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JP3979317B2 - リビングラジカル重合開始剤系およびそれを用いる重合体の製造方法 - Google Patents

リビングラジカル重合開始剤系およびそれを用いる重合体の製造方法 Download PDF

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JP3979317B2 JP2003071708A JP2003071708A JP3979317B2 JP 3979317 B2 JP3979317 B2 JP 3979317B2 JP 2003071708 A JP2003071708 A JP 2003071708A JP 2003071708 A JP2003071708 A JP 2003071708A JP 3979317 B2 JP3979317 B2 JP 3979317B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リビングラジカル重合開始剤系およびそれを用いる重合体の製造方法に関し、詳しくは、分子量を制御しつつ、分子量分布の狭いラジカル重合体を容易に且つ短時間に製造でき、しかも重合溶液から遷移金属錯体を容易に除去できるリビングラジカル重合開始剤系、およびそれを用いる重合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ビニル化合物単位からなる重合体の製造方法としては、ラジカル重合方法が広く用いられている。該ラジカル重合方法は、通常ラジカル発生剤を重合開始剤として用いてビニル化合物の連鎖を開始させ、これを成長させて重合させるものであるが、成長末端の重合停止や連鎖移動等の副反応を起こしやすいため、分子量を制御しつつ分子量分布の狭い重合体を製造することは一般に困難であった。
【0003】
そこで、分子量および分子量分布を制御し易い重合方法として、ハロゲノペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリアリールホスフィン)ルテニウム等の遷移金属錯体と、2−クロロ−2,4,4−トリメチルグルタル酸ジメチル、2−ブロモ−2−メチルプロパン酸エチル等のハロゲン化合物と、ルイス酸、またはアミン化合物とからなる重合開始剤系を用いたリビングラジカル重合法が提案されている(特許文献1,特許文献2)。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−316410号公報
【特許文献2】
特開2002−80523号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、有機ハロゲン化合物と遷移金属錯体とを組み合わせた、前述したようなリビングラジカル重合開始剤系を使用してラジカル重合を行った場合には、重合速度が十分速いとは言えず、実用的な重合時間で重合体を製造することが困難な場合があった。また、重合後の重合溶液から遷移金属錯体を除去することが困難となる場合があり、そのような場合には重合体中に残留した金属による着色が生じ、また、ポリマー物性が低下するという問題があった。
【0006】
従って、本発明は、分子量を制御しつつ、分子量分布の狭いラジカル重合体を容易に且つ短時間で製造でき、しかも重合溶液から遷移金属錯体を容易に除去することのできるリビングラジカル重合開始剤系を提供することを目的とし、更に、上記重合開始剤系を用いる重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、特定のホスフィン化合物と、特定の有機ハロゲン化合物、および遷移金属錯体として特定のルテニウム錯体とを組み合わせてリビングラジカル重合開始剤系を構成させることにより上述の課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち本発明は、下記の成分(A)、(B)および(C):
(A)下記の一般式(1)
【0009】
【化3】
PR123 (1)
(式中、R、R2およびR3は、互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ独立的に置換基を有していてもよいアリール基を示す。但し、R、R2およびR3の少なくとも一つは、下記の一般式(2)
【0010】
【化4】
Figure 0003979317
(式中、Rは分岐を有していてもよい炭素数1〜4のアルキレン基を示し、Rは分岐を有していてもよい炭素数1〜25のアルキル基を示し、nは1〜200の数である。)
で表されるアリール基である。)
で表されるホスフィン化合物;
(B)有機ハロゲン化合物; および
(C)ハロゲノペンタメチルシクロペンタジエニルルテニウムテトラマー、またはハロゲノペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリアリールホスフィン)ルテニウム
からなるリビングラジカル重合開始剤系を提供する。
【0011】
また、本発明は、上述のリビングラジカル重合開始剤系の存在下で、ラジカル重合性単量体をリビング重合させることを特徴とする重合体の製造方法も提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
【0013】
本発明のリビングラジカル重合開始剤系は、活性化剤(成分(A))として一般式(1)で表されるホスフィン化合物を使用し、重合開始剤(成分(B))として有機ハロゲン化合物を使用し、遷移金属錯体(成分(C))としてハロゲノペンタメチルシクロペンタジエニルルテニウムテトラマー、またはハロゲノペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリアリールホスフィン)ルテニウムを使用する。また、重合速度をより向上させるなどの観点から、所望によりさらに重合共溶媒として成分(D)の水、および活性化助剤として成分(E)のアミン化合物を使用することができる。
【0014】
本発明においては、成分(A)の活性化剤として、下記の一般式(1)のホスフィン化合物を使用する。
【0015】
【化5】
PR123 (1)
【0016】
式(1)中、R、R2およびR3は、互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ独立的に置換基を有していてもよいアリール基を示す。ここで、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
【0017】
但し、式(1)において、R、R2およびR3の少なくとも一つは、下記の一般式(2)で表されるアリール基でなければならない。
【0018】
【化6】
Figure 0003979317
Figure 0003979317
【0019】
