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JP4016552B2 - 磁気特性および表面性状の優れた無方向性電磁鋼板の製造法 - Google Patents

磁気特性および表面性状の優れた無方向性電磁鋼板の製造法 Download PDF

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  • Soft Magnetic Materials (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気特性および表面性状の優れた無方向性電磁鋼板の製造法に関し、より具体的には、家庭用あるいは工業用として用いられる電動機や小型トランス等の電気機器に用いられる磁気特性および表面性状の優れた無方向性電磁鋼板の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、石油資源の有限性や地球温暖化を初めとする環境問題の観点から、エネルギを有効に活用してエネルギ消費量を低減することが、全世界的に求められている。かかる観点から、例えば家庭用あるいは工業用として用いられる各種の電気機器についてもエネルギ効率を改善することが急務とされている。このため、例えば電動機や小型トランス等の電気機器の鉄心等に広く用いられている無方向性電磁鋼板についても、その電気エネルギ効率を改善するために、電気エネルギ消費の原因である鉄損を改善するとともに磁束密度をさらに改善することが、いずれも強く要求されている。
【0003】
従来、無方向性電磁鋼板の鉄損は、鋼板自体の固有抵抗を増加させるSiやAl等の含有量を増加することや、製品である無方向性電磁鋼板における結晶粒径を粗大化すること等により、改善が図られてきた。しかし、SiやAl等の含有量を増加すると、無方向性電磁鋼板の硬度が著しく上昇して打抜き性が悪化し、電動機や小型トランス等の生産性を著しく低下させてしまう。また、SiやAl等の含有量を増加すると、磁束密度の低下を招く上に、集合組織の制御が工業的には容易でなくなるため、磁束密度を所望の程度に改善できなくなる。
【0004】
集合組織を改善するには、冷間圧延前の結晶粒径を粗大化して結晶粒界を少なくしておき、冷間圧延時に強圧下を行うことにより、一次再結晶集合組織において{100}を富化する方法が有効である。この方法をさらに発展させたものとして、熱延板にスキンパス圧延を行ってから焼鈍を行い、次いで冷間圧延時に強圧下する方法も知られている。
【0005】
例えば、特公昭45−22211号公報には、熱延板に圧下率0.5〜15%のスキンパス圧延を行い、次いで、フェライト域で30分間以上20時間以内程度の焼鈍を行う方法が開示されている。
【0006】
また、特開平10−60532号公報には、介在物の組成比率がMnO/(SiO2 +Al2 3 +CaO+MnO)≦0.35である熱延板に対して、圧下率0.5〜4%のスキンパス圧延を行ってから熱延板焼鈍を行い、次いで冷間圧延および連続焼鈍を行う方法が開示されている。一般的に、酸化物系介在物の量が少ないほうが、結晶粒成長を生じ易いことが知られている。このため、この方法は、スキンパス圧延後に熱延板焼鈍を行うことから、結晶粒径を粗大化させることが期待できる。
【0007】
さらに、特開平5−171280号公報には、熱延板に圧下率5〜15%のスキンパス圧延を行い、次いで結晶粒径が100〜200μmとなる熱延板の連続焼鈍処理を行うことにより、磁束密度に優れるとともに、製品表面に結晶粒が圧延方向に伸びたような凹凸感のある模様の結晶模様が発生しない無方向性電磁鋼板を得る方法が開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特公昭45−22211号公報により開示された方法では、スキンパス圧延を行っても、その歪エネルギーを板厚表層部にのみしか蓄えることができない。このため、上述したような長時間の焼鈍を行うと、板厚表層部の結晶粒が異常粒成長し、磁束密度は改善されるものの、製品表面に結晶模様と称される、結晶粒が圧延方向に伸びたような凹凸感のある模様が発生し、外観品質が著しく低下するとともに、占積率も低下してしまう。一方、スキンパス圧延の圧下率を高く設定すると、歪エネルギーは板厚方向の全域に及び始めて内層まで粗大化するようになるが、圧下率が5%以上になると、熱延板での再結晶核生成サイトが増加して板厚方向全体の平均結晶粒径が逆に小さくなり、磁束密度が低下してしまう。
