、第1線状プリズム部11と第2線状プリズム部12とは一体的に形成されている。すなわち、この例では、複数の第2線状プリズム部12が形成されている線状光学構造体13の面13bは、階段状となっている(以下、階段面ともいう)。なお、この例では、図1に示すように、第1線状プリズム部11の頂角を画成する一つの面上に3つの第2線状プリズム部12を形成したが、本発明はこれに限定されない。第2線状プリズム部12の数や形状は、用途、必要とする光学特性等に応じて適宜変更し得る。また、用途、必要とする光学特性等に応じて、第1線状プリズム部11の頂角を画成する2つの面の両方に第2線状プリズム部12を設けてよい。
線状光学構造体13の拡大断面図を図2に示した。なお、図2中に示した入射光線52は、光学調整シート1に入射された(光学調整シート1内を進行する)光線の輝度特性において輝度が最大となる方向に進行する光線、すなわち、輝度ピーク光線を示している。線状光学構造体13のその延在方向に直交する断面は、図2に示すように、第1線状プリズム部11の第1断面部11aと、第2線状プリズム部12の第2断面部12aとから構成される。
第1断面部11aは、図2に示すように、基材10の表面と平行に接する底辺11b(第1辺)と、底辺11bの両端からそれぞれ所定の角度(図2中のα1及びβ1)で延在した2つの傾斜辺11c(第2辺)及び11d(第3辺)とにより画成される。この例では、図2に示すように、第1断面部11aの底辺11bと対向する頂角11eを画成する2つの傾斜辺11c及び11dのうち、第2断面部12aと接する傾斜辺11c(第2辺)の長さを、もう一方の傾斜辺11d(第3辺)より長くした。それゆえ、第1断面部11aの底辺11bと傾斜辺11cとの間の角(第1底角)の角度α1は、底辺11bと傾斜辺11dとの間の角(第2底角)の角度β1より小さくなる。すなわち、この例では、第1断面部11aの形状は、非対称の三角形とした(二等辺三角形でない)。
また、この例では、図2に示すように、第1断面部11aの傾斜辺11dの基材10表面の法線方向に対する傾斜角を、基材10表面の法線方向に対する輝度ピーク光線52の進行方向の傾斜角(図2中のθ)と略同じになるようした。すなわち、図2中の傾斜辺11dを含む(対応する)線状光学構造体13の面(図1中の面13c、以下、この面を平坦面ともいう)の傾斜方向が輝度ピーク光線52の進行方向と略平行となるようにした。なお、この例では、後述するように、線状光学構造体13の平坦面13cの基材表面に対する傾斜角度(図2中のβ1)を線状光学構造体13内の輝度ピーク光線52の基材表面に対する傾斜角度(90度−θ)より若干大きくなるようにした。
この例の第1断面部11aの具体的な寸法は、第1断面部11aの底辺11bの長さを35μmとし、第1断面部11aの第1底角の角度α1を39.14度とし、第2底角の角度β1を57.71度とした。
第2断面部12aは、図2に示すように、第1断面部11aの傾斜辺11c(第2辺)と平行に接する底辺12b(第4辺)と、底辺12bの両端からそれぞれ所定の角度(図2中のα2及びβ2)で延在した2つの傾斜辺12c(第5辺)及び12d(第6辺)とにより画成される。この例では、図2に示すように、第2断面部12aの2つの傾斜辺12c及び12dのうち、第1断面部11aの底辺11bと対向する頂角11eに近い側に位置する傾斜辺12dの長さを、もう一方の傾斜辺12cより短くした。それゆえ、第2断面部12aの底辺12bと傾斜辺12cとの間の角(第1底角)の角度α2は、底辺12bと傾斜辺12dとの間の角(第2底角)の角度β2より小さくなる。すなわち、この例では、第2断面部12aの形状は、非対称の三角形とした(二等辺三角形でない)。
なお、第2断面部12aの傾斜辺12c(第5辺)を含む第2線状プリズム部12の面12fは、後述するように、主に、入射光線の進行方向を光学調整シート1の厚さ方向に屈折させる面、すなわち、入射光線を集光させる作用を有する面である。それゆえ、以下では、この第2断面部12aの傾斜辺12cを含む面12fを集光面という。一方、第2断面部12aのもう一方の傾斜辺12d(第6辺)を含む第2線状プリズム部12の面12rは、後述するように、主に、光学調整シート1からの出射光の色分離を抑制する作用を与えるので、以下では、補正面と称す。
この例の光学調整シート1のように、第1断面部11aの頂角11eに遠い側に位置する第2断面部12aの傾斜辺12cの長さを、もう一方の傾斜辺12dより長くすることにより、第2線状プリズム部12の集光面12fをより広くすることができ、入射光線の利用効率を向上させることができる。
また、この例では、図2に示すように、光学調整シート1に入射された輝度ピーク光線52が第2線状プリズム部12の集光面12fで屈折した際の光線53の屈折方向と、第2線状プリズム部12の補正面12rで屈折した際の光線54の屈折方向とが、屈折前の輝度ピーク光線52の進行方向に対して互いに逆になるように、第2断面部12aの第1及び第2底角の角度α2及びβ2を設定した。また、この例では、第2線状プリズム部12の集光面12fで屈折した際の光線53の所定の波長成分(例えば、図2中の波長A成分53A)の屈折方向と屈折前の輝度ピーク光線52の進行方向との間の角度(図2中の角度γ)と、第2線状プリズム部12の補正面12rで屈折した際の光線54の所定の波長成分(例えば、図2中の波長A成分54A)の屈折方向と屈折前の輝度ピーク光線52の進行方向との間の角度とが、略同じになるように、第2断面部12aの第1及び第2底角の角度α2及びβ2を設定した。このような構成にすることにより、光学調整シート1からの出射光の色分離を一層抑制することができる。
なお、光学調整シート1からの出射光の色分離が十分抑制できる程度の範囲内であれば、第2線状プリズム部12の集光面12fで屈折した際の光線53の所定の波長成分の屈折方向と屈折前の輝度ピーク光線52の進行方向との間の角度と、第2線状プリズム部12の補正面12rで屈折した際の光線54の所定の波長成分の屈折方向と屈折前の輝度ピーク光線52の進行方向との間の角度とが異なっていてもよい。
この例の第2断面部12aの具体的な寸法は、第2断面部12aの底辺12bの長さを約10.44μmとし、第2断面部12aの第1底角の角度α2を30度とし、第2断面部12aの第2底角の角度β2を70度とした。
なお、この例では、3つの第2線状プリズム部12の形状及び寸法は全て同じとし、3つの第2線状プリズム部12をその延在方向と直交する方向に周期的に配置し、隣り合う第2線状プリズム部12の底角部が互いに接するように配置した。すなわち、この例では、線状光学構造体13の階段面13bを構成する複数の第2線状プリズム部12の集光面12f及び補正面12rがそれぞれ、互いに平行で且つ等間隔に配置されるような構造にした。
[光学調整シートの製造方法]
