JP3988935B2 - 網目状導電体及びその製造方法並びに用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は優れた電荷注入性、低い抵抗率及び高い光透過性を備えた網目状導電体及びその製造方法並びに用途に関し、特に有機電界発光素子(有機EL素子)の電極用材料として有用な網目状導電体及びその製造方法並びに用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機電界発光素子(有機EL素子)等の有機発光素子は面状発光素子への適用が容易であるため、新たな光デバイスとして注目されている。具体的には、固体発光型の安価な大面積フルカラー表示素子や、書き込み光源アレイとしての用途が有望視され、多くの開発が行われている。一般に有機発光素子は、発光層及びそれを挟んだ一対の対向電極(背面電極及び透明電極)から構成されている。係る有機発光素子の一対の対向電極間に電界が印加されると、有機発光素子内に背面電極から電子が注入されるとともに、透明電極から正孔が注入される。電子と正孔とが発光層中で再結合し、エネルギー準位が伝導帯から価電子帯に戻る際にエネルギーが光として放出され、発光する。
【0003】
有機EL素子では陰極及び陽極が優れた電荷注入性を有することが重要である。陰極及び陽極からの電荷注入性が低いと、有機EL素子を駆動させるために高い駆動電圧が必要であり、エネルギー効率や駆動耐久性が悪い。電荷注入性には、陰極及び陽極のそれぞれを構成する導電性物質の仕事関数が影響すると考えられ、陰極では低仕事関数の導電性物質が望まれ、陽極では高仕事関数の導電性物質が望まれる。さらに陰極又は陽極を構成する導電性物質に望まれる性質は光透過性である。有機EL素子の少なくとも一方の面から発光画像を鑑賞するためには、陰極及び陽極の少なくとも一方は透明である必要がある。現状では低仕事関数でかつ導電性に優れる物質は金属しか見つかっていないため、陰極は不透過あるいは半透明である。このため通常は陽極に酸化インジウムスズ(ITO:Indium Tin Oxide)等の金属酸化物からなる透明電極が用いられる。
【0004】
しかし通常の方法で作製するITOの仕事関数は約4.7 eVであり、表面処理を施してもせいぜい4.9 eV程度までしか上げられない。さらにITOは金属と比較して電気抵抗が高いため、有機EL素子のような電荷注入型発光デバイスでは、特に透明電極の面積が大きくなると、輝度ムラを生じ表示品位を損ねたり、発熱したりするといった問題が生じる。このように有機EL素子の透明電極として現在最も優れているITOでも電気抵抗と仕事関数に関しては不十分である。金等の高導電性物質を用いれば電気抵抗と仕事関数に関する性能は満たされるが、金の光不透過性は決定的な問題である。
【0005】
これに対して、抵抗値の低いメタルバスライン(金属膜)をフォトリソグラフィーによるパターニングによって形成し、得られたメタルバスライン上に透明導電膜を積層する方法が提案されている(例えば特許文献1)。
【0006】
【特許文献1】
特開平10-12386号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし特許文献1のメタルバスライン自身は不透過性のため、発光効率を下げる問題がある。またパターニングが煩雑であるという欠点がある。よってメタルバスラインの細線の幅を狭くすることが解決手段として有効だが、メタルバスラインの細線の幅を狭くしたネットワーク状の導電材料を、大面積かつ低コストで形成できる技術は知られていない。
【0008】
従って、本発明の目的は、優れた電荷注入性、低い抵抗率及び高い光透過性を備えたネットワーク状の導電体及びその製造方法並びに用途を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、自然界で知られるひび割れ現象に着目し、薄膜に生じさせたマイクロクラック(ひび割れ)の溝部を利用し、導電性物質を不規則な網目(ネットワーク状)構造体とすることにより、優れた電荷注入性、低い抵抗率及び高い光透過性を備えた網目状導電体が得られることを見出し、本発明に想到した。
【0010】
すなわち、本発明の第一の網目状導電体付き基板は、導電性物質からなり、不規則な網目構造を有し、前記網目の細線幅が10 nm〜10μmの網目状導電体が、基板上に形成されたものであって、前記網目状導電体は、(a) バインダーに還元性金属粒子からなるめっき触媒が添加されたのち、酸・アルカリ処理、 UV 照射、酸素プラズマ処理、水素プラズマ処理又はコロナ処理による表面活性化処理が施された第一のめっき下地層を介して、前記基板上に無電解めっき法により形成された前記導電性物質の層からなるか、(b) シート抵抗が1010 Ω/□以下に調整された第二のめっき下地層を介して、前記基板上に電気めっき法により形成された前記導電性物質の層からなるか、(c) バインダーを基本成分とし、前記導電性物質に対して結合性を有する官能基が付与された下地層を介して、前記基板上に前記導電性物質からなる粒子が結合してなることを特徴とする。第一の網目状導電体付き基板は、網目状溝を有する薄膜を有し、前記網目状導電体が前記網目状溝内に形成された構成であってもよいが、上記薄膜が除去された構成であるのが好ましい。
【0011】
前記導電性物質としては、金属、金属酸化物及び共役系ポリマーからなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましく、ITO等の金属酸化物、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、金、銀、ステンレス、タングステン、クロム及びチタンからなる群から選ばれた少なくとも一種がより好ましい。
【0012】
本発明の第二の網目状導電体付き基板は、基板上に形成された薄膜と、前記薄膜が有する網目状のマイクロクラック内に導電性物質が充填されることにより形成され、不規則な網目構造を有し、前記網目の細線幅が10 nm〜10μmの網目状導電体とを有するものであって、前記基板と前記網目状導電体との間に、めっき下地層、又は前記導電性物質に対して結合性を有する下地層を有し、前記網目状導電体は、前記めっき下地層を介して、前記基板上にめっき法により形成された前記導電性物質の層からなるか、前記結合性下地層を介して、前記基板上に前記導電性物質からなる粒子が結合した層からなり、前記マイクロクラックを有する薄膜は、ゾルゲル液の塗布により得られるゾルゲル膜又はATO微粒子液の塗布により得られる微粒子膜を乾燥するか、気化させた薄膜形成材料の堆積により得られる気相成長膜の成長過程で応力を蓄積させることにより形成してなることを特徴とする。前記めっき下地層は、バインダーを基本成分とし、めっき触媒の添加及び/又は表面形状加工処理が施されているか、シート抵抗が1010 Ω/□以下に調整されているのが好ましい。前記結合性下地層はバインダーを基本成分とし、前記導電性物質に対して結合性を有する官能基の付与及び/又は化学的処理もしくは物理的処理による表面活性化処理が施されているのが好ましい。
【0013】
本発明の有機電界発光素子は、本発明の第一又は第二の網目状導電体付き基板を少なくとも一つ有し、有機電界発光層が陽極と陰極により挟まれており、前記網目状導電体は前記陽極及び/又は前記陰極の構成要素であることを特徴とする。前記陽極の構成要素である網目状導電体は、仕事関数が4.9 eV以上であり且つ抵抗率が20 × 10-6 Ω・cm以下の導電性物質からなるのが好ましく、白金、金、コバルト、パラジウム及びこれらの合金からなる群から選ばれた少なくとも一種からなるのがより好ましく、金からなるのが最も好ましい。前記陰極の構成要素である網目状導電体は、仕事関数が4.6 eV以下であり且つ抵抗率が20 × 10-6 Ω・cm以下の導電性物質からなるのが好ましく、Al、銅、銀、鉄、錫及びこれらの合金からなる群から選ばれた少なくとも一種からなるのがより好ましく、銀からなるのが最も好ましい。前記陽極及び/又は前記陰極の構成要素である前記網目状導電体は、導電性高分子層により被覆されているのが好ましい。
【0014】
本発明の第1の網目状導電体の製造方法は、基板上に薄膜を形成し、得られる薄膜に網目状のマイクロクラックを生じさせ、前記マイクロクラック内に導電性物質を充填するものであって、前記薄膜として、 (1) ゾルゲル液を塗布することにより得られるゾルゲル膜、 (2) ATO 微粒子液を塗布することにより得られる微粒子膜、又は (3) 気化させた薄膜形成材料を堆積させることにより得られる気相成長膜を形成し、前記ゾルゲル膜又は前記微粒子膜を乾燥するか、前記気相成長膜の成長過程において応力を蓄積させることにより、前記マイクロクラックを生じさせることを特徴とする。
【0015】
本発明の第2の網目状導電体の製造方法は、基板上に下地層を設けた後に前記薄膜を形成し、得られる薄膜に網目状のマイクロクラックを生じさせ、前記マイクロクラックに露出した前記下地層に活性化処理を施した後、前記薄膜を除去し、前記下地層のうち活性化処理を施した部分にのみ導電性物質の層を形成することを特徴とする。
【0016】
第2の製造方法の好ましい実施例では、前記薄膜として、(1) ゾルゲル液を塗布することにより得られるゾルゲル膜、(2) 微粒子液を塗布することにより得られる微粒子膜、又は(3) 気化させた薄膜形成材料を堆積させることにより得られる気相成長膜を形成し、前記ゾルゲル膜もしくは前記微粒子膜を乾燥するか、又は前記気相成長膜の成長過程において応力を蓄積させることにより、前記マイクロクラックを生じさせる。
【0017】
第1及び第2の製造方法の別の好ましい実施例では、前記基板にめっき下地層を設けた後に前記薄膜を形成し、もって前記マイクロクラックに前記めっき下地層を露出させ、(1) 前記めっき下地層の露出部分、又は(2) 前記めっき下地層のうち活性化処理を施した部分にめっき法により前記導電性物質の層を形成する。前記めっき法として無電解めっき法を採用する場合、前記めっき下地層はめっき触媒又は触媒プリカーサーを含むのが好ましい。前記下地層が前記触媒プリカーサーを含む場合、前記活性化処理は前記触媒プリカーサーを活性化させる処理であるのが好ましい。前記めっき法として電気めっき法を採用する場合、前記下地層のシート抵抗は1010 Ω/□以下であるのが好ましい。
【0018】
第1及び第2の製造方法のさらに別の好ましい実施例では、前記導電性物質に対して結合性を有するか、又は活性化処理により前記導電性物質に対して結合性が付与される結合性下地層を、前記基板に設けた後に前記薄膜を形成し、もって前記マイクロクラックに前記結合性下地層を露出させ、(1) 前記結合性下地層の露出部分、又は(2) 前記結合性下地層のうち活性化処理を施した部分に前記導電性物質からなる粒子を結合させる。前記結合性下地層は、前記導電性物質に対して結合性を有する官能基を含むか、又は前記活性化処理により前記導電性物質に対する結合性を有する官能基が付与されるのが好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
[1] 網目状導電体及び網目状導電体付き基板
(1) 網目状導電体
本発明の網目状導電体は、不規則な網目構造を有する。ここで「不規則な網目構造」とは、薄膜が面方向に収縮したときに生じるマイクロクラック(ひび割れ)の溝の構造にならったもので、ネットワーク状に2次元的に連続した形状をとり、後述するように、このような溝に導電性物質をめっき法等により充填したときに得られるものである。このような溝は非常に微細であるが、その形状そのものは、例えば田圃が乾燥して面方向に収縮した時に生じるひび割れの溝に似ている。
【0020】
不規則な網目構造を有する網目状導電体の細線幅は10 nm〜10μmである必要がある。細線幅は10 nm〜5μmであるのが好ましく、10 nm〜1μmであるのがより好ましい。細線幅が10 nmより大きいと網目状導電体が見えてしまい、10μmより小さいと十分な導電性が得られない。網目状導電体は均一に広がっているのが好ましい。網目状導電体を構成する網目のサイズは円形換算で直径1μm〜1 mmであるのが好ましい。
【0021】
網目状導電体を構成する導電性物質に特に限定はなく、例えば金属、金属酸化物、共役系ポリマー、又はこれらの複合物が用いられる。比較的高い導電性が要求される用途では、ITO等の金属酸化物や、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、金、銀、ステンレス、タングステン、クロム及びチタンからなる群から選ばれた少なくとも一種の金属を用いるのが有効である。後述の透明導電膜を形成するための材料も用いることができる。
【0022】
(2) 網目状導電体付き基板
本発明の網目状導電体付き基板は、基板上に本発明の網目状導電体が形成された構成を有する。網目状導電体付き基板は、網目状溝を有する薄膜を有し、網目状導電体が上記網目状溝内に形成された構成とすることができるが、薄膜を含まない構成とする方が好ましい。後述するように、薄膜はゾルゲル膜、微粒子膜又は気相成長膜からなるものである。
【0023】
[2] 網目状導電体及び網目状導電体付き基板の製造方法
本発明の網目状導電体及び網目状導電体付き基板を製造する方法は、(イ) 基板上に薄膜を形成し、得られた薄膜に生じた網目状のマイクロクラック(ひび割れ)内に導電性物質を充填する直接法と、(ロ) 基板上に下地層を設け、その上に薄膜を形成し、得られた薄膜又は形成中の薄膜に網目状のマイクロクラックを生じさせ、前記マイクロクラックに露出した前記下地層に活性化処理を施した後、次いで薄膜を除去し、前記下地層のうち活性化処理を施した部分にのみ導電性物質の層を形成する間接法とに大別される。以下直接法及び間接法により本発明の網目状導電体及び網目状導電体付き基板を製造する方法について詳細に説明する。
