JP3868011B2 - ポリアリーレンスルフィドポリマーの製造方法 - Google Patents
ポリアリーレンスルフィドポリマーの製造方法 Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ジハロベンゼン類等のジハロ芳香族化合物とアルカリ金属硫化物との反応によるポリフェニレンスルフィド(以下PPSと略称する)に代表されるポリアリーレンスルフィド(以下PASと略称する)の製造方法に関するものである。さらに具体的には、本発明は、比較的簡便な装置で重合反応中の系内の水分量を特定割合にコントロールすることにより、安定性に優れ、生産性の高いPASを得る方法に関するものである。
【0002】
近年、電子電子部品、自動車部品等にはますます高い耐熱性の熱可塑性樹脂が要求されてきているおり、そのため、高い耐熱性を有し、成形加工性、寸法安定性等の他の物性に優れるPPSに代表されるPASは大きく重要を伸ばしており、如何にして安定した物性で生産量を大きくするかが課題である。本発明は、生産性の高い、かつ安定した物性のPASを製造する方法を提供するものである。
【0003】
【従来の技術】
PPSに代表されるPASの製造方法としては、従来工業的に良く用いられている(1)米国特許第3,354,129号公報等に開示されているアルカリ金属硫化物、特に結晶水を有する硫化ナトリウム(以下、含水硫化ナトリウムと略称する)を極性溶媒中で加熱して該含水硫化ナトリウムが含有する水を除去し、そこへジクロルベンゼンを加えて加熱重合させる方法がある。
【0004】
しかしこの方法では、原料の一つである含水硫化ナトリウム(含水水硫化ナトリウムと水酸化ナトリウムとの反応生成物を含む)の水分を除くのに、重合溶媒中で物理的に加熱留去する方法によっているので、イ.充分な脱水が困難、すなわち硫化ナトリウム等のスルフィド化剤1モルに対して1〜1.5モルの水が系内に残存してしまい、残存水分量のコントロールが困難であること、ロ.水分留出の際に金属硫化物中の硫化分が硫化水素等の形で同伴されて損失となり、そのため反応系中の硫黄分の存在量が変動すること、ハ.水分が相当量残存している状態では金属硫化物が反応缶を浸食し、溶出した重金属イオンが生成高分子の高分子量化を阻害する等の問題点がある。またこの方法では、系内に水分が残存するために、高分子量化ができない、あるいはスルフィド化剤に対しての使用溶媒量を小さくすると分解反応が起こってしまう、あるいは再現性良くポリマーが得られないといった問題があった。
【0005】
また、(2)特開昭59−105027号公報、特開平3−35023号公報には、有機極性溶媒中で硫黄源とジハロゲノ芳香族化合物とを常圧ないしは加圧下で脱水しながら重合することを特徴とするPASの製造方法が開示されている。 しかしながらこの方法は、原料を一括して仕込み、反応系を昇温しながら脱水し、更に脱水を継続しながら重合反応を行うので、硫黄源としてアルカリ金属硫化物等の水和物を用いる場合、重合反応開始初期には、硫黄源1モルに対して1モル以上の水が系内に存在している。従って、使用する溶媒量を硫黄源に対して低減すると系内の水分量が相対的に大きくなる。そのため反応速度が遅くなり重合反応に長時間を要する、あるいは分解反応等の副反応が併発する等の問題があった。
【0006】
また、(3)特開平4ー275334号公報にはアルカリ金属硫化物等の硫黄源と有機極性溶媒からなる水性の混合物(但し、有機極性溶媒1モル当たり硫黄源は0.36モル以上)を脱水し、その脱水混合物とポリハロ置換芳香族化合物を混合し、重合させ、重合途中にガス抜きを行って副生する水を除去しながら重合させる方法が開示されている。
【0007】
この方法も実質的には上記(2)と同様の方法であり、したがって、使用する溶媒量を硫黄源に対して低減すると系内の水分量が相対的に大きくなる。そのため反応速度が遅くなり重合反応に長時間を要する、あるいは分解反応等の副反応が併発する等の問題があった。
【0008】
また、(4)特開平5ー239210号公報にはアルカリ金属硫化物等の硫黄源と有機極性溶媒からなる水性の混合物(但し、硫黄源に対する有機極性溶媒のモル比が0.15/1〜約0.9/1までの範囲である)を脱水し、その脱水混合物とポリハロ置換の芳香族化合物を混合し、重合させる方法が開示されている。 確かにこの方法では、重合前に系内に残存する水を硫黄源1モル当たり1モル以下にコントロールすることが可能であり、反応器の容積当たりの生産量を増加させることはできるが、この方法ではアルカリ金属硫化物等の硫黄源と有機極性溶媒からなる水性の混合物を脱水する際の反応器の腐食といった問題、あるいは脱水時の硫化水素等の損失による反応系中の硫黄分の存在量が変動して、反応が再現性良く行えないといった問題があるし、又当該公報の実施例に示されているように得られるポリマーの粘度はそれほど高くなく、充分なものとは言えない。