この例の光学調整シート1の製造方法は次の通りである。図1に示すような複数の線状光学構造体13からなる光学構造体の形状に対応する凹凸パターンが切削加工により表面に形成されたロール状の金型を用意する。次いで、用意した基材10と金型表面との間に、紫外線硬化樹脂を充填し、波長340〜420nmの紫外線を照射して充填した紫外線硬化樹脂を硬化させた。次いで、金型から基材10を剥離した。この例では、このようにして、基材10上に、紫外線硬化樹脂からなる複数の線状光学構造体13が形成された光学調整シート1を得た。
なお、本発明の液晶表示装置に用いられる光学調整シートの製造方法は上記方法に限定されず、公知の任意の方法を用いることができる。例えば、熱可塑性樹脂で基材を作製し、複数の線状光学構造体からなる光学構造体の形状に対応する凹凸パターンが切削加工により表面に形成された金型を基材に加熱押圧して、金型の凹凸パターンを転写する熱転写法などにより、該基材本体に光学構造体を直接形成しても良い。また、周知の押出成型法やプレス成型法、あるいは金型に溶融樹脂を注入する射出成形法等により基材上に複数の線状光学構造体からなる光学構造体を形成しても良い。この場合、基材と、線状光学構造体とは同じ材料で形成されることになる。
[液晶表示パネル]
上述の光学調整シート1を用いた液晶表示装置の概略構成が図3に示されている。なお、図3では、液晶表示装置の構成を分かり易くするために、各光学部材を離して記載しているが、実際の装置内では各光学部材は接した状態で重ねられている。この例の液晶表示装置100は、図3に示すように、液晶表示パネル7(液晶表示素子)と、バックライトユニット6(照明装置)と、上述の光学調整シート1とから構成される。
図3に示すように、液晶表示パネル7は、第1の偏光板7a、ガラス基板7b、画素電極を成す第1の透明導電膜7c、第1の配向膜7d、液晶層7e、第2の配向膜7f、対抗電極を成す透明導電膜7g、カラーフィルター7h、ガラス基板7i、及び、第2の偏光板7jを含み、これらの層がこの順で積層されている。このように、光学調整シート1に近い方に第1の偏光板7aが配置されているので、光学調整シート1から出射した光は、液晶表示パネル7の第1の偏光板7a側から液晶表示パネル7に入射する。
ここで、本発明にかかる液晶表示装置の液晶表示パネル7では、第1の偏光板7aはP偏光を優勢に透過する方向に配置されており、第2の偏光板7jはS偏光を優勢に透過する方向に配置されている。2つの偏光板7a,7jをこのように配置する理由について以下に説明する。
光学調整シート1の第2線状プリズム部12の集光面12f等は、入射した輝度ピーク光線が全反射することなく、外部に向かって出射できるように設定されている。このように、全反射を起こさない場合であっても、これらの面を通過する光の一部は反射することが知られている。これをフレネル反射と呼ぶ。フレネル反射の大きさは、界面における屈折率の差、界面へ入射する光の入射角、及び、光の偏光方向に依存することが知られている。図12のグラフ(文献「波動光学エンジニアリングの基礎」(オプトロニクス社)の第47頁より抜粋)は、高屈折率の第1媒質(n1=1.5)から低屈折率の第2媒質(n2=1.0)へと進む光の、入射角に対する反射率の強度を計算してプロットしたものである。図中、Rp、Rs及びθcは、それぞれ、P偏光成分に対する反射率、S偏光成分に対する反射率及び全反射の臨界角を表している。図12のグラフによると、臨界角θcよりも小さい入射角度(界面の法線と光の進行方向とのなす角度)で、第1、第2媒質の界面に入射する光であっても、全てが界面を透過するわけではなく、光の一部は界面において反射することが分かる。また、全般的にS偏光成分の反射率Rsの方がP偏光成分の反射率Rpよりも高い。なお、P偏光成分に関して、反射率Rpがゼロとなる角度、いわゆるブリュスター角θBが存在する。なお、本明細書においては、輝度ピーク光線の進行方向と光学調整シート基材の法線によって規定される入射面に対して、電場ベクトルの振動方向が平行(含まれる)である成分をP偏光成分、垂直である成分をS偏光成分とする。
上述のように、高屈折率の第1媒質から低屈折率の第2媒質へと進む光は、全反射の臨界角以下の入射角であってもこれらの媒質の界面において一部反射されるが、その反射率はP偏光成分とS偏光成分とで異なる。全般的にS偏光成分の反射率Rsの方がP偏光成分の反射率Rpよりも高いため、界面において、S偏光成分はP偏光成分よりも多く反射される。つまり、界面を透過する光は、P偏光成分が優勢となる。
図11に示すように、上述の光学調整シート1の第2線状プリズム部12の集光面12f、補正面12rから出射する光についても、同様に、P偏光成分が優勢となる。後述のように、集光面12fを通過する光線の色分離の方向は、補正面12rを通過する光線の色分離の方向とは逆になっているため、互いに色分離を打ち消し合うという効果が得られる。そのため、第2線状プリズム部12から出射される光全体として色分離を大きく低減させることができる。
上述のように、集光面12f及び補正面12rのいずれの面からも、P偏光成分の光が優勢に出射される。そのため、第2線状プリズム部12の、集光面12f及び補正面12r(光出射面)に対向して配置される液晶表示パネル7の第1の偏光板7aは、P偏光成分を透過させる方向に配置することが望ましい。このように配置することにより、第2線状プリズム部12の、集光面12f及び補正面12rから優勢に出射されるP偏光成分の光を、有効に利用することができる。つまり、集光面12f及び補正面12rから優勢に出射されるP偏光成分の光を透過させるように、液晶表示パネル7の第1の偏光板7aを配置することにより、S偏光成分の光を透過させるように液晶表示パネル7の第1の偏光板7aを配置する場合と比べて、液晶表示パネル7を透過する光の輝度を高めることができる。さらに、第2線状プリズム部12の、集光面12f及び補正面12rのいずれの面から出射される光も、P偏光成分が優勢であるので、液晶表示パネル7の第1の偏光板7aをP偏光成分の光を透過させるように配置することにより、後述の色分離抑制作用も効果を高めることができる。なお、以下の説明において、第1の偏光板7a(光学調整部材側に配置された偏光板)の向きと、第2の偏光板7j(光学調整部材と反対側に配置された偏光板)の向きとは直交する。つまり、第1の偏光板7aがP偏光成分を透過する向きに向けられている場合には、第2の偏光板7jはS偏光成分を透過する向きに向けられる。逆に、第1の偏光板7aがS偏光成分を透過する向きに向けられている場合には、第2の偏光板7jはP偏光成分を透過する向きに向けられる。
[バックライトユニット]