式(2)中、R4は分岐を有していてもよい炭素数1〜4のアルキレン基、例えば、メチレン基、エチレン基、メチルエチレン基、トリメチレン基、1,2−ジメチルエチレン基、1−メチルトリメチレン基、2−メチルトリメチレン基を示しており、R5は分岐を有していてもよい炭素数1〜25のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ラウリル基、n−セチル基、n−ステアリル基を示している。nは数平均重合度である。ここで、数平均重合度は、重合溶液から遷移金属錯体を容易に除去できるようにするために、好ましくは1〜200、より好ましくは5〜150、特に好ましくは5〜100の数を示している。
【0020】
成分(A)として、置換基R1、R2およびR3の少なくともいずれかが一般式(2)で表されるアリール基である式(1)のホスフィン化合物を使用することにより本件発明の作用効果が十分に達成される理由は、必ずしも明らかではないが、成分(C)のハロゲノペンタメチルシクロペンタジエニルルテニウムテトラマーを遷移金属錯体に用いた場合には、重合開始剤系中で、式(1)のホスフィン化合物が遷移金属錯体に配位した新たな遷移金属錯体が生成し、また、成分(C)のハロゲノペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリアリールホスフィン)ルテニウムを遷移金属錯体に用いた場合には、重合開始剤系中で、式(1)のホスフィン化合物と成分(C)の遷移金属錯体上のトリアリールホスフィンが配位子交換して新たな遷移金属錯体が生成するためではないかと考えられる。そして、この重合開始剤系中で新たに生成したと考えられる遷移金属錯体が、適度な酸化還元能力を有し、その結果、重合開始剤および重合体の成長末端が有する炭素−ハロゲン結合と、重合開始剤系中で新たに生成したと考えられる遷移金属錯体により、炭素−ハロゲン結合をラジカル的に解離して形成される炭素ラジカルとの間の平衡反応を効率よく活性化するためではないかと推定される。
【0021】
なお、成分(A)として、置換基R1、R2およびR3のいずれも一般式(2)で表されるアリール基ではない式(1)のホスフィン化合物を使用した場合には、本発明の作用効果が十分に得られない。
【0022】
また、本発明のリビングラジカル重合開始剤系においては、その理由は必ずしも明らかではないが、例えば、遷移金属錯体に配位した成分(A)のホスフィン化合物中の置換基R4およびR5をそれぞれ適宜選択することにより、温度による溶媒への遷移金属錯体の溶解性を変化させることができる。例えば、成分(A)として、R1が一般式(2)で表されるアリール基(但し、R4がエチレン基であり、R5が炭素数1〜18のアルキル基であり、数平均重合度nが5〜150の範囲内の数値である)であり、R2およびR3がそれぞれフェニル基であるホスフィン化合物を用いた場合には、遷移金属錯体が高温では油溶性、低温では水溶性を示す傾向にあるため、冷水洗により重合溶液から遷移金属錯体を容易に除去することが可能になる。
【0023】
成分(A)のホスフィン化合物の具体例としては、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(4−ジフェニルホスフィノ)フェニルエーテル、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル(4−ジフェニルホスフィノ)フェニルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル(4−ジフェニルホスフィノ)フェニルエーテル、ポリエチレングリコールモノセチルエーテル(4−ジフェニルホスフィノ)フェニルエーテル、ポリエチレングリコールモノステアリルエーテル(4−ジフェニルホスフィノ)フェニルエーテル、(ジ−(4−ポリエチレングリコールモノメチルエーテル)フェニル)フェニルホスフィン、(ジ−(4−ポリエチレングリコールモノブチルエーテル)フェニル)フェニルホスフィン、(ジ−(4−ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル)フェニル)フェニルホスフィン、(ジ−(4−ポリエチレングリコールモノセチルエーテル)フェニル)フェニルホスフィン、(ジ−(4−ポリエチレングリコールモノステアリルエーテル)フェニル)フェニルホスフィン、(4−ポリエチレングリコールモノメチルエーテル)フェニル(4−ポリエチレングリコールモノブチルエーテル)フェニルフェニルホスフィン、(4−ポリエチレングリコールモノメチルエーテル)フェニル(4−ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル)フェニルフェニルホスフィン、(4−ポリエチレングリコールモノメチルエーテル)フェニル(4−ポリエチレングリコールモノセチルエーテル)フェニルフェニルホスフィン、(4−ポリエチレングリコールモノメチルエーテル)フェニル(4−ポリエチレングリコールモノステアリルエーテル)フェニルフェニルホスフィン、(4−ポリエチレングリコールモノブチルエーテル)フェニル(4−ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル)フェニルフェニルホスフィン、(4−ポリエチレングリコールモノブチルエーテル)フェニル(4−ポリエチレングリコールモノセチルエーテル)フェニルフェニルホスフィン、(4−ポリエチレングリコールモノブチルエーテル)フェニル(4−ポリエチレングリコールモノステアリルエーテル)フェニルフェニルホスフィン、(4−ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル)フェニル(4−ポリエチレングリコールモノセチルエーテル)フェニルフェニルホスフィン、(4−ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル)フェニル(4−ポリエチレングリコールモノステアリルエーテル)フェニルフェニルホスフィン、(4−ポリエチレングリコールモノセチルエーテル)フェニル(4−ポリエチレングリコールモノステアリルエーテル)フェニルフェニルホスフィン、(トリ−(4−ポリエチレングリコールモノメチルエーテル)フェニル)ホスフィン、(トリ−(4−ポリエチレングリコールモノブチルエーテル)フェニル)ホスフィン、(トリ−(4−ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル)フェニル)ホスフィン、(トリ−(4−ポリエチレングリコールモノセチルエーテル)フェニル)ホスフィン、(トリ−(4−ポリエチレングリコールモノステアリルエーテル)フェニル)ホスフィン等が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(4−ジフェニルホスフィノ)フェニルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル(4−ジフェニルホスフィノ)フェニルエーテルが好ましく、その中でも特に、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(4−ジフェニルホスフィノ)フェニルエーテルが好ましい。
【0024】
