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JP3810025B2 - スパッタリング用ターゲット、その製造方法、そのターゲットを用いた光記録媒体、その光記録媒体の成膜方法、及び光記録方法 - Google Patents

スパッタリング用ターゲット、その製造方法、そのターゲットを用いた光記録媒体、その光記録媒体の成膜方法、及び光記録方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光記録媒体、特に光ビームを照射することにより記録層材料に相変化を生じさせ、情報の記録・再生を行い、かつ、書き換えが可能である相変化型情報記録媒体に関し、光メモリー関連機器、特に書き換え可能なコンパクトディスク(CD)に応用されるものである。
さらに、本発明は相変化型光記録媒体用のスパッタリングターゲット及びその製法に関し、光ビームを照射することにより記録層材料に相変化を生じさせ、情報の記録、再生を行い、かつ書換が可能である光記録媒体の製造に応用されるものである。
【0002】
【従来の技術】
電磁波、特にレーザービームの照射による情報の記録、再生および消去可能な光メモリー媒体の一つとして、結晶−非結晶相間あるいは結晶−結晶相間の転移を利用する、いわゆる相変化型記録媒体がよく知られている。特に光磁気メモリーでは困難な単一ビームによるオーバーライトが可能であり、ドライブ側の光学系もより単純であることなどから、最近その研究開発が活発になっている。その代表的な例として、USP3530441に開示されているように、Ge−Te、Ge−Te−Sn、Ge−Te−S、Ge−Se−S、Ge−Se−Sb、Ge−As−Se、In−Te、Se−Te、Se−Asなどのいわゆるカルコゲン系合金材料があげられる。また安定性、高速結晶化などの向上を目的に、Ge−Te系にAu(特開昭61−219692号)、SnおよびAu(特開昭61−270190号)、Pd(特開昭62−19490号)などを添加した材料の提案や、記録/消去の繰り返し性能向上を目的にGe−Te−Se−Sb、Ge−Te−Sbの組成比を特定した材料(特開昭62−73438号、特開昭63−228433号)の提案などもなされている。しかしながら、そのいずれもが相変化型書換可能な光メモリー媒体として要求される諸特性のすべてを満足しうるものとはいえない。特に記録感度、消去感度の向上、オーバーライト時の消し残りによる消去比低下の防止、ならびに記録部、未記録部の長寿命化が解決すべき最重要課題となっている。
【0003】
特開昭63−251290号では結晶状態が実質的に三元以上の多元化合物単層からなる記録層を具備した記録媒体が提案されている。ここで実質的に三元以上の多元化合物単層とは三元以上の化学量論組成を持った化合物(たとえばIn3SbTe2)を記録層中に90原子%以上含むものとされている。このような記録層を用いることにより記録、消去特性の向上が図れるとしている。しかしながら消去比が低い、記録消去に要するレーザーパワーが未だ十分に低減されてはいないなどの欠点を有している。
【0004】
更に、特開平1−277338号には(SbaTe1-a1-YY(ここで0.4≦a<0.7、Y≦0.2であり、MはAg、Al、As、Au、Bi、Cu、Ga、Ge、In、Pb、Pt、Se、Si、Sn及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種である。)で表される組成の合金からなる記録層を有する光記録媒体が提案されている。この系の基本はSb2Te3であり、Sb過剰にすることにより、高速消去、繰返し特性を向上させ、Mの添加により高速消去を促進させている。加えて、DC光による消去率も大きいとしている。しかし、この文献にはオーバーライト時の消去率は示されておらず(本発明者らの検討結果では消し残りが認められた)、記録感度も不十分である。
【0005】
同様に、特開昭60−177446号では記録層に(In1-XSbX1-YY(0.55≦X≦0.80、0≦Y≦0.20であり、MはAu、Ag、Cu、Pd、Pt、Al、Si、Ge、Ga、Sn、Te、Se、Biである。)なる合金を用い、また、特開昭63−228433号では記録層にGeTe−Sb2Te3−Sb(過剰)なる合金を用いているが、いずれも感度、消去比等の特性を満足するものではない.