【0009】
また、(5)特開昭60−104130号公報、特開平2−1885527号公報には、芳香族ジハロゲン化物(芳香族トリ−またはテトラハロゲン化物を少量含んでいても良い)及び有機溶媒の混合物に、150℃以上で含水アルカリ金属スルフィドを水が反応混合物から除去され得る速度で導入し、そして実質的に無水の状態の系内で重合反応を行うことを特徴とする高分子量PASの製造方法が開示されている。確かにこの方法によって重合反応を無水の状態で行うことは可能である。しかし系内の水分量を無水にしてしまうために、アルカリ金属スルフィドの溶媒への溶解性が小さくなり、そのため反応速度が遅くなって重合反応に長時間を要する、あるいは分解反応等の副反応が併発する等の問題があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の従来の製法の欠点を解決して、再現性良く、安定性等の物性に優れたポリマーを、生産性が高く、経済的に製造する方法を提供することが目的である。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、高い生産性でPASを製造するためには、反応時間を短くするか、反応容器の容積当たりの生産量を大きくすれば良いが、そのためには重合系内の水分量を厳密にコントロールすることが重要であり、有機極性溶媒及びジハロ芳香族化合物の混合物に、特定条件で含水スルフィド化剤を導入すれば、反応系内の水分量を特定の範囲にコントロールでき、有効であるということを見い出した。
【0012】
即ち本発明は、有機極性溶媒中で、ジハロ芳香族化合物とスルフィド化剤とを反応させるポリアリーレンスルフィドポリマーの製造において、加熱した有機極性溶媒とジハロ芳香族化合物を含む混合物に含水スルフィド化剤を水が反応混合物から除去され得る速度で導入すること、及び反応系内の水分量を該有機極性溶媒1モルに対して0.02〜0.5モルの範囲にコントロールすることを特徴とするポリアリーレンスルフィドポリマーの製造方法提供するものである。
【0013】
【構成】
本発明において「スルフィド化剤」、「ジハロ芳香族化合物」、及び「溶媒」という用語は、言及されている各化合物ないし物質がそれぞれ定義された範囲内で混合物である場合を包含していることが理解されなければならない。例えば、「ジハロ芳香族化合物」が複数種の化合物からなっていて生成PASが共重合体である場合を本発明は1つの具体例として包含するものである。
【0014】
(重合体の製造)
本発明によるPASの製造方法は、スルフィド化剤によるジハロ芳香族化合物の脱ハロゲン化/硫化反応に基くものである。
【0015】
(含水スルフィド化剤)
本発明において用いられる含水スルフィド化剤としては、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、あるいはこれらの混合物等の含水物がある。
【0016】
前記アルカリ金属硫化物としては、例えば、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム等が挙げられるが、これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、上記硫化アルカリ金属は無水物、水和物、水溶液のいずれを用いてもよいが、無水物の場合には、反応前に水を加えて含水物にしなければならない。
【0017】
上記硫化アルカリ金属の中では硫化ナトリウムと硫化カリウムが好ましく、特に硫化ナトリウムが好ましい。
これら硫化アルカリ金属は、水硫化アルカリ金属とアルカリ金属塩基、硫化水素とアルカリ金属塩基とを反応させることによっても得られるが、反応系外で調製されたものを用いてもかまわない。
【0018】
アルカリ金属水硫化物としては、例えば水硫化リチウム、水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウム等が挙げられるが、これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、上記水硫化アルカリ金属は無水物、水和物、水溶液のいずれを用いてもよいが、無水物の場合には、反応前に水を加えて含水物にしなければならない。
【0019】