バックライトユニット6は、主に、図3に示すように、光源(LED:発光ダイオード)2と、側部に入射された光50を上面3a(出射面)から射出する導光板3と、導光板3の下部(液晶表示パネル7とは反対側)に配置された反射シート4(反射部材)と、導光板3の上部(液晶表示パネル7側)に配置されたこの例の光学調整シート1と、光学調整シート1の上部に配置された拡散シート5とから構成される。光源2からは、可視光帯域の白色光が放出される。この例のバックライトユニット6はエッジライト方式の照明装置であり、光源2は導光板3の側部に設けられている。光源2から出射した光線は導光板3の側部から入射し、その内部を光50の方向に進みつつ出射面3aから出射する。その出射光51は典型的には、導光板表面の法線方向から、光線の導光板内進行方向(光50の方向)へ傾斜した方向に輝度のピークを有するある程度指向性の揃った光線となる。よって本発明の光学調整部材は、特にエッジライト方式のバックライト等の照明装置に適用することが好適である。なお、その際には、本発明の光学調整部材を、線状光学構造体13の階段面13bが該傾斜した入射光線52の主な受光面となる向き、すなわち図3に示すような向きに装着することが必要である。
光学調整シート1以外の光学部材は、従来のバックライトユニットの光学部材と同じものを用いた。具体的には、導光板3はポリカーボネートで形成した。なお、この例では、導光板3の出射面3aから出射される光51の輝度が最大となる方向(輝度ピーク光線の方向)と、出射面3aの法線方向に対する方向との間の角度が70度となるような出射特性を有する導光板3を用いた。導光板3からの出射光51が光学調整シート1に入射されると、光51は光学調整シート1の基材10の下面で屈折する。また、後述するように基材と線状体の屈折率が異なる場合には、基材と線状体の界面においても屈折する。該線状体内における輝度ピーク光線52の進行方向の基材10表面の法線方向(光学調整シート1の厚さ方向)に対する傾斜角θは約36度になる。すなわち、光学調整シート1に入射された輝度ピーク光線52の進行方向の傾斜角θは、光学調整シート1の線状光学構造体13の平坦面13cの傾斜方向と基材10表面の法線方向との間の角度(90度−β1=32.29度)より少し大きくなるように調整した。
反射シート4にはPETフィルムの表面に銀が蒸着されたシートを用いた。また、拡散シート5にはPETフィルムをビーズコーティングしたものを用い、その厚さは70μmとし、ヘイズは30%とした。
[色分離の抑制原理]
次に、この例の光学調整シート1において、光学調整シート1から出射された光の色分離が抑制される原理を図1〜3を参照しながら説明する。
この例の光学調整シート1に導光板3からの出射光51が入射されると、その入射光線は、主に、線状光学構造体13の階段面13b、すなわち、第2線状プリズム部12で屈折される。なお、線状光学構造体13の平坦面13cの傾斜方向は、上述のように、光学調整シート1に入射された光線の輝度ピーク光線52の進行方向と略平行であるので、この平坦面13cでの入射光線の屈折の影響は比較的小さい。
線状光学構造体13の階段面13bに入射された輝度ピーク光線52は、階段面13bの各凸面(階段部表面)を画成する2つの面、すなわち、第2線状プリズム部12の集光面12f及び補正面12rで屈折する。この際、輝度ピーク光線52は、図2に示すように、第2線状プリズム部12の集光面12fでは光学調整シート1の厚さ方向(基材10表面の法線方向)に屈折し(図2中の光線53)、補正面12rでは光学調整シート1の面内方向(基材10の面内方向)に屈折する(図2中の光線54)。すなわち、第2線状プリズム部12の集光面12fで屈折する光線53の進行方向と、補正面12rで屈折する光線54の進行方向とは、屈折前の輝度ピーク光線52の進行方向に対して、互いに逆になる。
また、輝度ピーク光線52が線状光学構造体13の階段面13bに入射され屈折する際には、線状光学構造体13の形成材料の屈折率は入射される光線の波長により異なるので、輝度ピーク光線52に含まれる各波長成分によって屈折角が異なり、図2に示すように屈折光53及び54の色分離が生じる。なお、図2では、説明を簡略化するため、2つの波長成分(波長A及びB、波長A>波長B)の分離を示した。図2中の光線53A及び54Aは波長A成分の屈折光を示しており、光線53B及び54Bは波長B成分の屈折光を示しており、そして、図2では波長B成分の屈折が波長A成分の屈折より大きい(屈折角が大きい)場合を示している。
輝度ピーク光線52が第2線状プリズム部12の集光面12fで屈折した際には、図2に示すように、屈折光53の波長B成分53Bは、波長A成分53Aより大きく屈折されるので、波長B成分53Bの進行(屈折)方向は、波長A成分53Aよりさらに図2中の矢印A1の方向に向く。一方、輝度ピーク光線52が第2線状プリズム部12の補正面12rで屈折した際には、屈折光54の波長B成分54Bは、波長A成分54Aより大きく屈折されるので、波長B成分54Bの進行方向は、波長A成分54Aよりさらに図2中の矢印A2の方向に向く。すなわち、第2線状プリズム部12の集光面12fで屈折した光線53の色(波長)の分離パターンと、第2線状プリズム部12の補正面12rで屈折した光線54の色(波長)の分離パターンとは、図2に示すように、輝度ピーク光線52の進行方向に対して逆パターンになる。それゆえ、第2線状プリズム部12の集光面12fで屈折した光線53の色分離が、第2線状プリズム部12の補正面12rで屈折した光線54の色分離により打ち消されて光学調整シート1から出射され、液晶表示面に集光される光の色分離が抑制される。
上述のように、この例の光学調整シート1では、一枚の光学シートにより出射光の色分離を抑制することができるので、従来のように、出射光の色分離を抑制するために2枚のプリズムシートを用いる必要が無くなる。また、上述のように、この例の光学調整シート1は、ある程度指向性の揃った導光板からの出射光(傾斜光)の進行方向を光学調整シート1の厚さ方向に直接変更するものであるので、従来のように、プリズムシート群と導光板との間に下部拡散シートを設ける必要がなくなる。それゆえ、従来のように、下部拡散シートを用いて導光板から出射されたある程度指向性の揃った光を一旦ブロードな光に変換する必要がなくなるので、導光板から出射された光の利用効率を向上させ、輝度特性を向上させることができる。
また、この例の光学調整シート1を備えたエッジライト方式の液晶表示装置100及びバックライトユニット6では、図3に示すように、出射光の色分離を抑制し、且つ輝度を向上させるために2枚のプリズムシートを用いる必要が無く、且つ、下部拡散シートを用いる必要が無くなる。それゆえ、この例のエッジライト方式の液晶表示装置100及びバックライトユニット6では、従来に比べて光学部材の数を減らすことができ、装置の薄型化及び低コスト化を図ることができる。よって本発明の光学調整部材は、特にエッジライト方式のバックライトユニットを用いた液晶表示装置に用いることが好適である。
[光学特性評価]