また、本発明のリビングラジカル重合開始剤系においては、主たる重合開始剤として成分(B)のα−ハロゲノカルボン酸エステルを使用する。この化合物のハロゲン残基としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。また、カルボン酸残基としてはプロパン酸、グルタル酸、ペンタン酸等が挙げられる。このような成分(B)のα−ハロゲノカルボン酸エステルの好ましい具体例としては、2−ブロモ−2−メチルプロパン酸エチル、2−クロロ−2,4,4−トリメチルグルタル酸ジメチル、1,2−ビス(α−ブロモプロピオニルオキシ)エタン、1,2−ビス(α−ブロモ−2′−メチルプロピオニルオキシ)エタン等が挙げられ、より好ましい具体例として2−クロロ−2,4,4−トリメチルグルタル酸ジメチルが挙げられる。
【0025】
また、本発明のリビングラジカル重合開始剤系においては、遷移金属錯体として成分(C)のハロゲノペンタメチルシクロペンタジエニルルテニウムテトラマー、またはハロゲノペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリアリールホスフィン)ルテニウムを用いる。成分(C)のハロゲノペンタメチルシクロペンタジエニルルテニウムテトラマーの好ましい具体例として、クロロペンタメチルシクロペンタジエニルルテニウムテトラマー等を挙げることができる。また、ハロゲノペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリアリールホスフィン)ルテニウムの好ましい具体例として、クロロペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム等を挙げることができる。
【0026】
本発明のリビングラジカル重合開始剤系において、成分(A)のホスフィン化合物、成分(B)の重合開始剤、成分(C)の遷移金属錯体は、トルエン等の有機溶媒中で調整されるが、共溶媒成分(D)として水を使用してもよい。共溶媒として成分(D)の水を使用した場合、分子量、分子量分布を制御したまま、重合速度が大きくなる傾向にある。
【0027】
本発明のリビングラジカル重合開始剤系においては、さらに活性化助剤として成分(E)としてアミン化合物を使用してもよい。そのようなアミン化合物としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン等の脂肪族第一級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン等の脂肪族第二級アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン等の脂肪族第三級アミン等の脂肪族アミン;N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N',N'',N''−ペンタメチルジエチレントリアミン、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラアミン等の脂肪族ポリアミン;アニリン、トルイジンなどの芳香族第一級アミン、ジフェニルアミンなどの芳香族第二級アミン、トリフェニルアミンなどの芳香族第三級アミン等の芳香族アミンなどを挙げることができる。中でも、脂肪族アミンが好ましく、特にトリブチルアミンが好ましい。
【0028】
本発明のリビングラジカル重合開始剤系における各成分の含有割合については、必ずしも限定されるものではないが、成分(C)に対する成分(A)の割合が低すぎると重合が遅く、かつ錯体除去が困難になる傾向があり、一方、高すぎると得られる重合体の分子量分布が広くなる傾向があるので、成分(A):成分(C)のモル比は0.3:1〜50:1の範囲であることが好ましく、1:1〜20:1の範囲であることがより好ましい。また、成分(B)に対する成分(C)の割合が低すぎると重合が遅くなる傾向があり、一方、高すぎると得られる重合体の分子量分布が広くなる傾向があるので、成分(B):成分(C)のモル比は1:0.005〜1:4の範囲内であることが好ましく、1:0.01〜1:1の範囲内にあることがより好ましい。
【0029】
本発明のリビングラジカル重合開始剤系は、通常、使用直前に成分(A)のホスフィン化合物、成分(B)の重合開始剤、および成分(C)の遷移金属錯体を常法により混合することにより製造することができる。また、成分(A)のホスフィン化合物、成分(B)の重合開始剤および成分(C)の遷移金属錯体をそれぞれ別々に保管しておき、重合反応系中にそれぞれ別々に添加し、重合反応系中で混合してリビングラジカル重合開始剤系として機能するようにしてもよい。
【0030】
次に、本発明のリビングラジカル重合開始剤系を使用する重合体(共重合体の場合を包含する)の製造方法について説明する。
【0031】
本発明における重合体を製造する方法としては、従来公知のリビングラジカル重合開始剤系を使用する重合体の製造方法に、本発明のリビングラジカル重合開始剤系を適用することができ、例えば、上記本発明のリビングラジカル重合開始剤系の存在下、ラジカル重合性単量体をトルエン等の有機溶媒中でリビング重合させる方法を採用することができる。その際、例えば、共溶媒として水を添加してリビング重合させてもよいし、アミン化合物を添加してリビング重合させてもよい。これにより、重合率の増大にほぼ比例して、得られる重合体の数平均分子量(Mn)を増大させることができ、さらに重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)で表される分子量分布を1に近い値とすることができる。従って、重合の進行時に、連鎖停止や移動反応による重合体の生成を抑制して、リビング重合を進行させることができる。また、二種類以上の単量体を組み合わせることで、ランダム共重合体の製造ができる。あるいは、第一段階として一種類の単量体もしくは二種類以上の単量体混合物の重合がほぼ完了した重合反応系に、第二段階として新たに一種類の単量体もしくは二種類以上の単量体混合物を添加すれば、分子量分布を1に近い値を保持したまま数平均分子量を増大させることができ、ブロック共重合体の製造ができる。その後、同様に第三段階もしくはそれ以上の段階で逐次的に、一種類の単量体もしくは二種類以上の単量体混合物を添加すれば、トリブロックあるいはそれ以上のマルチブロック共重合体を製造することができる。
【0032】
また、本発明においては、リビングラジカル重合開始剤系の成分構成を調製することにより、例えば、成分(A)にR1が一般式(2)で表されるアリール基(但し、R4がエチレン基であり、R5が炭素数1〜18のアルキル基であり、数平均重合度nが5〜150の範囲の数値である。)であり、R2及びR3がそれぞれフェニル基であるフォスフィン化合物を用いることにより、重合終了後の冷水洗浄により反応溶液中に存在する金属成分を容易に除去することもできる。
【0033】