【0024】
(1) 薄膜の形成工程
本発明の網目状導電体及び網目状導電体付き基板の製造方法において、基板(支持体)上でマイクロクラック(ひび割れ)を起こすものであれば、薄膜の材質やその形成方法に特に限定はない。
【0025】
例えば自然界では、泥(水分散状態の土)が乾燥することにより面方向に収縮し、ついにはひび割れして田圃等に独特のパターンを形成することがよく見られるし、人工物では、コンクリートに経時によるひび割れ欠陥が生じたり、あるいは陶器の製造において上薬を選ぶことにより審美的なひび割れ模様が生じたりすることが知られている。これらのひび割れの形成原理を応用し、工業的に利用しやすい素材あるいはその処方を任意に選択することにより、マイクロクラックを生じる薄膜を形成することができる。本発明において、基板の材質はガラス、高分子フィルム、金属、金属酸化物、半導体等用途に応じて任意に選択できる。好ましくは表面に平坦性を有するものである。薄膜は、主に薄膜自身の乾燥及び基板との熱膨張係数の違いによって収縮し、マイクロクラックを生じるが、その収縮性は乾燥条件や基板との密着性等によっても変化する。よって基板の材質や表面の性状、あるいはマイクロクラックを形成する雰囲気等を考慮し、薄膜の材質を選択する。本発明では、上記のような基板に対して、金属酸化物、金属窒化物、金属フッ化物、高分子微粒子、半導体微粒子、金属微粒子又はこれらの複合化微粒子からなる薄膜をゾルゲル法、微粒子塗布法又は気相成長法により設けるのが好ましい。
【0026】
薄膜に生じるマイクロクラックは、ネットワーク状に2次元的に連続した形状をとるのが好ましい。より連続した形状をとるほど後続する網目状導電体を形成した後のシート抵抗が低くなる利点がある。本発明では、マイクロクラックの溝部に周囲を囲まれて孤立した部分をマイクロクラックの「ドメイン」と定義する。即ち本発明の薄膜に生じるマイクロクラックの構造は、「ドメイン」とドメインの周囲を囲む「溝部」とからなる。
【0027】
ドメインの形状やサイズは、その用途に応じて任意に選ぶことができる。シート抵抗を下げるためには、ドメインサイズを小さくすることが有効であるが、光透過率も下がるため用途に応じてドメインサイズを制御するのが好ましい。溝部の幅は、後続する網目状導電体の形成後に得られる細線幅の重要な因子となるが、前述のドメインサイズと同様、その用途により選択される。ドメインサイズは円形換算で直径1μm〜1 mmであるのが好ましい。溝部の幅は10 nm〜10μmであるのが好ましく、10 nm〜5μmであるのがさらに好ましく、10 nm〜1μmであるのが特に好ましい。溝部の側壁は基板面に対して垂直であるのが好ましい。溝部の側壁が薄膜の垂直方向(厚み方向)において曲がっていたり、あるいは溝部が薄膜の厚み方向で複数に分かれていたりすると、後続する網目状導電体の形成時に面均一性が低下したり、シート抵抗に対して光透過率が低下するといった問題が生じる。基板上に下地層を設けた場合には、溝部の底部において下地層が露出しているのが好ましい。これによりめっき法による網目状導電体の形成が容易になる。薄膜の膜厚は、その用途や後続する網目状導電体の形成方法等により任意に選ぶことが出来るが、好ましくは10 nm〜10 μmである。
【0028】
薄膜を設置する方法としては公知の方法を利用できる。例えばゾルゲル法、微粒子塗布法により薄膜を設置する場合は、スピンコート法、グラビアコート法、ディップコート法、キャスト法、ダイコート法、ロールコート法、バーコート法、エクストロージェンコート法、インクジェット塗布法等のウェット法が挙げられる。また気相成長法により薄膜を設置する場合は、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等が挙げられる。
【0029】
(1-1) ゾルゲル法
以下薄膜としてゾルゲル膜を形成する例を説明する。本発明において、ゾルゲル膜とは、微粒子を含むゾル状態を経て、微粒子の隙間に溶剤を含むゲル状態で薄膜となるものを意味する。マイクロクラックは、微粒子の隙間の溶剤が揮発する過程で、薄膜が面方向に収縮することによって形成される。上記の定義に当てはまるものであれば、有機又は無機を問わずいかなる素材も用いることが出来る。ゾルゲル膜については数々の成書があり、それらにその素材について記載されている[例えば作花済夫著「ゾル−ゲル法の科学」アグネ承風社(1988年発行)]。ゾルゲル膜の形成は、金属アルコキシドの加水分解・縮合を経て金属酸化物を形成するゾルゲル反応を利用するのが比較的容易である。すなわちゾルゲル反応によるゾルゲル膜は、金属アルコキシドを、水やアルコールの存在下において酸又は塩基触媒で加水分解したのち、得られた溶液を塗布し、乾燥することにより得られる。
【0030】
本発明においては、溶液中又は塗膜中で金属アルコキシドを加水分解・縮重合させるのが好ましい。これにより緻密な薄膜が得られる。この時樹脂を併用し、有機−無機ハイブリッド材料からなる薄膜としても良い。
【0031】
金属アルコキシドとしては、アルコキシシラン、及び/又はアルコキシシラン以外の金属アルコキシドを使用する。アルコキシシラン以外の金属アルコキシドとしては、ジルコニウムアルコキシド、チタンアルコキシド及びアルミニウムアルコキシドからなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましい。
【0032】
本発明において好ましく用いられるアルコキシシランは、下記一般式(I):
Si(OR1)x (R2)4-x ・・・(I)
により表されるものである。一般式(I)中のR1 としては、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜4のアシル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、アセチル基等が挙げられる。R2 としては、炭素数1〜10の有機基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、n-デシル基、フェニル基、ビニル基、アリル基等の無置換の炭化水素基、及びγ-クロロプロピル基、CF3CH2-基 、CF3CH2CH2-基、C2F5CH2CH2-基 、C3F7CH2CH2CH2-基、CF3OCH2CH2CH2-基、C2F5OCH2CH2CH2-基 、C3F7OCH2CH2CH2-基 、(CF3)2CHOCH2CH2CH2-基 、C4F9CH2OCH2CH2CH2-基、3-(パーフルオロシクロヘキシルオキシ)プロピル、H(CF2)4CH2OCH2CH2CH2-基、H(CF2)4CH2CH2CH2-基、γ-グリシドキシプロピル基、γ-メルカプトプロピル基、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル基、γ-メタクリロイルオキシプロピル基等の置換炭化水素基が挙げられる。xは2〜4の整数を表す。
【0033】
アルコキシシランの具体例を以下に示す。x=4のアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn-プロポキシシラン、テトラ-i-プロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトラ−アセトキシシラン等を挙げることができる。
【0034】
x=3のアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、i-プロピルトリメトキシシラン、i-プロピルトリエトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン、CF3CH2CH2Si(OCH3)3、C2F5CH2CH2Si(OCH3)3 、C2F5OCH2CH2CH2Si(OCH3)3 、C3F7OCH2CH2CH2Si(OC2H5)3、(CF3)2CHOCH2CH2CH2Si(OCH3)3 、C4F9CH2OCH2CH2CH2Si(OCH3)3、H(CF2)4CH2OCH2CH2CH2Si(OCH3)3 、3-(パーフルオロシクロヘキシルオキシ)プロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0035】
x=2のアルコキシシランとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ-n-プロピルジメトキシシラン、ジ-n-プロピルジエトキシシラン、ジ-i-プロピルジメトキシシラン、ジ-i-プロピルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、(CF3CH2CH2)2Si(OCH3)2 、(C3F7OCH2CH2CH2)2Si(OCH3)2、〔H(CF2)6CH2OCH2CH2CH2〕2Si(OCH3)2、(C2F5CH2CH2)2Si(OCH3)2等を挙げる事ができる。
【0036】
上述のようにゾル−ゲル反応時に樹脂(ポリマー)を併用することができる。係る樹脂は水素結合形成基を有しているのが好ましい。水素結合形成基を有する樹脂の例としては、ヒドロキシル基を有するポリマーとその誘導体(ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、フェノール樹脂、メチロールメラミン等とその誘導体);カルボキシル基を有するポリマーとその誘導体[ポリ(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の重合性不飽和酸の単位を含む単独重合体又は共重合体と、これらのポリマーのエステル化物(酢酸ビニル等のビニルエステル、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル等の単位を含む単独重合体又は共重合体)等];エーテル結合を有するポリマー(ポリアルキレンオキサイド、ポリオキシアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、珪素樹脂等);アミド結合を有するポリマー[>N(COR3)−結合(式中、R3は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を示す)を有するポリオキサゾリンやポリアルキレンイミンのN−アシル化物];>NC(O)−結合を有するポリビニルピロリドンとその誘導体;ポリウレタン;尿素結合を有するポリマー等を挙げることができる。
【0037】
樹脂としてシリル基含有ポリマーを用いても良い。シリル基含有ポリマーは、主鎖重合体からなり、末端あるいは側鎖に加水分解性基および/又は水酸基と結合したケイ素原子を有するシリル基を重合体1分子中に少なくとも1個、好ましくは2個以上含有するものが挙げられる。ゾル−ゲル反応時に添加する樹脂の含有量は、金属アルコキシド(アルコキシシラン及び他の金属アルコキシドを含有する場合には、アルコキシシランと他の金属アルコキシドとの合計)100重量部当たり1〜100重量部とするのが好ましい。
【0038】
ゾル−ゲル反応時には、水及び有機溶媒を含む溶媒中で金属アルコキシドを加水分解・縮重合させるが、この時に触媒を用いるのが好ましい。加水分解用の触媒としては一般に酸が用いられるが、無機酸又は有機酸のいずれでもよい。無機酸としては、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、燐酸、亜燐酸等を挙げることができる。有機酸化合物としてはカルボン酸類(蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、シクロヘキサンカルボン酸、オクタン酸、マレイン酸、2-クロロプロピオン酸、シアノ酢酸、トリフルオロ酢酸、パーフルオロオクタン酸、安息香酸、ペンタフルオロ安息香酸、フタル酸等)、スルホン酸類(メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸等)、燐酸・ホスホン酸類(燐酸ジメチルエステル、フェニルホスホン酸等)、ルイス酸類(三フッ化ホウ素エーテラート、スカンジウムトリフレート、アルキルチタン酸、アルミン酸等)、ヘテロポリ酸(燐モリブデン酸、燐タングステン酸等)等を挙げることができる。
【0039】
酸の使用量は、金属アルコキシド(アルコキシシラン及び他の金属アルコキシドを含有する場合には、アルコキシシランと他の金属アルコキシドとの合計)1モル当たり0.0001〜0.05モルであり、好ましくは0.001〜0.01モルである。
【0040】
加水分解後、無機塩基やアミン等の塩基性化合物を添加して溶液のpHを中性付近にし、縮重合を促進しても良い。係る無機塩基としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アンモニア等を用いることができる。有機塩基化合物としてはアミン類(エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、トリエチルアミン、ジブチルアミン、N、N-ジメチルベンジルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、エタノールアミン、ジアザビシクロウンデセン、キヌクリジン、アニリン、ピリジン等)、ホスフィン類(トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン等)等を用いることができる。
【0041】
他のゾル−ゲル触媒も併用することができ、例えば金属キレート化合物、有機金属化合物等を挙げることができる。金属キレート化合物としては、下記一般式(II):