上記水硫化アルカリ金属の中では水硫化ナトリウムと水硫化カリウムが好ましく、特に水硫化ナトリウムが好ましい。
これら水硫化アルカリ金属は、硫化水素とアルカリ金属塩基とを反応させることによっても得られるが、反応系外で調製された物を用いてもかまわない。
【0020】
アルカリ金属塩基としては例えば水酸化アルカリ金属があげられる。水酸化アルカリ金属としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等が挙げられるが、これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0021】
上記水酸化アルカリ金属化合物の中では水酸化リチウムと水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが好ましく、特に水酸化ナトリウムが好ましい。
なお上記のいずれの場合にも、硫化アルカリ金属、水硫化アルカリ金属中に微量存在する不純物を除去するためにアルカリ金属塩基を少量過剰に加えてもさしつかえない。
【0022】
(ジハロ芳香族化合物)
芳香族スルフィド重合体の骨格を形成すべき単量体に相当するジハロ芳香族化合物は、芳香族核と該核上の2ケのハロ置換基とを有するものである限り、そしてアルカリ金属硫化物等のスルフィド化剤による脱ハロゲン化/硫化反応を介して重合体化しうるものである限り、任意のものでありうる。従って、芳香族核は芳香族炭化水素のみからなる場合の外に、この脱ハロゲン化/硫化反応を阻害しない各種の置換基を有するものでありうる。
【0023】
具体的には、本発明において使用されるジハロ芳香族化合物の例には下式(A)〜(D)で示される化合物が包含される。
【0024】
【化1】
【0025】
ここで各置換基は下記の意味を持つ。
X:Cl、Br、I または F。特に、Cl及びBrより成る群から選ばれた少なくとも1種のハロゲン。
【0026】
Y:−R、−OR、−COOR、−COONa、−CN及び−NO2(Rは、 H、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基より成る群から選ばれたもの)より成る群から選ばれたもの。ここで、アルキル基又はアルキル基部分は炭素数1〜18程度、アリール基またはアリール基部分は炭素数6〜18程度のものがふつうである。
【0027】
【化2】
(R'及びR''は、H、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基より成る群から選ばれたもの)より成る群から選ばれたもの。ここでアルキル基またはアルキル基部分及びアリール基またはアリール基部分は上記と同様に定義される。
【0028】
式(A)中でm及びnは、それぞれm=2、0≦n≦4の整数。
式(B)中でa及びbは、それぞれa=2、0≦b≦6の整数。
式(C)中でc、d、e及びfは、それぞれ0≦c≦2、0≦d≦2、
c+d=2、0≦e、f≦2の整数。
【0029】
式(D)中でg、h、i及びjは、それぞれ0≦g≦2、0≦h≦2、
g+h=2、0≦i、j≦2の整数。
上記一般式のジハロゲン置換基芳香族化合物の例として、次のようなものがある。
【0030】
p−ジハロベンゼン、m−ジハロベンゼン、o−ジハロベンゼン、2,5−ジハロトルエン、1,4−ジハロナフタリン、1−メトキシ−2,5−ジハロベンゼン、4,4’−ジハロビフェニル、3,5−ジハロ安息香酸、2,4−ジハロ安息香酸、2,5−ジハロニトロベンゼン、2,4−ジハロニトロベンゼン、2,4−ジハロアニソール、p,p’−ジハロジフェニルエーテル、4,4’−ジハロベンゾフェノン、4,4’−ジハロジフェニルスルホン、4,4’−ジハロジフェニルスルホキシド、4,4’−ジハロジフェニルスルフィド等であり、なかでも、p−ジハロベンゼン、m−ジハロベンゼン、4,4’−ジハロベンゾフェノンおよび4,4’−ジハロジフェニルスルホンが好ましく、その中でもp−ジクロルベンゼン、m−ジクロルベンゼン、4,4’−ジクロルベンゾフェノンおよび4,4’−ジクロルジフェニルスルホンは特に好適に使用される。
【0031】
ジハロ芳香族化合物の適当な選択組合せによって2種以上の異なる反応単位を含む共重合体を得ることができることは前記した通りである。p−ジクロルベンゼンと4,4’−ジクロルベンゾフェノンもしくは4,4’−ジクロルフェニルスルホンとを組み合わせて使用すれば、
【0032】
【化3】
【0033】
単位と
【0034】
【化4】
【0035】
単位もしくは
【0036】
【化5】
【0037】
単位とを含んだ共重合物を得ることができる。