本発明の製造方法に従うリビングラジカル重合反応で使用するラジカル重合性単量体としては、特に制限されないが、汎用性および効果の顕著性などの点から、主としてメタクリル酸エステルであること(総量の50%以上)が好ましく、メタクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも一種類のラジカル重合性単量体であることがより好ましい。上記メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸n−ペンチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸n−ヘプチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸トルイル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸−2−メトキシエチル、メタクリル酸−3−メトキシブチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸−2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、メタクリル酸のエチレンオキサイド付加物、メタクリル酸トリフルオロメチルメチル、メタクリル酸−2−トリフルオロメチルエチル、メタクリル酸−2−パーフルオロエチルエチル、メタクリル酸−2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、メタクリル酸−2−パーフルオロエチル、メタクリル酸パーフルオロメチル、メタクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、メタクリル酸−2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、メタクリル酸−2−パーフルオロヘキシルエチル、メタクリル酸−2−パーフルオロデシルエチル、メタクリル酸−2−パーフルオロヘキサデシルエチル等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できるが、これらのなかでも、メタクリル酸メチルが好ましく用いられる。
【0034】
上記メタクリル酸エステルの他に本発明の製造方法に使用できるラジカル重合性単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−t−ブトキシスチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸n−ヘプチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸−3−メトキシブチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸−2−アミノエチル、γ−(アクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(アクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸−2−トリフルオロメチルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロエチルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロメチル、アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、アクリル酸−2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、アクリル酸−2−パーフルオロヘキシルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロデシルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロヘキサデシルエチル等のアクリル酸エステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のハロゲン含有不飽和化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有不飽和化合物;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル等の不飽和ジカルボン酸化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル化合物;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系化合物;メタクリル酸アミド、メタクリル酸置換アミド、アクリル酸アミド、アクリル酸置換アミド等の各種ビニル系単量体等を挙げることができる。
【0035】
本発明の製造方法において、重合反応系内のラジカル重合性単量体の初期濃度は、必ずしも限られるものではないが、低すぎると反応が遅くなる傾向にあり、高すぎると生成ラジカルの単量体への連鎖移動反応が増大しやすくなり、得られる重合体の分子量分布が広くなりやすいので、好ましくは0.5〜8mol(モル)/L(リットル)、特に好ましくは0.8〜5mol/Lの範囲である。その際における各成分の重合系内の濃度についても必ずしも限られるものではないが、ラジカル重合性単量体の濃度に応じて差はあるものの、成分(A)のホスフィン化合物の濃度は、好ましくは0.02〜200mmol/L、特に好ましくは0.1〜80mmol/Lである。成分(B)の重合開始剤濃度は、好ましくは0.1〜100mmol(ミリモル)/L(リットル)、特に好ましくは0.5〜80mmol/Lである。成分(C)の遷移金属錯体の濃度は、好ましくは0.01〜50mmol/L、特に好ましくは0.05〜20mmol/Lである。
【0036】
本発明の製造方法において、リビングラジカル重合反応開始に際しては、窒素のような不活性気体の雰囲気下、反応容器に、単量体、溶媒、ホスフィン化合物(成分(A))および遷移金属錯体(成分(C))、場合により成分(D)の水および/または成分(E)のアミン化合物からなる混合物を調製し、これに重合開始剤(成分(B))を加えることが好ましい。また、成分(D)の水を添加する場合は、得られた混合物に後から添加しても良い。このようにして得られた混合物を、例えば、40〜120℃の範囲内の温度に加温することにより重合を開始させることができる。
【0037】
重合反応終了後、例えば、重合反応系を0℃以下、好ましくは−78℃程度に冷却して反応を停止させ、ついでトルエン等の有機溶媒で反応混合液を希釈し、冷水洗浄にて、重合開始剤系の金属成分などを除去した後、揮発分を蒸発させることによって重合体を得ることができる。
【0038】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0039】
なお、以下の実施例ならびに比較例において、特に断りのない限り、操作は全て乾燥窒素ガス雰囲気下で行い、試薬類は容器から注射器により採取し、反応系に添加した。また、溶媒および単量体は、蒸留によって精製し、更に乾燥窒素ガスを吹き込んだ後に用いた。
【0040】
重合体の重合率は、反応混合液中の単量体の濃度をガスクロマトグラフィー(内部標準物質:n−オクタン)にて分析し、その分析値に基づき算出した。
【0041】
得られた重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)の値は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて、次の条件にて測定し、ポリメタクリル酸メチル換算にて算出した。