【0006】
加えて、特開平4−163839号には記録薄膜をTe−Ge−Sb合金にNを含有させることによって形成し、特開平4−52188号には記録薄膜をTe−Ge−Se合金にこれら成分のうちの少なくとも1つが窒化物となっているものを含有させて形成し、特開平4−52189号には記録薄膜がTe−Ge−Se合金にNを吸着させることによって形成し、これら記録薄膜をそれぞれ設けた光記録媒体が記載されている。
しかし、これらの光記録媒体でも十分な特性を有するものを得ることはできない。
【0007】
これまでみてきたように、光記録媒体においては、特に記録感度、消去感度の向上、オーバーライト時の消し残りによる消去比低下の防止、並びに記録部、未記録部の長寿命化が解決すべき最重要課題となっている。
【0008】
一方、近年CD(コンパクトディスク)の急速な普及にともない、一回だけの書き込みが可能な追記型コンパクトディスク(CD−R)が開発され、市場に普及され始めた。しかし、CD−Rでは書き込み時に一度でも失敗すると修正不可能なためそのディスクは使用不能となってしまい廃棄せざるを得ない。したがって、その欠点を補いえる書き換え可能なコンパクトディスクの実用化が待望されていた。
研究開発された一つの例として、光磁気ディスクを利用した書き換え可能なコンパクトディスクがあるが、オーバーライトの困難さや、CD−ROM、CD−Rとの互換がとりにくい等といった欠点を有するため、原理的に互換性確保に有利な相変化型光ディスクの実用化開発が活発化してきた。
【0009】
相変化型光ディスクを用いた書き換え可能なコンパクトディスクの研究発表例としては、古谷(他):第4回相変化記録研究会シンポジウム講演予稿集、70(1992)、神野(他):第4回相変化記録研究会シンポジウム講演予稿集、76(1992)、川西(他):第4回相変化記録研究会シンポジウム講演予稿集、82(1992)、T.Handa(et al):Jpn.J.Appl.Phys.32(1993)5226、米田(他):第5回相変化記録研究会シンボジウム講演予稿集、9(1993)、富永(他):第5回相変化記録研究会シンポジウム講演予稿集、5(1993)のようなものがあるが、いずれも、CD−Rとの互換性確保、記録消去性能、記録感度、書き換えの繰り返し可能回数、再生回数、保存安定性等、総合性能を充分満足させるものではなかった。 それらの欠点は、主に記録材料の組成、構造に起因する消去比の低さに因るところが大きかった。
【0010】
これらの事情から消去比が高く、高感度の記録、消去に適する相変化型記録材料の開発、さらには高性能で書き換え可能な相変化型コンパクトディスクが望まれていた。
本発明者等は、それらの欠点を解決する新材料として、AgInSbTe系記録材料を見いだし提案してきた。その代表例としては、特開平4−78031号、特開平4−123551号、H.Iwasaki(et al):Jpn.J.Appl.Phys.31(1992)461、井手(他):第3回相変化記録研究会シンポジウム講演予稿集、l02(1991)、H.Iwasaki(et al):pn.J.Appl.Phys.32(1993)5241等があげられる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
これらの開示技術により、極めて優れた性能を有する相変化型光ディスクを獲得できることは、既に明らかであったが、CD−Rとの互換性確保等、上記総合性能を完壁に満足し、新たな市場を形成しえるに足る相変化型光ディスクの作製技術を完成させるためには尚一層の努力が望まれていた。
【0012】
従って、本発明の第1の目的は、上記従来技術における間題をすべて解消し、従来に比べ、C/N、消去比、記録感度、繰り返し特性の飛躍的向上を達成する光記録媒体を提供することにある。本発明の第2の目的は、ディスクの回転線速度が1.2m/sから5.6m/sの領域で記録・消去を行う光記録方法において、最適な光記録媒体を提供することにある。本発明の第3の目的は、書き換え可能なコンパクトディスクに最適な相変化型光記録媒体とそれへの記録方法を提供することにある。本発明の第4の目的は、前記第1、第2及び第3の目的を実現するスパッタリング用ターゲット及びその製法、製膜方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは光記録媒体の改善に鋭意研究を重ねた結果、前記目的に合致する光記録媒体、その光記録媒体への記録方法、その光記録媒体の製造方法、その光記録媒体の製造に有用なスパッタリング用ターゲット及びその製法、製膜方法を見いだした。
すなわち、本発明によれば(1)基板上に厚さ500〜2500Åの第1の誘電体層、厚さ100〜1000Åの記録層、厚さ100〜1500Åの第2の誘電体層、厚さ300〜2000Åの金属または合金層の順に積層してなる光記録媒体において、該記録層の構成元素がAg、In、Te、Sbであり、それぞれの組成比α、β、γ、δ(原子%)が