図3に示したこの例の液晶表示装置100の光学特性を評価した。具体的には、図13に示した評価装置を用いて正面輝度の測定と色みの官能評価を行なった。評価装置は図13に示すように、光源、導光板、光学調整部材、反射板、拡散シート、偏光板を配置した。図13の偏光板7は、液晶表示パネルを構成する第1の偏光板(光学調整部材側の偏光板)に相当する。この第1の偏光板を透過した光が液晶層に入射する直接の光線となるので、これを評価することにより液晶表示装置としての光学特性を評価できる。実施例1の液晶表示装置100では、偏光板7をP偏光成分を透過させる向きに配置して、輝度計を用いて透過光の正面輝度の測定を行なった。また、目視により色みの官能評価を行なった。具体的には、評価装置からの出射光の色みを、主に正面方向から目視観察し、出射光の色の均一性を調べた。さらに、後述のように、実施例1の液晶表示装置の偏光板を、S偏光成分を透過させる向きにした場合(比較例8)についても同様の測定を行い、その結果を表1に示した(比較例8)。
さらに、比較のため、図14に示した従来の液晶表示装置500(比較例1)についても上記評価を行った。なお、図14に示した比較例1の液晶表示装置500では、プリズムシート507a及び507bに形成されたプリズム状構造体の延在方向に直交する断面の形状は、底辺の幅30μm、高さ15μm、頂角90度の二等辺三角形とした。各プリズムシート507aの基材507cは、PETフィルムで形成し、プリズム状構造体507dは紫外線硬化型のアクリル系樹脂で形成した。また、下部拡散シート506にはPETフィルムをビーズコーティングしたものを用い、その厚さは70μmとし、ヘイズは85%とした。プリズムシート群507及び下部拡散シート506以外の構成光学部材は、実施例1の液晶表示装置100で用いたものと同じものを用いた。なお、液晶表示装置500の、プリズムシート側の偏光板の方向は、P偏光成分の光を透過するように向けられている。具体的な評価においては、図13の評価装置において、光学調整部材として実施例1の光学調整シートの代わりに、上述のプリズムシートを2枚、直交させて装着し、実施例1と同様に偏光板を透過した光線の正面輝度測定および色みの官能評価を行った。さらに、後述のように、比較例1の偏光板を、S偏光成分を透過させる向きにした場合(比較例4)についても同様の測定を行い、その結果を表1に示した(比較例4)。
さらに、ここでは、比較のため、図16に示すような構成の液晶表示装置600(比較例2)についても上記評価を行った。なお、図16に示した比較例2の液晶表示装置600は、図3に示した実施例1の液晶表示装置100内の光学調整シート1の代わりに、図15に示した従来のプリズムシート507aを一枚用いた装置である。光学調整部材に従来のプリズムシート507aを用いたこと以外は、実施例1の液晶表示装置100と同様の構成とした。なお、比較例2の液晶表示装置600の、プリズムシート側の偏光板の方向は、P偏光成分の光を透過するように向けられている。さらに、後述のように、比較例2の偏光板を、S偏光成分を透過させる向きにした場合(比較例5)についても同様の測定を行い、その結果を表1に示した(比較例5)。
上記評価結果を下記表1に示した。表1には、導光板と液晶表示パネルとの間に配置される光学シートの枚数も記載した。なお、正面輝度は後述の比較例4の正面輝度を基準(100%)としている。また、表1の色の均一性の評価◎及び×の基準は次の通りである。また、下記表1には、上記実施例1及び比較例1、2、4、5、8の評価結果に加えて、後述する実施例2、及び比較例3の評価結果も併せて記載している。
◎:評価装置からの出射光55の色みが、光源からの出射光50と同じ白色であり、両者の相違を目視により判別できないレベル。
×:評価装置からの出射光55が、赤色、黄色等の色みを帯びていることが目視で確認できるレベル。
表1から明らかなように、実施例1の液晶表示装置では、比較例1(図14)の液晶表示装置に比べて、正面輝度を向上させることができ且つ光学シートの数を減らすことができることが分かった。すなわち、実施例1の液晶表示装置では、装置の薄型化、低コスト化を図りつつ、光学特性を向上させることができることが分かった。また、実施例1の液晶表示装置では、表1から明らかなように、比較例2の液晶表示装置(図16)に比べて、正面輝度及び色の均一性ともに改善できることが分かった。一方、比較例8では、実施例1の液晶表示装置の光学調整部材側の偏光板の方向を、S偏光成分の光を透過するように向けた結果、正面輝度が低下していることがわかった。また、色分離抑制効果についても、実施例1と比較して低下していることがわかった。
上記実施例1の光学調整シートでは、線状光学構造体を構成する複数の第2プリズム構造体の形状及び寸法が全て同じ場合について説明したが、本発明に用いられる光学調整シートはこれに限定されない。複数の第2プリズム構造体の形状が互いに相似形であっても良い。この場合も、複数の第2プリズム構造体の集光面及び補正面は、それぞれ互いに平行となるので、実施例1と同様の効果が得られる。
上記実施例1の液晶表示装置では、光学調整シートからの出射光の輝度のムラ等をさらに改善して、表示品位をさらに向上させるために、光学調整シートの上部にさらに拡散シートを配置しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、光学調整シートからの出射光の品質が十分に良好である場合(輝度のムラ等が極力抑制されている場合)、あるいは、高品質の表示性能を必要としない用途に本発明を適用する場合には、拡散シートを用いなくてもよい。
上記実施例1で用いた液晶表示装置では、導光板の光学調整シート側とは反対側に反射シートを配置した例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、導光板の光学調整シート側とは反対側の表面が十分な反射作用を得られる構造(凹凸構造等)を有している場合には、反射シートを用いなくても良い。
本発明に用いられる光学調整シートでは、線状光学構造体の階段面を構成する第2線状プリズム部の数、階段面における集光面と補正面の位置や面積比、あるいは、必要に応じて集光面や補正面の傾斜角度などを調整することにより、光学調整シートからの出射光の輝度や色分散などの光学的な特性のバランスを整えることができる。実施例2の液晶表示装置に用いられる光学調整シートでは、集光面に入射する光線が補正面に対して相対的に多くなるように、第2線状プリズム部の数、形状及び寸法を実施例1とは変えた。それ以外は、実施例1と同様の構成及び形成材料とした。
実施例2の液晶表示装置に用いられる光学調整シートの線状光学構造体の拡大断面図を図4に示した。この例の線状光学構造体24は、図4に示すように、その延在方向に直交する断面が略三角形状であり、その延在方向に沿った一つの面(底辺21bを含む面。以下、底面ともいう)が基材20の表面と平行に接している。すなわち、線状光学構造体24は、その底面が基材20の表面と対向するように、基材20上に設けられている。なお、図4中に示した入射光線52は、この例の光学調整シートに入射された光線の輝度特性において輝度が最大となる方向に進行する光線、すなわち、輝度ピーク光線を示している。