R4OH ・・・(II)
(式中、R4は炭素数1〜6のアルキル基を示す)により表されるアルコールと下記一般式(III):
R5COCH2COR6 ・・・(III)
(式中、R5は炭素数1〜6のアルキル基、R6は炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜16のアルコキシ基を示す)により表されるジケトンを配位子とした金属を中心金属とするものであれば特に制限なく好適に用いることができる。この範疇であれば、2種以上の金属キレート化合物を併用しても良い。本発明の金属キレート化合物として特に好ましいものは中心金属にAl、Ti又はZrを有するものであり、下記一般式(IV):
Zr(OR4)p1(R5COCHCOR6)p2 ・・・(IV)
により表される化合物、下記一般式(V):
Ti(OR4)q1(R5COCHCOR6)q2 ・・・(V)
により表される化合物、および下記一般式(VI):
Al(OR4)r1(R5COCHCOR6)r2 ・・・(VI)
により表される化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましい。
【0042】
金属キレート化合物中のR4およびR5は、同一又は異なってもよく炭素数1〜6のアルキル基、具体的にはエチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec -ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、フェニル基等である。R6は、前記と同様の炭素数1〜6のアルキル基のほか、炭素数1〜16のアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基、ラウリル基、ステアリル基等である。金属キレート化合物中のp1、p2、q1、q2、r1及びr2は4又は6座配位となる様に決定される整数を表す。
【0043】
係る金属キレート化合物の具体例としては、トリ-n-ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジ-n-ブトキシビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n-ブトキシトリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n-プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等のジルコニウムキレート化合物;ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトン)チタニウム等のチタニウムキレート化合物;ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、ジイソプロポキシアセチルアセトナートアルミニウム、イソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等のアルミニウムキレート化合物等が挙げられる。これらの金属キレート化合物のうち好ましいものは、トリ-n-ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、及びトリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムである。これらの金属キレート化合物は、単独であるいは2種以上を混合して使用することができる。またこれらの金属キレート化合物の部分加水分解物を使用することもできる。
【0044】
ゾル−ゲル反応に触媒として使用する有機金属化合物に特に制限はないが、活性が高い有機遷移金属が好ましい。中でも安定性と活性に優れるスズの化合物がより好ましい。スズ化合物の具体例としては、(C4H9)2Sn(OCOC11H23)2 、(C4H9)2Sn(OCOCH=CHCOOC4H9)2 、(C8H17)2Sn(OCOC11H23)2 、(C8H17)2Sn(OCOCH=CHCOOC4H9)2、Sn(OCOCC8H17)2等のカルボン酸型有機スズ化合物;(C4H9)2Sn(SCH2COOC8H17)2、(C4H9)2Sn(SCH2COOC8H17)2、(C8H17)2Sn(SCH2CH2COOC8H17)2、(C8H17)2Sn(SCH2COOC12H25)2 等のエステル型有機スズ化合物等を挙げることができる。
【0045】
マイクロクラックのドメイン及び溝部の形状やサイズは、各薬品の添加量・添加タイミング、反応条件(温度、希釈率等)、乾燥条件(温度、風量等)、膜厚等により制御することができる。
【0046】
(1-2) 微粒子塗布法
薄膜として微粒子塗布法により形成される微粒子膜も用いることができる。微粒子膜は微粒子と溶媒からなる微粒子分散液を塗布したのち、溶媒を乾燥することにより形成することができる。微粒子としては、Al2O3、TiO2、ZnO、CeO2、Y2O3、SiO2、SnO2、ZrO2、Fe2O3、MgO、CuO、Mn3O4、ITO(Indium Tin Oxide)、ATO(Antimony Tin Oxide)等の各種金属酸化物、アクリル微粒子、ポリスチレン微粒子、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリエチレン微粒子、ポリスチレンブタジエン微粒子等の各種高分子微粒子、CdS、CdSe、ZnS等の半導体微粒子、Au、Ag等の各種金属微粒子、これらの複合化微粒子等をあげることができる。但し網目状導電体の形成前又は形成後に薄膜を除去しない場合には、薄膜に要求される光透過性に応じて適宜微粒子を選択する。これら微粒子の粒径は、1 nm〜100μmであるのが好ましい。微粒子分散物の濃度は、0.1〜70質量%であるのが好ましい。微粒子分散物の溶媒は揮発性であるのが好ましく、例えばエチルアルコール等のアルコール類、ジメチルホルムアミド等のアミド類、スルホキシド類等の有機溶媒や水を用いることができる。
【0047】
微粒子膜は、溶媒が揮発し乾燥した後、加熱処理をするのが好ましい。加熱処理をすることにより、基板との密着性が向上したり、ドメインを形成する各微粒子の密着性が向上したりするので、導電性物質をクラック部(溝部)のみに充填することができる。加熱温度は使用する微粒子に応じて適宜設定する。高分子微粒子を用いる場合には、そのTg以上の温度で加熱処理するのが好ましい。
【0048】
(1-3) 気相成長法
薄膜は気相成長法によっても形成できる。気相成長法では、ゾルゲル法や微粒子付着法と異なり、製膜の際に実質的に溶媒が存在しないため、乾燥時の膜収縮によるマイクロクラックは生じない。しかし基板上に薄膜形成材料が堆積し、結晶成長するときに生じる応力が蓄積することによりマイクロクラックが生じる。応力蓄積によるマイクロクラックの程度は、基板温度、薄膜厚み、薄膜の材質、薄膜と基板表面との密着性等の条件を選択することによって制御することができる。気相成長法により薄膜を形成できる材質としては、金属酸化物、金属窒化物、金属フッ化物等が挙げられる。薄膜形成材料の具体例としては、MgO、SiO、SiO2、Al2O3、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe2O3、Y2O3、TiO2、窒化ケイ素、MgF2、LiF、AlF3、CaF2等が挙げられる。気相成長法による薄膜形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子センエピタキシ法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザCVD法、熱CVD法等が挙げられる。
【0049】
(1-4) 基板
上述のように、ゾルゲル膜を塗設するための基板(支持体)の素材に制限はないが、ディスプレイ用途、特に有機ELディスプレイのように、空気や水分からの遮断性が必要な場合、透明性が高く、かつバリアー性に優れる基板を使用するのが好ましい。そのような基板の具体例としては、ガラスや各種透明プラスチックフィルムが挙げられる。透明プラスチックフィルムとしては、微粒子無機フィラーを充填したものが好ましい。ガラスや透明プラスチックフィルムに透明性の高い酸化珪素や窒化珪素等の無機酸化物をコーティングした基板も好ましい。
【0050】
基板の形状、構造、大きさ等は用途に応じて適宜選択することができる。形状は板状とするのが一般的である。板状とする場合、その厚みを5μm〜5 mmとするのが好ましい。構造は単層構造であっても積層構造であってもよい。また基板は無色透明であっても有色透明であってもよいが、無色透明であるのが好ましい。
【0051】
(1-5) 下地層
薄膜と基板との間に、中間層として下地層(下塗り層)を設置するのが好ましい。これにより基板の表面特性を制御することができるので、薄膜との密着性を調節したり、網目状導電体を形成したりするのが容易となる。網目状導電体の形成方法には後述するようにめっき法及び導電性粒子結合法があるので、いずれか選択した方法に適した下地層を形成する。
【0052】
(a) めっき下地層
めっき法により網目状導電体を形成する場合、下地層をめっき下地層とするのが有効である。めっき下地層はバインダーを基本成分とする。例えば導電性物質を無電解めっき反応により析出させる場合、めっき下地層として、バインダーにめっき触媒を予め添加した層、後処理により活性化させることができる触媒プリカーサーをバインダーに添加した層、バインダー層に表面活性化処理を施した層、あるいはこれらの組合せによる層を形成するのが有効である。係る表面活性化処理としては、後処理(化学的処理、物理的処理等)により下地層を活性化することができる表面形状とする処理(表面形状加工処理)が好ましい。このようなめっき下地層とすることにより、マイクロクラックの溝部で露出しためっき下地層上にのみ、無電解めっき層を形成できる。また網目状導電体を電気めっき反応により形成する場合、めっき下地層に導電性を付与するのが有効である。これによりめっき下地層に通電することができるので、マイクロクラックの溝部で露出しためっき下地層上にのみ、電気めっき層を形成できる。
【0053】
めっき下地層をパターニングしてもよい。パターニング方法に特に限定はないが、例えばフォトリソグラフィー法、インクジェット法、印刷法、転写法等の湿式法を用いることができる。本発明の網目状導電体付き基板を有機EL素子に適用する場合には、そのパターニング位置を透明導電膜のパターニングと一致させるのが好ましい。
【0054】
めっき下地層を形成するためのバインダーとしては、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド重合体等のポリマーバインダー;ゼラチン、ゼラチン誘導体等のタンパク質;エチルセルロース等のセルロース誘導体;デンプン、アラビアゴム、デキストラン、プルラン等の天然化合物等が使用可能である。
【0055】
めっき下地層に用いる触媒及びその付与方法に特に限定はない。例えば通常無電解めっき法において行われているように、バインダー層をPd触媒液に侵積することによりバインダー層表面に触媒を吸着させる方法、還元性金属粒子をバインダー層に添加する方法等をとることができる。好ましくは、還元性金属粒子をバインダー層に添加する方法である。還元金属粒子としては、めっき触媒活性を有し、かつ薄膜内に均一に分散できるコロイド粒子である限り、金属の種類及び粒径に限定はない。還元金属粒子は、周期律表第VIII族の金属(Ni、Co、Rh、Pd等)を含むコロイドであるのが好ましく、還元Pdコロイド粒子であるのがより好ましい。還元性金属粒子をバインダー層に添加する方法としては、還元性金属粒子を予めコロイド分散物としてバインダー層に添加する方法、還元性金属粒子のプリカーサーをバインダー層に添加した後に還元性金属粒子を析出させる方法等が挙げられる。またシプレイ・ファー・イースト社のオムニシールドSSTプロセスのように、銀微粒子をバインダー層に添加し、後処理でPdイオンと接触させることにより、めっき下地層に還元Pdを析出させる方法もある。
【0056】
めっき下地層に通電することにより電気めっきを施し、導電性物質を電気めっき反応により析出させる場合、めっき下地層は半導電性であるのが好ましい。本明細書において「半導電性のめっき下地層」とは、シート抵抗が1010 Ω/□以下のめっき下地層を意味する。半導電性のめっき下地層を形成するには、低分子又は高分子の帯電防止剤、導電性ポリマー、金属フィラー、カーボン等をめっき下地層に添加する方法、あるいは半導電性の金属酸化物又は金属薄膜によりめっき下地層を形成する方法を挙げることができる。
【0057】
めっき下地層には、めっき触媒を活性化するため、あるいは上層の薄膜との密着性を上げるための処理を施すことができる。係る処理としては酸・アルカリ処理等の化学的処理、あるいはUV照射、酸素プラズマ処理、水素プラズマ処理、コロナ処理等の物理的処理が挙げられる。
【0058】
(b) 結合性下地層
導電性粒子結合法により網目状導電体を形成する場合、下地層を導電性粒子に対して結合性を有する結合性下地層とするのが有効である。結合性下地層はバインダーを基本成分とする。例えば結合性下地層として、導電性粒子に対して結合性を有するバインダーからなる層、導電性粒子に対して結合性を有する物質(無機粒子、有機粒子等)をバインダーに添加した層、表面活性化処理(化学的処理、光又は熱エネルギーによる物理的処理等)を施したバインダー層、あるいはこれらの組合せによる層を形成するのが有効である。
【0059】