但し、共重合することは可能ではあるが、p−ジハロベンゼンをジハロ芳香族化合物中70モル%以上、好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上用いて重合すると種々の物性に優れたPPSが得られるので好ましい。
【0038】
本発明で使用するジハロ芳香族化合物の使用量は使用するスルフィド化剤中の硫黄源1モル当たり0.8〜1.3モルの範囲が望ましく、特に0.9〜1.10モルの範囲が物性の優れたポリマーを得るのに好ましい。
【0039】
なお、本発明によるPASは上記ジハロ芳香族化合物の重合体であるが、生成重合体の末端を形成させるため、あるいは重合反応ないし分子量を調節するためにモノハロ化合物(必ずしも芳香族化合物でなくともよい)を併用することも、分岐または架橋重合体を形成させるためにトリハロ以上のポリハロ化合物(必ずしも芳香族化合物でなくともよい)を併用することも可能である。これらのモノハロまたはポリハロ化合物が芳香族化合物である場合の具体例は、上記具体例のモノハロまたはポリハロ誘導体として当業者にとって自明であろう。具体的には、例えばジハロベンゼンに若干量のトリクロルベンゼンを組み合わせて使用すれば、分岐を持ったフェニレンスルフィド重合体を得ることができる。また、モノハロまたはポリハロ化合物の使用量は目的あるいは反応条件によっても異なるので一概に規定できないが、ジハロ芳香族化合物1モルに対して好ましくは0.1モル以下、更に好ましくは0.05モル以下である。
【0040】
(溶媒および水)
本発明の重合反応に使用する有機極性溶媒は、活性水素を有しない有機極性溶媒、すなわちアプロチックタイプの有機極性溶媒である。
【0041】
この溶媒は、本発明重合反応を不当に阻害するものであってはならない。また、この溶媒は、少なくとも原料であるジハロ芳香族化合物及びS2-を与えるスルフィド化剤を反応に必要な濃度に溶解することができる程度の溶解能を持つものであるべきである。従って、この溶媒は、窒素原子、酸素原子および/または硫黄原子を有する極性溶媒であることが普通である。更に、この溶媒は原料ジハロ芳香族化合物と同様な脱ハロゲン化/硫化反応に関与しうるものでないことが望ましい。従って例えばハロ芳香族炭化水素ではないことが望ましい。
【0042】
本発明で使用する溶媒は、制御された微小の量の水を重合反応に提供するためのものであるから、溶質としてのこの水が溶媒和しうるものであることが望ましい。
【0043】
また、本発明の製造方法から明らかなように、使用する溶媒の沸点は水の沸点より高くなければならない
このような溶媒の具体的例を挙げれば、(1)アミド、たとえば、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)、N−メチルピロリドン(NMP)、N−シクロヘキシルピロリドン(NCP)、N−メチルカプロラクタム、テトラメチル尿素(TMU)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、その他、(2)エーテル化ポリエチレングリコールたとえばポリエチレングリコールジアルキルエーテル(重合度は2000程度まで、アルキル基はC1〜C20程度)など、(3)スルホキシド、たとえばテトラメチレンスルホキシド、ジメチルスルホキシド(DMSO)その他、がある。これらのうちでも、N−メチルカプロラクタムおよびNMPは、化学的安定性が高いので、特に好ましい。
【0044】
溶媒の使用量は、使用する溶媒の種類及び系内の溶媒に対する水分量によっても異なるが均一な重合反応が可能な反応系の粘度を保持すること、また、ある程度の生産性を維持するためには、重合に用いるスルフィド化剤中の硫黄源1モル当り1.0〜5モルの範囲が好ましい。また、反応容器の容積当たりのポリマーの生産量が大きくするためには、重合に用いるスルフィド化剤中の硫黄源1モル当り1.0〜3.5モルの範囲が好ましく、また、更に好ましい使用溶媒量は同1モル当り1.2〜3.0モルである。
【0045】
重合系内の水分量、あるいは含水スルフィド化剤の水分量を調整するための水は、反応を阻害するものが含まれなければ良く、そのため蒸留水、イオン交換水等、反応を阻害するアニオンやカチオン等を除いた水が好ましい。
【0046】
一般に、本発明の重合反応に存在させるべき水分は、加水分解反応などの併発を回避させるために、なるべく少ない方がよい。他方、重合反応が全く無水の状態である場合は、反応速度が著しく遅くなるといった問題がある。従って、本発明の重合反応において反応系内に存在すべき水分量は、有機極性溶媒1モル当たり0.02〜0.5モル、好ましくは0.02〜0.3モルである。