【0042】
カラム:ショーデックスK−805L(3本直列)
溶媒:クロロホルム
温度:40℃
検出器:RIおよびUV
流速:1ml/分
【0043】
また、冷水洗による金属の除去率は、反応混合溶液を減圧乾燥して得られる固形分中に存在するルテニウム含量を、誘導結合プラズマ発光分析装置にて分析し、その分析値と、重合開始剤系中の仕込み量から算出した。
【0044】
製造例1[ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(4−ジフェニルホスフィノ)フェニルエーテルの合成例]
100mlの2口フラスコに、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(Aldrich社製:数平均重合度n=45、分子量2000)8.00gを採取し、塩化チオニル(和光純薬工業社製、95.0%品)10.0ml添加し、90℃にて17時間還流し反応させた。反応終了後、未反応の塩化チオニルを減圧留去し、次いでベンゼン(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフィー用)を15.0ml添加し再溶解させた後、凍結乾燥させて、末端塩素化ポリエチレングリコールモノメチルエーテルを得た。
【0045】
また、100mlナスフラスコに、4−ヨードフェノール(Aldrich社製、99%品)7.68gを採取し、テトラヒドロフラン(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフィー用をNa/ベンゾフェンノン下で蒸留し、凍結脱気したもの)10.0mlを添加し溶解させた。次いで、別の100ml2口フラスコに水素化ナトリウム、油性(和光純薬工業社製、流動パラフィン30%添加品)2.60gをとり、テトラヒドロフラン(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフィー用をNa/ベンゾフェンノン下で蒸留し、凍結脱気したもの)10.0ml加えた。そこに、4−ヨードフェノール/テトラヒドロフラン溶液を水浴下でゆっくり添加し、添加後1時間攪拌して反応させた。反応終了後、ろ紙つきキャヌラーを通して別の100mlの2口フラスコに反応溶液を移し、その反応溶液を減圧乾燥させた。さらにジオキサン(和光純薬工業社製、有機合成用を窒素バブルしたもの)10.0mlを添加し、再溶解させた後、凍結乾燥させて、ナトリウム−4−ヨードフェノキシドを得た。
【0046】
100mlの2口フラスコに、末端塩素化ポリエチレングリコールモノメチルエーテル6.12g、ナトリウム−4−ヨードフェノキシド1.20g、ジメチルアセトアミド(和光純薬工業社製、有機合成用をモレキュラーシーブス4A存在下、窒素バブルしたもの)25.0ml加え、90℃で5時間攪拌反応させた。ついで、ジメチルアセトアミドを減圧留去し、トルエン(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフィー用)10.0mlに再溶解させた後、ろ紙つきキャヌラーを通して別の100mlの2口フラスコに反応溶液を移し、その反応溶液を減圧乾燥させた。さらに、ベンゼン(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフィー用)10.0mlに再溶解させた後、凍結乾燥させたところ、6.29g(収率95.5%)のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(4−ヨードフェニル)エーテルを得た。
【0047】
次いで、100mlの2口ナスフラスコに、6.29gのポリエチレングリコールモノメチルエーテル(4−ヨードフェニル)エーテルと、酢酸カリウム(Aldrich社製、99.98%品)0.670g、トランス−ジ(μ−アセテート)ビス[o−(ジ−o−トリル−ホスフィノ)ベンジル]ジパラジウム(II)(STREM社製、98%品)10.7mg、ジメチルアセトアミド(和光純薬工業社製、有機合成用モレキュラーシーブス4A存在下、窒素バブリングしたもの)30ml加えた後、ジフェニルホスフィン(東京化成、90%品)1.00ml添加し、110℃で17時間攪拌反応させた。得られた反応混合物を減圧乾燥させ、さらにクロロホルム(和光純薬工業社製、特級を窒素バブリングしたもの)40.0ml、炭酸カリウム(和光純薬工業社製、99.5%品)1.30g加え、一晩攪拌したのち、その反応溶液を0.45μmのシリンジフィルターでろ過し、減圧乾燥させて、目的のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(4−ジフェニルホスフィノ)フェニルエーテルを得た。
【0048】
なお、上記製造例1における、末端塩素化ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(4−ヨードフェニル)エーテル、および最終生成物のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(4−ジフェニルホスフィノ)フェニルエーテルの同定は、1H−NMR分析により行なった。
【0049】
実施例1
クロロペンタメチルシクロペンタジエニルルテニウムテトラマー3.80mg(0.00350mmol)をシュレンク管に採取し、トルエン4.74ml、n−オクタン0.320ml、上記製造例1で得られたポリエチレングリコールモノメチルエーテル(4−ジフェニルホスフィノ)フェニルエーテルの100mmol/Lトルエン溶液0.280ml(0.028mmol)、メタクリル酸メチル1.50ml(14.0mmol)を加え、十分攪拌溶解させた後、2−クロロ−2,4,4−トリメチルグルタル酸ジメチルの900mmol/Lトルエン溶液0.156ml(0.140mmol)を加え、十分攪拌した。得られた混合物を80℃に加温することにより重合反応を開始させた。重合反応を開始後170時間経過した時点で、反応溶液を−78℃に冷却することにより、重合反応を停止させた。
【0050】
遷移金属錯体に由来する黄褐色の反応混合液をトルエンで希釈した後、該希釈溶液と同量の冷水で3回洗浄したところ、ほぼ透明な反応混合液が得られた。反応混合液中に存在するメタクリル酸メチルの重合率は90%であり、また重合反応溶液中に存在するポリメタクリル酸メチルの数平均分子量(Mn)は11600、重量平均分子量(Mw)は13000であり、従って重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)は1.12であった。そのGPC曲線は単峰性であった。
【0051】
比較例1
クロロペンタメチルシクロペンタジエニルルテニウムテトラマー3.30mg(0.00306mmol)をシュレンク管に採取し、トルエン4.30ml、n−オクタン0.274ml、メタクリル酸メチル1.29ml(12.1mmol)を加え、十分攪拌溶解させた後、2−クロロ−2,4,4−トリメチルグルタル酸ジメチルの900mmol/Lトルエン溶液0.134ml(0.121mmol)を加え、十分攪拌した。得られた混合物を80℃に加温することにより重合反応を開始させた。重合反応を開始後235時間経過した時点で、反応溶液を−78℃に冷却することにより、重合反応を停止させた。