結合性下地層を形成するためのバインダーとしては、上記(a)で述べためっき下地層用のバインダーと同じものが挙げられるが、その他に熱硬化樹脂、活性エネルギー線硬化型樹脂等の公知の硬化性樹脂を挙げることができる。熱硬化性樹脂としてはメラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等のプレポリマーの架橋反応を利用するものを挙げることができる。活性エネルギー線硬化型樹脂としては多官能モノマーが挙げられ、例えば多官能アクリレート又はメタクリレート(例えばペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等)に代表される活性エネルギー線硬化性化合物が挙げられる。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、ガンマ線等が挙げられるが、紫外線が好ましい。紫外線照射による硬化の場合は、硬化性化合物に必要に応じて重合開始剤を添加するのが好ましい。
【0060】
導電性粒子に対して結合性を有する物質をバインダーに添加する場合、その物質としては官能基を有するシランカップリング剤(官能性シラン化合物)が好ましい。官能基を有するシランカップリング剤をバインダー層上に塗布することにより、結合性下地層を形成することができる。シランカップリング剤は官能基を有するため、これを塗布することによりバインダーに導電性粒子に対する結合性を付与することができる。またシランカップリング剤を基板上に直接塗布したものを結合性下地層とすることもできる。これにより結合性下地層と基板との密着性も向上する。
【0061】
官能基を有するシランカップリング剤とは、少なくとも官能基を有する有機基と加水分解性基又は水酸基とがケイ素原子に結合している化合物である。官能基としては、例えばメルカプト基、1級アミノ基、2級アミノ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、エポキシ基、ビニル基、カルボキシ基、塩素基、イソシアネート基等がある。このような官能基を有する有機基は、その炭素原子部分でケイ素原子に結合しているので、官能基を有する有機基は加水分解性ではない。ケイ素原子には官能基を有しない有機基が結合していてもよい。官能基を有しない有機基としてはメチル基などの低級(炭素数4以下をいう)アルキル基やフェニル基が好ましい。
【0062】
官能基を有する有機基のうち官能基を除く部位(官能基とケイ素原子との間の部位)としては、アルキレン基、フェニレン基、シクロアルキレン基及びこれらの組合せからなる2価の有機基が好ましい。2価の有機基は、その末端以外の炭素原子がエーテル性酸素原子に置換されていてもよい。2価の有機基としては、アルキレン基が好ましく、炭素数2〜8のアルキレン基がより好ましく、トリメチレン基が最も好ましい。
【0063】
官能基は2価の有機基の一端に直接結合していてもよく、炭素原子以外の多価の基や原子を介して結合していてもよい。例えばエステル結合、エーテル結合、アミド結合等の結合を介して、官能基が2価の有機基に結合していてもよい。官能基を有する有機基としては例えばメルカプトプロピレン基、ビニル基、3-(4-ビニルフェニル)プロピル基、3-(メタ)アクリロイルプロピル基、3-グリシドキシプロピル基、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、3-アミノプロピル基、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基、N-アリル-3-アミノプロピル基、N-フェニル-3-アミノプロピル基、3-クロロプロピル基、3-イソシアネートプロピル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
ケイ素原子に結合している加水分解性基とは、水と反応してシラノール基を生成しうる基であり、例えば水酸基含有化合物の水酸基から水素原子を除いた残基(アルコキシ基等)、アシル基、アミノ基、ハロゲン基、アセトキシ基等がある。中でもアルコキシ基及びハロゲン基が好ましく、炭素数4以下のアルコキシ基、塩素基及び臭素基からなる群から選ばれた少なくとも一種がより好ましく、炭素数4以下のアルコキシ基が最も好ましい。官能性シラン化合物としては、ケイ素原子を1個含むものを通常使用するが、ジシロキサン誘導体やジシラン誘導体等のようにケイ素原子を2個以上含むものを使用してもよい。好ましい官能性シラン化合物は、1個のケイ素原子に4個の基が結合した化合物であって、メルカプト基を有する有機基を1個有し、加水分解性基を少なくとも1個有し、その他の2個の基として官能基を有しない有機基及び/又は加水分解性基を有するものである。官能性シラン化合物がメルカプト基を有することにより、導電性の高い貴金属との結合性に優れた下地層が得られる。
【0065】
メルカプト基を有するシラン化合物(メルカプトシラン化合物)としては、下記式(VII);
HS−R7−SiXn(R8)3-n ・・・(VII)
(ただし式(VII)においてR7は2価の炭化水素基、R8は1価の炭化水素基、Xは水酸基または加水分解性基、nは1〜3の整数を表す。)により表される化合物が好ましい。
【0066】
式(VII)におけるR7としては炭素数2〜6のアルキレン基が好ましく、プロピレン基がより好ましい。R8としては炭素数4以下のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。Xは上述のような加水分解性基であるのが好ましく、炭素数4以下のアルコキシ基であるのがより好ましく、メトキシ基又はエトキシ基が最も好ましい。nは2〜3が好ましい。
【0067】
一般式(VII)で表されるメルカプトシラン化合物として、HS-CH2CH2CH2-Si(OMe)3、HS-CH2CH2CH2-Si(OEt)3、HS-CH2CH2CH2-Si(OPr)3、HS-CH2CH2CH2-SiMe(OMe)2、HS-CH2CH2CH2-SiMe(OEt)2、HS-CH2CH2CH2-SiMe(OPr)2、HS-CH2CH2CH2-SiMe2(OMe)、HS-CH2CH2CH2-SiMe2(OEt)、HS-CH2CH2CH2-SiMe2(OPr)、HS-CH2CH2CH2-SiCl3、HS-CH2CH2CH2-SiBr3、HS-CH2CH2CH2-SiMeCl2、HS-CH2CH2CH2-SiMeBr2、HS-CH2CH2CH2-SiMe2Cl、HS-CH2CH2CH2-SiMe2Br等を例示することができる。上記化学式において、Meはメチル基を示し、Etはエチル基を示し、Prはn-プロピル基を示す。
【0068】
上記(a)でめっき下地層について述べたのと同様に、結合性下地層をパターニングしてもよい。
【0069】
(2) 網目状導電体の形成工程
上記[1](1)で述べた通り、本発明の網目状導電体を形成するための導電性物質に特に限定はなく、その具体例としては上記[1](1)で例示したものが挙げられる。導電性物質を用いて網目状導電体を形成する方法としては、以下に述べるめっき法及び導電性粒子付着法がある。
【0070】
(2-1) めっき法
めっき法としては、無電解めっき、電気めっき等を用いることができるがこれらに限定されない。溶融めっき法、真空めっき法(真空蒸着、イオンプレーティング等)等も用いることが出来る。めっき法の詳細は、例えば「めっき技術ハンドブック」(東京鍍金材料協同組合技術委員会編)等に開示されている。
【0071】
めっき層を形成するには、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、金、銀、ステンレス、タングステン、クロム及びチタンからなる群から選ばれた少なくとも一種の導電性金属を用いるのが好ましい。めっき層を異種金属からなる層による組合せによって積層化することもでき、これによりめっき層を安定化することができる。このような積層化の組み合わせとしては公知のものを用いることができる。例えばニッケルを無電解めっきした後に、金を無電解めっきすること等が行われる。あるいは電気めっきと無電解めっきを組み合わせて、1種類の金属の積層、2種類以上の金属の積層等も行うことができる。
【0072】
本発明の網目状導電体を形成する方法には、上述のように(イ) マイクロクラックのドメインと溝部の基本構造を保った状態で、溝部に導電性物質を充填する直接法と、(ロ) 基板と薄膜との間にめっき下地層を設けておき、マイクロクラックのドメインと溝部の基本構造を保った状態で、溝部において露出しためっき下地層の露出部に活性化処理を施し、次いで薄膜を除去し、ドメインと溝部の基本構造がなくなった状態で、下地層のうち活性化処理を施した部分にのみ導電性物質を析出させる間接法とがある。以下直接法及び間接法について、めっき法により網目状導電体を形成する例を図面を用いて説明する。
【0073】
直接法では、例えば図1に示すように、基板4上にめっき下地層5を設け、その上に薄膜2を形成し、得られた薄膜2に生じた網目状のマイクロクラックの溝部3において露出しためっき下地層5の露出部51に、めっき法により導電性物質1を析出させる。なお図1において、21はドメインを表す。直接法において、めっき下地層には、めっき触媒を予め添加したり、後処理(導電性物質1を充填する前に、露出部51に対して活性化処理を施すことを指す)により活性化させることができる触媒プリカーサーを添加したりしておくのが好ましい。
【0074】
間接法では、例えば図2に示すように、基板4上にめっき下地層5を設け、その上に薄膜2を形成し、得られた薄膜2に生じた網目状のマイクロクラックの溝部3において露出しためっき下地層5の露出部51に活性化処理を施し、次いで薄膜2を除去し、活性化処理部6上に、めっき法により導電性物質1を析出させる。めっき下地層には、後処理(露出部51への活性化処理を指す。以下同様。)により活性化させることができる触媒プリカーサーを添加したり、あるいは後処理(化学的処理、物理的処理等)により活性化させることができる表面形状加工処理を施しておくのが好ましい。係る後処理として化学的処理を施す場合は酸処理、アルカリ処理等を施し、係る後処理として物理的処理を施す場合はUV照射、酸素プラズマ処理、水素プラズマ処理、コロナ処理等を施す。
【0075】
用途に応じて、めっき処方や温度、時間等の製造条件を変えることにより、めっき層の厚みを制御できる。めっき層の厚みは0.01μm〜10μmとするのが好ましい。
【0076】
用途により導電性物質が2種類以上必要な場合、直接法と間接法を組み合わせて用いることも有効である。例えば第一層目の網目状導電体を直接法で得た後、薄膜を除去し、間接法により第二層目の網目状導電体を形成する等の方法が用いられる。網目状導電体の用途等に応じて直接法又は間接法を選ぶことが出来る。網目状導電体の細線幅制御が重要な場合には直接法が好ましく用いられ、得られる網目状導電体の面均一性や緻密性が重要な場合には間接法が好ましく用いられる。
【0077】
基板上に網目状導電体を形成することにより、本発明の網目状導電体付き基板が得られるが、用途に応じて、網目状導電体付き基板に他の材料を積層したり貼り合わせたりすることができる。直接法により得られた網目状導電体から薄膜を除去することもできる。
【0078】
上述のようにめっき下地層をパターニングすることにより、導電性物質をパターニングする方法があるが、網目状導電体を形成した後、パターニングすることもできる。網目状導電体を形成した後にパターニングする場合は、フォトリソグラフィー等による化学的エッチング、レーザー等を用いた物質的エッチング等により行うことができる。
【0079】
(2-2) 導電性粒子結合法
導電性粒子(導電性物質からなる粒子)としては、単一導電性物質からなる導電性粒子、複数の導電性物質が複合化した導電性粒子、又は絶縁物もしくは半導体が導電性物質と複合化した導電性粒子のいずれでも使用可能である。複合化導電性粒子の例としては、合金等のような異種導電性物質の混合物からなる粒子、異種物質同士がコアシェル関係にある粒子(例えば絶縁性粒子の表面に導電性金属をコーティングした粒子)、異種の一次粒子同士が凝集・接合した鎖状あるいは球状の2次粒子等種々の形態や組み合わせのものを挙げることができる。
【0080】
導電性粒子を構成する導電性物質としては、一般的には、▲1▼ 金属結合における自由電子により導電性を示す物質、▲2▼ 余剰電子の移動によって電荷移動が起こる物質、▲3▼ 空孔の移動によって電荷移動が起こる物質、▲4▼ 主鎖に沿ってπ結合を有し、その相互作用により導電性を示す有機高分子物質、▲5▼ 側鎖にある基の相互作用によって電荷移動を起こす有機高分子物質等から選択することができる。上記▲1▼〜▲3▼の具体例としては、亜鉛、アルミニウム、アンチモン、イリジウム、インジウム、金、銀、クロム、コバルト、コンスタンタン、ジルコニウム、銅、スズ、タングステン、タンタル、鉄、鉛、ニクロム、ニッケル、白金、ロジウム、パラジウム、ベリリウム、マグネシウム、マンガニン、モリブデン、アルメル、クロメル及びジュラルミンからなる群から選ばれた少なくとも一種の金属又は合金;酸化チタン、酸化スズ、酸化鉄、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ジルコニウム、酸化銅、酸化タングステン、酸化鉛、酸化ビスマスなどの金属酸化物;タングステンカーバイドのタングステン炭化物;カーボンブラック等が挙げられる。上記▲4▼又は▲5▼の導電性高分子としては、ポリアセチレン系高分子、ポリフェニレン系高分子、複素環系高分子、芳香族アミン系高分子等が使用できる。ポリアセチレン系高分子としては、例えばポリアセチレン、ポリフェニルアセチレン等が挙げられる。ポリフェニレン系高分子としては、例えばポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、チオフェニレン系高分子等が挙げられる。複素環系高分子としては、例えばポリピロール、ポリチオフェン等が挙げられる。芳香族アミン系高分子としては、例えばポリアニリン、ポリジアミノアントラキノン等が挙げられる。中でも導電性粒子としては金、銀、銅及びアルミニウムからなる群から選ばれた少なくとも一種からなるものが好ましい。