線状光学構造体24のその延在方向に直交する断面は、図4に示すように、第1断面部21aと、第1断面部21aの一辺上に設けられた形状の異なる2つの第2断面部22a及び23aとから構成される。すなわち、この例では、線状光学構造体24の第1線状プリズム部(第1断面部21aに対応する線状構造体)の一つの面上に形状の異なる2つの第2線状プリズム部(第2断面部22a及び23aに対応する線状構造体)を設けた。2つの第2断面部22a及び23aは、図4に示すように、互いの底角部が接するように設けた。
第1断面部21aは、図4に示すように、基材20の表面と平行に接する底辺21b(第1辺)と、底辺21bの両端からそれぞれ所定の角度(図4中のα1及びβ1)で延在した2つの傾斜辺21c(第2辺)及び21d(第3辺)とにより画成される。この例の光学調整シートでは、第1断面部21aの形状(第1線状プリズム部の形状)は実施例1と同様とした。すなわち、第1断面部21aの第1及び第2底角の角度α1及びβ1は、それぞれ、39.14度及び57.71度とし、第1断面部21aの底辺21bの長さを35μmとした。
なお、この例では、図4に示すように、第1断面部21aの傾斜辺21dの基材20表面の法線方向に対する傾斜角と、光学調整シートに入射された輝度ピーク光線52の進行方向の傾斜角(図4中のθ)との関係も実施例1と同様とした。すなわち、図4中の傾斜辺21dを含む線状光学構造体24の面(平坦面)の傾斜方向が輝度ピーク光線52の進行方向と略平行となるようにした。より具体的には、線状光学構造体24の平坦面の基材20表面に対する傾斜角度(図4中のβ1)を、実施例1と同様に、線状光学構造体24内の輝度ピーク光線52の基材20表面に対する傾斜角度(90度−θ)より若干大きくした。
第1断面部21aの第1底角側(図4中のα1側)に位置する第2断面部22aは、図4に示すように、第1断面部21aの傾斜辺21c(第2辺)と平行に接する底辺22b(第4辺)と、底辺22bの両端からそれぞれ所定の角度(図4中のα2及びβ2)で延在した2つの傾斜辺22c及び22dとにより画成される。なお、この例では、第2断面部22aの形状は実施例1の第2断面部12aと相似形とし、第2断面部22aの第1底角の角度α2及び第2底角の角度β2をそれぞれ30度及び70度とした。そして、この例の光学調整シートでは、第2断面部22aの底辺22bを約14.92μmとし、実施例1の第2断面部12aの底辺12b(約10.44μm)より長くした。すなわち、この例の光学調整シートでは、第1断面部21aの第1底角側(図4中のα1側)に位置する第2断面部22aの面積を実施例1の第2断面部12aの面積より大きくした。
なお、第2断面部22aの傾斜辺22c(第5辺)を含む線状光学構造体24(第2線状プリズム部)の面は、主に、入射光線の進行方向を光学調整シートの厚さ方向に屈折させる面、すなわち、入射光線を集光させる作用を有する面(集光面)である。一方、第2断面部22aのもう一方の傾斜辺22d(第6辺)を含む線状光学構造体24の面は、主に、光学調整シートからの出射光の色分離を抑制する作用を与える面(補正面)である。すなわち、この例では、第1線状プリズム部の最も底角側(図4中のα1側)に位置する第2線状プリズム部の集光面の面積を、実施例1のそれより大きくした。
このように、第1線状プリズム部の最も底角側(図4中のα1側)に位置する第2線状プリズム部の集光面をより広くすることにより、入射光の利用効率を向上させ、輝度を増大させることができる。その理由は次の通りである。第2線状プリズム部が形成されている第1線状プリズム部の面(図4中の第2辺21cを含む面。以下、第2線状プリズム部形成面ともいう)を通過する光線、すなわち、光学調整シートの階段面に入射される光線は輝度ピーク光線52以外の光線成分を含んでおり、第1線状プリズム部の第2線状プリズム部形成面を通過する光線の強度(照度)は、第2線状プリズム部形成面の通過位置により異なる。具体的には、第1線状プリズム部の第2線状プリズム部形成面を通過する光線の強度は、第1線状プリズム部の底角側(図4中の第1底角α1側)に近いほど大きくなる。すなわち、第1線状プリズム部の底角側に位置する第2線状プリズム部に入射される光線ほど、その強度が強い(照度が高い)。それゆえ、この例のように、最も第1線状プリズム部の底角側に位置する第2線状プリズム部の集光面をより広くすることにより、より強度の強い光線を集光することができるので、入射光線の利用効率を向上させて出射光の輝度を増大させることができる。
一方、第1断面部21aの頂角21e側に位置する第2断面部23aは、図4に示すように、略3角形状であり、第1断面部21aの傾斜辺21c(第2辺)と平行に接する底辺23bと、底辺23bの両端からそれぞれ所定の角度(図4中のα2及びβ3)で延在した2つの傾斜辺23c及び23dとにより画成される。また、この例では、図4に示すように、第1断面部21aの頂角21e側に位置する傾斜辺23dを2つの辺23f及び23gで構成し、傾斜辺23dを第2断面部23aの外側に向かって凸状に折れ曲がったような形状にした。
傾斜辺23dを構成する2つの辺23f及び23gのうち、第1断面部21aの傾斜辺21d側に位置する辺23fは、図4に示すように、第1断面部21aの頂角21eから第1断面部21aの傾斜辺21dと平行に延在している。それゆえ、第2断面部23aの底辺23bと傾斜辺23dとの間の角(第2底角)の角度β3は、α1+β1となる。また、傾斜辺23dを構成する他方の辺23gは、第1断面部21aの第1底角側に位置する第2断面部22aの傾斜辺22dと平行となるように構成した。すなわち、この例では、第2断面部23aを画成する傾斜辺23c並びに辺23f及び23gは、それぞれ、第2断面部22aの傾斜辺22c並びに第1断面部21aの傾斜辺21d及び第2断面部22aの傾斜辺22dと平行となっている。第2断面部23aの第1底角の角度α2は30度とし、第2断面部23aの第2底角の角度β3は96.85度とした。
なお、第1断面部21aの頂角21e側に位置する第2断面部23aにおいては、その傾斜辺23cを含む線状光学構造体24(第2線状プリズム部)の面は、主に、入射光線の進行方向を光学調整シートの厚さ方向に屈折させる面、すなわち、入射光線を集光させる作用を有する面(集光面)である。一方、第2断面部23aのもう一方の傾斜辺23dを画成する辺23f及び23gのうち、第1断面部21aの傾斜辺21d側に位置する辺23fは、第1断面部21aの傾斜辺21dと平行であるので、辺23fを含む線状光学構造体24の面の傾斜方向は輝度ピーク光線52と略平行になる。それゆえ、辺23fを含む線状光学構造体24の面では、入射光の屈折及び反射の影響は小さい。また、傾斜辺23dを画成する他方の辺23gを含む線状光学構造体24の面は、主に、光学調整シートからの出射光の色分離を抑制する作用を与える面(補正面)となる。それゆえ、この例では、第2断面部23aの形状は、第2断面部23aに対応する第2線状プリズム部の集光面の面積をできる限り大きくし、且つ、補正面をできる限り小さくしたような形状になっている。