【0009】
また、特開平10−60532号公報により開示された方法では、スキンパス圧延の圧下率が4%以下であるため、板厚方向の極表層部にしか歪エネルギーを蓄えることができないため、熱延板焼鈍において、板厚表層部の結晶のみが異常粒成長をきたし、冷間圧延後に結晶模様が発生してしまう。また、板厚方向の中央部に、歪エネルギーを完全に蓄積させることができないため、熱延板焼鈍により板厚方向の中央部における集合組織を完全に改善することはできない。さらに、連続焼鈍による熱延板焼鈍は、コストを考慮すると、実際には長くても数分間程度の焼鈍時間しか確保できないため、十分な再結晶粒が得られない。また、コストを度外視して焼鈍時間を確保したとしても、熱延板の形状悪化や、板厚表層部のよりいっそうの異常粒成長をまねき、特性や外観品質がいずれも不安定になってしまう。
【0010】
さらに、特開平5−171280号公報により開示された方法では、スキンパス圧延の圧下率が5%を超えるため、前述したように、熱延板での再結晶核生成サイトが増加して板厚方向全体の平均結晶粒径が逆に小さくなり、磁束密度が低下してしまう。
【0011】
すなわち、熱延板へのスキンパス圧延に次いで熱延板焼鈍を行うことによる無方向性電磁鋼板の従来の製造法では、スキンパス圧延の圧下率が5%未満の場合には、板厚表層部にのみ異常粒成長が発生して結晶模様が発生し、逆に圧下率が5%以上の場合には、板厚方向全体の平均結晶粒径が小さくなるため高磁束密度のものが得られなくなり、特性の不均一性が発生してしまう。また、特に酸洗前に熱延板のスキンパス圧延を行うことによる無方向性電磁鋼板の従来の製造法では、スケール押込み等の品質問題を発生させるとともに、スキンパス圧延に要する設備コストが嵩んでしまう。
【0012】
このように、無方向性電磁鋼板の従来の製造法では、鉄損および磁束密度がいずれも良好であって、結晶模様を生じることがない表面性状の優れた無方向性電磁鋼板を提供することは、できなかった。
【0013】
ここに、本発明の目的は、磁気特性が良好であって、結晶模様を生じることがない表面性状の優れた無方向性電磁鋼板を提供すること、具体的には、飽和磁束密度BS (=2.158−0.0427×(Si+Al+(1/2)Mn))で磁束密度B50を無次元化したB50/BS が83.5%以上である良好な磁気特性を有し、結晶模様を生じることがない表面性状の優れた無方向性電磁鋼板を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、熱延板に0.5〜3%の歪みを与えてから熱延板焼鈍を行うことにより、鉄損および磁束密度がいずれも良好であって、結晶模様を生じることがない表面性状の優れた無方向性電磁鋼板を得られることを知見して、本発明を完成した。
【0015】
本発明は、C≦0.01%(本明細書では特にことわりがない限り「%」は「質量%」を意味する。)、Si≦3.0%、Al≦3.0%、Mn≦2.0%、P≦0.2%、S≦0.05%およびN≦0.005%を含有し、残部Feおよび不純物からなる鋼片に熱間圧延を行って熱延板とし、該熱延板に、テンションレベラを用いて0.5〜3.0%の歪みを与え、次いで熱延板焼鈍を行った後に、冷間圧延および連続焼鈍を行うことを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造法である。
【0016】
この本発明にかかる無方向性電磁鋼板の製造法では、鋼片が、さらに、Sb≦0.3%、Sn≦0.3%、あるいは、Sb+Sn≦0.3%、または、B≦0.005%を含有することが望ましい。
【0017】
また、これらの本発明にかかる無方向性電磁鋼板の製造法では、熱延板に与える歪EL(%)と、熱延板焼鈍の焼鈍温度TA(℃)とが下記(1)式により規定される関係を満足することが望ましい。
350≦EL×TA≦2400 ・・・・・・・(1)