(重合)
本発明による重合は、有機極性溶媒及びジハロ芳香族化合物の混合物を加熱し、好ましくは150℃以上に加熱し、含水スルフィド化剤を水が反応混合物から除去され得る速度で導入することにより、反応系内の水分量を該有機極性溶媒1モルに対して0.02〜0.5モルの範囲にコントロールし、その条件下で進行する。
【0047】
したがって、本発明方法としては、脱水と重合を別々に行う方法、例えば重合反応が実質的にほとんど進行しない温度、即ち120〜200℃、好ましくは150〜190℃に有機極性溶媒(有機極性溶媒に対して0.5モル以下の水を含んでいて良い)及びジハロ芳香族化合物の混合物を保ち、反応系内の水分量が上記範囲内にコントロールされ得る速度でスルフィド化剤を混合物に導入して余分の水を系外に除去し、反応系内の水分量を上記範囲内にコントロールした後、調製した有機極性溶媒、ジハロ芳香族化合物及び含水スルフィド化剤の混合物を重合反応が実質的に進行する温度、即ち、200〜300℃、好ましくは210〜280℃の温度に加熱して0.1〜40時間、好ましくは0.5〜20時間、更に好ましくは1〜10時間加熱して重合反応を行なう方法でもよい。また脱水と重合を同時に行う方法、例えば重合反応が実質的に進行し得る温度、200〜300℃、好ましくは210〜280℃、更に好ましくは215〜260℃の温度に有機極性溶媒(有機極性溶媒に対して0.5モル以下の水を含んでいて良い)及びジハロ芳香族化合物の混合物を加熱して、反応系内の水分量が上記範囲内にコントロールされ得る速度で含水スルフィド化剤を混合物に導入して余分の水を系外に除去し、反応系内の水分量を上記範囲内にコントロールした後、さらに200〜300℃、好ましくは210〜280℃の温度に加熱して0.1〜40時間、好ましくは0.5〜20時間、更に好ましくは1〜10時間加熱して重合反応を行なう方法でも良い。
【0048】
含水スルフィド化剤を導入する速度は反応系内の水分量を該有機極性溶媒1モルに対して0.02〜0.5モルの範囲にコントロールできるように余分の水を系外に除去できる速度であれば特に制限はない。導入時間はコントロールする水分量、導入する際の温度、含水スルフィド化剤の含水率等によっても異なるので一概には規定できないが、含水スルフィド化剤を0.1〜20時間、好ましくは0.5〜10時間かけて導入することが好ましい。この時間内であると、反応系の水分量あるいは温度等を制御しやすく、また生産性もよい。
【0049】
また、含水スルフィド化剤を導入する温度もコントロールする水分量、導入する際の速度、含水スルフィド化剤の含水率あるいは反応の形式によっても異なるので一概には規定できないが、脱水と重合を別々に行うのであれば、120〜200℃、好ましくは150〜190℃で導入すると良い。また、脱水と重合を同時に行うのであれば、200〜300℃、好ましくは210〜280℃、更に好ましくは215〜260℃の温度で導入すれば良い。
【0050】
重合反応は、200〜300℃、好ましくは210〜280℃の温度に加熱して0.1〜40時間、好ましくは0.5〜20時間、更に好ましくは1〜10時間加熱して行うことが好ましい。この範囲内であると反応の進行がスムーズである。
【0051】
本発明の重合反応においては、接液部がチタンあるいはクロムあるいはジルコニウム等でできた重合缶を用い、通常、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行なうことが好ましく、特に、経済性及び取扱いの容易さの面から窒素が好ましい。
【0052】
反応圧力については、使用した原料及び溶媒の種類や量、あるいは反応温度等に依存するので一概に規定できないので、特に制限はない。
また、反応液の調整及び共重合体の生成反応は一定温度で行なう1段反応でもよいし、段階的に温度を上げていく多段階反応でもよいし、あるいは連続的に温度を変化させていく形式の反応でもかまはない。
【0053】