1≦α<6
7≦β≦20
20≦γ≦35
35≦δ≦70
α+β+γ+δ=100
である相変化型記録材料からなり、かつ該基板に形成された案内溝の幅が0.25〜0.65μm、その案内溝の深さが250〜650Åであることを特徴とする光記録媒体、(2)記録層は未記録および消去時にAgSbTe2微結晶相が存在することを特徴とする前記(1)記載の光記録媒体、(3)前記(1)において、記録層の構成元素In、Te、Sbのうち、少なくとも1つの元素の窒化物および/又は酸化物を含むことを特徴とす光記録媒体、
(4)前記(3)において、記録層中の窒素の結合状態の少なくとも1つがTe−Nであることを特徴とする光記録媒体、が提供される。
【0014】
また、本発明によれば、()前記()の光記録媒体を回転線速度1.2m/s〜5.6m/sの範囲で回転させ、情報記録時に使用する照射光源が半導体レーザーであることを特徴とする光記録方法、()前記()の光記録方法において、記録方式がPWM(Pulse Width Modulation)方式であることを特徴とする光記録方法、()前記()の光記録方法において、情報記録時の信号変調方式がEFM(Eight to Fourteen Modulation)あるいはその改良変調方式を用い、レーザー記録時の信号がマルチパルス化されていることを特徴とする光記録方法、が提供される。
【0015】
また、本発明によれば、()前記(1)の光記録媒体を作製する際に用いられ、
構成元素がAg、In、Te、Sbであり、それぞれの組成比α、β、γ、δ(原子%)が
0.5≦α<8
5≦β≦23
17≦γ≦38
32≦δ≦73
α+β+γ+δ=100、但しα≦β
である相変化型記録材料からなり、かつターゲット中にSbと、カルコパイライト構造及び/又は閃亜鉛鉱型構造を有する化学量論組成及び/又はそれに近い組成のAgInTe2とが存在することを特徴とするスパッタリング用ターゲット、()前記()において、カルコパイライト構造及び/又は閃亜鉛鉱型構造を有する化学量論組成及び/又はそれに近い組成のAgInTe2の形成する結晶子の粒径dが
0<d≦450Å
であることを特徴とするスパッタリング用ターゲット、が提供される。
【0016】
また、本発明によれば、(10)ターゲット原材料として、Ag、In及びTeの単体を混合し、550℃以上850℃以下の温度で溶融した後急冷させ粉砕し、これとSbとを混合して焼結することを特徴とする前記()のスパッタリング用ターゲットの製造方法、(11)ターゲット原材料として、Ag、In、Te及びSbの単体を混合し、550℃以上850℃以下の温度で溶融した後急冷させ粉砕し、これを焼結することを特徴とする前記()のスパッタリング用ターゲットの製造方法、(12)前記(10)又は(11)においてターゲット焼結以前の工程として、融点温度以下における熱処理工程を含むことを特徴とするスパッタリング用ターゲットの製造方法、が提供される。
【0017】
また、本発明によれば、(13)前記()又は()のスパッタリング用ターゲットのスパッタリング時に、アルゴンガスに窒素ガスを0mol%以上10mol%以下混合したガスを用いて成膜することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の記録層の成膜方法、(14)前記()又は()のスパッタリング用ターゲットを用いスパッタリングする際の背圧pを
3×10-7≦p≦5×l0-6Torr
に設定することを特徴とする前記(13)の記録層の成膜方法、(15)スパッタリング後に、スパッタリング時よりも高濃度の窒素を含むガスをスパッタチャンバー内に流入させることを特徴とする前記(13)の記録層の成膜方法、が提供される。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。Ag、In、Te、Sbを含む4元系の相変化型記録材料を主成分として含有する材料は、記録(アモルファス化)感度・速度、消去(結晶化)感度・速度、及び消去比が極めて良好なため、記録層の材料として適している。良好なディスク特性が得られる記録層組成は前記(1)のとおりであるが、最も良好な記録消去特性を得るには、さらに前記(2)に示した要件を満足している方が良い。
【0020】
本発明においては、記録層の組成は記録膜を発光分析法により測定して得られる値を用いたが、その他にもX線マイクロアナリシス、ラザフォード後方散乱、オージェ電子分光、蛍光X線等の分析法が考えられる。その場合は、発光分析法で得られる値との比較検討をする必要がある。また一般に発光分析法の場合、測定値のおよそ±5%は分析誤差と考えられる。