ただし、(1)式において、歪みELは0.5%以上3.0%以下であり、熱延板焼鈍の温度TAは650℃以上870℃以下である。
【0018】
さらに、これらの本発明にかかる無方向性電磁鋼板の製造法では、連続焼鈍を行った後に、さらに圧下率:1.0〜15.0%のスキンパス圧延を行って最終焼鈍を行うことが、望ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる磁気特性および表面性状の優れた無方向性電磁鋼板の製造法の実施の形態を、詳細に説明する。なお、以降の実施の形態の説明では、鋼片がスラブである場合を例にとる。
まず、本発明において用いるスラブの組成を限定する理由を説明する。
【0020】
(C≦0.01%)
C含有量は磁気特性を向上するためには少ない方が良く、C含有量は0.01%を超えると、磁気時効により鉄損が劣化する。
そこで、本発明では、磁気時効の影響も考慮し、C含有量は0.01%以下と限定する。同様の観点から、C含有量の上限は0.005%であることが望ましい。また、C含有量の下限は、0.0005%であることが望ましく、0.001%であることがさらに望ましい。
【0021】
(Si≦3.0%、Al≦3.0%)
SiおよびAlは、ともに、鋼板の固有抵抗を増加して渦電流損を低減させるのに有効である。しかし、SiおよびAlそれぞれの含有量が3.0%を超えると、冷間圧延での破断や電気部品への打ち抜き工程での割れの問題が大きくなる。そこで、本発明では、Si≦3.0%、Al≦3.0%と限定する。また、本発明では、Si含有量およびAl含有量それぞれの上限は、2.9%であることが望ましく、2.8%であることがさらに望ましい。また、Si含有量およびAl含有量それぞれの下限は、0.1%であることが望ましく、0.5%であることがさらに望ましい。
【0022】
(Mn≦2.0%)
Mnは、SiおよびAlと同様に、鋼板の固有抵抗を増加して渦電流損を低減させるのに有効である。しかし、2.0%を超えて添加すると、冷間圧延性が悪化して冷間圧延時に破断を引き起こす。そこで、本発明では、Mn含有量は2.0%以下と限定する。
【0023】
(P≦0.2%)
P量は0.2%以下に限定する。Pは、製品とした後の打抜き加工の際に、鋼板のだれやかえりを防ぐのに有効であるが、P含有量が0.2%を超えるとスラブ割れを生じる。そこで、本発明では、P含有量は0.2%以下と限定する。同様の観点からP含有量は0.1%以下であることが望ましい。
【0024】
(S≦0.05%)
Sは、MnS等の微細な硫化物を形成して結晶粒成長を阻害するとともに磁壁移動の妨げになる。特に、S含有量が0.05%を超えると磁性が劣化する。そこで、本発明では、S含有量は0.05%以下と限定する。同様の観点からS含有量は0.03%以下であることが望ましい。
【0025】
(N≦0.005%)
Nは、微細なAlNを形成して結晶粒成長を阻害するとともに磁壁移動の妨げになるため、N含有量は少ないほうがよい。特に、N含有量が0.005%を超えると磁性が劣化する。そこで、本発明では、N含有量は0.005%以下と限定する。同様の観点からN含有量は0.0025%以下であることが望ましい。
【0026】
本発明では、用いる鋼片がSb、SnまたはBを任意添加元素として含有してもよい。以下、これら任意添加元素についても説明する。
【0027】
(Sb≦0.3 %、Sn≦0.3%、あるいは、Sb+Sn≦0.3%)
SbおよびSnは、いずれも、集合組織を改善して圧延方向の磁束密度を向上させるのに有効な元素である。しかし、Sb含有量、Sn含有量あるいは(Sb+Sn)量が、0.3 %を超えると、熱延板に伸びを与えた後の焼鈍により、結晶粒成長が劣化して磁束密度が低下する。そこで、SbやSnを添加する場合には、Sb含有量、Sn含有量あるいは(Sb+Sn)量は、いずれも、0.3 %以下と限定することが望ましい。
【0028】
(B≦0.005%)
Bも、SbやSnと同様に、集合組織を改善して、圧延方向の磁束密度を向上させるのに有効な元素である。しかし、B含有量が、0.005%を超えると、熱延板に伸びを与えた後の焼鈍により、結晶粒成長が劣化して磁束密度が低下する。そこで、Bを添加する場合には、B含有量は0.005%以下と限定することが望ましい。
【0029】