【0081】
複合化導電性粒子に使用できる絶縁物及び半導体としては、Al2O3、SiO2等の酸化物;ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリビニルブチラール等の高分子;CdS、CdSe、ZnS等の半導体等が挙げられる。
【0082】
導電性粒子の平均粒径は0.001〜100μmであるのが好ましく、0.005〜10μmであるのがより好ましい。導電性粒子は公知の方法により製造することができる。例えば金、銀等のコロイド状の貴金属粒子は、これらの貴金属塩の溶液から還元反応により調製することができる。金属、合金又は金属酸化物からなる微粒子の製造方法については、加藤昭夫・荒井弘通/著「現代応用化学シリーズ4 超微粒子−その化学と機能」朝倉書店(1993年発行)等に詳述されている。
【0083】
導電性粒子の結合性下地層への付着は、導電性粒子が結合性下地層表面と結合することによるものである。従って結合性下地層としては、所望の導電性粒子に対して結合性を有する物質を含むものか、又はバインダー層に表面活性化処理を施すことにより所望の導電性粒子に対する結合性を付与したものを形成する。結合性下地層に求められる「結合性」とは、所望の導電性粒子との間に、イオン結合、共有結合、水素結合又はファンデルワース結合による結合を生じ得る性質である。結合性が高いほど溝部へ導電性粒子が充填する速度が高まる。必要に応じて導電性粒子に表面修飾を施してもよい。
【0084】
例えば導電性粒子が金、銀等の貴金属粒子の場合、上記(1)(1-5)(b)で述べた方法により、結合性下地層にチオール基を固定化するのが有効である。また結合性下地層にカルボン酸基等の官能基を固定化し、かつアミン基等を有するアルカンチオールにより貴金属粒子を表面修飾する方法も挙げられる。プラス(マイナス)に帯電した導電性粒子に対してアニオン性(カチオン性)の下地層を形成する方法もある。但し導電性粒子の結合性下地層表面との結合性が、導電性粒子のドメイン表面との結合性よりも高くなるようにする。これにより導電性粒子は、マイクロクラック内に選択的に付着するため、得られる網目状導電体の光透過性が向上する。
【0085】
導電性粒子の結合性下地層への付着は、溶液系又は気相系のいずれにより行ってもよい。比較的大面積の薄膜付き基板に対して導電性粒子を結合させる場合には、溶液系が適している。導電性粒子を溶液系で結合させる場合、導電性粒子の溶液を調製し、これに薄膜付き基板を浸漬する。浸漬温度、浸漬時間、溶液濃度、溶液に用いる溶媒等に特に制限はなく、導電性粒子と結合性下地層との結合性に応じて適宜設定することができる。浸漬後は室温乾燥し、さらに焼成するのが好ましい。焼成温度は使用する導電性粒子や基板等の材質に応じて、適宜設定すればよい。例えば金粒子を結合させるには、金のコロイド粒子を含む溶液中に薄膜付きガラス基板を室温で一晩程度浸積し、室温乾燥したのち、300℃/1時間程度の条件で焼成する。
【0086】
導電性粒子を気相系で結合させる場合、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子センエピタキシ法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザCVD法、熱CVD法等が適用できる。
【0087】
溶液系又は気相系のいずれの場合にも、導電性粒子に安定性を付与するために表面処理を施すのが好ましい。例えばノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等を用いて、導電性粒子を処理する。
【0088】
導電性粒子結合法により網目状導電体を形成する方法には、上記(a)でめっき法について述べたのと同様に直接法と間接法とがある。導電性粒子結合法における直接法及び間接法の基本的工程は、それぞれめっき法の場合と同じである。但し直接法の場合は、結合性下地層には導電性粒子に対して結合性を有する物質を予め添加したり、結合性下地層を導電性粒子に対して結合性を有するバインダーにより形成しておいたり、活性化処理(化学的処理、物理的処理等)により結合性下地層の結合性を強化したりするのが好ましい。間接法の場合も、結合性下地層の露出部に対する活性化処理としては、化学的処理、物理的処理等による結合性強化処理が好ましい。係る化学的処理は、溝部において露出したバインダー層の露出部に、官能基を有するシランカップリング剤等の化合物を結合させる処理等が挙げられる。この時、官能基を有する化合物に対する親和性が高いバインダーで下地層を形成しておくのが好ましい。
【0089】
[3] 有機電界発光素子
本発明の有機電界発光素子(有機EL素子)は、上記[1]及び[2]で説明した網目状導電体付き基板を有機EL素子に適用したものである。一般に有機発光素子は、発光層及びそれを挟んだ一対の対向電極(背面電極及び透明電極)から構成されている。本発明では、一対の対向電極のうち少なくとも一方の電極の構成要素として網目状導電体を用いる。有機EL素子の全体構成は以下に述べる発光積層体からなる。有機EL素子の積層構成としては、例えば網目状導電体層(I)/有機電界発光層/網目状導電体層(II)、網目状導電体層(I)/透明導電層/有機電界発光層/網目状導電体層(II)、網目状導電体層(I)/有機電界発光層/背面電極/網目状導電体層(II)、透明導電層/有機電界発光層/網目状導電体層、網目状導電体層/有機電界発光層/背面電極、網目状導電体層/透明導電層/有機電界発光層/背面電極、網目状導電体層(I)/透明導電層/有機電界発光層/背面電極/網目状導電体層(II)、透明導電層/有機電界発光層/背面電極/網目状導電体層、網目状導電体層(I)/導電性高分子層/有機電界発光層/導電性高分子層/網目状導電体層(II)、網目状導電体層(I)/導電性高分子層/透明導電層/有機電界発光層/導電性高分子層/網目状導電体層(II)、網目状導電体層(I)/導電性高分子層/有機電界発光層/背面電極/導電性高分子層/網目状導電体層(II)、透明導電層/有機電界発光層/導電性高分子層/網目状導電体層、網目状導電体層/導電性高分子層/有機電界発光層/背面電極、網目状導電体層/導電性高分子層/透明導電層/有機電界発光層/背面電極、網目状導電体層(I)/導電性高分子層/透明導電層/有機電界発光層/背面電極/導電性高分子層/網目状導電体層(II)、透明導電層/有機電界発光層/背面電極/導電性高分子層/網目状導電体層をそれぞれこの順に積層した構成が挙げられる。
【0090】
有機電界発光層の(積層)構成としては、例えば発光性有機薄膜層のみ、あるいは発光性有機薄膜層/電子輸送性有機薄膜層、ホール輸送性有機薄膜層/発光性有機薄膜層/電子輸送性有機薄膜層、ホール輸送性有機薄膜層/発光性有機薄膜層、発光性有機薄膜層/電子輸送性有機薄膜層/電子注入層、ホール注入層/ホール輸送性有機薄膜層/発光性有機薄膜層/電子輸送性有機薄膜層/電子注入層をそれぞれこの順に積層した構成が挙げられる。
【0091】
発光性有機薄膜層は螢光および燐光発光性化合物を含有し、通常は透明導電層から発光が取り出される。各層に用いる化合物の具体例については、例えば「月刊ディスプレイ」1998年10月号別冊の「有機ELディスプレイ」(テクノタイムズ社)等に記載されている。
【0092】
(1) 基板
基板(支持体)の材質としては、ジルコニア安定化イットリウム(YSZ)、ガラス等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルやポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、アリルジグリコールカーボネート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂等の高分子材料;ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、テフロン(登録商標)、ポリテトラフルオロエチレン−ポリエチレン共重合体等の含フッ素高分子材料等が挙げられる。基板は単一材料で形成されていても、2種以上の材料で形成されていてもよい。フレキシブルな有機EL素子を形成するためには高分子材料及び/又は含フッ素高分子材料を用いるのが好ましく、中でも耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性及び加工性に優れ、且つ低通気性及び低吸湿性であるポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、ポリシクロオレフィン、テフロン(登録商標)及びポリテトラフルオロエチレン−ポリエチレン共重合体からなる群から選ばれた少なくとも一種を用いるのがより好ましい。
【0093】
基板の熱変形温度は140 〜360℃であるのが好ましく、熱線膨張係数は6.2 × 10-5 cm/cm・℃以下であるのが好ましく、鉛筆硬度(JIS K 5400)は2H以上であるのが好ましく、曲げ強度は1,200〜2,000 kgf/cm2であるのが好ましく、曲げ弾性率は30,000〜50,000 kgf/cm2であるのが好ましく、引張強度は700〜1,200 kgf/cm2であるのが好ましい。
【0094】
基板の形状、構造、大きさ等は有機EL素子の用途に応じて適宜選択することができる。形状は板状とするのが一般的である。板状とする場合、その厚みを5〜5000μmとするのが好ましい。構造は単層構造であっても積層構造であってもよい。また基板は無色透明であっても有色透明であってもよいが、発光性有機薄膜層から発せられる光を散乱又は減衰させることがない点で無色透明であるのが好ましい。
【0095】
基板の電極側の面、電極と反対側の面又はその両方に透湿防止層(ガスバリア層)を設けてもよい。透湿防止層を構成する材料としては窒化ケイ素、酸化ケイ素等の無機物を用いるのが好ましい。透湿防止層は高周波スパッタリング法等により成膜できる。基板には必要に応じてハードコート層やアンダーコート層を設けてもよい。
【0096】
(2) 網目状導電体層
基板上に本発明の網目状導電体を設ける。網目状導電体の形成方法については、上記[2]で述べた通りなので説明を省略する。有機電界発光素子に網目状導電体を適用するにあたり、網目状導電体を構成する好ましい材料に関しては、以下の欄((3) 陰極及び陽極)で後述する。
【0097】
(3) 陽極及び陰極
本発明の網目状導電体は、陽極及び/又は陰極に用いることができるので、一対の対向電極のうち少なくとも一方の電極の構成要素として網目状導電体を用いる。陽極及び陰極ともに、網目状導電体層のみから構成することができる。但し陽極に網目状導電体を用いる場合は、網目状導電体に透明導電層を組合せることができ、陰極を背面電極のみから構成することもできる。陰極に網目状導電体を用いる場合は、網目状導電体に背面電極を組合せることができ、陽極を透明電極のみから構成することもできる。例えば陽極と陰極を両方とも網目状導電体層のみから構成した場合、有機EL素子の両面から発光画像を鑑賞することができる。陽極及び陰極の構成をどのように設定するかは、有機EL素子を構成する組成や有機EL素子の使用目的によって決定する。
【0098】
(3-1) 網目状導電体電極
陽極に本発明の網目状導電体を用いる場合、網目状導電体を構成する導電性金属としては、仕事関数が4.9 eV以上であり、かつ抵抗率が20 × 10-6 Ω・cm以下であるものが好ましい。具体例として、白金(仕事関数:5.63〔eV〕、抵抗率:10.6 × 10-6 Ω・cm)、金(仕事関数:5.32〔eV〕、抵抗率:2.35 × 10-6 Ω・cm)、コバルト(仕事関数:4.97〔eV〕、抵抗率:6.24 × 10-6 Ω・cm)、パラジウム(仕事関数:4.95〔eV〕、抵抗率:10.8 × 10-6 Ω・cm)等の単体金属、及びこれらの合金が挙げられるが、これらに限定する趣旨ではない。中でも好ましい導電性金属は金である。
【0099】
陰極に本発明の網目状導電体を用いる場合、網目状導電体を構成する導電性金属としては、仕事関数が4.6 eV以下であり、かつ抵抗率が20 × 10-6 Ω・cm以下であるものが好ましい。具体例として、Al(仕事関数:4.19〔eV〕、抵抗率:2.65 × 10-6 Ω・cm)、銅(仕事関数:4.51〔eV〕、抵抗率:1.67 × 10-6 Ω・cm)、銀(仕事関数:4.34〔eV〕、抵抗率:1.59 × 10-6 Ω・cm)、鉄(仕事関数:4.24〔eV〕、抵抗率:9.71 × 10-6 Ω・cm)、錫(仕事関数:4.42〔eV〕、抵抗率:1.59 × 10-6 Ω・cm)等の単体金属、及びこれらの合金が挙げられるが、これらに限定する趣旨ではない。中でも好ましい導電性金属は銀である。
【0100】
本発明の網目状導電体は、単独で電極として使用できるが、均一な面発光性を得るために他の導電性物質を積層した構造にした上で電極とするのが好ましい。積層する他の導電性物質は、網目状導電体との密着性や製膜性が優れているものが望ましい。これらの点から他の導電性物質として導電性高分子が好ましく用いられる。導電性高分子としては、ポリアセチレン系高分子、ポリフェニレン系高分子、複素環系高分子、芳香族アミン系高分子等が使用できる。ポリアセチレン系高分子としては、例えばポリアセチレン、ポリフェニルアセチレン等が挙げられる。ポリフェニレン系高分子としては、例えばポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、チオフェニレン系高分子等が挙げられる。複素環系高分子としては、例えばポリピロール、ポリチオフェン等が挙げられる。芳香族アミン系高分子としては、例えばポリアニリン、ポリジアミノアントラキノン等が挙げられる。