重合体の回収は、反応終了時にまず反応混合物をそのまま、あるいは酸または塩基を加えた後、減圧下または常圧下で加熱して溶媒だけを留去し、ついで缶残固形物を水、アセトン、メチルエチルケトン、アルコール類などの溶媒で1回または2回以上洗浄し、それから中和、水洗、ろ別および乾燥をすることによって行うことができる。また、別法としては、反応終了後に反応混合物に水、アセトン、メチルエチルケトン、アルコール類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素などの溶媒(使用した重合溶媒に可溶であり、かつ少なくとも生成重合体に対しては貧溶媒であるもの)を沈降剤をして添加して重合体、無機塩等の固体状生成物を沈降させ、それを濾別、洗浄及び乾燥することによって行うこともできる。これらの場合の「洗浄」は、抽出の形で実施することができる。また、反応終了後、反応混合物に反応溶媒(もしくはそれと同等の低分子重合体の溶解度を有する溶媒)を加えて攪拌した後、ろ別して低分子量重合体を除いた後、水、アセトン、メチルエチルケトン、アルコール類などの溶媒で1回または2回以上洗浄し、その後中和、水洗、ろ別および乾燥をすることによっても行うことができる。乾燥は、単離した重合体は実質的に水等の溶媒が蒸発する温度に加熱して行う。乾燥は真空下で行なってもよいし、空気中あるいは窒素のような不活性ガス雰囲気下で行なってもよい。
【0054】
得られた重合体はそのまま各種成形材料等に利用できるが、空気あるいは酸素富化空気中あるいは減圧化で熱処理することにより増粘することが可能であり、必要に応じてこのような増粘操作を行なった後、各種成形材料等に利用してもよい。この熱処理温度は処理時間によっても異なるし処理する雰囲気によっても異なるので一概に規定できないが、通常は180℃以上で行うことが好ましい。熱処理温度が180℃未満では増粘速度が非常に遅く生産性が悪く好ましくない。熱処理を押出機等を用いて重合体の融点以上で溶融状態で行っても良い。但し、重合体の劣化の可能性あるいは作業性等から、融点プラス100℃以下で行うことが好ましい。
【0055】
本発明により得られた重合体は、従来のPAS同様そのまま射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形のごとき各種溶融加工法により、耐熱性、成形加工性、寸法安定性等に優れた成形物にすることができる。しかしながら強度、耐熱性、寸法安定性等の性能をさらに改善するために、本発明の目的を損なわない範囲で各種充填材と組み合わせて使用することも可能である。
【0056】
充填材としては、繊維状充填材、無機充填材等が挙げられる。繊維状充填材としては、ガラス繊維、炭素繊維、シランガラス繊維、セラミック繊維、アラミド繊維、金属繊維、チタン酸カリウム、炭化珪素、硫酸カルシウム、珪酸カルシウム等の繊維、ウォラストナイト等の天然繊維等が使用できる。また無機充填材としては、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、クレー、バイロフェライト、ベントナイト、セリサイト、ゼオライト、マイカ、雲母、タルク、アタルパルジャイト、フェライト、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ガラスビーズ等が使用できる。
【0057】
また、成形加工の際に添加剤として本発明の目的を逸脱しない範囲で少量の、離型剤、着色剤、耐熱安定剤、紫外線安定剤、発泡剤、防錆剤、難燃剤、滑剤、カップリング剤を含有せしめることができる。更に、同様に下記のごとき合成樹脂及びエラストマーを混合して使用できる。これら合成樹脂としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリアリーレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ四弗化エチレン、ポリ二弗化エチレン、ポリスチレン、ABS樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、液晶ポリマー等が挙げられ、エラストマーとしては、ポリオレフィン系ゴム、弗素ゴム、シリコーンゴム、等が挙げられる。
【0058】
本発明の重合体及びその組成物は、従来の方法で得られるPPS同様耐熱性、寸歩安定性等が優れるので、例えば、コネクタ・プリント基板・封止成形品などの電気・電子部品、ランプリフレクター・各種電装品部品などの自動車部品、各種建築物や航空機・自動車などの内装用材料、あるいはOA機器部品・カメラ部品・時計部品などの精密部品等の射出成形・圧縮成形、あるいはコンポジット・シート・パイプなどの押出成形・引抜成形などの各種成形加工分野において耐熱性や成形加工性、寸法安定性等の優れた成形材料あるいは繊維、フィルムとして用いられる。
【0059】
【実施例】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0060】
[参考例1]
使用原料
1.スルフィド化剤(アルカリ金属硫化物)
結晶硫化ナトリウム(5水塩)(以下、Na2S・5H2Oと略称する)は三協化成(株)製品を使用。