本発明では、用いる鋼片が、Sb、SnおよびB以外にも、磁気特性に有効な元素として知られているCu、NiさらにはCr等を微量添加してもよい。これらの元素は、本発明の効果を何ら損なうものではなく、その含有量は特に制限を要するものではないが、コストの観点からそれぞれの添加量は0.1%以下とすることが望ましい。
本発明において用いるスラブの上記以外の組成は、Feおよび不可避的不純物である。
【0030】
(熱間圧延)
本発明では、かかる鋼組成を有するスラブを加熱して熱間圧延を行い、熱延板とする。
【0031】
この熱間圧延は、公知の条件で行えばよく、特定の圧延条件には限定されない。例えば、スラブ加熱温度は、スラブ低温加熱による析出物の固溶抑制を図って熱間圧延の析出物の微細化を防止するために、1200℃以下とすることが望ましい。また、熱間圧延の仕上温度も、α域あるいはγ域であってもよく、特に限定を要さない。
【0032】
(熱延板への歪み付与)
本発明では、このようにして得た熱延板に、例えばテンションレベラを用いて、0.5%以上3.0%以下の歪を与える。
【0033】
無方向性電磁鋼板の磁束密度を改善するためには、板厚表層部における結晶粒を粗大化することと、板厚中央部についても磁化容易面方位{200}の集積度を高めることがともに重要である。熱延後に歪を与えることにより、表層に異常粒成長を発生させることなく板厚方向に略均一に歪エネルギーを蓄えることができ、これにより、無方向性電磁鋼板の磁束密度を大きく改善することができる。
【0034】
本発明では、熱延板に付与する歪は、0.5%以上3.0%以下と限定する。すなわち、熱延板に付与する歪みが3.0%を超えると、熱延板焼鈍の再結晶時に熱延板の充分な粒成長が得られないばかりか、磁束密度も大きく改善しない。また、熱延板に付与する歪が0.5%を下回ると、表層のみの歪みとなり、熱延板焼鈍後、表層のみの異常粒が発生し、成品での表面品質不良となる。そこで、本発明では、熱延板に付与する歪は、0.5%以上3.0%以下と限定する。
【0035】
本発明では、結晶模様の発生を抑制するために、例えばテンションレベラを用いて熱延板に歪を与えた後の熱延板焼鈍により、板厚表層部の結晶粒を100〜300μm程度の粗大粒とすることができる。
【0036】
なお、熱延板への歪の付与は、例えば、酸洗ライン内でのテンションレベラを用いて、入側においてスケール付きのままで行ってもよい。これにより、無方向性電磁鋼板の磁気特性および表面結晶模様をいずれも改善でき、得られる電磁鋼板の表面性状を改善することができる。
【0037】
これに対し、従来のスキンパス圧延では、板厚表層部のみ歪が導入され、板厚中央部への歪の付与が不足して集合組織を改善することができない。
【0038】
(熱延板焼鈍)
このようにして歪を付与された熱延板に、熱延板焼鈍を行う。熱延板焼鈍温度は、650℃未満であると、熱間圧延時の加工組織が熱延板焼鈍後にも残存し、最終製品の磁気特性を劣化させる。また、熱延板焼鈍温度が870℃を超えると、結晶粒が大きくなり、最終製品の表面に結晶模様を生じさせる。依って、本発明では、熱延板焼鈍の焼鈍温度は650℃以上870℃以下に限定する。
【0039】
この熱延板焼鈍は、連続焼鈍あるいはバッチ式焼鈍でもよく、特に限定を要するものではない。しかし、板厚表層部の結晶粒を100〜300μm程度に粗大化させ、かつ板厚方向中央部の集合組織を改善するためには、700〜830℃の焼鈍温度で1〜20時間程度の均熱を行うことが望ましいため、バッチ式焼鈍を行うことが好ましい。
【0040】
さらに、熱延板に付与する歪みが小さく、かつ熱延板焼鈍の焼鈍温度が小さい場合には、磁気特性が劣化する。具体的には、熱延板に与える歪みEL(%)と、熱延板焼鈍の焼鈍温度TA(℃)とが下記(1)式により規定される関係を満足することにより、磁気特性および表面性状がともに改善されるため、望ましい。
350≦EL×TA≦2400 ・・・・・・・(1)
これ以外の熱延板焼鈍の条件は、公知の条件によればよい。
【0041】
(冷間圧延)
このようにして、熱延板焼鈍を行った後に、酸洗を行ってから冷間圧延を行う。この冷間圧延は、公知のタンデム圧延あるいはレバース圧延によって通常の冷間圧延を行い、例えば0.15mm以上0.8mm以下の板厚を有する冷延鋼板に強圧下する。