【0052】
遷移金属錯体に由来する黄褐色の反応混合液をトルエンで希釈した後、該希釈溶液と同量の冷水で3回洗浄したところ、ほとんど反応混合液の色は変わらなかった。反応混合液中に存在するメタクリル酸メチルの重合率は32%であり、また重合反応溶液中に存在するポリメタクリル酸メチルの数平均分子量(Mn)は9300、重量平均分子量(Mw)は30800であり、従って重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)は3.31であった。
【0053】
実施例1と比較例1とを比較すれば明らかなように、本発明の開始剤系を用いた場合は、本発明の範囲外である成分(A)のホスフィン化合物を用いない場合に比べ、分子量および分子量分布を制御しつつ重合が速く、且つ容易に重合開始剤系に存在する金属成分を除去できることが分かる。
【0054】
比較例2
クロロペンタメチルシクロペンタジエニルルテニウムテトラマー3.80mg(0.00352mmol)をシュレンク管に採取し、トルエン4.73ml、n−オクタン0.32ml、ポリエチレングリコールジメチルエーテル(Aldrich社製:分子量2000)の100mmol/Lトルエン溶液0.28ml(0.028mmol)、メタクリル酸メチル1.50ml(14.0mmol)を加え、十分攪拌溶解させた後、2−クロロ−2,4,4−トリメチルグルタル酸ジメチルの844mmol/Lトルエン溶液0.166ml(0.140mmol)を加え、十分攪拌した。得られた混合物を80℃に加温することにより重合反応を開始させた。重合反応を開始後320時間経過した時点で、反応溶液を−78℃に冷却することにより、重合反応を停止させた。
【0055】
遷移金属錯体に由来する黄褐色の反応混合液をトルエンで希釈した後、該希釈溶液と同量の冷水で3回洗浄したが、ほとんど反応混合液の色は変わらなかった。反応混合液中に存在するメタクリル酸メチルの重合率は31%であり、また重合反応溶液中に存在するポリメタクリル酸メチルの数平均分子量(Mn)は15400、重量平均分子量(Mw)は55100であり、従って重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)は3.58であった。
【0056】
実施例1と比較例2とを比較すれば明らかなように、比較例2では、本発明における成分(A)のポリエチレングリコール鎖を有するホスフィン化合物を用いず、ポリエチレングリコールジメチルエーテルを添加しているため、分子量および分子量分布を制御できず、重合開始剤系に存在する金属成分の除去も困難であることがわかる。
【0057】
比較例3
クロロペンタメチルシクロペンタジエニルルテニウムテトラマー3.80mg(0.00352mmol)をシュレンク管に採取し、トルエン4.74ml、n−オクタン0.32ml、トリフェニルホスフィンの100mmol/Lトルエン溶液0.28ml(0.028mmol)、メタクリル酸メチル1.50ml(14.0mmol)を加え、十分攪拌溶解させた後、2−クロロ−2,4,4−トリメチルグルタル酸ジメチルの900mmol/Lトルエン溶液0.156ml(0.140mmol)を加え、十分攪拌した。得られた混合物を80℃に加温することにより重合反応を開始させた。重合反応を開始後336時間経過した時点で、反応溶液を−78℃に冷却することにより、重合反応を停止させた。
【0058】
遷移金属錯体に由来する黄褐色の反応混合液をトルエンで希釈した後、該希釈溶液と同量の冷水で3回洗浄したが、ほとんど反応混合液の色は変わらなかった。反応混合液中に存在するメタクリル酸メチルの重合率は60%であり、また重合反応溶液中に存在するポリメタクリル酸メチルの数平均分子量(Mn)は8900、重量平均分子量(Mw)は10300であり、従って重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)は1.16であった。
【0059】
実施例1と比較例3とを比較すれば明らかなように、比較例3では、本発明における成分(A)のポリエチレングリコール鎖を有するホスフィン化合物を用いず、トリフェニルホスフィンを用いているため、分子量および分子量分布を制御できたものの、重合速度は遅く、重合開始剤系に存在する金属成分の除去も困難であることがわかる。
【0060】
実施例2
クロロペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム11.2mg(0.0140mmol)をシュレンク管に採取し、トルエン4.74ml、n−オクタン0.320ml、上記製造例1で得られたポリエチレングリコールモノメチルエーテル(4−ジフェニルホスフィノ)フェニルエーテルの100mmol/Lトルエン溶液0.280ml(0.028mmol)、メタクリル酸メチル1.50ml(14.0mmol)を加え、十分攪拌溶解させた後、2−クロロ−2,4,4−トリメチルグルタル酸ジメチルの900mmol/Lトルエン溶液0.156ml(0.140mmol)を加え、十分攪拌した。得られた混合物を80℃に加温することにより重合反応を開始させた。重合反応を開始後142時間経過した時点で、反応溶液を−78℃に冷却することにより、重合反応を停止させた。
【0061】
遷移金属錯体に由来する黄褐色の重合溶液をトルエンで希釈した後、該希釈溶液と同量の冷水で3回洗浄したところ、ほぼ透明な重合溶液が得られた。反応混合液中に存在するメタクリル酸メチルの重合率は89%であり、また重合反応溶液中に存在するポリメタクリル酸メチルの数平均分子量(Mn)は12100、重量平均分子量(Mw)は13700であり、従って重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)は1.13であった。そのGPC曲線は単峰性であった。
【0062】
比較例4
クロロペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム11.5mg(0.0144mmol)をシュレンク管に採取し、トルエン0.42ml、n−オクタン0.310ml、アルミニウムトリイソプロポキサイド125mmol/Lトルエン溶液1.15ml(0.144mmol)、メタクリル酸メチル1.54ml(14.4mmol)を加え、十分攪拌溶解させた後、2−クロロ−2,4,4−トリメチルグルタル酸ジメチルの802mmol/Lトルエン溶液0.180ml(0.144mmol)を加え、十分攪拌した。得られた混合物を80℃に加温することにより重合反応を開始させた。重合反応を開始後313時間経過した時点で、反応溶液を−78℃に冷却することにより、重合反応を停止させた。
【0063】
遷移金属錯体に由来する黄褐色の反応混合液をトルエンで希釈した後、該希釈溶液と同量の冷水で3回洗浄したところ、ほとんど反応混合液の色は変わらなかった。反応混合液中に存在するメタクリル酸メチルの重合率は92%であり、また重合反応溶液中に存在するポリメタクリル酸メチルの数平均分子量(Mn)は9600、重量平均分子量(Mw)は11200であり、従って重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)は1.17であった。そのGPC曲線は単峰性であった。