上記構造のこの例の光学調整シートに対しても、実施例1と同様にして、その光学特性を評価した。具体的には、図13に示した評価装置にこの例の光学調整シートを装着し(図13中の実施例1の光学調整シート1の代わりにこの例の光学調整シートを装着し)、輝度計を用いて正面輝度の測定を行なった。また、目視により色みの官能評価を行なった。その結果を上記表1に記載した。なお、実施例2の液晶表示装置の、光学調整部材側の偏光板の方向は、P偏光成分の光を透過するように向けられている。
さらに、比較のために、以下の比較例3の液晶表示装置についても、実施例2の液晶表示装置に対して行った測定と同様の測定を行ない、その評価結果を表1に示した。ここで、不図示の比較例3の液晶表示装置は、光学調整部材側の偏光板の方向を、S偏光成分の光を透過するように向けた点を除いて、実施例2の液晶表示装置と同様の構成を有する。この比較例3では、光学調整部材側の偏光板の方向を、S偏光成分の光を透過するように向けた結果、実施例2に比べて、正面輝度が低下していることがわかった。また、色分離抑制効果についても、実施例2と比較して低下していることがわかった。
表1から明らかなように、実施例2の光学調整シートを用いた場合には、正面輝度が134%となり、実施例1の場合(128%)よりもさらに正面輝度を高めることができることが分かった。これは、主に、この例の光学調整シートでは、上述したように、線状光学構造体を構成する複数の第2線状プリズム部のうち、最も第1線状プリズム部の底角側に位置する第2線状プリズム部(第2断面部22aに対応する線状構造体)の集光面を、実施例1のそれより広くしたことによるものと考えられる。また、この例の光学調整シートでは、上述のように、第1線状プリズム部の頂角21e側に位置する第2断面部23aに対応する第2線状プリズム部の補正面がより小さくなるような構造にしたが、表1に示すように、色の均一性に関しては、実施例1と2とで有意な差は確認されなかった。すなわち、この例のような構造の光学調整シートを液晶用バックライトをはじめ各種照明装置に使用した場合であっても、十分な光学性能が得られることが確認できた。
さらに、発明者は、光学調整シートの第2線状プリズム部の数について有効な範囲を求めるために、第2線状プリズム部の数を変えつつ、光学調整シートの光学特性を調べた。加えて、光学調整シート側の偏光板を、P偏光成分を透過させる向きにした場合(実施例3〜9)と、S偏光成分を透過させる向きにした場合(比較例6〜12)のそれぞれについて、光学特性を調べた。具体的には、図13に示した評価装置に各種の光学調整シートを装着し(図13中の実施例1の光学調整シート1の代わりに各種の光学調整シートを装着し)、輝度計を用いて正面輝度の測定を行なった。また、目視により色みの官能評価を行なった。その結果を表2に記載した。
本発明の液晶表示装置に用いられる光学調整部材は、基材上に光透過性を有する複数の線状体を備え、その延在方向に直交する断面が略三角形であり、該断面を画成する3つの辺のうち、一つの辺が上記基材の表面と平行に接しており且つ他の2辺のうちの一方の辺が階段状であって、該基材の底面部に傾斜して入射された光線を、その階段状構造の一辺により基材の垂直方向に屈折し、他方の辺により色分離を緩和する補助光線を発生させる光学調整部材である。以下の測定の結果、本光学調整部材においてその階段数は1〜15の範囲において好適であること、さらに、階段数が2〜9の範囲は特に好適であることがわかった。また、液晶表示パネルの、光学調整部材側(光入射側)の偏光板を、P偏光成分を通過させる向きに配置することにより、S偏光成分を透過させる向きに配置する場合に比べて、正面輝度を向上させ色分散抑制効果を高めることができることがわかった。
発明者らは、第2線状プリズム部の数を1〜15の間で変えた光学調整シートを作製し(実施例3〜9及び比較例6〜12)、これらの光学特性を比較した。図5に示すように、第1、第2底角α2、β2がそれぞれ30度、70度である第2線状プリズム部が、第1線状プリズム部の11c辺に設けられており、これらの第2線状プリズム部は全て同一の形状である。さらに、第1線状プリズム部は、すべて、第1、第2底角α1、β1がそれぞれ39.14度、57.71度である三角形状の線状プリズム部であって、光学調整シートの基材と接する底辺部11bの長さは35μmである。以下の各実施例及び各比較例においては、第1線状プリズム部の辺11c上に接して配置される第2線状プリズム部の個数に応じて、第2線状プリズム部の大きさを適宜相似的に変化させた。
図6(A),(B)に示すように、実施例3の液晶表示装置に用いられる光学調整部材1は実施例1と同様に、第1線状プリズム部11の斜辺11c上に、3つの第2線状プリズム部12が配置されている。すなわち、第2断面部をなす略三角形状体の数が3つである。なお、実施例3の液晶表示装置の、光学調整部材1側の偏光板の方向は、P偏光成分の光を透過するように向けられている。この実施例3の光学調整部材1では、正面輝度が非常に高く(120%以上)、且つ、色分離の抑制効果が十分であって、出射光の色付きは目視で確認されなかった。
図7に示すように、実施例4の液晶表示装置に用いられる光学調整部材1Cは、第1線状プリズム部11の斜辺11c上に、2つの第2線状プリズム部12が配置されている。すなわち実施例4の光学調整部材1Cは、第2断面部をなす略三角形状体を2つ有する。なお、実施例4の液晶表示装置に用いられる光学調整部材1C側の偏光板の方向は、P偏光成分の光を透過するように向けられている。実施例4の液晶表示装置に用いられる光学調整部材1Cの正面輝度が非常に高く(120%以上)、且つ、色分離の抑制効果が十分であり、出射光の色付きは目視で確認されなかった。実施例4では、後述する実施例7と比較して補助面がよりα1に近い側に設置された形態となっており、その結果、高い正面輝度と高い色分離抑制効果を両立させることができたと考えられる。(なお、この構成でさらに集光面と補助面のバランスを図った結果が、上述の実施例2である。この実施例2においては2つの第2線状プリズム部の形状を変えて調整を行った。)
図8に示すように、実施例5の液晶表示装置に用いられる光学調整部材1Dは、第1線状プリズム部11の斜辺11c上に、6つの第2線状プリズム部12が配置されている。すなわち、実施例5の液晶表示装置に用いられる光学調整部材1Dは、第2断面部をなす6つの略三角形状体を有する。なお、実施例5の液晶表示装置に用いられる光学調整部材1D側の偏光板の方向は、P偏光成分の光を透過するように向けられている。実施例5の液晶表示装置に用いられる光学調整部材1Dでは、正面輝度が非常に高く(120%以上)、且つ、色分離の抑制効果が十分であって、出射光の色付きは目視で確認されなかった。