記録層中に含まれる物質の観測はX線回折または電子線回折等が適している。すなわち結晶状態の判定として、電子線回折像でスポット状及至デバイリング状のパターンが観測される場合には結晶状態、リング状のパターン及至ハローパターンが観測される場合には非結晶(アモルファス)状態とする。結晶子径はX線回折ピークの半値幅からシェラーの式を用いて求めることができる。
【0021】
さらに、記録層中の化学結合状態、たとえば酸化物、窒化物等の分析には、FT−IR、XPS等の分析手法が有効である。
本発明の製法により作製されたスパッタリングターゲット、及び製膜方法により製膜された記録層の膜厚としては100〜1000Å、好適には150〜700Åとするのがよい。100Åより薄いと光吸収能が著しく低下し、記録層としての役割を果さなくなる。また1000Åより厚いと高速で均一な相変化がおこりにくくなる。
【0022】
ターゲット中に、主にSbとカルコパイライト構造及び/又は閃亜鉛鉱型構造を有する化学量論組成及び/又はそれに近い組成のAgInTe2とを存在させることにより、薄膜記録層を設置した後、適切な処理(初期化)を行い、例えば1991年秋季第3回相変化記録研究会シンポジウム講演予稿集p.102やJapanese Journal of Applied Physics Vol.32(1993)pp.5241−5247に記載されているような、微結晶相AgSbTe2とアモルファス相In−Sbとの混相状態を得ることができる。この混相状態を記録層の未記録状態として設けることによりにより、消去比が高く低パワーで記録−消去の繰り返しが可能な光記録媒体を得ることが可能となる。
【0023】
カルコパイライト構造及び/又は閃亜鉛鉱型構造を有する化学量論組成及び/又はそれに近い組成のAgInTe2の結晶子の粒径は、例えばターゲットを粉砕しX線回折で得られるメインピーク(X線源Cu、λ≒1.54Åの場合、約24.1°)の線幅より計算することができる。計算に際しては充分に結晶子の粒径の大きな基準サンプルで線幅の構成を行う必要がある。AgInTe2の結晶子の粒径(d)が450Å以上の場合には、薄膜記録層を設置した後、適切な処理を施しても安定な記録消去を行うことのできる混相状態を得ることが困難となる。このため、粒径(d)の範囲は0<d≦450Åが適当である。
【0024】
本発明のスパッタリング用ターゲットを用いて記録層を製膜する場合には、スパッタリング前の背圧pは3×10-7≦p≦5×10-6Torrであることが望ましい。この範囲内で膜中に適当な不連続相(バリア)ができ、成膜後適切な処理を施すことにより、AgInTe2とSbとのアモルファス相から微結晶AgSbTe2とアモルファスIn−Sbとの混相状態を得やすくなる。また、スパッタリング時のガスにアルゴンガスに窒素ガスを0mol%以上10mol%以下混合したガスを用いることで窒素量に応じて、ディスク回転の線速、層構成等、ディスクの使用条件に最も適した記録層を得ることができる。また、窒素ガスとアルゴンガスとの混合ガスを用いることにより繰り返し記録消去の耐久性も向上する。混合ガスは所望のモル比であらかじめ混合したガスを用いても、チャンバー導入時に所望のモル比になるよう流量をそれぞれ調整してもよい。
【0025】
膜中の窒素含有量は5%以下のとき特に、良好な特性が得られる。O/W回数の向上以外の具体的な効果としては、変調度の向上、記録マーク(アモルファスマーク)の保存寿命の向上等があげられる。それらのメカニズムの詳細は必ずしも明確ではないが、膜中への適量の窒素混入により、膜の密度の減少、微小欠陥増加等により、構造的には粗の方向に変化する。
その結果、窒素無添加の状態に比べ、膜の秩序性が緩和され、アモルファスから結晶への転移は抑制される方向になる。したがって、アモルファスマークの安定性が増し、保存寿命が向上する。更に窒素添加効果の一つとして、転移線速度の制御法としても有効である。具体的には、窒素の添加により、転移線速度すなわち最適な記録線速度を低線速度側に変化させることができる。これは、同一のターゲットを使っても、記録膜作製時のN2/Arガス混合比の制御のみで、相変化光ディスクの最適記録線速度を調整することができる。
【0026】
膜中の窒素の化学結合状態としては、Ag、In、Te、Sbの中のいずれか一種以上と結合していることが望ましいが、特にTe結合した状態、具体的にはTe−N、Sb−Te−Nといった化学結合が存在した時に、O/Wの繰り返し回数の向上により効果が大きい。そのような化学結合状態の分析手段としては、FT−IRや、XPS等の電子分光分析法が有効である。たとえば、FT−IRでは、Te−Nによる吸収帯は500〜600cm-1付近にそのピークをもち、Sb−Te−Nは600〜650cm-1付近にその吸収ピークが出現する。
【0027】