【0101】
(3-2) 透明導電層(透明電極)
透明導電層は有機薄膜層にホール(正孔)を供給する陽極としての機能を有するが、陰極として機能させることもできる。陰極又は陽極のどちらとして用いるかは有機EL素子を構成する組成によって決まる。以下透明導電層を陽極とする場合について説明する。
【0102】
透明導電層の形状、構造、大きさ等は特に制限されず、有機EL素子の用途に応じて適宜選択することができる。透明導電層を形成するための材料としては、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物等を用いることができるが、4eV以上の仕事関数を有するものを用いるのが好ましい。透明導電層を形成するための材料の具体例としては、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)、半導性金属酸化物[酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等]、金、銀、クロム、ニッケル、金属(金、銀、クロム、ニッケル等)と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、無機導電性物質(ヨウ化銅、硫化銅等)、有機導電性材料(ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等)及びこれとITOとの積層物等が挙げられる。特に耐熱性の低いプラスチック基板を用いる場合は、透明導電層材料としてITO又はIZOを使用し、150℃以下の低温で製膜するのが好ましい。透明導電層として、沢田豊監修「透明導電膜の新展開」シーエムシー刊(1999年発行)等に詳細に記載されている電極も本発明の有機EL素子に適用できる。
【0103】
透明導電層は印刷法、コーティング法等の湿式方法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方法、CVD法、プラズマCVD法等の化学的方法等によって網目状導電体付き基板上に形成することができる。形成方法は、用いる透明導電層材料によって適宜選択すればよい。例えば透明導電層材料としてITOを用いる場合には、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等を用いればよい。透明導電層材料として有機導電性材料を用いる場合には、湿式製膜法を用いればよい。
【0104】
透明導電層をパターニングする場合は、フォトリソグラフィー等による化学的エッチング、レーザ等を用いた物理的エッチング等により行うことができる。マスクを用いた真空蒸着やスパッタリング、リフトオフ法、印刷法等によりパターニングしてもよい。
【0105】
透明導電層の形成位置は有機EL素子の用途に応じて適宜選択してよいが、網目状導電体を含む薄膜上(薄膜を除去した場合には、網目状導電体上に)に形成するのが好ましい。網目状導電体層上に上記(3-1)で述べた導電性高分子層が積層してある場合には、係る導電性高分子層上に透明導電層を形成するのが好ましい。このとき網目状導電体は、透明導電膜と積層関係になる。網目状導電体を含む薄膜上に(薄膜を除去した場合には、網目状導電体上に)透明導電層を積層することにより、基板に透明導電膜を設けたのみの構成とするよりもシート抵抗を下げることができる。透明導電層は網目状導電体の表面全体に形成しても一部のみに形成してもよい。
【0106】
透明導電層の厚みはその材料に応じて適宜選択すればよいが、通常10 nm〜50μmであり、好ましくは50 nm〜20μmである。透明導電層の抵抗値は103 Ω/□以下とするのが好ましく、102 Ω/□以下とするのがより好ましい。透明導電層は無色透明であっても有色透明であってもよい。透明導電層側から発光を取り出すためには、その光透過率は60%以上であるのが好ましく、70%以上であるのがより好ましい。光透過率は分光光度計を用いた公知の方法に従って測定することができる。
【0107】
(3-3) 背面電極
背面電極は有機薄膜層に電子を注入する陰極としての機能を有するが、陽極として機能させることもできる。以下背面電極を陰極とする場合について説明する。
【0108】
背面電極の形状、構造、大きさ等は特に制限されず、有機EL素子の用途に応じて適宜選択することができる。背面電極を形成するための材料としては、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物等を用いることができるが、4.5 eV以下の仕事関数を有するものを用いるのが好ましい。背面電極材料の具体例としては、アルカリ金属(Li、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(Mg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、希土類金属(イッテルビウム等)等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させるためには2種以上を併用するのが好ましい。これら材料の中で、電子注入性の観点からはアルカリ金属及びアルカリ土類金属が好ましく、保存安定性の観点からはアルミニウムを主体とする材料が好ましい。ここでアルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01〜10質量%のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属との合金又は混合物(リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金等)を指す。背面電極の材料としては、特開平2-15595号、特開平5-121172号等に詳述されているものも使用できる。
【0109】
背面電極は印刷法、コーティング法等の湿式方法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方法、CVD法、プラズマCVD法等の化学的方法等によって形成することができる。形成方法は、用いる背面電極材料によって適宜選択すればよい。例えば背面電極材料として2種以上の金属を用いる場合には、その材料を同時又は順次にスパッタすればよい。
【0110】
背面電極をパターニングする場合は、フォトリソグラフィー等による化学的エッチング、レーザ等を用いた物理的エッチング等により行うことができる。マスクを用いた真空蒸着やスパッタリング、リフトオフ法、印刷法等によりパターニングしてもよい。
【0111】
背面電極の形成位置は有機EL素子の用途に応じて適宜選択してよいが、有機薄膜層(有機電界発光層)上とするのが好ましい。このとき背面電極は有機薄膜層の表面全体に形成しても一部のみに形成してもよい。また背面電極と有機薄膜層との間にアルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物等からなる誘電体層を0.1〜5nmの厚みで設置してもよい。誘電体層は真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成することができる。
【0112】
背面電極の厚みはその材料に応じて適宜選択すればよいが、通常10 nm〜5μmであり、好ましくは50 nm〜1μmである。背面電極は透明であっても不透明であってもよい。網目状導電体を陰極に用いる場合、背面電極は透明であるのが好ましい。透明背面電極は、上述した材料の層を1〜10 nmの厚みに薄く製膜し、更にITOやIZO等の透明導電性材料を積層することにより形成してもよい。
【0113】
(4) 有機薄膜層(有機電界発光層)
本発明の有機薄膜層としては、それぞれの特質から発光性有機薄膜層、電子輸送性有機薄膜層、ホール輸送性有機薄膜層、電子注入層、ホール注入層等が挙げられる。また有機薄膜層として、発色性を向上するための種々の層を挙げることができる。各層に用いる化合物の具体例については、例えば「月刊ディスプレイ」1998年10月号別冊の「有機ELディスプレイ」(テクノタイムズ社)等に記載されている。各有機薄膜層にポリマーバインダーを含有することができ、これにより湿式製膜法によって容易に各有機薄膜層を塗布形成することができる。有機薄膜層をパターニングすることもできる。パターニングの方法として、蒸着マスク法、インクジェット法、印刷法、転写法等が用いられる。
【0114】
(4-1) 発光性有機薄膜層
発光性有機薄膜層は少なくとも一種の発光性化合物を含有する。発光性化合物に特に限定はなく、蛍光発光性化合物であっても燐光発光性化合物であってもよい。また蛍光発光性化合物及び燐光発光性化合物を同時に用いてもよい。本発明においては、発光輝度及び発光効率の点から燐光発光性化合物を用いるのが好ましい。
【0115】
蛍光発光性化合物としては、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、ペリレン誘導体、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、スチリルアミン誘導体、芳香族ジメチリデン化合物、金属錯体(8-キノリノール誘導体の金属錯体、希土類錯体等)、高分子発光性化合物(ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等)等が使用できる。これらは単独で用いても二種以上を混合して用いてもよい。
【0116】
燐光発光性化合物としては、三重項励起子から発光することができる化合物であるのが好ましく、オルトメタル化錯体及びポルフィリン錯体がより好ましい。ポルフィリン錯体の中ではポルフィリン白金錯体が好ましい。燐光発光性化合物は単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0117】
本発明でいうオルトメタル化錯体とは、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」第150頁、第232頁、裳華房社(1982年発行)やH. Yersin著「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」第71頁〜第77頁、第135頁〜第146頁、Springer-Verlag社(1987年発行)等に記載されている化合物群の総称である。オルトメタル化錯体を形成する配位子は特に限定されないが、2-フェニルピリジン誘導体、7,8-ベンゾキノリン誘導体、2-(2-チエニル)ピリジン誘導体、2-(1-ナフチル)ピリジン誘導体及び2-フェニルキノリン誘導体が好ましい。これら誘導体は置換基を有していてもよい。これらオルトメタル化錯体は、その形成に必須の配位子以外に他の配位子を有していてもよい。オルトメタル化錯体を形成する中心金属としては、遷移金属であればいずれも使用可能であるが、ロジウム、白金、金、イリジウム、ルテニウム及びパラジウムが好ましい。このようなオルトメタル化錯体を含む有機薄膜層は、発光輝度及び発光効率に優れている。オルトメタル化錯体については、特開平2002-319491号の段落番号0201〜0231にもその具体例が記載されている。
【0118】
本発明で用いるオルトメタル化錯体は、「Inorg. Chem.」,1991年, 30号, 第1685頁.,同 1988年, 27号, 第3464頁.,同 1994年, 33号, 第545頁.,「Inorg. Chim. Acta」,1991年,181号, 第245頁.,「J. Organomet. Chem.」,1987年,335号,第293頁.,「J. Am. Chem. Soc.」,1985年, 107号, 第1431頁.等に記載の公知の手法により合成することができる。
【0119】
発光性有機薄膜層中の発光性化合物の含有量は特に制限されないが、例えば0.1〜70質量%であり、1〜20質量%であるのが好ましい。発光性化合物の含有量が0.1質量%未満であるか、又は70質量%を超えると、その効果が十分に発揮されない場合がある。
【0120】
発光性有機薄膜層は必要に応じてホスト化合物、ホール輸送材料、電子輸送材料、電気的に不活性なポリマーバインダー等を含有してもよい。
【0121】
ホスト化合物とはその励起状態において、発光性化合物へエネルギー移動が起こり、その結果発光性化合物を発光させる化合物である。ホスト化合物の具体例としては、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン化合物、ポルフィリン化合物、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物;フタロシアニン誘導体、8-キノリノール誘導体等の金属錯体;メタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾール等を配位子とする金属錯体;ポリシラン化合物、ポリ(N-ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子;ポリチオフェン誘導体;ポリフェニレン誘導体;ポリフェニレンビニレン誘導体;ポリフルオレン誘導体等が挙げられる。ホスト化合物は単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0122】