【0064】
実施例2と比較例4とを比較すれば明らかなように、比較例4では、本発明における成分(A)のポリエチレングリコール鎖を有するホスフィン化合物を用いず、アルミニウムアルコキサイドを添加しているため、分子量および分子量分布を制御できたものの、重合速度は遅く、重合開始剤系に存在する金属成分の除去も困難であることがわかる。
【0065】
実施例3
クロロペンタメチルシクロペンタジエニルルテニウムテトラマー3.30mg(0.00306mmol)をシュレンク管に採取し、トルエン4.07ml、n−オクタン0.274ml、上記製造例1で得られたポリエチレングリコールモノメチルエーテル(4−ジフェニルホスフィノ)フェニルエーテルの100mmol/Lトルエン溶液0.240ml(0.024mmol)、メタクリル酸メチル1.29ml(12.1mmol)を加え、十分攪拌溶解させた後、2−クロロ−2,4,4−トリメチルグルタル酸ジメチルの900mmol/Lトルエン溶液0.134ml(0.121mmol)を加え、十分攪拌した。得られた混合物から2mlを、別のシュレンク管に採取し、さらに、蒸留水(和光純薬工業社製高速液体クロマトグラフィー用を脱気処理したもの)2ml添加し、攪拌下、80℃に加温することにより重合反応を開始させた。重合反応を開始後58時間経過した時点で、反応溶液を−78℃に冷却することにより、重合反応を停止させた。
【0066】
遷移金属錯体に由来する黄褐色の反応混合液にエタノールを少量入れた後、水を抽出除去して除去後の溶液を同量の冷水で3回洗浄したところ、ほぼ透明な反応混合液が得られた。反応混合液中に存在するメタクリル酸メチルの重合率は90%であり、また重合反応溶液中に存在するポリメタクリル酸メチルの数平均分子量(Mn)は12100、重量平均分子量(Mw)は13900であり、従って重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)は1.16であった。そのGPC曲線は単峰性であった。
【0067】
実施例4
クロロペンタメチルシクロペンタジエニルルテニウムテトラマー6.50mg(0.00602mmol)をシュレンク管に採取し、トルエン2.12ml、n−オクタン0.548ml、上記製造例1で得られたポリエチレングリコールモノメチルエーテル(4−ジフェニルホスフィノ)フェニルエーテルの100mmol/Lトルエン溶液0.480ml(0.048mmol)、メタクリル酸メチル2.57ml(24.0mmol)を加え、十分攪拌溶解させた後、2−クロロ−2,4,4−トリメチルグルタル酸ジメチルの844mmol/Lトルエン溶液0.284ml(0.240mmol)を加え、十分攪拌した。得られた混合物から2mlを、別のシュレンク管に採取し、さらに、蒸留水(和光純薬工業社製高速液体クロマトグラフィー用を脱気処理したもの)2ml添加し、攪拌下、80℃に加温することにより重合反応を開始させた。重合反応を開始後33時間経過した時点で、反応溶液を−78℃に冷却することにより、重合反応を停止させた。
【0068】
遷移金属錯体に由来する黄褐色の反応混合液にエタノールを少量入れた後、水を抽出除去して除去後の溶液を同量の冷水で3回洗浄したところ、ほぼ透明な反応混合液が得られた。反応混合液中に存在するメタクリル酸メチルの重合率は94%であり、また重合反応溶液中に存在するポリメタクリル酸メチルの数平均分子量(Mn)は11600、重量平均分子量(Mw)は13000であり、従って重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)は1.12であった。そのGPC曲線は単峰性であった。
【0069】
比較例5
クロロペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム25.5mg(0.0320mmol)をシュレンク管に採取し、トルエン3.92ml、n−オクタン0.734ml、メタクリル酸メチル3.42ml(32.0mmol)を加え、十分攪拌溶解させた後、2−クロロ−2,4,4−トリメチルグルタル酸ジメチルの747mmol/Lトルエン溶液0.428ml(0.320mmol)を加え、十分攪拌した。得られた混合物から2mlを、別のシュレンク管に採取し、さらに、蒸留水(和光純薬工業社製高速液体クロマトグラフィー用を脱気処理したもの)2ml添加し、攪拌下、80℃に加温することにより重合反応を開始させた。重合反応を開始後240時間経過した時点で、反応溶液を−78℃に冷却することにより、重合反応を停止させた。
【0070】
遷移金属錯体に由来する黄褐色の反応混合液にエタノールを少量入れた後、水を抽出除去して除去後の溶液を同量の冷水で3回洗浄したところ、ほとんど反応混合液の色は変わらなかった。反応混合液中に存在するメタクリル酸メチルの重合率は57%であり、また重合反応溶液中に存在するポリメタクリル酸メチルの数平均分子量(Mn)は6090、重量平均分子量(Mw)は6880であり、従って重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)は1.13であった。そのGPC曲線は単峰性であった。
【0071】
実施例3、4と比較例5とを比較すれば明らかなように、本発明の実施例においては成分(D)として水をさらに添加しているので、分子量および分子量分布を制御できると共に、重合速度が早く、重合開始剤系に存在する金属成分の除去も容易であることがわかる。一方、比較例5では、本発明における成分(A)のポリエチレングリコール鎖を有するホスフィン化合物を用いていないため、分子量および分子量分布を制御できたものの、重合速度は遅く、重合開始剤系に存在する金属成分の除去も困難であることがわかる。
【0072】
実施例5
クロロペンタメチルシクロペンタジエニルルテニウムテトラマー6.50mg(0.00602mmol)をシュレンク管に採取し、トルエン1.52ml、n−オクタン0.548ml、上記製造例1で得られたポリエチレングリコールモノメチルエーテル(4−ジフェニルホスフィノ)フェニルエーテルの100mmol/Lトルエン溶液0.480ml(0.048mmol)、トリブチルアミンの400mmol/Lトルエン溶液0.6ml(0.24mmol)、メタクリル酸メチル2.57ml(24.0mmol)を加え、十分攪拌溶解させた後、2−クロロ−2,4,4−トリメチルグルタル酸ジメチルの844mmol/Lトルエン溶液0.284ml(0.240mmol)を加え、十分攪拌した。得られた混合物から2mlを、別のシュレンク管に採取し、さらに、蒸留水(和光純薬工業社製高速液体クロマトグラフィー用を脱気処理したもの)2ml添加し、攪拌下、80℃に加温することにより重合反応を開始させた。重合反応を開始後13時間経過した時点で、反応溶液を−78℃に冷却することにより、重合反応を停止させた。
【0073】