更に、本発明の記録層材料にはさらなる性能向上、信頼性向上等を目的に他の元素や不純物を添加することができる。一例としては、特願平4−1488号に記載されている元素(B、N、C、P、Si)やO、S、Se、Al、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Sn、Pd、Pt、Au等が好ましい例としてあげられる。
【0028】
次に本発明を添付図面に基づき説明する。図1は本発明の構成例を示すものである。基板1上に第1の誘電体層(耐熱性保護層)2、記録層3、第2の誘電体層(耐熱性保護層)4、反射放熱層5が設けられている。耐熱性保護層2、4はかならずしも記録層3の両側共に設ける必要はないが、基板1がポリカーボネート樹脂のように耐熱性が低い材料の場合には耐熱性保護層2を設けることが望ましい。
【0029】
基板1の材料は通常ガラス、セラミックス、あるいは樹脂であり、樹脂基板が成形性、コストの点で好適である。樹脂の代表例としてはポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂などがあげられるが、加工性、光学特性などの点でポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。また基板1の形状としてはディスク状、カード状あるいはシート状であってもよい。
【0030】
但し、本発明の光記録媒体を書き換え可能なコンパクトディスク(CD−Erasable)に応用する場合には、以下のような特定の条件が付与されることが望ましい。その条件は、使用する基板に形成される案内溝(グルーブ)の幅(いわゆる半値幅)が0.25〜0.65ミクロン(μm)好適には0.30〜0.55μm、その案内溝の深さが250〜650オングストローム(Å)好適には300〜550Åとなっていることである。
この基板条件と前述した記録材料とディスク層構成とを組み合わせることにより、互換性に優れた書換可能なコンパクトディスクの提供が可能となる。
具体的には、コンパクトディスクでは、重要な溝信号特性として記録後のプッシュプル信号(PPm;Push Pull magnitude afterrecording)が規定されている(CD規格参照)。そして、その範囲は、PPmが0.04〜0.15、好適には0.04〜0.12、最適には0.04〜0.09となることが要求される。
相変化を利用した書換可能なコンパクトディスクにおいて、主要な記録再生特性をすべて満足し、なおかつこの溝信号特性の規格を満足することは極めて困難なことであったが、本発明により初めて総合実用性能を満足する書換可能なコンパクトディスクを提供できるようになった。
【0031】
耐熱性保護層の材料としては、SiO、SiO2、ZnO、SnO2、Al23、TiO2、In23、MgO、ZrO2などの金属酸化物;Si34、AlN、TiN、BN、ZrNなどの窒化物;ZnS、In23、TaS4などの硫化物;SiC、TaC、B4C、WC、TiC、ZrCなどの炭化物やダイヤモンド状カーボンあるいはそれらの混合物が挙げられる。これらの材料は単体で保護層とすることもできるが、互いの混合物としてもよい。また、必要に応じて不純物を含んでいてもよい。但し、耐熱性保護層2、4の融点は記録層3の融点よりも高いことが必要である。このような耐熱性保護層2、4は各種気相成長法、たとえば真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、光CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法などによって形成できる。
【0032】
第1の誘電体層(耐熱性保護層)2の膜厚としては500〜2500Å、好適には1200〜2300Åとするのがよい。500Åよりも薄くなると耐熱性保護層としての機能をはたさなくなり、逆に2500Åよりも厚くなると感度の低下をきたしたり、界面剥離を生じやすくなる。また必要に応じて保護層を多層化することもできる。
第2の誘電体層(耐熱性保護層)4の膜厚としては100〜1500Å、好適には150〜1000Åとするのがよい。l00Åよりも薄くなると耐熱性保護層としての機能をはたさなくなり、逆に1500Åよりも厚くなると1.2〜5.6m/sの範囲の所謂低線速領域で使用した場合、界面剥離を生じやすくなり、繰り返し記緑性能も低下する。また必要に応じて保護層を多層化することもできる。
【0033】
反射放熱層5としては、Al、Au、Ag、Cuなどの金属材料、またはそれらの合金などを用いることができる。反射放熱層5を形成することは必ずしも必要ではないが、過剰な熱を放出しディスクへの熱負担を軽減するために設けるほうが望ましい。このような反射放熱層5は各種気相成長法、たとえば真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、光CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法などによって形成できる。