ホール輸送材料は陽極からホールを注入する機能、ホールを輸送する機能、及び陰極から注入された電子に対して障壁作用を及ぼす機能のいずれかを有しているものであれば特に限定されず、低分子材料であっても高分子材料であってもよい。ホール輸送材料の具体例としては、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン化合物、ポルフィリン化合物、ポリシラン化合物、ポリ(N-ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子;ポリチオフェン誘導体;ポリフェニレン誘導体;ポリフェニレンビニレン誘導体;ポリフルオレン誘導体等が挙げられる。これらは単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。
【0123】
電子輸送材料は陰極から電子を注入する機能、電子を輸送する機能、及び陽極から注入されたホールに対して障壁作用を及ぼす機能のいずれかを有しているものであれば特に限定されない。電子輸送材料としては、例えばトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物;フタロシアニン誘導体、8-キノリノール誘導体等の金属錯体;メタロフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾール等を配位子とする金属錯体;アニリン共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子;ポリチオフェン誘導体;ポリフェニレン誘導体;ポリフェニレンビニレン誘導体;ポリフルオレン誘導体等が使用可能である。
【0124】
ポリマーバインダーとしては、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等が使用可能である。ポリマーバインダーを含有する発光性有機薄膜層は、湿式製膜法によって、容易に且つ大面積に塗布形成することができる。
【0125】
発光性有機薄膜層の厚みは10〜200 nmとするのが好ましく、20〜80 nmとするのがより好ましい。厚みが200 nmを超えると駆動電圧が上昇する場合があり、10 nm未満であると有機EL素子が短絡する場合がある。
【0126】
(4-2) ホール輸送性有機薄膜層
有機EL素子は、必要に応じて上記(4-1)で述べたホール輸送材料からなるホール輸送性有機薄膜層を有することができる。ホール輸送性有機薄膜層は上記(4-1)で述べたポリマーバインダーを含有してもよい。ホール輸送性有機薄膜層の厚みは10〜200 nmとするのが好ましく、20〜80 nmとするのがより好ましい。厚みが200 nmを越えると駆動電圧が上昇する場合があり、10 nm未満であると有機EL素子が短絡する場合がある。
【0127】
(4-3) 電子輸送性有機薄膜層
有機EL素子は、必要に応じて上記(4-1)で述べた電子輸送材料からなる電子輸送性有機薄膜層を有することができる。電子輸送性有機薄膜層は上記(4-1)で述べたポリマーバインダーを含有してもよい。電子輸送性有機薄膜層の厚みは10〜200 nmとするのが好ましく、20〜80 nmとするのがより好ましい。厚みが200 nmを越えると駆動電圧が上昇する場合があり、10 nm未満であると有機EL素子が短絡する場合がある。
【0128】
(5) その他の層
有機EL素子を構成する層として、発光性能の劣化を防止するために保護層や封止層を設けるのが好ましい。更に発光積層体を転写材料として用いる場合は、発光性能に影響しない限り、転写性を向上するために仮支持体と有機薄膜層との間に剥離層を設けてもよく、有機薄膜層と被成膜面(例えば透明導電層)との間に接着層を設けてもよい。
【0129】
(5-1) 保護層
保護層としては、特開平7-85974号、同7-192866号、同8-22891号、同10-275682号、同10-106746号等に記載のものを挙げることができる。保護層は有機EL素子の最上面に形成する。ここで最上面とは、網目状導電体付き基板、透明導電層、有機薄膜層及び背面電極をこの順に積層する場合には背面電極の外側表面を指し、網目状導電体付き基板、背面電極、有機薄膜層及び透明導電層をこの順に積層する場合には透明導電層の外側表面を指す。保護層の形状、大きさ、厚み等は特に限定されない。保護層を形成するための材料としては、有機EL素子を劣化させる水分や酸素が素子内に侵入したり、素子内を透過したりするのを抑制する機能を有しているものであれば特に限定されず、例えば酸化ケイ素、二酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム、二酸化ゲルマニウム等が使用できる。
【0130】
保護層の形成方法には特に限定はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子センエピタキシ法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザCVD法、熱CVD法、コーティング法等が適用できる。
【0131】
(5-2) 封止層
有機EL素子には水分や酸素の侵入を防止するための封止層を設けるのが好ましい。封止層を形成するための材料としては、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとの共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリユリア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン又はジクロロジフルオロエチレンと他のコモノマーとの共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質、金属(In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Tl、Ni等)、金属酸化物(MgO、SiO、SiO2、Al2O3、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe2O3、Y2O3、TiO2等)、金属フッ化物(MgF2、LiF、AlF3、CaF2等)、液状フッ素化炭素(パーフルオロアルカン、パーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等)、係る液状フッ素化炭素に水分や酸素の吸着剤を分散させたもの等が使用可能である。
【0132】
(6) 封止部材
外部からの水分や酸素を遮断する目的で、少なくとも有機薄膜層を封止板、封止容器等の封止部材により封止するのが好ましい。本発明では、有機薄膜層を封止できるのであれば、封止部材を背面電極側のみに設置してもよく、有機EL素子全体を封止部材で覆ってもよい。有機薄膜層を封止でき外部の空気を遮断することができれば、封止部材の形状、大きさ、厚み等は特に限定されない。封止部材として用いる材料としてはガラス、ステンレス、金属(アルミ等)、プラスチック[ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、ポリエステル、ポリカーボネート等]、セラミック等が使用できる。
【0133】
封止部材を発光積層体に設置する際には、適宜封止剤(接着剤)を用いてよい。発光積層体全体を封止部材で覆う場合は、封止剤を用いずに封止部材同士を熱融着してもよい。封止剤としては紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、二液型硬化樹脂等が使用可能である。
【0134】
封止容器と有機EL素子との間の空間に水分吸収剤又は不活性液体を挿入してもよい。水分吸収剤は特に限定されず、具体例としては酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化リン、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、酸化マグネシウム等が挙げられる。不活性液体としてはパラフィン類、流動パラフィン類、フッ素系溶剤(パーフルオロアルカン、パーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等)、塩素系溶剤、シリコーンオイル類等が使用可能である。
【0135】
【実施例】
本発明を以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0136】
実施例1
(網目状導電体付き基板の作製)
(1) めっき下地層の作製
塩化パラジウムをヘプタン/水分散溶媒中で水素化ホウ素ナトリウムにより還元して、Pd金属粒子(平均粒径5 nm)の分散液を得た。得られた分散液に、Pd金属粒子に対して5質量%のポリメタメチルアクリレートを加え、トルエンで希釈した塗布液を調製した。得られた塗布液をスピンコータにより、コロナ放電処理を施した50μm(厚み)×25 mm×25 mmのゼオノア1020R(日本ゼオン(株)製)からなる基板に塗布して、めっき下地層を形成した。その後2N水酸化ナトリウム水溶液を用いて、めっき下地層に対して70℃/1時間のアルカリエッジング処理を行った。
【0137】
(2) ゾルゲル膜の作製
テトラエトキシシリケートに水、塩酸及びプロピルアルコールを加え、常温で30分撹拌することにより加水分解した。得られた加水分解液を、上記(1)で作製しためっき下地層付き基板のめっき下地層上に、ロッドコーターで塗布した後、120℃で30分間乾燥し、ゾルゲル膜を設けた。ゾルゲル膜の乾燥後の膜厚は0.4μmであった。光学顕微鏡によりゾルゲル膜の表面を観察した写真(55倍)を図3に示す。図3に示す通り、ゾルゲル膜にマイクロクラックが生じて、溝部と溝部に囲まれたドメインが観察された。
【0138】
(3) めっき処理
還元剤としてジメチルアミンボランを用い、錯化剤としてNaCNを用いたNaAg(CN)2の無電解めっき液中で、上記(2)で作製したゾルゲル膜付き基板を50℃で10分間処理した。無電解めっき処理後の膜に若干銀光沢が見られた。得られた無電解めっき処理後の膜のシート抵抗は2 Ω/□、分光光度計による光透過率は81%であった。電子顕微鏡による観察結果から、マイクロクラックの溝部に銀が充填され、網目状導電体が形成されたことが分かった。
【0139】
実施例2
(有機EL素子の作製)
実施例1で得られた網目状導電体付き基板のゾルゲル膜上(網目状導電体を含むゾルゲル膜上)に、直流電源を用いたスパッタ法によりインジウム錫酸化物(ITO、インジウム/錫=95/5モル比)からなる透明導電層を設け(厚み0.2μm)、銀の網目状導電体層とITOの透明導電層からなる陽極を形成した。得られた陽極の表面抵抗は4 Ω/□であった。形成した陽極上に、ポリビニルカルバゾール/1,1,4,4,-テトラフェニルブタジエン(青発光材)/トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム錯体(緑発光材、オルトメタル化錯体)/4-(ジシアノメチレン)-2-メチル-6-(4-ジメチルアミノスチリル)-4H-ピラン(赤発光材)/2-(4-ビフェニリル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(電子輸送材)=200/1/5/1/50(重量比)の組成物を溶解したジクロロエタン溶液をスピンコーターで塗布し、厚み0.11μmの発光性有機薄膜層を形成した。得られた発光性有機薄膜層上に、パターニングした蒸着用のマスク(発光面積が5 mm×5 mmとなるマスク)を設置し、蒸着装置内でマグネシウム−銀合金[マグネシウム:銀=10:1(モル比)]を0.25μmの厚みとなるように蒸着し、さらに銀を0.3μmの厚みとなるように蒸着することにより陰極を設けた。陽極及び陰極にアルミニウムのリード線を接続することにより発光素子を作製した。
【0140】
窒素ガスで置換したグローブボックス内で、紫外線硬化型接着剤(長瀬チバ製、XNR5493)を用いて、得られた発光素子をガラス製の封止容器中に封止することにより有機EL素子を作製した。東洋テクニカ製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流電圧を有機EL素子に印加することにより発光させ、白色光の発光を確認した。
【0141】
比較例1
実施例1で用いたのと同じ基板(50μm/25 mm×25 mmのゼオノア1020R)に、実施例2と同様にITOからなる陽極を形成し、ITO付き基板を作製した。得られた陽極の表面抵抗は、10 Ω/□であった。
【0142】
上記の通り、実施例2の網目状導電体付き基板に設けた陽極(ITO)の表面抵抗は4 Ω/□という値が得られた。これに対し比較例1の網目状導電体を有さない基板に設けた陽極(ITO)の表面抵抗は10 Ω/□であり、本発明の構成が優れていることが明らかになった。
【0143】
実施例3
(網目状導電体付き基板の作製)
(1) 結合性下地層の作製
1gの3-メルカプトプロピルトリメトキシシランを100 mlの1質量%酢酸水溶液に加え、均一になるまで攪拌した。得られたゾル液を0.7 mm(厚み)×25 mm×25 mmのガラス基板上に、スピンコータにより塗布し、120℃/1時間加熱することにより結合性下地層を形成した。
【0144】
(2) ゾルゲル膜の作製
実施例1と同様にして、上記(1)で作製した下地層付き基板の結合性下地層上に、ゾルゲル膜を設けた。ゾルゲル膜の乾燥後の膜厚は0.4μmであった。光学顕微鏡によりゾルゲル膜の表面を観察したところ、ゾルゲル膜にマイクロクラックが生じて、溝部と溝部に囲まれたドメインが観察された。
【0145】
(3) 導電性粒子の作製