【0042】
(連続焼鈍)
冷間圧延後には、適宜脱脂してから、通常の連続焼鈍を行うことにより、一次再結晶させ、所望の集合組織とする。焼鈍温度は、例えば650℃以上1200℃以下を例示することができる。
【0043】
(スキンパス圧延)
この連続焼鈍を行った後に、さらに、圧下率が1.0〜15.0%のスキンパス圧延を行ってもよい。スキンパス圧延の圧下率が、1.0%未満または15.0%超であると、スキンパス圧延後に、出荷先での打抜き後に行われる焼鈍によっても、結晶粒の粗大化が図られず、鉄損が改善されない。
【0044】
このようにして、飽和磁束密度BS で磁束密度B50を無次元化したB50/BS が83.5%以上であるという良好な磁気特性を有し、結晶模様を生じることがない表面性状の優れた無方向性電磁鋼板が製造される。
【0045】
【実施例】
さらに、本発明にかかる磁気特性および表面性状の優れた無方向性電磁鋼板の製造法を、実施例を参照しながら具体的に説明する。
【0046】
表1に示す鋼組成を有する23種の溶鋼をスラブに鋳造し、このスラブを1150℃に加熱して、仕上温度880℃で熱間圧延を行って板厚が2.3mmの熱延板とし、650℃の巻取温度で巻き取った。
【0047】
【表1】
Figure 0004016552
【0048】
これら23種の熱延板に、表1に示す条件で歪を与え、酸洗後に、表1に示す焼鈍温度で20時間のバッチ焼鈍を行った。この後、板厚0.5mmまで冷間圧延を行い、連続焼鈍で、0.25分間の再結晶焼鈍を行った。
なお、一部については、表1に示すように、上記の最終連続焼鈍後に0.2〜1.5%のスキンパス圧延を行った。
【0049】
得られた23種の冷延鋼板から、試料No.1〜試料No.23を切り出して、JIS C2550に準じたエプスタイン試験を行って磁気特性 (鉄損W15/50、磁束密度B50) を測定するとともに表面外観の状態を目視で評価した。測定結果を、表1にまとめて示す。なお、鉄損W15/50は、1.5T、周波数50Hzに対する試料1Kg当たりの鉄損を示し、磁束密度B50は、磁化力5000A/mにおける磁束密度を示す。
【0050】
なお、測定は、切断のまま(フルプロセス)と、750℃、2時間の焼鈍を行った後の特性(セミプロセス)とについて、行った。
表1における試料No.1〜試料No.9は、いずれも、本発明で規定する条件を全て満足する本発明例である。これらの試料は、フルプロセスおよびセミプロセスともに、B50/BS が83.5%以上であるという良好な磁気特性を有し、結晶模様を生じることがなく表面性状が良好であった。
【0051】
これに対し、試料No.10はC含有量が本発明の範囲の上限を超え、試料No.14はS含有量が本発明の範囲の上限を超え、さらに試料No.15はN含有量が本発明の範囲の上限を超えるため、いずれも、磁気特性B50/BS が83.5%未満に劣化した。
【0052】
また、試料No.11はSi含有量が本発明の範囲の上限を超え、また試料No.12はAl含有量が本発明の範囲の上限を超えるため、いずれも、冷間圧延時に破断した。
【0053】
試料No.13は、P含有量が本発明の範囲の上限を超えるためにスラブ割れを生じるとともに、Mn含有量が本発明の範囲の上限を超えるため、その後の冷間圧延時に破断した。
【0054】
試料No.16および試料No.23は、いずれも、熱延板に付与された歪みが本発明の範囲の下限を下回るため、B50/BS が83.5%未満に劣化した。
【0055】
試料No.18、試料No.19、試料No.20および試料No.22は、いずれも、熱延板に付与された歪みEL(%)が本発明の範囲の上限を上回るため、結晶模様を生じてしまい、表面性状が劣化し、さらに、B50/BS も83.5%未満に劣化した。特に、試料No.19は、スキンパス圧延における圧下率が本発明の範囲の上限を上回るため、B50/BS が83.5%未満に劣化した。
【0056】
さらに、試料No.17および試料No.21は、いずれも、熱延板の焼鈍温度が本発明の範囲の下限を下回るため、B50/BS が83.5%未満に劣化した。
【0057】