実施例6の液晶表示装置に用いられる光学調整部材(不図示)は、第1線状プリズム部の斜辺上に、9個の第2線状プリズム部が配置されている。すなわち、実施例6の液晶表示装置に用いられる光学調整部材は、第2断面部をなす9個の略三角形状体を有する。なお、実施例6の液晶表示装置に用いられる光学調整部材側の偏光板の方向は、P偏光成分の光を透過するように向けられている。実施例6の光学調整部材では、正面輝度が非常に高く(120%以上)、且つ、色分離の抑制効果が十分であって、出射光の色付きは目視で確認されなかった。
図9(A),(B)に示すように、実施例7の液晶表示装置に用いられる光学調整部材1Eは、第1線状プリズム部11の斜辺11c上に、1つの第2線状プリズム部12が配置されている。つまり、実施例7の液晶表示装置に用いられる光学調整部材1Eは、第2断面部をなす略三角形状体を1つ有している。なお、実施例7の液晶表示装置に用いられる光学調整部材1E側の偏光板の方向は、P偏光成分の光を透過するように向けられている。この光学調整部材1Eでは、正面輝度は非常に高く、120%以上であることが確認された。なお、実施例7の液晶表示装置に用いられる光学調整部材1Eは、色分離の抑制効果が不十分であり、出射光の色付きが目視で確認されたが、実施例7において確認された出射光の色付きの程度は、前述の比較例2における色付きの程度よりは小さかった。
この結果は次の理由によると考えられる。上述の通り、第1線状プリズム部11の最も底角側(α1側)に位置する第2線状プリズム部の集光面をより広くとることにより、入射光の利用効率を向上させ、輝度を増大させることができる。これは第1線状プリズム部11の第2線状プリズム部形成面11cは、底角α1側に近いほど基材面に対する開口角が広いため、その面11cを通過する光線の強度は、第1線状プリズム部の底角α1側に近いほど大きくなる(照度が高くなる)ためである。それゆえ、実施例7のように、第2線状プリズム部がひとつの三角形状体で形成されている構造では、α1側に位置する第2線状プリズム部の集光面がもっとも広い形態となる。これにより強度の強い光線を集光することができるので、入射光線の利用効率がよく、出射光の輝度を増大させることができる。その一方、補助面を透過する光線が相対的に少なくなってしまうため、色分離を抑制する働きが不十分となり、結果として出射光の色付きが残留してしまう。また、補助面を透過する光線が相対的に少なくなってしまうため、補助面による出射角の分散効果も不十分となり、結果として視野角が狭くなってしまう。そのため、実施例7では出射光のピークの輝度は十分であったが、その方向が正面ではなく、かつ、視野角が狭いため正面の輝度としては上述の実施例3〜5の光学調整部材の正面輝度と比べて小さくなっている。
不図示の実施例8の液晶表示装置に用いられる光学調整部材は、第1線状プリズム部の斜辺上に、10個の第2線状プリズム部が配置されている。すなわち、実施例8の液晶表示装置に用いられる光学調整部材は、第2断面部をなす10個の略三角形状体を有する。なお、実施例8の液晶表示装置に用いられる光学調整部材側の偏光板の方向は、P偏光成分の光を透過するように向けられている。実施例8の液晶表示装置に用いられる光学調整部材では、正面輝度が100%以上であり、且つ、色分離の抑制効果が十分であって、出射光の色付きは目視で確認されなかった。
不図示の実施例9の液晶表示装置に用いられる光学調整部材は、第1線状プリズム部の斜辺上に、15個の第2線状プリズム部が配置されている。すなわち、実施例9の液晶表示装置に用いられる光学調整部材は、第2断面部をなす15個の略三角形状体を有する。なお、実施例9の液晶表示装置に用いられる光学調整部材側の偏光板の方向は、P偏光成分の光を透過するように向けられている。実施例9の液晶表示装置に用いられる光学調整部材では、正面輝度が100%以上であり、且つ、色分離の抑制効果が十分であって、出射光の色付きは目視で確認されなかった。
この実施例8、9では、第1の底角α1に近い側に設置された第2線状プリズム部の補助面の面積が多くなった反面、集光面の面積が相対的に少なくなっている。その結果、色分離抑制効果は十分であり、正面輝度が100%以上ではあるものの、実施例3〜6に比べると僅かに正面輝度が小さくなる結果となったと考えられる。
[比較例4]
不図示の比較例4の液晶装置は、光学調整部材側の偏光板の方向を、S偏光成分の光を透過するように向けた点を除いて、比較例1の液晶装置と同様の構成を有する。この比較例4では、光学調整部材側の偏光板の方向を、S偏光成分の光を透過するように向けた結果、色分離抑制効果は十分であるものの、比較例1に比べて正面輝度が低下していることがわかった。
[比較例5]
不図示の比較例5の液晶装置は、光学調整部材側の偏光板の方向を、S偏光成分の光を透過するように向けた点を除いて、比較例2の液晶装置と同様の構成を有する。この比較例5では、光学調整部材側の偏光板の方向を、S偏光成分の光を透過するように向けた結果、比較例2に比べて、さらに正面輝度が低下していることがわかった。また、色分離抑制効果についても、比較例2と同様に十分ではなかった。
[比較例6]
不図示の比較例6の液晶装置は、光学調整部材側の偏光板の方向を、S偏光成分の光を透過するように向けた点を除いて、実施例7の液晶装置と同様の構成を有する。この比較例6では、光学調整部材側の偏光板の方向を、S偏光成分の光を透過するように向けた結果、実施例7に比べて、さらに正面輝度が低下していることがわかった。また、色分離抑制効果についても、実施例7と同様に十分ではなかった。
[比較例7]
不図示の比較例7の液晶装置は、光学調整部材側の偏光板の方向を、S偏光成分の光を透過するように向けた点を除いて、実施例4の液晶装置と同様の構成を有する。この比較例7では、光学調整部材側の偏光板の方向を、S偏光成分の光を透過するように向けた結果、実施例4に比べて、正面輝度が低下していることがわかった。また、色分離抑制効果についても、実施例4と比較して低下していることがわかった。
[比較例8]
不図示の比較例8の液晶装置は、光学調整部材側の偏光板の方向を、S偏光成分の光を透過するように向けた点を除いて、実施例3の液晶装置と同様の構成を有する。この比較例8では、光学調整部材側の偏光板の方向を、S偏光成分の光を透過するように向けた結果、実施例3に比べて、正面輝度が低下していることがわかった。また、色分離抑制効果についても、実施例3と比較して低下していることがわかった。
[比較例9]
不図示の比較例9の液晶装置は、光学調整部材側の偏光板の方向を、S偏光成分の光を透過するように向けた点を除いて、実施例5の液晶装置と同様の構成を有する。この比較例9では、光学調整部材側の偏光板の方向を、S偏光成分の光を透過するように向けた結果、実施例5に比べて、正面輝度が低下していることがわかった。また、色分離抑制効果についても、実施例5と比較して低下していることがわかった。