【0061】
結晶硫化ナトリウム(9水塩)(以下、Na2S・9H2Oと略称する)は和光純薬(株)製品を使用。
2.溶媒
N−メチルピロリドン(以下、NMPと略称する)は三菱化成(株)製品を使用。
【0062】
3.ジハロ芳香族化合物
p−ジクロルベンゼン(以下、p−DCBと略称する)は住友化学(株)製品を使用。
【0063】
4.水
水道水を蒸留した後イオン交換を施したものを使用。
〈物性評価〉
得られた重合体の溶融粘度(η)は、高化式フローテスターを用いて測定した(316℃、剪断速度100/秒、ノズル孔径0.5mm、長さ1.0mm)。
【0064】
[実施例1]
温度センサー、冷却塔、滴下槽、滴下ポンプ、留出物分離槽を連結した攪拌翼付ステンレス製(チタンライニング)4リットルオートクレーブにp−DCB 735.0g(5.0モル)、NMP 1240g(12.5モル)、水 27.0g(1.5モル)を室温で仕込み、攪拌しながら窒素雰囲気下で100℃まで30分かけて昇温し系を閉じ、更に180℃まで30分かけて昇温し、その温度で脱水しながら、Na2S・9H2O 1200.9g(5.0モル)を2時間かけて滴下した。滴下中に水と共沸的に留出されるp−DCBは連続的にオートクレーブに返した。Na2S・9H2Oの滴下が終了した後、180℃から220℃まで1時間かけて昇温し、その温度で3時間保持した。この後、250℃まで1時間かけて昇温し、その温度で1時間保持して反応を終了した。滴下中の留出液の分析をしたところ、水が805g、NMP21gであった。
【0065】
得られたスラリーを20リットルの水に注いで80℃で1時間攪拌した後、濾過した。このケーキを再び5リットルの湯で1時間攪拌、洗浄した後、濾過した。この操作を4回繰り返し、濾過後、熱風乾燥器で一晩(120℃)乾燥して白色の粉末状のポリマーを521g得た。得られたポリマーの溶融粘度は450ポイズであった。
【0066】
また、上記と同じ仕込組成で同一の滴下操作を行い、滴下中の反応混合物を1時間、2時間でサンプリングし、水分含有量をカールフィッシャー法により、メタノール懸濁液中で測定した。また併せて上記反応の最終スラリー中の水分も測定した。その結果、それぞれの水分含有量は溶媒であるNMPに対して、2.7重量%、2.5重量%、2.5重量%であった。
[実施例2]
Na2S・9H2Oの滴下、及び脱水に要する時間を3時間にして、実施例1と同様に実施した。留出液中の水分は818g、NMPは12gであった。得られたポリマーは515g、溶融粘度は410ポイズであった。
【0067】
[実施例3]
Na2S・9H2Oの滴下、及び脱水に要する時間を1時間にして、実施例1と同様に実施した。留出液中の水分は772g、NMPは45gであった。得られたポリマーは510g、溶融粘度は270ポイズであった。
【0068】
[実施例4]
Na2S・9H2O 1200.9gの代わりにNa2S・5H2O 840.6g(5.0モル)を用いて、実施例3と同様に実施した。留出液中の水分は448g、NMPは16gであった。得られたポリマーは517g、溶融粘度は440ポイズであった。
【0069】
[実施例5]
使用する原料の量をそれぞれp−DCB 955.5g(6.5モル)、NMP 902g(9.1モル)、水 18.0g(1.0モル)、Na2S・9H2O1561.2g(6.5モル)に変えて実施例2と同様に実施した。留出液中の水分は1051g、NMPは17gであった。得られたポリマーは670g、溶融粘度は400ポイズであった。
【0070】
[実施例6]
使用する原料の量をそれぞれp−DCB 588g(4.0モル)、NMP 1388g(14.0モル)、水 27.0g(1.5モル)、Na2S・9H2O 960.7g(4.0モル)に変えて実施例1と同様に実施した。留出液中の水分は651g、NMPは15gであった。得られたポリマーは416g、溶融粘度は380ポイズであった。
【0071】
[実施例7]
Na2S・9H2Oの滴下、及び脱水に要する時間を3.5時間にして、実施例6と同様に実施した。留出液中の水分は665g、NMPは10gであった。得られたポリマーは413g、溶融粘度は350ポイズであった。
【0072】
[実施例8]
使用する原料を水を用いずに、それぞれp−DCB 735g(5.0モル)、NMP 1240g(12.5モル)、Na2S・9H2O 1200.9g(5.0モル)とし、Na2S・9H2Oの滴下、及び脱水に要する時間を1.5時間にして、実施例1と同様に実施した。留出液中の水分は772g、NMPは29gであった。得られたポリマーは513g、溶融粘度は350ポイズであった。