反射放熱層5の膜厚としては、300〜2000Å、好適には500〜1500Åとするのがよい。
【0034】
本発明のスパッタリングターダット及びその製法、製膜方法により成膜された記録層の処理(初期化)、記録、再生および消去に用いる電磁波としてはレーザー光、電子線、X線、紫外線、可視光線、赤外線、マイクロ波など種々のものが採用可能である。特に記録、再生および消去に用いる電磁波としては、ドライブに取付ける際小型でコンパクトな半導体レーザーが最適である。
【0035】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。但しこれらの実施例は本発明をなんら制限するものではない。
【0036】
実施例1〜8、比較例1〜10
表1にカルコパイライト構造及び/又は閃亜鉛鉱型構造を有する化学量論組成及び/又はそれに近い組成のAgInTe2が存在するスパッタリングターゲットの組成、及びそれらを用いた場合のディスク特性、オーバーライト繰り返し可能回数(O/W回数)を示す。幅0.5μm、深さ600Åでトラックピッチ1.6μmのグルーブが形成されているポリカーボネートディスク基板(厚さ1.2mm)にZnO・SiO2からなる第1の誘電体層(厚さ2000Å)、記録層(厚さ250Å)、ZnS・SiO2からなる第2の誘電体層(厚さ300Å)、アルミニウム基合金(Al−Si(Si1.0重量%を含む))からなる反射放熱層(厚さ1000Å)、UV樹脂コート層(環境保護層、厚さ10μm)を設けてディスクを作成した。なお、記録層のスパッタリング方法は背圧を9×10-7torrで、アルゴンガスを入れ、4×10-3torrにしてRFpower40ワットで行なった。
【0037】
ディスクの回転線速度は1.2〜5.6m/sの範囲内で各々のディスクに最適な線速で測定(記録再生)し、信号変調方式はEFM変調方式を用い、レーザー記録時には照射するレーザーパルスをマルチパルス化して記録した。半導体レーザーの波長は780nm、対物レンズのNAは0.5である。ディスク特性の欄の評価値は、レベル3が最も良好な特性(C/N≧55dB、消去比(Ers)≦−35dB)を示すターゲット組成とそれを用いて作製した記録層組成であることを表し、レベル2は良好な特性(55>C/N≧45dB、−35<消去比(Ers)≦−25dB)を示すターゲットとそれを用いて作製した記録層組成であることを表し、レベル1は良好な特性を有するディスクが得られなかった(上記以外のもの)ターゲットとそれを用いて作製した記録層組成であることを示す。
【0038】
その結果、Ag、In、Te、Sbそれぞれの組成比α、β、γ、δ(原子%)がスパッタリングターダットでは、0.5≦α<8、5≦β≦23、17≦γ≦38、32≦δ≦73であるとき、そして記録層組成としては1≦α<6、7≦β≦20、20≦γ≦35、35≦δ≦70であるとき、良好なディスク性が得られていることがわかる。
なお、実施例1〜8で用いたターゲットは原材料を溶融急冷し、粉砕した後、ターゲット焼結前に熱処理工程を経て作製したものである。図2は実施例5で得られたディスクの線速5m/s時のオーバーライト特性を表わす。
【0039】
【表1−(1)】
Figure 0003810025
【0040】
【表1−(2)】
Figure 0003810025
【0041】
比較例11
実施例5のターゲットと同一組成で、ターゲット焼結前の熱処理工程のないものを作製した以外は実施例5同様のディスクを作製した。このディスクの線速5m/s時のオーバーライト特性を図3に示す。比較例11ではディスク特性、感度とも劣っている。
【0042】
実施例9
表2に実施例3のターゲットを窒素ガス0、3、6、10、15mol%混合したアルゴンガスを用いてスパッタリングを行なった際の記録膜の組成とオーバーライト級り返し回数を示す。窒素量が適量の場合はO/W繰り返し回数の向上が認められ、l0mol%を越すと繰り返し回数が急激に悪化する。また、窒素を混合したサンプルでは膜中にIn酸化物、In窒化物やTe窒化物等の存在が認められた。中でも、Te−NやSb−Te−Nの結合が記録膜中に存在する場合、O/Wの繰り返し回数の向上により効果の大きいことが確認された。但し、窒化物は特に限定されるものではない。
図5は(N2/Ar+N2)が3mol%の記録層を、Siウェハー基板上に1000Å厚に製膜したサンプルをFT−IR透過法にて分析し、0mol%のサンプルに対する同様のデータとの差スペクトルである。
【0043】
測定方法及び測定条件の詳細は以下の通りである。