遷移金属錯体に由来する黄褐色の反応混合液にエタノールを少量入れた後、水を抽出除去して除去後の溶液を同量の冷水で3回洗浄したところ、ほぼ透明な反応混合液が得られた。反応混合液中に存在するメタクリル酸メチルの重合率は91%であり、また重合反応溶液中に存在するポリメタクリル酸メチルの数平均分子量(Mn)は13300、重量平均分子量(Mw)は15000であり、従って重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)は1.13であった。そのGPC曲線は単峰性であった。
【0074】
実施例5から明らかなように、本発明において更に成分(D)の水および成分(E)のトリブチルアミンを用いた場合には、分子量および分子量分布を制御しつつ、重合速度はさらに速くなり、重合開始剤系に存在する金属成分の除去も容易であることがわかる。
【0075】
実施例6
クロロペンタメチルシクロペンタジエニルルテニウムテトラマー7.58mg(0.00702mmol)をシュレンク管に採取し、トルエン4.46ml、n−オクタン0.320ml、上記製造例1で得られたポリエチレングリコールモノメチルエーテル(4−ジフェニルホスフィノ)フェニルエーテルの100mmol/Lトルエン溶液0.560ml(0.056mmol)、メタクリル酸メチル1.50ml(14.0mmol)を加え、十分攪拌溶解させた後、2−クロロ−2,4,4−トリメチルグルタル酸ジメチルの900mmol/Lトルエン溶液0.156ml(0.140mmol)を加え、十分攪拌した。得られた混合物を80℃に加温することにより重合反応を開始させた。重合反応を開始後72時間経過した時点で、反応溶液を−78℃に冷却することにより、重合反応を停止させた。
【0076】
反応混合液中に存在するメタクリル酸メチルの重合率は62%であり、また重合反応溶液中に存在するポリメタクリル酸メチルの数平均分子量(Mn)は9100、重量平均分子量(Mw)は10200であり、従って重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)は1.12であった。そのGPC曲線は単峰性であった。また、重合停止後の遷移金属錯体に由来する黄褐色の反応混合物をトルエンで希釈した後、該希釈溶液と同量の冷水で3回洗浄したところ、その反応混合溶液はほぼ透明になった。また、本洗浄によるルテニウムの除去率は90%であった。
【0077】
比較例6
クロロペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム31.9mg(0.0401mmol)をシュレンク管に採取し、トルエン6.37ml、n−オクタン0.457ml、ジブチルアミンの500mmol/Lトルエン溶液0.800ml(0.400mmol)、メタクリル酸メチル2.14ml(20.0mmol)を加え、十分攪拌溶解させた後、2−クロロ−2,4,4−トリメチルグルタル酸ジメチルの844mmol/Lトルエン溶液0.237ml(0.200mmol)を加え、十分攪拌した。得られた混合物を80℃に加温することにより重合反応を開始させた。重合反応を開始後72時間経過した時点で、反応溶液を−78℃に冷却することにより、重合反応を停止させた。
【0078】
反応混合液中に存在するメタクリル酸メチルの重合率は67%であり、また重合反応溶液中に存在するポリメタクリル酸メチルの数平均分子量(Mn)は9500、重量平均分子量(Mw)は14000であり、従って重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)は1.47であった。そのGPC曲線は単峰性であった。また、重合反応停止後の反応混合物をトルエンで希釈した後、該希釈溶液と同量の冷水で3回洗浄したところ、ほとんど反応混合液の色は変わらなかった。また、本洗浄によるルテニウムの除去率は40%であった。
【0079】
実施例6と比較例6とを比較すれば明らかなように、比較例6では、本発明の範囲内である成分(A)のポリエチレングリコール鎖を有するホスフィン化合物を用いなかったため、分子量分布を制御できず、ルテニウムの除去率も低く反応混合溶液の色はほとんど変わらず、重合開始剤系に存在する金属成分の除去が困難であることがわかる。
【0080】
【発明の効果】
本発明のリビングラジカル重合開始剤系を採用することにより、分子量を制御しつつ、分子量分布の狭いラジカル重合体を容易に得ることができると共に、重合速度を向上させることができ、しかも重合溶液から重合開始剤系の金属成分を容易に除去することが可能となるので、本発明のリビングラジカル重合開始剤系はリビングラジカル重合において好適に用いることができる。そして、本発明のリビングラジカル重合開始剤系を用いた重合体の製造方法は、分子量を制御しつつ、分子量分布の狭いラジカル重合体を容易に得ることができると共に、重合溶液から重合開始剤系の金属成分を容易に除去することが可能となるという利点を有する。

Claims (8)

  1. 下記の成分(A)、(B)および(C):
    (A)下記の一般式(1)
    Figure 0003979317
    (式中、R、RおよびRは、互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ独立的に置換基を有していてもよいアリール基を示す。但し、R、RおよびRの少なくとも一つは、下記の一般式(2)
    Figure 0003979317
    (式中、Rは分岐を有していてもよい炭素数1〜4のアルキレン基を示し、Rは分岐を有していてもよい炭素数1〜25のアルキル基を示し、nは1〜200の数である。)
    で表されるアリール基である。)
    で表されるホスフィン化合物;
    (B)有機ハロゲン化合物; および
    (C)ハロゲノペンタメチルシクロペンタジエニルルテニウムテトラマー、またはハロゲノペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリアリールホスフィン)ルテニウム
    からなるリビングラジカル重合開始剤系。
  2. 成分(A)のホスフィン化合物が、Rが一般式(2)のアリール基(ここで、Rはエチレン基であり、Rはメチル基であり、そしてnは5〜150の数である。)であり、RおよびRがそれぞれフェニル基であるホスフィン化合物である請求項1記載のリビングラジカル重合開始剤系。
  3. 成分(B)の有機ハロゲン化合物が、α−ハロゲノカルボン酸エステルである請求項1または2記載のリビングラジカル重合開始剤系。
  4. 更に、成分(D)として水を含む請求項1〜3のいずれかに記載のリビングラジカル重合開始剤系。
  5. 更に、成分(E)としてアミン化合物を含む請求項1〜4のいずれかに記載のリビングラジカル重合開始剤系。
  6. 成分(E)のアミン化合物が、脂肪族アミンである請求項5記載のリビングラジカル重合開始剤系。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の重合開始剤系の存在下、ラジカル重合性単量体をリビング重合させることを特徴とする重合体の製造方法。
  8. ラジカル重合性単量体が、主としてメタクリル酸エステルである請求項7記載の製造方法。
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