[比較例10]
不図示の比較例10の液晶装置は、光学調整部材側の偏光板の方向を、S偏光成分の光を透過するように向けた点を除いて、実施例6の液晶装置と同様の構成を有する。この比較例10では、光学調整部材側の偏光板の方向を、S偏光成分の光を透過するように向けた結果、実施例6に比べて、正面輝度が低下していることがわかった。また、色分離抑制効果についても、実施例6と比較して低下していることがわかった。
[比較例11]
不図示の比較例11の液晶装置は、光学調整部材側の偏光板の方向を、S偏光成分の光を透過するように向けた点を除いて、実施例8の液晶装置と同様の構成を有する。この比較例11では、光学調整部材側の偏光板の方向を、S偏光成分の光を透過するように向けた結果、実施例8に比べて正面輝度が低下していること(100%未満であること)がわかった。また、色分離抑制効果についても、実施例8と比較してさらに低下していることがわかった。
[比較例12]
不図示の比較例12の液晶装置は、光学調整部材側の偏光板の方向を、S偏光成分の光を透過するように向けた点を除いて、実施例9の液晶装置と同様の構成を有する。この比較例12では、光学調整部材側の偏光板の方向を、S偏光成分の光を透過するように向けた結果、実施例9に比べて正面輝度が低下していること(100%未満であること)がわかった。また、色分離抑制効果についても、実施例9と比較してさらに低下していることがわかった。
以上の評価結果を、表2にまとめた。なお、正面輝度は比較例4の正面輝度を基準(100%)としている。また、表2の色の均一性の評価の基準は表1と同様である。
以上の結果、第2線状プリズム部の数、即ち、第2断面部をなす複数の略三角形状体の数が、1個以上9個以下の範囲において、比較的高い正面輝度(100%以上)と色分離抑制とを両立できることがわかった。さらに言えば、上記略三角形状体の数が2個以上9個以下の範囲において、非常に高い正面輝度(120%以上)と高い色分離抑制を両立できることがわかった。換言すると線状光学構造体13の階段面13bにおける階段の数は、2段以上9段以下であることが特に好適である。さらに、光学調整部材側の偏光板の方向を、P偏光成分の光を透過するように向けた場合には、S偏光成分の光を透過するように向けた場合に比べて、正面輝度を向上させることができ、色分離抑制の効果を高めることができることがわかった。
以上の実験においては、底角α1、β1、α2、β2の大きさなどに関して、特定の組合せを例に挙げて説明した。しかしながら、輝度ピーク光線の入射角が45〜85度の範囲において、下記の数式を満たす光学調整部材において複数の実験を行った結果、同様の結果をうることができた。下記数式において、空気の屈折率n0は1.0であり、角度の単位は度である。
この場合には、最も輝度の高い輝度ピーク光線を集光面で全反射させることなく屈折させることができ、光学調整シートから輝度ピーク光線を効率的に取り出すことができる。
また、I2maxが全反射の臨界角であるとき、即ち、sin I2max = 1/n1である場合、下記の数式を満たす光学調整部材において複数の実験を行った結果、同様の結果をうることができた。
この場合には、入射光線は、輝度ピーク光線の角度をピークとする角度分布を有している場合において、任意の入射角度の入射光線を、集光面において全反射させることなく、光学調整シートから効率的に取り出すことができる。
このように、上述の角度条件を満たす角度の組み合わせを有する光学調整シートにおいては、確実に色分離を抑制し、輝度特性を向上させると共に、入射光線の集光面での全反射を抑制し、光学調整シートから光線を効率的に取り出すことができる。なお、本発明の光学調整シートは、必ずしも上述の角度条件を満たしていなければならないわけではなく、任意の角度の組み合わせの光学調整シートについて本発明を適用することもできる。
なお、第2の実施形態では、所定の大きさの第1、第2線状プリズム部を含む光学調整シートについて説明した。例えば、上記実施例3〜6において、第1線状プリズムの、光学調整シートの基材と接する底辺部11bの長さは35μmであったが、本発明はこれに限られない。例えば、底辺部11bの長さが7μm〜100μmであっても、第2断面部をなす複数の略三角形状体の数が、2個以上9個以下の範囲において、高い正面輝度と高い色分離抑制効果を両立できる。
また、上述の説明においては、光学調整シートの基材と線状光学構造体とは共に屈折率n1の光学材料で形成されていたが、本発明はこれに限られない。光学調整シートの基材の屈折率nbが、線状光学構造体の屈折率n1と異なっていてもよい。図10(a)に示された第2の実施形態の実施例3に係る光学調整シート1Bは、共に屈折率n1の光学材料で形成された基材10と線状光学構造体34とを有する。これに対して、図10(b)に示された光学調整シート1Fは、屈折率n1の光学材料で形成された線状光学構造体34と屈折率nb(nb≠n1)の光学材料で形成された基材110とを有する。
上述の説明のように、図10(a)において基材10の、空気との界面(底面10a)に入射角I1で入射された光51は、基材10と空気との界面において屈折する。ここでの屈折角I2は、以下に示される数式3により表される(スネルの法則)。
ここで、基材10と線状構造体34とは同じ屈折率n1の光学材料で形成されている。そのため、基材10の内部を進行する光52は、基材10と線状構造体34の第1線状プリズム部31との界面(第1線状プリズム部31の底辺31bを画成する面)を直進する。
これに対して、図10(b)において基材110の、空気との界面(底面110a)に入射角I1で入射された光51は、基材110と空気との界面において屈折する。ここでの屈折角Ibは、以下に示される数式4により表される。
また、基材110(屈折率nb)と線状構造体34(屈折率n1)とは、それぞれ屈折率が異なる光学材料で形成されている。そのため、基材110と空気との界面において屈折した光52Aは、基材110と線状構造体34の第1線状プリズム部31との界面(第1線状プリズム部31の底辺31bを画成する面)において屈折する。ここで、図10(b)に示された基材110のように、上下面が平行である場合には、基材110と第1線状プリズム部31との界面における屈折角I2’は以下に示される数式5により表される。
数式5に数式4を代入すると、sinI2’=(sinI1)/n1となる。これは、数式3と同じである。すなわち、I2’は、空気から屈折率がn1である媒質に直接入射した際の屈折角I2と等しいことがわかる。そのため、光学調整シート1Fのように、基材と線状体の屈折率が異なる場合には、n1を線状構造体の屈折率とし、I2を基材と線状構造体との界面における屈折角とすることで、上述の説明における数式は、そのまま適用することができる。