図1は、試料No.1〜試料No.23について、熱延板に付与された歪みEL(%)と、熱延板焼鈍温度TA(℃)との関係を示すグラフである。なお、図1における○印は本発明例を示し、×印は比較例を示す。
【0058】
また、図2には、試料No.1〜試料No.23について、(熱延板歪みEL)×(熱延板焼鈍温度TA)の値と、B50/BS との関係をグラフで示す。また、図3には、試料No.1〜試料No.23について、(熱延板歪みEL)×(熱延板焼鈍温度TA)の値と、表面肌荒れとの関係をグラフで示す。
【0059】
なお、図3のグラフにおける表面肌荒れ評点は、評点3が良好であることを示し、評点2が境界値であることを示し、評点1が不良であることを示す。また、図2および図3にそれぞれ示すグラフにおいて、○印は本発明例を示し、▲印は表面肌荒れの程度が合否の境界にある比較例を示し、×印は表面肌荒れ不良が発生した比較例を示し、+印は用いた鋼片の組成が本発明の範囲外である比較例を示す。さらに、図3に示すグラフにおいて、飽和磁束密度BS は、BS =2.158−0.0427×(Si+Al+(1/2)Mn)により算出した。
【0060】
図2および図3のいずれのグラフにおいても、(熱延板歪みEL)×(熱延板焼鈍温度TA)の値が本発明の範囲である350以上2400以下を満足すると、磁気特性B50/BS および表面肌荒れがともに良好となることがわかる。
【0061】
さらに、最終焼鈍後のスキンパス圧延を行った試料No.3、試料No.5、試料No.6および試料No.8と、試料No.16、試料No.19および試料No.22とを対比することにより、スキンパス圧延の圧下率が1.0%以上15.0%以下であれば、優れた磁気特性B50/BS が得られることがわかる。
【0062】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明により、板厚方向全体に歪エネルギーを付与させることにより、結晶粒径の適正化と集合組織の改善とを図ることができ、磁気特性、特に磁束密度が高く、かつ結晶模様やスケール押込み等が発生しない表面外観の良好な無方向性電磁鋼板を、低コストで、しかも安定して製造することができる。
かかる効果を有する本発明の意義は、極めて著しい。
【図面の簡単な説明】
【図1】試料No.1〜試料No.23について、熱延板に付与された歪みEL(%)と、熱延板焼鈍温度TA(℃)との関係を示すグラフである。
【図2】実施例の試料No.1〜試料No.23について、(熱延板歪みEL)×(熱延板焼鈍温度TA)の値と、B50/BS との関係を示すグラフである。
【図3】実施例の試料No.1〜試料No.23について、(熱延板歪みEL)×(熱延板焼鈍温度TA)の値と、表面肌荒れとの関係を示すグラフである。

Claims (4)

  1. 質量%で、C≦0.01%、Si≦3.0%、Al≦3.0%、Mn≦2.0%、P≦0.2%、S≦0.05%およびN≦0.005%を含有し、残部Feおよび不純物からなる鋼片に熱間圧延を行って熱延板とし、該熱延板に、テンションレベラを用いて0.5〜3.0%の歪みを与え、次いで熱延板焼鈍を行った後に、冷間圧延および連続焼鈍を行うことを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造法。
  2. 前記鋼片が、さらに、質量%で、Sb≦0.3%、Sn≦0.3%、あるいは、Sb+Sn≦0.3%、または、B≦0.005%を含有する請求項1に記載された無方向性電磁鋼板の製造法。
  3. 前記熱延板に与える歪EL(%)と、前記熱延板焼鈍の焼鈍温度TA(℃)とが下記(1)式により規定される関係を満足する請求項1または請求項2に記載された無方向性電磁鋼板の製造法。
    350≦EL×TA≦2400 ・・・・・・・(1)
    ただし、EL:0.5%以上3.0%以下、TA:650℃以上870℃以下である。
  4. 前記連続焼鈍を行った後に、さらに圧下率:1.0〜15.0%のスキンパス圧延を行って最終焼鈍を行うことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された無方向性電磁鋼板の製造法。
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