Figure 0003810025
【0044】
【表2】
Figure 0003810025
【0045】
比較例12
実施例1〜8のターゲットに含まれるAgInTeの結晶子の粒径は450Å以下である。実施例2と同一組成ターゲットで結晶子の粒径500Åのものを作製し、実施例2同様のディスクを作製した。この比較例12のディスクの線速2m/s時のオーバーライト特性を図4に示す。比較例12では実施例2に比べてC/N、消去比が劣った。
【0046】
比較例13、14
実施例1〜8のターゲットでは、原材料であるAg、In、Te、Sbのターゲット作製時の材料混合溶融温度は550℃以上850℃以下である。実施例2と同一組成で原材料溶融温度が500℃のもの(比較例13)と900℃のもの(比較例14)を作製し、実施例2同様のディスクを作製した。比較例13のディスクでは良好な記録消去がほとんど行えなかった。また、比較例14は実施例2に比べ特性がやや劣っていた。
【0047】
実施例10
案内溝(グルーブ)の幅と深さを変化させた以外は、実施例2とまったく同様の構成のディスクを同様の方法により作製し、その溝信号特性を評価した。その結果を図6に示す。
図6より、基板に形成される案内溝の幅が0.25〜0.65μmで案内溝の深さが250〜650Åの時、良好な溝信号特性を示すことがわかる。
【0048】
実施例11
各層の膜厚を変化させた以外は、実施例2とまったく同様の構成のディスクを同様の方法により作製し、その記録感度とオーバーライト繰り返し回数を評価した。その結果を表3に示す。
表3より、第1の誘電体層の膜厚が500〜2500Å、記録層の膜厚が100〜1000Å、第2の誘電体層の膜厚が100〜1500Å、合金層の膜厚が300〜2000Åである時、高記録感度でかつ優れた書き換え回数を有することがわかる。
【0049】
【表3】
Figure 0003810025
(注)実施例11の1〜6は第1誘電体層の膜厚効果、実施例11の7〜13は記録層の膜厚効果、実施例11の14〜21は第2誘電体層の膜厚効果、実施例11の22〜27は反射放熱層の膜厚効果を表わす。
(注)判定で○は良好、×は不良を表わす。
【0050】
【発明の効果】
本発明によりC/N、消去比、感度、繰り返し特性の飛躍・向上を達成できた。以下に、請求項ごとの効果を示す。頭の番号は、各請求項に対応する。
1)記録層の組成を特定化し、及び第1誘電体層、記録層、第2誘電体層、金属または合金層のそれぞれの厚みを特定することで、低線速領域(1.2〜5.6m/s)での総合性能に優れた相変化型光ディスク用の記録層を獲得でき、さらに、透明基板の案内溝の形状(深さと幅)を特定化することにより、CD−ROM、CD−Rとの互換性確保を容易にできる。
2)記録層に含まれる化学構造を特定化することで、さらに消去性能に優れた相変化型光ディスクを獲得できる。
)請求項1に記載の記録層の状態を示しており、さらに優れた性能(特には書き換え回数、信頼性等)を有する相変化型光記録媒体を提供する。
)請求項の記録層の状態を更に特定化することより、O/W回数をより向上させるとともに、所望の最適線速度の制御を容易にできる。
)上記光ディスクを適用する最適な記録方法を提供できる。
)上記光ディスクを適用する最適な記録方法、特には、大容量化に適した方法を提供できる。
)上記光ディスクを適用する最適な記録方法、特には、コンパクトディスクの書換型あるいはその変形方式に適した記録方法と条件を提供できる。
)上記記録媒体の記録層を作製する際の出発材料となるスパッタリング用ターゲットの基本組成と化学構造を特定することにより、優れた相変化型光ディスクを提供できる。
)上記記録媒体の記録層を作製する際の出発材料となるスパッタリング用ターゲットの基本組成と化学構造、さらに結晶粒子の大きさを特定することにより、優れた相変化型光ディスクを提供できる。
10)上記ターゲットの基本的製造方法の一つを提供する。
11)上記ターゲットの基本的製造方法の他の一つを提供する。
12)上記ターゲットの基本的製造方法の改良法であり、安定した相変化記録媒体を獲得する条件を提供する。
13)請求項8、9のいずれかに記職のターゲットを用い、請求項1、2に記載の記録層を作製する方法を提供する。
14)請求項13に記載の製造方法の改良であり、さらに高性能で安定した相変化記録媒体を獲得する作製条件を提供する。
15)請求項13に記載の製造方法の改良であり、さらに高性能で安定した相変化記録媒体を獲得する作製条件を提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明光記録媒体の一例の構成図。
【図2】ターゲット材料を製造する際、焼結前に熱処理を行なったターゲットを用いてつくった光記録媒体の性能を表わした図。