【0073】
[実施例9]
4リットルオートクレーブにp−DCB 735.0g(5.0モル)、NMP 1240g(12.5モル)、水 27.0g(1.5モル)を室温で仕込み、攪拌しながら窒素雰囲気下で100℃まで30分かけて昇温し系を閉じ、更に220℃まで1時間かけて昇温し、その温度でNa2S・9H2O 1200.9g(5.0モル)を2時間かけて滴下及び脱水を行った。滴下中に水と共沸的に留出されるp−DCBは連続的にオートクレーブに返した。Na2S・9H2Oの滴下が終了した後、220℃で3時間保持した。この後、250℃まで1時間かけて昇温し、その温度で1時間保持して反応を終了した。滴下中の留出液の分析をしたところ、水が812g、NMP35gであった。反応後のスラリーの処理は実施例1と同様に行った。得られたポリマーは518g、溶融粘度は480ポイズであった。
【0074】
[実施例10]
Na2S・9H2Oの滴下、及び脱水に要する時間を4時間にして、実施例9と同様に実施した。留出液中の水分は815g、NMPは22gであった。得られたポリマーは515g、溶融粘度は520ポイズであった。
【0075】
[比較例1]
使用する原料の量をそれぞれp−DCB 735.0g(5.0モル)、NMP 1240g(12.5モル)、水 135.0g(7.5モル)、Na2S・9H2O 1200.9g(5.0モル)に変えて実施例3と同様に実施した。留出液中の水分は812g、NMPは57gであった。反応後のスラリーは激しい悪臭(分解臭)がしており、ポリマーは得られなかった。
【0076】
[比較例2]
Na2S・9H2Oの滴下、及び脱水に要する時間を3時間にして、実施例8と同様に実施した。留出液中の水分は808g、NMPは18gであった。得られたポリマーは481g、溶融粘度は80ポイズであった。
【0077】
[比較例3]
4リットルオートクレーブにNa2S・9H2O 1200.9g(5.0モル)、NMP 991g(10.0モル)を仕込み、窒素雰囲気下、204℃まで昇温することにより水−NMP混合物を留去した。留出液中の組成はNMP144g、水695g、イオン性硫黄35mmolであった。ついでこの系を220℃まで昇温しp−DCB 735.0g(5.0モル)をNMP400gに溶かした溶液2時間かけて滴下した。滴下終了後、220℃で3時間保持した。この後、250℃まで1時間かけて昇温し、その温度で1時間保持して反応を終了した。反応後のスラリーは激しい異臭(分解臭)がし、ポリマーは得られなかった。
【0078】
以上の実施例、比較例における結果を表1〜表3に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
【発明の効果】
本発明の製造方法は、有機極性溶媒及びジハロ芳香族化合物の混合物を加熱し、そこへ含水スルフィド化剤を水が反応混合物から除去され得る速度で導入すること、そしてその際反応系内の水分量を有機極性溶媒1モルに対して0.02〜0.5モルの範囲にコントロールすることに特徴があり、この方法によって安定性等の物性に優れたPASが高い生産性及び再現性をもって提供できる。
Claims (6)
- 有機極性溶媒中で、ジハロ芳香族化合物とスルフィド化剤とを反応させるポリアリーレンスルフィドポリマーの製造において、加熱した有機極性溶媒とジハロ芳香族化合物を含む混合物に含水スルフィド化剤を水が反応混合物から除去され得る速度で導入すること、及び反応系内の水分量を該有機極性溶媒1モルに対して0.02〜0.5モルの範囲にコントロールすることを特徴とするポリアリーレンスルフィドポリマーの製造方法。
- 有機極性溶媒とジハロ芳香族化合物を含む混合物を150℃以上に加熱することを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- 反応系内の水分量が、有機極性溶媒1モルに対して0.02〜0.3モルの範囲にコントロールされる請求項1あるいは2記載の製造方法。
- 有機極性溶媒と含水スルフィド化剤中の硫黄源とのモル比(溶媒/硫黄源)が、1.0/1〜3.5/1である請求項1あるいは2記載の製造方法。
- 含水スルフィド化剤が、アルカリ金属硫化物の水溶液あるいはアルカリ金属硫化物の水和物の溶融した液体である請求項1あるいは2記載の製造方法。
- ジハロ芳香族化合物がジハロベンゼン類であり、得られるポリアリーレンスルフィドがポリフェニレンスルフィドである請求項1〜5のいずれか1つに記載の製造方法。
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