塩化金(III)酸水溶液に、還元剤としてクエン酸ナトリウム水溶液を添加し、攪拌しながら80℃/1時間加熱して、紅赤色のコロイド状金粒子を調製した。得られた金粒子の平均粒径は50 nmであった。
【0146】
(4) 導電性粒子の充填
上記(3)で調製した金粒子の水分散液(濃度:0.1質量%)中に、上記(2)で作製したゾルゲル膜付き基板を室温で一晩浸積した。次いで分散液から取り出し、室温乾燥した後、300℃で1時間焼成した。得られた基板を電子顕微鏡により観察した結果から、マイクロクラックの溝部の下地表面上にほぼ単層状に金粒子が付着した様子が観察され、網目状導電体が形成されたことが分かった。得られた網目状導電体付き基板のシート抵抗は3 Ω/□、分光光度計による光透過率は80%であった。
【0147】
実施例4
(有機EL素子の作製)
実施例3で得られた網目状導電体付き基板のゾルゲル膜上(網目状導電体を含むゾルゲル膜上)に、直流電源を用いたスパッタ法によりインジウム錫酸化物(ITO、インジウム/錫=95/5モル比)からなる透明導電層を設け(厚み0.2μm)、金の網目状導電体層とITOの透明導電層からなる陽極を形成した。得られた陽極の表面抵抗は8 Ω/□であり、分光光度計による光透過率は86%であった。形成した陽極上に、実施例2と同様にして厚み0.11μmの発光性有機薄膜層を形成した。得られた発光性有機薄膜層上に、実施例2と同様にして厚み0.25μmのマグネシウム−銀合金層[マグネシウム:銀=10:1(モル比)]と厚み0.3μmの銀層とからなる陰極を設けた。陽極及び陰極にアルミニウムのリード線を接続することにより発光素子を作製した。
【0148】
得られた発光素子を、実施例2と同様にガラス製の封止容器中に封止することにより有機EL素子を作製した。東洋テクニカ製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流電圧を有機EL素子に印加することにより発光させ、白色光の発光を確認した。
【0149】
比較例2
実施例3で用いたのと同じガラス基板に、実施例4と同様にITOからなる陽極を形成し、ITO付き基板を作製した。得られた陽極の表面抵抗は、10 Ω/□、光透過率は70%であった。
【0150】
上記の通り、実施例4の網目状導電体付き基板に設けた陽極の表面抵抗は8 Ω/□であり、光透過率は86%であった。これに対し比較例2の網目状導電体を有さない基板に設けた陽極(ITO)の表面抵抗は10 Ω/□、光透過率は70%であり、本発明の構成が優れていることが明らかになった。
【0151】
実施例5
(網目状導電体付き陽極の作製)
(1) めっき下地層の作製
塩化金(III)酸ナトリウムをヘプタン/水分散溶媒中で水素化ホウ素ナトリウムにより還元することにより、金粒子(平均粒径5 nm)の分散液を得た。得られた分散液に、金粒子に対して5質量%のポリメタブチルアクリレートを加え、トルエンで希釈した塗布液を調製した。得られた塗布液をスピンコータにより、0.7 mm(厚み)×25 mm×25 mmのガラス基板に塗布し、めっき下地層を形成した。得られためっき下地層に対してコロナ放電処理を施した。
【0152】
(2) ゾルゲル膜の作製
実施例1と同様にして、上記(1)で作製した下地層付き基板のめっき下地層上に、ゾルゲル膜を設けた。ゾルゲル膜の乾燥後の膜厚は0.4μmであった。光学顕微鏡によりゾルゲル膜の表面を観察したところ、ゾルゲル膜にマイクロクラックが生じて、溝部と溝部に囲まれたドメインが観察された。
【0153】
(3) めっき処理
還元剤としてジメチルアミンボランを用い、錯化剤としてNaCNを用いた塩化金(III)酸ナトリウムの無電解めっき液中で、上記(2)で作製したゾルゲル膜付き基板を50℃で10分間処理した。無電解めっき処理後の膜に若干の金光沢が見られた。得られた無電解めっき処理後の膜のシート抵抗は3 Ω/□、分光光度計による光透過率は83%であった。電子顕微鏡による観察結果から、マイクロクラックの溝部に金が充填され、網目状導電体が形成されたことが分かった。
【0154】
(4) 導電性高分子膜の作製
上記(3)で得られた網目状導電体上に、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン分散物(バイトロンP A1 4083、バイエル社製)をスピンコータにより厚さが50 nmになるように塗布し、150℃で1時間減圧乾燥を行い、陽極を作製した。得られた陽極の表面抵抗は3 Ω/□、光透過率は82%であった。
【0155】
実施例6
(有機EL素子の作製)
実施例5で得られた網目状導電体付き基板の陽極上に、実施例2と同様にして厚み0.11μmの発光性有機薄膜層を形成した。得られた発光性有機薄膜層上に、実施例2と同様にして厚み0.25μmのマグネシウム−銀合金層[マグネシウム:銀=10:1(モル比)]と厚み0.3μmの銀層とからなる陰極を設けた。陽極及び陰極にアルミニウムのリード線を接続することにより発光素子を作製した。
【0156】
得られた発光素子を、実施例2と同様にガラス製の封止容器中に封止することにより有機EL素子を作製した。東洋テクニカ製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流電圧を有機EL素子に印加することにより発光させ、白色光の発光を確認した。駆動電圧9 V以上で発光が検出された。
【0157】
比較例3
実施例5で用いたのと同じガラス基板に、実施例4と同様にITOからなる陽極を形成し、ITO付き基板を作製した。得られた陽極の表面抵抗は10 Ω/□であり、光透過率は70%であった。また得られたITO付き基板を用いて実施例6と同様にして有機EL素子を作製し、直流電圧を印加したところ、駆動電圧15 V以上で発光が検出された。
【0158】
上記の通り、実施例5の網目状導電体付き基板に設けた陽極(ITO)の表面抵抗は3 Ω/□であり、光透過率は82%であった。また実施例5の網目状導電体付き基板を用いた有機EL素子の駆動電圧は9 Vであった(実施例6)。これに対し比較例3の網目状導電体を有さない基板に設けた陽極(ITO)の表面抵抗は10 Ω/□であり、光透過率は70%であった。また比較例3の有機EL素子の駆動電圧は15 V以上であった。以上の結果より、本発明の構成が優れていることが明らかになった。
【0159】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の網目状導電体は、導電性物質が網目構造を形成してなり、網目の細線幅が10 nm 〜10 μmであるので、優れた電荷注入性、低い抵抗率及び高い光透過性を備え、しかも薄膜のマイクロクラックという自然現象を利用して製造するので、比較的少ないエネルギーコストで製造することができる。このため本発明の網目状導電体及びこれを備えた網目状導電体付き基板を、有機EL素子用の電極用材料として用いることにより、発熱低減化及び輝度均一化が可能となる。本発明の網目状導電体、及びこれを備えた網目状導電体付き基板は、有機EL素子や液晶表示素子を始めとする各種画像表示素子、表示装置の漏洩電磁波遮蔽膜、各種電子デバイスの透明電極、液晶表示素子等の用途に有用である。本発明の有機EL素子は、液晶表示素子のバックライト用材料等の用途に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の網目状導電体を製造する工程例を示すフローチャートである。
【図2】 本発明の網目状導電体を製造する別の工程例を示すフローチャートである。
【図3】 実施例1のゾルゲル膜付き基板の表面を観察した光学顕微鏡写真(55倍)である。
【符号の説明】
1・・・網目状導電体(導電性物質)
2・・・薄膜
21・・・ドメイン
3・・・マイクロクラックの溝
4・・・基板
5・・・めっき下地層
51・・・めっき下地層の露出部
6・・・活性化処理部
Claims (12)
- 導電性物質からなり、不規則な網目構造を有し、前記網目の細線幅が10 nm〜10μmの網目状導電体が、基板上に形成された網目状導電体付き基板であって、前記網目状導電体は、(a) バインダーに還元性金属粒子からなるめっき触媒が添加されたのち、酸・アルカリ処理、 UV 照射、酸素プラズマ処理、水素プラズマ処理又はコロナ処理による表面活性化処理が施された第一のめっき下地層を介して、前記基板上に無電解めっき法により形成された前記導電性物質の層からなるか、(b) シート抵抗が1010Ω/□以下に調整された第二のめっき下地層を介して、前記基板上に電気めっき法により形成された前記導電性物質の層からなるか、(c) バインダーを基本成分とし、前記導電性物質に対して結合性を有する官能基が付与された下地層を介して、前記基板上に前記導電性物質からなる粒子が結合してなることを特徴とする網目状導電体付き基板。
- 基板上に形成された薄膜と、前記薄膜が有する網目状のマイクロクラック内に導電性物質が充填されることにより形成され、不規則な網目構造を有し、前記網目の細線幅が10 nm〜10μmの網目状導電体とを有する網目状導電体付き基板であって、前記基板と前記網目状導電体との間に、めっき下地層、又は前記導電性物質に対して結合性を有する下地層を有し、前記網目状導電体は、前記めっき下地層を介して、前記基板上にめっき法により形成された前記導電性物質の層からなるか、前記結合性下地層を介して、前記基板上に前記導電性物質からなる粒子が結合した層からなり、前記マイクロクラックを有する薄膜は、ゾルゲル液の塗布により得られるゾルゲル膜又はATO微粒子液の塗布により得られる微粒子膜を乾燥するか、気化させた薄膜形成材料の堆積により得られる気相成長膜の成長過程で応力を蓄積させることにより形成してなることを特徴とする網目状導電体付き基板。
- 請求項2に記載の網目状導電体付き基板において、前記めっき下地層は、バインダーを基本成分とし、めっき触媒の添加及び/又は表面形状加工処理が施されているか、シート抵抗が1010 Ω/□以下に調整されており、前記結合性下地層はバインダーを基本成分とし、前記導電性物質に対して結合性を有する官能基の付与及び/又は化学的処理もしくは物理的処理による表面活性化処理が施されていることを特徴とする網目状導電体付き基板。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の網目状導電体付き基板を少なくとも一つ有し、有機電界発光層が陽極と陰極により挟まれた有機電界発光素子であって、前記網目状導電体は前記陽極及び/又は前記陰極の構成要素であることを特徴とする有機電界発光素子。
- 請求項4に記載の有機電界発光素子において、前記陽極及び/又は前記陰極の構成要素である前記網目状導電体は、導電性高分子層により被覆されていることを特徴とする有機電界発光素子。
- 基板上に薄膜を形成し、得られる薄膜に網目状のマイクロクラックを生じさせ、前記マイクロクラック内に導電性物質を充填することにより、網目状導電体を製造する方法において、前記薄膜として、
(1) ゾルゲル液を塗布することにより得られるゾルゲル膜、
(2) ATO微粒子液を塗布することにより得られる微粒子膜、又は
(3) 気化させた薄膜形成材料を堆積させることにより得られる気相成長膜
を形成し、前記ゾルゲル膜又は前記微粒子膜を乾燥するか、前記気相成長膜の成長過程において応力を蓄積させることにより、前記マイクロクラックを生じさせることを特徴とする網目状導電体の製造方法。 - 基板上に下地層を設けた後に薄膜を形成し、得られる薄膜に網目状のマイクロクラックを生じさせ、前記マイクロクラックに露出した前記下地層に活性化処理を施した後、前記薄膜を除去し、前記下地層のうち活性化処理を施した部分にのみ導電性物質の層を形成することを特徴とする網目状導電体の製造方法。
- 請求項7に記載の網目状導電体の製造方法において、前記薄膜として、
(1) ゾルゲル液を塗布することにより得られるゾルゲル膜、
(2) 微粒子液を塗布することにより得られる微粒子膜、又は
(3) 気化させた薄膜形成材料を堆積させることにより得られる気相成長膜
を形成し、前記ゾルゲル膜もしくは前記微粒子膜を乾燥するか、又は前記気相成長膜の成長過程において応力を蓄積させることにより、前記マイクロクラックを生じさせることを特徴とする網目状導電体の製造方法。 - 請求項6〜8のいずれかに記載の網目状導電体の製造方法において、前記基板にめっき下地層を設けた後に前記薄膜を形成し、もって前記マイクロクラックに前記めっき下地層を露出させ、
(1) 前記めっき下地層の露出部分、又は
(2) 前記めっき下地層のうち活性化処理が施された部分
にめっき法により前記導電性物質の層を形成することを特徴とする網目状導電体の製造方法。 - 請求項9に記載の網目状導電体の製造方法において、前記めっき法は無電解めっき法であり、前記めっき下地層はめっき触媒又は触媒プリカーサーを含むことを特徴とする網目状導電体の製造方法。
- 請求項6〜8のいずれかに記載の網目状導電体の製造方法において、前記導電性物質に対して結合性を有するか、又は活性化処理により前記導電性物質に対して結合性が付与される結合性下地層を、前記基板に設けた後に前記薄膜を形成し、もって前記マイクロクラックに前記結合性下地層を露出させ、
(1) 前記結合性下地層の露出部分、又は
(2) 前記結合性下地層のうち活性化処理が施された部分
に前記導電性物質からなる粒子を結合させることを特徴とする網目状導電体の製造方法。 - 請求項11に記載の網目状導電体の製造方法において、前記結合性下地層は、前記導電性物質に対して結合性を有する官能基を含むか、又は前記活性化処理により前記導電性物質に対して結合性を有する官能基が付与されることを特徴とする網目状導電体の製造方法。
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