【図3】ターゲット材料を製造する際、熱処理を行なわなかったターゲットを用いて光記録媒体の性能を表わした図。
【図4】同一組成のターゲットで結晶孔径を500Åとして光記録媒体をつくり、その性能を表わした図。
【図5】Ag−In−Sb−Te−N膜のFT−IRスペクトルを表わした図。
【図6】グルーブの幅、深さとプッシュプル信号との関係を表わした図。
【符号の説明】
1 基板 4 第2の誘電体層
2 第1の誘電体層 5 金属又は合金層
3 記録層

Claims (15)

  1. 基板上に厚さ500〜2500Åの第1の誘電体層、厚さ100〜1000Åの記録層、厚さ100〜1500Åの第2の誘電体層、厚さ300〜2000Åの金属または合金層の順に積層してなる光記録媒体であって、該記録層の構成元素がAg、In、Te、Sbであり、それぞれの組成比α、β、γ、δ(原子%)が
    1≦α<6
    7≦β≦20
    20≦γ≦35
    35≦δ≦70
    α+β+γ+δ=100
    である相変化型記録材料からなり、かつ該基板に形成された案内溝の幅が0.25〜0.65μm、その案内溝の深さが250〜650Åであることを特徴とする光記録媒体。
  2. 記録層は未記録時および消去時にAgSbTe2微結晶相が存在することを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
  3. 請求項1に記載の光記録媒体において、記録層の構成元素In、Te、Sbのうち、少なくとも1つの元素の窒化物および/又は酸化物を含むことを特徴とする光記録媒体。
  4. 請求項3に記載の光記録媒体において、記録層中の窒素の結合状態の少なくとも1つがTe−Nであることを特徴とする光記録媒体。
  5. 請求項1に記載の光記録媒体を回転線速度1.2m/s〜5.6m/s範囲で回転させ、情報記録時に使用する照射光源が半導体レーザーであることを特徴とする光記録方法。
  6. 請求項5に記載の光記録方法において、記録方式がPWM(Pulse Width Modulation)方式であることを特徴とする光記録方法。
  7. 請求項6に記載の光記録方法において、情報記録時の信号変調方式がEFM(Eight to Fourteen Modulation)方式あるいはその改良変調方式を用い、レーザー記録時の信号がマルチパルス化されていることを特徴とする光記録方法。
  8. 請求項1に記載の光記録媒体を作製する際に用いられ、
    構成元素がAg、In、Te、Sbであり、それぞれの組成比α、β、γ、δ(原子%)が
    0.5≦α<8
    5≦β≦23
    17≦γ≦38
    32≦δ≦73
    α+β+γ+δ=100、但しα≦β
    である相変化型記録材料からなり、かつターゲット中にSbと、カルコパイライト構造及び/又は閃亜鉛鉱型構造を有する化学量論組成及び/又はそれに近い組成のAgInTe 2 とが存在することを特徴とするスパッタリング用ターゲット。
  9. カルコパイライト構造及び/又は閃亜鉛鉱型構造を有する化学量論組成及び/又はそれに近い組成のAgInTe 2 の形成する結晶子の粒径dが0<d≦450Å
    であることを特徴とする請求項8に記載のスパッタリング用ターゲット。
  10. ターゲット原材料として、Ag、In及びTeの単体を混合し、550℃以上850℃以下の温度で溶融した後急冷させ粉砕し、これとSbとを混合して焼結することを特徴とする請求項8に記載のスパッタリング用ターゲットの製造方法。
  11. ターゲット原材料として、Ag、In、Te及びSbの単体を混合し、550℃以上850℃以下の温度で溶融した後急冷させ粉砕し、これを焼結することを特徴とする請求項8に記載のスパッタリング用ターゲットの製造方法。
  12. ターゲット焼結以前の工程として、融点温度以下における熱処理工程を含むことを特徴とする請求項10又は11記載のスパッタリング用ターゲットの製造方法
  13. 請求項8又は9に記載のスパッタリング用ターゲットをスパッタリングして成膜する際に、アルゴンガスに窒素ガスを0mol%以上10mol%以下混合したガスを用いて成膜することを特徴とする請求項1又は2に記載の記録層の成膜方法。
  14. 請求項8又は9に記載のスパッタリング用ターゲットを用いスパッタリングする際に背圧pを
    3×10 -7 ≦p≦5×l0 -6 Torr
    に設定することを特徴とする請求項13に記載の記録層の成膜方法。
  15. スパッタリング後に、スパッタリング時よりも高濃度の窒素ガスを含むアルゴンガスをスパッタチャンバー内に流入させることを特徴とする請求項13に記載の記録層の成膜方法。
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